古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 副島先生の最新刊『中国はアメリカに戦わずして勝つ』(ビジネス社)が2025年10月1日に発売になる。
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『中国はアメリカに戦わずして勝つ』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます

本書は副島先生の中国研究本は18冊目になる。本書の注目点は、体調不良が噂される習近平の後継者は誰になるのかという点で、副島先生は陳吉寧(ちんきつねい)という人物の名前を挙げている。全く聞いたことがない人物であり、日本での紹介は初と言えるだろう。
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陳吉寧

 以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載する。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。

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まえがき 副島隆彦(そえじまたかひこ)

この本の書名(タイトル)「中国はアメリカに戦わずして勝つ」にある、「戦わなくても勝てる」は何故か。第3章で説明する。

この本で、一番の大事は、「習近平の次は誰になるか」である。きっとこの問題には多くの人が関心を持つだろう。

どうも噂(うわさ)どおり習近平の体調は良くないようだ。この噂(ルーマー)が5月から世界中に広がった。だから中国の次のトップは誰かが問題になる。私は、ここではっきりその名前を書く。最有力は陳吉寧(ちんきつねい)(チェン・ジーニン 1964年生まれ、現在61歳)という人物である。日本人は誰も聞いたことがない名前の男だ。

私のこの予測(予言)についても、本書の第1章に書く。中国のトップ人事のことに、多くの人が関心を持つだろう。

3ページに載せた、米と中の関税(タリフ)(貿易)交渉についての最新の動きを説明する。去る7月28、29日にアメリカ財務長官のスコット・ベッセントと、中国の何か立峰(かりつほう)副首相が交渉した。この記事にあるとおり、どうせトランプは習近平と2人で直接、サシで話し合おうとしている。果たして、この秋から来年にかけて首脳会談となって習近平がトランプの要望(その実は哀(あい)願、願訴である)に応じるかまだ分からない。

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中国は、アメリカにヘコヘコしない。日本、欧州(EU)、イギリスのように「関税(タリフ)を15%にしてくれて、よかった!」というような軟弱野郎ではない。中国は〝音無しの構え”である。自分の方からは、尻尾(しっぽ)を出さない。余計なことは一切言わない。何故なら、アメリカ(トランプ)は、強大国で強そうなことをさんざん言っているが、本当は、国家財政(ファイナンス)がボロボロの借金(負債)大国だ。だから、世界中に関税(タリフ)(外国への税金(タックス))をかけて、おカネをぶったくって国家予算に回しているのである。日本からは7月22日に、合意で(ただし、まだ合意文書なし)80兆円〈5500億ドル〉を払わせる。トランプは、これを日本からの投資(インヴェストメント)(自由に使える)だ、と強弁(きょうべん)する。しかし日本側の赤沢(あかさわ)大臣は、「これは融資(ゆうし)(ローン)です(厳しいヒモ付き)」と言った。

日本のメディア〈テレビ・新聞〉は、この初原(しょげん)(そもそも)の「アメリカは破産している」を言わない。トランプが狂ったように、外国への課税をしているのだ、と書かない。説明しない。

 現在の最先端の半導体(はんどうたい)戦争の主役は、① 台湾TSMC(ティエムエスシー)(モーリス・チャン元会長、94歳)と、中国ファーウェイ(華為技術。任正非(じんせいひ)CEO、80歳)と、それからこの3年で急激に出現したNVIDIA(エヌビディア)(米国企業。しかし台湾人のジェンスン・フアン社長・CEO、62歳)と、それから、中国 DeepSeek(ディープシーク)というAI(エイアイ)企業の40歳(1985年)のガキンチョの梁文鋒(りょうぶんぽう)である。

この4社の競争のことも説明する。なんだ、みーんな中国人じゃないか。

加えて、Apple(アップル)社の最新のスマホiPhone(アイフォーン)16(シックスティーン)は、ぜーんぶ、本当は中国製じゃないか。フォックスコン(富士康(こう)、郭台銘(グオダイミン)会長、74歳)が中国各地で作っている。

これらのことも全部ぶちかまして真実(本当のこと)を私は書く。

 この本の仕上がりに石破辞任のニューズが流れた。石破首相は、よく頑張った。アメリカに80兆円(5500億ドル)の貢(みつ)ぎ金(がね)を、最後の最後まで、払わないと、頑張った。日本国民の為(ため)である。それで自民党内でイジめが続いて辞任表明した(9月7日午後6時)。

 このあと、日本に反共(はんきょう)右翼の政権ができるだろう。参政党と国民民主党と連合する。新しい政党になるかも。そうなると自民党は分裂する。残った全国の温厚な保守の経営者、資産家たちの意向を受けた、自民党ハト派(中国、ロシアとも仲良く付き合う)の政党ができるだろう。私はこの動きを支持する。

副島隆彦(そえじまたかひこ)

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『中国はアメリカに戦わずして勝つ』 目次

まえがき ──

第1章  習近平の次のトップが分かった

「戦わずして勝つ」は「孫子兵法」に書いてある ──14

習近平の次のトップは誰か ──20

アメリカのトランプ大統領の動揺が中国に影響している ──30

第2章  日本人よ、バカ右翼に乗せられるな。日米中の背景を理解せよ

日本の過去のあやまちを昭和天皇は鄧小平に詫びた ──40

松下幸之助は鄧小平に「よろしおます」と言った ──47

こういう流れで中国はアメリカと組んだ ──51

第3章 米中半導体戦争

米中の関税交渉と半導体交渉が重なり合う ──58

スマホ屋の時価総額が日本のGDPに匹敵する異常事態 ──75

半導体は6つある ──76

「線幅2ナノ」の技術競争に中国企業が加わった ──7

 TSMCとトヨタとソニーの関係──79

日本のロジック半導体で起きた〝問題〟 ──82

中国は台湾に攻め込まなくても奪い返せる ──84

この状況下でさらにバカさが目立ってきた日本人 ──87

商売人は商売になる方に付くのが当たり前なのだ ──90

台湾のTSMCの争奪戦というのが、米中問題の正体 ──92

台独の人たちはすでに台湾脱出の準備を終えている ──94

TSMCのモーリス・チャンが開き直ったから恐ろしい ──96

半導体が中国人にしか作れなくなったから、台湾が中国に帰ってくる ──98

第4章  「中国が衰退し、日本が復活する」の大ウソ。煽動する者たち

ソロスのブレーンが突然表に出てきた ──102

バブル崩壊後の1992年からが、「失われた30年」 ──111

1995年に、斎藤ジン氏はサイスを卒業 ──117

2009年から2017年がバラク・オバマ大統領 ──119

その国のことは、その国の頭のいい原住民に聞かないと分からない ──122

同性愛者特有の「血の命脈」 ──123

第5章  「日本を中国にぶつけよ」

参政党を操るアメリカの新戦略参政党躍進の裏にあるもの ── 134

神谷宗幣を操っているのはこの男だ ──147

「日本を中国にぶつける」という戦略 ──150

第6章  トランプは、参院選を利用して

石破を脅して日本から70兆円を奪ったトランプが自讃した「史上最大の取引」 ──154

変質するトランプ政治 ──160

日本人が理解しようとしない「ファースト!」の真の意味 ──166

日本の操り方を変えてきたアメリカに備えよ ──171

第7章 習近平と父習仲勲の苦難の人生の物語

育ての親の胡錦濤を平然と切り捨てた習近平 ──182

「大長征」の真実は地獄の逃走劇だった ──186

毛沢東は裏で日本とつながっていた ──190

フランスに通行料を払って中国を侵略しに行った日本軍 ──193

習仲勲の失脚と文化大革命 ──198

凄さと曲解を合わせ持つ、遠藤誉の習近平論 ──201

鄧小平を嫌う中国のインテリたち ──210

毛沢東が死ぬまで、中国は堕ち続けた ──215

中国人エリートたちが海外留学で獲得するもの ──220

集団発狂した人間の群れの恐ろしさ ──223

善人は使い物にならないと分かった鄧小平 ──226

女も稼げという客家の精神 ──231

習近平は戦争ができる男だと鄧小平に見込まれた ──234

天安門事件の学生たちは留学したあと海亀になった ──236

葉剣英が鄧小平と習近平をつなげた ──238

サッチャーは鄧小平の脅しに震えた ──244

1992年に天皇は夫婦が中国に行ったことの重要性 ──248

あとがき ──250

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あとがき 副島隆彦

この本は、私の18冊目の中国研究本である。これまでの18年間(2007年末から)に私は年に1冊の割合で、コツコツと自分の中国本を書いてきた。その全18冊の表紙を小さな画像(写真)にして、表題(タイトル)を1ページの一覧表にしようと企てたが、今回はできなかった。来年やります。

私は、18年前の2007年(アメリカでリーマン・ショックの金融危機が起きる前年。私は54歳だった)に、中国旅行から帰ったあと、猛然と中国の政治経済についての本を書きたくなった。いや、どうしても書かなければいけないのだと激しく焦(あせ)った。

中国は巨大な成長を始めていた。そのことに私は現地(広東(カントン)省の東莞(トンガン)市)で気づいたからだ。中国の現在を、日本の政治的0 知識人の眼を通して「中国で何が起きているのか」を通史として書き残さないといけない、と強く思った。

それは司馬遷(しばせん)が『史記(しき)』(紀元前90年)を編年体(へんねんたい)で書いたことの伝統に従ったものである。18年前の第1巻の私の中国本の書名(タイトル)は、『中国 赤い資本主義は平和な帝国を目指す』(ビジネス社、2007年12月刊)である。ここに刻印された文字たちは、やがて歴史の証拠となる。

私の志(こころざしを理解してくれた、この本の版元(はんもと)(出版社のこと。あるいは書肆(しょし))の社長が、私が毎年、時間を見つけて、中国の現地の各都市(その年に大事件が起きた都市)に現地調査に行く費用を出してくれた。毎回100万円の出費がかかった。担当の岩谷健一氏が同行して写真を撮り、資料集めを手伝ってくれた。有難いことである。

