古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ミサイル

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 北朝鮮が朝鮮半島、東アジアの情勢を不安定化させる動きに出ている。2024年10月には韓国とつながる道路を爆破し、憲法を改正して、韓国を「主敵(principal enemy)」に規定した。これまで北朝鮮にとって韓国は「自国の領土(朝鮮半島)の南部に盤踞するアメリカの傀儡政権が違法に支配する地域」であり、韓国民は「アメリカと韓国からの支配を受けており解放しなければならない同胞」ということになっていた。しかし、韓国を「主敵」と定義することで、北朝鮮が韓国を攻撃するのではないかということで朝鮮半島の状況は危機感が増した。朝鮮戦争が再び起きる(現在は休戦中なので休戦が終わって戦闘が始まる)可能性が取り沙汰されている。北朝鮮が繰り返しているミサイル実験もこのような可能性に拍車をかけている。

 北朝鮮の金正恩総書記とアメリカのドナルド・トランプ前大統領は朝鮮半島の非核化に向けて合意を取り付けた。しかし、その後、ジョー・バイデン政権が発足し、この合意は無効化されている状況だ。北朝鮮はバイデン政権との交渉を行わなかった。バイデン政権もまた積極的に北朝鮮との交渉を行わなかった。結果として、北朝鮮の核開発とミサイル開発が進められることになった。そして、現在、状況が不安定化している。この北朝鮮の強気の裏には、ロシアとの関係深化がある。北朝鮮はウクライナに派兵さえも行った。こうした動きは中国を刺激し、敏感にさせている。中国としては朝鮮半島の状況の不安定化は望ましいものではない。

 北朝鮮のこのような動きは北朝鮮が破滅に向かうためにやっているのではない。合理的に考えれば、北朝鮮は状況を不安定化して、交渉材料にしようとしている。誰に対しての交渉材料か。それはアメリカだ。アメリカは来週には新大統領が決まる。交渉相手はドナルド・トランプか、カマラ・ハリスかということになる。トランプとは交渉を行った実績がある。トランプは早期に北朝鮮との交渉を行おうとするだろう。カマラ・ハリスが大統領になれば、ジョー・バイデン政権の路線を引き継いで、北朝鮮との交渉を行わないと打ち出すだろうが、状況が切迫してくれば、交渉のテーブルに着かざるを得ないことになるだろう。北朝鮮としては、ロシアの支援を受けており、アメリカに対しては強気に出られる状況にある。そして、何かしらのリターン、見返りを受け取ることを目指すことになるだろう。

 北朝鮮が派手に動いている時は逆にそこまで危険ではないと考えられる。本当に韓国を攻撃し、戦争を引き起こそうとするならば、静かに奇襲作戦を準備するだろう。従って、現状は朝鮮半島の状況は不安定化しているが、戦争の危険はそこまで高まっていない。問題は突発的な事件で戦争が起きてしまうことだ。北朝鮮と韓国の当局者はこの点を注意してもらいたい。

(貼り付けはじめ)

●「北朝鮮、憲法改正で韓国を「敵対国」と定義」

20241017日 BBCニューズ日本語版

https://www.bbc.com/japanese/articles/cq643vdnm5vo

北朝鮮の国営メディアは17日、同国が韓国を「敵対国」と定義する憲法改正を行ったと伝えた。北朝鮮が憲法改正を公にしたのはこれが初めて。

国営紙「労働新聞」は、北朝鮮と韓国の緊張がここ数年で最高潮に達しているなか、この変更は「避けられない正当な措置」だと報じた。

北朝鮮は15日、韓国とつながる2本の道路の一部を爆破した。国営メディアはこの動きを、両国を「完全に分離するための段階的措置の一部」だと説明している。

専門家らは、今回の憲法改正は主に象徴的な動きだとみている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今年202312月の段階で、南北統一を放棄していた。

国営メディアは当時、金総書記が南北関係を「敵対する二つの国、戦争状態にある二つの交戦国」と表現したと報じた。

そして今年1月には、韓国との統一は不可能であると宣言し、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」と指定する可能性を示唆した。

それ以来、特にここ数か月の間、南北間で批判の応酬となり、緊張は着実に高まっている。

 米シンクタンクのランド研究所の防衛アナリスト、ブルース・ベネット氏は、「敵対国」という表現は、ほぼ1年前から北朝鮮の発信の特徴となっていると述べた。

2023年末にこの発言が出た時は、対立のリスクとエスカレーションの可能性を高め、重要な進展となった」と、ベネット氏はBBCに語った。

「それ以来、金総書記とその妹(与正氏)は、韓国とアメリカに対して何度も核兵器による脅迫を行い、多くの行動で緊張を高めてきた。そのため、リスクは高まっている」

専門家の多くは、先週の最高人民会議で北朝鮮が統一政策と国境政策に関する憲法改正を行うとみていたが、そのような変更は現在まで公表されていない。

それでも、アナリストらは本格的な戦争の可能性については懐疑的だ。

「状況が戦争レベルにまでエスカレートするとは思わない」と、韓国・釜山の東亜大学で政治学と外交を教えるカン・ドンワン教授は言う。「北朝鮮は軍事対立を悪用し、国内の結束を強めている」。

一方、ソウルの北韓大学院大学校のキム・ドンヨプ教授は、北朝鮮が全面戦争を開始する能力があるのか疑問視している。

「政権は、そのような紛争がもたらす深刻な結果を十分に認識している」と、キム教授は述べた。

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再び朝鮮戦争が起こるリスクはかつてないほど高まっている(The Risk of Another Korean War Is Higher Than Ever

-北朝鮮はロシアと中国それぞれを利用しており、アメリカには見切りをつけている。

ロバート・A・マニング筆

2024年10月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/07/northkorea-war-nuclear-russia-china/?tpcc=recirc_trending062921

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「北朝鮮とロシアの無敗の友情と団結万歳!」「ロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン同志を温かく歓迎する」と書かれた横断幕が平壌の平壌屋内競技場外掲げられている。そして、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と北朝鮮の指導者金正恩の肖像画も掲示されている(2024年6月20日)。

今年1月、経験豊かな韓国専門家であるロバート・カーリンとジークフリード・ヘッカーが、北朝鮮の指導者金正恩が戦争の準備をしていると書き、多くの人々を驚かせた。それは誇張かもしれないが、その懸念は的外れではない。私は過去30年にわたり、政府内外で朝鮮の核問題に取り組んできたが、朝鮮半島は1950年以降のどの時期よりも危険で不安定になっているように見える。

2019年以来、北朝鮮の核問題をめぐって3つの相互に関連した戦略的転換があり、1992年以来のアメリカと韓国の外交を導いてきた中核的な前提を無効にしている。まず、2019年にハノイで金正恩とドナルド・トランプ前米大統領との首脳会談が失敗に終わったことを受けて、金正恩は2021年に固体燃料大陸間弾道ミサイル、小型弾頭、戦術核兵器、極超音速ミサイルを含む核・ミサイルの大規模増強の5カ年計画を明らかにした。北朝鮮の核産業複合体への投資と、核を手放さないという金正恩委員長の強調した声明(これは北朝鮮の憲法と先制核理論に具体化されている)は、姿勢の戦略的変化を強調している。

これらの新たな能力と表明された意図は、北東アジアの戦略的バランスを変化させ、アメリカの拡大抑止力(United States’ extended deterrence)に対する新たな信頼性の問題を引き起こし、韓国が独自の核兵器を手に入れたいという願望を増大させた。

そして、北朝鮮の地政学的な再配置もある。それは、金正恩が諸大国の均衡(balancing major powers)を図る、アメリカとの国交正常化という北朝鮮の長期目標を放棄したことから始まった。これは30年にわたる核外交の論理を支えていた。

