古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ロナルド・レーガン

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

トランプ関税は世界を震撼させた。そのショックから世界はだいぶ回復している。最近、本のおかげもあって、色々な人に「トランプ政権やアメリカはどうなるんですか」「トランプはどうしたいんですか」という質問を受けることがある。ドナルド・トランプは有言実行の人物であり、発言したことをそのまま実行している。その点で非常に分かりやすい。そして、トランプは、ロナルド・レーガン政権をモデルとしているので、レーガン政権の政策も考えれば、トランプ政権の基本の柱は「2つの赤字、財政赤字と貿易赤字の解消」である。そのために、連邦政府の職員の大量解雇や政府機関の閉鎖を進めているし、高関税(とドル安誘導)もその一環だ。

 トランプ大統領の経済アドヴァイザーで、大統領経済諮問会議議長のスティーヴン・ミランの「マール・ア・ラーゴ合意(協定)」については以前にもこのブログでご紹介した。高い関税とドル安合意(1985年のプラザ合意の同様の)は各国経済に大きな影響を与えるが、各国はアメリカからの安全保障を受けているので、それを取引材料にして、それを受け入れるという考えになっているようだ。アメリカが国を守ってやる代わりに(それでも自分たちでも防衛費を増額せよということはある)、その代償を支払うのが当然だということになる。

先日、赤沢亮正経済産業大臣が訪米し、トランプ大統領とも会談を持ったが、席上で、日本のアメリカ軍駐留経費負担の5倍増(年間約2600億円から年間約1兆3000億円への増額)を求められたというのは、日本からは、なんでも搾り取ろう、それができる相手だというアメリカの意向がはっきりと見えて、属国の悲哀を感じる。それなら、今まで貯め込んできたアメリカ国債(世界で第1位の保有額を誇る)を売って資金を調達しますと言えないのが辛いところだ。他国であればそれくらいの交渉をするだろう。しかし、アメリカの衰退ぶりをトランプ政権が見せてくれていることは象徴的な出来事であり、にほんもいつまでも「従米一辺倒」では国益を大きく損なうことになる。

 アメリカが抱える深刻な問題である、財政赤字と貿易赤字は、アメリカが「強いドル」で、世界中から安い価格で物品を購入、それをドルで支払い、外国に支払ったドルは米国債という形でアメリカに戻るというシステムが生み出した結果である。結局、アメリカは借金で生きる国柄となった。トランプ大統領はそこを何とかしようとしている。彼が「製造業の国」という言葉を大統領就任式の演説で使ったのは極めて重要である。しかし、残念ながら、アメリカが製造業の国として復活するにはもう手遅れである。それだけのインフラも質の高い、生産性の高い労働者も既にアメリカには存在しない。

 歴史的に見ても、貿易や製造業で大きく発展した国では、成功者たちは金融の投資によって、安定的な収入を得られる形にして、富裕層となっていく。そして、金融の割合が大きくなり、貿易や製造業は衰退していく。アメリカも既にその段階になっている。汗水たらして働くのが尊い、それが正しい生き方だという倫理感もなくなっている。日本も既にそうなっている。それは国家の衰退に兆候なのである。

 ドナルド・トランプはアメリカの衰退を象徴する人物として、後の歴史書に記録されるだろう。彼が衰退を招いたということではなく、アメリカが衰退していることを初めて明確にした人物として、そして、その時代の時代精神、心性を象徴する人物として記録されるだろう。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の貿易に関する矛盾が現実のものとなった(Trump’s Trade Contradictions Come Home to Roost
-ドルは上昇するどころか下落している。これは関税に関する理論に反する行動であり、投資家たちがアメリカへの信頼を失っていることを示している。

ピーター・コイ筆

2025年4月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/08/trump-trade-tariff-dollar-markets-confidence/

ドナルド・トランプ米大統領は、長らくドルについて2つの考えを抱いてきた。世界市場でアメリカ製品を安くするためにドルを弱めたいと述べる一方で、世界の主要な準備通貨(reserve currency)としての地位を維持するためにドルを強くしたいとも主張してきた。

これら2つの目標は決して両立しない。そして今、彼の関税戦争(tariff war)がアメリカ経済を脅かす中、現実が厳しくなっている(we’re seeing reality bite)。トランプは望んだ通りドル安を実現している。1月の就任以来、ドルは主要通貨に対して5%下落している。しかし、彼が約束したドル高はどこにも見られない。

昨年、トランプの主要アドヴァイザーの1人であるスティーヴン・ミランは、いわゆる「マール・ア・ラーゴ協定(Mar-a-Lago Accord)」を構想した。これは、アメリカが貿易相手国に対し、事実上ドルの価値下落への協力を求めるというものだ。理論的には、これは強い立場から切り下げを画策することになる。

むしろ、ドルが下落しているのは、アメリカの弱体化に対する認識によるものだ。投資家たちは、短期的には貿易戦争(trade war)がアメリカの景気後退を引き起こし、長期的にはアメリカへの信頼の喪失が世界貿易の中心であるドルの役割を危うくするのではないかと懸念している。INGのグローバル市場責任者であるクリス・ターナー氏は顧客向けメモの中で、「アメリカの関税がアメリカ経済に逆風を吹き込むことで、ドルは無防備な状態になっている」と述べた。

トランプは、強いドルは一長一短(mixed blessing)だと正しく指摘している。輸入品は安く、輸出品は高くなるため、グローバル市場で競争する企業の労働者たちは打撃を受ける。トランプは、自ら「アメリカ経済の空洞化(the hollowing out of the American economy)」と呼ぶ状況を逆転させると公約しており、関税と並んでドル安は彼の政策の重要な柱となっている。

しかし、強いドルはアメリカの消費者たちにとって物価も下げることになる。そして、アメリカがドルの価値を維持するという確信こそが、他国が緊急時の準備金(emergency reserves)としてドルを保有し、国際取引で米ドルを使用することに積極的かつ熱心に取り組んできた主な理由である。

ブルッキングス研究所の昨年の分析によると、ドル資産は世界の外貨準備高の59%を占め、ユーロ圏内の決済を除く国際決済の58%でドルが利用されている。これは、世界の経済生産高に占めるアメリカのシェアが約4分の1に縮小しているにもかかわらず、準備高と決済の割合は大きい。

この優位性は、アメリカに重要な地政学的影響力を与えている。2024年11月30日のTruth Socialへの投稿で、トランプ大統領はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカに対し、ドルに挑戦しないよう警告した。トランプは、「彼らは新たなBRICS通貨を創設することも、強力な米ドルに代わる他の通貨を支持することもないだろう。もしそうするならば、100%の関税に直面することになるだろう」と書いている。

トランプ大統領の目標は、強いドルの良い部分は維持しつつ、その負担を軽減することだった。しかし、負担軽減は決して痛みを伴わないものではなかった。輸入価格は上昇し、貿易相手国はアメリカの輸出品に対して報復措置を取っており、トランプ大統領は「貿易戦争は良いことだし、勝つのも簡単だ(trade wars are good, and easy to win)」という1期目の任期中のメッセージから、偉大さへの道には「多少の混乱はあるだろう(there’ll be a little disturbance)」という警告へと方向転換した。

過去の経済混乱期において、アメリカ金融市場は比較的好調だった。それは、アメリカが投資家たちにとって安全な避難先とみなされていたためだ。世界的な金融危機のように、アメリカが問題の主因となった局面でさえも同様だった。しかし、今回はそうではない。アメリカの株価指数は、ヨーロッパ、中国、日本の株価指数と足並みを揃えて下落している。これは、アメリカが国際金融における特権的な地位を失いつつあることを改めて証明している。投資家や政府は、もはや信頼できる富の貯蔵庫ではないドル資産を保有したがらない。

