古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:共和党

 古村治彦です。

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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプが大統領選挙に当選し、これからの注目は第二次トランプ政権の人事に移っていく。既にトランプ次期大統領が次々と名前を発表しており、これからこのブログでも紹介していく。私の論評をつけるのではなく、取り合える紹介することを優先する。そのために、重要な記事を紹介していく。まずは古い記事を紹介する。

(貼り付けはじめ)

トランプの大塗料二期目の内閣:重要な役割を果たすであろう人物たちを挙げていく(Trump’s second-term Cabinet: Here’s who may fill key roles

ブレット・サミュエルズ筆

2024年11月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/4979519-trumps-second-term-cabinet-heres-who-may-fill-key-roles/

ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行ティームは、1月に2度目の大統領に就任した後、政権の主要ポストに就く可能性のある候補者の精査を既に開始している。

このプロセスではトランプへの忠誠心と国家に対するトランプのヴィジョンが強調される可能性が高く、次期大統領とそのティームは閣僚ポストに指名されるか、ホワイトハウスで任命された役割を見つける可能性が高い数人の親しい同盟者を特定した。

政権移行共同議長のリンダ・マクマホンとハワード・ラトニックは声明で、「トランプ大統領がティームに参加する最適な人材と追求すべき最善の政策を選択する中で、ティームはトランプ大統領の常識的な政策を初日から確実に実施するだろう」と述べた。

ここで、トランプ大統領の主要なポストに就くと予想される名前のいくつかを見ていこう。

●イーロン・マスク(Elon Musk
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左から:イーロン・マスク、ドナルド・トランプ、J・D・ヴァンス
イーロン・マスクは今回の選挙にトランプの最も声高な支持者の一人となり、次期政権に影響力のある人物としてその恩恵を享受することになるだろう。

テスラとスペースXのトップであり、ソーシャルプラットフォームXのオーナーでもあるマスクは閣僚の地位に就く予定はなく、正式な政府の肩書きを持つかどうかはまだ不明だ。マスクは政府支出削減のための委員会の委員を務めることに興味があると述べた。

いずれにせよ、マスクは移民、電気自動車、規制などの問題についてトランプ大統領の耳を傾けさせることが期待されている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、マスクがスペースX社の従業員の一部を政府の仕事に推薦したと報じた。

●ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.
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ロバート・F・ケネディ・ジュニアとドナルド・トランプ

トランプ大統領は、「健康」「食品」「女性の健康」を扱う新政権において、ロバート・F・ケネディ・ジュニアに大規模なポートフォリオを与えることについて公然と語った。

トランプ大統領は水曜朝、勝利宣言をしながら「彼はいくつかのことをやりたいと考えており、私たちは彼にそれにやらせるつもりだ」と述べた。

ある関係者によると、その役職は閣僚のポストではなく、健康と食品の規制を監督する権威者(czar)のような役職に任命される予定だという。

閣僚に就く人物は連邦上院の承認が必要だが、たとえ共和党が過半数を占めていたとしても、ケネディにとっては人事承認が難しい可能性がある。

ケネディは、自身の役割に関係なく、公衆衛生政策をどのように劇的に再構築しようとするかを既に示唆している。ケネディは、トランプ政権が国内の飲料水からフッ化物を除去するよう求めるだろうと述べたが、この決定は通常地方レヴェルで行われる。

同氏は、食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)の「全部局(entire departments)」を廃止すべきであり、ワクチンに関する更なるデータを求めると述べたが、ワクチン接種を取り上げようとはしないと述べた。ケネディは長年、反ワクチン発言で批判を集めてきた。

●スージー・ワイルズ(Susie Wiles
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スージー・ワイルズとドナルド・トランプ
トランプ大統領の首席補佐官(Chief of Staff)の最有力候補は、過去2年間トランプ陣営の舵取りに貢献し、知名度は低いが広く尊敬されているフロリダで活動しているスージー・ワイルズだ。

ワイルズ氏は舞台裏で仕事をする人(behind-the-scenes operator)で、スポットライトを浴びることをほとんど避けてきたが、男性が大半を占めるトランプ陣営において、敵を作ることなく選挙まで乗り切った。

トランプ大統領は最初の任期中に、4人の首席補佐官を任命した。

首席補佐官は閣僚の役職ではないが、歴史的には、ワシントンにおいて大統領職に次いで2番目に強力な役割とされてきた。ホワイトハウスの他の立場と同様、人事承認を必要としない。

●スティーヴン・ミラー(Stephen Miller
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スティーヴン・ミラーとドナルド・トランプ
スティーヴン・ミラーはトランプ大統領の最初の任期を通じて上級顧問(senior advisor)を務めており、再び同様の立場でホワイトハウスに加わることが予想されている。

ミラーは家族離散(family separation)やイスラム教徒が多数派の数カ国からのアメリカへの渡航禁止命令(order to ban travel)など、トランプ大統領の1期目の移民政策の立案者だった。

複数の関係者によると、トランプ次期大統領が大量国外追放(mass deportations)の実行、一部集団の保護ステータスの縮小、国内への移民の流入(flow of migrants)を厳しく制限するという公約を実行しようとする中、スティーヴン・ミラーは重要な役割を担うことになるということだ。

おそらくスティーヴン・ミラーは連邦上院の人事承認を必要としない役職になるだろう。

●マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)(Sen. Marco Rubio (R-Fla.)
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ドナルド・トランプとマルコ・ルビオ

複数の関係者によると、国務長官にはマルコ・ルビオが候補に挙がっている。

ルビオは連邦上院外交委員会の委員を務め、連邦上院情報委員会の共和党側トップ委員を務めた。ルビオはトランプ大統領の副大統領候補の最終候補者であり、トランプの支持層の中にはルビオ連邦上院議員を懐疑的に見る人もいるかもしれないが、連邦上院議員の同僚たちからの人事承認を得るのに何の問題もないだろう。

●ノースダコタ州知事ダグ・バーガム(North Dakota Gov. Doug Burgum
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ダグ・バーガムとドナルド・トランプ
トランプ大統領は、ノースダコタ州知事のダグ・バーガムをエネルギー省長官に選ぶと伝えたと言われている。

トランプ大統領は以前、集会参加者たちに対し、バーガム知事は「おそらく私が知っている誰よりもエネルギーについて詳しい」と語った。トランプ大統領がバーガムに電話して知事を副大統領候補に選ばないことを伝えたとき、前大統領は電話で「長官閣下」と挨拶した。

●ビル・ハガティ連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)(Sen. Bill Hagerty (R-Tenn.)
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ビル・ハガティとドナルド・トランプ

ビル・ハガティはトランプ政権一期目に駐日大使を務め、連邦上院から政権に抜擢される可能性が高いと見られている。

ハガティは、国務省、財務省、商務省を率いるトップに抜擢される可能性もある。

大使や連邦上院議員を歴任する前は、ジョージ・W・ブッシュ・ホワイトハウスで経済アドヴァイザーを務め、その後テネシー州の経済高官(テネシー州経済地域開発庁長官)を務めた。

●ロバート・オブライエン(Robert O’Brien
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ロバート・オブライエンとドナルド・トランプ
ロバート・オブライエンは、トランプ大統領の国家安全保障ティームの一員として、国務省を率いる、あるいは別の上級職を担う有力候補と目されている。

彼は以前、トランプ大統領の人質問題担当特使を務め、その後、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。

●マイク・ウォルツ連邦下院議員(フロリダ州、共和党)‘Rep. Mike Waltz (R-Fla.)
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マイク・ウォルツは陸軍の退役軍人で、トランプ政権で働くことの希望を明らかにしてきた。

彼は国務長官に指名されるか、退役軍人省をリードする役割を与えられるかの可能性を持っている。

●リチャード・グレネル(Richard Grenell
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リチャード・グレネル
リチャード・グレネルはトランプ大統領の盟友で、以前は駐ドイツ米大使や情報長官代理を務めていた。複数の情報提供者によれば、彼は国務省を率いる可能性があるという。関係者によると、グレネルは国務省を率いる可能性があるとされており、今回はより大きな仕事に就く準備が整っている可能性がある。

グレネルはウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領との最近の会談でトランプと一緒に出席し、選挙活動でも積極的に存在感を示した。

●ジョン・ポウルソン(John Paulson
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ドナルド・トランプとジョン・ポウルソン

ジョン・ポウルソンが財務長官候補に挙がっていると報じられている。ポウルソンはヘッジファンド・マネージャーで、トランプ大統領の3回のホワイトハウス選挙キャンペーンにそれぞれ献金している。

この役職は政権におけるトップの経済職であり、内閣の一部である。スティーブン・ムニューチンはトランプ第一次政権で財務長官を務めた。

●エリック・シュミット連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)(Sen. Eric Schmitt (R-Mo.)
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ドナルド・トランプとエリック・シュミット

エリック・シュミット氏はトランプと盟友たちから人気があり、司法長官に選ばれる可能性がある。

ミズーリ州司法長官を務めたシュミットは、6月のバイデン大統領との対決に先立ってトランプ氏の討論準備を支援した。

司法長官(attorney general)は司法省を率いており、過去4年間にわたってトランプ大統領の捜査を司法省が行ってきた。トランプ大統領は、忠誠心を司法長官にとって最も重要な資質だと考えているようだ。

