古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:モンロー主義

 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカは西半球に立て籠もろうとしている。世界に対する一極支配は既に不可能な状況になっている。そうした中で第二次ドナルド・トランプ政権は202512月に発表した、「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」で、「アメリカ・ファースト外交」を掲げ、「西半球」をアメリカの勢力圏(sphere of influence)とすると発表した。

 トランプ政権は、ヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領の拘束連行を実施し、グリーンランドの領有を主張している。有名なモンロー主義と棍棒外交を混ぜ合わせた、アメリカ・ファースト外交政策、ドンロー主義は、あらゆる手段を用いて、西半球から中国やロシアの影響を排除し、アメリカの支配権を確立するということになる。

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 アメリカが西半球を勢力圏とすると、中国とロシアがそれ以外の地域を勢力圏にするという構造になる。ロシアは自国の周辺を「緩衝地帯」「衛星国」として、自国の防備を固めるという行動を取り、中国は影響を少しずつ拡大していく。一帯一路計画はその一例であるし、BRICSという枠組みもそれにあたる。

 アメリカの西半球のアメリカ勢力圏化は、実質的なアメリカ「帝国化」である。アメリカの利益のために、勢力圏内の全ての国家がアメリカの利益のために「奉仕する」という構造を目指すことになる。簡単に言えば、全ての国家を属国とするということだ。帝国と属国の関係を西半球に築き、搾取するということだ。遅れてきた植民地主義である。ドンロー主義のこのような態度は西半球の全ての国々の反米感情を増大させることになる。また、既に、ブラジルはBRICSの一角として、西側以外の国々の中でリーダー格として存在感を増している。西半球は既にアメリカの勢力圏、植民地帝国として再編することはできない。アメリカが、本当の意味で「共存共栄(co-prosperity)」を学ばねば、ドンロー主義による、西半球の植民地化は、太平洋戦争における日本の「大東亜共栄圏(Great East Asian Co-Prosperity Sphere)」と同じ結果に終わるだろう。
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「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense

-寛大に解釈したとしても矛盾が山積している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拉致事件を含む)の戦略的正当性(the strategic justification)について、もしあなたが困惑しているなら、それは仕方がないと思う。なぜなら、これまでに提示された論拠のほとんどは信頼性に欠けているからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル[fentanyl])の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦(a full pardon)を与えるという最近の決定は、彼がこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは、繰り返し警告されながら発見されることのなかったイラクの大量破壊兵器(weapons of mass destruction)と同じくらい真実である、完全に虚構の政権プロパガンダだったのだ。

マドゥロ大統領の拘束は、アメリカの安全保障強化を目的としたものではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国(a very weak country)であり、マドゥロ大統領が容易に拘束されたことからもそれが明らかだ。また、アメリカの強力なライヴェル国にとって、ヴェネズエラは緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに輸送していなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力も存在しなかった。カラカスからアメリカが直面する深刻な脅威を夜も眠れずに心配する人は誰もいなかったし、マドゥロ大統領がブルックリンに収監された今、誰もが安眠できている訳ではない。

また、トランプ大統領が野党指導者マリア・コリーナ・マチャドを権力の座に就かせることを既に断念し、代わりに依然として紛れもなく独裁的な政権を率いるマドゥロ大統領の副大統領と交渉する意向を示していることを考えると、これは民主政治体制の促進を目的としたものでもない。

 

 

 

 

 

危険な薬物の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威に立ち向かう必要性でも、民主政体を回復したいという願望でもないのなら、それは石油に違いない、そうではないか? トランプは、これが本当の理由であり、アメリカ企業がすぐにそこに参入して石油を奪い、アメリカを偉大な国にするつもりだと繰り返し述べている。これもまた間違いだ。トランプは自分が信じたいものなら何でも信じることができるが(そして頻繁にそうしている)、近いうちにアメリカを待ち受ける大規模な石油ブームなど起きない。火曜日、トランプはヴェネズエラがアメリカに最大5000万バレルの石油を引き渡すことに同意したと自慢したが、これはせいぜいアメリカの石油生産量の4日分にも満たない量だと気づくまでならば、素晴らしい話に聞こえるだろう。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラの経済支援に使うと述べたが、もしこれを信じているのなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に注意を払っていないことになる。そして、たとえその石油からの収入が最終的に得られるようになったとしても、それはヴェネズエラが経済再建に必要とするものの表面をかすめる程度にしか過ぎない。

確かに、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量(the world’s largest proven reserves)を誇るが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高額になる。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろうし、まさに最後の手段と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的にヴェネズエラの原油が大量に世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェールオイル掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプ大統領や大手石油会社がどう考えようと、世界は徐々に炭化水素資源から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値はさらに低下していることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、できる限り多くの原油を地中に残しておくことだ。つまり、中国が将来のグリーン産業を支配し、その結果影響力を獲得することにレーザーのように集中している一方で、トランプと彼を取り囲む戦略の天才たちは、地球を脅かす前世紀のエネルギー政策にさらに力を入れているということになる。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(U.S. hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らの領土を示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストたちが支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリン(the Monroe Doctrine)の本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀を要したが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(もしくは無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプと側近たちが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖(blockading)を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、彼らは地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は現在、近隣諸国の経済政策を統制し、これらの国々や中国などの国々にとって経済的に有益な政策を拒否する権利を主張している。「国家安全保障戦略」では、「私たちは、敵対的な外国の侵略や主要資産の所有から自由な西半球を望んでいる」と述べ、さらに、部外者が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「西半球以外の競争相手がこの地域で影響力を高めることをより困難にしなければならない」と付け加えている。トランプとその仲間たちは、一部のラテンアメリカ諸国が「低コストと規制上のハードルの少なさ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に惹かれて他国と「ビジネスを行うことに魅力を感じている(attracted to doing business)」ことを理解しているため、「そのような援助を拒否するよう各国に促す(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかし、トランプ政権は一般的に外国援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大半を独占しようとする略奪的な政権であるため、望むものを手に入れるには寛大さ(generosity)ではなく脅迫(threats)に頼らざるを得ない。

しかし問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に介入し続けるなら、その国の経済状況に責任を負うことになるということだ。ラテンアメリカ諸国に対し、アメリカ製品よりも安価な中国製品(場合によっては電気自動車のように大幅に優れた製品)を購入できないと告げれば、消費者は不満を抱くだろう。もし同じラテンアメリカ諸国に対し、インフラ整備やその他の機会創出につながる中国やその他の外国からの投資を拒否するよう命じれば、アメリカはそれを提供しなくてはいけなくなる。さもなければ、ラテンアメリカ諸国の貧困を助長していると非難されるだろう。これに加えて、アメリカの問題をこの地域からの移民や難民のせいにする傾向、そして可能な限り多くの移民や難民を強制送還するという強硬な姿勢が加われば、安定した覇権どころか、反米感情の高まりと地域の不安定化を招くことになる。

より成功したアメリカの政策との対比は明白だ。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパとアジア(かつての敵国であったドイツと日本を含む)で非常に成功したパートナーシップを築いた。これは、これらの国々がソ連という共通の脅威を認識していたことに加え、アメリカが新たなパートナー諸国が第二次世界大戦から可能な限り速やかに復興できるよう、慈悲深く行動したことも一因となっている。しかし、トランプは「慈悲深く()benevolent」という言葉の意味を理解していない。彼の人生観は「私のものは私のもの、他人のものは交渉の余地がある(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」というものだ。

銃を突きつけて西半球を支配しようとする試み(trying to run the Western Hemisphere at the point of a gun)は、過去と同様に、今後もうまくいくことはないだろう。トランプの顧問であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されていることだ(the world is governed by power)と考えている。ミラーが言及しなかった「鉄則」は、力こそが全てだと考える指導者は必然的に多くの愚かな行為を犯すということ(leaders who think power is all that matters inevitably do a lot of stupid things)だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の外交政策はいつも通り、はったりを利かせながら進んでいる。西半球(Western Hemisphere)を勢力圏(Sphere of Influence)として、支配を確立するために、逆に言えば、世界覇権国であることを辞めるために動いている。ヴェネズエラ攻撃、グリーランド奪取への言及、パナマ運河への野心、カナダやメキシコを「州」として扱うような行動は南北アメリカ大陸を支配するための動きである。ドンロー主義は、モンロー主義(南アメリカからイギリスの影響を排除する)と棍棒外交(アメリカ海軍の戦艦の太平洋と大西洋の行き来を確保しつつ、物流の通行料を取るためにパナマを奪取する)を混合させたものだ。ドンロー主義が排除を目指すのは、中国とアメリカの影響力だ。

 19世紀のイギリス、21世紀の中国とロシア、それぞれターゲットは異なる。また、置かれている状況も異なる。南アメリカには「西側以外の国々」の中核であるBRICSの一角ブラジルが控えている。ブラジルは国力を充実させ、南アメリカの地域大国となり、ドル覇権からの離脱を目指す存在である。BRICSは既に世界の重要な拠点を押さえている。BRICSの位置を確認すれば、北米大陸(とヨーロッパ)が包囲されていることが分かる。
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BRICS加盟諸国の地図

 アメリカの横暴な動きが続けば、ヨーロッパ諸国がそうであるように、アメリカを「脅威」と見なすことで、西側以外の国々が「対米防衛同盟」を成立させることで、「脅威の均衡(balance of threat)」を図るということも起きるだろう。「脅威の均衡」はこのブログでも頻繁にご紹介しているスティーヴン・M・ウォルトが提唱した考えである。簡単に言えば、ある国を「脅威」と認識した国々は、その国に従うか(「バンドワゴニング、勝馬に乗る[bandwagoning]」)、同盟を組んで対抗するか(バランシング、均衡を図る[balancing])ということになる。中国は表立って、対米防衛同盟の動きを行うことはないだろうが、アメリカの暴力的な動きが激しくなれば、西側以外の国々が結束して、アメリカに対抗し、アメリカを包囲し、封じ込める(containment)ということも考えられる。

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勢力均衡理論が再び台頭している(The Balance-of-Power Theory Strikes Again

-ドナルド・トランプの脅しに対する世界の反応に誰も驚くことはない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/23/trump-threats-europe-greenland-balance-power/

ついに、かつて友好国だった国々が、ならず者国家アメリカ(a rogue America)に対抗し始めているのを目にする日が来たのだろうか?

このような変化は、世界情勢の大きな転換点となるだろう。もし実際にそうなったとしても、それはトランプ政権の戦略的近視眼(the strategic myopia of the Trump administration)と、ますます不安定になる大統領の略奪的衝動(the predatory impulses of an increasingly erratic president)に完全に起因するだろう。

過去100年ほど、アメリカの世界支配の台頭は、その地位が圧倒的ではあっても、多くの国々がワシントンを牽制するために結集するほどではなかったという点で、古いスタイルの勢力均衡理論(old-style balance-of-power theory)の部分的な例外であった。冷戦期には、アメリカはソ連主導の諸国連合という対抗勢力に直面したが、世界の主要諸国や中規模諸国のほとんどは、アメリカの特定の政策に時折反対する場合があっても、アメリカを貴重な同盟国と見なしていた。しかし、カナダのマーク・カーニー首相が火曜日、スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムの参加者に語ったように、そのような世界はもはや過去のものとなった。今日、彼は次のように語った。「大国間の競争(great-power rivalry)が繰り広げられる世界において、中間に位置する国々には選択肢がある。互いに好意を得るために競争するか、協力して影響力のある第三の道を切り開くかだ。」

以下、私自身の研究に触れて恐縮ですが、約40年以上前に博士論文(そして最初の著書)を執筆して以来、同盟の諸起源(the origins of alliances)と国家間の均衡を保つ理由(the reasons why states balance)というテーマについて考え、書き続けてきた。国家が同盟を結ぶのは、主に脅威への対応(response to threats)であり、力(power)だけによるものではないと私は主張した。もちろん、力は脅威の一要素だ(つまり、他の条件が同じであれば、強い国家は弱い国家よりも危険だ)。しかし、地理や知覚された意図[他者の行動から読み取った目的や動機]geography and perceived intentions)も重要だ。近隣にある国家は遠くにある国家よりも厄介な傾向があり、修正主義的な野心を持つ国家(states with highly revisionist ambitions)は特に危険だ。特に、他国から領土を奪ったり、他の国の統治者を支配しようとしたりする場合には猶更だ。弱小国家や孤立国家は、脅威となる勢力に「勝ち馬に乗る、バンドワゴニング(bandwagoning)」することで融和(accommodate)しようとすることもあるが、より典型的な対応は、理想的には他国と連携して、脅威となる勢力と均衡を保つことだ(the more typical response is to balance against a threatening power, ideally in partnership with others)。

私が「脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)」と名付けたこの定式は、とりわけ、アメリカの冷戦同盟システムがワルシャワ条約機構やソ連の様々な非同盟諸国よりもはるかに大規模で強力であった理由を説明するものであった。アメリカは総合的な力では勝っていたが、ソ連はヨーロッパとアジアの多くの中規模国に隣接し、領土獲得に最適化された大規模な軍隊を有し、その指導者たちは共産主義の普及に公然と尽力していた。対照的に、アメリカはヨーロッパとアジアから2つの巨大な海によって隔てられており、そこに領土的野心はなかった。脅威の均衡理論は、1991年にイラクをクウェートから追い出した多国籍軍のような、不均衡な構造(lopsided alignments)も説明できる。あの事件では、イラクをはるかに上回る能力を総合的に備えた、本来はあり得ないような国々のグループが力を合わせた。なぜなら、彼らは皆、イラクの行動が地域の安定に対する深刻な脅威であると見なしたからである。

脅威均衡理論は、アメリカが単独で権力の頂点に立つ一方で、公然とした均衡維持の努力が少数の脆弱なならず者国家(weak rogue states)に限られていた「一極時代(unipolar moment)」という一見異常な状況を理解する上でも役立つだろう。冷戦時代のアメリカの同盟諸国がNATOに残留したのは、(1)制度的惰性(institutional inertia)(「NATOが崩壊していないのなら、なぜ修復する必要があるのか​​?」)、(2)不確実性へのヘッジをしたいという願望(a desire to hedge against uncertainty)、(3)アメリカの保護に頼るのは極めて良い取引だという認識(the recognition that relying on American protection was a pretty good deal)、そして、(4)ワシントンの最悪の衝動が他国に向けられていたという事実(the fact that Washington’s worst impulses were directed elsewhere)、による。ヨーロッパの指導者たちは、2003年のイラク侵攻のような失策が自国に悪影響を及ぼすことを正しく恐れ、アメリカの判断力に何度も疑問を呈したが、「ソフト・バランシング(soft balancing)」にとどまり、再編や自立に向けた努力は行わなかった。この決定が容易にされたのは、アメリカが依然として同盟諸国に対して自制(with restraint)を示し、領土的野心を抱かず、概ね各国政府と建設的な協力関係を築こうと努めていたためである。対照的に、ロシア、中国、北朝鮮、イランは、アメリカからの潜在的な脅威をより強く懸念する理由があったため、アメリカの力のバランスを取るためにより積極的な努力を傾けた。

それは当時のことであり、今は違う。ドナルド・トランプは、大統領として2期目を開始して以来、脅威の均衡理論が警告するほぼ全てのことを実行し、予想通り否定的な結果をもたらしている。トランプは、カナダ、グリーンランド・デンマーク、パナマに対する拡張主義的な目標を公然と繰り返し宣言しており、その野望はそこで止まらないかもしれない。彼と彼の側近たちは、主権の規範(the norm of sovereignty)を含む国際法は無意味であり、強い者は手に入れることができるものは何でも手に入れることができると信じているようだ。彼は、他国に経済的・政治的譲歩を強要するために、関税の脅威を繰り返し振りかざしたり、課したりしてきた。彼は、多くの場合、非常に疑わしい理由をもって、6カ国以上に軍事力を行使し、デンマークなどの忠実な同盟国に対しても軍事力行使をほのめかしてきた。彼は、他の外国の指導者たちを露骨に軽蔑し、適正手続きを経ずに100人以上の外国人民間人を殺害することを容認してきた。これもまた、国際法違反である。さらに、反逆的な政府の凶悪集団(例:移民関税執行局[Immigration and Customs Enforcement])をアメリカ国内の都市に解き放つことで、他国社会がアメリカを安定し規制の行き届いた社会と見なすこと、あるいは彼の外交政策行動を異常な事例と捉えることを不可能にした。要するに、国内外を問わず、アメリカ政府は危険ないじめっ子であり、強迫的な略奪者のように振る舞っているのだ。

ある意味、この行動は奇妙だ。賢い捕食者たち(clever predators)は、真意を可能な限り隠そうとする。トランプも2016年、そして最初の任期の大部分においてそうだったように、それは「部屋の中の大人(adults in the room)」によって抑制されていたことも一因だ。しかし、2021年1月6日の犯罪を免れ、再選を果たし、確固たる信念を持たない取り巻き、忠誠者、追従者、そして日和見主義者たち(cronies, loyalists, sycophants, and opportunists with no fixed principles)で政権を固めたことで、彼は最悪の衝動を解き放った。そして今、世界は注目し始めている。

