古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:リクード

 古村治彦です。

 昨年10月から始まった、イスラエル・ハマス紛争は8カ月を経過し、終息の兆しを見せていない。イスラエルは、ハマスの殲滅と人質奪還のために、ガザ地区での軍事作戦を遂行中であるが、パレスティナの民間人の犠牲者が3万7000人を超え、停戦に向けての国際的な圧力が高まっている。

 昨年のハマスの攻撃から、イスラエルでは中道派も入っての戦時内閣が形成され、紛争へ対処してきた。中道派野党「国民の団結」から、代表のベニー・ガンツ前国防相が閣僚として、ガディ・アイゼンコット元参謀総長がオブザーバーとして、入閣した。残りの4名はベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる与党リクードのメンバーである。ガンツとアイゼンコットは、イスラエル国防軍の参謀総長経験者である。国家団結が内閣から離脱ということで、挙国体制の戦時内閣が形成できないことから、戦時内閣の解散ということになった。ネタニヤフ内閣自体は、右派、極右派の連立政権となっている。
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 ガンツは、ネタニヤフ内閣には、ガザにおける戦争戦略の欠如を指摘し、「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。そして、速やかなクネセト(議会)選挙の実施を求めた。これは、イスラエル国内の、戦争に対する不満や、ネタニヤフ首相の腐敗に対する反感を反映したものだ。

 ネタニヤフ首相は、自身がスキャンダルを抱える身であり、戦争が終了する、選挙に負けるということになれば、逮捕・訴追を受ける可能性が高い。そうした面からも、戦争が継続することは彼個人にとって利益となる。国際社会は、事態のエスカレーションを望んでいない。イスラエルを手厚く支援しているアメリカも停戦を求めている。そうした中で、ネタニヤフは、極右派に更に依存し、戦争を進めていくことになる。

ガンツは、今年5月にレバノン国境の安全について発言している。イスラエルはガザ地区でのハマスの掃討作戦を行い、北部のレバノン国境では、ヒズボラとの戦いを続けている。ハマスもヒズボラもイランからの支援を受けているが、ヒズボラの方が武器のレヴェルが高く、かつ、練度も高い。イスラエルは両組織よりも軍事力としては圧倒的に上であるが、二正面作戦を長期間にわたって継続することで、イスラエル国内では、経済的、社会的な損失を被ることになる。
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 イスラエル・ハマス紛争については、やはりアメリカが圧力を強めての停戦、人道支援の実現ということが重要だ。中道派離脱による戦時内閣の解散は、イスラエルの戦争継続に影響を与えることになるだろう。アメリカとイスラエルは、何が自分たちの国益に適うことなのかを冷静に計算し、判断するべき時に来ている。

(貼り付けはじめ)

●「イスラエル首相、戦時内閣を解散 主要閣僚辞任で「必要性なくなった」と」

2024618日 BBC NEWS Japan

https://www.bbc.com/japanese/articles/cnllv42qn9zo

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するために昨年10月に発足させた戦時内閣を解散した。中道派のベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長が、6人からなる戦時内閣を辞任したことを受けてのもの。

政府報道官は17日、ガザでのハマスとの戦闘については既存の安全保障内閣と、それより大規模な内閣全体で決定していくと説明した。

ガンツ前国防相が9日に、ガザにおける戦争戦略の欠如を理由に戦時閣僚ポストを辞任して以降、政権閣僚を務める複数の極右政党幹部が後任として戦時内閣入りすることを求めていた。

戦時内閣を解散することでネタニヤフ首相は、連立政権に参加する極右政党や同盟国とのやっかいな状況を避けることになる。

イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、指揮系統への影響はないとしている。

ガンツ氏とアイゼンコット氏はいずれもIDFの参謀長を務めた退役将軍。2人は昨年10月の開戦から数日後、ネタニヤフ氏率いる右派連合との挙国一致政府に加わった。

ガンツ氏は辞任の際、ネタニヤフ氏が「我々が真の勝利へ近づくことを妨げている」と述べた。

ガンツ氏の辞任発表直後、極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、自分を戦時内閣に参加させるよう要求した。

