古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:マーク・ザッカーバーグ

 古村治彦です。

 本日、2021年11月25日に私が翻訳しましたジョシュ・ホウリー著『ビッグテック5社を解体せよ』(徳間書店)が発売になります。以下に推薦文、目次、訳者あとがきと、ビッグテック各社に関する反独占のバイデン政権の人事についての記事をご紹介します。参考にしていただいて、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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ビッグテック5社を解体せよ 

(貼り付けはじめ)

推薦文

この度(たび)、今のアメリカでビッグテック解体の急先鋒であるジョシュ・ホウリー Josh Hawley の『ビッグテック5社を解体せよ』の邦訳が出ることを、私は心の底から喜ぶ。

ジョシュ・ホウリーは、1979年生まれで、38歳で上院議員選挙に当選した。私は彼に注目した。彼は一貫してトランプ前大統領に忠実だ。ホウリーはミズーリ州の司法長官を務めた真面目なインテリの大秀才だ。

彼が書いた本の書評を読むと、その中身が「ビッグテックを解体せよ」 Break Up Big Tech だと知った。是非日本でも出版すべきだと考え、この度徳間書店から、私の弟子の古村治彦(ふるむらはるひこ)君に翻訳の話があり古村君が丁寧かつ正確に翻訳した。

本書は、最大手出版社のサイモン&シュスター Simon & Schuster から出版されるはずだった。だがホウリーは今もトランプ派であることを理由にして出版を取り止めた。この決定の裏にはビッグテック5社、特にフェイスブックからの強い「要請」があったとされる。 

その後ホウリーはサイモン&シュスターと和解して、シカゴの老舗の出版社で、保守思想の名門のレグナリー社 Regnery Publishing から、2021年5月に出版された。出版されるとすぐにニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー1位になった(2021年6月)。ビッグテックの一角のアマゾンでもベストセラー入りした。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙の民主党寄りのリベラル新聞書評では、「内容が不正確」と悪口を書かれた。それを跳ね飛ばしてベストセラー入りを続けたことは痛快だった。

「ビッグテックを解体せよ」の動きは、ドナルド・トランプ前政権が、2020年10月にグーグルを独占禁止法違反で訴えたときから始まった。12月にはフェイスブックを従業員に対する差別的処遇で訴えた。次のバイデン政権も「ビッグテック解体」の動きを受け継ぎ強力に継続している。ビッグテック解体のために3人の若い人間が台頭した。1人目は、FTC(連邦取引委員会 Federal Trade Commission)委員長になったリナ・カーン(Lina Khan 1989年生)女史だ。何とまだ32歳の才媛である。リナ・カーンはイエール大学法科大学院(ラー・スクール)在学中の2017年に、イエール・ラー・レヴュー誌に Amazons Antitrust Paradox 「アマゾンの反独占のパラドックス」という論文を発表して注目を浴びた。内容は「現在の独占禁止法では、価格の面ばかりが強調されている。安い商品とサーヴィスを売りさえすれば正義(ジャスティス)だ、ということはもはや無い。アマゾンが実際に行っている反競争的な諸行為を取り締まるべきである」と書いた。

FTC(連邦取引委員会)の委員長に抜擢されたリナ・カーン(32歳)。イエール大学法科大学院在学中の2017年に「アマゾンの反独占のパラドックス」という論文を書いて一躍注目された才媛。ビッグテックの独占体制を叩き潰す司令塔である。

2人目は、司法省(ジャスティス・デパートメント)の独占禁止法担当の次官補(assistant attorney general for the antitrust division)に指名(現在、人事承認中)されたジョナサン・カンター(Jonathan Kanter 1973年生。48歳)だ。ジョナサン・カンターは弁護士として長年中小業者の代理人となりグーグルやアップルとの裁判を闘ってきた。司法省は2020年10月にグーグルを独禁法違反で提訴した。2023年から公判が始まる。司法次官補になったカンターがこの責任者を務める。

3人目は、ティム・ウー(Tim Wu 1972年生。49歳)だ。ティム・ウーの父親は中国系の移民で、カナダの名門マクギル大学を卒業し、ハーヴァード大学法科大学院を修了した。その後、いくつかの大学で教鞭を執り、2006年からコロンビア大学法科大学院教授。ティム・ウーは、前述したFTC委員長に就任したリナ・カーンとコロンビア大学で同僚である。ティム・ウーはホワイトハウスの国家経済会議(NEC(エヌイーシー))に入り、テクノロジー競争政策担当の大統領特別補佐官(special assistant to the president for technology and competition policy)に就任した。ウーが2021年7月に出た大統領令(executive order(エグゼクティヴ オーダー))を書いた。ホワイトハウスからビッグテックを八つ裂きにする仕事をする。

これに呼応して、立法府のアメリカ連邦議会から、ビッグテック解体の戦いを進めるのが、本書の著者ジョシュ・ホウリーだ。ホウリーは、上院の司法委員会に所属し、独占禁止法(米ではAnti Trust Act(アンチ トラスト アクト))小委員会に入っている。委員長は、2020年の大統領選挙の民主党予備選挙に出馬した、エイミー・クロウブシャー(Amy Klobuchar 1960年生。61歳)議員(ミネソタ州選出)だ。クロウブシャーはクソ真面目な女性政治家としてアメリカ国民の信頼が厚い。本書『ビッグテック5社を解体せよ』と同時期に、クロウブシャーも『独占禁止』 Antitrust という本を出版した。民主、共和両党の上院議員2人が、同趣旨の本を出すのは、「独占禁止法違反だ」とからかわれて話題になった。2人は対ビッグテックということで強力に協力する。

このようにビッグテック包囲網、ビッグテック解体の準備が着々と進んでいる。特にフェイスブックのマーク・ザッカーバーグに対する攻撃は厳しい。プラットフォーム(巨大窓口)を利用者に無料で使わせて、個人情報を集め、集めた膨大なデータを利用者に断りなくアルゴリズム(コンピュータの計算方法)に当てはめて、個人の嗜好や性格まで分析する。それを広告収入に結び付けて大きな利益を出す。世の中のために何も作らない虚業(きょぎょう)に対する怒りが高まっている。ジョージ・オーウェル(George Orwell 1903~1950年。46歳で没)のディストピア(絶望郷)小説『1984年』に出てくる「ビッグ・ブラザーがあなたを見張っている」をもじった「ビッグテックがあなたを監視している」 Big Tech Is Watching You!’である。 本書『ビッグテック5社を解体せよ』は、アメリカの独占禁止の歴史から、ビッグテックの危険性についてまでの全体を描いている。現在アメリカで何が起きているかの最新の情報を得ることができる。本書は、アメリカ政治の最新の動きを日本に伝える。私が本書を強力に推薦する所為(ゆえん)である。

