古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:世界覇権国

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のきまぐれで、汚い言葉を使った発言にアメリカ国民、そして世界の人々は驚き、嫌悪感を持つ。彼はこれまでの人生で数限りない嘘をついてきたが、一面で非常に正直で、単純な人間である。嫌な思いをすればそれに対して素直に不満を表明する。退屈だと思えば、ある程度は我慢できるが(さすがに大人だから)、やはり態度に出てしまう。分かりやすく、単純な人間でもある。

 トランプの特徴は自分以外の人間を蔑視し、罵ることが得意である点だ。過剰な自信を持ち、自分は素晴らしいが、ほかの人間はダメだという形でこき下ろす。敵とみなせば、それまでどんなに友人関係であった人でも、口汚く罵ることになる。トランプは長年にわたり民主党員であり、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン夫妻とは長年にわたり家族ぐるみの友人関係であった。トランプの娘イヴァンかとクリントン家の娘チェルシーは長年にわたり親友であったが、親たちが敵同士となったことで、その関係は終わりを迎えた。

 敵認定したり、無能認定したりすれば、口汚く罵る。それは大統領になっても変わらずで、外国や外国の政治指導者たちに対してもそうだった。最新の例で言えば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を罵ったということもあった(仲が良いので率直な物言いになったということもあるだろうが)。

 下記論考で、著者ファリード・ザカリアはトランプのこうした外国への蔑視や軽蔑が外国のアメリカ離れを引き起こしていると書いている。しかし、それはトランプになんでも責任をかぶせてしまう考え方である。外国の政治指導者や外国政府は馬鹿ではないし、トランプの発言や態度にいちいち目くじらを立てるほど狭量でもなく、暇でもない。ヨーロッパ諸国やカナダが軍事面でのアメリカ依存から脱却しようとしているのは、アメリカが世界帝国の地位を維持できないと判断しているからだ。アメリカは西半球に撤退するということになれば、ヨーロッパからアメリカ軍のプレゼンスがなくなるということだ。逆に、カナダにしてみれば、アメリカが西半球での支配を強めるということになれば、「属国化」を懸念することになる。アメリカ離れの動きはアジア地域や中東地域にも波及している。中国との関係改善や関係強化に動いている国もある。

 アメリカ離れは短期的な現象ではない。トランプが馬鹿なことばかり言って、馬鹿なことばかりをやっているから起きている現象ではない。長期的なアメリカの国力衰退、酒井は建国、世界帝国の地位の維持の困難さを世界各国が認識しているから起きている。そうした中で、いつまでも20世紀の冷戦期の思考で、何でもかんでもアメリカに従っておけば安心だ、大丈夫だという、時代遅れでおめでたい政治指導者と国民の国が極東に存在する。ご多分に漏れず、この国もまた衰退の途を順調に進んでいる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの蔑視の代償が明らかになり始めている(The Costs of Trump’s Contempt Are Starting to Show

-ヨーロッパからアジアまで各国政府は不安定で予測不能な(unreliable and erratic)アメリカの力に対抗するための対策を講じている。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/24/trump-united-states-allies-partnerships-insult-contempt-europe-canada-china-asia/

先日、中国の産業の中心地である深圳を訪れ、中国の伝説的な実業家の1人と話をする機会があった。イラン戦争について尋ねると、彼の返答は私を驚かせました。彼は次のように語った。「私たちにとって、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃は、グリーンランド攻撃の脅迫ほど重大な問題ではない。彼がアメリカの最も古い同盟国に対してそのような脅迫をした時、ヨーロッパはアメリカの対中政策に追随しないだろうと私は確信した」。

アメリカにおいて、ドナルド・トランプ大統領がヨーロッパに対して定期的に浴びせる侮辱(periodic insults)は、ホワイトハウスという名のリアリティ番組の一部、日常的な癇癪(routine tantrums)として扱われる傾向がある。しかし、ヨーロッパでは、こうした侮辱(abuse)の積み重ねが限界点(a tipping point)に達している。保守的で、(通常は)熱烈な親米雑誌である『スペクテイター』誌のイギリス版にダニエル・デペトリスは最近寄稿し、次のように書いている。「イラン戦争は・・・ヨーロッパに毅然とした態度を取ることを強いた。ヨーロッパの指導者たちは、もはやトランプ大統領の機嫌を取るためにひざまずいて媚びへつらうことに興味はない」。ヨーロッパは言葉だけでなく行動に移しつつある。