■ガンツ前国防相辞任で戦時内閣「必要なくなった」

ネタニヤフ氏は16日夜、新たなメンバーを迎え入れるのではなく、戦時内閣を解散することに決めたと閣僚に伝えた。

首相は「戦時内閣はベニー・ガンツの要請による連立協定にもとづいたものだった。ガンツが同内閣を去った今、この政府の追加部局はもう必要ない」と述べたと、ダヴド・メンサー政府報道官は17日の定例会見で述べた。

また、「安全保障内閣は、内閣全体とともに、決定を下す権限を国から与えられている」と付け加えた。

イスラエル紙ハアレツは、これまで戦争内閣が議題にしてきた問題のいくつかは、安全保障内閣が担当することになるだろうと報じた。同内閣はベン=グヴィル氏や極右のベザレル・スモトリッチ財務相ら14人で構成される。

同紙によると、センシティブな決定は「より小規模な協議の場」で扱われることになる。そこにはヨアヴ・ガラント国防相やロン・デルメル戦略担当相、超正統派政党シャス党のアリエ・デリ党首が含まれる見込み。この3人は戦時内閣に名を連ねていた。

IDFの作戦に影響なしと、政府と対立も

IDFのダニエル・ハガリ報道官は17日、このような動きがIDFの作戦に影響を与えることはないと主張した。

「閣僚が交代し、方法が変更される。我々には階層というものがあり、指揮系統を知っている。我々は指揮系統に従って動いている。これは民主主義だ」

ハマスは昨年107日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛けた。これを受け、IDFはハマス壊滅を掲げてガザでの作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省は、同地区で37340人以上が死亡したとしている。

イスラエル政府内ではこの1日の間に、緊張が増している様子。IDFはガザへの人道支援物資の搬送を増やすため、ガザ南部ラファ近郊で日中の「軍事活動の戦術的一時停止」を導入する決定を下したが、ネタニヤフ氏と極右閣僚たちはこれを批判した。

この軍事活動の一時停止は、ラファの南東にあるイスラエル支配下のケレム・シャローム検問所から支援物資を集め、ガザを南北に走る主要ルートまで安全に輸送できるようにするもの。イスラエルが先月にラファでの作戦を開始して以降、同検問所で物資が滞留している。

しかし、ベン=グヴィル氏はこれは愚かな方針だと批判。ネタニヤフ氏は、「我々は軍隊を持つ国であって、国を持つ軍隊ではない」と述べたと、イスラエルメディアは報じた。

IDFは人道支援が確実にガザに届くよう、政治指導者たちの命令を遂行したとしている。

また、活動の一時停止はガザ南部での戦闘停止を意味するものではないとしており、現地では何が起きているのか混乱が生じている。

ガザで最大の人道支援組織、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、17日時点もラファや南部の他地区で戦闘が続き、「作戦上はまだ何も変わっていない」と報告している。

こうした中、IDFは部隊が「ラファで、情報に基づいて標的を絞った作戦を続けている」とした。また、ラファのタル・アルスルタン地区では複数の武器を発見したほか、爆発物が仕掛けられた建造物を攻撃し、「数人のテロリスト」を排除したという。

UNRWA推計では、ラファには今も65000人が避難している。ハマス戦闘員の根絶とパレスチナの武将集団が使用するインフラ解体のため「限定的な」作戦とIDFが呼ぶものを開始する以前は、この街には140万人が避難していた。

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ガザ紛争戦時内閣の解散でイスラエルの分極化が進む(Israel grows more polarized as Gaza wartime Cabinet dissolves

ブラッド・ドレス筆

2024年6月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4728638-gaza-war-israel-cabinet/

今週の戦時内閣(wartime Cabinet)の正式な消滅は、ガザでの紛争をめぐってイスラエルがいかに分極化(polarized)しているかを明らかにし、かつては団結していた連合が現在、紛争の方向性(conflict’s direction)、人質の返還(return of hostages)、増大するヒズボラの脅威(growing threat from Hezbollah)をめぐって争っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる内閣から、野党指導者ベニー・ガンツが退いたことで、イスラエルの指導者であるネタニヤフ首相は、極右政党の同盟者たちへの依存度を高めることになる。それによって、人質解放と停戦(cease-fire)に向けた合意形成に向けた取り組みが複雑になる可能性がある。