世界はどのように反応しているのだろうか? 確かに、アメリカの最も近い同盟諸国は、いくつかの明白な理由から、トランプの好戦的な姿勢に抵抗するのが遅れている。アメリカとの関係を縮小し、アメリカに対抗する動きを見せるにはコストがかかり、意味のある対抗勢力となるのに十分な数の国を集めるには、集団行動におけるよくあるディレンマ(the usual dilemmas of collective action)に直面する。したがって、イギリスのキア・スターマー首相、NATO事務総長のマーク・ルッテ、韓国の李在明大統領のような人々が、お世辞、象徴的な服従、贈り物、そして小さな譲歩を組み合わせることで、ワシントンとの緊密なパートナーシップから得られる利益のほとんどを維持できるかどうかを見極めようとしたのは理解できる。

試してみる価値はあったかもしれないが、その賭けは明らかに成功しなかった。トランプ自身の言動が、そのアプローチの愚かさを露呈した。過去の合意は全ていつでも再交渉可能であると信じ、いかなる譲歩もさらなる要求への誘いと解釈する捕食者を受け入れることはできない。

脅威均衡理論が予測するように、かつての友好諸国は距離を置き、信頼できず潜在的に敵対的なアメリカに対する依存を減らし、互いに、そして場合によってはアメリカの敵対諸国とも新たな取り決めを結んでいる。長年、どの国にとっても最良の隣国であったカナダの首相が北京を訪れ、「新たな戦略的パートナーシップの柱(the pillars of [a] new strategic partnership)」を概説するということは、地殻変動が起こっていることを物語っている。ヨーロッパの指導者たちも、数十年にわたるゼリー状の優柔不断の後、再び背骨が生えてきたように見える。なぜなら、彼らには選択肢がほとんど残されていないからだ。『フィナンシャル・タイムズ』紙のエド・ルースは明確に次のように述べている。「トランプに立ち向かうことが成功を保証するわけではない。一方、服従は必ず失敗する(Standing up to Trump offers no guarantee of success. Submission, on the other hand, is certain to fail)」。

かつてアメリカが誇った数々の国際的パートナーシップの更なる崩壊を防ぎ、新興国により適した新たな枠組みを構築するには、もう手遅れではないだろうか? 確かに手遅れだが、それはトランプ政権がこれまでの略奪的な戦略を捨て、アメリカが一方的な利益のためだけでなく、共通の利益のために他国と協力する意思を示すことが条件だ。その可能性はどれほど高いだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領はグリーンランド領有に関して、反対したヨーロッパ諸国への関税措置を撤廃し、買収交渉を行うという姿勢の転換を行った。「俺たち(アメリカ)が第二次世界大戦で助けてやらなかったら今頃お前たちはドイツを話していたんだぞ、そして、片言の日本語も話していただろう」ということをスイスで開かれているダヴォス会議で発言し、ヨーロッパ諸国の国民の不興を買っている。トランプにすればそんなことはお構いなしだ。「アメリカ・ファースト」で突き進むだけだ。グリーンランドのレアメタルと、中露両国が開発し、アジア諸国にとって便利な北極海航路に対する嫌がらせ(と通行料の徴収ができれば最高)でアメリカ国民に利益をもたらす、お金を配ることが最重要の目的だ。
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 この伝で行けば、パナマ運河もアメリカに戻せということになる。グリーンランドとパナマ運河を押さえることで、世界の物流を押さえることができる。それがトランプと側近たちの狙いだろう。しかし、それは中露両国も黙ってはいないだろう。

 トランプの交渉術は相手にショックを与えて、思考力を奪っておいて、それで交渉を行うというものだ。とんでもないことを言ったり、行ったりして、相手がひるんでいる隙に、自分の要求を通すということだ。交渉という点では、トランプは世界でも指折りの才能と経験を持っている。日本の政界で太刀打ちできる人はいないだろう。経済界ではいるかもしれないが。

 しかし、このようなトランプの交渉術は既に見切られている。トランプが強く出る場合に、相手も強く出て、トランプをひるませることができれば、トランプは引く。実際に、高関税政策に対して、中国は強く出てトランプを引かせている。今回のグリーンランドに関することでも、ヨーロッパ諸国がアメリカ国債の売却をちらつかせることで、トランプは引いた。世界の先進諸国はアメリカ国債を「安全資産」と保有してきたが、その売却という、一種の自爆的な方法を取るぞと脅すことで、トランプを引かせるという方法を採用している。

 トランプの「アメリカ・ファースト」外交は、アメリカの衰退を促進する。そして、世界は、世界覇権国アメリカの衰退に対応するために、この時期を過ごすことになる。

(貼り付けはじめ)

トランプは外交をどのようにやるかを全く分かっていない(Trump Has No Idea How to Do Diplomacy

-たとえ部分的に正しいとしても、彼は間違っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年8月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/08/19/trump-diplomacy-putin-ukraine-europe/

アラスカで行われたウラジーミル・プーティン大統領とのあの奇妙な首脳会談と、ワシントンで行われたNATO首脳会議の組み合わせは、ドナルド・トランプ米大統領がひどい交渉者であり、「譲歩の術(art of the giveaway)」の達人であることを改めて思い知らせる出来事だった。トランプは準備を怠り、部下に事前に根回しをする(lay the groundwork beforehand)、会議に臨むたびに自分が何を望んでいるのか、どこまで譲歩(red line)すべきかさえ分からずにいる。戦略もなければ細部にも関心がなく、行き当たりばったりで臨む。

最初の任期中、北朝鮮の金正恩委員長との的外れなリアリティ番組のような会合に時間を浪費したことで分かったように、トランプが本当に求めているのは注目と、自分が主導権を握っていることを示唆するドラマチックなヴィジュアルだけだ。彼が締結するであろう合意の中身は、無関係とまでは言わないまでも、二次的なものに過ぎない。だからこそ、最近発表された貿易協定の中には、彼が主張するほどアメリカにとって有利ではないものもあるのだ。

トランプの突飛な外交失策に人々が注目するのは、彼が世界最強の国の大統領であり、カルト的な共和党の卑怯な議員たちが彼の気まぐれに付き従い続けているからに他ならない。しかし、トランプ、マルコ・ルビオ国務長官、そして外交の素人スティーヴ・ウィトコフのような軽薄な人物が、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相といった人物と対峙すれば、後者がアメリカから巧みに利益を得ることは目に見えている。自問自答してみて欲しい。トランプがアラスカでプーティンと会談した際、アメリカ、同盟国、あるいはウクライナのために何か得たものはあっただろうか? プーティンは何かを譲歩しただろうか? さらに言えば、ウクライナを見捨てないよう説得するために現れたヨーロッパ各国の首脳からトランプはどのような譲歩(concessions)を得たのだろうか?

強力な敵対国との交渉を成功させるには、双方の利益、力、そして決意を冷徹かつ容赦なく現実的に評価する必要がある。プーティンのような指導者を、単に好意を抱いているから、あるいは滑走路にレッドカーペットを敷いたからといって、魅了して譲歩させることは不可能だ。希望的観測にふけったり、誰も真剣に受け止めないような脅しや約束をしたりしても、何の成果も得られない。

この最後の問題は、10年以上にわたり西側のロシア・ウクライナ政策を悩ませてきた。大半の西側諸国の政治家や評論家たちは未だ認めたがらないが、問題の根本原因はロシアと西側諸国の動機付けにおける根本的な非対称性(a fundamental asymmetry)にある。これは双方の脅威認識(perceptions of threat)と致命的な国益の定義(definitions of vital interests)の相違から生じる非対称性だ。(記録のために付記すれば、この認識の隔たりこそが、2014年に私たちのうちの何人かがこの道を進むことに警鐘を鳴らした理由である)。プーティンが自らの行動に数多くの理由を抱えていたとしても、最も重要なのは、ウクライナのNATO加盟がロシアにとって存亡の危機(an existential threat to Russia)をもたらすという恐怖、ロシアの政治スペクトル全体に広く共有されていた恐怖であった。

この問題において西側の立場を最も損なったのは、外交政策エリートたちが「無制限なNATO拡大(open-ended NATO enlargement)」、特に2008年のウクライナとジョージアへの将来加盟申請準備招待が戦略的失策(a strategic blunder)であった事実を、現実逃避的に認めてこなかったことだ。これがプーティンが和平合意で対処すべきと主張する「根本原因(root causes)」の中で最も重要であり、西側諸国の拡大推進の使徒たち(the Western apostles of expansion)が最も激しく否定、無視しようとしてきた点だ。これらはいずれもプーティンの違法な予防戦争(Putin’s illegal preventive war)を正当化するものではないが、そもそも紛争が起きた原因を誰も認めず対処しなければ、深刻な対立を終結させるのは困難である。

非愉快な現実は、モスクワは自国の経済を戦時体制に置き、数十万人の命を犠牲にすることを厭わなかったのに対し、ウクライナを支援する西側諸国はそうしておらず、今後もそうするつもりはないということだ。ウクライナ人は祖国を守るために計り知れないほどの英雄的な犠牲を払ってきたし、西側諸国はキエフに多額の資金、武器、情報、訓練、外交支援を提供してきた。しかし、ヨーロッパや北アメリカの他の国々が、自国の軍隊をキエフに派遣してそこで戦死するなどということについては、最初から明らかだった。(繰り返すが、西側諸国の指導者たちが2008年、あるいは2014年以降にこの点をもっと慎重に検討していればよかったのにと思う。)NATOが自ら参戦すべきだったと考える人々もおり、私は彼らの一貫した姿勢を尊敬しているが、彼らが関係する国民や指導者を説得することは全くできなかった。

その結果、ロシアは戦場で優位に立っており、ウクライナの失策(例えば2023年夏の不運な反撃など)もその一因となっている。ウクライナが失った領土(クリミアを含む)を全て奪還し、NATOとヨーロッパ連合に加盟することが唯一の受け入れ可能な結果だと依然として主張する人たちにはこの目標を具体的にどのように達成するつもりなのか説明を求めるべきだ。この奇跡をどのように実現するのか、首尾一貫した説得力のある戦略を提示するまでは、交渉のテーブルに彼らを招き入れるなど全く馬鹿げている。

したがって、トランプが先日のアラスカ首脳会談でプーティン大統領の側に立ったのは正しかったのだろうか? そして、トランプの姿勢を固めようとワシントンを訪れたヨーロッパ諸国の首脳たちの甘言や嘆願(blandishments and pleas)に抵抗すべきだったのだろうか? 答えはノーだ。

ここではより大きな利害関係が絡んでおり、アメリカとヨーロッパの交渉戦略はこれらに焦点を当てるべきである。プーティン大統領の要求の一部は将来の和平協定で受け入れざるを得ないとしても、NATO加盟国の一部からの軍撤退や、ウクライナの「非ナチ化(de-Nazified)」と部分的な武装解除といった要求は即座に拒否されるべきだ。ロシアが、将来ウクライナに駐留するかもしれないと懸念する外部勢力から自国を守る必要があると主張するならば、ウクライナはロシアによる新たな攻撃から守られ、自国を防衛する手段を与えられるべきである。

後者の懸念は、ウクライナや他の欧州諸国が、NATO第5条のような、正式な加盟国ではないものの何らかの安全保障保証に関心を持つ理由である。しかし、この考えには少なくとも2つの明白な反対意見がある。第一に、第5条は完全な安全保障の誓約ではなく、攻撃を受けた加盟国を支援するために同盟軍の派遣を自動的に引き起こすような仕掛けでは決してない。第5条は、加盟国の1つへの攻撃は加盟国全体への攻撃とみなされ、各加盟国は個別および集団的に「必要と考える行動(such action as it deems necessary)」をとると述べているだけだ。第二に、そして同様に重要な点として、トランプは生涯にわたって約束を破り、予告なしに方針を転換してきた経歴を持つ。それを考えると、分別のある国が彼の約束や誓約をなぜ信じるだろうか? たとえウクライナに対する何らかの安全保障の誓約について最終的に合意に達したとしても、誰がそれを真剣に受け止めるだろうか?

プーティン大統領とゼレンスキー大統領の直接会談の実現も検討されており、おそらくアメリカが仲介役を務めることになるだろう。これは、これまでそのような要請に抵抗してきたプーティン大統領にとって象徴的な譲歩となるだろう。しかし、戦場の現状やウクライナの長期的な展望に大きな変化がない限り、そのような会談が永続的な平和をもたらすとは到底思えない。繰り返しになるが、個人的な会談というドラマに惑わされないことが重要だ。メディアは騒ぎ立てるが、(トランプとウィトコフが関与している場合)成果はほとんどない。

一体何が期待できるというのだろうか? 戦闘の進展状況、そしてロシアがこの問題をウクライナ以外の国よりも重視しているという事実を考えると、モスクワは望んでいたことの一部を得ることになるだろう。しかし、ロシアがすでに支払ってきた莫大なコストと、ウクライナが今後も外部からの寛大な支援を受け続けることでさらに大きな損失が生じる可能性を考えると、西側諸国の利益にならないものをロシアに提供することを拒否することは可能であるはずだ。

トランプ大統領のオンオフの繰り返しや、その他多くの問題でヨーロッパの同盟諸国と争おうとする姿勢とは対照的に、最良の合意を得るための最善の方法は、アメリカがヨーロッパとの統一戦線(a unified front)を維持し、NATOがウクライナに寛大な軍事支援を継続し、ウクライナとアメリカが双方の交渉状況を現実的に評価した上で、ロシアとの真剣かつ綿密な交渉を進めることだ。しかしながら、真剣かつ綿密な交渉を遂行してくれる人物を探しているのであれば、ペンシルベニア通り1600番地は私としてはお勧めしない。

こうした状況を考えると、もし昨年(2024年)11月にカマラ・ハリス米副大統領が大統領に選出されていたらどうなっていただろうかと疑問に思う。ハリスは優れた外交政策戦略家とは言えず、バイデン政権もロシアとウクライナへの対応で幾度となく失策を犯していた。しかし、ワシントン(そして民主党エリート層)では、ウクライナがその目的の全てを達成することは不可能であり(たとえそれが抽象的にどれほど望ましく正当であったとしても)、アメリカ大統領選が終結した暁には戦争を終結させる必要があるという認識が広く共有されていた。ハリスなら、バイデンのティームを他の有能な顧問に交代させ、その成果を追求するよう指示し、困難な状況下でもウクライナが可能な限り最良の合意を得られるよう支援し続けただろうと私は思う。

もちろん、ハリス政権が成功したかどうかは分からない。しかし、信頼できる有能な外交アクターとしてのアメリカの評判をトランプ氏以上に傷つけることはできなかっただろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 アメリカによる西半球支配の動きはラテンアメリカ諸国やヨーロッパを緊張させている。ヴェネズエラ攻撃によって、「アメリカが実際に攻撃をする」可能性を見せられて、動揺が広がっている。他国からの侵略から守ってくれて、地域に安定をもたらすはずだったアメリカが攻撃する主体になったということは戦後80年の大きな節目での、国際社会の構造の大転換となった。ラテンアメリカはそれぞれに不平不満はありながらも、平和を維持してきた。しかし、これからはどうなるか分からない。

 アメリカは「裏庭(backyard)」であるラテンアメリカを勢力圏として管理し、味方につけようとしてきた。モンロー主義の場合は、ラテンアメリカ諸国が独立する時期で、スペインやポルトガルに代わってイギリスがラテンアメリカでの影響力伸長を目指して、独立運動を支援していたのを阻止するということが理由であった。アメリカは、ラテンアメリカに地域外の大国が進出してくることを安全保障上の脅威と捉え、深刻な恐怖感を持って対応する。今回のヴェネズエラ攻撃の場合には対象となるのは中国とロシアである。

 トランプ大統領はヴェネズエラの石油を管理し、販売した利益をヴェネズエラ国民とアメリカ国民に分配するとし、更には、ヴェネズエラ国民はその利益でアメリカ製品だけを買うように主張している。これは、ヴェネズエラの属国化のさらに先の「再植民地化(recolonization)」である。

 このようなアメリカの動きは長期的に見れば、アメリカの利益にならない。アメリカが大国として暴れまわることで、信頼を失い、アメリカとの協力を控えることになる。さらには、中国とロシアに近づき、対米防衛同盟を結成する動きも出てくるだろう。しかし、今のアメリカには既に長期的な視点を持って対外政策を行うだけの余裕がない。トランプ率いるアメリカはグリーンランドの領有も狙っているが、これは、レアアースの取得と、北極海航路の通行料徴収が目的である。アメリカは何が何でもお金を稼いで、国民を食べさせねばならない。トランプは、大統領就任演説で、アメリカを製造業の国にすると述べた。しかし、既に手遅れである。生産設備はなく、質の高い労働力などどこにもない。これから工場を建設すると言っても時間がかかる。その間に人々の暮らしは厳しくなる。結局、短期的な方法を取らざるを得ない。トランプの攻撃的なドンロー主義は、アメリカには余裕がなくなってどうしようもないという状況の裏返しである。アメリカはこれから「悪い隣人」となって、町のチンピラのようなことをする。「昔は立派だったのにね」と言われ、嫌われながら、衰退していく。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の「悪い隣人」政策(Trump’s Bad Neighbor Policy

-地域諸国を属国(vassal states)のように扱うことは彼らを中国の懐に進めるになるだろう。

ウィリアム・M・レオグランデ、ピーター・コーンブルー筆

2026年1月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/trump-maduro-venezuela-oil/

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スペイン・バルセロナで行われたデモで抗議者が「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」と書かれた帽子をかぶっている。帽子の文字は「ヴェネズエラ」とテープで上書きされている(2026年1月4日)

