古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:共和党

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年の大統領選挙(11月5日)で勝利したトランプが政権構想を発表する前の9日に、第一次政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリーと、国務長官を務めたマイク・ポンぺオについて、第二次政権では政権入りさせないと発表した。ポンぺオは、トランプに近い大物として、アメリカでも、日本でも、第二次政権の国務長官候補として名前が挙がっていた。ニッキー・ヘイリーは今回の大統領選挙の共和党予備選挙に出馬して、トランプと指名を争った経緯があり、また、選挙期間中にはトランプ批判を繰り返したことから、厳しいかなと思っていたが、ポンぺオの政権入りの可能性消滅には驚いた。
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ニッキー・ヘイリー
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マイク・ポンぺオ

 日本製鉄がアメリカのUSスティールの買収に動く中で、マイク・ポンぺオを指南役に迎えたという報道があり、トランプに近いポンぺオに説得してもらって、トランプの反対を取り下げてもらうという心づもりがあったであろうことは容易に推測されるが、トランプがポンぺオを遠ざけたということは望ましくない計算違いということになるだろう。しかし、それまでの状況から、ポンぺオがトランプの側近であるという判断は間違っていない。これがトランプの「予測不可能」なところだということも言える。

 第二次トランプ政権の顔触れを見ると、第一次政権の大物はほぼ入っていない。ヘイリーもポンぺオも第一次政権の閣僚級(国連大使は閣僚級の扱い)、国家安全保障会議に出席できる権限を持つ、アメリカ最高位の職に就いていたということであり、大物は退けたということにはなる。しかし、ポンぺオはトランプ批判をしておらず、何故ポンぺオまで外されるのかという疑問が残る。ポンぺオもまた、大統領選挙共和党予備選挙に出馬して、トランプに対抗するという憶測が流れていたが、結局は出馬しなかった。それでもトランプ周辺から外された格好だ。

 ここからは私の見解を述べる。ヘイリーとポンぺオが外されたのはどうしてか?両者には第一次トランプ政権の閣僚だったという共通点はあるが、トランプとの距離感に差がある。ヘイリーが外されるのは理解できるが、ポンぺオが外されるのは理解できない。ヘイリー、ポンぺオのもう一つの共通点は、「コーク兄弟との近さ」があり、そのために両者が外された理由ではないかというのが私の考えである。コーク兄弟はトランプに反対し続けてきた。コーク兄弟についてはこのブログでも何度も紹介してきたし、私は、コーク兄弟についての評伝『アメリカの真の支配者 コーク一族』を翻訳した。
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チャールズ・コーク

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

20190507日「トランプ大統領に反対する共和党のグループはネオコン派とリバータリアン」
https://suinikki.blog.jp/archives/78919932.html

 ヘイリーは今回の大統領選挙共和党予備選挙でコーク兄弟の全面支援を受けて出馬したが、トランプに敗北した。ポンぺオはカンザス州選出の連邦下院議員として政界に進出したが、そのパトロンとなったのがコーク兄弟だった。コーク兄弟が所有するコーク・インダストリーズの本社はカンザス州ウィッチタにある。コーク兄弟はリバータリアニズムを信奉し、リバータリアンの勢力を拡大するために巨額の資金を投じてきた。彼らから見れば、ポピュリストのトランプは危険な人物である。規制を嫌い、自由な経済活動を何よりも重視するリバータリアンのコーク兄弟にとって、関税引き上げなどは全く受け入れられない。

 トランプ陣営から見れば、ヘイリーとポンぺオは「仇敵のコーク兄弟との距離が近すぎる」ということになる。それならば第一次政権で閣僚に起用したのはどうしてかということになるが、これはやはり、トランプとトランプ陣営がアマチュアだったということになるだろう。第一次政権での混乱はやはり人物の見極めが甘かったことが原因という分析がなされていたのだろう。そのために、今回はそのようなことがないように人選し、反逆する可能性がある人物はあらかじめ排除しておくということになったのではないかと思う。

 第二次トランプ政権には4年間しか時間がない。政権内の内部抗争に時間を取られてしまうのは損である。しかし、ここで前言を翻すようであるが、ポンぺオに関しては、北朝鮮との交渉の経験もあり、対北朝鮮外交において、特使などに起用されることも考えられる。私たちはまず、トランプが「予測不可能」であるということを前提にして考えを組み立てる必要がある。

(貼り付けはじめ)

●「トランプ氏、ヘイリー元国連大使とポンペオ元国務長官を起用せず」

読売新聞 2024/11/10 12:09

https://www.yomiuri.co.jp/world/20241110-OYT1T50039/

 【ワシントン=今井隆】トランプ次期米大統領は9日、新政権ではニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンペオ元国務長官を起用しないと明らかにした。両氏について、「現在検討中のトランプ政権に招くつもりはない」と自身のSNSに投稿した。

 ヘイリー氏は前政権で国連大使を務めた。大統領選では共和党指名候補争いに立候補し、トランプ氏を繰り返し批判した。選挙戦から撤退した後にトランプ氏への支持を表明した。

 ポンペオ氏は前政権で中央情報局(CIA)長官や国務長官を務めた。党指名候補争いへの立候補に意欲的とみられていたが、見送った経緯がある。米メディアは、国防長官候補の一人と報じていた。

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億万長者のコーク兄弟が支援するネットワークがニッキー・ヘイリーへの支出を停止(Billionaire Koch brothers-backed network stops Nikki Haley spending

トム・ゲイガン筆

2024年226

BBCニューズ

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-68401537

億万長者のコーク兄弟によって設立されたリバータリアン系保守団体が、ニッキー・ヘイリーの大統領選挙キャンペーンへの資金提供を停止した。

アメリカン・フォ・プロスペリティ・アクション(Americans for Prosperity ActionAFP)による資金提供中止の決定は、共和党候補指名を目指すヘイリーにとって新たな後退となった。

ヘイリーは土曜日、地元サウスカロライナ州でドナルド・トランプ前大統領に敗れた。トランプは予備選で4連勝を達成した。

しかし、彼女は戦い続けることを誓った。

日曜日にAFPの会長兼CEOはスタッフに宛てた電子メールで、AFPの支援はヘイリーではなく、11月の選挙で重要な連邦上院と連邦下院の選挙に集中すると述べた。

「彼女は闘い続けることを明言しており、私たちは心から彼女を支援する」とエミリー・サイデルは書いている。

サイデルは続けて「しかし、この先の予備選挙での課題を考えると、どのような外部団体も、彼女の勝利への道を広げるような重要な変化をもたらすことはできないだろう」と書いている。

ヘイリー選対は、まだ継続するのに十分な資金が入ってくると主張している。

ヘイリーのスポークスマンであるオリビア・ペレス・クバスは、AFPの支援に感謝し、サウスカロライナ州での敗北以来100万ドルが入ってきていると述べた。クバスは「続けるための燃料は十分にある。私たちには救うべき国がある」と述べている。

AFPは、ヘイリーがトランプへの明確な挑戦者としての地位を確立しようとしていた11月に支持と資金援助を表明していた。

それ以来、彼女は共和党内のトランプの対抗馬の中で最も耐久性があることを証明してきたが、今彼女がどのように勝利への道を見出すことができるかは不明である。

11月には、トランプとジョー・バイデン大統領(民主党)の再戦に向かう可能性が高まっている。

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コーク・ネットワーク、2024年大統領選予備選でドナルド・トランプ以外の共和党支持を計画(Koch network plans to back a Republican – other than Donald Trump – in the 2024 presidential primary

フレデリカ・ショーテン筆
2023年2月5日

https://edition.cnn.com/2023/02/05/politics/koch-network-republican-primary-2024/index.html

億万長者チャールズ・コークに関連する巨大なネットワークが2024年の大統領選挙予備選挙で共和党の候補者一人に資金と支援を提供する準備を進めている。

コーク・ネットワークの主要政治部門であるアメリカン・フォ・プロスペリティ・アクション(Americans for Prosperity ActionAFP)は、「共和党の大統領選挙予備選挙で、我が国を前進させることができ、勝利することができる候補者を支援する用意がある」と、AFPCEOAFP Actionの最高顧問であるエミリー・サイデルは、日曜日に発表された声明メモでこのように述べた。

この声明メモにはドナルド・トランプについての言及はないが、AFPアクションの関係者がCNNに確認したところによると、同ネットワークは前大統領のホワイトハウス候補を支援する予定はないという。

サイデルはAFPのスタッフや活動家に宛てて「私たちの国家に新たな章を書くには、過去のページをめくる必要がある。したがって、この国にとって最善のことは、2025年に新たな章を代表する大統領が誕生することだろう」と書いている。

直近の2回のホワイトハウス候補指名争いを傍観してきたコークが共和党予備選挙に参加するという決断を下したことで、共和党の大統領候補者たちは、カンザス州を拠点とする実業家と、彼の影響力のある自由市場ネットワークに資金を提供する数百人の富裕層献金者を取り込もうと奔走することになりそうだ。

トランプはホワイトハウス在任中、政権の通商政策や強硬な移民政策を厳しく批判するコーク当局者らと頻繁にスパーリングを行った。

AFPアクションは2024年の政治活動の予算を発表していないが、同ネットワークは過去の選挙サイクルで数億ドルを費やしており、共和党全国委員会の資金力に匹敵する。アメリカンズ・フォ・プロスペリティは36州に常駐のスタッフを擁し、全国に数百万人の草の根活動家を抱えている。

また、AFPアクションの政治部門は、より多くの争いに影響を与え、予備選挙に参加する新たな有権者を見つけるため、議会や州レベルの予備選により早く、より積極的に関与する計画だとAFPアクション関係者は述べた。

サイデルは、首都に「有害な状況(toxic situation)」を作り出し、政策の進展を妨げていると語る「壊れた政治(broken politics)」に対処するために、このネットワークは活動を強化していると語った。

サイデルは「共和党は、アメリカの核心原則に反することを主張する悪い候補者を指名している。そしてアメリカ国民は彼らを拒否している」と書いている。

そして、民主党は 「更なる極端な政策(more and more extreme policies)」を推し進めているとしている。

2024年の立候補を検討している共和党議員の中には、マイク・ペンス元副大統領をはじめ、コーク・ワールドと長年のつながりがある者もいる。ペンスの長年の最側近であるマーク・ショートは、かつてコーク・ネットワークで政治活動を監督していた。

