古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:停戦

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2022年2月に始まったウクライナ戦争は2年半を超えて、戦況は膠着している。この表現は定型のようになってしまっている。ウクライナが状況を自分たちに有利にする方法は今のところない。西側諸国は支援を続けているが、実質的にウクライナを助けている訳ではない。ウクライナを使ってロシアに出欠を強要しているだけのことだ。一番損をしているのはウクライナ国民ということになる。本当に助ける気があるのなら、西側諸国が連合軍を作って、ウクライナで実際に戦えばよい。しかし、それをやればロシアもまた戦争の段階を引き上げて、最悪の場合には核戦争ということになりかねない。ロシアからの反撃を受けないで、ウクライナが自分たちに有利な状況を作るという不可能な目標を立てて、惰性で戦争を続けているだけのことだ。
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 以下の記事は紹介しようと思いながら、紹介してこなかった、スティーヴン・M・ウォルトによる古い記事だ。今年の8月にウクライナはロシア領内への攻撃を行い、小さい部分であるが、占領をしている。これも条件交渉の材料になるということになるが、あまりにも小さい部分で、その効果は大きくないように思われる。また、「ロシア領内に侵攻」という言葉のインパクトはあったが、実質は表面をちょっとひっかいたという程度のことで、大勢(たいせい)に大きく影響しなかった。ここがウクライナのできる限界点ということになるだろう。

アメリカ国民は、「ウクライナ戦争を止めさせる」と主張するドナルド・トランプを大統領に選んだ。アメリカが資金を出さなければ、ウクライナは戦争を続けることはできない。資金が枯渇する前の段階で、ウクライナは停戦交渉に応じなければならない。なぜなら、戦えなくなってからの交渉では、無条件降伏に近い形になってしまうからだ。ここのタイミングはトランプ政権が正式発足してから数カ月の間で実施されることになるだろう。トランプがロシアのウラジーミル・プーティン大統領に「ウクライナの話も少しは聞いて条件を組んでやってくれ」と求めることになるだろう。アメリカはウクライナ支援を続け、ロシアへの正妻も行っている関係上、仲介者として不適任となれば、中国の習近平国家主席が仲介に乗り出すということも考えられる。ウクライナ戦争が終結して、地域が安定すれば、世界的な物価高にも好影響をもたらすことになるだろう。

 私は2022年3月から、このブログで早期停戦を主張してきた。ウクライナ軍がロシア軍の進軍を阻止した時点で、ウクライナ軍の英雄的な行動の効果を使って、色々な条件を付けられると考えていた。しかし、実際には戦争は長引き、犠牲者は増え、ウクライナは国土の20%を失った。まだ条件を交渉できるうちに、停戦交渉を行うべきだ。

(貼り付けはじめ)

ウクライナによるクルスク攻勢の先が見えない意味(The Murky Meaning of Ukraine’s Kursk Offensive

-短期的な成功が必ずしも長期的な効果をもたらすことにはならない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/28/ukraine-kursk-offensive-war-ceasefire-russia-meaning/

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ウクライナがロシア西部のクルスク地方に攻め込んだ後、クルスクでウクライナの攻撃によって破損した建物を見る地元ヴォランティア(2024年8月16日)

ウクライナのロシアへの奇襲反攻(surprise counteroffensive)は、戦争の重要な転換点なのか、無意味な枝葉の行為なのか、それともキエフ側の戦略的失策なのか? 短期的にはほぼ成功しているが、重要なのは中長期的な視点である。西側の対ロシア政策全般、特にウクライナ戦争に対して、より広範な意味を持つのだろうか?

2022年2月にロシアが侵攻して以来、戦局は何度も一進一退を繰り返してきた。そのため、ある程度の謙虚さは必要である。ほとんどの戦争がそうであるように、能力面でも決意面でも、両方の側の限界点(breaking point)がどこにあるのかを正確に知ることは不可能であり、第三者が新たな展開にどう反応するかを予測することも難しい。そうではあるが、ウクライナのクルスク地方への侵攻がウクライナの運命に大きな好影響を与えると考える理由はほとんどない。

確かに、この攻撃は既にキエフに明らかな利益をもたらしている。ウクライナの士気を大いに高め、キエフが大きな敵との消耗戦に巻き込まれ、勝つことも長引くこともできないという懸念を払拭するのに役立った。戦争を再び表舞台に押し上げ、西側諸国の支援強化を求める声を強めた。ロシアの情報と準備態勢に重大な欠陥があることを露呈し、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領を困惑させたかもしれない。しかし、この侵攻によってプーティン大統領の決意が弱まったとか、ドンバスでのロシアの前進が鈍ったという兆候はない。

ウクライナが戦場でいくつかの成功を収めているのを見るのは心強いが、この作戦が戦争の結果に影響を与える可能性は低い。良い面としては、この攻撃ではウクライナ側の見事なイニシアティヴと驚くべきレヴェルの秘密作戦が示され、そのため侵攻軍が不十分な数の訓練を受けたロシアの守備兵に直面したのである。ある意味、この攻撃は2022年秋にハリコフで成功したウクライナ軍の反撃に似ていたが、これもまた戦術的な奇襲を達成し、数で劣り経験の浅いロシア軍と対峙した。

残念ながら、これらのエピソードから、1年前のウクライナの攻勢を阻止したような、十分な準備と人員を整えたロシアの防衛力に対してウクライナが地歩を固めることができるかどうかはほとんど分からない。更に言えば、クルスクの作戦では、ロシア軍よりもウクライナ軍の損失が大きくなる可能性があり、これはウクライナにとって維持できる交換比率ではない。クルスク戦線での最近の成功をもって、欧米諸国の追加援助でウクライナがドンバスやクリミアを奪還できると結論づけるのは大きな間違いだ。

なぜなら、この2つの国家はまったく異なる状況に直面しているからだ。双方とも多くの兵力と装備を失ったが、ウクライナの方がはるかに多くの領土を失っている。公表されている報告によれば、ウクライナは現在、ロシア領の約400平方マイルを占領し、およそ20万人のロシア人をこれらの地域から避難させている。この数字は、ロシアの総面積の0.0064%、人口の0.138%に相当する。対照的に、ロシアは現在ウクライナの約20%を支配しており、戦争によってウクライナの人口の35%近くが避難を余儀なくされていると言われている。キエフが最近占領した領土にしがみつくことができたとしても、交渉の切り札にはならないだろう。

ウクライナの運命は、クルスク作戦によってではなく、ウクライナで何が起こるかによって決まる。重要なのは、戦場で犠牲を払い続ける意志と能力、ウクライナが他国から受ける支援のレヴェル、そして最終的にウクライナの未占領地域を無傷のまま安全に残す協定が結べるかどうかである。そのためにも、アメリカとヨーロッパはウクライナを支援し続けるべきだが、この支援は、停戦と最終的な和解を交渉するための真剣で感傷的でない努力と結びつけられるべきである。残念なことに、アメリカの高官たちは、たとえ親密な同盟国であっても、その同盟国がアメリカの支援に依存しており、停戦が明らかにアメリカの利益になる場合であっても、停戦に同意させる方法を忘れてしまっているようだ。

クルスク攻防戦は少なくとも2つの問題を提起しているが、そこから正しい教訓を引き出すことが重要だ。最初の、そして最も明白な教訓は、ロシアの限られた範囲と圧倒的な軍事的パフォーマンスを思い起こさせるものだ。2022年以来、タカ派はプーティンがロシア帝国、ひょっとしたらワルシャワ条約機構を復活させることに執念を燃やしており、ウクライナは既存の秩序に対する新たな攻撃を開始する前の第一歩に過ぎないと説得しようとしてきた。この戦争におけるロシアの度重なる失策、そして成功したロシアの前進でさえも氷河期のようなスピードで進んでいることを考えると、ロシアがヨーロッパの他の地域に対して深刻な軍事的脅威をもたらすと信じることができるだろうか? 脅威を煽る人たちは、ウクライナへの支持を強めるためにこの厄介者を利用してきたが、恐怖戦術に頼ることは通常、戦略的判断を誤らせることにつながる。

第二に、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を含む何人かの論者たちは、キエフがロシアへの侵攻に成功したことは、ウクライナの活動に対する既存のレッドラインやその他の制限を破棄すべきであり、西側諸国(the West)はウクライナが望む形でロシアに戦いを挑むことを許すべきだと示唆している。ウクライナ軍がロシアのエスカレーションを誘発することなく、ロシア領土に侵入できるのであれば、それはプーティンが張り子の虎(paper tiger)であることの証明であり、彼の以前のエスカレーションの脅し(核兵器への言及を含む)は、今やブラフであり、そのブラフが破られたことを意味する。

