古村治彦です。
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先日、『ニューヨーク・タイムズ』紙がトランプ政権の閣議において、マルコ・ルビオ国務長官と政府効率化省を率いるイーロン・マスクが衝突したと報じられた。マスクはルビオが何もしていないと怒り、ルビオはマスクが米国国際開発庁(USAID)を閉鎖すべきと主張したことについて激怒しており、言い合いになったということだ。その他にもシーン・ダフィ運輸長官とマスクが衝突したということも伝えられている。USAIDに関しては、ルビオが国務長官就任早々に一部予算停止を行ったが、そのことよりもマスクが閉鎖を主張したことの方が取り上げられて面白くないのだろうと考えられる。
イーロン・マスク率いる政府効率化省のスタッフたちは第2次トランプ政権発足直後から、各政府機関を「急襲」し、人事や予算などの情報を収集している。スタッフたちには腕利きのハッカーもおり、コンピュータに隠されている秘密情報などにもアクセスしているということだ。政府効率化省は連邦政府の人員整理や各機関の縮小や閉鎖を主導しており、官僚たちにとっては脅威になっている。
トランプに対して忠誠心が厚い閣僚たちも、マスクにばかり注目が集まるのは面白くないことだろう。自分が長官として主管する各省の人員整理や予算削減については、自分が主導して行い、手柄にしたいところに、マスクが荒らしまわっているということになる。また、マルコ・ルビオに関しては、まだ大統領選挙出馬に色気があるのだろうと考えられる。今のところ、J・D・ヴァンス副大統領がトランプの後継者と見られているが、ルビオも以前の大統領選挙に出馬した経験を持ち、大統領の座を簡単にあきらめたくはないだろう。しかし、戦後、国務長官出身者で大統領になった人物はいない。ルビオは国務長官への使命を受諾した時点で、大統領になることは諦めておくべきだろう。しかし、閣僚全体のマスクへの不満を代表する形で衝突することで、存在感を増すという狙いもあったのではないかと考えられる。トランプ大統領はうまくマネイジメントをしようとしている。このような状況は彼にとっては日常茶飯事にあったことだろう。
トランプの手綱さばきがどのようになるか注目されるが、第1次政権よりも第2次政権の方が安定してうまく行っているように見える。
(貼り付けはじめ)
ルビオ、マスクがトランプ政権の閣議で衝突:『ニューヨーク・タイムズ』紙報道(Rubio,
Musk clash at Trump Cabinet meeting: NYT)
フィリップ・ティモティジァ筆
2025年3月7日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5183121-rubio-musk-clash-at-trump-cabinet-meeting-nyt/
マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ大統領主催の閣議で、ハイテク業界の大富豪でトランプ大統領の側近であるイーロン・マスクと衝突した。
6つの大企業を率いる世界一の大富豪であるマスクは、前上院議員のルビオを叱りつけ、国務省の職員の多くを解雇しなかったこと、そして彼は「テレビでは良いが(good on TV)」、それ以外ではほとんど何もしていないことを痛烈に批判したと『ニューヨーク・タイムズ』紙は金曜日に、この出来事を知る5人のインタヴューを引用して報じた。
ルビオは個人的にはマスクに対してしばらく前から「激怒(furious)」しており、特に政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)が、100カ国以上で数十億ドルの安全保障、人道、開発援助を管理する機関である米国国際開発庁(U.S. International Development Agency)の閉鎖を視野に入れていることから激怒しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
スコット・ベセント財務長官が出席しなかった木曜日の閣議でルビオは反撃した。
国務長官ルビオはマスクが真実を語っていないと主張した。ニューヨーク・タイムズによると、ルビオ長官は早期退職した国務省職員1500人以上を解雇の対象として数え直す必要があるのかと質問したということだ。
ますますヒートアップしたやりとりの後、トランプ大統領はルビオ長官を擁護するために介入した。大統領は、国家トップの外交官が「素晴らしい仕事(great job)」をしていると賞賛し、彼はメディアへの出演が多く、過密なスケジュールをこなしており、なおかつ国務省を監督しなければならないと述べたとニューヨーク・タイムズは報じた。
トランプは金曜日にこの爆発的な報道について質問された。彼は、ルビオとマスクが争ったことを否定し、両者とも良い仕事をしていると賞賛した。
トランプは「衝突はない、私はそこにいた、君はただのトラブルメーカーだ。それに、そんな質問をすべきではない、ワールドカップの話をしているのだから」と述べた。
「イーロンはマルコと仲が良く、2人とも素晴らしい仕事をしている。衝突はない」と、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノを横に置いて、トランプは付け加えた。
