古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ロナ・マクダニエル

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権1期目(任期4年)も後半に入った。アメリカ政治は2024年11月の大統領選挙(と連邦議会選挙:連邦下院は全議席、連邦上院は一部議席、更には州知事選挙)に向けて動き出す。民主党は現職大統領を抱える側であり、共和党は挑戦者の立場だ。

ジョー・バイデンが2期目を目指して選挙に出馬するかどうかがまず現在の関心事だ。バイデンは現在80歳(1942年生まれ)、2024年の大統領選挙投開票日あたりには82歳になっている。現在でも現職としては史上最高齢であり、2年後に当選すればこれまで史上最高齢となる。人間の寿命は確実に伸びている。先進諸国は多少の違いはあるものの高齢化社会(日本は高齢社会)である。80歳で現役は良いじゃないか、という主張もあるだろうが、判断力や健康の面で不安があるというのが正直なところだ。民主党の中から挑戦者が出る様子は今のところない。バイデンが病気やスキャンダルで2期目に出られないとなれば、カマラ・ハリス副大統領が候補者として出ることになるだろう。

 興味深いには、民主党が大統領選挙の民主党予備選挙(民主党の大統領選挙本選挙候補者決める選挙)で、各州で実施される予備選挙や党員集会の日程を変更して、アフリカ系アメリカ人有権者が選挙の結果を左右する州が早めに予備選挙や党員集会を実施できるようにしようとしていることだ。これは民主党エスタブリッシュメント派が、進歩主義派を抑え込もうとする動きである。

アフリカ系アメリカ人有権者は民主党エスタブリッシュメント派の支持基盤である。バイデンが2020年の大統領選挙民主党予備選挙で、勝利を決定づけたのはアフリカ系アメリカ人有権者の多いアメリカ南部サウスカロライナ州の予備選挙だった。早めに民主党エスタブリッシュメント派の候補者が勝利を印象付けられるようにするための日程変更である。2016年の民主党予備選挙ではバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)がヒラリー・クリントンに対して東部などで善戦し、戦いが長引き、批判合戦が激しくなり、結果としてヒラリーにマイナスに働いた。日程変更はそのようなことが起きないようにしようという動きだ。

 共和党側では、エスタブリッシュメント派はトランプを排除したい、トランプ支持勢力の力を削ぎたいということになる。そのために、トランプ支持の有力者である、共和党全国委員長ロナ・マクダニエルの再任を阻止しようという動きに出ている。また、保守派の大口献金者であるコーク・インダストリーズの総帥チャールズ・コークの意を受けたフリーダム議連が、トランプの協力者であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)の連邦下院議長選出をことごとく妨害し続けたことは記憶に新しい。トランプが共和党の大統領選挙候補者になるかならないか、ここはアメリカ政治においての大きな焦点ということになるだろう。共和党エスタブリッシュメント派はアメリカ主流派マスコミと組んで、フロリダ州知事ロン・デサンティスの待望論を醸成してくことだろう。

 2022年の中間選挙では事前の予想に反して、民主党がそこまで負けなかった。2024年に向けて、共和党としては挑戦者として民主党に戦いを挑む形になる。今年に行われる州規模の選挙(州議会議員や州知事の選挙)は注目を集めることになる。ここで共和党が勝利を収めることになれば、2024年の大統領選挙の序盤の流れがそれによって形成されることになる。これからアメリカは少しずつではあるが、激しい政治の季節に入っていく。

(貼り付けはじめ)

2024年の政治状況を形作るであろう今年の政治的イヴェント5選(Five political events this year that will shape 2024

マックス・グリーンウッド筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3812434-five-political-events-this-year-that-will-shape-2024/

大統領選挙での予備選挙や党員集会が始まるまでに1年以上ある。今後数カ月は、2024年にほぼ間違いなく重要な意味を持つ、アメリカ政治における重要な出来事が次々と起きることになる。

