古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:メキシコ

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は、カナダやメキシコに強く当たり、グリーンランドやパナマ運河の領有を主張している。これをいつものトランプの激しい言葉遣いとして片づけてはいけない。彼の発言の裏には非常に重要な考えが存在するのだ。それは「モンロー主義」である。モンロー主義という言葉は日本人であれば、中学校や高校の歴史の授業で習った言葉である。第5代米大統領ジェイムズ・モンロー(James Monroe、1758-1831年、73歳で没 在任:1817-1825年)が公式に宣言した、アメリカの外交政策上の指針である。一般的には、アメリカが世界から孤立する、ヨーロッパに関わらないという考えだと思われているが、これは正確ではない。モンロー主義は、アメリカが西半球(南北アメリカ大陸)を支配する、ヨーロッパには手を出させない、その代わりにアメリカはヨーロッパに手を出さないという考えだ。この時期、南米諸国がスペインの植民地から独立をしていた時期で、各国にイギリスが支援をしていた。それは、独立後に南米諸国をイギリスの勢力圏に入れて、イギリス製品の市場にしようという魂胆があったからだ。それを阻止したいということでモンロー主義、モンロー宣言が出された。

 第二次世界大戦後のアメリカは、冷戦期、ポスト冷戦期を通じて、世界の極として世界支配を続けてきた。しかし、トランプ大統領はそうした介入主義的な外交政策ではなく、モンロー主義に戻ろうとしている。アメリカは世界支配から退き、西半球に立て籠もるという考えである。そして、21世紀のモンロー主義の対象は中国とロシアということになる。中露両国の南米諸国への影響を排除したいとして動いている。しかし、南米諸国もトランプの意向に唯々諾々と従う訳ではない。中露、アメリカとの両天秤をかけて、自分たちの利益を生み出そうとしている。

 3月25日の最新刊ではトランプの外交政策について詳しく分析している。下記論稿を使ってはいないが、非常に参考になる論稿である。

(貼り付けはじめ)

トランプは自分自身のモンロー主義を持っている(Trump Has His Own Monroe Doctrine

-大統領として、対象地域に対する彼の攻撃的な姿勢は、多くの国々を中国に好意的にさせた。

オリヴァー・ステンケル筆

2024年10月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/17/trump-election-latin-america-monroe-doctrine-china-huawei-venezuela-far-right/

2024年11月のアメリカ大統領選を前に、ラテンアメリカの右派指導者数人が共和党候補であるドナルド・トランプ前大統領への支持を公然と表明している。その中には、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領、エルサルヴァドールのナイブ・ブケレ大統領、ブラジルのジャイル・ボルソナーロ前大統領、そして彼らの同盟者や支持者も含まれている。「トランプの当選で、私たちは大きな転換を見ることができる。そして、神の思し召し(God Willing)によりそうなるだろう」と、ボルソナーロ前大統領の息子でブラジル連邦下院議員のエドゥアルド・ボルソナロは、7月に開催されたブラジルの保守政治行動会議で語った。

ラテンアメリカ中のトランプ支持者は、前大統領のさまざまな文化戦争十字軍(culture war crusades)や経済政策に共感している。また、トランプがホワイトハウスに戻ることで、アメリカの海外介入(U.S. interventions abroad)を終了させ、より平和な世界が実現するとの意見も多い。2022年、ジャイル・ボルソナーロは、「(トランプが)まだ政権に就いていれば、ウクライナでの戦争は起こらなかったと考える人もいる。私はそれに同意する」と述べた。 政治家でボルソナーロの盟友であるビア・キシスは最近、『ニューヨーク・タイムズ』紙に、「トランプが候補者だったころ、第三次戦争の可能性が取り沙汰された。しかし、トランプが大統領を辞めるまでは戦争は起こらなかった。そして、現在は戦争が世界全体に影響を与えている(Back when Trump was a candidate, there was talk of a possible third war. But there was no war—until Trump left office, and now war is affecting the whole world)。」と書いている。アルゼンチンの作家でミレイ支持者のアグスティン・ラジェは、トランプの復帰は 「平和を保証するために(to guarantee peace)」不可欠だと語った。

しかし、少なくともラテンアメリカの場合、トランプがホワイトハウスに戻れば、1期目の時のようにアメリカの外交政策がはるかに介入的になるという強い証拠がある。当時、トランプはキューバやヴェネズエラのような国に対して「最大限の圧力(maximum pressure)」戦術を採用し、ブラジルのような国には中国のハイテク大手ファーウェイを禁止するよう無駄に圧力をかけた。

トランプが第2期の大統領になれば、ラテンアメリカ諸国がアメリカと中国の間で勃発しつつある競争において、どちら側を選ぶかについて、より明確なアメリカの圧力が復活する可能性が高い。そうなれば、多くの国々が中国に懐柔されたトランプ大統領の1期目と同様、この地域に大きな摩擦が生じる可能性がある。トランプ大統領のラテンアメリカに対するアプローチが攻撃的になればなるほど、各国政府は北京との関係を緊密化させることでワシントンとバランスを取ろうとするだろう。

最近のアメリカの歴代政権のほとんどは、1823年にラテンアメリカにおけるヨーロッパ勢力の干渉に対するワシントンの同地域の支配権(authority)を主張したモンロー主義(Monroe Doctrine)から明確に距離を置いてきた。モンロー主義は、西半球(Western Hemisphere)におけるアメリカの軍事的または外交的介入の口実としてしばしば使用され、特に20世紀には主にアメリカ帝国主義(U.S. imperialism)の一形態とみなされていた。 2013年、当時の米国務長官ジョン・ケリーは「モンロー主義の時代は終わった(“The era of the Monroe Doctrine is over)」と発表した。

しかしながら、トランプと支持者たちは、モンロー・ドクトリンを明確に擁護している。2018年の国連総会でトランプは、「この半球と自国の問題に対する外国の干渉を拒否することは、モンロー大統領以来の私たちの国の正式な政策である」と主張した。今回の警告はヨーロッパ諸国ではなく、ロシアと中国に向けられたもので、中露両国は過去10年間にほとんどの南米諸国の主要貿易相手国となった。

おそらくトランプの世界観の最も極端な要素は、トランプの国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンによって明らかにされた。彼は2020年の著書『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日(The Room Where it HappenedA White House Memoir)』の中で、トランプはヴェネズエラに軍事的オプションを求め、そして、『本当にアメリカの一部だから(it’s really part of the United States)』という理由でヴェネズエラを維持すると主張した」と書いている。2019年4月、ボルトンは「今日、私たちは誇りをもって全ての人に宣言する。モンロー・ドクトリンは健在である(Today, we proudly proclaim for all to hear: The Monroe Doctrine is alive and well)」と述べた。

このことは、世界全体におけるトランプのアイソレイショニズム的な外交政策が、西半球を支配したいという強い衝動につながることを示唆している。ジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授が『フォーリン・アフェアーズ』誌で論じたように、「『アメリカ・ファースト』はモンロー主義の再活性化(reenergized)を特徴とする。旧世界の前哨基地(Old World outposts)からのアメリカの撤退は、新世界におけるアメリカの影響力を守り、ライヴァルがそこに足場を築くのを防ぐための、おそらくより強硬な取り組みの強化を予感させる。

振り返ってみると、トランプ大統領のラテンアメリカ戦略は目標を達成することができなかった。破壊的な制裁(crippling sanctions)と威嚇的なレトリック(menacing rhetoric)にもかかわらず、ボルトンが「暴政のトロイカ(Troika of Tyranny)」と名付けたニカラグア、ヴェネズエラ、キューバの政権は維持されている。トランプがラテンアメリカ諸国政府にファーウェイを禁止したり、中国との関係を格下げしたりするよう説得した努力も、具体的な成果は得られなかった。ボルソナーロ政権時代でさえ、ブラジルの対中貿易は拡大する一方だった。

特にファーウェイに対するトランプ政権の戦略は、ラテンアメリカの政策立案者たちを当惑させた。アメリカは、ファーウェイが中国のスパイ活動のためのトロイの木馬(Trojan horse)として利用される可能性があるとして、ラテンアメリカ諸国に対し、5Gネットワークのコンポーネント・プロヴァイダーとしてファーウェイを排除するよう圧力をかけた。当時、トランプ政権はヨーロッパやラテンアメリカの政府に対し、ファーウェイを利用しないよう脅し、そうすればワシントンがアメリカの情報共有を停止する恐れがあると警告した。

