古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:人道的介入主義

 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。

 アメリカの外交政策思想には大きく2つの流れがある。それがリアリズム(Realism)と介入主義(Interventionism)だ。アメリカの二大政党である民主党、共和党にそれぞれ、リアリズムを信奉するグループが存在する。介入主義は、民主党では、人道的介入主義(Humanitarian Interventionism)を信奉する人道的介入主義派となり、共和党ではネオコンサヴァティヴィズム(Neoconservatism)を信奉するネオコン派となる。ネオコン派は、ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領時代に日本でも知られるようになった。
 介入主義とは、外国に積極的に介入して、外国の体制を全く別のものに転換しようというものだ。ネオコン派の考えは、「アメリカの価値観である、自由主義や人権、民主政治体制(デモクラシー)、資本主義を世界に広めて、世界中の国々を民主体制の自由主義的資本主義国ばかりにすれば、世界は平和になる」というものだ。そのために、アメリカは自身の卓越した力を利用しなければならないし、これに反対する勢力は打ち破るということになる。民主党の人道的介入主義派は、「世界の非民主的な国々では、マイノリティの女性や少数民族、政敵少数者たちが迫害され、命の危険に晒されている。そうした人々を助けるために、アメリカは人道的に外国に介入しなければならない」というものだ。結果として、ネオコン派と同じく、非民主的な国の体制転換(regime change)がなされねばならないということになる。

 リアリズムは、アメリカの力には限界があり、アメリカの力で世界の全ての国を民主体制の国家にすることはできない。ある国の問題はそこの国の国民の解決すべき問題である(災害などの人道支援は行うのは当然だが)。そして、アメリカの重大な国益が侵害されそうな場合を除いて、外国に対して積極的に介入すべきではない、ということになる。下の論文でスティーヴン・M・ウォルトが「抑制(restraint)」と書いているのはまさにこれである。これらのことについては最初の著作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)に詳しく書いているので是非お読みいただきたい。

 アメリカはこれまで介入主義的な外交政策を実施し、その多くが失敗してきた。結果として、「アメリカ国内問題解決を優先していこう」という公約を掲げた、ドナルド・トランプが大統領に当選した。こうした考えを「アイソレイショニズム(Isolationism)」という。アメリカは超大国であることに疲れ、超大国であり続けるための国力を失っている。そのために、これからは「抑制的」、つまり、リアリズム外交に転換していくことになる。そして、次の世界覇権国は中国である。中国は、覇権交代の歴史を研究し、覇権国は永続的な存在ではなく、いつか、ボロボロになってその座から滑り落ちていくということを分かっているだろう。しかし、中国が覇権国にならねば世界は治まらないということになる。そうした時代の転換点に差し掛かっている。

(貼り付けはじめ)

抑制的なアメリカ外交政策に転換するのに遅すぎることはない(It’s Not Too Late for Restrained U.S. Foreign Policy

-アメリカのグローバル・リーダーシップの復活を求める声が大きくなっている。しかし、それはこれまでと同様に、大きな間違いである。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/14/united-states-realism-restraint-great-power-strategy/

冷戦期間中、アメリカがより控えめな、あるいは抑制的な外交政策を採用するように求める提案は、外交政策エスタブリッシュメント内部で大きな支持を集めることはなかった。確かに、ハンス・モーゲンソー、ジョージ・ケナン、ケネス・ウォルツ、ウォルター・リップマンなどの著名なリアリストたち(Realists)は、アメリカの外交政策における最悪の行き過ぎを厳しく批判していた。連邦政府を縮小しようとしてきたリバータリアンたちもまた、アメリカの海外関与を減少させようとしたが、ソヴィエト共産主義を打ち負かしたいという超党派の願望から、そうした提案は外交政策の外交政策に関する言説の片隅にとどまった。抑制(restraint)や縮小(retrenchment)を求める声は、その後の「一極集中の時代(unipolar moment)」においても同様に歓迎されなかった。アメリカのエリートたちは、歴史の潮流が自分たちの方に流れていると信じ、アメリカの比類ないパワーの慈悲深い腕の下で、全世界を平和で豊かな自由主義秩序(peaceful and prosperous liberal order)に導こうとしたのである。

しかし、この傲慢さが増大した時期がもたらした失敗が積み重なるにつれ、より現実的で賢明な外交政策を求める声が無視できないほどに大きくなった。2014年にマサチューセッツ工科大学(MIT)教授バリー・ポーゼンが『抑制:アメリカの大戦略にとっての新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』を出版した。この著作は、他の学者(私自身を含む)による関連著作とともに、重要なマイルストーンとなった。2016年のドナルド・トランプの当選も現実的な外交政策を求める声の高まりに貢献した。トランプの大統領としての行動は、抑制派の提言とはかけ離れたものであったが、アメリカの外交政策を形成する中心的な正統派の多くに対する彼の修辞的な攻撃と、外交政策エスタブリッシュメントに対する明らかな軽蔑は、これらの問題についてよりオープンな議論を行うための空間を作り出した。2019年に「クインシー国家戦略研究所」が創設され、クインシー研究所、「ディフェンス・プライオリティズ」、スティムソンセンターのアメリカ大戦略研究プログラム、カーネギー財団のアメリカ政治研究プログラムでの関連イニシアティヴも、抑制を目指す動きが勢いを増していることを示す追加的な兆候であった。(完全情報公開:私はクインシー研究所の設立以来、非常勤研究員を務めており、昨年から理事会のメンバーに加わった)。

抑制を目指す動きが軌道に乗りつつあることを示す兆候の1つに、アメリカのグローバル・リーダーシップに対する拡大的な考え方や、ほころびつつある自由主義秩序を守りたいという願望に固執する批判者たちからの攻撃があった。こうした攻撃は通常、抑制派が提言していることを誤って伝え、しばしば彼らを「アイソレイショニスト(isolationists)」と誤って描いていた。こうした批評の中には自分たちの立場を有利にしようと誘導的なものもあった。それは、抑制派が提唱する考え方が大きな支持を集め、やがてはアメリカの対外アプローチに大きな変化をもたらすのではないかと、主流派が懸念し始めていることを示唆していた。

それは昔のことで、今は今である。イラク戦争やアフガニスタン戦争の後で、抑制という考え方は否定できない魅力を持っていたが、現在では大国間の対立が最重要課題となっている。中国のパワーは経済的苦境にもかかわらずなお拡大を続けており、アジアの現状を変えたいという欲望は衰えていない。ロシアはウクライナに侵攻し、現在ウクライナを支配している。中国、ロシア、イラン、北朝鮮、その他数カ国による協力体制が強化され、ヨーロッパの防衛力再構築に向けた取り組みは、多くの人が期待していたよりもゆっくりと進んでいる。ガザでは残忍な殺戮が進行中であり、戦争が拡大するリスクは依然として受け入れがたいほどに高い。スーダン、リビア、エチオピア、その他のアフリカ諸国では、内戦とジハード運動が人々の生活を破壊し続けている。1990年代の傲慢さは消え去ったかもしれないが、大国間の紛争は考えられないという信念も同時に消え去った。

これらの状況全てを踏まえても、リアリズムと抑制に基づく外交政策には意味があるのだろうか? アメリカ人は今こそ、深く掘り下げ、再びグローバル・リーダーシップの外套を手に取り、「地政学的ハードランディング」を回避するために奔走すべき時なのだろうか? 抑制の時期は過ぎ去ったのか?

その答えは「ノー」だ。

まずは抑制を目指す動きが何を望んでいるのかを明確にすることから始めよう。何よりも抑制派は、アメリカの極めて重要な利益が関与しない、不必要な「選択の戦争(wars of choice)」を戦うことに反対している。彼らは平和主義者でもアイソレイショニストでもない。彼らは強力な国防を信じている。そして彼らは、状況によってはアメリカが海外で武力行使を厭うことがないようにすべきだと認識している。抑制派は、アメリカは世界から撤退する代わりに、他国で貿易や投資を行うべきであり、他国にも同様の行動を奨励し、排外主義(xenophobia)に駆られて壁を築くのではなく移民を管理された形で受け入れるべきだと考えている。実際、抑制派はアメリカが今よりも積極的かつ効果的に外国に関与すべきであり、外交を第一に考え、武力行使をワシントンの最初の衝動(first impulse)ではなく最後の手段(last resort)とするべきだと考えている。それは何故か? なぜなら、抑制派は軍事力の限界を理解しているからだ。軍事力は場合によっては必要かもしれないが、それは常に多くの予期せぬ結果を生み出す粗雑な手段である。また、重要な利益が関与せず、成功を定義するのが難しい場合、戦争に対する国民の支持を維持することは困難である。特に抑制派は、体制転換(regime change)や軍事占領(military occupation)を行って、自由主義的な価値観を広めようとすることに反対している。なぜなら、そのような取り組みは通常、代償として、深刻な事態の泥沼化(quagmires)や破綻国家(failed states)の出現を招くのが通常からである。

現実的に考えると、抑制派のほとんどは、アメリカは中東から軍事的に手を引き、その地域の全ての国々と通常の関係を持つべきだと考えている。彼らは、NATOの同盟諸国が自国の防衛により大きな責任を負うよう、ワシントンが奨励すべきだと考えている。しかし、共和党のJD・ヴァンス連邦上院議員のようなトランプ大統領気取りとは異なり、抑制派の多くは、外交的解決に向けた献身的かつ柔軟な努力と組み合わせたウクライナへの援助継続を支持している。中国に対する最善の対応策については、抑制派にも賛否両論があり、より強力な封じ込め(containment)の努力を支持する者もいれば、緊張を緩和し、互恵的な妥協点を追求する必要性を強調する者もいる。しかし、アメリカは依然として海外に過剰に関与しており、根本的な政治問題を解決できない軍事的解決策に過度に依存しがちであるという点ではこれらの人々の意見は一致している。

この見解は、10年以上前と同様に、今日でも当てはまる。思い出してみて欲しい。アメリカが現在取り組んでいる問題の多くは、以前の抑制派の警告に耳を傾けていれば、完全に回避できたかもしれないものばかりだ。アメリカが開放的なNATO拡大を強く推し進め、ウクライナを西側の軌道に乗せ、最終的にはNATOに加盟させなければ、ロシアによる2014年のクリミア併合と2022年2月の不法侵攻はおそらく起こらなかっただろう。実際、バイデン政権がロシアの攻撃に先立つ数カ月間にもっと柔軟性を示していれば、2022年春にトルコとイスラエルの調停努力(mediation efforts)をもっと支持していれば、あるいはその秋にウクライナが優勢だった時期に停戦を推進していれば、ロシアとウクライナはまったく戦争をしていなかったかもしれないし、ウクライナがこれほどの損害を被る前に戦争は終結していたかもしれない。もちろん、確かなことを知ることは不可能だが、アメリカ政府関係者たちは、ウクライナが現在負けている戦争を回避するためにできたかもしれないことを全てやった訳ではないことは明らかだ。

中東での出来事も同様の教訓を与えてくれる。ドナルド・トランプ政権もジョー・バイデン政権も、イスラエルとアラブ近隣諸国との関係を正常化しようとすることに重点を置きながら、右傾化するイスラエル政府から圧力を受けつつあったパレスチナを完全に無視した。抑制派が警告したように、この近視眼的なアプローチは暴発の引き金となり、2023年10月7日の悲劇的な結果を招いたのは間違いない。

