古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のきまぐれで、汚い言葉を使った発言にアメリカ国民、そして世界の人々は驚き、嫌悪感を持つ。彼はこれまでの人生で数限りない嘘をついてきたが、一面で非常に正直で、単純な人間である。嫌な思いをすればそれに対して素直に不満を表明する。退屈だと思えば、ある程度は我慢できるが(さすがに大人だから)、やはり態度に出てしまう。分かりやすく、単純な人間でもある。

 トランプの特徴は自分以外の人間を蔑視し、罵ることが得意である点だ。過剰な自信を持ち、自分は素晴らしいが、ほかの人間はダメだという形でこき下ろす。敵とみなせば、それまでどんなに友人関係であった人でも、口汚く罵ることになる。トランプは長年にわたり民主党員であり、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン夫妻とは長年にわたり家族ぐるみの友人関係であった。トランプの娘イヴァンかとクリントン家の娘チェルシーは長年にわたり親友であったが、親たちが敵同士となったことで、その関係は終わりを迎えた。

 敵認定したり、無能認定したりすれば、口汚く罵る。それは大統領になっても変わらずで、外国や外国の政治指導者たちに対してもそうだった。最新の例で言えば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を罵ったということもあった(仲が良いので率直な物言いになったということもあるだろうが)。

 下記論考で、著者ファリード・ザカリアはトランプのこうした外国への蔑視や軽蔑が外国のアメリカ離れを引き起こしていると書いている。しかし、それはトランプになんでも責任をかぶせてしまう考え方である。外国の政治指導者や外国政府は馬鹿ではないし、トランプの発言や態度にいちいち目くじらを立てるほど狭量でもなく、暇でもない。ヨーロッパ諸国やカナダが軍事面でのアメリカ依存から脱却しようとしているのは、アメリカが世界帝国の地位を維持できないと判断しているからだ。アメリカは西半球に撤退するということになれば、ヨーロッパからアメリカ軍のプレゼンスがなくなるということだ。逆に、カナダにしてみれば、アメリカが西半球での支配を強めるということになれば、「属国化」を懸念することになる。アメリカ離れの動きはアジア地域や中東地域にも波及している。中国との関係改善や関係強化に動いている国もある。

 アメリカ離れは短期的な現象ではない。トランプが馬鹿なことばかり言って、馬鹿なことばかりをやっているから起きている現象ではない。長期的なアメリカの国力衰退、酒井は建国、世界帝国の地位の維持の困難さを世界各国が認識しているから起きている。そうした中で、いつまでも20世紀の冷戦期の思考で、何でもかんでもアメリカに従っておけば安心だ、大丈夫だという、時代遅れでおめでたい政治指導者と国民の国が極東に存在する。ご多分に漏れず、この国もまた衰退の途を順調に進んでいる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの蔑視の代償が明らかになり始めている(The Costs of Trump’s Contempt Are Starting to Show

-ヨーロッパからアジアまで各国政府は不安定で予測不能な(unreliable and erratic)アメリカの力に対抗するための対策を講じている。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/24/trump-united-states-allies-partnerships-insult-contempt-europe-canada-china-asia/

先日、中国の産業の中心地である深圳を訪れ、中国の伝説的な実業家の1人と話をする機会があった。イラン戦争について尋ねると、彼の返答は私を驚かせました。彼は次のように語った。「私たちにとって、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃は、グリーンランド攻撃の脅迫ほど重大な問題ではない。彼がアメリカの最も古い同盟国に対してそのような脅迫をした時、ヨーロッパはアメリカの対中政策に追随しないだろうと私は確信した」。

アメリカにおいて、ドナルド・トランプ大統領がヨーロッパに対して定期的に浴びせる侮辱(periodic insults)は、ホワイトハウスという名のリアリティ番組の一部、日常的な癇癪(routine tantrums)として扱われる傾向がある。しかし、ヨーロッパでは、こうした侮辱(abuse)の積み重ねが限界点(a tipping point)に達している。保守的で、(通常は)熱烈な親米雑誌である『スペクテイター』誌のイギリス版にダニエル・デペトリスは最近寄稿し、次のように書いている。「イラン戦争は・・・ヨーロッパに毅然とした態度を取ることを強いた。ヨーロッパの指導者たちは、もはやトランプ大統領の機嫌を取るためにひざまずいて媚びへつらうことに興味はない」。ヨーロッパは言葉だけでなく行動に移しつつある。

ヨーロッパ連合(EU)の「欧州再軍備計画/2030年即応計画(ReArm Europe/Readiness 2030 plan)」では、今後数年間で約8000億ユーロ(約9350億ドル)を防衛費に投資する予定だ。かつては、アメリカがヨーロッパの安全保障を担い、ヨーロッパ諸国はアメリカ製兵器に多額の資金を投じるという構図だった。しかし今、ヨーロッパ諸国は、より多くの資金を国内に留め、ヨーロッパ企業やサプライチェインの構築に充てることで、ワシントンからの戦略的自立を目指している。

