古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:円安

 古村治彦です。

 2026年2月18日、特別国会が召集され、高市早苗議員が首相に指名された。第二次高市早苗内閣が発足し、第一次内閣の閣僚がそのまま留任した。第二次高市政権にとっては2026年度予算の成立が重要だ。国会の議席数で見れば成立は確実であるが、高市首相は、2025年度内(2026年3月31日まで)の成立を目指している。2月の総選挙、3月の訪米とありながら、3月末での成立にこだわっているようだ。そうなると必然的に審議時間は短くなる。野党に質問させない、自分にとって嫌なことを質問させないという態度が見え見えである。経団連からも審議時間の短さに対して懸念が表明されているが、そのようなことはお構いなしで突き進むのだろう。国会は国権の最高機関である。高市首相の国会軽視はやがてしっぺ返しを食らうだろう。高市首相の高い支持率が自民党の支持率とは連動していない。高市政権下で何か逆風が吹き、高市首相故人の人気が落ちてしまえば、逆回転も大きくなり、次の選挙では自民党の議員たちの大量落選が発生する。増上慢にならず、周りの浮ついた空気に流さされず、丁寧に謙虚に行動することが肝要になってくる。

 高市首相に対しては海外でも高い評価がある一方で、懸念の声も出ている。それらを以下に紹介している。様々な主張があるが、共通しているのは、日本の少子高齢社会と低成長を、日本の問題に挙げていることだ。海外メディアは高市首相がどのように対応するのかということを注目しているようだ。衆議院で多くの議席を有し、やりたいことはできるということで、大改革をするという見方もあるし、そううまくはいかずに厳しいという見方もある。

 私は、既に日本は衰退局面に入っており、厳しい撤退戦を戦う状況にあるという考えだ。少子高齢化とそれに伴う人口減少は止められないし(年間で約100万ずつ減っていく)、経済成長も見込めない(成長率3%などというのは厳しい)。それもこれも失われた30年で、就職氷河期世代を生み出し、しかも中途半端に人数が多いために、大きな負担になっており、これから負担が大きくなる一方になるということが原因だ。少なくともこれから30年は厳しい状況が続く。人口ピラミッドをみれば、逆三角形の肩幅の広いボディビルダーのような形の日本はこれから先進国の地位から滑り落ちて、また、世界の中でしょう石の地位に戻ることになる。

 そうした中で、高市首相にこうした状況を大逆転できる方策は残っていない。何とか厳しい撤退戦を戦うしかない。しかし、そんなものは国民にとって面白くもなく、負担ばかりが大きいだけのものだ。国民にアピールしない。不満ばかりが募る。それが石破茂政権時代だった。そして、お勇ましい、聞き心地の良い言葉を連発する高市首相を多くの国民は支持している。「高市さんは頑張っている、何かしてくれる」という心情は理解できる。しかし、実際には何もできない。そして、国民の不満を逸らすために、外に敵を作り、強大に見える、見掛け倒しのアメリカに莫大なお金を払って頼ろうとする。国民が「強い指導者」を高市首相に求めるように、高市首相は「強い指導者」をアメリカ、ドナルド・トランプ大統領に求めている。残念ながら、これらはすべて幻影、幻想である。結局のところ、何もうまくいかなくて、また、何か目新しいことを言う誰かを「強い指導者」として担ぎ出して捨てるということを繰り返す。このような悪循環、負のスパイラルを抜け出すことはほぼ不可能だ。なぜなら、そのためには日本国民が何かを諦め、現実を直視することが必要だからだが、それは不可能なことだ。こうして衰退に竿を指してスピードアップを続けていく。

(貼り付けはじめ)

中国は日本のダメージを与えられる部分を攻撃している。高市首相は屈するだろうか?(China is hitting Japan where it hurts. Will PM Takaichi give in?

テッサ・ワン筆

2026年2月16日

BBC

https://www.bbc.com/news/articles/c86y3ndqlxwo

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アナリストたちは高市首相の最近の選挙での圧倒的勝利は中国に対して断固たる姿勢を取るための政治的資本(political capital)を彼女に与えたと述べている。

先月、東京の上野動物園で、何千人もの日本のファンから涙の別れを受けたシャオシャオとレイレイは、中国行きの飛行機に乗せられた。これは、悪化する日中関係の新たな象徴だ。

2頭の中国のジャイアントパンダは、北京がパンダの引き取りを発表したことを受け、帰国を余儀なくされた。これにより、日本には数十年ぶりに中国のパンダがいなくなる事態となった。

高市早苗首相の発言により日中関係がここ数年で最低レヴェルに落ち込んで以来、北京は軍艦の派遣、レアアース輸出の抑制、中国からの観光客の制限、コンサートの中止、さらにはパンダの返還など、様々な方法で圧力を強めている。

高市首相が先日の総選挙で歴史的に強力な国民の支持を得て首相として新たな任期を迎える中、アナリストたちは日中両国にとって緊張緩和(de-escalate)は困難であり、日中関係がすぐに回復することはないだろうと警告を発している。

今回の論争は11月に始まった。高市首相が、台湾への攻撃があった場合、日本が自衛隊を出動させる可能性があると示唆した時からだ。

中国は、自治を行っている台湾を自国の一部だと主張しており、将来台湾と「再統一する(reunify)」ために武力行使する可能性も排除していない。台湾はアメリカを主要な同盟国と見なし、アメリカは台湾の自衛を支援することを約束している。

長年懸念されてきたのは、台湾へのいかなる攻撃も米中間の直接的な軍事紛争(a direct military conflict)につながり、ひいては日本やフィリピンといった地域における他のアメリカの同盟諸国を巻き込む可能性があるということだ。

台湾問題は中国にとって絶対的な譲れない一線(an absolute red line)であり、「外部からの干渉(outside interference)」とみなされるいかなる発言にも激怒し、これは主権の問題(a question of sovereignty)であり、中国のみが自ら決定できるものだと主張している。

