古村治彦です。
昨日、2024年10月27日に第50回総選挙の投開票(期日前投票は前から)が実施された。衆議院465議席で争われ、自民党が単独過半数(233議席)を失い、公示前247議席から191議席となった。公明党は24議席(公示前32議席)となり、自公連立政権でも215議席(公示前279議席)となった。与党系無所属6議席を入れても、221議席にとどまり、過半数を失った。
私が令和版大政翼賛会(憲法の変更を行おうとする勢力)の構成要員である日本維新の会は38議席(公示前44議席)となり、微減となった。国民民主党は28議席(公示前7議席)となり大躍進となった。立憲民主党は議席を増やし148議席となり(公示前98議席)、議席を増やした。共産党は8議席(公示前10議席)と減少し、代表質問ができないということになった。れいわ新撰組は9議席(公示前3議席)と増加し、社民党は1議席を確保した。日本保守党、参政党はそれぞれ3議席を獲得した。
慶賀すべき一つ目の点は、令和版大政翼賛会勢力が281議席にとどまったことだ(無所属を入れても287議席)。公示前は330議席もあり、衆議院の3分の2以上を占める大勢力であった。憲法の変更を発議できる3分の2の議席310議席を大きく上回っていた。今回、自民党から減らした分の一部を国民民主党が吸収する形になったが、4党で大きく議席を減らすことになった。これで、立憲民主党の野田代表が裏切らなければという条件は付くが、一安心だ。立民も国民の反発を受けてまで、この勢力に加わることはないだろう。「東アジアの安全保障環境が厳しさを増す」という煽情的な物言いをNHKでもするようになっているが、それだからこそ、このような憲法変更を目指して、アメリカの下働きを進んで行い、中国との対決を望むような勢力は小さくしておくことが何よりも大事なことである。
国民民主党の躍進は警戒すべき動きだ。彼らは自民党よりも「右」であり、昔で言えば、核武装論すら展開した民社党のような存在である。同盟を基盤とした民社党と連合を基盤としている国民民主党は共通している。尊厳死発言や世代間分断の政策を主張することで、若者たちの不満を吸い上げて議席を伸ばしたが、このような動きは危険である。
慶賀すべき二つ目の点は、自民党の安部派清和会系の候補者たち(非公認や離党も含む)が多く落選したことだ。安倍派57名の内、落選が36名(当選21名)という結果になった。これは喜ばしいことだ。彼らは統一教会・裏金の問題を抱え、今回の選挙で厳しい戦いとなり、落選した。保守傍流の岸・安倍の流れが一気に縮小したことはまことに喜ばしいことだ。保守本流(宏池会系や田中派の流れを汲む経世会系)がこれまで安倍派系に虐げられてきたが、その流れが逆転することになった。森喜朗政権・小泉純一郎政権から続いた流れが変わることになる。
石破茂首相(自民党総裁)に対しては、選挙で過半数を取れなかったことについて責任を問う声が出てくるだろう。しかし、石破氏が総理総裁として行ったことは、「殺身為仁(身を殺して仁を為す)」であったと思う。首相になってそのまま過ごせば約1年間は安泰でいられた。しかし、安倍派清和会の勢力削減は一つの内閣を吹っ飛ばしてもやらねばならないことだ。対米隷属の買弁たちの総本山である(外見は日本の伝統保守のふりをする)安倍派、統一教会との関係が深く、裏金問題に象徴されるように政治資金の面でも問題があり、また、安倍派の威光を笠に着て傲岸不遜な態度を取り続けた保守傍流の腐りきった政治家たちを排除する、「ドレイン・ザ・スワンプ(drain the swamp)」をしたということになる。安倍派勢力は力を失うだろう。安倍的なものは有権者に拒否された。そして、安倍晋三元首相の後継者を自認する高市早苗代議士にも大きな痛手となるだろう。
今回の人事の妙は、小泉進次郎代議士を選対本部長にしたことだ。選挙に関しては、選対本部長がまず責任を持つ。今回の選挙での敗北はまず小泉本部長の責任ということになる。小泉氏にとっては大きな痛手となる。今年9月の自民党総裁選挙から小泉氏の「馬脚が表れる」ということになって、大した人物ではないということが国民共通の理解となった。これは、小泉を使ってキングメイカーたろうとした菅義偉元首相にも痛手だ。菅氏の選挙期間中の様子が映像で流れていたが、健康状態に不安がある状態で、キングメイカーとして力を振るえるのか不透明だ。