ガザにおけるイスラエルの猛攻撃によって、3万人以上のパレスチナ人が殺害され、ガザにある建物の50%から60%を破壊または損害を与え、イスラエルの世界的イメージを(アメリカとともに)大きく損なわせる結果となった。イスラエルは大規模な軍事的優位性を持ち、それを全面的に行使しているが、力だけでは、パレスチナとの対立を継続させている政治的な相違を解決することはできない。ハマスが軍事行動で壊滅することはないだろうし、イスラエルのユダヤ人とパレスチナのアラブ人の正当な願望を受け入れ、両者が安全な生活を送れるようにするにはどうすればいいのかという根本的な問題は、解決されないままである。同じことが、紅海の海運に対するフーシ派による攻撃を、爆弾を落としたりミサイルを撃ったりして止めようとするアメリカの努力にも言える。ガザ地区での停戦を実毛するために影響力を行使するということよりもまずは爆弾を落とすということを英米は選択した。これらの例は、複雑な政治問題は何かを爆破すれば解決できると考える反射的な傾向を示している。このような傾向に対して、抑制派は長年にわたり反対してきている。

抑制派はまた、アメリカのパワーは相当に大きいものデルが、無尽蔵ではないことも認識している。大国間競争(great-power competition)の時代には、明確な優先順位を設定し、主目的が互いに矛盾しないようにすることがこれまで以上に重要である。今日、アメリカはウクライナでロシアを打ち負かすウクライナを支援し、人的被害が出ているが、ハマス一掃を目指すイスラエルの努力を支援し、世界トップクラスの半導体技術やその他のデジタル技術を開発しようとする中国の努力を永久に無力化しようとしている。これは抑制されたアジェンダとは言い難く、その矛盾は自明であると同時に自滅的である。ユーラシアの二大国(中国とロシア)を互いに翻弄する代わりに、私たちは数十年かけて彼らに協力する理由を与えてきた。ロシアを孤立させ、グローバル・サウス(Global South)における中国の影響力を制限する代わりに、イスラエルのガザでの作戦を支援したことで、「ルールに基づく秩序(rule-based order)」の偽善が浮き彫りになり、中国に安っぽいプロパガンダの勝利をもたらした。ジョー・バイデン米大統領が包括的共同行動計画に再参加しなかったことは、イランに核開発を再開させ、さまざまな地域の代理人への支援を強化させ、更にはウクライナにおけるロシアの取り組みを積極的に軍事支援させたという点で、誤ったアジェンダに含まれることになるだろう。

最後に、抑制の擁護者たちは、過剰な軍事的関与と「永遠の戦争(forever wars)」がアメリカ本国を衰弱させる効果を持つことについて長い間警告してきた。過度に野心的な外交政策への支持を維持するため、アメリカの指導者たちは、志願兵だけで構成される軍隊に頼るようになり、それによって有権者の大半をその決定の結果から隔離するようになった。アメリカ陸軍士官学校附属現代戦争研究所によれば、その理由の1つは、アメリカ人が「一世代の軍人が、際限のない戦争に何度も何度も派兵されるのを目の当たりにしたから」だという。アメリカの歴代大統領たちは、増税の代わりに借金をしたり、脅威を膨らませたり、アメリカ国民に何をしているのか一部隠したりすることで、こうした活動のコストを隠してきた。しかし、こうした秘密の活動の一部がやがて明らかになると、公的機関への信頼はさらに損なわれている。建国の父たちが理解していたように、常に戦争状態にある共和国は、その共和国としての性格を危険に晒すことになる。今日のアメリカの民主政治体制が脆弱な状態にあるのは、非現実的でうまくいっていない外交政策が一因であり、それを是正しようと抑制派は努力している。

いかなる外交政策ドクトリンも完璧ではない。抑制という考え方も例外ではなく、その擁護者たちは、新たな情報の出現や新たな出来事の発生に応じて、自らの立場を見直す姿勢を持ち続けるべきである。しかし、今のところ、抑制を支持する意見は、特にワシントン中枢でいまだに支配的な代替案と比較すれば、大いに説得力を持っている。そして、現在の状況をもたらした政策をさらに推進することは、まったく意味をなさないし、効果もないのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『』(徳間書店)を発刊しました。2024年の世界で注目を集める、ウクライナ戦争、パレスティナ紛争、米中関係、アメリカ大統領選挙とアメリカ政治について網羅的にまとめました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ジョー・バイデン政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンが、シカゴ大学教授ジョン・ミアシャイマーとハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトを批判している論稿をご紹介する。ジョン・ミアシャイマーについては、最新刊『』でも詳しくご紹介している。スティーヴン・ウォルトは、このブログでもよくご紹介している。両教授は、国際関係論(International Relations)という学問分野の大物であり、リアリズムという学派に属している。また、アメリカとイスラエルとの関係、アメリカ国内の親イスラエル勢力を分析した『イスラエル・ロビー』の著者としても知られている。サリヴァンは、民主党系の外交政策専門家であり、私は1作目の著書『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)でいち早く注目した。
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ジェイク・サリヴァン
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スティーヴン・ウォルト(左)とジョン・ミアシャイマー

 サリヴァンは、両教授それぞれの著作の内容や主張について、反対論を展開している。その反対論の内容は、アメリカが世界の警察官を辞めてしまうのは駄目だ、世界各国の民主化を合法・非合法の手段で推進すべきだ、中国とロシアに対しては厳しい態度で、その権威主義的な政治スタイルの転換を求めるべきだ、アメリカが外交的な力を維持するために、アメリカ軍の規模や世界転換を維持すべきだという内容だ。これらの主張は、民主党のヒラリークリントン系の「人道的介入主義派(Humanitarian Interventionism)」の主張そのものである。著書『アメリカ政治の秘密』で私は、あメリカ外交の潮流を「リアリズム(民主・共和)対共和党系のネオコンサヴァティヴィズム(Neoconservatism)・民主党系の人道的介入主義」の対立と分析した。この論稿の構造も、「ミアシャイマーとウォルト(リアリズム)対サリヴァン(人道的介入主義)」である。

 アメリカの国力や影響力が落ちており、世界の警察官としての役割を維持することはできない。バラク・オバマは大統領在任中にそのことをはっきりと述べている。しかし、民主党系の外交政策コミュニティは、今でも世界中を民主化し、非民主的な体制の国々の体制転換(regime change)を行おうと必死だ。しかし、そのような彼らの目的は既にばれている。そして、彼らの願いと実際の国力や影響力との間の乖離は大きくなるばかりで、その乖離はやがてアメリカに大きな災厄をもたらすことになる。アメリカの力を維持しようとあがけばあがくほどに、アメリカは苦しむことになる。

(貼り付けはじめ)

より多くかより少なくか、あるいは違うことをするか?(More, Less, or Different?

-アメリカの外交政策はどこへ向かうべきか、そしてどこへ向かうべきでないか

ジェイク・サリヴァン筆

2019年1・2月号(発行日:2018年12月11日)

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/reviews/review-essay/2018-12-11/more-less-or-different

2016年11月以来、アメリカの外交政策コミュニティ(foreign policy community)は自己探求の長期的な旅に乗り出し、リベラルな国際秩序の過去、現在、未来、そしてアメリカがどこに向かうのかという関連問題に関する論稿でこのような出版物のページを埋め尽くしている。大戦略(grand strategy)はここから始まる。一般的な感情は、同じことだけを求めるものではない。大きな問題は、ここ何年もなかった形で議論の対象となっている。アメリカの外交政策の目的は何だろうか? 対応するアプローチの変更を必要とする根本的な変化が世界に起きているだろうか?

この真剣で思慮深い会話に、スティーヴン・ウォルトとジョン・ミアシャイマーがそれぞれ新しい本を携えて登場し、それぞれがアメリカ外交政策の失敗についての長年の議論を新たな激しさで展開している。ウォルトの著書は『善意の地獄:アメリカの外交政策エリートと米国の優位性の衰退(The Hell of Good Intentions: America’s Foreign Policy Elite and the Decline of U.S. Primacy)』というタイトルであり、ミアシャイマーの著書は『大いなる妄想:リベラルな夢と国際的な現実(The Great Delusion: Liberal Dreams and International Realities)』というタイトルだ。タイトルは、民主政治体制の促進(democracy promotion)、人道的介入(humanitarian intervention)、国家建設(nation building)、NATOの拡大(NATO expansion)に反対するという、彼らが展開する主張についての明確なヒントを与えている。彼らの主張とは制限とオフショア・バランシング(restraint and offshore balancing)である。

2冊の本はそれぞれ、何か新しいことが含まれている。ウォルトの著書には、外交政策コミュニティに対する広範な攻撃が含まれており、様々な病理に囚われて国を迷わせている聖職者たちの暗い絵が複数の章にわたって描かれている。一方、ミアシャイマーは政治理論に目を向け、リベラリズム、ナショナリズム、リアリズムの関係を探求する。リベラリズムはナショナリズムとリアリズムに変更を加えたり、廃止したりすることはできず、この3つが交わる場合には、後者の2つが前者よりも優先される、と彼は主張している。ミアシャイマーは、アメリカ政治で理解されているようなリベラリズムではなく、古典的な意味でのリベラリズムについて語っていることをわざわざ強調しているが、「ソーシャルエンジニアリング(social engineering)」に対する彼の繰り返しの攻撃は、彼がそれを両方の意味で使っている可能性があることを明らかにしている。ミアシャイマーにとって、 3つの主義(isms)は最終的に、リベラルな覇権戦略(strategy of liberal hegemony)は必ず失敗する、そして実際にアメリカに失敗をもたらしているという結論に達するための代替ルートを提供する。

著者2人は多くの正当な指摘を行っている。しかし、彼らの本には、イラク戦争のような明らかな間違い(clear mistakes)と、外交政策のような面倒なビジネスではよくある不完全な選択肢から生じる欠陥のある結果(flawed outcomes)とを区別できないという問題もある。彼らはまた、あまりにも頻繁に風刺画の誘惑に負けて介入について揶揄し、制度構築(institution building)を軽視するが、これは冷戦後のアメリカのアプローチのより永続的かつ広範な特徴であった。しかし、最大の失望は、どちらの著者も、現在外交政策コミュニティを巻き込んでいる新たな議論や、アメリカの今後の戦略に関するやっかいな疑問に実際には取り組んでいないことだ。

●悪意と集団(BAD FAITH AND THE BLOB

ウォルトとミアシャイマーは、長い間、外交政策論議の中心的存在であった。2007年に単行本として出版されたアメリカ・イスラエル関係に関する2人の共同論争はさておき、2人は言論に不可欠な偶像打破(因習破壊、iconoclasm)を提供し、前向きな外交政策を支持する人々に、議論を研ぎ澄ませ、間違いについて考えさせ、彼らが避けて通りたいような難しい問題に直面させてきた。ミアシャイマーは、この新著を含め、あまりに多くのリベラルな国際主義者たち(liberal internationalists)が、ナショナリズムとアイデンティティの永続的な力と闘うことに失敗してきたことを指摘するのに、とりわけ力を発揮してきた。最近の歴史は、ミアシャイマーがより正しく、アメリカ外交がより間違っていることを証明している。この点や他の多くの点に関して、実務家たちはこれらの学者(そして学界全般)に対して、たとえ最終的に同意することにならなくても、より多くの意見を聞き、より徹底的に検討する義務がある。同じ意味で、これらの学者たち(そして学界全般)は、政策立案者たちに対して、立案者たちがたとえ決定において多くの失敗するにしても、誠意と誠実な奉仕を行う義務がある。

これが、ウォルトの議論の新たな側面を非常に厄介なものにしている理由だ。ウォルトは、彼の軽蔑の対象である「外交政策コミュニティ」を「定期的に国際問題に積極的に関与する個人および組織」と定義している。それより広い定義を思いつくのは難しい。しかしその後、ウォルトは多くの名前を挙げる。彼はシンクタンク、擁護団体、財団、そして「ブロブ(集団、blob)」を構成する特定の個人のリストでページを埋め尽くしているが、この用語はもともとオバマ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官だったベン・ローズが作った用語だが、ウォルトは繰り返し受け入れ、引用している。そして、彼の本のタイトルには「善意(good faith)」というフレーズが出てくるが、彼はそれ以外のものを考えている。「外交政策の専門家のほとんどは真の愛国者である」という必須の条件を付けた上で、ウォルトは彼らの意思決定の重要な動機と考えられるものに焦点を当てている。ウォルトは次のように書いている。

