古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ポール・ライアン

 古村治彦です。

 

 現在のアメリカ連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)に政治家引退説が出ています。

 

 「ライアンは2018年の中間選挙後に連邦下院議員を引退する」という話を米誌が報じています。ライアンは記者会見で「すぐ」の引退を否定しています。

 

 ライアンが引退するのではという説の根拠として、ライアンは税制改革を目標にして議員活動をしており、共和党主導の税制改革が成功した場合に、その絶頂で引退するのではないかということが挙げられています。また、ワシントンでの生活に疲れているようにも見えるということも挙げられています。

 

 ライアンには健康不安説があるのだという話は何度か聞いたことがあります。だから、大統領を目指すのも健康問題があるから難しいという話も聞いたことがあります。これらの話は根拠がある訳ではないので、何とも言えないのですが、ライアンがワシントンの生活に疲れており、税制改革を花道にして引退するというのはあり得そうな話です。

 

 2016年の大統領選挙では、ドナルド・トランプをなかなか支持しなかったこともあり、トランプ大統領とは距離があるようです。トランプ大統領が政権発足時にレインス・プリーバスを大統領首席補佐官に任命しましたが、これはプリーバスがライアンと同じウィスコンシン州出身で政治家転進を目指していることから、ライアンへの当てつけであろうという話も流れました。

 

 ライアンが連邦下院議員まで引退となると。プリーバスがその後釜となる可能性があります。

 

(貼り付けはじめ)

 

ライアンは2018年の中間選挙後に引退する可能性がある(Ryan could retire after 2018 midterms: report

 

エイヴェリー・アナポール筆

2017年12月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/house/364918-ryan-could-retire-after-2018-midterms-report

 

ポール・ライアン米連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)は2018年の中間選挙後に引退することを考えていると報じられた。

 

『ポリティコ』誌は木曜日、ライアンは、「最も親密な側近たち」に対して、議長を務めている現在の議員任期が最後の人気となるだろうと述べた、と報じた。

 

ポリティコ誌は30名以上のライアンの同僚、補佐官、ロビイスト、協力者たちに取材を行った。この取材によると、「2018年以降もライアンが下院にとどまるだろうと考える人は誰もいない」ということであった。

 

木曜日、ライアンは記者たちに対して、下院から離れる計画は持っていないと語った。

 

毎週木曜日に行われる定例記者会見の最後に、「あなたは“すぐに”連邦議員から引退するのか」と質問されたとき、ライアンは含み笑いを浮かべ、ステージから降りながら、「いいえ、そんなことはありません」と答えた。

 

ライアンの近い将来についてはここ数カ月話題になっていた。先月、共和党関係者は本誌の取材に対して、共和党が税制改革を成功させたらという条件付きで、連邦下院銀長の任期を全うするだろうと答えた。

 

11月に本誌の取材に答えたある共和党所属の連邦議員は次のように答えた。「ライアンが絶頂の時に引退したいと述べるのではと考えている人たちは多い。税制改革法の可決は、18年にわたって税制改革のために連邦議会で戦ってきたライアンにとっては絶頂の時ということになる」。

 

連邦議会共和党は現在のところ、クリスマスまでに税制改革法を議会で通過させて、トランプ大統領に送るために努力している。

 

連邦議会共和党の最高幹部たちはライアンが引退する場合には後任に名乗りを上げようとしているように見える。

 

共和党の中でライアンの後任になりそうな人物として、次のような人々が挙げられる。2年前に連邦下院議長の座をライアンと争って敗れたケヴィン・マッカーシー(カリフォルニア州選出、共和党)共和党連邦下院院内総務、6月に銃乱射事件で瀕死の重傷を負ったスティーヴ・スカリス共和党連邦下院院内総務(ルイジアナ州選出、共和党)、キャシー・マクモリス・ロジャース共和党会議議長(ワシントン州選出、共和党)、保守派の共和党連邦議員の団体「共和党スタディ・コミッティー・コーカス」会長のマーク・ウォーカー(ノースカロライナ州選出、共和党)といった人々が候補者だ。

 

税制改革はライアンにとって長年の目標であった。今年初めごろ、共和党連邦議員たちの中には本誌の取材に対して、共和党がクリスマスまでに税制改革法を成立させることができたら、ライアンは引退する可能性があると語っていた。