「2026年にようこそ」とピート・ヘグゼス米国防長官は土曜日、アメリカ軍によるヴェネズエラへの攻撃を祝うマール・ア・ラーゴでの記者会見で宣言した。「トランプ大統領の下、アメリカは戻ってきた」。つまり、1900年代初頭の砲艦ドル外交(gunboat and dollar diplomacy)の時代、つまりラテンアメリカにおける帝国主義的覇権(imperial hegemony over Latin America)を志向し、いまだに完全には消えることのない敵意を生み出していた(engendering enmities that have never entirely dissipated)時代への回帰である。

世界をそれぞれの勢力圏(spheres of influence)に分割することを構想するドナルド・トランプにとって、ラテンアメリカ地域におけるアメリカの支配(U.S. domination)はそれ自体が目標だ。「西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの支配は、二度と疑われることはないだろう」と、ヴェネズエラの複数の空港への空襲と、ニコラス・マドゥロ大統領とシリア・フローレス夫人の強制連行を含む夜明け前の襲撃からわずか数時間後、トランプは記者団にそのように語った。ヴェネズエラの今後について問われると、「私たちが統治することになる」と答えた。もはや国家建設(nation-building)は行わないという彼の約束は裏切られ、これで終わりとなった。

アメリカによるカラカス爆撃、マドゥロ大統領の拉致、そしてトランプ大統領によるヴェネズエラ石油産業の掌握計画は、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領の善隣政策(President Franklin D. Roosevelt’s Good Neighbor Policy)によって構想され、1950年代に米州相互援助条約(the Inter-American Treaty of Reciprocal Assistance)と米州機構(OAS)憲章(the Charter of the Organization of American States)によって成文化された米州システム(the inter-American system)に深刻な打撃を与えた。

マドゥロ大統領はラテンアメリカ内に友人をあまり持っていないが、主要国の指導者の多くはアメリカの攻撃を非難している。地域の指導者たちは短期的には反撃できる余地がほとんどないが、アメリカのラテンアメリカへの介入の歴史は、たとえトランプとその外交政策ティームがカラカスで思い通りに事が運んだとしても、西半球におけるアメリカの立場に与える外交的ダメージは、彼らが想像する以上に大きな代償を伴う可能性があることを示唆している。たとえ彼らがカラカスで思い通りに事が運ぶことができるかかどうかは、決して確定的ではない。

トランプは、第二次世界大戦終結以来の国際秩序を形作ってきた規範や制度(the norms and institutions)を破壊してきたことで悪名高い人物だ。NATOや国連から世界銀行や世界貿易機関に至るまで、「アメリカ・ファースト(America First)」は、ハードパワーに依存し、多国間の関与やコミットメントに懐疑的なアメリカの外交政策を意味してきた。

第2次トランプ政権発足後数週間で、トランプはその姿勢が西半球でどのように適用されるかを予見した。パナマシティにパナマ運河を返還し、カナダに主権を放棄して51番目のアメリカの州となるよう要求した。先月(2025年12月)末には、デンマークに対しグリーンランドの引き渡しを要求し、さもなければアメリカ軍による奪取に直面する可能性があると繰り返した。

ヴェネズエラは、昨年9月にアメリカ軍がカリブ海で麻薬密輸船とされる船舶の爆破を開始して以来、トランプの一方的な攻撃の的となっており、トランプはマドゥロをいわゆる「カルテル・デ・ロス・ソレス」の麻薬テロリストの首謀者だと非難している。

しかし、マルコ・ルビオ国務長官に煽られたトランプのヴェネズエラへの執着は、麻薬が原因だったことは一度もない。ヴェネズエラはコカインを生産していないし、ましてやフェンタニルも生産していない。ヴェネズエラはコロンビア産コカインの二次的な中継地点であり、その輸送先は主にヨーロッパだ。アメリカ市場向けのコカインは、コロンビアとエクアドルから太平洋を経由して北上するか、陸路でメキシコを経由して北上する。さらに、もしトランプの主目的が麻薬密売人の処罰であったならば、400トン以上のコカインのアメリカへの密輸を幇助した罪で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスを恩赦することはなかっただろう。

トランプ大統領がカリブ海に大規模な艦隊を派遣したことは、当然のことながら、アメリカが砲艦外交(gunboat diplomacy)の手段として、あるいは介入(intervention)の前兆として、この地域に海軍部隊を定期的に派遣していた砲艦外交を想起させた。100年前、砲艦外交はセオドア・ルーズヴェルト大統領と密接に結び付けられ、モンロー主義のルーズヴェルト的系列として正当化された。この系列では、アメリカはラテンアメリカ諸国への介入によって安定を維持する権利があると主張していた。

その後20年間にわたる24回のアメリカによる介入と6回の長期占領は、ラテンアメリカ諸国の間に大規模な反感を招いた。第一次世界大戦中、多くのラテンアメリカ諸国が中立を守り、ドイツはメキシコにアメリカへの宣戦布告を促せるのではないかと考えたほどである。

1930年代、ヨーロッパに再び戦火の雲が立ち込めると、ルーズヴェルト大統領は善隣政策を採用し、関係修復と、西半球に戦争が到来した際にラテンアメリカが連合国側にしっかりと留まることを保証するために、軍事介入を放棄した。ルー元はこの政策に成功し、戦後の米州システムの基礎を築いた。

確かに、アメリカは西半球を支配するという帝国主義的誘惑(the imperial temptation)を完全に捨て去ったことはなかった。特に冷戦期においては、共産主義の脅威、とりわけキューバ革命後の脅威が、グアテマラ、キューバ、ドミニカ共和国、チリ、グレナダ、ニカラグアといった主要な国々への、秘密のそして公然の介入を生み出した。

トランプ大統領は、自ら「トランプ系列(Trump Corollary)」を発表し、続いてヴェネズエラに介入することで、ラテンアメリカにおけるブレジネフ・ドクトリン(the Brezhnev Doctrine)に相当するアメリカ版を宣言した。すなわち、アメリカの勢力圏内にある国々は限定的な主権(limited sovereignty)しか持たないというものだ。先月発表されたトランプ大統領の国家安全保障戦略(Trump’s National Security Strategy)は、「アメリカは西半球において卓越した存在でなければならない(The United States must be preeminent in the Western Hemisphere)」と明確に宣言している。

ラテンアメリカの人々は、少なくとも今後3年間は、国際法の制約がもはや適用されないホッブズ流の自然状態(a Hobbesian state of nature)に生きていることを理解すべきだ。トランプは国内法以上に国際法を軽視している。米州協力の基盤文書である米州機構(OAS)憲章は、「いかなる国または国家集団も、いかなる理由によっても、直接的または間接的に、他国の内政または外交問題に介入する権利を有しない」「いかなる国も、他国の主権的意思を強制し、そこからいかなる利益を得るため、経済的または政治的性格を有する強制的手段を用い、または用いることを奨励してはならない」「国の領土は不可侵である。いかなる理由によっても、一時的であっても、他国による直接的または間接的な軍事占領またはその他の武力行使の対象とされてはならない」と厳粛に宣言している。事実上、この憲章は今や死文(a dead letter)となっている。

ラテンアメリカ諸国からの初期反応は、トランプ大統領によるアメリカ国内法の軽視に対する国内の反応と軌を一にしている。イデオロギー的に同調的な指導者たちは、支持を得るために惜しみない賛辞を送った。トランプ大統領から200億ドルの救済措置を受けたアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、マドゥロ大統領の退陣を支持し、「自由万歳、くそが(Long live freedom, damn it)」と宣言した。しかし、主要国はアメリカの介入をはっきりと非難した。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、アメリカは「容認できない一線を越えた(has crossed an unacceptable line)」と直後に警告した。コロンビアでは、グスタボ・ペトロ大統領がワシントンの軍事作戦を「地域の主権への攻撃(assault on the sovereignty of the region)」と非難した。チリでは、退任間近のガブリエル・ボリッチ大統領が、トランプ政権の行動は「領土保全の原則の重大な侵害であり、地域諸国の安全、主権、そして安定を危険に晒す(constitutes a grave violation of the principle of territorial integrity and puts at risk the security, sovereignty, and the stability of the countries in the region)」と宣言した。メキシコ外務省は声明で、「ラテンアメリカ・カリブ海地域は相互尊重(mutual respect)、紛争の平和的解決(the peaceful settlement of disputes)、武力行使と武力威嚇の禁止(the prohibition of the use and threat of force)を基礎として築かれた平和ゾーン(a zone of peace)であるため、いかなる軍事行動も地域の安定を深刻に脅かすことになる」と指摘した。

短期的には、ラテンアメリカ諸国はトランプの攻撃的な姿勢を抑えるためにできることはほとんどない。昨年、トランプはメキシコとコロンビアへの軍事攻撃をちらつかせ、パナマ運河を再占領し、ニカラグアとキューバに新たな経済制裁を課した。強者はやりたいことをやり、弱者は当然の苦しみを味わうことになる(The strong do what they will; the weak suffer what they must)。

​​しかし長期的には、ラテンアメリカ諸国には、最初の砲艦外交の時代と同様に、選択肢がある。国際的な経済関係をヨーロッパやアジアのより信頼できるパートナーへと転換することで、アメリカの経済制裁に対して脆弱な(vulnerable)状態を軽くすることができる。アメリカの外交的圧力、そして(程度は低いものの)アメリカの軍事的脅威とのバランスを取るために、他の主要国に新たな戦略的同盟を求めることもできる。トランプの優先事項である移民問題や麻薬密売問題など、アメリカ単独では解決できない問題への協力を縮小するだけで、受動的に抵抗することもできる。

ラテンアメリカ諸国がアメリカから離れる傾向は、ここしばらく徐々に進行しており、その先頭に中国が立っている。過去10年間、アメリカ南方軍の年次態勢声明は、中国を戦略的競争相手(a strategic competitor)、そしてアメリカの半球の利益に対する脅威として拡大していると指摘してきた。昨年発表された最新版では、「アメリカと中国は激しい戦略的競争に巻き込まれている(The United States and China are locked in a fierce strategic competition)」と警告している。

ルーズヴェルト大統領の善隣政策は、ヨーロッパで高まりつつある危機に対処するため、ラテンアメリカ諸国に同盟関係を築くことを目指していた。トランプ大統領は、アメリカはこの地域に同盟国(allies)など必要なく、属国(vassals)さえあれば十分だと考えているようだ。わずか1年で、アメリカは典型的な「悪い隣国(Bad Neighbor)」に変身した。ラテンアメリカ諸国をアメリカの宗主権(suzerainty)の対象として扱うことは、ラテンアメリカ諸国の中国への傾きを加速させ、アメリカの地域的影響力(U.S. regional influence)を弱めるだけだ。もし世界でトランプ大統領のヴェネズエラ介入を密かに称賛している人がいれば、それは中国の習近平国家主席だろう。

※ウィリアム・M・レオグランデ:アメリカン大学教授。クインシー研究所非常勤研究員。ピーター・コーンブルーとの共著『キューバへの裏チャンネル:ワシントンとハバナの交渉の隠された歴史(Back Channel to Cuba: The Hidden History of Negotiations between Washington and Havana)』がある。Xアカウント:@WMLeoGrande

※ピーター・コーンブルー:ジョージワシントン大学国立安全保障アーカイヴのキューバ文書プロジェクト部長。『1962年のキューバミサイル危機(The Cuban Missile Crisis, 1962)』の共著者であり、ウィリアム・M・レオグランデと共著で『キューバへの裏チャンネル:ワシントンとハバナの交渉の隠された歴史(Back Channel to Cuba: The Hidden History of Negotiations between Washington and Havana)』もある。Xアカウント:@peterkornbluh

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(終わり)

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領夫妻拘束連行は世界に衝撃を与えた。私も「トランプはどうしてそんなことをやったんでしょうか」「アメリカはどうなるんですかね」といった問い合わせをいただくことがある。トランプが主張するドンロー主義(Donroe Doctrine)は、1830年代のジェイムズ・モンロー大統領のモンロー主義(南北アメリカ大陸からスペインとイギリスの影響を排除する)と、1900年頃のセオドア・ルーズヴェルト大統領(と先代のウィリアム・マッキンリー大統領)が採用した棍棒外交(中南米諸国に対して武力行使をちらつかせ、また実際に行使してアメリカに従わせる)を混合した外交政策の基盤となる原理ということになる。そして、これこそが「アメリカ・ファースト」(アメリカの利益が最優先)ということになる。

 こうしたドンロー主義に対して、懸念の声が出てくるのは当然のことだ。国外から一気に首都を急襲するという方式は、1979年から1981年にかけて起きたイランのテヘランのアメリカ大使館人質事件(Iran Hostage Crisis)において、人質救出作戦として立案されたイーグルクロー作戦(Operation Eagle Claw)と似たような形である。イーグルクロー作戦は天候に恵まれず失敗し、アメリカ大使館人質事件は当時のジミー・カーター大統領の再選失敗の最大の原因となった。もし、今回のヴェネズエラ急襲作戦が失敗していれば、トランプ大統領と政権にとって致命的な傷となったことだろう。今回の成功は幸運だったと言える。

 懸念されるのは、今回の成功に味を占めて、成功体験に浮かれて、他国にも同様の攻撃を行う可能性があることだ。メキシコやグリーンランド、パナマにアメリカ軍部隊を侵入させるということは今のところ考えにくいが、可能性がゼロではない。また、そのような可能性を相手側に考慮させることで、アメリカ側の交渉力を上げ、意向に従わせようとする可能性もある。短期的にそれが成功しても、中長期的に見て、それが成功となるかどうかは分からない。アメリカのならず者のような行動は他国からの反感を買い、忌避を生み出す。そして、相対的に、中国とロシアの評価を上げることになる。

国際関係論では、「バランシング(balancing)」と「バンドワゴニング(bandwagoning)」という考え方があるが、脅威となる国が出てきたときに他国が一緒になって対抗することを「バランシング」、脅威となる国に味方することを「バンドワゴニング」という。アメリカに対抗できるもう一つの軸として、著書やブログでも何度も紹介してきた、中国とロシアを中心とするBRICS諸国を中核とする「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」による「バランシング」が起きる可能性が高い。アメリカは予期しているよりも影響力を行使できないということになる。そうなると、国際的な孤立を招くということになる。今回のヴェネズエラ急襲成功が結果として大きな損失を生み出すということも十分に考えられる。

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ヴェネズエラはドナルド・トランプ大統領の運が尽きる場所になるかもしれない(Venezuela Might Be Where Trump’s Luck Runs Out

-トランプ大統領は、支持基盤内部の極めて強硬な派閥とハト派の間で綱渡りを続けている。

エンマ・アシュフォード筆

2026年1月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/venezuela-trump-us-military-intervention-regime-change-south-america/

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(右から)ドナルド・トランプ米大統領、マルコ・ルビオ国務長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、ピート・ヘグゼス国防長官がフロリダ州パームビーチにあるトランプの邸宅マール・ア・ラーゴからヴェネズエラにおける米軍の作戦を監視する(2026年1月3日)

国境の南側へのアメリカの軍事介入は、野球やアップルパイと同じくらいアメリカ的だ。1914年、ウッドロウ・ウィルソン大統領はアメリカの経済的利益を守るため、メキシコのベラクルスを占領するために軍隊を派遣した。冷戦時代、アメリカはキューバからニカラグア、グアテマラ、パナマに至るまで、公然と、あるいは秘密裏に、様々な政権転覆作戦(overt and covert regime change operations)を実行した。さらに最近の1994年には、クリントン政権がハイチに侵攻し、退陣したジャン=ベルトラン・アリスティド大統領を復帰させた。

それにもかかわらず、先週末に見られたような、事実上の武装誘拐(an armed kidnapping)とも言える指導者交代を、アメリカの政権が公然と、そして誇らしげに行っていることは衝撃的だった。これらの行動が選択された理由に関する公式の説明には、ほとんど策略がなく、この攻撃を何らかの国際法に組み込もうとする真摯な試みもなかった。むしろ、ドナルド・トランプ政権は事実上、アメリカの利益の優先性を主張した。ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、移民の阻止、麻薬の流入の防止、そしてアメリカの石油会社によるヴェネズエラの豊かな油田へのアクセスの許可を妨害したという主張であった。

提示された数々の論拠は、2003年のイラク侵攻の直前、政権が既に決定していた行動を正当化する様々な理由付けを次々と提示した状況を彷彿とさせる。しかし、これさえも誤解を招く。ヴェネズエラに関する説明は、ジョージ・W・ブッシュ政権が夢見ることしかできなかったようなスピードで、国際法の建前を無視して提示された。少なくともジョージ・W・ブッシュ大統領は、最終的にそのプロセスを無視する前に、国連安全保障理事会の承認(U.N. Security Council authorization)を求めた。

ここでも、提示された論拠はどれも真に説得力がない。アメリカは世界最大の産油国であり、ヴェネズエラ産の原油供給過剰(a glut of Venezuelan oil)は、世界的な価格下落によって、テキサス州などの産油地にさえ悪影響を及ぼしかねない。アメリカ国内で死者を出している薬物のほとんどは、ヴェネズエラ産ではない。そして、アメリカの法執行機関は、たとえ有効な令状があっても、通常は海外で軍事行動を起こすことはない。

実際には、これは明らかにアメリカの力、そしてこの地域を支配する必要性を誇示するための演習となった。マドゥロ大統領はトランプ政権に繰り返し反抗し、カリブ海における圧力と軍備増強にもかかわらず、権力を手放して快適な亡命生活(a comfortable exile)を送ることを拒否してきた。マドゥロ大統領の継続的な抵抗に、たとえドナルド・トランプでさえ、アメリカの譲歩(U.S. concessions)によって乗り越えられる可能性は、常に低かった。トランプは、アメリカ大統領の中でも、ハイリスクな状況においてブラフを仕掛け、譲歩する姿勢で知られている。