ヨーロッパ連合(EU)の「欧州再軍備計画/2030年即応計画(ReArm Europe/Readiness 2030 plan)」では、今後数年間で約8000億ユーロ(約9350億ドル)を防衛費に投資する予定だ。かつては、アメリカがヨーロッパの安全保障を担い、ヨーロッパ諸国はアメリカ製兵器に多額の資金を投じるという構図だった。しかし今、ヨーロッパ諸国は、より多くの資金を国内に留め、ヨーロッパ企業やサプライチェインの構築に充てることで、ワシントンからの戦略的自立を目指している。

同様の論理は防衛分野を超えて広がりつつある。ヨーロッパ決済イニシアティヴ(European Payments InitiativeEPI)は、ヴィザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)に代わるヨーロッパ全域規模の決済システムを構築している。ヨーロッパの諸機関は、スゥイフト(SWIFT)、ペイパル(PayPal)、その他のアメリカ主導の金融プラットフォームに代わる手段を模索している。フランスは金準備(gold reserves)をニューヨークからパリに移し、ドイツとイタリアの政治家たちは自国も同様の措置を取るべきかどうかを議論している。ヨーロッパ各国政府は、アメリカ企業が将来的に重要なサーヴィスを停止するよう命じられることを懸念し、アメリカ製ソフトウェアに代わる手段を探している。これらは全て単なるポーズだと片付けることもできるが、ヨーロッパは世界第2位の経済規模を誇り、世界第2位の基軸通貨を保有している。その行動は重大な意味を持つ。

おそらく最も顕著な変化は、ヨーロッパの右派に見られる。かつて反米主義は左派の教義であり、パリの知識人、学生運動家、反戦政党などが担っていた。右派は本能的に大西洋主義(Atlanticist)の信奉者だ。そして、ヨーロッパのポピュリスト右派はかつてトランプを自分たちの守護聖人(patron saint)と見なしていた。しかし、グリーンランド問題、イラン問題、そしてトランプのヨーロッパに対する全般的な軽蔑は、ヨーロッパの政治スペクトラム全体において、トランプを政治的に忌避される存在にしてしまった。『ワシントン・ポスト』紙は、イギリスのナイジェル・ファラージ、フランスのマリーヌ・ルペン、イタリアのジョルジア・メローニ、そしてドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」党員など、多くのポピュリストがトランプとアメリカの政策から距離を置いていると報じた。ハンガリーでさえ、当時のヴィクトル・オルバン首相のためにJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、オルバン首相の選挙の見通しに悪影響を与えた可能性がある。

これはヨーロッパだけにとどまらない。カナダでは、マーク・カーニー首相がアメリカ市場への依存度を下げることを明確に打ち出している。彼はすでに中国を含む20以上の経済・安全保障協定に署名し、アメリカ以外の輸出を拡大しようとしている。カナダ国民もアメリカ製品の購入を減らし、アメリカへの休暇旅行も減らしている。

ヨーロッパとカナダは、中国をすぐに受け入れるつもりはない。ヨーロッパとカナダはウクライナ、補助金、電気自動車、重要鉱物、市場アクセスをめぐって北京と深刻な対立を抱えている。しかし、可能な限り中国との関係を良好に保つだろう。ヨーロッパとカナダはリスクヘッジを行う。ワシントンとは必要な時に、北京とは都合の良い時に、そして可能な限り他の国々とは交渉するだろう。中国の学者である達巍が最近『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿したエッセイで、北京にとっての新たな地政学的事実は、今やヨーロッパとアメリカの間に深刻な分断が生じており、それを利用できる状態にあることだと論じている。

