古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:中国

 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領がカナダやメキシコをアメリカに併合するというような話をしていた時、私たちはいくらなんでも、そんな馬鹿なと考えていた。しかし、ヴェネズエラ攻撃の後、グリーンランド領有の話をするトランプ大統領に対しては恐怖感を持つようになっている。「狂人理論(madman theory)」という考えもあるが、「こいつには常識が通じないから何をしてくるか分からない」と怯えさせて、こちらの意向を飲ませるというやり方もある。しかし、トランプ大統領と側近たちは本気のようだ。彼らはネオコンもやらなかったようなことをやろうとしている。

 2025年、第二次ドナルド・トランプ政権発足1年目は、世界は、トランプをなだめすかしてごまかして時間を稼いで、任期の終わりまで何とか無事に過ごそうと考えていた。お金で済むことならばある程度は仕方がないという感じであった。ヨーロッパ諸国の防衛予算の増額や高関税政策への対応がそうであった。ちなみに、トランプ関税の増加分の負担は、外国の企業が4%、アメリカの消費者が96%だったという研究結果もある。トランプ関税はアメリカの消費者からお金を巻き上げるということになった。インフレ状況であればそれも当然である。

 2026年は世界にとって大きな転換の年である。それまでのアメリカとは大きく異なるアメリカが出現した。自分たちの欲望を前面に出し、大義名分も理屈も装うことなく、自分の利益のためにまい進する超大国が出てきた。アニメ「ドラえもん」のガキ大将であるジャイアンそのものである。そして、自己利益の追及の為なら、自分の評判や将来の利益など考慮することなく、軍事力まで使用する。アメリカは静かに消え去ってくれることはない。ゴジラのように散々暴れまわることだろう。暴れまわるアメリカに対応するために、世界は団結することになるだろう。映画「インディペンデンスデイ」のように、宇宙からの脅威に対して、世界が一致して立ち向かったように。

 世界は、中国という新興大国が呉氏らのように暴れまわると考えていた。しかし、実際には、アメリカがそのようになった。私たちはそのような時代に生きている。日本の行く末についてはよくよく考慮するべき時であろう。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の空想的な地政学(Trump’s Fantastical Geopolitics

-ホワイトハウスの攻撃的な姿勢はすでに他国に数の力(strength in numbers)を求めるよう迫っている。

ハワード・W・フレンチ筆

2026年1月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/13/trump-china-venezuela-geopolitics/

数年前、台頭する中国が世界大国としての自己イメージをどのように構築しているかを扱った書籍を調査中、突如として露骨な地政学的野心を示すリスクを描いた寓話に出会った。あまりにも衝撃的だったので、長々と引用した。ここでも改めて引用する。

戦略家エドワード・N・ルトワックによるこの一節に込められた比喩表現は、今もなおその力強さを失っていない。しかし、今日特に際立っているのは、それが適用される世界がいかに変化し、指導者たちの役割がいかに徹底的に入れ替わったかということだ。

「極度の肥満体のミスター・チャイナが、混雑したエレヴェーターに乗り込んだ途端、乗客は自己防衛のために反応せざるを得ない。彼が猛烈に太っていき、壁に押し付けられるような状況では、たとえ彼が全く威圧的ではなく、むしろ愛想が良いとしても。確かに、混雑したエレヴェーターには、ミスター・チャイナよりも太っていて、声が大きく、しばしば暴力的なミスター・アメリカが既に乗っていた。しかし、彼が長年同じ乗客だったというだけの理由で、ほとんど全員が何十年にもわたって、彼の騒々しい体格に満足のいく形で慣れ親しんできたのだ…」。

ルトワックのエレヴェーター・シナリオは、不快なボディ・イメージを伴い、10年以上前に発表されたものだ。急速に台頭する中国への不安が高まっていた時期のことだった。当時、世界最大の人口を誇り、四半世紀にわたる驚異的な経済変革の記録を持つ中国は、多くの人々を不安にさせていた。もちろん、これにはアメリカを筆頭とする西側諸国も含まれていた。彼らは長年、自国の圧倒的な富と、それが支える広範な力と影響力に慣れきっていた。当時、彼らは中国がひたひたと迫りくるのをバックミラー越しに不安げに見守るしかなくなっていた。

ルトワックが当時述べたように、中国は依然として親しみやすさを備えていたかもしれないが、「全く脅威ではない​​entirely unthreatening)」とは程遠い存在だった。ルトワックが描写したように、既に満員のエレヴェーターに特大の乗客が乗ったような感覚は、日本や東南アジアの海洋国家といった中国の近隣諸国にとって、時に息苦しささえ感じさせた。中国が新たな外洋海軍(a new blue-water navy)に投資し、周辺地域のほぼ全域における超法規的な領有権主張を強めるためにそれを利用し始めたことで、彼らは公然と脅迫されていると感じていたのだ。

当時から最も大きく変わった点が2つある。1つは、いわゆるエレヴェーターの乗客のほとんどが、中国の重圧に慣れてきたことだ。もう1つは、驚異的な経済成長がやや鈍化し、そしてさらに重要なのは、衝撃的な現実としてではなく、より現実的な視点で見られるようになったことだ。また別の1つの点は、もちろん、ドナルド・トランプ大統領率いるアメリカ合衆国の驚くべき振る舞いである。

2017年に自著『天下の万物:過去が中国のグローバルパワー獲得をどう形作るのか』を執筆した際、アメリカに対し冷静さを保つよう助言するのは当然のことのように思えた。アメリカにとって最善の道は、自国の秩序を維持することだと私は助言した。それは、科学と教育における卓越した強みに継続的に投資しながら、世界に対して比較的開かれた姿勢を維持することを意味する。ワシントンは、中国の新たな力に過剰反応し、より攻撃的な行動をとったり、軍事力を過度に重視したりするといった過ちを犯すべきではない。むしろ、同盟関係を強化し、国際法を強化すべきである、というものだ。

こうしたことが、世界におけるアメリカの魅力を再び高め、中国に対しては、非常に有利な条件で競争ができるということになる。これには、ソフトパワー(soft power)、民主政治体制(democracy)、法の支配(the rule of law)、そして世界のどこの国から来たとしても才能と勤勉さを持つ人々を喜んで受け入れることが含まれる。中国はこれらの最近のいくつかの項目ではほとんど何もしていないが、外交的には控えめにしながらも将来の競争力の頭金として教育システムを強化し、自国の強みに継続的に再投資してきた。

2期にわたる断続的な大統領としての任期中、トランプは事実上、あらゆる面で正反対のことをしてきた。しかし、私にとって、ルトワックの色彩豊かな寓話がここ数週間でようやく強く蘇ってきた。

ナイジェリア、シリア、ヴェネズエラといった地理的に遠く離れた国々での過剰な攻撃行動(ヴェネズエラでは、トランプはニコラス・マドゥロの拉致を命じた後、自らを「大統領代行(acting president)」と宣言した)や、イランなどの国々へのさらなる攻撃の脅威など、今やアメリカは多くの国々をエレヴェーターの壁に押し付けている。ルトワックの比喩によれば、中国は主に経済成長によって拡大してきた。二期目のトランプ政権下では、ワシントンは全く異なる方法で拡大を模索し始めた。それは、世界で富と力(wealth and power)を競い合う国家の最初の本能が領土拡大であった帝国時代(the imperial age)を彷彿とさせるものだった。こうした結果、エレヴェーターの寓話が書かれた時代にはほとんど想像もできなかった事態が生じた。今日では、世界の現状維持勢力として登場するのは、アメリカよりも中国であることが多い。

その最も顕著な例は、トランプが最近グリーンランド領有権を主張し始めたことだろう。これは、アメリカのイメージをならず者国家(a rogue nation)へと作り変えかねない。簡単であろうが難しかろうが、何とかして領有権を獲得すると誓う彼の言葉は、伝統的な外交というより、ハリウッドのギャングの台詞を彷彿とさせる。そして、これは最終的にワシントンとヨーロッパの関係を崩壊させ、ますます警戒を強める同盟関係を、より状況に応じた、そして潜在的に距離を置くものへと変貌させる恐れがある。