同様の論理は防衛分野を超えて広がりつつある。ヨーロッパ決済イニシアティヴ(European Payments InitiativeEPI)は、ヴィザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)に代わるヨーロッパ全域規模の決済システムを構築している。ヨーロッパの諸機関は、スゥイフト(SWIFT)、ペイパル(PayPal)、その他のアメリカ主導の金融プラットフォームに代わる手段を模索している。フランスは金準備(gold reserves)をニューヨークからパリに移し、ドイツとイタリアの政治家たちは自国も同様の措置を取るべきかどうかを議論している。ヨーロッパ各国政府は、アメリカ企業が将来的に重要なサーヴィスを停止するよう命じられることを懸念し、アメリカ製ソフトウェアに代わる手段を探している。これらは全て単なるポーズだと片付けることもできるが、ヨーロッパは世界第2位の経済規模を誇り、世界第2位の基軸通貨を保有している。その行動は重大な意味を持つ。

おそらく最も顕著な変化は、ヨーロッパの右派に見られる。かつて反米主義は左派の教義であり、パリの知識人、学生運動家、反戦政党などが担っていた。右派は本能的に大西洋主義(Atlanticist)の信奉者だ。そして、ヨーロッパのポピュリスト右派はかつてトランプを自分たちの守護聖人(patron saint)と見なしていた。しかし、グリーンランド問題、イラン問題、そしてトランプのヨーロッパに対する全般的な軽蔑は、ヨーロッパの政治スペクトラム全体において、トランプを政治的に忌避される存在にしてしまった。『ワシントン・ポスト』紙は、イギリスのナイジェル・ファラージ、フランスのマリーヌ・ルペン、イタリアのジョルジア・メローニ、そしてドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」党員など、多くのポピュリストがトランプとアメリカの政策から距離を置いていると報じた。ハンガリーでさえ、当時のヴィクトル・オルバン首相のためにJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、オルバン首相の選挙の見通しに悪影響を与えた可能性がある。

これはヨーロッパだけにとどまらない。カナダでは、マーク・カーニー首相がアメリカ市場への依存度を下げることを明確に打ち出している。彼はすでに中国を含む20以上の経済・安全保障協定に署名し、アメリカ以外の輸出を拡大しようとしている。カナダ国民もアメリカ製品の購入を減らし、アメリカへの休暇旅行も減らしている。

ヨーロッパとカナダは、中国をすぐに受け入れるつもりはない。ヨーロッパとカナダはウクライナ、補助金、電気自動車、重要鉱物、市場アクセスをめぐって北京と深刻な対立を抱えている。しかし、可能な限り中国との関係を良好に保つだろう。ヨーロッパとカナダはリスクヘッジを行う。ワシントンとは必要な時に、北京とは都合の良い時に、そして可能な限り他の国々とは交渉するだろう。中国の学者である達巍が最近『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿したエッセイで、北京にとっての新たな地政学的事実は、今やヨーロッパとアメリカの間に深刻な分断が生じており、それを利用できる状態にあることだと論じている。

アジアでは、アメリカの同盟諸国が最も大きな打撃を受けている。ホルムズ海峡を通過する石油と天然ガスの80%以上がアジア向けだった。現在、アジア大陸の多くの国々は、半世紀、いやおそらく史上最悪のエネルギー危機に苦しんでいる。その結果、日本や韓国といった同盟諸国は、ロシアやイランといった敵対国に頭を下げて、国内の電力供給を維持するための燃料確保を交渉せざるを得なくなっている。さらに追い打ちをかけるように、彼らはトランプ大統領から非難を浴びている。トランプ大統領は、これらの国々がイランとの戦争に積極的に参加しなかったことを理由に、事前に相談も受けていないにもかかわらず、非難しているのだ。現在、多くの国々がエネルギー安全保障やグリーンテクノロジーについて北京と協議を行っている。

トランプ政権の外交政策に関して繰り返し問われているのは、その影響はどれほど永続的なものになるのかという点だ。アメリカは同盟諸国との信頼関係の喪失から立ち直ることができるだろうか? 各国はすでに長期的な政策転換を始めており、これらの動きはやがて独自の展開を見せ始めるだろう。彼らは、自分たちの安全と幸福をワシントンに委ねていたことに気づき、ワシントンはその依存を利用して彼らを苦しめてきた。だからこそ、彼らは頼りにならないアメリカから身を守るために保険に加入することを決めたのだ。そして、誰が彼らを責めることができるだろうか。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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