同時に、北朝鮮は2016年と2017年の北朝鮮核実験後に中国が国連の厳しい経済制裁を支持したことで緊張が高まっていた中国との関係を強化した。金正恩は2019年1月に北京を訪問し、中国の習近平国家主席も2019年6月に平壌に続いて交流訪問を行った。それ以来、中国はロシアとともに、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験に対して新たな制裁を課そうとするアメリカの取り組みを阻止してきた。

ウクライナ侵攻後、ロシアが北朝鮮と新たな安全保障パートナーシップを結び、経済的・軍事的援助を弾薬やミサイルと交換する中で、地政学的変化は激化した。中国当局者やシンクタンクの専門家との非公式な協議で伝えられたように、この動きは中国を不快にさせた。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が中国政府の影響力を奪い、金正恩の祖父である金日成が2つの共産主義大国を敵対させた1950年代と1960年代によく似た状況を作り出しているのではないかと懸念している。

3つ目の変化も同様に深刻だ。今年1月、金正恩は歴史によって分断された1つの同族国家として北朝鮮と韓国が定義していた70年間の統一政策を放棄し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言した。彼は、統一への誓約を消去する北朝鮮憲法の変更を要求し、南北和解を扱う機関を解体し、父親が平壌に建てた統一記念碑を取り壊した。

最近の出来事はこれらの変化を強めている。金正恩にとって、アメリカの選挙サイクルはしばしば楽しいメッセージの機会となる。9月、北朝鮮は短距離弾道ミサイルの集中発射実験を開始し、金正恩は核戦力をアメリカとの戦闘に備えさせると誓約し、その後、念のため、極秘施設内を散歩する自身の珍しい写真を公開した。ウラン濃縮工場を建設し、より多くの核兵器を製造すると約束した。しかし、これは私たちが期待できることのほんの一部を示しているに過ぎない。

なぜこれが重要なのだろうか? 少なくとも今のところ、それがそれぞれアメリカと韓国の政策目標であり続けているという事実にもかかわらず、金正恩は非核化と南北統一(denuclearization and North-South reunification)の両方を議題から外した。

韓国問題は今やゼロサムの大国間競争(great-power competition)の中に組み込まれている。北東アジアには、中国、ロシア、北朝鮮という対立する2つのブロックが存在し、別に、アメリカ、韓国、日本が存在する傾向にある。中国とロシアが(アメリカ、中国、ロシア、日本、韓国、北朝鮮が参加する)「六者協議(Six Party Talks)」で協力することを可能にした核拡散(nuclear proliferation)に対する共通の懸念はもはや存在しない。金正恩は現在、進化する核・ミサイル兵器、プーティン大統領の支援、そして最悪の場合は中国の無関心によって、これまでにないほど勇気づけられている。

しかし、私の言葉を鵜呑みにしないで欲しい。北朝鮮に関する国家情報会議(National Intelligence Council)の2023年の報告書では、新たなリスク環境の概要が述べられている。その判断は次のようになる。

北朝鮮は今後も、核兵器使用という立場を利用して強圧的な外交を続けるだろうし、核兵器や弾道ミサイルの質と量が増えれば増えるほど、よりリスクの高い強圧的行動を検討するのはほぼ間違いない。

報告書は、金正恩が「体制が危機に瀕していると確信(believes the regime is in peril)」しない限り、核兵器を使用することはないと評価する一方で、「核兵器がアメリカや韓国の容認できないほど強力な反応を抑止できると考え、より大きな通常軍事的リスクを取ることを厭わないかもしれない(He may be willing to take greater conventional military risks, believing that nuclear weapons will deter an unacceptably strong US or South Korean response)」と述べ、誤算(miscalculation)の可能性を示唆している。

報告書は、武力による「領土を奪取し、半島の政治的支配を達成しようとする攻撃戦略(an offensive strategy that seeks to seize territory and achieve political dominance over the Peninsula)」は「強制戦略よりも可能性が低い(less likely than the strategy of coercion)」としているが、後から考えると評議会が修正する可能性があるのではないかと私が疑う重要な警告を発している。

金正恩がアメリカの介入を阻止し、中国の支援を維持しながら韓国軍を圧倒できると信じている場合、あるいは国内または国際危機が修正主義的な目標を達成する最後のチャンスであると判断した場合、攻撃戦略(offensive strategy)の可能性はさらに高まるだろう。

このような戦略の結果、どのようなシナリオが考えられるだろうか? エスカレートする可能性のある火種は、南北朝鮮の海洋境界線である北方限界線(Northern Limit LineNLL)である。NLLは1953年の休戦前後に国連軍司令部によって画定されたが、北朝鮮はこれを争っており、長年の不満と度重なる軍事衝突の原因となっている。2010年、平壌は、NLLが韓国領と定義する5つの島の1つである延坪島を砲撃した。この攻撃で韓国海兵隊員2人が死亡し、韓国船1隻も沈没した。北朝鮮は今年初めにもこの島の近くで砲弾を発射している。

金正恩が憲法改正を要求し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言したのと同じ1月の演説で、彼は将来の最高人民会議(Supreme People’s AssemblySPA)会議で北方限界線の国境主張を修正することにも言及した。「我が国の南側国境線は明確に引かれているため、違法な『北方限界線』やその他の境界線は決して容認できない。韓国が我が国の領土である陸地、空域、水域を0.001ミリでも侵犯すれば、戦争挑発(war provocation)と見なすだろう」。金正恩は10月7日に最高人民会議の会議を予定している。

朝鮮半島のこうした現実と北東アジアの地政学的苦境から生じるリスクは、いくつかの危険だがもっともらしいシナリオを示唆している。まず、国家情報会議報告書や韓国のアナリストたちが予見している核の影のシナリオがある。それは次のようなものだ。

米韓軍事演習を非難した後、北朝鮮はそのうちの2つの島の近くで実弾射撃訓練と思われる演習を開始し、その後砲弾を集中砲火し、続いて軍隊が延坪島に上陸した。韓国を牽制するアメリカの努力は失敗し、韓国政府は空軍と海軍をその地域に派遣し、北朝鮮の船舶に砲撃し、海兵隊を島に上陸させた。戦闘が続く中、北朝鮮は近くの無人島に戦術核兵器を発射した。

アメリカや韓国は軍事的に対応し、エスカレーションの危険を冒すだろうか? 広島以来初の核使用に直面して、中国は国連安全保障理事会決議に拒否権を発動するだろうか、それとも状況を封じ込めるために米国と協力するだろうか? アメリカと韓国の両国が北朝鮮との信頼できる外交的または軍事的コミュニケーション手段を欠いている現在、北朝鮮は簡単に制御不能になる可能性がある。

更に憂慮すべきシナリオは、朝鮮半島危機と台湾危機が同時に発生するアジアでの二正面戦争(two-front war)である。ウォーゲーム(wargaming)、政府関係者へのインタヴュー、ワークショップに基づく2023年の詳細な報告書の中で、北朝鮮担当の元国家情報担当官であるマーカス・ガラウスカスは、抑止力(deterrence)がどのように失敗する可能性があるか、また、例えば中国が台湾に侵攻し、アメリカが軍事介入(military intervention)して焦点と資源を逸らした場合、金正恩が韓国を攻撃する論理と力学について詳述している。あるいは逆に、中国と北朝鮮の両方が台湾と韓国を攻撃するような、協調しての同時攻撃(simultaneous offensives)の可能性もある。

3つの核保有国が対立する(そしてプーティンがどのように行動するかを推測するかもしれない)というのは、空想的に聞こえるかもしれないし、ハルマゲドンに向けて夢遊病になるのではないかと危惧する人もいるかもしれない。そのような最悪のシナリオがすぐに起こる可能性は低いが、北朝鮮の地政学的な再配置によって、今後6~18カ月以内に平壌が劇的な動きを見せる可能性は高まっている。

アメリカも中国も、朝鮮半島をめぐる危機感に欠けている。中国当局者によれば、北京は平壌の行動をアメリカの制裁のせいであり、自分たちの問題ではないと見ている。ウクライナや中東地域での紛争が激化し、中国とのゼロサム競争が高い議題となっている今、北朝鮮は後回しにされているし、今後もされ続けるだろう。しかし、金正恩はそれについて何か言うかもしれない。