共和党と民主党の両党は、今後数週間のうちに政党のために大きな決定を下す予定で、今年11月にはいくつかの州で選挙が行われ、来年の状況がどのように見えるかについて政治ウォッチャーたちに早い段階でのプレヴューを提示する。

この論稿では、2024年について何らかのヒントを与えてくれる、今年起きる5つの政治的な出来事を紹介する。

(1)バイデンの再選表明(Biden’s reelection announcement)(日付は未定)

この2年間、民主党にとって最大の問題の1つは、ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスの2期目を目指すかどうかということだった。そして、バイデン大統領がその意思を持っていることが明らかになりつつある。

バイデン大統領は今後数週間のうちに大統領選挙再出馬の計画を明らかにすると予想され、2月の一般教書演説の前後に発表することが有力視されている。

もしバイデン大統領が最終的に再選の選挙戦を進めるのであれば、ホワイトハウスへの野心を持つ他の民主党の政治家の動きが封じられる可能性がある。その結果、民主党は、2024年の大統領選挙で、激しい戦いとなりうる予備選挙シーズンを免れ、バイデンは、2期目の大統領就任に向けた説得にのみ集中することができるようになるかもしれない。

バイデンは、それでもなお、いくつかの疑問を抱えて再選キャンペーンに臨むことになる。80歳という年齢は、既に大統領執務室の主としては史上最高齢者である。2024年11月に2期目を勝ち取れば、大統領2期目の宣誓をする頃には82歳になっている。

もちろん、ドナルド・トランプ前大統領が再びホワイトハウスに挑戦するために選挙への立候補を表明しているが、彼はバイデンに比べてそれほど若いという訳ではない。バイデンの存在が、現職大統領と明確な対比を描ける可能性がある若い候補者選出に共和党を誘導する可能性があるかどうかが、1つの疑問点として残っている。

(2)共和党冬季ミーティング(The GOP’s winter meeting)(1月25-27日)

共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)は2023年1月末、カリフォルニア州ダナポイントで開催される会合において、次期全国委員長を選ぶことになっている。そして、現在のリーダーであるロナ・マクダニエルは、共和党の組織上の最高ポストをもう1期務めようとしているが、彼女と協力者たちが期待したほどには、彼女の再選は安泰とは言えない。

6年近く全国委員長を務めてきたマクダニエルは、2016年の大統領選挙でトランプがサプライズでの勝利を収めた後、全国委員長に抜擢された。

しかし、2022年の中間選挙で共和党が連邦上院の主導権を取り戻すチャンスを逸し、連邦下院では僅差の過半数にとどまったことから、マクダニエルに対しては共和党内部からのプレッシャーが強まっている。

月曜日には、アラバマ州共和党の運営委員会はマクダニエルに対する不信任声明を発表し、共和党全国委員会委員長としてマクダニエルがもう1期務めることを支持しないと表明した。

また、マクダニエルは共和党内でトランプ前大統領の最も熱心な擁護者の1人という評価を得ているが、彼女は他の2人のトランプ支持者、共和党全国委員会のハルミート・ディロンと枕製造で大成功を収めたマイク・リンデルからの挑戦を受けることになった。ディロンは、「2020年の大統領選挙では自分に対して不正に行われた」というトランプの虚言の最も大きな後ろ盾を務める1人になってしまった。

このコンテストで全国委員長に選ばれる人物は、2024年の大統領選挙を通じて協和党全国委員会を率いる任務を負うことになる。しかし、トランプ前大統領の忠実な支持者の存在は、前大統領を党の現在の課題の少なくとも部分的な責任とみなす共和党内の人々にとって、事態を複雑にする可能性がある。

(3)民主党冬季ミーティング(The Democrats’ winter meeting)(2月初頭)

民主党の幹部たちは、民主党の伝統的な大統領予備選の日程を大幅に変更する計画を進めており、人種的に多様な各州が指名プロセスにおいてより大きな発言力を持つことを望んでいる。