 2021年10月

                                    副島隆彦

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ビッグテック5社を解体せよ──目次

推薦文 1

序文 Preface 15

第一部

第一章 独占の復活 The Return of the Monopolies 24

●共和政体の守護者セオドア・ルーズヴェルトの敗北 30

●大企業優先自由主義に支配されてきたアメリカ 41

第二章 泥棒男爵たち The Robber Barons 46

●独占資本家たちによる大企業優先自由主義に導いた「泥棒男爵」 50

●巨大ビジネスの先鞭をつけた鉄道事業 53

●企業家たちは自由な競争より独占を選んだ 65

●市民の自立こそが共和国の源泉 71

第三章 最後の共和主義者 The Last Republican 76

●一部のエリートに支配されない自由を確保するのがアメリカの共和主義 80

●大企業経営者たちに挑んだセオドア・ルーズヴェルト 91

第四章 大企業優 先自由主義の大勝利 The Triumph of Corporate Liberalism 97

●企業の巨大化を進歩だと考えたウィルソン 99

●ウィルソンが変質させた自由 105

●ウィルソンによって骨抜きにされた独占禁止法 118

第二部

第五章 依存症に苦しむアメリカ Addicting America 126

●インターネット依存症を蔓延させた罪 132

●こうして市民は単なる消費者に変えられた 144

第六章 反社会的メディア Anti-Social Media 158

●SNSの最大の被害者は子供たち 160

●ネットは怒りを増幅させる装置 171

第七章 検閲担当者たち The Censors 184

●ザッカーバーグと議会で直接対決 188

●ニューズキュレイターによって操作されるニューズ 201

●トランプ当選で半狂乱になったグーグル社員がとった行動 206

●地球最大のニューズ配信装置となったビッグテック 212

●リベラル派の教育機関としてのビッグテック 224

第八章 新しい世界秩序 New World Order 227

●グローバル経済から最大の利益を上げる 230

●中国と結びついたビッグテック 237

●独占から利益を引き出す厚かましいやり口 239

●グローバライゼーションの勝者と敗者 249

第九章 不正操作されているワシントン Rigging Washington 253

●書き換えられた通信品位法第230条がビッグテックの楯となった 255

●ワシントンのエリートを使った強力なロビイング活動 261

●エリートの、エリートによる、エリートのための政府 267

第三部

第十章 私たち一人ひとりにできること What Each of Us Can Do 274

●子供たちにスマホを与えない決断 276

第十一章 新しい政治 A New Politics 286

●グーグルとフェイスブックは独占禁止法違反の容疑者 290

●「追跡をするな」という権利を我らに与えよ 300

●人々を依存状態にする機能を廃止させよ 304

●個人に訴訟する権利を与えよ 306

●アメリカの自治のシステムを回復させよ 308

訳者あとがき 310

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訳者あとがき

本書は、Josh Hawley, The Tyranny of Big TechRegnery Publishing, 2021)の邦訳だ。本書の英語での原題を直訳すれば、「ビッグテックの暴政(ぼうせい)」や「ビッグテックの暴力的支配」となる。しかし、邦題は『ビッグテック5社を解体せよ』とした。それは、著者であるホウリーが実際に使っている言葉であり、本書の内容を簡潔に表していると考えるからだ。

著者のジョシュ・ホウリーについて簡単に紹介する。ホウリーは1979年生まれの41歳。アーカンソー州生まれで生後すぐに父の仕事の関係でミズーリ州に転居した。子供の頃から成績優秀、大いに目立つ存在で、周囲の大人や友人たちは、「ジョシュは将来アメリカ大統領になるに違いない」と噂していたという。

ホウリーは1998年に西部カリフォルニア州の名門スタンフォード大学に進学した。大学を優秀な成績で卒業し、2003年にアイヴィーリーグの名門イェール大学法科大学院に進学した。在学中は、成績優秀者しかなれない学内誌の編集委員を務めた。2006年に法務博士号を取得し、弁護士(法曹)資格を得て、アメリカ合州国最高裁判所主席判事ジョン・ロバーツの事務官からキャリアを始めた。その後は弁護士事務所に勤務し、ミズーリ大学法科大学院准教授として教鞭(きょうべん)を執った。

2017年からミズーリ州司法長官を務めた。この時期に、ビッグテックの危険性を認識し、2017年11月、グーグルがミズーリ州の消費者保護法と独占禁止法に違反した容疑での捜査を開始した。2018年4月には、フェイスブックとケンブリッジ・アナリティカによるデータ取り扱いに関するスキャンダル(フェイスブックが収集した個人情報をケンブリッジ・アナリティカ2016年の大統領選挙に利用してドナルド・トランプ大統領当選に貢献した)を受け、フェイスブックの捜査を行った。このときに他の州の司法長官たちに一緒に戦おうと呼びかけたが誰も反応しなかった、と彼は本書の中で述懐している。

2018年の中間選挙でのミズーリ州連邦上院議員選挙で共和党の候補者となり、当時現職だった民主党の候補者を破り、連邦上院議員となった。ホウリーは当時のドナルド・トランプ大統領からの強力な支持を得た。これが初当選の後押しとなった。ホウリーは、連邦上院司法委員会の独占禁止法小委員会に所属し、「ビッグテック解体」に向けた超党派の包囲網の一員として活躍している。委員会では、ビッグテックの経営陣を召喚(しょうかん)し、不正行為などを厳しく追及している。

本書は大きく分けて三部構成となっている。第一部は第一章から第四章までで構成されている。第一部では、独占monopoly(モノポリー)の出現と繁栄の歴史を詳述している。1870年代から鉄道産業や石油産業を中心に、巨大企業による独占によって、「泥棒男爵」と呼ばれた資本家たち(代表的人物はジョン・P・モルガン)は莫大な富を蓄積した。それと同時に、資本家たちは独占を正当化するために、「大企業優先自由主義corporate liberalism(コーポレイト リベラリズム」というイデオロギーを生み出した。

