古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ヨーロッパ

古村治彦です。

 国際関係論には様々な理論(theory)が存在する。「理論」と言うと、確立された内容であるように思われるが、「理論」は多くの実験(experiment)や観察(observation)を経て、その内容が確かめられているが、これからも様々な試験を受けることで、内容が修正される可能性があるという点で、「仮説(hypothesis)」の一種である。「仮説」はこれから実験や観察の試験を受ける考えや物の見方である。理論は「法則(law)」とは違う。社会科学においては、「法則」はほぼ存在しないと言ってよい。

 国際関係論の理論の1つに「民主平和論(democratic peace theory)」がある。これは簡単に言えば、「民主政治体制国家同士は戦争をしない」というものだ。第二次世界大戦で考えてみると、連合諸国(the Allied Forces)と枢軸諸国(the Axis)では、この理論が適用される。第二次世界大戦後の世界では、小競り合いなどを除くと、この理論が適用されるようだ。

 国際関係論は社会科学の一分野で、統計学も用いられるが、同時に歴史学も用いられる。歴史上の出来事から理論を作り出すということが行われる。こうした中で、「民主平和論」は、その有効性が高い理論として知られている。「民主国家同士は戦争をしない」ということから敷衍すると、「世界の全ての国が民主政治体制になれば、世界から戦争がなくなる」というテーゼが導き出される。これが、アメリカによる外国への介入(intervention)、「民主化(democratization)」を正当化することになった。ネオコンにとっての「金科玉条(a golden rule)」となった。第二次世界大戦の結果として、枢軸国側だったドイツと日本、そしてイタリアは「民主化」された。これが成功例として喧伝された。2003年のイラク戦争とアメリカによる民主化について、日本が成功例として引き合いに出されることもあった。

 世界を眺めてみれば、民主的ではない国家は多く存在する。ネオコンにとっては全てが民主化すべき対象となるはずだが、実際には、サウジアラビアなどの中東地域の王制国家については、民主化を求めていない。アメリカにとって利益になるのであれば、民主化を求めない。これは二重基準、ダブルスタンダード(double standard)である。

 アメリカのドナルド・トランプ政権のドンロー主義によって、民主国家同士の緊張も高まっている。NATOの存在意義にも疑義が出るほどになっている。民主平和論は時代の大転換の中で生き残ることができるかどうか、現在はそのための実験が行われているとも言える。
(貼り付けはじめ)
民主的平和理論よ、安らかに(Democratic Peace Theory, R.I.P.

-主流の学術理論であったこの理論の台頭と潜在的な衰退。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年10月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/28/democratic-peace-theory-definition-democracy-international-relations-us/

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江陵で開催された2018年平昌冬季オリンピックの選手村にあるファストフード店の外で2人の女性が自撮りしている(2018年2月8日)

社会科学理論の中には、驚くほど長く続くものもあれば、寿命が短いものもある。かつて有望視されていたアイデアが、何の成果も上げられず(タルコット・パーソンズの社会学構造機能主義的アプローチ[structural-functionalist approach to sociology]はその一例だ)、最終的に多くの学者がそれを放棄し、別の分野へと進んでしまうこともある。あるいは、斬新な理論的議論が最初は説得力があるように思えても、その後の研究で論理的または実証的な限界が明らかになることもある。また、大胆な主張に対して現実世界が厳しい判断を下す場合もある(「歴史の終わり(end of history)」テーゼを覚えておられるだろうか?)。しかし、信用を失った理論の中には、強力な利害関係者が存続させることにメリットを見出すため、ゾンビのように生き残るものもある。

なぜこの話を持ち出したのか? それは、最近、民主的平和論(democratic peace theoryDPT)に一体何が起きたのか、疑問に思ったからだ。国際関係論を学ぶ人なら誰もが知っているように、民主平和論は1980年代半ばから21世紀に入ってからも、国際関係論研究者たちにとって大きな知的関心事だった。マイケル・ドイルによるこのテーマに関する独創的な著作(イマヌエル・カントが提唱した議論を洗練させた)に始まり、「民主政治体制国家は互いに争わない(democracies don’t fight each other)」という考えは、膨大な数の学術論文や書籍、そして数々の重要な批判を生み出した。

現代の民主平和論は、確立され機能している民主政治体制国家は互いに戦争をしないという経験的観察(the empirical observation)に基づいており、ある著名な学者はこの発見を「国際関係の研究において経験法則に最も近いもの(the closest thing we have to an empirical law in the study of international relations)」と呼んだ。支持者たちはこの興味深い観察に対して、経済的相互依存(economic interdependence)などの他の要因と組み合わせるなど、いくつかの競合する説明を展開した。多くの社会科学理論とは異なり、民主平和論はすぐに象牙の塔(the ivory tower)を出て、世界中に民主政治体制を広めたり、NATO などの機関を拡大したりするアメリカの取り組みを正当化しようと努める政治家たちに利用された。この理論の魅惑的な魅力は明らかだった。なぜなら、完全に自由主義的な諸国で構成される世界は戦争から自由であると示唆していたからだ。ジョージ W. ブッシュ大統領が就任当初に述べたように、「私たちの目標は、このアメリカの影響力の時代を、何世代にもわたる民主的な平和に変えることである」ということになる。

当然のことながら、民主平和論の大胆な主張には多くの批判が寄せられた。一部の学者は、実証的発見の根底にある因果メカニズムに一貫性がなく説得力に欠けると指摘した。一方、1945年以前には真の民主政体国家はほとんど存在しなかったことを考えると、民主政体国家間の戦争の頻度の低さは統計的な人工物(artifact、アーティファクト)である可能性があると示唆する学者もいた。また、第二次世界大戦後の民主政体国家のほとんどがアメリカの冷戦同盟ネットワークの一部であったことを考えると、民主政体国家間の戦争がないのは権力政治によるものだ、あるいは特定のコーディング決定や「民主政治体制(democracy)」の定義の変化の結果だと示唆する学者もいた。さらに、確立された民主政体国家は過去に互いに戦っていなかったかもしれないが、新たに民主化した国家は特に戦争を起こしやすい傾向にあると指摘する学者もいた。これは、民主政治体制の普及は長期的には報われるかもしれないが、そこに到達するには困難なプロセスになるだろうということを示唆している。

この知的論争は学術誌やモノグラフの紙面上で激しさを増し、最終的には行き詰まりに陥った。競合する大規模N研究(large-N studies)の結果が、採用されている仮定やモデリング手法にますます依存するようになったためだ。私見だが、民主政治体制による平和に関する極端な主張は誇張されているものの、民主政体国家同士が戦争する可能性はやや低いと言えるだろう。なぜなら、民主政体国家は戦争に対する国民の抵抗を克服するのが不可能ではないものの、やや困難だからだ。

さらに重要なのは、民主平和論は完全に民主政治体制国家のみで構成される世界がどのようなものになるかについて、あまり多くを語っていないように思われたことだ。なぜなら、そのような世界はこれまで存在したことがなく、民主政体国家間の戦争がないことは、潜在的に危険な非民主政体国家のライヴァルたちが常に存在することによって裏付けられてきたからだ。しかし、全ての独裁国家が民主政体国家に置き換えられれば、カント主義的な共和国でさえも互いを疑いの目で見て、不公平な区別をつけ始めるかもしれない。民主政治体制の原則を共有しても全ての利益相反がなくなる訳ではなく、議会制共和国や大統領制共和国は互いを異なる、そしておそらく危険な存在と見なし始めるのではないだろうか? もしそうなら、民主政治体制を広く普及させることは、民主平和論の最も熱心な支持者が信じていたような万能薬(the panacea)ではないかもしれない。そして、他の学者と同様に、私は、民主平和論が強力な民主政体国家に平和の名の下に非自由主義国家に対する暴力的な十字軍(crusades)を開始するよう奨励し、そのような取り組みが国内の自由主義の規範と自由を徐々に侵食するのではないかと懸念していたが、まさにそれが起こっている。

しかし、民主平和論は今日の世界においてどのような位置づけにあるだろうか? 理論そのものには含まれていなかったものの、その提唱者やそれを援用した政策立案者の多くは、自由主義的民主政治体制こそが未来の潮流であり、ソヴィエト帝国に対する一見勝利した後も、それがさらに拡大していくと想定していた。しかし、この予測は大きく外れた。世界中で民主政治体制は20年近く後退しており、長らくその主要な擁護者であったアメリカ合衆国においても、急速に衰退している。世界で最も人口の多い民主政体国家であるインドは、ますます非自由主義的な方向へと進んでいる。ブラジルは前回の選挙後、独裁政権の掌握を辛うじて免れた。そして、ヨーロッパの既存の民主政治体制国家のいくつかは、それぞれ独自の正統性の危機に直面している。

したがって、世界の主要国の全て、そして多くの中小国も、まもなく、言葉の意味する意味で自由主義でも民主政治体制でもない状態になる可能性は十分にある。民主平和論はこの点について何を示唆しているのだろうか?

最も明白な点は、たとえ民主平和論が真実だとしても、そのような世界ではほとんど無関係であるということだ。その因果メカニズムは非自由主義国家間、あるいは非自由主義国家と自由主義国家の間では機能しないため、主要な民主政体国家が存在しない世界は理論の範疇外だ。民主平和論の信奉者たちは、そのような世界ではさらに紛争が激化すると予想するかもしれない。なぜなら、民主政治体制の平和のオアシスは少なくなり、結果として非民主政治体制国家間の紛争の機会が増えるからだ。しかし、民主平和論は非民主政体国家間の戦争の頻度についてはほとんど語っておらず、地球上に残された民主政治体制国家が少なくなったという理由だけで、非自由主義国家が過去よりも頻繁に戦争を始めると考える明白な理由は存在しない。

さらに言えば、そのような世界にはわずかな希望の光(silver lining)があるかもしれない。民主政治体制と独裁政治体制の間のイデオロギー的競争、それぞれが相手を自らの正統性に対する脅威と見なすことになるが、それがなくなることで、両者間の安全保障上のディレンマは緩和され、過去に強力な自由主義国家を戦争へと駆り立てた、そして独裁主義国家が自国の体制維持のために予防戦争(preemptive wars)を仕掛ける原因となった、十字軍的な衝動が弱まるだろう。大国間の競争は終わらないが、イデオロギーに駆り立てられることは少なくなり、妥協を許さない性格を帯びることも少なくなるだろう。皮肉なことに、民主平和論が政策立案者たちにとって有用な指針とみなされなくなった世界は、より平和的になるかもしれない。

誤解しないで欲しい。私はそのような世界が望ましいと言っているのではない。むしろ、非自由主義的な大国のみで構成される世界には多くの欠点が存在する。人権は深刻な危機に瀕し、腐敗が蔓延し、野放しの独裁者たちは毛沢東の大躍進政策(Mao Zedong’s Great Leap Forward)のような破滅的な政策、あるいはヨシフ・スターリンの大粛清(Joseph Stalin’s Great Terror)やナチスのホロコースト(the Nazi Holocaust)のような全体主義的な悪夢を自由に実行することになるだろう。私は民主政治体制が「他のあらゆる政治形態を除けば最悪の政治形態(the worst form of government, except for all the others)」であり、独裁政権下で暮らすことを望んでいないため、世界、特にここアメリカ合衆国における独裁主義の動向について深刻な懸念を持っている。

理想的には、アメリカ合衆国が現在の衰退傾向を逆転させ、健全で力強い自由主義共和国であり続けることを願っている。そこでは、あらゆる政治家が民主政治体制の規範と法の支配(the rule of law)を尊重し、これらの原則に違反した際には責任を問われるだろう。また、力強いアメリカが、他の社会がそれぞれのやり方とペースで模倣したくなるような、素晴らしい、公正で、効果的な統治の模範を示すことで、これらの価値観を推進していくことも望んでいる。もし民主平和論を廃止することで、より控えめで現実的なアプローチが促進され、銃を突きつけて民主政体を押し付けようとする試(trying to impose democracy at the point of a gun)みを正当化しにくくなるのであれば、私はそれで良いと考えている。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿は、ヨーロッパ諸国に向けた内容であるが、日本にとっても参考になる内容である。特に、現在、トランプ関税で厳しい交渉を続けている赤澤亮正経済再生担当大臣に読んでもらいたい内容だ。

 第二次ドナルド・トランプ政権との交渉を行う際には、アメリカの利益と自国の利益に配慮しつつ、引きすぎてはいけない。あまりにも過剰な要求をしてくるのであれば、交渉材料を持って、アメリカに抵抗する。引きすぎた時点で、トランプ政権は与しやすい相手と見て、さらに過大な要求をしてくる。逆に、強く出つつ、妥協をすれば、骨のある相手ということで、一定の配慮をする。付け入られないようにすることが重要だ。赤澤大臣は短期間に何度も日米間を往復し、ワシントンでの交渉に臨んでいる。妥協は成立していないようだが、それだけタフな交渉をしているのだろうと考えられる。

 ヨーロッパ諸国が中心となっているNATOでは、トランプ政権の要求を受け入れて、国防負の対GDP比5%実現を発表した。これは何とも解せない話だ。ヨーロッパの仮想敵(既に仮想ではないだろうが)はロシアだ。ロシアを恐れるあまりにこのようなことになったと考えられるが、そもそも、GDPで見ても、国防費で見ても、ヨーロッパはロシアを大幅に上回っている。フランスもイギリスも核兵器を保有している。ロシアを過剰に恐れる必要はない。ロシアとの関係を少しでも改善すればそれで済む話だ。ヨーロッパ諸国は国防費の対GDP比5%などやってしまったら、社会が大きく混乱し、不安定となる。それこそ、ローマ帝国は過剰な軍事費負担のために衰亡したではないか。その轍を踏むことになる。
 私はここまで書いて、ヨーロッパが恐れているのはロシアではないのではないかと考えついた。ヨーロッパが恐れているのは、「西側以外の国々(the Rest)」の「復讐」ではないかと考えた。日本人から見れば、今更そんなことは起きるはずはないと考えるが、ヨーロッパが500年近くにわたり行った残虐な植民地支配の記憶が、宗主国であったヨーロッパ諸国を苦しめているのではないかと思う。「自分たち(ヨーロッパ)が衰退して、立場が逆転した場合に、彼らはきっと復讐するだろう、なぜなら、自分たちが同じ立場だったらそうするからだ」という思考になっているのだろう。世界構造の大変化、大転換に際し、ヨーロッパはそのような不安感と恐怖に取りつかれているのではないか。
 筆がだいぶ横に滑って脱線してしまった。話を戻す。私は下記論稿を読んで、論稿の要諦は「最善を望み、最悪に備える(Hope for the best; plan for the worst)」であると主張する。そして、これは、外交をはじめとする政治の要諦でもあると思う。是非記憶しておきたい言葉だ。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパはトランプ大統領にどう対処すべきか(How Europe Should Deal With Trump

大国間政治(great-power politics)を真剣に考えるべき時が来た。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年5月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/07/europe-trump-us-defense-nato-china-technology/

ヨーロッパは岐路に立たされている。環大西洋安全保障協力(trans-Atlantic security cooperation)の全盛期は過去のものとなり、ドナルド・トランプ政権はヨーロッパの大半を侮蔑、軽蔑、あるいは敵対視(contempt, disdain, or outright hostility)している。少なくとも、ヨーロッパの指導者たちはもはやアメリカの支援と保護を当然視することはできない。最善を望むことはできるが、最悪の事態に備えなければならない(They can hope for the best, but they must plan for the worst)。そしてそれは、世界政治において独自の道を歩むことを意味する。

公平を期すなら、この状況はドナルド・トランプ大統領の責任ばかりではない。仮にトランプ大統領が当選していなかったとしても、大西洋間の関係の根本的な見直しはとっくに終わっていた。地球儀を見れば、その理由を理解できる。アメリカはヨーロッパの大国ではないし、そこに永続的にアメリカ軍がコミットするのは歴史的にも地政学的にも異常なことだ。この種のコストのかかる関与は、明確な戦略的必要性(clear strategic necessity)によってのみ正当化される。アメリカが第一次世界大戦と第二次世界大戦に参戦したのも、冷戦時代にヨーロッパにかなりの兵力を駐留させたのも、この戦略的目的(strategic objective)が主な理由である。

これらの政策は以前であれば理に適っていた。しかし、冷戦が30年以上前に終結し、アメリカの一極時代(the unipolar moment)も数年前に終わった。中国は今やアメリカの主要な大国のライヴァルであり、潜在的な地域覇権国(a potential regional hegemon)である。アメリカはアジアにおける中国の覇権を阻止するために、限りある資源とエネルギーを集中させる必要がある。良いニュースは、現在、ヨーロッパを支配できるほど強力な国はないということだ。ロシアであってもヨーロッパを支配することは不可能だ。これが意味するところは、アメリカはもはやヨーロッパ防衛の負担を負う必要はなくなったということだ。ヨーロッパの人口はロシアの3倍以上、GDPはロシアの9倍であり、NATOのヨーロッパ加盟諸国は防衛費でもロシアを上回っている。もしヨーロッパの潜在的な力が適切に動員されれば、アンクルサム(訳者註:アメリカ)からの直接的な援助がなくても、ヨーロッパはロシアからの直接的な挑戦を抑止し、打ち負かすことができるだろう。

理想的には、アメリカはヨーロッパと協力して新たな分担を交渉し、この移行を可能な限り円滑かつ効率的に進めるべきだ。6月に開催されるNATO首脳会議は、特にアメリカが建設的な役割を果たすことを選択した場合、このプロセスを加速させる絶好の機会となるだろう。

残念ながら、トランプ政権はヨーロッパを貴重な経済パートナーや有用な戦略的同盟諸国とは考えていない。誇張しすぎているかもしれないが、トランプ政権はヨーロッパを、トランプとMAGA運動が拒絶するリベラルな価値観に傾倒する、堕落し、分裂し、衰退する国家の集合体(a set of decadent, divided, and declining states committed to liberal values that Trump and the MAGA movement reject)と見なしている。トランプは、主流派のヨーロッパの政治家たちよりも、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やハンガリーのヴィクトル・オルバン首相のような独裁者との方が安心感があり、政権はドイツのAfDやフランスのマリーヌ・ル・ペン率いる国民連合のような極右グループに共感的だ。トランプはブレグジットを支持し、ヨーロッパ連合(EU)は「アメリカを困らせる」ために設立されたと考えており、ヨーロッパ全体を代表するEU当局者と交渉するよりも、個々のヨーロッパ諸国と個別に交渉することを望んでいる。彼は、グリーンランド併合やカナダをアメリカ合衆国の一部とするという自身の夢を阻害する可能性のある規範や規則を拒否している。そして、トランプが始めた関税戦争にヨーロッパを巻き込むことで、トランプが望んでいるとされる国防費目標をヨーロッパが達成することを困難にしている。

ヨーロッパの観点からすれば、これらは全て十分に憂慮すべき事態だが、ヨーロッパの指導者たちはトランプ政権の根深い無能さも受け入れる必要がある。混沌とした貿易戦争はこの問題の最も明白な具体例であるが、政権による不適格な人事、恥ずべきシグナルゲート事件、科学界や大学への継続的な攻撃、ロシアやイランとの素人同然の交渉、そして国防長官室から生じる度重なる混乱も忘れてはいけない。もしヨーロッパの指導者たちが、アメリカは自分たちのやり方を理解していると思い込み、アメリカの先導に従うことに慣れきっているのであれば、今こそ考え直す時だ。

それでは、彼らはどうすべきだろうか?

