古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ポーランド

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争によって、ヨーロッパの安全保障環境が安定したものではなく、常に危険と隣り合わせのものであることが明らかになった。「それは当然だ。ロシアに対峙しているので、ロシアが侵攻すれば危険になるのは当然ではないか。アジアにおいてはさらに中国があるのだから危険が高まる」という主張が出てくるだろうが、それこそが危険な主張だ。自分たちのことだけではなく、相手側に立って考えてみることも重要だ。相手側からすれば、「大きな脅威」が存在しているということになるから、取り返しがつかなくなるほどに大きくなる前にその脅威を取り除かねばならない、ということになる。
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 「相手に対して危害を加えようなどとはみじんも考えていない」といくら言葉で行っても駄目で、態度で示さねばならない。態度でどんどんと武力を増強し続けていれば、相手は「口ではあんなことを言っているが嘘だ」ということになって、武力を増強する。そういうお互いが武力を増強し続ける状況になり、「自国の安全保障を高めるために武力を増強することが相手を刺激し、相手も武力を増強する行動に出て、結局安全保障は高まらない」という「安全保障のディレンマ(security dilemma)」に陥ってしまう。このような状況を喜ぶのは一部の政治家と国防産業である。

 ロシアは確かに自国の安全保障に関して病的なほどに固執する。自国の国境の周りに緩衝地帯を置くという行動を何世紀も続けてきた。それがロシアの拡大主義ということになる。対ロシアをどのようにするかということはヨーロッパにとっては何世紀もの課題ということになる。東ヨーロッパ、中央ヨーロッパという地域に目を向けると、ここも栄枯盛衰が激しい場所である。色々な国が合従連衡を繰り返し、ある時は一緒の国になり(同君連合や連邦)、または滅亡の憂き目にあった。ドイツの拡大主義やポーランドの拡大主義ということもあった。

 現在のウクライナ戦争を見ていく中で重要なのは、東ヨーロッパ、中央ヨーロッパの安全保障環境のための枠組みである。バルト海から黒海までの東ヨーロッパ、中央ヨーロッパにおいては、ポーランド、ウクライナ、リトアニアの「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」、ポーランド、エストニア、ラトヴィア、リトアニア(バルト三国)の「リガ・フォーマット(Riga Format)」、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの「ヴィシェグラード・グループ(Visegrad Group)といった枠組みが存在する。中心的な役割を果たしているのはポーランドである。ルブリン・トライアングルは中世にはポーランド、ウクライナ、リトアニアが一つの国(連邦)であったということから考えるとこの枠組みは数世紀にわたる歴史を持つということになる。
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 私が注目したいのは、「イギリス・ポーランド・ウクライナ産国協約(British–Polish–Ukrainian trilateral pact)」である。これは、イギリスが、ヨーロッパ本土にぴしりと打ち込んだ碁盤上の石で、ドイツとロシアをけん制する効果を持つ。ポーランドの動きを見ていると、その後ろにはヨーロッパ本土をコントロールしようとするイギリスがいる。
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 ロシアにとって脅威となる環境にある中で、ロシアが暴発しないのは、カリーニングラードを保持しているからだ。カリーニングラードはルブリン・トライアングルに突き刺さった杭となっている。ロシアはカリーニングラードを保持していることで、ポーランドとバルト三国をけん制できる。ベラルーシとカリーニングラードの間に、ポーランドとリトアニアの国境線が約72キロにわたって走っており、これをスヴァウキ・ギャップ(Suwałki Gap)と呼ぶ。
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ベラルーシとカリーニングラードをつなぐ道路がポーランドとリトアニアの国境線となっているという、国際関係論的に非常に複雑で微妙な場所ということになる。ロシアはベラルーシとの間の補給路となるこのスヴァウキ・ギャップを確保したい。一方で、ポーランドやリトアニアはこのスヴァウキ・ギャップを遮断してカリーニングラードへの補給路を断つことができる。しかし、そのような状況になれば、ポーランドとリトアニアはロシアと全面対決となる。カリーニングラードをめぐっての激しい攻防戦ということになるし、ロシア本国からの長距離ミサイル攻撃ということにもなる。バルト海をめぐる状況が一気に不安定化するので、バルト海に面している国々はそのような状況を歓迎しない。西側がロシアから先に手を出させるということは考えられるが、今のところはあまり現実的ではないだろう。

 ウクライナ戦争終結と終結後の戦後のヨーロッパにおいてポーランド(とその後ろにいる)の動きは重要になると考える。ポーランドが現状を変更する、ロシアに対してより強硬な姿勢を取り続けるということになれば、ヨーロッパを不安定化させることになる。アジア地域はヨーロッパを反面教師にして、「不安定」なアジアを作り出さないようにしなければならない。

(貼り付けはじめ)

ポーランドとウクライナはプーティンの帝国主義的な夢をいかに挫くことができるか(How Poland and Ukraine Could Undermine Putin’s Imperial Dreams

-歴史上、両国はロシアの帝国主義への抵抗の中で国家のアイデンティティを形成した。そして、今日、両国は協力してロシアを打倒できる。

マチェイ・オルチャワ

2023年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/21/poland-ukraine-russia-putin-imperial-dreams/

ロシアがウクライナで続けている戦争は、何百万人もの人々に想像を絶する苦しみを与え、ヨーロッパの安全保障構造を大きく変化させた。戦闘の終結はほとんど見通すことができない状態であり、ウクライナの武装勢力は欧米諸国からの武器供与を受けて攻勢に転じる構えを見せている。この紛争には明るい兆しもある。それは、ワルシャワとキエフが強力な同盟関係となった。

「自由なウクライナなくして自由なポーランドはない」という宣言は、ポーランド建国の父ヨゼフ・ピルシュツキに由来し、この文言はよく引用される。当時、赤軍は世界革命を起こそうとしていたが、ポーランド軍とウクライナ軍によって阻止され、追い返された。

当時も今も、このスローガンは、主権国家ウクライナが存在しないヨーロッパという概念がもはや考えられないことを証明している。キエフとワルシャワにとって、一方の繁栄は他方の成功と安定に支えられている。両国の国歌(national anthems)の冒頭の歌詞はほぼ同じである。「ポーランド(ウクライナ)はまだ敗北していない(Poland/Ukraine is not yet lost)」という歌詞は、分割、占領、敵の侵略を経験しても生き延びようとする民族特有の頑強さを表現している。どちらの国歌もロシア帝国主義(Russian imperialism)に反抗して作られた。

両国に関する友好的なエピソードが残っているにもかかわらず、20世紀のポーランド人とウクライナ人の関係は、反感(animosity)と民族浄化(ethnic cleansings)に特徴づけられた。ソ連とナチス・ドイツの占領は国境地帯を血の土地に変え、相互の不満と固定観念が傷跡を残した。1945年以降、ポーランドの共産主義政権は、「ウクライナ問題を完全に解決する」という目的を達成するために、ウクライナ人を国内避難させた。民族主義的傾向が疑われた民間人は、1943年から44年にかけてヴォルヒニアと東ガリチアで数千人のポーランド人を虐殺した「獣のような」ウクライナ人反乱軍の同調者とみなされた。

集団的責任が適用されたのは1947年で、14万人以上のウクライナ人が南東部の国境地帯から北と西の戦後領土(ポーランドの一部となった旧ドイツ領)に追いやられた。この軍事作戦(コードネーム「ヴィスワ」)の目的は、共産主義ポーランドにおけるウクライナ人のアイデンティティと文化を破壊することだった。

映画や文学におけるポーランド政府のプロパガンダは、ウクライナ人が血に飢えたファシストであるという有害なイメージを植え付けた。1991年にポーランドがカナダとともにウクライナの独立を承認した最初の国であったにもかかわらず、世論調査ではウクライナ人に対する否定的な見方が1990年代を通じて続いていた。この困難な歴史が、今日のポーランド人のウクライナとの連帯をより顕著なものにしている。

ポーランドは、手段とノウハウさえ与えられれば、ウクライナが西側の安全保障の消費者から、ヨーロッパ・大西洋共同体にとって重要な安全保障の提供者に早変わりできることを知っている。こうした志を同じくする反帝国主義者たち(like-minded anti-imperialists)は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の失地回復・大国復活的な(revanchist)策動を一挙に覆す脅威を与えるだけでなく、ヨーロッパの政治的・軍事的重心の東方シフトを加速させている。西側諸国は、プーティン帝国崩壊後の不測の事態に備えるべきだ。そのひとつが、ポーランド・ウクライナ戦略同盟に支えられた戦後ヨーロッパということになる。

かつてソ連勢力圏に属しながら、ロシアの拡張主義に反対した経緯を持ち、プーティンが「今世紀最大の地政学的大惨事(greatest geopolitical catastrophe of the century)」と嘆いたソ連崩壊に貢献した東欧諸国間の親密な関係ほど、プーティンを苛立たせるものはない。最近のリトアニア、ポーランド、ウクライナの大統領による共同宣言のような戦略的措置は、キエフの防衛力を継続的に強化し、NATOEUでの支援を更に推進する用意があることを再確認するもので、プーティンを狂気へと駆り立てている。

プーティンの目には、ウクライナ、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシは、モスクワの勢力圏(sphere of influence)内にある小国、いわゆる「旧従属国(near abroad)」のグレーゾーンを構成しており、超大国間の世界的な争いの中で、勢力争いの可能性が残されている。プーティンは、これらの国々のヨーロッパ・大西洋機構への加盟とその熱望を、克服すべき危険な障害とみなしている。これらの国々をロシアの支配下に置かくことなしに、モスクワの影響力を再構築し拡大する道はないと考えている。

これらの国々がロシアからのサイバー攻撃、虚偽情報キャンペーン、政治的干渉、武力侵略の標的となっているのは驚くに値しない。プーティンの野心に対抗するため、これらの国々は各種の多国間枠組みを立ち上げている。その中には、リトアニア、ポーランド、ウクライナの間で政治、経済、インフラ、安全保障、防衛、文化的なつながりを強化することを目的とした三国間プラットフォーム「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」や、バルト三国とポーランドの間の「リガ・フォーマット(Riga Format」などがある。ハンガリーの親ロシア的な態度や、フランスとドイツのウクライナ支援が当初は揺らいでいたことを考えると、これらの多国間フォーラムは、ヴィシェグラード・グループ(Visegrad Group)など、以前の東欧ブロックの影響力や重要性を凌駕している。

ポーランドは、より多くのウクライナ人から、友人としてだけでなく、重要な同盟国として見られている。

ワルシャワとキエフの戦略的関係は現実的に発展している。一時は政治的な遅れをとったとしてパートナー諸国から批判されたポーランドだが、プーティンの新帝国主義的なレトリックが、ウクライナとワルシャワが堅固に結ばれているヨーロッパ・大西洋同盟にもたらす脅威をきちんと認識していた。ポーランドはヨーロッパを代表する安全保障推進の存在であり、同盟諸国の防衛と脅威の抑止という公約を果たすために軍備を近代化し、反乱主義失地回復・大国復活志向のプーティンに対抗する重要な同盟国として地位を高めている。

