古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:レバノン

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

 パレスティナの飾築を実効支配しているハマスによって2023年10月7日にイスラエルが攻撃を受け、それに対する報復でガザ地区に大規模な攻撃が実行されている。イスラエルとイランの間でのミサイル攻撃の応酬もあった。その後、一時的な停戦が実現したが、再び状況は悪化している。ガザ地区では生活環境は悪化し、攻撃は続いている。イスラエルはイラン国内を空爆し、核開発関連施設を破壊し、イラン革命防衛隊の司令官と参謀総長などの最高幹部を殺害している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの極右勢力に支えられているが、国民の支持率は低下している。そうした中で、起死回生の策がイランに対する空爆だった。

 イスラエルは国際社会を信頼せず、自国の防衛のためにはあらゆる犠牲を強いる。こうした点では北朝鮮に類似している。それは、あまりにも排他的な、選民思想的な原理が国家にあるからだろうと私は考えている。

 ガザ地区に関して言えば、私たちは歴史の授業で習ったゲットー(ghetto)を類推することができる。中世以来のヨーロッパの各都市に存在した、ユダヤ人たちが強制的に居住させられた地域である。ナチスドイツの侵略によって、各国のゲットーには厳しい抑圧がなされた。そうした中で、1943年にワルシャワ・ゲットー蜂起(Warsaw Ghetto Uprising)が起きたが、ナチスドイツによって鎮圧されたが、その方法は過酷なものだった。私たちは、ガザ地区の現状からワルシャワのゲットーを思い起こす。ユダヤ人が建国したイスラエルが、ゲットーの惨劇を繰り返す。「歴史は繰り返す(History repeats itself)」という言葉があるが、これはあまりにも皮肉なことである。人権や自由といった価値観を世界に拡大することを標榜するアメリカをはじめとする西側諸国は今回の事態に対してあまりにも無力だ。それどころか、ガザ地区の状況に対する批判を抑圧している。

 現在のガザ地区の状況は西側諸国の偽善と国際政治の野蛮さを改めて明らかにしている。そして、人間の愚かさを暴露している。
(貼り付けはじめ)
ガザ地区がいかにして西洋の神話を打ち砕いたか(How Gaza Shattered the West’s Mythology

-この戦争は、第二次世界大戦後の共通の人間性に対する幻想(post-World War II illusions of a common humanity)を露呈させた。

パンカジ・ミシュラ筆

2025年2月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/07/pankaj-mishra-world-after-gaza-book-israel-war-global-order-history/

1943年4月19日、ワルシャワのゲットー(Ghetto)にいた数百人の若いユダヤ人が、入手できる限りの武器を手にナチスの迫害者たちに反撃した。ゲットーにいたほとんどのユダヤ人は、すでに絶滅収容所(extermination camps)に強制送還されていた。彼らの指導者の1人であったマレク・エデルマンが回想しているように、闘士たちはいくらかの尊厳(dignity)を取り戻そうとしていた。彼は次のように書き残している。「最終的には、私たちの番が来たときに、私たちを虐殺させないということだった。死に方を選ぶだけのことだった」。

絶望的な数週間が過ぎ、抵抗者たちは圧倒され、そのほとんどは殺害された。蜂起の最終日に生き残った者の中には、ナチスがガスを注入した司令部地下壕で自殺した者たちもいた。下水管を通って脱出できたのはほんの数人だけだった。その後、ドイツ兵はゲットーをブロックごとに焼き払い、火炎放射器を使って生存者たちを煙で追い出した。

ポーランドの詩人チェスワフ・ミウォシュは後に、「美しい静かな夜、ワルシャワ郊外の田舎の夜にゲットーから悲鳴が聞こえた」と回想している。

「この悲鳴には鳥肌(goose pimples)が立った。何千人もの人々が殺害される時の悲鳴だった。その悲鳴は、焚き火の赤々とした輝きの中から、無関心な星々の下から、都市の静寂な空間を通り抜け、植物が労を惜しまず酸素を放出し、空気が芳香を放ち、人が生きていてよかったと感じる庭園の慈悲深い静寂の中に入っていった。この夜の平和には特に残酷なものがあり、その美しさと人間の罪が同時に心を打った。私たちは互いの目を見なかった」。

占領下のワルシャワでミロシュが書いた詩「カンポ・デイ・フィオーリ」は、ゲットーの壁の横にあるメリーゴーランドを想起させる。メリーゴーランドに乗る人たちは、遺体の煙の中を空に向かって進み、その陽気な曲が苦悩と絶望の叫びをかき消す。カリフォルニア州バークレーに住んでいたミロシュは、アメリカ軍が何十万人ものヴェトナム人を空爆し、殺害している間、その残虐行為(atrocity)をアドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンの犯罪と比較していた。「もし私たちが同情することができ、同時に無力であるならば、私たちは絶望的な憤りの中で生きているのだ(If we are capable of compassion and at the same time are powerless, then we live in a state of desperate exasperation)」とミロシュは書いている。

イスラエルによるガザ地区殲滅(annihilation of Gaza)は、西側民主政体諸国によって提供され、何百万もの人々にこの精神的試練(psychic ordeal)を何カ月も与えた。政治的悪(political evil,)の行為の自発的目撃者である彼らは、時折、生きていることは良いことだと考えることを自分自身に許しながら、イスラエルによって爆撃された別の学校で娘が焼け死ぬのを見る母親の悲鳴を聞いた。

ホロコースト(shoah)は数世代にわたるユダヤ人に傷跡を残した。1948年、ユダヤ系イスラエル人は生死を分ける問題として国民国家の誕生(birth of their nation state)を経験し、その後、1967年と1973年にも、アラブの敵による絶滅論のレトリックの中で再び経験した。ヨーロッパのユダヤ人がユダヤ人であるという理由だけでほぼ完全に消滅したという知識とともに育った多くのユダヤ人にとって、世界は脆弱(fragile)に見えざるを得ない。その中でも、2023年10月7日にイスラエルでハマスや他のパレスティナグループによって行われた虐殺と人質事件は、ホロコースト再来への恐怖を再燃させた。

しかし、歴史上最も狂信的なイスラエルの指導者たちが、蹂躙、死別、恐怖という遍在する感覚(an omnipresent sense of violation, bereavement, and horror)を利用することに躊躇しないことは、最初から明らかだった。イスラエルの指導者たちは、ハマスに対する自衛の権利を主張したが、ホロコーストの主要な歴史家であるオメル・バルトフが2024年8月に認めたように、彼らは最初から「ガザ地区全体を居住不可能にし、その住民を衰弱させて、死に絶えるか、その領土から逃れるためにあらゆる可能な選択肢を模索するようにする(to make the entire Gaza Strip uninhabitable, and to debilitate its population to such a degree that it would either die out or seek all possible options to flee the territory)」ことを目指したのである。こうして10月7日以降、何十億もの人々がガザ地区に対する異常な猛攻撃を目の当たりにした。その犠牲者たちは、ハーグの国際司法裁判所(the International Court of Justice in The Hague)で南アフリカを代表して弁論したアイルランドの弁護士ブリネ・ニ・グラレイに言わせれば、「世界が何かしてくれるかもしれないという絶望的な、今のところむなしい希望のために、自分たちの破壊をリアルタイムで放送していた」のである。

世界は、より特定すれば西側は何もしなかった。ワルシャワ・ゲットーの壁の向こうで、マレク・エデルマンは「世界の誰も何も気づかない(nobody in the world would notice a thing)」ことを「大変に恐れて(terribly afraid)」いた。ガザ地区ではそのようなことはなく、犠牲者は処刑される数時間前にデジタルメディアで自分の死を予言し、殺人犯はTikTokで自分たちの行為をさかんに流した。アメリカやイギリスの指導者たちが国際刑事裁判所や国際司法裁判所(he International Criminal Court and the International Court of Justice)を攻撃したり、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集者が社内メモで、「難民キャンプ(refugee camps)」、「占領地(occupied territory)」、「民族浄化(ethnic cleansing)」という用語を避けるようスタッフに指示したりと、西側の軍事的・文化的ヘゲモニー(the West’s military and cultural hegemony)の道具によって、ガザ地区のライブストリーミングによる情報発信は日々、見えないように、読めないようにされていった。