もちろん、ヨーロッパの人々が私の助言を無視するのは自由だが、もし私が彼らの立場だったら、第一に、

現在の問題の責任をワシントンに明確に負わせることから始めるだろう。彼らはアメリカと争うつもりはなく、協力的な精神で新たな安全保障・経済協定について交渉することには喜んで応じるということを強調すべきだ。しかし、ワシントンが戦いを挑むことに固執するのであれば、ヨーロッパの利益を守るためならどんな犠牲を払っても構わないという覚悟があることを明確にすべきだ。

第二に、もしヨーロッパ諸国が非友好的な米政権と対峙しなければならないのであれば、声を合わせて、アメリカによる分断工作に抵抗する方がはるかに賢明である。ヨーロッパは、最近のドラギ総裁報告書で提言された経済改革の大半を実施し、反対派加盟諸国が必要な行動を阻止できる拒否権を廃止すべきである。もしこれがハンガリーのような反対派の国をEU離脱に導いたとしても、残りの加盟諸国はより有利な状況になる可能性は高い。

第三に、大国間政治(great-power politics)が復活し、ヨーロッパはより多くのハードパワーを必要としている。これは国防予算の増額という問題ではなく(一部のヨーロッパ諸国は増額を必要としているものの)、ユーロを効果的に使い、アメリカの支援に大きく依存しない持続可能な戦場能力を構築するという問題である。ジェームズ・マティス元国防長官が掲げた「フォー・サーティーズ(Four Thirties)」(30個大隊、30個航空隊、30隻の艦艇を30日以内に配備可能)という目標は良い出発点だが、アメリカの支援に大きく依存しない信頼性の高いヨーロッパ軍を構築するには、それ以上のものが求められる。バリー・ポーゼンが最近『フォーリン・アフェアーズ』誌で警告したように、ヨーロッパは戦後ウクライナにおける費用のかかる平和維持活動に巻き込まれることを避け、必要とされる場所であればどこでも介入できる強力な諸兵科連合能力(developing a robust combined arms capability that can intervene wherever it is needed.)の構築に注力すべきだ。

第四に、アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」がますます信頼できなくなりつつあることから、ヨーロッパは地域の安全保障における核兵器の役割について、真剣かつ持続的な議論を行う時期に来ている。もちろん、この問いにどう答えるかはヨーロッパの人々次第だが、これ以上無視することはできない。私の考えでは、信頼できるヨーロッパの抑止力には、アメリカやロシアの核兵器保有量に匹敵するようなものは必要ない。ヨーロッパの政府高官や戦略専門家がこうした問題について議論し始めていることは朗報である。

第五に、ヨーロッパ諸国は、アメリカが敵対的あるいは信頼できない態度を取り続けるのであれば、自分たちには選択肢があり、中国を含む他国と協力することをワシントンに思い知らせる必要がある。EUは中国との貿易について独自の懸念を持っているが、トランプ大統領がアメリカ国内の関税引き上げを主張するのであれば、北京との経済関係を維持し、場合によっては拡大することが必要かもしれない。このような理由から、EU首脳が7月に北京を訪問することは、ワシントンに自分たちを当然視しないよう念を押すためであるとしても、理にかなっている。

ヨーロッパ諸国はこれまで、たとえ多大なコストがかかったとしても、先端技術分野の重要分野においてアメリカの先導に進んで従ってきた。例えば、オランダはジョー・バイデン政権の要請に応じ、オランダ企業ASMLによる中国への先端リソグラフィー装置の販売を禁止した。また、EU諸国の中には、代替技術よりも安価で優れているにもかかわらず、ファウェイの5G技術を禁止する国もいくつかある。しかし、トランプ政権が他の問題でもヨーロッパに対して強硬な姿勢を崩さないのであれば、ヨーロッパは今後、この種の要求にはるかに慎重に対処べきだ。

最後に、長期的には、ヨーロッパ諸国はロシアとの関係を緩和する方法を模索すべきだ。特にプーティン大統領が依然としてロシアを支配している場合、これは容易なことではないが、現在の深刻な相互疑念、対立、そして混乱の状態は、ヨーロッパにとって利益にはならない。ヨーロッパ諸国のハードパワーが高まり、安全保障が向上するにつれて、各国は双方の正当な安全保障上の懸念に対処するための信頼醸成措置を受け入れる姿勢を維持すべきだ。ヘルシンキ・プロセスやヨーロッパ安全保障協力機構などの過去の取り組みは、ライヴァル国間でも緊張緩和(デタント、détente)が可能であることを私たちに思い出させてくれるものであり、将来のヨーロッパの指導者たちはこの可能性に心を開いておくべきだ。

これは野心的なアジェンダであり、大きな政治的障害に直面するだろう。ヨーロッパの戦略的自立性を高めるための過去の取り組みは常に失敗に終わったが、今日のヨーロッパはこれまでとは全く異なる状況に直面している。アメリカの大学や法律事務所が学んだように、トランプ政権を宥めようとすれば、要求がさらに強まるだけだ。一方、政権に抵抗すれば、他国も追随し、時にはホワイトハウスが自らの立場を再考することになる。今こそそうであることを願うしかない。いずれにせよ、ヨーロッパが自立を維持し、脆弱性を最小限に抑えたいのであれば、アメリカがもはや信頼できるパートナーではなくなった世界に備える以外に選択肢はない。最善を望み、最悪に備えるのだ(Hope for the best; plan for the worst)。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt
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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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第2次ドナルド・トランプ政権の電撃的な100日間の施策によって、同盟諸国には不信感が生まれている。トランプはこれまでアメリカと政治的、経済的に良好な関係を保ってきた同盟諸国を敵視し、切り捨てようとしているのではないかとなっている。「アメリカはヨーロッパにとっての敵対国(enemy)になる」という極端な主張も出ている。こうした極端な主張が出てくるのも理解ができる。トランプは、同盟国だろうと何だろうと、これまでとは全く扱いをすると決めてそのように発言し、実行しているのだ。拙著『トランプの電撃作戦』の帯に、私は「アメリカと日本は友達(TOMODACHI)ではない」と書いた。国際関係において、「友達」のような言葉は通用しない(個人間の関係ではもちろん成立する)。それはかえって気持ち悪いことだ。ヨーロッパはアメリカの同盟国、友好国として、アメリカに依存してきた、アメリカに守ってもらい(アメリカ軍の駐留)、養ってもらってきた(対米貿易黒字)ということがあるが、そのようなことはもう許されないということだ。

 トランプ政権はヨーロッパ諸国の右派勢力との親和性が高い。彼らに共通しているのは、ウクライナ戦争に関して、即時停戦を主張していることだ。現在のヨーロッパ諸国、そして、NATOはウクライナ支援を行い、対ロシア制裁を行っているが、それとは大きく異なっている。これについて、トランプが非民主的だという批判もあるが、ヨーロッパ諸国では既に、ウクライナ疲れ、ゼレンスキー疲れという言葉もあり、ウクライナ支援も限界が来ている。そして、何よりも戦争を早期に停止することは重要なことだ、そのためならば、ヨーロッパにとっての「敵」となることもいとわないだろう。

 ヨーロッパからすれば、そして、日本にとってもそうなのだが、トランプ出現は、世界の大きな構造の変化に対応するための良い機会なのであり、この機会を利用して、これまでの主流の考えを大きく転換することができる。アメリカは絶対に倒れない黄金の樹だということはないということ、アメリカの一極的な支配は終わること、世界の構造は大きく変化すること、その中で、アメリカの衰退に殉じて、心中する必要などないことをヨーロッパの人々、そして私たち日本人は認識すべきだ。

(貼り付けはじめ)

そうなのだ、アメリカは今やヨーロッパの敵である(Yes, America Is Europe’s Enemy Now

-トランプ政権は、大西洋同盟の見直しをはるかに超えている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/21/us-europe-trump-vance-speech-nato-russia/

数週間前、私は第2次ドナルド・トランプ政権が、ワシントンが長らく世界の主要民主政治体制諸国から受けてきた寛容と善意(tolerance and good will)を無駄にしているのではないかと警告した。これらの国々は、アメリカを世界情勢において概ね肯定的な勢力(a mostly positive force in world affairs)と見なす代わりに、「アメリカが積極的に悪意を持っているのではないかと懸念せざるを得なくなるかもしれない(have to worry that the United States is actively malevolent)」と警告した。このコラムは、JD・ヴァンス副大統領がミュンヘン安全保障会議で対決的な演説を行う前、ドナルド・トランプ大統領がロシアとの戦争を始めたのはウクライナのせいだと非難する前、そしてウクライナ問題に関する交渉が始まる前に、アメリカ政府当局がロシアのほぼ全ての要求を先制的に提示したように見える前に執筆された。ヨーロッパの主流の専門家たちの反応は、『フィナンシャル・タイムズ』紙のギデオン・ラックマンによって、次のように簡潔にまとめられている。「トランプ政権のヨーロッパに対する政治的野心は、今のところ、アメリカも敵対国であることを意味している([T]he Trump administration’s political ambitions for Europe mean that, for now, America is also an adversary)」。

この見解は正しいだろうか? 懐疑論者は、1956年のスエズ問題、1960年代の核戦略とヴェトナム問題、1980年代のユーロミサイル問題、そして1999年のコソヴォ戦争など、これまで何度も大西洋横断パートナーシップ(the transatlantic partnership)に深刻な亀裂が生じてきたことを思い出すかもしれない。2003年のイラク戦争は、ワシントンとヨーロッパの多くの国々との間のもう一つの最低水準点(another low-water mark)だった。アメリカは、同盟諸国の利益が悪影響を受けた場合でも、何度も躊躇せずに一方的な行動を取ってきた。例えば、リチャード・ニクソンが1971年に金本位制(the gold standard)から離脱したときや、ジョー・バイデンが保護主義的なインフレ削減法(the protectionist Inflation Reduction Act)に署名し、アメリカがヨーロッパ企業に中国へのハイテク輸出の一部停止を強制したときなどだ。しかし、アメリカが故意に彼らに危害を加えようとしていると信じているヨーロッパ人やカナダ人はほとんどいなかった。彼らは、ワシントンが彼らの安全保障に真摯に尽力しており、自国の安全保障と繁栄が彼らの安全保障と繁栄に結びついていることを理解していると信じていた。彼らの考えは正しかった。そして、アメリカは必要な時に彼らの支持を得ることがはるかに容易だった。

ほとんどのヨーロッパの指導者たちにとって、そして先週ミュンヘンに出席した指導者たちにとって、今日の状況はまったく異なっている。年1949以来初めて、彼らはアメリカ大統領がNATOに無関心でヨーロッパの指導者を見下しているだけでなく、ほとんどのヨーロッパ諸国を積極的に敵視していると考える正当な理由ができたのだ。トランプ大統領は、ヨーロッパ諸国をアメリカの最も重要なパートナーと考える代わりに、ウラジーミル・プーティン大統領のロシアをより長期的な、有望な存在と考えているように見える。トランプとプーティンの親密さについては何年も前から憶測が飛び交っていたが、今やその親密さがアメリカの政策を導いているように見える。

あなたが何を考えているかは分かっている。トランプは、あなたのようなリアリストたちが提案してきたことをやっているだけではないのか? あなたは、ウクライナには失った領土を取り戻すもっともらしい道筋はなく、戦争を長引かせることは無意味な苦しみを長引かせるだけだと言ってきたのではないか? また、NATOの無制限な拡張を前提としたヨーロッパの安全保障秩序は危険な夢物語だと主張していたのではなかったか? ロシアと中国を接近させるのではなく、両者の間にくさび(a wedge)を打ち込み、モスクワが問題を引き起こす誘因を減らすようなヨーロッパの秩序を構築することが、戦略的に理にかなっているのではないだろうか? 実際、ロシアとの関係が改善されれば、長期的にはヨーロッパはより安全になるのではないだろうか? そして、快適な大西洋のコンセンサスを崩壊させることで、ヨーロッパ諸国が行動を共にし、真の防衛力を再構築するようになれば、アメリカはヨーロッパ諸国を守り続ける必要がなくなり、中国により多くの力を注ぐことができるようになる。このように考えると、トランプはヨーロッパの敵ではない。彼は、独りよがりの大陸に厳しい愛情を注ぎ、優れたリアリストたちの論理に従っているだけなのだ。

それが本当ならいいのだが。実際、トランプ、ヴァンス、ピート・ヘグゼス国防長官をはじめとする政権高官たちは、長年の懸案である負担分担の争い、同盟内でのより賢明な役割分担の必要性、そしてウクライナ戦争への対応やロシアとの関係に関する長年の懸案の再検討といった問題をはるかに超えている。彼らの狙いは、長年の同盟諸国との関係を根本的に変革し、世界のルールブックを書き換え、そして可能であれば、ヨーロッパをMAGAに沿って再構築することだ。このアジェンダは、既存のヨーロッパ秩序に明らかに敵対するものだ。

第一に、トランプ大統領が、他の問題で譲歩を迫るため、あるいは単にアメリカとの貿易で黒字を計上しているという理由だけで、緊密な同盟諸国に対し高額な関税を課すと繰り返し脅迫していることは、友情の行為とはとても言えない。もちろん、深刻な貿易紛争は過去にも発生しており、歴代の米大統領もこれらの問題で同盟諸国に対し強硬な姿勢を見せてきた。しかし、彼らは気まぐれにそうしたのではなく、また、明らかに疑わしい「国家安全保障」の論理(transparently dubious “national security” rationales)を正当化するために用いたのでもない。また、同盟諸国に意図的に経済的損害を与えることは、共同防衛への貢献を容易にするのではなく、むしろ困難にすることを彼らは認識している。歴代政権は交渉で合意した協定に固執してきたが、これはトランプ大統領にとって全く異質な概念である。

第二に、トランプ大統領は、大国は欲しいものを手に入れることができるし、そうすべきだと考えていることを明確にしているだけでなく、同盟諸国の一部の所有物を欲しがっているという事実も隠していない。トランプは、ロシアがウクライナの20%を掌握しても困らないのも不思議ではない。なぜなら、彼はグリーンランド全土を欲しがり、パナマ運河地帯を再占領する可能性があり、カナダは独立を放棄して51番目の州になるべきだと考えており、ガザ地区を占領して住民を追放し、ホテルを建設すると主張しているからだ。こうした考えの中には、全く空想的なものに思えるかもしれないが、そこから浮かび上がる世界観は、いかなる外国の指導者にとっても無視できないものだ。

第三に、そして最も重要なのは、トランプ、イーロン・マスク、ヴァンス、そしてMAGAティームの残りのメンバーが、ヨーロッパの非自由主義勢力を公然と支持していることだ。彼らは事実上、軍事力を用いないとはいえ、ヨーロッパ全土に広範な体制転換をもたらそうとしている。その兆候は明白だ。ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相はマール・ア・ラーゴで歓迎されている。ヴァンスはミュンヘン滞在中、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の共同議長アリス・ヴァイデルと会談を持ちながら、ドイツのオラフ・ショルツ首相とは会談しなかった。そして、ヨーロッパにとっての最大の課題は「内部からの脅威(the threat from within)」であると宣言したことは、大陸の政治秩序に対する露骨な攻撃だった。(ヴァンスが、トランプが2020年の選挙で敗北したことを認めようとせず、1月6日の暴動分子を非難しようともしなかったことを考えると、ヨーロッパ人の反民主的な行動を批判するのは皮肉を通り越していた。だが、話が逸れた。)負けじと、マスクもヨーロッパの様々な指導者に対して虚偽の憎悪に満ちた非難を浴びせ、トミー・ロビンソンのような極右犯罪者たちを擁護し、ワイデルにインタヴューして、彼女の政党への支持を表明した。

特定の問題に関する若干の相違は存在するが、MAGA運動とヨーロッパの極右政党の大半は、概してほぼあらゆる形態の移民に反対し、EUに対して懐疑的、あるいは敵対的であり、エリート層、メディア、高等教育を敵視し、伝統的な宗教的価値観やジェンダー規範の復活を望み、市民権は共通の市民的価値観や出身地ではなく、共通の民族性や祖先によって定義されるべきだと考えている。ファシストの前任者たちと同様に、彼らは民主政治体制の規範や制度を利用して民主的な統治を覆し、行政権を強化することに抵抗がなく、そのことに長けている。どこかで聞いたことがあるようだがどうだろうか?