この計画は、来月初旬にフィラデルフィアで開催される民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の冬季ミーティングで主要な投票が行われる予定だ。

この新提案では、2024年2月3日の予備選は、数十年にわたって大統領予備選の集会を開催してきたアイオワ州に代わって、サウスカロライナ州が先頭に立つことになる。その次は、2月6日にニューハンプシャー州とネヴァダ州、2月13日にジョージア州、2月27日にミシガン州という順番になる。

もし、民主党全国委員会がこの新提案を採用すれば、従来の投票日程だけでなく、大統領候補の選挙戦への取り組み方も根本的に変わることになる。

もちろん、まだ障害は残っている。早期予備選の提案に該当する5州のうち、ジョージア州とニューハンプシャー州の2州は、早期に予備選を実施するための委員会の要件を満たそうと、民主党全国委員会に延長を要請している。

更に言えば、共和党は既に、アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州の伝統的な順番を維持した予備選カレンダーを採用している。このことも、民主党が日程を組み替えることを難しくしている。

(4)保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)(3月1-4日)

毎年恒例の保守政治行動会議(CPAC)は、過去2年間、フロリダ州とテキサス州で開催されたが、今年3月にワシントンDCに戻ることが決まっている。

フロリダ在住のトランプが再び大統領選に出馬し、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)が2024年の選挙戦を考慮する中、保守派の活動家と共和党関係者の有名な集会が中立地帯に戻ることになる。

過去数年間、CPACはトランプと共和党の彼のグループの決起集会のようなものであった。しかし、今年のCPACをめぐる大きな疑問は、これまでとは異なるトーンで開催されるかどうかということだ。

一つには、トランプがもはや共和党の大統領候補として有望視されていないことがある。最近の世論調査では、仮に予備選で対決した場合、デサンティスが前大統領を引き離すという結果が出ている。更には、共和党は2022年の中間選挙の影響と、トランプが共和党を次の選挙サイクルで党を率いるのに最適な人物であるかどうかを決めかねている状況だ。

(5)2023年選挙投開票日(Election Day 2023)(11月7日)

ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州の3州が今年州レヴェルの選挙を予定している。しかし、最大の関心はヴァージニア州に集まりつつある。ヴァージニア州の有権者は今年11月に州議会でどちらの党が過半数を握るかを決定することになる。

ヴァージニア州では近年、左派が確実に支持を拡大し続けていた。しかし、2021年にグレン・ヤングキン知事(共和党)がテリー・マコーリフ前知事を破り、共和党が州下院において僅差で過半数を占めると、状況が一変した。

今年は、共和党が州下院の過半数を維持するだけでなく、民主党が僅差で握っている州上院の過半数を獲得しようと試みるだろう。これらの州議会選挙がどのように展開されるかは、2024年に向けての政治環境を占う上で、何らかのヒントになる可能性がある。

同時に、ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事(民主党)が知事2期目を目指しており、既に共和党側の対抗馬と競い合っている。

ベシアは2019年、現職だったマット・ベヴィン知事(共和党)を僅差で破り、知事職に就任した。しかし、当時の政治情勢は民主党に有利なものであったが、今年はより厳し選挙戦が待っていると予想されている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今年2022年秋、アメリカでは中間選挙が実施される。連邦下院の全議席、連邦上院の約3分の1の議席、州知事の一部の選挙が実施される。現在の連邦議会は、上下両院ともに民主党が僅差ではあるが、過半数を握っている。しかし、連邦上院では50対50の状況で、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)が主要な法案に反対しているため、ジョー・バイデン大統領が推進したい政策が進まないのが現状だ。「二大政党制にして、大統領制にすれば、政治が停滞せずに進む」という、日本で政治改革に関する議論が活発だった時期に喧伝された主張は間違っている。アメリカの三権分立はそれぞれに対して抑制的であって、立法(議会)と行政の関係で言えば、議院内閣制の方が制度上ははるかに物事を進めやすいはずなのだ。議会で過半数を握っている会派の代表が行政の代表、最高責任者を務めているのだから。