確かに、これまでのドルの下落幅は株価の下落幅よりも小さいが、驚くべきことにドルは下落している。経済理論によれば、国が関税を引き上げると、通常はその国の通貨が上昇するはずだ。

なぜ関税がドルを押し上げるのだろうか? それは需要と供給(supply and demand)だ。関税は当初、アメリカの輸入需要を減少させるため、海外に流出するドルは減少する。ドルが比較的不足しているとき、他の通貨に対するドルの価格は上昇する。ドル高は輸入品を安くすることで、関税の初期効果を部分的に相殺する。経済学者のオリヴィエ・ジャンヌは2020年に、関税関連のニューズが2018年の中国人民元の下落の約3分の1を説明すると推定した。

貿易介入が通貨市場に相殺効果をもたらすという考えは、決して新しいものではない。1752年、スコットランドの哲学者であり、経済学者でもあるデイヴィッド・ヒュームは、輸出制限(restrictions on exports)は「それらに対する為替レートを上昇させる以外に何の目的も持たない」と記した。

貿易理論に反して、今回の件でドルが上昇していない理由は、アメリカ経済の健全性に対する懸念がドルに下押し圧力(downward pressure on the dollar)をかけており、それが予想される貿易フローから生じる上昇圧力(the upward pressure)を圧倒しているためである。

トランプのドル高に対する複雑な感情は、彼の貿易政策における唯一の矛盾ではない。トランプは、関税によって歳入が増加し(おそらく所得税を廃止するのに十分な額になるだろう!)、製造業の雇用がアメリカに戻ってくると約束している。

しかし、ドル安・ドル高のディレンマと同様に、これら2つの目標を同時に達成することは不可能である。関税によって多額の収入が生まれるのは、外国製品が依然としてアメリカに流入しているからに過ぎない。その場合、関税によって製造業の雇用が回復することはない。逆に、関税によって製造業の雇用が回復するとすれば、それは輸入が枯渇するからに過ぎず、つまり関税によって多額の収入が戻ってくる訳ではない。経済の基本原則は、(イギリスの元首相ボリス・ジョンソンの発言にもかかわらず)ケーキを食べて、それをまた食べることはできない、ということだ。

オランダの経済学者ヤン・ティンベルゲンがまだ生きていたら、トランプ大統領に対し、関税で一度に多くのことを達成しようとしていると指摘できただろう。1969年に第1回ノーベル経済学賞を受賞したティンベルゲンは、それぞれの政策目標にはそれぞれ独自の手段が必要だと述べた。パイロットが2つの空港の平均に着陸することはできないという直感的な理解だ。

(最近CNNに出演したスコット・ベセント米財務長官は、この難問は段階的に解決できると述べた。当初は関税による収入は多額になるだろうが、それは「縮む氷の塊(shrinking ice cube)」のようなものだ。時間が経つにつれて輸入は減少し、国内製造業が成長していく。そして、その経済活動への課税が関税収入に取って代わるだろう。まあ、そうかもしれない。)

さらに、トランプ関税のコストを負担するのはアメリカ人か外国人かという永遠の疑問がある。関税は輸入時点で支払われることになっているが、それでは最終的に誰がそのコストを負担するのかという疑問には答えられない。ベセントはその答えを知っていると考えている。ベセントはボスであるトランプの発言に同調し、3月初旬にCBSニューズに対し、中国は「いかなる関税も負担するだろう(will eat any tariffs that go on)」と語った。

しかし、経済学者たちは、それはどちらが市場力(market power)を持っているかにかかっていると指摘する。もし中国の各メーカーがアメリカの顧客を維持するために関税コストを負担しなければならないと感じれば、関税コストの全額を負担することになるだろう。これがベセントのシナリオだ。一方、もし中国のメーカーが関税コストを顧客に押し付けることで済むなら、最終価格は関税分だけ上昇し、アメリカ人がそのコストの全額を負担することになるだろう。

現実はおそらく、これらの両極端の間のどこかにあるだろう。トランプ氏が前回大統領を務めた際、中国やその他の輸出国は関税の恩恵を受けなかった。受けたのはアメリカ国民だ。経済学者のメアリー・アミティ、スティーブン・J・レディング、そしてデビッド・E・ワインスタインは、2018年と2019年に課された関税に関する、2020年の記事の中で、「アメリカの関税は、依然としてほぼ全額をアメリカ企業と消費者が負担し続けている(U.S. tariffs continue to be almost entirely borne by U.S. firms and consumers)」と述べている。

多くの主流派経済学者たちは、関税が特定の状況下では正当な手段となり得ることに同意している。例えば、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)は、貿易相手国による補助金などの不公正な慣行から自国を守るために、各国が関税を課すことを認めている。また、成長過程にある「幼稚産業(infant industries)」、つまり、競争(competition)から保護する必要がある産業を保護する関税を擁護する経済学者もいる。

しかし、トランプは、関税を必要悪(necessary evils)ではなく、それ自体が善であると考えている。最近NBCニューズに対し、輸入車への25%の関税は「完全に」恒久的だと語った。また、不法移民やフェンタニルの密売の削減など、貿易とはかけ離れた目標を達成するために関税を利用することも志向している。最近では、ロシアがウクライナ停戦への取り組みを妨害した場合、ロシア産原油を購入する国に関税を課すと警告した。

トランプの思考に一貫した方向性を見出すのは難しいがアドヴァイザーたちの一部は試みている。

前述のミランは、トランプ大統領の大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisors)の委員長を務めており、11月にトランプの広範な関税政策の少なくとも一部、すなわち「マール・ア・ラーゴ合意」の枠組みを示した。そこにはドルの評価を正す試みも含まれており、準備金や取引の主要通貨であり続けながらドルをいかに安くできるかを示した。

ミランは、他国がアメリカ資産への投資のためにドルを蓄積しているため、ドルが過大評価されており、その結果、アメリカ製品の価格が高騰し、産業が空洞化していると主張した。

ミランは論文の中で、貿易赤字の削減はドルを弱めるのではなく、上昇圧力をかけることを認めている。彼の解決策は、市場の力に逆らってドルを押し下げるために介入する意思のある国々の連合を形成することだ。これは、1985年のプラザ合意の現代版であり、日本円、西ドイツのドイツマルク、その他の通貨に対するドルの価値を下落させた。

ミランは、高関税(high tariffs)はアメリカに貿易相手国からドルを押し下げるための協力を得るための「交渉力(negotiating leverages)」を与えると記している。それでも通貨切り下げ計画に同意しない貿易相手国は、高関税に直面し、アメリカ軍の保護を失うリスクを負うだろうとミランは付け加えた。この華々しい発言は、トランプへの支持を一層高めたかもしれない。

ミランは、ドル操作(dollar manipulation)のいかなるシナリオも「友好国、敵国、そして中立貿易相手国の間のより明確な線引き(a much stronger demarcation between friend, foe and neutral trading partner)」を必要とすると述べた。ベセントも同様の表現を用い、アメリカの要求に従う意思に応じて各国を緑、黄、赤の「バケツ(buckets)」に分類することについて言及した。

この春、経済学者モーリス・オブストフェルドは、3月27日に開催されたブルッキングス研究所の経済活動に関する論文会議で発表した論文の中で、トランプ政権の関税政策とドル政策を分析した。カリフォルニア大学バークレー校のオブストフェルド教授は、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)の元チーフエコノミストである。