高市首相の発言後、中国政府は即座に非難の嵐で応じ、発言の撤回を要求した。

専門家たちは、高市首相の発言は政府の立場や過去の日本の指導者の発言と一致すると指摘している。

しかし、相違点は、現職の日本の首相がこのような見解を表明したのは今回が初めてだったという点だ。

一方、高市首相は謝罪も発言の撤回も拒否した。アナリストたちは、高市首相が獲得した強力な支持によって、この姿勢は正当化される可能性が高いと指摘している。

しかし、高市首相は具体的な状況についてはより慎重にコメントすると述べ、日本政府は高官級の外交官を中国側と会談させた。

しかしながら、これは中国の怒りを和らげる効果はほとんどなかった。

●「グレイゾーン」の圧力('Greyzone' pressure

高市氏が譲歩を拒絶する姿勢を崩さない中、中国は一貫して圧力をかけ続けている。

アナリストたちは、日中両国の間ではここ数十年、歴史的な敵意を背景に対立が激化してきたが、今回は状況が異なっていると指摘する。

シンクタンク国際戦略研究所(IISS)日本部長ロバート・ワードは、中国はこれまでより「さらに幅広い分野(wider range of fronts)」で圧力を強めていると指摘する。

これは、台湾に対して行っている「グレイゾーン戦争(greyzone warfare)」に類似した、拡散的で低レヴェルの圧力であり、「実際には正常ではない状況を正常化させるために相手を疲弊させること」を目的としているとワードは述べた。

外交面では、中国は国連に苦情を申し立て、日本と韓国との三カ国首脳会談を延期した。

中国はまた、他の国々をこの争いに巻き込もうとしており、イギリスとフランスに自国への協力を呼びかけ、同盟国であるロシアと北朝鮮には日本を非難するよう促している。

週末、中国の王毅外相はミュンヘン安全保障会議で西側諸国の首脳たちを前に演説し、第二次世界大戦における日本の侵略の歴史に言及し、高市首相の発言を「非常に危険な展開(very dangerous development)」と呼んだ。

軍事面では、日本は中国がドローンを飛ばし、軍艦が日本の島々を航行し、戦闘機が日本の航空機を「レーダー照射(locked radars)」したと主張している。日中の海上保安庁の船舶は、係争中の尖閣諸島(釣魚島)付近で衝突し、先週は日本当局が中国漁船を拿捕した。

しかし、中国が日本の痛いところ、つまり経済にも打撃を与えようとしていることは明らかだ。

中国は、レアアース元素や重要鉱物などの軍民両用技術の対日輸出を制限しており、これは一種の経済的圧力と見られている。

中国政府はまた、中国国民に対し、留学や休暇で日本を訪れるのを避けるよう勧告し、日本行きの49路線の航空便を欠航とした。これにより、観光客の減少と一部株価の下落につながった。公式統計によると、日本を訪れる外国人観光客の4分の1は中国人である。

エンターテインメントや文化も例外(off the hook)ではない。

中国では日本の音楽イヴェントが中止され、中には歌手が演奏中にステージから降ろされるという出来事も起きた。また、映画配給会社は複数の日本映画の公開を延期した。

日本の代表的な文化輸出品の一つであるポケモンも、靖国神社で開催予定だったイヴェントをめぐり批判を浴びた。靖国神社は、中国が戦犯とみなす人々を含む日本の戦没者を祀っている。イヴェントは最終的に中止された。

また、ソーシャルメディアでは、中国のネット上の民族主義者が高市首相を攻撃し、人気キャラクターのウルトラマンやアニメキャラクターの名探偵コナンが首相と戦うAI生成動画をシェアするなどしている。

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上野動物園での最後の日に撮影されたシャオシャオは、妹のレイレイと共に中国に送還されました。

しかし、全体として、中国の行動は日本との過去の紛争に比べて挑発的ではないとシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・リンとクリスティ・ゴベラは指摘している。

リンとゴヴェラは「これまでのところ、中国の経済的・軍事的対応は過去に比べて比較的限定的だが、さらなるエスカレーションの余地は十分にある」と最近の分析で指摘している。

中国は現在、「第二次世界大戦後の秩序の守護者(the guardian of the post World War Two order)として積極的に位置づけ」ており、アメリカと比較して責任ある大国(a responsible power)として見られたいと考えているため、日本に対して強硬な姿勢を控えている可能性もあるとウォードは付け加えて述べている。

●「続くタンゴ」(A 'tango that will continue'

専門家たちは、緊張が緩和される場合、あるいは緩和された際には、以前よりも高い水準で落ち着く可能性が高いと一致して見ている。

リンとゴヴェラは分析の中で、日中両国が今回、緊張緩和に動く可能性は低いと指摘している。中国は現在、はるかに強力な大国であり、「台湾は中国の核心的利益の中核を成しており、北京は過去の出来事の時よりも強硬な姿勢を取る可能性が高い」と述べている。

リンとゴヴェラは、「北京は高市首相に深い疑念を抱いており、発言を明確に撤回することなく緊張緩和を試みる彼女の試みは、偽善的(hypocritical)、あるいはさらに悪いことに、戦略的に欺瞞的(deceptive)だと見なす可能性が高い」と述べている。

一方、日本は、特に高市首相が選挙で圧勝したことで、強硬な姿勢を貫く意欲が高まっており、「彼女はこれを対中姿勢の正当性(as vindication for her stance on China)を示すものと受け止めるだろう」とウォードは指摘した。

ゴヴェラはBBCに対し、高市首相は今回の勝利を「政治的資本(political capital)」として、日本の立場を強化する防衛・経済政策を推進する可能性が高いと語った。

高市首相は、日本の防衛関連支出を予定より2年前倒しでGDPの2%に引き上げ、今年末までに主要な安全保障戦略の見直しを完了し、経済刺激策を早期に開始すると約束している。

一方、中国は「高市首相は非常に強力な指導者であり、圧力をかけることは国内で彼女をさらに強くするだけだと考えているため、圧力をそれほど強めないかもしれない」と、スタンフォード大学ショーレンスタイン記念アジア太平洋研究センター所長で日本専門家の筒井清輝は述べている。

筒井は「そのため、この駆け引き(tango)はしばらく続くだろう」と述べている。

不確定要素となるのは、ドナルド・トランプ米大統領がこれまで高市首相への強力な支持を表明しており、総選挙を前に異例の支持表明を行っていることだ。

しかし、筒井は、トランプ大統領と習近平国家主席の間で、4月の大統領の北京国賓訪問を含む複数の会談が予定されていることから、米中関係は今年さらに改善すると多くの人が予想していると指摘した。

リンとゴヴェラは、過去の出来事と比較すると、今回のアメリカの日中対立に対する反応は「今のところ控えめで、それが中国を勇気づける可能性がある」と述べた。

ワードは「日本は習近平主席とトランプ大統領の間で何らかの大きな取引が行われることを恐れている」と述べた。

週末、ミュンヘン安全保障会議の傍ら、マルコ・ルビオ米国務長官と茂木敏充外相が会談し、日米間の緊密な関係を再確認した。

高市首相は、トランプ大統領の中国訪問に先立ち、3月にワシントンDCを訪問し、再びトランプ大統領と会談する予定である。

中国が圧力を強め続ける中、日本はアメリカと分かち合っている防衛負担を「倍増(double down)」させる可能性が高いとウォードは述べ、「アメリカがこの地域(アジア)から関心を失わないように、日本とより緊密に協力していく」と付け加えた。

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日本は高市首相に圧勝したが彼女は経済を立て直すことができるだろうか?(Japan has given Takaichi a landslide win - but can she bring back the economy?