毎日が、自分たちが生活している間に、何百人もの普通の人々が殺され、あるいは自分たちの子どもが殺されるのを目撃させられているという意識に毒されるようになった。ガザ地区にいる人々、しばしば有名な作家やジャーナリストからの、自分や自分の愛する人が殺されようとしているという警告や、その後に続く殺害の知らせは、肉体的にも政治的にも無力であるという屈辱をより募らせた。無力な暗示された罪の意識に駆られ、ジョー・バイデン米大統領の顔をスキャンして慈悲の兆し、流血を終わらせる兆しを探そうとした人々は、不気味なほど滑らかな硬さを発見した。あれやこれやの国連決議、人道支援NGOの必死の訴え、ハーグの陪審員たちによる厳罰、そして土壇場でのバイデンの大統領候補交代によって喚起された正義の希望は残酷なまでに打ち砕かれた。

2024年末までには、ガザ地区の虐殺の現場から遠く離れた場所に住む多くの人々が、悲惨と失敗、苦悩と疲労の壮大な風景に引きずり込まれたことを、遠くからではあるが感じていた。これは、ただ傍観する者にとっては大げさな感情的負担に思えるかもしれない。しかし、ピカソが空からの攻撃で殺されながら叫ぶ馬と人間を描いた「ゲルニカ(Guernica)」を発表した際に引き起こされた衝撃と憤りは、ガザ地区で撮影された、父親が首のない我が子の遺体を抱く一枚の写真の影響だった。

戦争はやがて過去のものとなり、積み重なった恐怖の山は時とともに平らになるかもしれない。だが、ガザ地区では、負傷した身体、孤児となった子供たち、瓦礫の町、家を失った人々、そして、あちこちに漂う大量の死別意識と存在の中に、この惨劇の痕跡が何十年も残るだろう。そして、狭い海岸地帯で何万人もの人々が殺害され、重傷を負うのを遠くから無力に見守り、権力者の拍手喝采や無関心を目撃した人々は、心の傷と、何年も消えないトラウマを抱えて生きていくことになるだろう。

イスラエルの暴力を、正当な自衛なのか、厳しい都市環境での正当な戦争なのか、民族浄化や人道に対する罪なのか、という論争は決して決着がつかないだろう。しかし、イスラエルの一連の道徳的、法的違反行為の中に、究極の残虐行為の兆候を見出すことは難しくない。イスラエルの指導者によるガザ地区撲滅に向けた率直で決まりきった決意、ガザ地区でのイスラエル国防軍(Israel Defense ForcesIDF)による報復が不十分であることを国民が嘆くことで暗黙のうちに容認していること、犠牲者を和解不可能な悪と同一視していること、犠牲者のほとんどが全くの無実で、その多くが女性や子供だったという事実、第二次世界大戦での連合軍によるドイツ爆撃よりも比例して大きい破壊の規模、ガザ地区全体の集団墓地を埋め尽くす殺戮のペース、そしてその方法が不吉なほど非人格的(人工知能アルゴリズムに依存)かつ個人的(狙撃手が子供の頭を2発撃ったという報告が多い)であること。食料や医薬品へのアクセスの拒否、裸の囚人の肛門に熱い金属の棒が挿入されること、学校、大学、博物館、教会、モスク、さらには墓地の破壊、死んだり逃げたりするパレスティナ女性の下着を着て踊るイスラエル国防軍兵士に体現された悪の幼稚さ(puerility of evil)、イスラエルにおけるそのようなTikTokインフォテインメント(訳者註:情報[information]と娯楽[entertainment]の合成語)の人気、そして自国民の絶滅を記録していたガザ地区のジャーナリストの慎重な処刑。

もちろん、産業規模になった虐殺に伴う無慈悲さは前例がないわけではない。ここ数十年、ホロコースト(the Shoah)は人類の悪の基準を定めてきた。人々がそれを悪と認識し、反ユダヤ主義(antisemitism)と戦うために全力を尽くすと約束する程度は、西洋では彼らの文明の尺度となっている。しかし、ヨーロッパのユダヤ人が抹殺された年月の間に、多くの良心が歪められたり、麻痺したりした。非ユダヤ人のヨーロッパの多くは、しばしば熱心に、ナチスのユダヤ人攻撃に加わり、彼らの大量殺戮のニューズでさえ、西洋、特にアメリカでは懐疑的かつ無関心に迎えられた。ジョージ・オーウェルは、1944年2月になっても、ユダヤ人に対する残虐行為の報告は「鉄のヘルメットから豆が落ちるように(like peas off a steel helmet)」人々の意識から跳ね返ったと記録している。西側諸国の指導者たちは、ナチスの犯罪が明らかになってから何年もの間、大量のユダヤ人難民の受け入れを拒否した。その後、ユダヤ人の苦しみは無視され、抑圧された。一方、西ドイツは、ナチス化からほど遠いものの、ソ連共産主義に対する冷戦に加わりながら、西側諸国から安易な赦免(cheap absolution)を受けた。

記憶に残る中で起きたこれらの出来事は、宗教的伝統(religious traditions)と世俗的な啓蒙主義(the secular Enlightenment)の両方の基本的前提、つまり人間は根本的に「道徳的(moral)」な性質を持っているという前提を揺るがした。人間には道徳的性質がないという、腐った疑念が今や広まっている。冷酷さ、臆病さ、検閲の体制下での死や切断を間近で目撃した人々はさらに多く、あらゆることが起こり得ること、過去の残虐行為を覚えていても現在それが繰り返されない保証はないこと、そして国際法と道徳の基盤がまったく安全ではないことを衝撃とともに認識している。

近年、世界では多くの出来事が起こっている。それらは、自然の大災害、財政破綻、政治的激変、世界的パンデミック、征服と復讐の戦争などである。しかし、ガザ地区に匹敵する災害はない。これほど耐え難い悲しみ、困惑、良心の呵責(grief, perplexity, and bad conscience)を私たちに残したものはない。これほど、私たちの間での、情熱と憤りの欠如、視野の狭さ、思考の弱さ(lack of passion and indignation, narrowness of outlook, and feebleness of thought)を恥ずべき形で証明したものはない。西洋の若者の世代全体が、政治とジャーナリズムの長老たちの言葉と行動(そして無作為)によって道徳的に大人に成長させられ、世界で最も豊かで最も強力な民主政体国家の支援を受けた残虐行為を、ほぼ独力で認識せざるを得なくなった。

パレスティナ人に対するバイデンの頑固な悪意と残酷さは、西洋の政治家やジャーナリストたちが提示した多くのぞっとするような謎の1つに過ぎない。西側諸国の指導者たちにとって、10月7日の戦争犯罪の犯人を追及し、裁きを受けさせる必要性を認めながらも、イスラエルの過激派政権(an extremist regime in Israel)への無条件の支援を差し控えることは簡単だっただろう。それなのに、なぜバイデンは存在しない残虐行為のヴィデオを見たと繰り返し主張したのか? 元人権弁護士の英首相キール・スターマーは、イスラエルにはパレスティナ人から電力と水を差し控え、停戦(cease-fire)を求める労働党員を処罰する「権利がある(has the right)」と主張したのはなぜか? なぜ、西洋啓蒙主義(the Western Enlightenment)の雄弁な擁護者であるユルゲン・ハーバーマスは、自称民族浄化主義者たち(avowed ethnic cleansers)の擁護に飛びついたのか?

アメリカで最も古い定期刊行物の1つである『ジ・アトランティック』誌が、ガザ地区で約8000人の子供たちが殺害された後、「子供たちを合法的に殺すことは可能だ(it is possible to kill children legally)」と主張する記事を掲載したのはどうしてか? イスラエルの残虐行為を報道する際に西側主要メディアが受動態に頼り、誰が誰に、どのような状況下で何を行っているのかが分かりにくくなっているのはなぜか(「ダウン症のガザ地区在住男性が孤独死(The lonely death of Gaza man with Down’s syndrome)」というのが、障害のあるパレスティナ人男性にイスラエル兵が攻撃犬を放ったというBBCの報道の見出しだった)? なぜアメリカの億万長者たちが大学キャンパスでの抗議活動者への容赦ない弾圧を促進するのに協力したのか? 親イスラエルの合意に反抗しているように見えるという理由で、学者やジャーナリストたちが次々と解雇され、芸術家や思想家がプラットフォームを追われ、若者が就職を妨げられたのはなぜか? なぜ西側諸国は、ウクライナ人を悪意ある攻撃から守り保護しながら、あからさまにパレスティナ人を人間の義務と責任の共同体(the community of human obligation and responsibility)から排除したのか?

