古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:一般教書演説

 古村治彦です。
 2023年12月27日最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2024年のアメリカ大統領選挙について詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年3月8日にジョー・バイデン大統領が一般教書演説(State of the Union Address)を行った。一般教書演説は、アメリカ大統領が連邦議事堂で行う、アメリカ合衆国の現状について国内外に報告するという演説だ。アメリカ合衆国憲法では、権力分立(separation of power)が規定されており、連邦議会の権威は強いもので、大統領がほいほいと連邦議事堂に行けるということはない。連邦議会が招聘しなければ入ることはできない。
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 バイデン大統領は大統領任期一期目の最後の一般教書演説を行った。アメリカ史上最高齢の大統領であり、おぼつかないところや、プロンプターに映った原稿の文言を読み飛ばすということもあったが、大きな失言や言い間違いはなかった。まずは何とかなったというところだ。バイデン政権と民主党側は、この一般教書演説からバイデンの支持率が上がって、反転攻勢が始まったというシナリオにしたいようだ。バイデンは、経済の好調さをアピールして、「経済に強いのはトランプ」というアメリカ国民の間にある考えを払拭しようと躍起になっている。

 重要なのは、一般教書絵演説が選挙演説のようになってしまって、直接名前を出すことはなかったが、「前任者」という言葉を使って、トランプのことを指して、批判を展開したことだ。その中で重要なのは、トランプとトランプの選挙運動(MAGA運動)を、南北戦争(The Civil War)期の「南部連合(The Confederate States of AmericaCSA)」に例えたことだ。これは、バイデンと民主党側は、選挙運動を進めて、大統領選挙が実施され、結果が判明したら、アメリカは分裂すると考えているということを示している。「Union=United States」であるはずだが、それほどまでに考えが違っているとなれば、とても統一は維持できないというところまでアメリカの国内状況は悪化しているということだ。

 また、バイデン大統領は「世界平和と民主政治体制(デモクラシー)を守るための重要な時期が今だ」ということで、危機を演出しようとしている。トランプが大統領になれば、世界平和は実現せず、民主政治体制も守られないということを言っている。しかし、一般教書演説で選挙の相手候補を悪しざまに罵り、自分の高齢問題をごまかそうとする人物がアメリカ大統領にふさわしいとは多くのアメリカ国民は考えないだろう。それでも何故か、バイデンが二期目に当選してしまう。そうなると、アメリカ国内の分裂、分断は深刻化し、アメリカ合衆国が、アメリカ合衆国ではなくなるということも起きる可能性がある。今回の大統領選挙は、トランプ、バイデン、どちらの候補者が勝つということも重要だが、アメリカ合衆国がアメリカ合衆国であり続けられるか、ということもまた重要になってくる。
(貼り付けはじめ)

バイデンの一般教書演説の5つのポイント(5 takeaways from Biden’s State of the Union address

ナイオール・スタンジ筆

2024年3月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/4518254-five-takeaways-from-bidens-state-of-the-union-address/

木曜日の夜、2024年の大統領選挙を前に、ジョー・バイデン大統領は大統領任期1期目最後の一般教書演説(State of the Union)を行った。

それは極めて重要な瞬間であった。現在、大統領を低く評価しているアメリカ国民に対して、途中にメディアを挟むことなく、直接発言する貴重な機会であった。

本誌とディシジョンデスクHQが行っている世論調査の平均によれば、アメリカ国民の58%がバイデンの大統領としての職務遂行に不支持で、支持はわずかに40%である。

バイデンは、今週初めのスーパーチューズデーで圧倒的な勝利を収め、実質的に共和党の指名を獲得したトランプ前大統領に対して、11月の大統領選挙本選挙ではやや劣勢になっている。

バイデンは木曜日、ささやかな期待のハードルをクリアし、勢いと情熱をもって67分間の演説を行った。

主要なポイントは以下の通りです。

(1)トランプを標的にして、バイデンは選挙演説を行った(Biden, taking aim at Trump, makes a campaign speech

良きにつけ悪しきにつけ、この演説は近年で最も仰々しく政治的なものだった。

バイデンは、わずか8カ月後に迫った大統領選挙本選挙に向けて自らの主張を展開する機会をつかんだ。

演説が始まるとすぐに、バイデンはトランプを彼の名前は出さずに、最近のNATOに関する発言で「ロシアの指導者に屈服している(bowing down to a Russian leader)」と非難した。

バイデンはそこから、2021年1月6日の件に話を移し、トランプと他の共和党連邦議員たちはあの日起こったことの「真実を葬り去ろうとしている(bury the truth)」と述べた。バイデンは「私はそんなことはしない」と述べた。

バイデンは、共和党を税制面で超富裕層に従属し、人工妊娠中絶から体外受精治療まで女性のリプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)に反対し、社会保障とメディケアを脅かす存在として描こうとした。

バイデンと彼のスピーチライター陣は、「医療保険制度改革法(Affordable Care Act)」について、当時のバラク・オバマ大統領に対する有名な冒涜的発言を連想させるような、「まだ非常に大きな問題である(still a very big deal)」ことを思い出させるような、巧みな場面を織り交ぜた。

共和党は、この演説は党派的すぎると抗議した。しかし、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(共和党)のように、この日のためにMAGAハットをかぶってバイデン大統領に罵声を浴びせた人物が共和党にいる以上、その指摘の正統性を主張することは難しい。

要するに、バイデンは、総選挙選挙運動を本格的に開始するために、多くの人が予想していたよりもこの場をうまく利用したということだ。

(2)81歳の大統領であるバイデンは高齢問題を抑え込もうとしている(81-year-old president tries to neutralize the age issue

二期目を目指すにあたり、高齢であることはバイデン大統領にとって最も厳しい弱点となっている。

各種世論調査によると、アメリカ国民のおよそ75%が、81歳のバイデンが2期目をしっかりと務められるかどうかについて懸念を持っている。

木曜日の一般教書演説の終わりに、バイデンはこの問題を直接取り上げ、自分の有利になるように、少なくとも自分の責任の範囲を小さくしようとした。

「そうは見えないかもしれないが、私は長い間生きてきた」とジョークを飛ばして言及を始め、自分が高齢であることで、アメリカの歴史と価値観を広く正しく見渡していることを主張した。

バイデンは品格や誠実さといった特質を挙げ、前任の大統領であるトランプへの明確なジャブとして「私と同年代の人たちは違う見方をしている」と付け加えた。バイデンは、トランプが「恨み、復讐、報復」に焦点を当てているとほのめかした。

年齢問題はなくならない。そしてバイデンは木曜日の一般教書演説において、本当に悲惨な失言を避けながらも、いくつかの文言を飛ばした。

しかし、彼は少なくとも、自分の大きな弱点をポジティブな物語にしようとして最善を尽くした。

(3)進歩主義派の怒りが高まる中でガザをめぐる新たな動き(A new move on Gaza, amid rising progressive outrage

ガザをめぐる政治的利害は、ここ数ヶ月の恐ろしい死者数とともに高まっている。

バイデンの精力的なイスラエル支持に対する不満は、特に進歩主義派や若い有権者たちの間で根強い。しかし、民主党の主流派からも不安の声が上がり始めている。

バイデンは、ホワイトハウスがその日のうちに予告していた新たな展開、つまりガザの地中海沿岸に緊急用の桟橋を建設するためにアメリカ軍を利用することを発表した。

この桟橋は、国連が50万人以上の人々が「壊滅的な(catastrophic)」困窮と餓死寸前に直面していると発表したガザに、切実に必要とされる援助を届けるためのものだ。

バイデンは、「アメリカ軍が現地に乗り込むことはない(no U.S. boots will be on the ground)」と強調した。その代わり、海上から桟橋を建設する計画があると述べた。

この発表によって、バイデンに対する左派からの政治的圧力が軽減されるかどうかはまだ明確には分からない。

また、バイデンが中東で求めているという停戦(cease-fire)は、今のところ達成されていないという事実とも戦わなければならない。

(4)移民問題での台本大幅変更の試み(An attempt to flip the script on immigration

南部国境を越える大量の移民は、バイデンの政治の命運を大きく左右している。

政策的には、移民問題は一般的に大統領が最も苦手とする2つの問題のうちの1つである。

しかし、バイデンと民主党は、トランプ大統領の反対により、数カ月前から進められていた超党派の国境交渉が決裂したことで、自分たちは政治的な贈り物を手に入れたと考えている。

バイデンは木曜日の一般教書演説の中で、協定に反対した共和党を非難し、協定が成立すれば入国審査官、亡命職員、麻薬探知機の数が増加するだろうと指摘した。

バイデンはまた、この協定が国境警備隊の組合によって承認されたことを強調した。

共和党連邦議員たちが声を荒げて反対すると、バイデンは「事実を見てみるべきだ。あなたが本当は私たちの提案の内容をきちんと分かっていることは知っている」と言い返し、民主党連邦議員たちが喝采を浴びた。

バイデンはその直後、先月ジョージア州アテネで殺害された22歳のレイケン・ライリーの名前を "リンカーン"・ライリーと言い間違えた。ライリー殺害容疑で起訴された男は、アメリカに不法入国していた。

年齢と同様、入国管理もバイデンの責任であり続けるだろう。ライリーの名前の間違いは、彼が木曜日に行おうとしていた主張を台無しにする可能性もある。

(5)共和党の台頭するスターが反対討論でつまずく(GOP rising star stumbles in response

一般教書演説への反対討論を行うことは報われない仕事だ。

通常、反対討論はカメラに向かって1人で行われるため、連邦議事堂の荘厳な雰囲気の中で演説する大統領よりも印象が薄くなるのは自然なことだ。

これまでに誰も見事に反対討論を成功させた者はいない。しかし、ケイティ・ブリット連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)は、木曜日、特に酷い結果に終わった。
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ブリットの発言は、実質的には共和党の標準的な言葉遣いだった。

しかし、彼女の独特で過剰な芝居がかった話し方によって、彼女の反対討論は悪い意味で際立ってしまった。

ブリットはおそらく感情を伝えるつもりだったのだろう。しかし、ソーシャルメディア(SNS)上では、不誠実だとの嘲笑で溢れかえった。

共和党の台頭するスターと見なされていた若手議員にとって手痛い後退となった。

CNNでは、トランプ政権下でホワイトハウスの高官を務めたアリッサ・ファラ・グリフィンも、ブリットのキッチンでこの反応を撮影するという、性差別的なステレオタイプに翻弄されそうな設定に苦言を呈した。

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バイデンが2024年への賭けを明確に示す(Biden Starkly Lays Out the Stakes for 2024

-バイデン大統領は、一般教書演説において最も政治的に重要な演説を行った。

マイケル・ハーシュ筆

2024年3月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/08/biden-sotu-address-2024-election/

ジョー・バイデン米大統領は木曜夜、記憶に残る最も政治的、そして政治的に重要な一般教書演説の1つを行い、アメリカと全世界にとって来たるべき選挙の賭けを最も厳しい言葉で述べた。

アメリカが戦争の脅威に直接晒されている訳ではないことを考えれば、この演説で最も印象的だったのは、バイデンが演説の冒頭で、アメリカの第二次世界大戦参戦を前にした1941年1月のフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領の一般教書演説を引用したことだろう。バイデンはFDRの言葉を引用し、「私は、アメリカの歴史において前例のない瞬間に演説する(I address you in a moment unprecedented in the history of the union)」と述べた。

「今、前例のない瞬間に直面しているのは私たちだ」とバイデンは述べた。そしてバイデンは、彼の名前を挙げることなく、2024年の対立候補となることを確実にしているドナルド・トランプ前大統領を、アドルフ・ヒトラーとナチスの脅威となった役割にたとえた。これだけでは物足りないと思ったのか、バイデンはすぐにトランプと彼の「アメリカを再び偉大に(Make America Great AgainMAGA)」運動を、連邦から脱退した南部連合(the Confederates)と同一視した。

バイデンは、「エイブラハム・リンカーン大統領と南北戦争の時代以降、今日ほど国内で自由と民主政治体制が攻撃に晒されている時期はない。私たちの瞬間が特別になっているのは、自由と民主政治体制が国内外で同時に攻撃に晒されていることだ」と述べた。

言い換えれば、バイデン大統領は、一般的に歴史上最も偉大な2人の米大統領と考えられているフランクリン・D・ルーズヴェルトとエイブラハム・リンカーンが個別に直面した以上に、今日、国家はトランプという更に危険な脅威に直面している、と言っているように受け止められた。バイデンはその後、トランプを繰り返し「前任者(predecessor)」と呼び、何度も何度も非難した。バイデンは、トランプがウクライナ侵攻をめぐってロシアのウラジーミル・プーティン大統領に「ひれ伏し(bowing down)」、国内で政治的暴力を煽り(「自分が勝ったときだけ国を愛することはできない[You can’t love your country only when you win]」とバイデンは言った)、移民は「我が国の血に混じりこんだ毒(poison in the blood of our country)」だと述べ、ファシストのように発言し、蔓延する銃乱射事件には肩をすくめるだけだったと非難した。

バイデンは繰り返し、トランプがもたらす国内と国外の複合的な脅威、つまり、国外では平和が危機に瀕し、国内では民主政治体制が損なわれるというテーマを訴えた。バイデンは次のように述べた。「アメリカが手を引けば、ウクライナが危険に直面する。ヨーロッパも危険に晒される。自由な世界は危険に晒され、私たちに危害を加えようとする他者を活性化することになる。歴史は見ている。3年前の1月6日、暴徒たちがまさにこの連邦議事堂を襲撃し、アメリカの民主政治体制の喉元に短剣を突き立てたとき、歴史がこの事件を目撃していた」。