 これまでに何度もご紹介してきたが、ジョー・バイデン大統領の支持率は低い。インフレや新型コロナウイルス感染拡大対策に対する評価が低いのが理由だ。そのため、今年2022年の中間選挙では民主党は負け、共和党が連邦上下両院で過半数を奪還する見通しとなっている。共和党は押せ押せムードとなっているかと思えば、そうではない。共和党内部に深刻な対立がある。それはドナルド・トランプ前大統領をめぐる対立だ。簡単に言えば、トランプ派対反トランプ派の対立が共和党内部に存在する。

 共和党全国委員会は先日、2021年1月6日に連邦議事堂にトランプ支持者が進入した事件をめぐり、アダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)とリズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の問責決議を可決した。両議員は、2021年1月6日の事件をめぐる連邦下院の特別委員会のメンバーであり、事件を糾弾し、トランプを激しく批判してきた。この特別委員会の共和党側メンバーは全てが反トランプ派ということになるが、キンジンガー、チェイニー両議員は反トランプの急先鋒だ。

 共和党全国委員会は両議員に対する問責決議文の中で、連邦議会への進入事件を「正当な政治的言説(legitimate political discourse)」と呼び、これに参加した一般人を糾弾することは間違っているとした。共和党全国委員会は、共和党の選挙を取り仕切る機関であるが、今年の中間選挙に向けて、トランプ支持の有権者をつなぎ止めようと躍起になっている。現在の共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は、共和党の大統領選挙候補者(2012年)になり、現在はユタ州選出の連邦上院議員を務めるミット・ロムニーの姪である。ロムニーは姪であるマクダニエルにメールを送り、問責決議を非難した。また、連邦上院少数党院(共和党)内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)も問責決議を批判した。

一方で、連邦会員議員の多くは、共和党全国委員会の行動を支持している。特に、トランプの盟友とされるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、今年の中間選挙で、共和党が連邦下院で過半数を獲得する場合、連邦下院議長の有力候補ということもあり、トランプ支持を明確にしている。

こうした党内の対立を深刻化させないようにしよう、1月6日の事件ばかりに人々の関心が向かないようにしよう、人々の関心がジョー・バイデン大統領と民主党の失政に向かうようにしようという動きも出ている。共和党からすれば「今は新型コロナウイルス感染拡大とインフレについて語るべき時だ」ということになる。

 共和党の現状が示しているのは、今年選挙を控えている政治家たちにとって、当選するためには、トランプ支持の有権者からの支持が必要であり、そのためにはトランプの機嫌を損ねるようなことはできないということだ。現職で敗れた前大統領というのは、その党内では影響力を失うものであるが、トランプは有権者からの支持を背景にして共和党内において、今でも大きな影響力を持っている。この点はこれからのアメリカ政治を理解するためには、是非分かっておかねばならない点だ。

(貼り付けはじめ)

トランプは共和党全国委員会に対する支配を強めている(Trump tightens grip on RNC

マックス・グリーンウッド筆

2022年2月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/593402-trump-tightens-grip-on-rnc

トランプ前大統領の選挙不正についての主張を支持する人々と、前進を望む人々の間で党内の亀裂が広がる中で、ドナルド・トランプと彼の協力者たちは、共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)に対する支配力を強めている。

先週行われた共和党全国委員会の投票で、共和党内のトランプ批判者である2人の連邦下院議員が問責された。アダム・キンジンガー(Adam Kinzinger)連邦下院議員(イリノイ州選出)とリズ・チェイニー(Liz Cheney)連邦下院議員(ワイオミング州選出)の両議員を問責し、2021年1月6日の出来事を「正当な政治的言説(legitimate political discourse)」と表現した。このことについて、共和党の最高幹部たちから批判を浴びた。