「アメリカ政府が海外で忙しくなればなるほど、外交政策の専門家の仕事は増え、世界的な問題への対処に充てられる国富の割合も増え、彼らの潜在的な影響力も大きくなる。外交政策がより抑制的になれば、外交政策コミュニティ全体の仕事は減り、その地位や存在感は低下し、著名な慈善団体の中には、こうしたテーマへの資金提供を減らすところも出てくるかもしれない。この意味で、リベラルな覇権主義と絶え間ないグローバルな活動は、外交政策コミュニティ全体にとっての完全雇用戦略を構成している」。

完全な開示を行う。ウォルトは間違いなく私にこのグループに分類しているようだ。したがって、私は彼の非人道的な主張を完全に客観的に評価することはできない。しかし、経験と常識から、それはまったく間違っていることが分かる。ウォルトは、国防総省や国務省やシチュエーション・ルームで、積極的な外交政策が国益と国際平和と進歩に関する世界大義にかなうと心から信じている外交官や公務員(もちろん政治任命者たち)と並んで働いたことはない。もしそうなら、彼は何がこれらの当局者を駆り立てているかについての見解を修正するだろうと私は確信している。

政府の行動に偏りがあるのは事実だ。しかし、ウォルトは、実務家たちが直面する決断にどれだけ苦悩しているか、そして何かを増やすか減らすか、あるいは違うことをすることのメリットについてどれほど熱心に議論するかを学ぶことになるだろう。自分の主張に反して、中東からの撤退に関するウォルト自身の考えを含め、非正統的な考えが実際にワシントンで審議されること、そして彼の提案が政策にならないのは、考慮されないからではないということに彼は驚くだろう。ウォルトは、因果関係の連鎖が、彼が想定しているものとは逆の方向に走っているという証拠を見つけるだろう。政策立案者たちは、外交政策が彼らの職業であるため、より野心的なアプローチを主張しない。彼らは、外交政策が野心的なことを達成できると信じているため、外交政策を自分の仕事にする傾向がある。実務家たちが学界にいる批評家たちを風刺することは、何の利益にもならない。逆も同様だ。

ウォルトは、外交政策の専門家たちの意図や動機が、彼らの見解が不変であることを意味し、彼らが学び、適応し、成長することができないという主張は間違いである。

ウォルトは、集団(ブロブ、blob)に悪意があると決めつけることで、2016年以降の外交政策コミュニティの変化を見逃している。彼は、ワシントンの外交政策協議があまりにもしばしば集団思考(groupthink)にとらわれてきたこと、従来の常識がいかに硬化し、そこから逸脱することがいかに困難であるか、地政学的傾向や民主政治体制の生来の魅力に関する多くの基本的前提があまりにも長い間当然のものとされてきたことなどについて、合理的な指摘をしている。しかし、外交政策の専門家たちの意図や動機が、彼らの見解が不変であることを意味し、彼らが学び、適応し、成長することができないというのは間違いである。

ウォルトもミアシャイマーも、ワシントン外交政策のコンセンサスにおける最近の重心の変化を無視している。2018年の討論会の内容は2002年の討論会の内容と同じではない。例えば、アメリカのイラク侵攻に対する彼らの情熱的な主張は、時間が経ったように凍結されているように見える。外交政策コミュニティのほとんどは、中東で再び選択の余地がある紛争が起こることに反対するだろう。現在の議論は、直接的な軍事力への依存を減らし、効果的な対テロ戦略をどのように追求するかについて争われている。国内への投資を重視する必要があるという彼らの主張にも同じことが当てはまる。2016年以来、リベラルな国際主義者たち(liberal internationalists)は外交政策と国内政策の関係についてより明確に考察するようになった。

●火星出身の政策立案者たち(POLICYMAKERS ARE FROM MARS

政策立案者たちにとって、ウォルトとミアシャイマーをどう扱えばいいのかが分からないことが多い。彼らは、ヨーロッパからの軍事的撤退のような思い切った行動によるバラ色の結果を含め、そのアプローチについて、彼らが描くリベラルな国際主義者(liberal internationalists)の誇張された肖像に似た確信をもって約束する。そして、彼らの議論のスタイルは、現在の問題を煽ることだ。彼らは、あらゆる問題、悲劇、予期せぬ副作用の責任をアメリカの意思決定者たち(U.S. decision-makers)になすりつける一方で、到達した成果や回避された災難はすべて当然だと考える。そのため、意図しない結果につながる行動は、意図しない結果につながる不作為とは異なる扱いを受ける。リビアへの介入は、ヨーロッパにおける難民危機に予期せぬ形で貢献したが、シリアへの介入の欠如もそうだったかもしれない。

これらの断絶が核心的な課題の一因となっている。学者たちの批評に対して政策立案者たちが行う議論は、全て反事実に寄りかからざるを得ない。もしワシントンがNATOを拡大していなかったら、現在ウクライナで起きていることはバルト海沿岸やポーランドで起きていただろうか? もし1990年代に日本から撤退していたら、今中国に対してどのような対応を取ることができていただろうか? 「もっと悪いことが起きていただろう!」というのは、議論の場では決して楽しい主張ではない。戦後のドイツと日本のケースを考えてみよう。ミアシャイマーは彼の著作の中盤でほんの少し言及しただけで、それを軽視している。もしアメリカが1945年にウォルトとミアシャイマーの処方箋に従ってアメリカ軍を撤退させ、ヨーロッパとアジアに自国の問題を自力で解決させていた場合の20世紀後半を想像してみて欲しい。そうであれば、この地域は現在とははるかに違った様相を呈していただろうし、おそらくははるかに暗い様相を呈していただろう。

ウォルトとミアシャイマーの基本的な戦略的前提は、アメリカの撤退はおそらく世界をより危険なものにするだろうが、その地理的条件とパワーを考えれば、アメリカは結果として生じるリスクを回避することも、有利になるように操作することもできる、ということのようだ。この論理の厳しさはさておき、それが正しいかどうかは全く分からない。ウォルトは、20世紀前半のオフショア・バランシング[offshore balancing](ウォルトが好む地域安全保障への手をかけないアプローチ)には「安心できる歴史(reassuring history)」があることの証明として、20世紀前半の例を挙げている。しかし、アメリカを巻き込むことが必至となった2つの破滅的な世界大戦以上に心強いものがあるだろうか。1930年代を成功とするアプローチを受け入れるのは難しい。

政策立案者たちとこの2人の学者の会話が火星と金星のような関係にある理由は他にもある。ウォルトとミアシャイマーは、世界各地からアメリカ軍をアメリカ本国に帰還させ、トラブルが発生したときに再びアメリカ軍を派遣するためにかかる費用をごまかすことができる。ウォルトとミアシャイマーは、イランのような国が核兵器を保有することで生じる不安定性を軽視することができる。一方、政策立案者たちは、地域の軍拡競争やテロリストの手に爆弾が渡る可能性など、最悪のシナリオを考える。アメリカの外交政策からリベラリズム(liberalism)を排除することを主張することはできるが、政策立案者たちは、アメリカの戦略だけでなく、アメリカのシステムがリベラリズムを指し示しているという事実に対処しなければならない。例えば、ニューヨーク・タイムズ紙は中国共産党の汚職調査を止めようとはしないし、パナマ文書の公開はNATOの拡張と同様にロシアのプーティン大統領の怒りを買った。最後に、ウォルトがジョージ・W・ブッシュ大統領、バラク・オバマ大統領、ドナルド・トランプ大統領は外交政策へのアプローチにおいて基本的に見分けがつかないと書くとき、彼は極端な一般性のレヴェルで行動しており、その分析は意味を失っている。

しかし、ある意味、そんなことは気晴らしのようなものだ。現実主義者たち(realists)とリベラルな国際主義者たち(liberal internationalists)の間の戦線(battle lines)は、あまりにもよく描かれており、議論もよくリハーサルされているので、今さら多くを付け加えることは難しい。過去25年間、ワシントンがウォルトとミアシャイマーのアプローチを採用していたら、現在の状況はどうなっていたかをめぐって争うことは、今後25年間、ワシントンが何をすべきかを議論することほど生産的ではない。また、政策立案者たちがいくつかの単純なルールに従いさえすれば、物事を正しく進めるのは簡単だと主張する一方で、ミアシャイマーとウォルト両著者は今日のアメリカ外交の中心的な議論、つまり、集団(ブロブ、blob)が2016年以来格闘している厄介な問題については驚くほど何も語っていない。

第一は、悪化する米中関係をどのように形成し、対立に転じることなく、アメリカの利益を増進させるかである。中国をアメリカ主導の秩序に統合することを前提とした、アメリカの戦略コミュニティにおける「責任ある利害関係者(responsible stakeholder)」たちのコンセンサスは崩壊した。新たなテーマは、ワシントンは中国を見誤ったということであり、今日の合言葉は「戦略的競争(strategic competition)」である(ただし、中国がソ連と違って失敗する運命にある訳ではないと仮定するならば、何のための競争なのかは明確でない)。中国に対する好意的な見方から暗い見方へと、振り子(pendulum)がこれほど速く揺れ動くのを見るのは幻惑的である。このような新しい状況下でどのように行動すべきか、という指針は、驚くほど不足している。

ウォルトは基本的に両手を上げて、「アジアはアメリカのリーダーシップが本当に「不可欠な(indispensable)」唯一の場所かもしれない」と書いている。("indispensable " "leadership "という言葉が大嫌いなウォルトにとって、これは極めて重要な発言である)。もしウォルトが、現代最大の国家安全保障問題に例外を設けなければならないのであれば、彼のアプローチ全体を見直す必要があることを示唆している。流行する前から中国タカ派だったミアシャイマーは、中国に関してはリアリズムと自制は乖離せざるを得ないと主張してきた。しかし、この最新刊では、「リベラルな覇権(liberal hegemony)」を破壊することに固執するあまり、中国の台頭の継続を応援している。国際システムから見た議論としては正しいかもしれないし、そうでないかもしれないが、国益を考えるアメリカの政策立案者たちにとっては特に有益ではない。また、どちらの著者も、政策立案者たちが伝統的な安全保障上の考慮事項と同様、経済、テクノロジー、アイデアに関する新たな分野での競争に備える助けにもなっていない。地政学(geopolitics)がサイバースペース、宇宙、経済、エネルギーなど、拡大する領域にわたって展開される中で、これは彼らの分析における深刻なギャップである。

この欠陥は、第一の問題と表裏一体となった第二の難問につながる。それは、 アメリカの主要な競争相手は、どの程度組織的に非自由主義(illiberalism)を輸出しているのか、そしてアメリカの戦略にとってどのような意味があるのか。アメリカ進歩センター(Center for American Progress)のケリー・マグザメンと共著者たちのような専門家たちは、中国とロシアがともに権威主義モデル(authoritarian models)を維持するという最優先の目的を持っていることをより強調している。ブルッキングス研究所のトーマス・ライトが言うように、中国とロシアは「権威主義にとって世界をより安全な場所にするために、自由で開かれた社会(free and open societies)を標的にするという目的を共有している」のであり、したがって、アメリカの外交政策は、大国間競争(great-power competition)の中で、民主政治体制の擁護を最重要視する必要がある。

ウォルトもミアシャイマーも、アメリカの主要な競争相手は主として現実主義的な考えに従って行動しており、国内政治は主要な要因ではないと仮定している。その結果、ミアシャイマーが言うように、アメリカの「民主政治体制を広めようとする衝動」に対して後ろ向きとなる批判を展開し、ますます野心的で、組織化され、効果的になっていく独裁政権から民主政治体制を守るという課題にはあまり触れていない。外交政策コミュニティの新たな診断は間違っているかもしれないし、誇張されているかもしれないが、もしそうなのであれば、この2人の著者はどちらもその理由を説明していない。アメリカの競争相手がアメリカの経済・政治システムに圧力をかけるために行っている、直接的な選挙干渉(direct election interference)から、影響力を高めるための手段として汚職(corruption)や国家資本主義(state capitalism)を戦略的に利用することまで、さまざまな慣行を扱っていない。そして、現在流行しつつある診断が正しいとすれば、NATOを解体し、ヨーロッパから撤退し、志を同じくする同盟諸国にアメリカからの恩寵を獲得するよう指示するという彼らの望ましい戦略は、本当に論理的な次のステップとなるのだろうか?

