古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:台湾

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権になって、アメリカは世界の舞台でふらふらと一貫性のない行動を取っている。高関税をかけてみたかと思えば、税率を引き下げる、中国に対して攻撃的な姿勢を取って、中国がレアアースを材料にゆさぶりをかけると、すぐに腰砕けになった。米中首脳会談は共同記者会見や共同声明は出ていないが、最低限のラインは守られ、米中両国は戦争には至らないということで合意している。ドナルド・トランプ大統領の日規則発言やイレギュラーな行動はなかった。ウクライナ戦争はいまだに停戦の兆しを見せず、それに加えて、アメリカはヴェネズエラ攻撃やイラン戦争を実施し、ヴェネズエラ攻撃は成功したが、イラン戦争は失敗であった。アメリカは圧倒的な軍事力を持っており、世界のどんな国でもひとひねりでやっつけることができるというのは幻想(illusion)だ。アメリカは弱い低を慎重に選んで攻撃し、強そうに見せていたということが明らかになりつつある。

 こうした混乱はトランプが大統領だからだと考えるのは浅薄だ。トランプはお金がない中で、一生懸命にアメリカを運営し、どうせ駄目な泥船だということは分かっていながら、何とか運営しようとしている。しかし、根本的に駄目な状態であるので、どうしようもない。どうしても、フラフラ、右往左往することになる。トランプはアメリカ帝国の「墓掘り人」として選ばれた。アメリカ帝国の後始末をつけるという大事な仕事がある。

しかし、それにしても大失敗はイラン戦争である。これで全く望んでいなかった中東地域の泥沼にはまり込んでしまった。アメリカが存在自体を公式に認めてこなかったイランの政権と真剣に外交交渉をして、しかも譲歩をしなければならない。アメリカが打倒の対象としてきた、イランの政権の体制の保証までしなければならない。これは屈辱である。イスラエルにいいように使われてこのような事態を招いた。こうしてアメリカは世界覇権国、世界帝国の地位から滑り落ちていく。

 おとなしく、余計なことは何もしないで、経済に注力してきた中国の存在感が大きくなるのは当然のことだ。5月14日から15日にかけて米中首脳会談、20日には中露首脳会談が北京で開かれたことは象徴的だ。アメリカはイラン、ロシアはウクライナという問題を抱えており、中国は日本の新型軍国主義と高市早苗政権と台湾という潜在的な問題を抱えながら、米露という20世紀の超大国の上にいるというような形で、「ヤルタ2.0」体制を構築している。米露は辞を下げて中国にいろいろと「お願い」をしに行った。これは大きなことだ。中国は世界覇権国への途を進んでいくだろう。2042年のアヘン戦争後の天津条約200周年までにどれくらいこの状況が進むか注目される。

(貼り付けはじめ)

中国の覇権が実現するかもしれない(Chinese Hegemony Might Be Happening)

-それが現実になる可能性を疑う理由はこれまでいくらでもあった、今までは。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/12/china-hegemony-asia-trump-summit/

中国はアジアにおける覇権国になり得るのか? 2023年、私は中国の地域覇権(regional hegemony)への懸念は誇張されているものの、全くの空想ではないと主張するコラムを発表した。その主張をより詳細にまとめたものが、2025年春号の『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載された。私は、近年の地域覇権への試みのほとんどが失敗に終わっている(アメリカは例外的に有利な状況下で成功した)だけでなく、アジアにおける強力な勢力均衡連合(a strong balancing coalition in Asia)の形成は実現可能性が高いと主張した。中国の近隣諸国のほとんどは、中国が地域を支配することを望んでいない。アメリカも同様だ。主要諸国が脅威を均衡させようとする傾向があることを踏まえ、私は中国による露骨な覇権への試みは失敗に終わる可能性が高く、北京がそのような試みを行うのは賢明ではないと結論付けた。