私には今に至るも、たった一人の中国人の親友もいない。中国語もできない。人物名を漢字で表現する拼音(ピンイン)さえ読めない。それなのに私はずっと、中国の各地を見て、そして次々に起きた政治動乱の跡の気配(けはい)を感じに現地に行った。住民たちは何事(なにごと)も無かったように静かに暮らしている。中国報道プロパーの新聞記者たちではない者が、厳格で冷酷な政治知識人の目を通して、中国を観察しその記録を残さなければいけないのだ、との強烈な自我(信念)がこの作業を私に続けさせた。漱石や芥川が書いた中国探訪記に続くものだ。

「中国は崩壊する。中国共産党の一党独裁に反抗する民衆反乱が起きて、中国は必ず滅びる」と書いて多くの本にした、数十人の、歪(ゆが)んだ精神をした反共(はんきょう)右翼たちは、全員が、その本たち(証拠として残っている)と共に滅び去った。あ、まだ、何人か残党(リメインンズ)が残っているか。

今の巨大中国(私が作ったコトバ。書名にも使った)に戦争を挑(いど)む、そして勝てると思う馬鹿はいなくなった。

それでもまだアメリカが「日本を上手に騙(だま)して、唆(そそのか)して、中国にぶつけろ。台湾有事(ゆうじ)を嗾(けしか)けて、戦争をさせろ」という悪辣(あくらつ)な戦略で動いている。そのことを本書で書いた。

日本人は動かない。全くと言っていいぐらいに動かない。押し黙っている。「なんで、また(英と米に)騙(だま)されて戦争なんかするものか。真平御免(まっぴらごめん)だ」と、腹の底で思っている。しかし、口には出さない。まだあと日本だけでも500万人はいる反共右翼たちが残存しているが、あと数年で勢力として消えるだろう。私の冷静な客観予測(近(きん)未来への予言(プレディクト))である。

なぜ日本人の大半は、そして台湾人も、「戦争になる」の煽動(せんどう)に乗らないか。その理由の一つは、倨傲(きょごう)に聞こえるかもしれないが、私、副島隆彦が、この30年間、「アジア人どうし戦わず。戦争だけはしてはいけない」と書き続けたからだ。日本国における私の地位は自(おの)ずとそれぐらいはある。

この本の最終章だった「台湾は今どうなっているか」の台湾現地調査の報告は、50ページ分もあって浩瀚(こうかん)(分厚い)になるので、来年に回した。今の私には、もう1、2年を争うということがなくなった。遅らしてもどうということはない。

この本では、3年前の中国本で約束した「習仲勲(しゅうちゅうくん)、習近平親子の2代に渡る苦労」(第7章)をようやく完成させたことがよかった。この2人が分かれば、現代中国のこの100年間の苦闘の歴史が分かり、大きく概観(アウトルック)できると考えたからである。

最後に、私は上野千鶴子(ちづこ)女史(東大の女性学の講座を護(まも)った。私より5歳上)が、そのマルクス主義フェミニズム(略称マルフェミ)の立場から、戦闘的に男女の性愛論を書き並べた本たちが北京大学の超(ちょう)秀才の女子学生たちの話題になり深い感動を与えていることを知っている。

現在の中国共産党(中共(ちゅうきょう))研究の最先端(せんたん)はまさしく、この中国で起きている、「私たちエリート女たちにもっと男女の性愛の自由を認めよ。日本の自由さを見よ」という女性闘争である。これには、中共の幹部の男たちが動揺してオロオロしているはずである。

まるで、1919年の五四(ごし)運動(中国の現代政治闘争の始まり)の再来だ。

中国社会科学院は、まさしく金看板のマルクス主義フェミニズムの上野千鶴子を招いて、新たなる意識(文化)革命を中国で開始すべきだ。中国が文化の先進国0 0 0 0 0 0 である日本から学ぶことは、まだまだたくさんある。私は、中国人指導者と知識人層が( 魯迅(ろじん)のときと同じく)今も日本人を深いところで尊敬していることを鋭く知っている。箸の上げ下ろしから鰻(うなぎ)の蒲焼(かばやき)の食べ方まで、日本人の一挙手一投足を凝視している。日本を通して世界を学べ、は今も中国で生きている。

それでもアメリカ帝国の属国(ぞっこく)を長くやり過ぎた日本は、この40年間で本当に貧乏になった。中国どころか台湾、韓国からさえ哀(あわ)れみ(憐憫(れんびん))で見られる。

それなのに、何と、私たち日本人は、恐れ入ることに今も威張っている。襤褸(ぼろ)は着てても心は錦、の構えを、一般庶民でも持っている。愚かと言うか、何と言うか。40年も経済成長が止(と)まって貧乏なくせに。全く以(もっ)て明(あき)れ返(か)える。全てが見通せる私のような総合知識人の目には何でも映(うつ)る。

上野千鶴子女史は、女性学(ウィメンズ・スタディーズ)が流行廃(はやりすた)れしたあと、さらに才長(さいた)けて、老人(老女)評論家になって、名著『おひとりさまの老後』(2007年、法研刊)を書いた。人は老いて末期(まっき)を迎えたら、施設に入らないで(収容されないで)自分の家で死ぬべきだ論に私は深く同感した。だから私も自分の家で死ぬ(直前にだけ病院に入院する)と決めた。この意味でも、私は上野千鶴子が老いて、ますます中国に乗り込んで勇ましく中国の知識人層と権力者層に、いろいろと号令を掛けることを望む。

 最後の最後に。この本を書き上げる最後の1カ月は、この夏の猛暑と共に私の地獄だった。モノカキ人生を40年もやって、200冊も書いて、それでもまだ、このように、1冊の本を仕上げるのに、のたうち回っている。私には人生の達観はない。サラサラと書かれた本に碌(ろく)な本はない。このことを痛感している名うての編集者であり、苦しい本作りに同伴してくれた大久保龍也氏に記して感謝します。

2025年9月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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 古村治彦です。

 今回は、力石幸一著『名画は知っている 恐ろしい世界史の秘密』(ビジネス社)を紹介する。発売日は2025年10月1日だ。

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『名画は知っている 恐ろしい世界史の秘密』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます

 著者の力石幸一氏は徳間書店の編集者だ。私の著作や翻訳の担当をしていただいた。力石氏は、編集者をしながら、美術研究をライフワークとしてきた。2013年6月29日開催の「副島隆彦の学問道場」の定例会「いい加減にしろ!マイケル・グリーン」にて講演を行った。その後も研究を続け、今作『名画は知っている 恐ろしい世界史の秘密』が生まれた。
※以下のアドレスからDVDの注文ができます↓

https://snsi.jp/category/item/dvd/

 以下に、まえがぎ、目次、あとがき、副島先生による解説文を掲載した。是非お読みいただき、手に取ってご覧ください。

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まえがき ── 芸術は「美」である以上に「真実」 力石幸一(ちからいしこういち)

 なぜ西洋絵画と世界史をつなぐような本を書こうと思ったのか。本書を手にとられた方は、頭のなかに大きな疑問符が浮かんでいるに違いありません。美術はもちろん歴史の専門家でもない人間が、絵画芸術と世界史について語ろうというのですから。まずはじめに、そもそもの理由について、説明しておく必要がありそうです。

それは2006年10月でした。上野の東京文化会館にハンガリー国立歌劇場のオペラを観に出かけました。マチネーだったので公演が終わってもまだ陽が高い時間です。せっかく上野にいるのだから絵でも見て帰ろう。そんな軽い気持ちで、国立西洋美術館で開催中だったベルギー王立美術館展に行くことにしました。そのときは、まさか、この展覧会が私の絵画観を一変させてしまうとは、思いもしないことでした。

 展覧会場に入って正面に展示されていたブリューゲルの絵に少し心が動きました。『イカロスの墜落のある風景』という題名です。ブリューゲルの名前は知ってはいたものの、確か農民画家と呼ばれていたはず……くらいの知識しかありません。少し先に、同じブリューゲルの『鳥罠のある風景』もあったのですが、こちらは同じブリューゲルとは思えない、どこか偽物のような感じがしました(実際にあとで調べてみると、息子のピーテル・ブリュゲル2世の模写絵でした)。

そして18世紀ころのオランダ絵画によくある大きな肖像画がこれでもかと並んだ展示室にうんざりしながら、次の展示室にまわったときに、ある1枚の絵の前で、私はふいに立ち眩(くら)みのように自分の体がゆらゆらとゆれるのを感じたのです。絵のなかに自分自身が取り込まれてしまうような眩暈(めまい)に襲われました。その絵とは、ポール・デルヴォーの『終着駅』(図0 -1)でした。

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すっかり夜のとばりが降りている駅のプラットホームに一人の少女がひっそりと立っています。最終の電車が駅を出ていくようです。少女は最終電車に乗り遅れたのでしょうか。前方にはアンテナのような架線が見えて、その上に三日月があります。右側には月明りにしては妙に明るい白い壁の家々が並んでいる。幻想的なその絵を見ただけで自分の存在がゆさぶられるような感動が襲ってきたのです。

この絵は自分の頭の中にある夢の世界そのものではないか。この絵を頭の中に入れて持ち帰りたいという衝動にかられるほどでした。絵を見るだけで、それほど強く心を動かされたのは、人生初めての体験でした。そして、少しおおげさにいうと、この絵によって、私の なかで絵画を見る回路が、一気に開いたような気がしたのです。

しばらくデルヴォーの絵の前で呆然としていました。そのうちに、最初に見たブリューゲルの絵が気になってきました。何か謎めいた絵だと感じていたからです。そこで入口近くの展示まで戻って、ピーテル・ブリューゲルの『イカロスの墜落のある風景』(図0-2)をもう一度じっくり見直したのです。

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 海岸に面した丘の上の畑で牛にスキをひかせた農夫がのんびりと農作業をしています。海には大型船が浮かんで多くの水夫が一心不乱に作業をしている。その手前の海面にポチャーンとイカロスが海に墜落していて、その足だけが見えている。ところが釣り人も犬をつれた羊飼いも、そして帽子をかぶった農作業をしている農夫もイカロスの失墜を見ていない。というより、イカロスの存在を無視しているのです。そのとき、この絵が何を言おうとしているか、私のなかで明確なイメージが見えてきたのです。 