アジアでは、アメリカの同盟諸国が最も大きな打撃を受けている。ホルムズ海峡を通過する石油と天然ガスの80%以上がアジア向けだった。現在、アジア大陸の多くの国々は、半世紀、いやおそらく史上最悪のエネルギー危機に苦しんでいる。その結果、日本や韓国といった同盟諸国は、ロシアやイランといった敵対国に頭を下げて、国内の電力供給を維持するための燃料確保を交渉せざるを得なくなっている。さらに追い打ちをかけるように、彼らはトランプ大統領から非難を浴びている。トランプ大統領は、これらの国々がイランとの戦争に積極的に参加しなかったことを理由に、事前に相談も受けていないにもかかわらず、非難しているのだ。現在、多くの国々がエネルギー安全保障やグリーンテクノロジーについて北京と協議を行っている。

トランプ政権の外交政策に関して繰り返し問われているのは、その影響はどれほど永続的なものになるのかという点だ。アメリカは同盟諸国との信頼関係の喪失から立ち直ることができるだろうか? 各国はすでに長期的な政策転換を始めており、これらの動きはやがて独自の展開を見せ始めるだろう。彼らは、自分たちの安全と幸福をワシントンに委ねていたことに気づき、ワシントンはその依存を利用して彼らを苦しめてきた。だからこそ、彼らは頼りにならないアメリカから身を守るために保険に加入することを決めたのだ。そして、誰が彼らを責めることができるだろうか。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 「私たちは冷戦に勝利した、歴史の終わりだ」と浮かれたアメリカは現在、覇権国の地位の喪失を目前に控えて苦しんでいる。1990年代の多幸感(euphoria)は、2001年の911同時多発テロで打ち砕かれ、幸せは長くは続かなかった。21世紀のアメリカは、対テロ戦争の名目で、イラクとアフガニスタンに侵攻したが結果として泥沼に足を取られ、撤退を余儀なくなされた。中国をはじめとするグローバルサウスの台頭に直面し、世界構造の大転換を目前にして、高インフレと経済力の低下に苦しんでいる。「世界唯一の超大国(world’s sole superpower)」と威張っていられたのは短期間だった。

 「勝利が必ずしも素晴らしい未来を保証するものではない」アメリカは第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦に勝利し超大国(世界覇権国)となった。しかし、勝利は同時に失敗や敗北の種をまくことにもなった。第一次世界大戦では連合国の復讐感情を抑えることができず、ドイツに懲罰的な講和条件を飲ませて、結果としてドイツは再び戦争を始めることになった。第二次世界大戦では日独伊の枢軸国を打ち倒すことはできたが、ソ連の東ヨーロッパ支配を許し、中国共産党の国共内戦の勝利と中国本土の支配を許す結果となった。冷戦の場合には、アメリカの傲慢さ(アメリカの理想を世界に押し付ける)によって、世界各国、特にグローバルサウス諸国の反感を買うことになった。

 勝利の後に「傲慢さ(hubris)」が出てくるのは人類の共通した特徴である。それを抑えることは難しい。「勝った、勝った」の大合唱はどの時代でも聞こえた。しかし、その後に、大きく言えば敗北してきた、それが歴史の教訓である。ローマ帝国であろうが、モンゴル帝国であろうが、スペイン帝国であろうが、大英帝国であろうが、アメリカ帝国であろうが、この教訓から逃れることはできなかった。中国が次の世界覇権国になるだろうが、「傲慢さ」をコントロールできなければ、歴史上の他の帝国と同じ結末を迎えることになるだろう。この帝国の循環こそは歴史の教訓、法則であり、人類の歴史を動かしてきた力と言うこともできるだろう。

(貼り付けはじめ)

国際政治において何を望むかについては注意深くあるべきだ(In International Politics, Be Careful What You Wish for

-ドイツ統一は、政治的に大きな問題を引き起こし始めている西側にとっての最新の勝利ということになる。

スティーヴン・M・ウォルト著

2024年9月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/04/germany-east-reunification-afd-elections-saxony-thuringia/