戦争からの避難を求めるウクライナ人に対して、ポーランド人は連帯感を示している。これは当然のことだ。2022年2月24日以来、900万人以上のウクライナ人がポーランドに入国し、150万人から200万人がポーランドに留まり、その他の人々は帰国した。数百万人が安全を求めてポーランドに逃れてきたが、難民キャンプは必要なかった。難民危機の際によく使われる間に合わせのテントや国連の臨時キャンプ地の代わりに、ポーランド人はウクライナ人の隣人たちに家を開放した。過去には難民支援に関してヨーロッパのパートナー諸国から異端児扱いされていたポーランドだが、現在ではヨーロッパ大陸で疑いようのない人道主義の巨人となり、ウクライナとの友愛関係と重なる道徳的義務感を示している。

130万人以上のウクライナ人がポーランドの社会保障番号に相当するものを取得し、合法的な雇用を見つけることができるようになった。彼らは公的医療、幼稚園、学校、直接的な財政援助を受けることができる。ポーランド経済研究所によると、2022年1月から9月までの間に、ウクライナ資本の企業3600社とウクライナ人の個人事業主10200社がポーランドで設立され、調査対象となった企業の66%が、ウクライナ情勢にかかわらずポーランドで事業を継続すると宣言した。

更に言えば、戦争終了後にウクライナに戻った人々は、ポーランド人による歓待を覚えている可能性が高い。ロシアの絶滅戦争(war of extermination)だけでなく、ポーランドでの肯定的な経験からも影響を受けるだろう。労働力として働いていたため、多くの大人はポーランド語でコミュニケーションをとることができ、子どもたちはポーランドの教育システムで数カ月から数年を過ごした後、流暢に話すことができるようになるだろう。既に、ポーランド語の習得に関心を持つウクライナ人の数は増加しており(36%)、今後も増加し続けるだろう。

社会的な絆の深まりは、今後の両国の政治関係に影響を与えるだろう。ミエロシェフスキ・センターがウクライナで実施した世論調査の結果によると、回答者の40%がポーランドとウクライナは単に良き隣人であるべきだと考えているのに対し、ウクライナ人の58%はそれ以上に緊密な関係を築くべきだと考えている。29%は、外交政策で協調しながらお互いを支援する同盟関係を構築することを望み、さらに29%は、純粋に象徴的な国境と共通の外交政策を持つ連邦(commonwealth)の形をとるべきだと考えている。

プーティンの戦争マシーンは、かつてナチス・ドイツやソ連がポーランド人とウクライナ人を分断させるために行ったような、敵意を利用した作戦を成功させることはできなかった。ポーランドが過去に帰属していたウクライナ西部の領土を取り戻すという秘密計画について、戦争中に流布されたロシアのプロパガンダは説得力がない。むしろ逆効果だ。

もちろん、ポーランド人とウクライナ人は過去の悲劇的な出来事、特に20世紀における悲劇的な出来事に対して互いに不満を持っている。犠牲者の記憶について言えば、1943年から44年にかけてヴォルヒニアと東ガリチアでポーランド人が殺害された事件や、1947年にウクライナ人が強制移住させられた事件のような出来事は、水に流されるのではなく、むしろ研究され、記憶されるべきである。良い兆候は、両国を分断するのではなく、むしろ結びつけるもの、すなわちロシアの新帝国主義という存亡の危機重点が置かれつつあることだ。

ポーランドとウクライナの両国大統領が、20世紀初頭に両国が争ったリヴィウの軍事墓地で並んで献花した姿は、戦略的な結びつきを追求する上で歴史が邪魔にならないことを示す象徴的なイメージとなった。過去の傷跡や記憶とともに生きていない若い世代が一緒に過ごす時間が多ければ多いほど、歴史的な出来事をめぐる和解(reconciliation)の可能性は高まる。

国際舞台でウクライナの領土保全を明確に擁護するポーランドは、より多くのウクライナ人に友人としてだけでなく、重要な同盟国として見られている。87%のウクライナ人が、ジョー・バイデン米大統領(79%)を含む他のどの西側指導者よりも、ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領を信頼している。ポーランド人はまた、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を好意的に見ている。ある世論調査では、ポーランド人が最も信頼する外国人指導者のトップはゼレンスキー(86%)で、バイデンは2位(74%)だった。

昨年11月のポーランドの独立記念日を記念して、ゼレンスキーはメッセージを録音した。「ウクライナ人はポーランド国民から受けた支援を常に忘れていない。あなた方は私たちの同盟国であり、あなた方の国は私たちの姉妹だ。私たちの間には意見の相違があったが、私たち親族であり、自由な国民なのだ」。同じ日、ウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人は、ウクライナ人女性とその子供たちが家を出てポーランドに避難し、ポーランド人ヴォランティアの腕の中で慰めを受ける様子を描いたイラストを投稿した。夫が戦死したと聞き、イラスの中の女性は言う。「もう二度と夫に会えないと分かった時、あなたは私と一緒に泣いてくれる。もう会えないんだと思うと、あなたは一緒に泣いてくれる。私はウクライナ。あなたはポーランド。そして私たちの心臓は常に共に鼓動している」。 歴史上、ポーランド人とウクライナ人がこれほど親密だった時期を見出すのは難しい。

プーティンの侵略行為と罪のない市民に対する残虐行為は、ウクライナ人をロシア人から永久に遠ざけ、彼らを許すことはおろか、モスクワとの戦後の関係を追求する考えからも遠ざけている。前線の兵士たちやブチャのような町の犠牲者たちは、国民全体が、そして世界が自分たちのものと呼ぶ新しい世代の英雄や殉教者を生み出している。彼らの犠牲は、ウクライナ人の強い反帝国主義的感情を中心とした国民意識とアイデンティティを自動的に再確認させる。将来、キエフがポーランドや西側に近づいていくのは自然な流れだ。

このプロセスは、どちらの国にとっても、二国間関係の明暗を分ける瞬間として扱われるべきではなく、プーティンのような権威主義的な暴力志向者が間違っていることを証明したいという純粋な願望として扱われるべきである。

アレクサンダー・モティルはその画期的な著作『帝国の終焉』の中で、帝国が終焉を迎えるのは、中心部が周辺部を支配できなくなった時ではなく、周辺部が互いに大きく影響し合うようになった時だと指摘している。このプロセスは、ポーランドとウクライナの間で進行中である。ポーランドはヨーロッパ・大西洋共同体にしっかりと根を下ろし、ウクライナはそうした正式な機構への加盟を目指している。

カナダ、イギリス、アメリカといった利害関係者の支援を受けながら、ワルシャワ・キエフの結びつきを軸とする強力なパートナーシップが構築されれば、政治、経済、防衛の課題を再優先するという骨の折れるプロセスを経ているヨーロッパを支えることができる。もし西側諸国が、プーティンの敗北を早める可能性のあるこの戦略的パートナーシップを支持できなければ、ヨーロッパは敵対的なロシアや将来の不安定性に対して脆弱なままになってしまう危険な可能性がある。

※パヴェル・マルキェヴィッチ:20世紀の中央・東ヨーロッパを専門とする歴史家。ポーランド国際問題研究所ワシントンオフィス事務局長。著作に『あり得ない同盟:第二次世界大戦中のウクライナ総督府におけるナチス・ドイツとウクライナのナショナリストの協同関係(Unlikely Allies: Nazi German and Ukrainian Nationalist Collaboration in the General Government during World War II)』がある。ツイッターアカウント:@DrPMarkiewicz

※マチェイ・オルチャワ:ロヨラ大学シカゴのコジオスコ財団スカラー。ポーランド・東ヨーロッパ史で教鞭を執る。ウクライナの複数の著作があり、代表作は『ミッション・ウクライナと帝国のゲーム:アメリカの地政学的戦略におけるウクライナ(Mission Ukraine and Imperial Games: Ukraine in the United States’ Geopolitical Strategy)』がある。ツイッターアカウント:@MaciejOlchawa

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ポーランドは如何にしてウクライナを西側に向けさせたか(How Poland Turned Ukraine to the West

-キエフにとって、ロシアの傘から離脱するにあたり、ワルシャワはどのような国になることができるかという点でモデルとなる。

ルカ・イワン・ユキッチ筆

2022年2月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/18/ukraine-poland-russia-history-west-nato-euromaidan-crimea/

多くの人々はウクライナを東ヨーロッパの国と考えている。ウクライナのドミトロ・クレバ外相はそのような人たちの仲間ではない。クレバ外相は、「私は、ウクライナは歴史的にも、政治的にも、文化的にも、常に中央ヨーロッパの国家であると深く確信している。私たちのアイデンティティは中央ヨーロッパに属している」と述べている。

これは地理的な事実ではなく、歴史的、文化的な観点からの発言である。ウクライナの未来は、過去と同様、ロシアではなく、北大西洋条約機構(NATO)とヨーロッパ連合(European UnionEU)にしっかりと根を下ろしている中央ヨーロッパ諸国と共有している。そうした中央ヨーロッパ諸国にはスロヴァキア、ハンガリー、リトアニア、そして特にポーランドが含まれている。

過去20年間、ポーランドはウクライナの文化的、政治的発展にロシア以外のどの国よりも大きな影響を与えてきた。EUNATOの中でウクライナを最も強力に支援し、何百万人ものウクライナ人を受け入れている。ウクライナ人の多くがポーランドに住み、学び、働いている。ポーランドは、ウクライナが真の中央ヨーロッパの国になるための代替モデル(alternative model)を提供してきた。ポーランドは、ヨーロッパ的で、愛国的で、公然と反ロシア姿勢を示し、経済的に成功し、その全てが米国の安全保障の傘の下にある。

2014年にロシアがウクライナに侵攻し、クリミア半島を併合して以来、キエフはポーランドをモデルにした国家として着実に自国を築き上げてきた。これはロシアが自ら仕掛けたプロセスであり、ロシア軍が再びウクライナの国境に集結し、戦争が間近に迫っている現在、これを覆すことは不可能である。

ほとんどの西側諸国は、反ロシアの立場からウクライナを強く支持しているが、ポーランドとウクライナを結びつける個人的な絆、相互の歴史、そして近接性を主張できる国はない。

ポーランドとウクライナは、1795年に地図上から消滅したポーランド・リトアニア連邦で数世紀を共に過ごした。19世紀のロマンチックなナショナリズムの時代、ポーランド人とウクライナ人は東ヨーロッパの広大な領土をめぐって、お互いに競合する主張を展開したが、常に共通していたのはロシアの支配に対する敵意だった。

次のようなポーランドの古い格言がある。「自由なウクライナなくして自由なポーランドはあり得ず、自由なポーランドなくして自由なウクライナはあり得ない(There can be no free Poland without a free Ukraine, nor a free Ukraine without a free Poland)」。意識的であろうとなかろうと、この原則は今世紀に入ってからのポーランドの対ウクライナ政策を動かしてきた。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ人とロシア人は「ひとつの民族」であると主張し、ポーランド人を含む西側諸国の人々はウクライナを搾取することしか考えていないと主張している。

「歴史は、ロシアとウクライナの戦争が始まった当初から戦場となっている」とウクライナの歴史家セルヒイ・プロキーは指摘する。一方では、ウクライナは単に、より大きなロシア全体の中にある「小さなロシア(little Russian)」だと考える者もいる。一方、ウクライナは西側諸国の一部であるべきで、ポーランドやリトアニアのような中央ヨーロッパの国であるべきだと主張する者もいる。ロシア帝国主義の手による抑圧という歴史的運命を共有し、近代ヨーロッパでの復活を望んでいるからだ。どちらの歴史観もウクライナ国内外に支持者がいるが、2つの考えは両立しない。