 イカロスの失墜は、ギリシア神話にある有名な説話です。クレタ島の塔に閉じ込められた天才的な工人ダイダロスが、大きな翼を蜜蝋で体に密着させることで鳥のように空を飛べるようになります。そして息子のイカロスにも翼をつけさせて大空に舞い上がる。それを農夫と羊飼いと釣り人が見上げて驚く。ダイダロスは、あまり高く飛べば太陽の熱で蜜蝋が溶けて飛べなくなると息子のイカロスに注意を与えたにもかかわらず、イカロスは自らの力を過信して傲慢にも太陽にも届けとばかりに天高く飛びあがり、太陽の熱で蜜蝋が溶けて墜落してしまう。

 このイカロスの失墜の物語は、神にも届く塔を建てようとしたバベルの塔と同様に、人間の傲慢(ごうまん)さをいさめる説話だとされるのですが、ブリューゲルの絵で見ると、どこかちぐはぐで、おかしなところだらけです。

 まず変なのは、イカロスが天高く舞う姿に驚くはずの農夫も羊飼いも釣り人もイカロスを無視しています。もっと言えば、船で作業する水夫たちもイカロスの存在とはまったく関係なしに自分たちの仕事に没頭しているのです。そして、天高くのぼっているはずの太陽はなんと西の海に沈もうとしているではありませんか。

 ここではこれ以上詳しく述べる余裕がありません。結論を先に言えば、ブリューゲルはこの絵で、イカロスの物語をどこかあざ笑っていて、何かを見ないようにしているように感じられたのです。それは別の言葉で言えば無関心ということです。

 ではブリューゲルは、何に対して無関心だったのか。その疑問はキリスト教と西洋近代の歴史に深くかかわりがあるはずだという確信が私の頭のなかで大きく広がっていきます。

 その謎を解くために、私は世界中の美術館を回ることになります。イタリアのウフィツィ美術館、スペインのプラド美術館を始め、ベルギーからオランダ、ドイツなど、ヨーロッパの有名美術館をくまなく見て歩きました。この本に解説と推薦をいただいた、副島隆彦先生と一緒にウィーン、ロッテルダム、アントワープなどの美術館を回ったこともあります。一度ならず二度訪れた美術館もかなりの数になります。

 本書は、そうした私の美術探究によって世界史の謎を解こうという試みです。何と無謀な、と思われるかもしれません。しかし、絵画のなかには画家たちが生きた時代の真実がこめられているのです。だから、その画家たちの真実を汲みあげることができれば、彼らが生きた歴史の秘密に迫ることができるはずなのです。

 一般に、絵画芸術は美術とも呼ばれるように、「美」というものをどう捉えるのかという風に理解されています。学校教育においても「美」について、その技法や構図、描写の特性などについて学びます。しかし、あえて言いますが、「美」は絵画にとって1つの属性にすぎません。

 1枚の絵画には、作者である画家が、その人生のなかで刻印された、ありとあらゆる感情がこめられているはずです。理想と現実のはざまで感じた絶望や希望など、人間として生きた証がそのまま絵には描き込まれている。それらは作品のなかである種の思想として結実していると言ってもいい。それを感じ取るのが絵画を鑑賞するということなのだと、私はあのポール・デルヴォー体験から思うようになっていました。

 よく、芸術を鑑賞することについて、いろいろな観方があっていいし、そのほうが面白いと言う人がけっこういます。しかし、私はそうは思いません。芸術から直接放射されてくる真実の光をそのまま受け止めなければ、芸術を正しく理解することはできないと思うのです。芸術とは作者にとっての真実をそのまま伝えることのできる最高度のコミュニケーション・ツールなのです。

 もし私のこの仮説が正しいとすれば、絵画はすぐれた批評(クリティーク)の手段となりえます。そのような視点から絵画芸術を通して、その絵が描かれた時代の真実を浮かび上がらせようというのが、本書のもくろみです。

 何を大風呂敷を広げているのかと言われそうですが、これまで世界の誰も言ってこなかった話が、少しはできるのではないかと思っています。本書を読み終わったときには、あなたの芸術と世界史に対する理解は大きく変わっているかもしれません。楽しみながらお読みいただければ幸いです。

力石幸一(ちからいしこういち)

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『名画は知っている 恐ろしい世界史の秘密』◆目次

まえがき ── 芸術は「美」である以上に「真実」 2

第1章 フランドル絵画がイタリア・ルネサンスの起爆剤となった 15

ルネサンスは地中海世界の大変動によって始まった 16

『ポルティナーリ祭壇画』が『ヴィーナスの誕生』に与えた衝撃 21

その後のトンマソ・ポルティナーリ 42

第2章 ヤン・ファン・エイクがキリスト教に背を向けた 49

ヤン・ファン・エイクというとてつもない革命児 50

肖像画のポーズの取り方も北方ルネサンスがルネサンスに影響を与えた 65

『宰相ロランの聖母子』というとてつもない傑作 67

『聖母を描く聖ルカ』は、『宰相ロランの聖母子』への反発から描かれた 80

『アルノルフィーニ夫妻の肖像』という画期的な肖像画の真実 84

「中世の秋」ではなく、「近代の春」ではなかったのか 92

第3章 謎の画家ボスの奇想という毒の正体 107

ファン・エイクを継承する者としてのボス 108

『快楽の園』はボスの作品としか考えられない 111

プラド美術館の見事なキュレーションのぜいたくさ 115

樹木人間はボスその人ではないか 116

ブルゴーニュ公国とハプスブルクの結婚 120

カトリック教会の堕落とボスの芸術の意味 135

第4章 ブリューゲルは農民作家などではない 137

北方ルネサンスの3人と日本の琳派の3人 138

ヤン・ファン・エイクの思想を継承したブリューゲル 145

スペイン軍による宗教弾圧がブリューゲルの作品に落とす影 151

十字架の横に配置された絞首台の意味とは 155

ブリューゲル自身がしばしば自らの作品に登場する理由 158

ボスの継承者としてのブリューゲル 162

ブリューゲルはなぜ風景を作品に描き込むのか 166

ブリューゲルの絵にはなぜ時間が流れているのか 175

ブリューゲルを「農民画家」とするのは間違い 179

バベルの塔はなぜつくりながら崩れているのか 186

絞首台とカササギが訴えかけてくるブリューゲルの遺言 194

第5章 なぜネーデルラントから近代が始まるのか 197

キリスト教中世から近代への移行に成功したネーデルラント 198

エラスムスとルターの自由意志論争から浮かび上がるもの 201

「個人」というパラドキシカルな存在を生みだしたカルヴァンの教義 204

デカルトがアムステルダムで見た個人主義 205

ネーデルラントでなぜ自由主義が生まれたのか 207

バンコ・デ・メディチはなぜ破産したのか 210

ポトシ銀山からの銀の大量流入がスペインを衰亡させた 215

資本主義の秘密は銀行の「貸付」にあった 218

あとがき 221

解説文(副島隆彦) 225

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あとがき 力石幸一(ちからいしこういち)

 ピーテル・ブリューゲルの『イカロスの失墜のある風景』を見たときから、ずいぶん遠くまで旅してきたような気がします。

 絵の話かと思ったら、近代資本主義の話になっているじゃないかと、ここまで読まれた方はあきれているかもしれません。しかし、ブリューゲルの絵を見続け、さらにヤン・ファン・エイク、ヒエロニムス・ボスの絵を知ることで、私のなかに中世から近代に至るヨーロッパの風景が見えてきたのです。その風景を追いかけていくうちに、自分なりの近代理解ができあがってしまったのですからしかたありません。

「まえがき」で述べたように、絵画芸術に目覚めるきっかけは、ポール・デルヴォーの『終着駅』という絵でした。あのとき、一瞬立ちくらみのようになったことの種明かしをすると、じつはあの絵の遠近法が微妙に狂っていて、見ている自分の位置がはっきりしなくなることで夢のなかのような幻想的な感覚に陥ったのでした。

音楽や演劇や映画などの芸術は時間によってドラマが進行します。ところが、絵画芸術には静止した画面があるだけなので、時間概念がなくて意味をとりにくいとずっと感じていました。ところが、デルヴォーの絵を見たことで、じつは絵画にも時間が存在していることに気づかされたのです。デルヴォーは、遠近法を操作することによって空間を延長したりゆがませたりすることで時間をつくっていました。ブリューゲルの風景にも時間が流れています。その絵のなかにある時間は永遠の時間です。そして、それは一瞬の永遠なのです。限られた時間を生きる私たちは、永遠は一瞬であり、一瞬は永遠であるというパラドックスのなかにあります。音楽や演劇などの時間芸術においても、究極的な感動はある瞬間に表れます。そのとき、感極まった一瞬に私たちは永遠を見ることができるのです。

考えてみれば、この世界はパラドックスだらけです。自由という不自由があれば、富という不幸もある。善と悪は裏表で、真は偽に一瞬でひっくり返ります。

この本を通してずっと、ルネサンスや北方ルネサンスの画家たちの絵を見てきたのは、そこにどんなパラドックスが隠されているのかを探す旅だったようにも思います。

 最後の結論となった資本主義の精神と利子の問題もその例外ではありません。近代資本主義が始動するときには、必要だった利子と個人のあくなき成功への欲望という要素は、いま否定されるべきものになろうとしています。

大きなバブルが崩壊するごとに紙幣を刷り続けてきた副作用として金利が低下し、日本ではマイナス金利まで経験しました。人間の限りない欲望は環境破壊を引き起こし、貧富の格差による分断が不可避となっています。従来の資本主義の原理はどんづまりにまで追い詰められています。これは大きなパラドックスではないでしょうか。ちょっと大げさな言い方になりますが、われわれはこのパラドックスの解決なしに未来を生きることは不可能なのです。この本が、そんな大きな問題を考えるきっかけになってくれればと念じています。

 本書のような奇妙な本の企画を認めていただき、出版のために奔走してくれたビジネス社編集部の小笠原豊樹さん、そして企画書を見て出版を即決していただいたビジネス社の唐津隆社長のお力添えがなければこの本が出版されることはありませんでした。本当にありがとうございました。