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1988年に撮影され2019年11月9日に公開された写真。西ベルリンから東ベルリン、ベルリンの壁、ブランデンブルク門に向かって撮影された眺望

最近のドイツの各州選挙では、極右政党「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAfD)」がテューリンゲン州で最高の得票率を獲得し、ザクセン州では僅差の2位だった。新たに結成されたサーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(Sahra Wagenknecht Alliance)はザクセン州で3位となり、その結果誕生する政権で中心的な役割を果たす姿勢を見せている。この結果から得られる教訓はたくさんあるが、ここでは1つだけ述べる。それは、「何を望むかについては注意深くあるべきだ(Be careful what you wish for)」ということである。極右の人気は、ある時点では圧倒的な勝利に見えても、その先には大きなトラブルの種をまくことになるということを、明確に思い起すことができる。
ドイツを例に取って考えてみよう。冷戦後に実現した平和的統一(peaceful reunification)は、西ドイツの社会民主主義モデルの正当性(vindication of the West German social democratic model)を証明するものであり、西ドイツ外交の特筆すべき成果であった。また、連邦政府が伝統的な首都ベルリンに戻ったことに象徴されるように、ドイツのナショナリズムにとって強力な勝利であり、ナチスの過去からの回復に成功した証でもあった。

しかし、後になって考えてみると、統一はドイツ国民が当時予想していたよりもさらに困難だったことが明らかになった。30年以上が経過したが、国の東半分と西半分の間の政治的な違いは依然として大きいままだ。ドイツの2つの半分が40年以上にわたり全く異なる政治制度によって統治されてきたことを考えると、これは驚くには値しない。東部の経済状況は西部に比べて遅れ続けており、東側に住む国民は他の地域よりもはるかに独裁的な衝動を示している。ネオナチ運動が東部でより肥沃な土壌を発見したのは偶然ではないが、これらの新たに台頭している政党は現在、統一後の目まぐるしい数カ月の間にほとんどの観察者が想像しなかった形で国全体の政治に影響を与えている。

(余談[side note]:ドイツの統一が予想以上に難しいことを理解していると考えているならば、もし朝鮮半島と韓国が再結合しようとしたらどうなるか、想像してみて欲しい)

それでは、ハンガリーの政治的軌跡について考えてみよう。1990年代当時、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランドをNATO、ひいてはEUに加盟させることは、リベラルな理想の勝利であり、これらの新米の民主政治体制国家が後退しないようにする方法だと考えられていた。ロシアはこれに満足していなかったが、私のような拡大懐疑論者(enlargement skeptics)でさえ、プロセスがそこで終わっていれば、モスクワは拡大の第一波を受け入れただろうと信じている。しかし、ハンガリー(そしてそれよりも低いレヴェルでポーランド)は、リベラルの永久的勝利となる代わりに、いわゆる非リベラルな民主政体の申し子(poster child)となった。民主政治体制の形式(選挙など)は維持するが、実質(法の支配[rule of law]、寛容[tolerance]、自由で公正な政治競争[free and fair political competition]など)は維持しない統治モデルである。ハンガリーはNATOEUを強くするどころか、両機関に執拗な棘を刺し、ドナルド・トランプのような独裁者になりそうな人たちにインスピレーションを与えている。1998年にNATOの拡大に賛成したとき、何人の米連邦上院議員がこのような結果を予想していただろうか?

イスラエルを例にして考えてみよう。数週間前に論じたように、1967年の六日間戦争(第三次中東戦争)におけるイスラエルの圧勝は、多くのイスラエル国民にとって奇跡的とも思える、紛れもない軍事的勝利だった。しかし、その勝利は、今やイスラエルの長期的な未来を脅かす危険の種をまいたとも言える。イスラエルの指導者たちが、この戦争で征服した土地を占領し、植民地化すると決めた時点で、イスラエルはもはやユダヤ人国家であると同時に真の民主政体国家でもあり得なくなった。数百万人のパレスチナ人を支配するアパルトヘイト(apartheid、人種隔離)制度を、そのような制度が必要とするあらゆる残虐性をもって構築するか、あるいは彼らに政治的権利を認めるかしなければならなかった。昨年の事例が示すように、このディレンマは時間の経過とともに悪化し続けている。

