古村治彦です。

『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
2025年6月13日に開始された、イスラエルによるイランへの攻撃は一応の停戦が成立した。6月12日の時点で、アメリカとイランとの間での核開発をめぐる交渉は難航し、イランはウラン濃縮施設の新設を発表した。これを受けて、イスラエルは自国の安全保障上の脅威を理由にして、イランの核開発関連施設や軍事施設を攻撃し、イラン革命防衛隊の最高幹部を複数殺害した。イラクは報復として、イスラエルにミサイル攻撃を行った。イスラエルも攻撃対象を拡大して応戦し、中東情勢は一気に不安定化した。双方に多くの死傷者が出ている。
6月22日にはドナルド・トランプ大統領がアメリカの戦闘機を派遣して、イラン国内の3カ所の核開発関連施設を攻撃させた。6月24日には、イランが報復として、カタール国内にあるアメリカ軍基地を攻撃した(事前通告あり)。その後、トランプ大統領がイスラエルとイランとの間の停戦合意が成立したと発表した。しかし、イスラエルは、イランに停戦合意違反があったとして、イランに攻撃を行う意思を表明した。トランプ大統領はイスラエルの姿勢に不快感を示している。
今回のイスラエルのイラン攻撃について分析するためには、私は、イスラエルの国内政治状況と中東地域の情勢の2つのステージに分ける必要があると考えている。イスラエルの国内政治状況で言えば、2023年のハマスによる攻撃と人質奪取を受けてのイスラエルによるガザ地区攻撃、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派との戦闘、更にはこれらの勢力を支援するイランとのミサイル攻撃と進んだ事態の連続だと考えている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身と家族が関わる汚職やスキャンダルのために、訴追され、最悪の場合は有罪判決を受け、収監される可能性があったところに、ハマスの攻撃があった。こうした戦争状態を利用して、首相の座にとどまっている。また、極右派は、戦争を利用してガザ地区やヨルダン川西岸地域を占領することで、パレスティナ問題を「根本的に解決」しようとしている。イスラエルは、アメリカを利用している。
トランプ大統領は事態をエスカレートさせたくない。政権内には核兵器使用まで望む声があるが、そのような強硬なことはできない。そして、イスラエルに対して、一定の統制を行いたいところだ。もちろん、イランの核開発については懸念を持っているが、その懸念を小さくするために、トランプ政権はイランと核開発に関しての交渉を行っていた。第1次トランプ政権時には、バラク・オバマ政権で成立した合意から離脱したが、第2次トランプ政権はその枠組みに復帰しようとしていた。この交渉は頓挫することになる。
トランプ政権は、イスラエルを支援していることを形で見せるために、イスラエルの顔を立てるために、イラン国内の核開発関連施設3カ所を攻撃し、破壊した。しかし、イラン側は事前に重要な機材や資源を他の場所に移動させていた。これは、アメリカ側が事前に通告していたということが考えられる。イラン側も、アメリカに事前通告をして、カタールにあるアメリカ軍基地を正確に「報復」攻撃した。これで、お互いの面子を立てた形になる。お互いにエスカレートさせたくないということでは、アメリカもイランも一致している。そして、お互いに大国らしい態度を取っている。この状況で一番の不確定要素であり、世界にとっての深刻な脅威となっているのはイスラエルだ。イスラエルが停戦合意を守るかどうかという疑念が広がっている。これは、イスラエルに対する国際社会からの信頼がほぼ喪失していることを示している。そして、イスラエルを統制できないとなれば、アメリカの意向も大いに傷つく。また、中東における最重要プレイヤーとしての存在感も失う。
このブログでも紹介したが、イランの後ろには、ロシア、インド、中国がいる。イスラエルが火遊びをすることは、世界にとっての深刻な脅威となる。中国をはじめとする「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」はイスラエルを許さないだろう。今回の構図は、ウクライナ戦争と同じ構図となるが、イスラエルの無軌道な攻撃に対しての批判派より大きな説得力と正当性を持つ。そして、イスラエルを支持する西側諸国は、世界から孤立していく。日本の石破茂首相は、イスラエルのイラン攻撃を擁護せず、アメリカのイラン攻撃に対して、即座の支持を表明しなかった(アホで間抜けの小泉純一郎がホイホイとイラク戦争を即座に支持したのとは大違いだ)。このような重厚な姿勢を取れる人物がこの時期に日本の首相であることは慶賀すべきことだ。これから注目されるのは、ベンヤミン・ネタニヤフがどれほどドナルド・トランプを舐めて、不羈奔放な行動をして、どこまでトランプが我慢するかというところだ。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプと、イスラエルとベンヤミン・ネタニヤフ首相との緊張が表面化(Trump