スランジャナ・テワリ筆

2026年2月10日

BBC

https://www.bbc.com/news/articles/cddn7qed35eo

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日本の高市早苗首相は解散総選挙という賭けに出たがそれが成功した。

高市首相率いる自由民主党は465議席中316議席という圧倒的多数を獲得した。これは近年、ほとんどの指導者が達成していない圧倒的多数だ。むしろ、日本は首相が入れ替わり立ち替わりしてきた(a revolving door)と言える。

今、問われているのは、高市首相がそれをどう活用するかだ。彼女は、日本経済が何十年も達成できなかったもの、すなわちより速い成長(faster growth)を実現できるだろうか?

日本は、低調な成長(sluggish growth)、世界最大の公的債務(public debt that is the largest in the world)、そして高齢化と減少が進む労働人口(a working population that is both ageing and shrinking)など、多くの問題を抱えている。

専門家の中には、高市首相にはこの状況を打開し、世界第4位の経済大国である日本の経済運営のあり方、そして市場が日本をどのように見ているかを根本から変えるチャンスがあると考えている。

故安倍晋三首相の政策顧問とスピーチライターを務めた谷口智彦は高市首相が日本を正しい方向に導いてくれるだろうと述べている。

谷口は「もし成功すれば、世界中の高齢化社会にとって貴重なケーススタディとなるだろう」と述べている。

●資金はどこからやって来るのか?(Where will the money come from?

高市首相は、主要産業への投資を含む歳出拡大で経済成長を後押しすると公約していた。

これは前任者たちからの方針転換だった。彼女は減税によって国民の消費支出を増やすと誓い、貯蓄よりも経済成長が優先事項だ(growth rather than savings was the priority)と述べた。

しかし、市場は高市首相がこれらの計画をどのように財源確保するのかという疑念で動揺した。圧倒的多数の賛成を得たことで投資家は安心したようで、それは日曜夜の彼女の勝利に対する市場の好意的な反応に表れた。

投資家たちは「高市トレード(Takaichi trade)」と呼ばれる、日本株を買い、円と国債を売る取引を行っている。重要なのは、円高も進んでいることだ。投資家の一部にとって、通貨高は好ましい状況だ。

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市場は高市早苗首相の勝利を歓迎した。

しかし、事態はもっと複雑だ。

高市首相が2025年10月に首相に就任すると、国債利回り(実質的には日本が借金をするために支払う金利[effectively the interest Japan pays to borrow money])は急上昇した。

日本の公的債務が巨額であるため、これは投資家にとって大きな懸念事項となっている。高市首相が公約してきたより多い支出とより少ない税金(more spending and lower taxes)は、政府がより多くの借金をしなければならないことを意味する。

日本の債券市場は世界最大級の規模を誇り、東京での小さな変化でさえ世界市場に波及し、借入コスト、投資判断、そして通貨に影響を与える可能性がある。

投資家は金利にも注目している。なぜなら、日本銀行はインフレ抑制のための数十年にわたる超低金利からの脱却を目指しているからだ。

例えば、米の価格は2025年に倍増した。価格の安定、あるいは下落に慣れてしまった国にとって、価格上昇は大きな衝撃だ。

これが、高市首相の台頭を支えたメッセージの中心だった。有権者はより貧しく、物価はより高く感じる(voters feel poorer and prices feel higher)。結局のところ、これは彼女の前任者が失脚した原因の一つとなった。

高市首相が提案した減税は、短期的には家計の痛みを和らげるかもしれません。

しかし、慶応義塾大学の経済学教授である小林慶一郎は、これは危険な道だと警告している。「支出の増加はインフレを刺激し生活費を上昇させるだけだ」と述べている。

むしろ、政府はインフレ対策として日本銀行が引き続き金利を引き上げることを許可しつつ、政府支出を引き締めるべきだと小林教授は主張する。そうすれば投資家も満足するだろう。

金利が低く政府支出が多いと、日本は外国人投資家にとって魅力が低下するため、通貨需要が減少し、円安につながる。

円安は、特にエネルギーや食料品といった輸入コストを押し上げるが、より安価な中国製品との競争において輸出業者にとって有利となる。

高市首相が約束した成長を実現するためには、これは非常に繊細な綱渡り(balancing act)であり、高市首相はそこから逃れることはできない。

しかし、課題は市場だけのことではない。

円安は、日本人の日本での生活に対する意識も変化させる。不動産や海外製品の購入が難しくなる一方で、外国人観光客にとっては物価が安くなり、より魅力的な場所となる。

観光ブームは収益をもたらしたが、同時に過密状態(overcrowding)や、一部地域では外国人に対する反発も高まっている。

●パズルの中で欠けているピース(A missing piece of the puzzle

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日本は高齢化が進んでいるが外国人労働者の受け入れに抵抗している。

日本の人口、そしてその労働力は長年減少傾向にある。今や世界有数の高齢化社会となり、医療や社会福祉といった公共サーヴィスに大きな負担がかかっている。

日本は既に建設(construction)、介護(care work)、農業(agriculture)、そして接客業(hospitality)といった分野で深刻な労働力不足に直面している。労働者の減少は生産量の減少、ひいてはより弱い経済成長を意味する。

移民はこの負担を軽減できる可能性がある。公式データによると、政府は近年、一部の規制をひそかに緩和しており、外国人労働者の数は増加している。しかし、欧米諸国と比較すると、日本における外国人労働者の数は依然としてはるかに少ない。

高市首相は、移民問題は特に保守派支持層にとって非常にデリケートな問題であるため、この状況を変えるような大きな対策は講じないだろうと示唆している。

高市首相とその支持者たちは、生産性向上のためには(to lift productivity)、テクノロジー、自動化、そして女性や高齢者の参加率向上に頼るべきだと述べている。

エコノミストたちは、それだけでは不十分かもしれないと警告している。日本は依然として外国人労働者のさらなる増加を必要としている。他の先進国が長らく経済の維持のために外国人労働者に依存してきたのと同様だ。

専門家たちは、移民に対する抵抗は、過去に技術革新と改革の妨げとなってきた、より広範な変化への抵抗感の一環でもあると指摘している。

●中国はどうだろうか?(What about China?

