古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ミッシェル・フロノイ

 古村治彦です。

 私は2021年5月、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を出版した。ジョー・バイデン政権が発足して4カ月ほど経過した時期だった。この本を実際に企画したのは2020年12月、書き始めたのは2021年1月頃のことだった。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 私はバイデン政権が発足する時点で「ヒラリー・クリントン政権でありかつ、第三次バラク・オバマ政権だ」と判断し、その顔触れについて調査するうちに、コンサルティング会社「WestExec Advisors」社の存在に行きついた。そして、この会社出身の人物たちが多くバイデン政権に入っていることに驚いた。そして、詳細にそれぞれの人物たちの名前を挙げて、バイデン政権がどのような政策を採用するかを予測した。それは「中国とロシアに戦争を仕掛ける」ということだった。実際にはロシアがウクライナに侵攻するという形になったが、世界は「戦争状態」になってしまった。

 今回、講談社の運営するウェブサイト「現代ビジネス」で連載を持っている、歳川隆雄というアメリカ政治ジャーナリストの大ヴェテランが、「WestExec Advisors」社の存在に注目する内容の記事を掲載した。その内容は、拙著の内容とほぼ同じだ。ここで日本人らしく、謙譲の美徳を発揮して、「おこがましいことだが」「光栄なことに」と書くべきだろうが、そういう取って付けた言葉がいらないほどに、同じである。それは、拙著をお読みくださった読者の皆さんもそのように判断されるだろう。拙著には人物の経歴や顔写真も入っているので、大変親切な内容になっている。

 拙著が出ても、あまり大きな反響はなかった。それは私の影響力のなさということがある。歳川隆雄氏のような著名な方が取り上げれば、少しは日本国内で話題になるだろう。そして願わくば、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』にも注目してもらえることを願う。「何を言うか、ではなく、誰が言うか」という言葉もある。歳川氏の記事の内容に興味を持ち、より詳しく知りたいと思われる方は、是非拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』をお読みください。

(貼り付けはじめ)

●「米バイデン政権「国務副長官」の後任は…政府要職を占めるコンサル出身者のからくり」

歳川隆雄

2023年9月2日

現代ビジネス

https://news.yahoo.co.jp/articles/7744b80ba025f3964822e13a3ff4810de0320930?page=1

https://news.yahoo.co.jp/articles/7744b80ba025f3964822e13a3ff4810de0320930?page=2

■国務副長官に二人の候補

 米バイデン政権のウェンディ・シャーマン国務副長官が728日に退任後、同ポストは空席だった。だが、今週になって米ワシントンの政界雀の間で後任の国務副長官候補の名前が話題になっている。

 最有力候補とされるのは、カート・キャンベル米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官である。米リベラル系メディアThe American Prospect(825 日付オンライン記事)が報じた。米誌ビジネス・ウィークの元コラムニストで、80歳現役のロバート・カットナー氏が寄稿した。

 818日にメリーランド州のキャンプデービッド(大統領の山荘)で行われた日米韓首脳会談の共同声明とりまとめからロジスティックまで統括したのがキャンベル氏だ。

 もう一人の候補は、ジョー・バイデン大統領のスピーチライターであるジョン・ファイナー大統領次席補佐官である。バイデン氏がオバマ民主党政権副大統領時代の国家安全保障担当補佐官だったイーリー・ラトナー国防次官補(インド太平洋担当)と共にバイデン氏を支えたことは周知の通り。

 日本でも馴染みが多く「知日派」として知られるキャンベル氏だが、2013年にコンサルティング会社「アジアグループ」を設立し、中国進出を目指す防衛関連企業やIT企業に助言を行うなどビジネス志向が強すぎるとの指摘もあったことが思い起こされる。それ故に、上院での人事承認が難航するとの懸念が少なくない。

 ここで筆者が注目するのはThe American Prospectのカットナー氏の寄稿文だ。同記事には次のような件がある。《彼は政府とのコネクションやアクセスを利用して彼らの利益に貢献した。キャンベルは基本的に貿易利益の仮面をかぶった企業の希望リストであった。今は廃案となったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大きな推進者でもあった。もし国務副長官に指名され、承認されれば、キャンベルは回転ドアの経歴を持つ他の2人の外交政策高官に加わることになる》。

■政府要職を占めるコンサル出身者

 かなりショッキングな内容だ。この「他の2人」とは、バイデン大統領の最側近であるアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)その人である。「えぇ~ブリンケンとサリバンもその手合いなの?」という声が聞こえてきそうだ。

 詳細を極めた同誌調査報道によれば、注目すべきはワシントンに本拠を置くコンサルティング会社WestExec Advisorsの存在である。そして同社の共同設立者がブリンケン国務長官であり、国防総省でインド太平洋政策を担うラトナー氏もまた同社出身というのである。早速、英語版ウィキペディアでWestExec Advisorsを検索し、そして驚いた。

 共同設立者・パートナーとして最初に写真付きで名前が記述されていたのはミシェル・フロノイ元国防次官(政策担当)である。もちろん、オバマ民主党政権時代だ。その他、幹部として名前を連ねているのはジョン・ブレナン元米中央情報局 (CIA)長官、ビンセント・ブルックス前在韓米軍司令官(退役陸軍大将)、エリック・グリーン元米NSCロシア担当上級部長、エミリー・ホーン元大統領特別補佐官(広報)、ダニエル・ラッセル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)、ビクラム・シン元国防次官補代理(南アジア担当)など歴代民主党政権の要路を占めた人物の名前が続く。CIAを含む16の米情報機関を継活するアブリル・ヘインズ国家情報長官もまた同社出身である。

 そして肝心なのは、ブリンケン氏、フロノイ氏に加えて、セルジオ・アギーレ元駐国連米大使首席補佐官、ニティン・チャダ元国防長官上級顧問の4人が2017年の同社創設メンバーであることだ。確かに、米国では4年に1回の政権交代時に「人材の回転ドア」と呼ばれる政府と民間の人材交流が実施される。それでも政府元高官と、せいぜい有力シンクタンク幹部の入れ替えが一般的だったと思う。

 日本では想像外の政府要路への人材供給システムなのだ。米国は「情報先進国」であるが、ふと頭に浮かんだ言葉は最近メディアで頻繁に見かける「忖度」と「便宜供与」であり、「情報リーク」と「機密流出」である。如何お考えだろうか――。

歳川 隆雄(ジャーナリスト)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ワシントンにある有名なシンクタンクである戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の副理事長を務めたマイケル・グリーンがシドニー大学アメリカ研究センター(U.S. Studies CentreUSSCCEOに転身したのが今年3月のことだった。これは都落ちの感がある異動であったが、別の面で考えれば、対中封じ込めのために、オーストラリアを取り込むため、最前線にグリーンが移動したということも言えるだろう。今年3月1日には、グリーンは、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げた、ミッシェル・フロノイ、ミーガン・オサリヴァンらと台湾を訪問している。グリーンはジャパンハンドラーズであるとともに、対アジア外交専門家として活動している。このブログでもマイケル・グリーンの動きは既にご紹介している。
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右端がマイケル・グリーン、隣はミッシェル・フロノイ

※「20220610日 ミッシェル・フロノイ創設のウエストエグゼク社がテネオに買収される予定:ミッシェル・フロノイがバイデン政権入りするのではないかと考えられる」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/86261152.html

 マイケル・グリーンの論稿では、アメリカは対中強硬姿勢で、民主党と共和党、ジョー・バイデン大統領(民主党)が率いるホワイトハウスと共和党が過半数を握る連邦下院が協力するということになるということだ。アメリカ社会の分断は深刻になっている。政治の世界でもなかなか一致点が見いだせない。そうした場合、外に敵を作って、団結するということはよくあることだ。ドナルド・トランプ政権で始まった米中貿易戦争路線を、ジョー・バイデン政権も引き継いでいる。そして、中間選挙で共和党が連邦下院で過半数を握っても大丈夫、対中強硬路線は引き継がれるということがマイケル・グリーンの主張だ。アメリカがまとまるには外敵をつくるしかないというのは、如何にアメリカ社会の分断が深刻化しているかを物がっている。

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アメリカ中間選挙の結果は、国家安全保障にとって正味のプラスになる(U.S. Midterm Results Are a Net Plus for National Security

-トランプ主義が縮小する中、国際主義の共和党(internationalist Republicans)は中国、防衛、貿易でバイデン政権に圧力をかけるだろう。

マイケル・J・グリーン筆

2022年11月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/11/us-midterm-election-republicans-biden-national-security-foreign-policy-defense-china-house-committees/