トランプがロシアのウラジーミル・プーティン大統領を好意的に見ているように見えること、そしてそれに伴い、包囲されているウクライナへの曖昧な支持を表明していることからも分かるように、これが彼の当初からの目標だったのかもしれない。このアメリカ大統領は、体系的な思考力や長期的なヴィジョンを持つ人物として、私には決して印象に残っていないが、論理的に結論づければ、ルトワックのシナリオは、急速に変化する世界で何が起こるかについて多くのことを示唆してくれる。そして、こうした変化の一部は、実際に既に始まっている。

既に満員のエレヴェーターの中で、ある乗客が攻撃的な態度を取り始め、鋭い肘を突きつけ、顔に向かって咳き込み、常識を完全に無視した行動をとった場合、他の乗客はいずれ反撃せざるを得なくなる。トランプが国際法など関係なく、自らの「道徳観(morality)」にのみ縛られると宣言した後、世界はまさにこの現実に気づき始めている。特に初期段階では、反撃は様々な形を取り、必ずしも攻撃的な行動を真似る必要はない。この巨大な存在に単独で立ち向かう勇気を持つ者はほとんどいないだろう。しかし、国際関係の用語で言えば、彼らは数の力(strength in numbers)を求め、不満を抱えた近隣諸国や、場合によっては直接の仲間ではない同情的な乗客と連携を組む。

これが、ヨーロッパが最近、長らく遅ればせながら南アメリカとの貿易協定を締結したことの、少なくとも部分的には意味するところだ。この論理は「ヘッジング(hedging)」と呼ばれている。これは、長年のパートナーシップが疑問視されたときに各国が行うことであり、誇大妄想に屈しているように見えるトランプ大統領への反応として、世界中でこのような行動がますます増えることが予想される。

もう1つ、より分かりにくく、かつ意外な例として、トランプが熱心に働きかけてきた石油大国サウジアラビアが、空軍向けに中国製戦闘機の購入交渉を進め、核兵器保有国のパキスタンと戦略的相互防衛協定を締結したというニューズが挙げられる。現大統領トランプの下、ワシントンはサウジアラビアに対し、アメリカの最新鋭戦闘機を含め、事実上あらゆる兵器を売却する用意を示してきた。問題は、トランプの気まぐれで攻撃的な言動が、他の国々と同様にサウジアラビアを不安にさせていることだ。

ラテンアメリカは、富、技術革新、技術、製造力、人口、そして考え得るほぼ全ての重要な競争指標において、NATO、日本、韓国といったアメリカの伝統的な緊密な同盟諸国と比べて見劣りする。これは、アメリカが長らく後回しにしてきたラテンアメリカへの再投資に反論するものではない。しかし、トランプ政権下のアメリカが地政学的な拠点を自国中心の半球に据えることで、より豊かで強力な国になるという考えは全くの愚策である。

しかし、さらなる問題が生じる。ヴェネズエラで行ったように、そしてコロンビア、メキシコ、キューバで脅威を与えているように、ラテンアメリカで影響力を行使することで、アメリカは自国の裏庭(backyard)にも、アメリカに対するさらなるバランシング(balancing)をもたらすことになる。それは時間の問題だ。

※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.socialXアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権は国内外で不安定な状況を作り出している。ヴェネズエラ攻撃を利用して、他国に脅しをかけている。グリーンランドの領有の意思を隠さずに、堂々と主張している。グリーンランドにアメリカ軍を派遣するということになれば、対ロシアの防衛同盟としてのNATOが瓦解する。卑近なたとえをするならば、「みんなで防犯組織を作ったら、仲間内から泥棒が出た」ということになるからだ。

 国内ではICE(アメリカ移民関税執行局)による不法移民取り締まりがアメリカ国内の緊張を高めている。ミネアポリスでICEの捜査員による女性の射殺事件が発生し、ミシガン州知事ティム・ウォルツは州兵の出動待機命令を出した。ICEの捜査員と一般市民の小競り合いも各地で頻発している。これがいつ更なる暴力事件から武力衝突、内戦にまで発展するか分からない。私たちは世界の大きな構造転換に直面している。アメリカの衰退がそのきっかけである。

 そうした中で、私たちが住む日本、そして東アジアと隣接する東南アジアは平穏を保たねばならない。それは、世界の経済成長エンジンであり、今や世界を支える地域になっているからだ。そこで残念なのは日本の状況だ。高市早苗首相という地政学リスクを抱え、アジアに不安定な状況をもたらしている。その高市首相の支持率が70%超えという日本国民は客観的に見て、馬鹿でアホでどうしようもないということになる。自分の頭絵で考えることを知らず(教えられてこなかったのだから仕方がないとは言え)、上から言われたとおりに生きて死ぬだけの存在だ。高市首相は解散総選挙を選択したが、高市首相を退陣させることができるかどうか、期待はできない。日本もアメリカと一緒に衰退し、沈んでいくしかないようだ。世界は大きく変化しようとしている。残念なことだが、アメリカと日本はその変化で負け組として衰退するしかない状況だ。せめて、個人個人で自分の置かれた状況を考慮して最善の方策を選択するしかない。

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ドナルド・トランプは世界にアメリカを恐怖することを教えている(Trump Is Teaching the World to Fear America

-数十年かけて築き上げてきた善意(goodwill)が今や無駄になっている。

ファリード・ザカリア筆

2026年1月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/09/trump-fear-united-states-alliances-global-power-balance/

歴史を通して、最も力強い国は往々にして友好国を見つけるのに苦労してきた。ある国が支配的になると、他国はそれに対抗しようとする。東ヨーロッパにあるロシアの隣国群を見れば、世界が認めてすぐに、NATOに加盟した。アジアにある中国の近隣諸国を見れば、日本、インド、オーストラリア、ヴェトナムなどが、北京の台頭を受けて、アメリカとの、そして互いの安全保障関係を着実に強化してきた。

しかし、アメリカを見てみると、この理論は揺らぎ始める。

アメリカは世界で最も強力な国だが、最も豊かで能力のある国の多くはアメリカに対抗するのではなく、同盟国となっている。彼らは核心的な安全保障問題においてはアメリカに従っている。アメリカの軍隊を受け入れている。自国の軍隊をアメリカと統合する。これは近代史の長い流れの中では普通のことではない。むしろ、非常に特殊なことだ。

それなぜか? それはアメリカが聖人のよう(saintly)だからではなく、しばしば古典的な覇権国(a classic hegemon)とは一線を画す行動を取ってきたからだ。第二次世界大戦後の80年間、アメリカは往々にして、その力強さを他国が受け入れ可能なもの、すなわちルール、制度、そして正統性(rules, institutions and legitimacy)へと変換しようと努めてきた。属国体制(tributary systems)ではなく同盟関係(alliances)を築き、たとえそれが不十分な場合であっても、集団安全保障、自決、自由な商業活動(collective security, self-determination, open commerce)といった諸原則を掲げてきた。

アメリカの一極主義の象徴としてしばしば挙げられるイラク戦争について考えてみよう。私はあの戦争の賢明さを擁護している訳ではない。国際システムに対するアメリカの姿勢について、より大きな視点で論じているのだ。ジョージ・W・ブッシュ政権は2002年に連邦議会の承認を求め、承認を得た後、国連に訴え、安全保障理事会決議1441号の成立に貢献した。また、この取り組みを支持する49カ国からなる連合も結成した。ワシントンは、この主張を表明し、パートナーを集め、他国に広く受け入れられる根拠を探る必要性を感じていた。