オブストフェルドは、提案されているマール・ア・ラーゴ協定をあまり高く評価していない。オブストフェルドは次のように書いている。「約束されたマクロ経済のファンダメンタルズの変化が実現しない限り、為替レートへの影響は短命に終わる可能性が高い。また、他国がなぜ同調するのかは不明だ。それは、自国通貨が過小評価されていると考える国はほとんどないからだ」。

アメリカの貿易相手国との関税戦争を煽ったことで、トランプ大統領は意図せぬ結果の渦に巻き込まれた。それは、経験の浅い旅人にとっては方向感覚を失わせる場所であり、行き止まりや曲がり角、そして上っているように見えて実際には下っているエッシャーの絵にある階段が数多く存在する。トランプ大統領は、抜け出す道を見つけるために専門家たちの指導を受けることができるかもしれない。

※ピーター・コイ:経済を専門とするジャーナリスト。

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、「ドナルド・トランプを生み出したポピュリズムを促進したのはロナルド・レーガンだ」という内容の論稿をご紹介する。3月25日発売の最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも触れているが、トランプが目指しているのはレーガン政権である。以下の論稿の内容を簡単にまとめると以下のようになる。
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ロナルド・レーガンとドナルド・トランプ

ドナルド・トランプの返り咲きでの大統領就任、第二次政権の発足には、ロナルド・レーガン大統領が提唱した政策が基礎にあるという主張がある。まず、トランプの勝利の背景には、民主党政権の失策が挙げられ、バイデン大統領は労働者階級への対応が不十分だったとの主張がある。

実際、民主政体と資本主義の中で、過去45年間の成長の停滞や不平等の拡大、社会の分極化が影響を及ぼしていると指摘されている。レーガン政権下での新自由主義は、ポピュリズムを育む条件を生み出した。当時、経済成長は過去のピークを迎え不平等は縮小していたが、レーガン以降は、巧みに福祉モデルが変更され、市場の自由が重視されるようになった。

これにより富裕層が重要な利益を享受し始め、所得と資産の格差は急激に拡大していった。また、経済成長の鈍化に伴い、低賃金労働者の生活は困窮し、特に住宅市場でも厳しい状況が続いている。トランプが選挙で勝利するまでの間、大卒でないアメリカ人の実質賃金は減少し続け、低成長がこれに拍車をかけている。

このような経済的な背景が、政治における矛盾を浮き彫りにし、なぜ貧困や不平等が拡大しながらも、人々がそれを支持するリーダーに投票するのかという疑問が出てくる。この疑問に対する答えは、政治的分極化が影響を及ぼしていることにある。政治家たちは、支持を得るために対立を煽り、しばしば恐れを煽る話題に焦点を絞る。この結果、右派と左派の間での激しい分極化が進行し、急進的なポピュリズムが政治に浸透する余地を生んでいる。

トランプはこうした政治システムの脆弱性を利用し、初めてのポピュリスト的な権力掌握を実現した。実のところ、トランプのような人物が過去に現れなかったこと自体が驚きであり、2008年のオバマ対マケインの大統領選挙戦中に適切な候補者が現れるチャンスは十分にあった。彼らが成長の鈍化、不平等、そして分極化といった課題を武器として用いることで、情勢は大きく変わった可能性がある。このような分析が、トランプ大統領の台頭の背景とアメリカの民主的文化に挑戦する要因を示している。

 アメリカは政治的分裂、格差拡大が続いている。トランプを押し上げたのはこうした現状に対する異議申し立てとしてのポピュリズムだ。自分たちの生活を何とかして欲しいという切実な声だ。しかし、人々の生活が劇的に良くなることはないし、それは元々不可能なことだ。トランプはその点では幻影を見せているということもできる。しかし同時に、トランプは人々の声を結集して、ワシントンの政治の大掃除を行おうとしている。トランプの存在こそが大いなる矛盾であるが、彼にしかできないことを今やろうとしている。

(貼り付けはじめ)

ロナルド・レーガンがトランプ2.0のための道筋を整えた(Ronald Reagan paved the way for Trump 2.0

ジラッド・テネイ筆

2025年1月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5092139-trump-reagan-populism-crisis/

2021年1月6日に連邦議会議事堂でドナルド・トランプ支持者たちによる暴動が起きた直後、トランプが2期目の大統領に就任する可能性があるという考えは事実上消え去ってしまった。しかし、彼の政権復帰を可能にする条件は、ロナルド・レーガン大統領が最初に導入した政策から始まり、数十年かけて整えられた。

催涙ガス(tear gas)が消え、2021年1月に連邦議事堂の事件が片付いた後、FBIは責任者を逮捕するためにアメリカ史上最大の連邦捜査を開始した。デモ参加者たちに「地獄のように戦え(fight like hell)」と促していたトランプは、後にこの混乱に関与した罪で連邦起訴されることになる。確かに、これではどんな新しい大統領選挙キャンペーンも笑い話にしかならないだろう。 

では、トランプはいったいどうやって勝利したのだろうか?

コメンテーターたちはすぐに民主党の政権時代の責任にした。ジョー・バイデン大統領は労働者階級に背を向けたのか? たしかにそうだが、だからと言って、ほとんど全ての投票グループがトランプにシフトした理由を説明することはできない。トランプは1期目にして、大恐慌以来初めて、就任時よりも雇用を減らして退任した大統領となったのだ。

バイデンが選挙戦から脱落するのが遅すぎたという意見もある。しかし、彼は悲惨な討論会に参加する前から世論調査でリードしていた。また、カマラ・ハリスの選挙運動が「ウォーク(woke)」しすぎていた、もしくは、バイデンとは違うことをしたはずだと特定できなかったことが致命的なダメージを与えたと言う人もいる。また、記録的なインフレやその他の経済的圧力を指摘する人もいる。

これらの理論は積み重なるが、どれもここでの本当の疑問には答えていない。その疑問とは、 「民主的価値観が国民精神に深く根付いているこの国が、公然とそれに背く大統領を選ぶことができるだろうか?」というものだ。

実際のところ、民主政体資本主義は過去45年間、予見可能な危機(foreseeable crisis)に向けて着実に構築されており、レーガン政権時代に始まった成長の停滞、不平等の拡大、分極化の進行という3つの相互に強化し合う傾向から構成されているということである。

確かに、トランプとレーガンの比較は行き過ぎだ。しかし、見落とされているのは、レーガンの政策がどのようにしてポピュリズムによる権力掌握の条件を作り出したかということだ。レーガンは産業革命以来最高の成長率を誇った時期に政権を握った。不平等は縮小傾向にあり、ほぼ全員が進歩の成果を共有するようになっていた。

しかしレーガン政権は、前任者たちが確立した福祉モデルに背を向け、新自由主義の政治経済理論とイデオロギー(political-economic theory and ideology of neo-liberalism)を支持した。新自由主義者たちは税金で賄われる政府プログラムが生活を向上させる最善の方法であるという考えを否定した。彼らは、むしろ、市場が繁栄すれば誰もが繁栄するという確信を持った(Rather, they believed that when the market prospers, everyone prospers)。そして市場が繁栄するのは、政府がその邪魔をしなくなったときだ。富裕層に対する税率が大幅に引き下げられ、所得格差が急速に拡大した。

1980年代にいわゆるレーガノミクスが導入されて以来、所得と富における上位1%と上位10%の割合は、他の全ての人々の犠牲の上に劇的に増加している。これは世界的な傾向であるが、アメリカで最も顕著である。

