古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:制裁

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はロシアが東部に注力するために戦線を整理縮小している。戦線の整理縮小には数週間の時間がかかるだろうが、それが終わればウクライナ東部ドンバス地方での更なる攻撃作戦が実施されるだろう。

私は2月にロシアによるウクライナ侵攻が開始された際にはロシア軍は東部ドンバス地方を確保しそれ以上は前進しない、戦争は激化しないと考えていたがそれは間違っていた。しかし、結果としてロシア軍は東部に注力することになった。ウクライナが東部をロシアに渡さないために戦闘を継続するか、東部に関しては妥協して停戦を行うのか、不透明であるが、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はアメリカに更なる重要な兵器供与を求める発言をしており、戦争はこれからも継続するだろう。

ゼレンスキー大統領の停戦に前向きな姿勢は演技でしかない。これまでも何度もより有利な条件での停戦合意ができるはずであったがそれができていないということは、ゼレンスキー大統領は国民と国土の損耗も気にせずに自分は安全な場所にいて人々に戦闘と苦難を強いているということになる。戦争屋、好戦主義者の手先そのものだ。つくづく指導者選びは重要だと痛感させられる。ここを間違うと私たちの声明まで危険に晒される。

 アメリカの制服組トップのマーク・ミリー米統合参謀本部議長がウクライナ戦争は年単位で続くという見解を公式に述べた。これだけの大規模戦争で儲かるのは軍需産業であり、軍産複合体がますます肥え太っていく。アメリカは武器を供与するだけで、「アメリカ軍が参戦すると世界大戦になる」と言い続けて、ひたすら武器を送り続けるだけだ。アメリカにとっては「おいしい」展開である。

その代金は誰が支払うのか? ウクライナ政府がある程度は支払うだろうが、全てを支払えるとは思えない。そうなれば請求書は「西側先進諸国」に回ってくる。日本にも応分の負担をということになるだろう。結局、こうした国々に住む人々の税金ということになる。既に私たちは石油価格の上昇や円安によって給料が上がらない中で物価だけは上がっているという状況に直面している。そこに増税が襲い掛かってくる。やれやれ、頑張れ頑張れと囃し立てた、いつもはリベラルな、ご立派な知識人を僭称する好戦主義者たちだけに重税がかかるなら良いが、そういう訳にはいかない。

 更に言えば、ロシアからの石油、石炭、天然ガスがなければ生きていけないヨーロッパ諸国は経済制裁だ、ロシアを経済的にぶっ潰してやる、とお勇ましく気勢を上げながら、裏では「ロシアからの天然資源が来なければ困っちゃうの」ということで、今でも輸入している。ロシアとしては戦費の問題もあるから売った方が良いということになる。これでどれだけの制裁の効果があるのか甚だ疑問だ。「武器だけ渡して自分たちは何もしない、敵であるロシアから天然資源を買っている」という西側諸国の姿勢はウクライナ国民にとっては裏切りでしかない。今は助けてもらっているということになっているが、後で冷静に考えてみれば、自分たちは貧乏くじを引かされたのだということに気付いて、反西洋の考えがウクライナ国内で拡大することも考えられる。

 ウクライナ戦争は何とも奇妙な状況に陥ってしまった。かわいそうなのはウクライナ国民である。

(貼り付けはじめ)

アメリカ軍最高幹部がロシアとウクライナの紛争は「年単位と判断される」と予想(Top US general says he expects Russia, Ukraine conflict to be ‘measured in years’

マウリーン・ブレスリン筆

2022年4月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/news/3260171-top-us-general-says-he-expects-russia-ukraine-conflict-to-be-measured-in-years/

米統合参謀本部議長マーク・ミリー大将は木曜日、連邦下院軍事委員会に出席し、ウクライナでの紛争は何年も続くと予想していると述べた。

国防費請求に関する証言を行っている中、ミリーは「今回の戦争は非常に長引く紛争であり、数年単位続くと判断されると私は考えている。10年単位となるのかは分からないが、少なくとも数年であることは確かだ」と、国防予算要求に関する証言の中で述べた。

ミリーは続けて「今回の戦争はロシアが引き起こした非常に長期的な紛争であり、NATO、米国、ウクライナ、そしてウクライナを支援する全同盟諸国とパートナー諸国は、かなりの期間にわたって戦争に関与することになると思う」と述べた。

ミリーはまた、ロシアのウクライナ侵攻について、自身が軍務に就いて42年間の中で、「ヨーロッパのそしておそらく世界の平和と安全に対する最大の脅威」であると断じた。

ミリーは「ロシアのウクライナ侵攻は、ヨーロッパの平和と安定だけでなく、私の両親やアメリカ人が一世代にわたって守ろうとして懸命に戦った世界の平和と安定を損なう恐れがある」と述べた。

ミリーは、ロシアと中国が共に「現在の世界秩序(current global order)」に挑戦する立場にあると述べた。

ミリーは委員会の席上で次のように述べた。「私たちは今、2つの世界的大国に直面している。中国とロシアは、それぞれが重大な軍事力を持ち、ルールに基づく現在の世界秩序を根本的に変えようとしている。私たちは、より不安定な世界に入りつつあり、深刻な国際紛争発生の可能性は、減少するどころか、増大している」。

民主、共和両党の連邦下院議員たちは、ウクライナで使用されている兵器の種類についてミリーに質問し、ウクライナの防衛努力を強化するために何ができるかについて質問した。

バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻が2ヶ月目に突入したため、ウクライナの防衛を助けるために武器を送る姿勢を堅持している。

次に送られる武器はアメリカから送られる武器の第2弾となる。

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バイデンがウクライナ国内での「数々の重大な戦争犯罪」を非難(Biden decries ‘major war crimes’ in Ukraine

モーガン・チャルファント筆

2022年4月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/news/administration/3260644-biden-decries-major-war-crimes-in-ukraine/

ジョー・バイデン大統領は水曜日、ワシントンDCで行われた会議での演説で、ロシアに対する新たな制裁を喧伝し、ウクライナで「複数の重大な戦争犯罪(major war crimes)」を犯したとしてモスクワに責任を負わせることを約束した。