2022年の中間選挙の直前、私は『フォーリン・ポリシー』誌上で、共和党が連邦下院で勝利しても、アメリカの対中戦略競争にとって悪いことばかりではないと論じた。それは、共和党が国防費や貿易政策に対して注意を払い、バイデン政権のインド太平洋における同盟中心戦略(alliance-centric strategy)を中心に幅広い超党派的な支持を集めているからである。最終的な結果は数日から数週間は分からないにしても、実際の結果はそれ以上に良さそうだ。確かに、連邦下院共和党はハンター・バイデンや議員を退くリズ・チェイニー連邦下院議員を追及するかもしれない。そして、一般的には、バイデン米大統領の弱さを示し、アメリカの同盟諸国には連邦議会が機能不全に見えるような、パンとサーカスを共和党の支持基盤に提供するかもしれない。しかし、共和党が連邦下院の重要な委員会を支配することで、人々は表面に出てくる騒ぎを楽しむにしても、バイデン政権のタカ派と現実主義者が助かるという事実は変わらない。ケーブルテレビでジャコバン裁判を見ながら、外交政策の専門家たちは、作家のマーク・トウェインがドイツの作曲家リチャード・ワーグナーの音楽について言ったことを思い出すことだろう。それは、「そこまで酷いことはない(It's not as bad as it sounds)」だ。

まず、前回の論稿で評価分析したように、連邦下院の国防、国際関係、通商の主要委員会と小委員会のリーダーたちは、いずれも国際主義者で現実主義者(internationalists and realists)であり、国防への資源投入を推進するとともに、原子力潜水艦と先進防衛力を構築する豪英米協定(Australia-U.K.-U.S. agreementAUKUS)など、能力構築や同盟諸国との野心的な構想の進捗状況を精査することになろう。これは、多くの政策分野、特に貿易と抑止力拡大が、政権内の左翼保護主義者たち(left-wing protectionists)と軍備管理信者たち(arms control purists)の妨害に直面するバイデン政権を律するものである。

しかし、それに加えて、選挙の結果によって、共和党が連邦下院を支配し、連邦上院はこの原稿を書いている時点ではまだ未決定であることが予想され、中国との戦略的競争に向けた政権の組織化努力をより促進することになるだろう。

第一に、ドナルド・トランプ前米大統領とトランプ主義全般の縮小は、アメリカの民主政治体制が崩壊しているという有害なシナリオと戦っている海外のアメリカの外交官たちを助けることになる。例えばオーストラリアでは、最近、アメリカの選挙に関する報道がオーストラリアの国政選挙の報道を凌駕しているほどだ。2021年1月6日の暴動、選挙否定論、民主的な規範に対するトランプの非道な攻撃、民主的な選挙プロセスを制限しようとする過激派の運動という醜い光景をオーストラリア人たちが無視することは非常に困難だった。中国の脅威が同盟諸国をアメリカに接近させている今、友好国の政府が民主政治体制の方向性を見失ったかのようなアメリカへの依存を強めることを考えるのは不安であり、ワシントンの外交政策の急変は大統領選挙1回で起きる可能性がある。

先月発表された、アメリカ研究センターの調査では、オーストラリア国民の約半数がアメリカの民主政治体制の方向性について、「非常に懸念する(very concerned)」と答えている。これは、欧米諸国の同盟が共通の脅威(common threat)だけでなく共通の価値観(common values)に基づいている場合の問題点である。中国の公式な対米シナリオでは、中国のモデルよりも民主政治体制とその原則を強く支持する調査結果があるにもかかわらず、民主政治体制は最良の政府形態ではないことの証拠として1月6日の事件を定期的に取り上げている。中間選挙はこのシナリオを変え、世界中でアメリカの外交官の仕事を容易にする可能性が高い。投票率、当選者の多様性、中絶権に関する連邦最高裁の判決に対する反発、そして特にトランプ派の候補者が世論調査で劣勢だったことは、ワシントンの責任者が共和党と民主党のどちらを好むかにかかわらず、アメリカの友人にとって心強いものになる。

第二に、連邦下院での共和党の勝利の規模は、防衛と貿易に関してバイデン政権を後押しするために関連委員会に力を与えるにはちょうど良いと考えられるが、アメリカの関与(engagement)と長期戦略(long-term strategy)を弱めることを求める破壊者たちを更に増やすほど圧倒的なものではないだろう。もしケヴィン・マッカーシー連邦下院議員が連邦下院議長に選出されれば、ウクライナへの支援を削減しようとしたり、NATOに対するアメリカの関与(commitment)に疑問を呈したりする議員たちは、予想以上に少なくなるであろう。連邦上院を民主党が握れば、「アメリカを再び偉大にする(Make America Great Again)」派の国家安全保障分野での行き過ぎた行動を更に封じることができるだろう。連邦議会での戦略的競争に対する超党派の強い支持は、アメリカ研究センターなどの調査によるアメリカ国民の感情を反映しており、それが中間選挙の結果によって裏付けられた。

このことは、バイデンが率いるホワイトハウスが共和党の支配する連邦下院との取引を行うことができるとか、アメリカの同盟諸国がアメリカ政治の極端な部分を心配するのをやめるとか、極端な部分がなくなるとか、そういうことではない。しかし、過去3回の国政選挙(2018年、2020年、2022年)を貫くパターンがあるとすれば、選挙地図には反トランプの強い壁があり、連邦議会は、選挙の度に、最重要な外交政策問題について、分裂よりも統一された形になっているのだ。

※マイケル・J・グリーン:シドニー大学アメリカ研究センター所長、戦略国際問題研究所上級研究員、東京のアジア太平洋研究所名誉研究員。ジョージ・W・ブッシュ(息子)政権の国家安全保障会議のアジア担当幹部スタッフを務めた。ツイッターアカウント:@DrMichaelJGreen

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共和党の中間選挙勝利がアメリカの中国戦略を活性化させる(A Republican Midterm Win Will Boost U.S. China Strategy

-バイデン政権の中国政策の下でアメリカ国民を団結させるためには、ホワイトハウスと連邦議会の分裂が本当に必要なのかもしれない。

マイケル・J・グリーン筆

2022年10月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/31/us-midterm-elections-republicans-china-biden-trade-geopolitics-strategy/

来週の米中間選挙を前にして、両極化(polarization)が進んでいることは、バイデン政権にとって決して良い兆候ではない。世論調査の通り、共和党が米連邦下院の過半数を握れば、バイデン政権に対する党派的な攻撃の奔流が繰り広げられるだろう。2021年1月6日の事件を調査する委員会は解散し、ジョー・バイデン米大統領の息子、ハンター・バイデンは調査され、バイデンは弾劾手続きに直面する可能性がある。また、フォックスニューズの司会者タッカー・カールソンと彼のクレムリンへの崇拝に従う共和党の一部グループは、ウクライナへの資金提供を阻止すると脅迫するだろう。連邦議会による監視の目が厳しくなるのは歓迎すべきことだが、例えば、アフガニスタン撤退の失敗を検証するなど、ホワイトハウスにとっては苦痛であり、アメリカの指導力を懸念する同盟諸国にとっては不安なことだろう。

しかし、中国との競争に関する限り、バイデン政権の戦略でアメリカ国民を団結させるためには、政府の分裂が本当に必要なことかもしれない。なぜなら、共和党は民主党政権に対して、中国との競争において重要な2つの柱である防衛(defense)と貿易(trade)の公約を実現するよう求める傾向があるからである。同時に、米連邦議会と一般的なアメリカ国民は、中国という課題に立ち向かうという点では、他のどんなことよりも一致しているという事実が、潜在的な分裂を和らげることになるだろう。

歴史的な先例を考えてみよう。1994年の中間選挙に向け、ビル・クリントン政権は医療保険制度改革などの野心的な国内政策に政治的資源の大半を費やしていた。国防費は長期にわたって減少傾向にあり、外交政策は日本との保護主義をめぐる戦いや中国に対する最恵国待遇(most-favored nation status)をめぐる内輪もめに陥っていた。共和党が連邦下院を支配し、当時のクリントン大統領の国内政策が実質的に阻止された後、クリントンは国家安全保障にその努力と政治的資源を集中させた。日本との争いは急停止し、1996年には当時の橋本龍太郎首相が、北朝鮮や台湾など地域の有事に対処するために日米同盟を初めて強化・拡大する共同宣言を出し、わずか数年前まで酷い状態で漂流していた同盟を拡大させた。また、共和党が支配する連邦下院は国防費の削減を撤回し、アメリカ軍予算を着実に増加軌道に乗せた。2010年、バラク・オバマ大統領(当時)の最初の中間選挙で共和党が民主党から連邦下院と連邦上院を奪い、超党派連合が誕生し、オバマ政権が2011年に環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific PartnershipTPP)の枠組み合意文書に署名したときと同じことが起こった。この12カ国の貿易・投資協定は、2017年にドナルド・トランプ政権が協定から離脱しなければ、アジアにおける戦略的バランスを変化させることになっただろう。