こうして独占が正当化され、そうした動きに抗うことが難しくなっていく中で、独占に立ち向かったのが、ホウリーが傾倒しているセオドア・ルーズヴェルト大統領(第26代)だった。しかし、彼の闘いは失敗に終わった。

その後、ウッドロウ・ウィルソン大統領(第28代)が出現し、大企業優先自由主義を称賛し、「個人の自由とは個人的な生活の中に限定される。政治に参加する必要はない。また、物質的な豊かさを保証するのは政府と大企業の役割だ」という考えを定着させた。結果として、経済的に自立し、政治参加する普通の人々が力を持ち、統治する政治体制である共和政治体制が危機に瀕することになった。

アメリカの共和政治体制が危機に瀕したこの時期と、現代の状況が酷似(こくじ)しているということを著者であるホウリーは私たちに訴えている。彼がビッグテック解体を叫ぶのは、人々に損害を与える独占の解消ということももちろん理由にあるが、現状が続けば共和政治体制 republic(リパブリック)と民主政治体制democracy(デモクラシー)の護持(ごじ)が困難になるという危機感がその根底にある。

第二部は第五章から第九章までで構成されている。第二部では、ビッグテック各社が、アメリカ社会や経済、そしてアメリカの人々一人ひとりに、いかに損害を与えているかを、多くの具体的な事例を挙げて説明している。

「ツイッターやグーグル、フェイスブックは利用者に無料で使わせているが、どうやって利益を出しているのか」、「広告収入が大きいと聞いたことがあるけれど、どうなっているのか」という疑問を皆さん方も持たれたことがあると思う。第二部では、ビッグテックのビジネスのからくりと実態が明らかにされている。多くの方に自分のこととして、驚きといささかの不快感を読み取ってもらえるはずだ。

ビッグテック、特にソーシャルネットワーク・メディアのプラットフォームplatform(巨大窓口)の最大手フェイスブックのビジネスモデルとは、簡単に言えば、「利用者にプラットフォームを利用させて集めた個人データを断りもなく勝手に使って、より洗練された広告を行うことで、金(かね)に換えている。その副産物として、人々の精神に悪影響を与えている」ということになる。

ビッグテックの共通のモデルは次の通りだ。あらゆる種類の個人データを膨大に集め、それをアルゴリズムalgorithm(コンピュータの計算方式)に当てはめて、利用者よりも早く、その人が欲するものを導き出して、それに合った内容の投稿や記事、そして広告を表示する。その過程で、既存のマスメディアや小売業者に圧力をかけて記事や商品を提供させる。また、ビッグテック、特にフェイスブックは、個人データとアルゴリズムを使って、選挙の際に有権者の投票行動をコントロールしている。また、ビッグテックのプラットフォームが日常生活の中に浸透していき、人々、特に子供や若者たちの精神に悪影響(自殺やうつ症状の増大など)を与えている実態も詳細に紹介されている。

第三部は、第十章と第十一章で構成されている。第三部では、私たちはビッグテックからの悪影響からいかにして自分たちを守るか、そして、アメリカの共和政治体制と民主政治体制をいかに守るか、修復していくかということが書かれている。ホウリーが家族で行っている取り組みは私たちの参考になる。その内容は、スマホやパソコンを一定の時間を決めて使わないこと、子供たちには携帯機器を使わせないで外で遊んだり、一緒に本を読んだりすること、家族や友人、ご近所との付き合いを大切にすることだ。ホウリーは「これこそがビッグテックとの戦いにとって重要な力になる」と述べている。

 ごく当たり前の簡単なことであり拍子抜けしてしまう。しかし、現代において、この当たり前で簡単なことを実行することが難しい。また、スマホやパソコンに何時間も触らないことも難しい。携帯機器に触らないと不安な気持ちになってしまう人も多いはずだ。これは、ビッグテックのプラットフォームや携帯機器が私たちの生活に深く浸透していることを示す証拠だ。本書の中に使われている表現を使えば、私たちは、体の中に溜まったビッグテックからの影響(毒素)を外に排出するために、断食をしなくてはいけない。

本書の校正作業中、「フェイスブックが社名をメタMetaに変更する」というニューズが飛び込んできた(2021年10月29日)。創業以来最大の逆風が吹き荒れる中で、名称変更と仮想空間へ軸足を移すことで危機(内部告発や広告収入の減少など)を乗り越えたいという意図があるとニューズ記事で解説されている。ホウリーをはじめとする政府や議会で形成された「ビッグテック解体」に向けた超党派の包囲網によって、フェイスブックは苦境に陥っている。

ホウリーは2024年の大統領選挙の共和党候補者予想に名前が挙がる人物だ。ある調査では、ドナルド・トランプ、マイク・ペンスに続いて3位につけるほど、知名度と人気が高まっている。ホウリーは共和党に所属しているが、大企業寄りの主流派・エスタブリッシュメントには与していない、トランプ支持派のポピュリストPopulistであることが分かる。

ポピュリズムPopulismとは悪い意味の言葉ではない。日本では大衆迎合政治などと訳されてマイナスイメージだが、本当はそうではない。機能不全に陥った、腐った中央政治に対しての、草の根の人々からの異議申し立て運動のことだ。彼を押し上げ、ワシントンに送り込んだのは、アメリカのごく普通の人々だ。

 ホウリーは「普通のアメリカ人が力を持ち、政治に参加して、共和国としてのアメリカの運命を決めよう」ということを主張している。ジョシュ・ホウリーはこれから、アメリカ政治で存在感を増していき、やがて大統領になるかもしれない。是非これからも注目していきたい楽しみな人物だ。

最後に師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には、力強い推薦の言葉をいただいだ。また、本書の翻訳にあたり、徳間書店学芸編集部の力石幸一(ちからいしこういち)氏には大変お世話になった。記して深く感謝申し上げます。

 2021年11月

                           古村治彦(ふるむらはるひこ)

 

(貼り付け終わり)

 

(貼り付けはじめ)

独占禁止とビッグテックについて、バイデンは自身の中道派のルーツに戻らねばならない(On antitrust and big tech, Biden must return to his centrist roots

