古村治彦です。
ドナルド・トランプ大統領は9年ぶりに中国を訪問し、習近平国家主席と首脳会談を行った。トランプ大統領は自身のSNSで「習近平主席が『アメリカは衰退国家かもしれない』と述べたが、それについては、バイデン政権の下での点であれば100%正しい」と投稿した。第二次トランプ政権下ではその逆になっており、習主席からは業績について祝福されたとも書いている。「G2」「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)を率いるアメリカと、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)を率いる中国」という枠組みで世界の動向を決める最高峰の首脳会談が行われている中で、アメリカ大統領がこのようなことを投稿するということは前代未聞である。このような前代未聞のことを融通無下に行えるのがトランプ大統領の真骨頂である。
トランプをはじめとする世界各国のポピュリズム(既存のエリートたちに対する人々の異議申し立て)を基盤とする指導者たちの外交政策や外交姿勢についての共通点を抽出しているのが以下の論稿だ。重要なポイントは以下の通りだ。
「しかし、問題は、ポピュリスト的な外交政策が自己強化的(self-reinforcing)になっていることだ。トルコ、インド、ハンガリーの例に見られるように、失敗が人々の行動を変える可能性は低い。循環論法(the circular logic)はあまりにも強力だ。外交政策の私物化とエリート層の排除(the personalization of foreign policy and dismissal of elites)は、指導者たちを軌道修正に向かうように促すフィードバックループ(feedback loop)から孤立させてしまう。社内メディア制作とニューズのキュレーションはこのループを増幅させる。ポピュリストによる「腐敗したエリートたち」という枠組みと壮大な歴史叙述は、世界的な反発を自らのヴィジョンのさらなる裏付けと捉えさせる。そして、世界的な恐喝によって得られたわずかな利益であっても分配することで、国内からの批判にもかかわらず、主要支持層の忠誠心を確保することができる」
トランプ大統領の今回のSNS投稿について言えば、「ジョー・バイデン前政権」という「腐敗したエリートたち」によるアメリカの衰退を中国の最高指導者も認めているが、自分の業績は評価したという自己宣伝を行っている。こうした行為は「主要支持層の忠誠心を確保する」ためのものとなる。外交政策についてこのように見てみることで、興味関心が高まると思う。ぜひ参考にしていただきたい。
(貼り付けはじめ)
ポピュリスト外交政策の7本の柱(The Seven Pillars of
Populist Foreign Policy)
-トランプの世界へのアプローチを理解するには彼に似ている指導者たちを見てみよう。
リセル・ヒンツ、ベーク・イーセン、トゥーダー・オネア筆
2026年2月19日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/02/19/trump-erdogan-orban-modi-india-hungary-turkey-populism-corruptionthe-seven-pillars-of-populist-foreign-policy/
ドナルド・トランプ大統領就任から1期、1年、1カ月が経過した現在も、アナリストたちは彼の外交政策をどう理解すべきか議論を続けている。トランプは新たな世界的課題に対し、ワシントンの伝統的なアプローチを調整していると主張する人もいれば、彼のイデオロギー的衝動がアメリカの強さの源泉を独自に誤解していると主張する人もいる。良くも悪くも、トランプが外交政策上の制約に直面する状況は、最初の任期に比べてはるかに少なくなっていることは明らかだ。
私たちは、トランプ外交を理解するための最良のアプローチは、アメリカの世界における独自の地位やトランプ自身の特異性ではなく、むしろ彼のポピュリスト的な統治形態(his populist form of governance.)にあると考える。トランプの国内政策を、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相、インドのナレンドラ・モディ首相、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領といった他のポピュリスト指導者たちの政策と比較することは、すでに一般的になっている。しかし、この比較が外交政策の領域においても非常によく当てはまることは驚くべきことだ。結局のところ、アメリカ合衆国はハンガリー、インド、トルコとは全く異なる地政学的立場にある。しかし、トランプ政権下では、世界政治へのアプローチは極めて類似している。