しかし、この投票は、トランプの熱烈な支持者たちが共和党の最高幹部たちの間でどの程度権力を固めているかを露呈するものでもあった。現在、共和党の中には、「共和党全国委員会内でのトランプ前大統領の影響力が、今年の中間選挙で連邦議会での過半数を奪還し、2024年にホワイトハウスを奪還するための努力の妨げになるのではないか」と懸念を持っている者もいる。

2010年の中間選挙で共和党全国委員会のコミュニケーション・ディレクターを務めた共和党のストラティジストのダグ・ヘイは、「共和党が選挙で強い支持を得たいなら、人気のない大統領と人気のない政策に焦点を当て続ける必要がある」と述べている。 

ヘイは、「国を間違った方向に導いていると人々が感じている不人気な大統領という、ボールから目を離すという大きな問題が現在の共和党内にある」とも述べた。 

ヘイは、共和党全国委員会の在職中、「委員会にとって、“最悪の日”は、政治的ニュースの集中する日であった」と語った。その理由として、「これが意味するところは、その日もしくはその週で、私たちは民主党に集中することができなかった」ということを挙げている。

彼は「そして、それが今の共和党全国委員会が置かれている状況そのものだ」と述べた。

共和党は今年の中間選挙で、連邦下院で5議席、連邦上院で1議席を更に獲得すれば、連邦議会の主導権を取り戻すことができる。

また、共和党は中間選挙をバイデン大統領、経済インフレ、その他多くの課題に対する国民投票(referendum)にしようとしているが、共和党は2020年の大統領選挙とその余波(連邦議事堂襲撃を含む)を再燃させることに依然として激しく集中しているトランプに縛られていることも分かっている。

トランプ前大統領はここ数週間、2020年の大統領選挙に関する虚偽の主張にさらに傾倒し、マイク・ペンス前副大統領なら選挙での敗北を覆すことができたと繰り返し主張し、連邦議事堂を襲撃した人たちに対する恩赦(pardons)の可能性を指摘している。

共和党への大口献金者の一人は、「ジョー・バイデンと民主党がやっていること以外のことを話しているときはいつでも、それは間違いであり、共和党全国委員会は共和党にそれを思い出させる統一勢力でなければならない。自分の党の党員を検閲するだって? それは彼らがすべきことではない」と述べた。

それでも、今回のキンジンガーとチェイニーに対する問責決議は、2016年に初めて党の大統領候補に指名されて以来、共和党全国委員会がいかにトランプに固執してきたかを浮き彫りにしている。当時、多くの共和党員は、大げさな不動産王であり元リアリティTVスターであったトランプを支持することに消極的だった。

しかし、それ以来、共和党全国委員会はトランプと歩調を合わせるようになった。共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は、2016年の勝利後、前大統領の手によって指名された。マクダニエルは、トランプ批判で有名なミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出)の姪である。そして、民主、共和両党は歴史的にホワイトハウスの支配権を失った後に新しい委員長を選んできたが、彼女は昨年、何の反対も受けずに再選された。

トランプの盟友から批判者に転じた元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ(共和党)は日曜日にABCの「ディス・ウィーク」に出演し、「共和党全国委員会、あの人たちのほとんどは、ドナルド・トランプが4年の間に配置した人々だ」と述べた。更に、「そして、ロナ・ロムニー・マクダニエルは、ドナルド・トランプのために水を運んでいると言える」とも発言した。  

確かに、トランプは共和党支持の有権者の間では依然として最も人気があり、その多くは「2020年の選挙が盗まれた(the 2020 election was stolen)」という彼の誤った主張を受け入れている。

また、トランプ前大統領は2024年大統領選挙への再出馬を視野に入れているとの見方が強い。また、マクダニエル委員長は、党の次期大統領予備選で中立を保つと述べているが、共和党全国委員会は、チェイニーやキンジンガーへの恨みから現在進行中の法的問題まで、トランプを全面的にバックアップする姿勢を繰り返し見せている。