懐疑論者たちは、「国防と貿易に前向きな共和党はもはや存在しない、つまり2016年にドナルド・トランプが大統領に当選した時に破壊された」と主張するだろう。確かに、共和党の支持層は貿易協定に懐疑的で、党内の「アメリカを再び偉大にする(Make America Great Again)」派からは危険な国内問題優先主義的な主張(isolationist voices)が出ている。しかし、中国との競争について、連邦議会ではかつてないほど超党派的な意見が交わされているのも事実だ。実際、中国との競争については最近のワシントンでは数少ないコンセンサスのある分野である。今年8月にCHIPS法(CHIPS and Science Act)を連邦議会で可決成立させたのは超党派の議員たちであり、その内容は、アメリカの半導体産業を活性化し、同盟諸国からの投資をアメリカに呼び込み、半導体開発をめぐる競争で中国に対する自由世界の優位性を維持するために、バイデン政権に500億ドル規模の予算を提供するというものだ。人工知能のような新興技術を支配するために。その法案の最初の作成者は、保守派でインディアナ州選出の共和党議員であるトッド・ヤング連邦上院議員であり、ニューヨーク州選出のリベラルなチャック・シューマー連邦上院議員が共同提案者となった。中国の脅威は、実に奇妙な仲間の、呉越同舟の枠組みを生み出している。

連邦下院司法委員会の委員長になると予想されるフリーダム議連所属のポピュリスト、共和党のジム・ジョーダン連邦下院議員は、弾劾審問やFBI・司法省への攻撃で見出しを独占するだろうが、国防、外交、貿易を管轄する委員会は、レーガン時代の国際主義者の指揮下に置かれることになるであろう。連邦下院軍事委員会の委員長に、共和党のマイク・ロジャース連邦下院議員が就任すれば、原子力潜水艦の建造や最先端技術の軍事力利用での協力に関する豪英米協定(通称AUKUS)のような同盟諸国との取り組みを遅らせている官僚的障害(bureaucratic obstacles)を取り除くよう米国防総省に働きかけることが予想される。委員会の共和党議員たちは1兆ドルを超える国防予算について話しており、周辺部の国内問題優先主義者(アイソレーショニスト)の声がどうであれ、インド太平洋のための軍事力の強化を図る可能性が高い。連邦下院貿易委員会の共和党筆頭委員であるエイドリアン・スミス連邦下院議員は、農産物輸出州であるネブラスカ州の出身であり、貿易に関する惰性的な習慣を克服し、アジアで新しい取引を行い、市場を開放するよう、バイデン政権に働きかけることは間違いないだろう。連邦下院外交委員会の共和党筆頭委員であるマイケル・マッコール連邦下院議員は、米国司法省の元テロ対策タスクフォースリーダー、連邦下院国土安全保障委員会委員長という確かな国家安全保障上の信条を持つ人物である。中国の強圧に対抗するため、より強固な同盟関係の構築を明確に打ち出している。

アメリカ国民は、同盟関係の強化、技術競争の加速、より野心的な通商政策も支持している。私が所長を務めるシドニー大学アメリカ研究センター(USSC)の依頼で実施した新しい調査の結果は、シカゴ世界問題評議会、戦略国際問題研究所、ピュー研究所など他の機関による調査結果を補強するもので、アメリカ国民が日本、オーストラリア、韓国との同盟関係を強く支持していることが明らかになった。2年前に行われたUSSCの世論調査と比較すると、これらの同盟がアメリカをより安全にしていると考えるアメリカ国民の割合は14ポイントも上昇している。ロシアのウクライナ侵攻や核の脅威、中国の台湾海峡での妨害行為などを受けて、アメリカ国民は同盟が単なる国際的な善意やワシントンの足かせではない、アメリカ自身の安全保障のためのものだと認識したということだろう。中国との完全な経済的分断(デカップリング)を支持するアメリカ人は20%に過ぎないが、アメリカ、日本、オーストラリアでは、自国が経済的に中国に依存しすぎていると考え、中国製でないスマートフォンにかなり高い金額を支払っても良いと考えており、中国と競争するために民主的同盟諸国の技術革新を支持する人が過半数を占めている。

貿易に関しても、共和党が支配する連邦議会は、予想以上に政権を後押しする可能性がある。バイデンを支持する有権者の過半数は、アメリカはTPPのような貿易協定に参加すべきだと答え、トランプを支持する有権者の大多数は参加すべきでないと答えているが、アメリカ国民全体の3分の2は、「アジアとの貿易と投資を拡大することが重要だ」という意見に同意している。数カ月後にスミス議員が連邦下院貿易小委員会の委員長を務めることになれば、より野心的な貿易政策を求める彼の主張がアメリカ国民に支持されていることに気づくだろう。スミス議員はおそらく、消極的な米国通商代表部に対して、「貿易協定」や「TPP」と呼ばれない限り、「インド太平洋経済枠組み」(単なる対話に過ぎない空想上の名称)を実質的なルール設定のための協定にするように働きかけるだろう。

このことは、アメリカ政治におけるポピュリズム(populism)、分極化(polarization)、ポスト真実の言説(post-truth discourse)の台頭が戦略的帰結をもたらさないことを論じるものではない。ヨルダンによるアメリカ政府機関への焼き討ち攻撃は、国防、外交、貿易に関する立法を行う委員会の平凡で手間のかかる仕事よりも、世界中で確実に注目を集めるだろう。海外の人々は、今回の中間選挙について懸念を持って見ている。USSCの調査によると、日本国民とオーストラリア国民の4分の3が、米中間選挙を自国にとって重要だと考えており、オーストラリア国民の半数はアメリカの民主政治体制の現状を憂慮しているという。しかし、もしバイデンが予想通り連邦下院を、そしておそらく連邦上院も失うことになれば、バイデン政権はインド太平洋における中国との競争について、連邦議会が新たな機運を高めていることに驚くかもしれない。どちらかといえば、最近の連邦下院共和党指導部の公約から判断すると、バイデン政権は連邦議会が中国を追いかけようとする熱意を抑えなければならないかもしれない。バイデンは、このような機会を捉え、中国とインド太平洋の戦略の欠けている部分(ミッシングピース)を埋めるべきである。

※マイケル・J・グリーン:シドニー大学アメリカ研究センター所長、戦略国際問題研究所上級研究員、東京のアジア太平洋研究所名誉研究員。ジョージ・W・ブッシュ(息子)政権の国家安全保障会議のアジア担当幹部スタッフを務めた。ツイッターアカウント:@DrMichaelJGreen

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げたウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社だが、ジョー・バイデン政権高官にはその出身者が15名を占めている。今回はその顔ぶれを詳しく紹介している記事を紹介する。国務長官のアントニー・ブリンケンとアメリカ情報・諜報機関のトップである国家情報長官のアヴリル・ヘインズだけにとどまらず、数多くの人物がバイデン政権の中枢を支えている。一企業の出身者たちがこれほど政権に参加することは前代未聞のことで、「倫理規定違反ではないか」という声も上がっている。

 ウエストエグゼク。アドヴァイザーズ社が巨大企業500社を顧客にしているのは、バイデン政権との強力な人脈関係を持っているからだというのは明白なことだ。このブログでも紹介したが、ウクライナ戦争が始まってからは、ウエストエグゼク社の経営パートナー(共同創設者)であるミッシェル・フロノイ(オバマ大統領時代に国防次官、クリントン大統領時代に国防次官補)には各巨大企業のCEOたちからひっきりなしに連絡が来て、助言を仰いでいるということだ。バイデン政権の意向を一番掴みやすいい民間の存在がウエストエグゼク社ということになる。

 拙著と合わせて以下の記事をよく読んで欲しい。私が何か荒唐無稽なことを言っていたのではないということが分かるはずだ。

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ジョー・バイデン政権に人材を派遣しているコンサルティング会社に目を向ける(MEET THE CONSULTING FIRM THAT’S STAFFING THE BIDEN ADMINISTRATION