ミアシャイマーは、「海外でのリベラリズムの追求は、国内でのリベラリズムを弱体化させる」と主張している。しかし、国内での影響(盗聴、政府機密、「ディープ・ステート」)に関する彼が提示する現代の例は、テロとの戦いに関するものであり、リベラルなプロジェクトとは言い難い。このことは、3つ目の難しい問題を提起している。テロリズムがもたらす客観的な脅威と、アメリカ国民が感じる主観的な脅威とのギャップに、意思決定者はどのように対処すべきなのか? ウォルトもミアシャイマーも、より平和主義的な国民を対外的な軍事的冒険に引きずり込む、血に飢えた外交政策共同体の精巧な風刺画を描いている。しかし、海外でのテロとの戦いとなると、リベラルな国際主義(liberal internationalism)に懐疑的な政治家たちに後押しされた国民は、テロリズムを軍事力の行使を必要とする緊急の、さらには存亡にかかわる優先事項であると考える。外交政策コミュニティは、そのような要求を推進するというよりも、むしろそれに応えつつある。

オバマのイラクでの経験について考えてみよう。2011年、オバマはウォルトとミアシャイマーの脚本を参考に、アメリカ軍を残らず撤退させた。そして2014年夏、ISIS(イスラム国)がモスルに押し寄せ、アメリカ国民の意識の中心に躍り出た。オバマ大統領の国家安全保障ティームにいた私たちは、アメリカ軍の武力で対応すべきかどうか、どのように対応すべきかについて活発な議論を交わした。2人のアメリカ人ジャーナリストが斬首された後、国民はISISを封じ込めるためではなく、ISISを打ち負かすための迅速かつ決定的な行動を求めた。ISISを封じ込めるためではなく、ISISを打ち負かすための、迅速かつ決定的な行動を求めた。しかし、テロ問題の政治的側面と、扇動者に影響されやすいという性質は、政策立案者がテロを他の国家安全保障上の課題とは異なるカテゴリーに位置づけなければならないことを意味し、脅威の客観的尺度には限界があるということである。今後数年間の戦略や資源に関する議論では、このダイナミズムをいかに管理するかが重要になる。ウォルトにとってもミアシャイマーにとっても、これは盲点(blind spot)である。

もう1つの盲点は、政策立案者たちが現在取り組んでいる4つ目の問題だ。それは、国家間の地政学的な競争が激化し、各国から力が拡散していく中で、政策立案者たちは、全ての国家が共有する主要な脅威に対処するための効果的なメカニズムをどのように設計すればよいのだろうか? 気候変動、疫病の流行、大量破壊兵器の拡散、そして再び世界的な経済危機が起こるリスクに対処するためには、協力が必要である。少なくとも、このような集団行動を動員するという文脈においては、ミアシャイマーは、外交政策コミュニティの多くの人々の動機となる理論が、古典的自由主義よりも、制度(institutions)、相互依存(interdependence)、法の支配(rule of law)を重視する古典的共和主義(classical liberalism)に近いかもしれないことを見逃している。また、ウォルトもミアシャイマーも、アメリカのリーダーシップなしには、あるいは健全な制度に根ざした健全なルールなしには、あるいは非国家主体や準国家主体の役割を考慮することなしには、このような協力がどのように実現するかについて説得力のある説明をしていない。

ウォルトとミアシャイマーは共に、効果的な外交に敬意を表しているが、どちらもアメリカの大幅な縮小がアメリカの外交遂行能力を損なうことはなく、どのように強化するのかについて、信頼できる説明を与えていない。例えば、ウォルトはイラン核開発に関する合意を気に入っているようだが、壊滅的な制裁と軍事力による確かな脅威が合意の実現に果たした役割についてはほとんど評価していない。外交における安心感と決意を示すことは、アメリカ軍を世界規模に展開することの重要な利点であり、それがウォルトにとって、リビアのような間違いを犯しにくくすることと、成功した外交に従事しやすくすることのどちらをより重視するのかという疑問を生む。イランとの交渉のような外交の成功とは何を意味するのか?

ウォルトとミアシャイマーが指針を示さなかった最後の分野は、人道的介入(humanitarian intervention)の将来についてである。これは驚くべきことだ。過去25年間を経て、ワシントンは、人道的な理由によるアメリカの軍事介入に必要な条件があるとすれば、それは何なのかという問いに取り組んでいる。過去の介入を批判することは、リベラルな国際主義に反対する両学者にとって中心的な柱となっている。しかし、両者ともそのような介入は決して試みるべきではないと言い切ってはいない。ミアシャイマーのリビア作戦に対する批判は、大虐殺を止めるためにアメリカが介入すべきではなかったというものではない。それどころか、虐殺の脅威は「偽りの口実(false pretext)」、つまり全てでっち上げだったと断じている。これは彼にとって、本当の問題を避けるための都合のいい方法である。

ウォルトに関しては、「戦争を防止し、大量虐殺を食い止め、他国を説得して人権パフォーマンスを向上させる」ためにアメリカの力を行使することには、驚くほど肯定的である。実際、彼は「(1)危険が差し迫っており、(2)アメリカに予想されるコストが控えめで、(3)アメリカの人命に対する外国の人命の重要度が高く、(4)介入が事態を悪化させたり、無制限の関与につながったりしないことが明らかな場合には、大量殺戮を阻止するために武力を行使することを容認する」という。これらは、過去四半世紀にわたってアメリカが追求してきた人道的介入のそれぞれに、政策立案者たちが適用してきたのと同じ基準である。(イラクは人道的理由による戦争ではなかったので別のカテゴリーに属する)。冷戦後の様々な介入は、主として最初の3つの基準を満たすものであった。ウォルトは4つ目の基準について、これ以上の指針を示していない。この基準は、行動すべきか(リビア)、行動すべきでないか(シリア)をめぐる議論の大半を占め、困難なトレイドオフの大半はここにある。人道的介入にも戦略的動機がありうることを、どちらの学者も考慮していないという問題もある。シリアを焼け野原にすることは、大量の人命を失う危険性があるだけでなく、ウォルトとミアシャイマーが重要と考えている1つだけでなく2つの地域(ヨーロッパとペルシャ湾)を不安定化させる危険性もある。

●新たな収束(THE NEW CONVERGENCE

これら難問のリストは、全てを網羅しているとは言い難い。トランプ時代は、より広範な国際環境の変化とともに、多くの仮定を再び議論の対象としている。特にウォルトは、進歩主義者、自由主義者、そしてアカデミックな現実主義者が、リベラルな国際主義者を打ち負かすために力を合わせる絶好の機会だと考えている。実際の潮流は別の方向に進んでいるようだ。ヴァーモント州選出のバーニー・サンダース連邦上院議員やマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員による外交政策論評をはじめ、最近の多くの論考は、左派と中道の一種の収束への道を指し示している。この収束は完全なものとは言い難いが、いくつかの共通の優先事項が明らかになりつつある。国際経済政策の分配効果に対する関心の高まり、汚職や泥棒政治(クレプトクラシー、kleptocracy)、ネオファシズムとの闘いへの集中、軍事力行使よりも外交の重視、民主的同盟国への永続的な関与などである。おそらく最も重要なことは、左派と中道が、リベラル・プロジェクトの多くの成功が、世界的な貧困と疾病に対する進歩や、フランスとドイツの間の永続的な平和のように、競争する運命にあるのではなく、ヨーロッパ連合(EU)を形成するという、深遠なものであったという事実に対する認識と、この認識を共有しつつあることである。

このことは、ウォルトとミアシャイマーが今後の議論において果たすべき役割を否定するものではない。第一原則を重視する彼らの姿勢は、多くのことが争点となっている現在、特に重要である。異なる考え方をするようにという彼らの忠告は、変化の激しい時代には有益である。政策立案者たちはこれらの本を読み、彼らの主張を慎重に検討すべきである。そして、ウォルトとミアシャイマーは、誠意と好意を持って、この先数十年にどのように取り組むべきかについて、政策立案者たちと難問に取り組む機会を歓迎すべきだ。

※ジェイク・サリヴァン:カーネギー国際平和財団上級研究員。2011年から2013年まで国務省政策企画本部長、2013年から2014年まで国家安全保障問題担当米副大統領補佐官を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2月に入り、事務作業や2023年4月9日に東京・御茶ノ水の全電通労働会館において、副島隆彦の学問道場が主催する定例会の準備も少しずつありでブログの更新頻度がだいぶ落ちまして申し訳ありません。もっと多くの方々にお読みいただくためには更新頻度を上げるのが最善だと思いますが、なかなか難しい状況です。ご理解をいただきまして、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、今後もどうぞよろしくお願いいたします。

 アメリカ外交について皆さんはどのような考えを持っておられるだろうか。ここでは第二次世界大戦後の1946年から現在までについて考えていきたいが、ソ連との二極構造の下、自由主義陣営の旗頭として、ソ連と直接戦争をすることはなかったが、ヨーロッパ、東アジア、中南米といった地域で、ソ連と戦った。影響圏をめぐる戦いだった。社会主義の人気が落ち、社会主義国の生活の苦しさが明らかになるにつれ、共産圏、社会主義圏の敗北ということになり、最終的にはソ連崩壊に至り、冷戦はアメリカの勝利となった。その間には中国とソ連の仲違いを利用して、中国との国交正常化を達成した。アメリカは世界で唯一の超大国となった。日本は先の大戦でアメリカに無残な敗北を喫したが、「反共の防波堤」という役割を与えられ、経済成長に邁進することができた。

 21世紀に入り、2001年の911同時多発テロ事件が起きた。アメリカに対する反撃、ブローバック(blowback)ということになった。アメリカが世界を支配し、管理するまでならまだしも、非民主的な国々、独裁的な国々に対する恣意的な介入(王政や独裁性が良くないというならばどうしてもサウジアラビアや旧ソ連の独裁者が支配する国々の体制転換を行わないのか)を行って、体制転換する(民主政体、法の支配、資本主義、人権擁護などを急進的に実現する)という「理想主義」がアメリカ外交で幅を利かせて、世界の多くの国々が不幸になった。私の考えの根幹はこれだ。共和党のネオコン派(ジョージ・W・ブッシュ政権を牛耳った)、民主党の人道的介入主義派(バラク・オバマ政権第一期やジョー・バイデン政権を主導する、ヒラリー・クリントンを頭目とする人々)は、「理想主義」である。彼らの源流は世界革命を志向したトロツキー主義者である。彼らは世代を超えて、世界を理想的な「民主的な国々の集まり」にしようとしている。こうしたことは拙著『アメリカ政治の秘密』で詳しく分析している。

 イラク、アフガニスタン、アラブの春などでアメリカの外交は失敗した。こうした失敗をアメリカ外交の別の潮流であるリアリズムから見れば当然のことということになる。アメリカが普通の国であればそもそも介入主義など発生しないだろう。世界帝国、超大国であるために、介入できるだけの力(パワー)を持ってしまうのである。経済力も考えれば、世界を牛耳りたいと思うのもまた当然だし、それでうまくいっていたことも事実だ。しかし、アメリカの力が強かったことがアメリカの不幸の始まりであったとも言えるだろう。「外国のことなんてどうでもよいじゃないか、自分たちの国の中で穏やかに暮らせればよいではないか」という考えを持つ人々も多くいるが、彼らの考えはワシントン政治には反映されなかった。一般国民の意思が政治に反映される機会になりそうだったのはドナルド・トランプ政権時代だったがそれもまた逆転された。アメリカはまた不幸な時代を続けていくだろう。そして、世界中が不幸を共有することになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカはたとえアメリカ自体が止めたいと望んでも愚かであることは止められないだろう(The United States Couldn’t Stop Being Stupid if It Wanted To