しかし、ワシントンはラテンアメリカの政治的現実を無視し、政治的・経済的エリートの間には北京と対決する意欲がほとんどなかった。更に悪いことに、アメリカは中国の5G技術に代わる真の選択肢を提示しなかった。ファーウェイの競争相手、エリクソン、ノキア、サムスンなどは、より高価であり、ワシントンはその差額を支払うという提案を行わなかった。

ファーウェイがもたらす危険性についてのトランプ大統領の警告も、ほとんど効果を持たなかった。ほとんどのラテンアメリカの国民にとって、中国にスパイされることと、アメリカにスパイされることの間には、ほとんど違いがない。アメリカは、例えば、ブラジルのディルマ・ルセフ前大統領をNSAの監視下に置いたことについて謝罪を拒否しており、その他にも、この地域におけるアメリカの介入主義や秘密活動(covert activities)の多くの事例がある。

トランプ大統領のこの地域に対する強硬なアプローチ(muscular approach)は、北京の利益に大きく貢献した。ラテンアメリカ諸国政府は、トランプ大統領の姿勢とバランスを取るために中国との関係を強化した。北京はラテンアメリカ諸国政府との交流において主権を尊重することを強調しているが、これはグローバルサウス(global south)全域の政府にとっていかに魅力的に聞こえるかを意識してのことである。

トランプ大統領は最終的にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を打倒するための軍事介入を断念したが、彼の攻撃的なレトリックは地域を緊張させた。アメリカが侵攻するという漠然とした不安でさえ、ヴェネズエラが主権に対する深刻な脅威に直面しているというマドゥロ大統領のシナリオをより強固にする旗を掲げた集会のような効果をもたらした。また、国の経済的苦境をすべてアメリカの制裁のせいにする機会にもなった。その結果、いくつかの地域の指導者たちは、躊躇しながらマドゥロ側についた。

トランプの大統領就任一期目の中南米に対する敵対的なアプローチは失敗したが、ホワイトハウスに戻ったら同じ戦略を繰り返す可能性が高いと、ブエノスアイレスのトルクアト・ディ・テラ大学教授フアン・ガブリエル・トカトリアンは『アメリカズ・クォータリー』誌で、「共和党の上院議員と下院議員は、モンロー主義の有効性を再確認する決議を提出した」と警告を発している。共和党の多くの有力な発言者も、この地域に対して定期的に脅迫的な言葉を使っている。

昨年、トランプはアメリカがパナマ運河の支配権を失ったことを嘆いた。トランプ、副大統領候補のJD・ヴァンス、テキサス州選出の連邦上院議員テッド・クルーズ、フロリダ州知事のロン・デサンティス、元国連大使のニッキー・ヘイリーらは皆、麻薬カルテルと戦うためにメキシコを空爆すると脅している。アメリカの国際法違反(U.S. violations of international law)を助長するこのようなレトリックは、反米の主張にとって好都合であり、中国がこの地域でより魅力的なパートナーとして自国を位置づけることを容易にするだろう。

トランプ大統領は、ドル回避(circumvent the dollar)に向けた取り組みを行っている国の製品に高関税を課す可能性がある。これはおそらく、BRICSグループ内の国々との貿易の一部に現地通貨を使用しているブラジルにも当てはまるだろう。メキシコはトランプ大統領の復帰で最も影響を受ける国の1つとなる可能性が高く、メキシコで生産された製品に高額の関税を課し、移民を減らし、アメリカの貿易赤字を削減すると公約している。

しかしながら、トランプ大統領は、ラテンアメリカに対する最も極端な提案の一部を撤回する可能性がある。もしトランプが1000万人以上の不法移民(その大部分はラテンアメリカ出身者)の大量国外追放(mass deportations)を実施するという公約を実行すれば、送金は減少し、帰国した労働者によって労働市場は不安定化する可能性がある。その結果生じる労働者不足はアメリカ経済に悪影響を及ぼし、インフレを上昇させる可能性があり、トランプ大統領が脅しを完全に実行する可能性は低い。

トランプ大統領の最初の任期中、ブラジリアからブエノスアイレスまでの指導者たちは、ワシントンに同調し、中国から離れさせようとするアメリカの圧力にほぼ耐えることができた。この地域全体では、大国間の多角的な連携は、今後数年間は可能であり、中国との関係縮小を求めるアメリカの圧力にはわずかなコストで抵抗できるというコンセンサスが存在し続けている。

トランプはしばしば取引重視的な外交政策観(transactional foreign-policy view)を持っていると評されるが、これはほとんどのラテンアメリカ政府にも当てはまる。ブラジルはその典型だ。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、ウクライナ戦争に対するロシアへの明確な非難を控えるという決定を下したが、それは西側の偽善(hypocrisy)を非難する道徳的な言葉で表現されている。例えば、ブラジルはウクライナ戦争に反対することで、ロシアのディーゼル燃料や肥料を安く購入し、数百万ドルを節約することができた。モスクワとの関係を守ることは、ブラジルの戦略的余裕を維持し、アメリカを牽制ために極めて重要だと考えられている。

同じ理由で、ラテンアメリカ諸国は、ファーウェイ論争に象徴されるような、中国のような独裁国家に技術的に依存することのリスクについてのアメリカのレトリックをほとんど気にしていない。そうすることで測定可能な経済的利益が生まれるのであれば、各国政府は確かにファーウェイを5Gネットワークから排除することを検討するだろう。しかし、アメリカが具体的なインセンティヴや資金を提供しなければ、その可能性は低いと考えられる。

新たなモンロー主義を通じてラテンアメリカにおける中国の役割を縮小しようとするトランプの試みは、おそらく再び反撃を受けることになるだろう。外交問題に対するトランプの不安定なアプローチに、ラテンアメリカの指導者たちは不安定さを感じ、他の大国との結びつきを強めるためにアメリカとの関係をヘッジ(両賭け)しなければならないと考えている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカで麻薬として流通しているのがフェンタニルという薬だ。このフェンタニルという薬は、医療用の強力な鎮痛薬であり、ガン患者などの疼痛緩和などで、適正に使えば大変効果の高い薬だということだ。これを違法に、過剰摂取することで、中毒となる。アメリカの古都フィラデルフィアのある一角は、フェンタニル中毒者たちが街頭にあふれ、「ゾンビの街」と呼ばれるほどになっている。フェンタニルの蔓延と中毒患者の増加はアメリカにとって深刻な問題となっている。

 アメリカの白人男性の平均寿命が短くなっている問題については、アン・ケース、アンガス・ティートン著『絶望死のアメリカ』(松本裕訳、2021年、みすず書房)に詳しいが、アルコールや麻薬の過剰摂取による死亡は、緩慢な自殺であり、これを著者たちは「絶望死(deaths of despair)」と呼んでいる。

 アメリカにはメキシコから麻薬が流入しており、「麻薬戦争(drug war)」と呼ばれる状態になっている。今回ご紹介する論稿では、フェンタニルの原薬(active pharmaceutical ingredientAPI)や前駆体化学物質(precursor chemicals)は中国から輸出されていること、中国政府の取り締まりもあるが、各地方の省政府がフェンタニル製造を奨励しており、その中で、中小企業がネットワークを形成して、原薬や前躯体化学物質をメキシコなどの外国に輸出している様子が描かれている。

 また、麻薬でお金を儲けても、それを使うためには、資金洗浄(マネーロンダリング)をしなければならないが、マネーロンダリングのネットワークや方法についても論稿で紹介されている。ここで興味深かったのは、フェンタニル輸出に絡んで莫大なお金を設けた中国人たちは、資金洗浄のために、ヴァンクーバーモデルという方法を使っているということだ。

このモデルについて、論稿では「富をオフショアに移そうとする中国人顧客がヴァンクーバーに飛ぶ前にマネーロンダリング業者が管理する銀行口座に人民元を入金することから始まる。到着すると、顧客たちはカナダの通貨(通常は麻薬の販売で得た汚れた金)を集め、すぐにカジノに行き、それをチップと交換する。少額の賭けを数回行った後、クライアントはチップを準クリーンマネーと引き換えるが、事前交渉された全額現金の不動産購入の決済に使用して保護する必要がある」と書かれている。