tensions with Israel, Netanyahu rise to the surface)
ラウラ・ケリー筆
2025年6月24日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/5367708-trump-netanyahu-iran-ceasefire/?tbref=hp
ドナルド・トランプ大統領が火曜日、イスラエルとイランに対し、攻撃を停止し停戦を選択するよう公然と強く求めたことは、平和と交渉の担い手としての自身の姿勢を守るため、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と対峙することを恐れていないことを示した。
アメリカの同盟国であるイスラエルと、イランが戦闘を放棄すべきだというトランプ大統領の、冒涜的な言葉まじりの苛立ちは、MAGAワールドに対し、トランプ大統領がネタニヤフ首相の戦争目的に縛られていないというシグナルを送った。
アメリカがイランの体制転覆(regime change)を支援する可能性があるという以前の脅しを撤回した後、トランプ大統領はテヘランとの貿易やイラン産の原油の原油市場への流入の可能性さえ示唆した。
元駐米イスラエル大使のマイケル・オレンは「今日起こっていることは、トランプ大統領がイスラエルに圧力をかけていること、停戦を維持したいこと、これ以上の戦闘は彼の外交に疑問を投げかけるだけでなく、アメリカがより深く、より長期的な軍事的関与に巻き込まれる危険性があることを大統領自身が知っていることだ」と述べた。
予測不可能なトランプ政権は、前例のないアメリカの軍事力の誇示をしたことから、非エスカレーションと平和と協力の話へと大きく舵を切ったことは、保守メディアの大物たちの間で好評を博している。
保守系活動家のチャーリー・カークは、トゥルース・ソーシャルに「歴史的な手腕を発揮したトランプ大統領(President Trump with a historic masterclass)」と投稿し、イランとの戦争激化を回避したトランプを称賛した。
トランプの元顧問で、MAGA運動において今も影響力のある発言者であるスティーヴ・バノンは、ネタニヤフに対するトランプの苛立ちを支持した。
バノンは自身のポッドキャストで、「あなた(ネタニヤフ)が彼(トランプ)に嘘をついたから、彼(トランプ)は激怒している。これほど怒っているアメリカ大統領は見たことがない。考えてみて欲しい。彼があなた方のために尽くしてきたこと、そして彼が受けているプレッシャーのことを考えると、どうしてこれほど怒ることができるのだろうか?・・・これが彼に与えられる感謝なのか?」と語った。
トランプ大統領がイスラエルを支持していることを考えると、こうしたイスラエルへの批判は注目に値する。
トランプ大統領はアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転し、ゴラン高原におけるイスラエルの支配を承認し、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区に対するアメリカの制裁を解除し、ネタニヤフ首相が反対していた2015年のイランとの核合意から離脱し、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン間の関係構築(アブラハム合意[the Abraham Accords])を仲介した。
しかし、2020年に、トランプ大統領とネタニヤフ首相との関係は、激しい対立に発展した。ネタニヤフ首相がジョー・バイデン大統領の選挙勝利を認めたことを受けて、トランプは、ある記者にネタニヤフ首相のニックネームを使って「ファック・ビビ(F‑‑‑ Bibi)」と発言した。
また、トランプ大統領によるイランへの軍事攻撃は、イランの核兵器取得阻止において政権がイスラエルと足並みを揃えていることを示したが、トランプ大統領は一連の主要な外交政策課題においてネタニヤフ首相の立場に反対してきた。