ポーランドはウクライナに、その歴史的な戦争の進め方のモデルを提供した。ポーランドで共産主義が崩壊した後、ソ連は第二次世界大戦後のポーランド国民を解放したのではなく、占領し抑圧した存在として再認識された。それにも理由がある。1940年、カティンの森で、当時のソ連の指導者ヨシフ・スターリンは、ナチス・ドイツによってポーランドが二分された後、2万2000人のポーランド人将校と知識人の大量処刑を密かに命じた。冷戦の間、ドイツ人を非難してきたソ連政府が、自らの責任を認めたのは1990年のことだった。

1998年、ポーランド政府は、物議を醸している歴史戦争部門である国民追悼研究所(Institute of National Remembrance)のポーランド国民に対する犯罪訴追委員会(Commission for the Prosecution of Crimes Against the Polish NationIPN)を設立した。その目的は、カティンの森事件のようなポーランドにおける共産主義政権とナチス政権の犯罪を捜査することだ。そこには、両者を同等の悪とみなすことが含まれており、ポーランドやバルト三国では当たり前のことだが、ロシアやその緊密な同盟国の間では支持されない。こうした国々では、ソヴィエト連邦は依然としてナチスの侵略からヨーロッパを解放した積極的な勢力と見なされている。

2006年、ウクライナはIPNをモデルにした独自の国家追悼研究所(Institute of National Remembrance UINR)を設立した。親ロシア派のウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権下の2010年から2014年まで、UINRの活動は一時停止していた。UINRは、1917年から1991年にかけてソ連当局が犯した犯罪を調査するという、IPNと同様の任務を与えられていた。残虐行為のなかでも、1932年から1933年にかけてスターリンのもとで何百万人ものウクライナ人が人為的な飢饉で餓死したことは、現在ではウクライナも大量虐殺(genocide、ジェノサイド)と認めている。

設立の翌年、UINRはウクライナで物議を醸した一連の非教権化法(decommunization laws)の起草に重要な役割を果たした。この法律では、ソ連時代の第二次世界大戦記念碑が撤去され、地名が変更され、共産主義的シンボルが全て禁止された。この法律は、研究所と同様、ポーランドやバルト三国で可決されたものをモデルとしている。そこでは、ソ連によるナチス支配からの東ヨーロッパ解放は、新たな占領として扱われていた。近年、新たな大祖国戦争崇拝とスターリン礼賛(a renewed cult of the Great Patriotic War and valorization of Stalin)が再燃しているロシアとは対照的である。

ウクライナは共産主義の遺産だけでなく、元共産主義者そのものを追及するようになっている。2014年、ポーランドとバルト三国が1990年代に同様の法律を独自に可決したのに続き、ウクライナでも元共産主義当局者を対象とした物議を醸す一連の浄化法(lustration laws)が可決された。 「浄化(Lustration)」は、共産主義の文化的遺産だけでなく、その制度的遺産も根こそぎ絶やしてしまおうとする試みであり、ウクライナ国内の親ロシア派とソヴィエト懐古主義者を主要なターゲットにしているものである。

ポーランドとウクライナの両国共にソ連の傘下にあった時代(前者は衛星国[satellite state]として、後者はソ連の一部として)、ポーランドとウクライナの間に取り立てて言及すべき関係はなかった。しかし、1989年にポーランドで共産主義が崩壊し、1991年にソ連が崩壊すると、両国関係は一夜にして大きく変わった。

当時のポーランドの最優先目標は「ヨーロッパ・大西洋統合(Euro-Atlantic integration)」であり、ウクライナが今日直面しているような状況を避けるために、できるだけ早くNATOEUに加盟することだった。ポーランドは、NATO加盟の招待がなければ、独自の核開発を行うとさえ脅迫し、ポーランドの初代大統領レフ・ワレサは、当時のロシア大統領ボリス・エリツィンに、NATOへの加盟は「ロシアも含まれるいかなる国家の利益にも反しない」と主張し、ポーランドのNATO加盟に同意するよう圧力をかけた。ポーランドは早期のうちに、具体的には1999年に NATO に加盟し、2004 年には EU に加盟した。

ヨーロッパ・大西洋統合という目標が達成されたことで、ポーランドは今や自由に東方への新たな大戦略を追求することができるようになった。ポーランドの大戦略とは、西側世界の境界線が自国の東部辺境に位置しないようにするというものだ(ensuring the West’s border did not lie on its own eastern frontier)。

2008年、ポーランドはスウェーデンとともに、EUが欧州近隣諸国と東方パートナーシップ(Eastern partnership)を追求することを提案し、ウクライナ、モルドヴァ、ベラルーシ(後に一時停止)、アゼルバイジャン、グルジア(ジョージア)、アルメニアの加盟への道筋を明示した。EUの主要諸国は、このパートナーシップをEUの新たな勢力圏を切り開こうとする試みだと非難したクレムリンを刺激するのをためらい、この構想には曖昧な態度を示した。

一方、ウクライナは苦境に立たされていた。ソ連崩壊の影響は、ワルシャワの体制転換(regime change)よりもはるかに深刻だった。1990年代、ウクライナの経済は年々縮小した。それでも2005年になってようやく1989年の水準を上回った。政治的、文化的アイデンティティの問題も独立当時から国民を分断し始めていた。ポーランドがEU加盟を祝う一方で、2004年、ウクライナは不正選挙をめぐる一連の抗議行動に突入し、オレンジ革命(Orange Revolution)として知られる事態に発展した。

大激戦となった大統領選の決選投票では、ヤヌコビッチが親欧米派候補のヴィクトル・ユシチェンコを僅差で降した。しかし、ユシチェンコと彼の支持者たちはこの結果に異議を唱え、ウクライナの最高裁判所が投票を無効とし再選挙を要求したことで、ユシュチェンコ側の正当性が証明され、ユシチェンコが勝利した。

ロシアは激怒し、ヤヌコビッチを正当な勝者と認定した。ポーランドはユシュチェンコ側の勝利という結果を支持した。ワレサをはじめとするポーランド政府高官たちは一致してユシチェンコを支持した。当時のポーランド大統領アレクサンデル・クワシニエフスキは、政府と反体制派の円卓会談開催を推し進めた。そしてクワシニエフスキ大統領は他の多くの欧州首脳とともに会議に出席した。

オレンジ革命から10年後、ヤヌコビッチ(最終的に2010年に当選)がEUとの連合協定への署名を拒否したため、より重大な抗議運動が発生し、いわゆるユーロマイダン革命(Euromaidan revolution)に発展した。ロシアはクリミア半島を併合し、まもなくウクライナ東部のドンバス地方で戦争を始めた。ロシアはユーロマイダン革命をワルシャワが画策したクーデターと呼んだ。

ポーランドは、ロシアを除くと、ウクライナの文化的、政治的発展に、どの国よりも大きな影響を与えた。

それ以来、何百万人ものウクライナ人がポーランドでより良い生活、少なくともより良い賃金を求めてやって来た。かつてはヨーロッパで最も単一民族的な国の一つであったポーランドにとって、この変化は誇張しがたいものであり、今やウクライナ人はポーランド社会のいたるところに存在する。ウクライナはまた、ヨーロッパで最も送金に依存する国となっている。送金額は2020年時点でウクライナのGDPの9.8%を占めており、ウクライナの経済にとって外国で働く人々は重要な役割を果たしている。

ポーランドは経済分野以外でも、ウクライナを地域における重要なパートナーだと考えている。ポーランドのある地域は何世紀にもわたりロシアが支配してきた。一方、ウクライナはポーランドを、モスクワの支配から逃れるために必要な西側諸制度への加盟を確かなものとするために重要なパートナーと考えている。

2019年にウクライナの現大統領であるヴォロディミール・ゼレンスキーが政権に就いた時、前任のペトロ・ポロシェンコ大統領の下で、ポーランドとの間で歴史をめぐる対立が関係を緊張させていたが、それを「リセット」することを求めた。象徴的なことに、ゼレンスキーは第二次世界大戦開戦80周年をワルシャワで過ごし、ポーランド・ウクライナ関係の雪解けどころか躍進を宣言した。

2020年、ポーランド、リトアニア、ウクライナの各国首脳はポーランドのルブリンで会談し、「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」と呼ばれる新たな同盟の共同宣言を発表した。親クレムリン派のプロパガンダは、この結成をロシアとの「アングロサクソンの代理戦争(Anglo-Saxon proxy war)」の一部と位置づけた。今年、ポーランドとウクライナは、ウクライナの主権を守ることを目的とした三か国同盟(trilateral alliance)を、今度はイギリスと結んだ。

2021年末に行われたルブリン・トライアングル3カ国の大統領による会議では、同盟の目的が実際に行われ、ゼレンスキーは共通課題を「ロシアの脅威を阻止し、攻撃的なロシアの政策からヨーロッパを守ること」とまとめた。ポーランド、リトアニア、ウクライナは「この抵抗の先陣を切っている」とゼレンスキーは述べた。ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領は、EUNATOの加盟国であるポーランドとリトアニアは、「ヨーロッパの一部の安全を確保する」ためのこの提案を推進しなければならないと強調した。

ウクライナ自身の汚職と法の支配の問題、そして東部での活発な戦争を考慮すると、同国が近い将来にEUにもNATOにも加盟することは不可能である。ロシアは、モスクワとワシントンの相互合意によって、ウクライナのNATO加盟を完全に排除することを要求している。しかし問題の一つは、ウクライナはNATOに加盟していないにもかかわらず、EUNATO加盟諸国(ポーランドやリトアニアなど)がウクライナの安全保障を自国の安全保障の問題として扱っていることだ。

ウクライナが今日ロシアの侵略に苦しんでいるのを見て、ポーランド人は自分たちが過去ロシアの侵略の犠牲者であった事実を考え、同情を寄せている。ヨーロッパ外交問題評議会が最近行った世論調査によると、ポーランド人は、自国がロシアの新たな侵略からウクライナを守るべきだという考えにおいて、欧州主要諸国の中で圧倒的に強固であり、他のEU主要国では半数以下であるのに対し、65%がそうすべきだと答えている。同じ世論調査によれば、ポーランド人の80%が、ロシアの侵攻があった場合にはNATOEUの両方がウクライナの防衛にあたるべきだと考えている。

ポーランドとウクライナが隣接する主権国家同士として姿を現したのは1991年のことだった。共通の政治的利害を発見するまでにさらに10年、そして2014年の出来事によって2つの社会が不可逆的に融合するまでにさらに10年かかった。

しかし、その運命は、ポーランドとウクライナがロシアの侵略を共有した経験によって、多くの意味で運命づけられていた。プーティンは、ウクライナを恒久的に自国の影響下の下に置くという賭けに出たが、その代わりにウクライナ人を西に向かわせた。どちらの国にも引き返す兆しは見えない。

・訂正(2022年2月19日):この記事の前のヴァージョンはカティンの森がどの国にあるかについて誤って言及していた。

※ルカ・イワン・ユキッチ:フリーランスのジャーナリストで中央・東ヨーロッパに水滴字を書いている。ツイッターアカウント:@lijukic

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が始まり、2度目の夏を迎える。西側諸国はウクライナに支援を続け、今年の春にはウクライナが春季大攻勢(Spring Offensive)を開始したが、大きな成果は上がっていない。これは当たり前の話で、ウクライナ側があれだけさんざん「近々大攻勢をやるぞ」とウクライナ国内外で宣伝して回れば、ロシア側は準備ができる。防備を固めた要塞や基地を攻め落とすには、攻める側は数倍の戦力が必要であるが、ウクライナにはそれだけの戦力もない。