 中国人たちは、マネーロンダリング業者に資金を入金し、それをカナダで引き出し、現金取引で不動産購入に充てているということだ。その不動産は保有しておいても良いし、売却しても良い。それで、この中国人は、「きれいな」カナダドルを手に入れる。このマネーロンダリングに絡んだ不動産購入で、ヴァンクーバーの地価は7.5%も上昇したということだ。これを敷衍して考えると、現在、東京や日本の大都市圏の不動産価格が高騰していることも、このようなマネーロンダリングに使われている可能性があると言えるのではないか。私たちは、不動産価格高騰で、「中国人が買っているらしい」という噂話を耳にする。中国の小金持ち層までが日本の不動産を割安だとして買いあさっているという話を聞く。それだけではなく、マネーロンダリングの方法として、日本の不動産が売買されているのではないかということが考えられる。

(貼り付けはじめ)

中国はいかにして自国をアメリカのフェンタニル危機に巻き込まることになったか(How China Trapped Itself in America’s Fentanyl Crisis

-中央政府の政策とマネーロンダリングが密売人を助けるネットワークを作り上げた。

ゾンユアン・ゾエ・リュー筆

2024年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/10/china-fentanyl-crisis-america-mexico-api-manufacture-banking/

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中国衡陽市の医薬品工場の生産ラインで働く従業員(1月4日)

意図しない結果と無関心が重なり、中国はアメリカのフェンタニル危機において重要な役割を果たしている。これは北京とワシントンの間で激しい論争の的となっている。アメリカの政治家たちは、中国がアメリカの麻薬危機(U.S. drug crisis)を故意に煽っていると非難している。中国は、自国が重要な役割を果たしているのであり、アメリカは中国をスケープゴートにしているだけだと反論している。

しかし、中国の規制に関する実際のストーリーは、はるかに複雑で厄介であり、利益動機がいかに強力で、規制の効果がいかに意図しない結果をもたらすかを示している。中国政府は、フェンタニルとその前駆体化学物質(precursor chemicals)の生産と流通を規制しているが、その取引を止めるのは至難の業だ。中国の化学・医薬品の開発と輸出を促進することを目的とした政策は、代わりに何十万もの小規模な化学工場や原薬(active pharmaceutical ingredientAPI)製造業者からなる広大な家内工業を生み出し、それに伴い、中国の銀行システムの高度なリアルタイム決済機能を利用した、膨大なマネーロンダリング産業も生み出している。

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2019年6月24日、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港の郵便施設で、米税関・国境警備局(Customs and Border Protection、CBP)の職員が小包の中に錠剤を発見した。数十人の法執行官が小包を調べてフェンタニルを探している。

フェンタニルを制御する方法を理解するには、まず、その製造方法を理解する必要がある。フェンタニルには、化学的には異なるものの、体内で同様の反応を引き起こす、似た響きの名前を持つ多くの変種(variants)が存在する。それらの変種は、単に同じケーキの上に異なトッピングを施したものに過ぎない。

1959年の創出以来、研究者たちはフェンタニルの少なくとも3つの異なる製造方法を開発しており、それぞれがプロセスの一部として異なる前駆体化学物質に依存している。犯罪者たちは、バターがなくなったからマーガリンを使うなど、より簡単に入手できる前駆体化学物質を幅広く使用するために、これらのプロセスを適応させ続けている。可能性のある製造方法は無限だ。フェンタニルから利益を得ようとする犯罪者たちと、フェンタニルの供給を管理しようとする各国政府は、終わりのない競争に巻き込まれており、新たな対策が講じられるたびに、フェンタニル規制を回避する更なる技術革新が促進されている。

長年にわたり、中国の伝統的に厳格な麻薬取締政策を維持しようとする中国の規制当局は、フェンタニルの新たな変種が管理上の規制薬物リストに追加されるよりも早く出現したため、課題に直面していた。2012年から2015年の間に新たに出現したフェンタニルの変異種は6つのみだったが、2016年だけで63件の新たな変種が発生した。これに応じて、中国政府は2019年5月時点で、フェンタニルの全ての変種を規制物質リストに載せている。

米麻薬取締局(U.S. Drug Enforcement AdministrationDEA)が2020年の国家麻薬脅威評価で指摘したように、2019年以来、中国からアメリカへのフェンタニルの直接供給は「大幅に減少(decreased substantially)」している。しかし、米国務省の2023年国際麻薬規制戦略報告書によると、フェンタニル前駆体(メキシコや他の中米諸国でフェンタニルの製造に使用される化学物質)は引き続き中国から供給されている。

中国政府は麻薬の製造を厳しく規制し、原薬や最終的な錠剤の流通を厳しく監視している。2023年12月の時点で、3つのフェンタニル関連原薬(フェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル)の製造および販売ライセンスを持っている企業は2社だけだ。フェンタニル関連の医療製品を最終剤形で販売するライセンスを持っている企業は、合計で7社だけだ。湖北省に本拠を置く宜昌ヒューマンウェル製薬(Yichang Humanwell Pharmaceutical)は業界の有力企業で、2022年のフェンタニル関連の国内売上高は2億9200万ドルに上った。

宜昌ヒューマンウェル製薬の最も重要な競争相手は、アメリカのコングロマリットであるジョンソン・エンド・ジョンソンと同社のフェンタニル・パッチの輸入である。宜昌ヒューマンウェル製薬は、アメリカにフェンタニルを輸出していない。2017年のフェンタニル輸出に関する同社の最後の声明によると、宜昌ヒューマンウェル製薬の海外顧客は全て、エクアドル、フィリピン、スリランカ、トルコ、ヴェトナムの公的調達機関、現地で認可された販売代理店、または輸入国政府から製造許可を得た工場であった。

法律により、宜昌ヒューマンウェル製薬などの中国の麻薬メーカーは、指定された国内卸売業者3社(シノファーム、上海製薬、重慶製薬)にのみ製品を販売できる。これらの国営卸売業者は、地域の病院やその他の医療機関に医薬品を供給する認定された地域卸売業者に医薬品を流通させる。使用後のパッチの廃棄も厳密に監視されている。

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2019年10月2日、カリフォルニア州サンイシドロにあるメキシコとの国境検問所で歩行者の書類をチェックする米税関・国境警備局職員。

高度な産業集中と厳しく管理された流通経路により、中国で製造された相当量のフェンタニルが違法薬物取引に転用される可能性は低い。

アメリカの路上で販売されているフェンタニルの供給源は中国ではなく、主にメキシコにある秘密製造所で、中国やその他の国々の小規模生産者から購入した前駆体化学物質からフェンタニルを合成している。2022年には、16万社を超える中国の中小企業が政府の監視が比較的少ない状態で化学品を製造していた。原薬製造業者は医薬品ライセンスを必要とし、一定の監視を受けているが、ほぼ全ての州に、1600以上の製造業者が存在するため、政府がコンプライアンスを強制することは困難だ。

2021年、中国政府は、計画の欠如、参入障壁の低さ、監督不足などを理由に、中国の化学工業団地579カ所のうち約20%を「高リスク」または「比較的高リスク」と認定した。中国の化学薬品および原薬メーカーのほとんどは小規模な民間企業であり、設備投資は控えめで、柔軟な運営を行っているだけだ。

フェンタニルに関連し、中国人に対して行われたほぼ全てのアメリカ政府の執行措置は、昨年起訴された中国の化学会社4社と幹部8人、あるいは昨年10月に制裁を受けた中国密輸ネットワークのメンバー28人など、化学前駆物質の製造に関係している。どちらの場合も、関与した企業は中国最大の化学工業団地の建設で知られる江蘇省、福建省、湖北省、河北省、河南省、安徽省などの省に拠点を置く小規模な民間企業だった。

中国の各省は医薬品製造産業を誘致するために互いに激しく競争しており、その結果、規制を緩めてしまうことになる。アメリカ政府の制裁を受けた企業4社が湖北省に進出しており、湖北省政府は原薬生産基地開発のための2021~2025年の実施計画の中で特にフェンタニルを優先事項に挙げている。国家レヴェルでは、政策により、原薬サプライチェーンをより監督が容易な工業団地に統合することが奨励されている。