バイデンは、北米建築業組合の立法対策部門会議での演説の冒頭で、ウクライナの首都キエフに近い町ブチャで殺害された市民の恐ろしい画像について非難した。

バイデンは次のように語った。「ロシア軍の撤退の後に街中に遺体が残された。ある者は手を後ろに縛られた状態で後頭部を撃たれていた。一般市民は冷酷に処刑された。遺体は巨大な墓地に捨てられた。残忍さと非人道的な感覚が残され全世界が目撃している。主要な戦争犯罪が起こっているのである。責任ある国々は、これらの加害者の責任を追及するために団結しなければならない」。

今週初めにブチャの殺害を「戦争犯罪」とし、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に裁判を受けさせるよう求めたバイデンは、水曜日午前にホワイトハウスが発表したロシアに対する新たな制裁措置の概要を説明し、ロシアに対する国際的な罰則はロシア経済に深刻な影響を及ぼすことになると述べた。

バイデン政権は水曜日、ロシアの最大手銀行2行、プーティンの娘たち、セルゲイ・ラブロフ外相の家族を対象とした新たな制裁を発表した。バイデンはまた、ロシアへの新たな投資を禁止する大統領令に署名する予定だ。

バイデンは水曜日、ウクライナでの戦争についてロシアへの圧力を強化し続けると公約し、アメリカはロシアと戦うためにウクライナへの軍事支援を継続すると述べた。

バイデンは「ロシアは戦争開始時点の目的達成を失敗している。今日、キエフはまだ確保されている」と述べた。

複数のアメリカ政府高官は、ロシアはキエフから軍を撤退させているが、モスクワが攻撃開始から1ヶ月でキエフを奪えなかったため、プーティンはウクライナ東部に攻撃を集中させる可能性が高いと警告している。

バイデンは「この戦争は長く続く可能性があるが、アメリカはウクライナとウクライナ国民、そして自由のための戦いに立ち続けるだろう」と述べた。

バイデンは、ワシントン・ヒルトンホテルで行われたこの会議に出席していた2000人以上の組合幹部や組合員たちから、スタンディング・オヴェーションと大きな歓声を浴びた。

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バイデンの発言が意図していたもの(What Biden meant to say

ハーラン・ウルマン筆

2022年4月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3257864-what-biden-meant-to-say/

ジョー・バイデン大統領は、1973年に連邦上院議員になって以来、失言をしがちであった。最新の失言は10日前のワルシャワでのことだ。バイデンは「とんでもない男がいたものだ。この男は権力の座に居座り続けることはできない(For God’s sake, this man cannot stay in power.)」という9つの単語を発音するとほぼ同時に、ホワイトハウスは「大統領が言いたかったのは体制転換政策(policy of regime change)ではない」という訂正を出した。

同様の訂正はバイデン大統領のこれ以外の重大な3つの外交政策に関する宣言にもどれくらい適用されるものなのか。その三つとは、民主政治体制対独裁政治体制(democracy versus autocracy)、ロシアのプーティン大統領を戦犯とする(labeling Russian President Valdimir Putin a war criminal)、NATOの全てを防衛する(defending every inch of NATO)である。この同じ訂正基準がどのように適用されるのだろうか。

バイデンは以前から、民主政治体制と独裁政治体制の間の戦いを実存的なものと呼んできた。敵は、ロシアや中国と言った独裁国家、北朝鮮、イラン、そして現在ホワイトハウスがロヒンギャに対する大量虐殺の罪を犯したと烙印を押したミャンマーなどの劣化国家の独裁者たちである。しかし、歴代の米大統領は、民主政治体制と抑圧的な独裁政治体制の間の戦いをしばしば巨視的なものとしてとらえてきた。

ジョン・F・ケネディ大統領は「自由の存続と成功のためなら、いかなる代償も払い、いかなる重荷も背負う」と宣言した。この約束は、アメリカによる南ヴェトナムへのコミットメントとなり、アメリカは数十年にわたる戦争に負けることになる。リンドン・B・ジョンソン大統領はさらに、ヴェトナム戦争は「共産主義者をミシシッピではなくメコンに留めるため」であると主張した。しかし、アメリカはその教訓を学んだのだろうか?

学んではいないのだ。2002年にイラン、イラク(両国は血生臭い戦争をした)、北朝鮮の間の神聖でなく実行不可能な同盟を捏造するために悪名高い「悪の枢軸(axis of evil)」を作り出した後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「フリーダム・アジェンダ(Freedom Agenda)」を考案して、遠過ぎる橋を渡った。ブッシュのテーマは、民主化(democratization)が「中東の地政学的な風景を変える(change the geostrategic landscape of the Middle East)」というものだった。ブッシュは正しかった。イラクをそしてこの地域全体に民主化をもたらすための第二次イラク戦争は中東の特質を悪い方向に変えてしまう大惨事(disaster)となった。

問題は、民主政治体制対独裁政治体制ではない。民主政治体制を機能させることが問題なのであって、独裁体制が民主体制より優れているかどうかが問題なのではない。中国とロシアが成功しているように見える理由の一つは、ほとんどの世論調査から分かるようにアメリカの政府が失敗しているからである。

しかし、アメリカは民主政治体制が存在するために衰退しているのではない。アメリカは、統治(governing)よりも権力とイデオロギー(power and ideology)を追求する二つの政党のために衰退しているのである。ベンジャミン・フランクリンは賢明にも「皆さんがそれを維持できる限りアメリカは共和国だ」と述べた。現時点では陪審員は不在となっている。

バイデンは以前、ウラジミール・プーティンを「虐殺者(butcher)」「殺人者(killer)」「戦争犯罪者(war criminal)」と呼んだ。しかし、ロシアとの交渉は不可欠で、それはウクライナに関する議題にだけ限定されない。軍備管理、イランの核兵器開発を阻止し、核戦争につながる不用意なエスカレーションを防ぐことが重要なのだ。

この文言は交渉の助けになるのか、それとも妨げになるのか? アメリカはこれまで、プーティンのような不愉快なアクターとしばしば交渉してきた。ヨシフ・スターリン、朝鮮戦争中の中国共産党、ニクソンの三角外交、北ヴェトナム、包括的共同行動計画でのイランなどだ。

ウクライナ戦争が終わったら何が起きるだろうか? 長期的な敵対関係を反映したものになるのだろうか? もしそうなら、戦争犯罪者プーティンに対処するだけでなく、独裁政治体制との戦争と必要な交渉とのバランスをとるために、バイデン政権はどのような戦略をとるのだろうか?