トランプは一期目で最初の司法長官となったジェフ・セッションズ元連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)と早々に対立するようになった。セッションズが2016年の選挙へのロシア介入未遂事件の捜査から身を引いた後、対立するようになった。

トランプ大統領最後の司法長官ウィリアム・バーも、2020年の選挙で広範な選挙不正の証拠がなかったとして、トランプ大統領を苛立たせた。

●注目すべき他の名前(Other names to watch

他にも、関心やどのようなポジションに就くことができるかに応じて、トランプ大統領のホワイトハウスや政権の職に就く可能性のある名前がたくさんある。

あるトランプ支持者は、トランプ陣営の政治運営を監督していたジェイムズ・ブレア(James Blair)が希望すればホワイトハウスの職に就く可能性があり、陣営の広報担当スティーヴン・チャン(Steven Cheung)は最終的に広報担当に就く可能性があると語った。第一次トランプ政権で報道局に勤務し、退任後もティームの一員だったマーゴ・マーティン(Margo Martin)は、二期目でその役割を担うことが期待されている。
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ジェイムズ・ブレア
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スティーヴン・チャン
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ドナルド・トランプとマーゴ・マーティン
トランプ大統領との間で歩み寄ったり離れたりの関係を築いてきたトーマス・マッシー(Thomas Massie)連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、次期政権で農業に関する役割を受け入れる「準備ができており、喜んで」いると述べた。
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トーマス・マッシーとドナルド・トランプ
元民主党大統領候補で、トランプ支持者となったトゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)にも、政権のポストとして検討される可能性がある。エリス・ステファニック(Elise Stefanik)連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)もその可能性があり、「パンチボール・ニューズ」は、ステファニックが国連大使の候補に挙がっていると報じている。
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トゥルシー・ギャバ―ドとドナルド・トランプ
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エリス・ステファニックとドナルド・トランプ

ブルック・ロリンズ(Brook Rollins)は、トランプの1期目に国内政策責任者を務めたこともあり、影響力のあるアメリカ・ファースト政策研究所を率いており、ホワイトハウスの上級職に就く可能性のある人物の1人だ。
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ドナルド・トランプとブルック・ロリンズ
ホワイトハウスの仕事に就く名前として挙がらないのはドナルド・トランプ・ジュニアの名前だ。この件に詳しい情報提供者が本誌に語ったところによると、次期大統領の長男は政権入りに関心がないということだ。

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●「焦点:トランプ氏を支えるキープレーヤーたち、陣営新幹部は表舞台に出ず」

By Alexandra Ulmer, Nathan Layne, Steve Holland

202425日午後 6:26 GMT+99ヶ月前更新

https://jp.reuters.com/world/us/4XPT26HEP5JLNM7U6NP366RHRQ-2024-02-05/

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 レーガン元大統領の選挙陣営で働いたベテラン選挙参謀。中東で負傷した元海兵隊員。総合格闘技UFCの広報担当者。ソーシャルメディア対策を仕切る元キャディー。これがドナルド・トランプ陣営の主力だ。写真はアイオワ州デモインで、トランプ氏の後ろに立つ側近ら。1月15日撮影(2024年 ロイター/Brian Snyder

[1日 ロイター] - レーガン元大統領の選挙陣営で働いたベテラン選挙参謀。中東で負傷した元海兵隊員。総合格闘技UFCの広報担当者。ソーシャルメディア対策を仕切る元キャディー。これがドナルド・トランプ陣営の主力だ。

緊密で統制の取れた側近としてホワイトハウス奪還をめざす前大統領の周囲を固めるのは、こうした少数の特色ある顔ぶれだ。現・元官僚や献金者、ストラテジストを含め、トランプ陣営に近い十数人へのインタビューから明らかになった。

取材に応じた人々によれば、トランプ陣営の中枢は6人ほどの側近で固められている。ボスであるトランプ氏に揺るがぬ忠誠を捧げ、ほぼ黒子役に徹している。勝手放題のアドバイザーたちが内紛やメディアへのリーク、解任騒ぎを繰り返していた過去のトランプ陣営とは好対照だ。

トランプ陣営の共同選対本部長を務めるクリス・ラシビータ氏(57)は、「戦場に一緒に行くなら、信頼できる人間でなければ」と語る。元海兵隊員で1991年の湾岸戦争で負傷し、政治コンサルタントに転じた。 
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クリス・ラシビータ

「指揮系統はきわめて明確だ」とラシビータ氏。「そのトップにあの人がいる」

あまり表に出てこないラシビータ氏と、ともに選挙運動を仕切るスージー・ワイルズ氏の姿を人々が目にしたのは、トランプ氏が1月、アイオワ州の共和党党員集会で51%の支持を得て勝利し、ステージに上がって勝利宣言を行った時だった。
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ドナルド・トランプとスージー・ワイルズ
トランプ氏の背後には、赤いブレザーを着てステージの端に立ち、身体の前で両手を重ねるワイルズ氏の姿があった。さらにその後ろには、ラシビータ氏のつるっとした頭も見えた。

トランプ氏は2人の方を向いて、「彼らは何の称賛も求めていない。ただ勝利をめざし、米国を再び偉大にしたいと願っているだけだ」と語った。「何か話すことや写真に映ることは望んでいない。ただ任務を果たしたい、それだけだ」

2人の経験豊富な選挙参謀とその周囲の小規模なチームのおかげで、トランプ氏は共和党の大統領候補指名レースで大きなリードを築いている。大物の支持を獲得し、各州の共和党に働きかけて有利なルール変更を実現し、ライバルへの口撃を絶やさず、複数の刑事訴訟を逆手に取り巧みな選挙戦略を企て、イベントには赤い帽子をかぶった支持者が詰めかけるように準備する。

2016年大統領選挙でトランプ陣営の選対本部長を務め、今もトランプ氏と親密なコーリー・ルワンドウスキー氏は、あるインタビューの中で、「たいていの人はスージー・ワイルズとは誰なのか、クリス・ラシビータとは何者なのかを知らない。それは悪いことではない」と語る。
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コーリー・ルワンドウスキー

「2人は毎日任務を果たしている。飛行機の機体に書かれている名前は1つだけ、『ドナルド・トランプ』だ。トランプ氏はこのやり方が気に入っている」

トランプ陣営のここまでの成功を見ると、11月に直接対決する可能性の高い民主党のジョー・バイデン現大統領にとっては、4年前に比べてはるかに厳しい戦いになりそうだ。

共和党で長年コンサルタントを務め、大統領選挙や上院議員選挙にも関与するスコット・リード氏は、「バイデン氏は今回、俊英ぞろいのトランプ陣営と対峙(たいじ)することになる」と語る。「腰巾着の類いはほとんど追い出された」

だが、参謀がどれほど優秀であろうと、成功・失敗の双方を決定づけるのはトランプ氏自身だというのが一般的な見解だ。本番の選挙の成否を決定づける穏健派・無党派の有権者を離反させてしまいそうな、シナリオから外れた失言も多い。

トランプ氏は、米国史上最大規模の移民送還措置、「腐敗している」と決めつける国家安全保障当局者の更迭、政敵の「一掃」など、分断を深める計画を口にするが、新たな側近たちがこれを抑止しようとする兆候は表面化していない。

バイデン陣営の広報担当、アマール・ムーサ氏は、より統制のとれたトランプ陣営と対決する見通しについて聞かれると、選挙陣営がどうであれトランプ氏を打ち負かすと述べた。バイデン氏は、トランプ氏が米国の民主主義に対する脅威だと非難している。

ムーサ氏は「トランプ氏が大統領執務室に戻ることがいかに危険かを、有権者は認識しつつある」と語った。

<格闘技とゴルフ>

2024年版のトランプ陣営は、2020年にバイデン現大統領と対決したときに比べて規模を縮小している、当時は多くの有力者がトランプ氏に意見を伝えていた。当時のトランプ陣営ではブラッド・パースケール選対本部長が10部門からなる構造を指揮していたが、トランプ氏の息子であるドナルド・ジュニア氏やエリック氏、娘のイバンカ氏、娘婿のクシュナー氏、共和党全国委員会のロナ・マクダニエル氏など、口を出す人物は他にもたくさんいた。

こうした顔ぶれに加えて、ホワイトハウスの大規模な組織があった。マーク・メドウズ大統領首席補佐官、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問、マイク・ペンス副大統領、その他多くの人々だ。

だが今回のトランプ候補の選挙運動は、ワイルズ氏に依存する部分が大きい。同氏は1980年にレーガン氏の選挙運動に携わり、2016年、2020年には上級顧問としてトランプ氏のフロリダ州での勝利に貢献した。

実情を知る選挙陣営関係者によれば、ワイルズ氏は活動予算から移動の予定に至るまで、あらゆることに目配りしているという。この関係者は、取材に応じた他の多くの人々と同様、自由に話すために匿名を希望している。

ワイルズ氏はもう1つ重要な手土産をトランプ陣営にもたらした。当初トランプ氏の主なライバルであったロン・デサンティス候補をよく知っていたからだ。

ワイルズ氏は、2018年フロリダ州知事選におけるデサンティス氏の勝利に貢献したが、その後、関係が悪化して同氏と決別した。トランプ陣営の戦略を知る複数の情報提供者によれば、ワイルズ氏が加入したことで、デサンティス氏が出馬を表明する前から、トランプ陣営では早々に同氏の弱点を見極めることができたという。