この議論の論理は今でも説得力があると思うが、ドナルド・トランプ米大統領が、実際に証明されているように、衝動的で、見当違いで、無能な外交政策の担い手となる可能性を十分に考慮していなかった。マルコ・ルビオ国務長官やエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)といった強硬派の存在、そして連邦議会における超党派の合意によって、アメリカの国力はアジアの同盟諸国が中国を牽制するのを支援することに十分集中するだろうと想定していた。

ところが、2025年以降、トランプ大統領は、中国がアメリカに取って代わり、周辺地域で支配的な地位を確立することを意識的に望む者が行うであろうあらゆることを実行してきた。彼はアメリカの科学界の柱を攻撃し、国立科学財団(NSF)の予算を削減し、諮問委員会を粛清し、数十の政府機関で経験豊富な科学者を解雇し、アメリカの主要大学に対して破壊的な攻撃を仕掛けてきた。科学技術力が経済生産性と軍事力の鍵となる時代において、これは一方的な軍縮行為であり、中国がまさにその逆のことをしている時に行われる行為である。

関連して、トランプは太陽光発電や風力発電、先進バッテリー、電気自動車といった新興グリーンテクノロジーの分野で中国に主導権を譲り渡す一方で、化石燃料や内燃機関といった20世紀の技術に固執している。データセンターが急増し、人類の生存に必要な電力がますます増大する中で、この政権は風力発電所の建設を阻止するために税金を投入している。世界は化石燃料の使用を減らし、クリーンエネルギーへの依存度を高める必要があることを日々痛感しているにもかかわらず、トランプはその未来をアメリカではなく中国が握るようにあらゆる手段を講じている。

第三に、トランプ大統領は中国(およびその他の国々)に対して、設計が不十分で一見無作為に見える一連の関税を課したが、中国が多くの先端技術(私が今これを書いているノートパソコンも含む)の基盤となる精製レアアースの輸出を停止すると、トランプ政権は撤回した。結局、彼の関税措置は違法だったことが判明し、彼が主張していた目標(例えば、製造業の雇用をアメリカに取り戻すなど)を達成する可能性はさらに低くなった。

さらに悪いことに、彼は関税という強硬手段を用いて、アジアの最も重要なパートナー諸国を威圧し、彼らが望むか否かにかかわらず、アメリカ経済への投資を約束させた。同盟諸国の経済に打撃を与えることは、反感を招くだけでなく、アメリカが長年望んできた国防費の増額を困難にする。トランプと彼のティームは、アジア諸国との関係改善にもほとんど取り組んでいない。トランプは昨年、インドのナレンドラ・モディ首相と無意味な論争を繰り広げた。また、現在、オーストラリア、ミャンマー、カンボジア、フィジー、インドネシア、ラオス、マレーシア、マーシャル諸島、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、ヴェトナムには、米大使が誰も駐在していない。これらの国々の米大使のほとんどは、そもそも候補者すら指名されていない。

トランプとルビオは、アメリカを数十もの国際機関から脱退させた。これは、中国がますます活発かつ影響力を強めているもう一つの分野であり、国際関係の様々な側面を規定するルールや制度が策定される場にアメリカが参加できないことを意味する。もちろん、一部の国際機関はそれほど重要ではなく、強国は望む時にそれを無視できるという意見もあるだろう。しかし、こうしたフォーラムにおける外交的存在感の低下は、アメリカが他国との協力に関心がないというメッセージを世界に発信することになる。また、今後数年間、アメリカ企業は他国によって策定されたルールに基づくグローバルな規制環境に対応していかなければならないことを意味する。アメリカのような強国でさえ、これは不便で非効率的だと感じるかもしれない。

そして、イランとの戦争もある。

第一に、この紛争は大きな障害となっており、トランプの限られた集中力だけでなく、側近たちの時間とエネルギーも浪費している。ホルムズ海峡の開通方法を模索している最中に、どうやって効果的なアジア戦略を策定できるというのだろうか? トランプ大統領は、アジアにおける中国の台頭に注力すると公約して就任した4人目の米大統領だが、歴代大統領と同様、結局は中東地域で泥沼にはまり込むことになった。そして、2003年のジョージ・W・ブッシュ大統領と同様、彼には自らの責任以外に責めるべき相手はいない(そしておそらくイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は責めることができるだろうが)。