もう1人の候補者マイク・ポンペオ前国務長官は、コーク・インダストリーズの本社があるカンザス州ウィチタを代表する連邦下院議員だったとき、コークの政治委員会から資金援助を受けていた。元サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリーは、今月末に共和党候補指名への立候補を表明する予定だが、少なくとも1回はコークの献金者の集会に出席している。また、コッホが支援するスーパーPACは、ロン・デサンティスが2018年の共和党予備選挙で競り勝ち知事になる前に支援していた。

リバータリアン寄りのネットワークは近年、公の場で優先順位の再設定に取り組み、トランプ時代には共和党ブランドから距離を置くよう努めてきた。

しかし、同ネットワークは、他の政治・政策問題で当時の大統領や共和党全国委員会と衝突したにもかかわらず、例えば2017年に1兆5000億ドル規模の税制改革を推進するために多額の費用を投じて、トランプ主導の取り組みを支持した。

サイデルは、ネットワークの広がりの1つの兆候として、AFPAFPアクションが昨年の中間選挙で450以上のレースに参加し、700万以上のドアをノックし、1億通以上の郵便物を発送したことを指摘した。

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ランド・ポールが別のイヴェントを欠席する中、ロン・ポールがコーク兄弟のイヴェントに参加‘Ron Paul Headlines One Koch Brothers Event—as Rand Paul Skips Another

-元連邦下院議員のロン・ポールがコーク兄弟主催の#YALcon15で観衆を沸かせる一方、息子のランド・ポールは大きな撤退を行った。若きリバータリアンの戦いの内幕を報じる。

オリヴィア・ナッジ筆

2015年8月3日

『デイリー・ビースト』誌

https://www.thedailybeast.com/ron-paul-headlines-one-koch-brothers-eventas-rand-paul-skips-another/

ヤング・アメリカンズ・フォー・リバティ・カンファレンス(Young Americans for Liberty Conference#YALcon15)に参加する大学生たちは、ある参加者の言葉を借りれば 「迷える子犬(lost puppies)」だ。

自分の興味(アイン・ランドやフリードリヒ・ハイエク)が仲間に共有されていないため、自分のキャンパスになじめない子供たちだ。しかし、#YALcon15のウェブサイトによれば、彼らはたった30ドルで、「原理に基づいて勝つことに参加する若者を動員する(mobilize young people committed to winning on principle)」ことを目的としたリバータリアン会議に参加することができる。そして彼らは96時間、ここワシントンDCにあるライアン・ホールと呼ばれるアメリカ・カトリック大学の寮で、最も装飾的な蝶ネクタイを締め、自分たちと同じような人たち、つまり「原理に基づいて勝つ(Winning on Principle)」ことに参加する人たちのために作られたスピーチやプレゼンテーションに耳を傾けながら、一緒に家を見つけたような気分に浸ることができる。

私が見たのは、順不同だが、キルトを着た若者(彼は二晩続けて同じものを着ていた)、黒いマーカーで「#RAWMILK」と書かれたピンクのボタンダウンシャツを着た若者(彼はウィスコンシン州出身だと言っていた)、YouTube スターにどうすれば自分もスターになれるかを一対一で尋ねている若きリバータリアンたちの列。そして、ロン・ポールを生で見ることを生涯待ち望んでいた若者たち(原理に基づいて勝利することに専念している!)の1マイルの長さの列がそこにはあった。

しかし、ロン・ポールは彼らのダンブルドア(『ハリー・ポッター』の登場人物)かもしれないが、#YALcon15はロン・ポールの元スタッフが中心となって運営され、そのほとんどがコーク兄弟によって支援されている。ロン・ポールはこのコークのイヴェントの主役を務めたが、彼の息子ランドは南カリフォルニアで開催されたコーク兄弟の献金者イヴェントを欠席し、関係者を落胆させた。共和党の大統領選予備選候補者たちが週末に西部に向かう準備をしている中、ケンタッキー州選出の連邦上院議員ランド・ポールはアイオワ州でのちょっとした選挙イヴェントに向かった。

ランド・ポール陣営は私や他の記者に、彼はコーク家の集まりへの招待状を受け取っていたが、先約があり、予定を無断ですっぽかすような人物ではないと断言した。しかし、彼の欠席は、a)資金調達がうまくいっておらず、億万長者の助けが必要なこと、b1月の前回のコーク家サミットでのパフォーマンスで非難されたこと、という事実によって、より不可解なものとなった。コーク家サミットでは、ランド・ポールは、『ポリティコ』誌のケン・ヴォーゲル記者が特徴として挙げた「とりとめのない、時には不人気な回答(rambling and sometimes unpopular answers)」をし、ブルーのブレザーにジーンズ、カウボーイブーツという彼の特徴的な服装を身に着けていた。この服装は一部の超富裕層の寄付者にとっては不快なほどカジュアルな服装だった。

若いポールの選挙キャンペーンは、リバータリアン傾向を持つ有権者から明らかな人気を得ているのと同時に、共和党の他の派閥や民主党にも広くアピールできる人物として自らを位置づけようとしている。そうなると、選挙に勝つことを最優先とするリバータリアンであるコーク家のお気に入りであることは明らかだ。しかし、そうはなっていない。1月にブルームバーグ・ポリティックスに寄稿したデイヴ・ウェイゲルが指摘したように、「ポールのリバータリアニズムはコーク家のリバータリアニズムではない」ということになる。

しかし、若いリバータリアンたちにとって、この運動には顔がある。「彼は“エサ”なんだ(He’s the bait)」と、「Antiwar.com」の創設者であるジャスティン・ライモンドは私に言った。ライモンドはリバータリアン運動の中核と呼ばれるグループの一員であり、彼のような人々にとってコーク家は売国奴(sellouts)なのだ。

デイヴィッド・コークは1980年にリバータリアンとして大統領選に出馬し、落選した。その後、彼はシンクタンクなどを通じて他の方法で政治に影響を与えることに目を向けたが、同時にリバータリアニズムを主流にした。政策に真の影響力を持つには勝たなければならず、勝つためには魅力的でなければならない。そこでリバータリアン運動は、コークが設立したケイトー研究所(Cato Institute)と、マレー・ロスバードが設立したルートヴィヒ・フォン・ミーゼス研究所(Ludwig von Mises Institute)という、より筋金入りのリバータリアンに奉仕する別々の派閥に分裂した。ウェイゲルが書いたように、ロン・ポールはロスバードに近い。彼が大統領選に出馬した2007年、主流派のリバータリアンの間で「懸念された(the worry)」のは、ポールのブランドであるポピュリスト(populist)、連邦準備制度理事会(FRB)叩きのリバータリアニズムは、この哲学を売り込む最良の方法ではないということだった。

チャールズ・コークの元友人であるガス・ディゼレガは、コーク一族は「共和党の保守派と同盟を結ぶことを決めた。その後、彼は魂を失い、言うなれば、かつて持っていた知的誠実さ(intellectual honesty)を全て失った」と述べた。

ロン・ポールへの支持に消極的であった訳ではないが、ロン・ポールが若者たちをリバータリアニズムに引き込み、「原理で勝つ(Win on Principle)」ために、より現実的には右派候補の草の根活動家として集中するための正しい方法であることをコークは理解しているのかもしれない。

そのため、コーク兄弟が南カリフォルニアで最も勝利する可能性が高い候補者を選ぶことに集中している間、国の反対側では別の種類の皮肉を用いていた。

ライモンドは次のように述べている。「コークの人々はYALに寄生しているようなものだ。彼らはYALを伝道ベルトのように使って、人々を自分たちのネットワークに吸い込み、自分たちが持っているどんな計画にも彼らを吸い込もうとしている」。

#YALcon15は、各参加者の名札の裏に「プラチナ」、「ゴールド」、「シルヴァー」と書かれて、分類される23の組織によって後援されており、これら23の組織の大部分はコーク兄弟の募金ネットワークの一部だ。または批評家によって「コクトパス(Kochtopus)」と呼ばれている。

#YALcon15 の「プラチナ」スポンサーは次の通りだ。チャールズ・コークによって設立されたチャールズ・コーク研究所、コーク兄弟が資金提供しているリーダーシップ研究所、 スチューデント・フォ・リバティもコーク兄弟から資金提供を受けている。フリーダム・ワークス(Freedom Works)は、1984年に健全な経済のための市民としてコーク兄弟によって設立されたが、2004年に2つの組織に分離され、もう1つは同じくプラチナ寄付者としてリストされており、アメリカンズ・フォ・プロスペリティ(Americans for Prosperity)と名付けられ、最終的にコーク家の中心的な政治団体となった。

「ゴールド」のスポンサーは、コーク兄弟が寄付者であり、デイヴィッド・コークが理事を務めるリーズン財団、薬物政策同盟、教育における個人の権利財団 (Foundation for Individual Rights in EducationFIRE) は、コークの寄付者ネットワークから100万ドル以上を受け取っている。コークが資金提供したグループであるフリーダム・パートナーズ1100万ドルを注ぎ込んだジェネレーション・オポチュニティ(Generation Opportunity,

コンサヴァティヴス・コンサーンド・アバウト・ザ・デス・ペナルティがある。

「シルヴァー」スポンサーは以下の通りだ。ハリー・リードがコーク兄弟を公に批判したため、かつて連邦上院倫理特別委員会に苦情を提出したティーパーティー・ペイトリオッツ(Tea Party Patriots)、コーク兄弟が資金提供しているフリーダム・パートナーズ(Freedom Partners)、ヘリテージ財団(Heritage Foundation)はチャールズ・コーク財団から1万1000ドル以上、フリーダム・パートナーズから100万ドル以上を受け取っている。正義研究所(The Institute for Justice)、そのシードマネーはチャールズ・コークによって提供された。チャールズ・コークによって共同設立されたケイトー研究所、アイン・ランド研究所はケイトー研究所の元最高経営責任者であるジョン・アリソンの支援を受けている。コーク兄弟が資金提供を敷いている、コーク兄弟の弟ウィリアムが所属する独立研究所、コーク兄弟が資金提供したアメリカ研究基金がある。コーク兄弟が支援するNRA(全米ライフル協会)もある。コーク兄弟から資金提供を受けている人道研究所が組織する自由基金(Liberty Foundation)。経済教育財団 (FEE)、そしてアメリカズ・フューチャー財団はコーク家のフェローシップ・プログラムからインターンを受け入れている。