しかし、日本は変化する必要がある。しかも迅速に変化しなければならない。なぜなら、中国は既に規模と工業生産力で日本を追い抜いており、ヴェトナムをはじめとするアジア諸国も追い上げているからだ。

中国は日本にとって最大の貿易相手国でもある。これは高市首相の計画にとって重要である。なぜなら、国内需要の回復には時間がかかるからだ。それまでは、日本は成長を促進するために貿易に頼らざるを得ない。

しかし、レアアース輸出をめぐる紛争を含む、中国との継続的な緊張は、戦略的サプライチェインにおける日本の脆弱性(vulnerability)を露呈させている。みずほ銀行の日本担当チーフエコノミスト服部直樹は、こうした緊張関係は電気自動車や防衛装備品の生産にも悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。

一方、高市首相は、希少鉱物や医薬品といった重要分野における中国への依存度の低減を最優先事項としている。また、トランプ大統領に対して積極的に機嫌を取り(court)、日本の平和憲法の下では物議を醸すことになる防衛予算の増額に同意した。

高市首相はトランプ大統領の「温かい言葉(warm words)」に感謝し、今春ホワイトハウスを訪問することを楽しみにしていると述べ、「日米同盟の潜在力は無制限だ(the potential of our Alliance is LIMITLESS)」とも述べた。

高市首相は米中の「等距離(equidistance)」を否定し、ワシントンとの同盟こそが日本の安全保障と経済の強靭性の中核を成すと考えていると谷口は述べている。

しかし、日本はどちらか一方を選択する余裕はない。

小林教授は、特に中国の不動産危機と国内経済成長の鈍化が、この地域における中国の影響力を再編する可能性があることから、日中両国との関係強化は賢明だと述べている。

高市首相のアプローチは、彼女の師である故安倍晋三元首相の戦略を踏襲しているように見える。つまり、成長を刺激するための大規模な支出と投資を支える低金利だ。

安倍首相は物価下落、円高、そしてはるかに弱体化した中国という問題に対処していた。

高市首相が直面する課題はより深刻だ。日本は高齢化が進み、経済成長は依然として低迷しており、世界情勢は大きく変化している。

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世界で最も力を持つ女性(The world’s most powerful woman

-日本の首相は一世代に一度の国を立て直すチャンスを手にした。彼女はそれを掴むことができるだろうか?

2026年2月12日

『エコノミスト』誌

https://www.economist.com/leaders/2026/02/12/the-worlds-most-powerful-woman
自由民主党(LIBERAL DEMOCRATIC PARTYLDP)は1955年の結党以来、わずか二度の短い中断を挟みつつ、日本の政治を支配してきた。2月8日の衆議院総選挙で、これほど圧倒的な勝利を収めたことはかつてなかった。優越的な衆議院の議席の約70%を獲得した。勝利を収めた高市早苗首相は、今、国を変革する歴史的なチャンスを手にしている。この機会を決して逃してはならない。

選挙での賭けと大勝利によって生まれた期待に応えるために、高市首相はより大きく、より広い視野で考える必要がある。在任期間を、目先の救済策にばかり目を向け、現状の苦痛を和らげることに終始するのではなく、日本が直面する長期的な人口動態と経済の課題に真正面から向き合わなければならない。また、不安定な世界情勢において、安定をもたらす力として、日本が果たすべき重要な役割を認識すべきだ。そして、右派の支持者だけでなく、日本全体のリーダーでなければならない。つまり、彼女は再び賭けに出なければならない。

●日本の首相は新たな大きな責務をどう活かすのか(How Japan’s prime minister will use her massive new mandate

彼女には支持がある。高市首相への支持は全国から寄せられた。自民党は衆議院(定数465)で198議席から316議席を獲得し、3分の2の超多数(supermajority)を獲得した。これにより、自民党は掌握していない参議院の決定を覆すことが可能になる。高市首相は、日本の有権者が求める安全と変革の両方の欲求を捉えた。彼女は、厳しい時代にふさわしい、強硬な現実主義(realism)を提示した。また、彼女は旧態からの脱却を体現している。彼女は中流家庭の出身で、率直な物言いをする人物であり、多くの先人たちのように、堅苦しい政治王朝の御曹司ではない。そして、彼女は女性として、民主政治体制国家である日本を率いる最初の人物である。

高市首相がそれを大胆に捉えるならばの話だが、歴史的な選挙は、歴史的な機会を解き放つ。最も重要なのは、彼女が日本の防衛力改革を加速させる上で有利な立場にあることだ。2012年から2020年まで首相を務めた故安倍晋三元首相は、中国の強硬姿勢とアメリカの信頼性の低さに対抗するため、軍事力の強化に着手した。しかし、世界の変化は日本よりも速い。高市首相は既に、当初2027年度に予定されていた防衛費の対GDP比2%への増額を今年度に前倒ししたが、それでもまだ不十分だ。いずれにせよ、単に予算を増額するだけでは不十分だ。日本は新たな世界の混乱に真摯に向き合う必要がある。核兵器への言及を含め、タブーを破る首相の姿勢は健全である。防衛産業の束縛を解き放ち、防衛技術革新を促進し、国の情報収集能力を強化するという点において、彼女は正しい考えを持っている。