したがって、アメリカが今やヨーロッパの敵対国であるというラックマンの評価は、部分的にしか正しくない。なぜなら、トランプと側近たちは、彼らと基本的な世界観を共有するヨーロッパの極右民族主義運動を支持しているからだ。彼らは、民主的な統治、社会福祉、開放性、法の支配、政治的・社会的・宗教的寛容、そして国境を越えた協力のモデルとしてのヨーロッパというヴィジョンに敵対している。彼らはアメリカとヨーロッパが同様の価値観を持つことを望んでいるとさえ言えるかもしれない。問題は、彼らが念頭に置いている価値観が真の民主政治体制と相容れないということだ。

トランプと側近たちは、ヨーロッパを敵視してもリスクは少ないと考えている。なぜなら、彼らは、ヨーロッパは衰退しつつあり、まとまる能力がないと考えているからだ。極右を支援することで、ヨーロッパの結束を強化する努力を阻害することは、ワシントンにとって分断統治(divide-and-rule)を容易にすることにもなる。一方、他国を公然と脅迫することは、国家の団結と抵抗への強い意欲を促す傾向があり(現在カナダで見られるように)、トランプとマスクがアメリカで引き起こしている混乱は、ヨーロッパ諸国が自国で同様の実験を行うことを警戒させるかもしれない。

ヨーロッパ経済統合への最初の動きが1950年代に始まったことも忘れてはならない。当時、ヨーロッパの指導者たちは、アメリカがそう遠くない将来にヨーロッパ大陸から軍隊を撤退させ、ヨーロッパの安全保障の責任をこれらの国々に再び委ねるだろうと考えていた。したがって、石炭や鉄鋼といった主要産業の統合は、これらの国々がアメリカの直接的な支援なしにソ連に対抗できるほどの経済的・政治的統合を築くための第一歩だった。アメリカは最終的にヨーロッパ大陸に軍隊を駐留させることを決定し、ヨーロッパ経済共同体(後にEU)はより公然と経済的・政治的目標を掲げるようになった。しかし、初期の歴史は、単独で行動しなければならないという見通しが、かつてヨーロッパの協力拡大の強力な原動力であったことを思い出させてくれる。

最後に、もしアメリカが今や敵対国であるならば、ヨーロッパの指導者たちは、アメリカを喜ばせるために何をすべきか自問するのをやめ、自らを守るために何をすべきかを自問すべきである。もし私が彼らの立場だったら、まず中国からより多くの貿易代表団を招待し、国際金融決済システムであるSWIFTに代わるシステムの開発に着手するだろう。ヨーロッパの大学は中国の研究機関との共同研究を強化すべきだ。トランプとマスクがアメリカの学術機関に打撃を与え続けるなら、この取り組みはさらに魅力的になるだろう。ヨーロッパ自身の防衛産業基盤を再構築することで、ヨーロッパのアメリカ製兵器への依存を終わらせるだろう。EU外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カラスを次回のBRICSサミットに派遣し、加盟申請を検討するだろう。その他、様々な取り組みを進めていく。

これらの措置は全て、ヨーロッパにとってコストがかかり、アメリカにとっても有害となるため、私はどれも実際に実現して欲しくない。しかし、ヨーロッパに選択肢はほとんど残されていないかもしれない。私は長年、大西洋横断関係は最盛期を過ぎており、新たな役割分担が必要だと考えてきたが、目標は露骨な敵意(open hostility)を助長するのではなく、大西洋横断の高いレベルの友好関係(a high level of transatlantic amity)を維持することを目指すべきだ。もしトランプ大統領の外交革命によって、4億5000万人のヨーロッパ人が、アメリカの最も忠実な同盟諸国から、ますますアメリカを妨害する方法を探す、激しく憤慨した敵対者へと変貌するならば、私たちは自分たち自身、より正確には現大統領に責任を負わされることになる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Bluesky @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプの主張は突き詰めれば、「アメリカ・ファースト(America First)」だ。このブログでも何度も書いているが、これは「アメリカが一番!」という単純な話ではない。「アメリカ国内の抱える深刻な諸問題を解決することを最優先しよう」ということであり、「アメリカ国内(問題解決)優先主義」と訳すべき言葉だ。これに関連して、「アイソレイショニズム(Isolationism)」という言葉もあるが、これも「孤立主義」と簡単に訳すのは間違っている。アメリカが完全に孤立することはできない。こちらもやはり「国内優先主義」と訳すべきだ。だから、「アメリカ・ファースト」と「アイソレイショニズム」はほぼ同じ意味ということになる。

 「アメリカ国内優先主義」ということになれば、アメリカが現在、世界中に派遣しているアメリカ軍をアメリカ国内に戻す、世界経営から手を引くということになる。これに困ってしまうのはヨーロッパである。ヨーロッパは第一次世界大戦、第二次世界大戦と20世紀の前半で二度の破壊を極めた戦争を経験した。戦後ヨーロッパは統合と、アメリカによる安全保障への関与という方向に進んだ。ヨーロッパ諸国はお互いが戦わないように、調停者・仲裁役・抑え役・お目付け役としてアメリカを必要とした。そして、対外的には、具体的には、ソ連、そしてロシアに対しては、アメリカ軍の存在を前提とした軍事力の軽度の整備(軽い負担で済んできた)を行ってきた。それが、アメリカが手を引くということになったらどうなるか。ヨーロッパ域内での調和は乱れ、ロシアに対しては足並みが乱れ、各国の判断で、より軍事力を強化する方向に進む国と、ロシアとの友好関係を重視する国に分かれるだろう。

 ヨーロッパは戦後の制度設計をアメリカの存在を前提にして築いてきた。そして、協調が進み、繫栄することができた。しかし、その良い面とは裏腹に、アメリカの力が衰えた場合、アメリカが手を引く場合の備えができていなかった。そして、現在は、アメリカの国力の衰退が現実のものとなっている。アメリカが手を引けばヨーロッパは混乱状態になる。私たちがヨーロッパから学ぶべきことは、アメリカを関与させない、対等な地域統合組織を作ること、そして、それをアジアで実現することだ。時代と状況の変化はここまで来ている。いつまでも、世界一強のアメリカ、超大国のアメリカということをのんきに信じ込んでいる訳にはいかない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの復帰はヨーロッパを変貌させることになるだろう(Trump’s Return Would Transform Europe

-ワシントンが掌握しなければ、ヨーロッパ大陸は無政府的で非自由主義的な過去に逆戻りする可能性がある。

ハル・ブランズ筆

2024年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/26/europe-security-eu-nato-alliances-liberal-democracy-nationalism-trump-us-election/

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どっちが本当のヨーロッパだろうか? 過去数十年間、ほぼ平和で民主的で統一された大陸? それとも、それ以前に何世紀にもわたって存在していた、断片化され、不安定で、紛争に満ちたヨーロッパ(fragmented, volatile, and conflict-ridden Europe)? 11月の米大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すれば、こうした疑問の答えはすぐに分かるかもしれない。

トランプは大統領としての最初の任期中に、アメリカをNATOから離脱させることに執心した。彼の元側近の中には、もし二期目に当選したら本当にやってくれるかもしれないと信じている人もいる。そして、このように語っているのはトランプ大統領だけではない。アメリカ・ファーストの有力信奉者の一人であるJD・ヴァンス連邦上院議員は、「ヨーロッパが自立する時が来た([The] time has come for Europe to stand on its own feet)」と主張している。アメリカ・ファーストの精神に明確に賛同していない人々の間でも、特にアジアにおいて、競合する優先事項への影響力はますます強くなっている。ポストアメリカ(アメリカ後)のヨーロッパについてより考慮されるようになっている。それがどんな場所になるかを聞いてみる価値はある。

楽観主義者たちは、たとえ7月にワシントンで開催されるNATO加盟75周年記念首脳会議で、NATO首脳たちが祝賀するアメリカの安全保障の傘を失ったとしても、ヨーロッパが繁栄し続けることを期待している。この見方では、アメリカは自国に引き上げることになるかもしれないが、過去80年間で豊かになり、安定し、確実に民主政治体制を築いてきたヨーロッパは、多極化した世界において建設的で独立した勢力として行動する用意ができている。

しかし、おそらくポスト・アメリカのヨーロッパは、直面する脅威に対抗するのに苦労し、最終的には過去のより暗く、より無秩序で、より非自由主義的なパターンに逆戻りする可能性すらある。「今日の私たちのヨーロッパは死に向かっているようだ。死に至る可能性がある」とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月下旬に警告した。アメリカ・ファーストの世界では、そうなるかもしれない。

第二次世界大戦後、ヨーロッパは劇的に変化したため、多くの人々、特にアメリカ人は、この大陸がかつてどれほど絶望的に見えたかを忘れている。古いヨーロッパは、歴史上最も偉大な侵略者や最も野心的な暴君を生み出した。帝国の野心と国内の対立が紛争を引き起こし、世界中の国々を巻き込んだ。飛行家で、著名な孤立主義者でもあったチャールズ・リンドバーグは1941年、ヨーロッパは「永遠の戦争(eternal wars)」と終わりのないトラブルの土地であり、アメリカは、そのような呪われた大陸に近づかないほうが良いと述べた。

根本的な問題は、限られたスペースにあまりにも多くの強力なプレイヤーたちが詰め込まれている地理にあった。この環境で生き残る唯一の方法は、他者を犠牲にして拡大することだった。この力関係により、ヨーロッパは壊滅的な紛争のサイクルに陥ることになった。 1870年以降、この地域の中心部に、産業と軍事の巨大企業としての統一ドイツが出現したことにより、このビールはさらに有毒なものになった。ヨーロッパ大陸の政治は、ヨーロッパ大陸の地政学と同じくらい不安定だった。フランス革命以来、ヨーロッパは、自由主義と歴史上最もグロテスクな形態の暴政(tyranny)の間で激しく揺れ動いた。

1940年代後半、第二次世界大戦によって、こうした争いのサイクルが壊れたと考える理由はなかった。古い対立が残ったままとなった。フランスは、ドイツが再び蜂起して近隣諸国を破壊するのではないかと恐れていた。ソ連とその支配下のヨーロッパ共産主義者という形で、新たな急進主義が脅威に晒される一方、ポルトガルとスペインでは右翼独裁政権が依然として力を持っていた。多くの国で民主政治体制が危機に瀕していた。経済的貧困が対立と分裂(rivalry and fragmentation)を加速させた。

新しいヨーロッパの誕生は、決して必然ではなかった。長い間大陸間の争いを避けようとしていた同じ国(アメリカ)による、前例のない介入(unprecedented intervention)が必要だった。この介入は冷戦によって引き起こされ、遠く離れた超大国にとってさえヨーロッパにおける均衡(European equilibrium)の更なる崩壊が耐え難いものになる恐れがあった。1940年代後半から1950年代前半にかけて、しばしば混乱した状況の中、ヨーロッパは徐々に統合されていった。そして、それは革新的な効果をもたらす一連の連動した取り組みを特徴としていた。

最も重要なのは、NATOを通じたアメリカの安全保障への取り組みと、それを裏付ける軍隊の派遣であった。アメリカ軍による保護は、西ヨーロッパをモスクワから、そして西ヨーロッパ自身の自己破壊的な本能から守ることで、暴力の破滅のループを断ち切った。アメリカがこの地域を保護することで、宿敵同士はもはや互いを恐れる必要がなくなった。1948年に、あるイギリス政府当局者は、NATOが「ドイツとフランスの間の長年にわたるトラブルは消滅するだろう」と述べた。西ヨーロッパ諸国はついに、他国の安全を否定することなしに、安全を達成することができるようになった。その結果、この地域を悩ませていた政治的競争や軍拡競争が回避され、NATO加盟諸国が共通の脅威に対して武器を確保できるようになった。

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マーシャル・プランのポスターには、ヨーロッパ各国の国旗をシャッターに、アメリカ国旗を舵に見立てた風車が描かれている

こうしてアメリカの政策は、前例のない経済的・政治的協力という第二の変化を可能にした。マーシャル・プランを通じて、アメリカは復興支援の条件としてヨーロッパ域内の協力を積極的に推し進め、後にヨーロッパ経済共同体(European Economic CommunityEEC)やヨーロッパ連合(European UnionEU)となる国境を越えた構造を生み出した。アメリカ軍の存在は、かつての敵同士が安全保障を損なうことなく資源を出し合うことを可能にし、この協力を促進した。1949年、西ドイツのコンラート・アデナウアー首相は「アメリカ人は最高のヨーロッパ人だ」と述べた。言い換えれば、ワシントンの存在によって、ヨーロッパの同盟諸国は過去の対立関係を葬り去ることができたのである。

第三の変化は政治的なものであった。侵略が独裁政治に根ざしているとすれば、ヨーロッパの地政学を変革するには、その政治を変革する必要があった。その変革は、連合諸国の占領下にあった西ドイツの強制的な民主化(forced democratization)から始まった。この変革には、脆弱な民主政治体制国家を活性化させ安定させるためにマーシャル・プランによる援助が用いられた。この変革もまた、アメリカの軍事的プレゼンスによって可能になった。アメリカの軍事的プレゼンスは、ヨーロッパの民主政治体制を消し去ろうとするソ連の覇権(hegemony)を食い止めると同時に、急進的な左派や右派を疎外する寛大な福祉プログラムに投資することを可能にした。

これは、ヨーロッパの問題に対するアメリカ独自の解決策だった。アメリカだけが、ヨーロッパを敵から守るのに十分な力を持ち、しかもヨーロッパを征服して永久に従属させるという現実的な脅威をもたらさないほど遠い存在だった。アメリカだけが、荒廃した地域の再建を支援し、繁栄する自由世界経済をもたらす資源を持っていた。民主的自由を守りながら、そしてより強化しながら、ヨーロッパの対立を鎮めることができるのはアメリカだけであった。実際、西ヨーロッパにおけるアメリカのプロジェクトは、冷戦が終結すると、単純に東へと拡大された。

アメリカの介入は、歴史家マーク・マゾワーがヨーロッパを「暗黒の大陸(dark continent)」と呼んだように、拡大する自由主義秩序の中心にある歴史後の楽園(post-historical paradise)へと変えた。それは世界を変えるほどの偉業であったが、今ではそれを危険に晒すことを決意したかのようなアメリカ人もいる。

アメリカのヨーロッパへの関与は、決して永遠に続くものではなかった。マーシャル・プランを監督したポール・ホフマンは、「ヨーロッパを自立させ、私たちの背中から引き離す(get Europe on its feet and off our backs)」ことが彼の目標だったと口癖のように語っていた。1950年代、ドワイト・D・アイゼンハワー米大統領は、ワシントンが 「腰を落ち着けていくらかリラックスできる(sit back and relax somewhat)」ように、ヨーロッパがいつ一歩を踏み出せるかと考えていた。アメリカは何度も、駐留部隊の削減、あるいは撤廃を検討した。

これは驚くべきことではない。ヨーロッパにおけるアメリカの役割は、並外れた利益をもたらしたが、同時に並外れたコストも課した。アメリカは、核戦争の危険を冒してでも、何千マイルも離れた国々を守ることを誓った。対外援助を提供し、広大な自国市場への非対称的なアクセスを可能にすることで、アメリカはヨーロッパ大陸を再建し、外国がアメリカ自身よりも速く成長するのを助けた。

フランスのシャルル・ド・ゴール大統領など、アメリカが提供した保護に対して積極的に憤慨しているように見える同盟諸国の指導者を容認した。そしてワシントンは、最も尊敬されてきた外交の伝統の1つである邪魔な同盟への敵意を捨てて、長らく問題でしかなかったヨーロッパ大陸の管理者となった。

その結果、両義的な感情が冷戦の必要性によって抑えられ、また批評家たちがアメリカ抜きで実行可能なヨーロッパ安全保障の概念を提示できなかったからである。しかし今日、古くからの苛立ちが根強く、新たな挑戦がワシントンの関心を別の方向へと引っ張っているため、アメリカのヨーロッパに対する懐疑論はかつてないほど強まっている。その象徴がトランプである。

トランプは長い間、ワシントンがNATOで負担している重荷を嘆いてきた。彼は、ただ乗りしているヨーロッパの同盟諸国に対して、襲撃してくるロシアに「やりたいことを何でもやらせる(whatever the hell they want)」と脅してきた。トランプは明らかにEUを嫌っており、EUを大陸統一の集大成としてではなく、熾烈な経済的競争相手として見ている。非自由主義的なポピュリストとして、彼はヨーロッパの自由民主主義の運命に無関心である。私たちの間には海があるのに、なぜアメリカ人がヨーロッパの面倒を見なければならないのか? トランプがアメリカ・ファーストの外交政策を謳うとき、それはアメリカが第二次世界大戦以来担ってきた異常な義務を最終的に放棄する外交政策を意味している。