 

ライアンに近いある共和党連邦議員は「ポール(・ライアン)は税制改革が可決されたら引退する可能性がある。税制改革に成功して引退する可能性は失敗して引退する可能性よりも高い」と語った。

 

ライアンは2015年に連邦下院議長になる前から、ワシントンでの生活に疲れており、その疲れが蓄積しているように見えた。ライアンは2014年に『ナショナル・ジャーナル』誌のインタヴューの中で、自分はこれから先10年も連邦議員を続けるつもりはないし、自分の残されたキャリア全期間をワシントンで過ごすつもりはないと述べた。

 

2012年の大統領選挙でミット・ロムニーは敗れた。この時、ライアンは副大統領候補として戦った。この時、ライアンは妻に対して連邦下院議員から引退しようかと考えていると話した、とポリティコ誌は報じた。当時の連邦下院銀長ジョン・ベイナー(オハイオ州選出、共和党)は引退を思いとどまるように説得し、「あなたが連邦下院予算委員長を続けられるようにするから」とライアンに対して述べた。

 

2015年にライアンが連邦下院議長に選ばれる数週間前、ライアンは議長の座に興味はないと発言していた。彼は「議長職は子供が巣立った後の人(empty nester)に適した地位だ」と述べた。ちなみにライアンには3人の子供がいる。

 

しかし、保守派にとって連邦下院議長の最適任者はライアンであった。2015年に議長の座を争ったマッカーシーは『ナショナル・レヴュー』誌の当時の取材に対して、ライアンには連邦下院議長になって欲しいと語っていた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領と連邦議会共和党が目指していた、オバマケア代替法案(American Health Care Act、AHCA、アメリカン・ヘルス・ケア・アクト)が連邦下院での採決の直前に撤回されました。これで、しばらくの間、オバマケアが健康保険制度として存続することになりました。まず、今回の撤回に関する記事を下に掲載します。お読みください。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「オバマケア代替法案、トランプ大統領が採決直前に撤回 公約の目玉で大敗北、何が起きたのか」

 

The Huffington Post  |  執筆者: Jonathan Cohn , Jeffrey Young

投稿日: 20170325 1334 JST 更新: 1時間前

http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/24/obamacare_n_15596294.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

 

 

アメリカ下院の共和党首脳は324日、ドナルド・トランプ政権が成立を目指していた下医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)を撤回した。トランプ大統領は、公約の目玉としてきた医療保険制度改革で敗北を喫したことになる。

 

このニュースを最初に報じたのは、ワシントンポストのロバート・コスタ記者だった。コスタ記者はポール・ライアン下院議長との会談を終えたトランプ氏に直接取材した。

 

トランプ氏は、ライアン氏から法案通過のための賛成票が足りないのは確実だと説明を受け、撤回に合意したと話した。

 

続けて、トランプ氏とライアン氏の両名は、医療保険制度からほかの政策へ、軸足を移す準備はすでに整っているとコメントした。

 

別名「トランプケア」とも呼ばれた代替法案の可決に失敗し、トランプ大統領とライアン下院議長にとって大きな痛手となった。これにより、7年以上にわたって共和党が掲げた公約の中核だった医療保険制度改革の先行きは不透明となる。

 

ライアン氏は記者会見で「非常にわずかな差だったが、必要な賛成票の数に届かなかった」と述べた。「今日は我々にとって失望の日だ」

 

法案を取り下げたことで、議会とホワイトハウスで1週間続いた騒動が収束することとなった。トランプ氏、ライアン氏、さらにAHCAに賛成する議員たちが必死になって、発表から3週間に満たない法案への支持票を取りまとめようと動いていた。トランプ氏たちは猛スピードで法案を可決させようとしていた。

 

トランプ氏が下院に対し最後通告を出してから、24時間もたたないうちに廃案となった。トランプ氏と共和党首脳はそろって、最重要政策と位置づけたAHCAへの賛成を求めていた。さらに、可決を拒否すればAHCAが成立しないまま、他の政策課題に取り組まざるを得なくなると脅しをかけていた。

 