バイデン大統領は、北大西洋条約第5条の鉄壁の約束でNATOの領土を「全て」守ることを繰り返した。しかし第5条は鉄壁なのだろうか? 第5条には「一カ国に対する攻撃はす全ての加盟国に対する攻撃と見なす」と書かれている。そして、各国はそれぞれどのような行動を取るか検討するものとされている。

第5条の発動は、武力行使や宣戦布告を自動的に保証するものではない。加盟諸国の議会は、武力行使や宣戦布告を承認しなければならない。例えば、ロシアがポーランド国内にあるウクライナへの補給線に一発のミサイル攻撃をしたり、ポーランドで小型核兵器を爆発させたりしたとしよう。このような事態が起きた場合にはNATOはどう対処するだろうか?

加盟各国は第5条に賛成するだろうか? もし賛成なら、ロシアの核攻撃に直面して、各国政府は戦争に突入するだろうか? 第5条は2001年9月12日、アルカイダが米国を攻撃した後に一度だけ発動された。しかし全てのNATO諸国がアフガニスタンに出兵した訳ではなかった。

これらの批判は専門的に聞こえるかもしれない。しかし、そうではない。政治はしばしば世論に影響を与えるために誇張や大げさな表現を要求するが、それはリスクと無縁ではない。連邦上院のある幹部が私に非公式に語ったように、プーティンは自分に対する疑惑をプロパガンダとして利用し、アメリカとNATOのロシアに対する敵意を更に証明し、ウクライナでの「特殊軍事作戦(special military operations)」を正当化するだろう。

だから、何が語られているのか、そしてもっと重要なのは何を意味しているのかに注意することだ。しかし、5条の場合、私はバイデンが本気だと信じている。

ハーラン・ウルマン(博士):ワシントンDCにある大西洋協議会上級アドヴァイザー。アメリカの対イラク戦略「衝撃と畏怖(shock and awe)」の主張菜立案者となった。最新作は 『第五の騎士と相互認証破壊:大規模な破壊攻撃がいかにして分断された国家と世界にとって存亡の危機となるに至ったか("The Fifth Horseman and the New MAD: How Massive Attacks of Disruption Became the Looming Existential Danger to a Divided Nation and that World at Large")』である。

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最新の対ロシア制裁について知っておくべき5つのポイント(Five things to know about the newest Russia sanctions

ロウラ・ケリー筆

2022年4月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3261009-five-things-to-know-about-the-newest-russia-sanctions/

ジョー・バイデン政権は水曜日、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の側近、娘2人、そしてロシアの金融機関を対象とした新たな制裁の拡大を発表した。

バイデン政権は、制裁はロシアの撤退後、キエフ郊外のウクライナの都市や町で発覚した恐ろしい状況に直接対応するものだと発表した。ロシアの占領下にあって、何百人もの市民が意図的に殺されたと考えられている。

バイデン大統領は4月2日の演説で、「重大な戦争犯罪が実際に起きているのだ」と述べ、「責任ある国々」が犯人の責任を追及するよう呼び掛けた。

バイデンは「同盟諸国やパートナー諸国と協力して、経済的コストを上げ続け、プーティンの痛みを増長させ、ロシアの経済的孤立をさらに高める」と述べた。

今回の制裁について知っておくべき5つのポイントを挙げていく。

(1)制裁はプーティンの娘たちを標的としている(Sanctions target Putin’s daughters

アメリカによるプーティンに対する制裁は水曜日にプーティンの成人した子供2名を対象とする新たな措置を取ることで拡大した。

今回の制裁は、ブラックリストに載っている人物がアメリカ国内で保有するあらゆる財産や資産を封鎖し、アメリカ人が制裁対象者と金融取引を行うことを原則禁止するもので、カテリーナ・ウラジミロヴナ・ティホノヴァとマリア・ウラジミロヴナ・ヴォロンツォヴァが対象となった。

バイデン政権のある上級幹部は水曜日、この2人の女性に対する制裁は「ロシアの独裁政治を暴露する」という米国の広範な戦略の一環として科されたと述べた。

アメリカ国内では、ティホノヴァは、ロシア政府と防衛産業を支援する仕事をしている技術系幹部、ボロンツォヴァは「クレムリンから遺伝子研究のために数十億ドルの予算を受け取り、プーティンによって個人的に監督されている」 国家予算によるプログラムを指揮していると説明されている。

国務省において40年にわたって様々な上級職を歴任し、駐ロシア大使を務めたトーマス・ピッカリングは、この動きは「小さなジェスチャー」だと述べたが、「プーティン個人に向けられていることは明らかだ」とも付け加えた。

ピッカリングは、プーティンが新たな措置に直面しても「冷淡(unflinching)」であることを期待すると述べた。アメリカは既に、ロシアの指導者プーティンに対して特別な制裁を科している。

ピッカリングは次のように述べた。「私は、プーティンが毅然とした態度で臨み、制裁が個人的な影響を及ぼしているという兆候を見せようとはしないだろうと考える。そのためには、同じことを繰り返さないようにすることと、自分自身を無敵の強者、強靭な柔道家、リーダーであるという概念を維持することになる」。

(2)アメリカはプーティン大統領の側近と外相の家族をブラックリストに掲載(U.S. blacklists Putin’s top associates and family of foreign minister

その他にロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相の妻マリヤ・アレクサンドロヴナ・ラヴロヴァと2人の娘アカテリーナ・セルゲイヴナ・ラブロワが制裁対象者となった。ラヴロフ外相は2月25日付でプーティンと同じタイミングで制裁対象となった。