世界的な防衛情報会社「モザイク(MOSAIC)」社の最高経営責任者(CEO)であるトニー・シエナは、ガンツの「穏健な影響力(moderating influence)」がなければ停戦と人質解放の合意形成の可能性は低いと述べ、ネタニヤフ首相がガザ地区で積極的な行動に出る可能性が更に高まるかもしれないと付け加えた。

シエナは、ネタニヤフ首相の同盟者であるベザレル・スモトリッチ財務相とイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相の名前を挙げている。彼らは、最近、ガザへの人道支援を促進するためにイスラエル軍が日中に戦術的一時停止を行っていることに抗議した。

シエナは次のように語った。「彼らが一時停止を批判したという事実は、ネタニヤフ首相が、より大胆になることで、この状況が今後どうなるかを示している。それは彼に自分の力を再確認する機会を与える」。

ガザ地区には、約120人のイスラエル人の人質が残っているが、何人が生存し、ハマスに拘束されているのかは不明だ。

イスラエルは、数千人のハマスの戦闘員を殺害したと主張しているが、過激派組織ハマスは、イスラエルが以前に掃討した地域で再び勢力を拡大し続けている。イスラエル軍がガザ地区南部の都市ラファで最後に残ったハマスの各大隊と交戦しており、紛争は、ほぼ9カ月を経て、変曲点(inflection point)に達しつつある。しかしイスラエル政府高官たちは、紛争は今年いっぱい続く可能性があると述べている。

イスラエルでは戦争に対する不満が高まっており、イェルサレムにあるネタニヤフ首相の自宅近くで、月曜日の夜にデモが行われ、抗議活動参加者たちが大挙して不満を表明した。

不満を抱いたイスラエルの抗議活動参加者たちは再選挙を要求しており、ガンツとその同盟者たちもこれを推進している。しかしネタニヤフ首相は、それは戦争から注意を逸らす行為(distraction from the war)に過ぎないと言って、これらの呼びかけを拒否した。

大西洋評議会のミレニアムフェローであるアルプ・セビムリソイは、有権者が戦争に対処するための代替案を模索しているため、イスラエルでは「選挙が迫っている(election is looming)」と述べた。

セビムリソイは、「ベニー・ガンツや他の多くの人が戦争全般を支持しているとしても、少なくとも言論を通じて、戦争に向けた代替ロードマップの準備を始めたいという願望は多くの人にある」と述べた。

ガザ地区が更なる人道危機に陥る中、イスラエルは、国際的に、戦争を終わらせるよう求める更なる圧力に直面している。ガザでは3万7000人以上が死亡し、パレスティナ人は食料や水などの基本的必需品にアクセスできない。

ガザ戦争に関して、イスラエルに対する大量虐殺の告発を審理している国連の最高裁判所である国際司法裁判所(International Court of Justice)は、イスラエルに対しラファでの攻撃を停止するよう求めた。そして、独立の国際刑事裁判所は、ガザ紛争に関連した戦争犯罪の容疑で、ネタニヤフ首相とイスラエル国防相ヨアヴ・ガラント、ハマスの幹部らに対する逮捕状を発行した。

戦時内閣では、ガンツ、ネタニヤフ、ガラントの3人のメンバーの間に団結が投影されていた。 

また、ネタニヤフ首相とガンツのような対立する人物たちは、ガザ地区での紛争や、イランの支援を受けた過激派・政治組織ヒズボラがイスラエルにロケット弾や大砲を撃ち続けるレバノンとの国境での紛争をめぐり、意思決定のバランスを取ることも可能にしていた。

アメリカ国家安全保障ユダヤ研究所のマイケル・マコフスキー所長兼最高経営責任者(CEO)は、戦時中の内閣の方が「国にとって良かった(better for the country)」と述べた。

マコフスキーは、「イスラエルの自然な分裂状態は、数カ月ぶりに再発しており、これは状況を更に悪化させる可能性が高い。彼らはガザにどのように対処するかについても解決する必要があるのでこれは不幸なことだ」と述べた。

ガンツが戦時中の政策プロセスに関与しなくなったことで、ネタニヤフ首相に対する政治的圧力はより強まる可能性が高い。

中東研究所のイスラエル担当上級研究員ニムロッド・ゴーレンは、内閣とともに危機感と団結の必要性が消滅しており、ガンツはネタニヤフ首相との連携で「本当にチャンスを与えたのだが、成功できなかった」と述べた。