ポピュリスト指導者たちは、彼らが代表すると主張する「人々(the people)」という点において、大きく異なっている。しかしながら、全体として見ると、彼らは類似した物語、様式、戦術、そして、複数の統治チャンネル(channels of governing)を用いており、それらは国内政治に影響を与えるだけでなく、海外での行動にも明確な影響を与えている。近年の研究は、ポピュリズムが戦略とイデオロギーの両面として機能すること、意思決定の手続き面が非ポピュリストのそれとどのように異なるか、ポピュリスト政権下での外交政策の変化の激しさを形作る条件、そして世界的なポピュリズムの台頭が国際秩序に与える影響を明らかにしている。
私たちが「ポピュリスト外交政策の7本の柱(the seven pillars of
popular foreign policy)」と呼ぶものは以下のようなものだ。個人化(personalization)、ハイパー・メディア化(hyper-mediatization)、「腐敗したエリートたち」(“corrupt
elites”)、壮大な歴史(grand history)、修正主義(revisionism)、恐喝(extortion)、そして(時に失敗する)国内における配当の追求(the (sometimes unsuccessful) pursuit of domestic dividends)である。これらの全ての領域において、トランプは国際的なポピュリスト指導者たちと非常によく似た行動を取っている。少なくとも、これらの類似点は、トランプの国際舞台における行動の根底にある独自の戦略的論理を探し求めるのは誤りであることを示唆している。
(1)個人化(1. Personalization)
トランプと同様に、ポピュリスト指導者(多くの場合、当初は自由かつ公正に選出された)は、伝統的に自らの統治に対するチェック機能を果たしてきた民主的制度に穴を開け、可能であれば掌握しようとする傾向がある。
トランプは「効率性(efficiency)」の名の下に官僚機構を大幅に削減したが、エルドアンの粛清はクーデター計画者や「テロリスト(terrorists)」を標的とするものだった。ハンガリーのオルバン首相は新たな憲法秩序を設計した。このように制度的知識を骨抜きにし、豊富な技術と知識を持つ人材を政治任用者(political appointees)に置き換えることは、外交政策の意思決定に深刻な影響を及ぼし、予測不可能性、リスク許容度の高さ、無能さ、そして他の国家優先事項を犠牲にした行政府の肥大化などを引き起こしている。
(2)ハイパー・メディア化(2. Hyper-mediatization)
全ての指導者が政治的コミュニケーションに関与するのに対し、ポピュリスト的な政治スタイルは、ニューズメディアやソーシャルメディアを巧みに活用して政治的スペクタクル、つまり一種の政治としてのメディアを演出する。
エクアドルのラファエル・コレア前大統領、ヴェネズエラのウゴ・チャベス前大統領、そして最近退陣させられたニコラス・マドゥロ大統領による毎週のテレビ番組、エルドアン大統領によるほぼ毎日の演説、そしてモディ首相のバーチャルアバターとの3D炉辺談話(the 3D fireside chats)は、国民との感情的な繋がりを生み出す役割を果たしている。これらのプラットフォームを利用して現職指導者の外交政策における勝利を強調することは、現職指導者だけが偉大さを再び示し、国民が当然得るべき地位と尊敬を取り戻すことができるというメッセージを伝えることになる。
トランプは大統領執務室を、厳選されたメディアの前で、外国の指導者を叱責したり、あるいは味方に引き入れようとしたりできる、実際の(新たにギラギラとさせられた)舞台と見なしている。2025年2月に政権の最高幹部たちがウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を厳しく叱責した事件は特に記憶に残る出来事であり、元テレビプロデューサーのトランプは、この出来事は「素晴らしいテレビ番組」になるだろう(the proceedings would make “great television”)と述べた。しかし、サウジアラビアとトルコの首脳による公式訪問を国民向けに企画したことも、ポピュリズムの芝居がかった演出を如実に示した。
ソーシャルメディアもまた、政治の場として頻繁に利用されるようになっている。トランプは、Xや自身のトゥルース・ソーシャルといったプラットフォームを利用して、指導者を脅迫し、政策変更を示唆するとともに、自らの功績を誇張している。
(3)「腐敗したエリートたち」(3. “Corrupt elite”)
ポピュリスト指導者たちは、国際政治を、腐敗した既存のエスタブリッシュメントの経済・文化エリートから「純粋な人々(pure people)」を守る正当かつ必要な守護者(rightful and
necessary guardians)であると主張する場と捉えている。ポピュリストは、国際的な地位を要求し、悪意ある外国エリートとその国内の陰謀から国家-国民、価値観、領土―を守ることで、「人々(the people)」の利益を強化すると主張している。
