古村治彦です。
アメリカに関しては外交政策に注目が集まっている。「ドンロー主義」というモンロー主義と棍棒外交を足して、再植民地化という要素を掛け合わせた、アメリカの新たな外交政策は、各国から脅威と見られている。ドナルド・トランプ大統領が外交に注力しているのは、国内問題から目を逸らさせるためだ。国内には大きな不満が溜まり、不安定な状況になっている。不法移民摘発から火がつきそうな国内での暴力や生活費が下がらないインフレ状況は、トランプ政権を苦しめている。結果として、移民(有色人種)や外国を攻撃することで、不満を逸らさせるという、古典的な方法を採用している。
MAGA派の中で分裂があったのは、ジェフリー・エプスタイン事件の文書、エプスタインファイルの公開をめぐってのことであった。トランプ大統領は選挙期間中、エプスタインファイル公開を公約に掲げていた。しかし、大統領就任後には、エプスタインファイルは存在しないと述べ、批判者たちを「弱虫」と呼んだ。誰もが、エプスタインファイルにトランプの名前があって、未成年の女性たちとの性的な関係があったのだろう、だからファイルを公開できないのだろうと推測した。トランプ大統領のこれまでの行状から、それくらいは織り込み済みで、それが暴露されたからと言って、支持が大きく減ることはないとも言えた。ここからは私の推測だが、エプスタインファイルにはイギリス王室やイギリス貴族たちの名前があったのだろう。アンドルー元王子に責任を全部負わせているが、更なる重要人物たちの名前があったものと推測される。トランプ大統領が当選してから、二度もイギリスを訪問し、チャールズ国王を先頭に大変な歓迎であったことは、口止めをお願いしてのことだったのではないか。エプスタインファイルは結局公開されたが、のり弁当のように一面真っ黒な文書もあった。「被害女性のプライヴァ氏―を守る」ということにすれば、重要な部分を消して公開することも可能だ。
アメリカ国内のインフレ(物価高)、生活苦の影響を一番に受けているのはMAGA派、失業している白人労働者たちである。彼らの中から「こんなはずでなかった」とトランプ支持を止める人たちも出てきている。同時に、「トランプの進める世直しはこれからが本番だ」と支持する人たちもいる。こうして、支持基盤に分裂が起きることになる。そして、支持派はどんどん過激になっていく。先鋭化していく。アメリカ社会の分断は続き、アメリカの衰退は進むことになる。
(貼り付けはじめ)
抑制されない過激主義がMAGAを内部から分裂させている(Unchecked extremism is tearing MAGA apart from within)
スヴァンテ・マイリック筆
2025年11月10日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/campaign/5595297-maga-movement-antisemitism-controversy/
MAGA運動にとって、この1カ月は厳しい月だった。有権者たちがトランプ大統領と同調する候補者を拒否する一方で、MAGAの指導者たちは、運動にどの程度の反ユダヤ主義的偏見(antisemitic
bigotry)や過激主義(extremism)を受け入れるべきかを巡って互いに争っていた。これは決して好ましい状況ではない。
論争の中心となったのは、元FOXニューズ司会者のタッカー・カールソンが、ヒトラーとスターリンを崇拝するネット上の有名人ニック・フエンテスに親近感を持って行ったインタヴァューだった。フエンテスは、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視、白人キリスト教ナショナリズム、暴力の脅し、そしてアメリカ民主政治体制がファシスト独裁政治に取って代わられることへの切望(racism, antisemitism, misogyny, white Christian nationalism, threats
of violence and a yearning for American democracy to be replaced with a fascist
dictatorship.)を日々発信し、疎外された若い白人男性の間で支持を集めてきた。
フエンテスは右翼系ポッドキャスト番組に出演し、インタヴュアーたちの助けを借りて評判を高め、過激主義を軽視してきた。カールソンはFOXニューズを去って以来、極右の熱狂的な支持基盤にどっぷり浸かってきたため、彼がフエンテスをより幅広い聴衆に届ける手助けをする人物になったことは、それほど驚くべきことではなかった。