ダニエル・A・クレイン筆

2021年4月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/technology/547921-on-antitrust-and-big-tech-biden-must-return-to-his-centrist-roots

アメリカ合衆国大統領は、独占禁止法とビッグテックをめぐる激しさを待つ議論に介入できる、限定された権限を持っている。その中でも最も重要なのは、連邦取引委員会(FTC)と司法省反独占局(Justice Department Anti-trust Division)という反独占機関の責任者を指名することだ。バイデン大統領は既にこのオプションを実行している。連邦取引委員会委員長にリナ・カーンを指名し、同様の決定として、国家経済会議(NEC)の反独占の責任者(czar)にコロンビア大学のティム・ウー教授を指名した。

カーンとウーは独占禁止についての賢明な、そして実績を積んだ思想家である。それぞれ取引委員会委員長と大統領特別補佐官に選ばれたのは当然だ。しかし、両者は、反独占に関する新ブランダイス主義派出身であり、このグループについては民主党内部でも議論が起きている。バイデンが自分の政権の反独占政策の運命を新ブランダイス派に結びつけたいと思わないのなら、連邦取引委員会委員長や反独占担当司法次官補など他の重要な人事には、異なる哲学的方向性を持つ人物の起用を検討すべきだろう。

反独占の動きは、ビッグテック各社に対する追加訴訟を提起するかどうかから、法改正の可能性、基本的な目的に至るまで、あらゆることが問われる極めて重要な瞬間に立たされている。概して言えば、反独占に関しては大きく3つのグループが存在する。

一つ目の陣営は、実業界に好意的な保守派と呼びたい。このグループは、現在の反独占に関する諸政策と諸原理はほぼ正しく、反独占に関する劇的な変化は経済効率、消費者の福祉、技術革新、経済的自由、そして世界におけるアメリカの国益に脅威を与えるだろうと考えている。二つ目のグループは、改革志向の中道派と呼びたい。このグループは、反独占の動きは消費者の福祉と経済効率に集中すべきだという点で一つ目のグループに同意している。しかし、改革志向の中道派は、現行の反独占の法執行と法律上の諸原理は、独占と支配的な企業に対してあまりにも許容的だと考えている。改革志向の中道派は、政府や民間の原告が訴訟を起こしやすくすることで、独占禁止法の施行を再び活性化させようとしている。最後に、新ブランダイス主義者陣営は、独占禁止法の執行を再活性化することをやはり望んでいるが、消費者の福祉と経済効率の分離されない追求こそが問題の根っこにあると考えている。アメリカ最高裁判事を務めたルイス・ブランダイスの哲学である、巨大さの呪い(The Curse of Bigness)に従い、新ブランダイス主義者たちは、消費者の利益を明らかに脅かすかどうかにかかわらず、企業の支配に異議を唱えるために反独占の動きを展開したいと考える。

これら3つのグループについて興味深いことは、これらのグループの相違が党派の相違のラインに沿ってはいないということだ。政治的に右派の立場を取る人々の多く(彼ら自身は自分たちを新ブランダイス主義者と呼んではいない)は、社会的そして政治的発信についてのビッグテックの強力な支配を打破することといた社会的そして政治的な目的を達成するために独占禁止法を機動的に使用せよと訴えている。対照的に、政治的に左派の立場に立つ人の中には、ビッグテックと協力関係を持ち、過度に攻撃的に反独占政策を進めるとビッグテック製品に大きく依存している有権者たちからそっぽを向かれるのではないかという懸念を持っている人たちもいる。私は、ビッグテックを排除するとそこに力の空白が生まれて結果としてリベラルな政治観に対して共感を持たない企業がそれを埋めてしまうのではないかという懸念の声を多く耳にしている。

こうした政治的な複雑さを考えると、バイデンが新ブランダイス主義者たちとだけ協力するというのは賢い選択ではないということになる。彼が実業界に好意的な保守派を反独占に関する人事で起用することはないというのは明らかだ(選挙結果というのは影響力を持つ!)。しかし、反独占の動きの中に改革志向の中道派を入れることは考慮すべきだ。この結論を支持する2つの重要な理由が存在する。

一つ目の理由は、原理原則に関わることだ。反独占に関しては軌道修正(course correction)が必要だということは幅広いコンセンサスが得られている。しかし、完全な見直し(wholesale re-thiking)が必要だということは動揺のコンセンサスが得ら得ていると結論付けるのは時期尚早だ。新ブランダイス主義者たちが席を占めているのは明らかだが、改革志向の中道派にも席を与えられるべきだ。

二つ目の理由は現実的なものだ。新ブランダイス主義の立場がより広範な政治的な支持を得られるか全く不透明であり、このグループと政権があまりにも緊密な関係を持つことは政治的なリスクを伴うことになってしまう。ニューディール時代、ルーズヴェルト大統領は、独占禁止や競争、大企業について様々な見解を持つ人々を政権内に配置するという現実的な決断を下した。政治的な風向きや現場での事実の変化に応じて、様々な人々に責任者としての役割を求めた。もしバイデンが新ブランダイス主義者たちと感懐を深めれば、ルーズヴェルトのような選択肢は持てないことになる。

独占禁止に関する大きな決断がこれから待っている。ホワイトハウスは、柔軟に対応できるような形で人事を行うべきである。

※ダニエル・A・クレイン:ミシガン大学フレデリック・ポール・ファース記念講座教授

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ビッグ・テック(Big Tech)とは、GAFAと総称される。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、これにツイッターやネットフリックスを加えた、アメリカで操業され、本社を置く情報産業分野の巨大企業のことである。ビッグ・テックは先進諸国を中心にして、人々の生活に深く入り込んでいる。

ツイッターやフェイスブックは私たちの生活にとって欠かせないサーヴィスとなっている。これらを通じて友人とやり取りをし、情報を得ている。アマゾンでは何でも買い物ができるようになっている。アップルのスマートフォンであるアイフォンを使い、何か分からないことがあればグーグルで検索する。テレビを見ずに、ネットフリックスでドラマやヴァラエティー番組を見る。若い人たちはそのような傾向にあるという。動画配信サイトユーチューブはグーグルの傘下にあり、写真を中心としたソーシャル・ネットワーク・メディアであるインスタグラムはフェイスブックの傘下にある。