YALのウェブサイトによると、ゴールドスポンサーは1万2000ドル、シルヴァースポンサーは6000ドルの寄付が必要だ。プラチナスポンサーがいくら寄付しなければならないかについての情報はない。 YALの広報担当者は私の問い合わせに応じなかった。

キャンパスから歩いてすぐのブルックランド・パイントのバーに座って、原理で勝つことに専念するシンシナティ出身の若者ジミー・マヘイニーは、どうしてここに来ることになったのかについて話していた。トーマス・マッシー連邦下院議員とジャスティン・アマシ連邦下院議員はちょうど彼や他のYALメンバーと話をしたばかりで、マヘイニーは彼らをとても気に入っており、実際、フェイスブック上で「いいね!」したことさえあった。しかし、マヘイニーの政治的覚醒のきっかけは彼らではなかった。それはもちろんロン・ポールだった。マヘイニーはトランペットを吹くのが好きで、ある日、マーチングバンドの仲間たちがロン・ポールについて話しているのを耳にした。「私は彼とリバータリアニズムについてさらに調べ続けた。そして突然、これが実に理にかなっていることに気づいた」と彼は話した。

木曜日の夕方、会議室はロン・ポールのスピーチを前に予想通り満員だった。聴衆は彼が出てくる前から「連邦政府を終わらせろ(END THE FED)」と叫び始め、彼が出てくるとすぐに立ち上がった。

ロン・ポールは「未来はあなたの手の中にあると私が思うことは秘密ではない。国際的にも経済的にも、今のように全世界がひっくり返った事はかつてなかった」と述べた。

学生たちは、まるで目の前で魔法をかけられているかのように、夢中になってロン・ポールを見つめていた。携帯電話で彼の様子を撮影している人もいた。彼が法定通貨(fiat money)と連邦準備制度(Federal Reserve)について冗談を言ったとき、彼らはまさに適切な瞬間に笑った。「ワシントンに戻っても、あまり興奮はしない。実際のところ、私はあそこを訪れることさえない」とロン・ポールは連邦議事堂を示唆しながら述べた。「それはあまりにも憂鬱なことだ」と述べて、誰もが笑った。ロン・ポールは次のように語った。「しかし、私がここにいるのは、皆さんのような若者が将来のことを考え、あそこにいる大勢の人たちが知っているより少しは理解しているのだから、落ち込む必要はないと分かっているからだ。皆さんは自由とは何かを理解しており、そしてそれが重要なのだ!」

スピーチの後、マヘイニーはツイッターにミームを投稿した。「DIE STATIST SCUM(国家主義のくずに死を)」と書かれていた。ジミーは、「ロン・ポール(RP)は#YALcon15のようだ」というキャプションを付けた。彼はフェイスブックにロン・ポールとの写真を投稿した。ジミーはにやりと笑い、2本の指を横に広げてV字にし、右目の上にかざした。

土曜日になっても、人々はスピーチのことを話していた。キャンパスのメインビル「プライズ」の外では、少人数のグループがマルボロを吸っていた。そのうちの一人は、スピーチの後に警備員とともに芝生を歩くポールを見かけ、彼と話すことができた。ニュージャージー州南部から来たある若者は、前夜に飲みすぎて一日中寝ていたと愚痴をこぼした。スピーチの最中、彼は疲れて居眠りをしていた。別の若者は「彼はどんなリバータリアンなのか?」と質問した。ロン・ポールのために起きていられない人なんているのか?

訂正:この記事の前のヴァージョンではジョン・アリソンをケイトー研究所成功経営責任者と誤って描写した。正確には彼は元最高経営責任者だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001

※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年は選挙の年だった。世界各国で選挙が実施された。アメリカ、イギリス、フランス、インド、インドネシア、日本などで選挙が実施され、イギリスでは政権交代が起きた。しかし、日本人である私たちにとって関心が高かったのは、自国内の与党である自民党の総裁選挙で石破茂氏が総裁に選ばれたことと首相となった石破氏がすぐに仕掛けた総選挙で自公連立政権が衆議院で過半数割れとなり、少数与党になったことと国民民主党が躍進したことである。そして、これらの次としては、アメリカの大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、大統領に返り咲いたことだ。共和党は連邦議会上下両院で過半数を獲得し、更には連邦最高裁の判事構成でも保守派が過半数を占める状態となり、「クオドルプル・レッド(quadruple red)」状態になった。

 アメリカ大統領選挙の結果は、トランプが激戦州を全て制し、かつ、得票総数でもハリスを上回った。民主党は惨敗であるが、ブルーステイトを中心に支持は根強い。トランプ嫌いの人々もまた、アメリカには多くいる。それは当然のことだ。私がこのブログで論稿を紹介しているハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルトもその一人だ。彼は、民主党内の介入主義派や共和党のネオコンを厳しく批判してきた。国際関係論においては、リアリズムという立場を取っている。リアリズムの立場からすると、トランプのアイソレイショニズムやアメリカ・ファーストの方が支持しやすいと考えられるが、ウォルトは選挙の前に、ハリス支持を表明した。アメリカの高名な知識人がどのように考えていたかを示すためにも、彼の論稿を紹介したい。

 ウォルトは下の論稿の中で、トランプの一期目の政権の外交を厳しく批判している。まとめると、「トランプが大統領だった際の彼の行動は、リアリストとしての資質を欠いていた。彼は粗野なナショナリストであり、北朝鮮、中国、ロシアとの外交の失敗に直面している。さらに、彼は「永遠の戦争」を終結させることなく、無謀な軍事行動を続け、アブラハム合意は中東での混乱の原因となっている。トランプの外交政策は、イランとの合意破棄やパリ協定の撤回などを通じてアメリカの国益を損ねており、リアリストとして支持されるべきではない。トランプは、あた、有能な人材を雇うことに興味を示さず、忠実な部下を求める傾向があるため、政府の機能に問題が生じる」ということである。また、経済政策についても、ハリスの方がよく分かっているという主張を行っている。

 ウォルトのトランプ批判についてはおそらく正しい。ウォルトは冷静な分析と判断をしている。トランプになったからと言って、バラ色の未来がアメリカに待っている訳ではない。トランプが実施するであろう関税の引き上げと不法移民の大量送還や厳しい国境政策によって経済はダメージを受ける可能性が高い。インフレが起きて、利上げを迫られて、景気が冷え込む可能性もある。しかし、人々はトランプを選んだ。ウォルトのやったような分析や判断は折り込み済みだろう。それでもなお、民主党、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスの行ったことよりも、「少しはまし」になるだろうということでトランプが選ばれた。しかし、トランプにとってもできることは少ない。4年間の任期は長いようで短い。この間をうまく取り繕って、次にバトンを渡すということになるだろう。そもそもアメリカにとってできることは既に限られている。そして、衰退は既に止められない状況になっている。その衰退の速度を弱めることがこれからのアメリカにとって大事なことになる。

(貼り付けはじめ)

カマラ・ハリスはリアリストではない。しかし、とにかく私は彼女に投票する(Kamala Harris Is Not a Realist. I’m Voting for Her Anyway

-今年の選挙におけるリアリストの唯一の選択はトランプを拒絶することだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年10月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/16/kamala-harris-realist-trump-election/?tpcc=recirc_trending062921

現時点では、アメリカには数十人の未決定有権者しか残っていないかもしれないのだから、正しい投票をするよう説得するコラムを書くことは無意味かもしれない。しかし、選挙が激戦州の数票の差で決着するかもしれないことを考えると、できる限りのことをしておかなければ後味が悪い。そこで、私がカマラ・ハリスに投票する理由と、あなたもそうすべき理由を説明しよう。

私のようなリアリスト・抑制主義者(realist/restrainer)は、ドナルド・トランプやJ・D・ヴァンスに傾倒していると思うかもしれない。特にバイデンやその同僚たちのガザ地区やウクライナ戦争、その他の外交問題への対応に失望していることを考えればそう思うのも当然だ。ハリスはそれらの政策に責任を負っていないのであるが、機会を与えられても、それらの政策が間違っていたと言うことを拒否してきた。彼女の主要な外交政策アドヴァイザーであるフィリップ・ゴードンはアメリカの力の限界や、私たちのイメージ通りに地域全体を作り変えようとすることの愚かさについて賢明なことを書いてはいるが、ハリス自身の外交政策に対する見解が、ワシントンのコンセンサスから外れたものであったり、国際問題に対するリアリスト的な見方を反映したものであったりする気配はない。対照的に、トランプとヴァンスは、ヨーロッパとアジアの同盟諸国に、自国の防衛に関してもっと負担して欲しいと言い、ウクライナでの戦争を終結させるべき時だと考え、外交政策の「専門家たち(ブロブ、Blob)」を軽蔑とまではいかないまでも懐疑的に見ている。だから自称リアリストたちは彼らに熱狂するのであり、私が彼らと同じ考えを持っていると結論づけるのは簡単だろう。

では、なぜ私はトランプとヴァンスの厄介な欠点を無視し、前庭にトランプとヴァンスの看板を立てないのだろうか? その理由を数えてみよう。

第一に、トランプが大統領だったときに何度も指摘したように、彼はリアリストではなく、トランプ大学から教育を受けるのと同じように、彼から賢明な外交政策を学ぶことはできない。彼は粗野なナショナリストであり、一極主義者であり、彼を最もよく表す「イズム」はナルシシズム(narcissism)である。そのため、北朝鮮の金正恩委員長、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領とのリアリティショー的な首脳会談は失敗に終わった。彼は最初の任期中に「永遠の戦争(forever wars)」を終結させることなく、国防総省に必要以上の予算を与え、気に入らない指導者を殺すために外国にミサイルを撃ち込むことに完全に満足した。彼は衝動的で、粗野で、不注意で、明確な戦略を立て、それを貫くことができなかった。大々的に宣伝されたアブラハム合意は、評論家たちが警告していたように、現在中東を混乱させている大虐殺の土台を築くのに役立った。(大統領が無資格の娘婿に不安定な地域で外交官をやらせるからこうなったのだ)。

