古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ムハンマド・ビン・サルマン

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

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中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

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 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

サウジアラビアがアメリカ偏重から脱し、中国重視へとシフトしようとしている。現在、

サウジアラビアの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との間がしっくりいっていない、はっきり言えば険悪になっていることは複数回にわたって報じられている。バイデン大統領が2022年7月にサウジアラビアを訪問した。バイデンは石油価格高騰対策のために、サウジアラビアによる石油増産を求めた。しかし、サルマン王太子の答えは「ノー」だった。それどころか、ロシアと歩調を合わせて、石油の減産を決定した。サウジアラビアの石油減産は、ウクライナ戦争において、ロシアを支持する、ロシアを支援する行為だと西側諸国では受け取られた。アメリカと蜜月関係にあったサウジアラビアがアメリカから離れた、裏切ったということになった。

 サウジアラビアからすれば、裏切り者呼ばわりは片腹痛いということになる。サウジアラビアを敵扱いして、見捨てたのはアメリカではないかということになる。バラク・オバマ政権時代に、サウジアラビアの宿敵イランと核開発をめぐる合意を結んだが、サウジアラビアからすれば中途半端な内容で、イランの核開発を止めることができず、イランの脅威を増大させるだけのことだということになった。また、アメリカ国内でシェールガス生産を行うことで、天然資源輸出でアメリカはサウジアラビアのライヴァルとなった。

 サウジアラビアはアメリカのライヴァルである中国にシフトした。サウジアラビアに捨てみれば、最大の石油輸出先である中国と親密になるのは当然のことだ。中国に近づくことで、アメリカから軽視されることのリスクを軽減しようという行動に出ている。これは、サウジアラビアの国益という点から見れば、きわめて合理的な行動ということになる。中国からすれば人民元結成を認めてもらえるようになれば、資源確保において大いに利益となる。そして、人民元が世界の基軸通貨に近づくことになる。これはドルの地位の凋落を招くことになる。

 私はサウジアラビアの行動は日本の参考になると考える。もちろん、サウジアラビアはアメリカにとっての同盟国であるが、日本は従属国である。従って、サウジアラビアと同じ行動を取ることはできない。しかし、アメリカに対して「バランスを取る」ということはできる。それにはアメリカ一辺倒では無理である。アメリカに依存するだけでは、アメリカの意向に振り回される。そこに中国という要素を入れて初めてバランスが取れるようになる。このように「ただ従うだけ」の状態から脱して、「あんまり理不尽なことをすれば離れますよ」という素振りを見せることで、アメリカとの交渉を少しは有利に進めることができるだろう。そのためにはアメリカの「対中強硬姿勢」に巻き込まれるべきではないのだ。日本が中国にぶつけられるようになるのは愚の骨頂だ。

 日本は西側の一員に留まらねばならないのは仕方がないが、少しでも国益のためになるように行動する必要がある。そのためには中国とロシアに対して喧嘩腰で臨むべきではない。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアが中国に向きを変えることを望まない理由(Why Saudis Don’t Want to Pivot to China

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。

ムハンマド・アリヤアナ

2022年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/16/saudi-arabia-china-xi-bin-salman-biden-oil-opec-geopolitics-security-middle-east/

中国の習近平国家主席は、リヤドで3日間にわたって行われたサウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子、湾岸協力会議の指導者たち、さらに大きなアラブ政府グループとの一連の首脳会談から帰国したばかりだ。首脳会談マラソンの結果、エネルギー、貿易、投資、技術協力、その他の様々な分野で、公的、非公的に数多くの合意がなされた。このサミットは、経済と安全保障の関係がますます緊密になっていることを証明するものだった。サウジアラビアは中国にエネルギー需要の18%を供給し、石油化学、工業、軍事設備の受注を拡大しているが、その多くはこれまでアメリカから調達していたものだ。

一方、ホワイトハウスは、習近平がペルシア湾地域で中国の影響力を拡大しようとしていることは、「国際秩序の維持に資するものではない(not conducive to maintaining international order)」と指摘した。コメンテーターたちは、習近平のサウジアラビア訪問は、リヤドが従来のワシントンとの関係を捨て、北京に軸足を移そうとしていることの表れであると主張している。

中国の政策は単純明快だ。北京はリヤドに取引を持ち掛けている。石油を売って世界のエネルギー市場の安定化に貢献し、軍事装備はカタログから好きなものを選び、防衛、航空宇宙、自動車産業、医療、技術などの協力で好きなだけ利益を得ようということだ。つまり、中国はサウジアラビアに対して、70年にわたり中東を安定させてきたアメリカとサウジアラビアの取引をモデルにしたような交渉を持ちかけているのだ。

サウジアラビアは、自国の基本的な利益に対して公然と敵対するようになったワシントンに裏切られたと感じている。それに対して中国の宣伝は響く。多くの若いサウジアラビア国民が、アメリカを中国に置き換えるという考えを素朴に口にするようになっているのは、驚くには当たらない。アメリカの大学を卒業し、アメリカのポップカルチャーや消費技術の貪欲な消費者として、教育を受けたサウジアラビアの人々の多くはアメリカを身近に感じている。アメリカのメディアや政策立案者たちが、私たちや私たちの国、指導者、文化に対して不当な攻撃をしていると見なし、いじめられていると感じている。多くの人にとっての選択肢は、中国語を学び、中国の産業と貿易を促進する将来のキャリアを想像することである。

アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、アメリカ自身以外のいかなる国内的なアクターによっても破壊することはできない。

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。1960年代以降、サウジアラビアの人々はアメリカとの強い関係なしに世界を見たことがない。私も、アメリカの文化や偉大さに深い敬意を抱いている若いサウジアラビア国民の1人だ。しかし、この10年、サウジアラビアの人々の多くは、アメリカへの親近感と賞賛が、アメリカの政治家、政策立案者、ジャーナリストから報われていないと感じ、その信頼を失っている。アメリカは、2020年の選挙戦でジョー・バイデン米大統領が約束したように、サウジアラビアを「除け者(pariah)」にしようと決意しているようだ。