その数分後、大統領は再び木曜日の会談について質問されたが、この質問には直接答えなかった。
トランプ大統領は記者団に対して、「二人とも素晴らしいほど仲がいい。マルコは国務長官として信じられないようなことをやってのけた。そしてイーロンはユニークな男で、素晴らしい仕事をしている」と述べた。
国務省のタミー・ブルース報道官はニューヨーク・タイムズに、ルビオ長官は「この閣議は、アメリカを再び偉大な国にするという同じ目標を達成するために団結したダイナミックなティームとのオープンで生産的な話し合いだったと考えている」と語った。
閣議の中でトランプ大統領は、雇用や予算削減を推進するのは閣僚であるべきだが、マスクはアドヴァイザーとしてそこにいるのだと繰り返した。
「閣僚たちにはまず、望む人全員を留めてほしい。必要な人全員をそうして欲しい」とトランプ大統領は木曜日、大統領執務室で記者団に語った。
「私は彼らにできる限りの最高の仕事をするように望む。優秀な人材がいるのは貴重で、とても重要なことだ。私たちは彼らにその優秀な人材を維持してもらいたい。だから私たちは彼らを監視するつもりだ。イーロンとグループも彼らを監視するつもりだ。削減できるなら、それが一番いい。そして削減しないなら、イーロンが削減するだろう」とトランプ大統領は付け加えた。
木曜日に対立した閣僚はルビオだけではない。
シーン・ダフィ運輸長官と航空宇宙大手スペースXを率いるマスクは、連邦航空局(Federal Aviation Administration、FAA)が航空機を追跡するために使用する機器の条件や、それを改善するために必要なことについて対立したとニューヨーク・タイムズが報じた。また、ハワード・ラトニック商務長官は、このやり取りでマスクを支持したと付け加えた。
ダフィは、DOGEのスタッフたちが航空管制官(air traffic controllers)を解雇しようとしたと述べたが、ニューヨーク・タイムズによると、マスクはこの主張は「嘘」だと述べた。
元下院議員の運輸省長官ダフィは、マスクは間違っていると述べた。億万長者マスクはダフィに対し、運輸省の職員が解雇しようとした管制官の名前を挙げるよう求めたとニューヨーク・タイムズは報じた。
ダフィはまた、空港の管制塔には多様性、公平性、包括性(diversity,
equity and inclusion、DEI)の取り組みによって採用された労働者が配置されているというマスクの主張にも反撃した。
ニューヨーク・タイムズが金曜日に報じたところによると、この騒動はまたもやトランプが口を挟み、ダフィにマサチューセッツ工科大学から「天才(geniuses)」を連れてきて航空管制官として働かせなければならないと告げたことで終わった。
ニューヨーク・タイムズが金曜日に報じた後、ダフィは声明を発表し、トランプ大統領が「生産的な(productive)」会合を開いてくれたことに感謝し、DOGEがこれまで行ってきた仕事を賞賛した。
「DOGEは、航空管制システムの重要なアップグレードに取り組んでいる私たちに助言を与えるだけでなく、各機関が非効率な部分を特定するのを手助けする素晴らしい仕事をしている」とダフィは書いている。
ダフィはまた、木曜日の会合で当局者たちは「特にFAAと航空管制官の」航空旅行の安全について議論したと書き、FAAのDEI部門は「2日目に」解体されたと付け加えた。
ダフィは、連邦政府の人員削減に対するトランプのアプローチを「革命的(revolutionizing)」であると賞賛し、運輸省はマスクおよびDOGEと「緊密に(closely)」協力して「政府の運営方法に革命を起こす(revolutionize the way government is run)」と述べた。
今週初め、ダグ・コリンズ退役軍人長官は、退役軍人省が約7万2000人、つまり全職員の15%を削減する計画であることを確認した。この動きは、連邦議会および全国の州から反発を招いている。
トランプ大統領は会談でコリンズ長官と、退役軍人省の雇用削減に関しては慎重なアプローチを採用すべきだという点で合意し、トランプ大統領は退役軍人省は「賢い者たち(smart ones)」を残し、「悪い者たち(bad ones)」を排除すべきだと付け加えたとニューヨーク・タイムズは報じている。
大統領は木曜日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で、閣僚会議が「積極的なもの(positive)」であったと述べ、「最高の」「最も生産的な」人材を維持するためのコスト削減イニシアティヴについて「DOGEと協力する」よう各閣僚に伝えた。
トランプは、「私たちは『斧(hatchet)』ではなく、『メス(scalpel)』と言っている。彼ら、イーロン、DOGE、その他の偉大な人々の組み合わせは、歴史的なレヴェルで物事を行うことができるだろう」と書いている。
ホワイトハウスのキャロライン・リーヴィット報道官は本誌に対し、「トランプ大統領が述べたように、これは連邦政府全体のコスト削減策と人員配置について話し合うための、大統領のティームのメンバー間での素晴らしく生産的な会議だった。トランプ大統領が政府をより効率的にするという公約を実現するため、全員がひとつのティームとして働いている」と語った。
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』