そして、忘れてならないのは、トランプはイランに包括的共同行動計画からの離脱による核開発再開を許し、パリ協定を放棄し、環太平洋経済連携協定(TPP)を破棄してアジアの同盟諸国に喧嘩を売ることで、中国とのバランスを取ろうとする努力を弱めたことだ。このような外交政策は、まともなリアリストなら支持すべきではない。また、リアリストなら、分断の種をまき、アメリカ人に互いを恐れろと言うことが、国を強くする最善の方法であり、ましてや国を偉大にすることだとは考えないだろう。しかし、それこそがトランプがそのキャリアを通じて、そして特に今回の選挙戦で行ってきたことなのだ。

トランプのビジネスキャリアが長い無能の記録であることを考えれば、どれも驚くべきことではない。その特徴は、巧みな取引や抜け目のない経営ではなく、度重なる破産、騙されて食い物にされた顧客、終わりのない訴訟、そして重罪の税金詐欺の長い歴史である。彼の支持者たちは、最初の任期で自分の部下を信頼することを学んだと主張するが、残念ながら、彼は才能を見極めるのが下手なことが証明されている。彼の最初の国家安全保障問題担当大統領補佐官は1カ月も持たず、トランプは任期中で更に3人、複数の国務長官と国防長官を使い果たした。トランプ大統領のホワイトハウスにおけるスタッフの離職率は過去最高レヴェルであり、トランプ大統領と直接仕事をした何十人もの人々が、トランプ大統領にもう一度チャンスを与えることに断固反対している。

もちろん、トランプは政府で働く有能な人材を雇うことに興味がある訳ではなく、自分の決定がどんなに馬鹿げていても、違法であっても、自分の言いなりになってくれる忠実な人材を求めている。彼の専門知識蔑視は、彼が何も知らない科学へのアプローチに特に顕著に表れている。この盲点は、新型コロナウイルスのパンデミックに対する彼の対応や、気候危機を否定し続ける姿勢を見ても明らかだ。ハリスは、気候が大きな問題であり、温室効果ガスの排出を制限し、すでに経験している影響に適応するためにもっと努力する必要があることを理解している。フロリダ州の住民の方々にはご注意いただきたい。

憲法を守ると宣誓し、職務に有能で国民への奉仕に尽力する人物を任命する代わりに、トランプは行政府に個人として変人を配置したいと考えている。これは極めて深刻な問題だ。なぜなら、自分たちが何をしているのかを理解し、政治的圧力に弱い、よく訓練された有能な人材が大勢いない限り、複雑な現代社会を運営することはできないからだ。私が話しているのは、財務省、国立気象局、連邦準備制度、連邦航空局、国土安全保障省、日常生活が依存している様々な送電網、IRS、食品医薬品局、行政、そして私たちの社会が機能することを可能にするその他の全ての機関を運営する公務員のことだ。

これらの機関は完璧だろうか? いや、誤りを犯しやすい人間で構成された組織が完璧であるはずがない。無知で意地悪な大統領の腐敗した取り巻きが責任者であれば、これらの組織がない方が良いのだろうか? そうではない。アメリカは何十年もの間、主要な公共機関への資金が組織的に不足しており(そのため、政府のパフォーマンスはしばしば期待外れに終わっている)、トランプは(そして彼のために「プロジェクト2025」を起草した過激派は)この問題を更に悪化させようとしている。必要なサーヴィスを全て購入できる富裕層は困らないだろうが、それ以外の人々にとっては、アメリカはますます不快で非効率な場所になるだろう。

第三に、トランプ大統領の対外経済政策へのアプローチは悲惨なものになることが予想される。貿易赤字を縮小することも、中国の経済政策を変えることもできず、アメリカ経済の一部の部門にかなりの損害を与えた。トランプは今、関税を2倍、3倍に引き上げると約束している。現在でも彼は、外国製品に対する関税はアメリカの消費者に対する税金であり、外国の輸出業者が私たちに支払うペナルティではないことを理解していない。(馬鹿げた国境の壁の費用を払うのはメキシコではなく、アメリカの納税者であるということと同様だ)彼が提案する関税は、インフレを再燃させ、基軸通貨としてのドルの魅力を低下させ、アメリカの輸出企業に損害を与えるだろう。私の身勝手な考えではなく、『フィナンシャル・タイムズ』紙のマーティン・ウルフの簡潔で破壊的な評価を見て欲しい。ハリスは経済政策で私が望むことをすべてやるとは限らないが、何十年も拒否されてきた通商政策へのアプローチを採用するつもりもないだろう。

より重要なことは、トランプは今回の選挙で、アメリカの民主政体に真の脅威をもたらす唯一の人物であるということだ。我が国の政治システムには欠点もあるが、それでもほとんどの国民に多大な自由を与えており、改革と刷新(reform and renewal)が可能である。トランプのキャリア全体、とりわけ政治家としてのキャリアを見れば明らかなように、彼は法の支配(rule of law)を軽んじており(前科持ちで性犯罪者であることが確定していることを考えれば、驚くにはあたらない)、憲法秩序(constitutional order)を守ることにまったく関与していない。ハリスが当選すれば、間違いなく私が反対することをするだろうが、権威主義的なシステムを押し付けたり、2028年の再選に敗れても退任を拒否したりはしないだろう。トランプはすでに後者をやろうとしているし、前者もやりたがっているようだ。

私が大げさに言っていると思うだろうか? 私は2016年当時、トランプがもたらす危険性を過小評価していたことを告白するが、証拠が積み重なるにつれて見解を改めた。最も明確な兆候は、トランプが誰を尊敬しているかを見れば分かる。彼は、エイブラハム・リンカーンやFDR、ネルソン・マンデラのような人物ではなく、ウラジーミル・プーティン、ビクトル・オルバン、ムハンマド・ビン・サルマン、ベンヤミン・ネタニヤフのような独裁者であり、彼と同様にルールや規範を軽んじている人物である。プーティンは彼らと同じようにチェック・アンド・バランスに無関心でありたいと考えており、もし彼の思い通りになれば、時計の針を戻すことは容易ではなく、不可能になるかもしれない。ひとたび民主政治体制が独裁に崩壊すれば、それを取り戻すのは困難で不安定なプロセスだ。

トランプは才能あふれる詐欺師(gifted con man)であるため、過去30年間にアメリカで起きたいくつかの変化に対する不安を利用して、多くの一般人を惑わすことができたとしても、それほど驚くことではない。驚くべきは、高学歴で大成功を収めた人々の中に、トランプは自分たちの味方であり、自分たちを裏切ることはないと考えている人々が大勢いることだ。私はピーター・ティールやイーロン・マスクのような人々をそのように考えているが、彼らはアドルフ・ヒトラーをコントロールできると考えていたナイーヴで生意気なドイツの政治家たちを思い出させる。トランプについてはっきりしていることがあるとすれば(それは変幻自在のヴァンス[the shape-shifting Vance]についても同じようなことが言えるようだ)、自分の利益になると思えば誰であろうと裏切るということだ。ボリス・ベレゾフスキーやミハイル・ホドルコフスキーのようなロシアのオリガルヒは、プーティンをコントロールでき、自分たちの富が報復から守ってくれると考えていた。もしあなたがハイテク業界の億万長者で、トランプが信頼できる同盟者だと考えているなら、マイク・ペンス前米副大統領に起きたことを反省したほうがいい。そしてこの警告は、彼の集会に行き、彼が自分たちのために何かしてくれると純粋に思っているように見える全ての人々にも当てはまる。

だから11月5日には、ハリスに一票を投じるつもりだ。奇跡を期待している訳ではないが、彼女は過去30年間、アメリカの外交政策がいかに大きく舵を切ってきたかを理解し、新たな方向に舵を切り始めるかもしれない。私はすでにトランプのショーを見たが、続編はオリジナルよりも更に悪いものになるだろう。私のようなリアリストにとって、これは簡単な決断だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。
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 私たちは民主政治体制国家に生きている以上、これからも、選挙を何度か経験するだろう(不慮の事故などで亡くなることもあるが)。なかなか難しいが、政治家や候補者に質問をするという機会を得ることもあるだろう。れいわ新撰組は街頭や集会で質疑応答を行っているが、あまり他の党では見かけないにしても(勉強不足で知らないことがあるのはあらかじめお詫びします)、個人の演説会などに行けば質問することができるだろう。

 重要なことは、「何を知っているか」ではなく、「どのように決定を下すか」ということだ。以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿にあるように、小さな国の首都の名前やミサイルの名前などを聞くことはあまり意味がない。もちろん、知識が多いのは素晴らしいことだが、私たちは、クイズの優勝者を自分たちの指導者に戴く訳にはいかない。クイズの優秀な回答者になるためには相当な苦労と頭脳明晰さが求められるだろうが、政治家や指導者に求められる最重要の資質という訳ではないだろう。

 私たちが政治家や候補者に質問する際には、「どのように考えるか」「どのように結論を出すか」ということを重視すべきだ。政治家は、最後は決断である。韓国で起きた戒厳令布告失敗で言えば、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は結果として失敗した訳であるが、彼の決断はどうだったのかということで評価される。そして、政治は結果が全てである。その点で、尹大統領は政治家としては失敗したということになる。現実の世界は、あらかじめ解答がある訳ではない。また、完全な情報が与えられる訳ではない。不完全な情報の中で、自身の経綸、論理性に基づいて、政治家は決断を下す。その方法や過程を知ることが重要になってくる。有権者として、もし私たちが政治家に質問できる機会がある場合に、政治家の「考え方(結論の導き出し方)」を知るということが重要になるだろう。そういう質問をすることは難しいかもしれないが、以下の論稿は参考になる。そして、以下の論稿の内容は、私たちが、政治状況を判断する際にも役立つと考える。

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ハリスとトランプがまだ問われるべきいくつかの質問(The Questions Harris and Trump Still Need to Be Asked

-アメリカ大統領選を取材するジャーナリストのための虎の巻(cheat seat)を公開する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年9月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/17/kamala-harris-trump-election-debate-foreign-policy-questions/

2024presidentialdebatesforeignpolicy001
ペンシルヴァニア州フィラデルフィアで行われたカマラ・ハリスとドナルド・トランプの討論会(2024年9月10日)