これは情報革命(information revolution)によってさらに深刻化し、巨大なスキル・プレミアム(熟練労働者と非熟練労働者の賃金差)を生み出した。サーヴィス経済へのシフトと脱工業化(shift to a service-based economy with increasing de-industrialization)の進行が相まって、すでに広がっていた貧富の格差が更に拡大した。ラストベルト一帯の製造拠点は閉鎖され、あるいは閉鎖されつつあり、ブルーカラー労働者の雇用喪失を加速させた。その結果、格差は20年代最後の水準に近づいている。

1980年代はまた、高度成長時代(era of rapid growth)の終わりを意味した。1960年代、アメリカ経済は年平均4%以上の成長を遂げていた。過去10年間では、この数字はおよそ2%である。急速な格差拡大と経済成長の鈍化が意味するのは、貧困ライン以下(below the breadline)の人々を深く傷つけることである。

低成長は、経済が格差拡大(rising inequality)の影響を緩和するのを妨げる。パイが均等に分配されないまま成長が鈍化することで、親よりも貧しい世代が生まれることになる。

トランプが選挙で初勝利するまでの40年間で、人口の64%を占める大卒の学位を持たないアメリカ人の実質時給は実際に減少した。高卒の労働者の賃金は19.25ドルから 18.57ドルに下がり、高校を卒業していない労働者の賃金は15.50ドルから13.66ドルに下がった。

この影響は住宅市場にもはっきりと表れている。2016年には、平均的な労働者が中央値の家を買うために必要な労働時間は1976年よりも40%長くなった。

これは資本主義民主政治体制の根幹にある深い矛盾(deep contradiction)を白日の下に曝している。不平等が拡大し、大多数の人々の生活が更に悪化しているとしたら、どうやって多数派が自分たちに利益をもたらさない制度を永続させる政党や大統領に投票し続けることができるだろうか?

答えは三番目の原動力である政治的分極化(political polarization)にある。政治家たちは有権者たちに対して反対票を投じさせるため、分裂を煽る選挙戦術に訴える。これらはしばしば、アメリカにとって増大し続ける脅威であるかのように仕立て上げられる。

政治家の取り上げる話題は変化する。テロとの戦争、移民、批判的な人種理論、ジェンダーがそうだ。しかし、戦略は同じだ。怒りの焦点を他の問題に集中させることで、システムの主要な矛盾、つまり主にエリートに奉仕する民主政治体制から目を逸らすことになる。

その結果、右派と左派の両方で分極化と急進化(polarization and radicalization)がますます進む政治文化が生まれた。この二極化により、極端なポピュリスト的立場の政治領域への参入が可能になる。また、権威主義的な権力掌握のために体制への信頼を失った多くの有権者が存在する分断された政治システム(divided political system)を悪用する機会も生み出す。その機会を最初に掴んだのはトランプだった。

実を言うと、別の「ドナルド・トランプ」がもっと早く起こらなかったのは驚くべきことだ。必要だったのは、2008年のオバマ対マケインの大統領選挙戦中に適切な大統領候補者が登場することだけだった。彼らは、成長の鈍化、不平等の拡大、二極化の進行など、1980年代に始まった状況を武器化すればよいだけのことだ。これがドナルド・トランプ大統領のポピュリズム的な権力掌握のレシピであり、アメリカの民主的な文化の根幹を揺るがしている。

※ジラッド・テネイ:ERI研究所の創設者兼会長。ERI研究所は社会に与えるインパクトと慈善活動に特化したリサーチ会社である。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ジミー・カーター元大統領(在任:1977-1981年)が100歳を迎えた。米大統領経験者としては最も長寿となった。カーターの名前を聞いて懐かしいと思えるのはもう50代から上くらいだろう。話が脱線して申し訳ないが、落語家の初代林家三平師は「肩をもんでいる(カーター大統領、ウォルター・モンデール副大統領)」という洒落を作って寄席を沸かせた。それももう50年近くも前のことだ。
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 カーターは幻影期の大統領の頃の評価は最悪だった。アメリカの経済状態は悪く、対外的にはイランでイスラム革命が起き、アメリカ大使館で人質事件が起きた。人質奪還作戦を国家安全保障問題担当大統領補佐官だったズビグニュー・ブレジンスキーが提言し、反対するサイラス・ヴァンス国務長官の意見は退けられ、作戦は実行され失敗した。この作戦実行までの過程は外交政策分析のケーススタディでよく使われる。
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 こうした厳しい状況で、カーターは再選を目指したが、大統領選挙で共和党のロナルド・レーガンに惨敗した。史上最低の大統領という烙印を押されてホワイトハウスを去った。しかし、その後の活動で、彼は「最も偉大な元大統領」という評価を得て、更に、現役時代の業績の再評価も進んでいる。カーターはビル・クリントン政権下で、朝鮮半島情勢が緊迫化し、アメリカによる空爆が起きるかという瀬戸際の情勢で、北朝鮮を訪問し、当時の北朝鮮の最高指導者である金日成国家主席と会談を行い、空爆を回避した。また、これ以外にもアメリカの特使を務めることが多かった。
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 カーター政権はイスラエルをめぐる情勢で一定の成果を出した。それがキャンプ・デイヴィッド会談とイスラエル・エジプトの平和協定である。カーター政権以降で、カーター政権以上に成果を出した政権はない。一方で、カーターはイスラエルの対パレスティナ政策を厳しく批判し、アパルトヘイトにならないようにすべきだと警告を発した、結果として、イスラエルは彼の警告を受け入れず、現状を迎えている。カーターの先見の明が如何に正しかったが明らかになった。

 カーター以降の歴代の大統領経験者で彼ほど退任後に精力的に活動した人はいなかった。大統領という激務を退いたのだから、遊んでいても誰も文句を言わないが、カーターと比べると、私利私欲に走ったり、趣味に没頭したりでは見劣りするのは事実だ。カーターの偉大さを私たちは改めて顕彰し、アメリカの政権はその抑制的かつ理性的な政策遂行から学ばねばならない。

(貼り付けはじめ)

アメリカで最も過小評価されている大統領の誕生日を祝う(Happy Birthday to America’s Most Underrated President

-100歳の誕生日にジミー・カーターの外交政策を称賛する

スティーヴン・M・ウォルト筆Stephen M. Walt

2024年10月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/01/jimmy-carter-100th-birthday-foreign-policy-president/

写真

1980年10月2日、前日に56歳の誕生日を迎えた直後、フィラデルフィアでの選挙資金集め活動中にバースデーケーキを賞賛するジミー・カーター大統領

今日、第39代米大統領のジミー・カーターが100歳の誕生日を迎える。彼はれきだい米大統領で唯一、この記念すべき年齢に達する。彼の100歳の誕生日は、彼の大統領時代と外交政策への対応を振り返るにふさわしい瞬間となる。研究すればするほど、特に彼の歴代大統領の多くと比較した場合、それはより良く見える。

1期限りで退任した大統領にほとんどと同じく、カーターも1980年に複雑な評価を受けて退任した。彼は、低成長と消費者物価の高騰というスタグフレーションの時代に大統領になるという不運に見舞われた。この状況は、共和党のロナルド・レーガン候補に有名な質問を投げかけることを可能にした。それは「4年前より今の方が裕福ですか?(Are you better off today than you were four years ago?)」というものだ。

しかし、カーターは外交政策でもほとんど称賛を得られなかった。イラン革命、それに続く人質事件と救出作戦の失敗、そしてソ連のアフガニスタン侵攻が重なり、カーターはアメリカの敵対勢力の暴走を許した弱腰の指導者(weak leader who had allowed the United States’ adversaries to run amok)だと多くの人が見なした。1979年のニカラグアのサンディニスタによる政権奪取を加えると、この弱さの肖像は完成したように考えられる。