このような主張は、ウクライナにもっと良い武器を持たせ、その使用制限を解除させるためのものであり、ウクライナの指導者たちがこの考えを推し進めることを責めるつもりはない。しかし、ウクライナが何をしようとエスカレーションの危険はないという主張は断固として否定されるべきである。実際、ウクライナがロシア領内への侵攻を決断したのは、自国にとって不利な流れを逆転させるための危険な試みと見ることができる。これとは対照的に、プーティンはドンバスで自軍が勝利している場合、エスカレートする動機がない。ロシアがエスカレートする危険性があるのは、モスクワが壊滅的な敗北に直面した場合だけだ。

問題は、現在進行中の戦争がエスカレートする危険性だけではない。私たちは、戦闘を終わらせるための真剣な外交的努力を避けながら、おそらく到達不可能であろうと公言されている戦争努力を援助することに道徳的に問題がないかを自問すべきだ。現在の政策がもたらすであろう結果は、明白な政治的目的もなく、より多くの人々が死ぬということだ。ロシアとウクライナの戦争に交渉による解決を求めることは、自己利益と道徳(self-interest and morality)が一致した事例の1つである。ウクライナの最近の軍事的成功は、ウクライナが生き残ることはできても勝つ見込みのない高価な戦争を長引かせる口実としてではなく、真剣な停戦交渉を開始する機会としてとらえるべきである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

アメリカとイスラエルの関係については、非常に複雑になっている。アメリカはこれまでキスラエルを強力に支援してきた。しかし、現在のイスラエルのガザ地区攻撃、戦争拡大路線に対して、アメリカのジョー・バイデン政権は抑制的な態度を取っている。これは、アメリカとイスラエルとの関係の変異店になるのではないかという主張がある。バイデン政権はまた、特に司法改革や人種差別的な政治に対しては懸念を抱いてきた。

下記論稿によれば、今後の関係には深刻な疑問が残り、両国関係は共通の価値観、利益、国内の支持基盤の3つの柱に依存しているが、これらの柱は今まで以上にストレスに晒されている。アメリカの政治情勢も変化しており、共和党と民主党の間で、イスラエル支援に対する意見の対立が激化している。大きく分ければ、共和党はイスラエル支援に前向きで、民主党はイスラエル支援に抑制的となっている。

バイデン政権は、ベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、ガザ地区における人道危機に対処するように求めており、これに対して、ネタニヤフ首相は反対姿勢を取っている。更に、レバノンのヒズボラとの対立を激化させ、ハマスとヒズボラを支援するイランとの全面戦争にまで進みかねないところにまで、状況を悪化させている。対イスラエル問題は、アメリカ大統領選挙においても重要な争点となる。

アメリカからの支援がなければ、イスラエルという国家は成り立っていかない。現在の状況は、イスラエルの国益にとってマイナスになっている。アメリカにとっても、イスラエルへの支援継続は、世界政治において、アメリカの国益にマイナスになる状況になっている。アメリカとイスラエル両国が自国の利益について、再検討し、利益の最大化を図ることが、停戦に向けた第一歩ということになるだろう。

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亀裂か分断か?(Rift or Rupture?

-ガザ地区での戦争がアメリカとイスラエルの関係に与えているもの。

アーロン・デイヴィッド・ミラー、ダニエル・C・カーツナー筆

2024年5月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/17/israel-hamas-war-biden-netanyahu-relations-gaza/?tpcc=recirc_featured_alt091023

写真

ガザ地区でのイスラエルの停戦を求める、ワシントンのナショナル・モールでパレスティナ旗を振る親パレスティナデモ参加者(2023年10月21日)。

最近、アメリカとイスラエルの関係における現在の緊張をどう説明すればよいかと人々に質問されることが多くなかった。私たちは簡単な答えを見つけるのに苦労している。私たちは以前にこのようなことを経験したことがあるだろうか? アメリカの軍事援助を一時停止または停止した前例はあるだろうか? そして私たちは、根本的な変化を予感させる関係における何らかの変曲点(inflection point)の頂点に立っているのだろうか?

私たちは長年にわたり、アメリカとイスラエルの関係において、浮き沈みを何度も見てきた。過去に深刻な緊張があった後でも、常に変化よりも継続が優先されているように思われる。時間が経つにつれて、緊張は和らぎ、物事は多かれ少なかれ、伝統的なアメリカとイスラエルの「オペレーティングシステム(operating system)」と呼ばれる通常の過程に戻った。アメリカでは、これは大統領のペルソナ(persona、穏健な親イスラエルから強力な親イスラエルまで)、国内政治(そうしたシンパシーを強く反映し、強化する)、政権の政策(地域の課題を管理するために、イスラエルと対立するよりもむしろ協力することを求めることが多い)によって、緊張の緩和が推進された。

しかし最近、私たちは何か変化を感じている。そして、それが困難な道にあるのか、それとも変革、変曲点なのかは分からない。私たちは現在の状況から重大な結論を出すことには慎重だ。実際、一般に、変曲点という概念は誇張される可能性がある。新型コロナウイルス感染症は私たちの世界を一変させるだろう。ロシアのウクライナ侵攻は国際政治を根本的かつ取り返しのつかないほど変えたと言われている。そして、10月7日は、何らかの形で中東の政治を変えるものだと見る人もいる。しかし、ヘッドラインが必ずしもトレンドラインにつながるとは限らない。そして、変革をもたらすと思われる出来事が、必ずしも変革をもたらすとは限らない。

確かに、イスラエルとバイデン政権の間の現在の緊張は前例のない状況で起こっている。しかし、それらは一時的なものである可能性もある。一方で、アメリカとイスラエルの関係を持続的な違反や亀裂から守る伝統的な運営システムは、10月7日以来機能し続けている。ジョー・バイデン米大統領は例外なく、米国史上どの大統領よりもイスラエルとイスラエルの戦争目的を支持してきた。イランが350発以上の無人機、巡航ミサイル、弾道ミサイルでイスラエルを攻撃した際に、地域的な防空ネットワークを構築し、それを証明した。バイデンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は定期的に会談し、公の場での衝突の可能性を最小限に抑え、関係を軌道に乗せようとしている。バイデンは、このようなイスラエル支持を維持するために、民主党内を含む国内からの政治的反発を受け続けてきたが、11月の大統領選挙で票を失う可能性がある犠牲を払ってでも、怯むことはなかった。

一方で、今後のアメリカとイスラエルの関係に深刻な疑問を投げかける勢力も存在する。その関係は、共通の価値観(shared values)、共通の利益(common interests)、そして国内の強力な支持基盤(strong base of domestic support)という、密接に結びついた3つの重要な柱の上に成り立っている。今日、これらの柱のそれぞれは、おそらく関係の歴史の他の時期よりも大きなストレスに直面している。

第一に、バイデン政権とほとんどのアメリカ人は、イスラエル史上最も極端な右翼政府と価値観を共有していない。10月7日以前でさえ、ネタニヤフ政権はアメリカの価値観や利益に反する政策、特にイスラエルの司法、特に最高裁判所の権威を厳しく制限する取り組みと見られる司法改革提案(judicial overhaul proposal)を推進していた。バイデン政権とイスラエルの連合の野心は、イスラエルの民主政治体制への取り組みを損なうように見えた。

同時に、ネタニヤフ首相は、人種差別主義者でユダヤ人至上主義者を自称する2人の過激派閣僚に広範な権限を与えた。彼らは、ヨルダン川西岸で併合政策(annexationist policies)を推進し、パレスティナ人に二流市民としての政治生活、亡命、紛争への黙認の選択を強制する意図を公然と宣言した。この取り組みは、権力を維持するために過激派に対応する必要があり、収賄、詐欺、背任(bribery, fraud, and breach of trust)の罪で裁判を抱えるネタニヤフ首相によって歓迎された。

第二に、過去数十年にわたり、アメリカの政治情勢も同様に変化している。イスラエルに対する超党派の支持は依然強いが、どのようなイスラエルを支援すべきかについて共和党と民主党の意見はこれまで以上に分かれている。共和党は概して、「イスラエルは間違いなど犯さない」と主張する政党(Israel-can-do-no-wrong party)になった。ドナルド・トランプとその影響下にある共和党は、ネタニヤフ首相とその右派政府との絆を強めている。民主党は分裂を深めており、パレスティナ人の扱いについて、ネタニヤフ政権に制約とコストを課したいと考えている進歩主義派が少数だがその数を増やしている。10年前には、クリス・マーフィー連邦上院議員、クリス・クーンズ連邦上院議員、クリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員がその方針を公に主張することは想像もできなかっただろう。しかし、今日はそうではない。そして、連邦議会におけるイスラエルの最大の支持者であるチャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務は、3月の臨時演説で、新たな選挙と新政府の樹立をイスラエルに対して要求した。アメリカ政治の他の多くの問題と同様に、イスラエルは意見を二分する問題となっており、バイデン政権は、イスラエルへの無条件支援を望む共和党と、支援に条件付きを求める多くの民主党との間で、狭い線の上を歩むことになっている。