 私たちの生活はビッグ・テックに大きく依存している。そうなれば、ビッグ・テックが私たちに与える影響も大きくなる。加えて、ビッグ・テックは大きな力を行使するようになっている。また、時価総額ではこれまでの大企業を追い抜いている。これらを使用している人たちなら分かってもらえると思うが、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブ、インスタグラムは無料で使用できる。それなのにどうして巨額の利益を生み出せるのかというと、それは広告収入だ。

 これまで広告の媒体と言えば、新聞や雑誌の紙媒体、テレビやラジオの放送媒体が中心だった。しかし、新聞や雑誌の購読者数の減少、テレビやラジオの視聴者数、聴取者数の減少により、広告は徐々にインターネット上に移っている。そのために、ビッグ・テックは巨額な利益を上げることができるようになっている。

 そうした中で、アメリカ国内では、「ビッグ・テックを反独占・反トラストで解体せよ」という声が上がっている。連邦議会議員では、共和党のジョシュ・ホーリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)とエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)がその急先鋒だ。両議員はほぼ同時期に「ビッグ・テックの巨大さは危険だ、解体せよ」という内容の本を出版した。現在、私はジョシュ・ホーリー議員の『The Tyranny of Big Tech』(そのまま訳すと、ビッグ・テックの暴政、暴力的支配)の翻訳を進め、初めの訳稿を完成し、担当編集者に送付した。これから、表現の統一や誤字脱字の訂正、ブラッシュアップのために赤ペン入れを行う。
joshhawley501

ジョシュ・ホーリー
 ホーリー議員は1979年生まれの41歳。アーカンソー州生まれで生後すぐに父の仕事(銀行勤務)の関係でミズーリ州に転居した。子供の頃から成績優秀、外見もハンサムで、周囲は「将来はアメリカ大統領になるに違いない」と考えていたという。1998年に母親の出身校である西部カリフォルニア州にあるスタンフォード大学に進学した。ここでも成績優秀で卒業し、2003年にアイヴィーリーグの名門イェール大学法科大学院に進学した。超名門のロースクールに進学するためには学部時代の成績が4点満点で3.8から3.9なければならず、日本風に言えば「全優」でなければならない。法科大学院在学中は、学内誌の『イェール・ロー・ジャーナル』誌の編集委員を務めた。学内誌の編集委員も成績が良くなければ務められないポジションだ。バラク・オバマ元大統領はハーヴァード大学法科大学院時代に学内誌の編集長を務めた。2006年に法務博士号を取得し、弁護士(法曹)資格を得た。

 2017年からはミズーリ州司法長官を務めた。この時期に、ビッグ・テックの危険性を認識した。2017年11月、ホーリーは州司法長官として、グーグルがミズーリ州の消費者保護法と独占禁止法に違反した容疑での捜査開始を指示した。グーグルの利用者のデータ収集、データ利用についての捜査が実施された。また、グーグル使っての検索の際に、利用者にバイアスを与えるような検索結果の表示がなされているのではないかということも捜査の対象となった。2018年4月には、フェイスブックとケンブリッジ・アナリティカによるデータ取り扱いに関するスキャンダル(フェイスブックが収集した個人情報をケンブリッジ・アナリティカが利用して2016年の大統領選挙に利用してドナルド・トランプ大統領当選に貢献した)を受け、ホーリーはフェイスブックの捜査を行った。

 2018年の中間選挙でミズーリ州連邦上院議員選挙に出馬し、共和党予備選挙で圧勝し、本選挙で民主党所属の現職議員(2期連続当選中)だったクレア・マカースキルを破って当選した。2019年から2021年までの期間、アメリカ連邦上院で最年少の議員となった(当選時39歳)。
markzuckerberg501

ワシントン訪問中のザッカーバーグ
  議員当選後、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグと直接対決し(ホーリーの議員事務所をザッカーバーグが訪問した)、「フェイスブックが持っているインスタグラムとワッツアップ(アメリカの
SNSサーヴィス)を売却して欲しい」「フェイスブックを解体して欲しい」と直接述べて、拒絶されている。ホーリーは連邦上院司法委員会内の反トラスト・競争政策・消費者の権利小委員会の共和党側委員を務めている。小委員会の委員長は、エイミー・クロウブッシャー議員だ。
amyklobuchar 501

エイミー・クロウブッシャー
 ホーリーは彼の経験をまとめて本として出版することになったが、最初の出版社である、大手の「サイモン・アンド・シュスター」社が、ホーリーが2021年1月6日の連邦議事堂での事件に関与したということで出版を拒絶した。その後、保守派の出版社「レグナリー・パブリッシング」社が出版を引き受け、出版にまで漕ぎつけた。出版された本はベストセラーとなった。

現在、民主・共和両党で、巨大になり過ぎたビッグ・テックと対峙する動きが出ている。これから、このブログでも紹介していきたい。

(貼り付けはじめ)

ジョシュ・ホーリー議員の「出版取り止めとなった」本が現在ベストセラーに躍進(Josh Hawley’s ‘canceled’ book now a bestseller: reports

-『ビッグ・テックの暴力的支配(The Tyranny of Big Tech)』が出版からわずか数週間で、『パブリッシャーズ・ウィークリー』誌とアマゾンのベストセラーリスト入りを達成。

ドン・カリッキオ筆

『フォクスニュース』

2021年5月16日

https://www.foxnews.com/media/josh-hawleys-canceled-book-now-a-bestseller-reports

ミズーリ州選出のジョシュ・ホーリー連邦上院議員の履歴書に、新たに「ベストセラー作家」という言葉が加わることになる。

メディアの複数の記事や報告によると、共和党所属の連邦上院議員ホーリーは最近『ビッグ・テックの暴力的支配(The Tyranny of Big Tech)』を出版し、成功を収めている。

『パブリッシャーズ・ウィークリー』誌のハードカヴァー・ノンフィクション部門で、ホーリーのシリコンヴァレー批判書が第6位にランク付けされた。2万部以上を売り上げた。

この本はまた、アマゾンの「今週の最も売れたそして最も読まれた本ベスト20」部門で、15位にランクしている。

ホーリーの本がベストセラーのランキングに入ったことは、出版社のサイモン・アンド・シュスター社がホーリーの本の出版を取り止めた1月の状況からの大逆転のようなものだ。出版が取りやめになった際、ホーリーは、出版社の決定について「アメリカ合衆国憲法修正第1条への直接的な攻撃」と表現した。