※ロバート・A・マニング:スティムソン・センターの戦略的先見ハブ上級研究員を務めており、世界的な先見性と中国プログラムに取り組んでいる。ツイッターアカウント:@Rmanning4

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年9月13日、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と、北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員会委員長が、ロシア極東のボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行った。両国は西側世界では特に評判が悪い「ならず者国家(rouge state)」である。プーティンと金正恩は独裁者として忌み嫌われている存在だ。その2人が首脳会談を行って、西側メディアが悪口ばかりになるのは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が2年目を迎え、戦況は膠着状態に陥っている。ロシアは、戦争の初期段階で、西側諸国からの経済制裁を受けたが、それを持ちこたえ、石油の輸出によって外貨を稼ぐことができている。それでも戦争の長期で、武器の減少が取り沙汰されている。そうした中で、金委員長をプーティンが直接出迎えて厚遇したということは、北朝鮮からの武器供与を求めてのことだろうというのが多くの人の見方だ。北朝鮮からすれば、ロシアからの技術供与や食糧支援を求めているということのようだ。

 北朝鮮とロシアの二国関係は、互恵的な関係ということが言える。お互いがお互いの望むものを持っており、それを与え合うことで、お互いが利益を得るということになる。北朝鮮とロシアの接近によって、ロシアが北朝鮮にミサイル技術や宇宙技術を供与することになれば、北朝鮮のミサイル、核兵器がより高度になり、東アジア地域における、危険が増すという考えも出てくるだろう。

 しかし、ロシアも中国もそこまで甘くはない。北朝鮮の位置を考えれば(両国と国境を接している)、北朝鮮に高度のミサイルを持たせることは、中露両国の安全保障にとっても脅威となる。特に中国の場合、黄海を超えれば、すぐに北京である。北朝鮮のミサイルがアメリカや日本を向いているうちは良いが、それがいつ北側(ロシア)や西側(中国)に向かうかは分からない。従って、致命的に重要な技術を北朝鮮に供与することはない。中露は全面的に北朝鮮を信頼してはいない。あくまで自分たちがコントロールできる範囲に置いておかねばならない。

 アメリカからすれば、北朝鮮を中露両国から引き離すということが重要だ。ドナルド・トランプ前米大統領は、前代未聞の米朝首脳会談を成功させた(2018年のシンガポール、2019年のヴェトナムの首都ハノイ)。ここで、北朝鮮の非核化の見返りとしてのアメリカからの経済支援による経済開発といった話も出ていた。しかし、ジョー・バイデン政権になってからは米朝関係には何の進展もない。トランプのような政界のアウトサイダーだからこそなしえた成果であったのだろう。北朝鮮からすれば、トランプがいなくなれば、アメリカは約束を反故にする、もしくは北朝鮮の体制転換のために北朝鮮に浸透してくるということは分かっていることであり、アメリカとの交渉にはおいそれとは乗れないということになる。

 北朝鮮は、この機会にロシアとの関係を良好なものとしておくことは、対中関係にも影響を与えるという計算もあるだろう。中露両国を両天秤にかけるということだ。北朝鮮はいつも実にしたたかだ。

(貼り付けはじめ)

プーティンと金がお互いから欲しいもの(What Putin and Kim Want From Each Other

-最近の両者による首脳会談は、ロシアと北朝鮮の関係がいかに取引的なものになっているかを示した。

アンキット・パンダ筆

2023年9月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/15/russia-north-korea-putin-kim-summit-diplomacy-weapons-missiles-space-cooperation-sanctions/

新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、3年以上にわたって自主的に課した、厳しい孤立主義(isolationism)を経て、北朝鮮の指導者金正恩は今週、思い切って国境の外に飛び出した。金委員長はロシアのウラジーミル・プーティン大統領に会うため、かつて父親が好んだのと同じ装甲列車(armored train)に乗って、ロシア極東に向かった。金委員長が外国指導者と会談するのは2019年以降では初めてのこととなった。プーティン露大統領は、ホスト役を務めることで、最近のG20BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会談への欠席が象徴する、プーティン自身の外交的孤立の中で、外交分野における自身の正常なイメージを示すことができた。

プーティン大統領は、2019年に初めて会った北朝鮮の指導者である金正恩に対する親近感を示し、ロシア語で非公式に挨拶した。金委員長は、ウクライナに対するモスクワの「聖なる闘争(sacred struggle)」に対する北朝鮮の献身を告白した。両者とも西側諸国が支配する世界秩序に対して団結を示すことを目的としていたが、その戦略的一致は実際には両指導者にとって困難な状況によって引き起こされた、より取引的な論理から生じている。簡単に言えば、それぞれが相手に提供できるものがたくさんあるということだ。

金正恩とプーティンは、お互いに正確に何を求めてきたのかを胸に秘めている。典型的な首脳同士による首脳会談とは異なり、両者は協議や合意内容を示唆するいかなる種類の共同声明も発表しないことを選択した。しかし、両国間で行われている、最近の他のハイレヴェルの外交行為と同様に、両者の会談の様子は、より明白なものであった。

金委員長の訪問に先立って、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は、兵器調達に携わる他の国防高官らに囲まれ、北朝鮮の兵器が豊富に展示されている平壌の展示場を視察した。北朝鮮が、ロシアが長年支持してきた国連安全保障理事会の支持による包括的な武器禁輸下にあるという事実は、大きな障害ではないようだ。

金・プーティン首脳会談の開催地の選定も同様に微妙だった。まず、両首脳はロシアの比較的新しいボストチヌイ宇宙基地での会談を選んだ。これは、モスクワがカザフスタンのバイコヌール宇宙基地への依存を減らすために設計されたロシア東部の宇宙基地である。ロシア国営メディアは、プーティンが、そこで会談することを決めたのは、金正恩が「ロケット技術に大きな関心を持っている」ことを認めたからだと述べ、北朝鮮の指導者は「宇宙開発を進めようとしている。だから私たちはボストチヌイ宇宙基地に来たのだ」と述べたと報じた。実際、北朝鮮は成熟した宇宙開発プログラムを開発しようとしているが、今年2度の衛星打ち上げ失敗が示すように、成長の余地がある。ロシアの宇宙打ち上げ技術の援助は、軍事偵察衛星(military reconnaissance satellites)の開発を含む平壌の軍事的近代化の野望(military modernization ambitions)の実現に大いに貢献するだろう。

しかし、北朝鮮がロシアの利益を全力で支援することで得られる恩恵は他にもある。プーティン大統領との会談後、金委員長の列車はコムソモリスク・ナ・アムーレに向けて進み、そこで金委員長はSu-35戦闘機とSu-57戦闘機を生産する工場を訪れた。これらの戦闘機は現在朝鮮人民軍空軍が利用できる旧式の機体よりもはるかに先進的なシステムだ。新しい戦闘機を調達できなくても、北朝鮮は、既存のソ連製軍用機を強化し、耐空性と信頼性を大幅に向上させるためのスペアパーツやコンポーネントの安定供給から恩恵を受ける可能性がある。

金正恩はまた、自国のミサイル計画を強化するために、ロシアのサプライヤーから調達した原材料や複合材へのアクセスも求めるだろう。北朝鮮は、ケブラーやアラミド繊維のような素材をロシアから調達し、高度なミサイルに使用するために、組織的な犯罪ネットワークに長い間依存してきた。ロシアがこのような移転を積極的に促進することは、国連制裁違反ではあるが、平壌の軍事的野望の実現を支援することになる。北朝鮮はまた、秘密裏に技術支援を求める可能性もある。国際的なルールや規範を蔑ろにするプーティン大統領によって、これまで両国間で考えられなかったような技術協力が実現可能になるかもしれない。