第三に、これまでのアラブ・イスラエル戦争とは異なり、そして私たちの持つ直観に反するが、イスラエル・ハマス戦争の独特の性格がアメリカ国内の分断を深めている。抗議活動参加者たちは、ハマスのイスラエルに対する残忍な攻撃、性的暴行、人質(そのほとんどが民間人)のことを忘れているように見える。抗議活動参加者たちは、イスラエルの対応だけに焦点を当てている。バイデン政権にとって、これは問題となっている。なぜなら、バイデン政権は、ハマスについて10月7日のような攻撃を繰り返すことができないようにして、ガザ地区の統治を再開できないところまで弱体化させるという考えを支持しているが、数千人の死者を出したイスラエルの戦略と戦術には強く反対しているからである。イスラエルの戦略と戦術によって、パレスティナ民間人の犠牲者が増え、ガザ地区のインフラの大部分の破壊が行われた。その結果、人道上の悪夢が生じた。イスラエルはこれを予期して対処すべきだったが、イスラエルは、後手、後手に回り、効果のない対応を繰り返してしまった。あれから7カ月が経ち、人道危機は深まるばかりだ。ガザ地区の230万人の大多数が避難を余儀なくされたため、彼らは適切な避難所、水、食料、医療にアクセスできなくなった。

イスラエルの政策と行動の結果、3つの問題がイスラエルとバイデン政権を分断した。それは、民間人の犠牲を最小限に抑える軍事作戦をどのように実施するか、人道的災害を防ぐために十分な支援を確実に提供するにはどのようにしたらよいか、そして戦闘が終わった翌日に何が起こるのか、ということだ。イスラエルは、バイデン政権の計画提示要請に対して不十分な回答を示した。実際、ネタニヤフ首相はラファ、あるいはガザ地区全体に対するいかなる現実的な計画にも反対の姿勢を強めており、ネタニヤフ首相自身の国防大臣やイスラエル軍内の一部が、政府の政策の方向転換に反対する声を上げるよう促している。

おそらく、アメリカとイスラエルのオペレーティングシステムは、特に選挙の年には、関係に継続的な断絶や亀裂を生じさせることなく、これらの問題を管理または解決する方法を見つけるだろう。しかし、そのトレンドラインはどんなものになるだろうか? イスラエルがハマスとの戦争を遂行した結果、アメリカ国内でも国際的にも、イスラエルのイメージとブランドはどの程度根本的に損なわれたのだろうか? 両国を結びつける真の接着剤である価値観の親和性は持続するだろうか? 今や打ち砕かれた共通の価値観に対する認識は、イスラエル政治の右傾化、ヨルダン川西岸と東エルサレムの、イスラエルによる57年間の占領、そして民主政治体制の中で暮らすイスラエルの200万人のパレスティナ国民の多くの不満を乗り越えて生き残ることができるだろうか? 彼らにユダヤ国民と同じ扱いを与えることになるだろうか? アメリカの政治環境は、イスラエルがアメリカの国益にとって利益ではなく、むしろ負担となるのではないかと疑問を抱く若いアメリカ人が増えるまでに進化するだろうか?

良い答えなど出てこない様々な疑問ばかりだ。そして、アメリカ・イスラエル関係の軌跡を確実かつ正確に予測する方法はない。どの要素も決定的なものにはなりえないが、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、イスラエル人は、占領の意味を直視しない中で、自分たちにふさわしい平和と安全を手に入れられると信じるというやり方を止める必要があり、パレスティナ人は、イスラエルに苦痛を与えることで、自分たちにふさわしい自決と独立が達成されると信じるのを止める必要がある。10月7日のトラウマと痛み、そして果てしなく続くと思われるイスラエルとハマスの戦争が、彼らにこのような認識をもたらすかどうかはまだ分からない。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和財団上級研究員。歴代の民主党、共和党の各政権で米国務省中東担当分析官、交渉官を務めた。著書に『偉大さの周縁:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持てない(持つことを望まない)のか』がある。ツイッターアカウント:@aarondmiller2

※ダニエル・C・カーツナー:元駐エジプト米大使、元駐イスラエル大使。プリンストン大学公共国際問題研究大学院で外交と紛争解決について教鞭を執る。

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は二度目の夏を終えようとしている。これから秋、そして冬へと進む中で、状況は膠着状態のままである。ウクライナ側は春季大攻勢という掛け声で、反転攻勢をもくろんだが、失敗に終わった。西側諸国はウクライナに対する援助を続けているが、膠着状態に変化はない。以下の記事にあるように、西側諸国、NATOの軍事専門家たちから見れば、ウクライナ軍は「稚拙な」攻撃を繰り返しているということもその理由になるだろう。「せっかく援助してやって、効果的な作戦の助言もしてやっているのに、ウクライナの馬鹿たちは何をやっているんだ」というところだろう。
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 ウクライナ戦争も2年目になり、私たちも「慣れて」しまった。「このまま状況が変わらないで、ウクライナもロシアも飽き飽きしたところで停戦交渉という話になって、この停戦交渉がまた半年単位くらいでずるずる続いて、その間に武力衝突が起きたり、止まったりが続いて、ウクライナもロシアも、そして西側諸国をはじめとする世界各国が本格的に嫌になって停戦交渉成立への圧力が高まり、最終的に交渉成立する」というのが多くの人々が考えるシナリオであろう。

 アメリカ政府も中国政府も停戦に向けて舞台裏で静かに働きかけを行っているだろうが、ここまで来ると、ウクライナが「諦める」かどうかということになる。ロシアは自分たちが確保した地域を守備すすることに徹している。ウクライナ側が攻撃を諦めて、停止すれば、自然と停戦ということになる(条件などを決めて停戦合意をしなければならないが)。

 ウクライナ側は現在のところ、停戦する姿勢を見せてはいない。強気に、「クリミア半島を含む全てのロシアの掌握地域を奪還する」と主張し続けている。西側諸国はそんなことは不可能だと考えている。また、そんなことをして欲しくないと考えている。そんなことになれば、ロシアがどのような攻撃を加えてくるか分からない。西側諸国にどのような影響が出るか分からない。

 関係者全員が「早く停戦してくれればよいのに」としらけているのに、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領だけが恫喝しながら、援助を強要し、戦争継続を進めている。「ゼレンスキー疲れ」をどこまで全世界が許容できるかだ。いざとなれば、ゼレンスキーを排除して停戦ということも考えねばならない。

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NATO
とウクライナ軍 戦局打開の「特別作戦」で衝突秘密協議5時間の内幕とは【報道1930

9/19() 6:02配信

TBS NEWS DIG Powered by JNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/239ef8708c854448cdb82e718322151ad91cb2b7

先月15日、ウクライナとポーランドの国境のとある場所で、NATOとウクライナ軍の秘密協議が行われました。そこで決まったのは、反転攻勢の戦局を打開する特別な作戦。将軍達の議論は5時間に及びましたが、元NATOの高官は、互いに不満をぶつけあう激しい攻防があったと証言しています。NATOとウクライナ軍は、なぜ衝突したのでしょうか。秘密協議の内幕です。

 NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「まずウクライナ側は、『もっと武器が必要だ』と会談で言いました。そして、彼らは、F16や射程距離の長い大砲、特にATACMS(エイタクムス)と呼ばれる兵器を要求しました。また、ロシア軍の後方の大砲陣地や兵站補給施設まで届くミサイル。例えばイギリスのストームシャドウの供与を増やすことを要求したのです」NATO38年間勤務した元高官で現在はイギリスのエクセター大学の教授、ジェイミー・シェイ氏。8月中旬に行われたウクライナとNATOの秘密会談では、お互いに不満をぶつけ合う激論が交わされたと話します。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナ側は、『武器の供給が遅すぎる、控えめすぎる。もっと早く、もっと必要だ。武器には、より攻撃的な無人偵察機や、特に長距離砲、地上・空中の巡航ミサイルも含まれるが、これらを手に入れない限り、我々ができることは限られる』とNATO側に訴えたのです。しかし、これを聞いたイギリスやアメリカの将軍たちやNATOの欧州連合軍最高司令官・カボリ将軍らは、『ウクライナは戦術に関して我々の忠告を聞いているのだろうか』という気持ちがあったでしょう。何故なら、反転攻勢に際し、NATOからウクライナ側へのアドバイスは、『敵の最大の弱点である地点を選び、そこに攻撃を集中させる。そして防御に穴を開け、その穴を突く』というものでした。しかし、ウクライナはそれをやっていなかったからです」