これには進取的な外交が必要となる。他の同盟国と同様に、日本もドナルド・トランプの大統領復帰に動揺している。しかし、NATO加盟諸国以上に、日本はアメリカを疎外することはできない。日本は中国、ロシア、北朝鮮という核兵器を保有する敵対国に囲まれており、当面はアメリカの核の傘(nuclear umbrella)に頼らざるを得ない。高市首相はトランプ大統領の機嫌を損ねることなく、称賛に値する仕事をしてきた(トランプ大統領は投票前に高市首相への支持を表明していた)。しかし、日本はアメリカと協力する一方で、アメリカを迂回する動きも躊躇すべきではない。これは、トランプ大統領が最初の任期中に放棄した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を安倍首相が救済した際に行った行動である。これは、安倍首相がトランプ大統領と良好な関係を築くことを妨げたわけではない。今回は、日本はCPTPPとヨーロッパ連合(EU)を連携させる取り組みを主導すべきである。これにより、世界の生産量の30%以上をカバーする貿易圏が誕生することになる。

日本は、国内資源が逼迫する今こそ、このグローバルな指導力を発揮する必要がある。減少が続き、高齢化が進む人口(shrinking, ageing population)は、日本の成長を阻む大きな要因となっている。多くの国が学んでいるように、容易な解決策はない。家族は簡単にスピードアップできる生産ラインではない。むしろ、気候変動と同様に、人口動態の変化は絶え間ない適応を必要とする。選挙での圧倒的勝利は、高市首相にこれまで他国が避けてきた難しい選択を迫る余裕を与えている。

高市首相は、日本が持つ人々の力を解き放ち、新規参入者をより歓迎する体制を構築することに注力すべきである。社会保障制度(social-security system)は緊急に改革する必要がある。企業は、硬直的で年功序列の終身雇用慣行(seniority-based lifetime employment practices)から、より柔軟な職務に基づく制度へと転換すべきである。結婚を阻害し、女性を低賃金労働に留める家父長制的な家族法と税制は廃止されなければならない。日本は移民を誘致すべきであり、彼らを悪者にするのではなく、受け入れるべきである。そして、防衛費と福祉支出への需要が高まる中、日本は必要なプログラムに資金を提供できることを市場に保証しなければならない。総負債(the gross debt)の削減に貢献するために、今は海外資産(overseas assets)から徐々に利益を得る好機かもしれない。

高市首相は果たしてその任務を果たせるだろうか? 2025年10月に首相に就任したばかりで、まだ試練を迎えていない。彼女は、幅広い支持を、自身の狭いイデオロギー的目標を追求する許可証と誤解する恐れがある。熱烈な国家主義者である彼女は、日本の戦没者、その中には戦犯も含まれている帝国の指導者たちを祀る靖国神社を参拝するかもしれない。これは中国との関係を悪化させ、中国の台頭に対抗するために不可欠な、日本と韓国の脆弱な関係を悪化させるだろう。また、社会的な保守主義者である彼女は、外国人排斥感情を煽り、人口減少を補うために日本が必要とする移民や、経済成長を牽引する観光客を遠ざける可能性がある。財政ハト派である高市首相は、インフレを煽り、国債保有者をパニックに陥れるような大規模な支出政策を推進する可能性がある。試金石となるのは、新たな国債を発行することなく、食​​料品への%の消費税を2年間停止するという、ポピュリスト的な選挙公約だろう。有権者はそのような魔法のような考えを信じていたかもしれないが、市場はより深く理解している。彼女は景品代を支払う方法を見つけるか、それを中止する必要があるだろう。

●実行の難しさ(The difficulty of doing

首相のメールボックスは気が遠くなるような量だ。国民が不安になるのも無理はない。高市首相は有権者たちに対し、この激動の時代を彼女に導いてほしいかと質した。その答えは圧倒的な「イエス」だった。しかし、もし彼女が象徴主義(symbolism)とポピュリズム(populism)に基づく信任を無駄にすれば、より有害な代替案が蔓延するだろう。そして日本はすぐには、次のリーダーにこれほど大きなチャンスを与えることはないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 このブログで、世界規模で新型コロナウイルス感染の収束傾向が進み、それによって経済活動が活発化していく結果としてインフレーション率が高まっていることを昨年からずっと紹介してきた。アメリカでの物価高騰の記事を何度もご紹介してきた。

 日本に暮らす私たちも物価高騰の影響を感じている。清貧の価格は変わらない久手も内容が減っているということはよく見かけるようになった。飲料で言えば、昔は1リットル、500ミリリットルで売られていたものが同じ値段で900ミリリットル、450ミリリットルになって売られているということもある。英語ではこれを「シュリンクフレーション(shrinkflation)」と言うのだそうだ。「shrink」という単語は「縮む、小さくなる、少なくなる」を意味する。インフレーション(inflation)やデフレーション(deflation)のような、よく使われる言葉ではないが、日本の現状を良く表現している。シュリンクフレーションが進んでいる日本で値上げが続いている。これは一般国民の生活を直撃し、経済状態を悪化させるものだ。

 物価の上昇率よりも賃金の上昇率の方が高ければ、生活は苦しいということはない。しかし、賃金がほとんど上がらない中で物価だけ上がり続ければ、生活はどんどん苦しくなる。スタグフレーションという状態になるのが怖いが日本は既にスタグフレーションなのではないか。物価上昇の原因は世界的な実物資産の価格高騰、具体的には石油価格の高騰や食料価格の高騰がある。これに加えて円安が進行していることも挙げられる。2022年4月28日には1ドル、130円を突破したが以下に掲載したグラフのようにこの円安は非常に急激に起きたものだ。

dollaryenexchangerategraph202104202204511
ドル円チャート(2021年4月から2022年4月)

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 ドル円チャート(2000年から2022年)

 日本銀行の黒田東彦総裁は就任以来、日本政府の意向もあり、「年率インフレ率2%達成」をお題目のように唱えてきた。しかし、その実現には至っていない。日本の憲政史上最長となった安倍晋三政権下では「アベノミクス」で経済成長を目論んで、異次元の財政支出を行ったがうまくいかなった。「経済成長の結果としてインフレーション」ということを逆転させて「インフレーションを起こせば結果として経済成長(リフレ、インタゲ論)」という大きな間違いを犯した結果と言える。

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日本のインフレ率(2000年から2020年) 

 現在、輸入物資の価格高騰(新型コロナウイルス感染拡大からの回復とウクライナ戦争が重なった)と急激な円安で日本国内のインフレ率は2%を軽く達成しそうな勢いである。しかし、これは日本政府や日銀が意図した「インフレ」ではない。インフレーションには需要が高まることで起きる「デマンドプッシュ型」とコストが上昇することで起きる「コストプッシュ型」があり、現状は「コストプッシュ型」だ。経済が好調なので人々の需要が高まってのものではない。