1つ明らかなことは、バイデンとそのティームは、彼の年齢(81歳)と厳しい支持率を残した経歴に対する連鎖的な疑惑を一気に克服することに熱心であり、事実上わずか8カ月しか残っていない大統領選挙でトランプに対して劣勢に陥っている中で逆転をすることだった。バイデン大統領は、70分近くの演説が終わるまで、再選を目指す上での最大の争点である年齢のために疲れを見せることが予想されたが、明らかにエネルギーの衰えを感じることなく、力強く演説を行った。

バイデンは次のように述べた。「そう見えないかもしれないが、私はこれまでに長く生きてきた。私のような年齢になると、あることがこれまで以上に明確になる。アメリカ国民の皆さん、我が国が直面している問題は、私たちが何歳であるかということではなく、私たちの考え方が何歳であるかということだ。憎しみ、怒り、復讐、報復は、最も古い考え方だ。しかし、私たちを後戻りさせるだけの古い考えでアメリカを導くことはできない」。

バイデンの演説は、大統領選挙での敗北から彼自身を救うことができるだろうか? バイデンの2023年の一般教書演説は絶賛されたにもかかわらず、彼の低い支持率にはあまり影響を与えなかった。しかし、この演説はまったく異なる時点で行われた。スーパーチューズデーでのバイデンの大勝利と、トランプの最後の共和党対抗馬ニッキー・ヘイリーの大統領選挙からの離脱からわずか2日後に行われたこの演説は、アメリカの有権者にとって厳しい現実を問うものでもあった。バイデンがどこにも行かず、8か月後にはトランプが彼の敵となることが初めて明らかになった。この演壇の前に立つ81歳の男性だけが、大惨事とアメリカ民主政体の存続の間に立っていることが多くのアメリカ人の目に明らかになったのだ。

バイデン陣営の明らかな賭けは、サミュエル・ジョンソンの言葉を借りれば、差し迫った絞首刑のように、独裁者志望者の脅迫、それは差し迫った絞首刑のようなもの、が見事に人々の精神を集中させるということだ。突然、人々はもはや30歳も若い、あるいはもっと刺激的な人に投票したいと願うような余裕はない。今はジョーとドナルドだけだ。ほとんどの民主党所属の議員でさえも、バイデン2期目の誕生に興奮していないのは明らかだ。しかし、もしそれしか残されていないのだとしたら、つまり、風邪かガンかという選択なのだとしたら、進むべき道は突然明らかになる。

バイデンが上院議員時代にコミュニケーション・ディレクターとして仕えたノーム・クルツは私たちの取材に対して、Eメールで、「有権者たちはバイデンを全能の神と比べるのではなく、その代替案と比べるべきだというバイデンの繰り返しの主張に、共鳴し始めるだろう」と書いている。

バイデンの演説は、米大統領が存亡のレベルでの賭けを明確にしようとした過去の瞬間を思い出させた。リンカーンは、1862年の一般教書演説で、「私たちが経験している激しい試練は、最新の世代に、名誉を与えるか、不名誉を与えるかで、私たちを照らすだろう」と述べた。あるいは、冷戦の最盛期の1961年1月にジョン・F・ケネディは警告を発し、アメリカは「我が国のように組織され統治されている国家が果たして存続可能であるかどうかが試されなければならないとき、国家的危機と国家的機会」に直面している、というものだった。

しかし、それはまた、トランプ大統領が目覚めさせた新たなアイソレイショニズムの感情を逆手に取りながら、アメリカの伝統的な世界の警官としての役割を回復するという、バイデンが大統領任期中に達成せざるを得ない微妙なバランスの尺度でもあった。数百万のアメリカの有権者たちは「アメリカは世界の中で過度に拡張されていると信じている」が、バイデンは彼らを説得しなければならない。バイデンは国家安全保障政策として、「バイ・アメリカン」新保護主義的アプローチを宣伝した。バイデンは「前任者を含む過去の政権は、バイ・アメリカンに失敗した」と述べ、ウクライナへの601億ドルの支援策を再度推し進めながらも、アメリカ軍はウクライナ戦争に巻き込まれることはないと繰り返した。

バイデンはまた、自身の親イスラエル中東政策をめぐって勃発している、進歩主義派からの反乱を鎮圧しようとした。火曜日には数十万人の有権者たちがバイデンに不満を表明し、木曜日には抗議活動参加者たちが連邦議事堂へ入ろうとする大統領の車列を阻止しようとした。バイデンはガザ沿岸部の桟橋は、包囲されたパレスチナ人に対する「人道支援の量の大幅な増加を可能にする」だろう、と述べた。

ここでも同様に、バイデンは、「アメリカ軍を派遣することはない(No U.S. boots will be on the ground)」と改めて公約した。

バイデンは演説の大半を、より伝統的な一般教書演説の方法で行い、トランプの「古臭い考え」とは対照的な前向きなアジェンダを主張し、有権者たちに彼の最大の功績を思い出させた。その中には、2030年までに炭素排出量を半減させ、クリーンエネルギーの雇用を何万人分も創出するという「世界史上最も重要な気候変動に関する行動」と、「道路や橋、港湾や空港、公共交通システムの近代化」を含む4万6000もの新規プロジェクト、そして複数の銃規制法の新設を含む「超党派インフラ法(Bipartisan Infrastructure Law)」が含まれている。バイデンは、NATO(「世界がかつて見たことのない最強の軍事同盟(the strongest military alliance the world has ever seen)」)の維持について自画自賛し、同盟の新加盟国であるスウェーデンの首相を紹介した。

バイデン大統領はまた、企業の内部留保への増税、大手製薬会社、大手石油会社、役員報酬への税制優遇措置の撤廃を発表し、処方箋薬のコストを劇的に削減する法案に署名したと述べた。また、各種世論調査で共和党に大きな打撃を与えているリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)についてもトランプを厳しく非難し、中絶反対派はアメリカにおける「女性の力について何も分かっていない」と述べた。バイデンは「私はロウ対ウェイド事件を再び国の法律として復活させる」と宣言した。

バイデンを最もイライラさせている問題である経済(世論調査によると、経済成長率は高いにもかかわらず、多くの有権者がトランプの方が経済に強いと信じていることが示されている)について、バイデン大統領は有権者たちが今の経済状況がいかに良好であるかを理解するのは時間の問題だと主張し続けた。バイデンは次のように述べた。「私は瀬戸際にあった(on the brink)経済を受け継いだ。今、私たちの経済は文字通り世界の羨望の的となっている。わずか3年間で1500万件の新規雇用が発生した。これは記録的なことだ。失業率は50年ぶりの低さだ。 給料は上がり続けている。インフレ率は下がり続けている。インフレ率は9%から3%に低下し、世界で最低水準となった」。

そのレトリックは刺激的で、扇動的でさえあり、おそらく少し絶望的だった。しかし、正直に言って、バイデンは決して優れた演説家とは言えないだろう。バイデンの演説は全て、息も詰まるような綱渡りのような緊張感、ろれつが回らなくなる音、時折どもる声、彼がつまずくことなく一文を最後まで言い切ることができるかどうかは誰にも分からないが、木曜日の夜にはそれらが全て存在し、拍手の間に時折咳き込むこともあった。

しかし、バイデン大統領は大きな失言も犯さず、最初から最後まで調子を落とさずに演説を成功させた。バイデンはまた、特に連邦下院共和党がいかに無力で妨害主義的であるかを考慮して、侮辱を叫ぶ共和党連邦議員たちを嘲笑するという昨年の演説の戦術を繰り返したことでも効果的だった。はっきりとは言わなかったが、バイデンは、悪名高い「何もしない(do-nothing)」連邦議会を攻撃するというハリー・S・トルーマン大統領の成功した1948年の戦術を模倣しているようだった。バイデンは共和党主導の連邦下院に対し、長年滞っていた法案、特にウクライナ国家安全保障支援法案の可決を何度も要求した。いずれにせよ、共和党は民主党の「あと4年(four more years)」のシュプレヒコールに何度もかき消され、それがまた全体の出来事に選挙集会のような雰囲気を与えた。

バイデンの一般教書演説は常に、何を言ったかよりも、どのように言ったか、つまり、どのように話し、どのように演壇に上がり、どのようにヤジに反応したかが重要であり、その尺度で彼は成功した。 何よりも、バイデンは、アメリカの有権者たちが最終的に彼の計画が機能していることを理解するようになるだろうと、はっきりと自信を示していた。

バイデン、そしてアメリカ国民にとっての課題とは、バイデンの敵対者、つまり、前大統領トランプである。トランプは現在もまた終末論的な言葉遣いを行っている。2月末のある演説では、トランプ大統領は第二次世界大戦との比較を引き合いに出し、「今回の最大の脅威は国外からのものではない、私はそう信じている。もっと危険なのは国内の人々だ。彼らはとても病んだ人々だ」と述べた。そして、火曜日の夜、14の州での勝利を受けて、トランプ大統領は、バイデンの下でアメリカは「第三世界の国(a third-world country)」に成り下がったと述べた。

業績のデータは明らかにバイデン側を有利にする。 それでもバイデンは、2022年の中間選挙後ほど自信を持てなくなっており、有権者がバイデンの政策を評価するのは時間の問題だという。中間選挙の翌日、バイデンは今後2年間で何を変えるつもりかとの質問に「何も(nothing)」と答え、国の方向性に自信をのぞかせた。

その戦術はうまくいかなかった。 新しい大統領の戦術が効果を発揮するかどうかは分からない。

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。『資本攻勢:ワシントンの賢人たちはいかにしてアメリカの未来をウォール街に委ねたか(Capital Offense: How Washington’s Wise Men Turned America’s Future Over to Wall Street)』と『我たち自身との戦争:なぜアメリカはより良い世界を築くチャンスを無駄にするのか(At War With Ourselves: Why America Is Squandering Its Chance to Build a Better World)』の2冊の著作がある。ツイッターアカウント:@michaelphirsh

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年3月1日にジョー・バイデン大統領が一般教書演説を行った。1年間の成果を誇る演説であったが、全体的に総花的で空元気の演説だった。議場にいる連邦議員たち、特に民主党所属の議員たちは何でもかんでも立ち上がって、やけのやんぱちで拍手をするものだから、バイデンとの呼吸が合わずに、バイデンはとてもやりにくそうだった。それで同じ行を二度読んだり、「ウクライナ人」と言うべきところを「イラン人」と言い間違ったりしたのだろう。

 今回は、バイデンの一般教書演説で語られなかった5つの重要な事柄について書かれている記事をご紹介する。それら5つの事柄は「(1)学生ローン債務問題、(2)アフガニスタンからの撤退(3)ドナルド・トランプ前大統領、(4)2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件、(5)中間選挙」であった。学生ローン債務問題は若者たちからの投票を得るための切り札のように思われるが、民主党内部でもいわゆる「借金の棒引き(徳政令)」には反対の声が大きい。若者全員が大学に行く訳ではなく、一部の若者のために多額の予算を使って借金を棒引きにするのは不公平だという声だ。従って、目玉政策とすることはできない。また、トランプ前大統領について語ることはどうしても批判ばかりとなってしまい、トランプ支持の有権者たちからの更なる反発を招くことは必至なので、それではアメリカ国内の分断を癒すというバイデン政権のメインテーマに反することになる。そして、中間選挙については今のところ厳しい情勢が続いており、語るべき言葉もないということだろう。

 国内の不満から人々の目を逸らすために、外国の問題に目を向けさせるというのはどんな時代のどんな政権にとっても常套手段だ。今回のロシアのウクライナ侵攻はバイデン政権にとっては外に目を向けさせる機会となるが、欧米諸国によるロシア制裁によって、アメリカ国民の生活に大きな影響が出るというジレンマを抱えている。先日もご紹介したが、アメリカ国民の多くは対ロシア制裁を支持しているが、「自分たちの生活に影響が出る」搭乗券が付くとその数字が下がってしまう。バイデン政権にとっては難しいかじ取りが続く。

(貼り付けはじめ)

バイデンが一般教書演説の中で話さなかった5つの事柄(Five things Biden didn't talk about in State of the Union

アレックス・ガンギターノ筆

2022年3月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/596461-five-things-biden-didnt-talk-about-in-state-of-the-union

ジョー・バイデン大統領は、火曜日に行われた自身初の一般教書演説で、いくつかの主要なトピックに言及せず、5つの重要な問題に言及しなかった。

学生ローンの負債、アフガニスタンからのアメリカ軍撤退、トランプ前大統領、2021年1月6日の暴動、そして来る中間選挙の5つが、1時間余りの演説の中で省かれた。

バイデンが演説に含まなかった5つの問題について見ていく。

(1)学生ローン(Student loans

バイデン大統領は学生ローン債務の免除について全く言及しなかった。学生ローン債務問題については、民主党の連邦議員たちがこれまでバイデン大統領に対して大統領在任中に取り組むように求めている。

連邦上院多数党(民主党)院内総務のチャールズ・シューマー(民主党)のような民主党指導者の間で広範な学生ローン免除が支持を得ているため、議員らは大統領にこの問題について透明性も提供するよう求めている。

バイデンは2020年の大統領選挙で、1人当たり少なくとも1万ドルの連邦学生ローンを免除することを選挙公約に掲げ、進歩主義派は借り手1人当たり5万ドルに引き上げるよう求めている。

2021年4月、バイデン大統領は学生ローン負債を帳消しにする権限を判断するため、教育省にメモを要求した。それ以来、政権はメモが完成しているかどうかを公には発表していない。

ホワイトハウスは最近この話題について尋ねられ、バイデンが2022年1月に5月初めまで延長した連邦学生ローンの支払い凍結を強調している。この凍結は、2020年3月に当時のトランプ大統領の下で制定されたモラトリアムによって始まり、これまで何度か延長されてきた。