こうして見ると、一番「勝った」と言えるのは、岸田文雄前首相だろう。自分の政敵、ライヴァルたちの力を落とすことに成功した。麻生太郎副総裁は派閥を維持し、力を堅持しているが、年齢のこともあり、そう長くは活動できない。大宏池会復活構想に従って、じっくりと待つということになるだろう。
石破茂首相は、連立の枠組みに国民民主党を加えて(もしくは閣外協力を得る)、政権維持を行おうとしている。自公国民民主の枠組みになれば243議席となり、過半数(233議席)は越えるが、安定多数(244議席)には足りない。与党系無所属議員6議席があるので、これらを加えて249議席となる。日本維新の会がどのような姿勢で臨むかだが、これで何とか政権維持ができることになる。しかし、小泉選対本部長、森山裕幹事長が責任を取っただけでは住まず、石破茂首相が退陣しなければならないということにもなるだろう。
そうなったら、新総裁ということになるが、前回の総裁選で2位となった高市氏か、4位となった林芳正官房長官ということになる。ここで、安倍的なものに時計の針を逆戻りさせるのは間違っている。高市氏を支える議員たちがどれほど残っているかということもあるが、政権の安定ということもあり、林官房長官に禅譲ということが望まれる。
今回の選挙は「政治とカネ」問題で自公が負けたという分析になるだろうが、それは表層的だ。「政治とカネ」という問題の基底には、人々の生活の苦しさがある。はっきり言えば、人々の生活を豊かにしているならば、政治家が汚職をしようが、どうでもよい。自公の政治家たちは、人々の生活を良くすることができなかった上に、一丁前に汚職だけはしっかりやっていたという判断になって、落選させられたのだ。「お金にきれいだけど無能よりも、お金に汚いけど有能の方が良いでしょ」という自公の政治家たちを擁護する声もあったが、「一体にどこにお金に汚いけど有能な政治家がいるのか、いるのはお金に汚くて無能な政治家ばかりではないか」というのが実感である。また、日本国民の中に、「いつまでもアメリカの家来、属国をやっていて良いのか」という不安もあると思う。世界構造の巨大な変化を感じて、日本政治の構造を変えねばという意識(無意識)があったのではないかと思う。
立憲民主党はほぼ何もせずに、敵失で議席を得た。野党共闘が進んでいればもう少し議席の上積みができたと思うが、問題はこれからだ。躍進したと言っても148議席だ。過半数には遠く及ばない。ここは自公の敗北をよく分析し、国民が何を望んでいるかを把握することだ。その中には消費税減税は当然含まれる。消費税増税容認派の野田佳彦を代表をはじめとする執行部はこの点をよく考えねば、次の選挙で2012年の二の舞となることもある。「消費増税」でよもや自公と大連立を組むということはさすがに考えにくいが、野田佳彦代表は「国民の生活が第一」路線を打ち捨て、国民を裏切った過去を持つ。立民には国民の厳しい目が注がれねばならない。
投票率は前回の約55%から約53%に低下した。人々は自公に「お灸をすえる」ことすら関心を持たないほどに、政治不信が進んでいる。それほどに、安倍支配のマイナス面は大きく、後遺症は深い。今回の選挙では安倍的なものを排除することができたことは慶賀すべきことだが、前途は多難である。
(貼り付けはじめ)
●「衆院選の全議席確定、自民党は結党以来2番目に低い191議席…立憲民主党は50議席増の148議席」
10/28(月) 10:58配信 読売新聞オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/a60d2201f1164252f47ad6b9ce62a7274dddbf23
衆院選は28日午前、全ての議席が確定した。
自民党は公示前から56議席減の191議席で、1955年の結党以来2番目に少ない当選者にとどまった。公明党も24議席と公示前から8議席減らした。
野党は明暗が分かれた。立憲民主党は公示前から50議席を上積みする148議席を獲得したほか、国民民主党は28議席を獲得し、公示前の7議席から4倍に増えた。一方、日本維新の会は公示前から6議席減の38議席だった。
れいわ新選組は6議席増の9議席、共産党は2議席減の8議席。参政党と諸派の日本保守党がそれぞれ3議席を獲得した。社民党は小選挙区で1議席を得た。
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玉木氏、自公連立参画の考えないと伝達