アメリカ大統領選挙候補者討論会が終わり、ハリス陣営とトランプ陣営を取材する記者たちはおそらく通常の活動を再開するだろう。今後数週間のうちに、数少ない幸運な記者たちが2人の候補者に外交政策について質問する機会を得るかもしれない。私はジャーナリストでもメディアの専門家でもないが、世界政治とアメリカの外交政策について多少は知っているつもりでいる。ここでは、アメリカが外の世界とどのように対処すべきかについて、どちらかの候補者の見解を探る機会を得た場合、報道陣は何をすべきか(そしてすべきでないか)について、いくつか考えてみたい。

選挙戦の最後の数週間で興味深い洞察を引き出すのは容易ではない。カマラ・ハリス副大統領は、ジョー・バイデン大統領のウクライナとガザ地区への対応を擁護しなければならない、あるいは少なくともそこから大きく逸脱してはならない、という不運な立場にある。そのためには、巧みな身のこなしが必要であり、無難な短い言葉の巧みな使い方(sound bites)や曖昧な決まり文句に固執する誘惑にハリスが抗うのは難しいだろう。ドナルド・トランプ前大統領に関しては、彼に何を聞いても時間の無駄かもしれない。しかし、2016年にマギー・ハバーマンとデイヴィッド・サンガーが示したように、綿密なインタヴューによって候補者が重要な外交政策問題についてどのように考えているかが明らかになり、彼らが何を信じているのか、何を正しく直感しているのか、そして何を明らかに理解していないのかが明らかになることがある。

そのような現実を踏まえて、もし私がいくつかの質問を投げかける機会を得たとしたら、どのような質問をするかをこれから挙げていく。

第一に、候補者がいかに世界のことを知らないかを明らかにする(と思われる)ことで、候補者を困惑させることを主目的とした、ありがちな「やらせ」質問(“gotcha” questions)は省く。大統領候補にタジキスタンの外相やアジア開発銀行の頭取の名前を尋ねたり、国際決済銀行の仕組みを説明させたりするのは馬鹿げている。私は世界政治の研究を生業としているが、私も同僚の多くも、この種の雑学コンテストではうまくいかないだろう。もっと重要なのは、何百人もの世界的指導者の名前や、その他の難解な詳細を思い出すことができたとしても、候補者の世界の仕組みに関する基本的な見解や、現在のアメリカの利益、あるいはそれらの利益を促進すると考える政策については何も分からないということだ。

「トリヴィアル・パースート」の外交政策版をプレイする代わりに、私は各候補者に最も尊敬する外国の指導者とその理由を尋ねるだろう。少なくとも1人の名前を思いつかなければ、それは憂慮すべきレベルの無知か、過度にアメリカ中心の世界観のどちらかを示唆している。質問の後半も重要だ。どのような資質や業績があって特定の指導者を尊敬するようになったのかを知ることで、彼ら自身の優先順位や価値観がどのようなものなのかをよりよく知ることができる。

同様に、悪名高い「午前3時の電話(3 a.m. phone call)」(訳者註:2008年の大統領選挙民主党予備選挙でヒラリー・クリントンが流したCM)や通常の危機シナリオの数々にどう対応するかも質問しない。中国による突然の台湾攻撃、中東での全面戦争、アメリカへの大規模なサイバー攻撃、友好的な外国政府の暴力的転覆、その他多くの恐ろしい可能性にどう対処するか、大統領選に立候補している誰も知らないというのが明白な真実なのだ。なぜか? なぜなら、ほぼ全ての状況で最終的に何を決断するかは、事前に特定できない多くの詳細によって決まるからだ。大統領になれるほど賢い人なら、そんな質問に答えようともしないはずだ。

仮説的なシナリオで彼らが何をするかを質問する代わりに、私は彼らが問題をどのように考えて解決するかを探ることにもっと興味がある。たとえば、中国が台湾に封鎖を実施した場合、アメリカは対応策を講じる際に何を達成しようとすると考えるか? この状況に対する私たちの関心は何だろうか? また、直ちに生じる可能性のある機会やリスクは何だろうか? 彼らは諜報機関、北京の米大使、国家安全保障会議の中国・台湾担当上級部長、あるいは統合参謀本部議長にどんな質問をするだろうか? どのような選択肢を検討したいと考えるか? また、様々な選択肢の中から選択するためにどのような基準を使用するか? 他にどのような要因 (同盟諸国の意見、競合する約束など) が彼らの決定に影響を与える可能性があるか? 候補者が思いつくであろう困難な状況でどのような行動をとるのかを正確に知る必要はないが、彼らがアメリカの国益を前進させる対応をどのように選択するのか、少しでも知りたいと思っている。

両候補がNATOについてどう考えているかは既に分かっている(ハリスは大ファン、トランプはそうではない)ので、それについて聞いても意味がない。同様に、アメリカとイスラエルとの関係について一般的な質問をしても、興味深いことは何も見えてこない。大統領選挙に立候補している人なら誰でも、イスラエルへの「鉄壁の(ironclad)」関与などについて話すことを知っている。しかし、もし私がトランプにインタヴューするとしたら、パレスティナ人をアブラハム合意から外したのは間違いだったのか、ハマスが2023年10月にイスラエルへの攻撃を開始した理由の1つはパレスティナ人の排除であったのかと質問するだろう。もし私がハリスにインタヴューするとしたら、イスラエルが停戦を求めるアメリカの声に逆らっているにもかかわらず、何十億ドルもの追加兵器をイスラエルに与えることが、なぜアメリカの利益につながるのか説明してもらいたい。彼女は、この政策がアメリカ人をより安全にし、繁栄させ、世界中で尊敬されるようになると考えているのか? それはどのようにして実現されるのか?

次に、実績のある2人(1人は大統領として、もう1人は副大統領として)を相手にしているのだから、私はそれぞれの候補者に、自分の大統領としての実績と相手の大統領としての実績を比較するよう求める。しかし、自分の行動を擁護し、ライヴァルを批判するよう求めるのではなく(それは安易すぎる)、自分の記録を批判し、自分が打ち負かしたい相手について何か肯定的なことを見つけるよう求める。トランプ大統領には、1期目に犯した外交政策上の最大のミスを教えてもらい、そこから学んだことがあるとすれば、それは何だったのかを明らかにするよう求めるだろう。彼は、自分の大統領としての実績はアメリカ史上最高のものであり、ミスはまったくなかったと主張するかもしれないので、私ならリストを用意する。貿易赤字を更に悪化させた対中関税、イランを包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPOA)から離脱させて核爆弾に近づけようとした決断、どこにもつながらない北朝鮮の金正恩委員長とのリアリティショー的な首脳会談、アフガニスタンでの永久戦争(forever war)を終わらせることができなかったこと、ロシア大使に機密情報をうっかり漏らしてしまったこと、他の民主政体諸国家の指導者たちとの険悪な関係。そのうえで、バイデンが外交政策で行ったことのうち、彼が同意したものを挙げてもらうことにする。

ハリスにも同じ扱いをする。トランプの外交政策の行動のどのような側面が正しかったか? 彼の最大の成功は何か? 対照的に、バイデン政権の最大の外交政策の失敗は何か? トランプの場合と同様に、彼女が質問をはぐらかそうとした場合に備えて、私は提案できる可能性の便利なリストを用意する。バイデンも同様の戦略に従い、ある意味では更に踏み込んだことを考えると、トランプが通商問題で中国に厳しく対応したのは正しかったのだろうか? 彼女はバイデンのティームがガザ地区を上手く取り扱ったと考えているのだろうか? バイデンが2020年の選挙戦期間中に約束したように、なぜアメリカはイランとのJCPOAに再参加しなかったのか? バイデンとアントニー・ブリンケン国務長官は、ロシアのウクライナ侵攻を阻止したり、ウクライナの多大な苦しみやさらなる領土の喪失を免れて戦争を迅速に終結させたりする可能性のある合意に達するためにもっと努力すべきだったのだろうか? アメリカ政府が多くの独裁者と協力する必要があり、時には一部の民主政体同盟諸国と大きな問題を抱えていることを考慮すると、民主政治体制と独裁主義を明確に区別することがアメリカの外交政策を組織するための最良の枠組みなのだろうか? これらのことなどを質問する。

民主、共和両党とも、開放的だが管理された貿易の利点を忘れてしまったかのようだ。特にトランプは、関税は他国に課税する手段であり、国をより豊かで生産性の高いものにする簡単な方法であるという、長い間信じられていなかった考え方に熱中している。両候補に次のように質問したい。比較優位の法則(law of comparative advantage)が何であるか知っているか? また、それに基づいて外交経済政策を考えているか? (もし彼らがデイヴィッド・リカードについて言及していたらボーナスポイントだがそれは期待しない)。

最後に、各候補者に外交政策上の最優先課題を質問したい。今後4年間で外交政策の主要目標を1つだけ達成できるとしたらそれは何か? 気候変動を食い止めることか? 有意義な中東和平合意の交渉か? 「抵抗の枢軸(axis of resistance)」にくさびを打ち込むことか? 戦略的軍備管理への真剣な取り組みの再開か? ロシアをウクライナから撤退させること、あるいはメキシコの暴力的な麻薬組織への対処を支援することか? 国連安全保障理事会の改革か? 数え切れないほどの可能性があり、たとえ彼らが真実を語ったとしても、就任後にそれを実行するとは限らない。外交政策に不意打ちはつきものであり、最善の計画が予期せぬ出来事によって覆されることはよくあることだ。信じられないなら、ジョージ・W・ブッシュに2001年9月11日の外交政策がどうなったか聞いてみればいい。しかし、私は、候補者たちが、もし可能であれば我々をどこへ導きたいのか、そしてどのようにそこに到達できると考えているのかを知りたい。

これが私のアドバイスだ。この文章を読んで、どちらの陣営も私に電話をかけてきて、選んだ候補者と一対一で話をしようとはしないだろう。しかし、もしあなたが現役のジャーナリスト、ポッドキャスター、トークショーの司会者で、そのような機会があれば、私の提案をぜひ使って欲しい。どこで入手したかは言う必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

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 アメリカ大統領選挙が終わって3週間ほどが経過した。結果は共和党のドナルド・トランプ前大統領(次期大統領)が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破って二回目の当選を果たした。トランプは選挙人312人(一般得票約7700万票、約49.9%)、ハリスは選挙人226人(一般得票約7400万票、約48.3%)という結果になった。トランプにとっては選挙人だけではなく、一般得票でも勝利し、圧勝、完勝ということになった。一度敗れた前大統領が再び勝利を収めたのは100年以上ぶりのことだった。