(2)アフガニスタン(Afghanistan

バイデン大統領は一般教書演説の中で、政権1年目の2021年8月に行った、混乱したアフガニスタンからの撤退に言及しなかったことで、すぐに反発を受けた。

グリーンベレー出身者として初めて連邦下院議員に当選し、アフガニスタンに何度も遠征したマイク・ウォルツ下院議員(フロリダ州選出、共和党)は、撤退に言及しなかったことを恥ずべきことと指摘した。

ボバート議員は「何という不名誉な体裁をつくろう姿だろう。アメリカ国内にいる13人の戦死者(ゴールドスター勲章受章者)の母親たちと何千人ものアフガニスタンの協力者たちに答えるべきだ」と述べ、2021年8月にカブール空港で起きた自爆テロで13人のアメリカ軍兵士が犠牲になったことに言及した。

一般教書演説中、ローレン・ボバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)はバイデン大統領に対して叫び声をあげ、アメリカ軍を棺桶に入れたようなものだと非難した。この異常で衝撃的な礼儀作法に対する違反は、バイデン大統領が、イラクとアフガニスタンに駐留する多くの米軍が大規模な燃焼炉からの化学物質を含む有毒な煙にさらされて癌を発症したこと、そして有毒な燃焼炉の影響を受けたかもしれない彼の亡き息子について話していたときに起こった。

バイデンは「国旗で覆われた棺桶に被害者たちを入れてしまうような癌だ。私はこのことについて痛いほどよく知っている」と語った。

バイデン大統領は、アフガニスタンからの撤退の方法について共和党と民主党から批判を受けながらも、その決断について自己弁護してきた。先月、バイデンは、軍当局者が撤退についてバイデン政権関係者を批判したとされる陸軍の調査報告書の記述と調査結果を否定したと述べた。

(3)トランプ(Trump

バイデンは前任者であるトランプ前大統領の名前を演説の中で言及しなかった。

バイデン大統領はこれまでの複数の演説でトランプの名前に言及することは非常に稀で、前任者の名前を示唆する傾向があった。火曜日の一般教書演説では、数カ所でトランプを連想させる発言をした。

バイデンは「アメリカ人の上位1パーセントに恩恵を与えた前政権で成立した2兆ドルの減税とは異なり、アメリカン・レスキュー・プランは働く人々を助け、誰も置き去りにしない」と述べ、2017年に成立したトランプ前大統領による減税案を批判した。

その後、2021年11月に可決成立した超党派によるインフラ整備法について強調する際、「インフラ週間の話はもうたくさんだ(“we’re done talking about infrastructure weeks)」と述べた。「インフラ週間」とは、トランプが1兆ドル規模のインフラ案のイベントを1週間かけて開催したが全く盛り上がらなかったことを受けて、ワシントンでジョークとして

バイデン大統領の一般教書演説の主眼は団結であり、麻薬の蔓延への対処、子どもの精神衛生医療への資源提供、退役軍人の支援、癌の撲滅など、「団結の課題(unity agenda)」すなわち超党派での議会通過を促す4項目を提案した。

(4)2021年1月6日の連邦議事堂進入事件(Jan. 6

バイデン大統領の一般教書演説は、約1年前、2020年の大統領選挙の結果認定に抗議してトランプ支持の群衆が押し寄せた議場で行われた。しかし、バイデンは演説の中で2021年1月6日の出来事には触れなかった。

事件発生1年の節目に、バイデン大統領は連邦議事堂内のスタチュアリー・ホール(国民彫像ホール)で演説を行い、「嘘の網(web of lies)」を広げたトランプ前大統領を手厳しく非難した。彼はまた、演説の中で、トランプに言及することをしないことで、トランプを際立たせるという手法を取った。

暴動の後、数カ月間設置されていた連邦議事堂の周囲のフェンスは、火曜日の演説に先立って元のレヴェルに戻された。また、最大700名の州兵が、問題が発生した場合に地元警察を支援するために待機していた。

フェンスは、最近カナダで見られたようなトラック運転手に対する新型コロナウイルスワクチン義務化に対する抗議に備えたものでもあった。しかし、連邦議会での一般教書演説の前後にトラック運転手たちが大挙して車列を連ねてワシントンDCにやって来るという計画は頓挫したようだ。

(5)中間選挙(Midterms

2022年の中間選挙まで残り数カ月に迫る中、バイデン大統領は演説の中で、来るべき選挙について語らなかった。

民主党は今年秋の中間選挙で連邦議会での過半数を維持することに対して、大きな壁に直面しており、各種世論調査の結果では、バイデンの支持率はほとんどが40%台前半という非常に厳しい状況にある。また、バイデン大統領の所属する民主党は中間選挙で敗北する可能性が高まっている。

バイデン大統領は火曜日、インフレーション対策とアメリカ人のために物価を下げるための政権の努力について語った。インフレーション率の上昇は、バイデンの支持率に打撃を与え、今年の連邦上下両院の過半数を維持したい民主党にとって難題となっている。

バイデン大統領はまた、ロシアのウクライナへの侵攻と、アメリカと同盟諸国がモスクワを非難し、制裁措置を講じるために一致して制裁措置を取っていることについても詳しく語った。アメリカの有権者たちは、ロシアの侵攻に対抗するバイデンの努力を精査する可能性が高いため、ロシアによるウクライナ侵攻は中間選挙の結果に影響を与える可能性がある。

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一般教書演説でバイデンは4部構成で団結について提案(Biden proposes four-part unity agenda during State of the Union

ブレット・サミュエルズ筆

2022年3月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596451-biden-proposes-four-part-unity-agenda-during-state-of-the-union

ジョー・バイデン大統領は火曜日、連邦議会に超党派で成立を促す4項目の「団結アジェンダ(課題)」について提案した。その4つの項目は、麻薬の蔓延への対処、子どもの精神衛生医療への資源提供、退役軍人への支援、がんの撲滅だ。

「国家のための団結アジェンダ、これらを私たちは達成できるのだ」 とバイデンは語った。

バイデンが主張した課題一つ一つは、議場で大きな拍手を浴びた。これらの提案は、ワシントンの分裂を緩和するという公約を掲げて選挙戦を戦ったものの、共和党の激しい抵抗に遭い、時には個人攻撃を受けてきたバイデンにとって、重要な意味を持つものとなった。

バイデン大統領は連邦議会に対し、麻薬中毒に苦しむ人々の予防と治療のための予算を増やすように要求した。

また、バイデン大統領は、子どもの精神衛生を改善する取り組みの一環として、プライヴァシー保護を強化し、子どもへのターゲット広告を違法化するよう議員たちに促した。

個人的なアピールの中で、バイデン大統領は連邦議会に対して、イラクとアフガニスタンに従軍中に有毒な化学物質に曝された退役軍人たちに対する医療を確実に提供するための法律の可決を求めた。バイデン大統領は息子ボウの死因となった脳腫瘍の原因として焼却炉からの化学物質があったのだろうと考えていると発言した。

バイデンはまた、癌、アルツハイマー病、糖尿病などの治療法を模索する機関である医療高等研究計画局に資金を提供し、「私たちが知っている癌を終わらせる」ことを支援するよう求めた。

バイデンの「団結アジェンダ」は、超党派性が定期的にしか発揮されない夜の間に行われた。バイデンがウクライナの駐米大使を称賛した際、議員たちは一斉に立ち上がって拍手を送り、バイデンが警察への予算提供を支持すると述べたときには、両党の議員が喝采を送った。

しかし、一般教書演説が実施された夜は緊張感にも満ちていた。週末に開催された白人至上ナショナリズムの集会で演説したことで話題になっている保守派の熱血漢マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は、バイデンが移民について話した際に「壁を作れ」と叫んだ。

ローレン・ボバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)は、バイデン大統領が自身の息子の逝去について述べた際に、アフガニスタンにおけるアメリカ軍の将兵の死亡について叫び声を上げた。

複数の共和党所属の連邦議員たちは、議場への入室に際して新型コロナウイルスの検査が義務付けられたことを理由にして演説への出席自体を拒絶した。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領による一般教書演説が行われた。ロシアのウクライナ侵攻を受け、内容の修正が直前になって行われたということだ。新型コロナウイルス対策とインフレーション対策という国内政策が演説の主眼になると見られてきたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、外交政策が重要なポイントということになった。

 実際の演説は1時間ほどで最初はやはりロシアによるウクライナ侵攻が取り上げられた。プーティンを非難し、制裁には世界各国が参加しているとして、それらの国名をずらずらと列挙した。「自分たちの側が正しい」という正当性を示すために国名を列挙したと言える。その後は新型コロナウイルス対策と経済対策に話が移った。全体としては総花的で、可もなく不可もなく、ただ民主党系の議員たちを中心に無理やりにでも盛り上がっているように見せようとする意図が透けて見えて興ざめした。そのため、演説中にバイデンの話と拍手の呼吸が合わずに、バイデンの調子が上がらないようになってしまっているように感じた。

 バイデンは年齢もあるので仕方がないが、言い間違いがあり、プロンプターを読むのにいくつかの言葉や業を繰り返すところがあり、言葉に詰まるところがありであまりうまい演説という訳ではなかった。途中で早口になったところもあり、ささやくような声で話すところと大声を張り上げるところがあったが、これは私としては生理的に受け付けられず、気持ち悪く感じた。演説のうまさで言えば、バラク・オバマ元大統領はうまかったと思う。

 サキ報道官が演説の直前に「楽観主義について語る」と述べていたが、結局のところ、「このような厳しい時代ではあるが、私はこれまでの人生において最もアメリカに対して楽観的(optimistic)である」とバイデンが述べたところがそれに当たるのだろう。

 バイデンの演説を聞いて元気が出たかと言われたら、答えは「ノー」だ。内外共に厳しい状況の中で、名演説を行えば、バイデンの評価も変わったことだろうが、結局のところ、非常に「凡庸な」大統領による「凡庸な」一般教書演説となった。

(貼り付けはじめ)

バイデンは一般教書演説でプーティンを非難し、団結を呼びかけ(Biden condemns Putin, projects unity in State of Union address

モーガン・チャルファント、ブレット・サミュエルズ筆

2022年3月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596453-biden-condemns-putin-projects-unity-in-state-of-union-address

ジョー・バイデン大統領は火曜日、ロシアのウクライナ侵攻という見通し不透明の状況の中で初の一般教書演説を行い、アメリカの議員たちや海外の同盟諸国の結束(unity)を示し、ロシアのウラジミール・プーティン大統領を非難した。

バイデンは「6日前、ロシアのウラジミール・プーティンは、自由世界の思想の根幹(foundations of the free world thinking)を揺るがそうとした。しかし彼は大きな誤算を犯した」と述べた。

バイデンは続けて「プーティンのウクライナに対する最新の攻撃は、計画的であり、全くいわれのないものだった。彼は何度も何度も外交努力を拒絶した。彼は西側とNATOが反応しないと思っていた。彼はアメリカ国民を自宅で、この議場で、この国で分裂させることができると考えた。彼はヨーロッパでも私たちを分裂させることができると考えた。プーティンは間違った。私たちは準備ができている。私たちは団結している」と述べた。

バイデン大統領は、62分間の連邦議場での一般教書演説のうち、最初の10分間をヨーロッパで進行中の危機について述べた後、インフレーションや新型コロナウイルス感染拡大への対応といった国内の優先事項に目を向けた。

バイデン大統領は演説の中で、EUやカナダに続いて、ロシアの航空機をアメリカの領空から追放する計画を発表し、アメリカと30か国が紛争によるエネルギー価格の高騰に対処するため、戦略備蓄(strategic reserves)から6千万バレルの石油の放出を強調した。

バイデン大統領は、「私たちは同盟諸国と団結し、必要に応じて更に多くのことを行う用意がある。皆さん、知っておいて欲しい。私たちは大丈夫だ」と述べた

「将来この時代の歴史が書かれる時に、プーティンのウクライナ戦争はロシアを弱くし、世界の他の国々を強くするだろう、と書かれるはずだ」とバイデンは語った。

バイデン大統領のウクライナに関する言葉遣い、特にファーストレディ(大統領夫人)の隣に座る駐米ウクライナ大使を称賛する発言は、プーティンに対して厳しい姿勢を貫くことを誓い、超党派の喝采を浴びた。民主、共和両党の連邦議員たちは、ウクライナの国旗の色にちなんで、青と黄色の服を着ていた。

しかし、演説の他の部分は、もっと党派分断的な反応があった。

バイデン大統領がトランプ政権時代に成立したアメリカの富裕層向け減税を非難すると、民主党は嘲笑の声を上げた。バイデンが来年の国内政策の計画を打ち出すと共和党の拍手はまばらで、バイデンが移民について話すと「その壁を作れ」と唱えた共和党所属の議員もいた。

バイデン大統領は、演説の前の数日間、バイデンが経済を後退させたという共和党側からの批判に反論しようと、特に消費者と中流家庭を苦しめている記録的な高いインフレーション率について発言していた。

バイデン大統領は、昨年650万人分の雇用が増加したことを売り込み、昨年(2021年)秋の超党派によるインフラ法の成立を強調し、同法の施行に伴い、今年中に6万5000マイルの高速道路と1500の橋の補修を開始する計画を発表した。

また、ジル・バイデン大統領夫人のゲストとして出席したインテル社のパット・ゲルシンガーCEOについて言及し、アメリカの製造業への投資が拡大していることを強調した。

また、バイデン大統領は、議会で停滞している政策を活性化させるため、「ビルド・バック・ベター」法案を「ビルド・ア・ベター・アメリカ」法案として名前を付け替えることを発表した。バイデン大統領は、経済計画をインフレーション対策として捉え直し、処方箋薬のコスト削減、気候にやさしい技術への投資によるエネルギーコストの削減、育児費用の削減などの行動を議会に呼びかけた。

バイデンは、「これをやり遂げよう。私たちは皆、変化を起こさなければならないことを知っている」と述べた。

バイデンはまた、共和党の反対で保留になっている連邦準備制度理事会の候補者を承認するよう連邦上院に呼びかけ、インフレーションに対処する力の多くは連邦準備制度にあることを指摘した。