また、副島隆彦先生には、この本の原型となる話をした際に、即座に学問道場の自力講演会で話すよう促していただきました。さらに出版にあたっては身に余る推薦と解説文をいただきました。副島先生とは何度もヨーロッパ各地の現地取材に同行させていただき、この本でも紹介した名画の数々も一緒に鑑賞しました。その際に議論した内容も本書に反映することができました。ここに記して深甚なる感謝の意を表します。

2025年8月

力石幸一(ちからいしこういち)

=====

解説文(副島隆彦)

 この本の著者である力石幸一氏が、彼自身の生涯の執念である、日本人が理解するべきヨーロッパ中世絵画の要諦を一冊の本にまとめた。著者と共に喜びます。氏は、私の金融本を20年以上にわたって担当した。

 この本の構想について、私はずいぶん以前から情熱を込めて何度も聞いていた。ぜひ出版

すべきと私も督励(とくれい)した。ちょうど彼が徳間書店の役員を退任した時、私が主宰する学問道場の自力講演会で話してもらった(2013年6月29日)。1時間半くらいの講演だったが、冒頭で「芸術は真実言論です」と話し始めて、聴衆の興味を魅(ひ)きつけた。その模様はDVDに収録してあるので、いまでも見ることができる。

 しかし、ヨーロッパ絵画論を一冊の本にまとめることは講演のようにはいかない。膨大な

量の関連資料に当たって、骨格をしっかりとつくらなければならない。

 この本の出発点としてヨハン・ホイジンガ著の大作『中世の秋』(中公文庫)を中心テーマに置いている。ホイジンガのこの作品は、ヤン・ファン・エイクの作品群が表現しているブルゴーニュ公国(現在のフランス東部、ドイツ西部、ベルギー、オランダあたりまでを含んだ国)の歴史・文化を掘り下げた世界的な名著である。氏はこの本を標的にして、批判する。

 ホイジンガはヤン・ファン・エイクの芸術について、『中世の秋』で次のように言う。
(引用はじめ)

 ファン・エイクの自然主義は、美術史においては、ふつう、ルネサンスを告知するひとつの徴表と考えられているのだが、むしろ、これは、末期中世の精神の完璧な開花とみてしかるべきものなのである。

(引用終わり)

 ホイジンガは、ファン・エイクには「中世の思想」しかなかった、と書いている。「中世は終わった」のだと書く。それに異を唱えて本書は、このホイジンガの認識は誤りだ、と。

 ルネサンスは、ヨーロッパに人文(じんぶん)主義を生み開花させた。だがその花は咲き続けることなく、短い命を終えてしまった。このことは、ヤーコブ・ブルクハルト著の『イタリア・ルネサンスの文化』への違和感の表明でもある。その批判、反論の中核にカトリック教会批判がある。

 ファン・エイクが瞠目(どうもく)すべき名画『宰相ロランの聖母子』などで示した、カトリックへの鋭い批判精神は、その後も長く北方ルネサンスのなかに生き続けた。その精神が西洋の近代(モダーン)の隆盛へとつながった。つまり、北方ルネサンスは「中世の秋」ではなく「近代の春」を用意したのだと強力に論じている。

 ファン・エイクに続いたのが、ヒエロニムス・ボス(ボッシュ)であり、このボスを継いだのが、ピーテル・ブリューゲルだ。この3人のオランダ近代絵画の天才画家は、同時代を生きたわけではない。少しずつずれる。作品に表現されるカトリック批判の思想を脈々と継承したのである。この3人のオランダ画家が共有した新しい政治思想に注目したことが、本書の優れた着眼点になっている。ここに本書の真骨頂(しんこっちょう)がある。

 そして、この北方ルネサンスの3人の画家の絵画思想の継承が、何と、日本の琳派(りんぱ)における俵屋宗達(本阿弥光悦)、尾形光琳、酒井抱一の3人の仕事に表れている、とするところに著者の優れた感受性(本質を見抜く力)を見る。

 絵画芸術について、「美」はひとつの属性(アトリビュート)にすぎない。絵画には、その時代を生きた作者の真実がそのまま表現されている。作品から放射されるその真実の光をどう捉(とら)えるのかが重要なのだ。本書のなかにその実例が名画の鑑賞ごとに次々と展開される。よくある美術ガイドブックなどとは次元が異なる優れた解釈は、驚きの連続である。著者は美術の専門家ではないから、学術的な観点には欠けているだろう。だが、その鑑賞眼力には確かな手ごたえがある。

 ファン・エイク、ボス、ブリューゲルの3人の生きた時代をつないでいくと、まさにヨーロッパ近代(モダーン)が生まれていった過程にぴたりと重なる。

 彼らの作品には、カトリック信仰への強い不信がさまざまなかたちで反映されていることが如実に指摘される。力石氏は、ブリューゲルはカルヴァン派の思想家だ、と断言する。このことは、ブリューゲル研究者の森洋子明治大学名誉教授に対する痛烈な批判であり、明確な追及、論難である。ブリューゲルの作品を次々に見てゆくと、彼がカルヴァン派であったことを前提にしないと、その作品を十分に理解できないことがわかってくる。

 そして、西洋的な「個人」はカルヴァン派の信仰の中からしか生まれないという結論は、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の主張と重なりあう。しかし、ウェーバーがカルヴァンの救済の予定説(プレデスティネイション・オブ・サルヴェイション)から導き出した、「成功する人間は必ず救われる」とする企業家(資本家)の個人の存在だけでは、資本主義は始動しない。本書の著者は、そこに利子の存在を加えるのである。

 ルネサンス期(西暦1400年代。クワトロチェント)のフィレンツェにおけるメディチ銀行をはじめとする初期の大銀行( 両替商(マネーチェインジャー))たちは、今日の銀行業のほとんどを行なっていた。しかし、ひとつだけ除外されていたのが、「貸付け」であった。お金を貸すことはできても、カトリック教会は利子(インタレスト)をとることを禁じていた。利子なしに「貸付け」ができるはずがない。この「貸付け」が、乗数効果(マルチプライアー・エフェクト)を生んで資本(カピタール)を拡大させるメカニズムである。これこそが資本主義(カ ピタリスムス)の最大の秘密だと著者は明確に書く。

 私の師匠であった小室直樹先生は、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の謎解きに熱中していた。日本のウェーバー研究の泰斗(たいと)で第一人者であった大塚久雄教授と2人で長時間話込んでいた。小室先生が生きておられたら、本書の結論をどのように評価しただろうかと、興味が盡(つ)きない。

 ヨーロッパ(泰西(たいせい))名画たちの読解から始まり、中世から近代に胎動した世界史の動きを、その中心を見据えるためにおそらく50回以上のヨーロッパの美術館、遺跡巡(めぐ)りを敢行した著者の人生の奮闘に深い敬意を表する。まだ豊かだった頃の出版社のカネを原資にして、幾度かそれに同行した者として、ヨーロッパ近代資本主義(モダーン・カピタリズム)の誕生の秘密に絵画筋から迫った本書が、多くの読者に受け入れられることを強く望む。

2025年8月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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古村治彦です。
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2024年10月31日に副島隆彦先生の最新刊『トランプ勢力の徹底抗戦で アメリカの国家分裂は進む』(祥伝社)が発売される。

以下に、はじめに、目次、おわりにを掲載する。是非手に取ってお読みください。
(貼り付けはじめ)

はじめに 副島隆彦(そえじまたかひこ)

大統領選とアメリカンデモクラシーの終焉

この本が出てすぐに、米大統領選挙が行われる(11月5日)。

私は言論の予言者を自ら名乗って、評論業で40年間生きてきた。この本の書名『トランプ勢力の徹底抗戦で アメリカの国家分裂は進む』をパッと見ただけでは、アメリカ政治に相当関心がある人たち以外には理解不可能だろう。

この書名を決めた一歩手前の案は、『米トランプ勢力は貧乏覚悟で 善人(グッドガイズ)の新国家を作る』だった。これもおそらく意味不明であろう。

 この本が出てすぐに、今度の大統領選挙でまたしても大掛かりな不正が行われることで、騒がれるだろう。それは、本当に大騒ぎになる。このことは私にとって、有(あ)り有(あ)りと目に見えるように分かる事態である。なぜなら、私は「トランプは選挙で負ける」と悲観し、悲痛になってこの半年くらいを生きたからだ。

反(はん)トランプ勢力(ディープステイト)は必ず、必ず不正選挙をやると、私は確信している。たったこの一点に共感してくれる人々は、ただちに本書の意味を分かってくれるだろう。

彼らは選挙の得票数を、2020年11月と全く同じように、コンピュータと郵便投票などで6000万票も移し替える。そして、カマラ・ハリスが勝利するよう選挙結果を捏造(ねつぞう)する。こんな巨大で大掛かりな不正が、今の世界で許されるわけがない。ところが、平気でこういうことが行われる。それが今の世界帝国アメリカだ。そして、我が日本国の選挙だって、実際に選挙の得票数の不正操作が行われて来たのである。

 私がこのように書くと、もはや私は普通の政治評論や、社会言論の枠から外れた人間と

いう扱いになる。覚悟の上である。ただでさえ日本のメディア(テレビ、新聞、雑誌)から

長年干(ほ)されて、相手にされずに生きて来た私にとって、今さら臆(おく)することはない。

 大きな真実を誰が本当に書いているのか。そんな不正選挙なんかあるはずがない、バカげた主張だと、頭のてっぺんから私を否定する人たちには、この本の存在意義はない。

それでも私は、こうやって真実暴(あば)き言論でずっと生きてきた。やせ衰えた日本の出版業界で、私は細々(ほそぼそ)ながら単行本を出し続けて、30歳から、40年間生きてきた。私の主張と謎解きに付き合い、それなりに信頼してくれる人々に向かってこの本を書く。