これらの疑問にどう対処するかに関わらず、私たちは直面している現象を正面から見つめざるを得ない。それは、西側の民主政治体制国家が共同で引き起こした大惨事(a catastrophe jointly inflicted by Western democracies)であり、1945年のファシズムの敗北後に生まれた、人権の尊重と最低限の法的・政治的規範に支えられた共通の人間性という必要な幻想(the necessary illusion that emerged after the defeat of fascism in 1945 of a common humanity underpinned by respect for human rights and a minimum of legal and political norms)を破壊したのだ。

※パンカジ・ミシュラ:インドのエッセイスト、小説家。『怒りの時代: 現在の歴史(Age of Anger: A History of the Present)』、『帝国の廃墟から:アジアを再構築した知識人たち(From the Ruins of Empire: The Intellectuals Who Remade Asia)』など、その他数冊のノンフィクションおよびフィクションの著書がある。

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(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2023年10月以来、イスラエルと中東地域は戦争状態が続いている。共和党の支持者の過半数はイスラエルに対する支援を継続することを望んでいる。また、ドナルド・トランプ次期大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は良い関係と言われている。バラク・オバマ、ジョー・バイデン両民主党政権とは関係がうまくいっていなかったネタニヤフ首相は2023年10月以来、積極的に周辺諸国に攻撃を仕掛けている。これは、再選の道を断たれたジョー・バイデン大統領はレイムダック化(無力化)しているうちに、戦線を拡大しておきたいということ、自分と関係が良いドナルド・トランプが次期大統領になることで、支援は継続されて、攻撃を続けることができるという計算をしているということが考えられる。トランプは2024年10月21日にネタニヤフ首相と電話会談を行い、「(イスラエルの自衛のために)やるべきことをやれ」と述べたとされている。ネタニヤフ首相は「お墨付き」をいただいたような気持であっただろう。
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 イスラエルは、ガザ地区のハマスだけではなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、更には、これらの組織を支援するイランに対する空爆も行っている。それだけではなく、シリアのバシャール・アサド政権崩壊を受けて、シリア国内の民兵組織にも攻撃を加え、係争地ゴラン高原の緩衝地帯に侵攻し、ゴラン高原の確保を強化している。ネタニヤフ首相は自衛のための行為としているが、中東地域を不安定にさせる危険な動きである。イスラエルと中東のイスラム教国の対立という「中東戦争」になって困るのはトランプだ。

 いくらトランプがイスラエルを支援していると言っても、イランとの戦争状態は望まないだろう。イスラエルとイランが戦争状態になり、核戦争の危機も高まるとなれば、アメリカがこの戦争に引っ張り出される、巻き込まれるということは考えられる。アメリカ軍が派遣され、アメリカ軍に死傷者が出るとなると、トランプ政権にとって大きな打撃である。そこまで事態が悪化しないように、トランプとしては状況をコントロールしたいところだろう。ネタニヤフ首相は自身と家族のスキャンダルを抱えており、首相の座から離れてしまえば逮捕される可能性がある。戦争状態、緊張状態が続くことは彼自身にとっては利益であるが、これはイスラエルと中東地域、世界にとっては好ましい状況ではない。

 ネタニヤフ首相が辞退を悪化させる場合、トランプは態度を変えて、ネタニヤフ首相を支持せず、政敵のベニー・ガンツ元国防相を応援するということも考えられる。トランプ自身の動きは「予測不可能」であり、いつ「You are fired!(お前はクビだ!)」と言われるかは分からないのだ。

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トランプとネタニヤフは歩調を合わせないだろう(Trump and Netanyahu Won’t Get Along

-誰もがトランプとイスラエル首相の親密さを過大評価している。

スティーヴン・A・クック筆

2024年11月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/01/trump-and-netanyahu-wont-get-along/

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ドナルド・トランプ前米大統領とベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相(2020年1月27日、ワシントンDC)。

『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は最近、イスラエル人の3分の2がカマラ・ハリス米副大統領よりもドナルド・トランプ前米大統領を好むと報じた。彼らはトランプがバイデン・ハリス政権よりもイランに対してより厳しく、イスラエルの戦争努力を支持すると明白に信じているが、トランプもハリスもイランとの直接対決を望んでいないという事実を考えると奇妙なことである。

また、トランプとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が互いに歩調を合わせているという考えが広まっていることも奇妙だ。

私が書評したジャレッド・クシュナーの回顧録の内容を信じるならば、ネタニヤフ首相とトランプ大統領との間には信頼関係が欠如していた。ネタニヤフ首相が1996年に首相として初めてワシントンDCを訪れた際、ビル・クリントン大統領は会談後にスタッフにこう尋ねたと伝えられている。「ここにいる中で誰が超大国だ?」 バラク・オバマ大統領は明らかに、ネタニヤフと同じ部屋にいることに耐えられなかった。そしてトランプは、在任中に行われた一連のイスラエル選挙でベニー・ガンツを応援した。

トランプは明らかに、ハマスとの戦争を、選挙に勝った場合に最初に対処しなければならない問題にはしたくないようだ。だからこそ、トランプは最近になって、ネタニヤフ首相に対して、就任式の日までにガザ地区については決着をつけたほうがいいと述べた。これは以前から何度も言っていることで、イェルサレムの懸念をかき立てている。トランプのタイムラインは、ハマスに多くのダメージを与えたが、今後も続けるつもりのイスラエルのタイムラインとは必ずしも一致しないからだ。もしネタニヤフ首相が大規模な軍事作戦を終了させ、勝利宣言をすれば、国内の右派の同盟者たちとはうまくいかないだろう。

結論: 選挙結果がどちらに転んでも、アメリカ・イスラエル関係に緊張が走る可能性は高い。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 昨年(2023年)10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによる、イスラエルへの攻撃から始まった紛争は1年以上経過しても終息していない。その後、イスラエルはレバノンを拠点とするヒズボラを攻撃するために、レバノンにも侵攻している。また、イエメンのフーシ派にも空爆を加えている。ハマスとヒズボラ、フーシ派を支援するイランとの対決姿勢を鮮明にしている。状況は深刻化していた。その後、レバノンとの間で停戦合意が結ばれているが、中東における戦争の段階が上がり、エスカレーションが進めば、イランとの全面的な対決となり、最悪の場合には核戦争が起きる可能性もある。
 イスラエルは公には認めていないが、核兵器保有国であり、アメリカからの大きな支援を受けて、軍事力でも近隣諸国を圧倒している。そのため、戦術レヴェルでの勝利を得ることは容易い。それぞれの戦いにおいては確実に勝利を収めることができる。しかし、戦略的に見れば、ガザ地区やレバノンにおける民間人の犠牲者が増えるにつれて、イスラエルに対する同情は消え、世界的に見て、批判が高まっている。それは、イスラエルを手厚く支援しているアメリカ国内においてもそうだ。

 あれだけの圧倒的な戦力差がありながら、イスラエルは常に不安定な状況に置かれている。大きな武力が屁のツッパリにもなっていないということになる。更に、これまでは、同情される面もあったが、昨年からのガザ地区やレバノンでの戦争によって、孤立感を深めている。アメリカが仲介してのサウジアラビアとの国交正常化交渉は頓挫したままだ。サウジアラビアは、中国の仲介もあり、イランとの国交正常化を行っている。中東において、イスラエルとアメリカが孤立感を深め、主要なプレイヤーとしての役割を果たせなくなりつつある。イスラエルは戦術レヴェルでの勝利を収めても、戦略レヴェルでの勝利を収めていないということになる。

 現在のイスラエルの指導者であるベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのように戦争を終結させるのか、どのように現状から自国の利益につなげていくのかというヴィジョンがはっきりしない。戦争を拡大させて、自分の政権が存続することを第一と考えているように見える。これはイスラエルにとって非常に危険なことだ。戦時内閣ということで、批判を受けにくいということもあるだろうが、イスラエルは、自国の利益のために、ネタニヤフ首相の更迭を行うべきであろう。