10/28(月) 10:56配信 共同通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/7059fbb63a9aabe564246a36c1a21c7682085c21
国民民主党の玉木雄一郎代表は28日、連合の芳野友子会長と会い、自民、公明両党との連立政権に参画する考えはないと伝えた。自民、立憲民主党を含む各党との政策協議に応じる考えも示した。会談後、玉木氏が記者団に明らかにした。
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石破首相、辞任せず国民民主に協力呼びかけ政権維持図る意向
10/28(月) 5:00配信 読売新聞オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/6030d284a4871436eb7e0521d59be54a25bf972d
https://news.yahoo.co.jp/articles/6030d284a4871436eb7e0521d59be54a25bf972d?page=2
第50回衆院選は27日投開票された。自民党は「政治とカネ」の問題を受けて大敗し、公明党を合わせた与党で総定数465の過半数(233議席)に届かなかった。立憲民主党は、公示前から議席を大幅に増やした。今後、政権の枠組みを巡って与野党の攻防が始まり、政局が流動化する可能性もある。日本維新の会や、公示前から議席を伸ばした国民民主党の動向も焦点となる。
与党の過半数割れは2009年衆院選以来だ。自民は第1党は維持した。
与党での過半数確保を勝敗ラインに掲げていた石破首相(自民総裁)は27日夜、NHK番組で「非常に厳しいご審判をいただいたと認識している。謙虚に厳粛に受け止めている」と語った。その上で、野党の協力を得て自民中心の政権を維持する考えを強調した。
首相は28日未明、周囲に対し、辞任せず政権維持に向け国民民主に協力を呼びかける意向を示した。
自民は衆院選にあたり、政治資金問題に関わった前議員ら44人のうち10人を公認せず、34人は比例選との重複立候補を認めなかった。自民、公明両党は選挙戦で、経済政策や外交・安全保障政策の実績を強調して自公政権の継続を訴えたが、選挙戦終盤には、自民が非公認となった候補側に2000万円の政党交付金を支給していたことが発覚し、逆風が強まった。
公明の西田幹事長は27日夜、BS朝日の番組で「『政治とカネ』を含め与党への怒り、厳しい反応が如実に表れている。公示後に『2000万円問題』が急浮上したこともだめ押しになっている」と語った。
公明は21年の前回選で9選挙区に候補を擁立して全勝したが、今回は11人が小選挙区選に出馬し、当選は4人にとどまった。
立民は与党の過半数割れを目標として、選挙戦では自民の政治資金問題を徹底的に批判した。野田代表は28日未明の記者会見で、「目標を達成できたことは大きな成果だ」と語った。他の野党との連携に向けては27日のフジテレビ番組で「自公政権継続がダメという立場と、政治改革を推進するという点で一致するなら対話はしていきたい」と意欲を示した。
衆院選後は30日以内に特別国会が召集され、首相指名選挙が行われる。与党が過半数割れしたことで、維新や国民を含めて与野党の駆け引きが活発化するとみられる。
維新の馬場代表は27日夜、NHKの番組で、自公両党との協力について「全く考えていない。『政治とカネ』の問題で国民の怒りに火がついている」と否定した。一方、立民との連携についても、大阪市での共同記者会見で「(立民は)外交・安全保障、エネルギー、憲法など基本的な政策で党内がまとまっていない」と消極的な姿勢を示した。
国民の玉木代表も文化放送のラジオ番組で、自公との協力について「考えていない」と否定しつつ、「政策を実現できるよう、協力できるところとは協力していきたい」とした。
衆院選は21年10月以来3年ぶりに行われ、衆院小選挙区の「10増10減」を受けた新区割りが初めて適用された。小選挙区選289、比例選176の総定数465議席を争った。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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