また、アメリカはロシアの安全保障会議の21名のメンバーも制裁対象にしている。今回の措置により、これまでの制裁と合わせて、ロシア安全保障会議の全メンバーが、アメリカもしくはアメリカの同盟諸国、カナダ、ヨーロッパ連合(EU)、日本、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスによる制裁を受けることになった。

アメリカはこれまでに、オリガルヒ140名と彼らの家族、更には400名以上のロシア政府高官を制裁対象にしていた。

バイデン政権のある高官は制裁対象者について「戦争の重要な設計者たち(the key architects of the war)」と呼び、制裁戦略は「プーティンとその取り巻きが何十年もロシア国民から金をむしり取ってきたことを明らかにする」ためだと述べた。

ピッカリングは、個人に対する制裁が米国によるエスカレーションをどれだけ明確に示しているかは不明だとしながらも、「個人を対象にした制裁というアイデアは常に、最高指導者層にメッセージを送り、何らかの方法で、その指導者にとって厄介なことを実行するということなのである」と述べた。

(3)ロシアのエネルギーとガス供給は現在のところ大部分が許可されている(Russian energy and gas delivery largely allowed, for now

ロシアに対して壊滅的な打撃を与えるために最も重要なのは、アメリカとその同盟諸国が、ロシアの予算収入の約40%を占める石油と天然ガスの輸出を断つ努力をしたことだ。

バイデン政権は、ロシア最大の銀行であるスベル銀行とアルファ銀行に対する制裁の拡大を発表したが、ロシアの石油・ガス輸出のための金融取引を許可する重要な例外規定を設け、ロシア経済にとって最も有害な措置の一部を差し控えた。これによりヨーロッパの同盟諸国のためのエネルギーは確保されることになった。

この金融緩和措置により、諸外国はロシアの輸出代金を自国通貨で支払うことができるが、ロシアはその収入をルーブルに換えてから使用することができるため、その影響はやや弱くなる。

新アメリカ安全保障センターのエドワード・フィッシュマン上級研究員は「エネルギーは何故除外されるのか? 最も答えに近い推測は以下の通りだ。アメリカはヨーロッパ連合の意向を無視できず、ヨーロッパ連合はドイツの意向を無視できないからだろう」とツイートした。

ドイツのクリスチャン・リンドナー財務相は、「短期的なスパンで言えば、ドイツにはロシアのガスを遮断する余裕などない」と発言した。

ロイター通信によると、リンドナー財務相は「ロシアからの天然資源輸入を停止することは彼らよりも私たち自身に大きな損害を与えることになる」と述べたということだ。

フィッシュマンは、「ロシアは石油とガスの販売を続けることで、毎日10億ドルをかき集めることができる」と述べた。

アメリカはロシアの石油とガスの輸入を停止している。イギリスは4月2日、2022年末までにロシアの石炭と石油への依存を解消し、その後すぐに天然ガスの輸入を終了するように対処すると発表した。

ヨーロッパ議会のシャルル・ミシェル議長は水曜日、ロシアの石炭を直ちに禁止する新たな制裁パッケージを提案し、「石油、さらには天然ガスの輸入禁止も遅かれ早かれ必要となるだろう」と述べた。

リトアニアは日曜日、ヨーロッパ連合加盟国で初めてロシアの天然ガス輸入禁止を発表し、バルト沿岸の隣国ラトビアも間もなく同様の発表をすると見られている。

しかし、ヨーロッパ連合が一体となって制裁措置を講じるには、ヨーロッパ連合加盟27カ国からのコンセンサスが必要となる。プーティン大統領を支持するハンガリーのオルバン・ヴィクトル大統領は、ブダペストはロシアのエネルギー輸入禁止に参加しないと既に明言している。

(4)ハンガリー、インドそして中国は制裁強化のための切り札だ(Hungary, India and China are wild cards in enforcing sanctions

ハンガリーのオルバン大統領がロシアからの天然ガスの代金を支払い続けるという約束をしたことは、アメリカがロシアに対して世界的に統一された金融圧力キャンペーンを行うという目標において、埋められなかった他の溝を広げることになる。

インドはロシアとの重要な関係を維持するために、アメリカの制裁に加わることも、モスクワの侵攻を露骨に非難することさえも控えている。インドはロシアから石炭と石油を輸入している。

このバイデン政権高官は、インドを「友人」「パートナー」と呼びながらも、ロシアの侵攻についてインド側と幅広く議論してきたと述べた。この人物は「私たちは、可能な限り最大限の調整を行うことができるという希望を持ち続けている」とも述べた。

一方、ロイター通信によると、中国はロシアの原油のトップ輸入国であり、ロシアのガスと石炭を相当量輸入している。

北京は、ワシントンのモスクワに対する孤立キャンペーンを嘲笑する一方で、クレムリンと完全に連携することは控えてきた。ロイター通信は、北京がロシアとの既存のエネルギー契約を尊重する一方で、新たな契約を結ぶことは避けていると報じている。

このバイデン政権高官は、ワシントンは「アメリカ政府と中国政府の最高レヴェル」による一連の非公開協議を行い、アメリカは「これらの制裁を回避したり埋め合わせたりするいかなる努力の結果について、中国政府に対して明確に示してきた」と述べた。

(5)アメリカ政府はロシアの各金融機関に対する制裁は「ソヴィエト・スタイル」の生活水準へのトリガーを引く(U.S. says Russian bank sanctions triggering “Soviet-style” living standards

バイデン政権はイギリス政府と共に、水曜日にロシアへの新規投資を阻止することで、更に一歩踏み込んだ。これは急速に変化する世界の中で、ロシア経済から新たな収入と最新の技術やノウハウへのアクセスを奪うというより広範な戦略の一部である。

バイデン政権のある上級幹部は「現実的に言えば、ロシアは経済的、金融的、技術的に孤立しつつあり、このままでは1980年代のソヴィエト・スタイルの生活水準に戻ってしまうだろう」と語った。