ホーリーはその当時に次のように書いている。「サイモン・アンド・シュスター社は私との契約を破棄した。その理由は、私が自分の選挙区の有権者たちを代表し、連邦上院の議場で選挙結果の正当性についての議論を主導したためだ。出版社は私の正当な行動を反乱(sedition)と再定義したのだ」。

サイモン・アンド・シュスター社は、ホーリーの本の出版を取り止めたのは、2021年1月6日の連邦議事堂における暴動に関連して、「危険な脅威におけるホーリーの役割」が証明されたからだと発表した。

ホーリーが連邦議事堂前に集まった群衆の中で、議事堂に向かって手を挙げている写真が広く拡散されて、そのために、ワシントンDCにおける破壊とホーリーが結び付けられることになった。

保守派の出版社レグナリー・パブリッシング社は、サイモン・アンド・シュスター社が契約を破棄した後、ホーリーの本の出版権を取得した。

本の中で、ホーリーは、今日の情報産業の巨大企業と過去の泥棒男爵たちとを比較し、「大企業がこれからも経済と政治における力を増大させ続けることを許すと、アメリカの自由は存亡の危機に晒されることになるだろう」と書いている。

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テクノロジーという点についてのクロウブシャーとホーリーはどのように見ているか(How Klobuchar and Hawley See Things When It Comes to Technology

-両議員は政治的な立場は正反対であるが、両者は出した最新刊で共にビッグ・テックは危険だと主張している。奇妙なことに、両者の主張はそっくりだ。

シラ・オヴァイデ筆

『ニューヨーク・タイムズ』紙

2021年5月13日

https://www.nytimes.com/2021/05/13/books/amy-klobuchar-antitrust-josh-hawley-tyranny-big-tech.html

皆さん、米連邦上院議員が書いた反トラスト法に関する本を読んでみたいと思われないだろうか?読みたくないとおっしゃる?2人の議員の反トラスト法に関する本はいかがだろうか?

共和党所属のジョシュ・ホーリー連邦上院議員(ミズーリ州選出)と民主党所属のエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出)は最近それぞれ本を出版した。両議員の本のページ数を合わせると825ページになるが、両者の本はアメリカの大規模で強力な企業に対する懐疑主義の歴史についての本である。

私は2冊とも読んだが、皆さんにお薦めすることはしない。

しかし、これら2冊の本が素晴らしいのは、政治的な立場が正反対である2名の連邦上院議員が一致した結論に達している点だけにある。両議員は、アメリカの巨大過ぎるビジネスのエリートたち、特にグーグル、フェイスブックそしてアマゾンのようなテクノロジー関連巨大企業を従順にさせるために、より厳しい規制、新しい法律、より積極的な姿勢の判事や市民運動が必要だと主張している。2冊の本の略語は、「テディ・ルーズヴェルトは善で、ビッグ・テックは悪だ」というものだ。

私は過剰な偽装工作をしたいと思わない。クロウブシャー議員の著作『反トラスト(Antitrust)』はより深く調査され、包括的なものだ(いささか包括され過ぎている)。ホーリー議員の著作『ビッグ・テックの暴力的支配(The Tyranny of Big Tech)』は支離滅裂な内容である。しかし、2冊の本を読んで私が学んだことを説明させて欲しい。
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両議員は「巨大さ」は悪ということで一致している。現代のアメリカ政治における奇妙な光景、それは、グーグルやフェイスブックのような強力なテクノロジー企業が、党派をまたいだ憎悪を生み出していることだ。こうした主張を行っている人々に共感者はほとんどいないだろう。両議員は特にそうであろう。両議員にとって、テクノロジー企業の力は、巨大企業が好き勝手に行動することを放置した場合の問題点を象徴している。奇妙なことに、両議員の主張は一致している。

ホーリー議員の本は冒頭で、2019年にマーク・ザッカーバーグと会った際に、上院議員がザッカーバーグに対してフェイスブックの解体を迫ったという逸話で始まる(ザッカーバーグはもちろんノーと答えた)。ホーリー議員は「ビッグ・テックの泥棒男爵たちは、経済界や政府の内部に存在する、巨大さと力の集中を信奉するイデオロギーを背景にして、力を伸ばしてきた」と書いている。

クロウブシャー議員は次のように書いている。「ビッグ・テックが実施している膨大な数のM&A(合併と買収)、桁外れの独占力、グロテスクな排除行為は、巨大さの力を例示するものだ」。

皆さんは、両議員の本の内容はよく似ていると思われないだろうか?

ホーリー議員とクロウブシャー議員は、経済学者や法学者の中には、アメリカの多くの産業分野で集中が加速していることは、所得格差をはじめとする多くの問題の根本原因になっているという見解を示す人とたちが出ていると述べている。この考えによると、アメリカの法律が効果的に競争を行わせることができれば、アメリカ人はより良い医療を受け、携帯電話の料金は下がり、自分に関わるデジタルデータの扱いをより自由にできるようになるということだ。

いやはや、両議員はテディ・ルーズヴェルトを愛している。両議員は、ルーズヴェルトが当時の鉄道、石油産業、金融、その他の産業分野における大企業の泥棒男爵に挑戦していた時のことについて、郷愁を感じている(このような歴史観、特にホーリー議員の歴史観は少しずれている)。

英雄崇拝の重要な点は、歴史上、アメリカの法律とアメリカの一般的な人々は、力を持ち過ぎたと感じた大企業に対して戦いを挑んできたというものだ。両議員は、企業の「巨大さ」に反発する、市民と政府の犯行の精神を取り戻したいと考えている。これは、法科大学院教授で独占禁止の主唱者であるゼファー・ティーチアウトが、昨年出版した企業の独占に関する本の中で効果的に指摘している点でもある(そうなのだ、反トラストについての本は数多く出版されている)。

1894年に起きたプルマン・ストライキと南北戦争後に起きた農業の独占に反対する、グランジ運動(農民共済組合運動)についてじっくりと読みたい方は、クロウブシャー議員の本を読むと良い。両議員は、企業の独占が人々の生活に及ぼす影響を、影響を受ける人々に見てもらい、関心を持ってもらおうとしている。両議員が共有しているメッセージは、システムや経済が自分のために機能していないと感じている人たちは、反トラスト法に取り組むべきだということだ。