選挙制度はデモクラシーの土台であり、基本である。これが巨大な選挙不正で歪(ゆが)められたら、デモクラシーそのものの死を意味する。

デモクラシーという言葉は、demos(デモス)とcratia(クラティア)から出来ている。このdemosが「民衆、大衆」を意味し、cratiaが「支配体制」を意味する。だから、デモクラシーは民衆一人ひとりの1票から作られる政治体制である。デモクラシーはイデオロギー(イデアのロゴス)ではない。だから×民主主義は誤訳だ。〇民主政体(せいたい)が正しい。

大国のアメリカ合衆国で、こんなに何回も選挙の不正、捏造が行われるようでは、今の世界は本当に暗闇の中で生きているに等しい。中国とロシアを独裁国家であると言い続けて、馬鹿にして、腐(くさ)していればいい、というものではない。自らを民主的でリベラルで、自由な先進国だと信じ込んでいる者たちの責任は重い。アメリカの手先、子分を平気でやり続けている日本人も同様だ。

 私のこのような〝ぶつくさ書き〟は、普通の政治評論とは見なさない、という判定を下されても構わない。私の言論は、ずっとそのように扱われてきた。それでも私は、この世にある本当の真実を書く。こうやって生きてきた。だから最近は、私の本は日本社会で認められている。私はウソを書かないで生きてきた。

 トランプ勢力は、このあともヒドい目に遭(あ)いながらも、じりじりと後退しながら、それでも不屈に戦い続ける。そしてアメリカ帝国は国家分裂をしていく。アメリカの中西部(ミッドウェスト)と南部(サザン)のテキサスを中心にした諸州は、それぞれの州民が決断して、連邦離脱[れんぽうりだつ](セセションsecession)を徐々に州議会で決議していく。

この連邦離脱というのは、現在のアメリカ合衆国から州(state ステイト、これが国)ごとに分離(セシードsecede)し、独立することである。ワシントンとニューヨーク、シカゴを中心とする連邦(れんぽう)政府(フェデラル・ガヴァーンメント)の言うことはもう聞かない、という決断である。

 アメリカが、これから向かう国家分裂は、もはや不可避である。今のアメリカの政治や金融経済を握りしめている大富豪たちの連合体(これがディープステイト)にしてみれば、自分たちがこの先も世界支配を続けたい。そのために必要なアメリカの現在の仕組みそのものが内部から壊れてしまうのは、彼らにとって一番いやなことだろう。

それでも、アメリカの国家分裂・連邦離脱は続いていく。たとえ無理やりドナルド・ト

ランプを再び引きずり下ろしたとしても。

 この本で2つ目に重要な論点は、「もうこれ以上、移民を外国から受け入れない。そんな余裕はアメリカにはないのだ」という、P5に前掲した思想が前面に出て来ていることだ。このことを大きくはっきりと示す。

この反(はん)移民の思想は、日本ではテレビ、新聞などがグズグズ、コソコソと、ヨーロッパへの難民の死亡事件が起きるたびに小さくニューズにするだけだ。しかし、まともなヨーロッパとアメリカの白人たちは、「もう我慢しない。キレイごとは言わない。もうこれ以上、移民、難民は入ってこないでくれ」という思想を、敢然(かんぜん)と表明し実行し始めた。

それが、トランプ勢力が団結する切実な理由である。もっとはっきり書くと、アメリカは白人国家なのだ。「これまでアメリカに入ってきて、白人の言うことを聞いて生きている黒人やヒスパニック、イスラム教徒たちは、このまま生活していい。しかし、そうでない者たちは出て行ってくれ」という考え方である。これは、ヨーロッパの主要国であるフランスもイギリスもドイツもイタリアも同じだ。

ここで白人優越の思想(ホワイト・シュープレマシー white supremacy)を公然と言うと、それは明らかに③人種差別である。人種差別をしてはいけないは、今の世界の、人類の、大スローガンである。しかし、もうそんなことも言っていられない。そこまで欧米の堅実な白人たちは追い詰められている。このことを私たち日本人は、はっきりと受け止めなければならない。そのためにこの本がある。

日本でも、全国の自治体(1700個ある)それぞれに割り当てで50人、100人のネパール人やベトナム人の移民の受け入れ義務の枠があり、それは静かに実行されている。新聞記事にはならない。実情は、関係者が「困ったことだ」とコソコソと話しているだけだ。

カマラ・ハリス政権(ディープステイト側)からすると、日本はなかなか移民、難民を受け入れない人種差別の国だとされている。このことも、あまり新聞記事にならない。でも、私たちはみんな、もう分かっているのだ。今の世界を覆(おお)っているこの大きな真実のことを。

 それを私は、この本ではっきりと書く。近代ヨーロッパが作った偉大なる啓蒙思想(エンライトンメントenlightenment)と、社会契約説(ソウシアル・コントラクトsocial contracts)が打ち立てたのが、①人権の思想、②平等の思想、③人種差別をしない思想、そして④がデモス・クラティア(民主政体 ×民主主義)の制度思想である。

この4つを強く疑う時代に人類はついに突入したのである。それが今、アメリカの国家分裂の問題の主眼、中心にせり上がっている。トランプを強く支持する白人中産階級と下層の白人大衆は、「もう私たちは正直になる」といって戦いを始めた。

 これらのことを、この1冊の本に細かく書いて、凝縮(ぎょうしゅく)して皆さんに教える。この本を、ただのアメリカ政治評論本などと思ってはいけない。人間(人類)を支えているのは思想(ソート)や理念である。それが現実に深く投影されて、この世の中のさまざまな争いや苦しみ、悲しみを作っている。

2024年10月 副島隆彦(そえじまたかひこ)

=====

はじめに 大統領選とアメリカンデモクラシーの終焉 ──

第1章      トランプ殺害未遂事件の恐るべき真実

トランプ暗殺未遂は「国家犯罪」である ──20

トランプ銃撃事件は安倍晋三殺しと一緒 ──26

性懲りもない2度目のトランプ殺害未遂 ──35

ポピュリストこそがアメリカ政治の伝統である ──37

逃げ腰になったハリウッド ──42

トランプ暗殺計画は、まさにコンスピラシーだ ──44

ボビー・ケネディが見せた真のアメリカ人らしさ ──48

善人と悪人の終わりなき対立 ──52

第2章      アメリカを引き裂く善人と悪人の闘い

トランプ勢力の中心となるヒルビリーたち ──60

ヴァンスはトランプの真の後継者である ──66

仕組まれたカマラ・ハリス新大統領の誕生 ──72

東部諸州との境目で起こる軍事衝突 ──77

悲しみも痛みも感じない悪人たちの本性 ── 82

第3章  トランプ勢力が目指す真のアメリカ革命

レーガン革命と「プロジェクト2025」 ──88

レーガン革命の8割が失敗に終わった本当の理由 ──92

「プロジェクト2025」の4つの重要なポイント ──97

4年前の不正選挙から起きた大きな変化 ──102

トランプを未だ裏で支えるピーター・ティ―ル ──108

トランプ殺害計画の原因は「プロジェクト2025」だった ──112

成り上がりなのにディープステイト側に付かなかった男 ──118

欧米では「権力犯罪」という言葉は使ってはならない ──121

うろたえオロオロするアメリカの司法 ──125

最高裁判所長官の名前も知らない日本人 ──129

第4章 権力とカネを握り続けるディープステイトの恐ろしさ

悪の実行部隊はFBIである ──136

ディープステイトという言葉を作ったのはJBS ──141

反カソリックであるKKKの素晴らしい主張 ──142

ワシントンに結集し官僚国家を解体せよ ──148

アメリカは武力衝突の段階に入った ──152

アメリカで起こっている民族大移動の実態 ──155

教科書では教えない南北戦争の真相 ──158

今後、ズルズルと続くアメリカの国家分裂──164

「プロジェクト2025」とディープステイト ──168

博奕も麻薬もなくならないが金融博奕はなくすべき ──171

第5章  キレイごとがイヤになったアメリカ人の本音

人権、平等、人種差別、デモクラシーをめぐる大分裂 ──176

デモクラシーをぶち壊したディープステイトの大罪 ──180

崩れ落ちる近代ヨーロッパの大思想 ──187

目の前に見えるもの以外信じないベンサムの思想 ──190

人間の不平等の典型例が「親ガチャ・子ガチャ」 ──192

差別はないほうがいいが、現実にはなくならない ──195

悪人でないと繁栄を作れない問題 ──197

ヴォルテールが見抜いたルソーの思想の危険性 ──200

マンガしか読めなくても日本では首相になれる ──204

踊り狂う貴族こそがフランス革命の実態 ──206

アメリカ独立宣言はジョン・ロックの文章のほぼ丸写し ──208

LGBTQとトランプ勢力の闘い ──211

第6章  トランプ側近の重要人物14人の知られざる素顔

トランプを近くで支える真のキープレーヤーたち ──218

トランプの新共和国で廃止される中央省庁 ──232

「プロジェクト2025」の冒頭の恐ろしさ ──236

保守派が考える「アメリカへの約束」 ──239

軍隊と官僚機構を蝕むリベラルイデオロギー ──244

お わ り に ──248

=====

おわりに 副島隆彦(そえじまたかひこ)

この本は、米大統領選挙(11月5日)の直前、5日前には出版される。だから、ここに書かれているのは著者の予言である。大きく外(はず)れたら、私の言論人としての信用が落ちる。それだけのことだ。

私は、これからいよいよ動乱(どうらん)期に入るアメリカのここまでを、克明に描いた。この本で、これからのアメリカと世界の近(きん)未来を予言すると共に、後世に残す資料性を持たせることに主眼を置いた。

 あとあと、あの時何が起きていたのかの歴史の証拠を正確に書き並べた。

トランプ大統領を、前回の2020年11月の巨大な不正選挙 rigged election リグド・エレクションで打ち倒したのは、アメリカの大富豪の連合体――これがまさしく The Deep State ザ・ディープ・ステイトである。私は、あの時の事件を克明に追いかけた『裏切られたトランプ革命』(秀和システム、2021年3月刊)を書いている。本書はその続刊である。

 トランプは、アメリカ国民の圧倒的支持(本当の支持率は73%。本書で詳述してある)がある。にもかかわらず、無理やりカマラ・ハリス(支持率26%)を勝たせるだろう。トランプは負ける。私はこの予測(予言)を半年ぐらい前からしている。不愉快きわまりないことだが、これが今の世界だ。