 前回は民主党のジョー・バイデン前副大統領(当時)が選挙人306名(一般得票約8100万票、約51.3%)で、共和党のドナルド・トランプ大統領(当時)を破った。トランプの獲得した選挙人は232名(一般得票約7400万票、46.8%)だった。この4年間で民主党はどうしてここまで票を落とすことになったのかということを、民主党自身が詳しく分析しているだろうが、各メディアでも出口調査の結果を基にして分析している。

 何よりも重要な原因となったのは、中絶問題を一番の争点として訴えて、経済問題を訴えることができなかった、アピールできなかったということになる。

民主党の支持基盤である、若者たち、ヒスパニック系、アフリカ系での支持を伸ばせなかった。ここに尽きるようだ。生活に密着する問題、インフレ問題について、バイデン政権も対策を行っていたが、それをアピールできなかったこと、更には生活実感として、そのような対策の効果を実感できなかったということである。インフレが直撃するのは所得が低い人々であり、そうした人々は、元々は民主党支持であったが、民主党がそうした人々の生活実感を救い取れなくなっている、また、都市部の中間層からエリート層が支持基盤となっているというところが大きい。また、有権者全体として、「経済問題はやはり、経営者出身のトランプだ」という感覚がある。

 文化的、価値観に関する問題で選挙を戦って勝てることもあるが、アメリカで生活に不安を持つ人々、明日の生活もどうなるか心配している人々、家賃高騰のために車上で生活することを余儀なくされている人々は直近の生活問題を解決することを望む。生活が安定しなければ、社会的な問題について考えることはできない。民主党はそうした生活実感を取り戻すことができるかどうか、ここが重要になってくる。

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2024年大統領選挙について出口調査が語っていること(What the exit polls say about the 2024 election

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2024年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/4993162-trump-victory-exit-polls/?tbref=hp

ドナルド・トランプ次期大統領の選挙での勝利から2週間近くが経過したが、民主党員も専門家たちも、トランプが300人以上の選挙人を獲得するために、どのようにして7つの激戦州全てを席巻したのかを理解しようとしている。

出口調査はトランプ大統領の勝利の背後にある最大の理由を明らかにしている。有権者たちはカマラ・ハリス副大統領と民主党の左派によった綱領(left-leaning platform)を拒否した。この綱領は経済をほとんど無視しながら進歩的な社会問題に力を入れるものだった(doubled down on progressive social issues while largely neglecting the economy.)。

その代わりに、経済や移民問題といった生活に密着した台所テーブルに関する諸問題(kitchen table issues)に焦点を当てたトランプは、中絶の権利に焦点を当てたハリスや民主党よりも、特にハリスが勝利するために必要とした若年層、ヒスパニック系、黒人有権者に対して大きな効果を発揮した。

言い換えるならば、出口調査は、民主党が主要な有権者の間でさえ、意向を正しく読み取ることに失敗したことを示している。彼らは、2024年は2022年に似ていると想定していた。2022年は、中絶の権利をめぐる争いがインフレへの懸念をかき消し、全米で民主党を押し上げた。

しかしながら、CNNの2022年、2024年の出口調査によると、2022年には全米の有権者たちにとって中絶(27%)が2番目に重要な問題であったのに対し、2024年には14%だけが重要な問題だと答えただけだった。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、その時点までに、ヒスパニック系が多数を占める郡は2020年と比べてトランプの支持率が13ポイント、アフリカ系アメリカ人が多い郡は3ポイントも上昇しており、これは主にトランプが選挙運動の目玉とした経済への懸念によるものだと言われている。

ハリスと民主党が明確な経済政策を打ち出せなかったことは、この2つの票田(ヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人)に特に大きなダメージを与えた。実際、ヒスパニック系有権者の40%が、経済が自分の投票にとって最も重要な問題であると答えており、CNNによれば、これは全米の有権者全体よりも8ポイント高い。

経済が最重要課題であると答えたヒスパニック系有権者のうち、3分の2(67%)がトランプに投票したのに対し、ハリスに投票したのはわずか32%であった。

更に言えば、経済を最重要課題とした20%の黒人有権者のうち、トランプはその4分の1強(26%)の票を獲得し、黒人有権者全体における支持率の2倍に達した。

ペンシルヴァニア州やアリゾナ州のようないくつかの激戦州の中では、ヒスパニック系の支持率が2020年と比べてトランプはそれぞれ27ポイント、10ポイント改善した。これが決定的だったようだ。

そのため、ヒスパニック系有権者を詳しく見ると、民主党のメッセージ発信(messaging、メッセージング)がいかにずれていたかが浮き彫りにされる。

ハリスと民主党全体は、トランプ大統領の移民排斥のレトリックに大きく傾倒したが、ヒスパニック系有権者の10人に7人以上(71%)は、ユニドスの出口調査によれば、より厳しい国境警備政策を支持している。

これと同様に、2022年の中間選挙では中絶(28%)がヒスパニック系有権者の最重要課題であったが、CNNによれば、今年同じことを答えたヒスパニック系有権者は2分の1以下(13%)であった。

同様に、伝統的に民主党の信頼できる有権者である若い有権者も、ハリスと民主党のメッセージ発信には動かなかった。ニューヨーク・タイムズの分析によると、「18~34歳の人口が多い」郡は、トランプ支持に6ポイント動いた。

特に30歳未満の有権者について見ると、ハリスはこれらの有権者の支持を勝ち取ったものの、彼女の獲得した11ポイント差は、4年前のバイデンの24ポイント差の約半分にとどまった。

ペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった「青い壁(Blue Wall)」の州と呼ばれる各州では、民主党はハリスが選挙人270人を超えることを期待していたが、若い有権者のシフト(移動)はさらに顕著だった。

エジソン・リサーチ社によれば、2020年と比較して、30歳未満の有権者はミシガン州で24ポイント、ペンシルヴァニア州で18ポイント、ウィスコンシン州で15ポイントもトランプにシフトした。これらは激戦州7州全てで最大の動きとなった。

中間選挙とは異なり、大統領選挙はほぼ常に経済と現政権をめぐる国民投票(referenda)であり、ハリスが苦戦したのはまさにここだった。

タフツ大学の世論調査によれば、30歳以下の有権者が今回の選挙の争点として挙げたのは、中絶よりも経済であり、その割合はほぼ4対1(40%対13%)となった。

ハーヴァード大学ケネディスクール政治学研究所の世論調査ディレクターであるジョン・デラ・ヴォルペが指摘するように、「私が実施した初期のフォーカス・グループから、トランプ政権下では若年層の財政が良くなるという生得的な感覚(innate sense)があった」ということだ。

興味深いことに、外交政策が経済、移民、中絶といった問題よりも関心が低いことが多い中、中東戦争に対する一貫した立場を明確に打ち出せなかったハリスは、ミシガン州のアラブ系有権者とペンシルベニア州のユダヤ系有権者からの支持を失った。

アラブ系アメリカ人の人口が多い都市であるミシガン州ディアボーンでは、トランプが得票率42%、ハリスの36%で僅差で勝利したが、これは2020年のバイデン大統領と比べてハリスは33ポイントも得票率を下げたことになり、これは驚異的な低下となった。多くの住民は、ハリスがイスラエル支持だと感じ、それに反対した。

逆に、ペンシルヴァニア州の世論調査によれば、ハリスがジョシュ・シャピロ州知事を副大統領候補に選ばなかったことは、CNNのヴァン・ジョーンズのような一部の民主党員でさえも、反イスラエルの進歩主義派をなだめるための努力だと非難しており、ハリスはペンシルヴァニア州を失った可能性がある。

ハリスはペンシルヴァニア州のユダヤ人票を48%対41%で獲得した。しかし、『ニューヨーク・ポスト』紙は、彼女がシャピロを選んでいたら、2倍以上の差をつけて勝っていた可能性が高いという世論調査を報じた。ユダヤ系有権者が有権者の3%を占めており、トランプが13万票弱の差で勝利した、この州では、これは大きな失敗だったかもしれない。

ミシガン州とペンシルヴァニア州でのハリスの苦戦は、彼女の選挙戦を悩ませた核心的な問題を象徴している。彼女は大統領になるための政策課題を明確に示すこともなく、不人気なバイデン大統領と自分を切り離して定義することもなかった。

より大きなスケールで見れば、全米および激戦州の世論調査は、ハリスと民主党のより深い問題を明らかにしている。有権者が、食卓に食べ物を並べられるかどうかや、管理されていない南部国境の脅威よりも、中絶のような問題を優先してくれることを期待し、手遅れになるまで間違った問題を優先したのだ。

ポジティヴに捉えれば、民主党の敗北の大きさと世論調査は、2026年、そして2028年に民主党がどのように立ち直ることができるかの明確な道筋を示している。とはいえ、民主党がこの地図に従って、経済中心の中道主義を発展させることを選択するかどうかは重要である。綱領を強化するか、その代わりに左寄りの社会問題に力を入れるかは見ていかねばならない。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨークに拠点を置く世論調査会社「ショーン・クーパーマン・リサーチ」の世論調査専門家兼パートナー。共著として『アメリカ:団結するか、死ぬか(America: Unite or Die)』の共著者である。

(貼り付け終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプ次期大統領は、国務長官にマルコ・ルビオ、国家安全保障問題担当大統領補佐官にマイク・ウォルツ、米国連大使にエリス・ステファニックを指名した。この人事に共通するのは対中強硬姿勢、親イスラエル姿勢、ウクライナ戦争終結志向姿勢といったことが挙げられる。直近で言えば、ドナルド・トランプが主張しているように、ウクライナ戦争停戦を促進し、イスラエルへの支援を行う(事態の悪化、深刻化は望まない)という布陣になる。
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ドナルド・トランプとマルコ・ルビオ

現在のアメリカでは、ウクライナ(ヨーロッパ地域)とイスラエル(中東地域)の対処が先で、アジア地域までは動きが取れないということになっている。対中強硬姿勢と言いながら、実際には何か重要な動きをすることは難しい。台湾問題は米中双方が自制して問題化させないようにするだろう。それよりも、危険なのは朝鮮半島である。北朝鮮がウクライナに兵式を派遣し、韓国に対しては強硬姿勢を鮮明にしており、「朝鮮戦争の再燃か」という懸念の声が上がっていることは、このブログでもご紹介した。
※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」2024年11月5日付「朝鮮半島の状況が不安定化し朝鮮戦争が起きる可能性について取り沙汰されている:中国もロシアもそれを望んでいないがこの危険性が交渉材料になる(アメリカとの)」→https://suinikki.blog.jp/archives/89105815.html