これは、トランプ政権が最近発表した国家安全保障戦略において、いわゆるモンロー主義のトランプ系(Trump Corollary to the Monroe Doctrine)が提示されたことを考えると特に当てはまる。この戦略は、中国などの西半球外の勢力を締め出し、「西半球に軍事力やその他の脅威となる能力を配置する能力、あるいは戦略的に重要な資産を所有・管理する能力(the ability to position forces or other threatening capabilities, or to own or control strategically vital assets, in our Hemisphere)」を否定することを約束している。この文書が不吉に約束しているように、アメリカは「各国が私たちを第一選択のパートナーと見なすことを望んでおり、(様々な手段を通じて)他国との協力を阻止するつもりだ(nations to see us as their partner of first choice, and … will (through various means) discourage their collaboration with others)」。

マドゥロの拘束はまさにこの目的にかなうものであり、中国とロシアに西半球への介入を避けるよう求めるシグナルを送る可能性もある。また、複数の政権当局者によるキューバとメキシコに関する発言が示唆するように、これは他の地域内の諸国政府にも、移民問題、麻薬問題、あるいは他国との協力といった問題で協力を求めるシグナルを送ることになる。もし協力しなければ、アメリカによる懲罰的攻撃(a U.S. punitive strike)を受けるリスクがある。これは非常にリスクの高い戦略だ。今回の襲撃が計画通りに進まなければ、トランプ政権は期待していたよりも弱体化してしまう可能性がある。

おそらく最大の問題は、今回の襲撃をトランプのより広範な外交政策の文脈でどう解釈するかということだ。一部の人々はこれを政権内の1つの派閥の勝利(the triumph of one faction inside the administration)と解釈し、「タカ派が勝利している(The hawks are winning)」と簡潔に報じた。そして、この作戦の顔は明らかにタカ派のマルコ・ルビオ国務長官であることは事実だ。外国の政権交代を長年批判してきたJD・ヴァンス副大統領は、この襲撃を支持しているものの、襲撃に関する写真や記者会見には出席しておらず、その理由については安全保障に関する漠然とした発言のみで説明している。

しかし、トランプの側近であるタカ派やネオコンもこの状況に不満を抱いている。大統領は記者団に対し、民主派野党の有力候補であるマリア・コリーナ・マチャドには、近いうちにヴェネズエラで政権を掌握するために必要な支持がないと述べた。ルビオ長官もすぐにこの見解に同調した。政権当局者たちは、マドゥロの副大統領であるデルシー・ロドリゲスが政権移行に向けて政権と協力すると見込まれていると述べており、この作戦は民主政治体制を促す政権交代(pro-democracy regime change)というよりも、非協力的な指導者を排除すること(removing an uncooperative leader)が目的であることを示唆している。

このように、マドゥロ襲撃は、その行動は攻撃的かつ野心的であると同時に、政治的目的は非常に限定的である。この点において、これはおそらく2025年6月のトランプによるイラン核施設への攻撃に最も類似していると言えるだろう。どちらのケースでも、トランプはアメリカの軍事力の強力なデモンストレーションを行う一方で、911以降のアメリカの軍事介入の多くを悩ませてきたエスカレーション、混乱、そして意図せぬ結果(the escalation, chaos, and unintended consequences)を回避しようと努めた。つまり、彼はアメリカがほとんど何の責任も負わない武力行使を行えるという主張を試しているのだ。

このアプローチは、政権内の対立する諸派閥の間を縫うように進められ、ネオコンやレーガン主義の残党(Reaganite holdovers)が渇望する軍事行動を許容しつつ、介入主義(interventionist)に消極的な支持基盤に対しては、アメリカがイラク戦争のような惨事を再び招くことはないとの安心感を与えようとするものだ。これまでのところ、この戦略は功を奏している。しかし、政治的にも地政学的にも、依然として非常にリスクの高い戦略であることに変わりはない。トランプ大統領は幸運だった。イランへの攻撃は事態の大幅なエスカレーションにはつながらず、マドゥロ政権の掌握は今のところヴェネズエラを混乱に陥れたようには見えない。

しかし、だからといって、大統領が将来、例えばメキシコやグリーンランドで同様の攻撃を行った場合、その影響を回避できる能力がアメリカへの逆風に容易に転じないという保証はない。そして、トランプ大統領がこうしたアメリカの武力行使を繰り返せば繰り返すほど、そのどれかが壊滅的な結果を招く可能性が高まるのだ。ヴェネズエラでは、それは軍事クーデター、国家崩壊、あるいはより広範な難民危機(military coup, state collapse, or broader refugee crisis)を意味する可能性がある。他の地域では、戦争、もしくは混乱を意味する可能性がある。

トランプ大統領は、自身を支持してくれた支持基盤を遠ざけるリスクを負っているだけではない。この国際的な瀬戸際政策(this game of international brinksmanship)が成功するたびに、トランプはより自信過剰(more overconfident)になり、次回の誤算のリスク(the risks of miscalculation)が高まる可能性が高い。

※エンマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。スティムソン・センターアメリカ大戦略再発想プログラム上級研究員。ジョージタウン大学非常勤助教。著作に『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』がある。Xアカウント:@EmmaMAshford

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年1月2日のアメリカのドナルド・トランプ大統領の決定に基づくアメリカ軍のヴェネズエラ急襲・ニコラス・マドゥロ大統領夫妻拘束移送は世界に衝撃を与えた。アメリカは1830年代のモンロー主義(Monroe Doctrine)と1900年代の棍棒外交(Big Stick Diplomacy)を合わせた、トランプが主導するドンロー主義(Donroe Doctrine)が実行される時代になった。ドンロー主義についてはまだ定義がはっきりはしないが、「西半球(western hemisphere)、南北アメリカ大陸はアメリカの影響圏(sphere of influence)であり、他国の影響力を排除する。そのためには武力行使も躊躇しない」ということになる。アメリカが世界の警察官(World Police)であることを辞め、世界の一極支配(unipolar dominance)を放棄するということだ。

トランプは気脈を通じている中国(習近平国家主席)、ロシア(ウラジーミル・プーティン大統領)とのG3体制、ヤルタ2.0体制で、「世界三分の計」を行おうとしている。世界の多極化が進むことになる。また、国際協力や国際機関からの撤退、脱退も積極的に推進する。私たちは世界からアメリカが引いていく状況に直面している。下記で紹介している論稿の著者アミタヴ・アチャラは「世界マイナス1(the world minus one)」と表現している。この世界では、アメリカは存在が必要ではあるならず者(the indispensable rogue)として存在することになる。そして、アメリカ以外の国々は、その対処を実地で学んでいくことになる。私たちはそのような時代の幕開きに立ち会っているということになる。

 トランプはG3,ヤルタ2.0という「表の顔」とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、日本の高市早苗首相と共に、世界の地政学リスクを高める「悪の枢軸(the axis of evil)」も形成している。やりたい放題で、世界に不安を与えるが、トランプは世界に安定をもたらすG3の顔も持つことができる。この融通無碍さがトランプの真骨頂だ。日本とイスラエルはこの二重構造を看取して、それなりの対応をせねばならない。ただの嫌われ役になってしまっては国際的な孤立状態になり、非常に危険である。

(貼り付けはじめ)

世界マイナス1の瞬間(The World-Minus-One Moment

-敵対的・攻撃的なワシントンとともに世界秩序を管理する。

アミタヴ・アチャラ筆

20261月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/world-minus-one-united-states-isolationism-multilateralism-global-power/?tpcc=recirc_latest062921

写真

ドナルド・トランプ米大統領は二期目において、世界秩序(the global order)の基盤に対する継続的な攻撃を主導してきた。トランプは国際法(international law)を露骨に無視し、多数の国に対する一方的な関税賦課で世界貿易体制を破壊し、重要な多国間機関からアメリカを脱退させた。

アメリカは常に国際協力(international cooperation)の理想的な擁護者だった訳ではない。新興大国(a rising power)の時にはアイソレイショニズム(isolationism)に傾き、超大国(a superpower)になると単独行動主義(unilateralism)に傾倒した。しかし、トランプが世界秩序の再構築に取り組んだアプローチは、アイソレイショニズムと力の拡大という、新たな危険な組み合わせを生み出している。彼は多極主義(multilateralism)を軽蔑し、力の露骨な行使に固執している。彼の支持者も同じだ。これは、ワシントンで何が起ころうとも、今年80歳を迎えるトランプ大統領の時代を超えて、トランプ主義が生き続けることを意味しているだろう。

評論家や政治学者たちは、アメリカの一極支配時期(the United States’ unipolar moment)の終焉と、より多極的な秩序の台頭を長らく予測してきた。トランプはしばしばこのプロセスを加速させる要因として挙げられる。しかし現実には、彼は全く異なる事態を生み出してしまった。アメリカは今後数年間、世界で最も経済的にも軍事的にも強力な国であり続けるだろう。しかし、既存の国際秩序には参加せず、積極的に敵対するだろう。この特異な状況は多極(multipolarity)ではなく、むしろ「世界マイナス1(the world minus one)」と言える。

そこで出てくる疑問は、国際社会(the international community)がどのように対応すべきなのかということである。ワシントンの圧力に屈することなく、国際協力を維持することは困難だろう。トランプ主義を乗り越え、より強力な存在となるためには、既存の多国間機関は適応し、改革を行い、努力を倍増させなければならない。もしそれが成功すれば、アメリカはいつかより平等な条件で国際秩序に再加盟せざるを得なくなるだろう。

写真

2005424日、インドネシアのバンドンで行われた1955年バンドン会議50周年記念式典で握手するインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領(左)が南アフリカのタボ・ムブイェルワ・ムベキ大統領(2005年4月24日)

「世界マイナス1」という概念は、トランプ政権第二期において新たな意味合いを帯びてきた。2025年初頭から、私は新たな世界秩序を表現する際に「世界マイナスXworld minus X)」「世界マイナスアメリカ合衆国(world minus the United States)」「世界マイナス1」といった用語を用いてきた。シンガポールのリー・シェンロン元首相は2025年7月、「一時的な世界マイナス1(the world temporarily minus one)」という表現を用いて、より狭義にはアメリカのリーダーシップなしに世界経済と貿易を管理することを指して、この概念を広めた。しかし、現在の状況は経済の枠を超え、現代の核心的な課題を物語っている。

マデリーン・オルブライト元米国務長官は、アメリカは不可欠な国(the indispensable nation)であり、アメリカなしでは国際協力の構築も維持も不可能であるとよく述べていた。この前提は、アメリカ政府が世界秩序への関与を放棄するにつれて、世界は非協力的になり、暴力的になる(Washington abandons its commitment to the global order, the world will grow less cooperative and more violent)という懸念の根底にある。

国際関係の歴史は異なる物語を物語っている。スティーヴン・クラズナーやロバート・コヘインといった学者が主張するように、経済の開放と政治協力(economic openness and political cooperation)が普及するためには、世界を支配する覇権国(a globally dominant hegemon)は必ずしも必要ではない。国際機関は一度形成されると、その存在は固定的である。集団的利他主義(collective altruism)のためではなく、加盟国の中核的利益(core interest)に奉仕するために存在するのだ。これらの中核的利益が存続するならば、協力も存続する。これは、覇権国が棄権する(abstains)、撤退する(withdraws)、あるいは他国間の協力に反対する(opposes cooperation among others)としても、多国間主義が存続できることを意味する。

実際のところ、20世紀の歴史は、現在の国際秩序の最も基本的な要素のいくつかが、いかなる覇権国(hegemon)の支援も受けずに形成されたことを示している。例えば、脱植民地化(decolonization)と人種平等(racial equality)は、アメリカ合衆国の不可欠な支援によってではなく、ワシントンの当初の抵抗に直面して、世界規範(global norms)となったのである。

1919年のヴェルサイユ会議において、ウッドロウ・ウィルソン米大統領は、国際連盟(the League of Nations)の基本原則に人種平等条項を盛り込もうとする日本の動きに反対した。ウィルソンは自身の人種差別的信念に基づき行動すると同時に、日本の移民に懸念を抱く国内政治家や、オーストラリアなどの西側同盟諸国への配慮も図っていた。しかし、こうした反対​​にもかかわらず、現在「グローバル・サウス(the global south)」として知られる国々はこの理念を支持し続けた。その顕著な例は、1955年にインドネシアのバンドンで開催されたアジア・アフリカ会議(the 1955 Asian-African Conference)である。

バンドン会議(the Bandung Conference)は、人種平等の提唱に加え、アジアとアフリカの即時脱植民地化も要求した。ここでも、アメリカの支援はせいぜい中途半端なものとなった。ワシントンは主要同盟国であるイギリスの支援を得て、会議参加国に対し、脱植民地化の要求を拒否するよう圧力をかけた。これは、新たに独立した国々が共産主義体制に乗っ取られることを懸念したためである。もちろん、脱植民地化のための戦いは続き、今日存在する 193の主権を持つ国連加盟国(sovereign United Nations member states)の世界が作り上げられた。

実際、第二次世界大戦終結以来、ワシントンは国際舞台において一貫して受動的かつ攻撃的なアクター(a passive-aggressive actor)であることを示してきた。アメリカは制度(institutions)や規則(rules)を作り上げ、それがアメリカの利益にかなう場合には尊重するが、そうでない場合には無視してきた。アメリカは多くの多国間条約に加盟しているものの、気に入らない結果には警戒を怠らない。極端な例では、ワシントンは行動に異議を唱える機関に対して、脅迫、ボイコット、制裁措置(bullying, boycotting, and sanctioning)に訴えることさえある。

近年の3つの例、すなわち国連海洋法条約(the U.N. Convention on the Law of the SeaUNCLOS)、気候変動に関するパリ協定(the Paris Agreement on climate change)、そして国際刑事裁判所(the International Criminal CourtICC)は、アメリカが不在(absent)、不遵守(noncompliant)、あるいは積極的に敵対する(hostile)場合でも、多国間制度や協定がいかに存続できるかを示している。

ワシントンは、第3回国連海洋法会議に参加した後も、1982年に締結された海洋法条約への署名を拒否した。しかしながら、国連海洋法条約は、海域(maritime zones)と航行権(navigational rights)に関する安定した世界的な法的枠組みの構築に広く貢献してきた。貿易を促進し、紛争の平和的解決のメカニズムを提供してきた。また、アメリカの国益にも合致してきた。ワシントンは、南シナ海における中国の広範な領有権主張に対し、国連海洋法条約の手段を行使し続けている。しかし、アメリカが国連海洋法条約への正式加盟に頑なに抵抗していることは、中国にワシントンの偽善を非難する根拠を与えている。加盟を拒否しながらも国連海洋法条約に整合した行動をとるというアメリカの決定は、世界マイナス1にとって最良のシナリオ、すなわちワシントンが正式に国際規範を拒否した後もそれを遵守し続けるというシナリオを体現している。

アメリカが多国間協定から離脱したり、協定に違反したりした場合でも、協力は維持される可能性がある。確かに、ワシントンのパリ協定離脱は有害な影響を及ぼすだろう。その一部は国内的なものであり、例えば気候規制の後退やそれに伴う温室効果ガスの増加などが挙げられる。国際的には、アメリカの離脱は、経済成長を犠牲にして排出基準を負担する国への補償など、気候規制のための資金を圧迫する可能性がある。

しかし、アメリカの財政支援の喪失はパリ協定の実効性を損なう一方で、他の国々は依然としてネットゼロ炭素排出目標(net-zero carbon emissions target)の達成を約束している。現在世界最大の汚染国である中国は、この目標を2060年までに達成することを誓約している。世界第4位の汚染国であるヨーロッパ連合(European UnionEU)は、日本と同様に2050年までにネットゼロを達成することを誓約しており、インドは2070年までにこの目標を達成することに同意している。実際、アメリカが何をしようとも、残りのパリ協定署名諸国は、自国が決定した炭素削減目標を5年または10年ごとに見直し、改善する義務を負っている。そして、風力・太陽光発電技術が安価になり普及するにつれて、これらの目標を上回る可能性も残されている。

最後に、国際刑事裁判所の例を挙げよう。1998年、ワシントンは国際刑事裁判所(ICC)の設立を定めたローマ規程に反対票を投じた。アメリカの市民、外交官、そして兵士を危険にさらす懸念があったからだ。さらに劇的なのは、アメリカがイスラエル指導者を訴追した国際刑事裁判所に対し、裁判官と検察官に制裁を科すことで報復措置を取った。しかし、イギリスを含むアメリカの同盟諸国は国際刑事裁判所の独立性を支持し続け、これに追随しなかった。その結果、国際刑事裁判所は指導者の不処罰を抑制し、人道犯罪の抑止力として機能し続けている。

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ニューヨークで開催された第80回国連総会での演説を終え退席するドナルド・トランプ米大統領(2025年9月23日)

アメリカの多極主義へのアプローチが常に条件付きであったとすれば、トランプ政権下では、それは紛れもなく敵対的なものとなった。実際、トランプはこの敵対的な姿勢を2025年国家安全保障戦略(2025 National Security Strategy)に明記し、「個々の国家の主権を明示的に解体しようとする国際機関のネットワーク(network of international institutions … that explicitly seeks to dissolve individual state sovereignty)」を非難している。アメリカは現在、同盟国と敵対国を問わず、自己中心的で二極主義的、排他的、そして取引的な関係を追求している。