バイデンは、民主党と共和党が互いを「敵」としてではなく、「同じアメリカ人」として見るよう呼びかけ、新鮮だが親しみのある団結を訴えた。彼は、麻薬の蔓延との戦いや、ソーシャルメディアにおける子供のプライバシー保護の実施など、両党の議員が共に取り組むことのできる議題をいくつか提示した。

一般教書演説の多くの時間で、バイデン大統領は企業が公正な税負担をするよう求め、中間層(middle class)を強化し、ペンシルヴァニア州スクラントン出身であることを言及し、協力すれば国は強くなると訴えるなど、選挙期間中に支持者に向けて行った演説のテーマと同じものだった。

バイデンは「このような厳しい時代ではあるが、私はこれまでの人生において最もアメリカに対して楽観的(optimistic)である」と述べた。

民主党の中には、歴史的な傾向、インフレーション、新型コロナウイルスのしつこい流行などを理由に、2022年11月のチャンスについて悲観的な(pessimistic)見方をする人たちもいる。しかし、火曜日、ウイルスに対する政府の取り組みに、ある種の転機が訪れた。

議場ではマスクの着用が義務付けられておらず、ほとんどの議員がマスクをせず、感染拡大の新たな局面を迎える時であることを示唆した。

「昨年は新型コロナウイルスによって、私たちはバラバラになってしまった。昨年は新型コロナウイルスが私たちをバラバラにしてしまったが、今年、私たちはついに再び一緒になった」と、バイデンはマスクで顔を覆わずに議場に入った後、このように発言した。

一般教書演説の中で、バイデン大統領は、国が安全に正常な状態に戻ることができると楽観視する理由として、ワクチン接種の普及、ブースター接種や治療法の利用可能性、より広く利用可能な検査を挙げた。

バイデンは「私たちは、他の病気と同じように、ウイルスとの闘いを続けていくつもりだ。そして、このウイルスは変異して広がっていくので、私たちは警戒を怠らないようにしなければならない」と述べた。

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バイデンの一般教書演説における5つの注目を集めた瞬間(Five viral moments from Biden's State of the Union

サラクシ・ライ筆

2022年3月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596450-five-viral-moments-from-bidens-state-of-the-union

ジョー・バイデン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻、インフレーションの亢進、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、火曜日、彼自身初の一般教書演説を行った。

しかし、この演説は、大統領を罵倒する聴衆から、引退する最高裁判事へのスタンディングオベーションまで、数多くの人々の注目を集めた場面があった。

これから、バイデン大統領の一般教書演説で最も話題になった瞬間をいくつか紹介する。

(1)バイデンの大失言(Biden's big gaffe

バイデンは一般教書演説の中で、ウクライナ人のことを「イラン人」と言ってしまい、明らかな失態を犯してしまった。

この失言は、演説の冒頭で、ウクライナへの侵攻を開始したロシアのウラジミール・プーティン大統領を非難する際に起きた。ウクライナ人への賛辞は超党派の拍手を集めたが、彼の失言をソーシャルメディア上にいる人々は見逃さなかった。

一般教書演説の公式原稿によると、バイデンは「プーティンは戦車でキエフを取り囲むかもしれないが、ウクライナ人の心や魂を得ることはできない」と言いたかったようだ。その代わりに、バイデンは「プーティンは戦車でキエフを取り囲むかもしれないが、イランの人々の心と魂を得ることは決してできない」と言ってしまった。

この発言はツイッター上で広く共有され、連邦下院司法委員会共和党委員会のアカウントも「イラン人?」とツイッター上に投稿した。

(2)バイデン大統領の演説に意気込みを見せたシューマー(Schumer shows his enthusiasm for Biden's speech

バイデン大統領に対して少しばかり早めにスタンディングオベーションを始めたことで、チャールズ・シューマー連邦上院院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)の熱心過ぎる反応がツイッターを騒がせた。

バイデンは演説の中で、「アメリカ人の上位1パーセントに恩恵を与えた前政権で成立した2兆円の減税とは違うのだ」とトランプ前大統領のことを言い始めた。

バイデンが発言している間に、一人だけで立ち上がったシューマーが拍手しているところにカメラが切り替わった。シューマーはニヤニヤしながら通路の向こう側を見て、そして座り直した。

バイデンは続けて「"アメリカ・レスキュー・プランは人々を助けることの手助けとなり、誰も置き去りにしなかった」と述べた。

シューマーは再び椅子から勢いよく立ち上がり、今度は多くの民主党の同僚議員たちも加わって、バイデンに満腔の拍手を送り始めた。

バイデン大統領の演説が続く中、カメラに映ったシューマーのおかしな姿はSNS上で広く共有され、その気まずい瞬間をすぐに「gif」化するよう求める声が多く聞かれた。

共和党所属のマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出)は、この人々の関心を集めた瞬間について、「ジョー・バイデンのタイミングの悪さとつぶやきを理解しようとする全ての人たちへ」とツイートした。

(3)ボバートがバイデンの演説を罵倒する(Boebert heckles Biden's speech

ローレン・ボバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)は一般教書演説でバイデン大統領に何度も罵声を浴びせ、ある時はバイデンがアメリカ軍を棺桶に入れたと叫び、「13人も」と叫んだ。

バイデンはボバートの叫び声を無視し、代わりにアメリカの退役軍人が危険な焼却炉(burn pits)に晒されていることについて話し続けた。バイデンは、イラクで燃焼炉の近くで兵役についた後、癌で死亡した息子のボウ・バイデンについて言及した。

ボバートの発言は、民主党議員たちからブーイングを浴びせられた。彼女の仲間の共和党員の多くは、このやりとりを無視しているように見えた。

しかし、ボバートが演説中に口を挟んだのはこれだけではない。

バイデンが最高裁判事指名の話から移民制度改革の話に切り替えたとき、ボバートはマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州選出、共和党)と共に「壁を作れ(build the wall)」と叫び始めたが、バイデンは演説を続けた。

彼女は後に「後ろにいる人たちのためにもっと大きな声で言う。壁を作れ!!!」とツイートした。

バイデンの演説中に電話をしているところを目撃されたボバートは、アメリカ人にワクチン接種を受けさせるというバイデン大統領の発言についても非難した。

「なぜジョーは国旗の代わりにファイザーのピンを背広の襟につけないのか? ジョーが誰のために働いているのか、私たちは知るべきだ」とボバートはツイートした。

(4)ブレイヤーに対する最後の歓呼の声(Breyer's last hurrah

 連邦最高裁判所判事スティーヴン・ブレイヤーが連邦議員たちからスタンディング・オヴェイションを受けた際の反応を見て、多くの人々がコメントや投稿を行った。

ブレイヤーは27年にわたり連邦最高裁判事を務め、今年の夏で引退することが決まっているブレイヤーは、議場内での反応と激しい拍手に圧倒されたようだった。両手で顔を覆う仕草も見せた。また、胸に手を当てて立ち上がった。

「今夜、この国のために人生を捧げた人を称えたいと思う。陸軍退役軍人、憲法学者、合衆国最高裁判事を引退したブレイヤー判事に敬意を表したい。ブレイヤー判事、あなたの功績に感謝の意を表する」とバイデンは述べた。

この瞬間に多くの人々がコメントをSNS上に投稿した。民主党系のストラティジストでバーニー・サンダースの補佐官を務めたチャック・ロシャは、「ブレイヤー判事の反応はなんとかわいらしく素晴らしいものだろう」とツイートした。

(5)バイデンはツイッター上で「警察への予算提供」トレンドを作り出した(Biden makes 'fund the police' trend on Twitter

バイデン大統領は、警察に対する発言で、共和党所属の議員も含む議員の大多数から大きな喝采を浴びた。

「私たちは全員、同意するはずだ。答えは、警察への予算を打ち切ること(defund the police)ではない。その答えは、警察に予算を「提供すること」(FUND the police)だ。警察に予算を提供することだ。警察に予算を提供することだ」と述べると、議場内は大きな歓声に包まれ、連邦議員たちは珍しく超党派(bipartisan)で支持を表明した。

バイデンは火曜日の演説で、「銃による暴力を減らすための効果が実証された対策を法案として提出し可決すること」「攻撃銃と大容量弾倉(assault weapons and high-capacity magazines)を禁止し、代わりに、銃製造業者をアメリカ国内で唯一訴えられない業界にし

しかし、バイデン大統領が連邦議会で喝采を浴びる一方、ツイッター上では「警察への予算打ち切り」と「警察への予算提供」をめぐって多くの人々が激しい論争を繰り広げた。

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バイデン大統領の一般教書演説で見るべき5つのポイント(Five things to watch in Biden's State of the Union address

モーガン・チャルファント、ブレット・サミュエルズ筆

2022年3月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596312-five-things-to-watch-as-biden-delivers-state-of-the-union-amid-war-in

火曜日に行われるジョー・バイデン大統領による初めての一般教書演説は、ウクライナでの戦争のさなかに行われる。

大統領は、アフリカ系アメリカ人女性初の連邦最高裁判所判事候補を指名したばかりだ。しかし、バイデン大統領は、2年間続く新型コロナウイルスの感染拡大とインフレーションの亢進に取り組む、苛立ちを隠せないアメリカ国民に直面している。

バイデンは低調を極める支持率に直面しており、2022年の中間選挙を前にして、それを覆すことができるかどうか疑問視されている。

バイデンにとっての初めての一般教書演説を見るにあたっての5つのポイントを挙げていく。

(1)ウクライナについてどれほど言及するか?(How much of the address is about Ukraine?

数週間前までは国内問題に焦点を当てた演説であろうと考えられていたが、この1週間でバイデンの関心はヨーロッパで進行中の外交危機に移り、演説の中でこれを正面から取り上げるだろうと予想されている。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は月曜日に記者団に対し、「この演説がほんの数ヶ月前に考えられていたものとは少し違う内容となることは間違いない」と語った。

バイデンは、懲罰的な経済制裁でプーティンに対抗するため、同盟諸国を団結させて、一致したアプローチを取ることについて話すと予想される。

クリス・クーンズ連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)は先週、記者団に対し、バイデンが「アメリカが持つ最重要の同盟としての NATO への神聖な関与と、ウクライナ難民やウクライナの抵抗運動(レジスタンス)、そして自由で民主的な西側の未来のための支援を提供する決意とを強化する力強いメッセージを発信するよう」に期待すると述べた。

バイデン大統領は、現在の危機を、大統領にとっての中心テーマとなっている、民主政治体制国家が独裁国家(autocracies)に勝利するための闘いであると位置づけるだろう。また、それがアメリカ人にとってどのような意味を持つのかについても語ることになりそうだ。

バラク・オバマ前大統領の下で国家安全保障会議のヨーロッパ問題担当上級部長を務めたチャールズ・カプチャンは、「この戦争はゲームチェンジャーとなる」と語った。「私たちは、第二次世界大戦後のヨーロッパにおいて、最も重要な戦争を今目撃している。この戦争は世界を変えようとしている。ヨーロッパの再軍備強化(remilitarization)と再分割(redivision)につながるだろう。それは拡大する可能性がある」と述べた。

(2)バイデンは団結を促進できるか?(Can he foster unity?

バイデンは、ワシントンDCにプロフェッショナリズムと超党派性を回復することを誓って就任したが、これまでのところ、彼の優先政策に反対し、彼の大統領としての適性(fitness)を疑問視する共和党から激しい抵抗に遭っている。

バイデン大統領は超党派の支援を集める動きを諦めておらず、超党派のインフラ法案で協力した事例を強調し、最高裁判事候補のケタンジ・ブラウン・ジャクソンへの幅広い支持を求めると考えられる。

ロシアのウクライナ侵攻により、バイデン氏と彼のティームはここ数日、演説の練り直しを余儀なくされているが、この危機は、バイデン政権がロシアへの制裁を強化する中で、バイデンにとって人々を結集させるポイントとなり得るものである。

民主党中道派系シンクタンクであるサード・ウェイの政策担当副所長ジム・ケスラーは、「バイデンという人物の特徴も理由として挙げられるが、国家安全保障の緊張が国を一つにする機会でもあるので、過去の大統領に比べるとより党派的ではない一般教書演説になると思う」と述べた。

それでも、ABCニューズと『ワシントン・ポスト』紙が日曜日に発表した世論調査の結果によると、バイデン大統領の支持率はわずか37%にとどまっている。中間選挙での連邦議会上下両院での過半数奪回に焦点を当てるため、演説に先立ってバイデンが自分たちを説得する機会はほとんどないだろうと共和党側は示唆している。

共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は、演説に先立つ記者団との電話会見で、バイデン大統領がインフレーション、犯罪、移民、新型コロナウイルス感染拡大や外交政策に関する一貫性のないメッセージ(inconsistent messaging)に対処するかどうかに注目することになるだろうだろうと述べた。

マクダニエルは「残念ながら、我々は明日の夜、アメリカの人々が気にしていることについて聞くことはできないだろう。彼はただのショーを行うだけのことだ。彼は、アメリカ国民に信じてもらいたいことを言うだろう。しかし、私たちは自分の目でそれを見ている。私たちは薄くなってしまった財布を持ちながらバイデンの演説の中身のなさを感じるだろう」と述べた。

(3)バイデンは今こそ新型コロナウイルスと共に生きる時だと宣言するか?(Does Biden declare it’s time to live with COVID-19?

アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)は金曜日、全米の多くの地域でマスク着用に関する推奨事項を緩和する最新のガイダンスを発表した。

このマスク着用に関する緩やかな姿勢への転換は、バイデン政権が数週間にわたり、患者がオミクロン変異株の感染拡大の波のピークから大幅に減少したことから、感染拡大の状態に関するトーンの転換を示唆した後に出されたものである。

民主党所属の知事の中には、マスクの必要条件を解除し始めている人たちが出ている。共和党所属の知事たちの解除はもっと早かった。ホワイトハウスも火曜日から完全にワクチンを接種した従業員のマスクの必要条件を緩める予定だ。

バイデンは、火曜日の演説でほぼ間違いなく、ワクチン接種の成功と治療法の開発を強調し、アメリカ政府が新型コロナウイルスに対するアプローチする方法を変える時が来たと示唆する可能性がある。新型コロナウイルスの感染数の変化に伴い、議場では出席者にマスク着用は要求されない。

バイデンは「新型コロナウイルスによって亡くなる人が毎日出ている。新型コロナウイルスで毎日亡くなっている人たちがいますし、免疫不全の人たちもいる。しかし、私たちが目指しているのは、新型コロナウイルスが私たちの日常生活に支障をきたさないようにさせる期間だ」と発言している。

バイデンは、アメリカが夏の数カ月に移行するにつれて感染者が横ばいになり、特に経済が成長し、インフレーションが落ち着けば、国民からの支持を受けることができると見ているだろう。

バイデン政権への移行(transition)期間中にバイデンの政権移行ティームに助言した感染症専門学者のマイケル・オスターホルムは、オミクロン変異株のような亜種が将来出現する可能性はまだあると指摘している。彼は、バイデンは国民に対して、症例が減少していくことを確信できると伝える一方で、次に何が起こるかは分からないので、変化に備える必要性を強調すべきであると述べた。

オスターホルムは「今は誰もが不確実性を望んでいない。そのため、これはまさに大変な時期ということになる」と述べた。

(4)ビルド・バック・ベター法案についてのバイデンのメッセージはどのようなものになるか?(What is his message on Build Back Better?

一般教書演説は、昨年末に頓挫したバイデンが重要政策と位置付けている法案について、議会との協議を復活させようとする機会となる。

バイデンは、医療衛生、幼児保育、エネルギー条項など ビルド・バック・ベター法案の要素について行動するよう議会に呼びかけると予想される。バイデンが実際に法案の名前を口にするかは不明である。ホワイトハウスの高官や関係者たちは、ここ数週間、この法案の名称を変更する可能性を示唆している。

ある政権高官は月曜日、記者団に対して、「法案の名前についてではない。一般教書演説で触れられるのはアイデアについてだ。家族のためのコストを下げることであり、大統領がそのようなアイデアについて話すのを期待できると思う」と述べた。

この政府高官は、バイデンが政府債務を減らす必要性についても話すと述べた。これは、2022年12月に連邦下院が可決した法案を、インフレーションへの懸念から支持できないとしたジョー・マンチン上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)を取り込むためのものだと思われる。

ケスラーは、気候変動とクリーンエネルギーの条項がビルド・バック・ベター法案の中心であるため、ウクライナ危機がバイデン大統領にとっての国内優先政策である気候変動とクリーンエネルギーの重要性を主張するきっかけになると指摘した。

ケスラーは「石油から電気そして原子力への移行は、長期的にはロシアの経済を破綻させることになる。それは3週間前にはなかった国家安全保障の意味合いを持つものだ」と述べた。

(5)経済に関する様々な懸念に彼はどのように発言するか?(How does he address economic concerns?

複数の政権関係者によれば、バイデンは演説でインフレーションを正面から取り上げ、コスト上昇に更に対処しなければならないことを強調するということだ。

バイデンは、サプライチェインの強化や公正な競争の促進など、政権が現在注力しているコスト上昇への対応策を説明し、バイデンの国内経済政策を通過させるよう連邦議会に働きかけるだろうと見られている。

インフレーション率は昨年、40年ぶりの高水準に達し、世論調査では、景気回復のペースが速いにもかかわらず、アメリカ人の大多数が経済に不満を持っていることが明らかになっている。バイデンの世論調査の数字は、国民が新型コロナウイルス感染拡大とインフレーションの両方に疲弊し続ける中で、急落し続けている。

しかし、バイデンは、インフレーションによる痛みを認めつつ、昨年の驚異的な雇用の伸びを指摘しながら、前途を楽観的に見るということで、バランスを取ることになりそうだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 古村治彦です。

 2022年3月1日(日本時間では3月2日)にアメリカでは年に1回の「一般教書演説(State of the Union address)」が実施される。この日はアメリカ連邦議事堂に上下両院議員、行政府の閣僚、連邦最高裁判所の判事たち、アメリカ5軍の最高幹部たちなどが集まり、彼らの前で大統領が演説を行う。アメリカ合衆国(the Union)の国内と国外の状況(State)について、演説を行う。自分と政権の達成した政策成果を強調する。

 今回のジョー・バイデン大統領が行う一般教書演説には、国内においては、新型コロナウイルス感染拡大防止策、インフレーション対策、経済対策、雇用対策、インフラ整備策などが出てくるだろうし、国外に関してはロシアによるウクライナ侵攻が取り上げられるだろう。私が注目しているのは、ロシアや中国に対して「枢軸(axis)」という言葉を使うかどうかだ。これを使えばアメリカは露中を屈服させるまで戦うということを示唆することになるからだ。

 今回のバイデン大統領の一般教書演説について、ホワイトハウスのサキ報道官は「楽観主義」が入るだろうということを述べている。現在の閉塞状況での楽観主義とはどのようなものになるのか気になるところだ。ただの美辞麗句、空々しい言葉の羅列で「希望」を語られてもそれはただの能天気な態度である。アメリカ国民に、そして世界中の人々に本当の希望を持たせるような演説になるのか、残念だが期待が持てない。

 

(貼り付けはじめ)

一般教書演説でバイデン大統領はウクライナについて「楽観的に」を語るだろう(Biden will speak on Ukraine, 'optimism' in State of the Union

ジョセフ・チョイ筆

2022年2月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/596029-biden-will-speak-on-ukrainian-invasion-in-state-of-the-union-but-will?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、ジョー・バイデン大統領は、火曜日(2022年3月1日)の一般教書演説(State of the Union address)でロシアのウクライナ侵攻について話すが、楽観的なメッセージも送るだろう、と述べた。

ABCの番組「ディス・ウィーク」の司会者ジョージ・ステファノポロスは日曜日、バイデン大統領の一般教書演説の内容が先週のウクライナ侵攻でどう変更されたのかと、先に質問した。

サキ報道官は次のように述べた。「一般教書演説で、アメリカ国民と世界中で見ている誰もが、大統領が過去数カ月にわたって主導してきた、独裁政治とプーティン大統領の外国侵略の試みと戦うための世界的連合(global coalition)を構築する努力について話すことに関しては疑問の余地はないだろう」とプサキ氏は述べた。

サキ報道官は更に「しかし、人々はバイデン大統領から、彼の楽観主義(optimism)と、アメリカ国民の回復力(resilience)と強さに対する彼の信念について聞くことになる」と述べた。

サキ報道官は、一般教書演説について特定の瞬間にメッセージを伝えるものだと指摘した。オバマ前大統領は大不況の最中、最初の一般教書演説を行い、ブッシュ前大統領は911テロの数カ月後に最初の演説を行ったことを指摘した。

バイデン大統領はウクライナの危機を認めつつ、「私たちが期待すること」について話すだろうということだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領の発言(記者団に対するものやツイッター上のもの)はよくメディアに取り上げられ批判されます。「言いたいことを歯に衣着せずに言う」「悪口が酷い」というイメージがすっかり定着しました。ツイッターを駆使して自分の言いたいことを発信し、流れを作るというのは、大変に現代的な政治家ということになります。

 

 2019年2月5日にトランプ大統領は連邦下院議場で一般教書演説を行いました。一般教書演説は一大イヴェントであり多くの国民が視聴できるように、東部時間の午後9時から開始となります。アメリカには4つのタイムゾーンがあり、西海岸ですと、午後6時からということになります。

 

 一般教書演説の当日、トランプ大統領はテレビ番組のアンカー(司会者)たちをホワイトハウスに招待して昼食会を開催したそうです。そこで、民主党の政治家たちをさんざんにこき下ろしたということが報道されました。現在、ホワイトハウスと連邦議会民主党執行部は対立と分断を深めつつある中、一般教書演説でトランプ大統領は団結と礼節を訴えるだろうと予測されている中で、その数時間前に、民主党の悪口を公の場で言っていたという文脈で報道されました。


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 ここがまさにトランプ大統領らしいところです。普通であれば、そんな日くらいは民主党の政治家たちの悪口は控えるものです。よほど腹に据えかねていても、せいぜい皮肉を言うくらいのものでしょう。しかし、「頭が悪い」「クソ野郎」とか言いたい放題だったようです。

 

 トランプ大統領が政治家として経験が長ければ、まずこんなことはしません。しかし、彼は言いたいことを言う、やりたいことをやるというスタイルを貫いて、既に大統領として任期の半分を全うしました。これは全く新しいことで、前代未聞(unprecedented)の大統領と言わざるを得ません。職業政治家や党派の対立と裏舞台での妥協といったものとは無縁であり、そこがトランプ大統領の最大の強みということが言えるでしょう。

 

 この奔放さというイメージについて、トランプ大統領は戦略でやっているのか、出たとこ勝負でやっているのか、分かりませんが、どうなんだろうか、大統領の発言の真意はどこにあるのか、言葉の裏の別の意味や意図があるのかと敵対者に考えさせることで、既に相手を自分のペースに引き込むことが出来ます。恐ろしい人物です。

 

(貼り付けはじめ)

 

一般教書直前の昼食会でトランプ大統領は民主党の政治家たちをこき下ろす(Trump tears into Dems at private lunch hours before State of the Union: report

 

ブレット・サミュエルズ筆

2019年2月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/428622-trump-tears-into-dems-at-private-lunch-hours-before-state-of-the?fbclid=IwAR2BRjeSOnUBC-00w-2HV-qZ0qyH6DNHFR0trjSnUYC-8UKoV92Zj0XllkY&fbclid=IwAR006FWXAd3dP3su3ZwsbeSWSRIrN-omJL78ICDInu4mFRAhiOZ54CJXqTg

 

月曜日、トランプ大統領はテレビ番組のアンカーたちとの昼食会を催し、その中で、民主党政治家たちをこき下ろした。礼節と超党派の合意の必要性を訴える演説をホワイトハウスで行うほんの数時間前の出来事であった。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたところによると、トランプ大統領は、ジョー・バイデン前副大統領、連邦上院少数派院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、現在多くの批判に晒されているヴァージニア州知事ラルフ・ノーザム(民主党)の名前を上げて彼らをこき下ろした。大統領は2020年の米大統領選挙に挑戦表明をした人々も批判した。

 

トランプ大統領は2020年の大統領選挙ではバイデンと戦いたいという希望を表明したと報じられたことがある。昼食会に参加したアンカーたちに対して、大統領は、バイデン前副大統領は「そこまで賢くない」と述べた。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ大統領は次のように述べたということだ。「バイデンがやったへまやしくじりは全くもって信じがたいものばかりだ。私が何か発言し、人々がそれは失言だと考えるとする。しかし、それはそのように認識させるように意図したもので、しくじりではない。バイデンが何か馬鹿馬鹿しいことを述べるとする。その場合、彼が馬鹿なので、そのまま馬鹿馬鹿しい発言となるのだ」。

 

トランプ大統領はそのほかの民主党の政治家たちを荒々しい言葉遣いで次々と攻撃した。ニューヨーク・タイムズ紙によると、大統領はシューマーを「いやらしいクソ野郎」と呼んだ。ノーザムは医学部卒業の際の卒業アルバムで人種差別的な写真を載せたことが発覚し、その後の記者会見で知事を辞職すること拒否した。トランプはこの時の様子を「犬がされているかのように抑え込まれていた」と評した。

 

ホワイトハウスは本紙からのコメントの求めに返答しなかった。そして、大統領の発言に関するニューヨーク・タイムズ紙からのコメントの要請を拒絶した。

 

民主党に対するトランプ大統領の評価と発言は、火曜日夜の一般教書演説の前に、ホワイトハウスが人々に伝えたいと考えていたメッセージの内容と正反対のものだ。

 

火曜日の夜にフォックス・ニュースに出演したホワイトハウス報道官のサラ・サンダースは次のように述べた。「大統領は今晩の一般教書演説の中で、団結ということを訴える予定だ。私たちは偉大さを選ぶか、お互いを攻撃し続けるか、どちらかを選ぶことが出来る」。

 

一般教書演説の原稿からの一部抜粋によると、トランプ大統領は演説の中で次のように発言する予定だ。「私たちは協力して数十年続く政治的行き詰まりを解消することが出来る。古くからある分裂を解消することが出来る。古くからの傷を癒すことが出来る。新しい協力体制を構築することが出来る。新し解決策を見つけ、アメリカの輝かしい未来の前提を広げることが出来る。決めるのは私たち自身だ」。

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 前回、トランプ大統領の一般教書演説についての記事などをご紹介しました。私が一般教書演説を聞いていて驚いたのは、「社会主義に対する警告」でした。私が若い頃に、持て囃されたフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」論では、資本主義(Capitalism、キャピタリズム)と民主政治体制(Democracy、デモクラシー)が最終的に勝利し、アメリカは勝利者だということになっていました。

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 しかし、21世紀のアメリカ議会で、大統領が自国内の社会主義を求める声に警告を発し、わざわざ「アメリカは社会主義国にはならない」と述べたというのは驚きでした。社会主義とは最も対極にある国であるはずの、資本主義と民主政治体制が高度に発達した総本山、アメリカで、大統領が社会主義の台頭に言及したというのは驚きでした。それくらいに、人々の平等を求める声、格差是正を求める声がアメリカ国内で大きくなっている、ということが示唆されるものでした。

 