両者を知る人々はラシビータ氏とワイルズ氏の性格は異なると語るが、ロイターが取材した選挙戦の様相からもそれはうかがわれる。ラシビータ氏は社交的で記者団とのおしゃべりが好きだが、ワイルズ氏は物静かで、たまにジャーナリストと顔を合わせるときでも、手短な回答に終始するのが普通だ。

トランプ陣営の内部の動きに詳しい別の情報提供者によれば、2人は常に連名でトランプ候補に進言しているという。

一方、メディア戦略を担当するのは選対ストラテジストを務めるジェイソン・ミラー氏と、スティーブン・チュン氏。チュン氏は、ケージファイト形式の総合格闘技アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)の広報担当チーフという経歴を持つ。
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ジェイソン・ミラー
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スティーブン・チュン

やはり側近として名を連ねるのが、トランプ政権下のホワイトハウスで政務局長を務めたブライアン・ジャック氏だ。他の政治家に対する働きかけを取り仕切り、支持を確保する役割だ。またソーシャルメディア対応はダン・スカビノ氏が担当する。
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ブライアン・ジャック
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ダン・スカビノ

スカビノ氏は、トランプ氏にとって最古参の側近の1人だ。その縁は、不動産業界の大物だったトランプ氏のゴルフにキャディーとして付き添った1990年代にさかのぼる。3回の大統領選挙全て、そしてホワイトハウスでの4年間、トランプ氏の脇を固めた。

ラシビータ氏はロイターの取材に対し、トランプ氏は多種多様な人々にアドバイスを求める習慣があるが、それを止めようとはしていない、と語った。

アイオワ州でのトランプ支持者の集会の舞台裏で、ラシビータ氏は「ただし構造として見れば、私たちのグループは密にまとまっている」と語った。

またこれとは別に、ラシビータ氏は昨年8月のインタビューでトランプ陣営の戦闘的な姿勢に触れている。「アグレッシブなキャンペーンを張ることは私たちにとっては簡単なことだ。候補者が気にせずに任せてくれる場合には、非常にアグレッシブになる」

トランプ氏の息子であるドナルド・ジュニア氏、エリック氏は、2024年の選挙運動にも積極的に参加しており、アイオワ州とニューハンプシャー州の党員集会では現地でかなりの時間を過ごし、父親のために頻繁にテレビに出演した。

<パームビーチで朝のミーティング>

35人前後のトランプ陣営スタッフは、フロリダ州パームビーチにある、トランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」に近い地味なビルを拠点として活動している。同陣営の動きを知る選対関係者の1人が明らかにした。

同じ選対関係者によれば、ワイルズ、ラシビータ氏などのメンバーで構成される選対中枢は、毎朝9時からのミーティングで始動し、計画を立て、問題を精査する。重要なのは、情報漏えいや内紛を防ぐために、全員の意見をよく聞くことだ。

この選対関係者は、「全員が納得するまでは解散しないという点にこだわっている」と語る。

その後、何か面倒な案件をトランプ氏に伝えに行くのは、ふだんはワイルズ氏の役目だ。ワイルズ氏は通常は週に複数回トランプ氏との打ち合わせをしている。

トランプ前大統領の陣営に近い6人の関係者によれば、こうした側近たちを取り巻く顔ぶれとして、トランプ政権下のホワイトハウスで働き、今も主要スピーチライターを務めているロス・ワーシントン氏とビンス・ヘイリー氏がいる。
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ビンス・ヘイリー

トランプ氏の演説はここ数週間、厳しい視線にさらされている。同氏が支持者に対し「我が国の血は移民によって汚されている」と述べ、政敵を「寄生虫」と表現したことで、ナチスの言説を思い起こさせる排外主義的な発言として批判を浴びているからだ。

こうしたコメントが、ワーシントン、ヘイリー両氏に由来するのか、トランプ氏のアドリブによるものかは不明だ。12月6日のニューハンプシャーでの演説に先立ってメディアに配布された予定稿には「血を汚す」という表現は見当たらない。ワイルズ氏などの側近は、メールや声明などでその点を説明する努力をしていない。

チュン氏は、トランプ前大統領の発言に対する批判を「的外れだ」と切り捨て、同様の言葉は書籍やニュース記事、テレビでも広く見られるとしている。ロイターではヘイリー、ワーシントン氏にコメントを求めようとしたが、連絡は取れなかった。

また、トランプ氏のための政策提言を誰が作成しているのか、正確に把握することも困難だ。

2人の情報提供者によれば、ホワイトハウスの元上級顧問で強硬な反移民政策を掲げるスティーブン・ミラー氏が、対メキシコ国境に関する政策提言の主役だという。また、かつてのトランプ選対本部長だったルワンドウスキー氏の話では、国家安全保障分野の顧問を務めるのは、トランプ政権時代の国家安全保障会議(NSC)で事務局長を務めたキース・ケロッグ元陸軍中将だ。
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ドナルド・トランプとキース・ケロッグ

ミラー、ケロッグ両氏はコメントを控えるとしている。

チュン氏は、「(トランプ氏は)適任と見られる多くの個人、さまざまな分野の専門家と話をしている」と語るが、詳細については触れなかった。

複数の内部関係者は、トランプ氏の子どもたちは実際にはあまり口をはさんでおらず、複数の派閥が競い合う状況は生まれていない、と語る。

とはいえ、アイオワ州での勝利宣言の際に、ステージ上でトランプ氏に寄り添っていたのは年長の息子2人であり、ワイルズ、ラシビータ両氏はカメラに映らない場所に控えていた。

(翻訳:エァクレーレン)
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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ジミー・カーター元大統領(在任:1977-1981年)が100歳を迎えた。米大統領経験者としては最も長寿となった。カーターの名前を聞いて懐かしいと思えるのはもう50代から上くらいだろう。話が脱線して申し訳ないが、落語家の初代林家三平師は「肩をもんでいる(カーター大統領、ウォルター・モンデール副大統領)」という洒落を作って寄席を沸かせた。それももう50年近くも前のことだ。
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 カーターは幻影期の大統領の頃の評価は最悪だった。アメリカの経済状態は悪く、対外的にはイランでイスラム革命が起き、アメリカ大使館で人質事件が起きた。人質奪還作戦を国家安全保障問題担当大統領補佐官だったズビグニュー・ブレジンスキーが提言し、反対するサイラス・ヴァンス国務長官の意見は退けられ、作戦は実行され失敗した。この作戦実行までの過程は外交政策分析のケーススタディでよく使われる。
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 こうした厳しい状況で、カーターは再選を目指したが、大統領選挙で共和党のロナルド・レーガンに惨敗した。史上最低の大統領という烙印を押されてホワイトハウスを去った。しかし、その後の活動で、彼は「最も偉大な元大統領」という評価を得て、更に、現役時代の業績の再評価も進んでいる。カーターはビル・クリントン政権下で、朝鮮半島情勢が緊迫化し、アメリカによる空爆が起きるかという瀬戸際の情勢で、北朝鮮を訪問し、当時の北朝鮮の最高指導者である金日成国家主席と会談を行い、空爆を回避した。また、これ以外にもアメリカの特使を務めることが多かった。
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 カーター政権はイスラエルをめぐる情勢で一定の成果を出した。それがキャンプ・デイヴィッド会談とイスラエル・エジプトの平和協定である。カーター政権以降で、カーター政権以上に成果を出した政権はない。一方で、カーターはイスラエルの対パレスティナ政策を厳しく批判し、アパルトヘイトにならないようにすべきだと警告を発した、結果として、イスラエルは彼の警告を受け入れず、現状を迎えている。カーターの先見の明が如何に正しかったが明らかになった。

 カーター以降の歴代の大統領経験者で彼ほど退任後に精力的に活動した人はいなかった。大統領という激務を退いたのだから、遊んでいても誰も文句を言わないが、カーターと比べると、私利私欲に走ったり、趣味に没頭したりでは見劣りするのは事実だ。カーターの偉大さを私たちは改めて顕彰し、アメリカの政権はその抑制的かつ理性的な政策遂行から学ばねばならない。

(貼り付けはじめ)

アメリカで最も過小評価されている大統領の誕生日を祝う(Happy Birthday to America’s Most Underrated President

-100歳の誕生日にジミー・カーターの外交政策を称賛する

スティーヴン・M・ウォルト筆Stephen M. Walt

2024年10月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/01/jimmy-carter-100th-birthday-foreign-policy-president/

写真

1980年10月2日、前日に56歳の誕生日を迎えた直後、フィラデルフィアでの選挙資金集め活動中にバースデーケーキを賞賛するジミー・カーター大統領

今日、第39代米大統領のジミー・カーターが100歳の誕生日を迎える。彼はれきだい米大統領で唯一、この記念すべき年齢に達する。彼の100歳の誕生日は、彼の大統領時代と外交政策への対応を振り返るにふさわしい瞬間となる。研究すればするほど、特に彼の歴代大統領の多くと比較した場合、それはより良く見える。