当然のことであるが、この現象は大きな戦争の後に繰り返されるテーマである。第一次世界大戦におけるドイツの敗北は、勝利した連合国にとって素晴らしい瞬間であったが、ヴェルサイユで結ばれた和平協定によって、再戦は避けられないまでも、その可能性は非常に高くなった。第二次世界大戦で枢軸国(the Axis)を阻止し、ドイツとイタリアのファシズムと日本の軍国主義を打倒したことは紛れもない功績だったが、この勝利はソ連が東ヨーロッパに共産主義を押し付けることを許し、中国で毛沢東が権力を握るのを助けた。そして、これらの出来事が40年にもわたる冷戦を生み出した。

冷戦が終結したとき、西側諸国民、とりわけアメリカ人は、共産主義の崩壊をあからさまな歓喜をもって迎え、その勝利が西側の核となる価値観の普遍的な魅力を示したと思い込み、ワシントンが現代世界で成功するための魔法の方程式を持っているという思い上がった信念にすぐに屈した。その結果、アメリカのイメージで世界を作り直そうとする誤った努力が、その欠点が明らかになった後も長く続いた。アフガニスタンでアフガニスタンのムジャヒディンがソ連を弱体化させるのを助けたことが、アルカイダの出現を促し、その後の911同時多発テロが最終的にアメリカをソヴィエト連邦を崩壊させたのと同じ泥沼にはめることになると、どれだけのアメリカ人が予見しただろうか。イラクにおける「任務完了(mission accomplished)」の瞬間や、リビアにおけるムアンマル・アル=カダフィの失脚についても同じことが言えるかもしれない。

勝利が時に失望への序曲(prelude to disappointment)になるとすると、敗北や挫折は、将来の指導者たちがそこから正しい教訓を学べば、明るい未来を告げることができるということになる。ドイツと日本のエリートたちは、第二次世界大戦の惨事から多くの正しい教訓を学び、その後の50年間、政治と外交政策へのまったく異なるアプローチから大きな恩恵を受けた。ヴェトナム戦争での敗北は、アメリカの指導者たちに「国家建設(nation-building)」という危険な誘惑(siren song)を避けることを教えた。悲しいことに、この教訓はジョージ・W・ブッシュと彼のネオコンサヴァティヴィズムを信奉するアドヴァイザーたちが権力を握る頃には忘れられていた。これらの事例やその他の事例は、国家が(そして人々が)時として成功からよりも失敗から有益な教訓を学ぶことを思い出させてくれる。しかし、必ずしもいつもそうという訳ではない。

なぜ偉大な勝利(great victories)は灰になるのだろうか? 古代ギリシャ人たちは傲慢(hubris)について警告した。それは、神々を怒らせ、英雄を悲劇的な結末(fatal flaw)に導く過度のプライドの致命的な欠陥である。それは確かに問題の一部に過ぎない。大きな勝利を収めた人は、自分自身を過大評価し、幸運(または対戦相手の誤り)が成功に果たした役割を無視する傾向がある。偉大な勝利はまた、非常に破壊的なものでもある。偉大な勝利は、各種の社会的勢力を動かし、予期せぬ結果が蔓延し、勝者の未来がどう展開するかを予測したり、自分たちに有利になるように操作したりする能力を混乱させる。

この教訓は、各国が野心的な外交政策の目標を放棄すべきだ、大きな夢を見てはならない、あるいは事態が好転する稀で素晴らしい瞬間を祝うのを控えるべきだということを教えているのではない。後者を期待することは、人間の本性について私たちが知っていることの多くを否定することになる。また、人は挫折からより多くのことを学ぶことがあるため、成功よりも失敗のほうが好ましいと主張しているのでもない。本当の教訓は、たとえ特異な成果や幸運の兆しであっても、歴史が私たちの味方であり、幸せな未来が保証されているという証拠として解釈しないということだ。