この戦争は、アジアにおけるアメリカ軍の態勢を弱体化させ、もしアジアで紛争が発生した場合、アメリカがどれほど効果的に対応できるのかという正当な疑問を起こさせる。現在、アメリカ海軍は中東地域に3つの空母打撃群を配備しているが、東アジアには1つしかない。ペルシア湾岸に展開している空母は数カ月間も配備されており、この事態が収束すれば港での休息が必要になるだろう。米国防総省はトマホークミサイルやパトリオットミサイルなどの先進兵器を急速に消費しており、アジアの同盟諸国は防衛力が低下しつつある。中国や北朝鮮がこの状況を悪用するとは考えにくいが、アジアの同盟諸国にとっては決して喜ばしいことではないだろう。

さらに言えば、この戦争の「計画(planned)」(そもそも計画という言葉が適切かどうかは別として)と実行のあらゆる過程は、長年の同盟諸国に相当な懸念を抱かせているに違いない。事前に相談を受けた国は皆無であり、政権内部の誰も、イランへの再攻撃(2025年6月に続いて)が世界中のパートナー諸国にどのような影響を与えるかについて全く考えていなかったようだ。その影響は深刻だ。フィリピン、日本、韓国などでガソリン価格が急騰し、経済成長予測も下方修正された。さらに、戦争による肥料不足や農作物の収穫量減少といった経済的・人的被害も加われば、ワシントンが軽率に戦争に踏み切ったことへの怒りは当然と言えるだろう。

以前にも述べたように、トランプ政権の混乱した戦争遂行は、アメリカの判断力と能力(judgement and competence)に対する深刻な疑念を抱かせるばかりだ。国際政治において、影響力と信頼性(influence and credibility)は、国力、共通の利益、そして決意の表明によって部分的に形成されるが、同時に、他国の指導者が自らの行動をある程度理解しているという信頼にも左右される。これまでの政権の実績を考えると、アジア(あるいは他の地域)のアメリカの同盟諸国は、彼らの助言を受け入れたり、彼らが交わす約束を信じたりするべきか? 一方、中国は自らを穏健な大国[a benign power](実際はそうではない)として、あるいは少なくとも外国を爆撃したり、指導者を暗殺したり、世界経済を混乱に陥れたりするような国ではないかのように見せかけることができる。ギャラップ社の最近の世論調査によると、中国は今や世界中でアメリカよりも人気が高いという。これは驚くべき展開であり、私たち全員が懸念すべき事態だ。

こうした状況を踏まえると、私はアメリカのアジアにおける同盟関係の安定性、そして中国の覇権を阻止できる見込みについて、楽観的すぎたのではないかと疑問に思わざるを得ない。中国に対抗するための連合は、構造的に見てかなり強固なものになるはずだが、主要な同盟国、特に同盟のリーダーと目される人物があまりにも無能であれば、崩壊する可能性は依然として存在する。ほとんどのアジア諸国はアメリカから距離を置き、中国に迎合することを望んでいないが、その可能性は私がかつて考えていたほど低いものではないかもしれない。その主な理由は、アメリカの最近の失策ということになる。

こうしたことを言うのは躊躇してしまう。なぜなら、敗北主義(defeatism)は自己成就(self-fulfilling)になりかねないからだ。また、もはや万策尽きた状態で中国の覇権が確実だと示唆したくもないからだ。今でも、私は中国が持っている手札よりもアメリカの手札の方がはるかに良いと考えている。なぜなら、ワシントンは北京よりも多くのハイカードを握っているからだ。しかし、私たちの手札を、ゲームのルールを理解し、それぞれのカードの価値を知っている人物が握ってほしいと切に願っている。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 ドナルド・トランプ大統領は融通無碍だ。自分の過去の行動や決定、発言に縛られない。これはトランプの強みだ。謝ることはしないが、これは違うと思えばさっと行動を変える。これだと発言や決定に信頼性を欠くことになるが、この柔軟性は事態をそこまで悪化させない。この柔軟性はほかの政治家ではなかなか持てない。