ミサイルや戦闘機といったハード面以外で、金正恩は、新型コロナウイルス感染拡大を通じて、北朝鮮で深刻化している栄養面の問題に対処できる食糧援助の可能性についてもプーティンに打診したようだ。このような援助は制裁に違反するものではないが、それにもかかわらず、金正恩が近年、核の近代化に巨額の資金をつぎ込みながらも公然と認めている食糧不足に対処する一助となるだろう。北朝鮮とロシアは国境と領海を接しているので、大規模輸送も容易だ。

ロシアは北朝鮮の目的に対して外交的支援を提供することもできる。北朝鮮は既に、国連安全保障理事会におけるロシアと中国の庇護からかなりの恩恵を受けている。 2019年の米朝外交の最終段階の崩壊以来、中国政府とロシア政府はいずれも新たな制裁や国連での正式な非難さえも明確に拒否している。2016年と2017年の、例外的に広範な分野別の措置に対する黙認とは全く異なり、北朝鮮を積極的に支援していることになる。昨年は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験を非難する米大統領声明を両国とも支持しなかった。

一方、今回の会談に対するロシア政府の関心は、ロシア軍が使用しているソ連時代の発射装置と逆互換性のある、北朝鮮が大量に保有している砲弾やロケット弾の弾薬にあると考えられる。昨年9月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が取材したあるアメリカ政府の情報筋は、そのような移送はすでに行われていたと示唆したが、これはおそらく時期尚早であったと思われる。むしろ、最近相次いでいる北朝鮮とロシアの二国間外交は、こうした移転を促進することを目的としていたとみられ、ホワイトハウス報道官はショイグ防衛相の訪問後、それが「積極的に進められている(actively advancing)」と述べた。

プーティン大統領と金委員長の首脳会談で、イデオロギーを共有する姿勢を見せようとしたにもかかわらず、プーティンと金正恩は相手の要求に完全に応じるつもりはないかもしれない。例えば、北朝鮮はロシア海軍の核推進技術へのアクセスを求めるかもしれない。同様に、ロシアはウクライナで使用される可能性のある、より高度な北朝鮮ミサイルの入手を求めるかもしれないが、金正恩は自国の国防と抑止力のためにミサイルを保有することを好むかもしれない。

両国の会談は、北東アジアにおける新たな権威主義的枢軸(a new authoritarian axis)の話を促すだろうが、この関係の最近の高まりが、各国の目先の戦略的利益よりも、深い基盤を持っていることを示唆するものはほとんどない。モスクワは自国に有利なように世界秩序を修正しようとしているかもしれないが、その努力のパートナーとして北朝鮮を参加させても使い道は限られる。

一方、北朝鮮にとって、ロシアとより深い関係を築きたいという願望は、新型コロナウイルス感染拡大とロシアのウクライナ侵攻の両方に先行している。金正恩が2019年にロシアの極東でプーティンと初めて会ったのは、前回失敗した米朝首脳会談の直後だった。その年の暮れ、金正恩は自国の戦略的アプローチについて「新しい方法」に従うことを示唆した。ロシアとのより良い関係は、この新しい方法の一部であると思われる。ロシアが孤立し、世界的な規範に背くことを厭わなくなるなど、現在の地政学的ダイナミクスは、平壌に絶好の機会を与えている。

金正恩の訪問は人々を驚かせた。特に注目すべきは、2019年以来の海外訪問に中国ではなくロシアを選んだことだ。2018年、金委員長は最終的に韓国やアメリカとの首脳外交に向かう前に、中国の習近平国家主席との会談を選んだ。中国側の声明によれば、両者の最初の会談で、習主席は何よりもまず、両国間の「ハイレヴェルの交流」の重要性を強調し、「同志委員長(Comrade Chairman)と頻繁に連絡を取り合いたい」と述べたということだ。

しかし、金委員長の選択は、北京と平壌の間に大きな溝があることを示すものではない。金委員長と習近平は新型コロナウイルス感染拡大の最中に書簡を交換し、ある中国高官は最近、平壌の軍事パレードに出席した。しかし、少なくとも短期的には、金正恩は習近平よりも、ますます絶望的になっているプーティンを、より積極的な後援者となるだろうと評価している可能性が高い。北京と平壌はともにプーティンの戦争努力を支持しているが、大規模な軍需物資の提供を望んでいるのは北朝鮮だけだ。

ロシアの対ウクライナ作戦に対する北朝鮮の支援は、戦場での変革にはつながらないだろう。通常弾薬の不足は、ロシアと迅速な勝利の間に立ちはだかる要因とは言い難い。平壌による弾薬供給に対して、期待される最も重要な短期的効果は、ロシアが将来NATOと衝突する場合、自国の備蓄を補充し、維持できるようになることであろう。

アメリカにとって、金委員長とプーティンの関係が緊密になるという見通しは悪いニューズだが、終末をもたらすようなものではない。仮にプーティンと金正恩が互いにほとんど関心を持たなかったとしても、両首脳は単独でアメリカの利益に対する深刻な挑戦を続けるだろう。

おそらく、この関係がもたらす結果として、北朝鮮の継続的な核兵器保有に対する現状維持の外交アプローチへの影響ほど重要なものはないであろう。既存の国連制裁体制に直面して、ロシアが公然と北朝鮮を露骨に支援すれば、空想的な短期目標である非核化(denuclearization)が不可能になるだろう。

このことは、ここ数十年でアメリカの対北朝鮮アプローチを見直すための最も重大なきっかけとなる可能性が高い。現在、外交の展望は漠然としているように見えるが、ワシントンは、かつて金正恩がドナルド・トランプ前米大統領に会うためにハノイ行きの列車に乗るように仕向けたのも、大国との関係を進めるための、ほぼ同じ取引的アプローチだったことを思い起こすべきだ。

金委員長にモスクワから目を背けるよう促すのは難しいだろう。しかし、アメリカは北朝鮮に少なくとも外交の可能性をもう一度考えるきっかけを与えるために、外交部門が持つ、あらゆるツールを活用する用意を行っているはずだ。金委員長は昨年、アメリカは無制限の交渉を求め、北朝鮮に対して敵意がないことを公言しているにもかかわらず、「ジョー・バイデン政権の行動、特に韓国を安心させるために取った措置の多くが北朝鮮に悪影響を与えている。無制限の交渉や敵は存在しない、などの言葉を信じるに足る理由は存在しない」と不満を述べた。

ワシントンはまた、金正恩がハノイに行った際に求めていたのは、限定的な核の譲歩と引き換えに、自国の経済に対する分野別の制裁を緩和するという取引であったことを思い起こすべきだ。制裁緩和の見通しを利用することは、北朝鮮の不遵守を防ぐためのスナップバック(訳者註:元の状態に素早く戻すという意味)条項付きで、誘惑としての価値を持ち続けるかもしれない。しかし、ワシントンがすぐに行動を起こさなければ、金正恩がかつて交渉の場で制裁緩和を求めていた意義はかなり薄れてしまうかもしれない。ロシアが北朝鮮との取引の意欲を示している現在ではなおさらである。

最後に、アメリカとその同盟諸国は、より高性能化する北朝鮮の核兵器が危機や紛争で使用されるリスクを軽減することに引き続き関心を持っている。今後の交渉の前提が核リスクの軽減や抑制に焦点を当てることができると金委員長に示唆すれば、北朝鮮が外交的により苦境に陥る理由を生み出すことになるだろう。

※アンキット・パンダ:ワシントンに本拠を置くカーネギー国際平和財団各政策プログラムスタントン記念上級研究員。著書に『金正恩と彼の爆弾:北朝鮮における生存と抑止(Kim Jong Un and the Bomb: Survival and Deterrence in North Korea)』がある。ツイッターアカウント:@nktpnd