ゴレンは、戦争への不満が高まる中、一部のイスラエル国民はネタニヤフ首相抜きの新たな指導部を求めるだろうと予想した。

ゴレンは、「人々は現状にうんざりしている。人質は戻ってこない。一般的に言って、より多くの兵士が殺されている。南部と北部の状況は何も変化がなく続いている。戦争は長引いており、戦略目標が何なのかは明らかではない」と述べた。

今月初めに、テレビ中継された辞任を表明する声明発表の中で、ガンツは「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。

今年5月、ガンツは、ネタニヤフが以下のことを実行しない場合には辞任すると記載した最後通告を発した。ガンツが突きつけた条件とは、レバノン国境にいる住む場所を奪われたイスラエル避難民の帰還、人質の解放とハマスの殲滅、サウジアラビアとの国交正常化の道筋をつけること、ガザ地区に政府を樹立することの諸計画を発表するというものだ。

ガンツと同様、ガラントもまた、ネタニヤフ首相のガザ戦後計画について公の場で懸念を表明し、ハマス壊滅への道筋をめぐって首相と激しく議論してきた。

ネタニヤフ首相は、イスラエルがガザ地区に関して、無期限で治安管理し(indefinite security control)、過激派組織ハマスとつながりのないパレスティナ人が沿岸部の領土を統治することを含む、戦後計画の曖昧な概要しか発表していない。

ヒズボラとの紛争に対処するイスラエルの苦闘は、より深い問題にもなりつつある。イスラエルは、レバノン国境での戦闘から逃れた約8万人のイスラエル人避難民の帰還を望んでいる。

ガラントは、ヒズボラの壊滅を主張しているが、アメリカや他の同盟諸国は外交を通じて緊張を和らげようとしており、イスラエルに対してエスカレーションさせないように警告している。ネタニヤフ首相は、2006年にイスラエルとヒズボラとの間で起こった、犠牲を伴う戦争の舞台となったレバノンを攻撃することに前向きではないようだ。

しかしガンツが内閣から退いたことで、ネタニヤフ首相はガラントや、ヒズボラとの全面戦争を望むスモトリッチ財務相やベン=グヴィル国家安全保障相のような極右の同盟者の攻撃を受けやすくなる可能性がある。

大西洋評議会のアルプ・セビムリソイは、ネタニヤフ首相は、レバノン問題で中道寄りにシフトしているとしながらも、イスラエルの指導者がヒズボラを含む未解決の「軍事的目標の多くに取り組む」ことを近いうちに期待すると付け加えた。

セビムリソイは、イスラエルは「前回の紛争で未解決だった問題の解決」を目指しているため、イスラエル国防軍に言及し、「レバノンへのイスラエル軍の対応が見られるだろう」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年3月17日にイスラエルで総選挙が行われ、劣勢が伝えられていたベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるリクードが第一党となりました。これでネタニヤフ首相は続投となります。

 

 2014年12月の日本の総選挙でも、自民党が300議席に迫る勢いで勝利を収めましたが、この時の衝撃と似ています。

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選挙前のクネセトの議席数 


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選挙後のクネセトの議席数
 

 日本では北朝鮮、イスラエルではイラン(もしくはイスラム国)が「攻めてくる」という恐怖感を煽って、好戦的な政党と政治家が選挙で勝利を収めています。「人々が右傾化している」というよりも、人々が脅されていると言えるのでしょう。

 

==========

 

金輪際ネタニヤフを信頼するな(Never Trust Netanyahu

―イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの最近の政治的な行動が示しているのは、彼が最悪の種類の機会主義者であるということだ。アメリカは彼がこれ以上最悪の行動を取ることを許してはならない。

 

リサ・ゴールドマン筆

2015年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/19/never-trust-netanyahu-israel-election-obama/

 