はっきり言って、トランプ大統領が就任後に何をしでかすかは誰にも分からない。NATOからの全面的な脱退は、共和党に残る国際主義者たち(Republican internationalists)を激怒させるだろうし、政治的代償に見合わないかもしれない。しかし、トランプが大統領の座を争い、彼の信奉者たちが共和党内で勢力を伸ばしていること、そして中国がアジアにおけるアメリカの利益に対する脅威をますます強めていることから、アメリカがいつか本当にヨーロッパから離脱するかもしれないという可能性を真剣に受け止め、次に何が起こるかを考える時期に来ている。

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2023年5月16日、アイスランドのレイキャビクで開催されたヨーロッパ評議会首脳会議で演説するウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領

楽観的なシナリオでは、ヨーロッパは民主政治体制を維持し、結束し、敵に対抗するために団結する。アメリカが撤退すれば、EUは現在の戦争中もウクライナを支援し、和平後もキエフに意味のある安全保障を与え、ロシアや、これまでアメリカが防いできたその他の脅威を撃退するために、自らを世界的な軍事的主体へと変貌させることができる。こうしてヨーロッパは、自由主義的な世界秩序の強力で独立した柱として台頭することになる。ワシントンは他の優先事項に集中することができ、民主政体世界においてより効率的な分業が構築される。

ヨーロッパには自活するだけの資源がある。1940年代後半のような脆弱で没落した場所ではなく、民主政治体制と協力が規範となった、豊かで潜在的な力を持つ共同体なのだ。EUGDPはロシアの約10倍である。2022年以降、EU諸国は共同してアメリカを上回る軍事援助やその他の援助をウクライナに与えており、冷戦後に萎縮した防衛産業への再投資もようやく進みつつある。さらに、ヨーロッパの指導者たちは、ポーランドがそうであるように、自国を本格的な軍事大国へと変貌させたり、パリで長年の優先事項となっているヨーロッパの戦略的自立を再び推し進めることを提唱したりして、すでにポスト・アメリカの未来に備えている。「より団結し、より主権があり、より民主的な」大陸を構築する時期は過ぎたとヨーロッパのポスト・アメリカの展望について最も強気であると思われる指導者マクロンが4月に宣言した。

楽観的なシナリオの問題点は、簡単に見出せる。マクロンは、アメリカのリーダーシップに代わるものとしてヨーロッパ統合を喧伝しているが、ヨーロッパが統一され、まとまってきたのは、まさにワシントンが安心感を与えてきたからだということを忘れているようだ。例えば、1990年代初頭のバルカン戦争の始まりのように、アメリカが一歩引いてヨーロッパ勢力の前進を許した過去の例では、その結果、戦略的な結束よりもむしろ混乱が生じることが多かった。EUは2022年2月まで、ロシアの侵略をどう扱うかについて深く分裂していた。この教訓は、利害や戦略文化が異なる数十カ国の間で集団行動を調整するのは、誰かが優しく頭を叩いて覇権的なリーダーシップを発揮しない限り、非常に難しいということだ。

独立した、地政学的に強力なヨーロッパが素晴らしく聞こえるとしても、誰がそれを主導すべきかについては誰も同意できていない。フランスは常に自発的な活動に積極的だが、パリに自国の安全を扱う傾向や能力があるとは信じていない東ヨーロッパ諸国を不快にさせている。ベルリンには大陸をリードする経済的素養があるが、その政治指導者階級は、そうすればドイツの力に対する恐怖が再び高まるだけだと長年懸念してきた。おそらく彼らは正しい。冷戦後のドイツ統一が近隣諸国にとって容認できたのは、アメリカとNATOに抱きしめられたベルリンがヨーロッパの優位性を追求することは許されないと彼らが保証されていたからだ。アメリカがヨーロッパの一員ではないからこそ、ヨーロッパ人たちがアメリカのリーダーシップを容認してきたという結論から逃れるのは難しい。アメリカはヨーロッパの一員ではないため、かつて大陸を引き裂いた緊張を再び高めることなく権力を行使できるのだ。

このことは、最後の問題と関連している。自国の安全保障問題を処理できるヨーロッパは、現在よりもはるかに重武装になるだろう。国防支出は多くの国で2倍、3倍に増加せざるを得ないだろう。ヨーロッパ各国は、ミサイル、攻撃機、高度な戦力投射能力など、世界で最も殺傷力の高い兵器に多額の投資を行うだろう。アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」が失われることで、ロシアを抑止したいと願う最前線の国々、とりわけポーランドは、独自の核兵器を求める可能性さえある。

仮にヨーロッパが本格的な武装を行ったとしよう。アメリカの安全保障という毛布がなければ、ヨーロッパ諸国が外からの脅威に立ち向かうために必要な能力を開発するという行為そのものが、域内での軍事的不均衡が生み出した恐怖を再び呼び起こす可能性がある。別の言い方をすれば、アメリカの力に守られたヨーロッパでは、ドイツの戦車は共通の安全保障に貢献するものである。ポスト・アメリカのヨーロッパでは、ドイツの戦車はより脅威的に映るかもしれない。

二つ目のシナリオは、ポスト・アメリカのヨーロッパが弱体化し、分裂するというものである。このようなヨーロッパは、無政府状態(anarchy)に戻るというよりは、無気力状態(lethargy)が続くということになるだろう。EUはウクライナを解放し、自国の東部前線国家を守るための軍事力を生み出すことができないだろう。中国がもたらす経済的・地政学的脅威に対処するのに苦労するだろう。実際、ヨーロッパは攻撃的なロシア、略奪的な中国、そしてトランプ大統領の下では敵対的なアメリカに挟まれることになるかもしれない。ヨーロッパはもはや地政学的対立の震源地ではなくなるかもしれない。しかし、無秩序な世界では影響力と安全保障を失うことになる。

これこそが、マクロンや他のヨーロッパ各国の首脳を悩ませるシナリオだ。既に進行している、または検討中のヨーロッパの防衛構想の多くは、これを回避するためのものである。しかし、短期的には、ヨーロッパが弱体化し分裂することはほぼ確実だろう。

なぜなら、アメリカの撤退はNATOの根幹を引き裂くことになるからだ。NATOは、その先進的な能力の大部分を有し、その指揮統制体制を支配している国である最も強力で最も戦いを経験した加盟国アメリカを失うことになる。実際、アメリカは NATO の中で、ヨーロッパの東部戦線やその先の戦線に断固として介入できる戦略的範囲と兵站能力を備えている唯一の国だ。このブロックに残るのは、主にアメリカ軍と協力して戦うように設計されており、アメリカ軍なしでは効果的に活動する能力に欠けているヨーロッパ各国の軍隊の寄せ集めとなるだろう。これらは、脆弱で断片化した防衛産業基盤によって支えられることになる。ヨーロッパのNATO加盟諸国は、170を超える主要兵器システムを重複して寄せ集めて配備している。この基盤は、迅速かつ協調的な増強を支援することができない。

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ポーランドのノヴァ・デバで多国籍軍の訓練に参加するポーランド兵(2023年5月6日)

アメリカの撤退後、軍事的に弱体化したヨーロッパは、ここ数十年のどの時期よりも高い動員ピッチに達したロシアと対峙することになるが、ヨーロッパがすぐに弱体化を是正する選択肢はほとんどない。

アメリカの力なしでロシアと均衡を図るには、ヨーロッパの軍事費の膨大で財政的に負担の大きい増額が必要となるだろうが、ロシアがウクライナを制圧し、その人口と経済をクレムリンの軍事機構に統合することに成功すれば、更にその必要性は高まるだろう。巨額の赤字を永久に続けるという米国政府の「法外な特権(exorbitant privilege)」がなければ、ヨーロッパ諸国は不人気な巨額の増税を課すか、社会福祉プログラムを削減しなければならないだろう。ポーランドやバルト三国などの一部の国は、独立を維持するためにその代償を払うかもしれない。また、軍事的な準備は社会契約を破る価値はなく、攻撃的なロシアに従う方が賢明だと判断する人もいるかもしれない。

あるいは、ヨーロッパ諸国はどのような脅威に対抗すべきかについて意見が対立するだけかもしれない。冷戦時代でさえ、ソ連は西ドイツを、たとえばポルトガルを脅かすよりもはるかに厳しく脅していた。EUが成長するに従って、脅威に対する認識の相違という問題はより深刻になっている。東部と北部の国々は、プーティン率いるロシアを当然恐れており、互いに防衛のために力を合わせるかもしれない。しかし、西や南に位置する国々は、テロや大量移民など非伝統的な脅威のほうを心配しているかもしれない。ワシントンは長い間、NATO内のこのような紛争において誠実な仲介役を果たし、あるいは単に、大西洋を越えた多様な共同体が一度に複数のことを行えるような余力を提供してきた。このようなリーダーシップがなければ、ヨーロッパは分裂し、低迷しかねない。

それは酷い結果だが、最も醜い結果ではない。三つ目のシナリオでは、ヨーロッパの未来は過去によく似ているかもしれない。

このヨーロッパでは、弱さは一時的なものであり、EUの安全保障のような集団行動(collective-action)の問題を克服できないのは、その始まりに過ぎない。ワシントンの安定化への影響力が後退するにつれ、長い間抑圧されてきた国家間の対立が、最初はゆっくりとかもしれないが、再燃し始めるからである。ヨーロッパ大陸における経済的・政治的主導権をめぐって争いが勃発し、ヨーロッパ・プロジェクトは分裂する。国内のポピュリストや外国の干渉に煽られ、離反主義的な行動(revanchist behavior)が復活する。穏健な覇権国が存在しないため、古くからの領土問題や地政学的な恨みが再び表面化する。自助努力の環境の中で、ヨーロッパ諸国は自国の武装を強め始め、核兵器だけが提供できる安全保障を求める国も出てくる。非自由主義的で、しばしば外国人嫌いのナショナリズムが暴走し、民主政治体制は後退する。数年、あるいは数十年かかるかもしれないが、ポスト・アメリカのヨーロッパは、急進主義と対立の温床(hothouse of radicalism and rivalry)となる。

これは、1990年代初頭に一部の著名な専門家たちが予想していたことである。バルカン半島での民族紛争、ドイツ再統一をめぐる緊張、ソ連圏崩壊後の東ヨーロッパにおける不安定な空白地帯(vacuum of instability)の全てが、このような未来を予期していたのである。冷戦終結後、アメリカはヨーロッパの影響力を縮小させるどころか拡大させた。ボスニアとコソヴォに介入して民族紛争を消し去ると同時に、EUが東方拡大(eastward expansion)について逡巡し遅滞する中で、東ヨーロッパをNATOの傘下に収めたからだ。しかし、だからといってヨーロッパの悪魔が二度と戻ってこない訳ではない。

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2019年11月7日、ブダペストでハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談するトルコのレジェップ・エルドアン大統領(左)

今日、バルカン半島では激しいナショナリズムの炎が揺らめいている。トルコやハンガリーでは、修正主義的な不満(revisionist grievances)と独裁的な本能(autocratic instincts)が指導者たちを動かしている。2009年のヨーロッパ債務危機とそれに続く数年にわたる苦難と緊縮財政(austerity)は、ドイツの影響力(この場合は経済的影響力)に対する恨みが決して深く埋まらないことを示した。ウラジーミル・プーティンがヨーロッパ諸国に協力するあらゆる理由を与えている今日でさえ、ウクライナとポーランド、あるいはフランスとドイツの間に緊張が走ることがある。

懸念すべき政治的傾向もある。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は何年もかけてハンガリーの民主主義を解体し、「非自由主義国家(illiberal state)」の台頭を喧伝してきた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も自国で同様のプロジェクトを進めている。フランスの国民連合(National Rally)のような政党は世論調査で上昇し、何世紀にもわたる歴史的不満が覚醒する準備を整え、ゼロサムの地政学的思考に陥りやすい硬直したナショナリズムを売りにしている。極右の「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAfD)」は、より過激になりながらも、政治的な競争者であり続けている。こうした運動の勝利は、ヨーロッパ諸国を互いに対立させようと躍起になり、政治戦争を繰り広げるロシアによって助長されるかもしれない。

分裂したヨーロッパが古代の悪魔(ancient demons)に支配されるというのは悪夢のシナリオであり、悪夢は通常、実現しない。しかし、理解すべき重要なことは、ポスト・アメリカのヨーロッパは、私たちが知っているヨーロッパとは根本的に異なるということである。アメリカのパワーとヨーロッパに対する傘によってもたらされた地政学的ショックアブソーバーはなくなる。地位と安全保障をめぐる不安定な不確実性が戻ってくる。各国はもはや、以前の時代を特徴づけていたような行動(軍備増強や激しい対立)に頼らなくても、自分たちの生存を確保できるという自信を持つことはないだろう。今日のヨーロッパは、アメリカが作り上げた歴史的にユニークで前例のないパワーと影響力の構成の産物である。75年もの間、旧態依然とした悪習を抑制してきた安全策が撤回されれば、旧態依然とした悪習が再び姿を現すことはないと、私たちは本当に言い切れるのだろうか?

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたことは、決して元に戻せないと考えてはいけない。

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたが、決して以前の状態に戻らないと考えてはいけない。結局のところ、ヨーロッパは1945年以前、例えばナポレオンが敗北した後の数十年間、比較的平和な時期を過ごしたが、勢力均衡(balance of power)が変化すると平和は崩壊した。見識を持ったように見える大陸に悲劇が起こることはあり得ないと考えてはならない。アメリカが関与する以前のヨーロッパの歴史は、世界で最も経済的に先進的で、最も近代的な大陸が、自らを引き裂くことを繰り返してきた歴史であった。実際、ヨーロッパの過去から学ぶことがあるとすれば、それは、現在想像できるよりも早く、そして険しい転落が訪れる可能性があるということだ。

1920年代、自由主義の勢力が台頭しているように見えた。しかし、イギリスの作家ジェイムズ・ブライスは、「民主政治体制が正常かつ自然な政治形態として普遍的に受け入れられた(universal acceptance of democracy as the normal and natural form of government)」と称賛した。新しく創設された国際連盟(League of Nations)は、危機管理のための斬新なメカニズムを提供していた。それからわずか10年後、大陸が再び世界大戦に突入する勢いを作り出したのはファシズム勢力だった。ヨーロッパの歴史は、物事がいかに早く完全に崩壊するかを物語っている。

アメリカ第一主義者(America Firsters)たちは、アメリカはコストを負担することなく、安定したヨーロッパの恩恵を全て受けることができると考えているかもしれない。現実には、彼らの政策は、ヨーロッパにはもっと厄介な歴史的規範があることを思い起こさせる危険性がある。それはヨーロッパにとってだけでなく、災難となる。ヨーロッパが弱体化し、分裂すれば、民主政体世界がロシア、中国、イランからの挑戦に対処することが難しくなる。暴力的で競争過剰な(hypercompetitive)ヨーロッパは、世界的な規模で影響を及ぼす可能性がある。

ここ数十年、ヨーロッパが繁栄する自由主義秩序の一部であることで利益を得てきたとすれば、その自由主義秩序は、平和的で徐々に拡大するEUを中核とすることで利益を得てきた。ヨーロッパが再び暗黒と悪意に染まれば、再び世界に紛争を輸出することになるかもしれない。アメリカが大西洋を越えて後退する日、それはヨーロッパの未来以上のものを危険に晒すことになるだろう。

※ハル・ブランズ」ジョンズ・ホプキンズ大学国際高等大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別国際問題担当教授兼アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 現在、中東情勢が緊迫している。ハマスの政治部門指導者イスマイル・ハニヤがイランの首都テヘランでイスラエルに殺害された(731日)。ハニヤは、イランのマスード・ペゼシュキアン新大統領の就任式に出席するため、テヘランに滞在していた。就任式は30日に実施された。イランにしてみれば、自国の大統領就任式という晴れの舞台に招いた賓客を殺害されたということで面子が丸つぶれである。イラン政府内のかなり上のところまで、イスラエルの息のかかったスパイ、情報提供者がいることが推察される。イランは「報復」を宣言し、イスラエルは防衛態勢強化を進めている。イスラエルはガザ地区でのハマスとの紛争、レバノンのヒズボラとの紛争を進めていたが、これら2つの組織を支援するイランとの全面戦争(all-out war)へと進むことになれば、中東地域の微妙なバランスが崩れ、戦争が拡大し、最悪の場合には、核兵器を使った戦争にまで進んでしまうということまで考えられる。

 イエメンのフーシ派による攻撃で、紅海の船舶運航が阻害されている中で、イランとイスラエルが全面戦争になれば、ペルシア湾の入り口ホルムズ海峡をイランがコントロールしているために、湾岸諸国からの石油輸出にまで影響が出ると、世界的な原油価格高騰を招き、世界規模の経済不況の引き金を引くことになりかねない。

 イスラエルの戦争拡大路線はベンヤミン・ネタニヤフ首相と右派の内閣の意向であろう。現在、アメリカには権力の空白が生じている。現職のジョー・バイデン大統領は再選を断念し、退任が決まっている。退任が決まっている大統領についていく人はいない。皆、自分の次の仕事探しをするようになる。かと言って、大統領選挙候補者になっているカマラ・ハリス副大統領には何の権限もない。軍隊を動かすこともできないし、外交政策で何か動ける訳ではない。バイデン政権はイスラエルを支援しながらも停戦を求めていた。そのために、ネタニヤフ政権に圧力をかけようとしていた。しかし、アメリカのこうした間隙を突いて、ネタニヤフは戦争を拡大しようとしている。アメリカの力と威光は減退している。