最近になって西側諸国がウクライナに対して、より強力な武器を支援する動きを見せているが、ウクライナ軍が戦力を落としているので、それを再強化するための「カンフル剤」ということになる。出血しながらカンフル剤で何とか心臓を動かしてウクライナを戦わせていているというのが西側の実態だ。西側諸国は一兵も出さずに、兵器を出しているから助けているでしょというふざけた態度に終始している。本当にウクライナを助けるというのならば、自国の若者たちをウクライナに送るべきだ。そうすれば戦争終結に対してより本気になるだろう。しかし、そのようなことをすれば、ロシアがどのような報復をするか分からないということで、西側は腰が引けている。

「西側(the West)」に対抗する「それ以外の国々(the Rest)」が、ロシアにとっての大後方(great back)となっている。ロシアの石油や天然資源を非西側諸国が購入している。ここで重要なのは、BRICsによる新共通通貨である。「ブリックス・ペイ」という「デジタル共通通貨」となるか、「ブリック」という通貨になるかは分からないが、「米ドル基軸通貨体制」に対する大きな脅威となる。ブリックス5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にインドネシア、トルコ、メキシコを加えた「新G8」が貿易決済でブリックス共通通貨を利用するとなれば、ブリックス共通通貨が有効な決済通貨となり、国際通貨となる。米ドル決済体制によってアメリカは世界の石油と食料の貿易を支配する態勢が崩壊する。

 西側諸国、特にアメリカとイギリスは対ロシアで、ウクライナはEUにもNATOにも正式加盟していないのにロシアを刺激し、挑発するかのような行動を繰り返してきた。ウクライナの武力を増強し続け、ロシアに脅威を与えてきた。そのような「火遊び」の結果が今回のウクライナ戦争である。そして、ロシアが戦争に打って出ざるを得ない状況にしておいて(真珠湾攻撃直前の日本のように)、ロシアを戦争に引きずり込んで、一気にロシア経済を破綻させてロシアをつぶしてやろうというシナリオになっていた。しかし、ロシアはそのような危機的状況から脱した。っそして、ウクライナ戦争で負けない戦術に転換している。西側の短期間でのロシアの屈服というシナリオが崩れた時点で、西側の負けだ。戦争は多くの誤算の積み重ねだ。戦っている当事者たちはあらゆるレヴェルで多くの誤算を積み重ねていく。しかし、重要なのは戦略的な判断ミスを戦術レヴェルで挽回するということは困難だということだ(私はこの言葉を『銀河英雄伝説』で覚えた)。政治家の判断ミス、誤算を軍人がいくら奮闘しても挽回することはできないということだ。西側諸国の政治家の大きなミスは最後まで響くことになる。

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プーティンが正しく行ったもの(What Putin Got Right

スティーヴン・M・ウォルト筆
2023年2月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/15/putin-right-ukraine-war/

ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ侵攻を決定した際に多くのことを誤った。彼はロシア軍の軍事力を過大評価した。ウクライナのナショナリズムの力と、脆弱なウクライナ軍がウクライナを防衛する能力を過小評価した。西側諸国の結束、NATOやその他の諸国がウクライナ支援を決定執行するスピード、エネルギー輸入諸国がロシアに制裁を科し、ロシアからのエネルギー輸出と自国を切り離す意思と能力を見誤ったようだ。プーティンはまた、中国の支援意欲を過大評価していたかもしれない。北京はロシアの石油とガスを大量に購入しているが、モスクワに対して明確な外交的な支援や貴重な軍事援助を提供してはいない。こうした誤りと失敗を全て合わせると、プーティンが表舞台から去った後も長く残るであろう、ロシアにとってマイナスな結果をもたらす決断となってしまったということになる。戦争がどのような結果になろうとも、ロシアはプーティンが別の道を選んだ場合よりも弱体化し、影響力を失うだろう。

しかし、もし私たちが自分自身に対して正直であるならば、そして戦時下においては冷酷なまでに正直であることが必要不可欠であるならば、ロシアの大統領も正しいことをしたと認めるべきである。そのどれもが、開戦の決断やロシアの戦争遂行方法を正当化するものではない。これらの要素を無視することは、彼と同じ過ちを犯すことになる。つまり、相手を過小評価し、状況の重要な要素を読み違えることである。

彼は何を正しく実行したのか?

ジョー・バイデン政権は、「前例のない制裁(unprecedented sanctions)」の脅威がプーティンの侵攻を抑止することを期待し、そしてこの制裁を科すことでプーティンの戦争マシーンの首を絞め、民衆の不満を引き起こし、プーティンを方向転換させることを期待した。プーティンは、われわれがどんな制裁を科そうとも、ロシアはやり過ごすことができると確信して戦争に踏み切った。ロシアの原材料(エネルギーを含む)にはまだ十分な需要があり、GDPはわずかな減少で済んでいる。長期的にはもっと深刻な結果を招くかもしれないが、制裁だけではしばらくの間は紛争の帰趨は決まらないと考えたプーティンの判断は正しかった。

第二に、プーティンは、ロシア国民が高いコストを許容し、軍事的挫折が自身の失脚につながることはないと正しく判断した。プーティンは、戦争が短時間で低いコストに終わることを望んで始めたのかもしれないが、最初の挫折(setbacks)の後でも戦争を続け、最終的には予備兵力を動員して戦い続けるという決断を下したのは、ロシア国民の大半が自分の決断に賛同し、出てきた反対派を抑え込むことができるという彼の信念を反映したものだった。しかし、ロシアは甚大な損失にもかかわらず、またプーティンの権力維持を危うくすることなく、大規模な部隊を維持することができた。もちろん、それが変わる可能性もあるが、これまでのところ、この問題に関してもプーティンが正しいことが証明されている。

第三に、プーティンは、他国が自国の利益に従うこと、そして自分の行動が万国から非難されることはないことを理解していた。ヨーロッパ、アメリカ、その他いくつかの国は鋭く強く反応したが、グローバル・サウス(global south)の主要メンバーや他のいくつかの主要な国(サウジアラビアやイスラエルなど)はそうではなかった。戦争はロシアの世界的なイメージの向上にはつながっていないが(国連総会での戦争非難の票が偏っていたことが示している)、より具体的な反対は世界の一部の国に限られている。

とりわけ重要なのは、ウクライナの運命が西側諸国よりもロシアにとって重要であることをプーティンが理解していたことだ。読者の皆さんに心に留めていただきたいことは、ロシアにとってウクライナの命運は、自国を守るために多大な犠牲を払っているウクライナ人にとっての命運よりも決して重要ではないということだ。しかし、プーティンは、ウクライナの主要な支持者たちよりも、コストとリスクの負担を嫌がらない点で優位に立っている。プーティンが有利なのは、西側の指導者たちが弱虫だからでも、臆病だからでも、屁理屈をこねているからでもない。

このような利害と動機に関わる、根本的な非対称性が、アメリカ、ドイツ、そしてNATOの他の多くの国々が対応を慎重に調整した理由であり、ジョー・バイデン米大統領が最初からアメリカ軍の派遣を否定した理由である。プーティンは、ウクライナの運命には数十万人の軍隊を送り込んで戦わせ、死に至らしめる価値があると考えるかもしれないが、アメリカ国民は息子や娘たちをウクライナに反対させるために送り込むことに同じような気持ちは持っていないし、持つはずもないということを正しく理解していた。ウクライナ人が自国を守るのを助けるために何十億ドルもの援助を送る価値はあるかもしれないが、その目的は、アメリカがアメリカ軍を危険な目に遭わせる、もしくは核戦争の重大なリスクを冒すほど重要なものではない。このような動機の非対称性を踏まえ、私たちはアメリカ軍が直接関与することなくロシアを阻止しようとしている。このアプローチがうまくいくかどうかはまだ明確ではない。

この状況は、ウクライナ人、そして西側で最も声高な支持者たちが、自国の運命を多くの無関係な問題と結びつけるために莫大な労力を費やしている理由にもなっている。彼らに言わせれば、ロシアがクリミアやドンバスのどこかを支配することは、「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」にとって致命的な打撃であり、中国が台湾を掌握することへの誘いとなり、どこの国の独裁者にとっても恩恵となり、民主政治体制の破滅的な失敗であり、核兵器による恐喝は簡単で、プーティンはそれを使って英仏海峡まで軍隊を進軍させることができるというサインだということになる。西側諸国の強硬派は、ウクライナの運命がロシアにとって重要であるのと同様に私たちにとっても重要であるかのように見せるために、このような議論を展開するが、そのような脅しの戦術は、おおざっぱな調査にすら耐えられない。21世紀のこれからの行方は、キエフとモスクワのどちらが現在争っている領土を支配することになるのかによって決まるのではなく、むしろ、どの国が重要な技術を支配するのか、気候変動や他の多くの場所での政治的展開によって決まる。

この非対称性を認識することは、核兵器による威嚇(nuclear threats)が限定的な効果しか持たない理由や、核兵器による恐喝(nuclear blackmail)に対する恐怖が見当違いである理由も説明できる。トーマス・シェリングが何年も前に書いたように、核兵器による応酬(nuclear exchange)は非常に恐ろしいものであるため、核兵器の影の下での交渉は「リスク・テイクの競争(competition in risk taking)」となる。誰も核兵器を1発たりとも使いたくはないが、特定の問題をより重視する側は、特に重要な利害がかかっている場合には、より大きなリスクを冒すことを避けることはないだろう。このような理由から、ロシアが壊滅的な敗北を喫しそうになった場合、核兵器を使用する可能性を完全に否定することはできない。繰り返すが、西側の指導者たちは意志薄弱であったり、臆病であったりするのではなく、賢明で慎重に振舞っているのだ。

これは、私たちが「核兵器による恐喝nuclear blackmail)」に屈していることを意味するのだろうか? プーティンはこのような脅しを使って、別の場所で更なる譲歩を勝ち取ることができるのだろうか? 答えは「ノー」である。なぜなら、プーティンが先に進めば進むほど、動機の非対称性がわれわれに有利に働くからである。ロシアが自国の重要な利害に関わる問題で他国に譲歩を強要しようとしても、その要求は耳に入らないだろう。プーティンがバイデンに電話して、「もしアメリカがアラスカをロシアに返還することを拒否したら、核攻撃を仕掛けるかもしれない」と言ったとしよう。バイデンは笑って、酔いから醒めたらかけ直すように言うだろう。ライヴァルの強圧的な核兵器による威嚇は、決意の均衡(balance of resolve)が私たちに有利な場合には、ほとんど、あるいはまったく通用しない。長い冷戦(long Cold War)の期間中、米ソ両国は、自由に使える膨大な核兵器があったにもかかわらず、非核保有国に対してさえ、核兵器による恐喝を成功させたことはなかったことを思い出すことには価値がある。

しかしながら、この状況が変化する可能性がある方法が1つあり、それは安心できる考えではない。アメリカとNATOがウクライナに提供する援助、武器、諜報、外交支援が増えれば増えるほど、その評判が結果に結びつくようになる。これが、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とウクライナ人がますます洗練された形態の支援を要求し続ける理由の1つである。西側諸国を自分たちの運命にできるだけ密接に結びつけることが彼らの利益になる。ちなみに、私はこのことで彼らを少しも責めない。私が彼らの立場だったらそうするだろう。