優れた投資会社ならどの会社でも言うように、実績は将来のリターンを保証するものではない。国際問題においては、成功はしばしば将来のトラブルの前触れである。従って、勝利は束の間味わうべきであり、その後は避けられない厄介な結果に対処することに注意を向けなければならない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt
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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 私はこれまで、21世紀中に世界覇権国の地位はアメリカから中国に移る、西洋中心の、西洋支配の世界構造は大きく変化する、現在は「西側(the West、ジ・ウエスト)対西側市街の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造になっているが、西側以外の国々が西側を凌駕する、別の表現をすれば、グローバル・サウス(global south)がグローバル・ノース(global north)を凌駕する、日本はアメリカ隷従を辞め、より独立した政策を行うべきだと主張してきた。実際に、中国は経済面において、これまでのソ連や日本よりも、アメリカに肉薄しており、逆転は既に指呼の間(しこのかん)にあると見られている。

 一方で、中国衰退論、中国崩壊論も根強い。2000年代に入り、中国が計勢視聴していく中で、毎年のように「中国経済は危ない」「中国は国家分裂する」という本が多く出続けて20年近くになる。しかし、実際には2010年に、GDPで中国が日本を逆転し、世界第2位となった。それから約15年の間で、中国のGDPの世界に占める割合は17.7%、日本は4.2%となり、中国が約4倍強となっている。アメリカは25.1%となっている。日本は2025年にはインドにも抜かれて世界第5位に転落する見込みだ。更に言えば、購買力平価(purchasing power parity、PPP)GDPで見れば、「中国、アメリカ、インド、日本、ドイツ、ロシア、インドネシア、ブラジル」の順番になっており、既に、ドイツ、ロシアに抜かれて、世界第6位になっているという話もある(インドネシアの勢いを考えると第7位にまで陥落するのも時間の問題だ)。中国よりも先に日本が崩壊する、いや、既に崩壊していると言えるかもしれない。

 それでも日本はバブル期にはアメリカを追い越すのではという勢いを見せていた。アメリカ全土の土地の値段が皇居の値段と一緒だということが盛んに喧伝されていた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン(Japan as No.1)」という言葉が盛んに使われた。しかし、儚い夢に終わった。アメリカが属国日本の増上慢を許すはずはなかった。あれから30年経過して、日本は不況のままである。少子高齢化は世界でも最高水準に達し、国家の維持も危うい状況に追い込まれている。

 中国は日本のこれまでの動きをよく研究している。高度経済成長も、そして、バブル経済からバブル崩壊、低迷までをよく観察し、教訓を得ている。中国は政府も国民も浮かれていない。「韜光養晦(目立たないようにして時間稼ぎをして力を蓄える、Hide one's talent and bide one's time)」戦略で力を貯めて、一気に世界の表舞台に躍り出た。しかし、それでも浮かれていない。既に人工知能や量子コンピュータなどの重要分野でアメリカを追い抜いている。それでも中国の若い世代は自分たちの未来を不安に思っている。外側から見るのとは違う評価をしている。それは、「世界覇権国になることの不安」「世界覇権国にすんなりとなることはできず大きな動乱が起きるかもしれないという不安」を持っているということだと考えられる。中国が崩壊することはない。中国は既に崩壊するには大き過ぎる存在になっている。しかし、これまでのような年率で10%を超えるような高度経済成長もまた難しいだろう(それでも西側先進諸国よりも成長率は高いだろうが)。このまま静かに進んでいくことになる。それに対して、「漠然とした不安」を中国国民は感じるだろう。これからの10年間は中国にとって大きな試練の時期ということになるだろうが、中国はそれを乗り越えていくだろう。

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中国は崩壊も繁栄もしていない(China Is Neither Collapsing Nor Booming

-上海に戻ると、私は将来への懸念を感じた。しかし同時に、この国の巨大な規模が重要な分野で発展するという鋼のような決意も感じた。

ハワード・W・フレンチ筆

2024年8月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/07/china-future-perceptions-economic-growth-great-power/