ハーヴァード大学博士研究員でヨーロッパ政策分析センター上級研究員のベンジャミン・シュミットは、ロシアの銀行部門に発動された制裁は、ウクライナ戦争で「プーティン政権に容赦しないよう圧力を強める重要な次のステップ」だが、「エネルギー取引を促進するための大きな揺らぎを残す」ものだとも述べた。

シュミットは本誌の取材に対してEメールで「石油とガスがプーティンの恐ろしい戦争マシーンの資金源として重要な役割を果たしていることを考えると、国際社会がこの資金の流れをできるだけ早く止めるための措置を取ることが不可欠だ」と回答した。

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バイデン氏、プーチン氏は「戦争犯罪人」 対ロシア追加制裁へ

ロイター通信 2022年4月5日

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-biden-idJPKCN2LW1FW

[ワシントン 4日 ロイター] - バイデン米大統領は4日、ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ近郊で民間人とみられる多数の遺体が見つかったのを受け、プーチン大統領を「戦争犯罪人だ」と非難した。

バイデン氏はまた、ロシアにさらなる制裁を科す方針も示した。

ホワイトハウスで記者団に対し「ブチャで何が行われたか、誰もが知るところとなった。(プーチン大統領が)戦犯に当たることを示している」と指摘。「情報を収集する必要がある。ウクライナが戦い続けられるよう必要な武器を提供し続けると同時に、戦犯裁判を起こすために全ての詳細を把握する必要がある」と述べた。

サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は4日の記者会見で、戦争犯罪の立件に向けて、米国内や同盟国、ウクライナの現地、国際機関、各国の独立系メディアといった4つの情報源から証拠を集めると説明した。

ゼレンスキー大統領は4日、護衛官とともにブチャを訪れ、国営テレビに対し「これは戦争犯罪であり、世界でジェノサイド(民族大量虐殺)として認識されるだろう」と述べた。

一方、サリバン氏は、米国がジェノサイドと断定できるほどの証拠をまだ確認していないと述べた。

サリバン氏はまた、今週中にロシアへの追加制裁を発表する予定だと明らかにした。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻に対して欧米諸国を中心に様々な制裁措置が実施される。ロシアの国際金融からの締め出しや各国に持つ資産凍結などによって、ロシア経済はダメージを受けるだろうが、多くの人々が予想しているように、制裁が一枚岩ではないので、その効果は限定的になってしまうだろう。中国やインドが反対もしくは慎重姿勢を見せているので、それらの国々が制裁を行わない、もしくは制裁のレヴェルが低いとなると、ロシアにとっては抜け道となる。

 アメリカで実施された世論調査の結果によると、アメリカ国民の圧倒的多数が制裁には賛成している。しかし、昨年からの高いインフレーション率と石油価格の高止まりで生活が苦しくなっている中で、経済制裁によって更なる価格上昇になるのであれば制裁に反対という人の数は増える。また、約半数がウクライナ問題はアメリカにとって関係ないとも答えている。だから、アメリカ軍の派遣や空爆に反対の割灰は過半数を超えている。

 ロシア製品のボイコット、具体的にはアメリカの各州でウォッカの販売中止が続いているが、それがどれほどの効果を持つかと言われると正直それほどのことはないだろうと思われる。象徴的な行動ではあるが、実際の効果は期待できない。イラク戦争の際に、フランスが反対したことを受け、フレンチフライをフリーダムフライに改名したという哀しく滑稽エピソードを思い出す。

 ロシアは憎いが自分たちの生活もあるというアメリカ国民の実感が今回の世論調査の結果に表れている。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ危機の中、ロシアに対する否定的な見方は冷戦時代の水準に近づく:世論調査(Negative views of Russia near Cold War levels amid Ukraine crisis: POLL

-エネルギー価格が上昇するなら制裁への支持は半数に減少。

ゲイリー・ランゲ筆

2022年2月26日

ABCニューズ

https://abcnews.go.com/Politics/negative-views-russia-cold-war-levels-amid-ukraine/story?id=83108605

ロシアに対する否定的な見方は、冷戦時代終盤のレヴェルまで高まっており、ロシアのウクライナ攻撃に対する制裁をアメリカ国民の幅広い層が支持している。ただし、この制裁によってアメリカのエネルギー価格が上昇するということになると支持は半数にまで下がる。

一方、ジョー・バイデン大統領は、ABCニューズと『ワシントン・ポスト』紙の世論調査で、この状況への対応について肯定的な評価よりも否定的な評価を得た。33%が支持、47%が不支持で、残りは分からないと答えた。

より広い意味では、バイデン大統領の下で世界におけるアメリカの指導力が弱まったと答えた人の割合は48%と半数近くになった。強くなったと答えた人の2倍になった。また、危機管理に対する信頼度については、43%対52%となり、この1週間の情勢を考えると微妙な結果となった。

アメリカとヨーロッパの同盟諸国がロシアに経済制裁を行うことについて、67%が支持し、20%が反対、残りは分からないと答えた。しかし、バイデンが警告したように、制裁でエネルギー価格が上昇する場合、支持は51%に低下し、33%が反対となった。これは、過去40年近くで最も高いインフレーション率という経済面での不満を反映している。

washingtonpostabcpolls202202504
今回の世論調査は、ロシアがウクライナを威嚇し、木曜日に実際に侵攻した期間を含む、日曜日(2月20日)から木曜日(2月24日)の夜にかけて実施された。危機の進展に伴い、人々の考えや態度も変化していく可能性がある。

最も顕著なのは、ロシアに対する見方である。ロシアが2014年にクリミアに侵攻した数カ月後には77%がロシアを非友好的もしくは敵として見ると答えた。今回もそれとほぼ同程度となり、80%がロシアはアメリカに対して非友好的もしくは敵だと考えており、1983年(当時はソ連として測定)以来最も高い数字となった。

