古村治彦です。
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第2次ドナルド・トランプ政権の重要政策は南部国境警備で、不法移民対策だ。その一環として、政権発足直後から、米移民・関税執行局(ICE)による大規模な捜査、摘発、強制送還を行っている。これに対して、最近になって、ロサンゼルスでの抗議活動が行われ、トランプ政権自体に対する抗議活動が全米に広がっている。トランプの政策は軒並み不支持率が高いが、移民対策だけは支持率が高い。そのために、厳しい取り締まりを続けると私は考えていた。
しかし、アメリカで生活をしてみると分かるが、不法移民がいなければビジネスが立ち行かないという産業分野がある。レストランの下働きやホテルでシーツを替えたり、部屋の掃除をしたりするメイド、農場で農作業を行う人々、建設現場で働く人々など、低賃金で、長時間の労働を強いられる厳しい労働において、不法移民は重要な労働力となってきた。不法移民が低賃金で働くことで、サーヴィスや物の値段が抑えられている。
私がロサンゼルスに住んでいた時、毎朝、あるホームセンターの一角にヒスパニック系の人々がたむろしている様子を見ていた。それは、その日にそこで仕事を得ようとしている人々だった。彼らは不法移民だった。彼らは偽造されたソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)のカードを持っていて、それで仕事をしようとしていた。アメリカでは何にでもソーシャル・セキュリティ・ナンバーが必要で、私もティーチング・アシスタントをする際に取得した。
トランプ大統領はこうした特定のビジネス分野に関して、不法移民の捜査の一時停止を示唆した。それに対して、厳しい取り締まりを行うべきだと主張する政治家たちもいる。第2次トランプ政権の国境問題担当の責任者トム・ホーマンは、「良い暮らしをしたいということで人々がやってくるのは理解できる。ここに仕事がなければ来なくなる」という趣旨の発言をしている。アメリカ人が不法移民と同じ条件で働くならば、事業者たちもアメリカ人を雇うだろう。それでは実際にはどうだろうか。それは無理だ。厳しい労働環境で仕事を続けられる人は少ないだろうし、そもそも低賃金だ。アメリカ人が働いてくれない以上、不法移民に頼らざるを得ない。
私は、アメリカ大統領選挙期間中、トランプはアメリカ人にきちんと働けということを言っているのだと感じた。トランプは「自分が製造業で仕事を作ってやる。みんなが働きたいと言うから。仕事があるのだから文句を言わずに働いてきちんと生活しろ」と述べていると感じた。しかし、それも限界がある。非常に厳しい仕事をアメリカ人はやりたがらないし、そもそもできない。ここに大きな矛盾がある。大きな声でスローガンだけを叫ぶ時期は過ぎつつある。アメリカ人は楽に稼ぐと考えを改めねばならないだろうが、おそらく無理だろう。そして、そうやって国は衰退していく。近代ヨーロッパの世界支配が始まって、覇権国となった国々に共通しているのは、最後には金融や投資に向かって、衰退していったということだ。アメリカもそうなっているし、日本もそうなっている。そうやって衰退していく。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ政権によるICEの特定産業への捜査一時停止についてコットン議員は次のように述べた:「いかなる種類の執行も撤回すべきではないと思う」(Cotton on Trump ICE pause on select industries: ‘I don’t think we
should pull back on any kind of enforcement’)
エルヴィア・リモン筆
2025年6月15日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5351853-tom-cotton-trump-ice-pause-select-industries/?tbref=hp
トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)は日曜日、ドナルド・トランプ政権が米移民・関税執行局(Immigration and Customs Enforcement、ICE)に対し、農業、ホテル、飲食業界の労働者に対する強制捜査の一時停止を指示したことを受け、ICEは「いかなる種類の執行も手控えるべきではない」と述べた。
コットン議員はCBSニューズの「フェイス・ザ・ネイション」に出演し、マーガレット・ブレナンに対して、アーカンソー州内の農業産業の状況を考え、この措置に賛成かと問われた際、「職場における強力な執行が必要だ(we need to have robust worksite enforcement)」と述べた。