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 現地時間の11月15日午後3時40分頃、ポーランドのウクライナ国境に近いプシェヴォドフという場所に、ミサイルの発射体もしくは残骸が落下し、2名が死亡するという事件が起きた。ウクライナ戦争関連で西側諸国の国内で初めての死者が出た事件として衝撃が走った。ロシアが発射したミサイルの発射体もしくはウクライナ軍が迎撃したことによる残骸ということが報じられた。それが「ロシアのミサイルによってポーランドが攻撃されて死者が出た」ということになった。当事国ポーランドやバルト諸国、ウクライナの関係者たちはロシアを非難する声明を出している。一方、ロシアはポーランドに対するミサイル攻撃を否定している。
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 今回の出来事の報道に接し、私は慌てた。ロシアがポーランドを攻撃したことで、NATOが集団的安全保障を発動して、ロシアを攻撃するということになれば、戦争は拡大し、第三次世界大戦にまで状況は悪化すると考えた。ヨーロッパの地図を見ていただくと分かるが、ポーランドとリトアニアの間にくさびのような形で、カリーニングラードというロシアの飛び地の領土があり、ロシアのバルティック艦隊の本拠地となっている。このカリーニングラードとベラルーシの間のポーランドとリトアニアの国境地帯はスヴァウキ・ギャップ(Suwalki Gap)と呼ばれ、ここをめぐっては数年前から緊張が高まっている。カリーニングラードはポーランドをはじめとするバルト海沿岸諸国にとっては国家安全保障上、目障りな存在ということになる。今回の出来事を受けてポーランドがロシアを攻撃するとなれば、直接国境を接しているカリーニングラードが攻撃目標となる。その際にリトアニアと呼応して攻撃ということになると私は考え、これはウクライナ戦争の拡大であり、第三次世界大戦となると考えた。

suwalkigapmap511

 現在のところ、ウクライナや中欧、東欧、バルト海沿岸諸国に比べて、アメリカは静観の構えを取っている。アメリカが動かなければNATOは何もできない。アメリカのジョー・バイデン大統領は今回の事件のきっかけとなったミサイルは「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べている。事態をエスカレーションさせないようにという配慮が伺える。もし、ウクライナが発射した迎撃ミサイルによる事故ならば、ポーランド政府としても非難はできず、大事になる前に事態は収束する。ロシアがポーランドを攻撃する意図ではなく、ウクライナ国内の攻撃目標を攻撃するために発射したミサイルが迎撃されて、その破片が落下しての事故ならばロシアに対する非難はできるだろうが、それ以上の措置は望ましくないということになる。

 現在のところ、状況のエスカレーションをアメリカが望んでいないようなので、ロシアに対して非難をする程度で終わる可能性もあるが、ウクライナ戦争の状況が膠着状態になっている中で、一歩間違えれば、第三次世界大戦や核兵器の使用という危険をはらんでいるということは把握しておく必要がある。

(貼り付けはじめ)

「ロシアからとは考えにくい」ポーランド着弾ミサイルでバイデン氏

11/16() 11:40配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/9e53bd260d081fe00fdb751fde5aaa022832b465

 バイデン米大統領は16日、ポーランド東部での爆発を受けて開かれた主要7カ国(G7)と北大西洋条約機構(NATO)の首脳会合の終了後、滞在先のインドネシア・バリ島で記者団の取材に応じた。バイデン氏は「ミサイルの軌跡から考えるとロシアから発射されたとは考えにくい」と述べた。「爆発の調査でポーランドを支援することで合意した。何が起きたか正確に把握するつもりだ」と強調した。

 ポーランド外務省はロシア製ミサイルが着弾して爆発が起きたとしている。バイデン氏は、調査の進捗(しんちょく)状況を見極めて「次の措置を決定する」と述べた。【バリ島・鈴木一生】

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ロシアがウクライナを攻撃し、ポーランドにミサイルが着弾したとの報道(Missiles Reportedly Land in Poland as Russia Pummels Ukraine

NATO加盟国の国土での爆発は今年初の重大な出来事である。

ロビー・グラマー、ジャック・ディッチ、エイミー・マキノン筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/russia-missile-poland-escalation-nato/

ロシア軍がウクライナの諸都市に向けて大量のミサイルを発射し、少なくとも1発のミサイルの発射体もしくは破片が隣国ポーランドに着弾し、少なくとも2名が死亡、ロシアのウクライナ攻撃で初めてNATO加盟国の領域で死傷者が出たことになる。

ウクライナ軍が撃ち落としたロシアのミサイル発射体もしくはミサイルの破片がポーランドに落下したかどうかに関する相反する報告に基づいて、アメリカとヨーロッパの当局者たちは、死者2名というニューズが最初に流れると、何が起こったのかについての詳細情報を得るために奔走し始めた。

破片の落下による死亡事故と、ロシアが意図的にNATO加盟国の領土を攻撃した場合の違いは歴然としている。前者の場合は迅速な非難を引き起こし、NATOとモスクワの緊張の高まりを浮き彫りにする可能性がある。後者の場合はロシアの軍事戦略の大きな転換を示し、NATOとの本格的な軍事対決への道を開くことになるかもしれない。

複数のヨーロッパ諸国の当局者は、匿名を条件に、何が起きたかについて結論を出すのは時期尚早だと述べた。しかし、クレムリンは混乱を引き起こすために、このニューズの速報にすぐに飛びついた。

ロシア国防省は、この報道を「よく練られた意図的な挑発(deliberate provocation)」だと断じた。RTの編集長マルガリータ・シモニャンは、この報道から得られる1つの良いニューズは、「NATO加盟国の防衛があまりにもお粗末で、誰もが偶然に何かの武器を使って攻撃することができ、NATO加盟国全てが、誰が何を使って攻撃されたのか、どうして攻撃されたのかさえ分からないだろう」ということだと述べた。

ロシアは、ここ数日、ケルソンを失った後の報復の一環として、ウクライナの最西部を含むウクライナ国内の民間インフラへのミサイル攻撃を連続的に開始した。偶発的な攻撃は、厳しい非難や外交的報復、あるいはNATO軍の東側への増派の引き金となりうる。意図的な攻撃は、NATOのより厳しい軍事的反応を引き起こし、加盟国が攻撃された場合に侵略者に対する集団的対応を求めるNATOの第5条の規定が適用される可能性もある。

ポーランドの安全保障委員会は直ちに緊急会議を開き、ワルシャワは火曜日午後遅くに声明を発表する予定である。ポーランド領内での攻撃が報じられると、NATO加盟諸国の国防当局者から非難が殺到した。

スロバキアのジャロ・ナド国防相はこのニューズを受け、「ロシアは何が起きたのか説明しなければならない。インフラへの無意味な攻撃は直ちに止めなければならない。ロシアの無謀さは手に負えなくなっている」とツイートした。

今回の攻撃はウクライナのエネルギーインフラを狙ったもので、ロシアは冬の到来とともにウクライナを暗闇に陥れることを意図した戦略の一環である。ロシアは、ウクライナの精神を破壊し、戦場での恥ずべき敗北を補うために、遠くからウクライナの電力網を攻撃することが多くなっている。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、火曜日に少なくとも85発のロシアのミサイルによってウクライナが攻撃したと発表した。この攻撃は、これまでで最大規模と報告されている。この攻撃によって、ウクライナがロシアから更に領土を解放することをストップすることはないと述べた。ゼレンスキーは「私たちは努力を続けており、全てを回復させる。私たちは生き残るだろう」と述べた。

ワシントンは火曜日午後になっても静観モードを保持している。バイデン政権は、AP通信が匿名の米諜報情報機関高官の発言を引用して空爆を最初に報じた後も、早急に結論を導き出すことに消極的だ。米国防総省のパトリック・ライダー報道官(陸軍准将)は記者団に対し、米国防総省には空爆に関する報道を独自に裏付けるような情報はないと語ったが、ヨーロッパにあるアメリカの同盟諸国はロシアを即座に非難した。ラトヴィアのエドガース・リンケビクス外相は、今回の攻撃は「クレムリンによる非常に危険なエスカレーション」だと述べた。