力を正当性へと変換しようとする努力こそが、アメリカの優位性の隠れた柱(the hidden pillar of American primacy)である。アメリカが脅迫者(a shakedown artist)ではなくルールメイカー(a rulemaker)として行動するとき、恐怖よりも価値のあるもの、すなわち同意(consent)を得ることになる。同意こそが覇権をリーダーシップへと、そしてリーダーシップを他国が他の選択肢よりも好ましいと考えるシステムへと変える。また、バランスを取ろうとする衝動を燃え上がらせないのも同意である。

そして、まさにヴェネズエラの出来事が今、危険に晒しているのはまさにこのことだ。ニコラス・マドゥロへの襲撃そのものではなく、アメリカ外交政策におけるこの断絶を特徴づけているのは、法、規範、同盟、そしてアメリカの外交政策に対する完全な無視(disregard for law, norms, alliances and diplomacy that mark this break in American foreign policy)である。

CNNのインタヴューで、ホワイトハウスのスティーヴン・ミラー大統領次席補佐官は、「アメリカ合衆国がヴェネズエラを統治している」と断言し、「国際的なお世辞(international niceties)」を一蹴し、世界は「強さ・・・力・・・権力」、つまり歴史の「鉄則(iron laws)」によって支配されていると主張した。一方、ドナルド・トランプ大統領は、ヴェネズエラが「移行(transition)」を迎えるまでアメリカが統治し、石油を奪取すると述べた。これは、アメリカの国庫を潤すための露骨な侵略行為(a naked act of aggression to benefit America’s coffers)だった。

もしあなたがカナダ人、ドイツ人、韓国人、あるいはメキシコ人なら、ミラーの言葉に恐怖を覚えるだろう。それはアメリカがオタワやベルリンに侵攻しようとしているからではなく、論理が変わった(the logic has changed)からだ。アメリカの力は、他国が受け入れることができるより広範な原則、民主政治体制、集団安全保障、ルールに基づく秩序(democracy, collective security, a rules-based order)のために使われるという主張はもはや存在しない。力には力に基づいた行動を取る権利がついてくるという主張だ。つまり、力があるから支配するのだ、という議論だ。これがまさに近隣諸国を不安にさせる大国の行動(great-power behavior)である。

トランプはこの作戦を正当化するためにモンロー主義(the Monroe Doctrine)を持ち出した。モンロー主義は1823年以降、反帝国主義的(anti-imperial)なもの、つまりヨーロッパによる西半球への植民地主義的な介入を阻止することを目的としていた(aimed at preventing colonial-style interventions by Europe in the Western Hemisphere)とよく考えられていたことを忘れてはならない。モンロー主義がラテンアメリカ全域へのアメリカの侵略を容認するものへと変化したのは、その後、特に1904年にセオドア・ルーズヴェルト大統領が同様の政策(President Theodore Roosevelt’s corollary)を採択したことによる。アメリカ帝国主義のこの栄華は長くは続かず、地域にとってもアメリカの評判にとっても良い結末にはならなかった。

過去40年間、共和党と民主党はラテンアメリカ地域に対する新たな超党派的アプローチを構築した。これはラテンアメリカ諸国が軍事政権から民主政治他一世へ移行する動きを後押しし、貿易・投資・制度改革支援を促進し、各国と連携して麻薬問題や移民問題に対処した。メキシコはこの転換の象徴だ。かつてワシントンへの深い不信感で定義づけられていた国が、密接なサプライチェインと日常的な法執行協力で結ばれた、アメリカにとって最も緊密な経済パートナーの1つとなった。(そして、21世紀の大半において、メキシコ人によるアメリカへの純移民数はほぼゼロに近い状態が続いている。)

メキシコ人による米国への純移民数はほぼゼロに近い状態が続いている。)

この数十年にわたり築き上げられた戦略的資本(strategic capital)が今、浪費されつつある。そして長期的には、国際舞台で完全なる利己的な捕食者のように振る舞うアメリカは強くなるどころか、孤立を深めるだろう。同盟諸国はヘッジし、パートナーは代替案を模索し、中立国は徐々に距離を置く。歴史が常に予見してきたバランシング(balancing)が遂に訪れるかもしれない。それはアメリカが弱体化したからではなく、自らの強さの真の源泉を忘れたからだ。

トランプ政権の志向は、アメリカをプーティンのロシアのように振る舞わせることにあるようだ。露骨に自国の利益を追求する攻撃的な国家として振舞う。そしてミラーが指摘するように、歴史の大半において強大国はそう行動してきた。アメリカを除いてはそうしてきた。アメリカは、紆余曲折と多くの過ちを伴いながらも、過去80年間にわたり異なる道を歩み、新たな世界を築き上げてきた。その世界が今、無謀にも解体されつつある。

※ファリード・ザカリア:CNN「ファリード・ザカリアGPS」司会者。著作も多く、最新刊は『』。『ワシントン・ポスト』紙に各週でコラムを掲載し、それは『フォーリン・ポリシー』誌にも掲載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領夫妻拘束連行は世界に衝撃を与えた。私も「トランプはどうしてそんなことをやったんでしょうか」「アメリカはどうなるんですかね」といった問い合わせをいただくことがある。トランプが主張するドンロー主義(Donroe Doctrine)は、1830年代のジェイムズ・モンロー大統領のモンロー主義(南北アメリカ大陸からスペインとイギリスの影響を排除する)と、1900年頃のセオドア・ルーズヴェルト大統領(と先代のウィリアム・マッキンリー大統領)が採用した棍棒外交(中南米諸国に対して武力行使をちらつかせ、また実際に行使してアメリカに従わせる)を混合した外交政策の基盤となる原理ということになる。そして、これこそが「アメリカ・ファースト」(アメリカの利益が最優先)ということになる。

 こうしたドンロー主義に対して、懸念の声が出てくるのは当然のことだ。国外から一気に首都を急襲するという方式は、1979年から1981年にかけて起きたイランのテヘランのアメリカ大使館人質事件(Iran Hostage Crisis)において、人質救出作戦として立案されたイーグルクロー作戦(Operation Eagle Claw)と似たような形である。イーグルクロー作戦は天候に恵まれず失敗し、アメリカ大使館人質事件は当時のジミー・カーター大統領の再選失敗の最大の原因となった。もし、今回のヴェネズエラ急襲作戦が失敗していれば、トランプ大統領と政権にとって致命的な傷となったことだろう。今回の成功は幸運だったと言える。

 懸念されるのは、今回の成功に味を占めて、成功体験に浮かれて、他国にも同様の攻撃を行う可能性があることだ。メキシコやグリーンランド、パナマにアメリカ軍部隊を侵入させるということは今のところ考えにくいが、可能性がゼロではない。また、そのような可能性を相手側に考慮させることで、アメリカ側の交渉力を上げ、意向に従わせようとする可能性もある。短期的にそれが成功しても、中長期的に見て、それが成功となるかどうかは分からない。アメリカのならず者のような行動は他国からの反感を買い、忌避を生み出す。そして、相対的に、中国とロシアの評価を上げることになる。

国際関係論では、「バランシング(balancing)」と「バンドワゴニング(bandwagoning)」という考え方があるが、脅威となる国が出てきたときに他国が一緒になって対抗することを「バランシング」、脅威となる国に味方することを「バンドワゴニング」という。アメリカに対抗できるもう一つの軸として、著書やブログでも何度も紹介してきた、中国とロシアを中心とするBRICS諸国を中核とする「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」による「バランシング」が起きる可能性が高い。アメリカは予期しているよりも影響力を行使できないということになる。そうなると、国際的な孤立を招くということになる。今回のヴェネズエラ急襲成功が結果として大きな損失を生み出すということも十分に考えられる。

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ヴェネズエラはドナルド・トランプ大統領の運が尽きる場所になるかもしれない(Venezuela Might Be Where Trump’s Luck Runs Out

-トランプ大統領は、支持基盤内部の極めて強硬な派閥とハト派の間で綱渡りを続けている。

エンマ・アシュフォード筆

2026年1月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/venezuela-trump-us-military-intervention-regime-change-south-america/