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中東におけるイスラエルの「任務完了」の瞬間(Israel’s ‘Mission Accomplished’ Moment in the Middle East

-ベンヤミン・ネタニヤフはジョージ・W・ブッシュと同じ大きな過ちを犯しているかもしれない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年10月2日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/02/israel-netanyahu-lebanon-iran-gaza-strategy-mission-accomplished/

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ハイファ港に停泊中の米空母ジョージ・H・W・ブッシュを訪問し、アメリカ兵と話すイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2017年7月3日)

2003年5月1日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領はかっこいいフライトスーツを身にまとい、S-3ヴァイキング機に乗り込み、空母エイブラハム・リンカーンに着艦した。「任務完了(Mission Accomplished)」と書かれたバナーの下に立ち、イラクにおける主要な戦闘作戦の終了を宣言した。「アメリカと同盟諸国は勝利した」と誇らしげに宣言した彼の支持率は急上昇し、戦争を仕組んだネオコンたちは、その大胆さと英知(boldness and wisdom)を自画自賛した。しかし、イラクの状況はすぐに悪化し、ブッシュ大統領のイラク侵攻の決断は戦略的な大失策であったと今では誰もが考えている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とその支持者たちが、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスルラと過激派組織のトップ指導者の多くの暗殺で頂点に達した(しかし終わっていない)イスラエルによる最近のレバノン攻撃を祝っているのを見ながら、私はあの事件のことを思い出した。過去1年間、ネタニヤフ首相は、ハマスのイスラエル攻撃から始まった戦争を容赦なく延長、拡大させながら、国防大臣、国内の敵対者グループ、ハマスに今も拘束されているイスラエル人人質の家族、そしてバイデン政権に反抗してきた。かつて、「創業国家(start-up nation)」ともてはやされたイスラエルは、今では「物事を爆発させる国家(blow-things-up nation)」となっており、ネタニヤフ首相はイスラエルの敵対者たちに、イスラエルの手の届かないところは何もないことをすぐに思い出させた。イスラエル軍と諜報機関が複数の敵対者に与えた損害(その過程で数万人の民間人が殺害された)を考えれば、ネタニヤフ首相が勝利の歩みを進めていたことは驚くべきことではない。ブッシュがそうであった。

過去数週間にわたるイスラエルの行動が驚くべき戦術的成果であったことには疑問の余地はない。イスラエル諜報機関は、優れた信号情報とヒズボラの組織構造の亀裂、さらには最高指導者によるいくつかの不可解なミスを利用し、ヒズボラが通信に使用していたポケベルやトランシーバーをブービートラップにする複雑かつ大胆な計画を見事に成功させた。ガザ地区での場合と同様、イスラエル国防軍は、アメリカが提供した最新兵器を使用してナスルラを殺害し、レバノン全土に大規模な被害を与え、ヒズボラのロケット弾とミサイル能力を部分的に低下させた。イスラエル空軍はこれに続いてイエメンのフーシ派を攻撃し、イスラエル地上軍は現在レバノン南部に進入しており、イランは間違いなく最近のミサイル攻撃に対するイスラエルの報復に直面するだろう。ネタニヤフ首相とその極右閣僚たちはまた、「大イスラエル(Greater Israel)」を創設するための長期キャンペーンの一環として、戦争(とそれに対するアメリカの無関心な対応)を利用して、占領下のヨルダン川西岸地区での暴力と土地接収を強化している。

ネタニヤフ首相が全勝で戦争を終わらせ、地域のバランス・オブ・パウア(balance of power、勢力均衡)を恒久的にイスラエルに有利な方向にシフトさせることを、何が止めるだろうか? 戦術的な成果が戦略的な成功を保証するわけではないが、十分な成果を上げることができれば、重要かつ永続的な方法で戦略的環境を変えることができるかもしれないと主張することはできる。ネタニヤフ首相はそれを目指しているが、成功するかどうか疑わしい理由がある。

始めに、イスラエルがいわゆる抵抗の枢軸(Axis of Resistance)に与えたダメージは、抵抗の勢力を解散に追い込む、もしくは、白旗を揚げる原因にはならないだろう。ヒズボラ、ハマス、フーシ派、イランはいずれも過去に強力な打撃を受けて生き延びてきた。更に、昨年の様々な出来事の発生によって、彼らの報復の希望はどんどんと大きくなっている。奇妙なことだが、大量の爆発物を人々に投下しても、彼らを打ち負かすことはできないようだ。あるいは少なくともいじめる相手を止めさせる能力を切望するようになる。ヒズボラは今もイスラエルに向けてロケット弾やミサイルを撃ち続けており、北部に避難している約6万人のイスラエル人が帰還できないようになっている。暗殺された指導者たちは、既に入れ替わり、幹部組織は再建され、再武装され、彼らが学んだことに基づいて新しい戦術が開発されるだろう。イスラエルは現在、これを防ごうとレバノン南部に再び軍隊を派遣しているが、以前のレバノン南部への侵攻は良い結果をもたらさなかった。

イスラエルの手による虐待が問題の根源であるパレスチナ人については、イスラエルが自分たちにしていることに抵抗し続ける以外に選択肢はない。もしイスラエルが彼らに魅力的な代替案、たとえば自分たちの国家や大イスラエル内での平等な権利などを提供していれば、状況は変わっていたかもしれないが、ネタニヤフ首相はそうした可能性を閉ざしてしまった。エジプトのアンワル・サダト大統領はイスラエルと和平を結び、エジプトはシナイ半島を取り戻した。PLOはイスラエルと和平し、さらにイスラエルの違法入植地(illegal Israeli settlements)を手に入れた。現在、イスラエルがパレスチナ人に提示している唯一の選択肢は、追放、絶滅、または永続的なアパルトヘイト(expulsion, extermination, or permanent apartheid)であり、戦わずしてそのような運命を受け入れる国民はいない。従って、イスラエルの存在を受け入れ、実行可能な国家を得ることを期待してイスラエルに協力し、何の見返りも得られなかったパレスチナ自治政府が、パレスチナの人々の間で人気を失う一方で、ハマスへの支持が高まっているのも不思議ではない。

同様に、アリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ大統領とハッサン・ルーハニ大統領のもとで、イランがアメリカ(ひいてはイスラエル)との関係を改善しようと時々行ってきた努力は、イスラエルとその支持者であるアメリカによって断固として阻止された。特に、2018年にイランの核プログラムを厳しく制限する画期的な協定である「包括的共同行動計画」を放棄するよう、騙されやすいドナルド・トランプ大統領を説得したときはそうだった。こうした対応はイラン強硬派の力を強め、イランの新大統領が緊張を緩和させたいと繰り返し表明しているにもかかわらず、この地域の現在の危機も同じことをするだろう。ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤが7月にテヘランで暗殺されたことを含め、イスラエルが地域の同盟諸国を衰弱させたり排除しようとしたりする動きに対して、イランはイスラエルに向けてミサイルを発射することで対抗した。

残念なことに、こうした出来事によって、イランの指導者たちが潜在的な核兵器保有国であることを超えて、イランの核兵器保有を決断する可能性が高まっている。そのような決断をすれば、全面的な地域戦争(all-out regional war)に発展する可能性が高くなるが、イスラエルは究極の抑止力(ultimate deterrent)を欲しがるイランにさらなる刺激を与え続けている。もしそうなれば、イスラエルの最近の成功は驚くほど近視眼的(shortsighted)に見えるだろう。

イスラエルの最近の行動は、地政学的な孤立を深め、最終的にはアメリカとの特別な関係を危うくするかもしれない。10月7日の攻撃後、イスラエルが当然享受していた同情は、ガザ地区やレバノンの民間人に加えられた殺戮を世界が見るにつれて消え失せている。国際司法裁判所はイスラエルのヨルダン川西岸地区占領を国際法違反と宣言し、ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相は、戦争犯罪と人道に対する罪で国際刑事裁判所から逮捕状を請求されるかもしれない。サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国による承認は保留され、グローバル・サウス諸国の多くが反対を表明し、ヨーロッパ各国政府はますます苛立ちを募らせている。先週の国連総会でのネタニヤフ首相の演説に反対するデモ行進は、象徴的なジェスチャーではあったが、彼とイスラエルが多くの人々からどう見られているかを反映していた。