コットン議員は次のように述べた。「いかなる種類の執行も手控えるべきではないと思う。あらゆる産業における職場における執行は前進していく必要がある。そして、最前線で働くICE職員は、政治指導者たちの支援を必要としている」。
国土安全保障省(Department of Homeland Security、DHS)は土曜日、ニューズネイション(NewsNation)への声明で、強制送還政策の転換を認めた。これはトランプ大統領がトゥルース・ソーシャル(Truth Social)への投稿で「変化は起こる(changes are coming)」と示唆してから数日後のことだ。
トランプ大統領は木曜日に「我が国の偉大な農家やホテル・レジャー産業の人々は、我が国の非常に積極的な移民政策によって、非常に優秀で長年働いてくれる労働者が奪われており、それらの仕事の代わりはほとんど不可能だと主張している」と書いた。
トランプはさらに「これは良くない。農民を守らなければならないが、犯罪者たちをアメリカから追い出さなければならない。変化は起きる!」と付け加えた。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、国土安全保障省当局者たちは、強制退去と拘留に関してはホワイトハウスの指示に従うと述べた。
国土安全保障省(DHS)のトリシア・マクラフリン報道官は、「大統領の指示に従い、最悪の犯罪者である不法移民たちをアメリカの街から排除するために引き続き取り組んでいく」と述べた。
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トランプ大統領がICEに特定産業への捜査を一時停止するよう指示した(Trump directs ICE to pause raids against certain industries)
アシュレイ・フィールズ筆
2025年6月14日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5350734-trump-ice-hotel-agriculture-restaurant-raids/
ドナルド・トランプ政権は、米移民・関税執行局(ICE)に対し、農業、ホテル、飲食業界の労働者に対する強制捜査を一時停止するよう指示したとニューズネイション(NewsNation)が確認した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙が最初に報じたところによると、ICEの上級職員であるテイタム・キングは木曜日、地域の指導者たちに宛てたメッセージで、「本日より、農業(水産養殖および食肉加工工場を含む)、レストラン、そしてホテル経営における全ての現場強制捜査・捜査活動を一時停止するように」と述べた。
国土安全保障省(DHS)は、トランプ大統領がトゥルース・ソーシャル(Truth Social)への投稿で「変化が起きる」と示唆した数日後、ニューズネイションへの声明で、国外退去政策の転換を認めた。
トランプ大統領は木曜日に「我が国の偉大な農家やホテル・レジャー業界の人々は、我が国の非常に積極的な移民政策によって、非常に優秀で長年働いてきた労働者の職が奪われており、それらの仕事の代わりを見つけることはほぼ不可能だと主張している」と書いた。
トランプ大統領は「これは良くない。農民を守らなければならないが、犯罪者たちをアメリカから追い出さなければならない。変化は起きる!」と付け加えた。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、国土安全保障省当局者たちは、強制退去と拘留に関してはホワイトハウスの指示に従うと述べた。
国土安全保障省のトリシア・マクラフリン報道官は「大統領の指示に従い、最悪の犯罪者である不法移民たちをアメリカの街から追放するために引き続き尽力する」と述べた。
当局はここ数日、カリフォルニア州全域で複数の職場への家宅捜索を実施しており、一部の従業員が米移民・関税執行局(ICE)によって迅速に拘留されたため、事業主たちは動揺している。
カリフォルニア州の収容施設における非人道的な環境と過密状態への懸念が高まる中、家宅捜索を受けて全米で大規模な抗議活動が勃発している。
トランプ大統領は、ロサンゼルスで騒乱が続く中、州兵と海兵隊をカリフォルニア州に派遣した。
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ホーマンはドナルド・トランプ政権が職場における移民執行を強化すると述べている(Homan says Trump