反転攻勢の開始後、ウクライナ軍はザポリージャやバフムトなど全長およそ1200キロにも及ぶ前線に広く展開。ロシア軍の弱点を見つけようと規模の小さなピンポイント攻撃を繰り返していたと言います。
これに対しNATO側は、ピンポイント攻撃は多くの労力と弾薬を無駄にしていて、時間もかかりすぎていると、批判的に見ていたと言うのです。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「西側が常に言ってきたのは、『南部に兵力を集めて進軍する』という作戦でした。しかしウクライナはまだ明らかに東部のバフムトを取り戻そうとしていました。アメリカの助言は、『バフムトは重要ではない』というものでした。ウクライナ軍はそこであまりにも大きな損害を被っていました。ウクライナにとってバフムトは象徴的な存在になっていますが、アメリカは『頼むから、そこから一線を引いてくれ』と言っていたのです。しかしウクライナ人は誇り高い。自分のやり方でやりたいのです」

誇り高いウクライナ人とNATOの議論は、5時間に及びました。そして

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

NATO側は、『このようなピンポイント攻撃をさらに続ければ、ロシア軍に反攻を開始する準備の機会を与えてしまう。そうなると、あらゆる場所でその反攻を防ぐために多くの戦力を費やすことになる。だから、どうか集中して、一点を選び、そこを突破するために大きな戦力で挑んでほしい』とウクライナを説得したのです」

NATO側が主張する戦略上の問題点と共にウクライナ側が考えなければならなかったのは

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナは、兵器が欲しければ、戦術に従わなければなりません。それは明らかで、ウクライナはそれを理解したようです」

ウクライナ側は、最終的にNATOのアドバイスを受け入れました。兵力を南部戦線に集中し、一点突破を狙った攻撃に戦略を転換したのです。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナ軍は今明らかに、より効果的に兵力を集中させています。彼らは西側の戦略家の言うことに耳を傾け始めている。と同時に、西側諸国がこれまで差し控えていた兵器や装備を提供する意欲も高まっています」

TBS NEWS DIG Powered by JNN
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「敗北なら世界大戦」 ゼレンスキー氏が警告

ウクライナ侵攻

2023918 17:30 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB181YI0Y3A910C2000000/

【ワシントン=共同】ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は17日放送の米CBSテレビのインタビューで、ウクライナが敗北すればロシアはポーランドやバルト3国に迫り、第3次世界大戦に発展しかねないと警告した。「プーチン(ロシア大統領)を食い止めるか、世界大戦を始めるか、全世界が選ばなければならない」と述べた。

ゼレンスキー氏はこれまでの米国の支援に感謝を表明した。その上で、追加の軍事支援に対する消極的な意見が米国内で広がっているのを念頭に、世界を守るため「最も高い代償を払っているのは実際に戦い、死んでいくウクライナ人だ」と訴えた。インタビューは14日に収録された。

ゼレンスキー氏はニューヨークを訪れ、19日に国連総会一般討論の演説で各国に対ロシアでの結束を訴える見通し。21日にはワシントンでバイデン米大統領と会談する。米政府は追加の軍事支援を発表する方針。

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ウクライナ戦争を終わらせるための妥当な最終手段(A Plausible Endgame to the War in Ukraine

フィリップ・ショート筆
2023年2月23日

『タイムズ』誌

https://time.com/6257800/ukraine-war-end/

※ショートは『プーティン(Putin)』の著者である。彼はまた『毛沢東:その生涯(Mao: A Life)』『ポルポト:悪夢の分析(Pol Pot: Anatomy of a Nightmare』』といった評伝を書いている。BBC,『エコノミスト』誌、『タイムズ』誌のモスクワ、北京、ワシントンDCでの海外特派員を長年務めた。

現代の戦争は全て合成物、ハイブリッド(hybrid)である。軍隊が戦場で成功するためには、市民からの支持と、その支持によって得られる資源がなければならない。これを前提にすれば、ウクライナでは西側諸国が圧勝するはずだ。ウクライナ国民は、ロシアからの侵略者に対する抵抗のためにかつてないほど団結している。ウクライナの支援者であるアメリカとその同盟諸国は、クレムリンが利用できる経済資源を凌駕する経済力を持っている。通常であれば、それは圧倒的な軍事力につながるはずだ。

しかし、ロシアの侵攻から1年経った今、事態はそう単純ではないことが判明しつつある。それは通常の戦争ではないからだ。非標準的なルールのもとで行われる限定的な紛争(limited conflict)であり、直接、間接を問わず、全ての参加者が片腕を縛られた状態で戦っている。西側諸国は、無秩序なエスカレーションを恐れて、ウクライナの国境内にとどまることを確約し、クレムリンは、プーティンがNATOとの戦争には勝てないと知っているからである。この戦争がいかに異例なものであるかを物語っているのは、ジョー・バイデンが「衝突(confliction)」を避けるために月曜日にキエフを訪問することをモスクワが事前に知らされていたことだ。戦争当事国が通常とる行動ではない。

代理紛争(proxy conflict)よりは大規模だが、全面戦争というほどでもない。ウクライナが生き残りをかけて繰り広げている本質的な闘争以上に、ウクライナは世界の3大核保有国が優位を争う血で血を洗うチェス盤となっている。ロシアは、アメリカが衰退し、同盟諸国を守ることができなくなっていることを示したいところだ。アメリカは、西側の「ルールに基づく秩序(rules-based order)」の保証人としての信用を守るために戦っている。「ビッグ・スリー(Big Three)」の中で新参者である中国は、傍観者として控えめにパートナーであるロシアを援助している。その一方で、自由世界のリーダーであり、その支配に憤慨している世界地政学におけるボス(alpha male)にどこまで反抗すべきかを計算しようとしている。

このような紛争では、情報戦(information war)は地上戦に劣らず重要である。今週、3つの核保有国は敵対行為勃発の記念日を利用して、それぞれの立場を二転三転させた。バイデン大統領がキエフを訪れ、現地とワルシャワで確約したのは、ウクライナにアメリカの支援は揺るがないという公的な安心感を与えるためだけでなく、全てのアメリカ人がアメリカの重要な利益であると確信してはいない、遠く離れた戦争に対する国内の支持を補強するためでもあった。ウラジーミル・プーティンは、ロシア連邦議会の合同会議で、ロシアは西側諸国の修正主義との生存に関わる闘争(existential struggle against the revanchism of the West)に従事しており、長期にわたる紛争が待ち受けていると語った。中国は王毅政治局委員(外務担当)をモスクワに派遣し、北京もこの戦いに参加していることを強調した。

これまでのところ、バイデンは西側諸国との同盟関係を維持するだけでなく、強化することに成功している。しかし、ホワイトハウスはヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に対して、アメリカは「ここに踏みとどまる」と公言する一方で、西側の関与(commitment)は無限ではないと非公式に警告している。プーティン大統領は、国内での反対派を冷酷に弾圧している。ほとんどのロシア人は、戦争には乗り気ではないものの、プーティンを支持し続けている。プーティンが体調不良やクーデターで倒れるかもしれないという憶測は、希望的観測(wishful thinking)にすぎない。ここ数日、西側諸国によるウクライナへの支援が急増しているが、その根底にあるものがもっと暗いものであることを忘れがちだ。

紛争1年目の大半は、情報戦の霧と戦場での出来事の移り変わりの速さによって、相反する物語が入り組んだ迷路のように入り組んでいた。戦争が2年目に入り、その輪郭がより鮮明になってきた。

プーティンは、痛みを伴わない迅速な勝利という希望が幻であることが証明されたため、少なくとも2024年のロシアとアメリカの大統領選挙まで、そしておそらくそれ以上続くであろう消耗戦(war of attrition)の見通しに不承不承適応しており、更に何万人もの死者を出している。ゼレンスキー大統領とNATOの指導者たちも、この新しい現実に適応しなければならない。今のところ、単なる膠着状態(stalemate)ではなく、袋小路(impasse)に陥っている。プーティンは、遅かれ早かれ西側の支援の流れが弱まり、ロシアはドンバス、クリミア、その間の陸橋、あるいはウクライナの抵抗が揺らげば、より広い領土を固めることができると信じ続けている。

西側諸国がキエフに先進兵器をどの程度供給し続けるかは、戦争の展開を左右する、極めて重要な要素であることに変わりはない。

理論的には、西側の十分な支援があれば、ウクライナはロシアをウクライナ東部から追い出し、クリミアからも追い出すことができるかもしれない。しかし、実際には、ロシアがウクライナ全土を占領するということ以上に、そういうことは起きないだろう。