-ワシントンにとって自己抑制は常に矛盾をはらんでいる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年12月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/13/the-united-states-couldnt-stop-being-stupid-if-it-wanted-to/

アメリカの「グローバル・リーダーシップ(global leadership)」を擁護する人々は、アメリカが自らを拡大しすぎ、愚かな政策を追求し、外交政策上の目標を達成できず、公然と掲げる政治原則に反したことを認めることがある。しかし、彼らはそのような行為を残念な異常事態(regrettable aberrations)と考え、米国はこうした、数少ない失敗から学び、将来においてより賢明な行動を取ることができると確信している。例えば、10年前、政治学者のスティーヴン・ブルックス、ジョン・アイケンベリー、ウィリアム・ウォールフォースは、イラク戦争が誤りであったことを認めながらも、「深い関与(deep engagement)」という彼らの好む政策がアメリカの大戦略(grand strategy)として正しい選択であることを主張した。彼らの考えでは、アメリカが良性の世界秩序を維持するために必要なことは、既存の関与を維持し、イラクを再び侵略しないことであった。バラク・オバマ前大統領が好んで言ったように、「愚かな行為(stupid shit)」を止めればいいのだ。

ジョージ・パッカーが最近『アトランティック』誌で発表したアメリカのパワーの擁護は、この使い古された論法の最新版となっている。パッカーは論稿の冒頭で、アメリカ人は「海外での聖戦(foreign crusades)をやりすぎ、そして縮小(retrenchments)をやりすぎ、普通の国なら絶妙なバランスを取ろうとするような間合いを決して取らない」と主張し、明らかに誤った比較をしている。しかし、世界中に700以上の軍事施設を持ち、世界のほとんどの海域に空母戦闘群を配備し、数十カ国と正式な同盟関係を結び、現在ロシアに対する代理戦争、中国に対する経済戦争、アフリカでの対テロ作戦、さらにイラン、キューバ、北朝鮮などの各国政府の弱体化と将来の打倒に向けた果てしない努力をしている国(アメリカ)が、過度の「縮小(retrenchment)」を非難されることはないだろう。パッカーの考える「良いバランス(fine balance)」、つまり、暑すぎず、寒すぎず、ちょうど良い外交政策とは、アメリカが世界のほぼ全域で野心的な目標に取り組むことである。

残念ながら、パッカーをはじめとするアメリカの優位性(U.S. primacy)を擁護する人々は、アメリカのような強力な自由主義国家が外交政策の野心を制限することがいかに困難であるかを過小評価している。私はアメリカのリベラルな価値観を好むが、リベラルな価値観と巨大なパワーの組み合わせは、アメリカがやり過ぎること、むしろやり過ぎないことをほぼ必然としている。もしパッカーが絶妙なバランスを好むのであれば、介入主義的な衝動(interventionist impulse)の方向性についてもっと心配する必要があり、それを抑制しようとする人々についてはあまり心配する必要はないだろう。

なぜアメリカは自制を伴う(with restraint)行動を取ることが難しいのだろうか? 第一の問題は、リベラリズム(1liberalism)そのものだ。リベラリズムは、全ての人間は確固とした自然権[natural rights](例えば「生命、自由、幸福の追求」)を持っているという主張から始まる。リベラリズムを信奉する人々にとって、政治的課題の核心は、我々を互いから守るのに十分なほど強力でありながら、同時に人々の権利を奪うほどには強力ではなく、チェックされる政治制度(political institutions)を作り出すことである。リベラルな国家は、政治権力の分割、選挙を通しての指導者の責任追求、法の支配、思想・言論・結社の自由の保護、寛容の規範の重視によって、不完全ながらもこのバランス感覚を獲得している。従って、真のリベラル派にとって、唯一の合法的な政府とは、これらの特徴を持ち、それを用いて各市民の自然権を保護する政府なのだ。

しかし、これらの原則は、全ての人間が同一の権利を有するという主張から始まっているため、リベラリズムは、単一の国家や人類の一部分にさえも限定することができず、その前提に一貫性を保つことができない。アメリカ人、デンマーク人、オーストラリア人、スペイン人、韓国人には権利があるが、ベラルーシ、ロシア、イラン、中国、サウジアラビア、ヨルダン川西岸地区、その他多くの場所に住んでいる人々には権利がない、と宣言できる真のリベラル派は存在しない。このため、自由主義国家はジョン・ミアシャイマーが言うところの「十字軍の衝動(crusader impulse)」、つまり、パワーの許す限り自由主義原則を広めたいという願望に強く傾く。ところで、マルクス・レーニン主義であれ、全人類を特定の信仰の支配下に置くことを使命とする様々な宗教運動であれ、他の様々な普遍主義的イデオロギー(universalist ideologies)にも同じ問題を持っている。ある国とその指導者が、自分たちの理想が社会を組織し、統治するための唯一の適切な方法であると心から信じている場合、その理想を受け入れるように他者を説得し、強制しようとする。少なくとも、そうすれば、異なる考えを持つ人々との摩擦(friction)は避けられない。

第二に、アメリカは強大なパワーを有しているため、自制して行動することが困難である。1960年代、連邦上院軍事委員会の委員長を務めたリチャード・B・ラッセル元連邦上院議員は、「もし私たちがどこに行っても、何をするのも簡単ならば、私たちは常にどこかに行き、何かをすることになるだろう」と述べている。世界のほぼ全域で問題が発生した場合、アメリカは常にそれに対して何かしようとすることができる。弱い国家は同じ自由度を持たず、したがって同じ誘惑に直面することもない。ニュージーランドは健全な自由民主国家であり、多くの立派な資質を備えているが、ロシアのウクライナ侵攻、イランの核開発、中国の南シナ海での侵略に対してニュージーランドが率先して対処するとは誰も考えない。

対照的に、米大統領執務室に座る人は、問題が発生した時、あるいは好機が訪れた時に、多くの選択肢を手にすることができる。米大統領は、制裁(sanctions)を科す、封鎖(blockade)を命じ、武力行使の脅し(あるいは直接の武力行使)を発し、その他多くの行動を取ることができ、しかもほとんどの場合、アメリカを、少なくとも短期的には、深刻な危険に晒すことはない。このような状況下で、行動の誘惑に抗することは極めて困難である。特に、いかなる自制的行動も意志の欠如、宥和的行動(act of appeasement)、アメリカの信頼性への致命的打撃として非難する批判者の大群が控えている場合、なおさらである。

第三に、米国は70年以上にわたって世界のパワーの頂点に君臨してきたため、現在、その卓越した世界的役割を維持することに既得権(vested interests)を持つ官僚や企業の強力な勢力が存在している。ドワイト・アイゼンハワー元米大統領が1961年の大統領退任演説で警告したように、第二次世界大戦と冷戦初期の強力な「軍産複合体(military-industrial complex)」の出現は、アメリカの外交政策をより軍事的で介入的な方向に永久に歪曲させる重大な進展があった。その影響は、特に外交政策シンクタンクの世界において顕著であり、その大部分はアメリカの関与を促進し、アメリカ中心の世界秩序(U.S.-centered world order)を擁護することに専念している。その結果、数年前にザック・ボーチャンプが指摘したように、「ワシントンの外交政策の議論は、ほとんどが中道と右派の間で行われる傾向にある。問題は、アメリカがまったく武力を行使しないかどうかよりも、どの程度武力を行使すべきなのかということである」ということである。

第四に、以前にも述べたように、リベラルなアメリカは、他の多くの国にはない方法で外国の影響にオープンである。外国政府は、ワシントン内部、特に連邦議会で自分たちの主張を通すためにロビー活動会社を雇うことができるし、場合によっては自分たちのために行動を起こすよう圧力をかけてくれる国内団体に頼ることもできる。また、アメリカの大義(cause)を推進するシンクタンクに多額の寄付をしたり、外国の指導者がアメリカの有力な出版物に論説や記事を掲載し、エリートや大衆の意見に揺さぶりをかけたりすることも可能である。もちろん、このような努力は常に成功するわけではないが、正味の効果は、アメリカの行動を減らすのではなく、むしろ増やすように促す傾向がある。

更に言えば、アメリカが新しい同盟諸国、「パートナー」、「特別な関係(special relationship)」を加えるたびに、アメリカの耳元でささやく外国の声の数は増えている。かつて、アメリカの対ヨーロッパ政策を形成しようとするNATOの同盟国は11カ国だったが、現在は29カ国である。これらの国の中には集団防衛(collective defense)に多大な資源を提供している国もあるが、その他の国の中には弱く脆弱で、対等なパートナーというよりは保護国(protectorates)と見るのが適切であろう国も存在する。当然のことながら、これらの国々は、アメリカが公約を守り、自国を保護するよう声高に主張し、グローバルパワーとしてのアメリカの信頼性が危険に晒され、より穏やかな世界秩序への希望は、彼らの助言を受けることにかかっていると警告している。多くのクライアント国によれば、アメリカは深く関与すればするほど、更により深く関与し続けなければならない。

誤解しないでいただきたい。私は同盟諸国の懸念を無視したり、彼らの助言を頭ごなしに否定したりすることを主張しているのではない。同盟諸国の指導者たちは、現代の世界規模の諸問題についてしばしば賢明なことを言うし、アメリカが自国内からの助言だけに頼らず、フランスやドイツの警告に耳を傾けていれば、より良い結果になったであろう例を考えるのは簡単だ(イラクについてはどうだろうか?)。しかし、外交政策分野の「エリートたち(Blob)」の多くが持つ介入主義的衝動(interventionist impulse)と、アメリカの保護と援助を望む国々が外交政策に関する議論に熱心に挿入する利己的な助言の間には、依然として不健康な共生が存在し得る。驚くべきことではないのだが、アメリカの海外パートナーは通常、アメリカに自分たちのためにもっとやってもらうことを望み、アメリカが少し手を引くことを勧めることはほとんどない。

このような様々な要素を組み合わせると、なぜアメリカが愚かなことを止めるのが難しいのかが分かるだろう。イデオロギー、パワー、官僚的な勢い、そしてアメリカのパワーを自国の目的のために利用しようとする他国の欲望が相まって、何かをしたいという強力な原因を生み出し、誘惑が生じた時に明確な優先順位を決めてそれを守ることができない。パッカーや他の人々が望んでいると思われる絶妙なバランスを達成するためには、このような傾向を擁護したり強化したりするのではなく、それに対抗するためにもっと多くのことがなされる必要がある。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 2021年に正式に発足したジョー・バイデン政権1期目は後半戦に入っている。2024年の大統領選挙もスタートに近づきつつある。中間選挙では大敗しなかったということで、バイデン政権の外交政策は及第点だという主張もあるが、果たしてそうであろうか?私はバイデン政権がヒラリー政権であり、オバマ政権の焼き直しだと主張する。