 ここで重要なのは、第一期トランプ政権で実施された米朝首脳会談と非核化の合意形成である。トランプは、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との関係を利用して、朝鮮半島問題を悪化させないように動くだろう。現在のところ、アメリカではウクライナ問題と中東・イスラエル問題に注目が集まっている中で、朝鮮半島問題についても裏側で動くことだろう。重要なのはトップ人事と同時に、実務者レヴェルの人事である。トランプ政権にとっての最重要課題は「核戦争の防止」である。

 マルコ・ルビオはアメリカ大統領選挙に出馬した経歴を持ち、トランプとも争った過去を持つ。今回、トランプがルビオを指名したことに驚きの声が上がった。ルビオに関しては、トランプも全幅の信頼を置いてはいないだろう。国務副長官、国務次官にルビオをけん制するための人物を配置するだろう。マイク・ウォルツは退役軍人(陸軍大佐)で、エリート部隊のグリーンベレー出身で、連邦下院議員を務めた経歴を持つ。ウォルツの配置は、南部国境に軍の部隊を派遣するという「麻薬戦争(drug war)」対策の側面があることが考えられる。
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ドナルド・トランプとマイク・ウォルツ
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エリス・ステファニックとドナルド・トランプ
 エリス・ステファニックは共和党の「ライジングスター」であり、第二次政権以降も「トランプ政治運動」の重要人物として活動できるように育てていこうという意図が見える。副大統領のJD・ヴァンスと同い年ということもあり、将来の副大統領候補、あるいは大統領候補ということも考えられる。そのために、米国連大使抜擢で、政治キャリアの第二段階のスタートということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

トランプがマルコ・ルビオを国務長官に指名と発表(Trump announces Rubio as pick for secretary of State

ブレット・サミュエルズ、ラウラ・ケリー筆

2024年11月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4988992-trump-rubio-secretary-state/

ドナルド・トランプ次期大統領は水曜日、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を国務長官に指名する決定を正式に発表し、かつてのライヴァルを政権の外交トップの役割に据えた。

トランプ大統領は声明で、ルビオを「非常に尊敬される指導者であり、自由を求める人々にとっての非常に強力な代弁者」と称賛した。

トランプは更に「彼は我が国の力強い代弁者であり、同盟諸国の真の友人であり、決して敵に屈しない恐れを知らぬ戦士となるだろう」と付け加えた。

ルビオのトランプ内閣閣僚への選出は、共和党大統領予備選で両者が激しいライヴァル関係にあり、個人的な侮辱をお互いに与えあっていた2016年からの劇的な好転ということになる。

今年初め、トランプ大統領はJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)を選出する前に、ルビオを副大統領候補に選ぶところだった。

フロリダ州選出の連邦上院議員は中国とイランに厳しい外交政策のタカ派とみられている。ルビオ氏は9月のNBCとのインタヴューで、ウクライナとロシアの間の戦争は「交渉による解決(with a negotiated settlement)」で終わるのは明らかだと語った。

トランプ大統領は、就任後は速やかに「アメリカ・ファースト」の外交政策ヴィジョンを復活させると誓った。トランプは、アメリカが対ロシア戦争でウクライナを支援し続けることに懐疑的な姿勢を表明し、ヨーロッパの同盟諸国に対し、キエフ支援とNATO同盟を通じた自国の防衛支援に一層の努力をするよう求めた。

月曜日遅くに最初に報道されて以来、民主、共和両党の議員たちはルビオの選出を温かく歓迎した。ジョン・フェッターマン連邦上院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)はルビオの承認に投票する意向を示し、マーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)はルビオを「賢く、才能に溢れ(smart, talented)」、「世界中のアメリカの利益を代弁する強い代弁者(a strong voice for American interests around the globe)」と呼んだ。

ルビオは指名発表後の声明で、トランプ大統領からの信頼を光栄に思い、「外交政策の課題に対処するために(to carry out his foreign policy agenda)」日々努力すると述べた。

ルビオは声明で「1月20日の大統領就任時に大統領が国家安全保障・外交政策ティームを設置できるよう、連邦上院の同僚たちの支持を得ることを楽しみにしている」と述べた。

フロリダ州選出の連邦上院議員ルビオは、指名が発表される数分前に連邦議会議事堂で記者団の取材に応じ、トランプの提案の一部について考えを述べ、トランプがルビオのポストについての人事承認プロセスを回避する手段として連邦上院議員に関与を求めてきた休会任命戦略(strategy of recess appointments)への反対を表明した。

ルビオは「理想的には、人々が投票され、人々が好きなように投票できるような指名プロセスが必要だ」と述べた。

ルビオは続けて「本当に重要な役職に就いていて、時間の面で理不尽な妨害をする人がいる場合、球界任命の予定は最後の手段として使うものだ」と述べた。

ルビオは、アプリ「TikTok(ティックトック)」の国家安全保障上のリスクについて懸念があるとしながらも、法律として可決された禁止措置を撤回するかどうかについてはトランプ大統領が権限を持っていると述べた。

ルビオは「このアプリとそれがもたらす脆弱性については依然として懸念があるが、究極的に言えば、私はアメリカ大統領ではないのだ」と述べた。

ウクライナについて質問されると、ルビオはトランプ大統領の意見を尊重し、「彼は戦争の終結を望んでいる」とし、「戦争を乗り越える方法を見つけるのは大統領の仕事だ。彼の戦略やその点での決断について、私は話すつもりはない」と述べた。

ルビオは「彼は、これは終わらせるべき戦争だということをかなり明確に示したと思う。事態は行き詰まり、ウクライナは1世紀前に戻りつつある」と語った。

ルビオ氏は政権交代に先立ち、ウクライナへの更なる資金提供を約束するつもりはないだろう。

「それを考える前に、新政権が発足するまで待とうではないか。私たちは来月も政府に資金を提供しなければならない」とルビオは語った。

ルビオの人事承認公聴会を実施する、連邦上院外交委員会のメンバーであるティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ジェフ・マークリー連邦上院議員(オレゴン州選出、民主党)のような委員会の民主党側メンバーたちと一緒に、ルビオの人事承認への早期の支持を表明した。

ケイン議員は「今言えるのは、ルビオは連邦上院外交委員会の非常に献身的なメンバーだということだけだ。それは前向きなことだ」と語った。

トランプ大統領は先週の選挙で勝利した後、国家安全保障ティームを急速に強化した。トランプはエリス・ステファニック連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)を米国連大使に選び、マイク・ウォルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)を国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名した。トランプはまた、フォックス・ニューズの司会者で退役軍人のピート・ヘグセスを、国防総省を率いる候補者に指名した。

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トランプの国家安全保障問題担当大統領補佐官指名を受けたマイク・ウォルツについて知っておくべき5つのこと(Five things to know about Mike Waltz, Trump’s national security adviser pick

ブラッド・ドレス筆

2024年11月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4986351-trump-waltz-national-security/

ドナルド・トランプ次期大統領は、次期国家安全保障問題担当大統領補佐官に国防政策や外交政策で長年の経験を持つ退役陸軍軍人でグリーンベレー出身のマイケル・ウォルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)を選出した。

フロリダ州第6選挙区の代表であるウォルツは2019年から連邦下院議員を務めており、連邦下院軍事委員会、外交委員会、情報・諜報委員会の委員を務めている。

トランプ大統領は自身のソーシャルメディアサイト「トゥルース・ソーシャル」で、ウォルツは「中国、ロシア、イラン、そして世界的なテロリズムによってもたらされる脅威の専門家(expert on the threats posed by China, Russia, Iran and global terrorism)」であり、「私のアメリカ・ファースト外交政策の擁護者であり、私たちの力による平和の追求においても素晴らしい擁護者となるだろう」と述べた。

これからウォルツについて知っておくべきポイントを述べていく。

(1)中国に対するタカ派的な考え(Hawkish views on China

ウォルツは国家安全保障担当大統領補佐官の役割に中国に対する強硬な立場を持ち込むことになる。連邦議会で、ウォルツは、インド太平洋地域における中国の優越を防ぐためにインド太平洋地域の諸国とアメリカ政府の関係を強化する法案など、中国政府を抑えることを目的とした法案を支持してきた。

ウォルツは2020年のフォックス・ニューズとのインタヴューで、中国はアメリカに対する「存在に関わる脅威(existential threat)」であると述べた。

ウォルツは、「これは、私たちが20世紀の大部分でソ連と対峙しなければならなかったのと同じように、国家安全保障の問題になるだろう。21世紀には中国も同様になるだろう」と付け加えた。

ウォルツは連邦下院インド議員連盟の共同議長でもあり、中国に対する共通の同盟を支援するためにニューデリーとのより深い関係を築こうとしてきた。

ウォルツは中国の歴史的な平時における「軍事力増強(military buildup)」について警告し、アメリカの国家安全保障の焦点は中国政府の抑止(deterring Beijing)に軸足を移すべきだと述べた。

ウォルツは2020年に連邦下院で対中国タスクフォースの創設に貢献した。この特別委員会は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対応して設立され、複数の分野における中国政府の脅威を検討していた。連邦下院には現在、中国に関する特別委員会が設置されている。

トランプ大統領はまた、同じく対中国タカ派のマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を国務長官に指名し、中国との対決が第二次トランんプ政権の最優先課題になる可能性が高いことを示した。

中国の最高指導者である習近平は、中国政府が本土の一部とみなしている自治領の島国である台湾に対する潜在的な攻撃に備えて軍が2027年までに準備を整えるべきだと示唆した。

(2)イスラエルに対する熱心な支援者(Ardent supporter of Israel

ウォルツは、大半の共和党員と同様、中東戦争を通じてイスラエルへの全力の支持を示してきた。中東ではイスラエル軍がイランの支援を受けた複数の代理組織と戦っている。

バイデン政権と民主党は、ガザ地区での死者数の多さに懸念を表明している。ガザ地区では、2023年10月7日にイスラエル南部に侵攻し、約1200人が殺害され、ハマスとイスラエルが戦った1年以上で4万3000人以上のパレスティナ人が死亡した。ハマスは約250名を人質に取った。