ポーランド、バルト三国、チェコ共和国は、プーティンをここで止めない限り、次は自分たちの番かもしれないと主張し、ロシアの完全な敗北を追い求めている。しかし、ソ連に支配された歴史や脆弱性を感じ続けていることを考えればそのような主張は理解できるが、そのような懸念は間違いである。ウクライナは特殊なケースだ。NATO加盟国との直接衝突はロシアにとって自殺行為であり、プーティンの戦争中の行動は、それを回避する決意を示している。

誰も直接そうは言わないが、ウクライナがロシア軍の占領している全ての地域から追い出すことを、ホワイトハウスが望んでいるかどうかさえ疑わしい。アンソニー・ブリンケンは慎重な姿勢を示し、ロシアは2014年以前の国境線ではなく、2022年以前の国境線に戻らなければならないと述べている。ウクライナがクリミアに進攻すれば、住民のほとんどがロシア人であり、モスクワの立場からすれば、他の地域と同じロシアの州であるクリミアは、まさにバイデン政権が阻止しようと決意している、厄介なエスカレーションを起こす危険性がある。ここ数カ月、ロシアが戦術核兵器を使用するという話はあまり聞かれなくなった。しかし、プーティンが、モスクワとワシントンの間に残された最後の主要な核軍備管理協定である新START条約への参加をロシアは停止すると発表したことは、核兵器というカードがまだテーブルの上にあることを微妙に思い出させるものだ。

連合国がベルリンを占領して終結した第二次世界大戦とは異なり、ウクライナの国旗がクレムリンの上空に掲げられる日が来るとは誰も想像していない。ロシアの全面的な敗北が否定されるのであれば、最終的には政治的解決が必要となる。最も可能性が高いのは、ロシアがウクライナの占領地を保持し、プーティンがそれなりの成功を主張する一方で、アメリカはウクライナがロシアの支配に抵抗できたのはアメリカの支援が決定的だったと主張できるような、ある種の妥協案[compromise](休戦協定や非公式の分離線[armistice or an informal line of separation])である。

このような結果があらかじめ決まっている訳ではないが、最も発生可能性が高い。もしそうなれば、ウクライナ国民はそれを裏切(betrayal)りと見なすだろう。西側諸国は大規模な復興支援を提供することで、そうした反感をやわらげようとするだろう。

これは幸せな見通しではない。しかし、戦争のほとんどは最悪の結末を迎える。今回のウクライナ戦争はそうではないと考える理由はない。

=====

ウクライナ戦争における停戦はモスクワに報酬を与え、西側の利益を損なうということになるだろう(A ceasefire in Ukraine would reward Moscow and undermine Western interests

スティーヴン・ブランク筆

2023年6月7日
『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/4037418-a-ceasefire-in-ukraine-would-reward-moscow-and-undermine-western-interests/

ロシアの侵略が継続中だ。世界情勢への初期段階での影響を最小限に抑えようとしたり、ロシアの勝利を期待したりしていた西側の専門家たちの中には、今や、ワシントンは、事実上、自らの愚かさの代償からモスクワを救う終盤戦戦略(endgame strategy)を打ち出すべきだと主張する人たちもいる。

この戦争には勝てない、何年にもわたる消耗戦になる、核のエスカレートは避けられない、などという多くの意見が出ている。従って、ワシントン(そしておそらくヨーロッパ)は、モスクワに少なくともその不正な目的の一部を管理させたままで、停戦を強制するために介入すべきである。

残念なことに、これらは私たちが昨年聞いて、飽き飽きしている議論と同じであり、戦闘の経過によって、こうした主張の内容は反証されることになった。こうした主張を行っている人々は西側諸国がウクライナを支援し続ける見通しも、ウクライナがフィールドで勝利する見通しも立てていない。この路線の主張者たちはまた、将来のロシアの攻撃を平和の名のもとに確実に抑止するであろうウクライナのNATO加盟についても、それがロシアの征服を正当化し、今後何年にもわたって平和を保障しないことになるとして、懐疑的な目を向けている。

ワシントンとその同盟諸国は、ヨーロッパの平和と安全保障に関してロシアと何らかの合意をすることは不可能であることを理解する時が来た。それどころか、キール・ジャイルズが著作の中で賢明にも示しているように、ロシアは自らの意思で、そして自らの内在的な政治的・文化的構造によって、西側諸国と根本的に戦争状態にあり、そして今もそうであるのだ。西側の政策において、近隣諸国よりもロシアの安全保障上の懸念を優遇する長年の傾向は、明らかに政策立案者たちを行き詰まらせている。ロシアの安全保障は、アメリカの同盟諸国やヨーロッパの安全保障の根拠として、もはや持ち出すことはできない。

ウクライナがNATOに加盟し、西側諸国が武器を供与し、政治的行動を起こすことだけが、ウクライナの勝利をもたらすことができるのは明らかである。米情報長官のアヴリル・ヘインズは現在、ロシアは新たな攻撃を仕掛けられないと考えている。つまり、ロシアの勝利はもはや実現不可能かもしれないが、ウクライナの勝利は、確かに大規模な支援が継続されれば可能なのだ。しかし、モスクワが西側諸国全体と戦争状態にあり、ウクライナがその震源地(epicenter)であり、唯一の動的舞台(kinetic theater)であるからこそ、その支援はアメリカとその同盟諸国の利益のために必要なのである。

従って、なぜこれほどまでに多くの専門家たちが、同盟諸国や私たち自身の利益や価値を犠牲にしてまで、ロシアをその犯罪の結果から救う必要があると考えるのかを問う価値がある。おそらく彼らは、ロシアが自国の力、特に核兵器について主張することに目を奪われているのだ。確かに、核兵器が持つ意図の一つは、見物人にロシアの力と影響力を印象づけることだ。しかし、ロシアの核兵器の威力は、自爆的なロシアへの侵攻を抑止するには十分すぎるほどだが、ウクライナを打ち負かすとなると、あまり役に立たないことが証明されている。

ロシアの力に媚びへつらう知的魅力の源が何であれ、ロシアの侵略と戦争犯罪を継続的に正当化する理由としては効果を持たない。実際、ロシアの侵攻に屈することは、ロシアをその犯罪と愚行の正当な処罰から救うことを意味し、この場合、国際法、秩序、アメリカの利益と価値を犠牲にしている。更に言えば、この戦争に勝利することは不可能であり、アメリカの政策に開かれた唯一の未来は、「停戦を押し付けようとしてロシアの帝国主義を目指す原動力(imperial drive)を永続させることだ」という主張は、ワシントン側の失敗の告白なのである。

この戦争は、その悲劇性は横に置いておいて、リチャード・ニクソン大統領が「平和の構造(a structure of peace)」と呼んだものを、他の場所ではなく、ヨーロッパに構築することを可能にしていることを認識しなければならない。このような構造は、ウクライナをヨーロッパ連合(EU)に加盟させることによって、1991年の失敗を是正し、同時に、ヨーロッパに限らず、恒久的な戦争や冷戦によってのみ達成可能なロシアの帝国的プロジェクトの進展を阻止できるのだ。

この戦争に勝利することはできない、とか、モスクワが勝利と主張できるようなものを与える交渉によってのみ終わらせることができるという考えは、意志と想像力(the will and the imagination)の両方の失敗を表している。道徳的欠陥は別として、この見解はウクライナだけでなくワシントンとその同盟諸国の国益をも裏切るものであるため、リアル・ポリテイーク(Realpolitik)の厳しいテストには合格するものではない。

ウクライナへの継続的な支援は、単に勝利をもたらすだけではない。より耐久性のある新たなヨーロッパにおける安全保障秩序をもたらすことができる。いずれにせよ宥めることなど不可能で、これからも攻撃的であろうモスクワを懐柔する必要性以上の何かに基づく秩序が生み出されるのだ。

※スティーヴン・ブランク(Ph.D.):外交政策研究所(Foreign Policy Research Institute FPRI)上級研究員。米陸軍大学戦略研究所教授(ロシア国家安全保障、国家安全保障問題)、マッカーサー記念研究員を務めた。現在、元ソ連・ロシア・ユーラシアの地政学、地理戦略を専門とする独立系のコンサルタントを務める。

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(終わり)