2016年以降、トランプは複数の多国間協定や機関から脱退、あるいは脱退計画を発表している。これらには、パリ協定、イラン核合意(the Iran nuclear deal,)、国連人権理事会(the U.N. Human Rights Council)、オープンスカイズ条約(the Treaty on Open Skies)などが含まれる。さらに、第二次トランプ政権は、世界保健機関(the World Health OrganizationWHO)からの脱退とユネスコからの脱退を表明している。

さらに、トランプ大統領は国連予算の削減を計画している。最も顕著なのは、国連平和維持活動(U.N. peacekeeping operationsPKO)への8億ドルの削減で、これには既に連邦議会で承認されている資金も含まれる。政権はハイチ、レバノン、コンゴ民主共和国など、支援する特定の平和維持活動に資金を集中的に投入することに同意しているものの、より広範な削減によって国連は国際平和維持部隊(global peacekeeping forceGFP)を25%削減することになった。トランプ大統領はまた、アメリカ政府に割り当てられている義務的拠出金(mandatory contributions)の拠出を差し控えており、国連予算の削減総額は20億ドルを超えると推定されている。その結果、国連は現在、予算を5億ドル以上削減し、職員を約20%削減することを検討している。

皮肉なことに、トランプはノーベル平和賞を公然と要求する一方で、欠陥はあるものの紛争の緩和と人命救助に大きく貢献してきた国連平和維持活動を弱体化させている。

しかし、こうした破壊だけが全てではない。トランプがアメリカを世界の不在あるいは亡命国家の最高指導者という評判を固めている一方で、国際協力は維持されてきた。今や、台頭する大国がトランプの関税や脅しを拒絶し、BRICSG20、上海協力機構(the Shanghai Cooperation OrganisationSCO)、東南アジア諸国連合(the Association of Southeast Asian NationsASEAN)といった多国間フォーラムをその手段として利用しているのを目にしている。

BRICS諸国、特に当初加盟国であった国々は、高関税にもかかわらず、トランプ大統領に公然と反抗してきた。ブラジルでは、ジャイル・ボルソナロ前大統領の裁判は、ホワイトハウスからの免罪圧力にもかかわらず継続された。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領はホワイトハウスに出向き、南アフリカの白人が迫害されているというトランプ大統領の主張を公然と否定した。中国は重要な鉱物サプライチェインにおける優位性を利用して、貿易戦争でトランプ大統領を出し抜こうとしてきた。インドにはそのような天然資源の切り札はないが、トランプ大統領はより身近なところで反発を招いている。アメリカの政策関係者は、トランプ大統領の任期1期目におけるインド太平洋戦略の要であった中国に対する重要な戦略的パートナーをホワイトハウスが疎外したことに、今や困惑し、憤慨している。

トランプ大統領が世界の不在大統領、あるいは離反大統領(the world’s absentee- or defector-in-chief)としてのアメリカの評判を固めている一方で、国際協力は維持されている。

2024年12月、次期大統領のトランプは、米ドルに代わる取り組みを放棄しないBRICS加盟諸国に対し、100%の関税を課すと警告した。2025年7月、リオデジャネイロで開催されたBRICS首脳会議において、トランプは「BRICSの反米政策(Anti-American policies of BRICS)」に沿う国からの製品に10%の追加関税を課すと発表し、「例外はない(no exceptions)」と付け加えた。これに対し、ブラジルなど一部のBRICS加盟国は、共通通貨構想(a common currency)を軽視する姿勢を見せている。しかし、トランプの圧力は裏目に出る可能性もあり、代替決済システムの開発とドルへの依存度の低減(to develop alternative payment systems and reduce their reliance on the dollar)への意欲をさらに強めることになる。

2025年8月に中国の天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議は、トランプの政策に対する多国間の抵抗を示す新たな場となった。この会議で、中国の習近平国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相が会談し、インドと中国はライヴァルではなくパートナーであると宣言した。

しかし、上海協力機構だけではない。G20はブラジル、インド、インドネシア、南アフリカといった国々にも、世界的なリーダーシップを強化する機会を与えてきた。2022年のインドネシアでのG20首脳会議は、ロシア・ウクライナ紛争をめぐる混乱への対応をG20が後押しした。2023年のインドでのG20首脳会議は、アフリカ連合(the African UnionAU)のG20加盟確保に貢献し、グローバル・サウスの役割拡大につながった。2025年11月にヨハネスブルグで開催されたG20首脳会議は、もう1つの画期的な出来事となった。アフリカで初めて開催されたG20首脳会議はアメリカによるボイコットにもかかわらず、多様性、包摂性、そして、平等(diversity, inclusion, and equality)といった課題を中心に議論された。他の加盟国はアメリカのボイコットに追随せず、アメリカの世界的な孤立がさらに浮き彫りになった。

こうした国際フォーラムで示された結束(solidarity)に加え、地域主義(regionalism)への傾向も見られる。過去20年間で、アフリカ主導の平和活動は急増した。アフリカ連合や西アフリカ諸国経済共同体(he Economic Community of West African States)などの地域機関、そしてより小規模なアドホック連合は現在、アフリカ17カ国で10件の活動を展開している。アフリカ主導の平和活動は、チャド盆地、シエラレオネ、ソマリアにおける反乱勢力による紛争の封じ込めにおいて、一定の成功を収めている。実績はまちまちだが、これらの平和活動は、不安定な情勢に対する地域的かつ状況に応じた対応や、国連よりも幅広い活動に取り組む意欲など、独自の特徴を示している。重要なのは、これらのプロジェクトは主にヨーロッパ連合の資金提供を受けており、アメリカの役割は最小限にとどまっていることである。

これら全ての機関と並んで、国連は依然として重要な協力の場となっている。アメリカはしばしば国連の人権保護の不備を批判し、権威主義的なライヴァル国に対する政治的得点獲得の場として利用している。しかし、国連は民主政治体制国家と非民主政治体制国家が人道支援を効果的に推進する場として存続してきた。

特筆すべきは、過去20年間で中国の国連への拠出額が大幅に増加したことだ。アメリカは国連の通常予算の22%、平和維持活動の26.2%を拠出しているが、中国は現在、通常予算の20%、平和維持活動の23.8%を拠出しており、世界第2位の拠出国となっている。また、中国は国連安全保障理事会の常任理事国5カ国(the five permanent members of the U.N. Security Council)の中で、最も多くの平和維持部隊を派遣している。国連の人道支援機関に対する中国の自発的な拠出額は依然として比較的低い水準だが、もし中国がアメリカの不関与(U.S. disengagement)を絶好のチャンスと捉えれば、拠出額は急速に増加する可能性がある。

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中国深圳でコンテナ船、クレーン、そして積み上げられた輸送コンテナの近くに翻る中国国旗(4月12日)。

今後数年間、台頭する大国と多国間機関は、トランプ大統領の攻撃に対応して進化を続けるだろう。しかし、彼らは「世界マイナス1」という状況を乗り越え、国際協力と自由貿易(global cooperation and free trade)をうまく維持できるのだろうか?

中国の対応は特に重要となるだろう。北京は必然的に自国の利益に導かれ、ワシントンを犠牲にして影響力を拡大しようとするだろう。しかし、中国が賢明かつ自制心を持って行動すれば、中国支配の世界(a Chinese-dominated world.)の構築ではなく、国際協力(global cooperation)の強化につながるだろう。

伝統的に安全保障をアメリカに依存してきたアジア太平洋地域は、「世界マイナス1」秩序の中心となる可能性が高い。ここで特に注目すべき2つの貿易協定、すなわち東アジア地域包括的経済連携(the Regional Comprehensive Economic PartnershipRCEP)と中国・ASEAN自由貿易協定(the China-ASEAN Free Trade AgreementCAFTA)である。2022年に発効した15カ国・地域のRCEPは、GDPと人口の両面で世界最大の貿易グループへと成長しつつある。中国、日本、韓国、ASEAN諸国を合わせたRCEPは、現在、世界のGDPの約30%を占めている。RCEPは20年間で域内の関税の90%以上を撤廃し、電子商取引や知的財産など紛争の多い分野で共通ルールを策定することを目指している。

2010年に発効し、2015年と2025年10月に改訂されたCAFTAは、グリーン経済やサプライチェインの連結性などの分野で中国とASEANの協力を推進している。専門家の一部は、アメリカがASEAN諸国に対し、中国とのデカップリング(decouple、分離)と中国の積み替え貨物に対するアメリカの懲罰的関税(punitive U.S. tariffs)の遵守について圧力をかけてきたため、これは北京にとって明らかな戦略的勝利だとしている。しかし、真実はもっと複雑である。ASEAN諸国は、アメリカに完全に同調するつもりはなかった。むしろ、彼らは既にCAFTAなどの協定を利用して自国の利益を推進し、中国の影響力に対する懸念に対処している。実際、北京が経済的利益を制限し、これらの国々と多国間で関与し、自由貿易と開放的で包括的な地域秩序につながる関係を追求するようになったのは、ASEAN諸国からの圧力によるものである。

ヨーロッパ連合もまた、世界マイナス1への対応が極めて重要となる主要プレイヤーだ。2021年、ヨーロッパ連合は3000億ドル規模の「グローバル・ゲートウェイ」計画(Global Gateway plan)を発表した。これは、インフラ、エネルギー、気候変動対策プロジェクトを統合し、世界における中国の影響力に対抗するためのものだ。例えばアフリカでは、グローバル・ゲートウェイは北アフリカからヨーロッパを結ぶ水素パイプライン[hydrogen pipeline]SoutH2 Corridor」や、東アフリカの食料安全保障強化プロジェクトを支援している。また、ヨーロッパ連合は現在、メルコスール[Mercosur](アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)諸国との自由貿易協定の締結に向けて調整を進めており、大半の品目の関税撤廃、投資拡大、持続可能性の確保を目指している。

理想的には、ヨーロッパと中国は、アフリカや南アメリカといった地域において、ゼロサムではなく相互補完的な(complementary)形で関与できるはずだ。例えばアフリカでは、中国はヨーロッパ連合のグローバル・ゲートウェイ構想(Global Gateway initiatives)に積極的に参加している。重要なのは、こうした姿勢はヨーロッパや中国の寛大さから生まれたものではなく、アフリカや南アメリカの指導者たちの要求によるものであるということだ。

インドはまた、世界がワシントンの不在にいかに効果的に対応するかを決定する上で重要な役割を担っている。トランプ大統領の圧力に強く抵抗する一方で、インドはインドの貿易関係を急速に拡大し、制度化している。これには、ASEANおよび日本との既存の貿易協定の強化交渉、そして、2025年7月にイギリスと締結する新たな貿易協定が含まれる。インドはまた、EU非加盟国のアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを含む欧州自由貿易連合(the European Free Trade AssociationEFTA)とも2024年に貿易協定を締結した。中国と同様に、インドはロシアとの貿易の多くを自国通貨建てで行っている。インドはまた、ロシアと緊密な安全保障関係を維持しており、ロシアは引き続きインドの武器輸入の36%を供給している。たとえその後ワシントンとの関係が改善したとしても、インドが戦略的自立性を継続することで、米中の優位性が薄れ、世界マイナス1体制の持続可能性が確保されるだろう。

最後に、国連がトランプ大統領を機に、長らく待たれていた改革を実行に移すかどうかは、依然として不透明だ。トランプ大統領の第二期就任以来、アメリカはフランスで開催された国連海洋会議とスペインで開催された第4回開発資金会議をボイコットした。それでもなお、国連加盟国の大多数はこれらの会議に出席した。ワシントンの不在にもかかわらず、各国は海洋生物の保護、債務救済、気候変動対策への財政支援といった合意形成など、通常通りの活動を継続することができた。

この成功を基盤として、国連は更なる適応策を講じなければなりません。これには、優先分野に重点を置くための予算削減や、中核ミッションに不可欠ではなくなった機関の廃止による重複削減などが含まれます。元国連高官でスウェーデン首相のカール・ビルト氏らが提案した、より抜本的な対策は、国連本部をニューヨーク市から移転することです。これによりコストが削減され、米国にとって非友好的と見なされる地域からの代表団へのビザ発給を米国が拒否する可能性も排除されます。理想的には、各国がトランプ大統領の予算削減に対し、通常の国連予算の内外を問わず支援を強化し、国連に対し民間部門の資源と専門知識を動員するよう働きかけることで対応することが期待されます。これらの措置により、トランプ大統領の敵意によって国連が機能不全に陥る事態を回避できるでしょう。

To build on this success, the U.N. must do more to adapt itself. This should include making budget cuts to focus on priority areas and reduce duplication by dispensing with agencies no longer critical to core missions. A more radical step, suggested by former senior U.N. official and Swedish Prime Minister Carl Bildt and others, would be to move the U.N. headquarters out of New York City. This would cut costs and remove the chance of the United States denying visas to delegates from places deemed unfriendly to Washington. Ideally, every country would respond to Trump’s cuts by providing more support, within or outside the regular U.N. budget, and by pushing the U.N. to mobilize resources and expertise from the private sector. These measures can ensure that the U.N. will not die due to Trump’s hostility.

世界マイナス1の時代はいつ終わるのか? それはアメリカの国内政治と外圧(external pressures)の両方に左右される。トランプ大統領が多極主義と対外援助を拒否しているにもかかわらず、アメリカの国際社会からの離脱は完全でも不可逆的でもない。ピュー・リサーチ・センターが2025年3月に実施した調査によると、成人アメリカ人の47%がアメリカの国際情勢への積極的な関与を支持し、64%が主要な国際問題においてアメリカは他国と妥協すべきだと考えている。また、過半数が開発途上国への食料、医薬品、衣料品などの援助に賛成している。

アメリカが最終的にトランプ主義を脱却する場合、世界はどのように反応すべきだろうか? 多くのことは、新しいホワイトハウスがいかにしてダメージを修復するかにかかっている。例えば、アメリカはどれほど迅速に制度に復帰し、拠出金の返済や拠出停止を返済し、カナダからインドに至るまでの同盟諸国やパートナーとの関係を修復するだろうか? ワシントンがどのような行動を取ろうとも対応は様々だろう。NATO加盟諸国は、ロシアや国際テロの脅威から、同盟をかつての活力ある状態に戻そうと熱心に動くかもしれない。対照的に、BRICS諸国は、アメリカがかつての経済的役割を取り戻そうとするいかなる試みにも抵抗するだろう。

ワシントンの世界秩序への復帰を最もよく表すシナリオは2つあるだろう。放蕩息子(the prodigal son)と存在が必要ではあるならず者(the indispensable rogue)だ。ワシントンのリベラルエリートは前者を好むかもしれない。聖書に出てくる不良息子のように、アメリカが両手を広げて歓迎されるシナリオだ。しかし、このシナリオは実現しそうにない。世界はトランプ政権時代を許すかもしれないが、決して忘れることはないだろう。そして、ルールに基づく秩序(the rules-based order)にアメリカがもたらした過去のダメージも忘れることはないだろう。国民の記憶は短く移り変わりやすいものだが、アメリカはかつての同盟諸国やパートナー、たとえ西側諸国であっても、真の信頼を取り戻すことは難しいだろう。

ここから第二のシナリオが導き出される。アメリカはもはや自由世界のリーダーではなく、単に世界にとって存在が必要ではあるならず者(an indispensable rogue)となる。世界は依然として、アメリカの軍事力、経済力、そして技術力を、多くの地球規模の課題への対応に不可欠だと認識するだろう。しかし、世界はワシントンが世界のリーダーシップの座に就くことを望まないだろう。

簡潔に述べれば、アメリカの地政学的優位性(U.S. geopolitical dominance)やリベラル・ヘゲモニー2.0(liberal hegemony 2.0)への回帰はない。トランプの後継者が共和党の大統領で彼の政策を継続するか、善意の民主党大統領が政策転換を図るかに関わらず、トランプは世界のアメリカへの信頼と依存(the world’s faith in and dependence on the United States)を打ち砕いた。動揺した同盟諸国に対し、別のジョー・バイデンが次の大統領となって「アメリカは戻ってきた(America is back)」と告げるのを待つ人間はいない。

その結果、世界秩序はより多重化(multiplex)するだろう。ワシントンは、より広範に分権化されたシステム(more broadly decentralized system)の中で生きることになるだろう。それは、アメリカの力や目的よりも、経済・安全保障上の結びつきの網に絡み合った他の大国や中堅国によって形作られるシステム(one shaped less by U.S. power or purpose than that of other great and middle powers enmeshed in a web of economic and security ties)だ。

つまり、アメリカが多極主義に復帰する頃には、世界はすでに変化を遂げているだろう。ワシントンにとって唯一の選択肢は、より対等な条件で、より弱い存在(a weaker entity on more equal terms)として国際秩序に再加入することかもしれない。

※アミタヴ・アチャラ:アメリカン大学国際関係学部卓越教授。最新作は『かつての世界秩序と未来の世界秩序:なぜ世界文明は西洋の衰退を生き残るのか(The Once and Future World Order: Why Global Civilization Will Survive the Decline of the West)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、アメリカによるヴェネズエラ攻撃が実施されたことで、注目度を増している。この文書にはアメリカの「西半球回帰」、モンロー主義(ヤンキー帝国主義)への回帰が明らかになった。第二次トランプ政権の外交政策が「国家安全保障戦略」を基盤にして進むとすれば、この文書に注目するのは当然のことだ。