トランプ氏の要求は、政治取引として大胆で瀬戸際的なものだった。反対派の共和党議員に揺さぶりをかけ、取り込む狙いがあった。

 

しかしその作戦は、見るも無残な失敗に終わった。

 

オバマケアが導入されて、およそ2000万人が健康保険に加入した。今回の法案撤回で、オバマケアが存続する見込みはトランプ氏の当選以来最も高くなった。トランプ氏の当選時点では、撤廃は避けられないと見られていた。

 

「アメリカは当分の間、オバマケアの下でやっていくことになりそうだ」と、ライアン氏も認めた。

 

 

共和党案が可決されたとしたら、どうなっていたか

 

「アメリカン・ヘルスケア・アクト」とは「アフォーダブル・ケア・アクト」に対する共和党の代替案だ。成立したらほぼ間違いなく、アメリカ史上類を見ない社会福祉制度の後退につながっていただろう。

 

オバマケアの下で実施されたメディケイドの受給要件緩和がストップし、メディケイドプログラムのさらなる拡充を図るための財源も削減されることになっていた。保険の適用範囲を広げるよう定めた規制も緩和されていた。さらに、低所得で高額の保険料に悩む人々に対する補助金を減らし、それなのに比較的裕福な層が、かなりの額の補助金を新しく受給できる仕組みになっていた。

 

法案が可決されていたとすると、さらに大きな変化も起こっただろう。たとえば、評判の悪い、健康保険に加入しない人に対して罰金を科す「個人強制保険」は廃止するとされていた。さらに政府が法の下、保険適用範囲を拡大するために使う富裕層や医療関連企業に課していた新税も、オバアケア以前に逆戻りする内容だ。

 

トランプ大統領は、2016年の選挙期間中から大統領就任当初まで、オバマケアを廃止するだけでなく、「素晴らしい医療制度」と「国民全員のための保険」を代わりに作ると約束していた。しかし議会予算局(CBO)が共和党の草案を分析したところ、今後10年にわたって無保険者が2400万人に増え、2018年だけでも1400万人にのぼることが分かった。

 

議会予算局は報告書の中で、財政支出を削減すれば連邦政府の赤字が減り、個人で保険に加入する人たちの平均保険料は他の方法よりも安くなると予測した。しかし、この安い保険料は高齢者や病気の人がいることで成り立つものだ。なぜなら、保険会社はこうした人たちから高額な保険料を取っているにもかかわらず、市場に出回るプランの保障金額は非常に少ないケースが多くなるからだ。

 

 

共和党指導部が賛成票を集めきれなかった理由

 

議会予算局が先週初めに調査結果を公表すると、委員会採決を難なく通過させた時のような、代替法案を支持する動きが止まった。トランプ政権の高官と下院共和党が、下院本会議での審議の準備作業を始めるとすぐに、法案通過に十分な賛成が得られないことに気づいた。

 

共和党首脳は繰り返し、今回の代替法案は、共和党がオバマケアを撤廃する絶好のチャンスになると説得した。しかし共和党議員を取り込む作戦は失敗に終わった。理由はさまざまだが、共和党首脳は、利害関係が大きく異なる2つの共和党内グループと交渉したことも要因の1つに挙げられる。

 

「下院自由議員連盟」に代表される保守派グループたちはオバマケアの完全撤廃を求めており、代替法案にオバマケアの条項が一部そのまま残ることに不満を示した。保守派は、規制を撤廃しなければ保険料が下がることはないと譲らなかった。ただし、オバマケアによる規制と実際の保険料の高騰との間の関連性ははっきりしていない。

 

支持層が民主党寄りの州や、オバマケアの資金をメディケイド拡大に利用してきた州から選出された議員が中核となっている穏健派グループ「チューズデー・グループ」は、AHCAで大量の無保険者が生まれることを恐れた。そして、AHCAによって実際に保険料が下がったとしても、それが保険加入者の自己負担増で賄われるのではないかと懸念した。

 

端的に言えば、AHCAに関して、保守派はオバマケアの撤廃が不十分になることを恐れ、穏健派は影響が極端に大きくなることを恐れた。共和党内のあるグループから合意を得ようと共和党首脳が努力すればするほど、もう別のグループの反発を招く結果となった。