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 古村治彦です。

 私は、ウクライナ戦争は一刻も早く停戦すべきだという考えを持っている。しかし、それに対して「間違っている」「ロシアの味方だ」「ウクライナの人々のことを考えないのか」という非難は当然出てくるものとして受け止めている。アメリカをはじめとする欧米諸国が「火遊び」でNATOの拡大(東進)を行い、ロシアを刺激し、不安感を増大させ、戦争が起きた。そして、戦争が起きれば、欧米諸国はロシアと正式な戦闘状態に入り、最悪の場合には核攻撃を受けるという懸念から、ウクライナに武器を送って(それも致命的なダメージを与える種類は送らない)、ウクライナ人に戦わせるだけのことだ。

ウクライナを戦争前にNATOの正式メンバーにしていれば、NATO諸国は正式にロシアと干戈を交えることになっていたはずだ。ウクライナにどんどんと軍事援助を与え、「実質的にはNATOの一員ですよ」と宣伝しておきながら、いざという事態になれば、欧米諸国はウクライナと共に戦うことはしない。これではウクライナもそしてロシアも馬鹿にされているようなものだ。

 私はこのように考えている。しかし、こうした考えに対しては上記のように非難もあるだろう。それは受け止める。しかし、それならばどうしようと言うのだろうか。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は停戦を拒絶している。ウクライナの全国土を奪還するまで戦いは止めないとしている。それは2014年の段階でロシアが併合したクリミア半島が入るし、親露勢力の多い東部各州も入る。そのための戦いはどれくらい続くことになるだろうか。クリミア半島までとなると、ロシアにとっては「国土防衛線」ということになる。そうなればこれまで以上に戦争のレヴェルを上げることになる。つまり、核兵器使用の可能性が高まるということになる。

 現在の世界規模での食糧価格の高騰やエネルギー価格の高騰はやはり戦争の影響を受けている。世界規模で、そしてウクライナとロシアの人々のためにも一刻も早い停戦を願っている。そのためにはゼレンスキー大統領の退陣も必要なのではないかとも考えている。太平洋戦争における五本の敗戦直前のことを思えば、指導者の交代で停戦を実現するということもあり得るのではないかと考えている。

 このようなことを書けば「ロシアの手先」と言われてしまうだろう。私としては「そのような時代なのだろう」とそれを淡々と受け止めるしかない。

(貼り付けはじめ)

「平和運動活動家」にとって、戦争はアメリカのことであって、ロシアのことではない(For ‘Peace Activists,’ War Is About America, Never Russia

-彼ら自身の強硬な左翼的世界観は、反西側陣営の侵略者の側につくほど吸収されている。

アレクセイ・コヴァレフ筆

2022年12月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/22/russia-ukraine-war-left-progressives-peace-activists-chomsky-negotiations-diplomatic-solution/

ウクライナ戦争が1年に近づくにつれ、いずれ何らかの交渉で終結することを期待するのは当然のことではある。重要なのは、開戦と終戦の責任をどこに置くかだ。欧米諸国の進歩的な左派の一部にとって、「外交を通じての平和(peace through diplomacy)」とは、滅多に表立っては言わないにせよ、1つの意味を持っている。それは、「ウクライナはロシアの条件に従って降伏する(Ukraine’s surrender on Russia’s terms)」というものだ。

将来、どこかの時点で、交渉が行われるに違いない。ロシアが戦場で目的を達成するための窓はとっくに開いている。しかし、ウクライナが西側諸国から攻撃用兵器の種類を増やしてもらわない限り、ウクライナ軍がハリコフ州やケルソン州で見事に成し遂げたような大規模な反撃を行って残りの国土を解放することは非常に困難だろう。従って、ある時点で、どちらか一方または双方が戦争するための資源を失い、両国が停戦の条件を話し合うテーブルに着くことになる。しかし、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナが主権国家(sovereign state)として、また独立した国民として存在する権利そのものをまだ認めていない。そうした中で、誠実に交渉し、いかなる合意も守るというロシアの約束は、議論の余地があるという評価以上のことはない。

西側諸国の多くにおいて、国民の大多数はウクライナ支援に賛成している。ウクライナにとって最大かつ最も信頼できるパートナーであるアメリカも同様で、12月21日に行われた米連邦議会合同会議でのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の歴史的演説では、通路を越えてスタンディングオベイションが起こるなど、ウクライナの主権擁護は超党派の強固な支持を得ている。

しかし、欧米諸国によるウクライナ支援は、政治スペクトルの両端から敵意を呼び寄せている。「アメリカの覇権(U.S. hegemony)」や「アメリカの軍国主義(U.S. militarism)」に反対する西側諸国の強硬左派にとって、彼ら自身の反米・反西西洋的世界観は、反西側陣営のいかなる侵略者の側にも容易に味方するほど吸収されている。同様に、アメリカが支援する国に対しても熱心に反対する。ロシアやイランのような抑圧的な政権に左派の一部が根強く同調するのはこのためだ。抑圧(repression)そのものを肯定しているわけではないが、反米陣営と手を組むことへ傾倒が不支持よりも強いのである。

ウクライナのケースは、以前植民地化された主権国家が、大量殺戮の意図に全く隠さない帝国主義的侵略者から自らを守るという、明確な闘いであることは気にする必要がない。こうした進歩的な極左派は、しばしば平和活動家(peace activists)と自称しているが、ウクライナの社会主義者たちのような、自分たちのイデオロギー的同志から出た証拠であっても無視する。

その代わり、ウクライナに関する極左派の主張は、ウクライナ支援からの撤退を求める西側極右派の主張と見分けがつかないことが多い。進歩的左派の象徴であるジェレミー・コービン元英国労働党党首やフォックス・ニューズの司会者タッカー・カールソンは、クレムリンのお気に入りの論点を自由に繰り返している。たとえば、ウクライナを支援すれば不必要にウクライナ人の苦痛が長引くという皮肉な主張である。

明らかな結果という点では、強硬左派が「ウクライナでの戦争を止めろ(stop the war in Ukraine)」と要求する本当の意味は、「ウクライナの自衛を助けるのを止めろ(stop helping Ukraine defend itself)」ということだ。文書で十分に立証されたロシアの残虐行為、プーティンが宣言したウクライナにおける目標、そして侵略の露骨な植民地主義的性質を無視するように、彼らの自称反戦姿勢には道徳的要請が決して存在しないのだ。このため、論理的な結論は1つしかない。左翼が反対するのは戦争ではなく、一方がアメリカの支援を受ける戦争が存在するという事実である。

ウクライナ人には主体性(agency)がなく、ロシアは代理戦争(proxy wars)の犠牲者であるというこのねじれた世界観は、先月のマンハッタン文化センターでのイヴェントで存分に発揮された。そこでは、このサブカルチャーの最も著名な人物たちが、イヴェントのタイトルの通りに、「ウクライナ和平への真の道(Real Path to Peace in Ukraine)」について議論した。言語学者ノーム・チョムスキー、元アメリカ緑の党大統領候補ジル・スタイン、著名な自称平和活動家メデア・ベンジャミンなど、進歩的左派の象徴的人物が名を連ねていた。

3時間以上にわたる討論は、インターネット上のごく少数の視聴者に向けて配信されたが、ウクライナの平和への第一歩らしきものを提案した発言者は1人としていなかった。このイヴェントの副題は「交渉には賛成!エスカレーションには反対!」だったにもかかわらず、ウクライナ和平への第一歩らしき提案は一人もなかった。「エスカレーションには反対!」という副題がついていたにもかかわらず、誰が交渉するのか、その交渉の立場はどうなるのか、永続的な和平を実現するために誰が何をあきらめるのか、について言及しようとする講演者は1人もいなかった。ウクライナ人の姿はなく、ある講演者は「平和を訴えるのにウクライナ人である必要もロシア人である必要もない」と陳腐な弁明をした。

こうした活動家たちがウクライナの「平和(peace)」や「外交的解決(diplomatic solution)」を訴える際には、必ずと言っていいほど、その詳細は曖昧だ。スタインは、停戦は「ペンのクリックひとつ」で可能だというが、他の講演者と同様、すぐに他の話題に移ってしまった。もちろん、今後の交渉の内容は現時点では机上の空論に過ぎないが、少なくとも他の交渉推進派からは、思惑があるにせよ、具体的な提案が出ている。例えば、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、2月24日以前の現状に戻すことを要求している。

しかし、強硬な左派にとって、外交的解決への要求は常に、「ウクライナへの援助を止め、ロシアに好きなようにさせる」ということに尽きるようだ。例えば、イギリスの「Stop the War Coalition」が2022年11月に出した嘆願書について考えてみよう。ウクライナでの戦争による多大な人的犠牲を認めながら、イギリス政府に「武器の送付を止める」ことを求め、その上で「当事者全てが即時停戦と和平交渉の要求の高まりに耳を傾ける」よう促しているのだ。「ウクライナに平和を」とは、ウクライナの費用で、ロシアの条件での平和を意味するのだ。