-ウエストエグゼク社(WestExec)は、トランプ時代を通じて大企業の代理人を務めていた。そうした人々が今、ホワイトハウスにいる。

ジョナサン・ガイヤー、ライアン・グリム筆

2021年7月6日

『ジ・インターセプト』誌

https://theintercept.com/2021/07/06/westexec-biden-administration/

ホワイトハウスからわずか数ブロックしか離れていない本社で、元大使たち、弁護士たち、バラク・オバマ大統領時代に政権高官に任命された人々からなる小規模で強力なチームが、過去数年間、世界の各大企業のために問題解決に取り組んできた。

バイデン政権発足から半年足らずで、ウエストエグゼク。アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)という会社の15人以上のコンサルタントが、ホワイトハウスやその外交政策機構、法執行機関などに散らばっている。そのうち5人はすでに政権内で仕事を行っており、高官ポストへの指名を受けており、他の4人はバイデン-ハリス政権移行チームに所属していた。ワシントンの基準からしても、特に2017年に立ち上げたばかりの会社としては、政権と民間の間を行き来する回転ドアを通過する驚くべき前進となっている。このパイプラインは、バイデン政権内部にウエストエグゼク社の出身者たちを圧倒的な数配置し、国家情報長官や国務長官といった影響力のある最高幹部クラスに人材を据えている。一方、ウエストエグゼク社の顧客たちは、ハイテクや防衛の分野で、かつてのコンサルタントたちが現在設定・実行する立場にある政策と交錯し、論議を呼んでいる。

ウエストエグゼク社の出身たちが新しく政権に就くと、国務長官の場合は見出しで、サイバーセキュリティの責任者の場合は業界誌でと、さまざまな報道がなされた。一介のコンサルティング会社が外交政策立案を独占していることはほとんど気づかれなかった。このような政策立案者たちのネットワークは孤立しており、集団思考(groupthink)や利益相反(conflicts of interest)、また、矛盾しているかもしれないが、合法化された汚職(legalized corruption)と呼ばれるようなことが起こる可能性が懸念される。

ウエストエグゼク社は顧客情報を正式には公開しておらず、公開されている財務報告書も大まかな内容しか提供していない。ワシントン大学(セントルイス)法科大学院のキャサリン・クラーク教授は、数十年前に作られた政府の倫理法は、一企業から15人もの政府高官が出るような状況に対応できるものではないと言う。クラーク教授は続けて「彼らは政府に雇われているのは確かだ。それは認める。しかし、彼らは実際にアメリカ国民のために働いているのか、いないのか? 彼らの忠誠心はどこにあるのだろうか? 民間部門は本質的に公共部門を利用することができる」と述べている。

ホワイトハウスの報道官は声明の中で「これらのホワイトハウス高官たちは経験豊富な政府のリーダーたちであり、以前の民間部門での経験は、彼らが政府の仕事にもたらす幅広く多様なスキルの一部である」と述べている。ウエストエグゼク社は今回期の記事のための詳細な質問リストに回答することはなかった。

ウエストエグゼク社は、「他を圧倒する地政学的リスク分析」を売りの一つとしているが、現在、ウエストエグゼク社出身者たちが権力者の周辺において飽和状態にあることからも、それが確認できる。ウエストエグゼク社は、ハイテク新興企業を防衛契約に参加させることに成功し、防衛企業のハイテクによる近代化を支援し、多国籍企業の中国進出を支援することにも取り組んでいる。ウエストエグゼク社の協力者の一人が、防衛を中心とした投資グループ「パイン・アイランド・キャピタル・パートナーズ社(Pine Island Capital Partners)」で、昨年、SPAC(白紙委任会社)を立ち上げた。トニー・ブリンケンはパイン・アイランド社の顧問を務め、株式の一部を保有する共同オーナーでもある。ウエストエグゼク社のもう一人の共同設立者であるミシェル・フロノイは、国防長官への指名が見送られた。ジョー・バイデン大統領は、代わりにロイド・オースティンを指名した。オースティンはパイン・アイランドの元パートナーだが、ウエストエグゼク社のコンサルタントではなかった。

ウエストエグゼク社が「ブティック」となっているのは、幹部たちがベテランの政策立案者と顔を合わせる時間を確保できると約束したことだ。2020年、ウエストエグゼク社の共同創設者の一人は、「他の会社は、大物のために人を集めるが、大物に会うことはできないと感じていた。トニーはクライアントたちからの電話に出る」と述べている。

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ブリンケンは現在、国務長官を務めている。ブリンケンは、通信大手のAT&T、防衛大手のボーイング、物流大手のフェデックス、メディア企業のディスカバリーといった有名企業の顧問を務め、ウエストエグゼク社の創業パートナーでもあった。また、フェイスブック、リンクドイン、マイクロソフト、ウーバーといった大手IT企業にも助言を行った。スピーカービューローのGLG、美術品販売のサザビーズ、バイオ医薬品のギリアド・サイエンシズなどニッチな企業もサポートした。また、ブラックストーン、ラザード、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ、サウジアラビアと大規模な取引を行う多国籍コングロマリット「ソフトバンク社」など、グローバルな投資会社や資産運用会社もクライアントに名を連ねていた。また、コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーの顧問も務めた。ブリンケンは2020年7月、『ジ・アメリカン・プロスペクト』誌がウエストエグゼク社との関係について問い合わせた後に、同社を去った。しかし、これらの事業は、バイデン政権内で外交政策を実行する際に彼の計算に影響を与える可能性があるとして国際的に注目されている。

ブリンケンは、国務省の主要スタッフの何人かをウエストエグゼク社から連れてきている。ブリンケンの上級補佐官であるジュリアン・スミスは、ボーイングとソフトバンクを顧客としていた。スミスはシンクタンクのジャーマン・マーシャル・ファンドで常勤の仕事を持ちながら、ウエストエグゼク社のコンサルタントとして3万4000ドルの収入を得ていた。スミスは、NATOの米国常任代表に指名されている。ブリンケンはまた、ウエストエグゼク社のエグゼクティブ・アシスタントを務めたサラ・マクールをスケジュール管理担当として国務省に呼び寄せた。元駐アラブ首長国連邦米国大使のバーバラ・リーフは、ウエストエグゼク社に勤務し、全米バスケットボール協会(NBA)に助言を行った。彼女はその後、国家安全保障会議で中東担当上級部長を務めた。リーフは、国務省近東担当次官補になるための連邦議会承認を待っている。一方、オバマの駐イスラエル大使で、同僚によれば「非常に忙しい」初期メンバーのコンサルタント、ダニエル・B・シャピロの名前が中東特使として浮上している。ジ・アメリカン・プロスペクトは昨年夏、ウエストエグゼク社の顧客のひとつが、船舶追跡を専門とするイスラエルの人工知能企業ウィンドワード社であることを明らかにした。

ウエストエグゼク社はまた、バイデンの最も強力な情報・諜報機関のトップがトランプ政権時代をやり過ごすための快適な場所を提供した。アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、早い時期にウエストエグゼク社のウェブサイトから名前を消されてしまったが、2017年10月から2020年7月まで同社で働き、外交政策担当としてバイデンの政権移行チームに参加した。彼女の承認公聴会の前に記入された報告書によると、彼女はフェイスブック、JPモルガン・チェイス、マイクロソフト、オープン・フィロソフィーなどクライアントに対して、「サイバー規範、国家安全保障上の脅威、国防省による機械学習システムのテスト、評価、検証、検証」についての「戦略的アドバイス」を提供したということだ。CIAのデイヴィッド・S・コーエン副長官は、ヘインズやブリンケンとともにウエストエグゼク社の「コアチーム」の初期メンバーであった。しかし、彼のクライアントが誰であったかを知ることは不可能だ。スパイ機関の関係者に対する免責事項により、彼の情報公開は公にされていない。

ワシントン大学(セントルイス)の倫理専門家であるクラーク教授は、「スパイ機関の官舎に対する免責事項は彼らが公的な説明責任から免除されることだ。そしてそれは、私たちが必ずしも内部統制と外部の公的な開示に頼ることができないので問題となるのだ」と述べた。CIAの広報担当者は、コーエンがウエストエグゼク社で助言を行っていた顧客企業について述べることを拒否した。

そして、最近連邦上院が国家サイバー局長として承認したクリス・イングリスがいる。彼はウエストエグゼク社から1万5000ドルを得て、インターネット・セキュリティ企業のクラウドストライク社と電子メール暗号化企業のヴァ―チュー社に助言を行っていた。