最良の考えなのは、それを「反トラスト」と呼ぶことを止めるということだ。クロウブシャー議員は、反トラストという言葉はスタンダード石油のような19世紀の巨大企業の産物であり、21世紀を生きるアメリカ人にとっては無意味な言葉だと述べている。彼女の発言内容は正しい。クロウブシャー議員は、競争政策や独占、あるいは単に「大きさ」について語り始めるべきだと述べている。そうなのだ、クロウブシャー議員は、自身の本のタイトルを「反トラスト」にしていることは認めている。

連邦議会についてはどうだろうか?両議員は、政府の監視部局や裁判所は、巨大記企業がより巨大になり、力を濫用することに制限を加えることに失敗したという点で一致している。この問題について、両者ともに自分たち自身や同僚の政治家たちを非難するための十分な時間を取っている訳ではない。

立法府の仕事は、法律を書き、各企業にできることとできないことを示すことだ。そして、司法省のような政府の監視当局に予算をつけ、ルールを強制する権限を与えることで、力を強めることだ。言い換えると、「上院議員のお二人、それはあなた方の仕事でしょうが」ということだ。両議員はそれぞれの本において、ビッグ・テック各社を規制するための法案を準備中だと述べている。しかし、そのような法案を通過させることができなかったことや、そもそもその法案が良い内容だったかどうかについては、あまり語られていない。

クロウブシャー議員は、2017年に、フェイスブックなどのインターネット企業に、従来のメディアの情報開示と同様に、組織が政治広告にどれくらい費用を支出しているかを開示させる法案を主導しました。これは成立しなかった。

両議員は自分たち自身のことを話す時は絶好調だ。クロウブシャー議員は、19世紀末にスロヴェニアから移民してきて、過酷な環境と低賃金で、炭鉱で働いた自身の親戚たちについて話をする。彼女の言葉によると、一般的な市民が悪辣な大企業と戦い、独占を抑制して労働力の真の競争を実現するための法律を請願したからこそ、今の彼女があるのだ、ということになる。

ホーリー議員の話に説得力が増すのは親としての心配を話す時だ。私たちのほとんどと同じく、彼もスマホに多くの時間を使ってしまっており、そのことを子供たちが気付いているということを述べている。ホーリー議員は、幼い息子がスマホやタブレットに夢中になっているのを見て悩み、家族がスクリーンに割く時間や関心に敏感であろうとしている。

ホーリー議員は、私たちが最新の情報機器を常に使うことで頭脳に異常をきたすということよりも、ビッグ・テック各社の力に対して不満を持っているようだが、これが正しいかどうか私には分からない。スマートフォンやパソコンの画面を見ている時間の長さによる影響についてはよく分かっていない。しかし、ホーリー議員の考えには耳を傾けるべき点がいくつもある。スクリーンを通じてのつながりだけではなく、現実の生活共同体を大事にする、政府が介入して、人々に終わりなく、延々とスクロールさせる技術やユーチューブやティックトックで使われている次から次へとヴィデオを自動的に勧めてくる技術を禁止させるようにすべきだ。

推薦図書:なぜ薬に高いお金を払うのかを知りたい人や、子供がインスタグラムに夢中になることを心配している人には、私は2人の議員の本を手渡さないだろう。その代わり、似たような内容でありながら、より短く、より読みやすく、強力な企業が世界に与える影響について深く考える人々の間ですでに影響力を持っている2つの作品を紹介したい。

ティム・ウーの2018年の本『巨大さの呪い(The Curse of Bigness)』は短い、分かり易く。魅力的な本である。その本の中で、ウーは、アメリカの独占の歴史と今日の強力な企業によるリスクを取り上げている(私はこの本を短いと述べただろうか?)。リナ・カーンの2017年の法科大学院の論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス[逆説]Amazon’s Antitrust Paradox)」は知的な砲弾である。この論文の中で、カーンは、数十年にわたるアメリカの法律の発展と、アマゾンのような新興の巨大企業の力の影響についてアメリカの法律はいかに対処に失敗してきたかを述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 

 ピート・ブティジェッジがいよいよ2020年大統領選挙民主党予備選挙へ出馬を正式に表明することになりそうです。それでは、今までもう候補者のように扱われてきたのは何だったのか、ということになりますが、2019年1月23日に発表したのは準備検討委員会(Exploratory Committee)です。


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※ブティジェッジの集会への参加呼びかけのヴィデオはhttps://www.facebook.com/watch/?v=361805897864971からどうぞ。

 エリザベス・ウォーレンも昨年末に準備検討委員会を発足させ、後に正式な出馬ということになりました。準備検討委員会発足と正式な出馬表明とはどう違うか、ということになりますが、実質的には何も変わりません。準備検討委員会が政治献金を受け取ることは可能ですし、ここに何か大きな区分があるということはありません。

 

 これは私見ですが、2回出馬表明が出来るということで、メディアに取り上げてもらいやすいということがあるのかなと思います。ブティジェッジが準備検討委員会を発足させた時には大きな話題になりませんでした。せいぜい「若い、同性愛者を公言している田舎町の市長」というだけのものでした。しかし、上り調子の中で、正式な出馬表明、おそらく多くの人々がサウスベンド市に集まって集会となると、メディアもこぞって取材に来て、大々的に報じるでしょう。後出しじゃんけんみたいですが、人々に印象付けることになるでしょう。ここまで計算していたとなると、相当な人物、ただの田舎町の市長ではないということになります。


 また、地理的に見て、ミシガン湖畔ということで、民主党の金城湯池シカゴから多くの参加者があるでしょう。シカゴはバラク・オバマ前大統領と夫人のミシェル・オバマの本拠地ですから、オバマ前大統領を押し上げた人々が参加する可能性もあります。オバマ前大統領がサプライズで来ると、選挙の様相は大きく変わりますが、ジョー・バイデン前副大統領が出馬すると見られていますから、その可能性は低いでしょう。しかし、オバマ前大統領はブティジェッジを民主党期待の若手として挙げています。


 ブティジェッジは、フェイスブック(Facebook)のページでヴィデオを公開していますが、ブティジェッジとフェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg、1984年―)は、ハーヴァード大学の2年違いの先輩後輩(ブティジェッジが2歳年上)であり、友人です。ザッカーバーグは2017年にサウスベンド市をサプライズ訪問しています。