 ヒラリー・クリントン元国務長官をはじめとする人道的介入主義(Humanitarian Interventionism)という民主党の外交政策の流れがある。これは共和党のネオコンと対をなす外交潮流である。外国の諸問題に介入し、問題のある政府や独裁者を打倒し、体制転換を行う。そして、自由、人権、資本主義、民主政治体制といった西側の価値観を人工的に植え付けるということだ。ネオコンと基本的に同じ考えだ。ネオコンが牛耳ったジョージ・W・ブッシュ政権、ヒラリーが外交政策を主導したバラク・オバマ政権1期目は、アメリカの外交政策の失敗の歴史だった。これに嫌気がさしたことで、アメリカ国民は、ヒラリー・クリントンではなく、国内問題解決優先主義(アイソレイショニズム、Isolationism)、「アメリカ・ファースト」のドナルド・トランプを大統領に選んだ。
 しかし、2020年の大統領選挙ではジョー・バイデンが大統領に当選した。バイデン政権の外交政策は基本的にオバマ政権1期目の焼き直しだ。ウクライナをめぐっては、私は今から考えれば、トランプがバイデン父子のウクライナとのかかわりをウクライナに捜査してもらうことの引き換えで軍事支援を行うと述べたことは正しかったと考える。バイデンは副大統領時代からウクライナに深くかかわり、ウクライナの実質的なNATO加盟国化を進め、ロシアに脅威を与えた。そのバイデンが大統領になってウクライナ支援を強化したことがウクライナ戦争につながったということが言える。
 アメリカは海外への積極的な介入を進めることで、再び間違いを犯そうとしている。それを修正しようにもその修正の仕方が分からない、そのまま突っ走るしかないというのが今のバイデン政権の外交政策を立案する面々だ。下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトはこのことを「メカニック(整備士)はいるが設計者がいない」状態と形容している。設計図は既にヒラリー・クリントンが国務長官の時にできていた。その設計図のままに、ところどころ修理をしながらやるしかないというのが現状だ。これでは世界の不幸がこれからも続くということになる。私は常々「アメリカの理想主義(Idealism)が世界を壊す」ということを考えている。理想は暴走を生み、現実を見えなくする。結果として大きな地獄を生み出す。

(貼り付けはじめ)

バイデンがアメリカの外交政策を修理するためには整備士(メカニック)ではなく、設計者(アーキテクト)が必要だ(Biden Needs Architects, Not Mechanics, to Fix U.S. Foreign Policy

-アメリカの中間選挙が近づくにつれ、ワシントンは集団思考とヴィジョンの欠如に悩まされ、新しい時代の問題に対する創造的な解決策を阻んでいる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年7月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/12/biden-foreign-policy-outdated-groupthink/

私は休暇から戻ったばかりだが、ジョー・バイデン米大統領は現在中東諸国を訪問している。今回の訪問について私は、バイデン政権の外交政策のパフォーマンスを評価するための絶好の機会だと考えた。私は2020年の大統領選挙でバイデンに投票した。彼が当選して安堵した。それでも、バイデンと内部で競争がない(ノンライヴァル)ティームが21世紀の外交政策と大戦略を設計する任務を果たせないのではないかと心配してきた。明らかな危険(the obvious danger)という概念は、冷戦中にうまく機能したかもしれないが、現在は効果があるのかないのか分からない、様々な特効薬、発言と映像、および政策に頼ってばかりになっている。

バイデン政権が何をすると言ったか覚えているだろうか? アメリカの同盟関係を活性化し、独裁政治の台頭に対抗して民主政治体制世界を団結させる。中国にレーザーのように照準を合わせ、主導権争いに勝利するつもりだと主張していた。気候変動は最優先課題である。アメリカはまた、イランとの核取引に再び加わり、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を「除け者(pariah)」と呼び、「永遠の戦争(forever wars)」を終わらせ、それがどんな意味であれ「中間層(middle class)」のための外交(経済)政策をアメリカ人に与える位置を持っていた。そして、アントニー・ブリンケン米国務長官は、人権を政権の外交政策の「中心(at the center)」に据えることを約束した。

それで、これまでのところ、どうなっているのだろうか?

公正を期すために言えば、バイデン&カンパニー(バイデン株式会社)は初期の公約のいくつかを実現した。彼はアフガニスタン戦争を終結させたが、結末は混乱してしまった。これはおそらく避けられなかったことだろう。バイデンは、前任者の悪ふざけによって疎外された同盟諸国を宥め、ウクライナでの戦争は、当面の間、NATO(ネイトー)に新しい息吹を与えた。アメリカはパリ協定に再加盟した。バイデンは就任以来、いくつかの失策を犯してきたが(イギリス、オーストラリアとのいわゆるAUKUS[オウカス]潜水艦の素人同然の契約展開や大統領の口が滑ったことを何度も撤回する必要性など)、バイデンの下での18カ月間の失策は、ドナルド・トランプ前米大統領のショーの任意の2週間よりも少なかった。

しかし、全体として、バイデン政権が明確な説得力を持ち、成功する戦略を有している兆候はほとんどない。この1年半の間に追求した様々な取り組みや対応を見てみると、バイデン政権の記録は印象に残らない。

ウクライナについて言えば、バイデンのティームは、ロシアの侵攻に対して大西洋をまたぐ形で対応を行った。実際に開戦に至るまでの諜報活動の巧みで政治的に効果的な活用に始まりうまく指揮を執った。ヨーロッパが(ほぼ)一体となって対応し、ドイツなどが(ほぼ)助け舟を出したのは、バイデンの努力(とウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の巧みな公共外交[パブリックディプロマシー、public diplomacy])のおかげであり、ウラジミール・プーティン大統領に大きな衝撃を与えたのは間違いないだろう。

しかし、アメリカ人は、ビル・クリントン元大統領の時代に始まり、その後の全ての指導者の時代に続いた一連の間違いである、より大きな状況に対するアメリカの誤った対処から目を背けるべきではない。この問題を提起することは激しい論争となり、これらの不手際の立役者は、西側の政策がこの悲劇と何の関係もないことを否定するために不自然なまでに力を尽くしている。しかし、プーティンの侵攻を古典的な予防戦争(preventive war)と見なさないわけにはいかない。ウクライナを武装化し、欧米の軌道に乗せるというアメリカの加速された努力を挫くために行われた不法な侵攻ということになる。

プーティンが軍隊を動員し、自らの懸念が晴らされねば侵攻すると明言した時、NATO(ネイトー)の「門戸開放政策(open door policy)」の終了を検討することさえ拒否し続けたバイデン政権は戦争の到来を約束する結果となった。1990年代にウクライナに旧ソ連から受け継いだ核兵器を放棄させ、将来のロシアの攻撃に対する強力な抑止力を取り除いたのに、西側がロシアの懸念を認めず、モスクワがどう反応するかも予想しなかったのは、とんでもない戦略的誤算であった。

私が心配なのは(そしてバイデンと民主党側を本当に心配するべきなのは)次の点である。ウクライナの英雄的な抵抗と数十億ドルに及ぶ西側の軍事支援があっても、ロシアがウクライナの領土のかなりの部分を掌握することを防ぐことができていない。制裁は時間をかけてロシアを弱体化させるだろうが、おそらくプーティンをクレムリンから追い出したり、撤退を納得させたりすることはできないだろう。その結果、西側の決定的な勝利ではなく、長引く膠着状態に陥り、ウクライナ(および食糧やエネルギー不足に直面している発展途上諸国)にとって恐ろしいほどの代償を払うことになるだろう。ロシアがより悪い状況に陥ったとしても、これを外交政策の大成功と言い張ることはできないだろう。

更に加えれば、この危機によって、アメリカは冷戦時代の習慣に逆戻りし、再びヨーロッパの第一対応者(ファーストレスポンダー、first responder)として行動するようになった。ヨーロッパの豊かな民主政治体制諸国には自衛のための十分な潜在能力があるが、特にロシアが時間とともにかなり弱体化することを考えると、アメリカ(アンクルサム、Uncle Sam)は再び、彼ら自身と同じ程度に彼らを守るために行動するようになったという点は重要だ。NATO(ネイト―)は新しい戦略コンセプトを掲げているが、ヨーロッパの加盟諸国はそのコンセプトの高尚な美辞麗句に見合うだけのハードパワー(軍事)能力を持っていない。そして、アメリカは更に多くの軍隊、資金、武器をヨーロッパ大陸に送っているが、ヨーロッパ諸国が公約を守り、軍隊を再建すると本気で信じている人がいるだろうか? 歴史を振り返れば、ヨーロッパ諸国が歴史を守る可能性はほとんどない。

アジア地域ではその記録はあまり良くない。バイデンは中国との競争に新たに焦点を当てることを誓って就任したが、実質的な内容を伴う明確で首尾一貫したアジア戦略を探しても無駄なことだ。日米豪印の四極安全保障対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)は協議の場ではあっても同盟の場ではないし、大きな話題となったAUKUS(オウカス)協定も、アジアの海軍力のバランスに影響を与えることは(あったとしても)今後10年以上はないだろう。

中国はこの地域で経済的足跡を拡大し続けており、アメリカは最近の「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity)」のような限定的な取り組みや、ソロモン諸島のような場所での中国の進出に対するその場しのぎの対応で応じている。しかし、アメリカの公約は連邦議会で承認された正式な貿易協定に組み込まれていないため、アジアのパートナー諸国は、新大統領が方針を転換するかもしれないと当然ながら懸念している。この問題はバイデンの責任ではないが、アジアの同盟諸国はいずれ、アメリカは中国が提供できるような市場アクセスや投資機会を提供できないし、アメリカは他国の出来事に気を取られやすく、信頼できる保証人にはなり得ないと結論付ける可能性がある。

中国自体については、バイデン政権はトランプ大統領の輸出規制を維持し、台湾防衛の公約に近づき、多くの反中国的なレトリックにふけるようになった。しかし、気候変動問題など協力が必要な分野と競争が避けられない分野とを区別して、対中アプローチを継続的に展開する試みが欠落している。中国の行動やレトリックはこれを容易にするものではないが、地球上で2番目に強い国である中国に対処するための明確な戦略の欠如は顕著である。

中東地域では、バイデンはイランとの核合意を回復し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマンのような不正な指導者に厳しい態度で臨むことを公約に掲げて就任した。また、バイデンとブリンケンは、人権や「ルールに基づく秩序(rules-based order)」を再構築する必要性について多くを語った。しかし、実際には、バイデンとブリンケンはトランプと同様に取引重視であり、実際、この地域に対する政権のアプローチは、本質的に「トランプ・ライト(Trump=lite、訳者註:トランプ色を薄めた戦術)」である。イランのハサン・ロウハニ前大統領が在任中に核合意への復帰を躊躇した結果、新たな合意の見込みはほぼ消滅し、イランはかつてないほど核兵器に近づいた。

アメリカはイエメンでのサウジアラビアの戦争を黙認し続け、バイデンはムハンマド・ビン・サルマンを「除け者」にすると宣言したがそれは頓挫した。ヨルダン川西岸をさらに吸収しようとするイスラエルの執拗な努力は、いつものように意味のない反応を示す。著名なパレスチナ系アメリカ人ジャーナリストであるシリーン・アブ・アクレの射殺事件は様々な調査によれば、ほぼ確実にイスラエル兵によるものだが、彼女がアメリカ国民であったにもかかわらず、政権からは鋭い言葉さえ発せられない。トランプはアメリカの中東の顧客(クライアント)たちが望むことはほとんど何でもさせた。バイデンとブリンケンはそれに倣っている。

バイデンが今週イスラエルとサウジアラビアを訪問するというのも、戦略的な観点からするといささか不可解なことである。ホスト国はバイデンに新たな安全保障の約束を迫るだろうし、それはアメリカを次の地域紛争に容易に引きずり込むことになる。このような措置は、イランがついに核武装に走ることを誘発しかねない。そうなれば、バイデン政権は予防戦争を行うか、核武装したイランという現実を受け入れるかのどちらかを迫られることになる。しかし、バイデンが現地の権力者の誘惑に抵抗すれば、彼らは苛立って失望し、今回の訪問は当然ながら時間の無駄だったと判断されることになる。それではなぜ行くのか?