administration to ramp up workplace immigration enforcement)
アシュレイ・フィールズ筆
2025年6月12日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5347195-homan-says-trump-administration-to-ramp-up-workplace-immigration-enforcement/
ドナルド・トランプ大統領の国境担当責任者トム・ホーマンは水曜日、「セマフォー」とのインタヴューで、職場における移民操作執行が「大幅に拡大する(massively expand)」と述べた。
ホーマンの発言は、ロサンゼルスの抗議者たちがトランプ政権による広範な国外追放推進に抗議するデモを続ける中、米移民・関税執行局(ICE)の職員たちがネブラスカ州の食肉加工工場で働いていたとされる不法移民数十人を強制送還した数日後に行われた。
ホーマンはセマフォーに「彼らはより良い生活と仕事を求めてここに来ており、その気持ちは理解できる」と語った。
ホーマンは「こうした磁石を取り除けば取り除くほど、来る人は減る。仕事が見つからなければ、ほとんどの人は来ないだろう」と付け加えた。
移民研究センターによると、合法的な滞在資格を持たない移民のほとんどは、配達ドライヴァー、農業、サーヴィス業などの分野で仕事を見つけることができる。
農家や食品配達会社は、合法的な滞在資格を持たない移民の強制送還に不満を表明し始めており、強制送還は労働力と事業運営を脅かすと主張している。
トランプは木曜日のトゥルース・ソーシャル(Truth Social)への投稿で、「我が国の偉大な農家やホテル・レジャー産業の人々は、我が国の非常に積極的な移民政策によって、優秀で長年働いてきた労働者の職が奪われ、その仕事の代わりはほとんどいないと主張している」と述べた。
「多くの場合、非常に愚かなバイデンの国境開放政策によって我が国への入国を許可された犯罪者が、これらの仕事に応募している。これは良くない。私たちは農家を守らなければならないが、犯罪者たちをアメリカから追い出さなければならない。変化は必ずやってくる」と付け加えた。
しかしながら、3月にドアダッシュ(DoorDash)は、移民政策の変更が自社のビジネスモデルに悪影響を及ぼす可能性があると警告した。
ドアダッシュは米証券取引委員会(SEC)への提出書類の中で、「移民法、労働法、雇用法を含む特定の法律や規制の変更、あるいはプラットフォームへのアクセスを制限し、アクセスを低下させるような変更(プラットフォームへのアクセスを制限、または特定の法域におけるダッシュ利用者(Dasher)への柔軟性提供を制限する変更を含む)は、ダッシュ利用者のプール減少につながり、ダッシュ利用者獲得の競争激化や採用・雇用コストの上昇につながる可能性がある」と述べている。
さらに、「ダッシュ利用者の獲得、既存のダッシュ利用者を有利な条件で維持、または既存のダッシュ利用者によるプラットフォームの利用維持・増加に失敗した場合、加盟店や消費者の需要に応えられなくなり、当社の事業、財務状況、および業績に悪影響が及ぶ可能性がある」と付け加えている。
火曜日にICEの強制捜査を受けたネブラスカ州の事業主は、従業員たちの身元確認のため、国土安全保障省が管理するシステムであるE-Verifyを利用して、従業員たちが合法的にアメリカに滞在していることを確認するよう努めていると語った。
しかしながら、当局は家宅捜索の後、システムが「壊れている(broken)」と告げ、求職者たちを適切に処理する方法が分からなくなってしまった。
グレン・バレー・フーズのチャド・ハートマン社長はAP通信の取材に「一体どうすればいいのか?
これは政府によって運営されている、あなたたちのシステムだ。なのに、システムが機能していないから私を家宅捜索するのか?」と語った。
米移民・関税捜査局(ICE)の職員は、採用の最善の方法を見つけるのを手伝うと彼に伝えた。一方、トランプ大統領は木曜日、強制送還によって混乱を招く可能性のある農場労働者たちのための「常識的な(common sense)」政策を保証する大統領令に署名すると約束した。
トランプ大統領は記者団に対して、「私たちの農家は大きな打撃を受けている。彼らには非常に優秀な労働者がいる。彼らは20年間、私たちのために働いてきた。彼らはアメリカ市民ではないが、素晴らしい人材に成長した」と語った。
トランプは「農民とその住民全員を連れ戻し、彼らを送還することはできない。なぜなら、彼らは持つべきものを持っていないかもしれないし、持っていないかもしれないからだ」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』