風評被害は誇張されがちだが、重大な物質的利益が危機にさらされていなくても、そうした懸念が戦争を継続させることがある。1969年、ヘンリー・キッシンジャーは、ヴェトナムがアメリカにとって戦略的価値が低く、勝利への道筋が見えないことを理解していた。しかし彼は、「50万人のアメリカ人のコミットメント(関与)によって、ヴェトナムの重要性は決着した。今必要なのは、アメリカの約束に対する信頼なのだ」と述べた。その信念に基づき、彼とリチャード・ニクソン大統領は、「名誉ある平和(peace with honor)」を求めて、さらに4年間もアメリカの参戦を続けた。ウクライナにエイブラムス戦車やF-16を送るのも同じ教訓からとなるだろう。武器が増えれば増えるほど、私たちはより献身的になる。残念なことに、両陣営が自らの死活的利益には相手に決定的な敗北を与えることが必要だと考え始めると、戦争を終わらせることは難しくなり、エスカレートする可能性が高くなる。

繰り返すと次のようになる。プーティンが戦争を始めたのは正しかったとか、NATOがウクライナを助けるのは間違っているとか、そういうことを示唆するものではない。しかし、プーティンは全てにおいて間違った訳ではない。プーティンが正しかったことを認識することが、ウクライナとその支持者が今後数カ月をどのように過ごすかを決めるはずだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 ヘンリー・キッシンジャーは今年初めから、「ウクライナのNATO加盟を容認」という主張を行っている。キッシンジャーをはじめ、リアリスト系の人々はウクライナのNATO加盟に長く反対してきたので、キッシンジャーの容認姿勢は驚きをもって迎えられた。しかし、キッシンジャーの主張をよくよく吟味してみると、リアリストの原理原則から導き出された内容であることが良く分かる。
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 キッシンジャーがウクライナのNATO加盟に反対していたのは、ウクライナがNATOに加盟すると、NATOの後ろ盾を受けて、ロシアと事を構える、ロシアと戦争を起こす危険があった、ロシア側からすれば、脅威が一気に増大する、ロシア側もウクライナを自陣営に「取り戻す」ために事を構えるという事態が考えられたからだ。
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 実際には、ウクライナをNATO(特にアメリカ)が手厚く支援し、急激に武力を増強した。結果として、ロシア側は危機感を強め、ウクライナに対して侵攻するということになった。ウクライナはNATO加盟を悲願として、10年以上にわたり、加盟申請を行いながら、NATOはウクライナの加盟を認めてこなかった。しかし、ウクライナに対する支援を強め、「正式にメンバーにしている訳ではありませんよ」という建前を主張しながら、対ロシア姿勢を強硬なものとし、実質的にウクライナをメンバーとして扱っていた。

 戦争が起きてしまった以上、前提は変わった。そのため、キッシンジャーは、一転して、ウクライナのNATO加盟を容認することになった。その理由は、「軍事力を高めたウクライナを単独で行動させないために、枠にはめる、タガをはめるためにウクライナをNATOの中に入れる」ということだ。ウクライナは現在、西側諸国(the West)の手厚い支援を受けて、ロシア軍と交戦中だ。今回の戦争の前、ウクライナ軍は脆弱で、ロシア軍はすぐにキエフを奪えると見られていた。しかし、ウクライナ軍は西側の武器と最新テクノロジーによる情報奪取に成功し、ロシア軍を退かせた。ロシア軍はウクライナ東部を奪取し、現在、それら地域を守っている。ウクライナ軍は大攻勢をかけていると報道されているが、大きな戦果は挙げていない。しかし、シリア内線にも参加し、精強なロシア軍に対して、西側の支援はありながらも1年以上、戦争を継続できているウクライナ軍は周辺国の軍隊よりも確実に強化されている。ウクライナは精強な軍隊を持つ大国ということになる。そのような「変な自信」を持つと、何をしでかすか分からない。そのために、ウクライナにタガをはめるということが必要なのだ。

 また、東ヨーロッパ、中央ヨーロッパに軍事力を持つ大国が出てくることは、地域のこれまでの均衡(equilibrium)、バランス(balance)を崩すことになる。ここで問題になるのは、ポーランドである。ポーランドは歴史上、2度亡国の憂き目にあっているが、保湿的に拡大志向、大国志向国家であり、ポーランドの蠢動はヨーロッパを不安定化させる。ポーランドはリトアニアと共和国を形成していた時代にウクライナの大部分を支配していた時代もある。ウクライナ西部にはユニエイトと呼ばれるローマ法王を崇めるカトリック系の宗教グループがあり。ポーランドのとの親和性が高く、ポーランドがウクライナ西部を併合するという話もあった。ポーランドがウクライナと組んで、ロシアに対して攻撃を仕掛けるという可能性もある。このような状況から、ウクライナをNATOに入れて、ポーランドと共に、しっかり監視して軽挙妄動をさせないということが重要だ。そして、ヨーロッパにおけるパワーバランス、力の均衡を構築し、紛争を未然に防ぐというリアリズムの原理に基づいた戦後処理が必要ということになる。キッシンジャーの慧眼には恐れ入るばかりだ。

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再びの世界大戦を避ける方法(How to avoid another world war

ヘンリー・キッシンジャー筆

2022年12月17日

『スペクテイター』誌

https://www.spectator.co.uk/article/the-push-for-peace/

第一次世界大戦は、ヨーロッパの名声を失墜させた一種の文化的自殺(cultural suicide)であった。ヨーロッパの指導者たちは、歴史家クリストファー・クラークの言葉を借りれば、夢遊病(sleepwalk)のように、1918年の終戦時の世界を予見していたならば、誰も参戦しなかったであろう紛争に突入した。それまでの数十年間、ヨーロッパ諸国は2つの同盟を形成して対立し、その戦略はそれぞれの動員スケジュールによって結びついていた。その結果、1914年、ボスニアのサラエヴォでオーストリア皇太子がセルビア人の民族主義者によって殺害された事件は、ドイツがヨーロッパの反対側にある中立国ベルギーを攻撃してフランスを敗北させるという全目的に適う計画(all-purpose plan)を実行したことから始まった戦争へとエスカレートしていった。

ヨーロッパの国々は、テクノロジーがそれぞれの軍事力をいかに強化したかを十分に理解していなかったため、互いに前例のない壊滅的な打撃を与え合った。1916年8月、2年間の戦争と数百万人の死傷者を出した後、西側の主要戦闘参加国(イギリス、フランス、ドイツ)は、殺戮を終わらせるための展望を探り始めた。東側では、ライヴァルのオーストリアとロシアが同等の働きかけを行っていた(feelers)。既に被った犠牲を正当化できるような妥協案はなく、また誰も弱気な印象を与えたくなかったため、各指導者は正式な和平プロセスを開始することを躊躇した。そこで彼らはアメリカの仲介(mediation)を求めた。ウッドロウ・ウィルソン大統領の個人的な使者であったエドワード・ハウス大佐の尽力によって、修正された現状維持に基づく和平(a peace based on the modified status quo ante)が手の届くところにあることが明らかになった。しかし、ウィルソンは調停に乗り出し、最終的には熱望したものの、11月の大統領選挙が終わるまで延期した。その頃には、イギリスのソンム攻勢とドイツのヴェルダン攻勢によって、更に200万人の死傷者が出ていた。

フィリップ・ゼリコウによるこのテーマに関する本の言葉を借りれば、あまり踏み固められていない道(the road less travelled)となったのである。第一次世界大戦は更に2年続き、何百万人もの犠牲者を出し、ヨーロッパの既存均衡(Europe’s established equilibrium)は取り返しのつかないほど損なわれた。ドイツとロシアは革命によって引き裂かれ、オーストリア・ハンガリー帝国は地図上から姿を消した。フランスは白骨化(bled white)した。イギリスは勝利のために、若い世代と経済力のかなりの部分を犠牲にした。戦争を終結させた懲罰的なヴェルサイユ条約は、それが取って代わった構造よりもはるかに脆いものであることが証明された。

冬が大規模な軍事作戦の一時停止を迫る中で、世界は今日、ウクライナにおける転換点を迎えているのだろうか? 私は、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止するための同盟諸国の軍事的努力に対する支持を繰り返し表明してきた。しかし、既に達成された戦略的変化を土台とし、交渉による和平の実現に向けた新たな構造へと統合する時が近づいている。

ウクライナは、近代史上初めて中央ヨーロッパにおける主要国(major state)となった。同盟諸国に助けられ、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に鼓舞されたウクライナは、第二次世界大戦以来ヨーロッパを覆ってきたロシアの通常戦力(conventional forces)を阻止した。中国を含む国際システムは、ロシアの脅威や核兵器使用に対峙している。

このプロセスは、ウクライナのナNATO加盟に関する当初の問題を根底から覆した。ウクライナは、アメリカとその同盟諸国によって装備された、ヨーロッパで最大かつ最も効果的な陸軍の一つを保持している。和平プロセスは、ウクライナとNATOをつなげるべきである。特にフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した後では、中立(neutrality)という選択肢はもはや意味がない。だからこそ私は2022年5月、2022年2月24日に戦争が始まった国境線に沿って停戦ライン(ceasefire line)を設定することを提案した。ロシアはそこから征服を放棄するが、クリミアを含む10年近く前に占領した領土は放棄しない。その領土は停戦後の交渉の対象となりうる。

戦前のウクライナとロシアの分断線(dividing line)が、戦闘によっても交渉によっても達成できない場合は、自決の原則(principle of self-determination)に頼ることも考えられる。自決に関する国際的な監督下にある住民投票(referendums)は、何世紀にもわたって何度も政権が交代してきた特に分裂の多い地域に適用される可能性がある。

和平プロセスの目的は2つある。ウクライナの自由を確認することと、新しい国際構造、特に中央・東ヨーロッパの構造を定義することである。最終的にロシアは、そのような秩序の中に居場所を見つけることになる。

戦争によって無力になったロシアが望ましいと考える人もいる。私はそうは思わない。ロシアはその暴力的な傾向の割には、半世紀以上にわたって世界の均衡(global equilibrium)とパワーバランス(balance of power)に決定的な貢献をしてきた。その歴史的役割を低下させてはならない。ロシアの軍事的後退は、ウクライナでのエスカレーションを脅かすことができる世界的な核兵器の存在を消去するものではない。たとえ核兵器能力が低下したとしても、ロシアが解体したり、戦略的な政策能力が失われたりすれば、11の時間帯にまたがる領土が争いの絶えない空白地帯と化す可能性がある。競合する社会が暴力によって紛争を解決することになるかもしれない。他国が武力で領有権を拡大しようとするかもしれない。これら全ての危険は、ロシアを世界2大核保有国の地位に押し上げている、数千発の核兵器の存在によって、更に深刻化するだろう。

世界の指導者たちは、2つの核保有国が通常兵器で武装した国と争う戦争を終わらせるために努力する一方で、この紛争や長期的な戦略に影響を与えつつあるハイテクや人工知能の影響についても考えるべきである。自動自律兵器(auto-nomous weapons)は既に存在し、脅威を定義し、評価し、標的とすることができる。

この領域への一線を越え、ハイテクが標準的な兵器となり、コンピュータが戦略の主要な実行者となれば、世界はまだ確立された概念(established concept)のない状態に陥るだろう。コンピュータが、人間の意見を本質的に制限し、脅かすような規模や方法で戦略的指示を出す時、指導者はどのように統制することができるだろうか? このような相反する情報、認識、破壊的能力の渦の中で、文明はどのようにして維持可能となるだろうか?