 ここ数週間、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは権力の座に留まるためなら何でもやる人間であることを示し続けてきた。彼が権力に固執することで、イスラエルの最大の同盟国であるアメリカとの関係を弱めることになっても、彼は構わずに権力を握り続けることに拘る。人種差別的な、昔アメリカに存在したジム・クロウ法のような差別的な選挙法を推し進めることになっても、彼は何も気にせずにそれを推し進めるだろう。彼は判断力があって知識もある人々に向かって嘘をつき続けることになっても、嘘をつき続けることだろう。ネタニヤフの人格を理解する上で重要なことは、彼が自己を満足させるために2つのことを気にかけていることを理解することだ。1つは権力の座に留まることであり、もう1つはゴラン高原とパレスチナ占領地域に対するイスラエルの支配を継続することだ。

 

 2015年3月17日、ネタニヤフは総選挙で勝利した。イスラエル国内のリベラル派と外国の専門家たちは選挙結果に衝撃を受けた。選挙戦を通じて、彼らは一般有権者が安全保障問題やネタニヤフが3月3日に行ったアメリカ議会演説よりも、経済問題により大きな関心を持っていると考えていた。更には、ネタニヤフの3月3日のアメリカ連邦議会での演説は賛否両論を巻き起こしたが、これによってネタニヤフは支持率を引き上げることに失敗し、アメリカとの関係を傷つけたことで、反対票が投じられることになると考えていた。ネタニヤフが「人目を引くような行動」をいくらやっても挽回は無理だろうと私の同僚の一人は語っていた。選挙日直前の最終の世論調査では、ネタニヤフ率いるリクードは20議席を獲得し、主なライヴァルであるザイオニスト・ユニオンは24議席を獲得すると見られていた。ネタニヤフは権力の座に長くい過ぎたために、有権者を理解できなくなっているのではないかと思われていた。

 

 実際には、ネタニヤフは誰よりも有権者を理解していたということになった。選挙直前、ネタニヤフは低俗な、人種差別的な大衆煽動ばかりを行ったのだ。彼は有権者の持つ恐怖感と部族(「リクード族」)への所属感を刺激した。彼らは、イギリス人が贔屓のサッカーチームに対するのと同じように、リクードに対して忠実である。

 

 イスラエルのインターネットのニュースサイトであるNRG(アメリカの大富豪シェルドン・アデルソンが所有している)とのインタビューで、ネタニヤフは、「自分の目の黒い内はパレスチナ国家の成立を許さない」と明確に述べた。フェイスブック、ツイッター、SMS,自動ヴォイスメールを通じて、有権者たちに次のように訴えた。「私は皆さんと左翼が率いる政府の間に立っています。左翼政府はエルサレムを分割し、1967年の段階の国境にまで撤退しようとするでしょう。テルアヴィヴとベン・グリオン空港を見下ろすヨルダン川西岸地区を開放することでそこにイスラム国が入り込んでくるでしょう」

 

 選挙日当日、ネタニヤフはフェイスブックに30秒間の酷い内容の動画を掲載した。その中で、彼は中東の地図を背にして立ち、予備役将兵に対して国家安全保障の緊急事態が起きているかのように訴えた。枯れは次のように述べた。「右派の政府は危機に瀕しています。アラブ人たちが町中の投票所に押し寄せています。左派のNGOがバスを使って彼らを投票所に運んでいるのです」。ネタニヤフは、軍隊の緊急時を示す用語である「ツアヴ8」という言葉を使いさえしたのだ。

 

 イスラエルの有名なジャーナリストであるハノク・ダウムがフェイスブックに挙げた文章を多くの人々がシェアした。そこには、超正統派とパレスチナ人の有権者の票を除くと、3人に1人がリクードに投票したことになると書かれていた。そして、クネセトの過半数の議席は、右派とナショナリズム勢力が占めているとも書かれていた。

 

 イスラエル以外の国々で衝撃が走った。しかし、実際にはイスラエルはもはや右派的な社会となり、人種差別的な言辞が普通に使われるようになっている。例えば、「アラブ風」という言葉は、低俗でけばけばしい意味で使われている。イスラエル国会クネセトの右派的な議員たちはここ数年、アラブ系の議員たちに対して、彼らが演説をしている際に、暴力をふるうようになっている。西洋諸国のリベラル派にとっては衝撃的な事例が数多く起きている。しかし、イスラエル国内では無視されている。クネセトの議員たちは、スーダンからの移民たちを「私たちの体に巣食う癌細胞」などと演説の中で言ってしまう始末だ。