 2016年米大統領選挙民主党予備選挙でのバーニー・サンダースの善戦、2018年の中間選挙でアレクサンドリア・オカシオ=コルテスの登場など、「民主社会主義者」を自認する政治家たちが存在感を増しています。

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当該部分を聞くサンダース
 

 これはポピュリズムという幅の広い思想運動の中で、左派的な動きとして、民主社会主義者たちが台頭しており、この右派的な動きは、トランプ大統領の誕生であり、言ってみれば、コインの表裏の関係にあると私は考えています。

 

 トランプ大統領を支持したのは、旧来の共和党の支持者の一部に加えて、元々は民主党支持で、労働組合にも参加していた、白人の労働者たちでした。アパラチア山脈からラストベルトと呼ばれる五大湖周辺の工業地帯に住んでいる人たちです。大学教育など高等教育を受けておらず、所得が低い労働者は本来であれば民主党の支持基盤でしたが、トランプ大統領を応援しました。

 

 これは民主党がエリート主義に陥り、ウォール街の大手金融機関などから多額の献金を受ける政治家たちが増え、口では人権や福祉などを唱えるが、実際に貧困層や労働者のために何もやっていないではないか、更に言えば、移民やマイノリティの人権のことばかりで、白人である自分たちの人権のことなど何も言わない、という怒りが旧来の民主党支持者たちの間に広まり、こうした人々がトランプ大統領を支持しました。こうした流れには、人権や福祉に対する懐疑も加わっています。

 

 一方、左派的な動きもまた、既成の民主党主流派、民主党エスタブリッシュメントに対する怒りから出てきたものです。エスタブリッシュメントは民主党の支持基盤をないがしろにしている、ウォール街とのつながりが深いから大企業や富裕層の利益ばかりを守っている、という怒りから、進歩主義派、民主社会主義者が存在感を増すようになりました。

 

 右派ポピュリズムと左派ポピュリズムと分類して良いと思います。既存の政治家やシステムが一般国民である自分たちのためになっていない、活動していない、機能していないという怒りから、ワシントンを変えなければならないということになり、新しい政治家たちやこれまで隅に追いやられていた政治家たちを自分たちの代表としてワシントンの既存勢力を攻撃させるという動きになりました。人々の怒りと既存の存在に対する攻撃性はポピュリズムの特徴です。

 

 それにしても、一般教書演説で、「社会主義」という言葉が出てきたのは驚きでした。中国を攻撃するためのレトリックなのかと思いましたが、アメリカ国内で社会主義を求める声が大きくなっていることに対する懸念であったということが驚きです。資本主義が高度に発達してその内包する矛盾が深刻になり、社会主義へと移行する、もしくは階級闘争が激化するというマルクスの考えが現実に起きているかのようです。

 

 アメリカでは長く国民皆保険ということはタブー視されてきました。何度もこの話はしているのですが、今回もします。2000年代前半に私はアメリカの大学に留学しました。そこで、日本政治の授業を履修しました。先生は日本の大学に留学経験もあり、日本語も堪能な人でした。日本の社会保障制度を取り上げた授業の回がありました。そこで、ポロっと「日本は国民皆保険です。国民皆保険ではないというのは、世界の先進国ではアメリカだけです」と言いました。何の悪気もなく、アメリカを批判するということでもありませんでした。

 

 しかし、次の授業の際に先生は「前回、私は世界の先進国の中で国民皆保険ではないのはアメリカだけですと述べました。これはアメリカを批判する意図ではありませんでした。また、私は社会主義者ではありません」と冒頭に述べました。私は驚いて、授業の後にどうしてそのような発言をなさったのですか、と質問したところ、「学部の事務所に学生の親という人から電話があって、アメリカを批判する反米的な社会主義者を雇っているのか、という抗議の電話があったから、説明しておこうと思って発言した」と教えてくれました。

 

 講義をしてきた親御さんは、国民皆保険は社会主義的な制度で、資本主義で自由主義なアメリカにはそぐわないと考えていたのでしょう。しかし、この考えに従うと、G7に加盟している先進諸国はほぼ全て社会主義国ということになります。

 

 アメリカには社会主義という言葉に対するアレルギーがあり、かつ、平等を志向するような政策には簡単に社会主義という言葉をレッテル貼りして非難する傾向があるようです。

 

 社会主義という言葉が21世紀のアメリカ議会の議場で大統領の口から出たという事実、これがアメリカの最先端の状況を示しているように思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

オカシオ=コルテスや進歩主義派の人物たちがトランプ大統領は社会主義という言葉を威嚇戦術として使用したと批判(Ocasio-Cortez, progressives accuse Trump of using socialism as scare tactic

 

ジュリーグレイス・ブルフケ筆

2019年2月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/428663-ocasio-cortez-progressives-accuse-trump-of-using-socialism-as-scare-tactic

 

進歩主義派の民主党所属連邦議員たちは、トランプ大統領が一般教書演説の中で、アメリカ国内で社会主義を求める声が大きくなっているという警告を発したことを、威嚇戦術(scare tactics)を使って自分たちを危険だとレッテル貼りしたと批判した。

 

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は記者団からトランプの発言について質問され次のように答えた。「素晴らしかったと思う。大統領は怖がっている。彼は全てのものが彼に迫ってきていると感じ、世論の支持を得るための戦いに敗れつつあることを認識している」。

 

オカシオ=コルテスは民主社会主義者で、昨年夏に民主党予備選挙で勝利を受けて、政治の世界で名声を獲得した。単一支払者医療保険制度(single-payer health care system)を主張するリベラル派の連邦下院議員たちの仲間入りをした。また、最富裕層に対しての税率を上げることとクリーンエネルギー分野での雇用を創出するためのプログラムに資金提供するための「グリーン・ニューディール(Green New Deal)」を主張している。

 

ニューヨーク州選出の連邦議員オカシオ=コルテスは、トランプの発言内容を「信じられない」ものと評し、「自分たちの提案に対抗するための実質的な提案を彼は出来ないのだ」と述べた。

 

プラミラ・ジャヤパル連邦下院議員(ワシントン州選出、民主党)は進歩主義派連邦議員連盟の共同会長だ。ジャヤパル議員は、議員連盟の提案は過激なものではなく、提案内容の多くは西洋諸国で既に実施されているものだと述べた。

 

ジャヤパル議員は「全ての人のためのメディケアや最富裕層への増税、グリーン・ニューディールのような素晴らしい考えをトランプ大統領は警戒しているのだと思う。それで彼はこうした考えに社会主義というレッテル貼りをしたいのだ」と述べた。

 

「トランプ大統領は先進諸国で行われている政策について懸念を持っており、それに社会主義というレッテルを貼りたいのだ。しかし、こうした諸政策は世界の先進諸国で実際に実行されている。これらの政策は先進諸国において制度化され、それらの上に社会が構成されている」。

 

一般教書演説の中で、トランプは社会主義によってヴェネズエラでは経済上、政治上の訳斎が引き起こされたと述べた。

 

トランプ大統領は演説の中で次のように語った。「現在、アメリカ合衆国の国内では、私たちの国で社会主義を採用しようという声が上がっている。これは警戒を要することだ。アメリカは、政府による強制、独占、統制ではなく、自由と独立の上に創設された。私たちは生まれながらに自由で、これからも自由であり続ける。今夜、私たちはアメリカがこれからも社会主義国となることは決してないという決意を新たにする」。

 

共和党側の出席者たちは演説のこの部分に対して、トランプ大統領にスタンディングオヴェイションで称賛を与えた。

 

新人のラシーダ・トレイブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)は議員当選以来、トランプ大統領に対して厳しい批判を行っている。トレイブ議員は、トランプ大統領が社会主義を理解していないと批判し、トランプ大統領の言葉によって国家の更なる分裂が進んでいると考えていると述べた。

 

トレイブ議員は「人々の多くは社会主義を理解していないと思う。図書館や郵便局は社会主義だと思う。我が国にあり私たちが大事にしている制度の多くは平等という価値観を基礎にしている」と述べた。

 

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 古村治彦です。

 

 2019年2月5日、ドナルド・トランプ大統領が一般教書演説(State of the Union Address)を行いました。直訳すれば、「アメリカ合衆国の状況に関する演説」となります。Unionという単語にはいろいろな意味がありますが、ここでは「人々や州が団結して構成しているアメリカ合衆国」ということになります。その他には組合などといった意味もあります。団結して構成されているアメリカの一年がどうであったか、これからどうしていくかということを大統領が述べるものです。

 

 アメリカ議会に大統領が入るには連邦下院議長の許可が必要となります。そのため、本来は1月末に実施されるはずであった一般教書演説ですが、国境の壁建設のための予算を巡りトランプ大統領と民主党が対立し、政府機能が一部閉鎖となり、民主党が過半数を握っている連邦下院の議長であるナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は政府機関の閉鎖が解除となるまで、演説を延期するように求め、トランプ大統領もこれに従いました。政府機能が2月15日まで再開となったので、一般教書演説が例年通り連邦下院議場で行われる運びとなりました。

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後ろにはマイク・ペンス副大統領とペロシ議長

 今回、私も一般教書演説の生中継を見ていたのですが、感想としては、長くて退屈、トランプ大統領らしさを感じないものだった、ということになります。トランプ大統領は、言葉の上では超党派の団結を訴えましたが、実際には、自分の政権で達成した経済的成果について述べる時には、共和党側の出席者の方ばかり向いて話していました。拍手もなく、笑顔もない民主党側に向かって話しづらいというのは分かりますが、団結とか一つの国とかそういう言葉が内容のない空虚なものに感じられました。


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11歳のジョシュア・トランプ君には退屈だったようだ
隣のグレイス・イレインさん(9歳)は凛としていた 

 共和党側は何とか盛り上げようと、途中でスポーツの応援の時のように、「USA! USA!」を連呼しましたが、非常に怖いものを感じました。アメリカは内向き、勝つ排外的になっているように感じました。国内に抱える諸問題から目を逸らさせるために、言及は少なかったものの中国との貿易問題を利用しているようにも感じました。

 

 インフラ整備、HIV対策、処方箋薬剤の価格の引き下げといった民主、共和両党で協力できる分野の時には民主党側からも拍手が出るなど、ムードは良くなりましたが、国境の壁や妊娠中絶などに関しては、民主党側から野次こそ出ませんでしたが、頭を振ったり、目をむいたりするような態度が見受けられました。

 

 議場の一般席には招待された人々が座っていましたが、その中には、トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー補佐官と娘であるイヴァンカ・トランプ補佐官が座っていました。その同じ並びですが、通路を隔てた場所には、大統領の娘であるティファニー・トランプさんが座っていました。彼女は全身白い服装をしていて、私は驚きました。


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白い服装で目立つティファニーさん 

 それは、民主党側の連邦議員たちの一部女性議員たちが事前に話し合って、白い服装で出席すると取り決めていたからです。彼女たちはトランプ大統領の言動に抗議の意味を示すため、そして、女性参政権運動の先駆者たちに感謝の意を示すために、白い服を着て出席しました。ティファニーさんもそれに合わせたのだろうかと思い、私はびっくりしました。

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白い服装の民主党女性議員たち 

 これは次回に詳しく述べることですが、演説の中で、唐突に「社会主義」という言葉が出たことにも驚きました。「アメリカで社会主義を求める声が大きくなっている」「アメリカはこれからも社会主義国にはならない」とトランプ大統領は演説の中で述べました。社会主義と戦い、勝利を収めた、資本主義と民主政治体制の総本山であるはずのアメリカで、大統領が憂慮を示すほどに社会主義を支持する声が大きくなっているというのは驚きでした。

 

 現在、一時的な妥協によって政府機能が再開されていますが、その起源は2019年2月15日です。それまでに妥協が出来るのかどうか、ということになりますが、今回のトランプ大統領の演説内容では、民主党側の反発を招くだけで難しいように思います。また、人々の支持を得られるような言葉遣いもなく、ただ退屈なものでした。今年のプロアメリカンフットボールの優勝ティームを決めるスーパーボウルも点が入らずに退屈な内容であった(詳しい人にとってはそうではなかったとも言われています)のですが、アメリカの冬の風物詩であるスーパーボウルと一般教書演説が退屈だったとすると、アメリカ人の気持ちは盛り上がらないでしょう。

 
団結(Union)という言葉が入っている演説で分裂(divide)が深まるというのは、アメリカの現状をよく示していると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

 

トランプ氏が一般教書演説、国境の壁建設を改めて宣言

 

2019.02.06 Wed posted at 14:48 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35132366.html

 

(CNN) トランプ米大統領は米東部時間5日午後9時(日本時間6日午前11時)すぎから約1時間半にわたり、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。

 

一般教書演説は当初1月29日に予定されていたが、政府機関の閉鎖が長引いた影響でこの日に延期された。

 

トランプ氏は冒頭で「2つの党でなく1つの国家」「共和党のアジェンダ(政策課題)、民主党のアジェンダではなく、米国民のアジェンダ」と述べ、党派を超えた団結を訴えた。

 

政権発足後の2年間で米経済は前例のない好調ぶりを示してきたと強調し、雇用創出や賃金上昇、失業率低下などの数字を示して成果を強調した。

 

そのうえで「国家の現状は堅調である」と宣言すると、議場内の共和党議員らから拍手とともに「USA、USA」の掛け声が上がった。

 

トランプ氏は米経済の「奇跡」を阻むものとして、戦争と政治に加え、党派争いに基づく「捜査」に言及。党派の違いを超えて政策を進めていく必要があると訴えた。

 

続いて不法入国者の問題に多くの時間を割き、犯罪者や麻薬が米国に侵入しているとして危機感を強調した。国民の「命と雇用」を守るために国境の警備を強化し、壁を建設する必要があると改めて主張したうえで、「私が壁を建てる」と声を張り上げた。

 