「円安は日本にとって素晴らしい」ということを私も小学生の時に刷り込まれた。先生が黒板に日本で作った自動車が100万円として、それをアメリカで売る場合のドル換算した価格の図を描いて、「円安になればドルでの価格表示が安くなるので売れやすくなって利益が大きい」「海外から資源や材料を買ってきて日本で製品にして売る、これを加工貿易と言う」ということを説明してもらったと思う。しかし、私が小学生だった1980年代から日本経済は大きく変容し、外需頼みの国から内需頼みの国になった。GDPに占める輸出の割合は2018年の段階で18%だった。先進諸国の中でこの割合は低い方だ。

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輸出がGDPに占める割合(2018年)
 日本経済の現状は非常に厳しい。急激な円安の進行を止めることだ。そもそも貨幣価値の乱高下は好ましくない。また輸入物資の価格の引き下げは日本一国でできることではない。新型コロナウイルス感染拡大からの回復途上での経済回復のための物価高は仕方がないが、ウクライナ戦争による物価高に関しては一日も早い停戦によって改善が見込まれると思う。しかし、現状はとても厳しいと言わざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

日本はようやくインフレーションを達成する-しかしそれは間違った種類のものだ(Japan Finally Gets Inflation—but the Wrong Kind
-数十年にわたりデフレーションとの戦いの後、世界規模の物価上昇は政治的な懸念の原因となっている

ウィリアム・スポサト筆
2022年4月25日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/25/inflation-japan-deflation-economy/

現在の日本の中央銀行のトップは非常に忍耐強い人物である。黒田東彦は9年前に日本銀行総裁に就任した際、世界第3位の経済大国である日本から、1990年以来ずっと成長を鈍化させてきたデフレーション圧力を取り除くと公約した。日銀の目標は、賃金と消費意欲を高める2%のインフレ率を作り出すために十分な資金を投入することであった。

商品価格のインフレーションが世界的に警鐘を鳴らしている中、ついに目標達成の見通しが立ったようだ。最新のデータは非常に不安定ではあるが、エコノミストたちは、日本が今後数ヶ月のうちにようやく2%のインフレーション率、場合によってはそれ以上のインフレーション率を達成し始めると予測している。

今のところ、この数値は世界的に見ても控えめなものとなっている。アメリカの2022年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%上昇し、1981年以来最も高い上昇率となったが、日本の指数はわずか1。2%上昇にとどまった。しかし、これには携帯電話業界を事実上支配している3社のカルテルに対する政府の取り締まり後、携帯電話料金が52.7%下落したことが含まれている。

その他の数字も、日本の基準からすると目を見張らせるものだった。エネルギーコストは20.8%上昇し、1981年以来最も急な上昇となり、食用油は34.7%上昇した。卸売物価の指標である企業物価指数は、ウクライナの悲惨な状況もあって、2022年3月には前年同月比で9.5%上昇した。

全体として、エコノミストたちは、様々な一時的要因を平準化した後の基礎的なインフレーション率は、現在、日銀が設定した目標の2%程度であると見積もっている。しかし、誰も喜んではいないように見える。2022年6月の選挙を控え、政府は最も影響を受ける人々への補助金制度を実施するために奔走しており、日本円は急激に下落している。しかし、黒田総裁は、コスト増は短期的な問題であり、総裁が設定した目標を妨げるものではない、と平然としているように見える。

日本にとって、20年以上にわたるデフレーションのもたらしてきたコストは明らかである。しかし、多くの日本人が気づいていないのは、世界の国々は絶対額で豊かになっているのに、日本だけはほとんど変わらないということだ。OECDのデータによると、過去30年間の年間平均賃金の上昇率はわずか3%であるのに対し、米国では47%も上昇している。物価も同じような軌跡をたどっている。東京は長年、世界で最も物価の高い都市とされてきたが、コスト削減、関税の緩やかな引き下げ、輸入代替品の増加などにより、現在ではほとんどの世界ランキングでトップ10にも入っていない。

この状況を打開するために、中央銀行である日本銀行は過去9年間、市場に現金を流し込んできた。この前代未聞のプログラムにより、中央銀行は事実上全ての新規国債を購入することになった。そして、政府の税収は平均して歳出の60%しか賄っていないが、このことは購入すべき債務が大量に存在することを意味する。

このことは、2つの大きな問題を引き起こしている。日本政府は世界で最も負債を抱えている国であり、負債総額は年間経済生産高の約190%に相当する。このような政府の大盤振る舞いの裏舞台での資金調達によって、日銀のバランスシートは4倍になり、世界銀行のデータによれば、2020年には日銀自身の保有額は年間GDPの92%にまで上昇する。

このように、今の日本は間違ったインフレーションになっているようである。黒田総裁の目標設定の基礎にある考えは、いわゆる需要主導型の好循環を生み出すことであった。これは高い給料の労働者たちが外に出てより多く消費し、需要を押し上げ、それが新たな投資を招来し、それがより高い賃金につながるというものだ。

しかし、海外からのコストアップは物価を押し上げ、消費者たちの購買意欲を低下させ、商品の購入を控えさせることになる。この問題は、資源に乏しい日本では特に深刻で、事実上全ての原材料と商品を輸入している。食料の60%以上とエネルギーの95%(主に石油)を輸入している。過去10年間、世界の商品市場は概ね平穏だったため、これまでは大きな問題にはならなかったが、ロシアのウクライナ侵攻で小麦も天然ガスも十字架の下に置かれ、問題の深刻化が予想される。

このことは、2022年6月の参議院選挙でより強力な支持を得ようとする政府にとって、決して無視できることではない。与党の自民党が政権を失うリスクはないが、参議院選挙の投票結果はしばしば、事態の進展に関する有権者たちの感情を測る指標と見なされる。物価上昇の打撃を和らげるため、政府は消費者と中小企業を支援する480億ドル規模の幅広い補助金パッケージをまとめつつあると報じられている。日本経済新聞によると、この支援はガソリンの追加補助から低金利ローンや現金支援まで多岐にわたるという。

同時に、日本の岸田文雄首相は物価高騰を利用して、彼が提唱している「新しい形の資本主義」を推進しようとしている。これは安倍晋三前首相の下で実施された、過去10年間のアベノミクスで利益あげた大企業や裕福な退職者たちから富を国民全体に広げることを目的としている。