ネタニヤフ首相と支持者たちは、バイデン政権からの無制限の援助や、ネタニヤフ首相の米連邦議会演説でのスタンディングオベーション、アメリカ軍からの積極的な支援、大学キャンパスやその他の場所でのイスラエル・ロビーによる批判の抑圧の成功を慰めにするかもしれない。これらも短期的な戦術的成功であり、危険な反動を引き起こす可能性がある。多くの人はいじめられることを好まない。イスラエルの行動に対する正当な批判を封じ込めることを意図した言論統制やその他の規制の実施は、多くの憤りを生むだろう。特に、暴力と民族浄化の大量虐殺キャンペーンを展開している国を守るために、露骨かつ公然と行われている場合はなおさらだ。

更に言えば、イスラエルの行動がより広範な地域の戦争につながり、アメリカがそれに巻き込まれることになれば、アメリカ人は「特別な関係(special relationship)」の価値を真剣に疑うかもしれない。イラクのサダム・フセインを倒そうというネオコンのキャンペーンは、イスラエルをより安全にしたいという願望に触発された部分もあった(だからこそ、アメリカ・イスラエル公共問題委員会やネタニヤフ首相のようなイスラエルの指導者たちは、ブッシュ政権がこの戦争を売り込むのを助けたのだ)が、戦争が起きた理由はそれだけではないし、イスラエルもイスラエル・ロビーも非難されることはなかった。しかし、もしアメリカがまた中東戦争で兵士や船員を失い始めたら、アメリカから金と武器を受け取り、好き勝手なことをする、いつまでも恩知らずな保護国(client state)のためにアメリカ人を危険に晒していると、広く正しく見なされるだろう。さらに、ジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官の不手際が原因で、11月の選挙でカマラ・ハリスが落選するようなことがあれば、民主党も共和党も、反射的にイスラエルを支持することが今でも賢明な政治姿勢なのかどうか疑問を持ち始めるだろう。そして、もしこのようなことが起これば、アメリカ国内のイスラエル支持者に対する反発のリスクは高まるだろう。アメリカにおける反ユダヤ主義の台頭を心配するのであれば、大学キャンパスでの無害なデモよりも、その可能性の方がはるかに怖いはずだ。

最後に、イスラエル自身への影響である。107日の余波で、イスラエル国民はネタニヤフ首相(彼の決断がイスラエルをハマスの残忍な攻撃に無防備な状態にした)を見捨てて、国を正常な状態に戻す機会を得た。しかし、それは実現せず、ネタニヤフ首相の最近の戦術的成功は、イスラエルの未来について熱烈に宗教的でメシア主義的なヴィジョンに基づく政策をとる右翼過激派とともに、彼の政治的立場を強化している。穏健で世俗的なイスラエル人は、近年の経済を支えてきたハイテク部門の中心的存在であるが、ベザレル・スモトリッチ財務相のような人物が作りたがっているイスラエルに住むことを避けるため、離脱を続けるだろう。すでに50万人以上のイスラエル人(つまり人口の約5%)が海外に住んでいる。調査によれば、彼らの80%は戻るつもりはない。『ワシントン・ポスト』紙は、イスラエル経済が「深刻な危機に瀕している」と報じているが、こうした傾向はさらに強まるだろう。イスラエルの大学は国の宝であるが、外国人留学生の激減が報告されており、これはイスラエルのイメージ低下のさらなる兆候であると同時に、将来の科学的進歩への打撃でもある。要するに、ネタニヤフ首相の短期的な成果は、イスラエルの長期的な将来を危うくする傾向を強めているのだ。

人生は不確かなものだ。政治の世界では特にそうだ。しかし、数週間前にも書いたように、一見、軍事的、政治的に圧勝したように見えても、時間の経過とともに深い問題の種が芽生えることがある。成功するリーダーの課題は、一時的な優位性を利用して長期的な利益を確保することである。しかし、そのためには、いつ立ち止まり、いつ戦いから紛争解決へとシフトするかを知る必要がある。悲しいかな、ネタニヤフ首相にそのようなスキルがある気配はないし、身につけようという考えも全く持っていない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2023年10月7日に、ガザ地区を実効支配しているイスラム政治・軍事組織ハマスがイスラエル側を攻撃し、約1200人が死亡し、200人以上が人質となった。イスラエルは報復として、ガザ地区に侵攻し、約4万人が死亡した。イスラエルはレバノンのイスラム武装組織ヒズボラへも攻撃を加えており、中東地域の不安定さは増している。イスラエルは、ハマスとヒズボラを支援するイランとも緊張を高めている。イランの核開発の進行状況によっては、中東地域での核戦争の可能性ということまで考えられる。イスラエルは、イラン政府中枢にまで情報提供者、スパイを配置しており(ハマスの最高幹部イスマーイール・ハニーヤ政治局長をテヘランで爆殺しており、これはイラン政府中枢に相当な確度の情報提供者がいることを示している)、イランの核開発は進んでおらず、核戦争までは進まないという判断を下している可能性もあるが、そのような危険性があるということだけでも、国際政治においては大きな要素になる。

 イスラエルのガザ地区やレバノンへの攻撃に対して、世界各国で反感が高まっている。アメリカの各キャンパスでの抗議活動の激化は、イスラエルを支え続けてきたアメリカの外交政策にも影響を及ぼすことになった(民主党のジョー・バイデン政権は弱腰と見られるような状況になった)。また、イスラエルはアメリカの意向に沿わない形で、中東地域での戦争の段階を拡大しているように見える。現在の戦時内閣を率いるベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争がない状態であれば、自身と家族の汚職問題で辞任を迫られ、裁判となり、有罪判決を受ける可能性が高いと言われている。戦争が続く限り、個人としては逮捕されるような心配はない。そのような極めて個人的な利益のために、戦争を利用しているとすれば言語道断だ。また、イスラエルの一種の「傲慢さ」に関して、世界各国で反感が高まっている。

 ハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授は、イスラエルの建国からの歴史を検討し、イスラエルの戦略的洞察力が落ちていることが、イスラエルを危険にさらしていると主張している。建国からしばらくの間のイスラエルの首脳陣は非常に慎重な行動をし、戦略的に動いていた。しかし、1967年の第三次中東戦争での大勝利から、そのような慎重さが失われていったと分析している。ウォルトは次のように書いている。

「イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある」。

 私は常々、「勝利は敗北の始まりである」という考えを持っている。特に大勝利は、後の敗北につながることが多いと考えている。引用したように、イスラエルは第三次中東戦争以降に、慎重さを失い、結果として、自国の立場を悪くする選択を行っている。それが、現在の状況までつながっているということになる。傲慢さは人間にとって宿痾である。そして、成功や勝利によって浮かれてしまうのもまた人間の性(さが)である。

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イスラエル戦略の危険な衰退(The Dangerous Decline in Israeli Strategy

-数十年にわたり、シオニスト・プロジェクトは自らを守るのが下手になっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月16日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/16/the-dangerous-decline-in-israeli-strategy/

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イェルサレムのヘルツェル山で行われた故ゴルダ・メア元首相の国家追悼式典でスピーチするイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2018年11月18日)

イスラエルは深刻な問題を抱えている。国民は深く分裂しており、この状況が改善する見通しはない。ガザ地区では勝ち目のない戦争に巻き込まれ、軍部には緊張の兆候が見られ、ヒズボラやイランとのより広範な戦争の可能性も残されている。イスラエル経済は大きな打撃を受けており、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は最近、6万もの企業が今年閉鎖される可能性があると報じた。

更に言えば、イスラエルの最近の行動は、その世界的なイメージを著しく損ない、かつては想像もできなかったような形で孤立国家(pariah state)となりつつある。2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃の後、イスラエルは世界中から相当なそして適切な同情の声を受け、イスラエルには強い対応する権利があると広く受け入れられていた。しかし、それから10カ月以上が経過し、イスラエルはガザ地区でパレスティナ人に対する大量虐殺キャンペーンを展開し、ヨルダン川西岸地区では入植者による暴力が強まっている。国際刑事裁判所の主任検察官は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ギャラント国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を申請した。国際司法裁判所は、イスラエルの行動は本質的にも意図的にも大量殺戮的であるとする予備的所見を発表し、裁判所はついに、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区に対するイスラエルの占領と植民地化が明白な国際法違反であると宣言した。