今回の世論調査の結果では、ロシアをアメリカの敵と考える人が41%となっており、2000年代初頭と1990年代初頭の一桁台から同様に上昇している。

ランガー・リサーチ・アソシエイツがABCの依頼を受けて実施した今回の世論調査では、ロシアをアメリカに対して友好的(または同盟国)だと答えたのはわずか12%だった。これは、2002年(911事件後の連帯の時期)の62%や、ソヴィエト連邦崩壊の2年後の1993年の66%から大きく低下している。

washingtonpostabcpolls202202505

●各グループ(Groups

民主党支持者(86%)、無党派層(81%)、共和党(78%)と、大多数がロシアを「非友好国」または「敵国」と回答した。リベラル派、穏健派、保守派のいずれでも80から〜88%がロシアを敵視しており、通常なら意見が分かれる、各グループの間で異例の一致を見せている。

民主党支持者の79%が制裁を支持し、その数字は無党派層で63%、共和党支持者で62%と減少する。制裁がエネルギー価格の上昇をもたらす場合、制裁への支持は、インフレーションのために既に経済的苦境にある人々の間では、苦境にない人々に比べて15ポイント低くなっている。

バイデン個人については、通常通りの深刻な党派による分裂に戻る。国政にとって重要なグループである無党派層はバイデンに対して否定的な見方をしている。民主党支持者の66%がバイデンの現在の状況への対処を支持しているが、無党派層で30%、共和党支持者で8%にとどまっている。その代わり、共和党支持者の75%と無党派層の54%が不支持で、民主党支持者の不支持は13%となった。残りは態度を未決定と答えた。

washingtonpostabcpolls202202506
危機対処に対するバイデンへの信頼や、アメリカの世界規模での指導力についても、同様に意見が分かれている。後者については、共和党支持者の82%がバイデンの下で世界におけるアメリカの指導力が弱くなったと答え、無党派層の53%もそのように答えたのに対し、民主党支持者でそのように答えたのは11%だった。

2017年と2018年に、ドナルド・トランプ大統領の下での米国の指導力について同じ質問をしたところ、こうした分裂は基本的に逆転した。しかし全体としては、トランプ大統領時代に最も良かった数字が30%で、それだけの人々がアメリカの指導力は強くなったと答え、現在のバイデン大統領の23%よりも高い数字となった。

●方法論(Methodology

今回のABCニューズとワシントン・ポスト紙の共同世論調査は、2022年2月20日から24日にかけて、全国の成人1011名の無作為サンプルで選び出し、固定電話および携帯電話を使って、英語とスペイン語で実施された。結果は、デザイン効果を含めて4ポイントの誤差がある。回答者の党派別の割合は、民主党・共和党・無党派がそれぞれ27・26・40となった。

今回の調査は、ニューヨーク州ニューヨーク市のランガー・リサーチ。アソシエイツがABCニューズのために制作し、サンプリングとデータ収集はマサチューセッツ州ロックビル市のアブト・アソシエイツが担当した。

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アメリカ国民の大多数が対ロシア制裁を支持:世論調査(Broad majority of Americans support Russia sanctions – poll

ジェイソン・ランゲ筆       

2022年2月24日

ロイター通信

https://www.reuters.com/world/broad-majority-americans-support-russia-sanctions-poll-2022-02-24/

ワシントン発(2022年2月23日、ロイター通信)。アメリカ国民の3分の2以上が、アメリカは、ロシアがウクライナ国境沿いのロシア軍を増強するならば、追加の制裁を科すべきだと考えている。ロイター通信・イプソスが水曜日に発表した世論調査の結果、明らかになった。

世論調査に回答した人の約半数は、ジョー・バイデン大統領の危機への対処を支持しないと答え、全体的な支持率の低さと同程度の割合、48%がウクライナ問題はアメリカには関係ないと答えた。

バイデン大統領は、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した場合、大きな代償を払うことになると宣言しているが、アメリカ軍を紛争に関与させることはないと表明し、約束している。

今回の世論調査は、火曜日と水曜日(2月22日と23日)にオンライン上で実施された。今回の世論調査の結果によると、アメリカ国民の約69%(共和党支持者と民主党支持者の過半数)がロシアへの追加の制裁を支持している。

バイデン大統領は火曜日、ロシアの企業や個人に対する措置を強化し、ロシアの銀行2行を事実上、米国の銀行システムから締め出した。

今回の世論調査の結果によると、ロシアの侵攻からウクライナを守るためにアメリカ軍を派遣することには62%が反対しており、共和党支持者の間で反対が最も強かった。また、空爆についても過半数が反対した。

2022年11月8日の中間選挙で連邦議会の過半数の議席獲得を目指す共和党所属の議員たちは、バイデン大統領のプーティン大統領への対応はあまりにも小規模すぎて、かつ、遅すぎたと批判している。

世論調査では、バイデン大統領の危機対応を支持した共和党支持者はわずか12%だった一方で、民主党支持者は58%に上った。

現在のところ、危機の原因がバイデンだという批判を行っているアメリカ国民は比較的少数にとどまっている。

世論調査によると、民主党支持者の過半数、共和党支持者の約半数を含む、国民の約半数が、火曜日にロシア軍にロシア民族分離主義勢力が独立を宣言下ウクライナ領土への侵攻を命じたプーティン大統領を非難している。バイデンに責任があると答えたのは、共和党支持者の間でも25%に過ぎなかった。

世論調査によると、制裁に対しては幅広い支持がある一方で、燃料やガスの価格を上昇するにしても、制裁は実行する価値があると答えたアメリカ国民は約半数にとどまった。ロシアは主要な石油・天然ガス生産国であり、紛争に対する懸念から、一部の石油契約の価格は2014年以来の高水準に達している。

世論調査は、全米においてオンライン上で、英語を使って実施された。民主党支持者420名、共和党支持者394名、無党派131名を含む成人1004人から回答を得た。結果の信頼性区間(精度の尺度)は4ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 今回は、韓国が実施した、対北朝鮮の太陽政策(Sunshine Policy)についての記事をご紹介します。太陽政策とは、韓国の金大中、盧武鉉両大統領時代に、南北関係を好転させるために採られた政策で、積極的な交流を行うというものです。今回の大統領選挙で当選した文在寅(ムンジェイン)大統領は、盧武鉉大統領の側近だった人物ですので、太陽政策を行う可能性があります(ただ、韓国国内法の縛りで以前のような内容にならない可能性もあります)。