NATOと在ワシントン・ポーランド大使館のそれぞれの報道官にコメントを求めたが、すぐには応じなかった。米国家安全保障会議のアドリアン・ワトソン報道官が発表した声明によると、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は本日午後、ポーランド国家安全保障局のヤチェク・シウィエラ局長と協議し、ホワイトハウスは現時点では報道の詳細を確認できないと付け加えた。

ポーランドの複数メディアの報道によると、ロシアのミサイルは、ウクライナとの国境に近いポーランドの町プシェヴォドフにある地域を攻撃したということだ。ミサイルがポーランド国内に着弾したのか、それともロシアのミサイルが撃墜された際の破片が落下したのかは明らかになっていない。

この攻撃は意図的なものではなかったようだが、ロシアのウクライナ侵攻がNATOにとってより大きな意味を持つことを強調したと複数の関係者は述べた。東欧諸国のある当局者は匿名を条件にして、「ロシアは、ウクライナ戦争に関しては、マリウポリやハリコフではなく、冷戦後の西側に対する戦争だと考えている」と語っている。

ゼレンスキーは、今回の攻撃を「集団安全保障に対する攻撃(attack on collective security)」であり、ロシアによる「非常に重大なエスカレーション」であると述べた。

複数の元アメリカ政府高官は、意図的な攻撃と誤爆のどちらと判断されるかによって、NATOの反応は異なる可能性があると述べた。ほとんどのNATO諸国の国防相は明日、定期的に開かれるウクライナ防衛コンタクトグループ会合で会談することになっている。

元米国防次官補のミック・マルロイは、「どちらも重要な問題だが、NATOによって異なる対応が取られる可能性が高い。今回の事態は、アメリカ軍、NATO軍、ロシア軍の間でのコミュニケーション・チャンネルの必要性をさらに浮き彫りにしている」と述べた。

NATOの集団防衛条項、いわゆる5条が発動されたのは、73年に及ぶ同盟の歴史の中で、911アメリカ同時多発テロの後に一度だけだ。元米国防次官補(ヨーロッパ・NATO政策担当)のジム・タウンゼントは「5条は自動に作動するものではない。ポーランドが『攻撃された』と主張としても、それが事実かどうかは北大西洋理事会が判断することだ」と指摘した。第5条は同盟の中核的原則である集団防衛(collective security)に関わるが、必ずしもロシアとの戦争を意味するものではない。他の選択肢としては、ロシアとの東側の側面に沿ってNATOのプレゼンスを強化することや、ポーランドの防空能力を支援するために更なる支援を提供することが考えられる。

現役の米国当局関係者たちと連絡を取っているタウンゼントによると、現在の考えは、事件は事故であり、早ければ水曜日に北大西洋理事会の会合が開かれる可能性があるとのことである。

もう1つの選択肢は、ポーランドが同盟条約第4条に基づく協議を要請することだ。この条項は、自国の安全や領土の一体性が脅かされたと感じた場合に発動することができる。第4条を発動すれば、強力なメッセージを送ることができる。「しかし、どのような対応をとるかは、同盟国全体が決定することだ」とタウンゼントは述べている。第4条は同盟の歴史上、何度か発動されたことがある。ロシアのウクライナ侵攻後、ポーランドとバルト諸国は2月に同条項に基づく協議を求めた。

アメリカを含む同盟諸国は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、8つの多国籍戦闘団や軍事演習のテンポアップなど、NATOの東側での軍事的プレゼンスを高めてきた。

ロシアの本格的な侵攻を受けて、アメリカはヨーロッパに駐留するアメリカ軍を数十年ぶりに10万人以上に増員した。その多くがポーランドに駐留し、火曜日のロシアの攻撃から数マイル以内に拠点を置いている。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交分野・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

※ジャック・ディッチ:米国防総省・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch

※エイミー・マキノン:国家安全保障・諜報情報分野担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

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死亡者を出したロシアによるポーランドでの攻撃は危険なエスカレーションのリスクをもたらす(Deadly Russian strike in Poland risks dangerous escalation

エレン・ミッチェル筆

2022年11月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3737395-us-nato-on-high-alert-after-deadly-russian-strike-in-poland/

ポーランドでのロシアのミサイル攻撃で2人が死亡し、アメリカは厳戒態勢(on high alert)にある。この事件は、モスクワのウクライナ戦争にとって大きな転機となる可能性がある。

ポーランドの国土での爆発とそれによって引き起こされた死亡は、NATO加盟国の間で長らく懸念されていたことが現実となった。ロシアのウクライナへの攻撃が国境を越え、加盟国の相互防衛条約である第5条を発動させ、紛争を拡大させる危険性がある。

ポーランドは、何が起こったのかについてすぐに調査を開始し、NATO加盟国のいずれもが理事会の議論を呼び出すことができる第4条の発動を検討しており、ポーランドは水曜日にブリュッセルでNATO閣僚会議開催を求める予定である。

また、この死亡事件をきっかけに、欧米諸国のトップ同士の電話や会談が相次ぎ、20カ国・地域首脳会議(G20首脳会談[サミット])のためインドネシアのバリ島を訪問中のジョー・バイデン大統領は、現地時間の水曜日早朝にポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領と会談した。

ホワイトハウスは「ジョー・バイデン大統領がポーランドの捜査に対してアメリカは全面的な支持と援助を提供し、アメリカのNATOに対する鉄壁の約束を再確認した」と発表した。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ポーランド国家安全保障会議が開催された際に、ポーランドのヤチェク・シウィエラ国家安全保障局長と会談した。

アントニー・ブリンケン米国務長官もポーランド外相と火曜日に会談を持った。

ロシアのミサイルはポーランドを意図的に狙ったものなのか、それともウクライナ領土を狙ったものなのかについては、火曜日の夕方になっても多くの疑問が残っている。

ポーランド外務省のルカシュ・ジャシナ報道官は、現地時間午後3時40分頃、ウクライナ国境から約4マイル北にあるプシェヴォドフ村でロシア製兵器が落下し、爆発が発生したと発表した。

ポーランド国内での爆発は、ロシアがウクライナの重要都市ケルソンから撤退した後、ウクライナ全域でミサイル攻撃の連続的に開始したのと同じ日に起こったが、発射体がどこから来たかは明らかではない。

ポーランド大統領は火曜日の演説で、事件のきっかけとなったミサイルを誰が発射したかは分からないが、「ロシアで製造された可能性が高い」と述べた。

ドゥダ大統領はワルシャワから、「私たちは冷静に、非常に冷静に作業している」と述べ、ポーランドの専門家とともに爆発現場を調査するため、アメリカの専門家たちがポーランドに派遣されることを明らかにした。

ポーランド外相はロシア大使を召還し、ロシア製ミサイルがポーランド国境内に落下した経緯について「直ちに詳細な説明を要求した」とジャシナ報道官は述べた。

ロシア国防省は、ウクライナとポーランドの国境付近の標的へのミサイル攻撃はなかったと述べ、関与を否定した。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は火曜日、この事件をキエフとモスクワの間の戦争の「非常に重大なエスカレーション」だと評した。

ゼレンスキーはヴィデオ演説の中で「NATO加盟国の領土をミサイルで攻撃。これは集団安全保障に対するロシアのミサイル攻撃だ! これは本当に重大なエスカレーションだ。行動が必要だ」と述べた。

複数のロシア空軍機は今春、スウェーデン領空を数回、8月にはフィンランド領空を侵犯しており、戦争中にロシアの兵器が国境を越えて迷い込んだのは今回が初めてではない。

また、爆弾を搭載したソヴィエト連邦時代の無人偵察機が3月に、ウクライナからルーマニアとハンガリーの領空を飛行した後にクロアチアの首都ザグレブで墜落している。3月には、ロシア製の偵察用ドローンがルーマニアで墜落している。

しかし、火曜日の爆発の致命的な性質は、紛争のエスカレーションを意味するかもしれない。ウクライナとロシアの戦争が長引けば長引くほど、いずれはNATO諸国にまで広がるという懸念が確認されている。