1期限りで退任した大統領にほとんどと同じく、カーターも1980年に複雑な評価を受けて退任した。彼は、低成長と消費者物価の高騰というスタグフレーションの時代に大統領になるという不運に見舞われた。この状況は、共和党のロナルド・レーガン候補に有名な質問を投げかけることを可能にした。それは「4年前より今の方が裕福ですか?(Are you better off today than you were four years ago?)」というものだ。

しかし、カーターは外交政策でもほとんど称賛を得られなかった。イラン革命、それに続く人質事件と救出作戦の失敗、そしてソ連のアフガニスタン侵攻が重なり、カーターはアメリカの敵対勢力の暴走を許した弱腰の指導者(weak leader who had allowed the United States’ adversaries to run amok)だと多くの人が見なした。1979年のニカラグアのサンディニスタによる政権奪取を加えると、この弱さの肖像は完成したように考えられる。

こうした評価は不正確で不公平だ。イランに関して言えば、革命は本質的に予測不可能で混沌とした出来事であり、外部の権力がそれをうまく扱えるようなことはめったにない。俗説に反して(contrary to popular mythology)、イランの国王が倒れたのは、カーターが彼を見捨てたからでも、彼の人権侵害を批判したからでもない。イラン国王が力を失ったのは、イラン国民との接触を失い、公表されていない(そして最終的には致命的な)ガンに苦しんでいたからだ。アメリカはイランの新しい支配者と問題を抱えることになったが、カーターがヘンリー・キッシンジャーやデイヴィッド・ロックフェラーたちの圧力に屈し、瀕死の国王を治療のためにアメリカに入国させた後に人質事件が起きた。それは間違いだったが、著名な外交政策専門家の多くがそれを手助けした。また、カーターの忍耐強い外交が最終的に全ての人質を無事に帰国させたことを忘れてはならない。現在の世界の指導者たちにとって、この教訓に留意するのが賢明ということになる。

更に重要なことは、カーターがある種のお人好しで世間知らずのリベラル派だったという非難はナンセンスだということだ。メリーランド州アナポリスにある海軍兵学校を卒業し、元海軍将校(1975年以降に軍に勤務したアメリカ大統領は、彼とジョージ・HW・ブッシュだけだ)であるカーターは、原則的な外交政策と結びついた強力な防衛の重要性(the importance of a strong defense wedded to a principled foreign policy)を理解していた。

カーターの元側近のスチュアート・E・エイゼンシュタットが昨年『フォーリン・アフェアーズ』誌で指摘したように、「レーガン政権が配備した主要兵器システムのほとんどは、実はカーターが承認したものだった。彼はまた、ソ連の介入を抑止し、ペルシャ湾石油へのアクセスを守るために急速展開軍(Rapid Deployment Force)を創設し、アフガニスタンの対ソ連のレジスタンスやニカラグアの反政府勢力サンダニスタへの秘密援助(covert aid)を許可した。結論としては、「カーターは鳩(dove)ではなかった」ということになる。

カーターの積極的な業績は、当時よりも今日の方が印象深くなる。強硬派(hard-liners)からは、人権を強調する彼の姿勢はナイーブで非現実的だと批判された(私も大学院時代にそう考えた記憶がある)が、彼は重要なことを掴んでいた。人権を強調することは、アメリカの評判を高める必要があった時期に、アメリカの「ソフトパワー(soft power)」を高めた。西ドイツの元政府高官フリードベルト・プフリューガーは後に次のように書いている。「カーターの下で、アメリカはもはやヴェトナム、ウォーターゲート、CIAと同一視されることはなく、西半球の自由と再び同一視されるようになった」。

カーターは、チェコの憲章77運動やヘルシンキ協定、アンドレイ・サハロフのようなソ連の反体制派を公然と積極的に支持し、ワルシャワ条約機構内の変化を求める圧力を強めた。エイゼンシュタットが述べたように、アナトリー・ドブリニン元駐米ソ連大使は後に、カーターの政策は「ソ連内部の自由化(liberalization inside the Soviet Union)という長く困難なプロセスにおいて重要な役割を果たした」と述べている。

カーターはまた、ソ連とアメリカの戦略兵器に更なる制限を設けたSALT II条約の交渉でも称賛に値する。この条約は米連邦上院で批准されることはなかったが、その後何年もの間、米ソ両大国は自主的にその制限を遵守した。カーターはまた、ブラジルとアルゼンチンに対し、それぞれ数年後に究極的な選択となった核開発計画の放棄を迫り、核不拡散体制(nonproliferation regime)を強化した。

カーターの外交政策上の主要な功績は、もちろんエジプトとイスラエル間の和平プロセスの管理である。彼の熱心かつ個人的な交渉への関与は、1978年に画期的なキャンプ・デイヴィッド合意を生み出し、翌年の画期的なエジプト・イスラエル和平条約へとつながった。アメリカの中東担当交渉官アーロン・デビッド・ミラーが後に次のように回想している。 「アメリカ人、エジプト人、イスラエル人の誰と話しても、ほとんどの人が同じことを言った」カーターがいなければ、平和条約はなかった(no Carter, no peace treaty)」。

カーターは「親イスラエル(pro-Israel)」としては不十分だと批判されることが多いが、イスラエルのシュロモ・ベン=アミ元外相は彼の貢献をより明確に見ている。アラブ・イスラエル和平への道筋に意味のある突破口を開くことができた」のはカーターだった、と彼は書いている。なぜか? それは、カーターが「イスラエルと正面から向き合い、アメリカの友人たちの感覚を見過ごす用意があったから(ready to confront Israel head on and overlook the sensibilities of her friends in America)」である。

エジプトを反イスラエル陣営から排除することで、カーターはイスラエルの安全保障のために、後にも先にもどの大統領よりも多くのことを行った。2006年の著書『パレスティナ:アパルトヘイトではなく平和を』の中で、カーターは、イスラエルは厳しい選択に直面していると警告を発した。それは、パレスティナ人に独自の国家を与えるか、アパルトヘイト政権として終わらせるかということだ。この警告は予言的なメッセージであり、今日私たちは、イスラエルがカーターの警告に耳を傾けなかったことによる、暗く悲劇的な結果を目の当たりにしている。

更に言えば、レーガンの後継者たちがどうなったかを考えてみよう。レーガンは1982年にイスラエルによるレバノン侵攻を支持し、これがヒズボラの誕生につながった。ジョージ・HW・ブッシュは、第一次湾岸戦争でクウェートを解放した連合軍を率い、1991年のマドリッド和平会議を招集した。ビル・クリントンは、1993年のオスロ合意の成立に貢献したが、その後の永続的な和平解決への仲介努力は何も成し遂げず、ペルシャ湾における誤った二重封じ込め政策(policy of dual containment in the Persian Gulf)はアルカイダに大きな刺激を与え、9月11日のテロ攻撃の下地を作ることになった。ジョージ・W・ブッシュは2003年にイラク侵攻を決断し、地域全体に混乱を広げ、イランの影響力を増大させた。バラク・オバマは、二国家による解決(two-state solution)が「イスラエルの利益、パレスティナの利益、アメリカの利益、そして世界の利益」につながることを理解していたが、イスラエル・ロビーに対抗することを拒否したため、その努力は最初から失敗に終わった。ドナルド・トランプと外交の素人であるジャレッド・クシュナーはパレスティナ人を退け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に白紙委任状(carte blanche)を与え、知らず知らずのうちに、2023年10月7に戸のハマスによる劇的な攻撃を計画する新たな理由を与えてしまった。

このパターンは見逃せない。つまり、カーターは大統領職の最後に中東をより良い状態にしたが、彼の後継者のうち1人を除いては、全てが事態を悪化させた。そして、ジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は現在、そのハードルをさらに低く設定している。大量虐殺を支持し、イスラエルの孤立を更に助長し、彼らが守ると主張するいわゆるルールに基づく秩序(rules-based order)をずたずたにし、世界中でアメリカのイメージを悪化させている。

カーター(あるいは父ブッシュ)がバイデンやブリンケンと同じように行動するとは考えにくい。無条件の支援はワシントンの利益にもならないし、イスラエルの長期的な利益にもならないことを彼らは認識していたであろう。彼らにはロビーからの圧力に耐えるバックボーンもあっただろうが、これは他の大統領には通常欠けていた資質だ。

最後に、退任後のカーターの行動について一言言わなければならない。彼は「アメリカで最も優れた元大統領(America’s best ex-president)」とよく評されており、そのレッテルは当然だ。オバマは引退後、ゴルフに取り組んでいる。子ブッシュは絵を描くことに専念した。クリントンは世界の要人たちと交流し、妻ヒラリーの政治的野心を推進しようとした。そして、トランプは、出廷、恥知らずな不当行為、そして国の民主的な秩序を破壊しようとすることに時間を割いてきた。

それに比べ、ジミー・カーターは過去44年間、世界中の選挙を監視し、様々なテーマで本を書き、水を媒介とする病気の撲滅活動を支援し、紛争を調停し、人質を解放し、その他多くの素晴らしい行いに力に費やしてきた。何人かはそれに近いことをやってきたが、私が生きてきた中で、「公共奉仕(public service)」を単なる卒業式のスピーチの決まり文句ではなく、生涯の関与とした大統領経験者はいない。