この不信感は、バラク・オバマ前米大統領の政権時代にまでさかのぼる。2015年に彼がイランとの核合意を交渉した時、私たちサウジアラビア国民は、彼が両国の安定と強さの源となっていた関係を否定していると理解した。この合意は、テヘランに核爆弾製造の道を開き、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)の軍資金を満たし、既存の秩序を破壊するためにアラブ世界各地で民兵を貪欲に武装させることにつながった。攻撃的で修正主義的な国との取引を正当化するためにオバマ大統領が提唱したバランス感覚を装うことは、決して合理的な意味を持たない。結局のところ、もし友人があなたのニーズとあなたの最悪の敵のニーズのバランスを取ると約束したら、その人はもはやあなたの友人ではないと結論付けるのが公正ではないだろうか。

バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権は共に、イエメンにおけるテロリストの代理人を介したイランの攻撃に対し、アメリカは縮小を求め、求めてもいない紛争をサウジアラビアになすりつけることが頻繁にあった。シリアでは、アメリカは、イラン軍とロシアの爆撃機が支配する隣国という、恐ろしく悲惨な光景を私たちに見せつけた。イランとの核取引の一環として、オバマ政権は数百億ドルをイランに流した。その資金は、イラクの解体、シリアの崩壊、レバノンの混乱、サウジ領に対するフーシ派の攻撃支援に使われた。ロシアのプーティン大統領に地中海東部の戦略的拠点を与えることを決定したのもオバマ政権だ。この戦略は、シリアでの内戦を緩和する方法としてアメリカ国民に盛んに喧伝された。昨年、イエメンからサウジアラビアのインフラにミサイルが殺到したことを受け、バイデン政権はサウジアラビア領内からアメリカのミサイル防衛砲台を撤収させた。

しかし、ワシントンが私たちの裏庭に火をつけても、サウジアラビアは地域の平和構築者として、また私たちが賞賛し続ける国として、サウジアラビアの防衛におけるアメリカの役割に敬意を表そうとした。だからこそ、バイデン政権が2021年に「サウジアラビアとの関係を再調整する」と約束して誕生し、2019年に行った「サウジアラビアに代償を払わせ、事実上の除け者とする」という公約を継続した時、とても痛快で心配になった。

かつての大切なパートナーを切り捨てたことに加え、バイデン政権は、エネルギー転換をどのように管理すべきかについてほとんど現実的な考えを持たずに、炭素ベースのエネルギー源に戦争を仕掛けることを選択したのだ。地球を救うという大げさなレトリックは、OPEC+に対抗する買い手のカルテルを作ること、サウジアラビアの外交政策の最重要部分、国内開発計画という3つの方面からの努力を伴っている。第一に、バイデンはアメリカの戦略石油備蓄から数百万バレルの石油を放出した。その目的は、供給ショックを緩和することであり、市場を操作することではない。第二に、アメリカ、ヨーロッパの同盟諸国、カナダ、オーストラリアは先週、ロシアの石油輸出に価格上限を設けるための市場メカニズムを構築した。第三に、バイデン政権はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートに対し、自国の財政・金融政策によるインフレなどアメリカの国内政治目標達成のために増産を迫っている。このようなバイデン政権の戦略は、OPEC+から原油価格の決定権を奪おうとしているようにサウジアラビアには映る。もしこれが成功すれば、サウジアラビアは自国の開発目標を達成するための収入を得ることができなくなる。

このような背景から、サウジアラビアの人々の多くが東方へ視線を移し始めている理由は明らかだろう。しかし、中国がアメリカに代わってサウジアラビアのパートナーとなることを期待するのは、甘い考えだと私は言いたい。

私は、大学と大学院をアメリカで学び、幸運にも幼少期の一時期をワシントン郊外のヴァージニア州で過ごした。そこで私は、野球をしたり、感謝祭に七面鳥を食べたり、12月になると『クリスマス・キャロル』を見たりと、アメリカの娯楽に触れることができた。最近では、サウジアラビアとアメリカの関係を表現するメタファーとして、このチャールズ・ディケンズの物語を使っている。

アメリカの技術、技術革新、防衛協力、安全保障関係が存在しない地域を、「まだ来ぬクリスマスの亡霊(訳者註:『クリスマス・キャロル』に出てくる第三の幽霊)」が見せてくれると想像して欲しい。個人の自由の利点と限界が、サウジアラビア国民が自国の改革に伴ってますます行っているように、国民とその支配者が議論すべきテーマではなく、神を敵とみなす一党独裁の中央集権国家によって決定されるような地域を想像してみるといい。

アメリカの誤算と無能力を混同するのは愚かなことである。アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、中国を含むいかなる国際的なアクターによっても破壊することはできない。アメリカ自身によってのみ破壊することができるのだ。善かれ悪しかれ、アメリカとサウジアラビアの両国の運命は不可避的に絡み合っている。アメリカが創り出そうとしている未来に目を向けることで、中東に取り憑いている亡霊を追い払うことができるのではないかと私は考える。

※ムハンマド・アリヤアナ:ベルファー・センター中東部門研究員、ハドソン研究所中東平和・安全保障担当上級研究員。『アル・アラビア・イングリッシュ』紙元編集長。ツイッターアカウント:@7yhy

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習近平のサウジアラビア訪問はリヤドにおけるワシントンとの一夫一婦制の結婚関係終焉を示している(Xi’s Saudi Visit Shows Riyadh’s Monogamous Marriage to Washington Is Over

-現在の冷戦2.0では、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、北京やモスクワに接近する可能性もある。

アーロン・デイヴィッド・ミラー筆

2022年12月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/07/xi-jinping-saudi-arabia-trip-mbs-biden/?tpcc=recirc_trending062921