 それは、アメリカ軍の能力の面にも出ている。アメリカは、「2つの大きな戦争を同時に戦える能力をアメリカ軍に持たせる」という戦略を採用してきた。その原点は第二次世界大戦だ。第二次世界大戦中、アメリカはヨーロッパとアジア太平洋という2つの「戦域(theater)」で戦争を遂行し勝利を収めた。2つの戦争を戦う力こそがアメリカの基本である。
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 しかし、21世紀に入り、国力の減退もあり、アメリカの軍事力は落ちている。アメリカは中東、ヨーロッパ、中国の3つの「正面」を想定しているが、そのうちの2つで本格的な全面戦争が始まれば、それらを支えることは不可能であるという調査報告書が出ている。これを逆用すれば、これら3つの正面で戦争が起きれば、アメリカは負けるということになる。アメリカとしては恥も外聞も捨てて、同盟諸国の力を借りねばならないが、そうなれば、同盟諸国の意向も無視できなくなり、フリーハンドで動くことはできない。アメリカが完全に自由に言うことを聞かせられるのは、日本だけだ。日本は「自ら進んで」アメリカの言いなりになろうとしてくれる「理想的な属国(完全なる奴隷)」である。私たちはまず、このような心性からの脱却から始めなければならない。そうでなければ、日本を待っている運命は「第二のウクライナ(アメリカのための戦争を、日本人が、日本の国土で、日本がお金を出した平気でやらせて、自分たちに意思決定権はない)」ということになる。

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アメリカは同時発生複数戦争に備える必要があると監視委員会が発表(The U.S. Must Prepare to Fight Simultaneous Wars, Oversight Panel Says

-新しい調査では、米国防総省が複数の戦域で同時に戦争を行う準備ができていないことが判明した。

ジャック・ディッチ筆

2024年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/29/us-national-defense-strategy-commission-review-report-biden-war-planning/

写真

ヴァージニア州アーリントンのロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港から離陸する飛行機から見える国防総省(2022年11月29日)

米連邦議会が命じた、アメリカの国防戦略の正式な見直しによると、米国防総省は世界の複数の地域での戦争を戦うための資源の調達と計画に戻るべきだという。この勧告は、アメリカ軍がインド太平洋地域に限定的に集中するよう求めた、ジョー・バイデン米大統領も同調した、ドナルド・トランプ時代の戦略と真っ向から矛盾している。

今回の検討は、バイデンの2022年国防の「前提、目的、防衛投資、部隊態勢と構造、作戦概念、軍事リスク(the assumptions, objectives, defense investments, force posture and structure, operational concepts and military risks)」について分析し、勧告を行うことを任務とする連邦議会の委任を受けた超党派の委員会である「国家防衛戦略委員会(Commission on the National Defense Strategy)」によって実施された。この委員会のトップには、連邦下院情報委員会の幹部委員を務めた元連邦下院議員ジェーン・ハーマンが就任している。この委員会は、ドナルド・トランプ前米国大統領の2018年国防戦略(2018 National Defense Strategy)を検討した。

このような報告書は通常、アメリカの新たな国防戦略に付随するもので、連邦議会の国防タカ派が国防総省の支出増を促すために利用することが多い。月曜日に発表された最新の報告書は、中国とロシアの脅威を防ぐために、インフレ率を上回るアメリカの国防支出の増加を求めている。

バイデン政権の防衛戦略は、2022年2月にロシアがウクライナに本格的に侵攻することを想定して書かれたもので、イスラエルとハマスのガザ地区での戦争に完全に先行していたため、委員会は、この2年間で深刻化したヨーロッパと中東での脅威の増大、そしてロシアと中国のパートナーシップの拡大に対応するには、この戦略は「不十分(insufficient)」だと指摘した。

冷戦後のほとんどの期間、アメリカは2つの戦争を同時に戦い、勝利する準備をアメリカ軍に求め、2つの戦争戦略(two-war strategy in place)を採っていた。2001年9月11日のテロ攻撃以降、アメリカ軍はイラクとアフガニスタンという2つの戦争を同時に戦い、その後、20年の大半を費やした。しかし、これらの戦争は、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、第二次世界大戦のような過去の通常戦争の規模には及ばないものだった。

しかし、財政緊縮策(fiscal austerity)、特に国家債務を削減する目的で、バラク・オバマ政権時代に連邦議会が制定した予算上限規制(budget caps)は、過去3人の米大統領の下での中国への戦略的転換と相まって、2度の戦争を経た軍の維持はもはや国防総省の戦略の柱ではなくなった。

2つの戦争はもはや必要ではなくなり、失業率の低さにより軍人募集がはるかに困難になっているため、アメリカ軍全体の兵力は過去80年間に比べて減少している。

国家防衛戦略委員会の委員たちは「アメリカの統合された軍隊は今日、即応性(readiness)を維持する限界点(breaking point)にある。準備を再構築するためのリソースを追加せずに負担を増やすと機能が壊れてしまう」と書いている。

「国家防衛戦略委員会は、アメリカ軍が戦闘を抑止し、勝利することができると確信するために必要な実務能力(capabilities)と潜在能力(capacity)の両方を欠いていることを発見した」と付け加え、米国防総省がハイテク兵器(high-tech weapons)と弾薬(munitions)の配備についてより良い仕事をする必要があることを示唆した、中国のような非常に有能な敵と戦うのに必要な速度で弾薬を補充する。

国家防衛戦略委員会はまた、国防総省とホワイトハウスに対し、地図の全領域にわたる中国とロシアの連携に対処するためのアメリカ軍の作戦指示を見直すよう求めている。中東におけるアメリカ軍の最高司令部である米中央軍は、4月にイランによる大規模な無人機とミサイル攻撃を阻止するために防空資産を調整することで効果的な連携を示したと報告書は述べている。

報告書は、複数の異なる地域、つまり軍事用語で「戦域(theaters)」で戦争を行うという要求は、古い2つの戦争の枠組みとは異なるものであり、そのアプローチは、アメリカに、イランや北朝鮮など、世界でも一流の軍事力を持たない可能性のある、北東アジアと中東のならず者国家を倒す準備をするよう求めていると述べている。現在、報告書は、アメリカ軍はアメリカ本土を防衛し、西太平洋での中国と、ヨーロッパでのロシアを阻止する取り組みを主導し、イランの悪意のある活動から防衛できる必要があると述べた。

報告書に参加した委員の1人であり、戦略予算評価センターの会長兼最高経営責任者(CEO)トーマス・マンケンは個人的に更に踏み込んで、国防総省が3つの戦域で戦う準備を整えるアメリカ国防衛戦略を求めている。しかし、他の専門家たちは、アメリカは戦略に焦点を当て、軍隊や武器を含む資源が不足する可能性がある時代に慣れる必要があると考えている。

トランプ政権の2018年国防戦略策定に貢献したエルブリッジ・コルビーは、今月初めの外交政策イヴェントで、「私たちには2つの戦争を戦える軍隊はない。ヨーロッパよりもアジアの方が重要だと考えている。これは、バイデン政権自身のものを含む、2つの連続した国防戦略の事実である」と述べた。

国家防衛戦略委員会は、特に複数の戦争が世界中で同時に勃発した場合、アメリカの資源は無制限ではないことを認めた。こうした現実を踏まえ、この委員会は、NATOの国防計画立案者たちは、ヨーロッパの同盟諸国が保有する必要のある軍事能力の支援において「アメリカへの過度の依存を減らす(to reduce overreliance on the United States)」ために、その軍事能力の目標を設定すべきだと述べた。しかし、たとえアメリカが中国だけに焦点を当てたとしても、中国の世界的利益に対処するために、アメリカ軍は依然として世界中に拠点を置く必要があると報告書は述べている。

※ジャック・ディッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障担当特派員。ツイッターアカウント:@JackDetsch

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争が起きて以降、ヨーロッパ各国で徴兵復活の動き、女性にも徴兵を拡大する動きが出てきている。アメリカでも徴兵用の名簿に女性を載せるかどうかで共和党、民主党の間で議論が起きていることはこのブログでもご紹介した。先日、イスラエルでは、超正統派の神学校の生徒の徴兵免除が最高裁によって取り消された。徴兵の枠が拡大することになる(そこまで多い数ではないだろうが)。アジア各国では徴兵を行っている国も多い。韓国や台湾では若者たちが徴兵され、軍務に就いている。韓流スターでも徴兵で軍務に就いている様子やファンたちが集まって見送っている様子が日本でも報道されることがある。韓国や台湾の友人がいる人は、その時の話を聞いたり、「日本は徴兵がないからいいね」と言われたりしたことがある人も多いと思う。

 先進国では、いやいや徴兵された兵士よりも、志願してきた兵士の方が、意欲が高く、プロとして、長期間の訓練を行うことができ、結果として、質の良い兵士に仕立て上げることができて、結果としてその方が良いということになっていた。しかし、先進国を中心に真贋兵だけでは必要な数を充足することは出来ないので、徴兵という話になっているようだ。ドローンやロボットを使えば兵士の代替になるのではないかという話もあるが、実際には、ウクライナ戦争でも、イスラエル・ハマス紛争でも、生身の兵士が最前線で戦って、血を流している。「AIやロボットの発達で、これからなくなる職業」などという特集を雑誌やインターネットニューズサイトで見かけることがあるが、兵士という職業はまだまだなくならない。

下記論稿でユニークな視点は、「世界中で増大する政治的分極化(political polarization)を含む社会の分断(societal divisions)に対抗する手段」として徴兵を捉えていることだ。徴兵という共通の、そして厳しい体験をすることで、人々の間の分断を小さくしようという試みもあるようだ。これは、国民の均一化(homogenization)を図るということにつながる。社会統合のための徴兵という共通体験というのは、国外の脅威に備えるというよりも、国内の脅威、すなわち、国家分裂や内戦を回避するということである。そう考えると、グローバリズムによって、「同じ国家に住む国民」というナショナリズムに基づいたアイデンティティが薄まってきたが、それに対する揺り戻しとして、ナショナリズムに基づいたアイデンティティの復活のための動きとしての徴兵復活の議論が起きているという捉え方もできる。先進諸国は「内憂(国家分裂や内戦)外患(国家間戦争の可能性)」の二正面に備えなければならないという状態になっているようだ。

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軍隊の徴兵への回帰(The Return of the Military Draft

-ウクライナとガザ地区での戦争は、テクノロジーは兵士の代わりになれないということを示している。その反対はない。

ラファエル・S・コーエン筆

2024年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/10/military-draft-conscription-soldiers-technology-nato-europe-russia-ukraine/?tpcc=recirc_trending062921

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カリフォルニア州サンディエゴ近郊のキャンプ・ペンドルトンで16マイルの行軍訓練を完了するアメリカ海兵隊リマ中隊の新兵たち(2021年4月22日)
ここ数十年もの間、ますます稀になっていたのだが、軍隊への徴兵は再び議論の対象となっている。

長年にわたり義務(mandatory conscription)徴兵を実施してきたイスラエルは現在、ハマスやヒズボラとの戦争が続いていることを受け、予備役兵役(reservists)の期間を延長するか否かを議論しており、間もなく徴兵の対象を現在免除されている超正統派の人々(ultra-Orthodox population)にも拡大する可能性がある。イスラエル最高裁判所は先月、超正統派の徴兵免除を無効とする判決を下した。ウクライナは5月、ロシアの侵略との戦いを続ける中で兵力を補充するために徴兵枠を拡大した。ロシアも同様に、ウクライナでの死傷者の増加に対応して兵役義務を拡大している。バルト三国では、ロシアのウクライナ攻撃を受けて、ラトビアが2023年に徴兵を再導入した。リトアニアは、2014年のロシアによるウクライナ侵攻に対抗して、2015年にそれを再導入した。エストニアは決してそれを廃止しなかった。そして世界の裏側、台湾は最近、ますます脅威となる中国の脅威に対応して徴兵期間を延長した。

直接の最前線にいない国でも、徴兵の再制定や既存の徴兵の拡大について話し合っている。 今年1月、イギリス参謀総長パトリック・サンダースは、イギリスが大規模な戦争に陥った場合には、「市民軍(citizen army)」が必要になると発言し、政治的な波紋を呼んだ。この発言は徴兵の再導入を求めるものだと多くの非地人に解釈されている。デンマークは3月、女性を含む徴兵を拡大し、服務期間を延長する計画を発表した。そして5月、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「ドイツには何らかの徴兵が必要であると確信している」と述べた。この問題は、若い女性に選抜兵役(selective service)への登録を義務付けるかどうかをめぐる最近の議会の議論で浮き彫りになっているように、米国でもある程度の注目を集めている。

アメリカなどで徴兵が国民的議論に再び浮上していることは、数十年来の傾向の逆転を示している。アメリカ軍は昨年、志願兵だけで構成される軍(all-volunteer force)の発足から半世紀を祝った。イギリスでは、最後の徴兵は更に遡って、1963年までで、それ以降は動員解除(demobilized)となった。世界中の多くの国では、形式上は何らかの形で徴兵が定められてきたが、それを強制しないことを選択した。遠征戦争(expeditionary wars)が多かった限定的な戦争の時代、ほとんどの西側民主政治体制国家のコンセンサスは、戦闘は少数のプロに任せるのが最善であるということであったようだ。

徴兵の復活は、主に機械の台頭が中心となってきた戦争の未来についての支配的な概念とは全く対照的である。このヴィジョンでは、人工知能の進歩と陸、海、空での無人システム(unmanned systems)の普及により、軍隊はより少ない技術的知識を持つ軍人の数でやっていけるようになるだろう。この予測は現実になったが、それはテクノロジーに適用される場合に限られ、人員配置のニーズには適用されない。ウクライナとガザ地区での戦争が証明しているように、あらゆるタイプの無人機は現代の戦場の必需品であり、フーシ派のような第二級のテロ組織でさえ、これらの兵器の独自ヴァージョンを展開している。しかし、戦争はより無人システムに移行したかもしれないが、この傾向は兵士の需要を減少させていない。

この一見逆説的な事実には、少なくとも2つの説明が存在する。まず、あらゆる技術的変化にもかかわらず、現代の戦争は依然として人的資源を大量に必要としていることが明らかになった。新しいテクノロジーは兵士の必要性を排除するのではなく、サイバー、宇宙、その他の専門知識に対する、以前は存在しなかった新たな需要を生み出した。そして、ウクライナとガザ地区での戦闘でより明らかになったように、歩兵や戦闘機パイロットなど、より伝統的な軍事専門職は、現在は無人機や自律システムによって強化されているとしても、依然として多くの需要がある。最後に、ロシア・ウクライナ戦争でこれまでに数十万人が死傷したことが示すように、戦争は時が経つにつれて血塗られたものになり、その隊列を埋めるための新兵に対する厳しい需要が生じている。

志願者だけを基本にして大規模な人員を動員することは困難だ。冷戦後のヨーロッパ社会では兵役がますます異質な概念となりつつあり、ヨーロッパ各国の軍隊は長年にわたり人材不足に悩まされてきた。アメリカは歴史的に良好な状態にあるが、陸軍、空軍、海軍は2023会計年度の新兵員数が約4万1000人も不足している。一方、新たな奨励金とより控えめな目標の組み合わせにより、一部の軍部門は2024年度の必要な新兵募集を達成できるだろう。アメリカ軍は、パイロットやサイバーオペレーターなど、市場性の高いスキルを備えた職業を採用し、維持することが難しいことは認識している。これらは全て、重大な死傷者を出した大規模な戦争がなかった時代の文脈での話だ。紛争が継続すれば、軍役の魅力はさらに薄れる可能性が高い。

もちろん、徴兵に頼ることには重大な運用上の欠点が存在する。多くの場合、本人の意志に反して人々に奉仕を強制しているため、徴兵では士気(morale)の問題が発生する可能性がある。その結果、命が危険に晒されるような場合に、規律(discipline)の問題が発生する可能性がある。そして、たとえそれがこうした問題につながらないとしても、多数の市民兵士に依存するということは、徴兵された軍隊が職業軍(professional forces)とは異なる戦い方をすることを意味する。徴兵期間の長さに応じて、徴兵される者は、専門の者よりも制服を着ている期間が短いため、訓練の内容が少ない、もしくは異なる場合がある。徴兵された軍隊は専門の軍隊よりも規模が大きいことが多いため、兵士1人あたりに同じ量のリソースを投資できない場合がある。それはひいては、徴兵された軍隊の訓練、装備、配備の能力に影響を与える。そして、社会の一部の人たちに自分たちの意志に反して戦うことを強制することの政治的コストはより高くなるため、それらを使用するかどうか、そしてどこで使用するかについての決定も異なるものになる可能性がある。

純粋な作戦上のニーズを超えて、徴兵は別の理由で復活しつつある。それは、世界中で増大する政治的分極化(political polarization)を含む社会の分断(societal divisions)に対抗する手段であるということである。この傾向には、ポピュリズム運動の台頭からソーシャルメディアの成長、そして人間の本質そのものに至るまで、理由はたくさんある。原因が何であれ、複数の専門家は、極端な分極化が放置されると、内戦(civil war)を含む社会の亀裂(societal rifts)につながる可能性があると懸念している。