大統領、誕生おめでとうございます! 1976年に私はあなたに投票しなかったが、1980年には投票した。そして、今日、あなたのような人物に投票できればどんなに良かったかと思う。そうすれば、私たちはもっとうまくやれるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント: @stephenwalt

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。
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 今回の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領に圧勝、地滑り的勝利ということになった。大きいのは、一般得票数でもトランプがハリスに勝利したことだ。2016年の選挙では、選挙人獲得数ではトランプが勝利したが、一般得票数ではヒラリー・クリントンが勝利した。2020年の選挙ではジョー・バイデンがトランプに対して、選挙人獲得数、一般得票数で勝利した。人口が多い都市部を持つ州は民主党優勢州であり、ここで民主党の候補者が圧勝するので、一般得票数が多くなるということがあった。しかし、今回は、民主党優勢州でハリスは勝つには勝ったが、ヒラリーやバイデンに比べて得票率を減らしている。トランプは共和党優勢州ではハリスに圧勝している。こうしたことがあり、ハリスは一般得票数でもトランプに敗北するということになった。
2024uspresidentialelectionresults20241107001

 やはりアメリカ国民のインフレ疲れ、生活の不安ということが原因であろう。特に低所得者層にとってこの問題は深刻だ。給与や年金が高い中間層以上には耐えられるものでも、こうした人々にとっては生きるか死ぬかの問題である。インフレ率はジョー・バイデン政権で下がってきていたが、生活者の実感としてはかなり厳しいということがある。私たちは、テレビ番組などで有名人たちがハワイに行ってラーメンが何千円もしたとか、朝食を食べるだけで1万円近くしたという話を聞いて、「なかなか海外旅行にも行けなくなったな」と嘆くばかりだが、実際にそこで生活している人たちにとっては死活問題だ。それが今回の選挙で明らかになった。

逆に言えば、トランプ政権はインフレ対策と雇用創出で思い切った施策を行わねばならない。トランプはもう次の任期は狙えないとなれば、子の大統領任期では、イングレ対策と雇用創出、更に、後継者づくりということを主眼に置くことになる。トランプの後継者となり得るのは現在のところ、JD・ヴァンス次期副大統領だ。

 今回の選挙ではラテンアメリカ諸国出身の人々、男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ばれるが、ラティーノの間でトランプへの支持が増えている。彼らにとっては、不法移民対策がもっと重要なテーマとなったようだ。彼ら自身も移民、もしくは移民の家族出身であり、本来であれば、不法移民に対して寛容であるとも思われるが、不法移民に対して否定的な選択をしたということは、不法移民に関連しての地域の治安の悪化や財政負担の問題が大きくなっているということが挙げられる。これは彼らの生活の実感である。

 民主党は人々の生活の実感に鈍感になっている。そのことが今回の選挙、大統領選挙だけではなく、連邦上院議員選挙、連邦下院議員選挙で明らかになった。これをポピュリズムだと簡単に片づけて、見ないふりをしていては民主党に未来はない。アメリカの人々は生活の実感を持って政治に怒りを持ち、このような判断を下した。民主党はこれをしっかり受け止めねばならない。

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民主党優勢州の結果はハリスと民主党にとって残酷な夜を浮き彫りにしている(Blue state results underscore brutal night for Harris, Democrats

ジュリア・ミュラー、ジャレッド・ガンズ筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977596-democrats-lose-midterms-2024/

全米の有権者は火曜日にカマラ・ハリス副大統領と民主党が主張した内容を拒否し、この結果は党による大規模な内省(soul-searching)の引き金となっている

ドナルド・トランプ次期大統領は前回勝利した州でハリスとの差を広げたが、一部の民主党の優勢州での差も縮小した。

2020年にジョー・バイデン大統領が16ポイント差で勝利したニュージャージー州では、水曜日の夜、ハリスが5ポイント弱の差でリードしていた。前回バイデンが23ポイント差で勝利したニューヨーク州では、火曜日にはハリスが約11ポイント差で勝利した。

『ワシントン・ポスト』紙の追跡調査によると、国内の約3000の郡のほとんどが火曜日に右方向(トランプ)に移動した。

世論調査専門家ネイト・シルヴァーの分析によると、ニューヨーク市の5つの行政区は全て右にシフトしており、場合によってはトランプの得票率が11ポイントも上昇した。

ハリス副大統領はシカゴ、ボストン、フィラデルフィア周辺の郡でバイデンの2020年の数字を下回った。ヒューストン周辺のテキサス州ハリス郡では、バイデンが約14ポイント差で勝利したが、ハリスはわずか5ポイント差で勝利した。

ハリスは民主党優勢州のメリーランド州で簡単に勝利したが、それでもその差は縮まって23ポイントだった。前回の選挙でバイデンはトランプに33ポイント差で勝利した。

イリノイ州は1990年代初頭以来、民主党の大統領候補は2桁の差で投票してきたが、ハリスはわずか8ポイント程度の差で勝利する見込みになっている。

トランプは多くの民主党優勢州でスコアを伸ばしただけではない。彼は共和党優勢州でもスコアを伸ばした。

トランプ氏は2020年にきわめて強力な共和党優勢州のアラバマ州で25ポイント差でバイデンに勝利したが、今回の選挙ではそのリードを30ポイント以上に広げた。

アイオワ州では、信頼性の高い世論調査でハリスが3ポイント差で驚くべき優位性を示した数日後、トランプが快勝した。最新の数字によると、トランプは約13ポイント差をつけてリードしており、アイオワ州での過去の成績を上回っている。

トランプは2016年と2020年の大統領選挙で一般得票数で敗れた。水曜日夜の時点で、トランプは2024年の一般得票数で勝利するのは確実と見られている。トランプはハリスに500万票近くの差を付けており、驚くべき逆転となった。

ハリスの困難な一夜は、民主党上院議員候補がモンタナ州とオハイオ州で苦戦して敗北し、ペンシルヴァニア州とネヴァダ州でもさらに2敗する危険があったため、投票結果に影響を及ぼした。ウィスコンシン州とミシガン州の連邦上院の他の民主党候補者2名が熾烈な競争を勝ち抜いた。

選挙翌日、民主党は敗北の原因が戦術的、戦略的決定なのか政策上の問題なのかを議論した。

民主党系のストラテジストのジョン・ライニッシュは、選挙戦の特殊な状況を考慮するとハリスは「できる限りの最善を尽くした」と主張し、再選活動から早期に撤退しなかったバイデン大統領の責任を非難した。

一方、民主党系のストラテジストのフレッド・ヒックスは、民主党がバイデン大統領を非難することに反対した。ヒックスは、新型コロナウイルス感染症時代からのインフレという逆風により、2024年に現職大統領が勝利するのは困難だっただろうと述べた。

ヒックスはまた、共和党と中道派の有権者にとって最大の2つの問題、移民とインフレに関してハリスがバイデンから距離を置くのに苦労したとも語った。 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、ブルーカラー層の有権者が大挙して民主党から離れていることを指摘し、民主党は労働者階級を見捨てたと主張した。

「最初、白人労働者階級だったが、今ではラティーノ系アメリカ人や黒人労働者もそうなっている」とサンダースは声明で述べた。彼は、「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しいのだ」と続けた。

トランプ大統領はウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州、ミシガン州の「青い壁(blue wall)」3州を全てひっくり返し、前回の選挙では全てバイデンに敗れた。

また、バイデンが2020年に勝利を収めたジョージア州を逆転し、ネヴァダ州でも勝利して激戦区の連勝記録を伸ばした。前回もバイデンが勝ったアリゾナ州では、水曜午前の時点で5ポイント弱の差で勝利していた。 

選挙前の世論調査では、多くのアメリカ人にとって経済が最重要課題であることも示されており、火曜日の投票では、バイデンよりも経済にうまく対処するというトランプ大統領の公約にほぼ同意していることが示された。

このことは、ハリスが中絶の権利と、2020年の選挙を覆すためのトランプの行動を考慮してトランプが代表していると彼女が述べた民主政治体制への脅威に焦点を当てすぎたのではないかという疑問を引き起こした。

サフォーク大学政治研究センター所長のデイヴィッド・パレオロゴスは、中絶の権利について「一部の有権者にとっては非常に重要な問題だったと思うが、全体としては第一位や第二位の問題ではなかった」と述べた。

ヒックスは、共和党がインフレと移民を攻撃していることと、民主党がこれらの問題についてより良い主張を提案できなかったことが原因だと主張した。

ヒックスは次のように語った。「この件で民主党を沈めたのはインフレと移民の双子(twins)だった。そして、トランスジェンダーの学生がスポーツに参加し、税金がそこに投じられるという社会問題を持ち出すと、それはまさにインフレのポイント全体にまで及ぶが、民主党はそうしなかった。具体的には、ハリス陣営はそれを克服できなかったようだ」。

ライニッシュによれば、民主党は広く中道派の有権者に届く適切なメッセージを磨いておらず、「ここ数年で左派がどれだけ遠くまで行ったか」に不満を抱いた民主党支持層の一部を疎外しているということだ。

共和党系ストラテジストであるジョシュア・ノボトニーは、トランプは多くの人々を惹きつける「ブランド(brand)」であり、将来的には再び選挙に出馬することはないため、共和党がこれまでに得た利益を更に拡大できるかどうかが懸念材料だと述べた。