 

事態をさらに悪化させたのは、共和党が今回の議会手続きを「財政調整法」の規定で可決させようとしたことだ。これは、審議のスピードを速めるため単純過半数で法案を可決できるよう、民主党からフィリバスター(長時間演説)などの議事妨害を受けることなく共和党が上院で法案を通すことのできる緊急プロセスだ。

 

財政調整法の規定によると、このプロセスで調整できるのは、連邦予算に直接的な影響のある条項に限られている。そのため、共和党保守派が求めていた保険の補償対象に関する規則の撤廃など、規制変更の多くは除外される可能性がある。こうした規則には、予算支出を削減するための立法措置が改めて必要になる。

 

そして何よりも、共和党は日に日に高まる一般世論からの懸念に直面していた。複数の世論調査によると、AHCAに対する支持率は極めて低く、共和党が刷新を望み、保守派の間では軽蔑の対象となっていたオバマケアの人気が高まっていた。

 

採決直前になって、トランプ大統領と共和党首脳は、メンタルヘルスや産科での治療などあらゆる医療保険プランに保険適用を義務付ける「エッセンシャル・ヘルス・ベネフィット」(基本的医療給付)を除外し、こうした医療費のみを対象とする特別な基金を設ける形で法案を修正することで合意した。専門家からは、こうした変更によって健康保険市場が劇的に変化してしまう可能性があると警告した。保険会社が適用範囲を狭めた保険を提供するようになると、広範囲の医療サービスに適用される保険を見つけるのは困難になるからだ。

 

保険の補償範囲と連邦予算に関する変更の詳細は明らかにされていない。なぜなら、採決を急いだ共和党首脳が、議会予算局にこの変更による影響を分析する時間的余裕を与えなかったからだ。実際、323日の夕方まで、共和党首脳がこの変更内容を公表しなかった。

 

しかし、最終的には法案成立に向けた共和党首脳の努力は水泡に帰した。共和党首脳は、AHCA反対で一致した民主党を抑え込むために、「下院自由議員連盟」と「チューズデー・グループ」という2つのグループから十分な賛成票を引き出すための法案を提示できなかった。

 

「この法案は提案当初から間違いだらけだった」と、ジャスティン・アマシュ下院議員(共和党)は24日、ハフィントンポストUS版に語った。「責任ある行動とは、法律成立に向けて努力し続けることなんです。失敗したときに私はどうすればいいのかというと、やりつづけることなんです」

 

 

なぜ医療問題に関する論争は決着しないのか

 

今起こっていることに関係なく、医療保険制度は今後も論争の的となる可能性が高い。

 

オバマケアは歴史的な進歩だ。保険に加入していないアメリカ人の数を著しく減らし、医療サービスの利用が改善され、経済的な負担軽減を支えている。しかし、保険サービスに不満を持つ人も非常に多く、また、新たに規制を受けた保険市場が苦戦を強いられている州もある。ますます高騰する保険料、そして財務上の損失を受けて掛け金を引き上げている保険会社の影響だ。

 

オバマ政権は初期段階で、新制度を作って普及させることに莫大な労力を費やし、また問題が発生する度に改善に力を尽くした。現在、この市場を管理する責任はトランプ政権にあるが、政権の意図ははっきりしない。

 

トランプ氏はかつて、「政治的に言えば、共和党がとれる一番簡単な手段は、手を引いて、そのままシステムを運用させることだ」と繰り返し語っていた。「そうすれば制度は完全に崩壊する」と、トランプ氏は予測している。

 

(貼りつけ終わり)

 

 今回の法案では加入義務や罰則を廃止し、加入促進のための補助金を止めるという内容になっていました。共和党強硬派が「アメリカン・ヘルス・ケア・アクトは中途半端だ、生ぬるい、オバマケアの完全な撤廃ではない」と主張し、強硬に反対しました。また、共和党穏健派は「無保険者の数が増える」「選挙区の事情(自分の選挙区ではヒラリーが勝った)があるので、この法案では過激すぎて有権者から嫌われる」として反対者が出ました。また、民主党は、強大な敵に立ち向かうという心情もあり、一糸乱れず、反対となりました。

 