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(右から)ドナルド・トランプ米大統領、マルコ・ルビオ国務長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、ピート・ヘグゼス国防長官がフロリダ州パームビーチにあるトランプの邸宅マール・ア・ラーゴからヴェネズエラにおける米軍の作戦を監視する(2026年1月3日)

国境の南側へのアメリカの軍事介入は、野球やアップルパイと同じくらいアメリカ的だ。1914年、ウッドロウ・ウィルソン大統領はアメリカの経済的利益を守るため、メキシコのベラクルスを占領するために軍隊を派遣した。冷戦時代、アメリカはキューバからニカラグア、グアテマラ、パナマに至るまで、公然と、あるいは秘密裏に、様々な政権転覆作戦(overt and covert regime change operations)を実行した。さらに最近の1994年には、クリントン政権がハイチに侵攻し、退陣したジャン=ベルトラン・アリスティド大統領を復帰させた。

それにもかかわらず、先週末に見られたような、事実上の武装誘拐(an armed kidnapping)とも言える指導者交代を、アメリカの政権が公然と、そして誇らしげに行っていることは衝撃的だった。これらの行動が選択された理由に関する公式の説明には、ほとんど策略がなく、この攻撃を何らかの国際法に組み込もうとする真摯な試みもなかった。むしろ、ドナルド・トランプ政権は事実上、アメリカの利益の優先性を主張した。ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、移民の阻止、麻薬の流入の防止、そしてアメリカの石油会社によるヴェネズエラの豊かな油田へのアクセスの許可を妨害したという主張であった。

提示された数々の論拠は、2003年のイラク侵攻の直前、政権が既に決定していた行動を正当化する様々な理由付けを次々と提示した状況を彷彿とさせる。しかし、これさえも誤解を招く。ヴェネズエラに関する説明は、ジョージ・W・ブッシュ政権が夢見ることしかできなかったようなスピードで、国際法の建前を無視して提示された。少なくともジョージ・W・ブッシュ大統領は、最終的にそのプロセスを無視する前に、国連安全保障理事会の承認(U.N. Security Council authorization)を求めた。

ここでも、提示された論拠はどれも真に説得力がない。アメリカは世界最大の産油国であり、ヴェネズエラ産の原油供給過剰(a glut of Venezuelan oil)は、世界的な価格下落によって、テキサス州などの産油地にさえ悪影響を及ぼしかねない。アメリカ国内で死者を出している薬物のほとんどは、ヴェネズエラ産ではない。そして、アメリカの法執行機関は、たとえ有効な令状があっても、通常は海外で軍事行動を起こすことはない。

実際には、これは明らかにアメリカの力、そしてこの地域を支配する必要性を誇示するための演習となった。マドゥロ大統領はトランプ政権に繰り返し反抗し、カリブ海における圧力と軍備増強にもかかわらず、権力を手放して快適な亡命生活(a comfortable exile)を送ることを拒否してきた。マドゥロ大統領の継続的な抵抗に、たとえドナルド・トランプでさえ、アメリカの譲歩(U.S. concessions)によって乗り越えられる可能性は、常に低かった。トランプは、アメリカ大統領の中でも、ハイリスクな状況においてブラフを仕掛け、譲歩する姿勢で知られている。

これは、トランプ政権が最近発表した国家安全保障戦略において、いわゆるモンロー主義のトランプ系(Trump Corollary to the Monroe Doctrine)が提示されたことを考えると特に当てはまる。この戦略は、中国などの西半球外の勢力を締め出し、「西半球に軍事力やその他の脅威となる能力を配置する能力、あるいは戦略的に重要な資産を所有・管理する能力(the ability to position forces or other threatening capabilities, or to own or control strategically vital assets, in our Hemisphere)」を否定することを約束している。この文書が不吉に約束しているように、アメリカは「各国が私たちを第一選択のパートナーと見なすことを望んでおり、(様々な手段を通じて)他国との協力を阻止するつもりだ(nations to see us as their partner of first choice, and … will (through various means) discourage their collaboration with others)」。

マドゥロの拘束はまさにこの目的にかなうものであり、中国とロシアに西半球への介入を避けるよう求めるシグナルを送る可能性もある。また、複数の政権当局者によるキューバとメキシコに関する発言が示唆するように、これは他の地域内の諸国政府にも、移民問題、麻薬問題、あるいは他国との協力といった問題で協力を求めるシグナルを送ることになる。もし協力しなければ、アメリカによる懲罰的攻撃(a U.S. punitive strike)を受けるリスクがある。これは非常にリスクの高い戦略だ。今回の襲撃が計画通りに進まなければ、トランプ政権は期待していたよりも弱体化してしまう可能性がある。

おそらく最大の問題は、今回の襲撃をトランプのより広範な外交政策の文脈でどう解釈するかということだ。一部の人々はこれを政権内の1つの派閥の勝利(the triumph of one faction inside the administration)と解釈し、「タカ派が勝利している(The hawks are winning)」と簡潔に報じた。そして、この作戦の顔は明らかにタカ派のマルコ・ルビオ国務長官であることは事実だ。外国の政権交代を長年批判してきたJD・ヴァンス副大統領は、この襲撃を支持しているものの、襲撃に関する写真や記者会見には出席しておらず、その理由については安全保障に関する漠然とした発言のみで説明している。

しかし、トランプの側近であるタカ派やネオコンもこの状況に不満を抱いている。大統領は記者団に対し、民主派野党の有力候補であるマリア・コリーナ・マチャドには、近いうちにヴェネズエラで政権を掌握するために必要な支持がないと述べた。ルビオ長官もすぐにこの見解に同調した。政権当局者たちは、マドゥロの副大統領であるデルシー・ロドリゲスが政権移行に向けて政権と協力すると見込まれていると述べており、この作戦は民主政治体制を促す政権交代(pro-democracy regime change)というよりも、非協力的な指導者を排除すること(removing an uncooperative leader)が目的であることを示唆している。

このように、マドゥロ襲撃は、その行動は攻撃的かつ野心的であると同時に、政治的目的は非常に限定的である。この点において、これはおそらく2025年6月のトランプによるイラン核施設への攻撃に最も類似していると言えるだろう。どちらのケースでも、トランプはアメリカの軍事力の強力なデモンストレーションを行う一方で、911以降のアメリカの軍事介入の多くを悩ませてきたエスカレーション、混乱、そして意図せぬ結果(the escalation, chaos, and unintended consequences)を回避しようと努めた。つまり、彼はアメリカがほとんど何の責任も負わない武力行使を行えるという主張を試しているのだ。

このアプローチは、政権内の対立する諸派閥の間を縫うように進められ、ネオコンやレーガン主義の残党(Reaganite holdovers)が渇望する軍事行動を許容しつつ、介入主義(interventionist)に消極的な支持基盤に対しては、アメリカがイラク戦争のような惨事を再び招くことはないとの安心感を与えようとするものだ。これまでのところ、この戦略は功を奏している。しかし、政治的にも地政学的にも、依然として非常にリスクの高い戦略であることに変わりはない。トランプ大統領は幸運だった。イランへの攻撃は事態の大幅なエスカレーションにはつながらず、マドゥロ政権の掌握は今のところヴェネズエラを混乱に陥れたようには見えない。

しかし、だからといって、大統領が将来、例えばメキシコやグリーンランドで同様の攻撃を行った場合、その影響を回避できる能力がアメリカへの逆風に容易に転じないという保証はない。そして、トランプ大統領がこうしたアメリカの武力行使を繰り返せば繰り返すほど、そのどれかが壊滅的な結果を招く可能性が高まるのだ。ヴェネズエラでは、それは軍事クーデター、国家崩壊、あるいはより広範な難民危機(military coup, state collapse, or broader refugee crisis)を意味する可能性がある。他の地域では、戦争、もしくは混乱を意味する可能性がある。