この緊迫しつつある世界についての理論はまだ存在せず、この問題に関する協議の取り組みはまだ発展していない。おそらく、有意義な交渉によって新たな発見が明らかになる可能性があるが、その開示自体が将来のリスクとなるためだろう。先進技術とそれを制御するための戦略の概念との間の乖離を克服すること、あるいはその影響を完全に理解することは、気候変動と同じくらい今日重要な問題であり、テクノロジーと歴史の両方を把握できる指導者が必要である。

平和と秩序の追求は、時に矛盾するように扱われる2つの要素を持つ。安全保障の要素の追求と和解(reconciliation)行為の要求である。その両方を達成できなければ、どちらにも到達することはできない。外交の道は複雑で苛立たしく見えるかもしれない。しかし、その道を進むには、ヴィジョンと勇気の両方が必要なのである。

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キッシンジャー:ウクライナに単独で勝手な行動をさせないためにウクライナをNATOに加盟させる(Kissinger: Bring Ukraine into NATO to stop them from acting alone

デイヴィッド・P・ゴールドマン筆
2023年5月25日

『アジア・タイムズ』紙

https://asiatimes.com/2023/05/kissinger-bring-ukraine-into-nato-to-stop-them-from-acting-alone/

西洋のメディアの報道は、キッシンジャーがウクライナのNATO加盟を支持したことを見逃している。以下は、彼が『エコノミスト』誌に語った内容である。

ヘンリー・キッシンジャー:ウラジーミル・プーティンにとって、ウクライナのNATO加盟は強迫観念(obsession)だった。だから今、私は人々が「彼は考えを変えた、今はウクライナのNATOへの完全加盟に賛成している」という奇妙な立場にいる。一つは、ロシアはもはやかつてのような、通常の脅威となる存在ではない。だから、ロシアの挑戦は別の文脈で考えるべきだ。そして二つ目には、ウクライナがヨーロッパで最も武装した国であり、加えてヨーロッパで最も戦略的経験の乏しい指導者が率いている状態で、私たちはウクライナを武装してしまったということだ。おそらくそうなるであろうが、戦争が終結し、ロシアが多くの利益を失いながらもセヴァストポリは保持することということになっても、ロシアに不満が出るかもしれない。しかし同時にウクライナにも不満が出るかもしれない。

つまり、ヨーロッパの安全のためには、ウクライナをNATOに参加させ、領土問題について国家的な決定を下せないようにした方がよいということになる。

『エコノミスト』誌:つまり、ウクライナをNATOに加盟させるというあなたの主張は、ウクライナの防衛に関する主張というよりも、ウクライナがヨーロッパにもたらすリスクを減らすための主張ということか?

ヘンリー・キッシンジャー:私たちはウクライナを防衛する能力を証明した。ヨーロッパ諸国が今言っていることは、私から見れば、非常に危険なことだ。なぜなら、ヨーロッパ諸国はこう言っているからだ。「私たちは彼らをNATOに入れることを望まない。何故なら彼らの加盟はリスクが高すぎるからだ。従って、私たちは彼らを武装させ、最新鋭の武器を与えるようにする」。このようなやり方を機能させるにはどうしたらよいだろうか? 間違った方法で戦争を終わらせるべきではない。その結果があり得るものだと仮定すれば、それは2022年2月24日以前に存在した現状維持の線上のどこかということになるだろう。ウクライナがヨーロッパに保護され続け、自国のことだけを考える孤独な(単独行動を行う)国家にならないような結果であるべきだ。

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キッシンジャーがウクライナのNATO加盟を支持(Kissinger Backs Ukraine's NATO Bid

ブレット・フォーレスト筆

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

2023年1月20日

https://www.wsj.com/livecoverage/davos2023/card/kissinger-backs-ukraine-s-nato-bid-TEbEBq5ulGr0dBS9sPTZ

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ウクライナの北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)加盟を主張した。

キッシンジャーはスイスのダヴォスで開催中の世界経済フォーラム(World Economic ForumWEF)の会議にリモートで出演し次のように述べた。「この戦争が起こる前、私はウクライナのNATO加盟に反対していた。なぜなら、ウクライナのNATO加盟によって、まさに今私たちが目にしているようなプロセスが始まることを恐れていたからだ。現状のような状況下で中立のウクライナ(neutral Ukraine)という考えはもはや意味がない。私は、ウクライナのNATO加盟が適切な結果(appropriate outcome)になると信じている」。

ウクライナは2022年9月にNATO加盟申請を行った。

キッシンジャーの発言は、先月『スペクテイター』誌に寄稿した記事の中で、侵攻前の接触線に沿ってロシア・ウクライナ戦争の停戦を確立するよう主張した内容と重なる。

キッシンジャーは火曜日、戦争を終結させる計画について、このような戦闘の停止は「軍事行動の合理的な結果であり、後の和平交渉の結果とは限らない」と述べた。

ロシアもウクライナも交渉開始について特に熱意を示していない。モスクワは、ウクライナがロシアの領土獲得を承認することを交渉の前提条件としているが、キエフは、意味のある交渉を始める前に、ロシア軍がクリミア半島と他の全てのウクライナの土地を放棄することを要求している。

キッシンジャーは、短期的な交渉が「戦争がロシアそのものに対する戦争にならないようにするだろう」と述べた。ロシアが大量の核兵器を保有していることを踏まえ、ロシア国内の不安定を引き起こすようなことがないように警告を発した。「交渉はモスクワに“国際システムに復帰する機会”を与えるだろう」とも述べた。

99歳のキッシンジャーは、1970年代に米国務長官としてソ連との冷戦の緊張緩和(Cold War détente)の確立に尽力した。

キッシンジャーは次のように述べた。「私は、戦争が続いている間もロシアと対話し、戦前の路線に達すれば戦闘は終結すると信じている。戦前の線で停戦することは、開戦時に存在した問題を超えて新たに深刻な問題を提起し、軍事衝突の継続の対象とすることで、戦争がエスカレートするのを防ぐ方法だと信じている」。

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ヘンリー・キッシンジャー、ウクライナのNATO加盟反対を撤回(Henry Kissinger Reverses Opposition to Ukraine’s NATO-Membership Bid

ジミー・クイン筆

2023年1月18日

『ナショナル・レヴュー』誌

https://www.nationalreview.com/corner/henry-kissinger-reverses-opposition-to-ukraines-nato-membership-bid/

今週スイスで開催された世界経済フォーラムの聴衆を前にして、ヘンリー・キッシンジャーは、ウクライナのNATO加盟はロシア侵攻の「適切な結果(appropriate outcome)」になる可能性があると述べた。

リモートでパネルディスカッションに出席した99歳のキッシンジャーは、ロシアは内部崩壊(internal collapse)による危機を回避するために、紛争後に国際社会への復帰を認められなければならないと説明した。CNBCによると、キッシンジャーは「独自の政策を追求できる国家としてのロシアを破壊することは、その領土に1万5000発以上の核兵器が存在する今、11の時間帯からなる広大な地域を内部紛争や外部からの介入の機会を開放することになる」と発言した。

キッシンジャーは以前、ウクライナがロシア軍に攻撃され、占領された領土を割譲することを条件とする、交渉による戦争解決を求めていた。キッシンジャーがその姿勢を翻したという兆候はないが、ウクライナのNATO加盟に関する彼のコメントは、重要な撤回を意味する。

キッシンジャーは次のように述べた「戦前、私はウクライナのNATO加盟に反対していた。NATO加盟は、まさに今私たちが目にしているようなプロセスを始めることになると危惧していたからだ。現状のような状況下で中立的なウクライナという考えはもはや意味がない。私は、ウクライナのNATO加盟が適切な結果になると信じている」。

NATOは10年以上にわたり、ウクライナはいずれ集団安全保障同盟(collective-security alliance)であるNATOに加盟する可能性があると述べてきたが、加盟を早めるための具体的な措置をとることは拒否してきた。

ロシアが侵攻を開始する3カ月前、ウクライナ政府高官ロマン・マショベツは、加盟を認めて欲しいというキエフの長年の要望を繰り返した。マショベツは2021年11月にナショナル・レヴュー誌のインタヴューに対して次のように語った。「プーティンはウクライナのNATO加盟にショックを受けるだろう。ウクライナがNATOに加盟すれば、彼はウクライナに対して、ハイブリッド、非通常的、通常型、非対称など、あらゆる戦争の形態を私たちに仕掛けることはできないだろう」。

フィンランドのサナ・マリン首相もダヴォス会議で同様の発言をし、ウクライナがNATOに加盟していればロシアは攻撃しなかっただろうと聴衆に語った。また、フィンランドとスウェーデンはNATO加盟国の承認を求め続けており、同盟に参加する「準備は十分にできている」とも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 私はウクライナ戦争開戦直後から停戦を主張してきた。ウクライナが押し返した時期が複数回あり、その度に停戦交渉すべきだと訴えてきた。それは、ウクライナ、ロシア双方の人々の生命が守られて欲しいという考えがあってのことだ。更に言えば、ウクライナ戦争が拡大し、第三次世界大戦にまで発展し、核兵器を使用した戦争になって欲しくないが、その危険性が高いということも考えたからだ。以下の記事も併せてお読みいただきたい。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」

「ウクライナ戦争の核兵器使用によるエスカレーションの危険は大きくないが存在する」(2022年11月4日)」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/86756663.html

 先日、ポーランド国内にミサイルの発射体もしくは残骸が落下したことで、2名が死亡するという事件が起き、世界に緊張が走った。ロシアからの攻撃の場合、NATOがウクライナ戦争に軍事介入するとなれば、戦闘地域が東欧、中欧に拡大する、もしくは核戦争が引き起こされるという懸念が高まった。ウクライナやポーランドの政府当局は、ロシアのミサイルだという声明を早々に発表し、NATOを戦争に引きずり込もうとした。しかし、アメリカのジョー・バイデン大統領がロシアのミサイルではないという見解を示し、事態を鎮静化させた。アメリカはNATOの主体とならねばならず、NATOが戦争に関わることになれば、アメリカ軍とロシア軍が交戦するという危険があった。そうなれば、ウクライナ戦争は拡大し続けることになる。

 以下に、スティーヴン・M・ウォルト・ハーヴァード大学教授の論稿をご紹介する。ウォルト共助の抑制的な考えをぜひ多くの皆さんにお読みいただきたいと思う。単純に「良いもの、悪いもの」という子供のヒーロー戦隊もののような構図で世界を見ることは危険である。そのような単純な思考では、大きく騙されることになる。実際に、リベラルと言われるような人々がウクライナ戦争で以下に好戦的な発言を繰り返したか、常日頃は戦争反対を唱えながら、いざとなればあれだけ好戦的になるというのは驚きだった。このような好戦性を利用されれば、戦争協力までさせられるということになりかねない。

 私たちには常に白黒はっきりつけたいという思いがある。しかし、世界や社会はそのように単純にはできていない。そのことを私たちは理解して、世界を見ていかねばならない。

(貼り付けはじめ)