 取りまとめに奔走した連邦下院のポール・ライアン議長(ウィスコンシン州選出、共和党)には大きなダメージとなりました。そして、トランプ大統領の政策を共和党が止める力を持っていることが明らかになりました。

 

 今回、最後の場面で、連邦下院共和党の強硬派で作るグループであるフリーダム・コーカスのメンバーとトランプ大統領が会談を持ちながら、決裂という結果になりました。私はこうした交渉ごとは、共和党全国委員長をしていたレインス・プリーバス大統領首席補佐官や連邦下院議員を長く務め、元同僚も多いマイク・ペンス副大統領がするものと思っていましたが、彼らの存在は全くありませんでした。

 

 プリーバスはライアンと同じウィスコンシン州選出でまだ若く、連邦議員出馬という噂(ライアンをけん制するためにトランプ周辺から出されているかもしれません)もあります。また、ペンスはその手堅さや実直なイメージが受けて、次の2020年米大統領選挙の共和党候補でまず名前が挙がる人物となっています。彼らは、ダメージになりそうなことを巧妙に避けたということが考えられます。

 

 今回のオバマケア撤回法案で低所得者層を中心に無保険者が2000万人以上出るという研究結果も出ていました。この低所得者層が昨年の米大統領選挙でトランプに投票した訳ですが、トランプはこの人たちを裏切るような法案を提出したことになります。しかし、結局、議会共和党一部の反対にあったためにオバマケア存続ということになりました。私は、トランプはこのことを狙っていたのではないかと思います。トランプは土壇場で「早く採決して欲しい、ダメでもオバマケアがある」という発言をし、ライアン議長をせかしているようでした。これは、本当はオバマケアが良いのだけど、まさかそんなことも言えないから、反対させて、そのまま存続させようということなのではないかと対深読みをしたくなりました。

 

 今回、連邦議会共和党が大変に強硬であったのは、「おカネにつられた」ためです。私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)の主人公であるチャールズ・コーク、デイヴィッド・コークのコーク兄弟がトランプにダメージを与えようとして、「撤回法案に反対した政治家の選挙資金の面倒を見る」と発表していました。以下の記事をご覧ください。

 古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙ですが、様相は、トランプ包囲網という形になっています。民主党が反トランプなのは選挙ですから当然ですが、トランプの女性に対する発言の録音テープが出て以降、共和党の連邦議員たちから、トランプへの支持撤回や選挙の辞退を求める声が相次いでいます。彼らとしては、選挙で無党派や女性票が大事なので、トランプ支持では勝てないという判断だ、ということを行動の正当化の論拠にしつつ、元々嫌いであったトランプを降ろす絶好の機会だと考え、このような行動に出ていると思います。

 

 しかし、これは、下の記事でもありますように一種の「クーデター」です。党大会で正式に指名された候補者を、法律違反や犯罪行為以外で引きずりおろそうという動きは異常なものです。こんな内紛劇を見せられて、共和党支持者たちはどう思うでしょうか。トランプを攻撃している連邦議員たちを応援するでしょうか。私は、共和党議員たちは、墓穴を掘ったと思います。彼らはトランプを落選させる動きに加担して、結局自分たちも落選の憂き目に遭うことになるでしょう。


 なぜなら、国民の一定数を占めるトランプ支持者にしてみれば、彼らはもはやヒラリーや民主党と一緒だからです。ヒラリーや民主党はまだ「自分たちはあなた方とは違いますよ」とはっきりと掲げて戦っていますが、同じ共和党で一度は支持したのに今頃になって撤回となると、裏切り行為となってしまいますから、ヒラリーや民主党よりも怒りの度合いが強くなります。

 現在のところ、大統領選挙の情勢は、現在(2016年10月14日)のところ8対2でヒラリーがリードという状況だと私考えます。私は個人として、トランプを支持したいと思いますが、現在の状況はかなり厳しいと判断せざるを得ません。
 

 共和党は内紛、内戦状態をアメリカ国民に見せてしまっていることで、大きなダメージを負うことになります。熱心な支持者以外の無党派層にはアピールしない政党となってしまいます。そうなれば、共和党の存続すら危うくなり、アメリカの二大政党制が大きく揺らぐことになります。これは全く別の話になりますが、二大政党制について考えると、制度自体が疲労を起こしているように思えます。そして、日本も「二大政党制を実現するために、小選挙区制を導入する」ということで、現在の選挙制度を導入しましたが、これも再考する必要があると思います。