トランプ大統領は、自身を支持してくれた支持基盤を遠ざけるリスクを負っているだけではない。この国際的な瀬戸際政策(this game of international brinksmanship)が成功するたびに、トランプはより自信過剰(more overconfident)になり、次回の誤算のリスク(the risks of miscalculation)が高まる可能性が高い。

※エンマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。スティムソン・センターアメリカ大戦略再発想プログラム上級研究員。ジョージタウン大学非常勤助教。著作に『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』がある。Xアカウント:@EmmaMAshford

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年はアメリカ建国250年の節目の年である。中間選挙がじっしされる年でもある。現在、ドナルド・トランプ大統領の人気は低迷し、連邦下院で共和党は過半数を失う可能性が高い。連邦上院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。下院で民主党が過半数を握れば議長を出すことになり、トランプ肝いりの法案の可決も困難になる。第二次トランプ政権の後半2年の政権運営も厳しくなる。

 トランプ政権が支持率を上昇させるには、物価対策と外交政策の成功が重要になる。海外からの輸入製品の価格引き下げが物価対策の1つの方法である。そのためには、究極的には戦争を終わらせる必要がある。地政学リスクと言うが、地政学リスクを下げることが重要だ。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争を収拾することが重要であるが、ウクライナ戦争は2026年2月24日に4年が経過することになるが、停戦の見通しは立っていない。イスラエルのガザ地区の状況も戦闘は起きていないが、イスラエルはガザ地区への圧力を強めている。また、イランに対して更なる攻撃を加える姿勢を捨てていない。中東地域も不安定なままである。

 昨年、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。このことについてはこのブログでも複数回紹介した。重要なのは、ラテンアメリカと中東、東アジアである。トランプ政権は、ヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の艦艇を派遣し、船舶に対して攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領に圧力をかけている。麻薬対策を大義名分にしているが、それならば、コロンビアやメキシコを標的にした方が合理的だ。アメリカ政府はマルコ・ルビオ国務長官を中心にして、ラテンアメリカにおけるアメリカの勢力確保を狙い、反米勢力の一掃、中国とロシアの影響力排除を行おうとするグループがいる。ヴェネズエラはそのための標的である。問題は、どこまで介入するかということだ。地上軍派遣の可能性も浮上しているが、この段階まで進むと、アメリカは泥沼にはまり込む可能性がある。マドゥロ政権を倒しても、マドゥロ支持派がゲリラ戦を展開する可能性がある。ラテンアメリカ各国の「ボリバル主義」「反ヤンキー帝国主義」感情が高揚することになる。それでも地上部隊まで派遣して、マドゥロ政権を打倒して親米政権を樹立するというところまで進めば、トランプは自身が戦争を止める大統領だという自画自賛を放棄することになる。国内の不満を海外での武力行使で目を逸らさせるという意図があるとすれば、アメリカ国内の不満は相当大きくなっているという見方もできるだろう。また、トランプ政権内の対外強硬派の勢いが強くなっているのだろう。※2025年1月2日にトランプ大統領はアメリカ軍に対してヴェネズエラへの攻撃を命令し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、国外に連れ出したと発表した。このような暴挙は予想できなかった。トランプ主義、アメリカ・ファーストの終焉である。BRICSを中心とする「西側以外の国々」は反アメリカの姿勢を強めるだろう。トランプも馬鹿なことをしたものだ。ドル離れと金(きん)への資金の移動が続くことになる。

 中東地域に関して言えば、イランへの攻撃があるかどうかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランへの攻撃を行いたいという願望を持っている。中東地域の不安定な状況はネタニヤフの個人的な利益に適う。状況が平常に戻れば、個人的な汚職の問題で裁判にかけられることになる。ハマスとの紛争が停戦したことで、平常に戻る可能性が大きくなるが、状況の不安定化を継続させるために、ガザ地区に対して人道的に許しがたい圧力をかけ、ハマスの暴発を狙うか、ハマスを支援するイランへの攻撃を行うかである。アメリカのトランプ大統領は昨年実行したイランへの空爆について、イランが核開発を、場所を変えて継続している可能性があると発言している。イランへの攻撃は実行される可能性はあるが、大規模な攻撃とはならないだろう。イランとイスラエルの全面戦争に発展することは避けたい。イラン側としてもアメリカの衰退が継続していけばイスラエルも衰退していくということになるので、中国やロシアと連携しながら、状況を悪化させないということになる。

 東アジアにおける最大の不安定要因は高市早苗首相と日本である。日本は成長のない30年を経て、残念なことだが衰退が決定づけられている。経済や社会において人々の不満が高まっていく。人々の不満を外に向けることは常套手段である。そうした状況下で、「日本初の女性首相」という大義名分で、極右派・隷米派の高市早苗議員が首相に就任した。そして、早速に台湾有事の発言で、日中関係と東アジアに緊張をもたらした。高市政権の後ろ盾はアメリカ国防総省のナンバー3であるエルブリッジ・コルビー国防次官だ。コルビー次官については、これまでの著作で取り上げているので、そちらを参照していただきたい。トランプ大統領は中国との対立を望んでいないが、トランプ政権に入った、対中強硬派が中国との対立を望んでいる。厄介なことに、アメリカが直接対峙するのではなく、日本を利用して、日本をぶつけようという姑息な手段を用いてである。2026年は高市政権を退陣させ、日本が中国との衝突を起こさないようにすることが重要である。
elbridgecolbyjapanesepoliticians20250430001

 2026年も世界を不安定にしようという動きがある。私たちはそのことに気づき、そして、阻止するために学び続ける必要がある。

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ドナルド・トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略:5つの重要なポイント(Trump’s new national security strategy: 5 key takeaways

ラウラ・ケリー筆

2025年12月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5635890-trump-national-security-strategy/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日の夜遅く、「国家安全保障戦略(national security strategy)」を発表した。西半球(Western Hemisphere)におけるより大きな軍事プレゼンス(a larger military presence)、世界貿易の均衡(balancing global trade,)、国境警備の強化(tightening up border security)、そしてヨーロッパとの文化戦争への勝利(winning the culture war with Europe)に重点が置かれている。

この包括的な戦略は通常、新政権発足1年以内に発表され、大統領の外交政策の重点を説明し、予算の配分に関する指針を示している。

33ページに及ぶこの文書は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」のイデオロギーを基盤としているが、同時に、トランプ大統領がモンロー主義を踏襲し、西半球におけるアメリカの優位性(U.S. dominance)を主張していることを初めて明確に示している。

「長年の無視の後、アメリカはモンロー主義を再び主張し、実行することで、西半球におけるアメリカの優位性を回復し、アメリカ本土と地域全体の主要地域へのアクセスを守る」と「国家安全保障戦略」は述べている。

この文書は、アメリカの世界からの撤退を明確には示していないが、同盟国間の負担分担の増大(increasing burden sharing among allies)、アメリカの経済的利益と重要なサプライチェインへのアクセスの向上(elevating American economic interests and access to critical supply chains)、アメリカのエネルギー生産の「解放」(“unleashing” American energy production)を求めている。

トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」の5つのポイントを以下に挙げる。

(1)カリブ海におけるトランプ大統領の戦争は激化する見込み(Trump’s war in the Caribbean likely to heat up

カリブ海で麻薬密輸の疑いのある船舶に対するトランプ大統領の2カ月以上にわたる軍事作戦は、「国家安全保障戦略」がアメリカに対し、世界的な軍事プレゼンスを南北アメリカ大陸に再調整し、「ここ数十年、あるいは数年間でアメリカの国家安全保障にとって相対的に重要性が低下した地域」から撤退するよう求めていることから、より大きな支持を得る可能性が高いだろう。