2024年の大統領選挙の選挙運動中、トランプはイスラエル問題に関して共和党の典型的な論点を覆し、ガザ地区の破壊を批判した。また、2020年にイランの最高レヴェルの将軍を殺害したアメリカ軍の攻撃にネタニヤフ首相が参加を拒否した際には、イスラエルは「私たちを失望させた(let us down)」と述べた。
トランプはイスラエル各地を回り、ガザ地区でハマスに拘束されていた人質を解放させた。イスラエルの反対を無視して、トランプはシリアに対する全ての制裁を解除した。さらに、ハマスとの戦争が解決しない限り、サウジアラビアがイスラエルとの関係を改善するよう圧力をかけるのを控えている。
2025年4月、ネタニヤフ首相は、トランプがイランの核開発計画をめぐって直接交渉を開始すると発表した際、大統領執務室で静かに座っていた。
トランプ大統領のイランとの会談の目標はイスラエルの利益とは相容れないものだったようだ。イランが核濃縮能力を放棄することだけに焦点を当て、地域全域のイランを代理する民兵グループへの支援、ミサイル計画、世界的なテロ支援には触れなかった。
オレンはエルサレム記者クラブ主催の記者会見で「トランプは平和の使者(peacemaker)、そして交渉の仲介者(dealmaker)になりたい。イスラエルにとっての問題は、イスラエルの重要な利益がどの程度守られるかだ」と述べた。
オレンは「この点では、2015年にバラク・オバマ元大統領がイランと合意を結ぶことになると、イスラエルの利益は守られないのではないかと懸念していた状況と大差ない」と語った。
バイデン政権下で中東問題担当高官を務めたアモス・ホックシュタインは、イスラエルの指導者が安全保障に関して強硬な見解を示し、タカ派の安全保障当局者や強硬な政治的パートナーとともに、アメリカをスケープゴートにしてそれを抑え込むというパターンを説明した。
ホックシュタインは6月19日のポッドキャスト「アンホーリー:トゥー・ジュウイッシュ・オン・ザ・ニューズ」で「少し物議を醸すかもしれないが、私の考えでは、ロナルド・レーガン以来、イスラエルには停止ボタン(a stop button)がない」と述べた。
ホックシュタインは次のように語った。「右派、左派、中道派の首相は皆、その時のどんな人物であっても、軍、諜報機関、あるいは過激派政党に『私はあなたたちの意見に賛成だが、あの忌々しいアメリカ人たちが私に止めさせようとしている』と言う。すると彼らは『分かった、いいだろう、私たちは止めて取引をしよう』と言う。1980年代以降のあらゆる作戦でそうだった」。
トランプのネタニヤフに対する不満は、オバマ政権とバイデン政権で繰り広げられた同様の緊張関係を反映している。イスラエルの長年の指導者であるネタニヤフは、バイデン、トランプ両大統領を重要な安全保障上の課題で試した。
これには、ネタニヤフ首相が2015年に連邦議会で、当時のオバマ大統領によるイラン核合意に反対する演説を行ったことも含まれる。アメリカ主導のイスラエルとパレスティナの和平交渉の決裂も、オバマ政権とネタニヤフ首相の関係を著しく悪化させました。
バイデン大統領とネタニヤフ首相は、イスラエルにおける物議を醸した司法制度改革をめぐって激しい対立を経験し、その後、停戦と人質解放の仲介を試みるアメリカの動きをよそに、ネタニヤフ首相がハマスとの戦争を強行したことで、関係は悪化した。
こうした緊張関係は、外交上の冷淡な対応という形で表面化するのが常態だった。しかし、バイデン大統領は私的な場でネタニヤフ首相を「最低最悪な奴(bad f‑‑‑ing guy)」「クソ野郎(son of a b‑‑‑‑)」と呼んだと報じられている。
ある元政府高官は「ネタニヤフ氏は非常に才能のある政治家であり、非常に才能のある交渉者、雄弁家であり、アメリカについて非常に詳しい。・・・彼はワシントンをまるで楽器でも操るかのように動かすことに慣れている」と語った。
この元高官は「ネタニヤフは概して、アメリカの指導者たちを並外れたレヴェルで圧倒する。ドナルド・トランプが他と違うのは、支持基盤とアメリカに関する自身のヴィジョン以外のことは何も気にしないという点だ」と述べている。
元高官はさらに、ネタニヤフは「これまでどのアメリカ大統領に対しても、大いに神経を逆なでしてきたが、ドナルド・トランプはドナルド・トランプであり、彼は物事を内に秘めない」と述べた。
=====
●「トランプ氏、発言を修正 イランの体制変更は「望まない」」
6/25(水) 5:29配信 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/00f5257d56f68bac9b67df250519206439a651e0