 「国家安全保障戦略」において、トランプ政権はヨーロッパの「文明の消失(civilizational erasure)」を危惧している。トランプ政権が考える「ヨーロッパ文明」は「白人文明」であある。非白人、非キリスト教徒の移民を多く受け入れることでヨーロッパらしさがなくなっているということである。また、ヨーロッパが安全保障分野において、アメリカに「ただ乗り(free-ride)」をしているという批判も継続している。更には、厳しい規制のために創造性と工業力が低下したために経済力の低下も起きているという指摘もしている。NATO加盟諸国は防衛費の対GDP比を5%(そのうちの1.5%はインフラ整備)にまで引き上げるとしている。アメリカ(トランプ政権)はヨーロッパに対して、移民を制限し、防衛費の増額を求めている。アメリカはヨーロッパに対して厳しい要求を突きつける形で介入をしている。

 こうした中で、ヴェネズエラ攻撃が発生した。また、トランプ大統領自身からグリーンランドについての言及もあった。ヨーロッパ諸国は対応に苦慮している。ヴェネズエラ攻撃に関しては主語を曖昧にして、「国際法は遵守されるべき」と生ぬるい対応をしていれば良いが、グリーンランドで何か起きれば、そうも言っていられない。ヨーロッパ諸国のほぼ全てがNATOに加盟し、集団的自衛権の義務を負う。アメリカ軍がグリーンランドに侵入すれば、当事国デンマークと共にアメリカ軍の排除に出動しなければならない。対ソ連(現在は対ロシア)の防衛同盟であったはずのNATOという枠組みで、そのリーダーであるアメリカが脅威となるという異常事態である。

 トランプのアイソレイショニズム(Isolationism)は、アメリカを国内に戻すということではなかった。世界の警察官(World Police)の役割を放棄して、自身が切り取り強盗になるということであった。そして、全ては「アメリカ・ファースト」という言葉をお題目にして、正当化するというものであった。私は「国家安全保障戦略」を読んで、「何でもアメリカ・ファーストと言えば万事OK、全てがうまくいくと思っているな」という感想を持った。「アメリカ・ファースト」は「世界の諸問題ではなく、アメリカ国内の諸問題を解決することを優先する」ということであったはずだ。トランプ本人が「トランプ革命」を裏切った。いつの時代も革命の指導者が革命を裏切るものであるがそれが世の習いというものだろうか。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の「国家安全保障戦略」は西側諸国の崩壊に向けた青写真だ(Trump’s National Security Strategy Is a Blueprint for the Demise of the West

-ホワイトハウスの政策は一貫性に欠けるかもしれないが極めて危険だ。

ハワード・フレンチ筆

2025年12月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/11/trump-national-security-strategy-blueprint-west-demise/

かつて、アメリカの著名な保守派の人物たちは、西ヨーロッパの同盟諸国に対する数々の使い古された不満に固執していた。

冷戦期のアメリカのイデオローグたちによれば、ヨーロッパ諸国は過剰な税金を課し、その資金を過度に手厚い社会保障制度に費やし、それがヨーロッパを弱体化させ、技術革新と成長を阻害しているという。ヨーロッパは、かつて資本主義の砦であった自由で競争的な市場の精神を放棄し、着実に、しかし幾分静かに、社会主義の行き詰まりへと突き進んでいるという警告が頻繁に発せられた。

少なくともリチャード・ニクソン大統領の政権時代まで遡る、もう一つの定型的な不満は、ヨーロッパが慢性的に自国の防衛費を不足させているというものだ。これは、ヨーロッパ、ひいては西側諸国自身を、最大の存亡の危機であるソ連から守るために設計された、アメリカによる国防総省への多額の支出(予算)にただ乗り(free riding)しているだけなのだ。

ヨーロッパに対するこうした古くからの不満の一部、例えばヨーロッパ大陸の防衛費が倹約的だとされる点などは、ドナルド・トランプ米大統領政権が先週発表した新たな国家安全保障戦略にも依然として残っている。しかし、多くの評論家たちが指摘するように、この文書は共和党の世界観を数十年ぶりに抜本的に刷新するものだ。ヨーロッパに関する主要な前提に関して言えば、ほぼ全てが、近年の共和党の主要人物―ニクソン元大統領、ロナルド・レーガン大統領、そしておそらく1964年の大統領選挙で落選した超保守派のバリー・ゴールドウォーターでさえも―が認識できないほどに歪められている。

ロシアがアメリカとヨーロッパにとって共通の安全保障上の大きな懸念事項であるという前提は、ほぼ完全に消え去った。これは主に省略や行間から読み取れる情報を通して明らかだが、トランプ大統領が今年、アメリカの外交政策をモスクワに有利な方向に転換しようとした数々の行動からも見て取れる。そして、このことを最もよく表しているのはロシア自身だ。ロシアは、ワシントンの方針転換の中で、自らの幸運を信じられないかもしれない。ロシアのメディアは即座に、ワシントンの「国家安全保障戦略」はロシア自身の世界観と概ね一致していると断言した。

ウクライナで進行中の戦争が2022年のロシア侵攻によるものでなければ、これは別問題だろう。しかし、トランプ政権の安全保障関係者たちがロシアの拡張主義に関心を示していないという事実は、トランプとその顧問たちがまだ明確に表明する勇気も率直さも持ち合わせていない、真に急進的な何かを示唆している。

誤解のないようにしよう。ホワイトハウスの新たな戦略文書は、西洋―少なくとも第二次世界大戦以降、世界が西洋という言葉で理解してきたもの―の崩壊を企てる青写真であり、その出発点は、ヨーロッパとアメリカの間に緊密に結びついた共通の利益である。

トランプのシナリオは、名目上は白人社会が有色人種、つまりかつて熱狂的な白人パニック小説のジャンルを席巻した黒人、褐色人種、黄色人種の大群によって徐々に乗っ取られていくという暗い幻想を描いている。これは、1920年代の人気作家ロトロップ・ストッダードのような人物に最もよく例えられる。ストッダードは、影響力のある著書『白人の世界至上主義に抗う有色人種の高まる潮流(The Rising Tide of Color Against White World-Supremacy)』の中で、「有色人種の移民は普遍的な危機であり、白人世界のあらゆる部分を脅かす(colored migration is a universal peril, menacing every part of the white world)」と記している。(ストッダードへの薄っぺらな言及は、20世紀で最も高く評価されているアメリカ小説の一つ、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』にも見受けられる。)

一方、トランプの「国家安全保障戦略」は、移民によってヨーロッパはもはやヨーロッパではなくなる危機に瀕しており、それは明らかに白人によって定義されることを意味すると警告している。これがこれほど重要な文書に含まれるに値する理由は、トランプにとって、アメリカとヨーロッパが共に「白人のままでいる(“remain” white)」ことが、緊密な同盟関係を維持するための根本条件だからだと直感的に理解できる。言い換えれば、トランプにとって、白人であることへのこだわりを維持することは、長きにわたり普遍的かつ疑問の余地なく用いられてきた「西洋(the West)」という呼称に値し続けるための条件なのだ。

アメリカ政府の白人性への執着は憂慮すべきものだが、トランプ政権の政策に少しでも一貫性があると想像するのは間違いだろう。非白人移民の流入が主な原因でヨーロッパがそのアイデンティティを失う危険に晒されていると警告するトランプの発言には、あまりにも明白な論理的欠陥があり、問題となっているのは人種問題だけではない、むしろ根底には、おそらくもっと深刻な別の問題が潜んでいることを示唆している。

この欠陥は、アメリカの移民率をヨーロッパの主要国や最も裕福な国々の移民率と比較すると明らかになる。そうすることで、ヨーロッパがこの点で際立っているわけではないことが分かる。

ドイツの人口の約19%は移民であり、これは米国の15%をわずかに上回っている。これは、アンゲラ・メルケル首相時代にドイツの人口減少を冷静に評価した結果と言えるだろう。メルケル首相の在任中、ドイツは中東の破綻国家シリアから数十万人の人々を受け入れた。これほど多くの新規移民を受け入れるには、必然的に文化的な適応が必要となり、受け入れ側の住民と移民の双方にストレスをもたらす。しかし、多くのドイツ有権者が少なくとも一時的には大規模な移民受け入れに反対しているとはいえ、シリア人などの流入が、ドイツの深刻な人口減少、高齢化、そしてそれに伴う労働力不足(crisis of population decline, aging, and the associated problem of too few workers)という危機を食い止めることができれば、歴史はメルケル首相の政策を寛大に評価することになるかもしれない。

ヨーロッパの他の二大大国フランスとイギリスの外国生まれの人口は、それぞれ全人口の約14%と16%で、アメリカ合衆国とほぼ同程度だ。挙げた3つの例のいずれも統計的に例外的な数値ではないという事実は、ヨーロッパが自らの人種的抹消に向かって急速に進んでいるというトランプの見解を明確に反証している。そして、はっきり言って、アメリカ合衆国もそうではない。

ヨーロッパの国防費に対するアメリカの不満も同様に根拠に乏しい。『ワシントン・ポスト』紙の最近の論説が指摘したように、アメリカ合衆国はヨーロッパ諸国に対し、GDPの5%を国防費に充てることを要求しているにもかかわらず、2025年度にGDPの3%を国防費に充てるという基準をかろうじて上回る見通しだ。

ヨーロッパが何らかの形でアメリカの先導に従うべきだという考えは、ヨーロッパの生活水準がトランプ政権下のアメリカよりも高いという現実、そして今日多くのヨーロッパ諸国が、大西洋を挟んだ新たな曖昧な長年の同盟国であるアメリカよりも、より活気に満ちた民主政体国家であると広く認識されているという事実によっても裏付けられていない。

何が起こっているのかをより深く理解するには、トランプが2016年の政権獲得当初、外国人嫌悪と人種・民族に基づく脅しを主要な戦術として用いたことを思い出す必要がある。アイデンティティ問題で多数の有権者を煽動することは、支持を集める確実な手段であるだけでなく、近年のいかなる前例からも大きく逸脱する彼の政策要素から目を逸らす効果的な手段でもあった。

これは、トランプのヨーロッパに対する真の狙いを示唆しているように思われる。それは、より大規模で広範な急進的な保守政策を支持することであり、人種に基づくナショナリズムはその槍の先ではあるものの、単なる一要素に過ぎない。

事実、トランプ自身も、国家安全保障声明において、ヨーロッパにおける極右政党の推進に対するワシントンの関心を表明することで、このことを自ら明らかにしたのだ(不器用な表現だと言いたいところだが)。トランプが人種的排外主義に訴えたことは、ヨーロッパの論評家たちから困惑と憤りを招いたが、それほど驚くことではなかった。なぜなら、これらは既に長らく彼の国内政治の中核を成していたからである。

トランプはこれまでもヨーロッパ諸国の国内政治に介入しようと試みてきたが、これほど大胆な介入はかつてなかった。ヨーロッパ大陸の極右勢力への全面的な協力を明確かつ公式に表明したのだ。極右勢力の政党の多くは、反ユダヤ主義に加担し、ファシズムに影響を受けている。このような大胆な介入は、ヨーロッパの多くの方面から激しい抗議を引き起こしている。

もしトランプがこれほどまでに急進的な政治転換に基づく政策を実行に移すならば、そして何よりも、非常に過激な見解を声高に推進してきたJD・ヴァンス副大統領のような人物が後継者となるならば、こうした展開は単なる白人性の強調にとどまらず、古い西洋の終焉を正式にもたらすことになるだろう。

アメリカ独立戦争中、ベンジャミン・フランクリンは「私たちは私たち自身の自由を守ることで、彼ら(ヨーロッパ人)の自由のために戦っているのだ」と述べ、フランスなどのヨーロッパ列強に支援を訴えた。

もちろん、西側諸国の民主政体の記録には欠点がつきものだ。しかし、自由を中心とする共通の価値観というこの理念こそが、アメリカとヨーロッパ諸国の同盟関係を支えてきた核心であり続けた。トランプがこれまで以上に露骨に権威主義(authoritarianism)を信奉する中、アメリカがこの価値観から乖離していることこそが、世界が「西側(the West)」と呼ぶものの常識を最終的に覆す可能性がある。

もしフランクリンが今日生きていたら、彼は自分の定式を逆転させ、「ヨーロッパ人は私たちの自由を守ることで、アメリカ人が自らの自由を守るよう鼓舞することを望んでいる」と表現したかもしれない。

※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.socialXアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2025年1月2日に発生したアメリカによるヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領夫妻の拘束連行はドナルド・トランプ米大統領の決定によってなされた。2026年初頭に世界は衝撃を受けた。年末に価格を下げた金銀プラチナはまた価格上昇に転じるだろう。「有事の金」「ドル離れ」ということになるだろう。

 南アメリカは基本的に地域内で大きな紛争案件を抱えておらず、比較的安定した地域だった。そこに今回の出来事が起きた。南アメリカ諸国は自国の安全保障について、具体的にはアメリカからの攻撃を想定しなければならなくなった。南アメリカ諸国はアメリカの「裏庭」にされ、始原を収奪されてきた歴史がある。「モンロー主義」とはアメリカの帝国主義宣言である。今回の出来事は「ヤンキー帝国主義」の復活ということになる。これは南アメリカ諸国を不安に陥れることになる。

南アメリカの大国はブラジルだ。ブラジルはBRICSの創設メンバー国であり、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領はドルの基軸通貨の地位について疑義を呈している。アメリカにとっては厄介な存在である。しかし、ブラジルはGDPで世界10位、約2兆1800億ドル(約338兆円)の大国である。南米で次に来るのは、アルゼンチンで世界24位、6370億ドル(約98兆7000億円)である。ブラジルは相当な危機感を持っているだろう。ブラジルはどのような行動を取るかであるが、アメリカにべったりになるということはなく、BRICSの枠組みに傾きながら、アメリカに対抗するということになる。バランシングを行うということになる。

私は、南アメリカや西側以外の国々で、「中国やロシアの軍隊をアメリカ軍よけに駐留させる」という選択をする国が出てくるのではないかと考えている。これは極端であるが、アメリカ軍は手ごわい相手とは戦う意図はない。それならば、自国内に中国軍やロシア軍がいれば攻撃を躊躇すると考える国も出てくるのではないかと考える。もちろん、中露両国はそのような申し出を拒絶するだろう。そのような危険な行動を取ることはできない。しかし、西側以外の国々はアメリカの攻撃を恐れて、中露両国に傾倒することになる。ドナルド・トランプ大統領はグリーンランドを狙う態度を示しているが、NATOは集団的自衛権の同盟であるため、アメリカ軍がグリーンランドに侵入するとなれば、カナダからヨーロッパ諸国、トルコまで、アメリカ軍の排除に動かねばならない。それができなければNATOの枠組みは崩壊する。そうなれば、NATO加盟諸国から中露に近づく国も出てくるだろう。

 アメリカ一辺倒の不具合が2026年になって表面化してきた。日本もまたこの事態について真剣に考慮しなければならない。

(貼り付けはじめ)

南アメリカの戦略的転換(A Strategic Break for South America

-ニコラス・マドゥロ大統領の逮捕を受けて、南アメリカ大陸各国政府は抑止力と自治に関する厄介な問題に直面している。

オリヴァー・ストゥエンケル筆

2026年1月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/03/venezuela-us-trump-maduro-defense-regime-change/

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1月3日、アメリカがヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領逮捕作戦を開始した後、コロンビア軍がククタにあるヴェネズエラとの国境検問所を監視する。

土曜日の早朝、ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカがヴェネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領と夫人を拘束したと発表した。この出来事の歴史的意義はいくら強調してもしすぎることはない。

マドゥロ大統領の破滅的な統治、あるいはトランプ大統領が表明した「ヴェネズエラを統治し、その石油埋蔵量を支配する」という目標について、人々がどう考えるかは別として、南アメリカのある国家の政府に対してアメリカが公然と軍事力を行使したことは、この地域における前例のない重大な断絶(rupture)となる。その影響はヴェネズエラ国内だけにとどまらないだろう。

多くのアナリストたちは、ヴェネズエラに対するアメリカの軍事攻撃を、1989年のパナマ以来の、南アメリカにおける初めての直接的なアメリカの軍事介入だと評している。しかし、その見方は、カラカスで起こった出来事の重要性を過小評価している。南アメリカは単一の戦略的空間ではない。南アメリカと中央アメリカの諸国間の結びつきは限定的な場合もある。

トランプ政権によるマドゥロ政権転覆は、アメリカがある南アメリカの国家の政府に対し政権交代を目的として公然と軍事攻撃を仕掛けた初めての事例である(冷戦期にはワシントンが大陸内の複数の独裁政権を密かに支援していた)。国家間戦争がほぼ存在せず、世界で最もリスクの低い地政学的領域の1つであることを長年誇りとしてきたこの地域にとって、マドゥロの追い落としは分水嶺となる瞬間(a watershed moment)である。

ブラジルやチリといった南アメリカ諸国にとって、1989年のアメリカによるパナマ侵攻は、厄介ではあるものの、現実離れした出来事だった。パナマは中央アメリカの小国であり、歴史的にパナマの名を冠した運河をめぐるアメリカの戦略的利益と深く関わってきた。一方、ヴェネズエラは異なる。南アメリカの大国であり、政治的影響力も大きく、世界最大の確認石油埋蔵量を誇る。今回のアメリカの軍事行動は、大陸全体の国防体制指導者たちに、ワシントンの権力に対する自らの脆弱性を再評価させるだろう。これは、ここ数十年、真剣に検討した者はほとんどいなかったことだ。