一方で労働人口に占める女性の割合や、連邦議会の女性議員が史上最多を記録していると指摘。これに対しては、民主党の呼び掛けにより白い服を着て出席した数十人の女性議員からも「USA、USA」の掛け声が上がった。

女性の活躍に言及した際には、女性議員からも拍手が/Alex Wong/Getty Images

女性の活躍に言及した際には、女性議員からも拍手が/Alex Wong/Getty Images

 

さらに薬価の引き下げやエイズ、小児がんの研究推進などについて超党派の賛同を求めた。ここではがん治療に耐え抜いたという10歳の少女が紹介され、議場から拍手が贈られた。

 

外交分野では、自分が大統領になっていなかったら今ごろは北朝鮮と戦争になっていただろうと述べ、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と今月27、28日にベトナムで再会談する計画を明らかにした。

 

演説の終盤では、第2次世界大戦でナチスの強制収容所へ送られ、米軍に救われたという高齢の男性2人と、救出作戦に参加した元兵士を紹介。先人の戦いや業績を記憶にとどめ、違いを乗り越えて「最も高い頂、最も明るい星を目指そう」と呼び掛けた。

 

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トランプ大統領は散漫な内容の一般教書演説の中で、礼節と対決の間をフラフラと行ったり来たりしていた(Trump veers between comity, confrontation at raucous State of the Union

 

ジョーダン・ファビアン筆

2019年2月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/428654-trump-veers-between-comity-confrontation-at-raucous-state-of-the

 

トランプ大統領は、分裂した政治状況の中で、民主党に対して、「復讐、抵抗、報復のための政治」を求めるために一般教書演説(State of the Union address)を利用した。それでもトランプ大統領は民主党側が長く反対し続けている国境の壁建設を認めるように求めた。

 

トランプ大統領は、アメリカ国民は民主、共和両党が「2つの党派ではなく、1つの国」としてアメリカを統治することを望んでいると述べ、超党派の団結をアピールすることで一般教書演説を特徴づけようとした。しかし、トランプ大統領のメッセージは民主党側に対する攻撃的な言葉が多く含まれており、ワシントンにおける党派による深い分裂を示すものとなった。トランプ大統領が就任してからの2年間、大統領はこの分裂の日に油を注ぎ続けた。

 

過半数を握り勢いに乗っている連邦下院民主党はトランプ政権とトランプ自身のビジネスについて調査する計画を持っている。トランプ大統領は、連邦下院民主党を「馬鹿げた党派性の強い調査」は、自分がアメリカ国内に生み出した「経済的奇跡」をなくしてしまう行為だと非難した。

 

トランプ大統領は「静穏と粛々とした立法が存在すれば、そこに争いや党派色の濃い調査のようなことは起きない。争いや調査は良い結果を生み出さない」と述べた。

 

トランプ大統領は、北朝鮮の最高指導者金正恩委員長との2回目の首脳会談を2月27日から28日かけてヴェトナムで行うという計画を発表した。大統領は北朝鮮政府との非核化の合意を外交政策の最優先快打に位置づけ、金委員長との2度目の会談の可能性について言及してきた。

 

一般教書演説は大統領が年に一度アメリカ国民に向けて行う演説である。トランプ大統領にとって今回の一般教書演説は大統領在任期間中の重要な出来事となる。連邦議会において予算について合意が出来なければ、2019年2月15日に再び政府機能が一部閉鎖になる可能性が高まっている。

 

トランプ大統領はアメリカ・メキシコ国境に沿って壁を建設することを要求し、これが35日間に及ぶ正規機能の一部閉鎖を招来させた。連邦議員たちは壁建設の予算57億ドルを拒絶しながらも、他の予算を通過させるという妥協を行い、政府機能閉鎖は2019年1月25日にいったん解除となった。

 

35日間の政府機能閉鎖によってダメージを受けたのはトランプ大統領であった。大統領の支持率は閉鎖期間中下落した。そして、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は、政府機能が再開するまで一般教書演説の実施を遅らせることで、大統領に使いの攻撃を行った。

 

しかし、トランプ大統領は壁建設の予算の要求を強めた。「南部国境地帯の無法状態」によって出現した「緊急の対策を要する国家規模の危機」という大統領の主張している問題に対して、連邦議員たちは「独特上の責務」を負っているとトランプ大統領は発言した。

 

トランプ大統領は次のように述べた。「アメリカの労働階級とアメリカの政治家階級の分裂を示すものとして不法移民問題以上のものはない。富裕な政治家たちと彼らへの献金者たちは、自分たちの現実生活は壁とチェックの厳しい門と警備員に囲まれているのに、国境を更に開こうとしている」。

 

このようなアピールをしても民主党側を動揺させることはできなかった。トランプ大統領がアメリカに向けて新たな不法移民の一団が向かっているという報道を演説中に紹介した際、民主党側からは不満を示すうめき声が発せられた。

 

連邦議会が大統領の壁建設予算要求を拒絶した場合に、何をするかについてトランプ大統領は明言しなかった。また、国家非常事態宣言を行うという強硬手段に出るとも言わなかった。国家非常事態宣言を行えば、大統領自身の権限で壁建設を行うことは可能となるが、共和党内部を分裂させ、法廷闘争を激化させることになる。

 

一般教書演説の会場となった連邦下院議場は分裂した連邦議会を示すものであふれていた。ペロシ議長は連邦上下両院の一部女性議員たちと一緒に白い服装で出席した。これは、女性参政権運動(suffragette movement)を記念するものであった。ペロシ議長は演説を行うトランプ大統領の後ろの議長席に座り、ペロシ議長の隣にはマイク・ペンス副大統領が座った。

 

政府機能閉鎖が始まって以降、ペロシ議長の力は増大している。民主党内部におけるペロシ議長への支持は堅固なものとなっている。今週CNNが発表した世論調査の結果によると、ペロシ議長に対する支持率も上昇している。

 

出席者の中には、2020年の米大統領選挙でトランプ大統領を倒したいと考えている政治家たちもいた。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、キリステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は既に大統領選挙出馬を表明している。ギリブランドは演説中に目をぐるぐると回し呆れた表情を見せ、聞くに堪えないと興味をなくした様子であった。この様子はテレビに映った。

 

民主党側は反対演説者として、ジョージア州知事選挙で惜敗したステイシー・エイブラムスを指名した。エイブラムスは民主党のライジングスターだ。

 

トランプは民主党側の出席者たちが礼節を欠いているという悪印象を視聴者に与えようとしていたように見える。トランプ大統領は、自身の政権下で「前例のない」規模で雇用が増大したこと、連邦議場に招待された移民担当の職員に対して「ICE(移民税関捜査局)の英雄たちを見捨てることは決してない」と呼びかけ、「アメリカはこれからも社会主義国になることは決してない」と宣言した。これらの発言に対して民主党側の出席者たちは拍手することを拒絶した。この拍手の拒絶をトランプ大統領は民主党側の礼節に欠けた行動という印象付けに利用しようとした。

 

連邦下院議場には昨年の一般教書演説よりも多くの女性とマイノリティが出席した。これは昨年の中間選挙で民主党が勝利したことが理由だ。トランプ大統領が女性の雇用の増加について述べ、女性議員たちに祝意を述べた際に、民主党所属の女性議員たちは立ち上がり、拍手を送った。この場面は今回の一般教書演説においてハイライトの一つとなった。

 

驚いたトランプ大統領は「そんな反応が起こるとは予想外だった」と演説中に述べた。

 

白い服を着た女性議員たちが喜びを表現し、「素晴らしいことだ」とトランプ大統領が更に述べた後に、女性議員たちは静かになり、また座ってしまったことで、大統領は不機嫌になったようだ。

 

移民に対する憎悪ということはあったが、トランプ大統領は民主党に対してオリーブの枝を渡した(協力を求めた)。社会資本(インフラストラクチャ)と処方箋薬剤の価格のように超党派の合意ができると大統領が考えている分野での協力を求めた。

 

トランプ大統領は「民主、共和両党はアメリカの壊れかけている社会資本の再建という大きな仕事のために団結することが出来る」と述べた。

 

トランプ大統領は更に、同じ薬に対して他国の人々が支払っている金額よりも高い金額をアメリカ人が支払っていることは「受け入れがたい」と述べた。

 

トランプ大統領は「これは間違っているし、公正なことではない。私たちは一緒になってこれを止めることが出来る」と述べた。

 

トランプ大統領は更に連邦議会に対して、カナダとメキシコと結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)の政権による見直しを支持するように求めた。今年NAFTAの見直しは大きな議題となると見られている。

 

上がったり下がったりのシーソーに乗っているかのような演説の中で、トランプ大統領は、妊娠中絶という激しい議論を巻き起こす問題で、民主党を攻撃した。大統領は連邦議員たちに対して、「母親の胎内で胎児が苦痛を感じるまでに成長した段階の妊娠後期の中絶禁止」法案を可決するように求めた。

 

トランプ大統領は公の場面や非公式の場面で、ニューヨーク州とヴァージニア州で民主党が提案している妊娠第三期(妊娠28週から40週)の中絶に対する規制の緩和を非難している。その上でそのような内容を演説に盛り込んだ。

 

トランプ大統領は世界各地の紛争についても言及し、大統領はシリアからの2000面の米軍省への撤退の決定とアフガニスタンにおける戦争の規模の縮小という試みを正当化した。

 

トランプ大統領は次のように述べた。「大統領選挙の候補者として、私は新しいアプローチを採用することを公約とした。偉大なる国というものは終わりの見えない戦いなどしない。現在、我が国は同盟諸国と協力してISISの残党の殲滅を行っている。シリアで戦っている勇敢な戦士たちの帰国を祝う時がやってきたのだ」。

 

これらの発言は共和党所属の連邦議員たちの懸念を深めることになるだろう。彼らは大統領の中東地域からの撤退の希望に反対姿勢を取っている。火曜日、共和党が過半数を握っている連邦上院では、トランプ大統領に警告を与えるために、シリアとアフガニスタンからの「性急な」撤退に反対する法案が圧倒的多数で可決された。

 

民主党側は、トランプ大統領は「古い分裂を修復」し、「古い傷を癒す」とした彼自身の希望の達成に失敗したと批判した。

 

民主党を代表しての反対演説の中で、エイブラムスは「政府機能の閉鎖はアメリカ合衆国大統領が発端となった馬鹿げた出来事だった。大統領は公正さという信条に全く従わず、国民だけではなく、アメリカの価値観を放棄した」と述べた。

 

エイブラムスは、政府機能閉鎖期間中に一時解雇状態(無給)になった連邦政府職員たちに食事を提供したと述べた。エイブラムスは政府機能閉鎖を「不名誉」な出来事であり、トランプ大統領は「連邦職員たちの生活を政治ゲームの駒」にしたと批判した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 昨年12月22日から、アメリカ政府機能の一部閉鎖が継続しています。政府機能の約4分の1が閉鎖され、80万人の連邦政府職員に影響が出ています。

 

ドナルド・トランプ大統領がアメリカ南部国境に壁を建設するための予算約57億ドルを要求し、共和党が過半数を占めている連邦上院では壁建設予算を含む予算案が可決しましたが、民主党が過半数を占める連邦下院では連邦上院で可決された予算案が否決されました。また、連邦下院では国境の壁建設を含まないが、国境警備強化のための予算を含む予算案が可決されましたが、連邦上院では否決されました。

 

 政府機能閉鎖が1カ月以上継続している中、一般教書演説(State of the Union Address)に関しても対決が起きました。一般教書演説は、アメリカ大統領が年に1回、連邦議会の議場に入り、そこで国の状態について、国民に向けて行う演説です。Unionはアメリカ合衆国(United States of America)を示し、かつ統一された国家を意味します。

 

 連邦議会の議事堂に大統領が入るためには、連邦議会下院議長の許可が必要です。連邦上院の場合には議長(Speaker)は副大統領ということになっていますが、常駐しておらず、議会の運営は過半数を握る多数党の院内総務(Majority Leader)がコントロールしています。

 

 現在の連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、一般教書演説に関して文書で発表するか(もともとは文書で発表していた)、日程を延期するようにトランプ大統領に求めました。これに対して、トランプ大統領は連邦議員たちに軍の飛行機を使った外国訪問を認めず、ペロシ議長のアフガニスタン訪問は中止となりました。

 

 その後、ホワイトハウスは連邦下院に対して、大統領が連邦下院に入ることが出来るようにするための法的手続きを実施するように求めましたが、ペロシ議長はそれを撥ねつけました。今週水曜日、トランプ大統領はペロシ議長を非難し、議長の決定は「アメリカにとっての汚点」であり、一般教書演説を別の形で行う可能性について示唆しました。

 

 しかし、翌日の木曜日になると、一般教書演説の延期を発表しました。政府機能閉鎖が終わりまで、演説を見合わすということになりました。今週末に閉鎖が終われば火曜日、1月29日の演説が行われるとは思いますが、その可能性は高くないと思われます。一般教書演説に関しては、トランプ大統領が妥協したという形になります。

 

 独裁者、ファシストとまで非難されることもあるトランプ大統領ですが、アメリカの基本である三権分立(division of power)を破壊することはせず、またしませんでした。非常に当り前のこと、連邦議会においては議長が大きな力を持ち、議会に関しては大統領もそれに従うしかないことがここで起きた訳ですが、日本の現状を見せられている身からすれば、健全性が保たれているものだと感心してしまいます。

 

 アメリカの現状は、日本語で言えば捻じれ国会であり、いわゆる「決められない政治」と馬鹿にされている状況ですが、デモクラシーとは拙速さと稚拙さを戒めるものであり、その点でアメリカが健全、「捻じれ状態」に耐えられない日本は不健全であると私は考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ大統領は、一般教書演説延期に合意する、それはペロシ議長の依頼が「現実的に合理性を持つ」からだと発言(Trump says he agreed to delay State of the Union because Pelosi was 'actually reasonable'

 

