古村治彦です。
イラン戦争は開始から2カ月近くが経過しており、現在は停戦状態になっている。ホルム海峡封鎖をめぐり、アメリカとイラン両国は緊張関係にあるが、2回目の和平交渉に向けて、仲介国のパキスタンが動いている。その裏では中国もまたイランとの交渉を行っている。戦争はイランに有利な状況になっており、イランはそう簡単にアメリカに対して譲歩をすることはなく、かなり有利な条件での交渉を求めていると考えられる。それに対して、中国はあまり欲をかくと大きな失敗をするとイランを説得していると考えられる。
BRICS加盟諸国の地図
イランに対して、BRICSは積極的な支援をしていないように見える。また、国際的な問題に関して、足並みを揃えて行動していないように見える。しかし、それは当然のことだ。BRICSはもともとゴールドマンサックスが「21世紀において経済成長著しい国々」の総称として発表した言葉であって、それらの国々が自発的に集まったものではない。2009年になって初めて5カ国の首脳会談が開催された。その歴史はまだまだ浅い。これから枠組みを作っていく段階である。しかし、2010年代から、BRICSを中心とする西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)の経済成長や台頭が続き、世界の構造は大きく変わっている。G7よりもG20の枠組みが重要性を増しているのもその証拠である。
BRICSは軍事同盟や集団安全保障の枠組みではない。それぞれの国家体制も違う。宗教や価値観も異なる。それでも協力できるところから協力し、問題が起きれば話し合いで解決を目指すという、ASEAN(東南アジア諸国連合)スタイルの枠組みである。一種の緩さこそが枠組みの柔軟性と多様性を担保している。これが、アメリカ主導、西側主導になれば、「非民主的な国家は入れない」「近代的、啓蒙主義的価値観を共有しない国家は入れない」という「排除の論理」が先に立つ。西側諸国では「多様性(diversity)」「平等(equity)」「包摂性(inclusiveness)」という「DEI」が尊重されるが、国際関係においてそれらは全く尊重されない。本音と建前の使い分け、西洋支配の継続性のみが重視される。
建前だけの排除の論理がまかり通る国際秩序はこれから大きく変化していくだろう。西洋支配は終焉に進んでいくだろう。そうした中で柔軟性のある、包摂性の高い国際的な枠組みがこれから拡大していくだろう。BRICSはその中心となっていく。
(貼り付けはじめ)
BRICSはイラン問題で意見が分かれている。NATOやG7も同様だ(BRICS Is
Divided on Iran. So Are NATO and the G-7.)
―BRICSは地政学的な同盟ではなくそうであるべきでもない。
オリバー・シュトゥンケル筆
2026年3月18日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/18/iran-war-brics-nato-g7-economics-security/
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2025年7月6日にリオデジャネイロで開催されたBRICS首脳会議に出席したイランのアッバース・アラグチ外相とエジプトのモスタファ・マドブーリー首相
2月28日にアメリカとイスラエルがイランへの攻撃を開始して以来、多くのアナリストがBRICSは幻想に過ぎないと断言している。
イランは2024年に新規加盟国としてBRICSに加わった。しかし、BRICSは紛争に対する統一的な対応を示すことができていない。ブラジルや中国など一部の加盟国はアメリカとイスラエルの攻撃を非難したが、インドは非難していない。南アフリカは態度を保留している。こうしたBRICS批判者にとって、これらの意見の相違は、『ウォールストリート・ジャーナル』紙コラムニストであるサダナンド・ドゥームが先週主張したように、BRICSは一貫性を欠き、「全く無力(utterly ineffectual)」であるというおなじみの結論を裏付けるものとなっている。
しかし、この主張は誤った前提に基づいている。BRICSは安全保障に関する共通の立場を持つ正式な同盟のように振る舞うべきだという前提に立っている。実際には、BRICSは地政学的なブロックではないし、これまでもそうであったことはない。
BRICSは発足当初から、地政学的な優先事項が大きく異なる国々を結集させてきた。ブラジル、ロシア、インド、中国の首脳が初めて会合を開いたのは2009年で、その1年後に南アフリカが加わった。当時でさえ、加盟国は統一された世界観を共有していなかった。ロシア、そして程度は低いものの中国は、特に2014年のロシアによるクリミア侵攻以降、G7や西側諸国への対抗勢力としてBRICSを利用しようと長年努めてきた。一方、ブラジル、インド、南アフリカは、多国間連携戦略を追求してきた。
BRICSは発足当初から西側諸国の観察者から批判にさらされてきた。2011年、『フィナンシャル・タイムズ』紙のフィリップ・スティーヴンスは「モルタルなきBRICSに別れを告げる時が来た(“time to bid farewell” to