世界中のポピュリストは、自らの「腐敗したエリートたち(corrupt elites)」をアメリカ、ヨーロッパ、あるいは西側諸国と結託しているかのように仕立て上げることに長けている。チャベスは2008年のメルコスール首脳会議で、アメリカとヨーロッパ連合(EU)の移民政策を「合法化された野蛮行為(legalized barbarism)」と激しく非難した。親政府メディアから「太陽のスーパーマン(Solar Superman)」と称されるモディ首相は、2023年のG20サミット開催に際し、発展途上国に制限的な政策を課す西側諸国の指導者たちを非難した。
トランプはこのポピュリスト的な筋書きを維持し、西側諸国の一カ国であるアメリカの首都で権力を握る立場から、西側諸国が設計した秩序を批判し続けている。「リベラル派(liberals)」がアメリカを意図的に弱体化させ、世界の物笑いの種にしていると非難する際に、彼らがコスモポリタン的な、従って、非アメリカ的な利益(un-American interests)と結託していると常々示唆している。例えば、アメリカがユネスコから2回脱退した際、トランプは2回目の理由として、ユネスコが「意識の高いウォーク(woke)」だからだと述べた。
(4)壮大な歴史(4. Grand history)
ポピュリストの歴史叙述は、理想化された過去へのノスタルジアを喚起し、現指導者との連続性を確立し、失われた物質的および名声的な偉大さを過去の政権のせいにする。エルドアンはオスマン帝国の過去を持ち出してトルコの地域的自己主張を正当化する。モディはヒンドゥー教の民族主義的歴史を引用し、インドを文明的な世界大国として位置づける。オルバンは歴史を巧みに利用して親ロシア的な姿勢を正当化し、ひいてはハンガリーの強化を目指す。
トランプの「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」という政策は、アメリカの外交政策の中核を成す従来の叙述に挑戦する。アメリカが設計した多国間機構に誇りを持つ代わりに、トランプはそれらをアメリカの力に対する制約として位置づける。彼は、アメリカがNATOに資金を提供し、ヨーロッパ諸国がただ乗りしている(free riders)と主張し、冷戦後のルールに基づく秩序は前述のグローバリストの陰謀によって画策されたアメリカの利益への裏切りであると主張する。こうした主張は、一極行動主義(unilateralism)への転換、同盟諸国との取引関係、そしてパリ気候協定やイラン核合意といった過去の協定からの離脱を正当化するために利用された。
(5)修正主義(5. Revisionism)
ポピュリストは国際社会を「腐敗したエリートたち」と混同することで、しばしば修正主義を抱き、長年の同盟諸国との対立を招く可能性がある。超大国ではないポピュリストが率いる国家もまた、自国の地位向上につながる国際秩序の修正を求める。
エルドアン大統領が国連総会で「(国連安全保障理事会の常任理事国を指して)世界は5カ国よりも大きい」と頻繁に警告するのは、トルコに有利なように伝統的な力関係を崩すことを狙っている。地域レヴェルでは、オルバン大統領はハンガリーがヨーロッパ連合理事会の輪番議長国を務めていたことを利用し、域内の規範を「強引に押しつぶし(bulldoze)」、多国間構造に内側から挑戦を仕掛けた。
トランプの場合、国家統治術(statecraft)を研究した学者ウォルター・ラッセル・ミードが2017年に初めて指摘した「ジャクソン流ポピュリスト・ナショナリズム(Jacksonian populist nationalism)」が飛躍的に拡大している。二期目のトランプは、エリザベス・N・サンダースの言葉を借りれば「海外の皇帝(emperor abroad)」のように振舞っている。「アメリカ・ファースト」の名の下に広範囲に及ぶ関税、国際機関の権威への挑戦、そしてNATO同盟国に対する領土主張は、いずれもかつての覇権国家(hegemon)というよりは、むしろグローバル・サウスにおける台頭しつつある勢力に見られる修正主義的なアプローチを示唆している。
(6)恐喝(6. Extortion)
ポピュリストたちは、いかなる外交政策行動にも見返り(a payoff)が必要だと考えている。そして、ポピュリストたちは見返りを得るための機会を人為的に作り出すことをためらわない。これはしばしば、事態を悪化させ、正常化のための譲歩を要求することによって達成される。実際、ポピュリスト指導者の際立った特徴は、現状に対する劇的で変革的な変化を強調するにもかかわらず、しばしば見返りとして既存の取り決めとの共存を受け入れる用意があることだ。