少数だが増加している観察者たちにとって、徴兵を含む国家奉仕が解決策を提供しているように見える。彼らの見解では、このようなサーヴィスは障壁を取り除き、共通の経験を提供し、最終的にはより一貫した社会を構築する。具体的な特典は国によって異なる。例えば、イスラエルは、超正統派の徴兵免除を解除することで、この閉鎖的だが成長を続ける社会層(insular but growing segment of society)をより広範な国民に統合するのに役立つことを期待している。対照的に、デンマークの女性を含む徴兵の拡大は、デンマークの首相によって「男女間の完全な平等(full equality between the sexes)」に向けた動きとして組み立てられた。しかし、その核心では、これらの議論は同じテーマのヴァリエーションであり、兵役によって競争の場が平準化(playing field)され、社会が更に統合されるというものだ。

徴兵が団結を促進するというこの主張が実際に真実であるかどうかについては、未解決の疑問が残っている。アメリカでは、ヴェトナム戦争中の徴兵が大規模な抗議活動を煽り、徴兵の不均一な実施方法が社会の亀裂を緩和するどころか悪化させた。ヴェトナムはアメリカの歴史の中で一度限りの例(one-off example)ではない。南北戦争中の1863年にニューヨークで起きた徴兵暴動(the 1863 New York draft riots)は、今でもアメリカ史上で最も死者数が多く、最も破壊的なものの1つとなっている。また、徴兵で部門分けが行われる傾向はアメリカに限定されない。2023年10月7日のずっと前から、表向きは統合的な徴兵にもかかわらず、イスラエルは政治的、宗教的分裂に伴う抗議活動に混乱していた。ウクライナでも、戦争が長引くにつれて徴兵忌避(draft dodging)の重大な事件が報告されている。

徴兵の復活が社会にとって前向きな展開であるかどうかに関係なく、徴兵が復活しつつあるという事実は、戦争の将来についての考え方について重要な教訓を私たちに教えてくれるはずだ。戦争を研究する私たちは、戦争を行う人々よりも戦争の技術に、不変のものよりも新しいものに焦点を当てることがあまりにも多い。そして実際、クロスボウ、マスケット銃、ドローンなど、戦争の戦い方を根底から覆すテクノロジーは存在してきた。

しかし、徴兵など一部の議論は古くから続けられてきた。軍隊は常に、小規模な専門化された軍隊とより大きな大衆的な軍隊の間で揺れ動いてきた。そして、私たちは主に機械によって行われる無血戦争(bloodless wars)にますます進むという考えに夢中になっているかもしれないが、戦場の現実はその逆であることが証明されている。おそらく、専門化(professionalization)の一時期を経て、最近の徴兵の上昇を捉える最良の方法は、戦争においては、物事が変われば変わるほど、変わらないということだろう。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所クン軍プロジェクト戦略・ドクトリンプログラム部長。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも詳しく書いたが、西側諸国では、エネルギー高から波及しての、物価高が続き、ウクライナ支援も合わせて、「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」が国民の間に生じている。「早く戦争を終わらせて欲しい」「取り敢えず停戦を」という声は大きい。

ウクライナ戦争勃発後、アメリカとヨーロッパ諸国(西側諸国)は、ロシアに対して経済制裁を科した。ロシアからの格安の天然ガスを輸入していたが、輸入を停止することになった。アメリカはそれに代わって、天然ガスをヨーロッパ向けに輸出することになったが、ヨーロッパの足元を見て、高い値段で売りつけている。これはヨーロッパ諸国の人々からの恨みを買っている。以下の記事では、西側諸国の制裁がロシアに大きな打撃を与えており、ヨーロッパ諸国の経済には影響を与えていないということだが、かなり厳しい主張ということになるだろう。
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 10年ほど前から、ヨーロッパ諸国で勢力を伸長させているポピュリスト勢力(アメリカのドナルド・トランプ大統領誕生も同じ流れ)は、プーティン寄りの姿勢を取り、ウクライナ戦争の停戦を求めている。これは、アメリカで言えば、連邦議会の民主党左派・進歩主義派議員たちと、共和党のトランプ派議員たちの考えと同じだ。彼らもまた、アメリカの国内世論の一部を確実に代表している。
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ポピュリスト勢力は人種差別的と批判される。そういう側面もあるが、彼らは既存の政治に対する、人々の不満を吸い上げ、代表している。エスタブリッシュメントたちが主導する政治が戦争をもたらしていると多くの人々が考えている。トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」は「孤立主義(Isolationism)」を基礎としているが、これは「国内問題解決優先主義」と訳すべきだ。そして、「アメリカ・ファースト」は「アメリカが何でもナンバーワン」ということではなく、「アメリカのことを、まず、第一に考えよう」ということだ。ここのところを間違ってはいけない。ポピュリストたちに共通しているのは、「外国のことに首を突っ込んで、税金を浪費するのではなく、自国の抱える諸問題を解決していこう」ということであり、そうした側面から見れば、ポピュリストたちが違って見えてくる。

(貼り付けはじめ)

ヨーロッパのポピュリストたちが制裁反対の戦いでクレムリンに加わる(European Populists Join the Kremlin in Anti-Sanctions Fight

-彼らは「制裁はロシアよりもヨーロッパを傷つける」と誤った主張を展開している。

アガーテ・デマライス筆

2024年3月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/11/russia-sanctions-oil-gas-populists-europe-elections/?tpcc=recirc_latest062921

ヨーロッパのポピュリスト政党の多くがロシアに友好的な傾向を持つことを考えれば、ヨーロッパのポピュリストたちがしばしばクレムリンの主張をオウム返しにしたがるのも当然と言えるだろう。最近では、極右から極左まで多くのヨーロッパの政党が要求しているように、欧米諸国の対モスクワ制裁の停止を求めることもその1つだ。

対モスクワ制裁解除要求の背後にある通常のシナリオは基本的なものだ。フランスの「国民連合(National RallyRassemblement National)」、ドイツの「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAlternative für Deutschland)」、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相はいずれも、制裁は裏目に出ており、ヨーロッパ経済には打撃を与えているが、モスクワには打撃を与えていないと主張している。EU全域のポピュリスト政党が6月のヨーロッパ議会選挙に向けて準備を進めており、このような論調はますます目立つようになるだろう。だからこそ、このような誤った主張を論破する絶好の機会なのだ。

ロシアに好意的な政治家たちが最もよく口にするのは、制裁がヨーロッパの企業や消費者を破滅に追いやるというものだ。これらの主張の中で最も広まっているのは、制裁がヨーロッパにおけるエネルギー価格の高騰(およびインフレ)を引き起こしているというものだが、これは最も簡単に反証できる。2022年初頭に世界の炭化水素価格が高騰したのは、ロシアによるウクライナ攻撃とヨーロッパに対するガス恐喝がきっかけだった。欧米諸国がロシアのエネルギー輸出に制裁を課し始めたのは、その年の11月であり、石油・ガス価格はすでに下落していた。

もう1つの主張は、制裁がロシア市場へのアクセスを失ったEUの輸出志向企業にペナルティを与えているというものだ。しかし、現実はもっと穏やかなものだ。ロシアはEU企業にとって決して主要な市場ではなく、2021年にロシア企業がEUの輸出品のわずか4%を購入したにすぎない。EUの対ロ輸出の約半分が制裁の対象となることを考えると、EUの輸出のわずか2%が影響を受けることになる。

フランスの研究機関である国際経済予測研究センター(Centre d'Etudes Prospectives et d'Informations Internationales)の国家レヴェルのデータは、この評価を裏付けている。それによると、対ロ制裁がフランス経済に与える影響はほとんど無視できるもので、フランスの輸出のわずか0.8%、約40億ユーロ(44億ドル)しか影響を受けていない。視点を変えれば、これはフランスのGDPの0.1%ほどに相当する。この調査はフランスのみを対象としているが、おそらく他のEU経済圏でもこの調査結果は劇的に変わることはないだろう。ドイツ企業と並んで、フランス企業はヨーロッパでロシアと最も深い関係にある企業である。このことは、他の多くのヨーロッパ諸国の企業は、より少ない影響しか受けていないことを示唆している。

制裁がヨーロッパ経済を圧迫しているというクレムリン寄りの主張の別のヴァージョンは、EU企業が制裁のためにロシアへの投資を断念せざるを得なかったという考えに基づいている。例えば『フィナンシャル・タイムズ』紙は、ウクライナへの本格的な侵攻が始まってから2023年8月までの間に、ヨーロッパ企業はロシア事業から約1000億ユーロ(約1094億ドル)の損失を計上したと計算している。

この数字は正確かもしれないが、制裁と大いに関係があるという考えは精査に耐えない。現段階では、制裁によってヨーロッパ企業がロシアでビジネスを行うことは、防衛など一部の特定分野を除けば妨げられていない。それどころか、ヨーロッパ企業のロシアでの損失には他に2つの原因がある。1つは、風評リスクを恐れ、ロシアの税金を払いたくないためにモスクワの戦争に加担したくないという理由で、多くの企業が撤退を選択したことだ。

損失の第二の原因は資産差し押さえの急増で、クレムリンは多くのヨーロッパ企業に、場合によってはわずか1ルーブルの価値しかない資産の売却を迫っている。言い換えれば、仮に制裁がない世界であったとしても、かつてロシア市場に賭けていたヨーロッパ企業は現在、大規模な損失に直面している。もちろん、クレムリンは、収用は制裁に対する報復手段に過ぎないと主張している。この台詞は、欧米諸国の侵略から自国を守るためだけだというモスクワのインチキ主張の長いリストの、もう1つの項目にすぎない。

ヨーロッパのポピュリスト政治家たちが好んで売り込むもう1つの論点は、ロシアのエネルギーに対するヨーロッパの制裁は、これまで見てきたように、コストがかかるだけでなく、役に立たないというものだ。この神話(myth)にはいくつかのヴァージョンがあるが、最もポピュラーなものは、G7とEU加盟諸国が合意したEUの石油禁輸と石油価格の上限は、ロシアの石油生産者に影響を与えないというものだ。それは、ロシアは、ヨーロッパ向けの石油をインドに振り向けることができるからだ。

実際、以前はヨーロッパ向けだったロシアのバルト海沿岸の港からの原油輸出の大部分は、現在インドの精製業者が吸収している。しかし、このような見方は、モスクワにとってインドの精製業者に石油を売ることは、ヨーロッパに売るよりもはるかに儲からないという事実を無視している。インドへの航路は、ヨーロッパへの航路よりもはるかに長い(したがってコストが高い)。加えて、インドのバイヤーたちは値切ることができる。彼らは、ヨーロッパ市場の損失を補うことでクレムリンの好意を受けていると考えており、そのためロシア産原油の急な値引きを受ける権利がある。

キエフ経済学院の研究によれば、ロシアの損害は無視できるものではないという。過去2年間で、クレムリンは推定1130億ドルの石油輸出収入を失ったが、その主な原因はEUによるロシア産石油の禁輸だった。EUの禁輸措置とG7とEUの石油価格上限がともに完全に効力を発揮した昨年、ロシア全体の貿易黒字は63%減の1180億ドルに縮小し、ウクライナ戦争を遂行するためのクレムリンの財源に制約を課すことになった。

ロシアの石油輸出企業にとって、今年は良い年にならないかもしれない。先月クレムリンは、輸出収入の減少を国家に補填するため、石油会社は利益の一部を放棄する必要があると発表した。ロシアの石油会社ロスネフチなどにとって、モスクワが国内のエネルギー企業に戦争資金調達への直接的な協力を求めるのは初めてのことだ。

制裁の実施が強化されるにつれ、制裁は無意味だという考えはさらに薄れていくだろう。 2023年10月以来、アメリカはG7とEUの原油価格上限を回避してロシア産原油を輸送していたタンカー27隻に制裁を課しており、これにより、どちらかの圏に拠点を置く企業がこれらのタンカーと取引することは違法となる。これは西側諸国の制裁解釈の劇的な変化を浮き彫りにしている。最近まで、価格上限はG7かEUを拠点とする海運会社または保険会社がロシア石油の輸送に関与する場合にのみ適用されていた。ワシントンは現在、西側企業とのつながりをより広範囲に解釈している。

たとえば、ロシアの幽霊船団(ghost fleet)のかなりの割合を占めるリベリア船籍のタンカーは、リベリアがアメリカを拠点とする企業に船籍業務を委託しているため、現在では石油価格上限の対象となる。これと並行して、西側諸国はインドの石油精製業者への圧力を強め、ロシアからの石油供給を止めるよう働きかけている。クレムリンを落胆させているのは、こうした努力が功を奏しているように見えることだ。今年に入ってから、インドのロシア産原油の輸入量は、2023年5月のピークから徐々に約3分の1に減少している。

制裁はロシアに損害を与えるよりもヨーロッパに損害を与えるというポピュリストたちの主張は、精査に耐えられない。現実には、これらの措置がヨーロッパ企業に与える影響は小さいが、ロシアは原油のルートを欧州から外そうとしているため、ますます逆風に直面している。

制裁にはコストがかかり、効果もないという主張を否定するのは簡単だが、このシナリオがすぐに消えることはなさそうだ。ロシアに好意的な政治家たちがヨーロッパ議会やその他の選挙に向けてキャンペーンを強化するにつれ、このような主張が今後数週間でますます広まることが予想される。制裁がロシアに深刻な影響を及ぼしていないのであれば、クレムリンと西側の同盟国は制裁を弱体化させるためにこれほどエネルギーを費やすことはないだろう。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

 アメリカは外交政策において、インド太平洋(Indo-Pacific)という地域概念を持ち出して、中国とロシアを封じ込めようとしている。これはバラク・オバマ政権時代のヒラリー・クリントン国務長官から顕著になっている。「アジアへの軸足移動(Pivot to Asia)」という概念と合わせて、アメリカの外交政策の基盤となっている。

 インド太平洋から遠く離れたヨーロッパ諸国がインド太平洋でプレイヤーとなろう、重要な役割を果たそうという動きを見せている。国際連合(the United NationsUN、正確には連合国)の常任理事国であり、空母を備える海軍を持つイギリスとフランスを始めとして、オランダ、ドイツなどの小規模な海軍国が艦船をインド太平洋地域に派遣している。昨年には、NATOの東京事務所開設という話が出て、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の反対によって、いったん白紙となった。ヨーロッパから遠く離れたインド洋、太平洋地域でヨーロッパが全体として役割を果たそう、プレイヤーになろうという動きが高まっている。
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 ヨーロッパ側の主張、理由付けは、インド太平洋地域の航行の自由を守ることが、自分たちの貿易を守ることにつながるというものだ。これは、中国の存在を念頭に置いて、中国が航行の自由を阻害するという「被害妄想」でしかない。その「被害妄想」を理由にして、何もないインド太平洋地域にまで艦船を送るというのはご苦労なことである。

 ヨーロッパがインド太平洋地域において役割を果たすというのは、アメリカの手助けをするという理由もある。アメリカが中国と対峙している地域であり、ここでアメリカを助けることが必要だということである。更に言えば、アメリカの要求によって、ヨーロッパ各国は国防費の大幅増額、倍増を求められているが、艦船を派遣することで、「取り敢えず頑張っています」という姿勢を見せることで、少しでもこうした動きを和らげようということであろう。

 しかしながら、ヨーロッパはまず自分の近隣地域の平和な状況を作り出すことを優先すべきだ。ユーロピアン・アイソレイショニズム(European Isolationism、地域問題解決優先主義)を採用すべきだ。ロシアとの平和共存を目指し、ロシアの近隣諸国の中立化(武装解除ではない)を行い、ロシアとの関係を深化させることで、相互依存関係(interdependency)を構築し、戦争が起きる可能性を引き下げることだ。

 落語などでもよく使われる表現に「自分の頭の上のハエも追えない癖に、人様の世話ばかりしやがって」というものがある。ヨーロッパはまず、自分の近隣地域の安全も実現できていないのに、他人様の家にずかずか入り込んでくるものではない。まさに「何用あってインド太平洋へ」である。

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ヨーロッパはインド太平洋のプレイヤーになりたいと考えている(Europe Yearns to Be an Indo-Pacific Player

-ヨーロッパ地域で戦争が続いているが、ヨーロッパの戦略的・海軍的な願望は世界の裏側にある。

キース・ジョンソン筆

2024年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/19/europe-navy-indo-pacific-strategy-maritime-security/

地政学的なアイデンティティを探し続けた年月を経て、ヨーロッパは国際関係において最も争いが頻発している分野でより大きなプレイヤーになることを目指し始めている。ヨーロッパが目指しているのはアジア地域を含む海洋安全保障分野(maritime security)での主要なプレイヤーである。

長年にわたる貧弱な国防費とハードパワーへの嫌悪感から立ち直り、ヨーロッパ全体、そしてヨーロッパの主要国の多くは、身近なところから地球の裏側まで、海洋安全保障への関心を急速に高めている。それは、ブリュッセル、パリ、ロンドンから矢継ぎ早に発表される野心的な戦略文書だけでなく、ヨーロッパ諸国の小さいながらも有能な海軍が、より多くの場所で、より多くのことを行い、争いの絶えない水路を確保し、自由航行と世界的なルールの尊重を取り戻すために、配備を拡大していることからも明らかである。

ヨーロッパの海軍は既にイエメンからのフーシ派ミサイル攻撃に対抗するために紅海で任務遂行をしており、ますます多くのヨーロッパのフリゲート艦や航空母艦が、大陸全体でのより大規模で広範囲にわたる責任への移行の一環として太平洋を巡行している。