岸田首相は2022年3月の国会で、「物価上昇に対処するため、企業がコストを転嫁できるようにし、労働者の賃金を上げる環境を整えることによって、国民の生活を守るためにあらゆる政策方策を実施する」と述べた。

クレディ・スイスのエコノミストで元日銀の白川弘道のように、他のコストが上昇しているにもかかわらず、企業に賃上げを求めるのはかなり無理があると懐疑的な見方をする人々もいる。日本の消費者たちは伝統的に物価が上がると買い控えをする。そのため、小売業者は過去に値上げをするのをためらい、より少ない量でより高い単価を隠す「シュリンクフレーション(shrinkflation)」という概念を生み出した。

日本円が突然急落し、輸入品が更に高くなることも見通しを悪くしている。円は1ドル130円に迫り、年初から10%も下落している。これは、岸田首相が狭めようとしている経済格差を更に拡大させることになる。海外に大きな権益を持つ大企業は、自国にお金を戻すことで急激に高い利益を得るだろう。一方、平均的な労働者たちはレジでより多くの支払いを強いられることになる。

BNPパリバのチーフエコノミストで、日銀ウォッチャーとして知られる河野龍太郎は、「人々の関心が輸入インフレーション率の上昇と円安に向いている。こうした中で、短期的な景気刺激策だけでなく、超金融緩和を固定することによる長期的な悪影響についても、メリットとデメリットを再確認して検討する必要がある」と指摘している。

長期的には、日銀の最大の脅威はインフレーションサイクルが制御不能になることである。ドイツ銀行東京支店チーフエコノミストである小山健太郎は最近のレポートで、「日銀の政策スタンスが円安を悪化させ、物価を上昇させていると国民が確信すれば、日銀は家計の負担増を促す悪役になる可能性が高くなる」と指摘した。しかし、物価上昇に対抗する伝統的な方法である金利の引き上げは、ただでさえ弱い経済にブレーキをかけるだけでなく、日銀が保有する国債に多額の損失を与えることになる。

しかし、黒田総裁は躊躇していない。債務残高と円安への懸念がありながらも、日本銀行はここ数週間、国債買い入れプログラムを継続している。黒田総裁は、自分自身の目標は、日本を「デフレーション・マインド」から脱却させることだと常々主張している。今回の物価上昇で、彼は成功への道を歩み始めているのかもしれない。

問題は、こうした新たな懸念が、日本の高齢化社会、労働力の減少、低成長と一緒になって、長期的かつ不可逆的な景気後退をもたらすかどうかである。見通しには問題があるが、日本は過去に何度も懐疑的な見方を覆してきた。シティグループの当時のチーフエコノミスト、ウィレム・ブイターは、2010年のイヴェントで、「日本は世界で最も理解しにくい経済だ。これが物理学なら、日本において重力は働かないことになるだろう」と述べた。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリストで2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。彼は20年以上にわたり日本の政治と経済をフォローしており、ロイター通信と『ウォールストリート・ジャーナル』紙で働いている。彼は2021年に刊行されたカルロス・ゴーン事件と事件が与えた日本に与えた影響についての著作の共著者である。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は経済のお話を書きたいと思います。私は経済学が苦手です。大学の経済学の授業でも半分寝ていたような人間です。ですから、経済の話は避けていたのですが、今回挑戦してみたいと思います。まずは思い出話から始めたいと思います。

 

 私が小中高時代を過ごしたのは、1980年代から1990年代にかけてです。私は九州の地方都市で育ちました。大人たちとは全く別の子供の世界、大人たちの顔を曇らせたり、笑顔にしたりするものと言えば、テレビのニュースでした。私が小学校時代に、久米宏司会の「ニュースステーション」が始まりました。それまでのニュース番組とは何か違うな、面白いなと思って大人たちと一緒に見ていました。フィリピンの民主化や第二次天安門事件など固唾を飲んで見守っていたことを思い出します。

 

 そんな中で、大人たちがいつも話をしているのが景気の話でした。バブルが始まる前兆があったのでしょう。地方都市の公務員の家でも株の話が出るようになりました。「●●さんはNTTの株を買って大儲けしたらしい」なんてことを聞いていました。

 

 ニュース番組の最後には、東京証券取引所の平均株価、そして円ドルの為替レートがいつも流されていました。株価が上がれば大人たちは喜んでいました。それでも子供ながらに不思議なことがありました。「円安、円高」という言葉でした。「238円から237円になったのに、“円高”になったと言って大騒ぎする」大人たち。数字が小さくなっているのに「円高」ってなんなのだろうか?と思って親に聞いても、子供に分かるように説明してくれませんでした。

 

 それでも小学校の高学年になって少し知恵がつくと、「価値」というものが少しわかるようになり、そして、日本という国が「加工貿易」で世界の中でも豊かな国となっていると習うようになりました。時代は、日米貿易戦争で、日本製の自動車やラジオがハンマーで壊されていました。

 

 「日本は原材料を輸入して、それをテレビ、ラジオ、自動車、船、鉄鋼などに加工して、それを輸出してお金を稼いでいる」ということを習いました。そして、「円安だと輸出した先の国で製品が安く売れる」ということも分かりました。だから、円が少しでも高くなると、自分たちのせいではなくて製品の値段が上がるから円安が良いのだ、ということを理解できるようになりました。そして、得意げに友達にこのことを説明していました。今から考えると、汗顔の至りです。

 

 私たちの世代くらいまでは、「日本は加工貿易の国で、円安は良くて、円高は悪い」ということをある意味刷り込まれてきたと言えると思います。「日本は世界中に工業製品を輸出してお金を稼いでいる。輸出あってこその日本なのだ」ということを私たちは教えられてきました。確かに世界各国に行って日本人と分かれば、その国の人たちから「ソニーの製品は素晴らしいね」「トヨタの車は故障がなくて良く走るよ」と賛辞を寄せられることが多いです。自分は全く関係ないのだけれど、それは別にして嬉しくなることは事実です。

 

 しかし、日本はどうも「輸出主導型経済」ではなくなっているようです。1960年代からの奇跡の高度経済成長の幻影はあるのですが、日本は先進国となり、製造業ではなく、サーヴィス業がその割合をどんどん増やしているようです。

 