2004年のインタヴューで、当時のサウジアラビア外相サウド・アルファイサルは、アメリカとサウジの関係は、妻が1人しか許されない「カトリックの結婚(Catholic marriage)」ではなく、妻が4人許される「イスラムの結婚(Muslim marriage)」だと元『ワシントン・ポスト』紙記者デイヴィッド・オッタウェイに語っていることが極めて先見的だった。オッタウェイは「サウジアラビアはアメリカとの離婚を求めていたのではなく、他国との結婚を求めていただけだ」と書いている。

それが今、現実のものとなった。このことがより明確に反映されているのが、中国の習近平国家主席が今週、2016年以来初めてサウジアラビアを訪問することである。習近平の訪問は、「仲直りしよう(let’s mend the fences)」と握手を交わすような気まずい瞬間にはならないだろう。サウジアラビアにとって最大の貿易相手国と中国にとって最大の輸入石油源である中国との、華やかで温かい抱擁の祭典となるのである。

北京は、サウジアラビアにとって最重要の問題、すなわち不安定になっている近隣諸国における安全保障について、ワシントンに取って代わることはできない。しかし、リヤドがワシントンと一夫一婦制で結婚していた時代は時代遅れになっている(going the way of the dodo.)ようだ。冷戦2.0、つまりアメリカと中国・ロシアとの緊張と競争が高まっている現在、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、自国の利益のために北京やモスクワに接近する可能性がある。つまり、サウジアラビアはもはやアメリカ一国だけの妻ではない。

中国との関係改善に対するサウジの関心は、アメリカがサウジの利益にもっと注意を払い、「リヤドは当然自分たちの味方だ」と単純に考えないようにさせるための一時的な戦術と見なしたくなるものだ。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との個人的な関係は、決して友好的とは言えない。サルマン王太子はバイデンが自分をどう思っているか気にしないと述べ、バイデンはサウジアラビアの指導者たちについてあまり考えていないことを明らかにした。バイデンはサウジアラビアを非難する際に控え目に振舞う(wallflower)ことはない。サウジアラビアを呼び出すことになると萎縮する壁の花ではなく、

しかし、アメリカとサウジアラビアの関係を苦しめているのは、バイデン大統領とサルマン王太子の相性の悪さよりもずっと深いところに原因がある。ワシントンはサウジアラビアの石油を必要とし、リヤドはアメリカの安全保障を必要とするという、数十年にわたる関係を支えてきた基本的な相殺取引(トレイドオフ)が、長年にわたるストレスやひずみの積み重ねによって、擦り切れてしまっている。19人のハイジャック犯のうち15人がサウジアラビア人であり、サウジアラビア政府はこの計画をどの程度知っていたのかという疑問が残る911テロ事件、バグダッドにイランの影響を受けやすいシーア派支配の政権をもたらした2003年のアメリカによるイラク侵攻、アメリカの「アラブの春」への対応などでが両国関係を傷つけてきた。アメリカは「アラブの春」に対して、当時のエジプト大統領ホスニー・ムバラクに退陣を迫り、中東や北アフリカの他の地域で民主的な改革を促したが、サウジアラビア王政はこの動きを世界中の権威主義者への脅威、そして自らの権力保持への脅威と考えた。アメリカを石油輸出の競争相手とすることになった、フラッキング技術とシェールガス革命、サウジアラビアの宿敵イランとのオバマ政権の核合意、2019年9月のイランの無人機・巡航ミサイルによるサウジアラビアの主要産油施設2か所への攻撃に対するアメリカの弱腰反応によるリヤド側の懸念拡大、アメリカによるサウジアラビアの安全保障への関与などもあった。 そして最後に、冷酷で無謀なムハンマド・ビン・サルマンが台頭し、サウジアラビアの反体制派でアメリカ在住のジャマル・カショギの殺害を指示したこともあった。

関係を修復しようとする努力は、かえって関係を悪化させるようだ。バイデン大統領訪問の際、バイデンと王太子が兄弟のように握手を交えた場面もあったが、サウジアラビアが優位に立ち、与えた以上のものを得て、バイデン政権と共にウクライナでのロシアや台頭する中国に対抗しようとは考えていないように感じられたのである。両首脳会談で発表された広範な声明やコミュニケの中に、ワシントンの敵対諸国のいずれかを批判する言葉を見つけるのは困難である。10月のOPEC+では、サウジアラビアとロシアが日量200万バレルの減産を決定し、ワシントンではこの決定について、ウラジミール・プーティン大統領のウクライナでの戦争マシーンへの資金提供を直接支援する行為と見なされた。

2022年7月の中東歴訪を前にして、バイデン大統領は『ワシントン・ポスト』紙に寄稿した。その中で、中国に対抗するためにはアメリカ・サウジアラビア関係の改善が必要だと指摘したのは興味深い。もちろん、ムハンマド・ビン・サルマンはまったくそのようには考えていない。彼にとっては、中国カードをいかにサウジアラビアのために使うか、北京とワシントンのどちらかを永久に疎外することなく、両方から得られるものをいかに引き出すかが今のゲームとなっているのだ。

サウジアラビアは何年も前から中国との関係を深めてきた。しかし、これは、より小さくて脆弱な大国が超大国と行う非常に古いゲームに、新しい、そしておそらく戦略的なひねりを加えたものである。超大国(この場合はアメリカ)がある小さな国(あるいはその地域)を優先しないようになると、この小さな国もまたバランスを取る動きに出て、超大国の動きに対して、自国のマイナスを補うために他の大国と手を結ぼうとする。しかし、サウジアラビアが自信を深めていること、サウジアラビアの利益を守るために独自に行動する意志があること、そしてサウジアラビアの計算において超大国としての中国の重要性が増していることように変化したのである。