トランプ米大統領は24日、イスラエルとイランの停戦は「引き続き有効で長期間維持されるだろう」という期待を語った。イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議し、イランへの攻撃に向かった戦闘機を引き返させたとも主張。イランの体制変更は望まない考えも示し、自身の発言を修正した。
北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(サミット)に出席するためオランダ・ハーグに向かう途中、大統領専用機内で記者団の質問に答えた。
イスラエルとイランの交戦では、トランプ氏が停戦発効を宣言した後も、イスラエル側はイランがミサイルを発射したとして反撃すると主張していた。トランプ氏はハーグへの出発前、記者団に、イランからの発射物は「おそらく誤射で着弾もしなかった」のに、イスラエルが強硬な反撃を準備し戦闘機が出撃したとして「気に入らない」と不満を述べていた。その後、専用機内では、ネタニヤフ氏との電話協議で「飛行機を引き返せと言ったら彼らはそうした」と主張した。
=====
●「CNN独自「米軍攻撃はイラン核施設を破壊できず」」
6/25(水) 6:19配信 テレビ朝日系(ANN)
https://news.yahoo.co.jp/articles/e98c724180fda0f3079740db453f7bf161e8cc82
アメリカのCNNは独自ニュースとして、アメリカ軍による攻撃でイランの核施設は破壊できておらず、数カ月の遅延を引き起こした程度だとする情報機関の初期調査結果を報じました。
CNNは24日、関係者3人からの情報として、アメリカ国防情報局が作成した初期調査の結果について報じました。
これによりますと、イランの核施設への攻撃では重要部分の破壊はできておらず、電気系統など復旧に数カ月かかる程度の被害しか与えられていないということです。
関係者2人は、濃縮ウランの備蓄は破壊できていないとしていて、もう1人は遠心分離機は「無傷だ」と話しているということです。
これまでトランプ大統領は「イランの核濃縮施設は完全に破壊された」と主張しています。
=====
「歴史的勝利」双方主張 停戦合意おおむね維持
6/25(水) 5:32配信 共同通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/686d9cc4ea224fbfe3d31e1fee873cbcd189aa4c
【テヘラン、エルサレム共同】イランのペゼシュキアン大統領は24日、イスラエルとの停戦合意を巡り、イスラエルが一方的に始めた戦闘を「イランの意志で終わらせた」とし「歴史的な大勝利だ」と誇示した。イスラエルのネタニヤフ首相も同日の声明で、核と弾道ミサイルというイランの二つの脅威を排除したとし「歴史的勝利」だったと主張した。停戦合意後も双方の攻撃があったが、停戦はおおむね維持されているもようだ。
トランプ米大統領は、米東部時間25日午前0時(日本時間25日午後1時)ごろに正式な戦闘終結が実現すると宣言した。
イランは24日、外交攻勢を強化。ペゼシュキアン氏はサウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談し「国際的な枠組みに基づき、米国との問題を解決する用意がある」と述べた。アラグチ外相は中国の王毅外相との電話会談で、イランの攻撃は正当防衛だと主張した。イランの立場を説明し、各国の支持を取り付けたい考えだ。
=====
アメリカ、イランによるホルムズ海峡封鎖の阻止を中国に要請
BBC NEWS JAPAN 2025年6月23日
https://www.bbc.com/japanese/articles/cwyg3y4yz99o
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は22日、世界で最も重要な海路の一つであるホルムズ海峡をイランに封鎖させないよう、中国に対応を呼びかけた。
ホルムズ海峡をめぐっては、イランの議会が封鎖計画を承認したと、同国国営のプレスTVが報じている。ただし、最終決定権は国家安全保障最高評議会にあると伝えている。
石油の輸送路が封鎖され、供給が途絶えれば、経済に深刻な影響が及ぶとみられる。とりわけ中国は、イランの石油の世界最大の買い手で、同国との関係も密接なことから、影響は大きいと考えられる。
アメリカがイランの核関連施設を攻撃したことで、原油価格は急騰している。指標となるブレント原油価格は、過去5カ月で最高値となっている。
原油価格は、ガソリン代や食料品の価格など、あらゆるものに影響を与える。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』