 

 リベラル派の金大中、盧武鉉両大統領時代に続けられた太陽政策ですが、その後、保守派の李明博、朴槿恵両政権では、タカ派的な政策が採られ、南北間の緊張関係が高まりました。北朝鮮では、金日成から数えて3代目となる孫の金正恩が最高指導者となりました。このブログで先日ご紹介しましたが、冷静に見てみれば、北朝鮮の金政権にとって重要なことは、生き残りです。国家最高指導者として贅沢な暮らしをしたいという極めて人間臭い欲望も含めて、生き残りを模索しています。

 

 北朝鮮に対して、北風(厳しい制裁)か、太陽(交流と関与)かのどちらが良いのか、ということは対北朝鮮では常に中心的テーマとなるものです。

 

 今回の記事を書いたのは、アメリカで法律家として活動する韓国系の人物のようで、この人は、太陽政策は一定の成果を上げた、厳しい制裁はどのような反応を引き起こすのか分からないし、最悪の場合は核戦争にまで発展する、保守派は勇ましいこと言うが核開発放棄をすれば体制保証してやるという点で弱腰なのだ、ということを述べています。

 

 この著者の主張に全て同意はできませんが、厳しい制裁では状況が好転しないだろうという点は同意します。興味深いのは、この著者が今回の記事を書いたのは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に朝鮮半島問題の専門家たちがより厳しい制裁を主張する論稿を掲載し、それに対する反論のためです。私にとって興味深かったのは、フォーリン・アフェアーズ誌に掲載された記事の著者の一人が、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー研究員たったことです。クリングナーについては、私も以前ブログでご紹介しました。下記アドレスの「ヘリテージ財団の日本論」をお読みください。

 

http://suinikki.exblog.jp/m2012-11-01/

 

 

 クリングナーはより厳しい対北朝鮮制裁を主張していますが、こうした主張をする人々は、「北朝鮮を参らせる」ことに重きを置いて、「北朝鮮内外に大きな被害を出さないように」ということを考えていないようです。「窮鼠猫を咬む」という言葉がありますが、北朝鮮を「追い詰められた鼠」にしないことが重要です。そのためには「小鮮を烹るがごとし(小魚を煮る際に身を崩さないようにあまりかきまぜたりせずに、じっくり煮る)」という態度が必要です。

 

 よりリスクが少ない方法を採用することが重要であると考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

文大統領の秘密兵器は太陽政策だ(Moon’s Secret Weapon Is Sunshine

 

―韓国の新大統領は北朝鮮に対するタカ派的な政策を必要としない。大統領は成功した記録が残る政策だけを行うべきだ

 

ネイサン・パーク筆

2017年5月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/19/moons-secret-weapon-is-sunshine-south-korea-kim-jong-un/

 

文在寅(ムンジェイン)が韓国の新しい大統領に就任した。アメリカの勧告専門家たちは、文政権が北朝鮮に対して宥和的な姿勢を取るのではないかと懸念していると思われる。文在寅は盧武鉉大統領の首席スタッフを務めた。盧武鉉は最後のリベラル派大統領で、前任者である金大中大統領の「太陽政策」を継続した。金大中は1998年から2003年まで大統領職を務めた。イソップ童話の太陽と北風が旅人のコートを脱がせる競争をしたという寓話から、太陽政策という名前が付けられた。経済開発、観光、文化交流を通じた温かい関与が北朝鮮を更に開かせるだろうというのが太陽政策である。

 

韓国のリベラル派政権は10年続いた。この間に太陽政策は失敗であったと判定された。太陽政策を批判する人々の中には、最近の『フォーリン・アフェアーズ』誌に論稿を発表したアメリカの勧告専門家たちも含まれている。彼らにすれば、太陽政策は愚かな政策であって、「お金を与えれば、金正日(現在の指導者である金正恩の父親)率いる政権が変化する」という空想に基づいて、経済援助を促進したものであるということになる。太陽政策は校歌がなかったというだけではなく、道徳的に間違ったもので、金政権に核兵器開発のためのお金を渡し、核兵器を使って世界に対して身代金を要求できるようにしたという非難がなされている。

 

しかし、太陽政策全体を無駄だと斬り捨てることは間違いである。確かに失敗もあったが、太陽政策は、それが継続されていれば、より大きな成功を導き出したであろう重要な進歩を示してもいるのだ。

 

まず、私たちは、太陽政策が弱腰の、お金を渡して一時しのぎをしようとする政策で、結局北朝鮮が韓国に脅威を与えることを許した、という先入観を捨てる必要がある。

 

 

太陽政策の基礎となっているのは、韓国軍が北朝鮮の挑発行為を罰し、韓国民の声明を守ることができるという自信と信頼だ。

 

太陽政策の最初にポイントは、金大中元大統領が明確に示したように、韓国は、北朝鮮が軍事的な挑発行為を許さないという点だ。金大中政権、2003年から2004年にかけての盧武鉉政権はこの前提をしっかりと守った。1999年と2002年に、北朝鮮海軍は北方限界線(黄海上に引かれた事実上の国境線)を越えた。韓国軍は圧倒的な力で反撃し、北朝鮮海軍の将兵多数を殺傷した。一方、2010年に北朝鮮海軍は、韓国海軍のコルヴェット艦を一隻沈め、乗組員46名が犠牲となった。この時、保守派の李明博大統領は、泣き言で対応し、口だけの非難を発表しただけであった。

 

北朝鮮の挑発行為を罰することで、太陽政策は真の利益を生み出した。最大の利益は、朝鮮半島における戦争を引き起こす緊張関係と恐怖感を大きく減じさせたことである。太陽政策の最盛期、韓国国民約1000人が開城工業地域に常駐し、約54000人の北朝鮮の労働者を監督した。約200万人の韓国人観光客が北朝鮮の金剛山を訪問し、10万人が開城市の歴史地区を訪れた。北朝鮮と韓国に分かれた離散家族の再会が定期的に、年2回行われた。朝鮮戦争によって悲運にも引き裂かれた多くの家族が短い時間であったが再会することができた。朝鮮戦争以降初めて、韓国の航空会社の飛行機が北朝鮮の領空内を攻撃される心配なく自由に飛行することができた。 金正日は、金大中と盧武鉉と直接対面した。現在までのところ、韓国の大統領で北朝鮮の指導者と実際に面会したのはこの2人だけだ。