中国はサウジアラビアに何を提供するのか? ムハンマド・ビン・サルマンにとって、中国は単にアメリカに対抗するためのレヴァーではない。中国自体に真の価値がある。中国は現在、サウジアラビアにとって最大の貿易相手国であり、近年はアメリカとサウジアラビアの二国間貿易を上回っている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「中国企業はサウジアラビアに深く入り込み、巨大プロジェクトの建設、5Gインフラの整備、軍事用ドローンの開発などを行っている」と報じている。中国が関与しているのは、インフラだけではない。カーネギー国際平和財団の研究担当副会長エヴァン・A・ファイゲンバウムは、北京はテクノロジーや通信を含む多次元的なアプローチを追求していると『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。先月、中国の通信会社「チャイナ・モバイル・インターナショナル」はリヤドと「サウジアラビアのデジタルメディア・エコシステムを推進する」覚書に調印した。

中国はまた、サウジアラビアに対して、人権に関するあらゆる懸念を含め、国内政治への干渉を排除した無条件の関係を提案している。これは両国にとってメリットがある。習近平は新型コロナウイルスの流行が始まって以来、ほとんど中国国外には出ていない。習近平が最初の数回の海外出張にサウジアラビアを選んだのは偶然ではない。同じ権威主義者が統治する国で、ウイグルや香港、新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウンに対する最近の中国のデモに対する抗議などに関して、中国に恥をかかせるような報道はないだろう。習近平とビン・サルマンは権威主義者クラブの正真正銘のメンバーとして、改革、民主化、人権促進を求める外圧に対して団結する共通の絆を持っている。

つまり、バイデンのサウジアラビア訪問とは異なり、習近平の訪問は不快感や摩擦を伴わない、相互の温かさに満ちたものになる可能性が高いのである。習近平とサウジアラビア国王、ムハンマド・ビン・サルマン王太子、習近平とペルシア湾岸諸国、習近平とアラブ連盟諸国との3つの首脳会談が予定されているというから、ムハンマド・ビン・サルマンと習近平はともにこの地域における中心的存在としての存在感を発揮することができそうだ。サウジアラビア国営通信によると、30人以上の国家元首や国際機関の指導者たちが出席する予定だという。

アメリカとサウジアラビアの関係は崩壊しそうにない。ワシントンは安全保障と情報協力においてリヤドの重要なパートナーであり続けるだろうし、イランという国外の脅威は、多少傷つきながらも、この特別な関係の少なくとも一面を存続させることを保証しているようだ。中国は、アメリカの兵器の精巧さと有効性に取って代わることはできないし、ペルシア湾の航行の自由(freedom of navigation)を保証する役割を果たすこともできない。実際、ペルシア湾で中国のエネルギー供給を保護し、その確保に貢献しているのはアメリカ海軍である。しかし、バイデン政権は、北京がサウジアラビアの手元にある中国のミサイルをどのように改良し、どのような核協力が行われようとしているのか、注意深く見守る必要がある。

しかしながら、一つだけ確かなことがある。それは、あなたの祖父や祖母の時代のようなアメリカとサウジアラビアの関係ではないのだ。リスクを避け、コンセンサスを重視するサウジアラビアの国王の時代は終わった。その代わりに、リスクを恐れず、自信を持ち、傲慢でさえあるサウジアラビア国王が、グリーン革命があろうとなかろうと、世界が今後何年にもわたってサウジアラビアの算出する炭化水素に依存することを認識している。アメリカは現在でも非常に重要な存在だが、おそらくムハンマド・ビン・サルマンの計算の中心ではないだろう。バイデンは7月の中東歴訪で、サウジや湾岸アラブ諸国の指導者たちに、アメリカは「どこにも行かない」し、この地域にとどまるのだと述べた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマンは彼独自の道を進む。中国とそしてロシアもまた、どこにも行かないだろう。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和基金上級研究員。共和党、民主党の各政権で米国務省中東担当アナリストと交渉担当官を歴任。著書に『偉大さの終焉:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持つことができず、持ちたいと望まないのか(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want) Another Great President)』がある。ツイッターアカウント:Twitter: @aarondmiller2
(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回はアメリカとサウジアラビアの関係、更にウクライナ戦争開始以降の両国関係に関する記事を紹介する。長くなってしまって読みにくくなってしまっていることをお詫び申し上げる。ご紹介したい関連記事が複数あってこのように長くなってしまった。
 現在、世界の石油価格は高騰している。新型コロナウイルス感染拡大で石油価格が下落していたが、その騒ぎも収まりつつある中で石油価格が上昇していった。それに加えて2月末からのウクライナ戦争で対ロシア経済制裁と先行き不安のために石油価格は高騰している。

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石油価格の推移(2021年11月から) 

 アメリカはロシアからの石油が輸入の7%を占めていたがそれが入らなくなったために、これまでさんざん虐めてきたヴェネズエラとの関係修復を試みている。しかし、世界全体では増産まで時間がかかる上に、何より最大の産油国であるサウジアラビアがアメリカに非協力的であるために、石油価格が上昇している。

 サウジアラビアのアメリカに対する非協力的な態度はサウジアラビアの実質的な支配者であるサルマン王太子のバイデン政権に対する怒りが源泉となっている。ジョー・バイデン米大統領は大統領選挙期間中からサウジアラビアとサルマン王太子に対して批判的であり、『ワシントン・ポスト』紙記者だったジャマル・カショギ殺害にサルマン王太子が関与しているというインテリジェンスレポートを公表するということを約束しており、就任後に実際に公表した。また、バイデン政権は、ドナルド・トランプ前政権との違いを強調するためもあり、サウジアラビアの人権状況に批判的となっている。更には、サウジアラビアが関与しているイエメンの内戦でサウジアラビアの立場を支持してこなかった。こうしたことはサルマン王太子とサウジアラビア政府を苛立たせてきた。そして、サルマン王太子の中国とロシアへの接近ということになった。