 (日本を含めて)先進国のたくさんの国で、選挙の大掛(おおが)かりな不正がコンピュータ・ソフトを使った投票数の移し替え(フリップ、あるいはスイッチと言う)によって行われている。しかし、このことを西側先進国では誰も言わない。アメリカのトランプ支持派は、そのことで今も怒っている。それに関する報道もほとんどない。

 この大きな事実を全く認めないで、何喰わぬ顔をしている者たちは全て悪人(あくにん)だ。悪(ワル)の側に身を売っている者たちだ。アメリカ帝国の属国である日本にもたくさんいる。

 そして今後も、トランプは無理やり負けさせられる。合衆国大統領に復帰できない。そして、そのあとアメリカ全土で、「こんなあからさまな、再度の不正を私たちは認めない。許さない」と立ち上がる者たちが、各州(state ステイト)で出てくる。

 本書で詳細に書いたとおり、アメリカ中西部(ミッドウエスト)と南部(サザン)の30くらいの州[ステイト](国家)が今の連邦(フェデレイション。合衆国)からの離脱(secede セシード)宣言を、次々と開始するだろう。そして、それらの州(国 ステイト)が団結して、アメリカ中央国(セントラル)という新しい共和国(ニュー・リパブリック)を建国するだろう。

 それに、あと4年くらいかかる。これはまさしくアメリカ動乱の始まりであり、それはやがて内乱レヴォルト[]、内戦(市民戦争[シヴィル・ウォー])となる。

この時、ドナルド・トランプが新共和国の大統領に推(お)されて就任するか、分からない。トランプはニューヨーカーであるから、テキサスを中心にした南部人(サザン・ピーポー)となじまない。トランプ(78歳)は、「私は何も間違ったことをしていない」と言いながら、堂々と引退(リタイア)するだろう。

 トランプが、今の合衆国(連邦)の大統領に復帰したくない理由がある。

それは、赤字大企業の社長に再び復帰する者は、企業(会社)が抱えている巨額の累積(るいせき)赤字のもの凄さを知っているからだ。国家も同じである。だからトランプは、本心では返り咲きたくない。社長(大統領)に復帰したら自分の肩にずしりと、その借財の処理の苦しみが即座にのしかかってくるからだ。隠してある損金も膨大である。おそらく1000兆ドル(14京[けい]円)くらいの根雪(ねゆき)となった累積赤字を、今の合衆国は抱えている。

「こんなオンボロの帝国は潰(つぶ)れてしまうほうがいいのだ」と、トランプは商売人(ビジネスマン)だから、冷静に考えている。ついでに、腐り切った何百万人もの官僚たちも一緒に滅べばいい、と。

 それらの巨額負債を引き継ぐことなく、全く新しい国を作って、そっちにみんなで引っ越せばいい。決意ある正義の人々で善人(good guys グッドガイ)のアメリカ人たちは、こうやってアメリカの国家分裂を推し進めてゆく。そして本書で詳しく解説した、新国家建設の大方針(と工程表 roadmap ロウドマップ)であるProject2025「プロジェクト2025」に従って、着々と前進するだろう。

残ったディープステイト(超[ちょう]財界人と軍産[ぐんさん]複合体とエリート官僚たち)は、そのあとに襲ってくるNYを震源地とする金融大恐慌によって、自滅するだろう。

 このようにして、あと4年で世界は大きく変わってゆく。追い詰められたディープステイト側は、計画どおりロシアと中国に戦争を仕掛けて第3次世界大戦を起こしたい。自分たちが生き延びるためである。彼らは戦争が大好きだ。それには核戦争(ニュークレア・ウォーフェア)を含む。日本の場合は、台湾有事(ゆうじ)をアメリカが仕組んで、「中国が攻めてくる」を煽動(せんどう)の標語にして、動乱状況に陥(おとしい)れる。

それに対して私たち日本国民は、「平和憲法を守る。戦争反対。核兵器を持たない。アジア人どうし戦わず」の4つの旗を掲(かか)げて抵抗する。絶対に騙(だま)されない。あいつらの策略に乗らない、という深い知恵こそが大事である。私は、このように近[きん]未来を予言(プレディクト)し、かつ対策を提言する。

 最後に。最速で企画からわずか3週間でこの本を仕上げてくれた編集者の大森勇輝氏と

祥伝社に厚くお礼を言います。

2024年10月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

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(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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古村治彦です。
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米国債の巨額踏み倒しで金融統制が来る

今回は、副島隆彦(そえじまたかひこ)先生の最新刊『米国債の巨額踏み倒しで金融統制が来る』(徳間書店)をご紹介します。発売日は7月31日です。

 下に、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にして、是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

まえがき

副島隆彦(そえじまたかひこ)

世界中で政治的異変が起きているから金(ゴールド)を買うべきだ

 私が『ドル覇権(はけん)の崩壊』(徳間書店、2007年8月刊)を書いて17年が経()つ。

 遂(つい)に米ドル(即ち米国債[べいこくさい])による世界支配体制(覇権 hegemony[

ヘジェモニー])が、私たちの目の前で崩れつつある。

 特にアメリカ株(NYダウ)が5月20日に、4万77ドルの史上最高値を付けた時が、アメリカ帝国(エムパイア)の力の頂点(ピーク)だった。このあとグズグズしている。日本株は、その前の3月22日に、4万888円の史上最高値を付けて、再び7月10日に4万1831円をつけた。

 そして5月16日に、北京でプーチンと習近平が会談して「これからの世界体制の有り方」について話し合った(後述する)。この時、世界史(人類史)の軸(アクシス)が動いた。

 私が、この本で強調して書くべきはやはり金(きん)のことだ。もう金(きん)の地金(じがね)値段は簡単には下がらない。世界各国で政治的な異変(いへん)が次々に起きている。だから、これからでもまだまだ、金(ゴールド)を買うべきだ。まさしく〝有事(ゆうじ)の金〟だ。金(きん)は私が前著で書いた通り、「3倍になる」。特に、これまで金を買ったことのない人は、決意を固めて今からでも金を買いなさい。私は、あなたたちの背中をドーンと押す。なぜ、このような一見(いっけん)無謀に見えることを、私、副島隆彦が書くのか。この本を読み進めてください。

 この本の書名は、『米国債の(アメリカ政府による)巨額踏み倒しで(日本でも)金融統制が来る』である。何を言っているのか、この文を読んだだけでは簡単には分からないでしょう。少し分()かり易(やす)く書くと、「アメリカは自分の既発行(きはっこう)の米国債を踏み倒して没落する」である。アメリカの国家財政と金融市場は、もうボロボロ状態である。もうすぐ崩れ落ちる。私たち日本人は、アメリカ帝国の崩壊が目前に迫っていて、米ドル(と米国債)の大(だい)下落がもうすぐ起きることを目撃することになる。

 これまでに私、副島隆彦の金融本を真面目に読んできた人たちなら、分かってくれるだろう。ここで、「巨額の米国債の踏み倒し(償還(しょうかん)しないこと)」を、難しく言うと national debt restructuring 「ナショナル・デット・リストラクチュアリング」である。これを日本語に訳すと、「国家の債務の再編(さいへん)」という。この「債務(デット)の再編(リストラクチュアリング)」という経済学の専門用語が私たち日本人に本当に分かりにくい。難かしいコトバだ。この「債務の再編(とか圧縮(あっしゅく))」を、分かり易く真実をぶちまけて書くと、まさしく「借金の踏み倒し」のことである。これなら分かるでしょう。「リストラするぞー」なら何となく分かるだろう。

 アメリカで、これまでに累積(るいせき)している巨額の国家借金の踏み倒しが、もうすぐ起きる。まさか、とてもそんなことは信じられない、と思っている人たちに対して私は、何も説得する気はない。縁(えん)なき衆生(しゅじょう)だ。私がひとりで焦ってこのことを書いているのは、この事態が実際に起きた時に、その時、「ほーら見てごらん。私、副島隆彦が書いたとおりになったでしょう」と言いたいからだ。そのために、この1冊の本を書いているのである。

 これまでの私の、年2冊の定期刊行物(笑)のような金融本たちに付き合ってくれて、読んでくれた皆さんに対しては、感謝の気持ちがある。副島隆彦の金融予言(よげん)の、またしてもの的中を、ともに喜んでもらいたい。他の連中なんかどうでもいい。

