アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は古い記事ですが、国際関係論(International Relations)の諸理論で恋愛関係(人間関係)を説明する論稿をご紹介します。

 

 国際関係論は、大変に「人間臭い」学問分野であると言えます。心理学や人類学、社会学の成果を取り入れて発展してきました。ですから、その理論も人間関係論(human relations)に応用できるのは当然のことと言えると思います。

 

 ホワイトデーが普通の日である私は、もっときちんと国際関係論を学んでおけばと後悔しておりますです(涙)。

 


==========

 

恋人たちのための国際関係論理論:ヴァレンタイン・デーのための手引き(IR theory for lovers: a valentine’s guide

 

スティーヴン・ウォルト(Stephen M. Walt)筆

2009年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2009/02/13/ir-theory-for-lovers-a-valentines-guide/

 

明日はヴァレンタイン・デーだ。人々への奉仕として、私は『フォーリン・ポリシー』誌の読者の方々に対して、国際関係論の理論が現在恋愛中である人々に役立つ、いくつかの重要な洞察を与えてくれることをお知らせしたいと思う。

 

まず、いかなるロマンティックなパートナー関係も本質的に同盟関係(alliance)である。同盟関係は国際関係論において中核をなす概念である。同盟関係は構成員に対して多くの利益をもたらす(そうでなければどうして私たちは同盟関係を結ぶだろうか?)。しかし、私たちが知るように、同盟関係は時に非合理的な情熱を反映し、構成員の自律性を不可避的に制限してしまう。国際関係論分野の理論家の多くは、同盟関係の制度化は同盟関係をより効果的にし、長続きさせるが、同時に制度化によって関係がより甲的なものとなることは、より慎重に考慮することを要する重要なステップともなると確信している。

 

 もちろん、国際関係論分野の理論家たちは、同盟の構成員たちが、放棄(abandonment)と罠(entrapment)の2つの危険に直面することを警告している。つまり、私たちはパートナーが私たちを見捨てるかもしれないと恐怖を覚えれば覚えるほど(放棄)、私たちは最初に予測できなかったような形の義務をお互いに課そうとする(罠)。読者の中には、自分のパートナーの高校の同窓会に出席したり、義理の親族たちとの感謝祭の夕食会に毎年出席したりしている人も多くいると思うが、そういう皆さんなら私が言っていることは理解できるだろう。

 

リアリストは長い間、二極(biploar)が最も安定すると主張してきた。従って、恋人がいるのに更に主要なアクターをシステムに加えようと考えている方がいらっしゃったら、是非再考されるようにお勧めしたい。私たちのほとんどが痛い目に遭いながら学んだように、多極的(multipolar)にロマンティックな関係を処理しようとすると、危機をもたらすことになる。更に、時に戦争にまで事態が悪化してしまうこともある。これは同盟関係の安定にとって良いことではない。

 

国際関係論の理論は私たちに対して、勢力均衡(balance of power)の変化は危険であると警告している。明確な警告は次のようになる。パートナーの地位や力が急速に変化する場合、関係は悪くなる。従って、貴方かパートナーが会社内で出世してそれを2人でお祝いするのは素晴らしいことなのだが、出世することで相手に対する期待の内容が変わり、2人はそれに慣れていかねばならない。もしどちらかが解雇された場合も同じことが言える。二人の関係において勢力均衡に大きな変化が起きた場合、忍耐と愛が必要となる。

 

最高の関係であっても時に波風が立つこともある。それは仕方がないことだ。それは、どんなに深く愛し合っている人間同士でも、相手が何を望んでいるのか、どうしてそういう行動を取るのかを理解できないことがあるからだ。国際関係論の理論家たちは、誤解について多くの優れた論稿を欠いてきた。その中のいくつかの内容は覚えておいて損はない。私たちは、私たち自身の行動は周囲の環境によって制限されていると考える傾向にある。一方、他の人の行動はその人の思い通りに行動しているのだと考えるものだ。「私がこれをやっているのはそれをしなければならないからだ。しかし、彼はこんな行動をしている、それは彼がそうしたいからだ!」と考えるものなのだ。この種の認識上の偏り(bias)は、争いのスパイラルにとっての大きな原因となる。国際関係論の理論家たちは長年にわたりこれについて警告を発してきた。小さな不動が起きる場合、それぞれの人たちは自分の立場を守ろうとするが、それが積極的かつ道理の通らない行動のように見えてしまうのだ。そして、私たちは国際関係論の分野におけるもう一つの重要な概念を思い出すのだ。それこそがエスカレーション(escalation)である。

 

私は数人の読者の方々がこの点について同意して頷いておられるだろうと思っている。

 

国際関係論の理論の中で特に役立つ概念が私の頭の中に思いついている。それは、宥和(appeasement)である。この概念は第二次世界大戦直前のミュンヘン会議以降不当に貶められてきた。しかし、ロマンティックな関係を維持するためには重要な戦略である。そして、もし読者の方々が私を信用しないなら、是非私の妻にお尋ねいただきたい。私の妻がこの段落を文章の中に入れさせた人物なのである。

 

国際関係論の理論のいくつかを学ぶことで、実際の恋愛関係や夫婦関係に役立つことがあるかもしれない。また、あなたは適切な人を選ぶという幸運に恵まれるだろう。そして、結婚という形で関係を制度化したいと望むこともあるだろう。もちろん、この記述は読者である貴方が異性愛者であること、もしくは同性愛者同士の結婚する権利を認めている世界の一部地域に住む幸運に恵まれた人であることを前提としている。

 

そして、2人が自分たちの結合したリソースを動員し、同盟関係を深化させると決心すると、伝統的な方法もしくは養子という形式で、子供を持つことになる。そうなると、新たな国際関係論の諸理論である抑止(deterrence)、強制(coercion)、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていくサラミ戦術(salami tactics)、越権行為(overcommitment)について学ばねばならない。しかし、更なる一連の問題も出てくる。それらについては今年の父の日に明らかにすることになるだろう。

 

(終わり)