共和党系のストラティジストであり、ラインス・プリーバス元共和党全国委員会委員長の元側近であるマット・テリルは、共和党全国委員会が大統領就任後のトランプに密着しているのは異常であることを認めたが、共和党全国委員会の行動は結局、保守層の間で前大統領の人気が持続していることの反映であるとも指摘した。

テリルは、「共和党全国委員会に見られるのは、草の根の活動家、予備選挙に参加する有権者の考えの反映であり、共和党の支持基盤が今どこにあるかを反映していると思う」と述べた。

それにもかかわらず、共和党全国委員会によるキンジンガーとチェイニーに対する問責決議と、2021年1月6日の暴動を「正当な政治的言説」としたことは、イデオロギーの違いを超えて共和党員の反発を招いた。

ロムニーは問責決議の後、マクダニエルにメールを送り、決議案とその中で使われた言葉を 「不適切だ」と述べたということだ。

トランプ前大統領の盟友であるリンゼイ・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は『ポリティコ』誌の取材に対し、共和党が連邦議会の支配権の奪還という目標に集中しない場合、「誤った方向(wrong direction)」に向かうと述べた。

共和党の140名の指導者と元選挙管理者のグループも月曜日に共同声明を発表し、共和党が「共和党結党以来の原則を裏切り、かつての偉大な運動の主導権をペテン師と過激派に譲った」証拠として問責決議を非難している。

共同声明の署名者の中には、アリッサ・ファラー元ホワイトハウス戦略コミュニケーション局長やマイケル・スティール元共和党全国委員会委員長など、著名な共和党員たちも含まれている。

共同声明には、「この問責は、RNCのターニングポイントとして歴史に刻まれるだろう。現在は、“礼節と愛国心”、“陰謀と政治的暴力”の二者択一の時代となっている。我々は、一つ目の価値観(礼節と愛国心)のためにしっかりと立っている」と書かれている。

連邦上院共和党指導部の最上層部からも批判が出ている。火曜日、連邦上院でトランプ前大統領の政策の重要な部分を進めるのを助けたが、時にはトランプ大統領と衝突することもある連邦上院少数党(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー選出、共和党)は、1月6日の暴動に関する問責決議案の内容に反発し、連邦議事堂への襲撃を「暴力的暴動(violent insurrection)」と呼んだ。

マコーネルは、マクダニエル委員長の指導力に信頼を寄せているとしながらも、共和党全国委員会がキンジンガーとチェイニーを特別に敵視していることを批判している。 

マコーネルは「キンジンガーとチェイニーに対する問責決議は共和党全国委員会が行うべき仕事ではない」と述べた。

共和党全国委員会関係者たちは金曜日の投票後、決議案の文言を明確にしようとした。マクダニエルは声明の中で、「正当な政治的言論」という表現は、16日に抗議したが、連邦議事堂での暴力に関与していない人たちを表現するためのものだと述べた。 

「リズ・チェイニーとアダム・キンジンガーは一線を越えた」とマクダニエルは声明で述べた。更には「彼らはナンシー・ペロシと一緒になって、連邦議事堂での暴力とは無関係の正当な政治的言説を行った一般市民を民主党主導で迫害することを選んだ」とも述べた。

しかしながら、一部の共和党員にとって、問責決議案は、トランプが共和党内で注目を集めた6年近く前に始まった変化の中で、最新の動きに過ぎないのである。

共和党系のヘイは、「共和党は変化している。ほんの数年で変化してしまった。共和党全国委員会の現在の行動はそれを反映している」と語っている。

=====

マコーネルが共和党全国委員会と決別:16日の事件は「暴力的暴動」(McConnell breaks with RNC: Jan. 6 'violent insurrection'

ジョーデイン・カーニー筆

2022年2月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/593339-mcconnell-breaks-with-rnc-jan-6-violent-insurrection

連邦上院少数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)がアダム・キンジンガー(Adam Kinzinger)連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)とリズ・チェイニー(Liz Cheney)連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の両議員を問責し、2021年1月6日の出来事を「正当な政治的言説(legitimate political discourse)」と表現したことについて、批判した。