冷戦後の多くの時代において、南アメリカ諸国は、ワシントンとの意見の相違が何であれ、アメリカによる直接的な軍事介入の時代は終わったという前提の下で行動してきた。ヴェネズエラへのアメリカの攻撃は、この幻想(illusion)を打ち砕いた。依然としてアメリカと概ね足並みを揃えている政府でさえも、抑止力、自律性、調達、戦略的ヘッジ(deterrence, autonomy, procurement, and strategic hedging)といった厄介な問題を検討せざるを得なくなるだろう。

これまでのところ、南アメリカ諸国の指導者たちは、アメリカによるマドゥロ政権打倒に対する公の反応を政治的に追跡している。トランプ大統領の極右派の同盟者であるアルゼンチンのハヴィエル・ミレイ大統領は、マドゥロ大統領の攻撃と拘束を権威主義(authoritarianism)への打撃として称賛した。一方、左派のブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、これらを主権と国際法の侵害(violations of sovereignty and international law)として非難した。

しかし、密室では、この地域の軍事計画担当者たちは、アメリカの行動を非常に不安なものと捉えている可能性が高い。こうした動きは、アメリカへの依存を減らし、対外的なパートナーシップを多様化し、国家および地域の防衛力を強化する方法についての議論を加速させるだろう。

こうした議論は必ずしも即時の政策転換につながる訳ではないかもしれないが、長期的な戦略的思考を形作るだろう。ブラジル、チリ、コロンビアといった国々(うち2カ国は今年選挙を控えている)は、国内防衛産業の強化、域外パートナーとの安全保障関係の深化、あるいは対外的な強制を困難にする能力への投資拡大に重点を置く可能性がある。これらの動きをアメリカに対するヘッジとして公然と位置付ける国はなくても、そう理解されるだろう。

ヴェネズエラ国内で今後何が起こるかは不透明だ。マドゥロ大統領が拘束されたことで、権力は突如として掌握される。3人の人物がヴェネズエラの未来を左右する可能性がある。

マドゥロ政権の副大統領を務めたデルシー・ロドリゲスは、豊富な外交経験とキューバ、ロシア、イランとの強いつながりを持つ、ヴェテランの政権内部関係者だ。長らく政権内で最も恐れられていた人物の1人であるディオスダド・カベジョ内務相は、国内治安部隊に影響力を持ち、政権の強硬派の中核(the regime’s hard-line core)を担っている。一方、ウラジミール・パドリノ・ロペス国防相は、最も重要な切り札、すなわち軍の忠誠心を握っている。

ワシントンは、多くの識者が想定していたほど、ヴェネズエラの野党によるクリーンな政権掌握には関心がないのかもしれない。ロドリゲスは侵攻前にマルコ・ルビオ米国務長官と会談したと報じられており、トランプ政権と何らかの合意に達したのではないかという憶測が広がっている。

トランプ自身の発言もその方向を示唆している。土曜日の記者会見で、トランプは野党指導者で2025年のノーベル平和賞受賞者であるマリア・コリーナ・マチャドを大統領に据えるという考えに距離を置く姿勢を示した。「彼女が指導者になるのは非常に難しいだろう。彼女は国内で支持も尊敬も得ていない」とトランプは述べた。「彼女はとても素晴らしい女性だが、尊敬されていない」。

トランプの発言は、ワシントンが野党主導の政府への急速な移行よりも安定を優先している可能性を示唆している。もしそうだとすれば、マドゥロ政権崩壊後のヴェネズエラの軌跡は、多くのヴェネズエラ国民が期待するものとは大きく異なるものになる可能性がある。

大きく分けて3つのシナリオが考えられる。1つ目は、主に象徴的なアメリカの勝利である。マドゥロの制圧を取り除けば、ヴェネズエラの政権はほぼそのまま残り、ロドリゲスもしくは他の同盟者が正式に政権を掌握する。ホワイトハウスが、ヴェネズエラの実際の統治に必要な継続的な政治的関心、資源、そして行政能力を投入する意思があるかどうかは、全く明らかではない。ワシントンは成功を宣言し、制裁を部分的に緩和または再調整し、カラカスの根底にある権力構造は存続するだろう。

第二のシナリオは、大規模な国内動員と軍部を含むエリート層の離反を通じた政権崩壊である。この結末の可能性は、カラカスをはじめとする主要都市におけるマドゥロ大統領の逮捕に対する国民の反応、そして軍部が継続的な弾圧のコストが秩序維持のメリットを上回ると判断するかどうかに左右される。

第三のシナリオは、ヴェネズエラにおけるより深い政治的変革を強制するために、アメリカによる長期的な圧力(追加的な軍事攻撃の可能性も含む)を伴う。この道筋は、持続的な強制、アメリカの治安部隊の継続的な駐留、そしてコストが急速に増大する可能性のある期限のない関与を伴う。また、アメリカの行動に対する地域的な不安を増幅させ、アメリカが南アメリカにおける政治的結果を左右するために武力を行使する用意があるという認識を強めることにもなるだろう。

どのシナリオが勝利するかは、ヴェネズエラの将来だけでなく、今後何年にもわたる南アメリカの戦略的状況を形作ることになるだろう。ここ数カ月のワシントンのヴェネズエラに対する行動は、西半球全体におけるリスク、力、そして前例に対する認識を既に変化させている。たとえヴェネズエラが最終的に安定に至ったとしても、南アメリカが大国の軍事介入から隔離されているという考えはもはや存在しない。

オリヴァー・ストゥエンケル:カーネギー国際平和財団(ワシントンDC)民主政治体制・紛争・統治プログラム上級研究員。ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(サンパウロ)国際関係論准教授。Xアカウント:@OliverStuenkel

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年1月2日、ドナルド・トランプ大統領の最終決定を受け、アメリカ軍によるヴェネズエラ侵入・ニコラス・マドゥロ大統領夫妻拘束移送作戦が実行された。作戦名は「絶対的決意作戦(Operation Absolute Resolve)」だ。マドゥロ夫妻はアメリカのニューヨークに移送された。このブログでも何度も紹介したように、トランプ大統領が発表した「国家安全保障戦略」の「モンロー主義」「西半球重視」が実行された形である。「モンロー主義」とは、「西半球(南北アメリカ大陸)はアメリカの影響圏(sphere of influence)であり、他国の影響を排除する。その代わり、アメリカはヨーロッパには出て行かない」という原則だ。これは、「南米大陸はアメリカの利益に貢献させる存在とする」ということで、「ヤンキー帝国主義(Yankee Imperialism)」である。日本の「大東亜共栄圏(Great East Asian Co-Prosperity Sphere)」と同様の考えである。1830年代のモンロー主義は、イギリスの南米進出を阻止するためのもので、2025年のモンロー主義は、中国(とロシア)の進出を阻止するためのものだ。

 ヴェネズエラは世界最大規模の石油埋蔵量を誇り、ウゴ・チャヴェス政権で国有化されるまではアメリカ企業が投資し、石油を採掘し、利益を得ていた。今回のヴェネズエラ侵攻は、アメリカがヴェネズエラの石油資源を「管理」するために実行された。このことはドナルド・トランプ大統領も認めている。そして、ヴェネズエラできちんとした政権が誕生するまで、アメリカがヴェネズエラを統治するが、その経費はヴェネズエラの石油を管理し売却した利益で賄うとしている。

その後は、民主派・反体制派の指導者たちがアメリカによって「エスコート」され、ヴェネズエラの統治にあたる。その代表格がマリア・コリナ・マチャドだ。

これまでの「民主化(democratization)」の事例から考えると次のようなシナリオが考えられる。こうした人々はアメリカ傀儡である。アメリカの後ろ盾が新指導者たちの「正統性(legitimacy)」の源となる。新政府はまず石油産業の国有化を止め、アメリカ企業に売り渡す。新指導者たちはアメリカ企業から利益を得る。新自由主義的な改革を進め、国民には苦痛を味わうことを強制する。結果として、国民の間には「マドゥロ大統領時代が良かった」という不満が高まる。結果として、「民主的な」新指導者たちは人々を弾圧する。最悪の場合には国内で内戦が勃発する。アメリカは適当なところで「あとはご勝手に」と引き上げる。ヴェネズエラ国内に、そして南アメリカに不安定要因を生み出すということになる。

 ヴェネズエラは南アメリカの独立運動の父であるシモン・ボリバルの生まれた場所である。ヴェネズエラの正式国名には「ボリバル共和国」とつく。このことはこのブログでも以前に紹介した。アメリカ軍の侵入によって、ヴェネズエラ国民の多くは「ボリバル主義」を汚されたと考えるだろう。アメリカの帝国主義に対する反感が高まり、ナショナリズムが高まる。これが厄介である。ヴェネズエラ軍の一部がゲリラ戦を展開すれば内戦は激化する。

 私はトランプ政権内で、ネオコンのような対外介入主義のグループが力を持つようになっていると考える。マルコ・ルビオ国務長官とエルブリッジ・コルビー国防次官はその代表格だ。このブログで2025年12月31日にご紹介した、トランプ政権の外交政策に関わる重要人物についての記事を是非ご参照いただきたい。

 トランプが融通無碍であり、国際法違反など全く歯牙にもかけないということは分かっていた。しかし、他国に侵攻して指導者を拘束移送するという、ネオコンでもやらないようなことをやるのは予想外だった。予想外のことをやる人物だという恐怖を週に持たせる「狂人理論(Madman Theory)」に従っているということもできるが、「TACOTrump Always Chickened Out)」、つまり、「トランプはいつも最後になったら怖気づいて逃げる」という評価を覆したかったということもあるだろう。また、国内問題、特に物価高問題とエプスタイン文書問題から目を逸らさせるということもあっただろう。

 今回の攻撃は短期的にはプラスの効果があるだろうが、中長期的に見て、マイナスの効果を生むことになるだろう。「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」アメリカへの信頼の低下、ドル離れ、中国への傾斜と言ったことが考えられる。アメリカを警戒して、中国に近づく、バランシング(Balancing)が起きるということも考えられる。

 2026年も世界は安定しないということになる。ドル離れも進み、実物資産への資金の流入が続くことになる。アメリカの衰退は続き、日本もそれに付き合って一緒に沈んでいくことになる。

(貼り付けはじめ)

トランプによるマドゥロ政権の驚くべき転覆に関する5つの重要なポイント(Five key takeaways on Trump’s stunning toppling of Maduro

ジュリア・マンチェスター、ラウラ・ケリー、レイチェル・フラジン、レベッカ・ベイッチ、エラ・リー筆

2026年1月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5671319-trump-venezuela-operation-maduro-takeaways/

ドナルド・トランプ大統領がヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束する作戦を成功させたことで世界中に衝撃が走った。

今回の大規模な作戦は土曜日の早朝に行われ、150機以上のアメリカ軍機が投入された。マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレスはニューヨーク南部地区で迅速に起訴され、現在はアメリカ軍艦船「イオウジマ」でニューヨークへ向かっている。

トランプ大統領は、この作戦の詳細を発表する記者会見で、新政権が樹立されるまでアメリカが南米の国家であるヴェネズエラを統治すると発表したことなど報道の中心となった。

共和党はマドゥロ大統領追放に向けた政権の行動を称賛したが、民主党は作戦自体と連邦議会の不関与を即座に非難した。

トランプ大統領によるマドゥロ大統領の驚くべき失脚に関する5つのポイントを掲載する。

(1)トランプがヴェネズエラを「統治」するとしさらなる攻撃を警告した(Trump seeks to ‘run’ Venezuela, threatens more strikes

トランプによる最新の記者会年において最も注目を集めたのは、新指導者が安全かつ平和的に就任するまで、アメリカがヴェネズエラを統治すると明言したことだ。

トランプは自身の邸宅マール・ア・ラーゴで記者団に対して次のように語った。「安全かつ適切で賢明な政権交代(transition)が実現するまで、私たちはこの国を統治するつもりだ。誰かが政権に就くようにさせることで起きた、過去数年間と同じ状況に陥るのは避けたい」。

ヴェネズエラを誰が統治するのか具体的に問われると、トランプは「あるグループ(a group)」と共に統治すると述べた。

トランプは次のように述べた。「私たちはあるグループと共にヴェネズエラを統治し、適切に統治されるよう徹底するつもりだ。私たちはヴェネズエラ国民が確実に保護されるようにするつもりだ、そしてこの暴漢によって国外追放されたヴェネズエラ国民が確実に保護されるようにするつもりだ」。

ヴェネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領は、土曜日にマドゥロ大統領が逮捕されたことを受け、権力を掌握した。アメリカはロドリゲス副大統領と協力するかどうかとの質問に対し、トランプ大統領は、マルコ・ルビオ国務長官が彼女と協議したと述べた。

「彼女は基本的に、ヴェネズエラを再び偉大な国にするために必要だと考えることを実行する用意がある」とトランプ大統領は述べた。

トランプ大統領は、必要と判断されれば、アメリカは第二次攻撃を行う用意があると警告した。

トランプ大統領は「必要であれば、第二次の、より大規模な攻撃を行う用意がある。実際、第二次攻撃が必要だと想定していたが、現在のところ、おそらく必要ではないだろうと考えている」と述べた。

(2)民主党は不正だと訴えている(Democrats cry foul

連邦議会民主党は、攻撃が行われる前に連邦議会に通知がなされていなかったと指摘し、攻撃を激しく非難した。

連邦上院外交委員会の幹部委員であるジーン・シャヒーン連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、民主党)は声明で、今回の作戦はトランプ政権が連邦議会に説明した内容と「全くもって首尾一貫していない」と述べた。

「大統領がこれまで様々な形で正当化してきたにもかかわらず、明確な終わりのない武力紛争にアメリカを引きずり込むことがなぜ正当化されるのか、大統領から直接聞く必要がある」とシャヒーン議員は述べた。

戦争権限(war powers)と軍の展開を管轄する連邦下院外交委員会の幹部委員グレゴリー・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、今回の作戦を「国際法違反(a violation of international law)であり、アメリカの国際的な立場をさらに悪くするものだ」と非難した。

連邦下院情報委員会の民主党側筆頭委員ジム・ハイムズ連邦下院議員(コネチカット州選出、民主党)も今回の軍事行動に疑問を呈した。

ハイムズ議員は声明で、「マドゥロは正統性のない統治者(an illegitimate ruler)だが、彼の大統領職が連邦議会の承認なしの軍事行動を正当化するような脅威をもたらすという証拠は見ていない。また、攻撃日以降の戦略やヴェネズエラが混乱に陥るのをいかに防ぐのかについて何も聞いていない」と述べた。

トランプ大統領は、連邦議会が作戦の詳細を漏洩し、任務に支障をきたしただろうと主張し、マルコ・ルビオ国務長官も大統領の主張を擁護した。

ルビオ長官は、「これは事前に通知できる種類の任務ではない。任務を危険に晒すからだ」と述べた。

(3)作戦はロシアと中国にとって前例となる恐れを促す(Operation spurs fear over precedent for Russia, China

トランプ大統領は、マドゥロ政権の主要な同盟国であるロシア、中国、イランとのアメリカ関係への影響は、石油を中心に展開すると述べた。

トランプ大統領は具体的な内容を明らかにしなかったものの、ヴェネズエラ産原油のアメリカへの販売を、イランとロシアの原油輸出を圧迫するために利用する可能性があるという強い示唆が示された。中国はロシア産原油の主要購入国である。

 

トランプ大統領は次のように明言した。「石油を必要としている他の国々に関して言えば、私たちは石油ビジネスを営んでいる。私たちはそれを売るつもりだ。・・・言い換えれば、私たちは石油を売ることになる。・・・私たちは大量の石油を他の国々に売ることになる。多くの国々が既に石油を使っている」。

トランプは、ヴェネズエラでの作戦がロシアのウラジーミル・プーティン大統領との関係にどのような影響を与えるかについては明確に言及しなかった。ある時点では、ロシアのウクライナ戦争は「収束しつつある(straightened out)」と示唆し、その後、プーティン大統領については「満足していない(not thrilled)」と述べた。

しかし、トランプ大統領の側近たちは、アメリカの敵対勢力に恐怖心を抱かせようとした。トランプは金曜日、生活費の高騰に抗議するイランの民衆の抗議活動を守るため、イランで軍事作戦を開始すると警告を発していた。

ルビオ国務長官は「トランプ大統領が何かをすると言った時、問題に対処すると言った時、大統領はそれを真剣に受け止め、行動に移す」と述べた。

ルビオ長官は続けて「ニコラス・マドゥロには、今回の事態を避ける機会が何度もあった。非常に、非常に、非常に寛大な申し出が何度も提示されたにもかかわらず、野蛮な行動を選んだ」と述べた。

「そして、その結果は今夜私たちが目にしたことだ」。

(4)トランプはヴェネズエラの石油管理を目指す(Trump seeks control of Venezuelan oil

トランプ大統領は土曜日、ヴェネズエラが世界最大の石油確認埋蔵量を保有していることから、アメリカがヴェネズエラの石油セクターを管理したいと述べた。

トランプは土曜日の記者会見で、「ヴェネズエラの石油事業は長きにわたり、完全に破綻していた」と述べた。

トランプは続けて「世界最大規模のアメリカの巨大石油会社に、数十億ドルを投じて、ひどく壊れたインフラ、石油インフラを修復させ、ヴェネズエラのために利益を上げてもらうつもりだ」と語った。