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プーティンとサルマン王太子
 今回のウクライナ戦争で、アメリカは慌ててサウジアラビアとの関係を改善しようとしている。サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との直接の電話会談を実現させようとしたが、サウジアラビア側から拒否された。バイデン政権はサウジアラビアからしっぺ返しをされている。また、イエメン内戦でイランから支援を受けているフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設に攻撃を加えていることで、「石油の増産したいのだが、フーシ派が邪魔をしてうまくいかない」という大義名分も手に入れた。
 アメリカは理想主義的な建前外交をやって、アメリカ国民と世界の人々の生活を苦境に陥れている。実物を握っている国々はいざとなったら強い。だから、理想主義でどちらか一方に偏っていざとなったらしっぺ返しを食ってしまうという外交は結果としてよくない。汚い、裏がある、両天秤をかけて卑怯だ、そんな人々から嫌われるような外交がいざとなったら強い。「敵とも裏でつながっておく」ことが基本だ。

 

(貼り付けはじめ)

フーシ派からの攻撃の後、サウジアラビアは石油不足について「責任を持たない」と発表(Saudi Arabia says it 'won't bear any responsibility' for oil shortages after Houthi attack

クロエ・フォルマー筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/599014-saudi-arabia-says-it-wont-bear-any

サウジアラビアは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が国営石油施設を最近攻撃したことによる流通への影響について、イエメンの内戦に対処するアメリカを明らかに非難し、石油増産に対して責任を取らないことを明らかにした。

国営サウジアラビア通信は、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、「石油施設へ攻撃を受けたこともあり、世界市場への石油供給が不足しても、いかなる責任も負わないことを宣言する」と報じている。

サウジアラビア外務省は、「イランに支援されたテロリストのフーシ派民兵から我が国の石油施設が攻撃されたこと」を受けて声明を発表した。

サウジアラビアの指導者たちは、エネルギー市場を安定させ、禁輸されているロシアの石油を相殺するために供給を増やして欲しいというアメリカらの要請に抵抗しているため、ロシアのウクライナ侵攻でアメリカ・サウジ間の緊張は既に高まっている。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日、国営石油大手アラムコが所有する石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、製油所などがドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省は、この攻撃により「製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と述べた。

サウジアラビア外務省は、西側諸国がサウジアラビアと共にイランとフーシを非難し、「世界のエネルギー市場が目撃している、この極めて微妙な状況において、石油供給の安全に対する直接的な脅威となる彼らの悪意ある攻撃を抑止する」よう呼びかけた。

2018年にイスタンブールのサウジアラビア領事館に誘い込まれて殺害された『ワシントン・ポスト』紙のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めている。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会において超党派の議員たちからの批判を招き、それがまた両国間の争いに拍車をかけている。

しかし、アメリカのジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に最大限の圧力をかけるために外交政策を立て直し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子との関係を再構築しようとしていると複数のメディアが報じている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は日曜日、ここ数週間にわたり、アメリカはサウジアラビアに「相当数」のパトリオット迎撃ミサイルを送り込んだと報じた。サウジアラビア政府はアメリカ政府に対してフーシ派からの攻撃に対処するための防衛的な武器を送るように求めていた。

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フーシ派勢力がサウジアラビアのエネルギー施設に複数のミサイルを発射(Houthi's fire missiles at Saudi energy facility

オラミフィハーン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/598959-houthis-fire-missiles-at-saudi-energy-facility?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ロイター通信は、サウジアラビア政府は、イエメンのイランから支援を受けているフーシ派が土曜日の夜から日曜日の朝にかけて、様々なエネルギー施設や淡水化施設に向けて複数のミサイルを発射したと発表したと報じた。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日に発表した声明で、ジザン地方の石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、紅海のヤンブ港にあるヤスレフ製油所がドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省からの声明には、「ヤスレフ製油所への攻撃により、製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と書かれている。

サウジアラビアのエネルギー省はまた、多くの石油物流工場が攻撃され、ある工場で火災が発生したと付け加えた。サウジアラビア政府のある高官によると、火災は制御され、死傷者は報告されていないということだ。

フーシ派のスポークスマンであるヤシャ・サレアは、過激派グループがサウジアラビアで多くの施設を攻撃したことを認めた。

サウジアラビア主導の軍事連合によると、武装勢力フーシ派はこの他、アル・シャキークの海水淡水化プラント、ダーラン・アル・ジャヌブの発電所、カミス・ムシャイトのガス施設などを攻撃対象として攻撃を加えてきた。ロイター通信によると、サウジアラビア国防軍は弾道ミサイル1発とドローン9機を迎撃したと報じている。

ハンス・グルンドベルグ国連特使は、数万人が死亡し、数百万人が飢餓に直面している7年間の戦闘を終わらせるための条約の可能性について、双方が協議したと述べたとロイター通信は報じている。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は日曜日の声明の中で、フーシ派からの攻撃を非難した。

サリヴァン補佐官は声明の中で、「アメリカは内戦終結に向けた取り組みを全面的に支持し、フーシ派の攻撃から自国の領土を守るパートナーを今後も全面的に支援していく。国際社会にも同じことをするよう求める」と述べた。

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ムハンマド・ビン・サルマンはバイデンに対して影響力を持ち、それを利用している(Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It

-サウジアラビアの原油価格引き下げへの協力は欧米諸国の価値観の犠牲の上に成り立つ。

アンチャル・ヴォウラ筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/24/mohammed-bin-salman-saudi-ukraine-oil-biden-opec/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナ侵攻後にロシアへ科された制裁によって、世界のエネルギー市場には大混乱がもたらされた。西側諸国は、1バレル140ドル近くまで高騰した原油価格をどう抑制するか、ロシアのエネルギー供給への依存からどのように脱するかでパニックに陥った。アメリカとイギリスはロシアの石油購入の禁止を発表し、伝統的な同盟国であるサウジアラビアに対して石油の供給を開始し、世界の石油価格を下げるように説得することに躍起となっている。

しかし、最大の産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、この危機を自分たちの好機と捉えて、それに応じようとはしなかった。アメリカと欧米諸国へのメッセージは明白である。サウジアラビアは、人権侵害で批判され続ける対象として扱われるには、あまりにも大きな影響力を地政学的に持っている、ということである。