ノボトニーは、次期副大統領のJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)が新しい共和党の「後継者(heir)」と見られるが、将来の成功への最善の道は、制限された政府と減税というより古い理想と共和党の共和党の理念、トランプ大統領時代の「ポピュリズム傾向(populism streak)」を結びつけることだと述べた。

ノボトニーは「もし彼らがそれらを変えることができていれば、昨日彼らはかなりうまくやったと思うが、私たちがそれらを変え続けることができれば、それが勝利のレシピだと思う。 それが起こるかどうかは、私たちがどのような候補者を擁立するかに大きく左右されると思う」と述べた。

民主党は今後数カ月をかけて何が問題だったのか合意することに努め、有権者が2026年の中間選挙、そして2028年に再び中間選挙に戻るべき理由について説得力のあるメッセージを打ち出すよう努めるだろう。

ヒックスは、今後は民主党が経済メッセージを洗練させ、非大卒有権者、中年有権者、男性有権者といったトランプ大統領の主要層の支持を得るべく努力する必要があると述べた。

ヒックスは「今日は次の選挙サイクルの初日だ」と語った。

=====
トランプはラティーノ系からの支持を基盤にして勝利への道を整える(Trump builds on Latino support, helping pave way to victory

ジュリア・マンチェスター、キャロライン・ヴァキル筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4977774-trump-gains-latino-voters/

ラティーノ系とヒスパニック系の有権者の間でのトランプ次期大統領のパフォーマンスは、前大統領が重要な投票層に進出したことにより、投票日の共和党にとって最も明るい材料の1つとなった。

プエルトリコやラテンアメリカ出身者について人種差別的なジョークを飛ばすコメディアンをフィーチャーした集会でトランプが受けた反発にもかかわらず、トランプ前大統領はこうした人々の間で支持を拡大しているようだ。トランプはプエルトリコ人が多く住むフロリダ州中部のオセオラ郡を僅差で1ポイント以上の差をつけて逆転した。これに対し、2020年にジョー・バイデン大統領が14ポイント近くの差をつけてオセオラ郡で勝利し、2016年にはヒラリー・クリントン元国務長官が25ポイント近くの差をつけて勝利した。

アリゾナ州全体ではヒスパニック系人口が目立つユマ郡とサンタクルーズ郡でトランプ元大統領が2020年の成績を上回っているように見えたが、州内での票数はまだ集計中だ。

CNNの出口調査によると、ハリス副大統領がラティーノ系有権者の間でトランプに52%対46%で勝利しており、このグループ内でトランプを上回ったが、差は一桁となった。2020年の得票率はバイデンが65%だったが、トランプは32%だった。

今回の選挙で最も注目に値するのは、トランプがラティーノ系男性でハリスに12ポイント差をつけて勝利したことだ。これは、バイデンが23ポイント差で同グループの支持を集めた2020年以来、驚異的な35ポイントの差となった。そしてハリスはラティーナ系女性の間で大差で勝利し、トランプを22ポイント上回ったが、わずか4年前には、バイデンが獲得した39ポイントの差と比べると、歴然とした違いがある。

トランプ陣営の上級顧問ダニエル・アルヴァレスは次のように語った。「ドナルド・J・トランプ大統領がヒスパニック系有権者から歴史的な支持を得たのは、コストの削減、経済の回復、アメリカの繁栄の回復、国境の確保、国内外の安全など、私たちのコミュニティにとって最も重要な問題について決して揺るぎなかったからだ。トランプ大統領が勝利演説で述べたように、今こそ仕事に取り掛かり、アメリカ国民のために奉仕すべき時だ」。

ラティーノ系有権者の一部が共和党に傾きつつあるという警告の兆候は、民主党にとって長年にわたって明らかであった。2022年、共和党はフロリダ州の投票圏、特にキューバ人やプエルトリコ人コミュニティで実績を上げた。ロン・デサンティス知事(共和党)は、キューバ系アメリカ人の68%、プエルトリコ人の56%を含むフロリダ州のラティーノ系投票の58%を獲得した。

そして、2024年の選挙に向けた世論調査では、トランプはラテン系有権者の間で、特に若いラティーノ系男性の間で有望な兆しを見せていた。

ラティーノの投票行動や傾向を専門とする共和党のストラテジストであるマイク・マドリッドは、「孤立した若いラティーノ男性により浸透しているが特に注目だ」と述べている。

マドリッドは「若いヒスパニック系男性だけでは、オセオラ郡はひっくり返せない」と述べた。

マドリッドは、ラティーノ系有権者の大きな変化は、「より長期的な、世代的な軌跡(longer-term, generational trajectory)」の一部であると主張する。

マドリッドは「非白人で労働者階級のポピュリスト的な有権者という新しいタイプの有権者が出現している」と述べた。

共和党は、このスイングは経済や移民などの問題で共和党に向かう動きであると同時に、民主党の政策に対する拒絶だと主張している。

ある共和党系ストラテジストは「例えば、テキサス州南部に行って、それらのコミュニティに入ってみると、実際、不法移民の流入については長年の懸念があった。なぜなら、不法移民が実際に彼らのコミュニティに流入するからである」と述べ、ラティーノ系住民が、学校選択や中絶などの問題について右派への傾斜の兆しを見せていると付け加えた。

3月に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ在住のヒスパニック系住民の75%が南部国境を越える移民数の増加を「大きな問題または危機(major problem or crisis)」と述べ、74%が政府の対処に対して批判的だと答えた。またこの世論調査では、51%が南部国境への対処が大統領と連邦議会にとって最優先事項であるべきだと答えていることも明らかになった。

前述のストラテジストは、「この傾向は以前から存在しており、共和党にとってありがたいことに、民主党はそれを認識できず、歴史を通じてその価値を評価することができず、率直に言って、彼らは党内のほとんどの少数派を同じように扱ってきた。彼らはテキサス州やアリゾナ州のヒスパニック系有権者を黒人有権者の穴埋め要員として扱った」と述べた。

このストラテジストは「それは連合ではない。それは怠惰であり、人々が自分たちを支持して当然なんだと見なしている」と続けて述べた。

アリゾナ州民主党の元幹事長DJ・クインランは、それはさらに単純であると示唆している。ラティーノ系とヒスパニック系の有権者たちは、他の主要な投票ブロックと同じ傾向の影響を受けている。

クインランは次のように説明した。「ドナルド・トランプ勝利の物語を、より多くのラティーノ系アメリカ人が彼に投票するという物語として伝えることに焦点を当て、起きている全体的な広範な社会的傾向に目を向けないのは大きな間違いだ。全体的に広範な動きがあったが、それは何よりも誤った情報と経済的不安によって主に動かされていると私は言いたい」。

クインランは「私自身もラティーノ系アメリカ人として、トランプ政権が傾いていると思われる多くの政策、つまり、特に医療費負担適正化法の廃止や、明らかに大量国外追放などの政策によって、ラティーノ系アメリカ人が不釣り合いなほどの深刻な影響を受けるのではないかと心配している」と語った。

コメディアンのトニー・ヒンチクリフがプエルトリコを「ゴミの浮島(floating island of garbage)」と呼び、ラティーノ系アメリカ人について下品なジョークを飛ばした先月下旬、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの大規模な集会の後、トランプ大統領のラティーノ系コミュニティに対する立場は不安定になったと多くの人が信じていた。リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を含む共和党員たちは、この発言をすぐに非難したが、トランプと選挙陣営はヒンチクリフから距離を置いた。

ハリス陣営はこの論争を利用して、既に進行していたラティーノ系有権者への働きかけを強化した。しかし最終的には、この論争はこの有権者グループに大きな影響を与えなかったようだ。

トランプ前大統領への大口献金者であるダン・エバーハートは、「全国的に見て、ラティーノ系有権者に起こったことは驚きだと思う。これはアメリカ政治のパラダイムシフトであり、潜在的には今回の選挙よりも大きな変化だと思う」と述べた。

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 古村治彦です。
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 アメリカ大統領選挙が終わり、共和党のドナルド・トランプ前大統領の当選、民主党のカマラ・ハリス副大統領の落選の理由について様々な報道が出ている。CNNは出口調査の結果を2016年、2020年、2024年と比較して分析する記事を出している。
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 この記事によると、中南米出身の人々(男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ぶ)はトランプ支持が増えており、男性ではトランプ支持が過半数となったということだ。マイノリティは民主党支持というのがこれまでの常識であったが、ラティーノ男性のトランプ支持の理由の詳細な分析がこれから待たれるところだ。

 大学の学位の有無と居住地域の差は大きい。大学の学位を持っている人たちはハリス支持(民主党支持)、持っていない人たちはトランプ支持(共和党支持)であり、居住地域では地方部はトランプ支持、都市部はハリス支持、郊外地域は激戦という構図になっている。大学の学位を持っている人たちの収入が比較総体的に高いことを考えると、所得た高ければハリス支持、低ければトランプ支持となることが容易に推定される。アメリカの分断は大きくなる一方だ。これは日本にとって対岸の火事ではない。日本でも格差社会から分断へと進みつつあるように思われる。