「平和推進(pro-peace)」の活動家に長時間マイクを持たせると、親ロシア的な傾向が表れてしまう。「アメリカは悪であり、反米の独裁者は善である」という教義に従ったブログ「グレイゾーン」の共同設立者マックス・ブルメンタールが、ゼレンスキーが到着した日にワシントンでロシア当局者を罵倒せず、戦争を止めるためにできることをするように要求したのは偶然ではないだろう。その代わりに、ブルメンタールと彼の同志たちは、ロシアの残虐行為を否定するか軽視する一方で、ゼレンスキー個人を誹謗中傷することに力を注いでいるのだ。

他の多くの西側「反戦(anti-war)」活動家たちは、親クレムリン的な偏見(pro-Kremlin bias)を隠そうともしない。様々な極左活動家の傘下団体であるANSWER連合のスポークスマンであるブライアン・ベッカーは、プーティンの修正主義論文であり戦争正当化文書である『ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について』を彼のインスピレーション源の1つと考えていると述べた。

西側の「反戦」の声が、ロシアの残虐行為を認め、自宅で爆撃されたウクライナの市民に同情を示したとしても、それは必ず、残虐行為がロシアの侵略以外の何かのせいにされる、別の反アメリカ的言辞に押し込められている。この道徳的盲点の典型的な例が、「反軍国主義(anti-militarist)」左派の守護聖人(patron saint)であるチョムスキーである。彼は何度も何度もインタヴューやスピーチの冒頭でロシアの「犯罪的侵略(criminal invasion )」を非難しているが、すぐに戦争の原因を軍産複合体がウクライナに武器を押し付けているとされるアメリカのせいにすることに重点を置いている。彼の世界観は、ウクライナだけでなく、ロシアにも主体性を認めない。ロシアは、邪魔をしないことで回避できる自然災害のような存在として描かれている。この現実的な敗北主義者(pragmatically defeatist)の反戦思想では、ウクライナは何があってもダメなのだ。チョムスキーに言わせれば、ロシアは世界を破壊する力を持っているのだから、ロシアの要求にすべて応じるしかないということになる。それを拒否することで、西側諸国は「恐ろしい賭け(ghastly gamble)」(ニューヨークのイヴェントでチョムスキーがそう呼んだ)に従事していると彼は発言した。

ウクライナをはじめ、大きな隣国に侵略されたり、いじめられたりしている国々にとって幸いなことに、西側の自称反戦左派は、1970年代や80年代のような影響力をもはや持っていない。ニッチなイヴェントでも数百人以上の参加者を集めることはほとんどない。少なくともアメリカでは、ウクライナに対する西側の支持に影響を与えるほど大きな聴衆を動員することはない。しかし、影響力を求めるあまり、少数の人々の心を傷つけることはできるだろう。

※アレクセイ・コヴァレフ:『メドューサ』誌調査担当編集者。ツイッターアカウント:@Alexey__Kovalev

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 古村治彦です。

 2022年11月15日、ポーランドのウクライナ国境近くにミサイルの発射体もしくは破片が落下して2人が死亡するという出来事が起きた。この事故について、ロシアのミサイルがポーランドに発射されたものだという非難がウクライナや東欧・中欧の国々から出て、NATOの集団的安全保障が発動されて、NATO軍がウクライナ戦争に参戦することになるのではないかという懸念と緊張が高まった。しかし、当事国ポーランドとアメリカが静観する構えを見せ、ウクライナのミサイルの可能性を指摘して、事態は沈静化した。ロシアはウクライナのポーランドとの国境地帯にミサイルは発射していないと主張している。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が起きて、早いもので今年も暮れようとしている。ウクライナ戦争は2022年の世界全体に大きな影響を与えた。ヨーロッパから遠く離れた日本で暮らす私たちの生活にも暗い影を落とした。エネルギー価格と食料価格の高騰によって、生活費が高騰している。買い物に行って以前と同じものを買っても出ていくお金は増えているという状況だ。

 ウクライナ戦争が世界に暗い影を落とすという状況はこれからもしばらく続きそうだ。それは停戦に向けた動きが見えないからだ。ウクライナは西側諸国に対して「どんどん武器と金と物資を送れ。送らないのは正義に反する行為だ。そして、自分たちはウクライナ東部とクリミア半島を奪還する」と主張している。このような「正義」に基づいた主張には表立って反対しにくい。しかし、このブログでも以前に紹介したように、エネルギー価格の高騰、エネルギー不足で一段と厳しい生活を強いられるヨーロッパ各国の国民は「何とか和平を達成してくれないか」という願いを持ち、「平和」を希求している。より露骨に言えば、「ウクライナはもういい加減戦争を止めてロシアと停戦しろ、こっちだって生活が苦しいんだ。しかも人の武器と金で戦争しているんだぞ」ということになる。

 今回のポーランドでの出来事を受けて世界は緊張した。NATO軍、その主力はアメリカ軍ということになるが、NATO軍が参戦することになれば第三次世界大戦、更には核戦争にまで発展するということが人々を恐怖させた。戦争が拡大すれば現在よりも状況が悪化し、世界は不安定になる。そのことを改めて深刻に実感することになった。

 ウクライナ戦争が第三次世界大戦につながる危険性をいち早く指摘したのは、私の師である副島隆彦だ。『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』(2022年6月)を読むと、半年近く経っても状況は全く好転していないということが改めて実感できる。是非お読みいただきたい。

ukurainasensoudaisanjisekaitaisen511
プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする

 ウクライナが満足する形で停戦が成立するためには、ウクライナ側の主張ヲ基にすれば、ウクライナが東部とクリミア半島を完全に奪還しなければならない。このことがまず可能なのかどうか、そして、可能だというならばそれにかかる時間とコスト(人命、お金、物資など)を冷静に判断しなければならない。そして、ウクライナがこれからどのような国家として存在していくのかということも改めて検討してある程度の道筋をつけなければならない。現在のところ、ウクライナが戦争に勝利して、自分たちの目的を達成することは「ほぼ不可能」である。そのことは、アメリカ軍の制服組トップであるマーク・ミリー米統合参謀本部議長が認めている。そして、ミリーは「政治的解決」を示唆している。これは「停戦交渉をするべき」ということを意味する。

 以下の論稿は正義派の考えに基づいて構成されているが、私が問いたいのは「どのタイミングで停戦交渉するのか」「ウクライナに良いタイミングが来るまで待つというが、そのタイミングはいつ来るのか、そもそもそのようなタイミングが来るのか」ということだ。私たちは太平洋戦争で、ミッドウェー海戦敗北とガダルカナル島失陥以降、アメリカの反転攻勢を受けて日本が追い詰められていく過程で、「何とかアメリカ軍に一撃を加えてそれでアメリカ側をひるませて講和に持ち込む」という「一撃講和論」という楽観主義的な考えによって、戦争が長引き、結果として無残な結果となったことを知っている。ウクライナ戦争でウクライナ側が攻勢に出ているが、ロシアが東部とクリミア半島の防御態勢を整えて、膠着状態に陥った場合、ウクライナの求める条件はまず達成できない。そうなれば戦争がだらだら長引く。ウクライナに対する支援をずっと続けられるのかどうか、という問題も出てくる。西側諸国からの支援がなければウクライナは戦争を継続できない。結局、ウクライナは自分たちの目的を達成する前に停戦ということになる。それは現状とほぼ変わらない段階でのことになるだろう。それならばだらだらと続いた期間とその間のコストは無駄ということになる。

 私は今年の3月の段階で早期停戦すべきだと述べた。その考えは今も変わらない。ウクライナがロシアに一撃を加えた今がタイミングだと思う。このまま戦争がだらだらと続くことは世界にとって不幸だ。

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米軍高官「ウクライナ、軍事的勝利は当面ない」 政治解決に期待

11/17() 8:35配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea4a4cbf2f1838b30306fd58c9f0bf254c7b891c

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は16日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に関して「ロシアがウクライナ全土を征服するという戦略目標を実現できる可能性はゼロに近い。ただ、ウクライナが軍事的に勝利することも当面ないだろう」と指摘した。その上で「ロシア軍は大きなダメージを受けており、政治的判断で撤退する可能性はある」と述べ、攻勢に出ているウクライナにとっては交渉の好機だとの考えを示した。

 ミリー氏は「防衛に関して、ウクライナは大成功を収めている。ただ、攻撃に関しては、9月以降にハリコフ州とヘルソン州(の領域奪還)で成功したが、全体から見れば小さな地域だ。ウクライナ全土の約20%を占領するロシア軍を軍事的に追い出すことは非常に難しい任務だ」と指摘した。