 

 大統領選挙まで残り1カ月を切りました。また、第3回の大統領選挙討論会も19日に開催されます。この期間で、「オクトーバー・サプライズ」が起きるのかどうか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

スクープ:トランプの選対本部長がライアンを政治的に破滅させたいと望んだ(Exclusive: Trump campaign CEO wanted to destroy Ryan

 

ジョナサン・スワン筆

2016年10月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/300445-exclusive-trump-campaign-ceo-wanted-to-destroy-ryan

 

ドナルド・トランプの選対本部長に就任した、右派のニュースサイト「ブライトバート」社の会長スティーヴ・バノンはブライトバート社のスタッフに対して、ポール・ライアン連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)を政治的に破壊せよという命令を公然と下した。

 

ブライトバート社で働いているある人物によると、編集会議の席上、バノンは「ポール・ライアンは敵だ」と常に語っているということだ。

 

2015年12月、ライアンが下院議長に就任して数週間後、バノンはブライトバート社内のEメール(取材の過程で本誌が入手済み)の中で、2016年の春までにライアンを失脚させることがブライトバート社の中期的な目標だと書いている。

 

2015年12月1日のEメールで、ブライトバート社ワシントン支局長マット・ボイルはバノンに対して、ライアンが精神衛生システムの改善を計画しているという話は、ライアンに対して「橋を架ける」ための良い方法だと提案した。

 

バノンはこの考えを却下した。

 

バノンはボイルに対して、「私は精神衛生に関する問題については賛成なのだ。もっと別の良いネタを取ってくるように記者たちの尻を叩くんだ」と答えた。

 

ボイルは「分かりました。しかし、私たちがライアンを攻撃するためには良い手掛かりだと思います。私たちは長い長い戦いをやっているのですよ、スティーヴさん」と答えた。

 

バノンは、「長期的な目標は彼を貼るまでに失脚させることだぞ」と答えた。

 

バノンがライアンを嫌っていることは他の記事でも書かれている。しかし、ライアンを失脚させようとして期限まで決めている内容のEメールが出てきたのは初めてのことだ。

 

バノンは選対本部長としてトランプに助言を行っている。

 

2016年10月11日、トランプは、月曜日にこれ以上トランプを擁護しないとし、連邦下院選挙で出来るだけ多くの共和党員の当選に注力すると述べたライアン議長に対する一連のツイート攻撃を行った。

 

トランプは「我が党の脆弱で全く働きのない指導者、ポール・ライアンに対して、幹部会議で彼の党に対する忠誠心のなさに対して彼のスタッフたちが怒りの声を上げた」とツイートした。

 

それから2時間後に「忠誠心のないR(ライアン)は、不正を働くヒラリーよりも更に始末に負えない。彼らは私たちを包囲しているが、勝ち方を知らない。私が勝ち方を教えてやる!」とツイートした。

 

トランプ選対に近いある人物は、バノンはライアンを攻撃しないようにと主張し、トランプは自分自身の考えでライアン攻撃を行った、ということだ。

 

しかし、投開票日までの残り数週間において、バノンが重要な役割を果たすであろうことは否定できない。

 

ブライトバート社の元社員は、バノンは常にライアンに対して怒っていたと語った。

 

バノンは、ライアンをエリートのグローバリスト勢力の指導者と考え、彼らは移民と貿易のために国境を開くことでアメリカを外国に売り渡そうとしていると考えている。

 

この人物は、「バノンは、ポール・ライアンについてアレックス・ジョーンズ級の偏執的考えを抱いている」と語った。アレックス・ジョーンズは右翼のラジオ司会者で、トランプ支持のウェブサイト「インフォウォーズ」を運営している陰謀論者だ。

 

この人物はバノンについて次のように語っている。「バノンはライアンに対して罵詈雑言を発し続けている。彼は、エリート主義者たちが世界政府の樹立を目論んでいるとし、ポール・ライアンがジョージ・ソロスやポール・シンガーと共にこの陰謀に加担していると考えている」。