ジム・タウンゼント元国防次官補(ヨーロッパ・NATO政策担当)は、「今回の出来事は、我々が常に恐れていたことだ。NATO加盟国に波及し、NATOを最前線に立たせることになる」と本誌の取材に対して述べた。タウンゼントは、全ての事実がまだ明るみに出ていないと強調した。

「第三次世界大戦に至らず、第5条にも違反しない形で、NATOだけでなくポーランド自身でも実行可能なオプションはたくさん存在する」と語った。

その代わりにウクライナは、同盟のどのメンバーも懸念事項を北大西洋理事会の協議の場に持ち込むことができる第4条の路線に傾くようだ。ウクライナのドミトロ・クレバ外相は火曜日午後、次のステップを議論するため、ウクライナの参加するNATO首脳会議を呼びかけた。

ウクライナのクレバ外相は「ロシアの行動に対する集団的対応は、強硬で原則的でなければならない」と書き、西側諸国の戦闘機と防空システムでロシアのミサイルを迎撃するよう改めて要求している。

クレバ外相は「今日ウクライナの空を守ることは、NATOを守ることだ」と付け加えた。

元駐ポーランド米国大使で、現在は大西洋評議会に所属するダニエル・フリードは、第4条発動はこの状況に対して最も論理的なステップであると述べた。

フリード元大使は「それが5条なのか、意図的な攻撃なのか、私たちには分からない。しかし、第4条が発動される有事であることは確かであり、このことについて議論されるべきだ」と本誌に語った。

この動きは確かにアメリカ政府関係者に歓迎されるだろう。彼らは紛争がエスカレートす

リンダ・トーマス=グリーンフィールド米国連大使は火曜日、アメリカ政府関係者は今回の事件について懸念を持っているが、まだ情報収集中であると述べた。

リンダ・トーマス=グリーンフィールド大使は『ワシントン・ポスト』紙のイヴェントに出席して「そして、その情報が何であるかを判断した後、安保理が会議を招集する必要があるかどうかを決定する」と述べた。

ポーランドでの偶発的なミサイル攻撃や、ロシアのミサイルがウクライナに撃墜され、破片がポーランド領に落下した状況であれば、厳しい反応を示す危険はないと複数の専門家は本誌に語った。しかし、ロシアが意図的にポーランド領を攻撃したと判断されれば、ワルシャワとNATO加盟国は対応を迫られる可能性がある。

タウンゼントは「NATOであれ、ポーランドであれ、アメリカであれ、ポーランドを確実に保護するため、そして今回の攻撃が意図的に行われたのであればロシアの侵略を抑止するために、何が賢明な次のステップとなるのかを考えなければならない」と述べた。

しかし、タウンゼントは「誰も性急に行動する意図を持っていない。事実を把握した上で、どうするかを決めるということになる」と強調した。

一方、バイデン大統領は、NATO加盟国が攻撃された場合、アメリカ政府は第5条を支持すると繰り返し約束している。これは、同盟国一国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なすとする条項である。

バイデンはまた、「アメリカはNATO加盟国の領土を隅々まで守る」とも約束し、第5条への関与は「鉄壁」であると指摘した。

アメリカの連邦議員たちの中にはロシアからの対応を求めている。グレゴリー・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はCNNで、ミサイル落下が本当に事故だったのなら「早くそのように言った方がいい」と発言した。

ジョニ・アーンスト連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)は退役軍人であるが、アーンスト議員は米国防総省からの更なる情報を待つことで不安を感じていると語った。

アーンスト議員は「大げさで攻撃的な発言をする前に、何が起こったのか理解する必要がある。これは重大なことだ。つまり、もし意図的な攻撃ならば、大変深刻な出来事ということになる」と語った。

フリード元大使は、現時点で重要なのは、「ポーランドやバルト沿岸諸国のような脆弱な国々に、私たちが背中を押していることを知らせるという意味で」迅速な対応を取ることだと発言している。

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ロシア、NATOの弱点「スヴァウキ・ギャップ」近くに軍事拠点を展開

Aug. 08, 2018, 10:45 AM 政治23,593

https://www.businessinsider.jp/post-172759

ロシアは近年、軍の拠点とその能力の拡大を進めている。

特にここ数カ月は、バルト海に面した飛び地、カリーニングラード州において軍事拠点の新設および増設の動きを見せている。

ロシアはバルト海に面した飛び地、カリーニングラード州での動きを活発化させている。

 

地球画像観測事業を展開するプラネット・ラボ(Planet Labs)が収集した衛星画像から、カリーニングラード州の町バルチースにある複数の掩体壕(兵士や物資を攻撃から守るための施設。通常、かまぼこ型のコンクリート製で上を土で覆う)で何らかの動きがあることが判明したと軍事情報誌ディフェンス・ワン(Defense One)は伝えた。バルチースクにはバルト海に面する不凍港と2つの空軍基地がある。

20183月から6月にかけて「目に見える変化があった。建造物の要塞化を進めているようだ。建造物には爆発物を保管する掩体壕の特徴が見受けられる。また構造を強化するために盛り土が行われている」とコンサルティング会社3ジンバルズ(3Gimbals)の上級地理空間アナリスト、マット・ホール(Matt Hall)氏はディフェンス・ワンに語った。

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ロシア・カリーニングラード州のフミリエフカ演習場で行われた大規模軍事演習「Zapad 2013」。2013926日。

ホール氏は衛星画像に映っている他の建造物も、同じ時期に強化された形跡があると語った。この地域は森林に覆われているため、ロシア軍の活動の詳細は分からない部分があるものの、木々の間にはさらに多くの建造物があるようだ。そして要塞化のレベルはそれぞれ違っている。

「一部の建造物に変化が認められる。天井を覆う構造物や防水シートが撤去され、保管されている物資が見えているところもある」とホール氏。

「加えて、新しい物資、あるいは再度補給された物資もあるようだ。輸送コンテナらしきものもある」

ホール氏はまた、衛星写真から線路が敷設されたことが分かるとディフェンス・ワンに語った。

カリーニングラード州はポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地、旧ソ連時代からの重要拠点だ。近年のロシア軍の増強の中で、カリーニングラード州での軍の活動は活発化している。さらに同州には、ロシア海軍のバルチック艦隊が配備されている。

カリーニングラード州のロシア軍は、NATO(北大西洋条約機構)との間の摩擦の原因となってきた。

201610月、リトアニアのダリア・グリボウスカイテ(Dalia Grybauskaite)大統領は、カリーニングラード州に核弾頭が搭載可能なイスカンデル・ミサイルが配備されたことに対して、「軍事力を誇示する攻撃的な行為であり、バルト3国のみならず、ヨーロッパ各国に対する侵略行為」と非難した。

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イスカンデル・ミサイルの最大射程距離は約500キロ、過去にも一時的にカリーニングラード州に配備されたことがある。だが20182月、グリボウスカイテ大統領はロシアはミサイルの数を増やし、「恒久的に」カリーニングラード州に配備したと語った。

ロシア議会防衛委員会の委員長はイスカンデル・ミサイルの配備を認め、東ヨーロッパにおけるNATOの勢力拡大への対抗策と語った。ロシアの広報官はまた、ロシアには自国の領土に軍を配備する「主権国家としての権利」があると述べた。

さらに6月に発表されたアメリカ科学者連盟(FAS)の報告書は、カリーニングラード州の他の地域にある核兵器保管施設とみられる場所でも、改築の動きがあることを明らかにした。

衛星画像から「クリコヴォ(Kulikovo)付近にある3つの掩体壕のうちの1つが2106年に掘り起こされたことが分かった。改築のためと思われ、2018年には再び覆われたことから、まもなく稼働状態に復帰するとみられる」と報告書は記した。