ガザ地区で起きていることを見て、おぞましくはないにせよ、深く悩まずにいられるのは、シオニズムを擁護する最も頭の固い人たちだけだろう。イスラエルの行動に対するアメリカ国内の支持率は急激に低下しており、若いアメリカ人(多くの若いアメリカ系ユダヤ人を含む)は、イスラエルの行動に対するバイデン政権の杓子定規な対応に反対している。イスラエルの国家安全保障会議の元副議長エラン・エツィオンのこのツイートを読めば、イスラエルが自らに与えたダメージの大きさがよくわかるだろう。そして、世界有数のジェノサイド研究者である歴史家オメル・バルトフが最近イスラエルを訪問した際の記録を読めば、この問題が、いかに深刻かが分かるだろう。

これら全ての問題をネタニヤフ首相のせいにしたくなる誘惑に駆られるが、彼は確かに国内外から受けた批判に値する。しかし、全ての責任をビビ(ネタニヤフ)に押しつけることは、より深い問題、つまり、過去50年間にイスラエルの戦略的思考が徐々に損なわれていることを見落とすことになる。建国後の最初の20年間におけるイスラエルの功績と戦術的卓越性は、1967年以来のイスラエルの重要な戦略的選択がどの程度その安全保障を損なうのに役立ったかを、特に高齢者の間で曖昧にする傾向にある。

初期のシオニストとイスラエル第一世代の指導者たちは、鋭い戦略家だった。1900年当時のパレスティナにおけるユダヤ人人口はごくわずかで、1948年にイスラエルが建国された時点でもまだ少数派であったにもかかわらず、彼らはアラブ世界の真ん中にユダヤ人国家を建国するという、不可能に近いと思われたことに挑戦した。建国者たちは冷酷なまでに現実的であること(ruthlessly realistic)によって成功した。有利な機会を利用し、有能な準軍事組織(のちに一流の陸軍と空軍も)を構築し、世界の支配的な大国からの支持を勝ち取るために努力を重ねた。たとえば、ソ連も米国も1947年の国連分割計画を支持し、イスラエル建国直後に承認したことは記憶に新しい。ダヴィド・ベン=グリオンとその仲間のシオニスト指導者たちは、自分たちの最終的な目標に近づけるのであれば、少なくとも一時的には、長期的な目標に届かない取り決めも喜んで受け入れた。

国家の地位を獲得すると、新政府は執拗なハスバラ(hasbara、プロパガンダ)を通じて国際的な支持を獲得し、フランス、南アフリカ、その他いくつかの国との協力同盟を築くために熱心に取り組んだ。最も重要なことは、主に「イスラエル・ロビー(Israel lobby)」の力と影響力の増大に基づいて、アメリカとの「特別な関係(special relationship)」を確立したことである。イスラエルの初期の指導者たちは、敵対的な大国に囲まれた小国が国際的な支持を得るには慎重に計算し、多大な努力をしなければならないことを理解していた。巧妙な外交と少なからぬ欺瞞は、イスラエルが秘密裏に核兵器を開発し、イスラエル建国の残酷な現実を隠すのにも役立ったが、この事実はベニー・モリス、イラン・パッペ、アヴィ・シュライム、シンハ・フラパン、そして1980年代の他の「新しい歴史家」たちの業績によって広く知られるようになった。

完璧な政府など存在しないし、イスラエルの初期の指導者たちも時には過ちを犯した。ベン・グリオンは、1956年のスエズ危機でイギリス、フランスと結託してエジプトを攻撃し、イスラエルが軍を撤退させない可能性を示唆したときに過ちを犯した。しかし、ドワイト・アイゼンハワー政権がそのような不当な拡大を容認しないと明言すると、彼はすぐにその姿勢を捨てた。しかし、全体的に見れば、初期のシオニスト国家の戦略的洞察力(strategic acumen of the Zionist state in its early days)は、特に敵対国と比較した場合、印象的であった。

ターニングポイントとなったのは、1967年のアラブ・イスラエル戦争(第三次中東戦争)におけるイスラエルの圧勝だった。その結果は、当時見られたような奇跡的なものではなかったが(とりわけ、アメリカの諜報機関はイスラエルが容易に勝利するだろうと予測していた)、この勝利のスピードと規模は多くの人々を驚かせ、それ以来イスラエルの戦略的判断を損なう傲慢さを助長した。

思慮深いイスラエルの学者たちが繰り返し主張してきたように、主な誤りは、「大イスラエル(Greater Israel)」を創造する長期的な努力の一環として、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を保持し、占領し、徐々に植民地化するという決定を下したことだった。ベン・グリオンとその支持者たちは、新しいユダヤ人国家内のパレスティナ人の数を最小限に抑えようとしていたが、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を維持することは、イスラエルが、イスラエル系ユダヤ人の人口とほぼ同規模に急増しているパレスティナ人の人口を管理することを意味した。この結果、一般に「占領(occupation)」と呼ばれるように、イスラエルのユダヤ人としての性格と民主政治体制との間に避けがたい緊張関係(unavoidable tension between Israel’s Jewish character and its democratic system)が生まれた。それは、パレスティナ人の政治的権利を抑圧し、アパルトヘイト体制(apartheid system)を構築することによってのみ、ユダヤ人国家であり続けることができるということであった。イスラエルは、更なる民族浄化(ethnic cleansing)や大量虐殺(genocide)によってこの問題に対処することもできたが、どちらも人道に対する罪(crimes against humanity)であり、イスラエルの真の友であれば誰もそのようなことを支持することはできない。

大イスラエルの追求という決断の後には、すぐに別の過ちが生じた。イスラエルの指導者たち(そしてヘンリー・キッシンジャーを含むアメリカの指導者たち)は、エジプトのアンワル・サダト大統領が1967年にイスラエルが占領したシナイ半島の返還と引き換えに和平を結ぶ用意があるという兆候を見逃した。加えて、イスラエルの諜報機関は、エジプト軍がシナイ半島でイスラエル国防軍(Israeli Defense ForceIDF)に対抗するには弱すぎると誤って判断し、戦争まで進むのを思いとどまった。この誤った判断の結果が、1973年の第四次中東戦争だった。当初の挫折にもかかわらず、イスラエルは戦場では勝利を収めたが、戦後の交渉のテーブルでは勝利を収めることはできなかった。戦争の犠牲とアメリカからの圧力が相まって、イスラエルの指導者たちはシナイ半島を放棄するための真剣な交渉を始めるよう説得された。この転換は、やがてサダトの歴史的なエルサレム訪問、キャンプ・デイヴィッド合意、そしてその後のエジプト・イスラエル和平条約(当時のジミー・カーター米大統領の粘り強い巧みな仲介による)につながった。残念なことに、当時のメナヘム・ベギン首相は大イスラエルの目標に深く傾倒し、占領を終わらせようとはしなかったため、パレスティナ問題に真剣に取り組むこの有望な機会を逃してしまった。

戦略的判断が損なわれていることを示す次の明確な兆候は、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻であった。この計画は、タカ派のアリエル・シャロン国防相の発案によるもので、レバノンに軍事侵攻すれば、レバノンでかなりの勢力をもっていたパレスティナ解放機構(Palestine Liberation OrganizationPLO)を掃討し、ベイルートに親イスラエル政権を樹立し、イスラエルにヨルダン川西岸地区での自由裁量(free hand)を与えることができるとベギン大統領を説得した。この侵攻は短期的には軍事的に成功したが、レバノン南部をイスラエル国防軍が占領することになり、それがヒズボラの創設につながった。PLOをレバノンから撤退させても、パレスティナの抵抗は止まらなかった。それどころか、1987年の第一次インティファーダへの道を開き、パレスティナ人が祖国を離れたり、イスラエルの恒久的な支配に服したりするつもりはないというもう一つの明確なサインとなった。