 ドナルド・トランプ大統領は中国を批判し、実際には極端な高関税政策など、厳しい対応を行ってきた。米中貿易戦争という言葉は、第一次トランプ政権の頃から使われている。中国もアメリカに対して厳しい対応を取るということを行ってきた。同時に、製造業での優位を確保し、最先端分野、AI(人工知能)、量子コンピュータ、ドローン、電気自動車などの分野でアメリカと肩を並べ、追い抜くというところまできた。また、レアアース分野における優位性も確保していた。そして、第二次トランプ政権で、このレアアースの優位性を利用して、アメリカに対抗し、アメリカからの譲歩を引き出した。

 今回の米中首脳会談では、具体的な内容はあまり伝わっていないが、中国側が「建設的戦略的安定性(constructive strategic stability)」の堅持で合意した。米中はお互いに緊張関係を欲しないし、競争と協調をミックスした関係を望んでいる。台湾問題にしても、武力衝突までエスカレーションすることを両国が望まない。アメリカにも、台湾にも、日本にも、そして、中国にも、米中日台湾の間で武力衝突をしたい、させたいと狂信的に望む人間や勢力がいる。しかし、実際には、トランプもアメリカも中国戦争をしたいとは望まないし、できない。そんなことをすれば、アメリカの衰退が加速し、国家が立ち行かなくなるからだ、そして、世界の敵と認定されてしまうからだ。

 トランプは対中強硬姿勢から見事に、華麗に変身した。トランプ政権内には対中強硬派が多く入っているが、親分が以前は白と言っていたが、今は「これは黒だよな」と言ったら、「そうですね、真っ黒ですよ」と答えるのが子分だ。裏では「何を言ってやんでぇ」と思っていたとしても、だ。トランプ政権の間は中国に融和的な姿勢とならざるを得ない。それが嫌ならトランプ政権から離れねばならない。トランプは根っからのビジネスマンであり、「金にならない」「損になる」ということを嫌うという本能で生きている。その本能が正しく機能して、中国に対して融和的になっているというのは、それだけで大きな価値があるということになる。そして、対中強硬姿勢を馬鹿みたいに続けるほど馬鹿ではないということだ。それでは、日本の指導者、高市早苗首相はどうだろうか。その答えは明らかだ。

(貼り付けはじめ)

トランプの対中政策における実用主義は歓迎する(Trump’s China Pragmatism Is Welcome)

-北京とのライヴァル関係は避けられない。経済の断絶(economic rupture)は壊滅的な事態を招くだろう。

ファリード・ザカリア筆

2026年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/18/trump-xi-meeting-china-united-states-economics-trade-great-power-competition/

このコラムの読者の皆様さんは、私がドナルド・トランプ大統領の2期目の外交政策を支持してこなかったことを知っている。グリーンランドの併合やカナダの併合をちらつかせたり、一方的に関税を急激に引き上げたり、イラン戦争の失敗に終わったりと、トランプは無謀で(reckless)、混乱させ(chaotic)、深刻な不安定化(deeply destabilizing)をもたらしてきた。しかし、ある重要な分野、すなわち米中関係においては、彼は正しい直感(the right instincts)、そしておそらくは正しい政策さえも持ち合わせているのかもしれない。

トランプが最近、中国の習近平国家主席と会談した際、普段はなかなか見られない一面が見られた。彼は敬意を払い、ほとんど恭順を示し(almost deferential)、二人の個人的な親密さを強調しようと努めていた。一方、習主席は終始形式的で(formal)、規律正しく(disciplined)、決して温かみのある様子を見せなかった。この非対称性は、実態をよく示している。

トランプ氏は権力に執着している。イデオロギーや価値観よりも、彼は影響力と支配力という観点から物事を考えている。トランプはヨーロッパの同盟諸国を侮辱するが、それは彼らが依然としてアメリカの軍事的保護とアメリカ市場へのアクセスにどれほど依存しているかを理解しているからだ。トランプ氏は弱点を見抜き、それを巧みに利用する(Trump senses weakness and exploits it)。