こうした評価は不正確で不公平だ。イランに関して言えば、革命は本質的に予測不可能で混沌とした出来事であり、外部の権力がそれをうまく扱えるようなことはめったにない。俗説に反して(contrary to popular mythology)、イランの国王が倒れたのは、カーターが彼を見捨てたからでも、彼の人権侵害を批判したからでもない。イラン国王が力を失ったのは、イラン国民との接触を失い、公表されていない(そして最終的には致命的な)ガンに苦しんでいたからだ。アメリカはイランの新しい支配者と問題を抱えることになったが、カーターがヘンリー・キッシンジャーやデイヴィッド・ロックフェラーたちの圧力に屈し、瀕死の国王を治療のためにアメリカに入国させた後に人質事件が起きた。それは間違いだったが、著名な外交政策専門家の多くがそれを手助けした。また、カーターの忍耐強い外交が最終的に全ての人質を無事に帰国させたことを忘れてはならない。現在の世界の指導者たちにとって、この教訓に留意するのが賢明ということになる。

更に重要なことは、カーターがある種のお人好しで世間知らずのリベラル派だったという非難はナンセンスだということだ。メリーランド州アナポリスにある海軍兵学校を卒業し、元海軍将校(1975年以降に軍に勤務したアメリカ大統領は、彼とジョージ・HW・ブッシュだけだ)であるカーターは、原則的な外交政策と結びついた強力な防衛の重要性(the importance of a strong defense wedded to a principled foreign policy)を理解していた。

カーターの元側近のスチュアート・E・エイゼンシュタットが昨年『フォーリン・アフェアーズ』誌で指摘したように、「レーガン政権が配備した主要兵器システムのほとんどは、実はカーターが承認したものだった。彼はまた、ソ連の介入を抑止し、ペルシャ湾石油へのアクセスを守るために急速展開軍(Rapid Deployment Force)を創設し、アフガニスタンの対ソ連のレジスタンスやニカラグアの反政府勢力サンダニスタへの秘密援助(covert aid)を許可した。結論としては、「カーターは鳩(dove)ではなかった」ということになる。

カーターの積極的な業績は、当時よりも今日の方が印象深くなる。強硬派(hard-liners)からは、人権を強調する彼の姿勢はナイーブで非現実的だと批判された(私も大学院時代にそう考えた記憶がある)が、彼は重要なことを掴んでいた。人権を強調することは、アメリカの評判を高める必要があった時期に、アメリカの「ソフトパワー(soft power)」を高めた。西ドイツの元政府高官フリードベルト・プフリューガーは後に次のように書いている。「カーターの下で、アメリカはもはやヴェトナム、ウォーターゲート、CIAと同一視されることはなく、西半球の自由と再び同一視されるようになった」。

カーターは、チェコの憲章77運動やヘルシンキ協定、アンドレイ・サハロフのようなソ連の反体制派を公然と積極的に支持し、ワルシャワ条約機構内の変化を求める圧力を強めた。エイゼンシュタットが述べたように、アナトリー・ドブリニン元駐米ソ連大使は後に、カーターの政策は「ソ連内部の自由化(liberalization inside the Soviet Union)という長く困難なプロセスにおいて重要な役割を果たした」と述べている。

カーターはまた、ソ連とアメリカの戦略兵器に更なる制限を設けたSALT II条約の交渉でも称賛に値する。この条約は米連邦上院で批准されることはなかったが、その後何年もの間、米ソ両大国は自主的にその制限を遵守した。カーターはまた、ブラジルとアルゼンチンに対し、それぞれ数年後に究極的な選択となった核開発計画の放棄を迫り、核不拡散体制(nonproliferation regime)を強化した。

カーターの外交政策上の主要な功績は、もちろんエジプトとイスラエル間の和平プロセスの管理である。彼の熱心かつ個人的な交渉への関与は、1978年に画期的なキャンプ・デイヴィッド合意を生み出し、翌年の画期的なエジプト・イスラエル和平条約へとつながった。アメリカの中東担当交渉官アーロン・デビッド・ミラーが後に次のように回想している。 「アメリカ人、エジプト人、イスラエル人の誰と話しても、ほとんどの人が同じことを言った」カーターがいなければ、平和条約はなかった(no Carter, no peace treaty)」。

カーターは「親イスラエル(pro-Israel)」としては不十分だと批判されることが多いが、イスラエルのシュロモ・ベン=アミ元外相は彼の貢献をより明確に見ている。アラブ・イスラエル和平への道筋に意味のある突破口を開くことができた」のはカーターだった、と彼は書いている。なぜか? それは、カーターが「イスラエルと正面から向き合い、アメリカの友人たちの感覚を見過ごす用意があったから(ready to confront Israel head on and overlook the sensibilities of her friends in America)」である。

エジプトを反イスラエル陣営から排除することで、カーターはイスラエルの安全保障のために、後にも先にもどの大統領よりも多くのことを行った。2006年の著書『パレスティナ:アパルトヘイトではなく平和を』の中で、カーターは、イスラエルは厳しい選択に直面していると警告を発した。それは、パレスティナ人に独自の国家を与えるか、アパルトヘイト政権として終わらせるかということだ。この警告は予言的なメッセージであり、今日私たちは、イスラエルがカーターの警告に耳を傾けなかったことによる、暗く悲劇的な結果を目の当たりにしている。

更に言えば、レーガンの後継者たちがどうなったかを考えてみよう。レーガンは1982年にイスラエルによるレバノン侵攻を支持し、これがヒズボラの誕生につながった。ジョージ・HW・ブッシュは、第一次湾岸戦争でクウェートを解放した連合軍を率い、1991年のマドリッド和平会議を招集した。ビル・クリントンは、1993年のオスロ合意の成立に貢献したが、その後の永続的な和平解決への仲介努力は何も成し遂げず、ペルシャ湾における誤った二重封じ込め政策(policy of dual containment in the Persian Gulf)はアルカイダに大きな刺激を与え、9月11日のテロ攻撃の下地を作ることになった。ジョージ・W・ブッシュは2003年にイラク侵攻を決断し、地域全体に混乱を広げ、イランの影響力を増大させた。バラク・オバマは、二国家による解決(two-state solution)が「イスラエルの利益、パレスティナの利益、アメリカの利益、そして世界の利益」につながることを理解していたが、イスラエル・ロビーに対抗することを拒否したため、その努力は最初から失敗に終わった。ドナルド・トランプと外交の素人であるジャレッド・クシュナーはパレスティナ人を退け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に白紙委任状(carte blanche)を与え、知らず知らずのうちに、2023年10月7に戸のハマスによる劇的な攻撃を計画する新たな理由を与えてしまった。

このパターンは見逃せない。つまり、カーターは大統領職の最後に中東をより良い状態にしたが、彼の後継者のうち1人を除いては、全てが事態を悪化させた。そして、ジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は現在、そのハードルをさらに低く設定している。大量虐殺を支持し、イスラエルの孤立を更に助長し、彼らが守ると主張するいわゆるルールに基づく秩序(rules-based order)をずたずたにし、世界中でアメリカのイメージを悪化させている。

カーター(あるいは父ブッシュ)がバイデンやブリンケンと同じように行動するとは考えにくい。無条件の支援はワシントンの利益にもならないし、イスラエルの長期的な利益にもならないことを彼らは認識していたであろう。彼らにはロビーからの圧力に耐えるバックボーンもあっただろうが、これは他の大統領には通常欠けていた資質だ。