 人々は経済問題を最大のテーマと考えていた。インフレと生活費の高騰を何とかして欲しいというのが人々の願いだった。ジョー・バイデン政権が発足以来、アメリカのインフレ率は下がっている。2021年には7%、2022年には6.5%、2023年には3.4%、2024年には2.4%だ。しかし、それが生活の実感として感じられなかったというのはバイデン政権にとっても、カマラ・ハリスにとっても不運だった。そして、人々が4年前に比べて生活が苦しいということになって、他のどの問題よりも経済問題を重視した結果がトランプ支持となった。トランプにとっては雇用創出が最大のテーマとなる。

 そして、アメリカ大統領選挙の最大のテーマは「トランプ」そのものということになる。トランプ支持者のほとんどは、トランプを好み、トランプを支持している。一方で、ハリス支持者の一定数は、別にハリスでなくてもよく、トランプが嫌だ、トランプの対立候補だからハリスを応援するという消極的支持である。これでは選挙戦に熱が入らない。私は拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも、バイデン支持の一定数が消極的支持であることを指摘した。民主党は力強い人物を擁立できなかったことが敗北につながったと言えるだろう。

 私は『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始めるでも述べたが、こうしたアメリカの分断は2016年のドナルド・トランプの大統領選挙初当選以前からはじまっていたと指摘したい。「トランプがアメリカの分断を生み出したのではなく、アメリカの分断がトランプを生み出した」と書いた。バラク・オバマ政権下で既に始まったと見ている。あの時の多幸感(euphoria)と熱狂(enthusiasm)は、今から考えると、日本における小泉純一郎政権誕生の時とよく似ている。こうした熱狂の後には焼け野が原の光景が広がっていたというのは日米共通の実感かもしれない。

(貼り付けはじめ)

トランプの3回の選挙の解剖:アメリカ人は2016年・2020年と2024年に比べてどのように移動したのか(Anatomy of three Trump elections: How Americans shifted in 2024 vs. 2020 and 2016

-出口調査は分断された国家を明らかにしている

ザカリー・B・ウォルフ、カート・メリル、ウェイ・マレー(CNN)筆

2024年11月6日(アップデート:2024年11月7日)

CNN

https://edition.cnn.com/interactive/2024/politics/2020-2016-exit-polls-2024-dg/

ドナルド・トランプ大統領が歴史的なカムバックを演じ、2度目の大統領選に勝利すると予想されている。トランプが投開票に参加した3回連続の選挙で、この国の政治がどのように変化したかについて、いくつかの重要なポイントがある。

2016年、2020年、2024年のCNNの出口調査結果は、景気低迷(sour economy)がいかにカマラ・ハリス副大統領の足かせとなったか、中絶の権利への支持(abortion rights)が高まったにもかかわらず、ハリスが女性の支持をいかに押し上げることができなかったか、そしてラティーノ男性が特にトランプに引き寄せられたことを明らかにしている。

2024年の選挙におけるCNNの出口調査には、投票日に投票した人、期日前投票や不在者投票をした人の両方を含む数千人の有権者へのインタヴューが含まれている。その範囲により、今年の選挙における有権者の人口動態や政治的見解を理解するための強力なツールとなる。そして、彼らの調査結果は、最終的には最終的なベンチマークである選挙結果そのものに対して重み付けされることになる。それでも、出口調査は依然として世論調査であり、誤差の余地はある。つまり、出口調査は、正確な測定値(precise measurements)ではなく推定値(estimates)として扱う場合に最も有効だ。出口調査の数字が最終的な選挙結果に合わせて調整される前は特にそうだ。

2024年の出口調査データは引き続き更新され、以下のグラフに自動的に反映される。

●女性はハリスに傾き、男性はトランプに傾く(Women lean toward Harris, and men lean toward Trump

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女性有権者におけるハリスの優位性は、ジョー・バイデン大統領やヒラリー・クリントン元国務長官のいずれも上回らなかったが、中絶問題で女性有権者を動員しようとしていたことを考えると、副大統領にとっては厄介な兆候となった。トランプは男性の間で優位性を維持した。

●ラティーノ男性はトランプを支持(Latino men embraced Trump

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ラティーノ系有権者、特に男性は、2016年以来、トランプに傾倒している。今年、初めてラティーノ男性がトランプの支持に傾いた。 2020年にはバイデンが23ポイントの差で支持を獲得し、2024年にはトランプが支持を獲得した。ラティーナ女性は依然としてハリスを支持したが、その差はクリントンやバイデンよりも小さかった。

ハリスは黒人男女の間で強いリードを維持した。白人男性におけるトランプのリードは小さくなった。

●教育における分裂は大きくなっている(The educational divide grows

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大学の学位を持たない白人有権者は長年トランプの支持基盤(base of support)を代表しており、それは今も変わらない。大卒の白人の有権者の間に変化が起きている。2016年には僅差でトランプを支持したが、2024年にはハリスが勝利し、男女双方で意見が分かれた。ハリスは大卒の白人女性に約15ポイント差で勝利し、バイデンとクリントンの両者を上回った。一方、ハリスはあらゆる教育レヴェルの有色人種の有権者の支持を一部失った。

●若い有権者はトランプに移動する一方で、トランプは高齢有権者たちの支持を失う(Younger voters shifted toward Trump, while he lost ground with senior voters
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民主党は、最年少有権者層の支持を一部失った。このグループは圧倒的に民主党に投票している。しかし、ハリスはまた、伝統的に共和党寄りのグループである最年長有権者の間で支持を伸ばした。興味深い変化となった。

●トランプはアメリカの地方部で力を取り戻す(Trump regained power in rural America

Voted for the Democrat

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トランプは2020年に地方での支持をいくらか失ったが、2024年には地方で完全な支持を取り戻した。都市部では依然として民主党支持が堅調だった。郊外は選挙を左右する激戦区であり続けた。

●有権者は経済について不満を持っている(Voters are sour on the economy
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2020年、経済が良好な状態にあるかどうかについて有権者の意見は二分されたが、2020年のアメリカ国民の生活に影響を及ぼしていた猛威を振るったパンデミックを考えると信じられないことだった。2024年には有権者の約3分の2が経済状況は悪化していると回答した。この心境の変化はトランプに利益をもたらした。

●自分たちの家族が落伍していると報告する人々が増えている(More people report their family has fallen behind

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党派が、自分たちが支持する人物がホワイトハウスにいるかどうかに基づいて、自分たちの立場が改善したかどうかを主張するのは当然だ。今年、大きな変化が起こった。2020年、有権者のわずか約5分の1が、4年前よりも悪い状況だと答えた。今年は有権者のほぼ半数が、4年前よりも状況が悪くなったと答えている。トランプが圧倒的に勝利した。

●より多くのアメリカ人は中絶の権利を支持している(More Americans support abortion rights

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これらのグラフでは十分に語られていないものの1つは、中絶に関する会話がどのように変化したかということだ。2016年のロウ対ウェイド事件では、全てのアメリカ人女性が中絶する憲法上の権利を保障された。2024年には、連邦政府の権利は消滅し、トランプが最高裁判事の議席に貢献した保守派多数派によって剥奪された。2020年にはアメリカ人の約半数が、全て、またはほとんどの場合において中絶は合法であるべきだと答えた。 2024年には、アメリカ人の約3分の2が、全て、またはほとんどの場合において中絶が合法であるべきだと考えている。しかし、彼らはその支持を必ずしも大統領への投票に結び付けた訳ではなかった。中絶はほとんどの場合合法であるべきだと主張する人の約半数がトランプを支持した。

●トランプは穏健派に食い込んだ(Trump made inroads with moderates

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トランプ時代にリベラル派と保守派は党派的な立場をさらに深めた。穏健派は2024年でも民主党候補を支持しているが、その差は2020年よりも小さい。

●トランプは選挙において支配的な人物だ‘Trump is the dominant figure in the election

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対立候補よりも自分が選んだ候補者を支持して投票すると回答した人々はトランプに二分され、これは支持者の間でのトランプの人気の表れだ。反対運動により動機付けられた人々は主にハリス陣営にいた。全体として、有権者の約4分の3は、ライヴァルに反対するためではなく、主に候補者を支持するために投票していると述べた。

●トランプ大統領は新たな有権者を巻き込んだ(Trump engaged new voters

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トランプの選挙戦略は、普段は政治プロセスに参加しない、政治性向の低い有権者を動かすことを中心に構築された。バイデンが若年有権者を獲得した2020年とトランプが獲得した2024年の間に劇的な変動があったため、それが功を奏した。しかし、最初の投票を 2020年よりも2024年に行ったと報告した有権者の割合が少なかったという事実には、重要な背景がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 アメリカでトランプが新大統領として選出され、日本では石破茂首相が総選挙を終えて、予算成立を目指すことになる。国内政策、対外政策は共に思い通りに進むものではない。それは、多くの要因が影響してくるからだ。国内政策であれば、政党、省庁、地方自治体、利益団体などが絡むし、対外政策では国家や国際機関が絡む。国内政策と対外政策はお互いが影響し合う。これによって非常に複雑な状況になり、予想通り、思い通りにいかないことがある。

 今回ご紹介するのはスティーヴン・M・ウォルトの記事で、選挙の時に発表される綱領(platform)はあてにならないというものだ。言われてみれば確かにそうだという内容になっている。ウォルトの主張をまとめると以下のようになる。