マコーネルは、「合法的に認定された選挙後の平和的な権力移譲を阻止しようとする目的を持った暴力的な暴動であった」と語った。

共和党全国委員会は、トランプ前大統領の狂信者たちが暴徒となって連邦議事堂の警備船を突破した16日の出来事について、キンジンガーとチェイニーを問責する決議分の中で「正当な政治的言説(legitimate political discourse)」と表現し、激しい反発を招いた。

共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は、この決議を明確にしようとしたようで、声明の中で、共和党所属の連邦下院議員2名は「正当な政治的言動をしている」市民を迫害することに関与していたと主張したが、「それは連邦議事堂での暴力とは関係がない」と述べた。最後の部分は共和党全国委員会の決議文にはなかった。

マコーネル連邦上院議員は、マクダニエル委員長を信頼しているが、共和党全国委員会の仕事は共和党員全員を支援することであり、一部の党員を「特別扱い」することではないと述べた。

「今回の問題は、共和党全国委員会が、多数派とは異なる意見を持つ党員を特別視すべきかどうかということだ。それは共和党全国委員会の仕事ではない」と、問責決議案について述べた。

=====

2021年1月6日の襲撃事件をめぐり、共和党内の緊張が高まる(GOP tensions flare over Jan. 6 attack

ジョーデイン・カーニー筆

2022年2月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/593406-gop-tensions-flare-over-jan-6-attack

共和党内部では、2021年1月6日に起こった事件に関する一連の論争から抜け出せず、2022年の中間選挙に向けて党内の緊張が再び高まっている。

共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)の問責決議をめぐる失敗は、政治的酸素を吸い上げ、共和党のトップ議員が維持したいバイデン政権の失政への注意から、トランプ前大統領支持者の暴徒が行った2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件を中心とする党内分裂にスポットライトを当てた、ここ数週間の最新の論争である。

火曜日、共和党所属の連邦議員の中のトップ2が共和党全国委員会の決議に関する質問に対して正反対の姿勢を示し、2021年1月6日の襲撃事件とトランプの両方に対するアプローチの違いが浮き彫りになった。

連邦上院少数党(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は先週、1月6日の襲撃事件を「正当な政治的言説(legitimate political discourse)」と表現した決議をめぐって共和党全国委員会と対立し、共和党所属連邦下院議員に対する問責決議を批判した。アダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)、リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の両議員を問責決議したことを批判した。

マコーネル議員は「2021年1月6日の事件は、合法的に認定された選挙後の平和的な権力移譲を阻止しようとする目的を持った暴力的な暴動であった」と語った。

また、マコーネル議員は、共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長を信頼しているが、共和党全国委員会は一部の党員を「特別扱い」するべきではないとも述べた。

「それは共和党全国委員会の仕事ではない」とマコーネル議員は述べた。

マコーネルは昨年1月6日の襲撃事件でトランプを声高に批判し、「実質的に」道徳的な責任があると非難していた。マコーネル議員は、暴動を煽動したトランプ前大統領の弾劾裁判で、前大統領はすでに退任しているとして、有罪判決に投票しなかった。

共和党幹部の一人は、マコーネル議員の反応には驚かなかったが、「暴動(insurrection)」という言葉を使ったことには驚いたと本誌に語った。

マコーネル議員は、「トランプ前大統領はこの件に関して、かなり前のめりになっている」と付け加えた。

トランプ大統領に近い姿勢を崩さない連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、共和党全国委員会が「正当な政治的言説」という言葉を用いたことは、連邦下院特別委員会に召喚された共和党全国委員会のメンバー6人と関係があるとし、擁護する姿勢をみせた。実際の共和党全国委員会の決議では、委員が召喚されたことには触れていない。