バイデン大統領と民主党は停戦(ceasefire)と人質解放(hostage release)の合意を推進してきた。ハマスは今もガザ地区で約100人の人質を拘束している。

しかし、ウォルツは9月のフォックス・ニューズとのインタヴューで、停戦と人質解放の合意だけでは紛争は終結しないと述べた。

ウォルツは「イランはイスラエルを破壊したいため、今後も不安を煽り続けるだろう。イランに対して譲歩(concession)を重ねることが、実は状況を不安定化させている」と述べた。

ウォルツはまた、アメリカがイラクでの軍隊駐留を縮小していることへの懸念を表明し、イスラエルがレバノンのハマスとイランが支援する過激派組織ヒズボラの両方に対して行動を起こすことを支持している。

(3)バイデンのウクライナ戦略に疑念を示す(Skeptical of Biden’s Ukraine strategy

ウォルツは、ロシアとの関係があまりにも穏やかで良いとして批評家らから非難されているトランプよりも、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対してはるかに厳しい態度を取っている。

2022年にロシアがウクライナに侵攻すると、ウォルツはすぐさま侵攻を非難し、攻撃から守るためのウクライナへの武器支援を支持した。

それでもトランプ大統領は、1月20日の就任までにウクライナ戦争を終わらせると約束した。

ウォルツは、トランプ次期大統領の和平案を全面的に支持していなかったが、同時に、バイデンの紛争へのアプローチを批判してきた。

ウォルツは2023年9月の声明で、バイデンは「ウクライナにおけるアメリカの目的も、それを達成するための戦略も説明していない」とし、NATO同盟諸国はキエフへの支援を強化する必要があると述べた。

ウォルツは「短期的には、アメリカの軍事援助はヨーロッパの負担分担と今後の平等なヨーロッパ援助を条件とする必要がある。アメリカは貯蓄を自国の安全保障に投資しなければならない。それは、南部国境を確保するためにウクライナに与えるあらゆる援助のドル価値と一致するべきである」と述べた。

(4)メキシコのカルテルに対する軍事力行使を支持(Backs using military against Mexican cartels

トランプ大統領は国境に現役部隊を派遣し、大量国外追放を実施することを提案しており、次期政権に強硬派の入国管理当局者を選出している。

ウォルツは、共和党内で国境でのより厳しい行動を求める声が高まっていることに加わり、アメリカは移民改革の前にまず国境を確保する必要があると述べ、それを怠ったバイデン政権を非難した。

ウォルツは、2023年にはメキシコのカルテルに対する軍事力の行使を認める法案の共同提案者となった。数人の共和党連邦議員は現在、犯罪組織がフェンタニルのような強力で致死性の麻薬を国内に輸送していることへの懸念を理由に、カルテルに対する軍事行動を支持している。

ウォルツは2023年の声明の中で、「我が国の南部国境の状況は、我が国の法執行職員にとって耐えられなくなった。攻撃を開始する時が来た」と述べた。

(5)輝かしい軍人としてのキャリア(Decorated military career

ウォルツはフロリダ州ボイントンビーチ出身の退役大佐で、ヴァージニア軍事学校に通い、その後アメリカ陸軍と州兵として27年間勤務した。

彼は陸軍レンジャー学校に入学し、エリート特殊部隊グリーンベレーに入隊した。ウォルツはアフガニスタン、中東、アフリカに派遣された。

ウォルツは後にジョージ・W・ブッシュ(息子)政権でドナルド・ラムズフェルド国防長官とロバート・ゲイツ国防長官の下で国防政策部長(defense policy director)を務めた。

彼はまた、グリーンベレーとしての経験についての本を書き、アメリカ軍の訓練と支援に重点を置く小規模な防衛請負会社メティス・ソリューションズを設立した。

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エリス・ステファニックについて知っておくべき5つのこと(5 things to know about Elise Stefanik

エミリー・ブルックス、マイケル・シュニール筆

2024年11月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4984791-stefanik-ambassador-un-trump/?ipid=promo-link-block3

ドナルド・トランプ次期大統領は月曜日、米国連大使にエリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)を指名し、共和党内でのステファニックの台頭の勢いを更に高めた。

これは、近年トランプ大統領の最も熱心な擁護者であり、支持者の1人である共和党連邦下院議員会の会長であり、連邦下院で最も地位の高い共和党女性連邦下院議員に対する抜擢である。

しかし、ハーヴァード大学卒業生でトランプ大統領の副大統領候補とも目されていたステファニックも、スターとしての力が高まるにつれ、より厳しく精査されている。

ステファニクについて知っておくべき5つのことは以下の通りだ。

(1)親トランプの変革を遂げた(Underwent pro-Trump transformation

トランプが権力を握った時、他の多くの共和党連邦議員と同様に、ステファニクも当初はトランプと距離を置き、イスラム教徒が多数を占める7カ国の国民のアメリカ入国を禁止するトランプ大統領の2017年の大統領令などの政策について、公然とトランプと決別したことさえあった。

しかし、それはトランプ大統領の1期目に急速に変化し、一部の政治の専門家たちを驚かせた。

2019年のトランプ大統領の最初の弾劾手続きまでに、ステファニクは連邦議事堂でのトランプ大統領の擁護者のトップの1人になっていた。連邦下院情報委員会の委員として、彼女は好戦的なアプローチをとり、弾劾公聴会で当時の委員長アダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)に異議を唱えた。

このためトランプ大統領はステファニクのソーシャルメディアに「共和党の新たなスターが誕生した(A new Republican Star is born)」と投稿した。

ステファニックの姿勢は長年にわたって強固であり、ステファニクは数々の法的問題に直面したトランプを最も鋭く擁護しただけでなく、ジャック・スミス特別検察官(special counsel Jack Smith)に対して倫理訴訟を起こすなどの行動も取っていた。

ステファニクは、トランプが2022年に大統領選への立候補を表明した際に、トランプを支持した連邦議会共和党指導部の最初のメンバーとなった。

(2)リズ・チェイニーに代わって下院議員会会長に就任(Replaced Liz Cheney as conference chair

連邦下院共和党は、1月6日の連邦議事堂襲撃後にトランプの弾劾に賛成票を投じた連邦下院共和党議員10人のうちの1人であるリズ・チェイニー元連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)を、トランプ元大統領からの批判が続く中、2021年5月の連邦下院会会長から解任した。

ステファニクはその時点で強力なトランプ擁護者であるという評判があり、すぐに当時の連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)とトランプからの支持を獲得した。彼女は同じく立候補したチップ・ロイ下院議員(テキサス州選出、共和党)を大差で破った。

当時、党のメッセージを主導する任務を負った議員会会長は、連邦下院共和党内で第3位の地位にあった。2022年の中間選挙後に共和党が過半数を獲得したとき、ステファニクは連邦下院多数派に昇格することを目指すのではなく、その職に留まり、連邦下院第4位の序列となった(訳者註:共和党が連邦下院議長を取ったために党の役職の序列が1つずつ下がる)。

(3)反ユダヤ主義について大学の学長たちを批判したことで話題になった(Went viral for taking on university presidents on antisemitism

ステファニクは何年にもわたって全国規模の舞台で活躍してきたが、昨年、ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃後の大学キャンパスでの反ユダヤ主義について、連邦議会公聴会で3人の学長に迫り、その名声が更に高まり、話題になった。

証言した学長の3人のうち2人は公聴会後に、その発言に対する反発の中で辞任しており、ステファニクはこの展開を称賛した。

ハーヴァード大学のクロディーン・ゲイ学長が辞任した後、彼女はソーシャルプラットフォームXに「2アウト(TWO DOWN)」と書いた。

連邦下院教育労働委員会の前で行われたこの公聴会では、ステファニクへの支持が民主、共和両党から得られた。大学学長の解任を求めるステファニクの主張を民主党と共和党が支持した。

ステファニクはそれ以来、反ユダヤ主義と闘い、ハマスからイスラエルを守る連邦下院共和党の取り組みの顔として浮上している。5月に彼女はイスラエル国会で演説し、ハマスのイスラエルへのテロ攻撃以来イスラエルを訪問した最高位の連邦下院議員となった。

ステファニクはまた、その立場を利用して国連を追及してきた。例えば10月、彼女は声明の中で、国連は「反ユダヤ主義で腐敗するのを許されている(allowed to rot with antisemitism)」と述べ、国連への将来の資金提供を脅かしているようだった。

「アメリカの納税者たちは、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスが反ユダヤ主義で腐敗を許した組織に資金を提供し続けることに興味がない」と彼女は述べた。

(4)女性の共和党からの連邦下院議員候補の擁立に努力(Focused on lifting up female House GOP candidates

ステファニクは女性連邦議会候補者の支援に多大なエネルギーを注ぎ、連邦下院に共和党から立候補する女性たちを募集し支援するための政治活動委員会「エレヴェートPACElevate PAC)」を立ち上げた。

彼女は、2018年の「ブルーウェーブ(Blue Wave 訳者註:民主党の大勝利)」の後、第116回連邦議会で連邦下院の共和党所属の女性議員の数がわずか13人に減った後に、この取り組みを始めた。2021年に始まる次の議会では、共和党所属の女性連邦議員の数は23人に増加した。

ステファニクの努力には、女性候補者を支援するために共和党の予備選でがむしゃらに行動することが含まれており、そのことが時として彼女を連邦下院共和党指導部の他の人々と対立させることになった。当時の全米共和党議会委員会委員長のトム・エマー連邦下院議員(ミネソタ州選出、共和党)は、ステファニクが共和党の予備選に介入するのは「誤り(mistake)」だろうと発言すると、ステファニクは「ニューズ速報…私は許可を求めていた訳ではない(NEWSFLASH… I wasn’t asking for permission)」と反論した。

ステファニクが支援した候補者の1人は、2024年トランプ陣営報道担当のキャロライン・リービットで、2022年にニューハンプシャー州で連邦下院議員選挙に立候補した。

(5)初当選時に連邦下院で最年少の女性議員となった(Youngest woman in House when elected

ステファニクは2014年に連邦下院議員に初当選し、30歳で史上最年少の女性連邦下院議員となり、歴史に名を残した。

現在40歳のステファニクは、アメリカの国連大使に就任する最年少の一人となるであろう。

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