アメリカには国営石油会社が存在しないため、石油の採掘を行うかどうか、またいつ行うかは政府ではなく個々の石油会社が決定する。

マドゥロが拘束された時、アメリカ企業シェヴロンはすでにヴェネズエラで操業している状態であった。

(5)マドゥロ大統領が麻薬密輸で告発されるも、ギャングと関係は起訴の根拠は不十分 (Maduro accused of drug trafficking, but indictment is slim on gang ties

マドゥロは、妻や政権関係者とともに、ヴェネズエラの指導者が自らと同盟国の利益のために、麻薬密売からテロに至るまで、広範な犯罪行為を政府の権力を利用して保護・推進したとして、4件の起訴がなされている。

起訴状によると、マドゥロが6つの異なるテロ組織や麻薬密売組織に関与したと非難しているが、それらのつながりについてはほとんど詳細が示されていないか、組織について軽く言及しているだけである。

ニューヨーク南部地区の検察官たちは、ヴェネズエラの指導者たちが25年以上にわたり、公的な信頼と権力を悪用し、政府機関を腐敗させ、大量のコカインをアメリカに輸入したと主張している。

マドゥロ大統領は政権発足当初から、麻薬密売人に外交パスポートを提供し、マネーロンダリングされた資金を積んだ航空機に外交上の隠れ蓑を提供していたとされている。

マドゥロ大統領とその妻は、2006年から2015年にかけて独自のコカイン密売組織を運営し、自分たちの利益を損なう人々の誘拐、暴行、殺害を命じたとして告発されている。

さらにアメリカ政府は、マドゥロ大統領が、コロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de ColombiaFARC)と連携して麻薬密売を支援していたと主張している。

しかし、起訴状はトランプ政権が長年にわたり主張してきた疑惑については、ほとんど触れていない。トランプ陣営はマドゥロがトレン・デ・アラグア・ギャングやカルテル・デ・ロス・ソレスと繋がりがあると述べているものの、起訴状は、マドゥロとこれらのグループとの関係について、これらのグループのリーダーたちを起訴する以外に具体的な詳細は示していない。

起訴状は、マドゥロがメキシコの2つの主要カルテルと繋がりがあるとも非難しているものの、シナロア・カルテルやセタスの活動についてはほとんど言及していない。

この法廷闘争は、トランプにマドゥロ大統領を追い落とす権限があったかどうかという疑問にも悩まされることは間違いないところだ。

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トランプ政権はヴェネズエラでの活動開始後に「ギャング・オブ・エイト」にその旨を通知した(Trump administration informed Gang of Eight of Venezuela operation after it started

アレクサンダー・ボルトン筆

2026年1月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/5671149-surprise-operation-maduro-arrest/

事情に詳しい情報筋によると、トランプ政権は、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対する作戦開始後に、連邦上下両院の共和党・民主党トップと、連邦上下両院の情報・諜報委員会の委員長および幹部からなる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」に作戦について報告したという。

トランプ政権は、アメリカ軍機と特殊部隊がカラカスへ向かう間、奇襲効果を維持するため、連邦議会の主要指導者たちに事前の通知をしなかった。

連邦上院情報・諜報委員会委員長トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)は土曜日、政権が作戦について連邦議会に事前通知しなかったことを擁護した。

コットン議員はフォックスニューズに対して、「おそらく、この4日間、適切な天候を待っていたことが、情報漏洩がなかった理由の1つだろう」と語り、連邦議会の主要委員会にはこの作戦について事前に通知されていなかったことを認めた。

コットン議員は続けて「FBIがアメリカ国内で麻薬密売人やサイバー犯罪者を逮捕する際に、連邦議会に通知されることはない。同様に、行政機関が起訴された人物を逮捕する際にも、連邦議会に通知されることはない」と発言した。

アーカンソー州選出の共和党議員であるコットンは、「行政機関が逮捕を行うたびに、連邦議会に通知する必要はない」と付け加えた。

連邦上院情報委員会副委員長マーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、マドゥロ大統領に対する軍事行動の承認権限は連邦議会が持つべきだったと述べ、今回の攻撃は中国とロシアを地域近隣諸国への攻撃的な行動へと駆り立てる可能性があると警告した。

ワーナー議員は、「我が国の憲法が軍事力行使に関する最も重大な決定を連邦議会に委ねているのには理由がある。政権交代(regime change)を実行するための軍事力行使は、その影響が最初の攻撃で終わらないからこそ、最も綿密な監視を必要とする」と警告した。

ワーナー議員は、今回の一方的な行動は、中国が台湾を攻撃したり、ロシアがウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を攻撃したりする正当性(justification)を与える可能性があると述べた。

ワーナー議員は、「アメリカが犯罪行為を行ったと非難する外国指導者たちを軍事力で侵略し、捕らえる権利を主張するのであれば、中国が台湾の指導者に対して同様の権限を主張することを何が妨げるというのか?」と発言した。

「ウラジーミル・プーティン大統領がウクライナ大統領を拉致するのをなぜ正当化できないのか?」とワーナー議員は問いかけた。

マルコ・ルビオ国務長官は、主要議員には作戦の「直後(immediately after)」に通知されたと述べ、事前通知(advanced notice)があれば作戦は危険に晒されただろうと主張した。

「私たちは直後に連邦議員たちに連絡を取った。これは連邦議会に通知できるような種類の作戦ではなかった」と彼は述べた。

ルビオ長官は、予測不可能な気象条件のため、アメリカ軍幹部は作戦の正確な時期を把握できなかったと指摘した。

ルビオ国務長官はフロリダ州でトランプ大統領と記者会見に出席し記者団に次のように語った。「これはトリガーベース(trigger-based、訳者註:特定の条件やイヴェントが発生したときに自動的に発動する)の任務であり、条件が満たされる必要があった。数日間、毎晩監視を続けてきた。したがって、誰かに電話して『今後15日以内にこれを実行するかもしれない』と言えるような任務ではなかった」。

ルビオ長官は続けて、「これは本質的に、アメリカ司法から逃亡中の起訴された2人の逮捕であった。任務を危険に晒すことになるので、事前に通知できるような任務ではない」と述べた。

トランプ大統領は記者団に対し、連邦議会は国防当局や情報機関の当局者から提供された機密情報を漏洩する傾向があると述べた。

トランプ大統領は「連邦議会には漏洩する傾向がある。これは良くないことだ」と述べた。

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アメリカが実行したマドゥロ拘束の作戦はどのように実行したか(How the US operation to capture Maduro went down

エレン・ミッチェル、フィリップ・ティモティジャ筆

2026年1月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5671368-us-forces-capture-maduro/

金曜日の午後10時46分(東部標準時)、ドナルド・トランプ大統領は数カ月にわたる緊張の高まりと外交交渉の失敗を受け、ヴェネズエラの指導者ニコラス・マドゥロを捕らえる計画を実行に移した。

統合参謀本部議長ダン・ケイン大将によると、「絶対的決意作戦(Operation Absolute Resolve)」として知られるこの作戦は、アメリカ軍当局と情報・諜報機関による数カ月にわたる計画とリハーサルの集大成であった。

この作戦の基盤はアメリカの情報・諜報機関によって築かれたもので、彼らは数カ月にわたってマドゥロ大統領を追跡し、「彼の移動方法、居住地、旅行先、食事場所、服装を把握」したとケイン大将は土曜日の朝、トランプ大統領とともに行われた記者会見で述べた。

CIAは8月からヴェネズエラに小規模な部隊を派遣しており、マドゥロ大統領の生活様式に関する知見を提供することで、最終的にマドゥロ大統領を捕らえるのを容易にしたと、事情に詳しい情報源が土曜日に『ザ・ヒル』誌に匿名を条件に語った。この情報源は、機密事項について匿名を条件に語った。

CIAはまた、ヴェネズエラ政府内にマドゥロ大統領の移動パターンを追跡する要員を配置し、任務遂行中にマドゥロ大統領の居場所を特定することができたと情報源は付け加えた。

アメリカ軍兵士たちは数週間の準備を経て、12月初旬には即行動開始の準備を整えていたが、「イヴェントの一連の同時発生(a series of aligned events)」を待っていた。

ケイン大将は「ヴェネズエラでは、この時期の天候は常に重要な要素だ。クリスマスと新年の数週間、アメリカ軍兵士たちは辛抱強く待機し、適切なきっかけが訪れ、大統領が行動開始を命じるのを待っていた」と述べた。

ケイン大将は、昨夜の天候が「ちょうど良い程度(just enough)」に回復し、アメリカ軍の飛行士たちの進路が開けたことで、トランプ政権は好機を見出していたと述べた。

マドゥロ大統領拘束がどのように実行されたかの詳細は以下の通りだ。

ケイン大将は記者団に対し、金曜日夜のトランプ大統領の命令を受け、爆撃機、戦闘機、情報収集機、偵察機、監視機を含む150機以上のアメリカ軍機が、陸上と海上の20カ所の基地からヴェネズエラに向けて発進したと述べた。

アメリカ軍のヘリコプター群は、法執行官を含む救出部隊を乗せて離陸し、水面から100フィート(約30メートル)上空からヴェネズエラへの飛行を開始した。海岸線に近づくと、アメリカ軍はアメリカ宇宙軍、アメリカ・サイバー軍、その他の司令部が提供する「様々な効果を積み重ね(layering different effects)」、「進路を開き(create a pathway)」し始めた。

これらの部隊は、F-22F-18F-35E/A-18E-2B-1爆撃機、そして遠隔操縦無人機によって守られており、ヴェネズエラの防空システムを「解体・無力化(dismantling and disabling)」し、ヘリコプター群がカラカスへ安全に進入できるよう武器を使用したとケイン大将は述べた。

ケイン大将は「部隊が、彼らが物陰に隠れていた高地の最後の地点を通過した時、私たちは完全に奇襲効果(the element of surprise)を維持できたと判断した」と語った。

トランプ大統領がフロリダ州パームビーチの邸宅マール・ア・ラーゴから作戦のライヴ配信を見守る中、アメリカ軍は東部標準時午前1時1分にマドゥロ大統領の邸宅に到着した。部隊が進入する途中、部隊は銃撃を受け、ヘリコプター1機が被弾したものの、まだ飛行は可能だった。

その後、軍人たちは複数のFBI捜査官と共にマドゥロ大統領の邸宅に侵入した。トランプ大統領はマドゥロの邸宅を「厳重に警備され(very highly guarded)」「要塞(fortress)」のようと評した。

トランプは「彼らはただ侵入しただけで、本来は侵入できない場所に侵入した。まさにそのために設置された鉄の扉だ。護衛たちは数秒のうちに排除された」と述べた。

トランプ大統領はまた、ヴェネズエラの指導者が安全な部屋に入ろうとしたが失敗したと述べた。

アメリカ軍最高司令官であるトランプは、「彼は安全な部屋に入ろうとしたが、あまりにも急な襲撃に遭い、入ることができなかった」と述べた。

一方、ケイン大将は、アメリカ軍特殊部隊が安全確保のために「迅速かつ正確かつ規律正しく」行動し、最終的にマドゥロ大統領と妻シリア・フローレスを逮捕したが、2人は「降伏(gave up)」したと述べた。

夫妻はアメリカ軍の支援を受けて米司法省によって拘束された。

マドゥロ大統領の邸宅敷地内に侵入したアメリカ軍部隊には、空中および地上の情報ティームからリアルタイムの最新情報が提供されていた。

ケイン大将は、ヘリコプター群が救出部隊を救助するために出動し、戦闘機とドローンが上空から制圧射撃を行ったと述べた。部隊がヴェネズエラから撤退し始めると、「複数の自衛交戦(multiple self-defense engagements)」があったとケイン大将は指摘した。

アメリカ軍はヴェネズエラ領土を離れ、東部標準時午前3時29分にマドゥロ大統領夫妻とともに海上に到着した。その後、夫妻は海軍のワスプ級強襲揚陸艦「イオウジマ」に移された。

ケイン大将は「私たちは、計画し、訓練し、リハーサルし、報告し、何度もリハーサルを行う。正しく行うためではなく、間違えないようにするためだと考えている」と述べた。

マドゥロ大統領の拘束後、トランプ大統領は、政権移行が行われるまで、マルコ・ルビオ国務長官とピート・ヘグゼス国防長官を含むアメリカ政府のティームがヴェネズエラを「統治(run)」すると述べた。

トランプ大統領は、ヴェネズエラにアメリカ軍を地上派遣する可能性を排除しなかった。

トランプ大統領は、「必要であれば、私たちは地上部隊の派遣を恐れない。昨夜、非常に高いレヴェルの部隊を地上に派遣した。私たちはヴェネズエラが適切に統治されるようにする」と発言した。

「我々は今、ヴェネズエラに駐留している。必要であれば、再び派遣する準備もできている」とトランプ大統領は記者会見で述べ、アメリカはヴェネズエラの利益を生む石油産業も管理すると付け加えた。「石油産業は莫大な利益を生み出すだろう。私たちはヴェネズエラ国民にその利益を与える」。

アメリカ軍は現在もヴェネズエラに駐留している。

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連邦上院は来週トランプ大統領のヴェネズエラに対する軍事行動を阻止する投票を行う予定している(Senate to vote next week to block Trump’s military action against Venezuela

アレクサンダー・ボルトン筆

2026年1月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/5671074-senate-war-powers-resolution-venezuela-vote/

連邦上院は来週、ドナルド・トランプ大統領によるヴェネズエラへの軍事行動継続を阻止するための超党派の戦争権限決議案を採決する。アメリカ軍が土曜日早朝に南アメリカのヴェネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束したことを受け、この採決はより一層の重要性を帯びている。

トランプ政権によるヴェネズエラへの更なる敵対行為を阻止するこの決議案は特権的な議決であるため、ジョン・スーン連邦上院多数党(共和党)院内総務(サウスダコタ州選出、共和党)は、この決議案の審議を阻止することはできない。

この決議案は、チャック・シューマー連邦上院少数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)、ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)、ランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)、アダム・シフ連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が提出している。

連邦上院での可決には単純過半数の賛成が必要となる。

ケイン議員は声明の中で次のように述べている。「連邦議会が戦争、平和、外交、貿易といった問題において、憲法上極めて重要な役割を改めて主張すべき時がとっくに過ぎている。連邦議会の明確な承認がない限り、ヴェネズエラとの戦争は行わないことを規定した私の超党派決議案は来週採決される」。

ケイン議員は「アメリカの民主政治体制250周年を迎えた今、建国の父たちが逃れようと闘った暴政(tyranny)へと堕落することを許してはならない」と付け加えた。

アダム・シフ連邦上院議員は、トランプ大統領のマドゥロ大統領に対する行動は、この地域を「混乱(chaos)」に陥れる恐れがあると警告した。

カリフォルニア州選出の民主党議員であるシフは声明の中で「連邦議会の承認も国民の支持もないまま行動するトランプ大統領は、西半球を混乱に陥れる危険を冒し、戦争を始めるのではなく、終わらせるという約束を破った」と述べた。

シフ議員は連邦議会に対し、武力行使を承認するか拒否するかの権限を再確認するよう促した。

シフ議員はさらに「新たな戦争に巻き込まれることを深く拒絶するアメリカ国民の声を代弁しなければならない」と語った。

連邦上院の戦争権限決議案は、民主党議員全員とリバータリアン寄りの保守派であるポール議員が賛成票を投じると見込まれているため、来週可決される可能性がある。

可決に必要な51票を確保するには、共和党議員からさらに3人の賛成票が必要となる。

穏健派のスーザン・コリンズ連邦上院議員(メイン州選出、共和党)とリサ・マコウスキー連邦上院議員(アラスカ州選出、共和党)、そして長年にわたりアメリカ主導の海外軍事関与に懸念を表明してきたポピュリスト保守派のジョシュ・ホウリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は、この決議案に賛成票を投じる可能性がある。

連邦上院共和党指導部のスーン議員は、マドゥロの拘束を「アメリカで起訴されている麻薬犯罪について、彼を裁きにかけるための重要な第一歩」と称賛した。

スーン議員はソーシャルプラットフォームXに、「この必要な行動を遂行してくれた勇敢な軍隊の男女に感謝する」と投稿した。

ジム・マクガヴァン下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が提出した、トランプ大統領によるヴェネズエラへの軍事力行使を阻止するための法案は、先月(2025年12月)、連邦下院で否決された。

連邦下院は213対211で、マクガヴァン議員提出の法案を否決した。この法案は、連邦議会の承認なしに、ヴェネズエラとの敵対行為またはヴェネズエラに対する敵対行為から全てのアメリカ軍を撤退させるよう大統領に指示するものだった。

連邦下院はまた、連邦下院外交委員会の民主党側筆頭議員であるグレゴリー・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)が提出した決議案を216対210で否決した。この決議案は、連邦議会の承認がない限り、「大統領が指定する西半球のあらゆるテロ組織」との敵対行為からアメリカ軍を撤退させるというものだ。

ミークス議員の決議案は、アメリカへの麻薬密輸の疑いがあるヴェネズエラの船舶に対する軍事攻撃を阻止することを目的としていた。

連邦上院で可決された戦争権限に関する決議は、法的な効力を持つためには連邦下院の承認とトランプ大統領の署名が必要となる。

​​トランプ大統領は、最高司令官(commander in chief)としての権限を制限する決議案には拒否権を発動すると予想されているが、上下両院とも拒否権を覆すのに十分な票数に達していない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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