しかし、中国に関しては、ワシントンの多くの人々が未だに感情的に受け入れられずにいる事実をトランプは理解するようになった。それは、北京が経済、技術、産業、軍事において独自の強大な力を持っており、それを効果的に行使できるということだ。従って、トランプは、好戦的な姿勢(belligerence)から、ライヴァル関係と協力関係(rivalry and cooperation)が複雑に絡み合った関係へと変化した。この関係こそ、まさに今求められているものなのかもしれない。

トランプ氏の今回の訪問を、2021年にアンカレッジで行われたバイデン政権関係者と中国側関係者の初会談と比較してみよう。アメリカ側はテレビ中継で、人権問題、サイバー攻撃、国際秩序を巡って中国を激しく非難した。中国側の外交官たちも同様に激しく反論した。それは真剣な外交的対話というより、ケーブルニューズでの罵り合い合戦(a cable news shouting match)に過ぎなかった。

多くの中道派民主党連邦議員たちは、「中国に弱腰だ(soft on China)」と見なされることを恐れている。そのため、彼らはしばしば過剰なレトリックを用い、極端な表現を使い、象徴的な対立をエスカレートさせる。ジョー・バイデン大統領は、トランプ政権の対中関税に懐疑的な姿勢を示し、撤廃を約束したにもかかわらず、ほぼ全ての関税を維持した。また、バイデンは大統領として中国を訪問したことはなく、習近平国家主席をワシントンに招待することもなかった。

バイデン陣営は、トランプ政権が最初に主張した、中国の新疆ウイグル自治区における行為は大量虐殺(ジェノサイド、genocide)に当たるという主張を支持した。ジェノサイドという言葉は、ホロコーストや1994年のルワンダ虐殺のような、組織的な大量虐殺(extermination campaigns)を想起させる。中国の新疆ウイグル自治区の刑務所や再教育キャンプは残虐で恐ろしいものであり、数十人の学者がウイグル族に対する中国の行為をジェノサイドと呼んでいる。しかし、『エコノミスト』誌が指摘したように、それは多くの人がこの言葉を思い浮かべたときに連想するものとは異なる。

トランプの最大の強みは、右派からの攻撃を受けないことだ。2016年の大統領選挙後、彼は北京を激しく非難し、製造業の雇用喪失、貿易不均衡、そしてアメリカの産業衰退の責任を中国に押し付けて政権を握った。ある意味、これは「ニクソン大統領が中国へ向かった」というよりは、リチャード・M・ニクソン大統領よりも右派に位置する超タカ派のロナルド・レーガン大統領がソ連へ向かったという構図に近い。トランプが同様の方向転換を成し遂げられる可能性があるのは、彼の支持層が彼の先導する方向に従うからに他ならない。トランプがイランへの軍事介入を支持する姿勢を示した途端、多くのMAGA支持者がいかに迅速に態度を翻したかを見れば明らかだ。

なぜ中国とのより協調的なアプローチが理にかなっているのだろうか? それは、中国はソ連ではないからだ。ある指標によれば、冷戦終結時のソ連経済規模はイタリアよりも小さかった。一方、中国は世界第2位の経済大国であり、120カ国以上にとって最大の貿易相手国であるだけでなく、電気自動車やバッテリーからドローン、先端製造業、人工知能に至るまで、幅広い分野で技術大国としての地位を確立している。製造業の生産高は、米国、日本、ドイツを合わせた額を上回る。

このような国に対して本格的な冷戦を仕掛けようとすれば、世界が既に分断されていたソ連との闘争とは全く異なるものになるだろう。冷戦を仕掛けることは世界経済そのものを崩壊させることを意味する(It would mean tearing apart the global economy itself)。アメリカの消費者は物価上昇と供給ショックに直面するだろう。アメリカ企業は世界最大級の市場へのアクセスを失うだろう。大学は多くの優秀な学生を失うだろう。危険は単なる経済的苦痛にとどまらない。それは、敵対する2つの技術・地政学的ブロックが生まれ、対立が激化するという事態を招くことになるだろう。