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米国債の巨額踏み倒しで金融統制が来る──【目次】

まえがき

世界中で政治的異変が起きているから金(ゴールド)を買うべきだ─2

第1章 アメリカは100兆ドルの借金を踏み倒す   

アメリカはもうすぐ巨額借金を踏み倒す─14

米国内のドルの20倍のドルが世界に垂れ流されている─16

金融タカ派とハト派はどこで争っているのか─20

産業資本家は金利が低い方がいい─24

安価な円を使った円キャリートレイドが逆回転を起こす─28

貧乏諸国の借金踏み倒しが始まる─30

アメリカの不動産が暴落している─35

アメリカは内戦になって多数の国民が死ぬ─43

トランプはドルを切り下げる─51

国家が借金を踏み倒す時代が始まる─54

国家も破産する──ギリシアの教訓─68

日本がアメリカに貢いだお金は1800兆円─72

米国債の借金は本当は20倍ある─85

世界の金融経済がこれから大爆発する原因は大量にばら撒かれた米国債─93

アメリカは借りた金を返さない─97

世界規模で起こっている借金取り立て─100

借金返済の苦しみを中心に世の中はできている─103

第2章 ドル覇権の崩壊が始まる   

米国債という借金証書を返せなくなったアメリカ帝国は没落する─112

米国債の隠れ借金で一番苦しんでいるのはドイツだろう─118

もうすぐ1ドル=120円台まで円高になるだろう。それを支える大きな構図─124

日本は手持ちの米国債を売ることができる─126

サウジや中東諸国が大量の米ドルを金に変えるよう要求している─137

ドル基軸からBRICSの新通貨体制に移行する─141

第3章 やっぱり金は3倍になる   

ゴールドマンサックスが金価格2700ドルを予想─150

「金は3倍になる」という私の予想どおりになりそうだ─156

金の値段はまだまだ上がる─160

やっぱり野口コインで金を買うのがお得─161

国際金価格はやがて3000ドルを突破してさらに上がる─164

金の価値は金自身が生み出す─167

税務署とケンカしなさい─171

そろそろプラチナを買うのもいい─174

銀貨も安いから買っておくといい─176

パラジウムも値上がりしたが…─178

日本でタワー・レジデンスの激しい値上がりが起きている。NYは値下がり─181

米ドルの信用が失墜し、米国債の巨額踏み倒しが起きる─183

ついに中露同盟の側にグローバルサウスがついた─185

プーチンと習近平が組んだ中露同盟が世界を主導する─187

第4章 国家は惜しみなく国民の資産を奪う                

日本政府はリデノミネイションで1万円を1000円にする─198

銀行から現金を下ろそうとすると警察官が来る─206

日本政府は現金を消そうとしている─210

デジタル・マネーも現金を消したい意向の現れ─211

マイナンバーは「個体識別番号」と言うべきだ─217

インボイスは本当は請求書なのに、領収書にもした─222

かつてアメリカで金(きん)保有禁止の大統領令が出された223

財産税は金融資産の保有額しだい─229

最終的には預金封鎖も政府は考えている─235

本当の富裕層はもう海外に逃げている─240

これからはインドネシアに注目すべきだ─245

旧日本軍の今村均大将が偉かった─247

第5章 アメリカは内戦(市民戦争(シヴィル・ウォー))で国家分裂するだろう   

国民の80%の支持率でも、なぜかトランプは当選できない─252

アメリカは内戦状態になって国家分裂する─257

あとがき─260

【特別付録】大恐慌でも大丈夫な株15銘柄262

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あとがき

 この本を書き上げるのに苦労した。この4、5、6月の3カ月に悪戦苦闘(あくせんくとう)した。文筆家(言論人)が文章を書けない(書かない)苦労など、世の中の知ったことではない。「早()よ。書いて出せ。待っているんだぞ」が人々の言葉だ。

 本書『米国債の巨額踏み倒し(デット・リストラクチュアリング)で金融統制が来る』は、A() rotten(ロットン) system(システム) for(フォー) sovereign(ソヴリン) debt(デット) restructuring(リストラクチュアリング) needs(ニーズ) fixing(フィクシング). という英文に戻して、これを、なんとか日本国民が分かるように説明することだ。この一点だけに集中し絞り込んで、私はこの一冊の本を書いた。「現在のアメリカ合衆国が抱える巨額の国家債務(借金)の仕組みは腐り果てているから、それを組み立て直す(再編する)必要がある」という意味だ。

 ところが、もうすぐ起きることは、アメリカ政府が宣言するであろうが、“(We haveNo financial responsibility.”「私は債務を返済する責任は負わない」「大借金を返す気はない」だ。アメリカは居直り強盗をするだろう。

 これと同時併行で起きているのが、貧乏新興国54カ国で一斉にやるかもしれない、世界銀行、IMFからの借(しゃっ)(かん)(借金)の踏み倒しである。これは“G20 (ジートゥエンティ) Common(コモン) Assurance(アシュアランス)(=Debt[デット]Restructuring(リストラチュアリング) Program(プログラム)”として現在G20で議論されていることだ。

 私はこの本でもっと多くのことを説明したかったが、気が勢()いて、とても私の頭(思考力)が追いつかない。それでも、これだけのことを書いた。本当に苦しい3カ月だった。これでよしとする。

 最後に、この本も徳間書店編集部力石幸一氏の苦労と共に成った。記して感謝します。

2024年7月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、私の最新刊『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をご紹介いたします。発売日は2023年12月27日です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は私にとって4冊目の単著で、ジョー・バイデン成立後のアメリカ政界の動きと世界政治の動きを網羅した内容になっています。何とか年内に出すことができました。2023年を振り返る、冬休みの一冊として、是非手に取ってお読みください。

 以下に、副島隆彦先生の推薦の言葉、はじめに、目次、おわりにを掲載します。

(貼り付けはじめ)

推薦の言葉 副島隆彦(そえじまたかひこ)

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は、私の弟子である古村治彦(ふるむらはるひこ)君にとって4冊目の単著となる。

 古村君の前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年6月刊)は、アメリカ政治研究の専門家たちから高い評価をいただいた。それで、本書がその続編として書かれた。前著を読んだ編集者から執筆の話をいただいたと聞いた。大変ありがたいことだ。

 前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』では、古村君は、アメリカのバイデン政権を作っている、ディープステイト(超[ちょう]財界人と米軍需産業)側の政府高官たちが、中国・ロシアとの対決、戦争をどのように仕組んで、どのような計画で実行しているかを、正確にはっきりと説明した。なんと、この本が出てから8カ月後に、実際にウクライナ戦争が始まった(2022年2月24日)。これは真に驚くべきことだ。

 アメリカの国防政策と外交政策を実際に操(あやつ)っている、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とその創設者のミッシェル・フロノイ元(もと)米国防次官(アンダーセクレタリー)のことを、詳しく紹介していた。これは日本初(はつ)のことで、国際関係論(インターナショナル・リレイションズ)の研究者である古村君の学問業績である。本書に続いてお読みください。

 本書では、古村君は、引き続き、アメリカ国際政治の悪の司令塔であるウエストエグゼク社と、米国防総省(ペンタゴン)の密接な結びつきを丹念に追っている。ウエストエグゼク社が、米国防総省と、民間のハイテク企業群のグーグル、フェイスブック(現在はメタ)などのビッグテック(Big Tech 巨大IT企業)を結び付けて、アメリカの軍事部門の先端技術(ハイテク)と武器開発の優位を保っている様子を、精(せい)(かく)に描いている。古村君はこのことを「新(しん)・軍産(ぐんさん)複合体」と表現している。今も前著の帯に書かれた「アメリカをWestExec(ウエストエグゼク)社が動かす!」の通りだ。

 古村君は、バイデン政権の進めている「産業政策(Industrial Policy(インダストリアル・ポリシー))」に注目している。産業政策は日本語で書くと珍腐なコトバだが、アメリカ政治学における重要な概念だ。この産業政策という概念を生み出したのは、日本研究学(ジャパノロジー)の大(だい)学者だったチャルマーズ・ジョンソン博士だ。私は、当時アメリカ留学中だった古村君を伴(ともな)って、カリフォルニア州サンディエゴにあるチャルマーズの自宅を訪問し、長時間にわたって話し込んだ。2004年4月のことだ。このことを懐かしく思い出す。

 古村君は、本書の後半部で世界政治における「西側諸国(the West[ザ・ウエスト[)対(たい) 西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト] 残りの部分の意味)の分裂と対立」を描き出している。ウクライナ戦争は、アメリカのディープステイトが、何が何でも、プーチン政権を罠(わな)に嵌めてウクライナにおびき出して、ロシアを弱体化することが目的だった。この外交・軍事戦略を決定して実行した者たちが、まさしく今のバイデン政権の高官たちだ。一方、中国、インド、サウジアラビアなど、非()西洋、即ち西側以外の国々は、継続してロシアから石油を輸入することでロシアを支えた。ウクライナ戦争は膠着(こうちゃく)状態だが、英と米のディープステイト側の敗北、そしてロシアとロシアの苦境を支える西側以外の国々の勝利が見えてきた。

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で、古村君は、「世界覇権がアメリカから中国に移動する、中国は焦らず、じっくりと熟柿(じゅくし)作戦で覇権(ヘジェモニー)が泰然自若(たいぜんじじゃく)で手に入るのを待つ。大国の風格だ」と書いている。まさしくその通りで、もうすぐ世界覇権の移動が起きる。

 この一冊で、最新のアメリカ政治と世界政治の動きを理解することができる。ぜひ、読者諸賢にお読みいただきたい。

2023年12月

副島隆彦(そえじまたかひこ) 

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はじめに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 私は2021年6月に、著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発表した。その中で、ジョー・バイデン Joe Biden(1942年~、81歳。大統領在任:2021年~)政権の高官たちの多くが、アメリカの首都ワシントンDCにあるコンサルティング会社の、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 WestExec Advisors の出身者であることに着目し、この会社を中心とする人脈からバイデン政権を分析した。

 このウエストエグゼク社が米国防総省 United States Department of Defense(ユナイテッド・ステイツ・デパートメント・オブ・ディフェンス) や軍事産業と関係が深い点に注目し、「バイデンとバイデン政権の高官たちは中露に対して強硬な姿勢を取る、もしかしたら戦争になるかもしれない」と書いた。

 翌年の2022年2月24日にウクライナ戦争が始まった。バイデン政権の下でロシアが絡(から)む戦争が起きたということで、私の本に注目してくださる方が増えた。アメリカと中露が直接戦う戦争ではなかったが、アメリカはウクライナに対して大量の武器を支援しており、ウクライナがアメリカの代理 proxy(プロキシー) となり、ロシアと戦っている。

 しかし、バイデン政権の活動の根幹を担っている、ウエストエグゼク社と同社の出身者たちの人脈に対して、日本では大きく注目されるところまではいかなかった。私はそのことを残念に思っていた。

 しかし、2023年9月2日、講談社が運営するウェブサイト「現代ビジネス」の「ニュースの深層」というコーナーを長年にわたり担当している、ヴェテランのジャーナリスト歳川隆雄(としかわたかお)氏が、「米バイデン政権『国務副長官』の後任は……政府要職を占めるコンサル出身者のからくり」(https://gendai.media/articles/-/115663)という題名の記事の中で、ウエストエグゼク社について取り上げた。歳川氏は、バイデン政権に数多くのウエストエグゼク社出身者がいることを指摘し、バイデン政権にとって重要だと書いた。

 歳川氏の記事が出てから、「あの記事で取り上げられていたウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は、あなたが本の中で取り上げていた会社ですね」「あなたの方が先に注目していたことになる」という嬉しい声を多くいただいた。これでウエストエグゼク社と出身者たちについて、日本でも注目されるようになるだろうと考えている。