トランプ大統領は、カリブ海におけるアメリカ軍の軍事作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争(armed conflict)」と位置づけ、麻薬密売の罪でアメリカで起訴されているヴェネズエラの実力者ニコラス・マドゥロ大統領を主要な脅威として挙げ、アメリカは間もなく「地上作戦(land operations)」を開始する可能性があると述べた。

ヴェネズエラは具体的には名指しされていないものの、「国家安全保障戦略」は、アメリカ国境の安全確保と「カルテルの打倒(defeat cartels)」、そして「戦略的に重要な地域へのアクセスの確立または拡大(establishing or expanding access in strategically important locations)」のために「標的を絞った展開(targeted deployments)」を求めている。

この戦略はまた、トランプ大統領が関税を用いて地域を支配する手法にも焦点を当てている。しかし、トランプ大統領がそのような権力を有しているかどうかは、最高裁判所で係争中の訴訟の焦点となっている。

「アメリカは、関税と相互貿易協定を強力なツールとして活用し、アメリカの経済と産業を強化するため、商業外交(commercial diplomacy)を優先する」と文書は述べている。

この文書はラテンアメリカにおける中国の進出を明確に指摘していないものの、NSSは、米国は金融とテクノロジーにおける影響力を駆使して地域諸国を敵対勢力から引き離し、「スパイ活動、サイバーセキュリティ、債務の罠、その他の方法」でこれらの諸国への依存の脅威を強調すべきだと述べている。

And while the document does not explicitly call out China’s inroads in Latin America, the NSS says the U.S. should use its leverage in finance and technology to pull regional countries away from adversaries and underscore threats of reliance on those countries “in espionage, cybersecurity, debt-traps, and other ways.”

(2)トランプ大統領がロシアへの対応に失敗したとしてヨーロッパを批判(Trump criticizes Europe as failing to deal with Russia

「国家安全保障戦略」は、ロシアとの関係悪化の一因となったヨーロッパの「自信の欠如(lack of self-confidence)」を批判しているが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領による2014年と2022年のウクライナ侵攻の決定や、破壊工作、選挙介入、そして大陸における不安定化煽動といった活動については言及していない。

「国家安全保障戦略」は、「ユーラシア大陸全体にわたる戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減する」ためにヨーロッパとロシアの間の仲介を行うことができる唯一の勢力がアメリカであると述べている。

この文書はさらに、アメリカは「ヨーロッパの偉大さを促進する」必要があると明言しており、これはヴァンス副大統領が2月にドイツで行った演説を彷彿とさせる。

ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員パウエル・ゼルカは分析の中で、「ワシントンはもはや、ヨーロッパの内政に干渉しないふりをしていない」と述べている。

「現在では、こうした干渉を『ヨーロッパがヨーロッパであり続けることを望む』という善意の行為であり、アメリカの戦略的必要性に基づくものと位置付けている。最優先事項は何か? 『ヨーロッパ諸国において、ヨーロッパの現在の方向性に対する抵抗を育むこと』である」。

(3)台湾はアメリカの対中戦略を応援(Taiwan cheers US strategy on China

「国家安全保障戦略(NSS)」が台湾の主権と安全保障を外部からの影響から守ることを明確に認めたことは、台北の外務省から歓迎され、ワシントンの対中強硬派は、トランプ政権が台湾を北京に明け渡すつもりはないと安心することになるだろう。

「アメリカの『国家安全保障戦略(NSS)』は、台湾をめぐる紛争の抑止が地域と世界にとって不可欠であると明言している」と台湾外務省は声明で述べた。

「台湾の安全はインド太平洋の安定を支えるものであり、私たちは自衛を強化し、地域の平和と繁栄に貢献し続ける」。

「国家安全保障戦略」は、台湾をめぐる紛争を抑止するためにアメリカに対し「軍事力の優位性(military overmatch)」を維持するよう求め、「有利な通常戦力のバランス(a favorable conventional military balance)」が地域におけるアメリカの利益の鍵であるとしながらも、地域におけるアメリカの同盟国間の「負担分担(burden-sharing)」を強調している。

この文書は、日本、韓国、台湾、オーストラリアに対し、国防費の増額を求める圧力を継続するよう求めている。

ハドソン研究所アジア太平洋安全保障担当部長パトリック・クローニンは、「国家安全保障戦略」への初期の反応として、「アジアについて考えると、経済と抑止力への重点は概ね妥当だ」と述べている。

クローニンは続けて「それでもなお、中国の戦略が相互に公正な貿易に関するものだという考えは、この文書が過去の誤った前提について正当に指摘している様々な批判に真っ向から反するものである」と述べた。

(4)アメリカの中東への重点は「後退」(American focus on Middle East to ‘recede’

トランプ大統領は、アメリカのエネルギー輸出増加に注力し、イスラエルとの12日間の戦争とアメリカの核施設への攻撃を受けてイランとその代理勢力が大幅に弱体化したと述べるなど、中東におけるアメリカの責任を軽減しようと努めている。

「国家安全保障戦略」は、「しかし、長期的な計画と日常的な実行の両面において、中東がアメリカの外交政策を支配していた時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と述べている。

トランプ大統領は「紛争は依然として中東で最も厄介な問題である」と認めつつも、この地域の明るい展望を描いている。

リバータリアン系シンクタンクであるケイトー研究所研究員ジョン・ホフマンは、アメリカが中東における役割を縮小する戦略を歓迎する一方で、トランプ政権にそのようなロードマップを実行する政治的意思があるかどうか疑問視している。

ホフマンは「過去4人の大統領うち2人はドナルド・トランプ――は、中東へのアメリカの関与縮小を公約に掲げながら、変化ではなく継続性に根ざした政策を追求してきた」と書いている。

「ワシントンは依然としてこの状況に巻き込まれ、この地域の情勢を細かく管理しようとしている。このようなアプローチでは、この『国家安全保障戦略(NSS)』の明示された目的を達成できないだろう。トランプが中東情勢を根本的に転換する政治的意思を持っているかどうかはまだ分からない」。

(5)民主党からの党派的な反発を招く(Draws partisan pushback from Democrats

民主党は、トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」を、世界におけるアメリカの後退を示す危険な計画であり、アメリカと同盟諸国を弱体化させるものだと即座に非難した。

連邦下院情報特別委員会と連邦下院軍事委員会委員であるジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出、民主党)は声明で「この計画が進められると、世界はより危険な場所となり、アメリカ国民の安全は脅かされるだろう」と、述べた。

「多くの懸念すべき点の中でも、ソーシャルエンジニアリング(social engineering)、文化戦争(culture warfare)、そして同盟国である外国政府や政治体制への干渉(interference with allied foreign governments and political systems)を露骨に呼びかけている点が挙げられる。これは国内外における自由と個人の権利に対する攻撃だ」。

同様に、連邦上院軍事委員会委員であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、「国家安全保障戦略(NSS)」は「同盟諸国を見捨てて、ウクライナを犠牲にし、主要な戦略目標と基本的価値観を放棄するという後退を予兆するものだ。アメリカはより安全になるどころか、より弱体化するだろう。アメリカ・ファーストはアメリカだけの問題であり、その代償を払うことになるだろう」と述べた。

評論家の一部はより慎重な見方を示した。

民主政治体制防衛財団軍事政治力センター上級ディレクターであるブラッドリー・ボウマンは、「国家安全保障戦略」は「以前の国家安全保障戦略との連続性もいくつかあるが、大きな変更点もいくつかある」とコメントした。

「称賛に値する点もあれば、注目すべき批判点もあり、そして深刻な『何だって?』という点もある」。

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をお願いいたします。

 