10年ほど前の地中海での海上警備活動から始まったヨーロッパ連合(European UnionEU)の活動は、現在ではインド洋を含むさらに遠方への野心的な展開へと広がっている。先月、ヨーロッパ連合は紅海、ペルシャ湾、アラビア海で航路を確保するための海軍作戦を開始したばかりだが、これは同じ海域でより好戦的な米英の作戦とは別のものだ。

ウクライナでの大規模な陸上戦争が3年目を迎えている現在でも、ヨーロッパはインド太平洋の安全保障においてより大きな役割を果たすことにますます真剣になっている。ヨーロッパ連合はインド太平洋戦略と、この地域に改めて重点を置く新たな海洋安全保障戦略の両方を掲げている。

ブリストル大学の海軍専門家であるティモシー・エドマンズは、「ヨーロッパ連合の最新の海洋安全保障戦略で印象的なのは、海洋における国家間の紛争や対立の重要性と、そして政治的ダイナミクスの変化を認識し、本格的な転換を図ろうとしていることだ。特にインド太平洋地域とその中でのヨーロッパ連合の役割がそうだ」と述べている。

個々の国もまた、この活動に参加している。イギリスはアジアへの「傾斜(tilt)」を更に強化しようとしている。ヨーロッパ連合加盟国で唯一インド太平洋に領有権を持つフランスは、中国の台頭とバランスを取り、フランスとヨーロッパの重要な経済的利益を守るため、インド太平洋地域における海軍と外交のプレゼンス強化に全力を挙げている。ドイツやオランダのような中堅の地政学的プレイヤーでさえ、インド太平洋戦略を持っている。イギリス、フランス、その他いくつかのヨーロッパ諸国は、遠く離れた太平洋の海域に艦船を置いて、その願望をバックアップしている。

フランス国際関係研究所の軍事部門の研究員ジェレミー・バシュリエは、「インド太平洋における安全保障環境の悪化は、フランスとヨーロッパの利益に重大な脅威をもたらしている。インド太平洋における抑止力と軍事的対応努力は主にアメリカに依存しているが、ヨーロッパ連合加盟諸国は今や、台湾海峡、北朝鮮、南シナ海における危機や紛争など、この地域における危機や紛争の世界的影響を十分に理解しなければならない」と述べている。

ウクライナ戦争は、ヨーロッパの関心と武器を吸収した。それでもなお、ヨーロッパの東方シフト(European shift to the east)は続いており、その勢いは増している。それは、ウクライナ戦争がヨーロッパにとって紛争の真のリスク、特に世界の多くの国々と同様にヨーロッパが依存している世界貿易とエネルギーの流れの要であるインド太平洋における紛争の真のリスクについて警鐘を鳴らしたからでもある。

ハーグ戦略研究センターのポール・ファン・フフトは「インド太平洋地域におけるヨーロッパの存在感を高めようという意図は、ヨーロッパでの戦争にもかかわらず、まだ生き続けている。ウクライナ戦争がなければ、資源を確保するのは簡単ことだろうが、その一方で、今は新たな深刻な問題が出ている」と述べている。ヨーロッパのアジアへの軸足移動(The European pivot to Asia)が注目されるのは、フランスとおそらくイギリスを除けば、ヨーロッパ諸国がもともとインド太平洋地域のプレイヤーではないからだ。しかし、フランスとイギリスの空母に加え、ドイツ、イタリア、オランダの小型水上艦船がこの地域に派遣されている

ヨーロッパが、目の前に多くの課題があるにもかかわらず、地球半周分も離れた地域の争いに力を入れている理由はいくつかある。それらは、攻撃的な中国の台頭、商業とエネルギーの自由な流れを保護する必要性、そして、アメリカが、旧大陸が今後数十年間に形成されつつある重大な安全保障上の諸問題において、さらに前進し、主要な役割を果たすことができるという願望である。

長年にわたり、ヨーロッパは中国との間でバランスを取ろうと努め、中国からの投資を歓迎する一方で、北京に対するワシントンの好戦的な姿勢をますます強めていることから距離を置いてきた。しかし、中国による略奪的な貿易や経済慣行、南シナ海での威圧、太平洋における自由航行への脅威、そして台湾併合というあからさまな計画の組み合わせは、今やヨーロッパを、より明確なアプローチへと押しやっている。

前述のティモシー・エドマンズ「中国との関係の方向性は、ヨーロッパ連合全体で変化している。海外投資(foreign investment)であれ、一帯一路構想(the Belt and Road Initiative)であれ、太平洋での活動であれ、中国の破壊的な役割がますます認識されるようになっている。それらの国々の目からは日々鱗が剥がれ続けている状況だ」と語った。

オランダのような中堅諸国は、インド太平洋における自国の将来を、戦争に参加して実際に戦う海軍国としてではなく、むしろ投資、能力開発、安全保障支援を活用して、アジア諸国を中国の支配に対する防波堤となりうるより広範なグループへと呼び込むことができる外交国になるようにと考えている。ファン・フフトは「私たちにできることは、パートナー諸国に対して、“私たちは本当に気にかけているが、支援は別の形でなければならない”と伝えることだ」と述べている。

エマニュエル・マクロン大統領の下、フランスは長年にわたり、多くの人がバランシング姿勢とみなすものを追求しようとしてきたが、インド太平洋で何が起こるかについて、より現実的な見方にますます傾いている、と前述のジェレミー・バシュリエは述べている。「フランス政府は、アメリカ、インド、日本、オーストラリアで構成されるクアッド(Quad)のようなグループにはまだ正式に参加していないが、インドとのラ・ペルーズ海軍演習のような、考えを同じくする国々と以前よりも多くの演習に参加している」とバシュリエは語っている。

台湾や西太平洋をめぐる潜在的な紛争だけでなく、フランスやその他のヨーロッパ諸国が特に懸念しているのは、自由航行(free navigation)やエネルギーなどの重要物資の自由な流れ(free flow)に対する脅威である。これは、紅海における数ヶ月に及ぶフーシ派の活動や、イランによるホルムズ海峡閉鎖の威嚇によって浮き彫りにされ、世界有数の輸送量を誇る航路を自分専用の湖(a private lake)に変えようとする中国の明白な意志によって強調されている。このことは、海洋法を守り、自国の近くだけでなく、ヨーロッパに影響を及ぼすあらゆる場所で海運を保護したいというヨーロッパ共通の願望につながる。

ファン・フフトは「航路がますます攻撃に対して脆弱になっていることは誰の目にも明らかであり、海洋安全保障の関心は必然的にインド太平洋へと移行しつつある。依存関係(dependencies)を考えれば、航路を確保するという問題を無視することはできない」と語っている。

海洋での取り組みを拡大するというヨーロッパの取り組みは、アジアのパートナー諸国や潜在的なライヴァルだけでなく、アメリカにもメッセージを送っている。数十年とは言わないまでも、何年もの間、米政府はヨーロッパのNATO加盟諸国に防衛費を増額する必要性について説得しており、遅ればせながら、増額を始めている国もある。しかし専門家たちは、特にヨーロッパの近隣地域と、それを遠く越えた地域での海洋安全保障能力の強化は、ヨーロッパ全体がアメリカに真の支援を提供できる分野の1つであると主張している。

これには紅海やホルムズ海峡でのヨーロッパ諸国の任務のような巡回活動が含まれるが、米空母打撃群の長期間の派遣を具体化するためのヨーロッパ諸国からの水上艦艇の定期派遣も含まれる。

ファン・フフトは「これらの任務は全て、大国ではない国の海軍でも役割を果たすことができる、非常に具体的な方法である」と述べている。

しかし、より正確には、どのような役割となるのだろうか? ヨーロッパで最も強力な2つの海軍、イギリス海軍とフランス海軍は、合わせて3隻の中規模空母と40数隻の主要な水上艦艇を保有している。アメリカ海軍は、太平洋艦隊だけでも常時それ以上の数を保有している。イタリア、スペイン、ドイツ、オランダといった国々のより小規模な海軍は、ほとんどが小型のフリゲート艦と一握りの水陸両用艦で構成されている。それでも、フランスとイギリスの空母は、他のヨーロッパ諸国の艦船に護衛されながら、今年後半から来年にかけてインド太平洋に向かう予定であり、どちらもアメリカ軍との相互運用性(interoperable with U.S. forces)を高めるための訓練を受けている。

しかし、だからといって、台湾や南シナ海をめぐって太平洋戦争が勃発した場合、ヨーロッパの軍艦がアメリカやパートナー諸国の海軍を直接支援できるかというと、そうではないとバシュリエは主張している。ヨーロッパ北西部から南シナ海までは到着までに約2週間かかり、南シナ海での後方支援もないため、ヨーロッパの海軍はたとえその意志があったとしても、紛争が起きた場合に大きな役割を果たすことは難しいだろう。

より間接的ではあるが、アジアの海洋環境を形成する上で最終的により有益な役割は、もう少し身近なところで果たせるかもしれない。紅海やインド洋西部で既に海賊やテロリストに対する活動を開始しているヨーロッパ諸国の海軍は、シーレーン保護(sea lane protection)の任務を全面的に担うことができ、アメリカとそのパートナー諸国海軍は太平洋に集中することができる。

バシュリエは「アジアで紛争が発生した場合、ヨーロッパはおそらく、海上交通の安全保障と管理を確保し、スエズ運河とマラッカ海峡の間の“後方基地(rear bases)”を監視しなければならなくなるだろう」と語っている。

バシュリエは更に「バブ・エル・マンデブ海峡からベンガル湾のマラッカ海峡の開口部までの範囲で活動するヨーロッパの海軍は、ヨーロッパのエネルギー権益を維持しつつ、北京の戦略的供給を制約することができる」とも述べている。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌記者(地経学・エネルギー担当)。ツイッターアカウント:@KFJ_FP

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 古村治彦です。

 第二次世界大戦後の世界の基軸通貨となったのは、米ドルだ。米ドルが価値の基準であり、米ドルで貿易決済のほとんどが行われてきた。世界の多くの発展途上国(貧乏な国)では、自国の通貨の信用がなく、米ドルが流通するというところも多い。「自国の通貨はいつ紙切れになるか分からないほど信用はないが、米ドルは世界の超大国・派遣のアメリカの通貨だから安心だ」ということになる。日本も外貨準備高でドルを貯めこみ、また、米国債を多く買っている。米ドルは安心だ、だからこれらは安心の資産(運用)ということになる。

 アメリカではインフレ懸念から中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve System)が政策金利の利上げを進めている。これで市場に流れているドルを吸収しようということであるが、これは諸刃の剣だ。政策金利の上昇は住宅ローン金利に反映される。住宅ローンの返済額が大きくなれば、家を持ち切れないという人々が出てくる。そうなれば社会不安が発生する。また、住宅バブルが崩壊することで不景気に突入する可能性が高まる。しかし、金利を上げなければ、インフレ状態は続き、住宅バブルは続く。バブルはいつか弾ける。何より、米ドルの価値が下がる。これは米ドルの信用にもかかわってくる重大な問題だ。政策金利を上げても問題が起き、下げても問題が起きる。「前門の虎、後門の狼」という状態だ。アメリカはドルの信用だけは守らねばならない。そうでなければ、アメリカ国民の生活自体を維持することができなくなるからだ。そのために必死である。

 米ドルが基軸通貨の地位から転落した場合、それに代わる存在は何かということになるが、ユーロはドルと道連れであろうし、円は日本の経済力の低下もあってそのような力はない。中国の人民元が有力候補であるが、ここで出てくるのがBRICs共通通貨という候補だ。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が最初にこれらの国々の間だけで通用する通貨を作る。それが役割を拡大していき、最終的には基軸通貨となるというシナリオだ。金(きん)を後ろ盾にする通貨ということになれば、米ドルよりも信用が高まる可能性が高い。

 ドル覇権の崩壊が現実味を帯びてきたことを考えると、アメリカとノルウェー、NATOによるノルドストリーム攻撃・爆破はドル覇権を守るための動きだったという解釈もできる。ヨーロッパに安価なエネルギー源である天然ガスを供給してきたロシアはその取引決済をドルで行っていたが、西側諸国による制裁の後はルーブルで決済をするように求めた。エネルギー源を買えなければ生活は成り立たない。ヨーロッパ諸国はルーブルを手に入れるようになり、ルーブルの価値は安定することになった。英米が画策したルーブルの価値下落によるロシア経済の破綻というシナリオは崩れた。

これが進んで(これを敷衍して考えると)、BRICsの共通通貨で支払うことを求めるようになれば、共通通貨の使い勝手を考えると(ブラジル、インド。中国、南アフリカともこれで決済ができる)、ドルに頼らないということになる。ドイツにとっての最大の貿易相手国は中国だ(日本もそうだ)。ロシアとのノルドストリームを通じての天然ガス取引が実質的に続けば、ドル覇権が脅かされることになる。
 こうした動きに敏感なのがサウジアラビアだ。現在のサウジアラビアはサルマン王太子がバイデン政権との不仲を理由に、これまで強固な同盟関係にあったアメリカの意向に逆らうような動きを見せている。「西側以外の国々(the Rest)」の仲間に入る姿勢を鮮明にしている。サウジアラビアは米ドルで石油を売るということをやってきた。アメリカは極端な話をすれば、「(打ち出の小槌のように)米ドルを刷れば石油が手に入る」(アメリカ以外の国々は米ドルを手に入れるために苦労しなければならない)ということであった。しかし、米ドルの信用が落ち、ドル覇権の崩壊の足音が近づく中で、西側以外の国々(the Rest)のリーダー国である中国に近づいている。中国の仲介受け入れて、イランとの緊張緩和を決定したのは象徴的な出来事だった。サウジアラビアとしては、BRICs共通通貨の出現を待っている状況なのだろう。そのためには米ドルが紙くずになる前に、自国の資産を保全するという動きに出るだろう。その一つが金(きん)の保有量を増やすことである。

金(きん)価格が高騰しているというのは日本でも報道されている。「新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ戦争といった不安定要素があるから金が買われているんだろう」ということが理由として挙げられている。しかし、それだけではない。米ドルの基軸通貨からの転落に備えての資産保全のために金が買われている。

 私たちは世界の大きな転換点に生きているということを改めて認識すべきだ。アメリカと米ドルがいつまでも強いという確固とした信念を持っている人はまずその信念について点検して、考え直した方が良い。

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ブリックス通貨はドルの支配を揺るがすことになるだろう(A BRICS Currency Could Shake the Dollar’s Dominance

-脱ドル化(De-dollarization)はついに来たのかもしれない

ジョセフ・W・サリヴァン筆

2023年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/04/24/brics-currency-end-dollar-dominance-united-states-russia-china/?tpcc=recirc_trending062921

脱ドル化の話が取り沙汰されている。先月、ニューデリーで、ロシア国家議会のアレクサンドル・ババコフ副議長は、ロシアが現在、新しい通貨の開発を主導していると述べた。この通貨はBRICS諸国による国境を越えた貿易に使用される予定だということだ。BRICS諸国にはブラジル、ロシア、インド、中国、そして南アフリカが含まれる。その数週間後、北京でブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領がこう言った。「毎晩のように、『なぜ全ての国がドルを基軸に貿易を行わなければならないのか(why all countries have to base their trade on the dollar)』と自問自答している」。

ユーロ、円、人民元といった個々の競争相手が存在する中で、ドルが最強の貨幣であるためにドルの支配が安定しているという説を、こうした動きは弱めている。あるエコノミストは、「ヨーロッパは博物館、日本は老人ホーム、中国は刑務所」と表現した。彼は間違ってはいない。しかし、BRICSが発行する通貨は、それとは異なる。BRICSの通貨は、新進気鋭の不満分子の新しい連合体のようなもので、GDPの規模では、覇者であるアメリカだけでなく、G7の合計を上回るようになっている。

ドル依存から脱却しようとする諸外国の政府の動きは、今に始まったことではない。1960年代から、ドル離れ(dethrone the dollar)を望む声が海外から聞こえてくるようになった。しかし、その話はまだ結果には結びついていない。ある指標によれば、国境を越えた貿易の84.3%でドルが使われているのに対し、中国人民元は4.5%に過ぎない。また、クレムリンの常套手段である嘘は、ロシアの発言に懐疑的な根拠を与えている。ババコフの提案に他のBRICS諸国がどの程度賛同しているかなど、現実的な疑問は山ほどあるが、今のところ答えは不明だ。

しかし、少なくとも経済学的な観点からは、BRICS発行の通貨が成功する見込みは新しいと言える。どんなに計画が時期尚早で、どんなに多くの現実的な疑問が残っていても、このような通貨は本当にBRICS加盟国の基軸通貨として米ドルを追い落とすことができるだろう。過去に提案されたデジタル人民元のような競合とは異なり、この仮想通貨は実際にドルの座を奪う、あるいは少なくとも揺るがす可能性を持っている。

この仮想通貨(hypothetical currency)を「ブリック(bric)」と呼ぶことにしよう。

もしBRICSが国際貿易に通貨ブリックのみを使用すれば、ドルの覇権(dollar hegemony)から逃れようとする彼らの努力を妨げている障害を取り除くことができる。こうした努力は、現在、中国とロシアの間の貿易における主要通貨である人民元のような、ドル以外の通貨で貿易を表記するための二国間協定という形で行われることが多い。障害となっているのは何か? ロシアは、中国からの輸入に消極的である。そのため、二国間取引の後、ロシアはドル建て資産に資金を蓄え、貿易にドルを使用している他の国々から残りの輸入品を購入したいと考える傾向がある。