2017年の創業以来、ウエストエグゼク社は防衛、情報、法執行機関の能力を強化することに注力してきた。シリコンヴァレーのベンチャー企業であるリッジライン社(Ridgeline)と提携し、自らを「ミッション・ドリブン」であると述べている。つまり、軍との連携を避ける一部のハイテク企業と異なり、リッジライン社は軍事関連製品製造を求めていると説明している。コーエンもイングリスもリッジライン社のウェブサイトに登場し、そのパートナーシップを通じて、ブリンケンはこのヴェンチャーグループの多くの投資先企業に投資している。無名の新興企業は、奇抜な名前(アゴロ、ドゥードル、ウォーラローなど)だが、ドローン、人工知能、ロボットなどの先端技術を開発している。ウエストエグゼク社の出身者たちは、新興技術に深く関わっているため、政府が承認する契約に影響を与える政策立案の役割を担うことになり、利益相反が生じる可能性がある。

政権で最も注目される人物の一人もウエストエグゼク社で働いていた。現在ホワイトハウス報道官を務めるジェン・サキは、ウエストエグゼク社の上級アドヴァイザーとして、イスラエルの顔認識ソフトウェア会社エニーヴィジョンの危機管理コミュニケーションや、非営利団体スピリット・オブ・アメリカのアドヴァイザーを務めた経験がある。

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(写真に取り上げなかった人々)国内政策問題担当大統領補佐官の補佐官エリン・ペルトン、国務長官予定管理担当部長サラ・マク―ル、国防次官補(承認待機中)セレステ・ワーランダー、バイデン=ハリス政権移行チーム顧問アンドレア・ケンドール=テイラー、クリスティーナ・キリングスワース、ジェイ・シャンボー、プニート・タルワー、米国サイバースペース・ソラリウム委員会副部長ジョン・コステロ、人工知能に関する国家安全保障委員会副委員長ロバート・O・ワーク。

各企業が新型コロナウイルス感染拡大の大規模な課題に直面する中、リサ・モナコはブリンケンによる顧客への助言に参加した。モナコはウエストエグゼク社のアドヴァイザーとして、ボーイング社やソフトバンク社に助言を行った。現在、モナコは米国司法副長官を務めている。マット・オルセンは、ウーバーのUberの幹部として数百万ドルを稼ぐ前、早くからウエストエグゼク社の部長を務めていた。バイデン大統領はオルセンを司法次官補(国家安全保障部門担当)に指名した。

イーライ・ラトナーは国防次官補(インド太平洋安全保障問題担当)として中国政策を策定している。政府倫理局の報告書によると、ウエストエグゼク社で、ラトナーは「支払請求可能な時間は、顧客を特定しない背景白書のための仕事をしており、ほとんどの収入はウエストエグゼク社からの支払いだった」ということだ。ラトナーは、ウエストエグゼク社では1万1450ドルの収入しかなかったが、シンクタンクであるセンター・フォ・ア・ニュー・アメリカン・セキュリティ(Center for a New American SecurityCNAS)で40万ドル以上を稼いでいた。

ウエストエグゼク社のシニアアソシエイトであったガブリエル・チェフィッツは国防総省の政策担当次官特別補佐官として入省した。バイデンは2020年6月、ウエストエグゼク社の上級アドヴァイザーだったセレステ・ワーランダーを国防次官補(国際安全保障問題担当)に指名した。

ウエストエグゼク社のコンサルタントは、人脈も血筋も豊富なので、複数の仕事、役職、肩書きを兼任していることが多い。そのため、ウエストエグゼク社の元上級アドヴァイザーであるエリザベス・ローゼンバーグのような人物が事前の紹介なしに財務省の高官に就任できるのだ。2020年5月末、バイデンはローゼンバーグを財務次官補(テロ組織資金捜査担当)に指名した。リンクドインのプロフィールによると、ローゼンバーグは「金融の透明性を促進する」ための連邦政府のイニシアチヴを管理してきたという。ホワイトハウスが指名を公表した経歴書には、ウエストエグゼク社での役割は抜け落ちていた。

米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)の高官たちのオフィスもまたウエストエグゼク社でコンサルタントを務めいた人物たちであふれている。コリン・トーマス・ジェンセンは「サハラ以南のアフリカにおけるデューデリジェンス(due diligence、訳者註:企業売種の前の調査活動)と政治リスクの回避についてウエストエグゼク社と同社の顧客たちに助言」し、その顧客にはボーイング、ソフトバンク、そして訴訟への融資を専門とするベンチャーキャピタル会社デルタ・キャピタル・マネジメントが含まれていた。2022年4月、トーマス・ジェンセンは国家安全保障問題担当補佐官としてUSAIDに参加した。同じ月、ウエストエグゼク社のラテンアメリカ担当だったマイケル・カミレリは、サマンサ・パワーUSAID長官の上級顧問と、USAIDの中米北部三角地帯タスクフォース(訳者註:エルサルヴァドル、グアテマラ、ホンジュラス)担当の上級部長を務めることとなった。ウエストエグゼク社のコンサルタントとして、カミレリはブラックストーン、ソフトバンク、インテル創業者が創設した数十億ドル規模の非営利団体ゴードン&ベティ・ムーア財団、鉱物採掘企業のリオティントなどに助言していた。

この会社が作り出すのは対外政策だけではない。ホワイトハウスで国内政策の上級補佐官を務めるエリン・ペルトンは、ウエストエグゼク社に助言サーヴィスを提供した。また、商務省産業・分析担当次官補に指名されたグラント・ハリスは、ウエストエグゼク社とつながりがある。彼の個人的なコンサルティング会社であるコネクト・フロンティアは、発展途上諸国の市場で活動する企業や団体に助言を与えていた。そして、ハリス自身がウエストエグゼク社に採用されたのである。

バイデン政権内部の中堅クラスの人材もまたウエストエグゼク社に絡んでいる。バイデン=ハリスの政権移行チームは、ウエストエグゼク社のコンサルタント、アンドレア・ケンドール=テイラー、プニート・タルワー、ジェイ・シャンボー、クリスティーナ・キリングスワースの助言を受けた。さらに、ウエストエグゼク社のメンバーは影響力のある超党派の連邦委員会を監督している。ロバート・O・ワーク(人工知能国家安全保障委員会)、ジョン・コステロ(サイバースペース・ソラリウム委員会)などが超党派の連邦委員会を監督している。

ブリンケンは開業当初のパンフレットの中で次のように述べている。「ウエストエグゼク社のアドヴァイザーたちは、政府の最高レベルにおいて、国際的な危機が意思決定に及ぼす影響を予測し、ナビゲートしてきた。私たちは、世界中のビジネスリーダーに同党の洞察力と戦略を提供することが可能だ」。

ブリンケンが政権に復帰して半年が経った今でも、ウエストエグゼク社の共同創設者で経営パートナーのナイティン・チャッダの「リンクドイン」のプロフィールには、このパンフレットが掲載されている。これは、潜在的な顧客たちに対して、この会社ウエストエグゼク社が権力に永続的に接近していることを印象付けるものだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で私がアメリカのジョー・バイデン政権の閣外のキーパーソンとして挙げたミッシェル・フロノイ(オバマ政権時代には国防次官、クリントン政権時代には国防次官補)は、現在コンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の経営パートナー(共同創設者でもある)を務めている。ウエストエグゼク社は地政学面、安全保障面で各大企業に助言を行っている。CEOたちがフロノイに直接コンタクトを取り、これからどうなるか、自分のところの企業はどのように行動すべきかを質問している。
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ミッシェル・フロノイ

 3月と4月にフロノイのインタヴューを基にした記事がアメリカで発表されており、その内容を知ることは私たちにとって有益である。それは、ウエストエグゼク社出身者たちが10数名バイデン政権入りを果たし、高官として中枢で働いているからだ。フロノイの考えを知れば、それはバイデン政権の考えを知る手掛かりとなり、更に言えば、アメリカ政府は「このように動かしたい」と考えていることが分かるからだ。

 ウクライナ戦争はウラジミール・プーティン大統領のロシア軍の能力への過信と、ウクライナ軍と国民の抵抗力、西側諸国の反応に対する過小評価が引き起こしたとフロノイは指摘している。それはウクライナ戦争経過2カ月頃まで、ロシア軍の苦戦とキエフを奪取できなかったことで明らかだ。しかし、それ以降はロシア軍が東部に戦力を集中し、確実に支配地域を拡大している。欧米諸国の対露制裁と対ウクライナ支援の効果は限定的と言わざるを得ない。その結果として、戦争は膠着状態に入りつつある。