 

 同様に、世界中のマスコミは、ネタニヤフのパレスチナ国家の樹立を拒絶発言に関して、ほとんど取り上げてこなかった。昨年7月、イスラエル国防軍が駐留しない限り、パレスチナ国家の樹立を容認しないとネタニヤフは演説の中で述べた。「イスラエル国防軍の駐留」は別の形での軍事占領である。彼の演説は世界中のマスコミが取り上げず、イスラエル国内のマスコミもほとんど報道しなかった。NRGとのインタビューでネタニヤフは、かなり率直な言葉遣いであった。ここがある種の転換点であった。3月3日のアメリカ連邦議会演説でネタニヤフはバラク・オバマ米大統領を大いに侮辱した。このインタビューはそれに続くものであった。

 

 ホワイトハウスは、2国共存を否認することでイスラエルは外交分野において厳しい状況に追い込まれると示唆した。数カ月前、ハアレツは漏えいしたとされるEUの公式文書をすっぱ抜いた。そこには、イスラエルがヨルダン川西岸地区から撤退すること、パレスチナ国家の樹立の交渉を公式に拒絶した場合には、イスラエルに特別な経済制裁を科すと書いてあった。ネタニヤフはやり過ぎだと世界が見ていることを示していた。

 

しかし、ネタニヤフは態度を豹変させた。総選挙の2日後の2015年3月19日(木)、ネタニヤフはMSNBCの記者に対して穏やかな態度で、2国共存の解決法を否認はしなかった。ネタニヤフは「現実が変化したのだ」と述べた。更には、パレスチナのマウムード・アッバス議長は、イスラエルをユダヤ国家として承認することを拒否し、彼はハマスとの間にイスラエルを破壊するための協定を結んだ、とも述べた。

 

 2つの発言は共に実質的には嘘である。2009年にアッバス議長に対してイスラエルをユダヤ国家として承認するという条件を押し付けて状況を変えたのはネタニヤフ自身である。それまでのパレスチナ側との交渉でこうした条件は持ち出されたことはなく、全く新しい条件であった。ハマスとPLOの間に存在すると言われている協定からすれば、この条件は受け入れがたいものであった。ネタニヤフはただ単に嘘をついたのだ。しかし、彼の発言はもっともらしいものである。ネタニヤフはアメリカのマスコミに対応し、簡単な質問に答える時にその準備をしっかりやっている。ネタニヤフが何年もイスラエルのマスコミからの取材を受けつけずに、アメリカのテレビや新聞の取材には積極的に応じてきたのは何の不思議もない。

 

問題は、アメリカがこれからもネタニヤフの行動を許容し続けるかどうかである。ネタニヤフは、ヘブライ語で「自分の目の黒い内はパレスチナ国家の樹立を許容することはない」と明確に言い切った。それから2日後、彼は穏やかな態度でアメリカ人のジャーナリストたちに対して、英語で、そのようなことは言っていないと述べた。彼は流ちょうな英語を話し、英語を母国語としない人にありがちなアクセントもない。

 

 イスラエルはほぼ50年間にわたってヨルダン川西岸地区を占領してきた。ほぼ10年にわたり軍隊を使って、ガザ地区を封鎖してきた。イスラエルはそうした政策を変更する意図を全く見せていない。これは継続可能な状況ではない。イスラエルが支配する地域には約1300万人が暮らしているが、800万人しか投票権を持っていない。「アメリカとイスラエルは価値観を共有している」と主張するアメリカ人はイスラエルに対して、ジム・クロウ法も共有する価値観なのかどうかを尋ねる必要がある。セルマ自由行進50周年の記念式典で、エドマンド・ペタス橋の上で行ったオバマ大統領が行った演説の感動から考えて、ジム・クロウ法はアメリカの価値観でもなんでもない。オバマ政権はもうネタニヤフが自分たちに嘘をついているなどとは考えてないなどと振る舞うことは止めるべきだし、ネタニヤフが信頼できない人物であるかどうかは分からないなどと言う姿勢を取ることも止めるべきだ。オバマ政権がやるべきことはただ一つ、「イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは歓迎されざる人物(persona non grata)だ」と宣言することだ。

 

(終わり)








 
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