サウジアラビアはアラブ首長国連邦以上に油田の鍵を握っており、油田を開放し、親ロシアの石油政策を転換する前に、アメリカから大きな譲歩を得ることを期待している。エネルギー安全保障のために人権が再び犠牲になることを、活動家たちは恐れている。アメリカもイギリスも、サウジアラビアが3月中旬に行った81人の大量処刑を公然と批判していない。欧米諸国の対サウジアラビア政策は、消費者の財布への圧力を緩和するためのおだてが中心となっている。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は日量300万バレル以上の余力を持ち、その一部を放出することで原油価格を下げることができる。さらに、ロシアは日量約500万バレル、その8割近くを欧州に輸出しているため、リヤドとアブダビが支援を確約すれば、欧州諸国の懸念を払拭し、ロシアへの依存を減らすよう促すことができる。

しかし、湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルの拡大版である「OPEC+1」への参加を理由に、これを控えている。その理由は、ウクライナ戦争は今のところ石油の供給に大きな支障をきたしていないため、生産量を増やす必要がないためだとしている。しかし、専門家たちは、これは世界政治の大きな変化を反映した政治的決断であると見ている。ロシアの戦争マシーンをも利する価格を維持する選択は、湾岸諸国の独裁者たちがもはやアメリカの緊密な同盟諸国の地位にいる必要性を感じず、同じような権威主義者たちとの新たな同盟を受け入れていることを示すものである。過去に何度か、サウジアラビアの支配者はアメリカの同盟諸国を喜ばせるために増産や減産を行ったことがある。

しかし今回、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ジョー・バイデン米大統領に復讐をするチャンスが到来したと見ているようだ。サルマンはこれまでバイデンから数々の侮辱を受け、優遇されてこなかったと考えているようだ。バイデンはまだ大統領選挙の候補者だった時期に、サウジアラビアをパーリア国家(pariah state 訳者註:国際社会から疎外される国家)と評し、大統領就任後にサウジアラビアの反体制派でワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギの暗殺に王太子が関与したとする情報報告書を公開した。さらに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、イラン核合意の再開の可能性についての懸念を持っているがこれは無視され、イエメンのフーシ派が自国の船や都市を攻撃したことに対してアメリカが行動を起こさないことには、軍事同盟国としての義務を果たさなかったと感じたという。最近では、フーシ派を指定テロリストのリストに入れ続けて欲しいという嘆願さえもワシントンによって無視された。

ロシアのプーティン大統領の戦争をきっかけに燃料価格が上昇したため、ホワイトハウスはバイデンと不貞腐れた王太子の電話会談を実現しようと奔走したが拒否された。しかし、サウジアラビアの後継者サルマンはカショギ殺害を命じたという疑惑を通してプーティンの側に立ち、女性人権活動家が逮捕され囚人が大量に処刑されても非難を囁くこともなかった。サルマンはプーティンの緊密な同盟者と見られることに全く不安を感じていないのである。

サウジアラビアが同じ権威主義者プーティンに近づいたのは、当時のバラク・オバマ米大統領との関係が悪化した2015年に遡る。その1年後、ロシアがOPECに加盟した。リヤドはその後、モスクワとの関係を強化する一方、アメリカとの関係は、オバマ時代のイランとの核合意から離脱したドナルド・トランプ米大統領の在任中に改善し、バイデンが指揮を執って合意復活のための協議を再開すると再び悪化するなど、一進一退を繰り返している。トランプ政権時代、ムハンマド・ビン・サルマンは改革者として描かれていたが、バイデン政権下では、サウジアラビアのイエメン攻撃で民間人が死亡したことや、自国内の人権侵害で再び厳しく批判されるようになった。

クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの共同設立者であり上級副会長を務めるトリタ・パルシは、サウジアラビアがロシアを支持している理由は、サルマン王太子がロシア大統領の地位をプーティンが継続し、アメリカで政権交代が起きることを確信しているからだと述べている。

パルシは次のように発言している。「サウジアラビアの王太子サルマンはプーティンに賭けている。サルマンはプーティンを信じているだけでなく、共和党が中間選挙で勝利し、バイデンがレイムダックになることを望んでいる。2025年までに、バイデンと民主党は政権を失い、プーティンはロシアの大統領に留まるとモハメド・ビン・サルマン王太子は信じているようだ」。

今回の危機は、アメリカが主張するエネルギーの独立性を改めて認識し評価することを余儀なくさせた。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな損失を被った国内のエネルギー産業をよりよく管理するために、より首尾一貫した長期計画を打ち出すか、口を閉じて権威主義者たちを容認するかのどちらかでなければならない。

エネルギー分野の専門家たちによれば、いずれにせよ、米国のフラッキング企業(訳者註:シェールガス採掘を行う企業)が新たな井戸を掘るには数カ月かかるという。イランやヴェネズエラに対する制裁が解除されたとしても、その石油を世界市場に供給できるようになるにはまだ時間がかかるだろう。先週末、ドイツはカタールと液化天然ガス(LNG)輸入の長期契約に調印した。カタールはロシア、イランに次いで3番目に大きなガス埋蔵量を持つ国であり、この契約によりドイツは液化天然ガスを迅速に輸入することができる。この協定により、ドイツはカタールのガスを輸入できるように2つの液化天然ガス基地の建設を急ぐが、それでもそのガスがドイツの家庭に供給されるまでには何年もかかるだろう。これまでドイツは、パイプラインで輸送される安価なロシアのガスに頼っていた。

現在世界最大の産油企業であるサウジアラムコは、2021年に過去最高益となる1100億ドルを稼ぎ出し、前年の490億ドルから124%増の純利益を記録した。サウジアラムコは石油の増産に向けた一般的な投資を発表したが、短期的に供給を増やすことは何もしていない。サウジアラムコのアミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、エネルギー安全保障が世界中の何十億人もの人々にとって最も重要であると認識しており、そのために原油生産能力の増強に引き続き取り組んでいる」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は、今年末までにロシアから少なくとも日量150万バレルの原油が失われる可能性があると発表している。それが更なる価格高騰につながることは間違いない。OPEC+は次回今月末に会合を開き、状況を把握して原油の生産量を決めると見られている。しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の要求についてアメリカに耳を傾けてもらえたとどれだけ感じられるかに大きく左右される。