本誌の寄稿者であるアーロン・デイヴィッド・ミラーとスティーヴン・サイモンは正しい。バイデンは、主に国内的な理由で、ウクライナ戦争によって引き起こされたエネルギーコストの高騰に対処しようとするためにこれをやっている。しかし、その見方は酷いものだ。アメリカ大統領は、非民主的な従属国家にもっと石油を産出させるために、中東に手ぶらで飛び、真の大国のように行動する代わりに、議論したい問題があれば、ワシントンに飛んできて歓迎すると言っているのだ。彼が得る国内的な利益は、ささやかで短期に終わるだろう。

最後に、バイデンとそのティームは、米国の民主的価値の重要性と、独裁政治に対抗する「自由世界(free world)」の団結を繰り返し強調してきた。これは価値ある目標だが、プーティンや中国の習近平国家主席のような人々から意図しない援助を受けたにもかかわらず、それを示すものはあまりない。また、最近開催された米州首脳会議では、メキシコ、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルヴァドルの各首脳が出席を拒否し、出席した一部の首脳がこの地域におけるアメリカの役割を批判する機会として利用したため、その成果は不十分なものとなった。

更に重要なことは、アメリカ自身が深く分裂し、永久に少数派の支配へと向かっているこの時期に、そして正統性が減少している連邦最高裁が、銃製造者や企業には女性よりも権利があると考えるような時に、なぜアメリカは他の国々が「民主的価値(democratic values)」を受け入れることを期待しなければならないのだろうか? もしバイデンが海外で民主主義を拡大したいのであれば、まず手始めに国内でもっとうまく民主政治体制を守ることから始めなければならない。

私は、賢明で経験豊富な外交政策の達人たちが、なぜこのような失敗を犯しているのか、その原因を突き止めたいと考えている。バイデンは、自分と同じように世界を見て、何十年にもわたってアメリカの外交政策に影響を与えてきた使い古された手法にこの上なく慣れている人々を、意図的に一つのティームに集めたのである。

しかし、「グローバル・リーダーシップ(global leadership)」、「共有された価値観(shared values)」、「ルールに基づく秩序(a rules-based order)」、「自由世界(free world)」といったキャッチフレーズは、戦略の代用にはならない。戦略には、国際情勢を形成する中心的な力を特定する一連の一般原則、その論理から導き出される明確な優先順位、そして国をより安全または繁栄(あるいはその両方)させるための一連の政策ステップが必要である。

国家が脅威の均衡(balance threats)を図る傾向を無視したり、経済的相互依存(economic interdependence)や強固な制度が紛争を不可能にすると考えたり、ナショナリズムの力を無視するなど、戦略の基礎となる世界観に欠陥があれば、優先順位が狂ってしまい、いかなる取り組みも裏目に出る可能性が高くなる。

世界は複雑な場所であり、ある分野での行動が他の分野での努力を損なうことも起きる。明確で根拠のある優先順位がない限り、これらの相殺取引(トレイドオフ、trade-offs)を賢く解決することはほとんど不可能だ。明確な戦略がなければ、予期せぬ出来事によって簡単に軌道修正されてしまうし、国内の有権者、外国のロビー団体、自由世界のリーダーとしてのアメリカの自画像に訴える術を身につけた同盟国からの圧力に対抗することも難しくなる。

バイデンとそのティームは、外交政策のマシーンを動かす方法を知っているという意味では、熟練した整備士(メカニック)たちの一群のようなものである。しかし、彼らが操作するために訓練された国内および国際機関は、もはやその目的に適っておらず、経験豊富なフォードやシボレーの整備士がテスラを整備しようとするような結果に終わっている。当然のことながら、機械が生み出す政策対応は、世界が望むような結果をもたらしてはいない。

バイデンに必要なのは整備士ではなく、建築家(アーキテクト)たちだ。今日の課題により適した新しい取り決めとアプローチを生み出す想像力とヴィジョンを持った人たちだ。残念ながら、今日のエスタブリッシュメントは、適合性と、安全でますます懐古的なコンセンサスの中に留まることに高い優先順位を置いているため、創造量とヴィジョンを持つ人々が権力の座に就くことはないのだ。

希望を持てる理由はあるだろうか? 確かに。アメリカ人たちは、主要な敵国が大きな間違いを犯しているという事実に、いくらかの慰めを得ることができるかもしれない。プーティンのウクライナ侵攻は彼の期待通りにはいかず、中国のゼロ新型コロナウイルス感染拡大政策は中国経済の深刻な構造的不均衡を悪化させ、両国ともほんの数年前より強力な世界的敵対勢力に直面している。

しかし、モスクワや北京がワシントンよりも多くの誤りを犯すことを期待することは、長期的なアプローチとして有望とはいえない。他国の失敗を当てにするのではなく、賢明な政策と効果的な実行こそが、成功への唯一の道だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権が成立するならば、外交政策分野では、バイデンが副大統領だったバラク・オバマ政権時代に参加していた人物たちが、主要最高幹部として登場するだろう。以下の記事は、今年の夏ごろの記事だが、ジョー・バイデン陣営には、数多くの外交専門家たちがヴォランティアで数多くのワーキング・グループに参加していることを紹介している。ここで作られた政策提言や助言を取りまとめるのが、インナーサークルと呼ばれる少数によるグループで、このグループのメンバーが政権の外交政策の中枢を担うことになる。これはあくまでバイデン政権が成立しての話だ。

 一言加えておくと、今のところ、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスによる勝利宣言はあったが、正式にはまだ選挙人270名獲得を確実にした候補者はいない。まだ5つの州では最多得票の候補者が正式に発表されていないし、その他の州でも選挙の結果や方法について裁判が提起されている。

※「RealClearPolitics」の選挙結果ページは以下の通り↓
https://www.realclearpolitics.com/elections/live_results/2020/president/

バイデンの外交政策の面での側近はアントニー・ブリンケンだ。アントニー・ブリンケンは第一次、第二次ビル・クリントン政権のホワイトハウスで国家安全保障会議のスタッフを務めた。大統領特別アシスタントとして、演説草稿づくりに関わり、ヨーロッパやカナダ担当の上級部長を務めた(ブリンケンはフランスの高校を卒業しているのでフランス語が堪能)。こうしたことからビル・クリントン、ヒラリー・クリントンとの関係も深い。
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バイデン(左)とブリンケン

2008年の大統領選挙では最初はバイデン陣営に加わり、バイデンがバラク・オバマの副大統領候補となってから、オバマ・バイデン陣営に加わった。オバマ政権では、国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。
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ヘインズ

 アヴリル・ヘインズは日本の柔道の殿堂・講道館に1年間留学した経験を持つ変わり種だ。物理学の大学院生を辞めてバーや本屋を経営し、その後法科大学院に入って弁護士資格を取得した。その後、連邦上院の外交関係の仕事をしている時にバイデンと知り合ったようだ。バラク・オバマ政権では2013年から15年まで女性初のCIA副長官を務め、15年から17年にかけては、国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務めた。私は2014年末にヘインズについて、このブログで取り上げている。

※「ホワイトハウスの人事に関する記事をご紹介します」(2014年12月29日)↓

http://suinikki.blog.jp/archives/19038692.html

 ジェイク・サリヴァンはオバマ政権内で若手(30代)のエリートとして登場した。拙著『アメリカ政治の秘密』で私はいち早くサリヴァンに注目した。私はこの本を書いたときに、「サリヴァンは将来、大統領になるか、国務長官になるか、くらいの人だ」と述べたが、周囲の人たちからは「それは言い過ぎではないか」とたしなめられた。彼は自分の出身地から連邦議員に出馬することも視野に入れていた時期もあった。しかし、彼は線が細い感じで、表方の人でもないような感じだと私も考え直した。そこがピート・ブティジェッジとは違う点だ。サリヴァンはミネソタ州出身で、今年の大統領選挙民主党予備選挙に出馬した地元選出のエイミー・クロウブッシャー連邦上院議員の首席補佐官を務めていた時に、ヒラリー・クリントンに紹介された。2008年の大統領選挙ではまずヒラリー陣営に参加し、その後、オバマ陣営に参加した。
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訪日時のサリヴァン(右は船橋洋一)
 サリヴァンは2011年から2013年まで国務省政策企画本部長に抜擢された。初代の本部長はジョージ・ケナン、その後はWW・ロストウ、アンソニー・レイク、ポール・ウォルフォビッッツなど後に大物になる人々がこの地位を経験している。外交政策分野における登竜門である。2013年から14年にかけてはバイデン副大統領の、国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。イランとの核開発をめぐる合意の根回しを行った。2016年大統領選挙ではヒラリー陣営の幹部を務めた。

※「私がずっと注目している重要人物ジェイク・サリヴァンについての最新記事をご紹介します①」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/72472427.html

 東アジア担当のワーキング・グループを率いるのはイーライ・ラトナーとジュン・パクでどちらも日本専門ではなく、中国と朝鮮半島だ。もちろん日本についての知識は他の人たちよりも格段にあるだろうが、日本の専門ではないということだけは確かだ。
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ラトナー
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ジュン・パク

アメリカの大学院留学時代に中国政治関連の勉強会で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者エズラ・ヴォーゲル教授に会った時に少し話をした際に、私が鹿児島出身だと知ると、「ラ・サール出身ですか?(嫌なこと聞くなぁ、中学受験で失敗しました)」とか「大隅半島で活動していたNPOはどうなりましたか?(名前だけは聞いたことがあったけど詳しくないんですよ)」などと日本語で会話した。その頃にはヴォーゲル教授の関心は中国に移っていて、元々日本語同じく流暢だった中国語を使って研究を展開していた。知日派というのはこれくらいの人を言うとなると、アメリカでの知日派というのは減少しているのだろうと思う。

バラク・オバマ政権下では、1期目の4年間はヒラリー・クリントンが国務長官を務め、2期目の4年間はジョン・ケリーが国務長官となった。外交政策としては、人道的介入主義を基にしたものから、現実主義(リアリズム)的なものに変化した。バラク・オバマは、ジョージ・HW・ブッシュ政権の抑制的な外交政策を目指していたが、1期目にヒラリーを国務長官にしてしまったことでそれができなかった。2期目の特筆すべき出来事としては、キューバとの国交回復とイランとの核開発をめぐる合意があった。

 もし、バイデン政権ができたとして、どのようになるかと考えれば、私は最悪だった息子ブッシュ政権のようになるのだろうと考えている。あの政権の実質的な「大統領」は、ディック・チェイニー副大統領だった。そして、ネオコン派が政権内を牛耳った。

 バイデンの役割はトランプに勝ったことで終わった、後は4年間、ホワイトハウスでボヤっとしておけ、ということになり、カマラ・ハリスが実質的に政権内を取り仕切る。この民主党支持者たちの間でもまったく人気のない人物は、「女性によるガラスの天井の破壊」を掲げるだろう。そうなれば、ヒラリー派のスーザン・ライスやミッシェル・フロノイ当たりが出てくるだろう。バイデンの側近たちが活動できる部分は狭くなるだろう。

 私はバイデン政権ができればそれは「チェイニー・ヒラリー連立政権」だと書いた。ネオコンと人道的介入主義派の奇妙な連携で、アメリカが再び世界各地にちょっかいを出し、敵を増やしていく、そういう路線に転換していくということになると考えている。

(貼り付けはじめ)

バイデン選対に助言をしている大規模な外交政策ティームの内部(Inside the Massive Foreign-Policy Team Advising Biden’s Campaign

-もしジョー・バイデンが勝利すると、バイデン政権の上級、中級レヴェルの仕事に招き入れられる可能性がある外交政策の専門家たちのトップたちについて見てみる

コラム・リンチ、ロビー・グラマー、ダーシー・パルダー筆

2020年7月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/07/31/inside-biden-campaign-foreign-policy-team/

ジョー・バイデン前副大統領の非公式の外交政策と国家安全保障に関するアドヴァイザーたちによるティームのメンバーは2000名以上になっている。その中には20のワーキング・グループが含まれている。国家安全保障分野における多様性から軍縮、国防、諜報、国土安全保障といった幅広い問題に取り組んでいる。バイデン選対の幹部たちの話と本誌が取得したこれらのグループのワーキング・グループの共同委員長たちの内部名簿から明らかになった。