先見の明のあるイスラエル人は、パレスティナ問題が消えることはないと認識していたが、歴代のイスラエル政府は問題を悪化させるような行動をとり続けた。たとえば、PLOは1993年に最初のオスロ合意に調印してイスラエルの存在を受け入れたが、イスラエルの指導者がパレスティナ人に独自の国家を提供することはなかった。2000年のキャンプ・デイヴィッド・サミットでエフード・バラク首相(当時)が提示した寛大と思われる提案は、それまでのイスラエルのどの提案よりも進んでいたが、それでもパレスティナ人に実行可能な国家を与えるにはほど遠いものだった。イスラエルが提示した最善の案は、ヨルダン川西岸地区に2つか、3つの独立した非武装の州(separate and demilitarized cantons)を作り、イスラエルがその新しい州の国境、領空、水資源を完全に管理するというものだった。これでは実行可能な国家と言えず、ましてや正当なパレスティナの指導者が受け入れられるものでもなかった。シュロモ・ベン=アミ元イスラエル外相が後に、「私がパレスティナ人だったら、キャンプ・デイヴィッドを拒否していただろう」と認めたのも不思議ではない。

パレスティナ人と和平を結ぶには、イスラエルが占領地での入植地の拡大を止め、パレスティナ人と協力して、有能で効果的で合法的な政府を樹立する必要がある。ところが、イスラエルの指導者たち、とりわけシャロンとネタニヤフに率いられた政権は、その反対のことをしてきた。入植地の拡大を止めようとせず、ハマスへの支援を黙認してでもパレスティナ人を弱体化させ、分断させようとし、二国家解決(two-state solution)を達成しようとするアメリカの努力を何度も妨害した。その結果、破壊的だが決定的ではない衝突が繰り返された(2008年から2009年の「キャスト・リード」作戦[Operation Cast Lead]や2014年の「プロティクティヴ・エッジ」作戦[Operation Protective Edge]など)。しかし、こうした「草刈り(mow the grass)」の繰り返しはパレスティナの抵抗に終止符を打つことはなく、最終的には10月7日のハマスの越境攻撃という、ここ数十年でイスラエルに与えた最悪の打撃に至った。

イスラエルの戦略的近視眼(Israeli strategic myopia)の最新の例は、イランの核開発計画の制限を交渉する国際的な取り組みに対するイスラエルの熱烈な反対である。イスラエルは戦略的理由から、中東で核兵器を保有する唯一の国であり続けることを望んでおり、地域の最大の敵であるイランが核兵器を取得するのを望んでいない。したがって、アメリカと世界の他の主要国がイランに2015年の包括的共同行動計画への署名を説得したとき、ネタニヤフ首相と他のイスラエル指導者は喜び、安堵したはずだ。それはなぜか? なぜなら、イラン政府に対し、濃縮能力を削減し、濃縮ウランの備蓄を縮小し、国際原子力機関からの非常に立ち入った査察を受け入れることを要求し、それによってイランの爆弾が10年、あるいはそれ以上手に入らなくなる可能性があるからだ。イスラエルの安全保障高官の多くは賢明にもこの合意を支持したが、ネタニヤフ首相とその強硬派支持者、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)やアメリカのイスラエル・ロビーのタカ派グループは断固として反対した。これらの強硬派は2018年に当時のドナルド・トランプ大統領に核合意から離脱するよう説得する上で重要な役割を果たしており、現在イランはこれまで以上に爆弾製造に近づいている。これほど近視眼的なイスラエル政策を想像するのは難しい。

イスラエルの戦略的洞察力(Israeli strategic acumen)の劇的な低下について説明するものは何か? 重要な要因の一つは、アメリカの保護(U.S. protection)とイスラエルの意向への服従(deference to Israel’s wishes)から来る傲慢さと免罪符の感覚(sense of hubris and impunity)である。世界最強の国が何をやっても支援してくれるのであれば、自分の行動を慎重に考える必要性は必然的に低下する。加えて、イスラエルが自らを被害者とみなし、自国の政策への反対をすべて反ユダヤ主義(antisemitism)のせいにする傾向は、イスラエルの指導者やその国民が、自らの行動がどのように敵意を引き起こしているのかを認識することを難しくしているからだ。ネタニヤフ首相がイスラエルで最も長く首相を務めていることも、問題の一因となっている。特に彼の行動は、自国にとって何が最善であるかという懸念だけでなく、私利私欲(汚職による服役を避けたいという願望)によって引き起こされている部分が大きいからだ。それに加えて、宗教右派(religious right)の影響力の増大がある。宗教右派の外交政策に対する救世主を求めるような見解は、最近『ハーレツ』の冷ややかな記事に要約されている。どの国でも、終末予言や神の介入を期待して戦略的決定を下すようになったら、要注意だ。

なぜそれが重要なのか? なぜなら、アメリカが9月11日の事件への対応で示したように、戦略的選択肢について知的に考えていない国は、自国にも他国にも大きな害を及ぼす可能性があるからだ。イスラエルの行動はイスラエル自身の長期的な展望を脅かすものであり、イスラエルの明るい未来を望む者は、その戦略的判断力の低下を特に懸念すべきである。イスラエルの復讐心に満ちた近視眼的な行動は、何十年もの間、罪のないパレスティナ人に甚大な被害を与え続け、現在もなおそうしている。不安定で思慮の浅い相手と密接に結びついていることは、アメリカにとっても深刻な問題である。時間、注意力、資源を浪費し続け、アメリカを無能かつ偽善的に見せるからだ。また、反米テロリズムの新たな波を刺激する可能性もあり、その結果もたらされるであろう損害は明らかだ。

残念なことに、この状況をどのように打開するかも明らかではない。アメリカのイスラエル支持者にできる最善のことは、民主党と共和党の双方に圧力をかけ、ユダヤ国家に厳しい愛情(tough love)を注ぎ、現在の軌道を再考させることである。もちろん、そのためにはAIPACのようなロビー団体が、イスラエルを現在の苦境に導いた自らの役割を反省する必要がある。残念ながら、それがすぐに実現する兆しはない。それどころか、イスラエルとその支持者であるアメリカは、さらに手をこまねいている(doubling down)。これは、大惨事(disaster)とまではいかなくとも、終わりのないトラブルの処方箋である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt

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 中東情勢は悪化の一途を辿っている。2023年10月にハマスの攻撃に対する報復として、イスラエル軍はガザ地区での軍事作戦を開始し、民間人に多くの死傷者が出ている。ハマスの人質となった人々の救出は思うように進んでいない。更には、イスラエルは、イランの首都テヘランでハマスの最高指導者を殺害し、イランから報復攻撃を受けている。加えて、レバノンの武装組織ヒズボラに対しても軍事作戦を開始している。ヒズボラのメンバーたちが使用していたポケベルに爆発物を仕込み、一斉に爆発して大きな被害を出したニューズは日本でも多く報道された。このポケベルはイスラエルから輸出されたものということが後に分かった。私は「イスラエルからの輸出された製品というのは怖いな。何が仕込まれているか分からないではないか」という感想を持った。イスラエルは危険な国という印象を多くの人々に与えたと思う。

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 このポケベルでの攻撃は衝撃的であったが、それ以外にも、イスラエルはレバノン、ヒズボラへの攻勢を強めている。ガザ地区に続いて、2つ目の戦線を開いたと言える。イスラエルの軍事的な優位性もあり、二正面作戦はまだ耐えられるだろうが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争の段階を引き上げようとしている。イエメンのフーシ派の空額も実施している。ハマス、ヒズボラ、フーシ派は全部がイランからの支援を受けている。ネタニヤフ率いるイスラエルはイランとの全面戦争(all-out war)へと進む危険性を持っている。

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そうなると、中東全体が戦争地域ということになり、石油の供給に大きな影響が出る。そうなれば、世界経済は大きなダメージを受ける。もっと怖いのは、核戦争勃発の可能性だ。核戦争に対する禁忌が破られるとなると、核兵器使用のハードルが大きく下がることになる。それはまた世界を危機に晒すことになる。戦争の段階を引き上げるべきではない。