「連邦議事堂に侵入して損害を与えた者は誰でも知っている。そのような人たちは、最初から刑務所に入るべきだと言ってきました」とマッカーシー議員はCNNに語った。

この異なる発言は、トランプ氏に関して2人の共和党指導者マコーネルとマッカーシーが歩んできた別々の道を映し出している。

マッカーシー議員は、今年11月に共和党が連邦下院で過半数を奪還した場合に連邦下院議長の座を獲得しようと、トランプ前大統領と密接に連携している。

これに対し、マコーネルは、メディアに送った声明の中で、ケンタッキー州選出の連邦上院議員を日常的に非難しているトランプに言及するのをほとんど避けている。

2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件が共和党の中で争点になったのは、今回が初めてではない。

連邦上院共和党は、トランプ前大統領が先週、マイク・ペンス前副大統領が2021年16日に選挙結果を覆すことができたと主張し、2024年の大統領選挙に立候補して勝利した場合には、事件に参加した人々へ恩赦を与える可能性があることを示唆したことに対して反発した。

共和党は、2021年16日の襲撃事件に注目が集まり続けることで、今年11月の中間選挙に向けて党がダメージを受けるのではないかと懸念している。共和党は今年の中間選挙で、インフレや経済などの問題で、下連邦上下両院で過半数を奪還するチャンスがあると考えている。

連邦上院共和党の序列第2位のジョン・スーン連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は本誌の取材に対して、「その話をするのはもう止めにしようではないか? 今年11月の選挙について話そう。私たちは自部ナチの進む道を切り開くことができない時期というものがある」と語った。

ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)の姪がマクダニエル委員長だ。ロムニー議員は、「我が党のやることがバカに見えて、何の役にも立たない」とも述べた。

連邦上院共和党は、共和党全国委員会が不注意にも党の分裂に目立たせることになってしまったので、選挙によって選出された共和党の連邦議員たちの支援に徹するべきだという内容の警告を発した。

「共和党全国委員会の声明、特にアダムとリズを非難する声明は役に立たないものだ。まず、彼らには関係ないことだ」とケビン・クレイマー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は述べた。また、共和党全国委員会については、「ほとんどの人がそこから離れたいと思っているものを存続させる手助けをしている」とも述べた。

連邦下院共和党は、共和党全国委員会が自分たちの同僚議員2名を問責したことをより積極的に擁護した。

昨年、連邦下院共和党所属議員会会長をチェイニーから交代したエリーゼ・ステファニック連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)は、共和党全国委員会には、「いかなる行動をも取る権利を持つ」と述べた。

ステファニックは記者会見で次のように述べた。「共和党全国委員会にはいかなる行動を取る権利もある。私の立場は、最終的には選挙区の有権者たちに責任を持つ事だ。あなたが代表する有権者たちに対してです 今年も有権者の声を聞くことになるだろう」。

2019年に民主党から共和党に鞍替えしたジェフ・ヴァン・ドリュー連邦下院議員(ニュージャージー州選出、共和党)は本誌の取材に対して、「キンジンガー議員とチェイニー議員が問責を受けたことは適切な処置であった」と述べた。

ヴァン・ドリューは続けて「率直に言って、チェイニー議員は非常に狭量な人物だ」と述べた。

連邦下院共和党の指導者たちは、中間選挙に向けて分裂が目立ってしまうことを避けようとしており、ステファニックは、チェイニーやキンジンガーに対して追加行動を起こすことは、非公開の会議では持ち出されなかったと述べている。

その代わり、非公開の会議中、共和党指導部は、過去のスーパーボウルのビデオを流し、チームとして紹介されたニューイングランド・ペイトリオッツに対し、ロサンゼルス・ラムズの選手が個別に紹介されたことを紹介し、共和党員が協力する必要性を強調しようとした。その試合はペイトリオッツが勝った。

トム・コール連邦下院議員(オクラホマ州選出、共和党)は、「私たちはペイトリオッツのように行動すべきだ」と、共和党指導部のメッセージを要約して語った。「会議の始まりにふさわしい、ちょっとした説教のようなものだった」とも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