 ウクライナ戦争によって、これまでの西側諸国とロシアとの関係は大きく変化し、ロシアに対しては、たとえ戦争が終結しても、プーティンが権力の座にある限り、制裁は続くということになるとフロノイは指摘している。しかし、制裁の効果は限定的となるだろう。それは、西側以外のそれ以外の国々がロシアとの取引を続けるからだ。それらの国々全てに対して西側が制裁を科すということは不可能だ。

 フロノイは今年3月にバイデン大統領が派遣した台湾訪問団に加わっている。中国と台湾に関する問題では、中国がすぐに台湾に侵攻することはないと見ている。これはその通りだと思う。中国はウクライナがロシア黒海艦隊の旗艦モスクワをハープーンミサイルで撃沈させたことを重視している。中国にしてみれば台湾の防衛力は侮れない。また、現状を大きく変更し、リスクを冒して台湾に侵攻する理由は存在しない。ちょっと考えればこんなことはすぐ分かるはずだが、一部のお調子者と好戦主義者たちが「台湾は次のウクライナだ」と盛んに宣伝していたが今はその声も聞こえなくなっている。

 フロノイが台湾訪問団に参加したことで、私はバイデン政権入りがあるのではないかと見ているが、それがなくても、彼女がキーパーソンであることは間違いないし、ウエストエグゼク社が重要な存在であることは間違いないところだ。

(貼り付けはじめ)

CEOたちはウクライナについて沈黙を守るべきではないし、それ以外の様々な国際的な諸問題についても沈黙を守ることは不可能だ。トップのアドヴァイザーはこのように述べている(CEOs couldn't afford to stay quiet on Ukraine, and they won't be able to stay quiet on other global issues either, top advisor says

マーガレット・ウォード筆

2022年4月4日

『ビジネス・インサイダー』誌

https://www.businessinsider.com/ukraine-russia-michele-flournoy-ceo-leadership-2022-3

・ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同設立者であるミッシェル・フロノイは、地政学的な事象について各大企業のCEOたちに助言している。

・ミッシェル・フロノイは、本誌『ビジネス・インサイダー』とのインタヴューで、ロシアの侵攻についてCEOたちが抱いている疑問について語った。

・フロノイはまた、CEOたちが世界の緊急課題に対してもはや沈黙を守ることができない理由についても語っている。

ミッシェル・フロノイは、20年以上にわたり、世界のトップリーダーたちに、地政学的な出来事をどのように乗り越えていけばよいかを助言してきた。ビル・クリントン大統領時代とバラク・オバマ大統領時代には国防総省高官を務めた経験を持つ。そして今、フロノイはCEOたちが変化する世界を進んでいるのを助けている。

2021年12月、フロノイの携帯電話には、メールやテキスト、電話などを通じてひっきりなしに連絡が来るようになった。連絡をしてくるのは世界トップクラスのビジネスリーダーたちだ。ジョー・バイデン大統領が、当時疑われていたロシアのウクライナ侵攻計画について、公の場で発言したところだった。CEOたちは「これをどう受け止めればいいのか?」 とフロノイに異口同音に質問している。

それ以降、フロノイは他の「CEOの助言者たち」と共に、ロシアのウクライナ侵攻に対応するビジネスリーダーを支援するために、裏舞台で活動を続けている。地政学的コンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同設立者兼経営パートナーであるフロノイは、「侵略は、CEOの役割について、単に利益を上げるだけのリーダーではなく、世界を舞台にしたリーダーとして振る舞うようにするよう、変えようとしている」と述べた。

実際、2020年以降、CEOたちは人種差別、警察による暴力、投票権などの問題について発言するよう、より大きな圧力に晒されている。そして、この2カ月間で、エクソンモービル、マクドナルド、ディズニーなど500社近くが、ロシアからの事業撤退、事務所や店舗の閉鎖、ロシアとの全面的な関係断絶を行った。

ウエストエグゼク社の顧客リストは非公開となっている。フロノイは、契約上のプライバシーに関する規定があるため、現在または過去の顧客名を明かすことを拒否し、公開される報告書には顧客名は記載されない。

フロノイは「CEOたちは、自分が歴史のどちらの側にいるかという選択をすることになる。"彼らはそうした選択を好まないかもしれないが、それが今の世界の事実だ」と述べている。

本誌はフロノイに、ロシアのウクライナ戦争についてCEOたちが彼女に質問する一番の疑問、高い利害関係、そしてこの瞬間が将来のビジネスリーダーにとって何を意味するのかについて話を聞いた。

このインタヴューは編集され簡潔にまとめられている。

●ロシアのウクライナ侵攻に対して拡大企業のCEOたちが強く反応した。それは何故か?

■ビジネス界からの反応は驚くほど強く、多くの人々が予想していたよりも強かった。私たちが話を聞いたCEOたちの中で、ウラジミール・プーティンのシナリオを信じた人はいなかったと思う。彼らは、プーティンがウクライナに軍事介入する正当な理由があるとは思っていない。二つ目に、より大きな問題は、ロシアが直接的かつ執拗に民間人を標的にする戦術を採用していることだ。これはとても恐ろしいことだ。これは違法なだけでなく、非道徳的であり、見るに耐えない。CEOたちの側にも直感的な反応があり、彼らは「こんなことに加担する訳にはいかない。このようなことに無関心でいることはできないし、ロシアと関係を持っているように見られることも許されないのだ」と考えている。

●ウクライナについてCEOたちからどのような質問をされるのか?

■多種多様な質問が出されている。具体的には、「紛争はいつまで続くのか? 制裁はいつまで続くのか? サプライチェーンやロシアの石油・ガスに依存しているヨーロッパへの長期的な経済的影響はどうなるのか? この後、ヨーロッパはどうなるのか? どのように終わるのだろうか? 従業員のケアはどうすればいいのか?」という質問が出されている。

●この2年間、世界はジョージ・フロイドの殺人事件、新型コロナウイルス感染拡大、環境・社会・ガバナンスの目標に対する投資家の要求の高まりを目の当たりにしてきた。これらの出来事は、各大企業のCEOたちの対ロシア行動にどのような影響を与えたのか?

■ここ数年、CEOたちは、政策を避けようとしても、政策は必ず後についてやってくるという事実に敏感になっているように考える。ワシントンを避けようとしても、ワシントンはあなたを見つけに来るのだ。地政学を避けようとしても、地政学は必ずやってくるのだ。

CEOたちは、このような非常に重要な道徳的問題や政策的問題について、自分たちの見解を持たなければならない。なぜなら、CEOたちの見解について、株主は気にし、市場は気にし、顧客はしばしば気にするからだ。

また、CEOたちは、社員たちのケアについても積極的に考えている。CEOたちは、次に起きる地政学的な紛争について考えている。例えば、「中国と台湾の対立が起きたら?」ということだ。CEOたちは今、万が一に備えた計画を立てているところだ。

CEOたちは今日、明らかに地政学的な出来事に対処しなければならない。これは新しい現象なのか? それとも、昔からそうだったのか?

■私自身は、優秀なCEOは常にこの部分を理解していると確信している。しかし、今起きていることは、経済統合が進み、主に効率化のために構築されたサプライチェーンによって、私たちを切り離すことが非常に難しくなっていることだと考える。これは、経済統合やグローバライゼーションの本質であり、過去30年以上の傾向だ。この30数年のトレンドにより、世界のつながりはより強固なものとなっている。

地政学的な諸問題は、今やCEOの課題として取り上げざるを得ないのだ。そして、このような状況下で企業がどのように行動するかについて、一般の人々の認識や懸念、判断が高まり、地政学的諸問題はCEOや取締役会の議題としてより高いレベルの優先度を持つようになった。

CEOたちが地政学的な諸問題に関与する傾向が強まっていることに対し反発の声もある。ゴールドマン・サックスのCEOデイヴィッド・ソロモンは、ロシアを排除するのはビジネスリーダーの仕事ではないと述べた。

■そうではあるが、ゴールドマン・サックスはロシアから撤退した最初の金融機関となった。

政策を決めるのはCEOたちの仕事ではない。しかし、彼らはその金融的な規模と経済的な重さゆえに、このシステムの一員となっている。

●ロシアでの紛争はビジネス史において転換点なのだろうか?

■ヨーロッパの秩序を決定するだけでなく、プーティンにとって有益なものになるかどうかで、他の権威主義的指導者の行動にも影響を与える大きな出来事だと私は考える。他の権威主義的指導者たちは、この瞬間を見て、目的を達成するために力を行使しようと考えている。

また、エネルギー分野のビジネスリーダーにとっても重要な瞬間となると思う。この危機によって、ヨーロッパ諸国は今後10年間、ロシアの石油やガスから離脱するための投資を余儀なくされると思う。また、サプライチェーンがロシア産の希少な鉱物に依存している分野もあると考える。そのようなビジネスの多くは、他の供給源を探すために奔走することになるだろう。また、特定の国への小麦や穀物の輸出にも影響が出るだろう。

●これからの5年間であなたのCEOたちと関わる役割はどのように進展していくと考えるか?