選挙で発表される綱領は、政権を取った場合に実現したい政策を発表するものだ。今回の大統領選挙での共和党、民主党の綱領の対外政策の部分は総花的ということだ。党の綱領は理想を示すものである一方、実現が難しい高邁な目標を掲げることが多く、実行可能な政策とのギャップが存在する。

実際の対外政策は選挙戦の公約とは異なる可能性がある。それは、大統領は外交政策において広範な裁量権を持っているため、選挙時の発言に縛られることはない。歴史的に見ても、選挙戦での公約と政権発足後の実際の政策には乖離が見られることが多く、過去の例としてクリントンの対中政策やバイデンの経済政策や対イラン外交のケースが挙げられる。

当選後の状況や出来事が予測不可能であるため、どのような事態が発生するかは事前に計画することが難しい。だから、次期大統領が具体的に何を行うかは、党綱領を見ても明確には分からない 最終的に、党綱領は党の目指す方向性を示すものではあるが、次期大統領がどのような課題に直面し、どのように対応するかは、党綱領ではなく、実際の政治的状況によって決まる。

 今回の大統領選挙ではドナルド・トランプが当選した。トランプが何をやるのか不安を募らせている人たちが多くいるという報道もなされている。トランプが何でもかんでもできるということはない。そのための権力分立(separation of power)である。そして、対外政策においても彼の思い通りにはいかない。それが政治の現実である。いたずらに不安を煽って、トランプに対する敵愾心を刺激する報道や主張こそはアメリカの分断・分裂を即死することになる。まずは落ち着いて現実を見ることだ。現実は理想通りに、また悪い想像通りには進まない。

(貼り付けはじめ)

外交政策について、アメリカの政党は力を持っていない(On Foreign Policy, U.S. Parties Don’t Have the Power

-なぜ大統領選挙の公式綱領に注目するのは間違いなのか?

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年8月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/26/republicans-democrats-conventions-platforms-2024-election-trump-harris-foreign-policy/

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2008年8月25日、ワシントンDCに掲げられた民主党(ロバ)と共和党(ゾウ)のシンボルマーク

アメリカの共和党と民主党は大統領候補を選出した。そのプロセスの一環として、彼らはまた、11月に勝利した場合に何を支持し、何を提案するかを述べた公式声明、いわゆる党綱領を発表した。ドナルド・トランプJD・ヴァンスがどのように行動したかの兆候を探してそれらを調べたくなる誘惑に駆られる。または、カマラ・ハリスとティム・ウォルツが統治することになるが、両方を読んだ上での私からのアドバイスは、「気にしないこと」だ。少なくとも外交政策に関して言えば、どちらの文書も2025年以降に何が予想されるかについてはあまり語っていない。

確かに、この2つの文書は全く異なるものだ。共和党の綱領はトランプ大統領の言葉のサラダであり、深刻な綱領的な声明というよりも、他国との関係を統治したり管理したりするための青写真(blueprint)どころか、彼の支離滅裂で奇妙に大文字のツイートのようなものだ。それは彼のおなじみの不満に満ちたテーマのほとんどを呼び起こすが、それは役に立たないほど曖昧であり、おそらくそれがポイントだ。これは、トランプ大学の古い広告の1つである詐欺の政治ヴァージョンだ。

対照的に、民主党の綱領は長くて、真面目で、理屈っぽくて、ちょっと退屈で、どの大統領も守れそうもないほど多くの公約を掲げている。ジョー・バイデン大統領の外交政策の成果をバラ色の目で評価し、良い点(同盟諸国との関係改善など)を強調し、ウクライナやガザ地区への対応を肯定的に描くために狂ったように回転している。ハリスが当選した場合に何をするかということについては、それほど多くを語らないという事実を除けば、注目に値するだけの十分な内容がここにはある。

それでは、これらの文書をどう解釈すればいいのだろうか? 始めに、党綱領とは何か、どのように交渉されるのかを理解することが重要だ。党綱領とは、党内で誰が十分な政治力を持ち、自分たちの意見を文書で表現できるかを反映したものである。共和党の場合、2024年の綱領を見れば、かつては誇り高く原則的な政治組織であったものを、トランプがほぼ完全に支配していることが分かる。

民主党の場合は、主要な利益団体や利害関係者、特に大口献金者の外交政策に対する主要な関与を反映している。だからこそ、バイデンの明らかに複雑な記録を肯定的に捉え、「中産階級の雇用を海外に移転させ、サプライチェーンを空洞化させ、労働者を大切にする代わりに企業のCEOに報酬を与え、包括的な経済成長を生み出せなかった(let middle-class jobs move offshore, hollowed out our supply chains, rewarded corporate CEOs instead of valuing workers, and failed to generate inclusive economic growth)」貿易政策を否定している。「永遠の戦争(forever wars)」を否定する一方で、あらゆる地域が重要である世界を描き、アメリカは「世界の舞台でリードし続けなければならない(must continue to lead on the world stage)」と主張している。リベラルな覇権主義そのものだ。

それでは、なぜこれらの発言を真に受けてはいけないのか? 第一の、そして最も明白な理由は、大統領は外交政策に関して莫大な裁量権(enormous latitude)を持っており、選挙戦に勝つため、あるいは献金を集めるために書かれたものには拘束されないということだ。大統領は、大口献金者やその他の利益団体が望むことを単純に無視することはできないが、特に再選にこだわる必要のない任期初期には、それらに縛られることはない。予算を通過させ、国内政策を承認させるためには議会での支持が必要だが、外交・国防政策で大統領が何をするかはほとんど大統領次第である。

更に言えば、重要な外交政策の決定は、綱領委員会や連邦議会の有力議員たち、著名な知事や党委員長によって行われることはない。その代わりに、大統領への忠誠心や大統領の世界観との適合性を主な理由として選ばれた側近や被任命者の小さなインナーサークルが決定することになる。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員はバイデンの2020年の当選に貢献したが、彼の側近でバイデン政権において重要なポストに就いた者はおらず、外交政策に関する彼の意見は一貫して無視された。バラク・オバマ前大統領が2009年にライヴァルだったヒラリー・クリントンを国務長官に任命することで党の結束を図ったのは事実だが、彼は彼女に力と権限をあまり与えず、代わりに自身のホワイトハウス補佐官と国家安全保障会議に主要な外交政策の決定と実行を委ねた。

第三に、党の綱領では聞こえがよく、選挙戦では有利に働く主張や立場も、選挙が終わって政権が発足すると違って見えることが多い。例えば、1992年の選挙戦で民主党のビル・クリントン候補は、中国の人権侵害に目をつぶっているとして現職のジョージ・HW・ブッシュ大統領を繰り返し批判したが、政権に就いてみると、北京に対する自らの影響力は限られており、この問題を軽視する方が理にかなっていることが分かった。同様に、2020年の民主党の綱領は、ドナルド・トランプ大統領が関税に依存し、2015年のイランとの核合意を放棄したことを厳しく批判していたが、ジョー・バイデンはトランプ時代の経済制限の多くをそのまま維持し、テヘランとの包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action with Tehran)に再び参加するという選挙公約を果たすことはなかった。

政党綱領はまた、過大な約束と過小な実現によって誤解を招く。綱領は、政党が達成すると信じ込ませたい事柄の願望リスト(wish list)であるため、これらの目標を実現するのを困難にする政治的障害を軽視したり省略したりする。前述したように、大統領は外交政策の遂行においてかなりの個人的権限を持っているとはいえ、反対政党はもちろんのこと、凝り固まった官僚組織(特に国防総省)や利益団体、ロビー団体、メディアからの反発に対処しなければならない。時間と政治資金は有限であるため、党綱領に盛り込まれた高邁な目標のいくつかは、完全に放棄されないまでも、必然的に後回しにされてしまう。

しかし、党の綱領がほとんど無視されるべき最も重要な理由は、候補者が大統領に就任した後に何が起こるかを、どんな選挙運動も予測することができないということだ。あるいは、元イギリス首相ハロルド・マクミランが、政治家にとって最も困難なことは何かとの質問に「出来事だ、親愛なる君、出来事だよ」と皮肉を込めて答えたと伝えられている。アメリカは非常に強力だが、世界的に重要なアクターはアメリカだけではない。ジョージ・W・ブッシュ前大統領は9月11日の同時多発テロが起きるとは思っていなかったし、バラク・オバマはアラブの春(Arab Spring)に目を奪われ、ドナルド・トランプは新型コロナウイルスに困惑し、ジョー・バイデンの外交政策はウクライナと中東の戦争に乗っ取られた。

11月に誰が勝利しても、それぞれの党の綱領でさえ言及されていないいくつかの大きな問題に直面することは間違いなく、それらにどう対応するかについての指針を得るためにこの文書を掘り起こす人は誰もいないだろう。

私は皮肉を言うつもりはない。党綱領は党が何を目指しているかを明らかにし、信者たちを結集させ、エネルギーを生み出し、明確なメッセージを提示するのに役立つ。しかし、彼らが明らかにしていないのは、次期大統領が2025年1月以降に何をするかということであり、選挙が終わったら誰もこれらの文書を調べに戻らないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Xアカウント:@stephenwalt
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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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