中国は世界トップの原薬輸出国であり、依然として小規模生産者が業界の根幹を形成している。中国の比較優位は、原材料が最大のコストとなる、汚染が深刻な低価値原薬において最も顕著である。中国がヴァリューチェーンを駆け上がるためには業界の統合が不可欠だが、北京にとっては依然として遠い目標である。薄い利益率で操業する小規模生産者間の熾烈な競争により、一部の企業がフェンタニルやメタンフェタミンなどの合成麻薬の前駆体を世界中の誰にでも、どんな目的であれ、需要のある人に日和見的に販売する傾向が今後も続く可能性が高い。

2017年、中国政府が2つの一般的なフェンタニル関連化学前駆物質を規制下に置いたとき、中国の生産者はフェンタニルの製造に使用されるまだ規制されていない他の3つの化学物質(4-APboc-4-AP、ノルフェンタニル)の販売に切り替えた。これらの化合物は2022年11月に国連の規制物質リストに追加され、米麻薬取締局は、2020年5月から何らかの形でこれらの化学物質を規制している。中国政府当局も近いうちに追随する可能性が高いが、犯罪者側は次々と新たな前駆物質を発見するだろう。

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2023年1月4日、衡陽の製薬会社で働く従業員

アメリカ政府は中国に対し、中国の化学物質輸出業者に対する「顧客確認(know your customer)」(KYC)規則を導入するよう圧力をかけているが、少なくとも現時点では中国が同意する可能性は低い。中国の小規模生産者にとってKYCルールの導入は多大なコストがかかり、施行にも費用がかかる。2022年、当時の駐米中国大使の秦剛は、KYC規則は、国連の麻薬取締条約に基づく中国の義務を「はるかに超えている(far exceed[ed])」と述べた。

これまでのところ、中国政府は生産者に対し、米麻薬取締局が管理する前駆体化学物質のメキシコやその他の国への輸出について「警戒する(cautious)」よう警告しているだけだ。実際のところ、この警告はほとんど効果を持たない。中国の小規模化学メーカーは、麻薬カルテルが新しい生産方法を見つけるのと同じくらい早く、自社の事業を適応させることができる。

中国の小規模化学メーカーは、外国人バイヤーがWeChatのようなインスタント・ペイメントに対応したメッセージングアプリを使って簡単に注文や支払いを行えるようにしている。バイヤーはWeChatのアカウントを開設する際に本人確認をするだけでよく、このステップは簡単に回避できる。完全な匿名性を求めるバイヤーのために、2021年9月以降、中国ではそのような取引が違法となっているにもかかわらず、暗号通貨(cryptocurrency)を支払い手段として受け入れる企業もある。中国の小規模な化学企業の多くは、違法薬物を製造するための既知の前駆体化学物質の「ステルス」販売(“stealthy” sales)を宣伝することで、怪しげなビジネスを誘致しているようだ。

ブロックチェーンおよび暗号分析会社エリプティックの研究者たちは、彼らが取引した90社以上の中国に本拠を置く化学会社がフェンタニル前駆体を供給することに前向きであり、その多くがメキシコへの同じ化学物質の以前の出荷について言及し、フェンタニル自体を供給することに意欲的であることを発見した。また、これらの化学会社の90%が暗号通貨による支払いを受け入れており、そのほとんどがビットコインを使用しており、テザー、いわゆるステーブルコイン(stablecoin)を使用している企業は少数であることも判明した。

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2019年11月7日、中国がアメリカのバイヤーにフェンタニルを違法販売したとして9人を投獄した後、河北省の邢台中級人民法院の外で警備に当たる警察

中国は、アメリカの路上で起きているフェンタニル危機の上流と下流の両方で重要な位置を占めている。中国企業は、フェンタニルの製造に使用される化学前駆体の最大の供給国である。中国はまた、フェンタニルの販売を促進する犯罪マネーロンダリング組織の活動拠点としても機能している。2021年3月の議会証言で、米海軍のクレイグ・S・ファラー提督(当時米南方軍司令長官)は、中国のマネーロンダリング組織を国際犯罪組織の「ナンバーワン身元引受人(No. 1 underwriter)」と表現した。

2021年、一人の中国人がメキシコ麻薬カルテルのために資金洗浄を行った罪で、米連邦刑務所での懲役14年の刑を言い渡された。米検察当局は、この事件は中国の犯罪組織が国際的なマネーロンダリングを「支配(dominate)」するようになった「最近の現象(recent phenomenon)」を反映していると述べた。これらのマネーロンダリング業者は、アメリカ、メキシコ、カナダにある中国人所有の中小企業の広範なネットワークの中に根付いている非公式の融資文化を利用しようとしている。これらのビジネスの多くは現金ベースであり、商品や製品を中国から直接輸入している。スペイン語圏の多くの国では、これらのビジネスが非常に普及しているため、想像できるあらゆるものを販売するディスカウント コーナー ストアを表す新しい俗語が誕生した。

典型的な中国の貿易ベースのマネーロンダリング計画には、少なくとも4つのグループが関与している。それらは、(1)取引を仲介する中国の犯罪組織、(2)中国から商品を輸入する地元企業、(3)資本規制を回避して富を海外に移そうとする裕福な中国人、(4)少額の米ドルの現金を過剰に保有する麻薬密売人である。

最初の2つの関与者は、参加する単純な利益動機を持っている。マネーロンダリング業者は、平均1~2%の手数料を稼ぎ、企業はどの銀行が提供するよりも安価な輸入融資を獲得する。最後の2つの関与者は、ほぼ相殺する問題を抱えている。裕福な中国人は、中国の銀行システムに資本を持っているが、それを取り出して米ドルに換金する方法がなく、麻薬密売人は合法的に使用できない米ドルを持っている。マネーロンダリング業者の目標は、他の全ての当事者間で三者交換を実行し、裕福な中国人の手に米ドルを渡し、麻薬密売人の銀行口座にあるお金を洗浄することだ。

中国のマネーロンダリング組織は、競合他社よりも安く、速く、安全だ。米麻薬取締局特殊作戦課のヴェテラン捜査官であるトーマス・シンドリックによると、コロンビアのマネーロンダリング業者は通常、サーヴィスに対して13~18%の手数料を請求する。それに比べて、中国のマネーロンダリング業者は通常、わずか1~2%、場合によっては0.5%という格安料金を請求する。

中国の犯罪者たちは、他の犯罪組織と同じ基本的なマネーロンダリングモデルを使用している。彼らはその資金を現金ベースのビジネスを運営するパートナーのネットワークに分配し、そこで正規の資金源からの現金と混ぜて、小分けにして銀行システムに入金する。中国人を際立たせているのは、そのターボチャージされたスピードと、膨大な米ドルの流れを吸収する能力だ。これが可能なのは、中国のマネーロンダリング業者が中国の銀行システムへのアクセスを利用して、違法に入手した米ドルの供給と、裕福な中国人による闇市場での海外ドルの需要を一致させているからである。中国居住者が合法的に米ドルを購入するには、フォームに記入して銀行に申請し、返答を待つ必要がある。承認後も、海外電信送金は年間わずか5万ドルに制限される。

中国政府は、中国の自国通貨である人民元(通常は元として知られる)を米ドルなどの外国通貨に販売する独占権を熱心に守っている。これは、個人が自由にお金を両替できるようにすると、経済に悪影響を与える資本逃避(capital flight)につながる可能性があるという懸念である。最近の中国経済の低迷、アメリカとの関係悪化、習近平国家主席の「共同繁栄(common prosperity)」政策のおかげで資本逃避はさらに深刻化しており、中国のエリート層には、海外での自分たちの財産がより安全になるかもしれないと考える多くの理由が与えられている。

昨年8月、上海市警察は外貨の闇市場(black market for foreign currency)取り締まりの一環として、「移民サーヴィス(immigration services)」会社の有力幹部を含む5人を拘束した。同様の顧問会社の多くは、裕福な中国人が犯罪的なマネーロンダリング組織のサーヴィスを利用できるように、慎重かつ慎重な仲介者として機能している。