彼らは、アメリカが核取引に関する立場を変えないことを確信しているが、イエメンのフーシ派との戦いにおいて湾岸諸国を支援し、人権侵害に対する批判を減らすことができるだろうか? 厳しい国益の世界で最も低い位置にあるのは、個人の自由である。サウジアラビアの活動家たちは、世界の石油の安定と価格の引き下げのために、再び代償を払うことになるかもしれない。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、バイデンからそれ以上のものを求めるかもしれない。

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バイデンはロシアを支持するサウジアラビアを罰するべきだ(Biden Should Punish Saudi Arabia for Backing Russia

-リヤドは石油市場に変化をもたらすことができたが、アメリカではなく、権威主義者の仲間に味方することを選択した。

ハリド・アル・ジャブリ、アニール・シーライン筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/22/biden-mbs-oil-saudi-arabia-russia-ukraine/

アメリカとその同盟諸国が一致団結してロシアのウクライナ侵攻に反対している中、サウジアラビアはロシアに味方している。侵略を公に非難せず、OPEC+協定へのコミットメントを繰り返したことで、サウジアラビア政府はアメリカとの長年のパートナーシップに亀裂が入っていることを露呈した。

原油増産の懇願にもかかわらず、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ロシアのプーティン大統領と会談した1週間後に、ジョー・バイデン米大統領との会談を拒否したとされる。ロシアの石油の補償を拒否することで、王太子は国際社会が科す制裁に直面してエネルギーを武器として、エネルギーに依存するヨーロッパ諸国をロシアの石油とガスの人質にすることを許可し、プーティンの侵略を助長している。

月曜日になっても、サウジアラビア政府はロシアの行動を非難することを拒否している。その代わりに、サウジアラビアの外務大臣はロシア側と会談し、両国の二国間関係とそれを「強化・統合する方策」を確認した。

サウジアラビアの強硬姿勢にもかかわらず、バイデン政権は最近、フーシ派がサウジアラビアの水とエネルギー施設を攻撃したため、パトリオット対ミサイルシステムをサウジアラビアに追加配置した。サウジアラビアは、アメリカの保護が必要であることを表明し、これらの攻撃による石油供給不足の責任を否定する声明を出した。米国は、アラムコによる投資拡大の約束にもかかわらず、リヤドによる増産の保証を報告することなく防衛策を送ったのである。

バイデン米大統領から要求を受けてもサウジアラビアが石油の増産に消極的なのは、忠誠心が変化していることを示す最新の兆候である。70年にわたるパートナーシップを通じて、ワシントンはリヤドの主要な安全保障の保証人として機能し、その見返りとして、サウジアラビアの歴代国王はエネルギー問題でアメリカと緊密に協調してきた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握して以降、二国間関係は、7年間続くイエメン戦争などサウジアラビアの無謀な外交政策の決定や、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害で最も顕著に表れた人権状況の悪化によってますます緊迫してきた。

複雑な関係にもかかわらず、バイデン政権関係者の多くは、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカのコミットメントを繰り返し表明し続けた。このような発言は、フーシの越境ミサイルやドローンによる攻撃からサウジを防衛するために最近6億5000万ドルの武器売却を行うなど、サウジアラビア主導のイエメン戦争に対するアメリカの継続的支援に裏打ちされたものである。

更に言えば、アメリカは最近、カタールを重要な非NATO加盟国に指定し、1月にアブダビで起きたフーシ派の無人機攻撃を受けてアラブ首長国連邦に追加の軍事資産を動員するなど、他の湾岸諸国のパートナーの安全確保に献身的であることを示している。このような安心感を持ちながらも、サウジアラビアは石油の増産と引き換えにイエメンでの戦争に対するアメリカの支持をもっと強要しようとしている。

現実には、サウジアラビアはアメリカの安全保障に関する保証を疑っていない。王太子が望んでいるのは、自らの支配を確実にすることである。アメリカは、湾岸諸国のパートナー諸国の物理的な安全を支援するために行動することはあっても、権威主義的なアラブの指導者が行うように、自分たちの好む体制を守るために民間人を攻撃することはないことを示してきた。湾岸諸国の支配者たちは、「アラブの春」におけるアメリカの中立的な姿勢が、エジプトにおけるワシントンの長年にわたるパートナー、ホスニー・ムバラクの失脚を許したと考えている

サウジアラビアの王室は、2011年にサウジアラビアが直接軍事介入したことでバーレーンのアル・ハリファ王家を救うことができた、マナーマの港に米海軍の第5艦隊がいたにもかかわらず、アメリカは役に立たなかったと考えている。それ以来、サウジアラビアの対米不信と国内の異論に対するパラノイア(被害者意識)は高まる一方である。サウジアラビアはサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子の統治下で、ロシアや中国との密接な関係の育成を加速させている。

アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史も、湾岸における意味のある軍事的プレゼンスもない。

プーティンや中国の習近平のように、サウジアラビアの歴代の支配者たちは資本主義における独裁的モデルを好み、権威主義体制の生存と国家間関係からの人権の排除に基づいた代替的な世界秩序を構築しているのである。

中国やロシアが両国内のイスラム系少数民族を虐待していることに対してサウジアラビアや他の主要イスラム国家が無関心であることは、これらの政府が人権に反対していることの相性の良さを示している。中国とロシアがイスラム主義運動を政権の不安定要因と考えて偏執狂的に恐れているが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はこうした考えを共有している。