真の修正主義は革命的だ。しかしながら、ポピュリストたちは現実的である。彼らは激しいレトリックと、劇的だが限定的、そしてさらに重要なことに、安易な権力の誇示から始める。あるいは、相手側と交渉して影響力を行使し、同盟関係を破壊して譲歩を引き出すことで、自らをディールメーカーとして位置付ける。そして、適切な見返りが得られれば、完全な勝利を収め、通常通りの行動に戻ると主張する。
2015年のシリア内戦でシリア難民が流入した際、エルドアン大統領は移民をヨーロッパに送り込むと脅した。その後の数カ月のうちに、彼はヨーロッパ連合(EU)と60億ユーロの資金援助を約束する合意を結んだ。その後、資金が期待したほど迅速に提供されなかったため、彼は再び脅しを続けた。
ワシントンの独自の立場は、トランプに見返りを確保するためのより有利な立場を与えているに過ぎない。例はいくらでも挙げられる。同盟諸国に対する包括的関税は個別交渉の結果撤回された。グリーンランド占領の脅しは曖昧な合意へと変貌し、グリーンランドにアメリカの主権の無駄な一帯を生み出した。トランプはロシアへの制裁をちらつかせたが、その後、ロシアへの巨額投資の約束と引き換えに、ウラジーミル・プーティン大統領との会談に同意した。アメリカ大統領はコロンビアに介入をちらつかせた後、コロンビア大統領に交渉を求めた。ヴェネズエラの野党活動家を突き放した後、彼女のノーベル平和賞を自ら獲得しようと画策した。
(7)国内における配当(7. Domestic dividends)
伝統的な指導者は一般的に非難を避けようとする。しかし、ポピュリストたちはそうではない。彼らはしばしば国際的な成果を勝利として主張しようと、紛争を煽り、永続させる。ポピュリストたちは人々の擁護者としてリスクの高い冒険に乗り出し、人々のために戦い、人々のために勝利していることを示す。
世界は、例えば国内メディアとは異なり、ポピュリストたちのコントロールが及ばないことが多いため、これは指導者が時として苦戦する領域である。エルドアンはEU難民協定に対して国民の激しい反発に直面した。2023年のG20サミットをインドが主催した際に、「#GoBackModi」キャンペーンが巻き起こった。インドでは、モディ首相の度重なる国際訪問が自国民に何の利益ももたらしていないという厳しい批判が巻き起こった。
時が経つにつれ、トランプもますます同じ轍を踏む危険性が高まっている。20261月にイプソス社が行った調査では、グリーンランド併合を支持したアメリカ人はわずか5人に1人だった。キュニピアック大学の世論調査では、10人中9人が武力行使に反対している。別の世論調査では、アメリカ人の大多数が、トランプが宣言したようにヴェネズエラを「統治(running)」することに反対していることが明らかになった。
トランプの外交政策は、自らが約束した変革をもたらす成果をもたらすどころか、その条件自体がほぼ失敗に終わった。アメリカの戦争終結を誓ったにもかかわらず、ウクライナでは今のところ何の成果も得られず、ガザ地区では不安定な停戦しか実現していない。海外におけるアメリカの軍事的関与を削減するどころか、トランプはイランとの紛争をエスカレートさせ、ヴェネズエラに対する軍事作戦を命じた。貿易と安全保障に関するより良い合意を約束したにもかかわらず、中国との関税戦争は決着がつかずに終わった。実際、国内的に見ても、トランプの政策は彼が期待した支持率の向上にはつながっていない。
しかし、問題は、ポピュリスト的な外交政策が自己強化的(self-reinforcing)になっていることだ。トルコ、インド、ハンガリーの例に見られるように、失敗が人々の行動を変える可能性は低い。循環論法(the circular logic)はあまりにも強力だ。外交政策の私物化とエリート層の排除(the personalization of foreign policy and dismissal of elites)は、指導者たちを軌道修正に向かうように促すフィードバックループ(feedback loop)から孤立させてしまう。社内メディア制作とニューズのキュレーションはこのループを増幅させる。ポピュリストによる「腐敗したエリートたち」という枠組みと壮大な歴史叙述は、世界的な反発を自らのヴィジョンのさらなる裏付けと捉えさせる。そして、世界的な恐喝によって得られたわずかな利益であっても分配することで、国内からの批判にもかかわらず、主要支持層の忠誠心を確保することができる。
その結果、世界規模で、予測不可能性(unpredictability)、紛争(conflict)、そして腐敗(corruption)がさらに蔓延する可能性が高い。
※リセル・ヒンツ:ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院(School of
Advanced International Studies)講師。
※ベーク・イーセン:トルコ・サバンシ大学政治学部准教授。
※トゥーダー・オネア:トルコ・ビルクネット大学国際関係学部講師。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』