汚いお金の引き渡しが確認されるとすぐに、マネーロンダリング業者は、中国の顧客が米ドルに変換するために送金した人民元を使用して、中国の銀行システム内で一連のミラー取引を実行するという作業を開始する。マネーロンダリング業者は、資金の出所を曖昧にし、資金を少額に分割するために資金洗浄用口座やダミー会社を利用する。5万元(約7000ドル)以下の銀行口座間の送金は、中国の中央銀行である中国人民銀行が運営する高額決済システムを使用して、異なる銀行間であってもほぼ瞬時に決済される。このプロセス全体は、モバイルバンキングアプリのみを使用して行うことができ、完了までにかかる時間はわずか3時間だ。

マネーロンダリング業者は、中国から汚いお金の元の所有者の居住国に輸出される商品の支払いに利用できる、顧客の追跡が不可能な新しい人民元の銀行預金を作成することを目指している。この貿易ベースのマネーロンダリングモデルでは、商品の輸入業者は、汚い米ドルを提供するために使用された中国所有の小規模企業の同じネットワークのメンバーである。これらの現金ベースの中小企業は、輸入品を地元経済に販売している。これらの販売による収益は、現地通貨でのクリーンな銀行預金として、ダーティマネーの元の所有者に送金され、合法的に使用したり、必要に応じて別の通貨に変換したりすることができる。他の場所では、マネーロンダリング業者の中国人顧客が目的の米ドルを集める。かつては汚いお金だったが、現在はきれいになっている。これにより、お金の循環の流れが完成する。

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邢台市での会見中に、予海斌(左)中国禁毒委員会副主任と、中国駐在米国移民関税執行官オースティン・ムーアが握手する(2019年11月7日)

アメリカと中国の当局は、マネーロンダリング対策コンプライアンスチームが厳しく監視しているSWIFTなどの国境を越えた決済システムを利用していないため、このモデルのマネーロンダリングと戦うのに苦労している。中国の銀行システム内では、当局への報告のきっかけとなる送金金額は比較的高額で、個人口座の場合1日あたり50万元(約7万ドル)だ。対照的に、アメリカの銀行は通常、1日の合計取引額が1万ドルを超えるたびに報告書を提出する。経済指標に対する貿易ベースのマネーロンダリングの影響を検出することさえ容易ではない。1つの兆候は、中国の公式貿易黒字と税関領収書に基づく暗黙の貿易黒字水準との間のギャップが拡大していること(年間約5000億ドル)だろう。

広く普及しているものの、あまり洗練されていないマネーロンダリング手法の1つは、ヴァンクーバーモデルとして知られている。ヴァンクーバーモデルは、多くの中国人エリートの子供たちが故郷と呼ぶカナダの都市にちなんで名付けられた。このモデルでは、富をオフショアに移そうとする中国人顧客がヴァンクーバーに飛ぶ前にマネーロンダリング業者が管理する銀行口座に人民元を入金することから始まる。

到着すると、顧客たちはカナダの通貨(通常は麻薬の販売で得た汚れた金)を集め、すぐにカジノに行き、それをチップと交換する。少額の賭けを数回行った後、クライアントはチップを準クリーンマネーと引き換えるが、事前交渉された全額現金の不動産購入の決済に使用して保護する必要がある。ブリティッシュコロンビア州政府の委託による2019年の報告書は、2018年の同州の不動産取引で最大53億カナダドル(約40億米ドル)がマネーロンダリング活動に関連し、住宅価格を最大7.5%押し上げたと推定した。

これまでのところ、逮捕や処罰は中国人犯罪者のマネーロンダリング行為を阻止するのにほとんど役に立っていない。2021年10月、中国国籍でアメリカに帰化したリー・シージは、グアテマラの薄汚いカジノを通じて麻薬カルテルのために少なくとも3000万ドルを洗浄した罪で、懲役15年の判決を受けた。リーのような大物が自らの行為で処罰されるたびに、さらに多くの犯罪者がその見返りはリスクを冒す価値があると考えている。

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メキシコの捜査当局は、エンセナダ近郊で押収された数百ポンドのフェンタニルとメスをメキシコのティフアナにある本部に降ろす(2022年10月18日)

ワシントンと北京は、この問題をめぐってしばしば激しい言葉の応酬をしているが、双方は違法なフェンタニル取引を阻止することに共通の関心を持っている。フェンタニル危機との関連によって、中国の国際的イメージに与えられた損害は、化学製造産業に生じる可能性のある関連利益をはるかに上回っている。アメリカの法執行機関は、メキシコで処罰を受けずに活動している麻薬カルテルへの化学前駆体の供給を抑制するために、中国の地方政府当局者や警察の協力を必要としている。麻薬密売に関連した国際的なマネーロンダリング活動を容認することは、政府部門の汚職も可能にするため、どちらの政府にとっても利益になることではない。

中国は、フェンタニルについては、時間をかけて対処できる問題とみているが、アメリカはフェンタニルを今すぐ行動が必要な危機とみている。昨年1月に初めて開催された米中麻薬対策作業部会(U.S.-China Counternarcotics Working Group)の会合では、双方が実質的な解決策について話し合う準備ができていることが示された。しかし、アメリカ政府は中国政府に優先事項を再考するよう、うまく要請する以上のことをしなければならないだろう。中国政府にとって重要な他の分野での譲歩も俎上に上らなければならないだろう。潜在的な段階的な措置には、中国企業がより厳格な取引規制リスト(Entity List、エンティティリスト)に移行するまでに米商務省の未検証リストに残ることができる期間の延長や、中国企業と個人に対するより柔軟な輸出最終用途検査が含まれる。中国政府は、国連の麻薬および向精神薬の違法取引禁止条約(U.N. Convention Against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances)に含まれるリストと一致するように、中国の規制前駆体化学物質のリストを更新することで報復する可能性がある。

アメリカ政府と中国政府は、フェンタニルの違法取引に深刻な打撃を与えるために協力するためのインフラとツールを整備している。この問題で中国の協力を勝ち取る代償は、アメリカ国民が既にフェンタニルに支払った恐るべき代償に比べれば微々たるものである。

※ゾンユアン・ゾエ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会中国研究モーリス R. グリーンバーグ記念研究員。最新作に『ソヴリン・ファンド:中国共産党は如何にして世界的な野心に対して資金を調達しているか(Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions)』(ハーヴァード大学出版局、2023年)がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 

 先週水曜日、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプがメキシコを電撃訪問し、エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領と会談を行いました。その日のうちにアリゾナ州フェニックスに向かい、移民政策に関する演説を行いました。この演説を聞いたある人は、「酷い内容だった」と分析していました。激しい言葉遣いが復活し、罵倒が続いたということでした。

 

 これまで散々くさしてきたメキシコに行って、友好的な態度で大統領と共同記者会見を行った時とは全く態度が違ったそうです。そして、その原因は、メキシコ大統領がトランプが帰国後にツイッターで、「トランプとの会談では冒頭で、国境の壁建設に対してメキシコが資金を出すことは一切ないと明言した」と書いたことだったそうです。会談後の共同記者会見で、記者から壁建設の資金について合意ができたのかという質問が出て、トランプは「壁建設については議論をしたが、建設資金については議論しなかった」と答えたのですが、ペーニャ・ニエト大統領は、この時に何も言わずに、後でツイッター上にトランプの発言とは異なる内容を発表したのです。これではトランプが嘘つきであるとか、メキシコまで行って弱腰になったとかの批判を浴びることになるからです。そして、トランプは原稿通りではなく、怒りにまかせて演説を行ったということです。

 

 トランプ陣営としては、黒人とヒスパニックに対する態度変更、姿勢の軟化で、無党派層の支持を得るという戦略を立てています。今からこのように態度変更しても、一度トランプ支持と決めた以前からの支持者たちは、じゃあヒラリーに入れるという心配はありません。ですが、このメキシコ訪問は少し欲張り過ぎて失敗だったと思います。

 

 トランプが大統領になった時の姿をシミュレーションの形で見せたい、というのは分かりますが、相手が員円のメキシコというのは選択肢としては厳しいものでした。それでは、懸案があるようには思われないカナダはどうかというと、懸案がないし会談をする意味がありません。それだったらリスクがあってもメキシコにということになったと思いますが、メキシコとしては意趣返しもあって、トランプをうまく罠に誘い込んだということが言えると思います。ペーニャ・ニエト大統領はメキシコ国内で人気がない人なので、アメリカの大物を使って一泡吹かせて、アメリカに物申してやったということにして、メキシコ人の喝さいを浴びようという目的があり、それにまんまと利用されてしまいました。