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MSNBCの「モーニングジョー」という番組の司会者ジョー・スカーボローが注目し、自身の番組に呼んで、それからCNNがタウンホールミーティング形式の番組に呼び、それから人気に火が付き始めたので、3月に入ってからということになります。スカーボローは、バラク・オバマ前大統領に初めて会った時以来の印象を受けた、と述べています。




 バラク・オバマ前大統領も退任直前の『ニューヨーカー』誌の取材で、「民主党の期待の若手は誰ですか?」と質問され、名前は忘れていたようですが、「インディアナ州サウスベンド市の市長」と答えたということです。別の場所に行く際に立ち寄って、ブティジェッジに会って印象に残ったということのようです。オバマ前大統領の地元シカゴとサウスベンド市は、アメリカの感覚では近いということもあるでしょう。

 

 この無名の若者が一気に駆け上がっていく、というのは、昨年の中間選挙で、すい星のように現れたアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)とよく似たプロットになっています。ブティジェッジの方がより緻密に計算し、計画しているように感じます。


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 ブティジェッジとアレクサンドリア・オカシオ=コルテスにはいくつか共通点があります。(1)ミレニアル世代(1980年代から90年代中盤生まれの世代)であること(ブティジェッジは1982年生まれ;AOCは1989年生まれ)。(2)政治に関心を持つ、入るきっかけがバーニー・サンダース連邦上院議員であったこと(ブティジェッジは高校生の時にサンダース[当時は連邦下院議員]を主題に政治の寛容と統合に関する論文を書き、ケネディ財団主催の論文コンクールで優勝;AOCは2016年の大統領選挙でサンダースの選挙運動に参加した)。(3)学生時代(ブティジェッジはハーヴァード大学、AOCはボストン大学)に故テッド・ケネディ連邦上院議員の事務所で夏休みにインターンをしていたこと。(4)民主党エスタブリッシュメント、ヒラリー派とは一線を画していること(ブティジェッジの方がまだ穏健で、2010年の州財務長官選挙、2017年の民主党全国委員会委員長選挙で落選しているが、党内の人脈づくりを行っている)。

 

 ミレニアル世代の若手政治家たちの台頭は注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブティジェッジが2020年米大統領選挙民主党予備選挙の正式表明を示唆(Buttigieg hints at formal 2020 announcement

 

マイケル・バーク筆

2019年4月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/437304-buttigieg-hints-at-formal-2020-announcement

 

民主党所属のインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは火曜日午前、今月後半に2020年米大統領選挙民主党予備選挙への正式な出馬表明を行うことを示唆した。ツイッター上で、2019年4月14日に「特別な発表」を行うと明らかにした。

 

ツイッター上に掲載したヴィデオの中で、ブティジェッジは、次のように述べた。「私たちの選挙運動は「できるだけ多くの皆さんの話を聞いて、皆さんの持つ物語や考え、未来のあるべき姿、皆さんの政治指導者への期待を共有してきました」。

 

「アメリカが新しい方向に進んで欲しいと人々が願っていることは明らかです。そのためには選挙に勝つだけではなく、時代を勝ち取る(winning an era)のです」。

 

「私たちの政治をより誠実にする、民主政治体制を修復す、人種に関する正義を擁護する、未来に目を向ける、各世代をまとめる、こうしたことの準備が出来ている皆さん、2019年4月14日にサウスベンドに集まりましょう」。

 

ブティジェッジは木曜日にABCの「グッドモーニング・アメリカ」に出演し、「あなた(訳者註:司会者ジョージ・ステファノポロスはビル・クリントン元大統領の側近だった)が昔関わった発表と同じものとなるでしょう。サウスベンドで私たちの運動に参加したいと思って下さる方々にできるだけ多く集まっていただけるのを楽しみにしています」と語った。

 

アメリカ大統領に自分がふさわしいと考えている点はどこかと質問され、ブティジェッジは「ワシントンに数年もしくは数十年漬かり切ってしまう」ことがこれまでの伝統だったかもしれないが、それはもう違うと述べた。

 

ブティジェッジは「アメリカ政府が良く運営されている市や町のように運営されるならば、私たちの生活はより良くなることでしょう。市や町がアメリカ政府の真似をしたら私たちの生活がより良くはならないですよ」と述べた。

 

ブティジェッジは37歳、2019年1月に準備検討委員会発足を発表した。それ以降、人気が上昇している。彼の選対は2019年の第一四半期に約700万ドルの献金を集めた。

 

2020年米大統領選挙民主党予備選挙への正式な出馬表明すると、今でも10名以上出馬している選挙戦にまた一人参加することになる。

 

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最新の世論調査でブティジェッジの好感度が急上昇(Buttigieg's favorability surges in new poll

 

ジョン・バウデン筆

2019年4月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/436934-buttigiegs-favorability-surges-in-new-poll?fbclid=IwAR1eVOc9TRDBc0upYW3XMBIvWpgvM6Y0882pDcFIyPP_9XAdO7uVLEqbNWc

 

火曜日に発表された世論調査の分析によると、インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジは、過去2カ月間で大統領選挙民主党予備選挙の候補者たちの中で、好感度が最も高い伸びを示した。

 
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上から2番目(+11%)

morningconsultpolling190402003

「モーニング・コンサルト」社は火曜日に発表したプレスリリースで、ブティジェッジの好感度が2019年2月初旬に2020年の大統領選挙民主党予備選挙の候補者たちの好感度調査を開始して1カ月で11ポイント上昇したと発表した。

 

ブティジェッジは、彼の名前を実際に書くと答えた人の割合が3%と支持率の低い候補者たちの中に入ったままだが、ブティジェーグは政治に興味関心を持ち、大統領選挙民主党予備選挙を注目している人々の支持率は少し高い(7%)。


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ブティジェッジは支持率の面で大物たちを追いかけている。立候補すると見られているジョー・バイデン前副大統領は33%の支持率を獲得し、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は25%で第2位につけた。

morningconsultpolling190402001

 

ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は8%で同率3位につけた。

 

モーニング・コンサルト社の世論調査は、2020年の米大統領選挙民主と曜日選挙に参加予定の登録済み有権者1万2940人を対象に実施した。誤差は1%だ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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