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上海のスカイラインの前でスクーターに乗る男性(2016年12月6日)

先週、ニューヨークからの長時間のフライトで疲れ果て、少し混乱していた私は、上海浦東国際空港に到着し、ホテルまで行くために手配したチャーターの車に乗り込んだとき、安堵感を覚えた。

身長に合わせてシートを調整し、リラックスするために背もたれにもたれかかりながら、私は運転手に、縁石から静かに発進した、印象的な布張りの車のメーカーについて尋ねた。「将来(Jianglai、ジャンライ)」と彼は驚いたように言った。中国語話者として、私はこの言葉が「未来(future)」を意味することを知っていた。これは単なる商標ではなく、比喩であった。

中国では、GAC Aion BYD など、世界のほとんどの人が聞いたこともない企業が製造した、気の利いた電気自動車が急速に溢れかえるようになっている。これは、世界最大の高速鉄道網から新しい空港や地下鉄システムに至るまで、この国が今世紀に誇る無数の近代化のほんの1つの事象に過ぎない。中国を訪れる多くの旅行者は、こうした表面的な変化を、21世紀に世界をリードする中国の運命の兆しと捉えて、深読み(overreading)する傾向にある。

私にとって危険なのはその逆だ。上海に住み、2000年代の大半、間違いなく最も急速に近代化した10年間に上海中を見て回り、それ以来定期的に上海を訪れている者として、私は新しいインフラやその他の目に見える変化に対して、あまりにあっけらかんとしすぎたり、あるいは色あせたと感じたりしないように警戒しなければならないようだ。

そのため、走り始めて10分か、15分ほど経った頃、ふと気がつくと、そこは市内に向かう見慣れた普通の高速道路ではなく、中央分離帯の上に高架線が浮かんでいる超高速磁気浮上式鉄道(ultra-fast magnetic levitation train)のある高速道路だった。待って欲しい、もしかして、上海は街に向かって2本目の高速道路を建設したのだろうか? 急に落ち着かなくなった私は運転手に尋ねてみた。この高速道路は経済の奇跡の一例ではない。ただ、今まで一度も乗ったことがなかっただけだった。

私は、上海滞在中に多くの会話をしたが、その中で、中国について考えるときに、目が覚めたりうんざりしたりする視点はどちらも正当ではないということを、初めてではないが思い出させられた。彼らの中には、学者やビジネスマンなどの外国人と一緒に過ごした人もいる。外国人の間では、経済の減速、急速な高齢化と人口減少、変化に非常に抵抗しているように見える政治スタイル、緊張と競争の激化する地政学的環境など、中国の増大する課題について議論する傾向が高まっている。しかし、外国人で私が会った人たちは往々にして、中国には、更なる経済成長と世界的な力を達成するための大きな風がまだ残っていると信じているようだ。

もう1つの会話は、より多く、私にとって興味深いものであったが、それは中国の若者たちとの会話であった。大人たちと若者たちの2つのグループについて、私は一般論を述べているが、後者について印象的だったのは、彼らが自分たちの将来についてどれほど心配しているかということだ。彼らの多くは、2000年代から2010年代にかけてピークを迎えた中国の黄金時代を過去のものと考えている。そして、この国のモデルが、ここ数十年のような規模で、経済的な進歩や個人的な充足の機会を提供し続けることができるのかどうか、疑念を抱いている。(こうした過去の成果を定量的に知るには、社会学者ワン・フェンの新著を取り上げた最近のコラムをお読みいただきたい)

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ↓ 「中国の経済発展は指導者たちも予測できていなかった:高度経済成長のピークは過ぎたと考えられるが西側の衰退で必然的に世界最大の経済大国に(既になっているとも)」(2024年6月25日付) 記事へはここをクリック

「私はとても心配している」とある若い男性が会話の中で私に語った。これは、他の人たちと私がした会話と同じような内容だった。この男性は続けた。「現在、良い仕事を見つけるのは本当に、本当に難しい。十代と二十代の人々に対する競争の圧力は巨大だ。同時に、命は非常に高価なものになった。このため、私と同じように、多くの人がこの国を離れたいと思っている。私の友人のほとんどもそうしたいと思っている」。