 

 ここはメキシコ訪問しない方が良かったのではないかと思います。ヒラリーがどんどん自滅していく中で、あまり手を広げて動き回る必要はないのにそれをしてしまったというのは、選対内部が統一されていないことを示しているのだと思います。

 

(貼りつけはじめ)

 

共和党全国委員会はトランプの移民政策に関する演説に対する賞賛を行う計画を破棄(RNC scrapped plans to praise Trump immigration speech: report

 

ジェシー・ハッテム筆

2016年9月3日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/294391-rnc-scrapped-plans-to-praise-trump-immigration-speech

 

金曜日夜に『ニューヨーク・タイムズ』紙は次のように報じた。共和党全国委員会は、ドナルド・トランプの移民政策に関する演説を称揚する計画を破棄したが、それは演説の中でトランプが激しい言葉遣いをし、ヒラリー・クリントンを国外追放にすると主張したことが原因であった。

 

共和党全国委員会委員長レインス・プリーバスは、トランプの演説が温かみに溢れ、慎重な内容になり、それに対して共和党全国委員会のツイッターアカウントで賞賛しようと希望を持っていたとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

しかし、プリーバスは、トランプの演説の内容を聞き、共和党全国委員会は計画を破棄し、何の声明も出さないことを決めた、とニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

水曜日にアリゾナ州フェニクッスでトランプは移民政策に関する演説を行った。その中で、不法移民に対する姿勢を軟化させることなどないと強く宣言し、10カ条からなる強硬な移民政策に対する計画を提案し、激しい言葉遣いで不法移民を罵倒した。

 

トランプはアメリカ南部の国境に壁を建設すると力強く誓い、アメリカに不法滞在している人は誰も国外退去を免除されないと警告を発した。

 

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トランプのメキシコ訪問の5つの成果(Five takeaways from Trump's Mexico trip

 

ジョナサン・スワン筆

2016年8月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/294032-five-takeaways-from-trumps-mexico-trip

 

ドナルド・トランプは水曜日にメキシコを訪問し、人々を驚かせた。そして、トランプが信用できないとしていた人物と一緒の舞台に立った。その人物はメキシコ大統領エンリケ・ペーニャ・ニエトだ。

 

トランプのメキシコ訪問は、政治に深く関わっている人々にとっては完全な不意打ちであった。そして、この訪問は、トランプが民主党のヒラリー・クリントンに付けられているリードを縮めるためならギャンブルもいとわないという決意を持っていることを示した。

 

これから、トランプがメキシコ大統領と行った共同記者会見から得られた5つの成果を見ていく

 

(1)トランプは勝利を得るためにリスクを取ることに躊躇しない(Trump is willing to take risks to win

 

共和党大統領選挙候補者として初めての外遊先としてメキシコを選ぶことはリスクが大きかった。

 

トランプは選挙戦全体を通じてメキシコを徹底的に叩いてきた。アメリカ人の雇用を奪い、メキシコ政府が積極的にレイプ犯や麻薬密売人をアメリカに送りこんでいると非難してきた。

 

メキシコを訪問し、メキシコ大統領の隣で軟化姿勢を示すことで、トランプは彼の最も忠実な支持者たちを疎外してしまうというリスクを負った。

 

実際には、トランプはメキシコ大統領の隣に立ったが、彼は自分が置かれている立場を理解していた。

 

メキシコシティーでトランプは地に足がついた行動を取った。トランプは選挙の投開票日までに更なるリスクを取ることも覚悟しているように思われる。

 

(2)トランプは和解の指導者になれることを示したいと思っている(Trump wants to show he can be a world leader

 

水曜日の共同記者会見では、トランプがほとんど話した。ペーニャ・ニエト大統領との共同記者会見は、さながら世界各国の指導者たちの会談の時のようだった。首脳用の台が用意され、記者から様々な質問が飛んだ。

 

トランプの選対はアメリカの有権者たちに、トランプが大統領になった時の姿を見せようとしていた。

 

トランプはその役割をきちんと果たしているように見えた。いつものにやついた顔を見せず、まじめそうに振る舞っていた。メキシコ大統領が話し、それを女性の通訳官が英語で話している間、尊敬をこめてうなずいていた。

 

トランプが話す番になった時、トランプは手元にある原稿を最後から最後まで読んだ。かれがいつもやるような、プロンプターを読みながら、そこから脱線して聴衆を藁らせるようなことはせず、それをやりたい欲望に抗しているようだった。

 

(3)トランプは大統領に相応しくないというヒラリーからの批判に受けて立つ(Trump is taking on Clinton's criticism that he's unfit for office

 

メキシコ大統領と合意した分野を強調し、論争の最大の争点であるメキシコが壁の建設費を払うかどうかについて言及を避けたことで、トランプは状況が必要とする場合には自身の振舞いを抑制することが出来る指導者だということを示そうとした。

 

トランプが声明を読み上げた後、質疑応答の時間になり、ABCニュースの記者ジョン・カールが、トランプとペーニャ・ニエトとの間で誰が壁建設の資金を出すのかという問題について合意ができたのかと質問した。

 

トランプは、ペーニャ・ニエトと壁建設については議論したが、建設資金の支払いについては議論しなかったと答えた。

 

(4)トランプは本選挙を控えて有権者向けに自身のメッセージを和らげた(Trump is softening his message for a general election audience

 

トランプがメキシコシティーに登場した。メキシコシティーに登場したトランプは、予備選挙を、国境を違法に超えてくる人々をレイプ犯とし、「メキシコは私たちの友人ではない」と呼んだトランプとは全くの別人だった。

 

彼は水曜日の共同記者会見の最後に、ペーニャ・ニエト大統領に対して、「私は貴方を友人と呼びます」と声をかけた。

 

トランプは貿易協定でメキシコはアメリカよりもずっと有利な条件を得ていると主張しているが、彼は言葉遣いを変更している。彼は、雇用はアメリカ国内で保持されねばならないと繰り返す代わりに、私たちの富は、メキシコ、アメリカ両国民のために「私たちの半球」の中に保持されねばならないと述べるようになった。

 

トランプは繰り返し、メキシコの人々を賞賛した。

 

トランプは彼の友人の中に多くのメキシコ系アメリカ人がいること、数千人のメキシコ系アメリカ人を雇用していることを強調した。トランプは「彼らは素晴らしい人たちで、一生懸命に働く。私は彼らを尊敬している」と述べた。

 

(5)トランプは彼の中核となる考えについては変えていない(But Trump isn't shifting on his core ideas

 

トランプは水曜日の夜にアリゾナ州フェニックスで演説を行うために、彼の移民政策計画を練り上げていた。しかし、彼の記者会見の発言から、彼は中核となる考えは変えていないことが分かった。

 

ペーニャ・ニエト大統領と共同記者会見に臨んでいる間、トランプは繰り返し、北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)は、アメリカよりもメキシコにより利益をもたらすものだと発言した。

 

トランプはまた、国境の壁建設を主張し、それがメキシコとの共同の目的の第一だと宣言した。そして、この壁を利用して、自分が大統領の間に不法移民を終わらせると宣言している。

 

そして、彼は礼儀正しくメキシコが壁建設の資金を出せと主張することはしなかったが、彼の発言の中に主張や約束から交代する内容は含まれなかった。

 

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メキシコ大統領:私は、私たちが国境の壁におカネを出すことはないと明言した(Mexican president: I told Trump we wouldn't pay for border wall

 

ハーパー・ニーディグ筆

2016年8月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/mexican-president-told-donald-trump-mexico-wont-pay-for-wall

 

メキシコ大統領エンリケ・ペーニャ・ニエトは、「私はドナルド・トランプに対して、メキシコが貴方の提案している国境の壁建設のために資金を出すことはないと明言した」と語った。これは、会談後の記者会見でトランプが述べたことと矛盾する。

 

ペーニャ・ニエト大統領はツイッターに次のような投稿を行った。「ドナルド・トランプとの会談の冒頭、私はメキシコが壁建設に資金を出すことはないと明言した。それから会談は別の様々な話題に移り、お互いを尊重する姿勢を保ちながら、進んでいった」。