 アメリカで公開中のドキュメンタリー映画「ザ・デーティング・ゲーム」の紹介記事が興味深かったのでご紹介する。監督は中国系の女性で、中国国内に住む結婚したいのに、出会いに苦労している若い男性たちとそのような男性たちの「コーチ」を登場させている。中国でも日本と同様、正確には日本よりもスピード感を持って、少子高齢化が進んでいる。そして、若者たち、特に男性たちにとって深刻なのは「男余り」だ。記事によると、中国の申請時の男女比は、男性116対女性100となっている。日本やその他の国々では、だいたい男性105対女性100となっている。日本でもそうであるが、伝統や文化の面で、男の子を望む傾向が強く、中国の場合には一人っ子政策という縛りもあり、「1人しか産めないなら男の子」ということになって、男性が多くなっている。そうなると、単純な算数で考えても、結婚適齢期になると、男性が余ってしまう。容姿が良かったり、実家が富裕であったり、学歴が高かったりであれば結婚できるが、「何の取り柄もない」男性は振り向いてもらえない。仄聞するところでは、中国では結婚する際に、男性側が家(マンション)を用意しなければならないということだ。そうなると、経済力がない若い男性は結婚相手に選んでもらえない。

 そこで、結婚相手探しに苦労している若い男性たちに女性と出会って結婚まで持ち込むための技術を教える「コーチ」が登場する。彼らは女性を振り向かせるための技術を持つ、日本語で言えば「ナンパ師(pickup artists)」である。SNSに掲載するプロフィール写真やSNSでのやり取りについてアドヴァイスをする。また、国家が主催するお見合いパーティーも開催されている。日本で言えば、「婚活」が中国でも盛んなようだ。しかし、人口統計的に見れば、どうしても女性と出会えない男性が出てくる。結婚は同い年同士ですることは少ない、年齢差があるのが一般的だが、上下数年で見ても、男性が偏って多い以上、対象を拡大しても厳しい状況は変わらない。私はそのうち、中国でも、外国からお嫁さんを連れてくるということが起きるだろう、いや既に起きているのではないかと考える。日本でも、特に農村部で同様の問題があり、東南アジアの女性を結婚するということがあった。中国もそのようなことになるだろう。

 こうなると、社会に対して不満を持ち、女性を攻撃するマンスフィア(男性優位志向ネットワーク[と私は訳した])が発生する。自身が持つ不安を社会や女性にぶつけるということになる。これは社会にとって大きな不安定要因となる。日本でも、氷河期世代(1970年代から80年代初頭くらいまでに生まれた人たち)も同様の境遇にある。日本の氷河期世代の場合は人口統計上の問題ではなく、経済や社会、政治上の失敗が原因であるが。記事に書かれているが、中国では結婚をすることを諦める若者たちが多く出ている。日本もそうであったが、不満をため込みながら、社会から退くことを選ぶ人たちが多く出ると、社会の運営効率は落ち、社会は崩壊に向かう。身も蓋もない表現をすれば、中国の問題は、最終的には金で解決できるかもしれない。外国から女性に来てもらうということで(そのために経済力や高い生活水準が必要であるが)、解決ができるかもしれない。2024年の新生児出生数が過去最低を記録したという報道を見ながら、日本の場合には既に回復は望めないと悲観的になってしまう。

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中国の余剰男性に何が起きているのか?(What Happens to China’s Surplus Men?
-一人っ子政策(one-child policy)による性別間の不均衡(gender imbalance)は、絶望的な独身男性(desperate bachelors)、疑わしい教祖(dubious gurus)、そして男性優位志向ネットワークの台頭(a rising manosphere)を生み出した。

ドリュー・ゴーマン筆

2025年12月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/12/china-gender-dating-demographic-population-documentary/

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中国・重慶で、デーティング・ブートキャンプの一環として独身の周がハスキー犬たちとポーズを取り、デーティング・コーチのハオが写真を撮っている(ドキュメンタリー映画「ザ・デーティング・ゲーム」)

恋愛がうまくいかない時は、イメージチェンジが容易に始められる場所となる。問題は、何を変える必要があるのか​​、必ずしも分からないことだ。中国の独身男性、周、呉、李に対し、デート・コーチのハオは率直に次のように答える。「全てを変える」。

ヴァイオレット・ドゥ・フェン監督のドキュメンタリー映画『ザ・デーティング・ゲーム(The Dating Game)』(現在ニューヨークで公開中)は、かつての中国の一人っ子政策を受けて、デートライフを刷新しようとする男性たちの姿を追っている。長年続いた男児優遇政策は、世界でも最も顕著な性別間の不均衡を生み出した。「中国には女性がいない」とハオは語る。実際、この政策が終了に至った2015年には、中国では女児100人に対し男児が約116人が出生しており、おそらく男児のほぼ5人に1人が生涯独身(a lifetime of singledom)を強いられていることになる。

フェンが取り上げる登場人物たちは、恋愛の見込みのなさに自己不信と不安(self-doubt and anxiety)に苛まれている。結婚へのプレッシャーはあらゆる方面から押し寄せてくる。家族、友人、そして若者に結婚と出産を公然と迫る国家さえも。

デート・コーチのハオは3000人以上の顧客を抱えていると言い、そのほとんどが労働者階級の男性だ。アパートを所有することが結婚の必須条件とされるこの国では、妻を見つける可能性が最も低い層だ。ハオは彼らを失敗者(failures)と切り捨てながらも、愛を得るチャンスは与えられるべきだと言う。しかし、独身男性たちの旅が展開するにつれ、視聴者はハオのやり方に疑問を抱き始めるかもしれない。そして、約束された成功をもたらさないデート・システムがもたらす社会的影響を懸念するかもしれない。デート・システムは、男性たちを危険な怨恨政治(the dangerous politics of resentment)へと駆り立てる可能性がある。

私たちは中国・重慶のショッピングモールで初めて、女たらし志願の男たちに出会う。ハオは1週間かけて、現代のデジタル時代に女性を惹きつける方法を教えると約束する。36歳の周は最も懐疑的だ。ハオのファッションアドヴァイスに難色を示し、故郷の人たちは自分が太字のピンクのシャツを着ているのを見たら驚くだろうと言う。美容院では、周が「私はハンサムじゃない。スタイリングする意味がどこにある?」と発言する。スタイリストは「顔の形による弱点を目立たなくしてしまう」と答える。こうした率直な発言は、登場人物たちの尊厳を何度も傷つける。独身男性たちが中国の金銭中心のデート文化について語るのも同様に率直だ。周は、女性をディナーに連れて行き、プレゼントを買い、仲人に料金を払うと、月収の半分にあたる300ドルもかかることを嘆く。その後、ある女性は理想のパートナーは「月に1500ドル以上」稼いでくれる人だと語った。

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独身の李はデートのためのプロフィール写真でポーズを取る

経済的な不利を補うため、ハオは独身男性たちに事実上、偽りの自分を見せることを教え、時にはあからさまに嘘をつくよう助言する。例えば、男性たちが高級高層ビルでデートのプロフィール写真のためにポーズを取る場面が見られる。そして、周は明らかに犬を怖がっているにもかかわらず、ふざけた瞬間に12匹ほどのハスキー犬を連れている場面も見られる(大型犬は中国の多くの都市で厳密には違法であり、ステータスシンボルとなっている)。周は新しいプロフィール写真を使うのをためらう。なぜなら、そこには自分が経験したことのない経験が写っているからだ。女性は見抜くだろうと彼は主張する。ハオは、誰もがオンラインでは騙されていると反論する。呉は「私は偽るのは好きじゃない。私は私だ」と反論する。ハオはただ、本物かどうかなんて気にするなと彼らに告げる。

ハオが男性たちに、路上で見知らぬ女性に声をかけWeChatのアカウント情報を聞き出すなど、過酷なデートの練習を指導するにつれ、視聴者はハオの能力不足を疑い始める。男性たちは昔ながらの方法で真の繋がりを切望しているにもかかわらず、一日中、見境なく右にスワイプして相手を探すように指示されるのだ。

映画監督のフェンは彼らの失敗(そして稀に起こる衝撃的な成功)を一切コメントなしで紹介し、視聴者がハオのやり方について独自の意見を形成できるようにしている。しかし、やがて、これらのいわゆるテクニックは、実際には単なるナンパ師(pickup artistPUA)の行動であることが明らかになる。