驚くべきは、MAGA運動においておそらく最も影響力のある団体であるヘリテージ財団のケヴィン・ロバーツ会長が、保守派がカールソンとフエンテスとの軽率なインタヴューを非難し始めた後、公にカールソンを擁護せざるを得なくなったことだ。
ロバーツは水面下で仲間を擁護しただけではない。彼は、保守運動はカールソンやフエンテスを「キャンセル(cancel)」すべきではないと宣言するヴィデオ映像を録画した。ヘリテージ財団と有料メディア関係にあるカールソンは、シンクタンクの「常に」親しい友人であり続けると明言した。
それだけでも十分に良くないのだが、ロバーツはさらに踏み込み、カールソンを批判する人々を「悪意のある連合(venomous coalition)」で、「グローバリスト階級(globalist
class)」の一部だと非難するという、典型的な反ユダヤ主義の比喩を使った。
ロバーツのヴィデオは、ヘリテージ財団内、そしてその支持者や政治的同盟者の間で怒りと混乱を引き起こした。彼が公私ともに謝罪したにもかかわらず、この混乱は続いている。
ロバーツとカールソンは親密だ。ロバーツは昨年の共和党全国大会でヘリテージ財団のイヴェントにカールソンを特別講演者として招待した。カールソンは聴衆に対し、「キリスト教徒を殺す(kill Christians)」ことを望む人々との「精神をめぐる戦い(spiritual
war)」に臨んでいると述べた。
カールソンはJ・D・ヴァンス副大統領の大ファンでもあり、トランプにヴァンスを副大統領候補に選ぶよう勧めた。そして、ヴァンスもカールソンをホワイトハウスに招待し、チャーリー・カーク暗殺後に自身が司会を務めた番組「チャーリー・カーク・ショー」に出演させた。カールソンの息子はヴァンスのために働いている。
MAGAの継承者を目論むヴァンスは、運動の一部が求める「右翼に敵なし(no enemies to the right)」の立場を取らざるを得ないだろう。ロバーツは動画の中でこの立場を支持しているように見えた。そのため、ヘリテージ財団のスタッフの中には、保守派の大きな組織がカールソンやフエンテスのような人物を排除できないことを意味するのかと疑問を呈する者もいる。
ヴァンス自身もいかがわしい仲間と交流し、極右の人物たちと付き合っている。その中には民主政治体制に敵対する者もいれば、フエンテスとそれほど変わらない見解を持つ者もいる。
ヴァンスは最近、共和党の若手党幹部グループの間で流出したテレグラムのチャットで明らかになった人種差別的・ナチス的な感情を軽視した。この発言に対する超党派の激しい非難の中、ヴァンスは「子供」や「少年」の間で交わされた冗談を「大袈裟に誇張している(pearl clutching)」と揶揄した。
しかし、彼らは子供ではなかった。ほとんどが24歳から35歳までの大人であり、ヴァンスは人々に彼らを許すよう促していた。トランプ政権が人種差別や陰謀論を助長する高官たちを許してきたのと同じだ。
さらに最近、ヴァンスは「ターニングポイントUSA」のイヴェントで講演した。ある質問者は、アメリカのイスラエル支援について質問した際、「彼らの宗教はアメリカの宗教と一致しないだけでなく、アメリカの宗教の迫害を公然と支持している」と主張した。ヴァンスはこの質問に反論する機会を逃した。
こうした状況において、フエンテスは勝利を収めた。彼はヘリテージ財団が「私とタッカーに同情的な人々にとっての安全な避難所であり、踏切板になりつつある」と主張した。これは、彼の支持者(通称グロイパー[groypers])を共和党に浸透させ、保守的な組織を乗っ取ろうとする彼の試みにおける画期的な出来事だった。
フエンテスは、ヴァンスの最近の行動について言及し、副大統領は共和党の寄付者を喜ばせたいという欲求と、選挙活動中にヴァンスを執拗に追い回すと断言する「グロイパー」たちを疎外させたくないという願望の間で板挟みになっていると自慢げに語った。
これはMAGA運動が自ら招いた事態だ。
トランプは初の大統領選挙キャンペーンを開始して以来、排外主義者、白人至上主義者、そしてキリスト教至上主義者を活気づけてきた。偏見を持つ人々が誇りを持って自己表現できるよう、彼は彼らを勇気づけてきた。ますます不人気となっている自身の運動と政権に彼らを招き入れ、フエンテス、カールソン、ロバーツらが引き起こしたような衝突を避けられないものにしてきた。
一方、民主党候補は全米各地で勝利を収め、強力で包括的な連合を築き、私たち全員のために機能するアメリカというヴィジョンを掲げて若者たちを鼓舞した。そこに私たちの未来がある。共に築こう!
※スヴァンテ・マイリック:「ピープル・フォ・ジ・アメリカン・ウェイ」会長。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』