■私たちは現在国際的により大規模な競争の時代に生きていると私は考えている。アメリカが経済的、技術的な優位性を維持しながら、自分たちの価値観に忠実であろうとするためには、ここが本当の意味での勝負どころである。つまり、企業のトップたちはアメリカの優位性と価値観の維持にとってのキープレーヤーであり、彼らが競争力を維持できるようにすることが非常に重要なのだ。特に、悲しいことに国際秩序を変えようとする権威主義的な国家が再び台頭している今、これは非常に重要なことだ。

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元国防次官はウクライナ戦争の混乱の中どのように進むかに関して、各大企業にどのように助言しているのか(How A Former Under Secretary Of Defense Is Advising Companies To Navigate Ukraine War Disruptions

スティーヴン・エウリッチ筆

2022年3月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/stevenehrlich/2022/03/08/how-a-former-under-secretary-of-defense-is-advising-companies-to-navigate-ukraine-war-disruptions/?sh=7da5ea09b54d

「物事は良くなる前に悪くなるものだ」。これは、バラク・オバマ大統領時代に国防次官を、クリントン大統領時代に国防次官補を務めた、ミシェル・フロノイが、ロシアとウクライナの戦争についてクライアントたちから尋ねられたときに最初に伝えるアドヴァイスだ。

ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同創設者であり、現在経営パートナーを務めるフロノイは、1945年以来ヨーロッパで最大の陸上での戦争を引き起こした状況や、今後数ヶ月、数年先まで必要となる難しい選択について企業が理解できるよう日夜手助けを行っている。ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は現在、ボストンコンサルティンググループと提携し、各企業の経営陣や民間企業に助言を行っている。

本誌『フォーブス』とのインタヴューの中で、フロノイは、弾丸や迫撃砲が止まれば、いつであろうとすぐに物事が正常に戻るという、よくある誤解を否定している。実際、戦闘が終わった後も、課題はずっと続くとフロノイは述べている。フロノイは「紛争自体の解決には相当な時間がかかるだろうし、その後もプーティンのせいで多くの制限や制裁の一部が残るだろう」と語った。

フロノイは、この紛争がこれほどまでに難航するのは、プーティン側の一連の不手際と間違った思い込みが、彼を泥沼に陥れたからだと指摘している。中でも、米国とヨーロッパの同盟諸国がロシアの金融部門と中央銀行に対して前例のない制裁措置を取ったが、このような厳しい統一的な対応をとることを予測できなかったことが大きい。フロノイは「NATOが示した団結の度合いにプーティンは強いショックを受けたに違いない」と述べた。

彼女はまた、プーティンがロシア軍の能力が「近代的」だという誤った信頼を寄せていたと指摘している。プーティンは、おそらく「イエスマン」に囲まれているために、彼は2014年のウクライナ南東部のクリミア半島の併合と同様の迅速な勝利を期待するようになったとフロノイは主張している。

最後の、そしておそらく最重要なことは、ウクライナの人々の意思を否定したことである。フロノイは次のように語った。「プーティンはロシア軍の能力を過大評価し、またウクライナ軍の能力とウクライナ国民が冷戦終結後に経験した民主政治体制と自由のために戦おうとする度合いを過小評価したのだ」。

ウクライナ軍の能力とウクライナ国民の決意のために、ロシア、特にプーティンは、不利な結果や膠着状態を目にする可能性がある。実際、従来の常識では、ロシアの軍事力の大きさが最終的にウクライナを降伏させるに違いないと考えられてきたが、フロノイは必ずしもそうではない可能性を示唆している。「アメリカのロシア軍分析者たちの間では、彼ら(ロシア兵)がキエフを包囲することはできないのではないか、という憶測が流れている。たとえ主要都市が陥落しても、ロシア軍に対抗するための十分な資金と洗練された抵抗軍が存在する」と彼女は予想を立てている。

今日の紛争と歴史上の出来事との間の類似点を探す時、アナリストの多くは1938年のドイツのスデーテンラント侵攻を、宥和政策(appeasement)の危険性を示す教訓としてみている。しかし、フロノイは、第二次世界大戦中のロシアのウクライナ侵攻を、1942年のアドルフ・ヒトラーのロシア侵攻になぞらえて、別の見方をする。フロノイは、ロシアのウクライナ侵攻を1942年のヒトラーのロシア侵攻になぞらえて、「あれは行き過ぎた行為でその結果として戦争に負けたが、ヒトラーはそのことを理解できなかった」と述べた。

フロノイは、プーティンもまた同様の傲慢さに屈したのだと述べている。彼女は次のように語った。「ウクライナ東部や、ロシアの勢力圏を再構築するために使ってきたグレーゾーン戦術を超えることができる、それが可能だという過信があった。今、通常の軍事力を使って、他の国を侵略しようとしている。これは、戦略的誤算(strategic miscalculation)または行き過ぎた行為(overreach)の典型的なケースとして歴史に残ることになると私は考える」。

しかし、ウクライナの支援者たちはロシアの苦戦を心強く思うかもしれないが、投資家や経営者、その他の利害関係者がロシアの苦戦に懸念を持つ理由もまた存在する。紛争が解決しないまま長引けば長引くほど、対ロシア制裁はより厳しくなり、ウクライナの統治は、その形がどのようになるにしても、より困難になっていくだろう。

そうなると問題は、プーティンがどう対応するかである。また、この誤算がプーティン個人に大きな影響を与える可能性もないとは言えない。「確率の低い出来事について考えられる。事態が進行するにつれ、ロシア国内の抗議運動が活発化し、オリガルヒの間で不満が増大すれば、彼(プーティン)は仕事を失い、場合によっては生命を失うかもしれない」。

フロノイは、西半球にとどまらず、このロシアの冒険主義が世界最大のホットスポットの一つである台湾に与える影響についても、クライアントたちに助言している。中国がロシアの真似をして、1949年の共産主義革命以来の北京の大きな目標である台湾を武力で制圧しようとするのではないかと多くのアナリストが考えている。

しかし、フロノイは、ロシアの挑戦と風評被害のために、中国の台湾侵攻がすぐに起こる可能性を低くしていると考えている。フロノイは、台湾を訪問し蔡英文総統と会談を持った。その際に蔡総統はフロノイに対して、台湾の人々はウクライナの人々の意志の強さに心を打たれたと語った。

更に言えば、中国からの観点から、フロノイは習近平国家主席が国際的に除け者になってしまうようなことになりたくないと考えていると指摘している。フロノイは更に、中国がロシアと緊密な関係を築いているように見えたり、両国の経済的な結びつきが強まっていたりすることに惑わされないことが重要であると指摘する。実際、ウクライナ戦争は中露間の関係を冷え込ませる可能性があるとフロノイは語っている。彼女は次のように述べている。「今、彼ら(中露)は制裁の効果を薄めようと懸命の努力を重ねている。しかし、こうした努力が最終的にプーティンにとってうまくいかなければ、習近平は、距離を置く方法を見つけると思う」。

台湾はアメリカにとってウクライナよりもはるかに大きな貿易相手国であり、今日の経済に欠かせない半導体(semiconductors)などのハイテク製造に携わっているため、これは投資家にとって多少の安心材料となるかもしれない。

しかしながら、アジアで事業を展開する投資家や企業は、ウクライナで起きていることと無縁でいられると考えるべきではない。フロノイは最後に、ロシアの制裁対象機関に協力する中国の銀行や企業に影響を与える可能性のある二次的制裁に注意するよう顧客たちに助言している。これらの企業は、関連する制裁違反の罪を犯し、自分たちもアメリカから処罰を受けることになりかねない。アメリカの経済戦争に決して好意的でない中国は、おそらく報復措置を取るだろう。