 

大統領の報道担当官はロイター通信の取材に対して、大統領の発言を繰り返した。

 

エドュアルド・サンチェスはロイター通信に対して、「大統領が述べたことは、彼がこれまでも複数の機会で述べたように、メキシコは壁建設の資金を出すことはない、というものだ」と答えた。

 

水曜日にメキシコシティーでトランプとペーニャ・ニエト大統領が会談を持ったことは世界を驚かせた。この会談の後の共同記者会見で、トランプは記者団に対して、2人は壁建設については議論をしたが、その資金については議論しなかったと述べた。

 

トランプは次のように語った。「私たちは壁建設については議論したが、壁建設の資金については議論しなかった。それは後々のことだ。これは予備的な会談だ。とても素晴らしい会談になったと思う」。

 

トランプ選対は、メキシコ側との対話をこれからも継続していくこと、そして、トランプは交渉しようとはしなかったことを声明として発表した。

 

水曜日の夜に発表された声明の中で、トランプの報道担当ジェイソン・ミラーは次のように述べた。「今日は、トランプ氏とペーニャ・ニエト大統領との間の議論と関係構築の最初の日となった。これは交渉ではなかった。もし交渉ということになれば、会談を行うことは不適切なものであっただろう。両氏は壁建設問題について別々の考えを持っているが、これは驚くべきことではない。私たちはこれからも対話が継続されることを期待している」。

 

ヒラリー・クリントン選対委員長のジョン・ポデスタは水曜日の夜に声明を発表し、その中で、トランプはメキシコ大統領に対してお金を出すように説得できなかったことで、「自分で自分の首を絞めた」のだと述べた。

 

トランプとメキシコ大統領の食い違いが明らかになって、ポデスタは声明に対しての補遺を発表し、その中で、「トランプはただ自分の首を絞めただけではなかった。彼は会談の中で、メキシコ大統領に手痛い一発をお見舞いされ、嘘をつかざるを得なかった」と述べた。

 

民主党全国委員会はトランプ側とメキシコ側で食い違う話になっていることを批判している。

 

民主党全国委員会報道担当書記マーク・パウステンバックは次のように述べた。「本日、メキシコで行った記者会見で、ドナルド・トランプは、メキシコ大統領と壁建設でどのように資金を出すかについて議論したことについて虚偽を申し立てた。トランプはこれまでに国境に壁を作るというバカげた考えのためにメキシコに資金を出させると声高に述べてきた。しかし、実際にメキシコ大統領と一対一で顔を合わせたところ、彼は何とかごまかそうとし、そのことを世界中のテレビの前で隠そうと試みた。簡単に言えば、ドナルドは酔っぱらっていたようだものなのだ」。

 

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メキシコ大統領とトランプ、国境の壁建設の資金で食い違う(Mexican president contradicts Trump on who'll pay for border wall

 

ベン・カミサール筆

2016年8月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/294021-trump-i-didnt-discuss-whether-mexico-will-pay-for-border

 

水曜日、ドナルド・トランプは、トランプの大統領選挙運動の中心である国境にメキシコの経費負担で壁を作ることについて、メキシコ大統領と議論することを拒絶した。

 

しかし、エンリケ・ペーニャ・ニエトは共同記者会見で、メキシコが経費を負担することはないと主張し、水曜日の夜にツイッターに、トランプとの会談中、トランプに対して資金を出すことは決してないと述べたと投稿した。

 

ペーニャ・ニエトはツイッターで、「トランプとの会談の冒頭、私はメキシコが壁建設に資金を出すことはないと明確に述べた。それ以降、会談は他のテーマに移った。会談はお互いが敬意を持って穏やかに行われた」と書いた。

 

ペーニャ・ニエトのツイートは、その直前にロイター通信が報じたトランプによる会談内容の説明と矛盾した。

 

水曜日の夜、メキシコ大統領の報道担当官エドゥアルド・サンチェスはロイター通信に対して、「大統領は何度もメキシコは壁建設の資金を出さないと述べた」と語った。

 

ペーニャ・ニエト大統領の官邸にコメントを求めたところ、大統領の一連のツイートを参照するようにという回答を得た。

 

メキシコシティーでの共同記者会見で、トランプは、トランプが壁建設をペーニャ・ニエト大統領に提案したが、誰が資金を出すかについては「議論しなかった」と述べた。

 

トランプは次のように述べた。「私たちは壁建設については議論した。壁建設の資金については議論しなかった。それは後々のことだ。今回は予備の会談だ。素晴らしい会談になったと考えている」

 

トランプは続けて次のように述べた。「多くのテーマで強い物言いになったと思う。しかし、私たちはそうしなければならない」。

 

トランプ選対はメキシコ側との対話を続けたい、そしてトランプは交渉はしないと発表した。

 

トランプの報道担当ジェイソン・ミラーは水曜日の夜に声明を発表し、その中で「今日は、トランプ氏とペーニャ・ニエト大統領との間の議論と関係構築の最初のパートとなった。これは交渉ではなかった。もし交渉ということになったらそれは不適切なことであったはずだ。壁建設について2人は別々の考えを持っていたが、それは驚くべきとではない。私たちはこれからも対話が続くことを期待している」。

 

トランプの報道担当は、ウォールストリート・ジャーナル紙に対して、ペーニャ・ニエト大統領がトランプに対してメキシコは壁建設の資金を出さないと述べた時、トランプは何も反応しなかった、なぜならこれは議論ではなかったからだ。だから、トランプは記者団に対して嘘などついていない、と答えた。

 

トランプの壁建設という主張は、彼の移民政策関連戦略の中心をなす。トランプのウェブサイトに掲載されている第二の点は、メキシコが壁建設の資金を出さねばならない必然性について書かれている。トランプの選挙運動では多くの場合、「壁を作れ」の大合唱が起きる。そして、トランプはメキシコが資金を出せということを支持者たちと掛け合いをして大声で叫ぶ。

 

ペーニャ・ニエト大統領は記者団の前で壁建設についての自分の考えを述べなかった。ペーニャ・ニエト大統領はトランプとの会談前、CNNの取材に対して、メキシコが壁建設に資金を出すことは「絶対にない」と答えた。トランプに対して批判するべき点があるかという質問に対して、ペーニャ・ニエト大統領は楽観的なトーンで答えた。

 

ペーニャ・ニエト大統領は通訳を通じて次のように語った。「トランプ氏の持つメキシコに対する印象、間違った印象のために不幸にしてメキシコ国民を傷つけ、衝撃を与えた。メキシコ国民はいくつかのコメントのために侮辱されたと感じている。しかし、トランプ氏がメキシコと関係を築きたいとする考えは、アメリカとメキシコ両国の関係をより良いものにするだろう」。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)






 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回は、「北米大陸は次の新興巨大市場になる」という論稿をご紹介します。著者は、アフガニスタンやイラクで米軍や多国籍軍を率い、オバマ政権ではCIA長官も務めながら、不倫スキャンダルで失脚したデイヴィッド・ペトレイアス退役陸軍大将です。ペトレイアスは、軍歴もさることながら、学歴も素晴らしいもので、陸軍士官学校、アメリカ陸軍指揮幕僚大学を優秀な成績で卒業し(戦前の日本陸軍で言えば恩賜の軍刀組です)、プリストン大学大学院(ウッドロー・ウイルソンスクール)で国際関係論の博士号を取得しています。

 

 ペトレイアスの今回の論稿は、ハーヴァード大学ケネディスクールの研究員として発表した論稿の要約で、言いたいことは「北米大陸(アメリカ・カナダ・メキシコ)は次の新興巨大市場になる」という内容です。内容自体は目新しいものでないし、陳腐なもので、著者が有名であるくらいがウリです。

 

 このように「アメリカは凄い」「アメリカは偉い」と言い続け、BRICSの台頭やAIIBに見られる、ヨーロッパと中国の結合に対抗しようとする姿は何だか哀れを誘うものです。アメリカとそれに追随する日本が中国を包囲する(自由と繁栄の弧やら安倍版の大東亜共栄圏的発想)つもりが、もっと大きく包囲され、気付いたら日米が孤立していたなんてことにならないように、今からでも動くべきでしょうが、日本はこのままアメリカの下駄の雪としてどこまでもついて行くしかないと思っている人たちが政権にいるために馬鹿な選択しかできないでしょう。

 

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北アメリカ大陸:次の巨大新興市場となるか?(North America: the Next Great Emerging Market?