 

本記事掲載にあたり、バノンにコメントを求めたが、返事はなかった。バノンと面識がある保守運等のある高名な人物は本紙の取材に対して、バノンのライアンに対する怒りは驚くべきことではないと語った。

 

この人物は「共和党への大口献金者と党の活動家たちの多くはもともとトランプを支持していなかったが、今はライアン議長に大変失望している。それは、我が国が大変重要な時期を迎えているのに、党の候補者を支持しないなどと表明したからだ」と語った。

 

バノンに近い別の人物は、カリフォルニア州選出の連邦下院議員ダナ・ローラバッカーに多くの共和党員がついていくことになるだろうと予測している。ローラバッカーは、ポール・ライアンがこれ以上トランプを擁護しないと述べたことについて、ライアンを「臆病者」と呼んだ。

 

バノンに近いある人物は、「ライアンにとって重要なのはアメリカの労働者とつながることではなく、既得権を持つ政治家クラスの一員としてウォール街とつながることなのだ」と語っている。

 

バノンの考えについてこの人物は更に次のように語っている。「アメリカ政治の全ての機関は、不正に満ち、そしてアメリカ国民の利益に反するように活動しているということが明らかにされている」。

 

この人物は続けて次のように語っている。「トランプはこの悪の帝国とたたかうために選挙を戦っている。選挙マシーンは全力でトランプに立ちはだかっている。そして、ポール・ライアンは悪の帝国の象徴なのだ。ヒラリー・クリントンもまたそうなのだ。更には主流派メディアとその味方もそうなのだ」。

 

ワシントンの共和党エスタブリッシュメントは、トランプとライアンとの間の「戦争」がどれほど汚いものとなるか、恐れを抱いている。バノンはそのトランプの側に控えている。

 

バノンは、トランプを引きずりおろそうとする計画の首謀者であったが、計画は失敗したと確信している。バノンがこのように考える理由として、ライアンが共和党をポピュリズムから遠ざけたいとしていること、ライアンが2020年の大統領選挙で共和党の候補者となる可能性を高めたいとしていることが挙げられる。

 

2016年7月、ライアンは予備選挙でウィスコンシン州の実業家ポール・ニーレンと激しく戦い、それをブライトバートが詳しく報じた。ブライトバートは、ウェブサイトに「ライアンは偽善者だ。それはジェーンズヴィルにある彼の大邸宅の周囲に“境界の壁”を建設しているからだ。それなのに、彼はアメリカの南の国境に壁を建設することに反対しているのだ」という記事を掲載した。

 

ライアンはイスラム教徒の入国禁止というトランプの計画に反対した時、ブライトバート社はそれを偽善だとして激しく非難した。その理由として、ライアンはアメリカ入国に際して「宗教テスト」を行わないように求めているが、彼自身は子供たちを入学に際して宗教テストを課しているカトリックの学校に通わせていることを挙げている。

 

ライアンは共和党の予備選挙では地滑り的勝利を収めて、共和党の下院議員選挙候補者となった。しかし、この時、ブライトバートは彼の追い落としのための材料を真剣に集めていなかった。バノンはブライトバート社のエース記者ボイルをウィスコンシン州ジェーンズヴィルに派遣して、ライアンの選挙戦について記事を書かせている。

 

2016年10月10日、ブライトバートはトップで次のような記事を掲載した。「決別の言葉:トランプの卑猥な発言を録音したテープは、共和党内部の反ドナルドのクーデターの一部だ。その証拠として、ポール・ライアンがトランプと一緒に舞台に出る前にこのテープが出たのは“偶然”ではない」。

 

2016年10月11日、バノンは本誌に対して、「ブライトバート社は草の根捕手運動の世界において、槍の穂先のような存在になっている」と語った。

 

バノンと長年にわたり一緒に働いてきたある人物は、バノンが共和党のエスタブリッシュメントをどれほど破壊するかについて過小評価をすることは馬鹿げたことだと述べている。

 

バノンと仲違いをしてブライトバート社を去ったベン・シャピロは「バノンは破壊のための道具のようなものだ」と語っている。

 