the “Brics without mortar”)」と宣言した。ジャーナリストのマーティン・ウルフは2012年のインタヴューで、BRICSは「グループではない(not a group)」とし、加盟国には「共通点が全くない(nothing in common whatsoever)」と断言した。他の評論家もBRICSを「ばらばらの四人組(disparate quartet)」「奇妙なグループ(odd grouping)」「寄せ集め(motley crew)」「無作為な集団(random bunch)」と表現し、「やや滑稽な(faintly ridiculous)」構想に基づいていると評している。
中国とロシアが賛成し、ブラジル、インド、南アフリカが反対した近年のBRICS拡大は、こうした矛盾をより顕著にした。2024年にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦が加盟したことで、このグループはさらに多様化し、分裂が激しくなった。イランのドローンがアラブ首長国連邦を攻撃する映像―BRICS加盟国同士の攻撃―は、多くの新メンバーの加入によってもたらされた地政学的な対立を如実に物語っている。
『フォーリン・ポリシー』誌のC・ラジャ・モハンが指摘するように、BRICSの拡大はグループ内の結束を弱体化させた。グループが拡大する以前は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やブラジルのジャイル・ボルソナーロ前大統領のように、西側諸国から経済的あるいは外交的に孤立する恐れのある加盟国にとって、BRICS諸国との関係は外交上の救命ボートとして頼りにできるという利点があった。2014年には、BRICS諸国はロシアのG20継続参加を支持した。5年後、アマゾン熱帯雨林の火災をめぐって西側諸国からブラジルへの圧力が高まる中、中国はボルソナーロ大統領の環境政策を称賛した。
BRICSの拡大は、特に国連安全保障理事会の改革問題において、グループ内の意思決定を麻痺させている。ブラジル、インド、南アフリカは長年、常任理事国入りを目指してきた。しかし、たとえ新たなBRICS加盟国が安保理改革を支持したとしても、その具体的な内容についてグループ内で合意は得られていない。エジプトやエチオピアを含むアフリカ諸国は、自国の議席獲得よりも南アフリカの議席獲得を優先しているように見える表現に抵抗している。
昨年開催されたBRICS外相会議では、参加国代表がグループ史上初めて共同声明で合意に至らず、緊張は頂点に達した。
BRICSは、過去にアメリカがイランに対する攻撃をエスカレートさせた際にも同様の優柔不断な態度を示してきた。昨年6月にアメリカがイランを攻撃した際、BRICSは比較的穏やかな声明を発表し、「深刻な懸念(grave concern)」を表明するとともに、攻撃を国際法違反と非難した。しかし、この声明はワシントンに言及しておらず、特にインドなど一部の加盟国がアメリカとのデリケートな関税交渉を行っていた時期に、ドナルド・トランプ米大統領との摩擦を避けることを意図したものとみられる。
イラン情勢の再燃をめぐるBRICSの分裂は、さほど驚くべきことではなく、特に何かを明らかにしているわけでもない。もし重大な軍事危機をめぐる意見の相違が、ある組織が無能であることの証拠だとすれば、西側諸国の多くの同盟も同じ試練に合格することはないだろう。
NATOとG7は、イラン戦争をめぐって意見が分かれている。スペインは、NATOの主要加盟国であるアメリカによる攻撃を国際法違反だと非難している。マドリードはまた、アメリカ軍が共同運営基地を攻撃に使用することを拒否し、ワシントンとの公然とした対立を招き、トランプ大統領からは貿易報復の脅迫を受けている。他のヨーロッパ各国政府も介入に消極的だ。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は月曜日、「これは私たちの戦争ではない(This is not our war)」と述べた。
アメリカがカナダやデンマーク領グリーンランドの併合または侵攻をちらつかせた際、NATOもG7も統一的な対応を示すことができなかった。2003年にアメリカがイラクに侵攻した際、フランスやドイツを含む複数のヨーロッパ諸国は戦争に強く反対した。国連安全保障理事会の改革といったより根本的な問題についても同様である。ドイツは常任理事国入りを目指しているが、イタリアはこれに反対している。しかし、G7が無力であるとか、崩壊寸前であると考える人はほとんどいないだろう。
BRICSについても同様の分析基準が適用されるべきだ。BRICSは、あらゆる地政学的危機に対して統一的な立場を取るために設立された訳ではない。むしろ、その目的は異なる。BRICSは、主要な新興国が選択的に協調(coordinate selectively)し、地政学的不確実性に対するヘッジを行い(hedge against geopolitical uncertainty)、依然として西側諸国が支配する世界において影響力を高めるためのプラットフォームなのである。