 アメリカは現在、大統領選挙期間中で、しかも現職のジョー・バイデン大統領が再選を目指さないということになり、レイムダック化(無力化)している。そうした中で、イスラエルのネタニヤフ首相は暴走している。アメリカはコントロールする力を失っている。イスラエルへの資金援助や武器援助をアメリカが止めない限り、イスラエルはこうした状況を変えることはしないだろう。

 イスラエルのネタニヤフ首相は家族ぐるみでお金に関するスキャンダルを抱えており、平和に復帰すれば、家族ごと有罪判決を受け、牢獄行きとなる。そのために、戦争状態を続けたいということはあるだろう。しかし、それは世界に追って大きな不幸である。

(貼り付けはじめ)

ヒズボラのポケベル爆発は皆が考える以上に危険だ(The Hezbollah Pager Explosions Are More Dangerous Than You Think

-人権問題を超えて、今回の攻撃は中東におけるアメリカとイスラエルの政策にも疑問を投げかけるものとなった。

ハワード・フレンチ

2024年9月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/24/hezbollah-pager-explosions-lebanon-israel-middle-east-iran-us-policy/

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9月18日、ベイルート南部の地区で、前日にレバノン全土で発生したポケベルの爆発で死亡した人々の葬儀でヒズボラの旗を手にする男性。

先週、イスラエルがレバノンとシリアでヒズボラを攻撃した際、地政学的にどのような立場にあったにせよ、専門家の多くが最初に抱いたのは畏怖の感情(awe)だった。

敵対国も友好国も関係なく、作戦をやり遂げるために必要な、イスラエル情報・諜報機関の洗練の度合いに驚嘆した。イスラエルのために働く諜報員たちは、ポケベルやトランシーバーの中に微量の爆発物を仕込む仕事に重視し、これを宿敵の手にうまく渡さなければならなかった。この偉業は、1967年の六日間戦争でのアラブ連合軍に対する勝利、1976年の民間旅客機ハイジャック事件で捕らえられた人質を解放するためのウガンダのエンテベ空港攻撃、1990年代後半にさかのぼる過激派グループを攻撃するためのブービートラップ付き携帯電話の使用など、イスラエルの技術的・作戦的洗練の長い歴史を思い起こさせるものとなった。

今回の攻撃は、技術的なレヴェルでは素晴らしいものだったが、多くの批判も当然出ている。1つには、民間人に壊滅的な打撃を与えたことだ。ポケベルはヒズボラ・メンバーのものだったが、爆発によって少なくとも40人が死亡、3000人以上が負傷し、多くの非戦闘員が危険に晒される結果となった。もし運転手や親族がポケベルを携帯していたら、車の乗客や食卓にいた子どもたちはどうなっていただろうか? ヴィデオ映像によれば、市場や街角で爆発したものもあった。

政治理論家のマイケル・ウォルツァーは、『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページで、攻撃の瞬間には積極的に戦争に従事していなかったヒズボラの工作員を標的にした爆発は、「戦争犯罪の可能性が非常に高い(very likely war crimes)」と書いている。レオン・パネッタ元国防長官・元CIA長官でさえも、今回の攻撃がテロの一形態であることに「疑問の余地はないと考える(think there’s any question)」と述べている。

 

イスラエルへのロケット弾発射に使われる南部のヒズボラ陣地に対するエスカレートする空からの攻撃など、レバノンにおけるイスラエルの最近の戦術に対する私の懸念は、更にその先にある。ポケベルを爆発させての攻撃という衝撃が落ち着いた後、アナリストたちはイスラエルがこの攻撃で戦略的利益を得たかどうかを問い始めた。その答えは依然として不明だ。イスラエルがガザ地区でハマスに対して1年近く攻撃を続けている間、同じことが言える。そこでは、基本的な疑問が未解決のままである。その疑問とは、イスラエルは軍事作戦が終了した後に、一体何をするのか?

この2つのキャンペーンを結びつけているのは、イスラエルは軍事的優位の政策と無制限の攻撃作戦によって長期的な安全保障を達成できるという、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の明白な見解である。アメリカは、イスラエルに対する弱腰の批判とほぼ無制限の武器供給を通じて、この立場を黙認している。ガザ地区が示し始めたように、またレバノンとの戦争が起これば、それが再確認される可能性が高いように、このアプローチは、イスラエルが平和を達成するために、巻き添え被害の有無にかかわらず「悪者たち(bad guys)」を十分に殺せるという妄信的な希望をもって、近隣の土地を焦土と化すことに等しい。

このアプローチの1つ目の、明確な欠陥は、各軍事作戦が新たな敵を生み出し、イスラエルと近隣諸国との間の敵意を永続させる危険性があることだ。例えば、ガザ地区におけるイスラエルの完全な軍事支配は、パレスチナ人の政治的および領土的権利の差し迫った必要性に対処するものではない。実際、この地域の絶望と支配は、将来、イスラエルに対する新たな形態の抵抗を確実にするだろう。同様に、イスラエルのレバノン南部への侵攻は、両国間に敵対の新たな境地を生み出すだけであり、この作戦による死と破壊により、より多くのレバノン人がイスラエルに対する暴力的報復の方向に駆り立てられるのと同じくらい確実である。

しかし、私が最も懸念しているのは、それだけにとどまらず、イスラエルと同様に、アメリカの戦略にも関わることだ。ここ数十年、同盟関係にある両国は、イランを中東における暴力と不安定化の究極の原因とみなしてきた。しかし、イランに核兵器開発を断念させるための国際的な努力を除いては、イスラエルはともかく、アメリカはイランに政治的に関与する創造性をほとんど示してこなかった。イランと政治的な関わりを持つための非現実的な前提条件、たとえばテヘランがまず自国の政治体制を変えることや、イスラエルの生存権を認めることなどは、その数には入らない。

中東地域の問題を特に扱いにくくしているのは、イスラエルとイランの両方が古い文明的および宗教的アイデンティティの化身であるということだ。西側諸国の多くは、イスラエルが聖書の国であり、多くのユダヤ人がシオニズムへの正当な支持を、部分的には古代イスラエルの存在に基づいており、その物語が旧約聖書の本質を構成していることを知っている。専門家の領域以外ではあまり理解されていないが、イランははるか古代に遡る言語、文化、アイデンティティ、帝国、国家の伝統の継承者でもある。

ガザ地区での終わりの見えない暴力に対し、多くの人々が怒りの声を上げている。ユダヤ人もパレスチナ人も、現在紛争で分断されている土地から消えることはないということを認識することに代わるものはない。つまり、永続的な和平には、この深い溝を隔てた両側の人々、ひいては国家が、互いのニーズと利益を認識することが必要である。

これはイランにも同じことが言える。人口9000万人の国を悪者扱いする政策では、イランを消し去ることはできない。実際、西側諸国がイランの孤立化を図ろうとしても、イランはヒズボラやイエメンのフーシ派といった非国家的な代理勢力を増強し、ロシアや中国との関係を深めようとする決意を強めるだけである。

イスラエルと同様、西側諸国でも中心的な関心事となっているのは、イランの核開発計画であり、テヘランが長引く研究・精製段階を脱し、すぐにでも使用可能な核兵器を開発するのではないかという見通しである。残念ながら、核保有国の核軍縮に関する世界的な実績は極めて芳しくない。ウクライナは、ソ連時代から受け継いだ核兵器を廃棄した唯一の例であり、このことが悲しいことに、ウラジーミル・プーティンのロシアに対して脆弱な国になってしまった。例えば、北朝鮮をめぐる欧米諸国とアジアの長年にわたる外交は、平壌に核プログラムを放棄するよう説得することができなかった。好むと好まざるとにかかわらず(私は好まないが)、それは北朝鮮の体制がその将来について根本的な不安を感じているからだ。更に言えば、イスラエルは公式には認めていないが、何十年もの間、核兵器を保有していることは広く知られている。

イランの核開発プログラムに対する懸念は、テヘランともっと話をし、この地域の敵対関係を和らげる方法を模索する妨げになるはずはない。イスラエルを含む中東地域の広範な安全保障を確保する唯一の方法は、何らかの形でイランを西側諸国とより深く接触させ、最終的にはイスラエルやサウジアラビアなどの他国、パレスチナ人とともに、イランの安全保障上の懸念に対処することである。欧米諸国がそうするのは早ければ早いほどよい。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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