最後に、退任後のカーターの行動について一言言わなければならない。彼は「アメリカで最も優れた元大統領(America’s best ex-president)」とよく評されており、そのレッテルは当然だ。オバマは引退後、ゴルフに取り組んでいる。子ブッシュは絵を描くことに専念した。クリントンは世界の要人たちと交流し、妻ヒラリーの政治的野心を推進しようとした。そして、トランプは、出廷、恥知らずな不当行為、そして国の民主的な秩序を破壊しようとすることに時間を割いてきた。

それに比べ、ジミー・カーターは過去44年間、世界中の選挙を監視し、様々なテーマで本を書き、水を媒介とする病気の撲滅活動を支援し、紛争を調停し、人質を解放し、その他多くの素晴らしい行いに力に費やしてきた。何人かはそれに近いことをやってきたが、私が生きてきた中で、「公共奉仕(public service)」を単なる卒業式のスピーチの決まり文句ではなく、生涯の関与とした大統領経験者はいない。

大統領、誕生おめでとうございます! 1976年に私はあなたに投票しなかったが、1980年には投票した。そして、今日、あなたのような人物に投票できればどんなに良かったかと思う。そうすれば、私たちはもっとうまくやれるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント: @stephenwalt

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 古村治彦です。

 2024年7月13日、ペンシルヴァニア州バトラーで開催の選挙集会で演説中だったドナルド・トランプ前大統領が銃撃を受け、右耳を負傷するという事件が起きた。会場外の建物の屋根から銃撃した容疑者は射殺され、集会参加者1名が死亡、2名が重傷を負ったと報道されている。トランプは直接銃弾を受けたのではなく、演説で使用していたテレプロンプターに銃弾が当たり、プロンプターの破片が右耳にあたったという情報もある。トランプにはシークレットサーヴィスが駆け寄り盾となって、そのまま自動車まで運ばれ、会場を後にした。トランプ陣営は共和党全国大会には予定通り出席すると述べているので、重篤な負傷ではないということのようだ。

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 今回の銃撃でトランプは命拾いをしただけではなく、大統領選挙を有利に運ぶ契機になった。私は、トランプを歴代大統領の中でも人気の高いロナルド・レーガン元大統領に擬する動きが出て、「2024年の大統領選挙を1980年の大統領選挙の再来にしよう」という動きが出てくると考える。トランプの選挙運動や大統領職の理想像はレーガンである。そのことは彼も認めているし、キリスト教右派的、保守的な価値観を前面に押し出しての選挙公約を掲げて選挙戦を戦っている。今回の銃撃を受けて、「トランプはレーガンの再来」というキャンペーンが行われるだろう。
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 考えてみると、トランプとレーガンは共通点が多い。もともとは民主党員だったが共和党員になった。自分たちは離婚をしたり、女性問題があったりでとても模範的なキリスト教徒ではないのに、中絶や同性婚、政敵少数者に対しては寛容ではない保守的な価値観を掲げて、キリスト教右派を岩盤支持層としていること、国外に大きな敵を設定していること(レーガンはソ連、トランプは中露)といったことが挙げられる。更に言えば、2人とも銃撃を受けたが生き残った。このことから出てくる「不死身の強い大統領」というイメージが非常に重要だ。星条旗を背景に、トランプが血を流しながら拳を突き上げる写真は、硫黄島で星条旗を掲げるアメリカ兵士の写真(銅像になっている)に匹敵する時代を象徴する写真となる。そして、この力強さというメッセージは、高齢問題もあって撤退圧力を受けているジョー・バイデン大統領にとっては強烈なパンチとなる。

 そして、トランプ陣営は2024年の大統領選挙を1980年の大統領選挙の再現にしようという訴えも行うだろう。1980年の大統領選挙では、民主党の現職大統領ジミー・カーターが共和党のロナルド・レーガンに敗れた。イランのテヘランのアメリカ大使館での人質事件の解決に失敗し、事件が続いていたカーターに対しては弱腰、無能という批判が集まり、キリスト教右派の選挙応援を受けて、共和党が苦手にしていた南部でもレーガンが勝利し(カーターは南部ジョージア州出身だったが敗れた)、大統領選挙で圧勝した。バイデンをジミー・カーターに擬し、トランプをロナルド・レーガンに擬すという動きが出るだろう。今回の事件は大統領選挙の行方を決めてしまうほどのインパクトがあった。
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 更に言えば、容疑者の銃声がアメリカの内戦状態を引き起こす可能性があると私は考えている。今回の銃撃を受けて、アメリカ南部の熱狂的なトランプ支持者たちが激昂し、「シークレットサーヴィスじゃ話にならん、俺たちがトランプを守る」ということで、ライフルを手に持って、トランプ陣営にはせ参じ、数百人の自警団、親衛隊のようなものが結成されたら、何が起きるか分からない。「北部、東部のくそ野郎どもが」という敵意むき出しとなったら、どういう衝突が起きるか分からない。

 選挙について考えてみると、ペンシルヴァニア州は激戦州の1つで、ここを取る取らないは、選挙の行方を決める。ジョー・バイデンの出身地ということもあり、前回はバイデンが勝利を収めた。今回の大統領選挙では、これまで、各種世論調査ではトランプがリードしてきた。今回の事件が世論調査に与える影響が測定されるまでは1週間以上かかるだろうが、ペンシルヴァニア州でトランプがリードを拡大すれば、選挙の行方はだいぶ決まってくると言える。バイデンとしては挽回するのが大変となる。現職大統領が選挙直前の10月に大きな出来事を行うということはあるが、それはかなりのインパクトがなければならない。

 今回の銃撃事件はトランプにかなり有利に働く。共和党内も一致団結、固まるだろう。民主党では更にバイデン撤退論が強まるだろう。自作自演という主張も分からないではないが、トランプの耳だけを銃撃できるのはゴルゴ13しかいないだろう。
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トーマス・マシュー・クルックス容疑者の遺体
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●「トランプ氏に向け会場外から複数発発砲、1人死亡2人重傷=大統領警護隊」

ロイター通信 7/14() 10:38配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/47d5e87f69c7df85e9a97114c2c8e891b9c0c585

[ワシントン 13日 ロイター] -     シークレットサービス(大統領警護隊)は、トランプ前米大統領に発砲した人物について「犯人を無力化し、犯人は死亡した」とXに投稿した。

ペンシルベニア州バトラーで13日開かれた集会でトランプ氏に向けて複数回発砲があった。

大統領警護隊は「容疑者は会場外の高い位置からステージに向けて複数発発射した」と説明。集会参加者1人が死亡、2人が重傷と明らかにした。
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●「会場外からトランプ氏を狙撃か 数百m離れた建物の屋根上から狙う」

毎日新聞 7/14() 9:46配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/6f39b71fd322e763f0f66aebfba2115012c62472

 米東部ペンシルベニア州バトラーで13日に起きたドナルド・トランプ前大統領の銃撃事件で、米CNNはトランプ氏が選挙集会の会場外から狙撃されたと報じた。

 容疑者は、トランプ氏を警護する大統領警護隊(シークレットサービス)に殺害された。聴衆1人が死亡、1人が重傷で、トランプ氏も耳のあたりを負傷した。司法当局は暗殺未遂事件として捜査を始めた。

 報道によると、容疑者は、集会が開かれた屋外のイベント会場から数百メートル離れた建物の屋根の上にいた。ライフルなどを使って狙撃した可能性があるという。トランプ氏は普段から大統領警護隊が警護しており、集会に参加するには荷物検査を受ける必要もある。

 容疑者はこうした警備態勢を把握した上で、会場外から狙った可能性がある。

 13日の集会は一般市民も参加が可能で、会場も事前に広報されていた。【ワシントン秋山信一】
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●「「隣の女性が撃たれた」 血だらけ、トランプ氏銃撃で会場パニック」