―アメリカ、カナダ、メキシコが21世紀の世界経済を牽引する位置にいるその理由

 

デイヴィッド・ペトレイアス、パラス・D・バヤーニ筆

2015年6月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/25/north-america-the-next-great-emerging-market-united-states-mexico-canada/?utm_content=buffer7967b&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 米連邦議会はついにバラク・オバマ大統領に対して、彼が交渉を妥結させようとしている環太平洋経済協力協定(TPP)と環大西洋貿易・投資協力協定(TTIP)に関する「促進」権限を与えようとしている。しかし、オバマ大統領の進める貿易協定についての長引く激しい議論は、将来の市場統合の価値に対するワシントンにおける疑念を増大させ、力強い世界経済の建設などできないという悲観論を拡大させている。こうした中で全く触れられない疑問が存在する。それは「アメリカと国境を接する近隣諸国は競争できるか?」というものだ。

 

 この疑問に対する答えは、明らかに「イエス」だ。実際、緊密な市場統合、アメリカ、カナダ、メキシコ3カ国それぞれの経済力、4つの技術革命によって、3カ国は次の巨大な新興市場となれる位置に付けているのだ。

 

 現在、世界市場は不確実な動きの中にあることは疑問の余地がない。中国の経済成長は鈍化している。投資主導の経済発展の疲れ、人口構造の変化、10年に渡る労働コストの上昇、財政赤字の急増、環境汚染と汚職の拡大といった問題と中国は戦っている。インドは、「モディ時代」が訪れようとしているが、経済成長を促すために必要な諸改革がまだ軌道に乗っていない。ブラジルは景気後退に陥り、「将来の大国」の地位に留まり続けているように思われる。

 

 先進諸国もそれぞれ同じような問題を抱えている。日本は、安倍晋三首相による一連の経済改革である「アベノミクス」の下で、ある程度の成果を収めているが、経済における競争を導入し、企業の慣習を改革するという最も厳しい改革は不完全なままである。一方、日本の人口における構造変化の影響は深甚なものである。ユーロ圏は一時的なそれぞれの国で程度の異なる経済回復を経験している最中である。しかし、ヨーロッパの先進諸国は堅実な経済成長の道進むための実質的な諸改革を必要としている。

 

 世界経済をこれまで牽引してきた国々の経済成長は鈍化しているが、北米諸国の経済は急速に発展できる位置にある。3か国の経済における重要な中核をなしているのが他に類を見ない市場統合である。確かにTPPTTIPのような貿易協定にも問題はある。競争に晒されるアメリカ国内のいくつかの経済セクターでの雇用の喪失はその代表例だ。北米自由貿易協定(NAFTA)の下で、北米3カ国は繁栄を共に享受してきた。 貿易量は20年間で3倍になり、その総額は1兆ドルを超え、北米3カ国をまたいで数百万の雇用の創出が行われた。この事実は経済的つながりの改善が生み出す利益であり、注目に値する。

 

 一国レヴェルで言えば、アメリカ経済は根本的な有利さを保持している。それは、比較的自由化されたビジネス環境、技術革新と企業家精神に富んだ文化、大きくて動きが速い資本市場、技術的な先進性を生み出し、製品化する小規模企業である。カナダの銀行システムは世界で最も健全であることは証明されている。カナダの石油とガス生産部門は協力である。昨年の石油価格の下落では影響を受けたがそれでもその強さは健在だ。メキシコはマクロ経済の面で高い安定性を達成している。現在、海外の国々での労働コストが上昇し続けているが、メキシコの現政権はメキシコが製造業の一大拠点になるための諸改革を強調している。

 

 こうした強みに加えて、北米3カ国は4つの部門の大きな変化から恩恵を蒙っている。この4部門とは、エネルギー、先進製造業、生命科学、情報技術である。                                                  これら4つのこれまでの制限を打ち破る革命によって、北米アメリカ大陸は次の新興巨大市場として世界に登場することになるだろう。

 

これらの大転換は共鳴し合って起きている。採掘技術の発展によって、石油埋蔵量は拡大し、石油と天然ガスの価格は安くなった。これによってアメリカはエネルギー上の独立を得ただけでなく、製造業の復活も果たした。製造業では、ロボット工学と3Dプリンターによって、工学における基準が向上し、コストを下げることが出来た。クラウド・コンピューターとビッグデータを通じてIT技術の応用は拡大した。これらを使って、アメリカの製造業と生命科学は、それぞれ「産業インターネット」と「ヘルスケア・インターネット」を出現させつつある。

 

 北米各国の経済は、これらの諸分野で有利な位置を占めているが、こうした動きを加速させるために、政策決定者たち、特にアメリカ連邦議会が行えることはまだまだたくさん存在する。

 

 第一にそして最も重要であるが、米連邦議会は政府の財政を規律あるものにすることでビジネス環境を改善する必要がある。これには、アメリカの社会保障制度の改革と、慎重に選ばれた軍事・非軍事プログラムの削減によって予算の大幅削減と転換を行う必要が出てくる。これらの予算とプログラムの削減は理想的には、アメリカの企業に対する税制の再構築と共に行われることが望ましい。それには複雑さと世界で最高水準にある全体としての税率の削減が行われるべきだ。

 

 加えて、アメリカ連邦議会はアメリカが技術革新の先頭ランナーでいられるようにいくつかの方策を立てるべきだ。軍事用・非軍事用の科学研究に対する連邦予算は、2009年以降、対GDP比で20%以上も下落している。これを上昇させねばならない。応用研究に対する企業の投資を継続させるために、研究開発に関する減税措置は高級に継続させるべきだ。IT関連企業がサイバーテロとの戦いに参加することを認める法律の成立によって、各企業と米国土安全保障省との間での情報共有が以前に比べてだいぶ楽になった。これは、IT部門におけるアメリカの指導的な立場を守る上で重要不可欠だ。

 

 教育システムと移民システムの改革によって、アメリカは世界中の最高の人的資源を魅了することになるだろう。各州の政策決定者たちは、厳格な教育に関する基準、特に数学、科学、読解能力に関する基準を設け、高い質の教育を提供する特別認可学校などを通じてより大きな競争と選択を促すべきだ。連邦議会は包括的な移民改革法案を通過させ、H-1Bヴィザの拡大、教育と仕事を持つ移民の受け入れの促進のためのシステム作り、非熟練労働者たちのための永住権や市民権獲得の道筋づくりを行うべきだ。

 

 北米大陸がエネルギー生産部門でトップを維持するために、大統領と連邦議会は、カナダからアメリカへ石油を輸出するためのキーストーンXLパイプラインを承認すべきだ。そして、アメリカ国内で生産された石油の輸出を許可し、更には、電力の移送のための高電圧の送電システムの建設によって再生可能エネルギーの開発を促進するようにすべきだ。米環境保護庁には水圧粉砕式に対する奇声を行う権限が与えられた。これによって、シェールガス生産を安全なものにする高質のそして共通の基準が決められ、これまで各州でまちまちだった規制が統一された。結果として、シェールガス革命は継続されることになった。

 

 最後に、連邦議会はアメリカ国内の物理的、そしてデジタル的な社会資本を強化するために投資を賢く行うべきだ。国家社会資本銀行を創設し、自動車燃料税を増税しかつスライド制にし、どこでも使えるブロードバンド・インターネットを発達させる戦略を立てることで、アメリカの生産性が向上だろう。

 

 こうした根本的な強さは、アメリカ、カナダ、メキシコが現在の不確実な世界経済の状況を乗り切ることの手助けとなる。逆風に対する政策から順風に対する政策に転換することで、連邦議会は今日起きている4つの革命の成果を確かなものとすることができ、これから数十年間の経済の大変化を進め、アメリカと北米の近隣諸国の将来に大きな経済的な果実を与えることが出来るようにすることができる。

 

※著者たちはハーヴァード大学ケネディ記念行政学・政治学大学院付属ベルファー記念科学・国際問題研究センターから共同執筆した報告書を発表した。タイトルは「次の大規模新興市場となるか?:北米大陸における4つの融合された革命の評価」

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




 
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