最近、若く、才能があり、教育水準が高く、裕福な中国からの移民が増えていることは、逸話的ではあるが、有力な証拠となっている。アメリカとメキシコの国境で最近見られる光景は、伝統的に農村部や都市部の貧困層が牽引してきた中国移民の歴史的な姿とは全く異なることを示している。国境を越えてアメリカに移住する中国人をテレビや紙面で取材すると、中流階級の人々の割合が高く、長年の教育の証である英語を話せるようになっていることが多い。

北京がこのことを心配し始めている兆候はたくさんある。例えば、中国は最近、少なくとも限定的な規模ではあるが、ワシントンと協力し、不法移民として摘発された自国民の空路での送還を受け入れるようになった。中国はもちろん、このような移民がもたらす、頭脳と資金の流出を懸念しているが、政治的な意味合い、つまり、国の方向性や統治に対する信頼の欠如が、いわば足で投票するような事態を引き起こしていることにも不安を感じているのではないだろうか。つまり、国の方向性と統治に対する信頼の欠如が、いわば足で投票することを引き起こしているのだ。もちろん、「移住(zouxian、ゾウシイァン)」移民にとっては、これはかなりの出費であり、個人的な苦難と危険を伴う。

もう1つの主な会話は、中国の学者たちとのもので、彼らは中国と先進諸国、特にアメリカとの間にますます緊張が高まっていることを指摘した。そのうちの1人が、戦後、高所得国の地位を獲得してきた国家の歴史とは、アメリカと良好な関係を維持してきた国々に限られている、と発言して私を驚かせた。この若い研究者は、北京はワシントンとのより良い関係を維持できなかったという根本的な間違いを犯していないだろうか、と声を大にして疑問を呈した。

この議論の間、私は議論を活発にするように、異論を唱える役割(devil’s advocate)を果たそうとして、両国間の緊張は中国政府の行動の産物だけではなく、アメリカにも大きな責任がある、と述べた。私は、西側諸国の多くは、中国が第一級、更には傑出した大国になりたいと願うことがいかに普通なことであるかを理解できていないと付け加えた。このテーマについては、私が2017年の著書『天の下の全て(Everything Under the Heavens)』で取り上げた。この本の中で、私は、中国は世界の人口のおよそ5分の1を誇り(米国の人口は4%強)、その歴史のほとんどにおいて、中国は世界最大の、そして多くの意味で最も先進的な経済を誇っていたと指摘した。この若い学者は感情を露わにすることなく次のように述べた。「歴史なんてどうでもいい。私はいつでももっと良い外交戦術について考えたいのだ」。

これらの会話の最後に、私ははるかに年上の中国人学者に、米中両国間で激化するテクノロジー戦争(tech war)について尋ねた。この戦争において、アメリカは、中国による最も洗練されたマイクロプロセッサ製造装置や、Nvidiaのような企業の高度なグラフィックスチップ、人工知能テクノロジーへのアクセスを制限しようとしてきた。

この学者によれば、西側諸国は中国を大いに誤解しており、世界における中国の地位を過小評価しているという。このことは、北京がこれらの技術を独自に構築するために、更に努力し、最終的に勝利することを後押しするだけである。彼は、中国が全面的に勝つと予測している訳ではないと明言した。彼が私に言い残したのは、西側諸国からの反感は、北京が重要だと考えるあらゆる分野でリードしていきたいという、以前からの願望を助長するということだ。

中国は産業政策や国家主導の投資を倍増させるだろうと彼は言った。これらの多くは、長期的には見当違いであったり、非効率的であったりするだろう。しかし、国富(national wealth)だけでなく、人材(human talent)の面でも莫大な資源を持つ中国のような規模の国では、その多くが成功し、今後数十年にわたって欧米諸国の競争相手にやりたい放題になるだろう。私が確信を持って言えることは、私たちは皆、波乱に満ちた、コストのかかる、そしておそらく危険な道を歩むということだ。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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