ポーランド国内での死亡事故は全ての人への警告である(Deaths in Poland Are a Warning for Everyone

-ウクライナからのミサイル誤射は「戦争が常に偶発的にエスカレートする可能性がある」ことを思い起こさせるものだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年11月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/17/poland-missiles-ukraine-deaths-war-russia-nato-escalation/

もし読者であるあなたが、「ウクライナ戦争がエスカレートするリスクなど些細な、小さなものだ」と考えているなら、火曜日にウクライナの防空ミサイルの誤射によりポーランド人2人が死亡した悲劇を受けて、少しは立ち止まって考えるべきだろう。ウクライナでは大きな戦争が進行中であり、敵対国同士が慎重を期していたとしても、大きな戦争は不確実性(uncertainty)に満ちた厄介なもので、予期せぬ結果に満ち溢れている。武器は故障するし、現地の指揮官たちは必ずしも命令に従わないし、戦争の霧(fog of war 訳者註:作戦・先頭における不確定要素)は敵の行動を見極めることを難しくし、その意図を読み誤らせることも容易にしてしまう。

今回の事件ではすぐに冷静な判断が下されたが、それでも偶発的、不用意なエスカレーション(escalation)の可能性を示している。ミサイルがポーランド国内に落ちたという報道がなされた時、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はロシアによる「エスカレーション」だと言い、ポーランド政府はNATO条約第4条と第5条を発動し、同盟の安全に対する脅威であるかのような発言をした。この「攻撃(attack)」の原因が理解されると、西側諸国はすぐにウクライナの責任を免除し、ウクライナはロシアの重要インフラへのミサイル攻撃から身を守るために誤ったミサイルを発射したと正しく指摘し、ロシアが戦争を始め、ウクライナの領域を不法に占領していることを皆に思い起こさせることに成功した。

アメリカとポーランドの政府当局者たちがこの不幸な出来事の原因を素早く見極め、エスカレートする圧力を抑えるために行動したことは評価に値する。しかし、それは自己満足の根拠にはなりえない。もし、ロシアのミサイルがコースを外れ、ポーランド国内を直撃し、2人が死亡する事故が起きていたらと想像してみるとどうなっていたか。モスクワは関与を否定するか、事故だったと主張するだろう。しかし、仮にロシア側の主張が真実だったとしても、誰がそれを信じるだろうか? NATOの決意を試すためにモスクワが攻撃を命じたという憶測が出て、何らかの対応を迫られることになっただろう。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は核攻撃の可能性を探っていた、あるいはウクライナ国外の重要な物流拠点を直接攻撃することでロシアが逃げ切れるかどうか試していたとする分析も出ただろう。NATOは「抑止力回復(restore deterrence)」のためにロシアに報復しなければならないと主張する声も聞かれただろう。

今回の事件、特にゼレンスキーの反射的な対応は、ウクライナがこの種の事件を利用して、ロシアへの非難を強め、外部からの同情と支持を集めようとすることを物語っている。実際、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、水曜日の夕方の時点で、ゼレンスキーが「最初の調査結果には納得しておらず、ロシアのミサイルが関与しているとまだ信じている」と述べたことを報じている。ゼレンスキーの行動の背後にある論理(logic)を理解することはできる。しかし、その論理構成はウクライナにとって正しいことであっても、私たちの利益にはならない。そして、このやり方は簡単に裏目に出る。『フィナンシャル・タイムズ』紙は、西側の外交官の匿名の発言として、「これは馬鹿馬鹿しいことになっている」と報じている。この外交官は「ウクライナ人は、私たちの信頼を破壊している。誰もウクライナを非難しないのだが、彼らは公然と嘘をついている。これはミサイルよりも破壊的だ」と述べた。

ウクライナがその運命を決定する上で十分な発言権を持つことが当然で、それには疑問の余地はない。しかし、ウクライナを支援する外部勢力も同様に発言権を得ることになる。「ウクライナに共にいる(standing with Ukraine)」とは、自国の利益や関心を保留にすることではなく、特にキエフの利益や目的と必ずしも自分たちと重ならない場合には自国の利益を追求すべきなのである。責任ある世界の指導者たちが自国の利益を犠牲にして他国の利益を図ることはできないし、そうすべきでもない。良き同盟者とは、相手が不用意に行動していると思えば、それを諭すものである。

また、「偶発的(accidental)」あるいは「不注意な(inadvertent)」エスカレーションが、この戦争を拡大し、より致命的なものにする唯一の方法でも、最もあり得る方法でもないことを忘れてはならない。戦争中の国家がエスカレートするのは、通常、相手側に重要な閾値が破られたからではなく、相手側が行ったことを読み違えたからでもなく、自分たちが負けているからである。第一次世界大戦でドイツが無制限潜水艦戦を採用し、第二次世界大戦でV-1、V-2ロケットを使ったのも、太平洋戦争で日本が特攻機による神風攻撃を始めたのも、1970年にアメリカがカンボジアに侵攻したのもそのためである。

この力学は、今日のウクライナですでに働いている。数日から数週間の「特別軍事作戦(special military operation)」として始まった戦争は、今や終わりの見えない大規模な消耗戦(war of attrition)と化している。度重なる失敗の末、ロシアは数十万人の兵力を増強し(プーティンは開戦時には明らかに予期していなかった)、ウクライナのインフラに対する意図的な攻撃を展開している。同時に、ウクライナの同盟諸国は、外交、経済、軍事面での支援を強化している。この過程に「偶然(accidental)」はない。エスカレートが起きているのは、どちらの側も和解交渉の用意がなく、勝ちたい、絶対に負けたくないという思いがあるからだ。

ウクライナの立場を理解するのは簡単である。ウクライナ人は生き残るために戦っている。ウクライナ人は生き残るために戦っている。私たちの同情と物質的支援は彼らとともにあり、それは当然のことだ。しかし、アメリカ人は世界の問題を独裁的な指導者の悪意のせいにすることに慣れているので、ウラジミール・プーティンとその仲間が自分たちの死活的な利益も危ういと考えていることを認識するのがより困難になっている。この現実を認識することは、プーティンの命令を擁護することでも、ロシア軍がウクライナに対して行ったことを正当化することでもない。ただ、モスクワは自分たちの娯楽のために戦争をした訳ではなく、簡単に敗北を受け入れることはないだろうということを思い起こさせることである。

不幸なことに、この状況は、戦争を終わらせることがどうして望ましいのか、そして戦争終結がどうして多くの障害の直面するのか、その両方を浮き彫りにしている。戦争が続けば、より危険な事件が起こり、意図的にエスカレートする危険性が不快なほど高いままということになる。更に、将来の事件が適切に解釈されるかどうか、賭け金を上げる誘惑に常に抵抗できるかどうか、確信が持てない。外交にもっと注意を払い、和解に向けたより真剣な努力を求める人々にとっては、弾丸やミサイルが飛んでくる限り、残り続ける危険性を強調するのが正しいやり方ということになる。

しかし、交渉は万能(panacea)ではない。実際、外交がうまくいくと楽観視することはできない。現在、戦場ではウクライナにかなりの勢いがあるが、モスクワが妥協する気配はなく、ましてやウクライナの要求を全て受け入れることはない。双方が戦い続けることで状況が改善されると考えているならば、取引は不可能である。

また、仮にそれぞれが真剣な話し合いに関心を持ったとしても、成功への障害は乗り越えるのが困難なものとなるだろう。モスクワとキエフの間には、深い憎しみがあり信頼は全く存在しない。多くの利害関係者が、結果について何らかの発言権を求めている。軍隊の撤退、国境線の画定、捕虜や誘拐された市民の送還、ウクライナの復興支援、将来の安全保障、戦争犯罪の説明責任、制裁解除などなど、解決しなければならない現実問題は山積している。その全てを解決するのは極めて困難であろう。タレーラン、メッテルニヒ、ビスマルク、周恩来、ラクダール・ブラヒミ、リチャード・ホルブルック、ジミー・カーターのような仲介者がいても、今すぐに大きな前進を遂げるのは難しいだろう。

私は、今回の遺憾な事件に関して、1つの明るい兆しを見出すことができる。戦争は長引けば長引くほどエスカレートする傾向があり、そのエスカレートが破滅的な結果をもたらすかもしれないことを皆に思い起こさせることができるなら、誤射したミサイルは双方の指導者に、できるだけ早く紛争を止めようとする動機付けになるかもしれない。そうしなければ、この先、必ずまた危険な事件が起こり、次に何が起こるかは誰にも分からない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年11月15日、ポーランドのウクライナ国境近くにミサイルの発射体もしくは破片が落下して2人が死亡するという出来事が起きた。この事故について、ロシアのミサイルがポーランドに発射されたものだという非難がウクライナや東欧・中欧の国々から出て、NATOの集団的安全保障が発動されて、NATO軍がウクライナ戦争に参戦することになるのではないかという懸念と緊張が高まった。しかし、当事国ポーランドとアメリカが静観する構えを見せ、ウクライナのミサイルの可能性を指摘して、事態は沈静化した。ロシアはウクライナのポーランドとの国境地帯にミサイルは発射していないと主張している。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が起きて、早いもので今年も暮れようとしている。ウクライナ戦争は2022年の世界全体に大きな影響を与えた。ヨーロッパから遠く離れた日本で暮らす私たちの生活にも暗い影を落とした。エネルギー価格と食料価格の高騰によって、生活費が高騰している。買い物に行って以前と同じものを買っても出ていくお金は増えているという状況だ。

 ウクライナ戦争が世界に暗い影を落とすという状況はこれからもしばらく続きそうだ。それは停戦に向けた動きが見えないからだ。ウクライナは西側諸国に対して「どんどん武器と金と物資を送れ。送らないのは正義に反する行為だ。そして、自分たちはウクライナ東部とクリミア半島を奪還する」と主張している。このような「正義」に基づいた主張には表立って反対しにくい。しかし、このブログでも以前に紹介したように、エネルギー価格の高騰、エネルギー不足で一段と厳しい生活を強いられるヨーロッパ各国の国民は「何とか和平を達成してくれないか」という願いを持ち、「平和」を希求している。より露骨に言えば、「ウクライナはもういい加減戦争を止めてロシアと停戦しろ、こっちだって生活が苦しいんだ。しかも人の武器と金で戦争しているんだぞ」ということになる。

 今回のポーランドでの出来事を受けて世界は緊張した。NATO軍、その主力はアメリカ軍ということになるが、NATO軍が参戦することになれば第三次世界大戦、更には核戦争にまで発展するということが人々を恐怖させた。戦争が拡大すれば現在よりも状況が悪化し、世界は不安定になる。そのことを改めて深刻に実感することになった。

 ウクライナ戦争が第三次世界大戦につながる危険性をいち早く指摘したのは、私の師である副島隆彦だ。『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』(2022年6月)を読むと、半年近く経っても状況は全く好転していないということが改めて実感できる。是非お読みいただきたい。

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プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする

 ウクライナが満足する形で停戦が成立するためには、ウクライナ側の主張ヲ基にすれば、ウクライナが東部とクリミア半島を完全に奪還しなければならない。このことがまず可能なのかどうか、そして、可能だというならばそれにかかる時間とコスト(人命、お金、物資など)を冷静に判断しなければならない。そして、ウクライナがこれからどのような国家として存在していくのかということも改めて検討してある程度の道筋をつけなければならない。現在のところ、ウクライナが戦争に勝利して、自分たちの目的を達成することは「ほぼ不可能」である。そのことは、アメリカ軍の制服組トップであるマーク・ミリー米統合参謀本部議長が認めている。そして、ミリーは「政治的解決」を示唆している。これは「停戦交渉をするべき」ということを意味する。