しかし、中国とロシアそれぞれが貿易に通貨ブリックを使うだけなら、ロシアは二国間貿易の収益をドル建てで保管する必要はなくなるだろう。結局、ロシアは輸入品の残りをドルではなくブリックで購入することになる。つまり、脱ドル(de-dollarization)となるのである。

BRICSが貿易にブリックだけを使うというのは現実的な話なのか? その答えはイエスだ。

まず、BRICSは自分たちの輸入代金を全て自分たちで賄うことができる。2022年、BRICSは全体で3870億ドルの貿易黒字(国際収支の黒字としても知られる)を計上した。

BRICSはまた、世界の他の通貨同盟が達成することができなかった、国際貿易における自給自足のレヴェルを達成する態勢を整えている。BRICSの通貨統合は、これまでの通貨統合とは異なり、国境を接する国同士ではないため、既存のどの通貨統合よりも幅広い品目を生産できる可能性が高い。地理的な多様性がもたらすものであり、ユーロ圏のような地理的な集中によって定義される通貨同盟では、2022年には4760億ドルの貿易赤字が発生するという痛ましい事態が起きているが、自給自足の度合いを高めることができるのだ。

しかし、BRICSはその中だけで貿易を行う必要さえないだろう。それは、BRICSの各メンバーはそれぞれの地域で経済的な強者であるため、世界中の国々が通貨ブリックでの取引を希望する可能性が高いからだ。タイが中国と取引するためにブリックを利用せざるを得なくなったとしても、ブラジルの輸入業者はタイの輸出業者からエビを購入することができ、タイのエビをブラジルの食卓に並べ続けることができる。また、ある国で生産された商品を第三国へ輸出し、第三国から再輸出することで、二国間の貿易制限を回避することもできる。これは、関税のような新しい貿易制限を避けようとした結果である。アメリカが中国との二国間貿易をボイコットした場合、その子供たちは中国製の玩具で遊び続け、それがヴェトナムなどの国に輸出され、さらにアメリカに輸出されることになる可能性がある。

BRICS諸国の各政府が「ブリックを絶対に実現する(bric of bust)」ことを貿易条件として採用した場合、BRICS諸国の消費者に降りかかる絶対的に最悪なシナリオを、今日のロシアから予見することができる。アメリカやヨーロッパの政府は、ロシアの経済的孤立を優先してきた。しかし、一部の西側諸国の製品はロシアに流入し続けている。消費者にとってのコストは現実的だが、破滅的なものではない。BRICS諸国が脱ドル志向を強め、現在のロシアをその上限として、脱ドルのリスクとリターンのトレードオフがますます魅力的に見えるようになるであろう。

BRICS諸国の基軸通貨としてドルから変更するために、ブリックは貿易に使わない時に置いておける安全な資産も必要である。ブリックがそのようになるのは現実的なのだろうか? その答えはイエスだ。

まず、BRICSは貿易と国際収支が黒字であるため、ブリックは必ずしも海外からの資金を集める必要はないだろう。BRICSの各国政府は、自国の家計や企業が貯蓄でブリックの資産を購入するよう、飴と鞭を組み合わせて、事実上強制的に市場を出現させ、補助金を与えることができるようになる。

しかし、ブリック建ての資産は、実は海外投資家にとって非常に魅力的な特徴を持つことになる。世界的な投資家たちの資産としての金(きん)の大きな欠点は、分散投資としてのリスク低減効果があるにもかかわらず、金利が付かないことである。BRICSは金(きん)やレアアースのような本質的な価値を持つ金属を新通貨の裏付けとする予定だと言われているので、ブリック建ての利払い資産は、利払いのある金(きん)に似ていることになる。これは珍しい特徴だ。債券の利子と金の多様性の両方を求める投資家にとって、ブリック債は魅力的な資産となり得る。

確かに、ブリック債が単に金(きん)に利子がつくのと同じ効果があるものとして機能するためには、デフォルトのリスクが比較的低いと認識される必要がある。そして、BRICs諸国の政府債務でさえも、明らかになっていないデフォルトリスクがある。しかし、こうしたリスクは軽減することができる。ブリック建ての債務を発行する各国政府は、債務の満期を短くしてリスク性を下げることができる。投資家たちは、南アフリカ政府が「30年後」に返済してくれることを信用するかもしれないが、時間の単位が一年以内である場合、もしくは数年単位である場合はそうではない。また、価格に関しては、単純にそのリスクに対して投資家を補償することもできる。市場参加者がBRICsの資産を買うのに高い利回りを要求すれば、おそらくそれを得ることができるだろう。なぜなら、BRICS諸国政府はブリックの実行可能性に対価を支払うことをいとわないからだ。

公平を期すために、通貨ブリックは現実的に多くの問題を提起している。ブリックは主に国際貿易に利用され、国内での流通はない可能性が高いため、BRICS諸国の中央銀行の仕事は複雑になる。また、ヨーロッパ中央銀行のような超国家的な中央銀行を設立し、ブリックを管理することも必要である。これらは解決すべき課題だが、必ずしも乗り越えられないものではない。

BRICS加盟国間の地政学も茨の道である。しかし、BRICSの通貨は、利害が一致する明確な分野での協力を意味する。インドや中国のような国々は、安全保障上の利害が対立しているかもしれない。しかし、インドと中国は脱ドルという点で利害を共有している。そして、共有する利益については協力し、その他の利益については競争することができる。

通貨ブリックはドルの頭から王冠を奪うというより、その領土を縮小させることになるだろう。BRICSが脱ドルしても、世界の多くは依然としてドルを使用し、世界の通貨秩序は一極集中(unipolar)から多極化(multipolar)することになるだろう。

多くのアメリカ人は、ドルの世界的役割の低下を嘆く傾向にある。嘆く前に考えるべきだ。ドルの世界的な役割は、アメリカにとって常に両刃の剣(double-edged sword)である。ドルの価値を上げると、結果として、アメリカの商品とサーヴィスのコストが上がり、輸出が減少し、アメリカの雇用が奪われてしまう。しかし、アメリカ国内においては、アメリカに切り込む側の武器は研ぎ澄まされ、海外においてアメリカの敵に切り込む武器は鈍化するのであろう

ドルのグローバルな役割が、国内の雇用や輸出競争力を犠牲にしていることを、少なくとも2014年のコメントから理解しているのは、現在ホワイトハウス経済諮問委員会のトップであるジャレッド・バーンスタインだ。しかし、こうしたコストは、アメリカ経済が世界と比較して縮小するにつれて、時間の経過とともに増大する一方だ。一方、ドルの世界的な役割の伝統的な利点の中には、アメリカが金融制裁を利用して自国の安全保障上の利益を増進しようとする能力があることが指摘される。しかし、ワシントンは、21世紀におけるアメリカの安全保障上の利益は、中国やロシアのような国家主体との競争によってますます定義されると考えている。もしそれが正しいなら、そしてロシアに対する制裁の一定しない実績が示すように、制裁はアメリカの安全保障政策においてますます効果のない手段となっていくだろう。

BRICSの基軸通貨がドルに代わってブリックになった場合、その反応は多様で奇妙なものになるだろう。反帝国主義的な気質を持つBRICS諸国の高官、アメリカ連邦上院の共和党の一部、ジョー・バイデン米大統領のトップエコノミストからは、大きな拍手が送られそうだ。ドナルド・トランプ前米大統領と、彼がしばしば対立する米国の国家安全保障コミュニティからも、ブーイングが起こる可能性がある。いずれにせよ、ドルの支配が一夜にして終わることはないだろうが、ブリックが実現すれば、ドルの支配力が徐々に失われていくことになるのだ。

ジョセフ・W・サリヴァン:リンゼイ・グループの上級顧問。トランプ政権下のホワイトハウス経済諮問会議議長特別顧問・スタッフエコノミストを務めた。ツイッターアカウント:@TheMedianJoe
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は膠着状態に陥っている。東部はロシアが既に抑え、バフムトをめぐり激戦が展開されていると報道されている。春季大攻勢(spring offensive)に向けて、ウクライナは軍の態勢を立て直しているとも報じられている。主流メディアの報道では、ウクライナ軍が優勢のはずであるが、実際には苦戦している。主流メディアのウクライナ戦争の戦況報道で利用されているのが、アメリカの戦争研究所(Institute for the Study of War)というシンクタンクの出すデータである。

この戦争研究所は食わせ物のシンクタンクだ。ネオコン一族であるケーガン家の次男で文尾塚・評論家のフレデリックの妻キンバリー・ケーガンが所長をしている。長男は文筆家・評論家のロバート・ケーガン、ロバートの妻が悪名高いヴィクトリア・ヌーランド米国務次官だ。「ネオコンのこうあって欲しい」が先に来るシンクタンクのデータであるということを踏まえて見ておかないと、「メディアの報道ではウクライナ側がかなりロシア側を押し返してないとおかしいよな」ということになる。日本の戦時中の大本営発表と同じだ。

 アメリカでは、最高機密を含むウクライナ戦争に関する米国防総省の機密文書が流出したことが話題を呼んでいる。それによれば、ウクライナ側が苦戦しており、戦争はしばらく続くだろうが、ウクライナ側がロシアを押し返すことは難しいという分析が出ているということだ。簡単に言えば、ウクライナは戦争目的となった(ゼレンスキー大統領が主張している)、「クリミア半島を含む独立時の領土全ての奪還」は不可能であるということである。不可能であることにアメリカは多大なお金を注ぎ込まねばならないことになる。それで軍産複合体が儲かれば良いということになるが、その原資はアメリカ国民の税金であり、アメリカ国民を含む世界中の人々が購入するアメリカ国債だ。

 アメリカとしてはウクライナ戦争を停戦させたい。昨年にヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が提示したウクライナ東部をロシア側が実効支配し、ウクライナのNATO加盟は認めないという内容での停戦しかない。しかし、それではヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は失脚し、現在のウクライナ政府は持たないということになる。ゼレンスキー大統領を支え、焚きつけているのはイギリスである。イギリスはロシアを消耗させ、ヨーロッパ大陸諸国家のエネルギー源を自国の北海油田産の石油にさせて生殺与奪の権を握ろうとしている。イギリスはウクライナ戦争の停戦には反対するだろう。後ろ盾のイギリスの意向もあり、ゼレンスキーは停戦に応じることはできないということになれば、直近での停戦はできない。しかし、ウクライナ側も限界に近付いている中で、今年中に停戦を求める声も出てくるだろう。その時にゼレンスキーが邪魔であれば処分されることになる。属国の指導者の運命は悲しい。

(貼り付けはじめ)

アメリカの情報漏洩でウクライナ戦争努力に大打撃が与えられている(US intelligence leak deals severe blow to Ukraine war effort

ブラッド・ドレス、エレン・ミッチェル筆

2023年4月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3943086-us-intelligence-leak-deals-severe-blow-to-ukraine-war-effort/

ここ10年で最大のアメリカ軍機密漏洩は、ウクライナの戦争努力に深刻な打撃を与え、今年の春予想される反転攻勢を前に、ウクライナ軍にとって情報面での脅威となる。

ソーシャルメディアに流出した機密文書は、戦闘の重要な局面における軍需品、訓練、防空システムに関する詳細な情報を提示している。米国防総省は現在も文書の有効性を検証している最中だ。

アメリカとNATOの機密文書数十件(一部は「最高機密(Top Secret)」と表示されている)は、1月にインターネットの目立たない場所で流出し始め、その後はツイッターやテレグラムに流出し、先週注目を集め始めた。

これらの文書は、今年3月までの紛争状況を示しているに過ぎないが、大隊の規模、先進兵器の訓練、レオパルドII戦車などの重戦闘車両の配備など、ウクライナの軍事能力に関する情報を明らかにしている。

また、漏洩された機密情報はキエフの欠点を示している。少なくとも1つの資料には、ソ連時代の対空ミサイルシステム用の弾薬がまもなく底をつき、ウクライナの防空システムの潜在的脆弱性を露呈する可能性があると記されている。

ヨーロッパ政策分析センターの著名な研究員であるカート・ヴォルカーは、ウクライナ戦争に関するアメリカの評価と判断の「スナップショット」を世界に示すものであり、今回の流出は悪影響が懸念されると指摘している。

ヴォルカーは、「ウクライナ人、ロシア人、その他の人々に対して、『われわれの考えはこうだ』というシグナルを送ることになる」とし、「われわれの情報の質、どこから得ているのか、いくつかの手がかりを与えるかもしれない。そうなれば、私たちが情報を集めさせている人たちに、それを停止させるだろう」と述べた。

おそらく最も憂慮すべきリークは、ウクライナの防空に関する情報についてだろう。

2月の日付のついたある文書によると、S300のミサイルは5月までに、SA-11ガドフライミサイルシステムは3月末までに枯渇する。NATOによれば、両システムはウクライナの防空機能の89%を占めており、頻繁に行われるロシアのミサイル攻撃をかわすのに極めて重要である。

ロシアの軍事ブロガーたちは既に、ウクライナが配備している防空システムや戦闘機などの航空機の数を推定した文書など、流出した文書を幅広く拡散している。

NATOの評価では、ウクライナはロシアのミサイル攻撃に対しては後数波しか耐えられないとし、同時に防空システムの設置場所を示す地図も提供している。

大西洋評議会ユーラシアセンターのシニアディレクターで、元駐ウクライナ米大使のジョン・ハーブストは、ウクライナの防空に関する情報を、流出した文書の中で「最も不幸な」部分と言及した。

しかし、ハーブストは、どの文書にも、NATOの同盟国やロシアの諜報機関が既に知っている以外の重要な情報は含まれていないと述べた。

ハーブストは、「情報漏洩された結果、ウクライナの戦争努力に何らかの損害が生じたことは間違いないと思う。しかし、その損害は圧倒的なものかと言えば、おそらくそうではないだろう」と述べた。

他の複数の文書では、ウクライナの旅団の強さや能力、ウクライナがどの兵器システムで訓練を受けたかなどが説明されている。2月の日付のついたある文書では、ウクライナが保有する戦車、歩兵戦闘車、砲兵部隊の数を推定されている。

ロシア国営のタス通信は情報漏洩文書の詳細を報道したが、ロシアはこのリークについて不自然なまでに沈黙を保っている。

ロシアの軍事ブロガーたちは文書について懐疑的なようで、あるアカウント「ウォークロニクル」は、資料の誤字脱字や間違いの存在を指摘し、文書の信ぴょう性に疑義を呈している。

テレグラムで100万人以上のフォロワーを持つブロガー、ライバーは、ウクライナ側が準備不足のように見せかけ、最終的にロシアのミスを促すための「コントロールされたリークと大規模な偽情報キャンペーン」であると主張している。

米国防総省がロシア軍とその能力に関する重要な情報をどのように収集しているかをロシアが把握する可能性があるため、今回のリークはアメリカにとっても懸念となる。

情報漏洩文書には、ウクライナ軍だけでなく、戦車から大砲、航空機に至るまで、ロシア軍に関する詳細な評価も含まれている。

ブルッキングス研究所の上級研究員であるマイケル・オハンロンは、今回の情報漏洩について、「ロシアが通信セキュリティを強化し、彼らの次の動きに関する私たちの知識が減少する可能性がある」と電子メールで述べている。

現在、どれだけの文書がインターネット上に出回っているかは不明だが、複数の報告書やアナリストによると、少なくとも100の別々の文書がネット上に出現しているという。

米国防総省は月曜日、流出の規模や範囲についてコメントを避け、国防総省がまだ調査中であることを明らかにした。

広報担当のクリス・ミーガー国防長官補佐は「米国防総省は24時間体制で、流出の範囲と規模、評価された影響、緩和策を検討している」と記者団に語った。

「私たちは、問題の範囲だけでなく、どのようにこれが起こったかをまだ調査している。この種の情報がどのように、誰に配布されるかを詳しく調べるための措置がとられている。また、何が流出しているのかについてはまだ調査中である」と付け加えた。

ミーガーはまた、文書の形式が、「ウクライナやロシア関連の作戦に関する日々の最新情報や、その他の情報更新を上級指導者に提供するために使用されているものと同様の形式で、国家安全保障に非常に深刻なリスクをもたらしている」と明かした。

調査団体「べリングキャット」は、ユーザーが主にゲームなどの話題について議論するウェブサイト「ディスコード」のチャンネルを通じて、3月上旬に文書が流出したことを突き止めた。

最も早く確認されたリークでは、人気ビデオゲーム「マインクラフト」に関連するディスコードのチャンネルに10件の文書が投稿されたのが最も早く確認されたリークである。べリングキャットは、別のディスコードのサーバーで1月の時点でリークがあった可能性があると発表している。

米国防総省は先週、文書流出について調査し、それに関する正式な刑事調査を司法省に任せる決定を行ったと発表した。米政府関係者は月曜日、調査は「最優先事項」であるとし、文書の一部が改ざんされていることを指摘し、文書を調べる際には注意を促した。

米国防総省は、何枚が改ざんされているかは明らかにしていない。しかし、先週注目された文書では、戦死したウクライナ人の数が膨らみ、ロシアの犠牲者の数が大幅に少なく表示されていた。

ウクライナ大統領府長官顧問のミハイロ・ポドリアックは、情報漏洩について、西側同盟諸国間の「注意をそらし」「不和を招く」試みと形容した。

月曜日、米国防総省は、更に多くの文書がネット上に現れる可能性があるのか、米国防総省の何人の職員がこれらの文書にアクセスできたのかについては質問を受けても説明しなかった。複数の政府関係者によると、今回の情報流出により、米国防総省は一部の機密情報が誰にどのように共有されているかを見直すための措置を講じることになったということだ。
(貼り付け終わり)
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