ブレット・サミュエルズ筆

2019年1月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/426889-trump-i-agreed-to-delay-state-of-the-union-because-pelosi-was

 

トランプ大統領は木曜日、一般教書演説の延期に同意した、それは連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の演説日程の再調整依頼が「現実的に合理性を持つ」からだ、と述べた。それまでトランプ大統領は強い言葉で批判してきていた。

 

トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対して次のように述べた。「これはペロシ議長の選択だ。私は別の場所で一般教書演説を行うことも出来た。しかし、連邦議会以外の別の場所で行うことは一般教書演説に対して尊敬の念を持っていないことになると考えた」。

 

トランプ大統領は続けて、「ペロシ議長が述べていることは、現実的に合理性を持つ。政府機能の閉鎖が終了したら、一般教書演説を行う」と述べた。

 

トランプ大統領はペロシ議長の一般教書演説に対する対応について理解を示した。これは前日と比べると、態度の転換となった。前日、大統領はペロシ議長が演説日程の再調整を求めたことについて激しく反発し、反対していた。

 

ペロシ議長は先週、安全上の問題を理由に、政府機能の再開以降に一般教書演説を行うべきだと述べた。政府機能の4分の1が2018年12月22日以降、閉鎖されたままになっている。

 

トランプ大統領は水曜日、ペロシ議長に書簡を送り、その中で、計画通りに2019年1月29日に一般教書戦絶を行うために連邦下院に向かう予定だと通告した。これは、連邦議会議場で2人の指導者の間で決定的な争いを誘発する可能性を高めるものであった。

 

トランプ大統領は次のように書いた。「一般教書演説が予定通りの日時で、更に重要なことには予定通りの場所で行われないということになると、それは我が国にとって大変悲しむべきことだ」。

 

ペロシ議長は数時間後に反撃を行った。大統領に書簡を送り、その中で、政府機能が再開されるまで、一般今日演説を行うという解決策に向けて同時並行的に動くことはできないし、考慮しないと述べた。

 

トランプ大統領はペロシ議長を攻撃し、議長の決定はアメリカにとっての「大きな大きな汚点」となると述べ、「一般教書演説の代替となる何かを」行う可能性があると示唆した。

 

更に数時間後、トランプ大統領は妥協し、政府機能閉鎖が終了したら一般教書演説を行うとツイッター上で述べた。

 

トランプ大統領は木曜日、連邦上院が政府機能再開のための2つの法案を否決したことを受けて、政府機能閉鎖がいつ終了するか予測できないと述べた。

 

=====

 

トランプ大統領は「代わりの」一般教書演説を行うと示唆(Trump suggests he'll give 'alternative' State of the Union

 

ジョーダン・ファビアン筆

2019年1月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/426676-trump-suggests-hell-give-alternative-state-of-the-union

 

水曜日、ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、政府機能が閉鎖している間、一般教書演説を行うために連邦下院の議場に入ることを阻止すると表明した。トランプ大統領は、一般教書演説の「代替」を行う可能性があると示唆した。

 

トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対して「私たちは別の手段を取るだろう」と述べた。

 

大統領は別の手段の詳細について何も示さなかったが、「1月29日よりも後の日付」で行うことになるだろうと述べた。

 

保守派の指導者たちとの会合の席上、トランプ大統領はペロシ議長の決定を「不名誉なもの」と呼び、「真実について聞きたい」と思っておらず、民主党内の「極左」議員たちに迎合しているのだと非難した。

 

ペロシ議長は水曜日の午前中にトランプ大統領に宛てた書簡の中で、来週火曜日に連邦議事堂の下院議事堂の中での演説を受け入れるために必要な法的段階を連邦下院は取らないということを通告した。

 

この決定によって、トランプ大統領による年に一度の国全体に向けた、全国にテレビ中継される演説はできないことになった。

 

継続中の政府機能閉鎖に関して、トランプ大統領とペロシ議長との間の争いが激化している。二人の争いは、大統領が国境の壁建設予算を求め、そのために政府機能閉鎖が33日目に入り、膠着状態に陥っていることで発生している。

 

トランプ大統領は、ペロシ議長はアメリカ南部国境の状態について「真実を知りたくない」のであり、議長の決定は「私たちすべてが愛する偉大な国アメリカの大きな汚点」となると述べた。

 

ペロシ議長は書簡の中で、「相互に合意可能な日程」で一般教書演説を行うために大統領を連邦下院に招き入れることになるだろうが、それは「政府機能が再開した時」であると述べている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 2018年1月30日にドナルド・トランプ大統領の一般教書演説が行われます。昨年を振り返り、今年の施政方針を明らかにするものです。

 

 大統領が一般教書演説を行うと、反対党(民主党の大統領の時は共和党、共和党の大統領の時は民主党)が終了後に反対演説を行います。最近では英語とスペイン語の2言語で行われます。

 

 今回のトランプ大統領の一般教書演説に対する反対演説者に、ジョセフ・ケネディ連邦下院議員が選ばれました。ジョン・F・ケネディの弟ロバート・ケネディ元司法長官の孫になります。JFKもロバートも若くで暗殺されましたので、残っている写真は清新なイメージが多いのですが、もう孫や曾孫の世代が表に出る時代になっています。ケネディ王朝は健在のようです。

josephkennedy001
ジョセフ・ケネディ連邦下院議員

 党大会や一般教書演説に対する反対演説に起用されるのは期待されている人物たちです。かつてバラク・オバマ前大統領はまだ無名だった連邦上院議員時代に党大会の演説に起用され、知名度を一気に上げました。ジョセフ・ケネディ議員の場合は、ケネディ家ということで、知名度を上げる必要はありませんが、顔を覚えてもらうということが重要でしょう。

 

 しかしそれにしても民主党は分裂の危機をはらんでいますが、結局ケネディ家が出てこないと収まりがつかないということなのでしょう。今年は中間選挙の年なので、分裂を修復する必要があります。そうした中でケネディ家御曹司、若手のホープの起用となりました。結局ケネディ家頼りの民主党、ということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

ジョー・ケネディ連邦下院議員がトランプ大統領の一般教書演説に対する反対演説を行う(Rep. Joe Kennedy to deliver Dem response to Trump's State of the Union

 

ジョン・ボウデン筆

2018年1月25日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/370822-rep-joe-kennedy-iii-to-deliver-democrats-state-of-the-union

 

ジョセフ・ケネディ連邦下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、火曜日夜のトランプ大統領の一般教書演説に対する民主党の反対演説者に選ばれた。

 

ジョセフ・ケネディは、ジョン・F・ケネディ大統領の弟ロバート・ケネディ元司法長官の孫で、現在37歳だ。民主党の期待を集める新星だ。マサチューセッツ州選手の連邦下院議員を3期務めている。

 

ナンシー・ペロシ米連邦下院民主党院内総務(カリフォルニア州選出、民主党)は声明を発表し、その中で「ケネディ議員は働くアメリカ人のために献身する戦士だ」と述べている。

 

ペロシ―議員は続けて次のように述べている。「トランプ大統領はアメリカの中流階級にした約束をことごとく破っている。一方、ケネディ議員は、全米の働く男女が直面している困難をよく理解している」。

 

「ケネディ議員の指導力は次世代の労働者たちの教育にとって重要だ。また、製造業の賃金を上げ、中流階級の機会拡大にも貢献している」とペロシは述べた。

 

民主党はヴァージニア州議会のエリザベス・グスマン議員(民主党)を一般教書演説に対するスペイン語での反対演説者に選んだ。グスマンは、ヴァージニア州議会初のヒスパニック系の移民女性の議員となった。

 

ペロシは、グスマンについて「尊敬すべき活動家であり、共同体の指導者だ。グスマン議員は我が国の理想を体現している」と述べた。

 

「エリザベスは、声を上げられない人々にとっての掛け替えのない指導者となっている。彼女は信念とアメリカンドリームに対する確信によって動かされている」とペロシは述べた。

 

民主党は昨年のトランプ大統領初の一般教書演説に対する反対演説を誰にやらせるかで難しい選択を迫られた。

 

民主党指導部は決定において、自尊心と政治的な要素のバランスを取ることを強いられた。

 

トランプ大統領は火曜日に米連邦議会に対して一般教書演説を行う。演説中か演説後の数日の間に公式にホワイトハウスの移民に対する改革計画を発表すると報道されている。これも選挙公約の実現を約束するもので、既にインフラ整備に対する計画が発表されている。

 

(貼り付け終わり)

 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 古村治彦です。

 本日、日本時間2015年1月21日午前11時(アメリカ東部時間2015年1月20日午後9時)から、バラク・オバマ米大統領による一般教書演説(State of the Union Address)が行われます。一般教書演説とは、米大統領(行政府の長)が議会を訪れ、昨年の成果と今年の目標を話す演説です。

barackobama001
バラク・オバマ大統領

 オバマ大統領は2期目(これ以上は大統領選挙に出馬することはできません)の後半を迎え、独自外交を展開しようとしています。また、オバマ大統領の人気も回復しつつあり、ヒラリーとの対決も激化しつつあります。そのことについて、短い論稿をご紹介いたします。

==========

人気回復したオバマ大統領の逆襲(
Get Ready for the Obama Boomlet

 

専門家たちがオバマ大統領を愛した時を覚えているか?この忘れ去られた感情を取り戻す条件は揃いつつある

 

ピーター・ベイナート筆

2014年12月15日

ジ・アトランティック誌

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2014/12/here-comes-the-obama-boom/383754/

 

 専門家たちが揃ってバラク・オバマ大統領を愛した時期を覚えているだろうか?それから数年しか経っていない。しかし、私はオバマ大統領に対する敬愛が戻りつつあると考えている。

 

 それには3つの理由がある。一つ目の理由には、政治的に見て、オバマ大統領の移民法改正という賭けはうまくいったことが挙げられる。ヒスパニックからの憎悪、そして政府機能の停止を恐れた共和党の指導者たちは、オバマ大統領の意向を覆すという希望を放棄した。更に言えば、オバマ大統領の支持率がヒスパニックの間では15%も上昇したのに加えて、アングロサクソン系の白人たちの間での支持率は下がらなかった。移民制度、健康保険制度、財政刺激策といった分野でオバマ大統領は改革を行った。オバマ大統領の改革の好き嫌いは別にして、多くの評論家たちは、オバマ大統領がリンドン・ジョンソン元大統領以降の民主党系の大統領では最も結果を出していることは認めている。

 

 第二の理由は、そしてこれはより重要なのであるが、経済が回復していることだ。2014年第三四半期のデータによると、雇用創出率は過去3年間で最速で伸びており、失業率は5.8%で2009年よりも10%も下がった。石油価格も下落している。こうしたことにアメリカ人たちは気づき始めている。『タイム』誌が報じたように、消費者の消費マインドは過去8年間で最高を記録している。たとえ改善しつつある経済状況の陰でオバマ大統領の支持率が回復しなくても、ワシントン内部のマスコミたちの彼に対する見方が改善させている。1990年代末に当時のビル・クリントン大統領の支持率の改善に好調な経済が貢献したことがあった。クリントン大統領はモニカ・ルインスキーをめぐるスキャンダルで大きな打撃を受けたが、好調な経済に救われた。オバマ大統領もまた支持率を改善することは可能である。それによって、マスコミはオバマは復活しているという報道をするようになるだろう。

 

 三つ目の理由は、マスコミは「オバマ大統領は変わりつつある」と判断していることだ。2014年に最も関心を集めたのはオバマ大統領と中間選挙であった。重要な上院議員選挙のほとんどは、大統領選挙の激戦州で行われ、民主党の候補者たちは、オバマ大統領とは距離を取った。その結果、マスコミはオバマ大統領を「政治的な不可触民」のように扱った。しかし、状況は変化しつつある。

 

 来年2015年は2016年に向かって話はどんどん進んでいくことだろう。皆が話しているように、民主党でいえば、ヒラリー・クリントンが民主党の大統領選挙候補者となるために進んでいく年となるだろう。ケンタッキーのような州ではオバマは人気がなかったが、民主党の予備選で重要な役割を果たすリベラルな活動家たちからの人気は健在である。実際のところ、オバマはそうした活動家たちとのつながりを維持しているが、ヒラリーにはそれがない。ヒラリーが党の大統領選挙候補者の指名に近づくほどに、そうした草の根のリベラルな活動家たちはオバマの時のことを懐かしく思い出すようになるだろう。民主党の活動家の間で起きるオバマ対ヒラリーという新たな物語は、ケンタッキー州におけるオバマ対アリソン・アリソン・ランダーガン・グライムス(民主党の上院議員選挙候補者)の戦いよりも、人々の耳目を集めるものとなる。先週、オバマ大統領の選挙に参加した300名のスタッフがエリザベス・ウォーレンに大統領選挙に出馬するように求める手紙に署名した。これはヒラリーには大きな痛手となった。2015年、人々は、2008年の米大統領選挙でオバマ大統領は、リベラル派の人々の情熱を結集できたこと、そしてヒラリーにはそれが出来なかったこと、そしてヒラリーは2016年の大統領選挙でもおそらくそれは出来ないであろうことを思い出すことになるだろう。このような状況下で、オバマ大統領に対する見方は改善するだろう。

 

これまでの大統領たちには全員、好意的なジャーナリストたちによる非公式なサークルの様なものが存在した。このサークルとは壊れたり、再建したりを繰り返してきた。2014年、マスコミによるオバマ大統領についての報道は増加した。『ワシントン・ポスト』紙のクリス・シリッザによると、2014年は、オバマ大統領にとってワシントン入りして以来、全ての面で最悪の年と言えるとなった。しかし、それは、多くのジャーナリストたちがシリッザと同じ考えを持っていたからだ。私たち、飽きやすいジャーナリストたちは振り子を元に戻そうとしている。それは何も困難なことではないのだ。

 

(終わり)








 

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