施設の詳細を決定づける衛星画像は少ないものの、報告書によると「施設の特徴から、ロシア空軍もしくは海軍の共同利用施設と考えられる。または、各軍の共同施設として、この地域の空軍、海軍、陸軍、防空部隊、沿岸防衛部隊のために核弾頭を保管している可能性もある」

対立は“驚くべきスピードでエスカレートする”

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100キロにわたってポーランドとリトアニアが国境を接する「スヴァウキ・ギャップ」。カリーニングラード州とベラルーシを隔てるように位置している。

カリーニングラード州に配備されたミサイルは、西ヨーロッパ各国への脅威として懸念が高まっている。さらに、カリーニングラード州はNATOのウィークポイントとされるスヴァウキ・ギャップ(Suwalki Gap)の近くに、ロシアが軍を配備することを可能にしていると欧州戦略分析センター(CEPA)が7月に公開した報告書は指摘した。報告書の著者の1人は、かつてアメリカ欧州軍の司令官だったベン・ホッジス(Ben Hodges)元中将。

スヴァウキ・ギャップは、カリーニングラード州とベラルーシの間に広がる地域。NATO加盟国であるバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)と他のNATO加盟国を結ぶ唯一の陸上経路となっている。

「スヴァスキ・ギャップには、NATOの戦略と配置における多くのウィークポイントがある」とCEPAの報告書は記した。

「仮にロシアがスヴァスキ地域の掌握を試みた場合、あるいは当地域でのNATOの人員や装備の自由な通行を脅かしただけでも、バルト3国は他のNATO加盟国から切り離されてしまい」、バルト3国への増援は妨げられてしまう。

NATO軍は2018年、スヴァスキ地域における機動力および相互連携能力に注力した軍事演習を実施している。

この地域をめぐって対立が起きれば「驚くべきスピードでエスカレートする恐れがある」と報告書は指摘した。だがホッジス元中将は、冷戦時代のような地上侵攻作戦にロシアが踏み切る可能性は低いと考えている。

「かつてのように、ロシアがヨーロッパに侵攻する意図を持っているとは思えない。そのような能力も持っていない」と元中将はディフェンス・ワンに語った。

ロシアはこの地域での危機を利用し、NATOが脅威に対して適切に、あるいはまったく対応できないことを示し、NATOを弱体化しようとしているのかもしれない。

「仮にNATOが加盟国を守れないことを示すために、ロシアが限定的な攻撃を行えば、それは大きな問題となる」

ロシアはNATOと接する国境に沿って、かなりの戦力を配置していると考えられる。また部隊を急速に展開する能力も持っているため、NATO軍にとっては、軍事演習なのか、実際の軍事作戦なのかを見分けることは難しい。

2013年と2017年に行われたロシア軍の軍事演習Zapadは、スヴァスキ・ギャップに侵攻し、バルト3国を他の西ヨーロッパ各国から切り離すというシナリオで行われた。

またバルト3国の上空空域ではNATOとロシアの航空機が異常接近するケースが増えている。

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スヴァスキに向かう米軍の車列。ポーランドの町、アウグストゥフ。

2014年のロシアのウクライナ侵攻以降、バルト3国は同様の可能性を懸念している。

2017年、リトアニアはロシアがプロパガンダとデマを用いる「キネティック・オペレーション」を準備していることを危惧していると語った。ロシアのクリミア併合の前にも同様の作戦が行われた。

リトアニアはロシアから、カリーニングラード州への通行路を永続的にロシアの管理下とするように圧力を受けている。そのような状況のもと、リトアニアはアメリカ軍に永続的な常駐を要請し、カリーニングラード州との国境にフェンスの建設を始めた。

CEPAの報告書は、スヴァスキ地域に対する行動を正当化するためにロシアが危機を誘発する複数のシナリオを提示した。シナリオではデマや政治的な手段を含む複合的な作戦を展開、非難をそらし、外部から見たときに状況を分かりにくくしている。

「もし(ロシア軍が)何かを企てるとしたら、非対称的なものとなるだろう。NATO側が察知する前に目標を達成するために」とホッジス元中将はディフェンス・ワンに語った。

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 古村治彦です。

 

 今回は2018年3月20日までにアメリカが北朝鮮を攻撃するという主張の論説をご紹介します。

 

 論稿の著者はジェイムズ・リカーズというアメリカ人です。弁護士で、金融の専門家のようです。1973年にジョンズホプキンズ大学を卒業し、1974年にジョンズホプキンズ大学ポール・ニッツェ記念高等国際問題研究大学院(SAIS)で修士号を取得、ニューヨーク大学法科大学院で法務博士号を取得しています。その後、ヘッジファンドのLTCMの幹部社員を務めるなど、長年にわたり金融業界で活動しているようです。

 

 古村治彦です。

 

 北朝鮮情勢について、南北対話が始まり、冬季オリンピック開催中は米韓軍事演習を中止するということになっています。緊迫した情勢が少し緩んでいるようです。

 

 しかし、中国に目を向けると、北朝鮮に対して厳しい姿勢を取るようになっています。北朝鮮に対する原油、石油製品、鉄鋼などの輸出を制限するという発表を行っています。北朝鮮に対する締め付けを強化するということになります。北朝鮮にしてみれば、重要なライフラインである中国からの輸入が制限されるとなると死活問題になります。エネルギー資源は寒い冬を乗り越えるためには必要不可欠であり、そこを締め上げられるとなると厳しい状態に置かれてしまいます。

 

 また、習近平国家主席が中国人民解放軍に対して、「死を恐れるな」という異例の訓示を行ったという報道が気になります。ここまでの厳しい言葉遣いを軍に対してできるのは、権力を完全に掌握していて、軍との関係で習国家主席が優位に立っているということを示しています。彼が言う自民解放軍が「死を恐れず」に対処すべき国防の大問題は、対北朝鮮ということになります。北朝鮮が何らかの「暴発」をした場合に、人民解放軍が北朝鮮国内に侵攻するということだと思います。

 

 米朝間の緊張関係にばかり注目が集まりますが、北朝鮮問題は中国が対処すべき問題であり、そのための覚悟を中国は示していると思われます。今年中に中国人民解放軍が北朝鮮に侵攻するということが現実に起きる可能性が高い、ということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「中国、北朝鮮への石油や鉄鋼などの輸出を制限」

1/5() 20:59配信 ロイター

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180105-00000072-reut-kr

 

[北京 5日 ロイター] - 中国商務省は、北朝鮮に対し原油、石油製品、鉄鋼などの金属類の輸出を制限すると発表した。6日から有効となる。国連は12月に新たな対北朝鮮制裁決議を採択していた。

 

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●「「死を恐れるな」─中国・習主席、人民解放軍に対し異例の激励」

1/5() 19:22配信 AFP=時事

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180105-00000039-jij_afp-int

 

AFP=時事】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は3日、自国軍に対し、アジアにおける地政学的な緊張が高まる中、戦備を整え、国家防衛に当たっては死を恐れてはならないと直截(ちょくせつ)な激励を行った。

 

 国営新華社(Xinhua)通信によると、習主席は同国北部の河北(Hebei)省に置かれた人民解放軍の中部戦区を視察した際、数千人規模の兵士らを前に、「苦難も死も」恐れてはならないと演説。

 

 さらに、ハイテク兵器の研究を強化して「実戦訓練」を実施するよう促し、「新時代の共産党および国民から課せられる任務を遂行するため、常に戦備を整えて臨戦態勢を取り、必ず勝利できる強力な精鋭部隊の創設」を求めたという。

 

 世界最大の軍隊に対する習氏の訓示内容は、翌4日夜になって公表された。国営メディアは、習主席から全軍へ向けられた異例の演説と報じている。

 

 習氏は昨年10月の中国共産党大会で、過去数十年間で最も強力な指導者としての地位を固めた。今回の演説や、多数の兵士や戦車を前にした画像には、絶対的指導者という新たに打ち出したイメージを強化する狙いがあるとみられている。【翻訳編集】 AFPBB News

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








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