 以下の論稿は正義派の考えに基づいて構成されているが、私が問いたいのは「どのタイミングで停戦交渉するのか」「ウクライナに良いタイミングが来るまで待つというが、そのタイミングはいつ来るのか、そもそもそのようなタイミングが来るのか」ということだ。私たちは太平洋戦争で、ミッドウェー海戦敗北とガダルカナル島失陥以降、アメリカの反転攻勢を受けて日本が追い詰められていく過程で、「何とかアメリカ軍に一撃を加えてそれでアメリカ側をひるませて講和に持ち込む」という「一撃講和論」という楽観主義的な考えによって、戦争が長引き、結果として無残な結果となったことを知っている。ウクライナ戦争でウクライナ側が攻勢に出ているが、ロシアが東部とクリミア半島の防御態勢を整えて、膠着状態に陥った場合、ウクライナの求める条件はまず達成できない。そうなれば戦争がだらだら長引く。ウクライナに対する支援をずっと続けられるのかどうか、という問題も出てくる。西側諸国からの支援がなければウクライナは戦争を継続できない。結局、ウクライナは自分たちの目的を達成する前に停戦ということになる。それは現状とほぼ変わらない段階でのことになるだろう。それならばだらだらと続いた期間とその間のコストは無駄ということになる。

 私は今年の3月の段階で早期停戦すべきだと述べた。その考えは今も変わらない。ウクライナがロシアに一撃を加えた今がタイミングだと思う。このまま戦争がだらだらと続くことは世界にとって不幸だ。

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米軍高官「ウクライナ、軍事的勝利は当面ない」 政治解決に期待

11/17() 8:35配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea4a4cbf2f1838b30306fd58c9f0bf254c7b891c

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は16日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に関して「ロシアがウクライナ全土を征服するという戦略目標を実現できる可能性はゼロに近い。ただ、ウクライナが軍事的に勝利することも当面ないだろう」と指摘した。その上で「ロシア軍は大きなダメージを受けており、政治的判断で撤退する可能性はある」と述べ、攻勢に出ているウクライナにとっては交渉の好機だとの考えを示した。

 ミリー氏は「防衛に関して、ウクライナは大成功を収めている。ただ、攻撃に関しては、9月以降にハリコフ州とヘルソン州(の領域奪還)で成功したが、全体から見れば小さな地域だ。ウクライナ全土の約20%を占領するロシア軍を軍事的に追い出すことは非常に難しい任務だ」と指摘した。

 一方で、「ロシア軍は、多数の兵士が死傷し、戦車や歩兵戦闘車、(高性能の)第45世代戦闘機、ヘリコプターを大量に失い、非常に傷を負っている。交渉は、自分が強く、相手が弱い時に望むものだ。(ウクライナの望む形での)政治的解決は可能だ」と強調した。秋の降雨でぬかるみが増える季節を迎えたことで「戦術的な戦闘が鈍化すれば、政治解決に向けた対話の開始もあり得る」との見解を示した。【ワシントン秋山信一】

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ロシアとの交渉は魅力的であり、そして間違っている(Talking With Russia Is Tempting—and Wrong

-ウクライナでの戦争を終結させるための交渉を始めるのは時期尚早である。

ジェイムズ・トラウブ筆

2022年11月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/16/talking-with-russia-is-tempting-and-wrong/

1814年の夏、2年前にイギリスがアメリカに侵攻し始まった戦争を終結させるために、米英両国の交渉官たちがヘント(ベルギー)に集まった。イギリスは勝利の確信を持ち、領土に関するアメリカ側の譲歩を求めた。ジョン・クインシー・アダムスとヘンリー・クレイが率いるアメリカ代表団はイギリスからの強硬な条件をはねつけた。イギリスは、ニューイングランドの一部を含む当時の制圧地域を境界線として描き直すことを提案した。10月初旬にヨーロッパに届いたワシントン焼失のニューズは、アメリカ側にも譲歩を促すものだった。

しかし、アメリカ側は良い知らせを待って交渉を長引かせた。良い知らせは、シャンプラン湖周辺とボルチモアでのアメリカの勝利という形ですぐに届いた。クリスマス直前、イギリスは全ての要求を撤回し、最も争点となる問題を将来の議論に任せて先送りすることに同意した。ヘント条約は、アメリカの主権が脅かされていた時代に終止符を打ったのである。

この逸話の教訓は、戦時中の早まった外交は誤りであり、戦場のダイナミズムが交渉の条件を形成することを許さなければならないということである。マーク・ミリー統合参謀本部議長は、ウクライナがロシア軍と「膠着状態(standstill)」まで戦った今、外交の「好機をつかむ(seize the moment)」ようバイデン政権の同僚に呼びかけている。しかし、それは間違った比喩だ。ウクライナ人はまずロシアの猛攻に耐え、その後でそれを押し返した。1914年9月の協定がニューイングランドの大部分を切り落としたように、1カ月前の外交交渉では、ウクライナが取り戻したケルソンの支配をロシアに譲り渡すことになっていたかもしれない。外交のチャンスはいずれやってくるが、それは今ではない。

以前、ウクライナ問題で進歩主義的な民主党所属の政治家たちがジョー・バイデン米大統領に送った書簡について、私はコラムで左派の反戦外交の主張(left’s antiwar case for diplomacy)には抵抗があることを書いた。しかし、より強い主張は、右派、少なくとも左派ではない勢力から出ている。右派は、ウクライナの領土保全への関心は限りなく高いが、欧米諸国には他にも多くの懸念があり、ウクライナ支援とのバランスを取る必要があると正しく指摘している。ユーラシア・グループのクリフ・カプチャン会長は、『ナショナル・インタレスト』誌の記事の中で、戦争がもたらす重大かつ長期的なコストとして、「脱グローバリゼーション(deglobalization)」の加速、食料・エネルギー価格の上昇とそれらが引き起こす社会・政治不安、核の不安定性、そして何よりもロシアとNATOとの戦争、おそらくロシアによる核兵器の使用という見込みを挙げている。

最近、カプチャンの話を聞いたところ、「ロシアとの話し合いを受け入れるべきだと考えるのは少数派だ」と述べていた。彼が最も懸念するのは、軍事的なコストだ。「プーティンのレッドライン(最終譲歩ライン)はまだ見つかっていない」と彼は言った。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、これまで考えられていたようなリスク回避を受け入れる人物ではない。ウクライナ人がそれを払うに値すると考えるかどうかにかかわらず、彼は自分の体制に対する脅威と見なすものには、核兵器であれ何であれ、西側諸国にとって災難となるようなエスカレーションで対応するかもしれない。カプチャンの兄弟でジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授(国際問題)も、「ロシア軍がウクライナ東部とクリミアから完全に追放された場合、クレムリンの核兵器への依存は現実的な選択肢となる」と主張している。

これはつまり、ウクライナ人が戦場で大成功を収め、プーティンが世界を引きずり込む前に、西側諸国は外交的な最終案を練り始める必要があるという提案を行うもので、これは外交とタイミングに関して本末転倒な主張だ。このような理屈は、もちろん、核の恐喝が使われる要点ということになる。私がクリフ・カプチャンにこのように言うと、彼は戦争の追加的なコスト、つまり何百人ものウクライナの子どもたちの恐ろしい死について指摘した。しかし、これはウクライナ人自身が喜んで負担しているように見えるコストである。

だからといって、プーティンのハッタリに簡単に応じるのは、狂気の沙汰としか言いようがない。バイデン政権はレッドラインの問題を痛感している。ウクライナに4億ドルの軍需物資を追加供与することを承認しながら、ロシア国内の標的を攻撃できる長距離無人機の供与は拒否した。外交上の主張は、事実上、ワシントンはアメリカだけでなくウクライナも制限しなければならないということになる。そうでなければ、国際関係学者のエマ・アシュフォードが最近書いたように、「戦争に対する慎重に調整された対応が、絶対的な勝利という危険なファンタジーに取って代わられるかもしれない」ということになる。アシュフォードは慎重に中立的な立場を取り、交渉による解決は「今日では不可能に思える」が、アメリカの外交官は「そのようなアプローチが伴う困難な問題を公にして、そしてパートナーに対して提起し始めるべきだ」と示唆している。

ウクライナにロシアとの対話を迫ってはいけないが、必ず来るだろう話し合いに向けて準備を始めるべきだということだ。これは論理的に聞こえる。しかし、本当にそうすべきなのか? 外交問題評議会のロシア専門家であるスティーヴン・セスタノビッチにこの問題を提起してみた。セスタノビッチは、可能性のあるシナリオを公開することさえ、最も貴重な要素であるウクライナの意志を奪うことになりかねないと述べた。彼は次のように語った。「そう、ある時点では、ウクライナ人と座って将来について話すことができる。しかし、彼らはどれだけの損害を受容するのかどうかについては敬意を払わなければならない」。セスタノビッチは、1940年5月、ウィンストン・チャーチルがイタリアの外交打診を拒否したのは、イギリスの士気が下がるのを恐れてのことであったという歴史的な類推(analogy)を使用した。

今、外交官の机の中に最終案の計画が残っているのは、タイミングや戦術だけでなく、外交的リアリストが甘く見がちな他の種類のコストにも関係がある。英国は、1812年の戦争後、アメリカがあまりにも強く、立地も良いため、奪還は不可能であることを悟った。しかし、プーティンは2014年の状態より少し良いものを認める協定によって勇み立つだろう。実際、プーティンは、危害を加える能力を保持している限り、近隣諸国と西側諸国にとって脅威であり続けるだろう。セスタノビッチは、ウクライナが東部で前進を続け、失ったものの多くを取り戻せば、「ロシアは完全にパニックモードになり」、プーティン自身の支配が脅かされることになると示唆している。これは事実上、ウクライナ軍の成功の最良のシナリオである。もちろん、最悪のシナリオは、その脅威に対してプーティンが暴発することである)。

根本的な問題は次のようなものだ。問題は、「それがどの程度問題なのか?」ということだ。これまでのところ、アメリカとヨーロッパは、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止することは、それなりの犠牲を払うに値するという結論に達している。欧米諸国が公言する価値観が本物であることが判明したことは、プーティンにとって当然ショックであり、欧米諸国の多くの人々にとっても、非常に喜ばしいショックであったに違いない。しかし、その意志は無限であるとは言い難い。バイデンをはじめとする指導者たちは、ロシアの賠償金とウクライナの領土の隅々までの返還を含むウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の最大限の条件を達成するために、政治的、経済的負担を負い続けることはないだろう。

外交官たちがその計画を机上から引き上げる時が来るだろう。しかし、その前に、我々の協力でウクライナがプーティンの進撃をどこまで押し返せるか、見届けなければならない。それが私たちの利益であり、ウクライナの利益でもある。

※ジェイムズ・トラウブ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ニューヨーク大学国際協力センター非常勤研究員。著書に『リベラリズムとは何だったか?:過去、現在、そして新しいアイディアの期待(What Was Liberalism? The Past, Present and Promise of A Noble Idea)』がある。ツイッターアカウント:

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