例えば、BRICSは2022年のウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアを経済的に孤立させるよう求めたにもかかわらずこれに抵抗した。これは、加盟国が、プーティン大統領が国際法に違反したという西側諸国の評価に異議を唱えたからではなく、ますます不安定化する世界において、経済的・地政学的な選択肢を確保しておきたかったからである。こうした現実的な判断は、グローバル・サウス(the global south)に限ったことではない。アメリカは最近、イラン戦争に関連した原油価格の高騰を受け、ロシアに対する石油関連の制裁を緩和した。
BRICSは設立以来、安全保障よりも経済・制度面の問題に重点を置いてきた。特に、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の改革、新開発銀行(New Development Bank)を通じた開発金融の道筋の構築、そして米ドルへの依存度低減(reducing dependence on the U.S. dollar)といった点において顕著である。BRICS首脳は今年後半、インドで第18回首脳会議を開催し、デジタルインフラと人工知能(AI)分野における協力について協議する予定だ。
こうした取り組みはしばしば進展が遅いものの、多くの新興国が、自国の影響力の増大をより適切に反映するよう世界秩序を適応させようとする共通の関心を示している。さらに、ブラジルや南アフリカといった国々にとって、BRICSはアジアの意思決定者と直接対話できる貴重な場であり、経済的にますます統合が進むアジア地域において、その存在感は際立っている。
このように、BRICSは同盟(an
alliance)というよりも外交的な場(a diplomatic space)、つまり、西側諸国の支配に対する懸念を共有する国々が、単一の戦略的アジェンダに縛られることなく、代替案を模索するためのフォーラム(a forum for countries that share concerns about Western dominance to
explore alternatives without committing themselves to a single strategic agenda)として機能していると言えるだろう。イランをめぐる現在の対立は、BRICSの本質を改めて示すものに過ぎない。BRICSとは、利害が一致する部分では協力し、一致しない部分では対立する、緩やかでしばしば混乱した国家連合である。
むしろ、イラン戦争はBRICS諸国の多方面にわたる連携と、より大きな戦略的自律性の追求を改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。一部の評論家がBRICSの解体を提唱しているのとは裏腹に、これまでBRICSから脱退を決めた国は一つもない。実際、BRICSは大きく成長を遂げている。最近では、トランプが主導する平和評議会(the
Trump-led Board of Peace)に加盟したものの、その後参加を停止したインドネシアのような新興国も加わっている。
BRICSという枠組みを誤解しているだけでなく、BRICSに対する批判は、世界政治におけるより根本的な変化を見落としている。世界は、同盟関係によって形成される秩序から、場当たり的な連合、課題別協力、そして短期的な利益とニーズに基づくトランプ流の取引的な関係へと移行しつつある。
イラン核戦争の最初の数週間は、この新たな現実を如実に示している。アメリカがロシアへの制裁緩和を決定すると、つい最近ウクライナの領土保全を認める国連決議への支持を拒否したペルシア湾岸諸国は、イランのドローン攻撃から自国領土を守るため、キエフに軍事顧問の派遣を要請した。その後、トランプ大統領は中国に対しホルムズ海峡の防衛支援を要請したが、中国はこれを拒否した。これらの行動は、長年の原則や同盟関係に基づくものではなく、差し迫った戦略的・経済的ニーズに基づくものだった。
BRICSは決して統一されたブロックにはならないだろう。それは主に、加盟国の利益にならないからだ。ブラジルは、アメリカとの交渉においてBRICSという枠組みを利用して交渉力を高めるのと同様に、アメリカとの関係や、最近締結されたヨーロッパ連合とメルコスール間の貿易協定を利用して、中国との交渉における交渉力を強化している。BRICSは、多くの国が、より細分化され、激動する世界に備えている方法の一つに過ぎない。
※オリヴァー・ストゥエンケル:ワシントンDCにあるカーネギー国際平和財団の民主政治体制・紛争・ガヴァナンスプログラムの上級研究員であり、サンパウロにあるジェトゥリオ・ヴァルガス研究所の国際関係学准教授。Xアカウント:@OliverStuenkel
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(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』