外交政策ティームの構成を見ると、11月に選挙で当選して大統領になれば、バイデンがどのように外交政策を作り上げようとしているか、難民たちを悪者として示すこと、世界中の女性の性的なそして再生産の権利を制限することのようなドナルド・トランプ大統領の議論を巻き起こした外交政策の一部をどのように変更するか、ということを示唆している。外交政策ティームの構成を見ると、表舞台には出てこない助言者たちの存在を明らかにしてくれる。助言者の中には、バイデンと深い関係にある東アジアの専門家であるエリー・ラトナーと中東の専門家であるダニエル・べナイムが含まれている。助言者たちは、バイデンが大統領に選ばれれば、国防総省、国務省、諜報分野、その他の政府機関でトップ、もしくは中位の職に就くことになる。

49のワーキング・グループの共同委員長にはラトナーとべナイムも含まれている。共同委員長は外交政策、国防、国土安全保障といったより広いコミュニティの門番として機能している。国家安全保障の専門家たちはアイディアを出し、ポリシーペイパーを書き、バイデン選対にフィードバックする。政策ティームに詳しい人々は、「このティームは選対の公式の構成部門ではないが、選対の意向に沿って活動しており、バイデンと意志決定に関与する最高幹部たちに対して非公式の助言を行っている。ワーキング・グループに参加している人々のほとんどは自分たちの活動を公に発表しないようにしている。

共同委員長たちは政府、コンサルティング会社、シンクタンク、国防産業の出身だ。また、オバマ政権下で国務省、国防総省、国土安全保障省で交換を務めた人々も含まれている。『ポリティコ』誌は、バイデン陣営には少なくとも国家安全保障専門家1000名が、20のワーキング・グループに参加している。本紙はバイデン陣営の内部文書を調査し、ワーキング・グループの名前とそれらの共同委員長の名前を把握した。

それぞれのワーキング・グループはその下に小委員会を統括し、イスラエル・パレスチナ闘争、人道主義的救済、難民のような問題について取り扱っている。例えば、調達、テクノロジー、補給担当の国防次官を務めたフランク・ケンドール三世が国防関連ワーキング・グループの共同委員長を務めている。その他には、国防総省の上級顧問を務め、本誌でもコラムを書いていたローザ・ブルックス、国防政策担当国防次官を務めたクリスティーン・ウォーマスが100名から200名の専門家たちを監督している。彼らは予算と地域軍事司令に関する6つの小委員会を統括している。

内部事情に詳しい人々によると、ヨーロッパ担当ティームには100名以上が入っている。オバマ政権で国家安全保障担当の政府高官を務めた3名が共同委員長を務めている。本誌の「シャドウ・ガヴァメント」コラムを最近まで返照していたジュリー・スミス、マイケル・カーペンター、スペンサー・ボイヤーがその3人だ。

アイディアと助言はバイデンの側近たちの小さなインナーサークルに提出されている。インナーサークルには、アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)、ジェイク・サリヴァン(Jake Sullivan)、アヴリル・ヘインズ(Avril Haines)、ブライアン・マキオン(Brian McKeon)、ジュリー・スミス((Julie Smith)が入っている。こうした人々はバイデン政権では国家安全保障のブレイントラスト(brain trust)を務めることになる。政策提案を行っている多くの人々にとって自分たちの出した助言がどのように扱われているのかについてはミステリーだ。ある政府関係者は、政策提言のほとんどはブラックホールの中に入って消え去ってしまうようなものだと述べている。

複数のワーキング・グループとやり取りしているある政府職員は「これらのワーキング・グループは意思決定の権限を持っていませんが、インナーサークルは巨大なマシーンを監督しています。このマシーンの中で政策が常に提案され検討されているのです」。

バイデン陣営にヴォランティアで参加している専門家の多くは、トップレヴェルの影響力のあるアドヴァイザーたち以外には、そのことを公言しないし、メディアでも話さない。バイデン選対にヴォランティアで参加している人たちの中には、シンクタンクなど雇い主から参加するように促されている人たちもいる。こうした人たちはインターネット上の紹介で所属を明らかにしている。これが意味するのは、こうした人々が行っている仕事のほとんどは非公開の裏側で行われているということだ。こうしたことは過去の大統領選挙ではなかったことだ。

本誌は今回の記事にあたり、バイデン陣営に公式にもしくは非公式に助言を与えている25名ほどの人物に連絡を取った。多くはコメントの依頼に答えなかった。数名が匿名を条件に取材に応じることに同意した。

バイデンの外交政策ティームの構造は多くの点で、伝統的な政府機関内部の意思決定プロセスを踏襲しようとしている。トランプ政権下では、国家安全保障会議でのこれまでの意思決定プロセスを破壊し、大統領の側近たち、専門家、家族の限られたかつ閉じられた少数の人々によって決定がなされるようになっている。

しかし、バイデン陣営と連絡を取っている民主党系の外交政策専門家たちの一部は、プロセスは不明瞭だと述べている。そして、自分たちが行った助言がバイデンに近い顧問や助言者たちにまで届いているのかを知ることは困難であり、ティームに顧問や助言者が数多く入っているのは、批判者に転じる可能性がある人たちまで含めて、とりあえず全員に「起用されている」という感じを持たせようとしているからではないかとも述べている。

あるワーキング・グループに入っている人物は次のように述べている。「ワーキング・グループの構造は政府のような感じです。ヒエラルキー的で官僚的なところはまさに政府のようです。ワーキング・グループの重要な目的は全ての人々に自分が求められ起用されていると感じてもらうことです。もう一つの目的は、バイデン政権で職に就きたいと望んでいる人々にその足掛かりを与えることです。ワーキング・グループに入ることは、自分の仕事ぶりを見せる機会なのです」。

ワーキング・グループの数や種類など、規模は拡大し続けている。これは「人々の考えが捨てられるのではなくて、理論的には陣営に届けられていることを示す、人々に対する誘因」の役割を果たしていると民主党系の外交政策アドヴァイザーである、ある人物は述べている。この人物は「これがすべて正しいという訳ではありませんが、進歩主義派の陣営かあら人々が次々と参加しているのですが、そのための戦術的な要素ということになります」と述べている。

トランプ政権下でアメリカの外交政策について幻滅している外交政策専門家の中には、民主党の予備選挙で勝利する人なら、誰でもあってもその人を助けたいと熱望していると述べる人たちがいる。予備選挙で有力候補だったエリザベス・ウォーレンとピート・ブティジェッジに助言をしていた専門家たちはバイデン陣営のヴォランティアの外交政策アドヴァイザーのティームに入っている。

今月になって発表された各種世論調査の結果を総合すると、トランプは現在のところ、全国規模で6ポイントの差をつけられてバイデンを追いかけている。そして、民主党の候補者であるバイデンは、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州などいくつかの重要な激戦州において数ポイントの差をつけてリードしている。バイデンが勝利すれば、ワーキング・グループに参加している人々の多くが政権入りすることが予想されると、ワーキング・グループに参加している複数の人々が証言している。

世界の各地域をカヴァーする複数のワーキング・グループが作られ、それぞれヴェテランの外交政策専門家たちが主導している。ヨーロッパ・グループ、ニコール。ウィレット、アリソン・ロンバルド、マイケル・バトル率いるアフリカ・グループ、マラ・ラッドマン、ダニエル・べナイム、ダフナ・ランド率いる中東グループ、イーライ・ラトナー(Ely Ratner)とジュン・パク(Jung Pak)率いる東アジアグループ、スモナ・グハとトム・ウエスト率いる南アジアグループ、ダン・エリクソン、ジュアン・ゴンザレス、ジュリサ・レイノソ率いる西半球諸問題グループが存在する。これらについては本誌がバイデン選対に助言を行っている専門家たちの名簿を閲覧し作成した。

バイデン陣営の外交ティームは新たに2つのグループを立ち上げた。一つは感染症拡大対応のもので、もう一つは今年の春にミネアポリスで警察によってジョージ・フロイドが殺害された後に人種間の正義を求める全国的な抗議運動を受けて立ち上げられた。

国際的な取り組みを調整する、新型コロナウイルス対策タスクフォースを担当するワーキング・グループはベス・キャメロン、ブラッド・ベルザック、リンダ・エティムが率いている。キャメロンはバラク・オバマ大統領の下、ホワイトハウスの感染症対策の責任者であった。ベルザックはビジネスコンサルタントで、国家安全保障関連政府機関に勤務の経験を持っている。エティムは米国国際開発庁(USAID)の部長補佐を務めた経験を持つ。

バイデン選対は更に、アメリカの国家安全保障分野における多様性を促進するためのワーキング・グループを立ち上げている。このワーキング・グループを率いるのは、ジーナ・アバクロンビー・ウィンスタンリーとショーン・スカリーだ。アバクロンビー・ウィンスタンリーはアフリカ系アメリカ人外交官で駐マルタ米国大使を務めた。スカリーはLGBTQの権利主導者で、オバマ政権時代に国防総省と運輸省において初の幹部級の職員に任命されたトランスジェンダーの人物である。

このグループの創設は、アメリカの国家安全保障分野における多様性について長年主張がなされてきたことについてのバイデン陣営内にある懸念が反映されている。女性やマイノリティの登用についての諸問題はトランプ政権以前からずっと言われてきたものであるが、トランプ政権になって、トップの補佐官や閣僚たちが白人男性ばかりという同質性が以前よりも高まった。

いくつかの素晴らしい例外を除いで、少数派は民主、共和両党の大統領たちの下で、人口に比べて少ない数しか重要な地位に登用されてこなかったという認識がある。バイデンは、副大統領候補に多くの有能なアフリカ系アメリカ人女性の登用を考慮している。その中には、オバマ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官と国連大使を務めたスーザン・ライスや大統領選挙民主党予備選挙でバイデンと戦ったカマラ・ハリス連邦上院議員も含まれている。

外部の活動家たちやバイデン支持者たちの中には、2020年の選挙で、国家安全保障分野における女性やマイノリティに対する「ガラスの天井」を打ち壊し、政権内の幹部クラスに登用される女性の数を大幅に増加させる機会になると考えている。バイデンの外交政策ティームにある49のワーキング・グループの共同委員長の半数以上が女性だ。女性と少女に関する問題のワーキング・グループの共同委員長は、カルラ・コッペル、アン・ウィットコウスキー、ジュリア・サントウィッチだ。コッペルはアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)の首席戦略担当官を務めた経験を持つ。ウィットコウスキーは政策担当国防次官の下の安定と人道問題担当の国防次官補代理を務めた。サントウィッチはCIAと国務省に勤務した。

バイデンが重視しているのは、トランプ大統領が実施し、議論を巻き起こした政策の一部を変更することである。バイデン陣営のワーキング・グループは、気候変動のスピードを鈍化させること、難民保護、人権保護の強化に重点を置いている。また、国連に関するワーキング・グループもある。その責任者は、管理と改革担当米国連大使を務めたイソベル・コールマン、国連に関する社会運動団体「ベター・ワールド・キャンペーン」の会長ピーター・イエオである。このグループは、アメリカと国連やその他の国際機関との関係を再構築することを目的としちる。

これらのワーキング・グループは、進歩主義派のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員とバーニー・サンダース連邦上院議員の支持者たちからの支持を勝ち取るために作られている。両議員はバイデン陣営と協力している。民主党綱領にはサンダース陣営からのインプットも反映されている。進歩主義派が求めていた内容が含まれている。進歩主義派は、無制限の対テロ戦闘の縮小、いわゆる永久戦争(forever wars)の終了、イランをはじめとする各国に対する政治体制転覆(regime change)を行おうとするトランプ政権の試みの放棄、サウジアラビアが主導しているイエメンでの軍事行動に対するアメリカの支援の終了を求めている。

サンダースの首席外交政策顧問マット・ダスは次のように述べている。「素晴らしい結果が出ています。民主党がこれらの疑問に対して大変積極的な方向に進んでいるという事実を

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