サウジアラビアの国王と王太子は、イスラム教の重要性をサウジアラビアの国家戦略から切り離し、王室の役割を中心に据えることで、イスラム教徒を積極的に疎外しようとしてきた。例えば、2022年2月22日、サウジアラビアは初めて建国記念日を祝った。この新しい祝日は、サウジアラビアがワッハーブ派の創始者であるムハンマド・イブン・アル・ワッハーブと提携し、それによってサウジアラビアの宗教的正当性を高め、領土拡大を開始した1744年ではなく、ムハンマド・ビン・サウドが支配権を得た1727年を起源とするものであった。

西側諸国の多くは、サウジアラビア政府が宗教警察のようなアクターを無力化し、厳しい男女分離を若干緩和する決定を歓迎したが、これらの変化はまた、前例のないレヴェルの内部抑圧に対応している。人権活動家の投獄、海外での反体制派に対する弾圧、そして最近の81名の囚人の大量処刑は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の意図の本質を明らかにしている。それは、かつて国家権力を握っていた聖職者や保守派エリートを含む全ての反対意見を、より西側の社会規範の皮をかぶって黙らせることだ。

カショギの殺害をめぐる長引く憤慨と政治的疎外は、王太子に、欧米諸国から見たサウジアラビアのブランドを再構築する努力は失敗したと確信させたのかもしれない。その代わりに、中国とロシアは、ジャーナリストを殺害した皇太子を決して非難しないパートナーである。ロシアの場合、最近の歴史では、その行為すらも支持する可能性さえある。

しかし、中国とロシアに安全保障の保証に賭けるのはギャンブルである。アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史もなければ、湾岸地域における軍事的なプレゼンスもない。仮にサウジアラビアが米国製の軍備から移行する場合、そのプロセスには数十年と数千億ドルを要するだろう。

更に言えば、中国とロシアはイランと緊密な互恵関係にあり、サウジアラビアの顔色をうかがってこの関係を犠牲にすることはないだろう。サウジアラビアは、アメリカと対話する際、イランやイランが支援する集団に対するアメリカの保護をこれまで以上に保証するよう主張してきた。リヤドが北京やモスクワとの提携のためにそうした懸念を払拭したいと望んでいるとすれば、こうした姿勢はテヘランに対するアメリカの不信感を煽ることが主な目的であることが明らかになるであろう。

サルマン王太子のイランへの不安は本物だとしても、それ以上に国内状況への不安もまた大きい。そのためには、民間人に多大な犠牲を強いてでもシリアのアサド政権を維持しようとする姿勢を示したプーティンのようなパートナーが望ましい。今のうちにロシアと手を組んでおけば、サウジアラビア市民の大規模な抗議行動など、いざというときにクレムリンが助けてくれるだろうと期待しているのだ。

現在の米国のサウジアラビア宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているという王太子の認識を強めているだけのことだ。

ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、任期付きで選出された欧米諸国の政府高官たちのためにプーティンと敵対するリスクを冒すよりも、むしろプーティン支持という長期的なギャンブルに出るだろう。ボリス・ジョンソン英首相やジェイク・サリヴァン米国家安全保障問題担当大統領補佐官、ブレット・マクガーク米国家安全保障会議中東担当調整官らアメリカ政府高官たちによる最近の直接の懇請の失敗や、アントニー・ブリンケン米国務長官との面会を拒否したことは、サウジアラビア王太子が心を決めていることの証拠である。プーティンのエネルギー力を弱め、ロシアの石油ダラーの生命線を断つような石油政策を採用することはないだろう。彼は、ワシントンよりモスクワを選んだのだ。

同様に、バイデン政権がヨーロッパの同盟諸国にロシアの化石燃料を手放すよう圧力をかけているこの時期に、アメリカ政府がサウジアラビアに石油を懇願するのは止めるべきだ。アメリカの民主政治体制とサウジアラビアの権威主義体制は相容れず、長い間その関係を緊張させてきた。アメリカがサウジアラビアに石油をねだるのを止めるのは、もう過去のことだ。もう一つの残忍な炭化水素を基盤としている独裁国家に力を与えている場合ではないのだ。

ロシアの石油をサウジアラビア、イラン、ヴェネズエラの石油に置き換えるという不愉快な見通しに直面したとき、イラン核取引に再び参加し、イランの化石燃料を世界市場に戻すことは、最近の価格上昇に対処するためという理由はあるにしても、最悪の選択だ。イラン産原油の購入は、再交渉された核取引の条件によって制約されたままである。一方、サウジアラビア(またはヴェネズエラ)の要求に応じれば、アメリカが懸念する分野に対処するための追加の安全措置はないことになる。長期的には、バイデンは化石燃料への依存を減らし、それによって避けることができない石油価格ショックからアメリカ経済を守るよう努力しなければならない。そうしてこそ、アメリカ政府は石油を保有する権威主義者たちとの偽善的な取引を止めることができる。

リヤドは、最近の関係の冷え込みにもかかわらず、依然としてワシントンの保護を当然と考えているようだ。その理由の一つは、カショギの殺害とイエメンの荒廃についてサルマン王太子の責任を追及するというバイデン大統領の約束が守られなかったことが挙げられる。

現在のアメリカのサウジアラビアに対する宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているというムハンマド・ビン・サルマン王太子の認識を強めるだけであり、この見解は、アメリカ政府が自分を支援し続ける以外に選択肢がないと考えて、ロシアや中国とより緊密に提携することを促すだろう。

その代わり、バイデンはこの機会に、全ての武器売却を中止し、サウジアラビア軍への保守(メンテナンス)契約を停止するなど、アメリカとサウジアラビア王国の関係を根本的に見直すべきだ。そうすることで、リヤドに対して唯一の安定した安全保障上のパートナーを失う危険性があることを示すことができる。

もし、サルマン王太子が独裁者たちへの支援を強化するならば、アメリカにとって大きな損失にはならないだろう。

※ハリド・アル・ジャブリは、医療技術の起業家であり、心臓専門医でもある。サウジアラビアから追放され、兄弟2人が政治犯となっている。ツイッターアカウント:@JabriMD

※アニール・シーラインはクインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフト研究員である。ツイッターアカウント:@AnnelleSheline

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