毎日新聞 7/14() 10:45配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/69aa648dc35234931663f61e351f9c815110c98f

 米東部ペンシルベニア州バトラーで13日開かれた共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の選挙集会は、演説中のトランプ氏が銃撃されて大混乱となった。当時の状況を米メディアが目撃者の話を通じて伝えた。

 米ABCニュースによると、11月の大統領選と同時に行われる連邦上院選に臨む同州共和党候補のデーブ・マコーミック氏は会場の最前列におり、78発の銃声を聞いたという。さらに人々はパニックになり、皆が地面に伏せたと緊迫した状況を振り返った。

 CBSニュースによると、トランプ氏の背後で演説を聞いていたというマイク・ケリー連邦下院議員は「隣にいた女性が撃たれ、他の人たちも撃たれた」と語った。

 また、現場にいた救急医はCBSの取材に「発砲音を聞き、最初は爆竹だと思った」。救急医は「あそこで撃たれた」と叫んでいた方向に向かったところ、頭を撃たれて血だらけになった被害者がいたと証言した。【ワシントン西田進一郎】
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 古村治彦です。

 

 昨年からアメリカ海軍では不祥事が続いているようです。日本ではアメリカ海軍のイージス艦が民間船舶とぶつかって乗組員が死亡する事故が起きました。また、今月に入って、横須賀のアメリカ海軍の兵士が麻薬使用と麻薬取引の曜日で捜査を受けているようです。麻薬取引では地元の人々に麻薬を売ったということですが、日本人に売ったのかどうかは分かりません。しかし、アメリカ海軍を通じて、麻薬が日本国内に持ち込まれるというのは大きな問題です。アメリカ海軍基地には日本の警察権は及ばない訳ですから、アメリカ軍がきちんと綱紀粛正をしてくれないと、麻薬が持ち込まれやすくなってしまいます。

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ロナルド・レーガン

 また、アメリカ海軍では、海軍史上最大規模の汚職事件も起きているようです。「太っちょレオナルド(Fat Loenard)」汚職事件と呼ばれています。マレーシアの建設業者が米軍からの契約を取ろうとして、米海軍の将官たちを接待し、賄賂を渡していたそうです。レオナルドは総額で3500万ドル(約38億円)の契約を成立させていたそうです。

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 この史上最大のスキャンダルで数百名の米海軍関係者、提督と呼ばれる准将以上の将官たちも捜査を受けているそうですが、大部分は不起訴になったそうです。これは自公の問題もあり、かつ、アメリカ海軍の情状酌量が過大ではないのかということが言われています。

 
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 今回の日本駐屯のアメリカ海軍兵士の麻薬容疑も綱紀粛正の一環で行われているようです。日本は巨額のお金をアメリカとアメリカ軍に貢いでいるのですから、せめて綱紀粛正くらいはしっかりしてくれないと困りものです。軍隊の腐敗は亡国への一歩とも言える重大案件でもあるのですから。

 

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アメリカ海軍は日本駐在の兵士たちを麻薬に関する容疑で捜査中(Navy investigating sailors in Japan over alleged drug activity

 

ブランドン・コンラディス筆

2018年2月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/defense/373367-navy-investigating-sailors-in-japan-over-alleged-drug-activity

 

アメリカ海軍は、日本に駐在している複数の兵士たちを、麻薬の使用と取引の疑いで調査している最中だ。

 

アメリカ海軍第七艦隊の報道担当官は日曜日、アメリカ海軍犯罪捜査部が横須賀に駐在している兵士たちにかけられている容疑について捜査中であることを認めた。横須賀はアメリカ海軍空母ロナルド・レーガンの母港である。

 

報道官は声明の中で次のように語っている。「アメリカ海軍は麻薬使用を全く許容しない。また、兵士、軍属、家族の間違った行為を含むすべての容疑をきちんと調査する。今回の捜査は現在進行中であり、これ以上のコメントを行うことは不適切であろうと考える」。

 

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は金曜日、複数のアメリカ海軍関係者がLSD、エクスタシー、その他の麻薬の使用と取引に関連して捜査を受けていると報じた。

 

アメリカ海軍の兵士たちは麻薬を地元の人々に売却した容疑がかけられており、日本の捜査当局も捜査に参加している、とウォールストリート・ジャーナル紙は報じた。

 

アメリカ海軍第七艦隊の報道官はウォールストリート・ジャーナル紙の記事に掲載されている詳細については真偽を認めなかった。

 

麻薬に関する容疑は昨年からアメリカ海軍が取り組まざるを得ない最新の問題となっている。アメリカ海軍は太平洋で起きた複数の深刻な衝突事故と大規模な汚職スキャンダルへの対応を苦慮している。汚職スキャンダルの中には、マレーシアの業者「太っちょレオナルド」に関するものも含まれている。

 

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「太っちょレオナルド」汚職事件の捜査は60名の提督に拡大('Fat Leonard' corruption probe expands to 60 admirals: report

 

レベッカ・キール筆

2017年11月6日

http://thehill.com/policy/defense/358924-fat-leonard-corruption-probe-expands-to-60-admirals-report

 

アメリカ海軍は「太っちょレオナルド」汚職スキャンダルと呼ばれる汚職事件の捜査を行っている。捜査対象は少なくとも60名の提督にまで拡大している、と『ワシントン・ポスト』紙は報じた。

 

総計で440名の現役と退役の関係者たちが現在捜査を受けている、とワシントン・ポスト紙は報じている。ワシントン・ポスト紙はアメリカ海軍に質問状を出し、それに対する対応を記事に掲載している。

 

「太っちょレオナルド」スキャンダルはアメリカ海軍史上最悪の汚職事件である。事件の中心には、マレーシア人の建設業者レオナルド・グレン・フランシスがいる。レオナルドは豪華なパーティー、高価な贈り物、売春婦のあっせん、その他の賄賂を多くのアメリカ海軍士官たちに与え、その見返りとして、レオナルドの企業「グレン・ディフェンス・マリーン・エイジア・カンパニー」が魅力的な契約を勝ち取るために機密情報を受け取っていた。

 

アメリカ司法省は既に28名を刑事事件で訴追している。その中には2名の提督が含まれている。レオナルドはアメリカ海軍将官への贈賄と3500万ドル以上のアメリカ政府の公金詐取で有罪を認めており、現在、判決を待っている状態だ。

 

現役、退役を含む60名の提督たちが現在捜査を受けているが、この数は昨年アメリカ下院軍が捜査した将官の数の約2倍だ、とワシントン・ポスト紙は報じている。

 

アメリカ海軍の取扱件数は増加している。これは司法省が民間法廷で訴追できない事件をアメリカ海軍に任せているからだが、これが軍内部の司法システムをむしばんでいる可能性があるとワシントン・ポスト紙は報じている。

 

 

アメリカ海軍は新たに5名を軍法に照らして刑事訴追したと海軍側の文書を引用してワシントン・ポスト紙は報じている。この中には提督は含まれていない。

 

アメリカ海軍関係者はワシントン・ポスト紙の取材に対して、レオナルドに関連する汚職事件で捜査を受けた230名は罪を犯していないとして無罪となっている。その多くはレオナルドから食事に招待され、贈り物を受け取っている。しかし、アメリカ海軍はこれらの人々の行動の状況に対して情状酌量を与えている、とワシントン・ポスト紙は報じている。

 

倫理ルールもしくはその他の規則を破った40名については行政的な処分を受けたが、これは刑法犯罪には適用されない処罰を受けたことを意味する、とワシントン・ポスト紙は報じている。