1960年代に遡るアンダーグラウンドムーヴメントのようなピックアップ・アートは、ニール・ストラウスの2005年の著書『ザ・ゲーム』の出版をきっかけに、爆発的に主流へと躍り出た。心理操作と安っぽいテクニックで女性を誘惑するナンパ師たちは、女性を物のように扱い、男性に常識的な境界線をはるかに超えた恋愛や性的欲求を抱かせるとして、広く非難されてきた。

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ハオがスプレーを使って髪の毛を整えている

近年、ナンパ師たちは「男性優位志向ネットワーク(manosphere)」という異形の類縁関係を生み出している。男性優位志向ネットワーク(マノスフィア)とは、女性蔑視的な見解を唱え、より狂信的なケースでは、伝統的なジェンダー階層の復活を目的とした暴力を擁護する、緩やかなオンラインコミュニティの集合体のことだ。調査ジャーナリストのジェイムズ・ブラッドワースが著書『ロストボーイズ:マノスフィアを巡る個人的な旅(Lost Boys: A Personal Journey Through the Manosphere)』で記録しているように、男性の権利団体、ナンパ師組織、「非自発的独身(involuntary celibate)」フォーラム、そして過激な女性蔑視的インフルエンサーといった広範なネットワークが相互に関連している。例えば、2014年に殺人事件を起こす前、イギリス系アメリカ人の殺人犯エリオット・ロジャーは恋人ができないことを嘆き、恋愛における失敗の原因の一部はナンパ師のテクニックの失敗にあると非難していた。

ナンパ師からマノスフィアへのパイプラインは、ネガティヴな態度、派手な仕草、あるいは挑発的なタッチなど、適切な条件を揃えればガールフレンドを「獲得(acquire)」できるという、薄汚い思い込みで覆われている。しかし、どれだけ気取った振る舞いをしようと、最初の一言がどれだけウィットに富んでいようと、最終的には他の人間との真の紐帯(a genuine bond with another human being)を築かなければならないのだ。

このことを最も強く裏付ける証拠は、独身男性の試練ではなく、ハオと自身もデート・コーチであるウェンとの結婚生活にある。2人の関係は映画の意外な感情的中心となり、ブートキャンプを覆い隠すほどだ。ブートキャンプが気まずく滑稽な一方で、フェンとハオ、ウェンの接点は親密で緊張感に満ち、ほとんどスキャンダラスだ。私たちは本当にこんな光景を目にするべきなのだろうか?

ウェンは多くの点でハオとは対照的な存在だ。指導する女性たちに、ウェンは本物であることと自己改善(authenticity and self-improvement)を説く。それは勤勉と内省(hard work and introspection)を必要とする。それとは対照的に、ハオのやり方は暗く、醜く、破滅的な印象を与える。ウェン自身も、こうしたやり方こそがハオの当初の嫌悪感であり、不誠実だと感じていた部分だと述べている。この2人のアプローチとメンタリティの乖離は、悲劇的で不可解だ。視聴者として、ウェンがハオの泥沼のようなナンパの嵐をかき分けて彼の良い面を見ようとした理由も、この2人を結びつけている理由も、ほとんど理解できない。2人はデートの仕方だけでなく、人間関係の理解や個人としての尊重の仕方についても、正反対の考え方を持っているように見える。この軋轢は耐え難いものとなり、私は何度も目をそらさざるを得なかった。

この展開を目の当たりにしている視聴者にとって、なぜ何千人もの男性がこのひどいアドヴァイスに賛同しているのか、いささか不可解な点がある。

ハオの主張が魅力的な理由の1つは、農村部の労働者階級の男性の多くが、少女との交流をほとんど持たずに育ったことだ。24歳の李は、自分の村では「少年12人に対して少女は数人しかいない」と語る。一方、多くの親は急速な国家工業化政策に携わるため都市部へ移住し、子供たちは祖父母に育てられた。あるアーカイヴ映像では、当時の指導者である鄧小平が国民に対し、中国を速やかに近代化するよう訴えている。国民に豊かな生活を提供できなければ、国は行き詰まってしまうからだ。

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(左から)ハオ、呉、李、周がモールの中を歩く 

中国が経済減速に直面し、若者の間で不満が広がっている現状を考えると、フェンがこの映像をこの時期に取り上げたことは、非常に的を射ているように感じられる。都市部の若者の公式失業率は約17%、2026年には過去最大の大学卒業者数が見込まれる中、若い中国人は独特の倦怠感(a distinctive malaise)を抱えながら労働力として働き始めている。こうした経済的な課題は、世代全体の恋愛の見通しに暗い影を落としている。そして、「996」労働制度(“996” work system)で悪名高い中国では、これまで必死に追い求めてきたものはすべて幻だったという感覚が広がっている。若者の中には、経済的・社会的に無力感を抱き、収入と恋愛の成功があまりにも密接に結びついているため、恋愛から完全に身を引く男女もいる。

デートのプールにとどまり続ける人々は、型破りな手段に訴えることもある。ハオのコーチングはそうしたアプローチの1つに過ぎないが、フェンはまた、成人した子供たちのパートナーを見つけることを望む親たちの、かなり憂鬱な集まりなど、さまざまなお見合い(matchmaking)の試みも紹介している。

別の場所では、国家が主催するお見合いイヴェントで、共産党代表が集まった独身者たちに「あなたたちは未来だ」と語りかける。参加者たちは、将来のパートナーに求める条件―「従順であること(obedient)」「仕事を持っていること([has] a job)」「太りすぎていないこと(not too fa)」―を挙げ、ぎこちないアイスブレイクゲームで盛り上がる。男女が無事にカップルになると、司会者は2人に抱き合い、手を繋ぐように促し、幸せな結婚を祈る。出生率が急落する中、奥ゆかしさはもはや通用しない。

フェンはここに怒りを露わにしている。一人っ子政策、今や幻想としか思えない経済的利益のために引き離された家族、そして中国の若者の孤独を少しでも和らげようとする努力を妨げる構造への怒りだ。しかし、現代社会を生き抜くのに苦闘する人々への真の同情が、その怒りを和らげている。彼女は主に、国家の失策を繊細に批判している。それらを記録すること自体が、十分な非難なのだ。

彼女の最も直接的な政治的発言は、映画の終盤で現れる。「歴史的に、社会における男性の過剰は、国内および地政学的な不安定化を招いてきた」とスクリーン上のテキストは述べている。この映画の慎重な抑制は、登場人物たちの実体験や、より広く中国におけるデートの苦悩を浮き彫りにする上で素晴らしいものだが、この特定の点は、繊細さだけでは提供できない何かを求めている。「デーティング・ゲーム」は、不満を抱えた何百万人もの男性が社会全体に及ぼす潜在的な危険に言及しているものの、国家がどのようにしてそのような状況に陥ったのかという切実な問いを、あまり時間をかけて検証していない。

中国人男性に押し付けられる恋愛プレッシャーは深刻だ。なぜなら、恋に破れた男性は時に暴力に訴えるからだ。それは、挫折感や憤りを根源的に払拭するための手段であり、今日では、アメリカ、トルコ、イギリスなど、極右運動の旗印の下に長年結集してきたマノスフィア(男性融資志向ネットワーク)のインフルエンサーやライフスタイルの教祖によって、ソーシャルメディア上で育まれている。

この男性の憤りという生態系(ecosystem)は、中国のみならず世界中で勢力を拡大しており、ナンパ技術はその始まりに過ぎない。男性融資志向ネットワーク(マノスフィア)は確かに扱いにくく、支離滅裂な怪物だが、「デーティング・ゲーム」はその毒性に満ちた鉱脈に触れており、それと同等の深掘りを必要とする。

※ドリュー・ゴーマン:『フォーリン・ポリシー』誌版権担当副編集長。

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