フロノイは「私たちは、クライアントの多くのために、中国でのビジネスに関するリスク管理とリスク軽減の戦略を練っている」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 私が著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を出してから1年が経過した。この本の1章で私は、バイデン政権の外交・安全保障関係の高官たちの分析を行った。特に重要な人物だと考えたのは、コンサルタント会社「ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社」の創設者であるミッシェル・フロノイ元国防次官だ。ウエストエグゼク社には、現在のジョー・バイデン政権の高官たちが多数在籍していた。アントニー・ブリンケン国務長官は共同創設者である。その他には、ロバート・O・ワーク国防副長官、アヴリル・ヘインズ国家情報長官、ホワイトハウス報道官ジェン・サキ、イーライ・ライトナー国防長官特別補佐官が在籍していた。
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 このウエストエグゼク社を広報会社テネオ社が買収するという話が出ており、合意間近だということだ。テネオ社は創業者が不祥事で辞任して先行き不透明と言いながら、利益は出ており、事業拡大のための買収ということだそうだ。ウエストエグゼク社に在籍していた人物たちがバイデン政権の高官になっているということも買収にとっては大きなポイントになっているということも考えられる。

 今年の3月にジョー・バイデン大統領が台湾に送った代表団の中に、ミッシェル・フロノイが入っていた。下の記事にある写真では右から2番目に写っている。フロノイの隣、右端に写っているのは、ジョージタウン大学教授マイケル・グリーンである。

 この2つの話から、ミッシェル・フロノイがバイデン政権においても重要な役割を果たしていること、更に言えば中間選挙後のバイデン政権1期目後半にはフロノイが政権入りするのではないか、具体的には国防次官もしくは国家安全保障会議に重要メンバーとして入るのではないかと考えている。

 フロノイと共にグリーンが台湾への代表団に入っていたのは気になるところだ。ホワイトハウスの国家安全保障会議でアジア担当上級部長を務めた経歴からの代表団入りだと考えられる。ウクライナ戦争勃発後に、グリーンは「台湾はウクライナだ」という主張を展開していた。フロノイとグリーンが台湾を訪問したということは、台湾への武器売り込みや対中強硬姿勢の確認ということもあったと考えられる。こうした人物たちの暗躍によって、アジア地域における安全環境が乱されるのはどの国にとっても利益とはならない。

 しかしながら、現状のアメリカではアジア地域で戦争が起きてもきちんとした対応はできない。2つの戦争を支えるだけの力はない。そう考えると、本気でぶつかるということではなく、武器を売り込んでアメリカの軍需産業の利益を少しでも上げようということになるのだろう。

 中間選挙後にバイデン政権がどのような動きをするかということを注視する必要がある。

(貼り付けはじめ)

アドヴァイザリー企業テネオ社がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社買収間近となっている(Advisory Firm Teneo Near Deal to Buy WestExec Advisors

-合意によってテネオ社は地政学的、政策的コンサルタント業務へ専門分野を拡大することになるだろう。

カラ・ロンバルド筆

2022年6月7日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

https://www.wsj.com/articles/advisory-firm-teneo-near-deal-to-buy-westexec-advisors-11654644028

テネオ・ホールディングス・LLCTeneo Holdings LLC)は地政学および政策分野でのコンサルティングの焦点を拡大するアドヴァイザー企業の買収合意間近となっている。有名な広報企業テネオ社がこうした分野に拡大することになる。

テネオ社は、ワシントンD.C.に本社を置くウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)の株式の過半数を購入する契約を、早ければ水曜日に締結する可能性がある。この問題に詳しい関係者はこのように述べている。

およそ1年前、テネオ社の創業者であるデクラン・ケリーが、チャリティーイヴェントでの泥酔による不品行が報じられ、最終的に辞任したことで、テネオ社の将来は不安定な状態に陥っていた。

テネオ社は2021年に5億ドル近い売上を計上し、今年も約10%の成長を見込んでいると同社の関係者たちは述べている。従業員数は約600人増の約1500人で、増加分の約半分はイギリス・デロイト社リストラクチャリング事業を買収したことによるものだ。

ウエストエグゼク社はオバマ政権高官だったミッシェル・フロノイ(Michèle Flournoy)、セルジオ・アグリア(Sergio Aguirre)、ナイティン・チャッダ(Nitin Chadda)によって創設された。ウエストエグゼク社には約40名のスタッフがおり、貿易などの政策や地政学的な諸問題について、顧客の企業が理解し、ビジネス上の意思決定に役立てることを専門としている。特に、安全保障・防衛産業を専門としている。

テネオ社は2021年にウエストエグゼク社に対してマイノリティ投資(過半数の株式を所有しない投資)を行った。ウエストエグゼク社の社名は「ウエスト・エグゼクティヴ・アヴェニュー」から来ている。同社のウェブサイトによると、この通りは、ホワイトハウスの大統領執務室(ウエストウィング)に向かうための一般には閉鎖されている通りである。

テネオ社とウエストエグゼク社のような企業は、アメリカや世界の各企業に対して、舞台裏で影響力を発揮し、取締役会や経営幹部に対して事業戦略やコミュニケーションに関する指導を行っている。中国との緊張の高まりやロシアによるウクライナ戦争など、世界規模で予測すべき、そして対応すべき不安定な政治情勢が絶えない状況下で、こうした企業のサーヴィスに対する需要は高まっている。

広報会社サード・ヴァービネン社は最近、ライヴァルのフィンスブリー・グローヴァー・はーリング社と合併し、FGSグローバル社という大企業になった。

テネオ社は2011年にケリーがクリントン大統領時代のホワイトハウスに勤務したダグ・バンド、元コンサルティング会社のポール・ケアリー(現在は最高経営責任者)と共同で設立し、PR業界に参入した。テネオは、ゼネラル・エレクトリック社やコカ・コーラ社などの顧客企業に助言を行い、リスク・アドバイザリーからエグゼクティヴ・サーチに至るまで、あらゆる分野に焦点を当てた様々な部門を持つまでに成長した。

テネオ社の急成長は、同社にとって長年の「顔」であり続け、最大の利益を生み出す存在であったケリーが、2021年5月に慈善団体「グローバル・シティズン」が主催した有名人が参加したイヴェントで不適切な行動をとり、辞職したことによって脅かされることになった。ケリーは持ち株を売却してテネオ社とは無関係になり、その後、アメリカン・フットボールのスター選手トム・ブレイディをパートナーに迎えた新会社「コンセロ・LLC社」を創設した。

プライヴェート・イクィティ企業であるCVCキャピタル・パートナーズ社は2019年からテネオ社の最大株主となっている。

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●「バイデン米大統領が派遣する代表団、台湾に到着」

発信日: 2022/03/02

『タイワン・トルディ』紙

https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=215628

アメリカのバイデン大統領の指示を受けた代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長(右から3人目)が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官(右から2人目)、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(中央)、国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏(右)とエバン・メデイロス氏(左から4人目)。空港では外交部の呉釗燮部長(右から4人目)が一行を出迎えた。(外交部)

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アメリカのバイデン大統領が派遣する代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(国家安全保障担当)、それに国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏とエバン・メデイロス氏。

外交部の呉釗燮部長(=外相)は1日午後、中華民国政府を代表し、松山空港(台湾北部・台北市)で一行を出迎えた。訪問団一行は2日まで台湾に滞在し、蔡英文総統、頼清徳副総統、行政院の蘇貞昌院長(=首相)、国防部の邱国正部長(=国防相)などと会見する。また、外交部の呉釗燮部長が昼に、蔡英文総統が夜に設宴して一行をもてなす。双方は、台米関係に係る重要な議題について意見を交換するとしている。

マレン氏は2007年から2011年にかけて米統合参謀本部議長を務めるなど、豊富な軍事経験を持つ。フロノイ氏は2014年と2015年の2回にわたり、新アメリカ安全保障センター(CNAS)の「NextGenプログラム(Next Generation National Security Leaders Program)」の訪問団を率いて台湾を訪れたことがある。オサリバン氏は現在、ハーバード大学で教鞭をとっているが、2004年から2007年まで、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)でイラク及びアフガン問題を担当した。グリーン氏とメデイロス氏はそれぞれ、ブッシュ政権とオバマ政権下で、国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務め、台湾問題を担当した。いずれも何度か台湾を訪問したことがある。バイデン政権が台湾に派遣したこの訪問団は、民主党及び共和党に属する政府元高官から構成されており、米国が与野党を問わず台湾問題に関して高いコンセンサスを持っていることと、台湾への揺るぎない支持を見て取ることができる。

バイデン政権が代表団を台湾に派遣するのは、昨年4月のクリス・ドッド元上院議員以来、2回目のこと。外交部は1日に発表したニュースリリースで、「ウクライナ情勢が緊迫する中、バイデン政権が再び重量級の代表団を台湾に派遣したことは、米国の台湾に対する一貫した支持と重視と、米国の台湾に対する約束が『盤石(rock-solid)』であることを改めて示すものだ。マレン氏の訪台を通して、米国政府と緊密な協力を維持する方法を模索し、台米の緊密なパートナーシップを一層強化したい」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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