 

レオナルド事件に関しては、多く場合、軍法に定められた時効もあり、アメリカ海軍はより厳しい処分を行えなかった、とワシントン・ポスト紙は報じている。重大犯罪のほとんどの時効は5年である。アメリカ海軍関係者はワシントン・ポスト紙の取材に対して、「捜査を受けた中で最も古い事件は1992年に発生したものだが、ほとんどの事件は2004年から2010年に発生したものだ」と答えた。

 

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ新政権発足まで1カ月を切りました。閣僚人事もほぼ決定しましたが、日本にとって関心のある駐日大使はまだ明らかになっていません。千葉ロッテマリーンズの監督時代にティームを日本一に導いたボビー・ヴァレンタイン氏の名前も出ていましたが、まだ正式には決まっていません。

 

 トランプ政権になってどうなるかということに関心が移っています。トランプは次期大統領(President-Elect)となっての数カ月で、様々な新機軸を打ち出そうとし、また現実政治にも影響を与えようとしています。世界を驚かせたのは、台湾重視の姿勢です。

 

 アメリカは米中国交正常化を行い、「一つの中国政策」を堅持しつつ、台湾に対しても、台湾関係法で関係を維持してきました。アメリカ国内では、チャイナ・ロビー派(この場合のチャイナは中華民国[台湾])と呼ばれる勢力も大きな力を持っています。しかし、公式には台湾は中国の一部であるという立場を取ってきました。

 

 トランプは「王様は裸だ」と言わんばかりに、台湾を重視する姿勢を見せました。これに対して、中国政府は不快感を表明しました。それは当然のことでしょう。

 

 トランプの対中姿勢には前例がありました。そのことをおなじみのマイケル・グリーン先生が教えてくれています。レーガン大統領の時に、国務省の高官人事が決まる前に、国家安全保障会議のメンバーが決まって、そのメンバーが主導して、レーガン大統領は台湾に肩入れする姿勢を取ったということです。また、レーガン大統領はカリフォルニア州知事時代に個人的に台湾指導部との人脈を築いていたということもあったそうです。

 

 1980年代初頭と現在では中国の置かれている立場は大きく異なります。中国はアメリカに次ぐ世界第二位の経済規模を誇り、経済成長率は鈍化しているとは言え、現在でも世界経済の成長エンジンとなっています。

 

トランプ政権の外交調整役になるであろうヘンリー・キッシンジャーの存在もありますから、中国と激しくぶつかるということはないでしょうが、トランプとしては、簡単に言うと、「アメリカからもっとものを買って欲しい、貿易不均衡を押さえて欲しい」ということで、中国に対して色々と注文や要求を出すことでしょう。

 

 今回は、台湾を使って、中国をけん制する、揺さぶるということをやったのではないかと思います。アメリカ、中国、台湾、中国、韓国、日本の中で、本気で米中がぶつかって得をする国はありません。強いて言えば北朝鮮でしょうが、それでも相当なダメージを受けるでしょう。

 

 トランプ政権になってどうなる、と言うことはみんなが関心を持っていることですが、決してそんな無茶をすることはないだろう、特に外交では、と思います。そして、より内政に力を入れていくだろうと思います。そのようなトランプ政権を利用もせずに、「やったやった、日本の防錆予算を増やす口実にできるわい」とくらいにしか思っていない日本の指導部は大局的には大きな間違いをするでしょう。

 

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トランプの台湾への電話がどれほど悪いことなのか?(How Bad Was Trump’s Taiwan Phone Call?

 

マイケル・グリーン筆

2016年12月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/12/03/how-bad-was-trumps-taiwan-phone-call/

 

ドナルド・トランプ次期大統領は12月2日に、蔡英文台湾総統に電話をかけた。これに国際社会は驚かされた。1979年にアメリカは台湾との外交関係を転換した。アメリカはこの時に「一つの中国」政策の優越性を認めた。それ以降、アメリカ大統領から台湾総統に電話をかけたことはなかった。専門家たちは、中国政府はトランプの政権移行ティームに激しく対応することになるだろうと警告している。彼らは恐らく正しい。また、今回の出来事で、トランプ・オーガナイゼ―ションが台湾の桃園航空城都市開発計画に参加する希望を持っていることについて、利益相反(利益衝突)に関する疑問が出てくるということを指摘している人々もいる。

 

しかしながら、ここでは歴史的な観点が必要である。今回の外交儀礼と慣習の無視は初めてのことではない。1980年から1981年にかけて、当時のレーガン次期政権は、台湾との関係を正常化すると約束し、大統領就任に関連するいくつかの式典に台湾政府高官を招待した。中国政府は激怒した。政権初期のこのような議論を巻き起こした台湾に対しての働きかけは、レーガンのカリフォルニア州知事時代からの台湾政府指導部との深い繋がりが反映されていた。今回のトランプの電話と同じく、こうしたレーガン大統領の動きも当時のリチャード・アレン率いる国家安全保障会議(NSC)ティームが国務長官や国務省高官が決まる前に計画し、主導したものであった。

 

政権発足後の数カ月、アレンとNSCは、台湾政策を巡って、アル・ヘイグと国務省との間で争った。アレンは中国と対峙させるために戦闘機を台湾に売却することを主張した。一方、ヘイグはソ連と対峙させるために中国に戦闘機を売ることを主張した。政権が発足してから18カ月後には、アレンもヘイグもレーガン政権から追い出された。レーガン大統領は「第三の」米中コミュニケを発表した。このコミュニケは、最初の2つのコミュニケの中で確立された米中関係の要素を再確認するものであった。しかし、附則として、台湾の安全保障にとって重要な諸問題について、台湾の頭越しで何かを行うことはないことを約束する「6つの前提」がつけられていた。

 

レーガンを振り向かせようと考えた中国政府は、最高幹部クラスを含む代表団を送り、レーガンに対して、更なる譲歩と「台湾関係法について何らかの処置を行う」ように圧力をかけた。私は出版予定の著作(By More than Providence: Grand Strategy and American Power in the Asia Pacific Since 1783)のためにジョージ・シュルツにインタヴューを行った。その中でシュルツは、レーガンが代表団をじっと見ながら、「あなた方が仰っていることは正しい。私たちは台湾関係法を強化しなくてはいけない!」と語ったと教えてくれた。中国政府は圧力をかけるのを止め、レーガン政権は、それ以前の政権よりも、より生産的で安定した米中関係を構築することができた。同時に、台湾との信頼関係を深めることにも成功した。

 

トランプの電話は、レーガン政権の時と同じような結果をもたらすことになるだろうか?私は民主的に選ばれた台湾の指導者に更なる尊敬を示したいと思うことには同感だ。しかし、トランプ新政権はこれから中国政府と協力して多くの困難な諸問題に対処していかねばならない中で、台湾重視の動きを維持することは大変に難しいと私は考える。

 

NSCの初期メンバーが国務長官や幹部クラス(彼らはより広範な外交上の利益を主張する)が指名される前に台湾重視の姿勢を打ち出したことで、第一次レーガン政権は中国と台湾の角逐を生み出した。これと同じことがトランプ政権でも起こる可能性はある。もちろん、これは誰が国務長官になるかにかかっている。最近のトランプの行動全てを見ても、彼の最初の電話から長期にわたる結論を導き出すのは早計であると言えるだろう。ただ言えることは次のようなことだ。「次期大統領閣下、台湾に配慮することは賞賛に値しますが、歴史が教えるところでは、中国政府とやり合う前に、包括的なアジア戦略を構築する方がより良い方策と考えられます」。

 

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アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22




 

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