 

こうした定期的なやり取りによって、韓国国民の間に安心感と安定感をもたらした。ワシントンDCにいる国家安全保障専門家たちはこの安心感と安定感を正しく評価できなかった。太陽政策が始まって4年後の2000年に実施されたアンケートでは、調査対象となった韓国国民の77%が金大中政権の北朝鮮政策を支持、もしくは強く支持すると答えた。支持、強く支持と答えた人々のうち、65%は、「軍事的緊張を削減したこと」を支持理由の第一として答えた。

 

太陽政策は北朝鮮にも確かな変化をもたらした。韓国国民との継続的なやり取りを通じて、北朝鮮国民は南側の豊かさに触れ、共産主義システムに対する信念が揺らいだ。その具体例がチョコパイだ。チョコパイとは丸いパイ状の菓子だ。開城工業地域で操業する韓国の工場で勤務する北朝鮮の人々に休憩時間のおやつとして、チョコパイが配られた。チョコパイの人気が北朝鮮内で過熱した結果、北朝鮮の労働者たちは配られたチョコパイを食べずにとっておき、国中の闇市場で販売するほどになった。

 

北朝鮮の人々が韓国語の書かれた包みを破り、中の美味しいお菓子を食べる時、彼らは韓国と北朝鮮の間で繰り広げられたイデオロギー闘争は終結し、北側が敗北したことを示す明確な証拠を味わうことになったのだ。これは取るに足らない事象などではない。韓国のお菓子と韓国製品(韓国のテレビ番組が録画された海賊版DVD)の大量流入は、金政権のプロパガンダの把握力を大きく弱めることになった。金政権はそのことを認識している。2014年、北朝鮮当局は開城工業地域で操業する韓国の工場に対して、北朝鮮の労働者に韓国のお菓子などを与えないように求めた。北朝鮮国民により良い選択肢を示したことによる結果は確実であった。北朝鮮からの脱北者の数は2001年から増加し始めた。2001年には約500名であったが、翌年には2倍になり、2003年には2000名に達した。

 

太陽政策に対する反対者たちは声高に反対を表明している。ジョシュア・スタントン、サンヨン・リー、ブルース・クリングナーは、『フォーリン・アフェアーズ』誌最新号の記事の中で、太陽政策を叩いた。彼らは論稿の中で、北朝鮮に対する更なる制裁を求めた。

 

スタントンたちが主張しているように、太陽政策は、北朝鮮の金政権の態度を大きく変化させることに失敗したというのは事実だ。しかし、金大中、盧武鉉両リベラル政権の後に10年間続いたタカ派政権もまた変化をもたらすことができなかった。タカ派政権は厳しい言葉遣いをしたが、李明博、朴槿恵両政権は、リベラル派の前任者たちのように北朝鮮の挑発行為に対して対応することに失敗した。保守政権が続いている間に、金正恩は祖父が始めた政権を受け継いだ。

 

しかし、タカ派の論客たちは、「問題は、タカ派の度合いが充分ではなかった」と述べている。スタントンたちは次のように書いている。「ブッシュもオバマも北朝鮮の原爆実験のたびに厳しい言葉を発してきたが、両者ともに言葉を行動に裏付けることに失敗した」。スタントンたちは言及していないのは、より厳しい制裁による潜在的なリスクである。彼らは、「より厳しい制裁には時間がかかり、決断力が必要であり、米朝関係は改善するまでには一度悪化することを受け入れねばならない。同じ言葉米中関係にも言える」と曖昧に書いている。米朝、米中関係はどれほど悪化するだろうか?この疑問の答えは、最悪のシナリオが米中衝突もしくは核兵器による攻撃ということになる。スタントンたちは、北朝鮮が朝鮮半島やそれ以外の地域にまで黙示録的世界をもたらすことなしに屈服するためのちょうどよい制裁のレヴェルをきちんと測定できるという自信を持っているのだろうか?

 

皮肉なことに、タカ派の人々が想定する結末は金政権に対するより弱腰の将来である。スタントンたちは次のように書いている。「アメリカは北朝鮮が核兵器よりも重視しているある価値をターゲットにして圧迫をしなければならない。それは金政権の存続だ」。言い換えるならば、金正恩が核兵器開発を放棄すれば、彼の全体主義的支配は継続する、ということになる。タカ派の人々は一方で北朝鮮の犯した人道に対する罪を糾弾しているが、核兵器開発を放棄する限りにおいて、金正恩の血塗られた独裁政権から目を逸らすべきだという提案を行っている。

 

こうして見てみると、太陽政策の利点は明確になってくる。

 

更なる制裁による最大のリスクは核戦争だ。一方、太陽政策によるリスクは最大でも現状維持の継続だ。タカ派的対応がもたらすであろう最良の結果は、核兵器を放棄した形での謙譲維持であり、金政権の人道に対する罪は放置される。一方、太陽政策のもたらすであろうと考えられる結果は、自由主義的で市場原理の下での、南北の漸進的で平和的な再統一である。

 

太陽政策の成果は本物だ。太陽政策によって、朝鮮半島はより安全になり、一般の北朝鮮国民の金政権に対する疑念を生み出している。失敗もまた同様に本物だが、太陽政策全体を放棄するということにはならない。現在のところ、太陽政策、もしくは太陽政策に類似する政策を実施しようとすると、国連による対北朝鮮制裁に関連する韓国内のより厳格な法律のために制限に直面してしまうことになる。しかし、機能する政策は、一世代前の韓国人のように北朝鮮の人々もまたより良い将来のために必要な富と安全を手にする権利がある、という原理を前提にして立案されるべきなのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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