 一方で、「ロシア軍は、多数の兵士が死傷し、戦車や歩兵戦闘車、(高性能の)第45世代戦闘機、ヘリコプターを大量に失い、非常に傷を負っている。交渉は、自分が強く、相手が弱い時に望むものだ。(ウクライナの望む形での)政治的解決は可能だ」と強調した。秋の降雨でぬかるみが増える季節を迎えたことで「戦術的な戦闘が鈍化すれば、政治解決に向けた対話の開始もあり得る」との見解を示した。【ワシントン秋山信一】

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ロシアとの交渉は魅力的であり、そして間違っている(Talking With Russia Is Tempting—and Wrong

-ウクライナでの戦争を終結させるための交渉を始めるのは時期尚早である。

ジェイムズ・トラウブ筆

2022年11月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/16/talking-with-russia-is-tempting-and-wrong/

1814年の夏、2年前にイギリスがアメリカに侵攻し始まった戦争を終結させるために、米英両国の交渉官たちがヘント(ベルギー)に集まった。イギリスは勝利の確信を持ち、領土に関するアメリカ側の譲歩を求めた。ジョン・クインシー・アダムスとヘンリー・クレイが率いるアメリカ代表団はイギリスからの強硬な条件をはねつけた。イギリスは、ニューイングランドの一部を含む当時の制圧地域を境界線として描き直すことを提案した。10月初旬にヨーロッパに届いたワシントン焼失のニューズは、アメリカ側にも譲歩を促すものだった。

しかし、アメリカ側は良い知らせを待って交渉を長引かせた。良い知らせは、シャンプラン湖周辺とボルチモアでのアメリカの勝利という形ですぐに届いた。クリスマス直前、イギリスは全ての要求を撤回し、最も争点となる問題を将来の議論に任せて先送りすることに同意した。ヘント条約は、アメリカの主権が脅かされていた時代に終止符を打ったのである。

この逸話の教訓は、戦時中の早まった外交は誤りであり、戦場のダイナミズムが交渉の条件を形成することを許さなければならないということである。マーク・ミリー統合参謀本部議長は、ウクライナがロシア軍と「膠着状態(standstill)」まで戦った今、外交の「好機をつかむ(seize the moment)」ようバイデン政権の同僚に呼びかけている。しかし、それは間違った比喩だ。ウクライナ人はまずロシアの猛攻に耐え、その後でそれを押し返した。1914年9月の協定がニューイングランドの大部分を切り落としたように、1カ月前の外交交渉では、ウクライナが取り戻したケルソンの支配をロシアに譲り渡すことになっていたかもしれない。外交のチャンスはいずれやってくるが、それは今ではない。

以前、ウクライナ問題で進歩主義的な民主党所属の政治家たちがジョー・バイデン米大統領に送った書簡について、私はコラムで左派の反戦外交の主張(left’s antiwar case for diplomacy)には抵抗があることを書いた。しかし、より強い主張は、右派、少なくとも左派ではない勢力から出ている。右派は、ウクライナの領土保全への関心は限りなく高いが、欧米諸国には他にも多くの懸念があり、ウクライナ支援とのバランスを取る必要があると正しく指摘している。ユーラシア・グループのクリフ・カプチャン会長は、『ナショナル・インタレスト』誌の記事の中で、戦争がもたらす重大かつ長期的なコストとして、「脱グローバリゼーション(deglobalization)」の加速、食料・エネルギー価格の上昇とそれらが引き起こす社会・政治不安、核の不安定性、そして何よりもロシアとNATOとの戦争、おそらくロシアによる核兵器の使用という見込みを挙げている。

最近、カプチャンの話を聞いたところ、「ロシアとの話し合いを受け入れるべきだと考えるのは少数派だ」と述べていた。彼が最も懸念するのは、軍事的なコストだ。「プーティンのレッドライン(最終譲歩ライン)はまだ見つかっていない」と彼は言った。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、これまで考えられていたようなリスク回避を受け入れる人物ではない。ウクライナ人がそれを払うに値すると考えるかどうかにかかわらず、彼は自分の体制に対する脅威と見なすものには、核兵器であれ何であれ、西側諸国にとって災難となるようなエスカレーションで対応するかもしれない。カプチャンの兄弟でジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授(国際問題)も、「ロシア軍がウクライナ東部とクリミアから完全に追放された場合、クレムリンの核兵器への依存は現実的な選択肢となる」と主張している。

これはつまり、ウクライナ人が戦場で大成功を収め、プーティンが世界を引きずり込む前に、西側諸国は外交的な最終案を練り始める必要があるという提案を行うもので、これは外交とタイミングに関して本末転倒な主張だ。このような理屈は、もちろん、核の恐喝が使われる要点ということになる。私がクリフ・カプチャンにこのように言うと、彼は戦争の追加的なコスト、つまり何百人ものウクライナの子どもたちの恐ろしい死について指摘した。しかし、これはウクライナ人自身が喜んで負担しているように見えるコストである。

だからといって、プーティンのハッタリに簡単に応じるのは、狂気の沙汰としか言いようがない。バイデン政権はレッドラインの問題を痛感している。ウクライナに4億ドルの軍需物資を追加供与することを承認しながら、ロシア国内の標的を攻撃できる長距離無人機の供与は拒否した。外交上の主張は、事実上、ワシントンはアメリカだけでなくウクライナも制限しなければならないということになる。そうでなければ、国際関係学者のエマ・アシュフォードが最近書いたように、「戦争に対する慎重に調整された対応が、絶対的な勝利という危険なファンタジーに取って代わられるかもしれない」ということになる。アシュフォードは慎重に中立的な立場を取り、交渉による解決は「今日では不可能に思える」が、アメリカの外交官は「そのようなアプローチが伴う困難な問題を公にして、そしてパートナーに対して提起し始めるべきだ」と示唆している。

ウクライナにロシアとの対話を迫ってはいけないが、必ず来るだろう話し合いに向けて準備を始めるべきだということだ。これは論理的に聞こえる。しかし、本当にそうすべきなのか? 外交問題評議会のロシア専門家であるスティーヴン・セスタノビッチにこの問題を提起してみた。セスタノビッチは、可能性のあるシナリオを公開することさえ、最も貴重な要素であるウクライナの意志を奪うことになりかねないと述べた。彼は次のように語った。「そう、ある時点では、ウクライナ人と座って将来について話すことができる。しかし、彼らはどれだけの損害を受容するのかどうかについては敬意を払わなければならない」。セスタノビッチは、1940年5月、ウィンストン・チャーチルがイタリアの外交打診を拒否したのは、イギリスの士気が下がるのを恐れてのことであったという歴史的な類推(analogy)を使用した。

今、外交官の机の中に最終案の計画が残っているのは、タイミングや戦術だけでなく、外交的リアリストが甘く見がちな他の種類のコストにも関係がある。英国は、1812年の戦争後、アメリカがあまりにも強く、立地も良いため、奪還は不可能であることを悟った。しかし、プーティンは2014年の状態より少し良いものを認める協定によって勇み立つだろう。実際、プーティンは、危害を加える能力を保持している限り、近隣諸国と西側諸国にとって脅威であり続けるだろう。セスタノビッチは、ウクライナが東部で前進を続け、失ったものの多くを取り戻せば、「ロシアは完全にパニックモードになり」、プーティン自身の支配が脅かされることになると示唆している。これは事実上、ウクライナ軍の成功の最良のシナリオである。もちろん、最悪のシナリオは、その脅威に対してプーティンが暴発することである)。

根本的な問題は次のようなものだ。問題は、「それがどの程度問題なのか?」ということだ。これまでのところ、アメリカとヨーロッパは、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止することは、それなりの犠牲を払うに値するという結論に達している。欧米諸国が公言する価値観が本物であることが判明したことは、プーティンにとって当然ショックであり、欧米諸国の多くの人々にとっても、非常に喜ばしいショックであったに違いない。しかし、その意志は無限であるとは言い難い。バイデンをはじめとする指導者たちは、ロシアの賠償金とウクライナの領土の隅々までの返還を含むウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の最大限の条件を達成するために、政治的、経済的負担を負い続けることはないだろう。

外交官たちがその計画を机上から引き上げる時が来るだろう。しかし、その前に、我々の協力でウクライナがプーティンの進撃をどこまで押し返せるか、見届けなければならない。それが私たちの利益であり、ウクライナの利益でもある。

※ジェイムズ・トラウブ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ニューヨーク大学国際協力センター非常勤研究員。著書に『リベラリズムとは何だったか?:過去、現在、そして新しいアイディアの期待(What Was Liberalism? The Past, Present and Promise of A Noble Idea)』がある。ツイッターアカウント:

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