※厚生労働省の報告書のアドレス↓

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-4_02.pdf

 

※2013年10月7日付東洋経済オンライン 野口 悠紀雄(早稲田大学 ファイナンス総合研究所顧問)「輸出主導型ではなくなった日本経済 リーマンショックから5年、世界はどう変わったか」のアドレス↓

http://toyokeizai.net/articles/-/20873

 

 もちろん、日本の製造業がこれからも頑張ってもらいたい、海外で売れる製品を作ってもらいたい、外貨を稼いできてもらいたい、というのはそうなのですが、新興諸国の追い上げということも考えていかねばなりません。

 

 そうなると、「輸出(外需)主導」ではなく「内需主導」型経済ということになりそうです。ただ、内需主導経済で経済の規模が大きくなるのかということは分かりません。ですから、外需に偏っていたものを内需にしていくということなのだと思います。また、内需主導経済というのはよく分からないものです。

 

 それでも現在の日本は、アベノミクスで株価は上がっています。そして、円安によって企業の売り上げは良くなっていると言われています。しかし、円安によって輸入品の値段が上がり、物価はどんどん上昇しており、給料の伸びが追いついていない状況です。株価が上がっても、株式を頻繁に取引する人たち以外にはまず関係のない話です。日本国民の8割以上は株式取引をしたことがないのです。

 

 「円安にして輸出を増やす」ということも、今の日本では難しいです。なぜなら、1980年代から円高基調になって、各メーカーは生産拠点を海外に移しているからです。日本国内にも製造工場がありますが、日本列島全体が生産工場ということはありません。円安で輸出を増やすということはできるはずがありません。

 

 また、日本人の人件費も高度経済成長のおかげで伸びていきました。どんどん豊かになりました。簡単に言えば、昔は日本人の給料は世界に比べても安くて、その上高品質の製品を作ることができたので、低価格で良いものを世界中に売りまくることができました。しかし、今は人件費が上昇し、円安をいくら進めてもそこまで低価格にはできないのです。

 

 それでは、円安で輸出を増やすということをやるためには何が必要になるかというと、低賃金で働く人々です。アメリカにおける移民の立場はまさにそうです。しかし、日本ではなかなか移民受け入れは難しいのが現状です。そうなると低賃金層は日本国民の中に作らねばなりません。

 

 現在のアベノミクスがやろうとしていることは、低賃金層を生み出そうということです。お金持ちがいきなり低賃金層になることはありませんから、中間層から脱落していく人たちが増えていきます。低賃金で働かざるを得なくなる人たちが増えていきます。

 

 私がこの部録の記事で指摘したように、中間層は民主政治体制(デモクラシー)にとって重要な要素となります。中間層がいなくなれば、民主政治体制は脆弱になります。

 

 若者の非正規雇用やマイルドヤンキーといった現象はこうした中間層がいなくことを示しています。お金持ちと貧困層の二極化が進みます。そして、貧困層は政治になど関心を持たなくなります。そうなれば支配者層とつながるお金持ちたちに都合の良い支配体制となります。それが自民党の一強多弱時代です。

 マルクスの理論では、資本主義がどんどん発展していくと、格差が拡がり、労働者(プロレタリアート)階級がブルジョア階級を倒す階級闘争(クラス・ストラグル)にまでいくということになります。しかし、現在の日本では、そうした自分の状況に関心を払うことも、政治に関心を払うこともできない状況になっています。また、低賃金層の団結も妨げられ、孤立化も進んでいます。

  
私は、財政の再配分機能を利用して、つまり、人々の家計にお金が直接入るような政策を行うことを支持します。 

 

 今回の総選挙で自民党の一強時代はしばらく続きそうです。そうなれば、日本はますますお金持ちと低賃金層の二極化、中間層の脱落が進んでいくことになります。そうした状況を変えるためにも、野党勢力にはしっかりとしていただきたいと思います。

  

(週刊誌記事転載貼り付けはじめ)

 

安倍自民大勝もアベノミクスが落とし穴

 

(週刊朝日 20141226日号掲載) 20141219()配信

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/1.htm

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/2.htm

 

 選挙で予想通りに大勝した自民党は、来週にも新内閣を発足させ、向こう4年間の長期政権をスタートさせる。

 

 憲法改正まで見据え、着々と足場を固めていく安倍首相。だが、今後の政権運営には、多くの落とし穴が待ち構えている。まずは年明けにも想定される原発再稼働だ。

 

 今回の衆院選で首相はあまり触れなかったが、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は早ければ2月にも、再稼働する。他の原発も原子力規制委員会の基準を満たせば再稼働していく。

 

 今年7月の集団的自衛権行使を認めた閣議決定に沿った安全保障関連法案も来年の通常国会に提出される。自民党の高村正彦副総裁は「すぐに安保法制の大枠を作る作業に入りたい」と話しており、作業を加速させる考えだ。

 

 関連法案の審議の時期は統一地方選後になりそうだが、自衛隊がこれまでより危険にさらされるだけに、国会の内外で再び大きな反発が起こることも予想される。

 

 安倍首相が政権公約集の表紙に掲げた「景気回復」も足元は心もとない。

 

 選挙期間中、今年7月から9月までのGDPの改定値が発表されたが、速報値の年率マイナス1.6%からマイナス1.9%に下方修正。4月の消費税8%への増税は、結果として内需を冷え込ませ、予想以上に深刻になっている。

 

 自民党ベテラン議員は言う。

 

「アベノミクス3本目の矢の成長戦略も妙案がなく、みな困り果てています。すでに掲げた医療・雇用の規制緩和や農業改革などは、自民党の支持団体の抵抗にあってスムーズに進んでいない。

 

1月以降に景気回復が進まなければ、国民の期待は一気に怒りに変わるでしょう。統一地方選にも打撃となります」

 

 同志社大学大学院の浜矩子教授は「来年1月以降の経済はさらに厳しくなる」と予測する。

 

「消費や設備投資は低調で、どの指標を見ても景気上昇のきっかけが見られない。物価上昇の影響で実質所得もマイナスになっている。円安で輸入製品の価格が上がり、生活コストも上昇しています。これでは消費が伸びるはずがありません。実際に痛みを感じている中低所得者層に直接、働きかけることをしないと、経済はなかなか回復しない」

 

※週刊朝日  20141226日号より抜粋

 

(週刊誌記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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