彼は更に次のように語っている。「バノンは常にすべてを燃やし尽くしたいと思っている。彼はポール・ライアンを打ち倒すための方法を何とか見つけようとしている。そして、彼はそれを最終的には成功させるだろう」。

 

トランプの火曜日のライアン攻撃ツイートについて質問され、ライアンのスポークスマンは次のように答えた。「ポール・ライアンは残り1カ月、民主党を倒すことに集中する。選挙を戦う全ての共和党員もまた選挙に集中すべきだ」。

 

ライアンの報道担当ザック・ローディは、ライアンが月曜日に連邦下院の共和党議員たちに対して、「彼は大統領選挙について妥協してはいない」と明確に述べたことを強調した。

 

ライアンはトランプ支持を維持しているのかと質問され、ローディは「現在まで彼の立場についての更新はない」と答えた。

 

こうしている間にも、戦いは激しさを増している。

 

バノンに近いある人物によると、バノンがトランプのために立てた戦略は、トランプに反対している共和党とエスタブリッシュメント・メディアを「迂回」して、アメリカの労働者に直接語りかけるというものであった。

 

これが正確に何を意味するのかは不明確だが、トランプの戦略の中に、バノンの影響を見て取ることが出来る。それは、日曜日の夜の討論会に、ビル・クリントン元大統領に性的な被害に遭ったと主張する女性たちを招待することであった。

 

トランプ陣営は「危険」というタイトルのコマーシャルを放映し始めた。このコマーシャルでは、ヒラリー・クリントンが咳をし、階段を上がるのに人の手を借り、SUVに乗る直前に倒れた姿を流している。

 

残りの数週間で、ある一つのことは確かだと言える。それは、トランプがブライトバート社のスタイルで選挙戦を戦うだろうということだ。トランプの傍らにはブライトバートを率いてきた人物がいるのだ。

 

シャピロは次のように語っている。「これは映画のキング・コングのシーンのようなものだ。共和党はキング・コングを捕えて、鎖につないでステージに上げている。それを見ている観客たちは全員、キング・コングの大変な力を恐怖しながら、舞台上を見ている」。

 

シャピロは最後に「キング・コングが鎖を壊して自由になったら、観客たちを踏み潰し始める」と語った。

 

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メラニア・トランプはスキャンダル後にトランプと一緒にテレビ出演を拒絶した(Report: Melania refused to do joint TV appearance with Trump after tape scandal

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2016年10月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/300106-report-melania-trump-refused-to-do-a-joint-tv-appearance-with

 

ドナルド・トランプの過去の女性に対する卑猥な発言についてのスキャンダルが明らかにされた時、メラニア・トランプは夫と一緒にヴィデオに出演して声明を発表することを拒絶した、と『ニューヨーク・タイムズ』紙が日曜日に報じた。

 

金曜日に『ワシントン・ポスト』紙が2005年のテープについて報じた直後、ドナルド・トランプの選対はトランプ夫妻が一緒にカメラの前に出て、スキャンダルについて声明を発表するように提案した。

 

トランプ選対の匿名の人物がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、メラニア・トランプは夫と一緒にヴィデオに出て声明を発表することに関心を持たなかったということだ。

 

この一緒にヴィデオに出て声明を発表するというアイディアは、1992年に、ジェニファー・フラワーズがビル・クリントンと長年にわたり不倫関係にあったと告白したことを受けて、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントンが一緒にCBSの番組「60ニミッツ」に出演したことを反映したものであった。

 

共和党の最高幹部やテープの会話で対象となったナンシー・オドネルからの更なる非難を受けて、メラニアと一緒に声明を発表するというアイディアはすぐに撤回されたとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

テープの中で、トランプはオドネルやその他の女性と関係を持とうとしていることについて私的な会話を展開していた。

 

トランプは次のように語った。「君も分かっているように、私は自然に美人を惹きつけてしまうんだよ。そしてすぐにキスをするのさ。磁石みたいな感じかな。ただキスをする。そしてそこからすぐに次に進む。スターだったら、女たちはさせるのさ。なんでもできる。女性器を掴むことだってね」。

 

トランプは彼の発言について公開されたヴィデオの中で謝罪した。そして、日曜日の討論会ではこの問題について再び発言することになる。

(貼り付け終わり) 

 


(終わり)









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