 本書では引き続き、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の動きから、バイデン政権の意図を分析する。さらに、アメリカ国内政治、国際政治の最新の動きを網羅的に捉(とら)え、日本の主流メディアでは紹介されない、見方や考え方を提供する。

=====

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる──目

推薦の言葉 1

はじめに 5

第1章 中国に対する優位性の確保に苦労するバイデン政権──米中で実施される産業政策でも中国が有利

バイデン政権の産業政策に深く関わるウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 20

ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とはどのような会社か 22

ウエストエグゼク社出身者が重要高官を占めるバイデン政権はヒラリー政権でもある 27

国防総省がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社と関係を深めている 30

ウエストエグゼク社創設者ミシェル・フロノイは国防総省の予算を使いやすくするように提言報告書を執筆 35

産業政策の本家本元は日本 40

バイデン政権が進める産業政策 46

バイデン政権で産業政策を推進する人材としてのジャレッド・バーンスタイン 51

ジェイク・サリヴァン大統領補佐官が産業政策の熱心な支持者 54

産業政策の成功例である中国 66

ファーウェイがiPhoneと同水準のスマートフォンを開発──21世紀のスプートニク・ショック(Sputnik Crisis(クライシス)) 70

軍事面で優位に立つためには技術面での優位が必要──長期計画ができる中国が有利ということが明らかに 75

第2章 2024年米大統領選挙は大混迷

米大統領選は100年に一度の大混乱 80

アメリカ大統領選挙はマラソンレース──まずは党の候補者を決める予備選挙から 82

アメリカ大統領選挙本選挙は各州の選挙人の取り合い 85

現職大統領なのに支持率が上がらないバイデン──有権者は高齢問題を憂慮 88

民主党全国委員会はバイデン当選に向けて露骨な依怙贔屓 91

民主党予備選挙に出馬宣言したロバート・F・ケネディ・ジュニア──大いなる期待 99

ケネディ・ジュニアが無所属で大統領選挙本選挙に出馬表明という怪しい動き 104

共和党ではトランプが圧倒的に有利な情勢 110

トランプを尊敬する新人候補ヴィヴェック・ラマスワミが大健闘 111

アメリカ史上初めての連邦下院議長解任まで起きた連邦下院共和党の分裂 115

連邦下院では10月から始まる2024年度の予算が可決成立していない 123

共和党内の分裂で注目を集めるフリーダム・コーカスは「トランプ派」議員連盟ではない 127

「大統領の犯罪」を隠(いん)(ぺい)するためにはどうしても勝たねばならないバイデン 136

第3章 ウクライナ戦争から見えてきた世界の分断

長期膠着状態に陥っているウクライナ戦争の戦況 142

アメリカ軍やNATOの評価が低い、そして自分勝手なウクライナ軍では勝てない 149

「ゼレンスキー疲れ」「ウクライナ疲れ」に陥ったヨーロッパとアメリカ 153

国際関係論の大物学者ミアシャイマーが「ウクライナ戦争の責任は、アメリカとNATOにある」と喝破 157

ヘンリー・キッシンジャーの提示する「落としどころ」が停戦の基本線 164

「世界の武器庫」であるべき西側諸国、特にアメリカの武器増産が進まずに武器不足に陥る 171

「大統領の犯罪」ノルドストリーム爆破事件──アメリカは平気で自分の同盟諸国を苦境に陥れる 177

戦争直後の国連でのロシア非難決議の採決で世界の分断が明らかになった 187

ウクライナ戦争の結末はどうなるか 191

第4章 「西側諸国 the West」対「西側以外の国々 the Rest」の分断が世界の構造を変える

「西側以外の国々」の中核となるBRICS(ブリックス)(ブリックス) 199

多元的な国際機構や枠組みで重層的な関係を築いている西側以外の国々 202

サウジアラビアがバイデン大統領の依頼を断り、中国寄りの姿勢を鮮明にした 208

中国の習近平国家主席がサウジアラビア訪問で石油取引の人民元決済に言及 210

アメリカを追い詰めすぎると怪我するということで、「ブリックス通貨」導入は見送り 218

国際社会で仲介者になるほどに中国の大国としての存在感は高まっている 225

アメリカはインド・太平洋で中国を封じ込めたい──QUAD、AUKUS、NATOのアジア進出 229

「アジアの皇帝」カート・キャンベル国務副長官指名は、バイデン政権の対中強硬姿勢を鮮明に 234

ハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃とイスラエルの反撃 240

アメリカの意向を無視するイスラエルがアメリカを追い詰める 246

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争から見えてくるアメリカの威信の低下 253

第5章 覇権国でなくなるアメリカとこれから覇権国になる中国

国際関係論の覇権国交代理論である覇権戦争論と長期サイクル論 261

世界は西洋支配の前の状態に戻る 269

米中間で戦争が起きるか 273

米中は戦争の可能性を視野に入れて体制強化を図る 277

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争が長引けば、国際情勢はアメリカと西側諸国にとって不利になる 279

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争で抑制的な動きをしている中国だが国際情勢は中国有利になる 284

アメリカはこれから同盟諸国にバック・パッシング(責任転嫁)を行う 287

短期的に見て怖いのは、直接戦争ができないアメリカが日本に代理戦争をさせること 290

おわりに 295

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おわりに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 本書の一貫したテーマは、アメリカを筆頭とする西側諸国(the West[ザ・ウエスト])の衰退と中国を筆頭とする西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト])の台頭が世界に大きな変化をもたらしている、ということだ。そのことを、アメリカ国内政治と世界政治の分析を通じて描き出そうと努めた。

 本書の執筆中、10月になって、アメリカ国内では、史上初の連邦下院議長解任が起き(10月3日)、国際的に見れば、ハマスによるイスラエルへの攻撃が起き、イスラエルがガザ地区に報復攻撃を開始した(10月7日)。そのため、本書の構成を一部変更せざるを得なくなったが、これらの出来事は、本書で掲げたテーマを裏付けるものだ。

 アメリカ国内政治は混迷の中にある。アメリカ国内の分裂と衰退はもう隠すことができないところまで来ている。アメリカ国内では、2024年の大統領選挙で、高齢問題もあり、有権者から全く支持されていないバイデンが再選を果たすことになると私は見ている。合法、非合法、あらゆる手段で、アメリカ国民の意思を捻()じ曲げて、バイデン勝利とするだろう。そうしなければならない理由を、私は本書で書いた。バイデン勝利が「作り出されたcreation(クリエイション)」後に、アメリカでは、バイデンが大統領選挙で勝利した州を中心にして、アメリカ国民による大規模な抗議活動が起き、アメリカ国内の分裂はさらに深まる。

 さらには、バイデン再選とそれに対する抗議運動がきっかけになって、アメリカが新たな「南北分裂」状態に陥ることも考えられる。私は、本文の中で、バイデン勝利は「アメリカ民主政治体制の死」を意味すると書いたが、さらに進んで「アメリカ合衆国の死(解体)」にまで進む可能性も高い。

 バイデン政権は、分裂を避けるために、国内政策に注力しなければならなくなる。対中封じ込め政策を強化しようとしているが、国内対策に足を取られて、思い通りに物事を進められない状態になる。国内経済の先行きも不透明になる中で、アメリカは分裂と衰退に向かう。アメリカの分裂と衰退は、西側諸国全体にも悪影響を及ぼすことになる。

 世界政治の構造も大きく変化している。アメリカの分裂と衰退で利益を得るのは、中国を中心とする西側以外の国々だ。ウクライナ戦争では、西側以外の国々はロシアを間接的に支え切り、ロシアは戦争初期の厳しい段階を乗り越えて、守備を重視した、負けない体制を構築し、戦争継続が可能となっている。西側諸国は、武器生産能力が限界を迎え、資金面でも、限界に来ており、全体に厭戦気分が広がっている。

 西側以外の国々は、重層的な国際組織を結成し、宗教、政治体制、経済体制の面で、多様な国々が連携できるネットワークづくりを進めている。その中心がBRICS(ブリックス)であり、中国が核となっている。石油の人民元(じんみんげん)決済やドル以外の共通通貨(脱[だつ]ドル化)の話が出ているのは、アメリカの戦後支配体制の揺らぎを象徴している。中国は、アメリカとの対立激化を避けながら、アメリカの自滅を待つという姿勢だ。できるだけ労力をかけないようにしながら、慌てず急がずで、世界覇権を手にする。

 西洋近代は、もちろん素晴らしい成果を収めた部分もある。西洋近代がもたらした科学(サイエンス)(学問)の発展や価値観、制度によって、人類はより快適で豊かな生活を享受することができた。その点は認めなければならない。しかし、一方で、西洋中心主義 Ethnocentrism(エスノセントリズム) によって、西洋的な価値観と制度を世界中に押し付け、結果として、西洋化することで世界を一色にまとめ上げようとしてきた。

 非西洋諸国の文明化 civilization(シヴィライゼイション) は、社会工学 socialengineering(ソーシャル・エンジニアリング) を通して行われた。非西洋の土台の上に無理やり、西洋社会の価値観や制度が移植された。社会工学は「文明化外科手術(ぶんめいかげかしゅじゅつ)」とも呼ばれるべきもので、不自然な移植のために、制度がうまく機能しないことも起きた。それに対して、西洋諸国は、「近代化の出来ない落ちこぼれ」というレッテルを貼った。

 しかし、これから、世界の「優等生」たちが力を失い、これまでの「落ちこぼれ」たちが力をつけていく。そうした時代に入っていく。西洋近代、戦後世界の終わりの始まりである。

 本書の構成を友人に話したところ、「世界の今が分かるということですね」と言われて、私は少し驚いた。私としては、そのような大それた目的をもって執筆を始めた訳ではなかった。しかし、本書を通じて、読者の皆さんに、現在の世界情勢を理解するための情報や視点を提供できるとすれば、それは筆者として、何よりの喜びだ。

 師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には、力強い推薦文をいただきました。徳間書店学芸編集部の力石幸一氏には、本書の企画から出版までお世話になりました。記して御礼申し上げます。

2023年12月

古村治彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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