もちろん、アメリカと中国はライヴァル関係にある。二極化した世界(a bipolar world)において、それは避けられないことだ。米中両国は今後数十年にわたり、経済、軍事、戦略のあらゆる面で競争を繰り広げるだろう。しかし、ライヴァル関係は必ずしも完全な断絶(total rupture)を意味するものではない。ヘンリー・キッシンジャーは亡くなる数週間前、私に次のように語った。「米中両国の指導者は、1914年に国家主義的な競争が結果を顧みずに追求された結果、世界秩序を根底から覆す世界大戦が勃発したことを心に留めておくべきだ(leaders of both countries should keep in mind how in 1914, nationalist competition pursued with no concerns of its consequences led to a world war that upended the entire global order)」。

人工知能、サイバー戦争、核兵器の時代において、協力関係を維持することはこれまで以上に重要だ。米中両国は激しく競争しながらも、核兵器の安定(nuclear stability)、AIの安全性(AI safety)、パンデミック(pandemic)、金融危機(financial crises)といった分野で、可能な限り取引、対話、協力関係を維持すべきである。冷戦時代、ワシントンとモスクワは激しい敵対関係の最中でも軍備管理交渉を継続した。それは、米ソ両国が制御不能なライヴァル関係が破滅的な結果を招くことを理解していたからだ。

それは今日においても変わらない。そして、もしトランプが、哲学(philosophy)というよりはむしろ本能的(instinct)な理由から、この基本的な現実を認識するに至ったのだとすれば、少なくともこの問題に関しては、彼の実用主義(Pragmatism)は理にかなっていると言えるだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 なんだか盛り上がらないままで、ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席との米中首脳会談は終了した。何も大きな発表はなく、イラン戦争もウクライナ戦争もそのままということで、石油価格が短期的に下落することはないだろう。一方、中国側にとって十だったのは、台湾問題である。台湾問題で、アメリカ側から何らかの譲歩を引き出すことであった。台湾有事でアメリカ軍が支援することはしないとか、独立宣言を認めないといったことを公文書で記録しておくことを中国側は求めていただろうが、これはアメリカ政界内の親台湾派が許さないということもあって、厳しかっただろう。台湾問題については、トランプ大統領は中国訪問中には何も発言しなかった。しかし、アメリカに帰国後に、フォックスニューズでのインタヴューで、台湾独立に明確に反対する姿勢を示した。

 トランプ大統領はインタヴューの中で次のように述べている。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」

 アメリカは中国と直接戦争することができない。万が一、中国が台湾に対して武力を行使することになってもアメリカ軍は出動することはないだろう。中国は現状維持で、少しずつ経済的な統合から始めて、時間をかけながら台湾を取り込んでいくことになるだろう。ここで邪魔になるのは、反中国で凝り固まって、何が何でも中国と戦いたいとする勢力である。これは、台湾にも、日本にも、アメリカにもいる。彼らが不測の武力衝突を行わせようとしてくるのは何とも怖いことだ。日中戦争も、第一次世界大戦も一発の銃声から始まったことを考えると、このような危険な勢力の蠢動こそが世界平和にとっての害悪である。

 日本の高市早苗首相の台湾有事に関する発言はトランプ大統領の今回の発言とは全く異なる内容だ。勇ましい内容ではあったが、これによって日中関係は冷え込み、イラン戦争が起きている現状で、この冷え込みの悪影響が少しずつ出てきている。トランプ大統領は放言も多いが決して馬鹿ではない。この点が高市早苗首相との最大の相違点ということになる。そして、今回のトランプ大統領の発言からは、米中首脳会談で、米中間で台湾に関して何らかの合意なり、取り決めがあったということが推測される。勇ましいだけで、梯子を外された高市早苗首相が何とも滑稽でもある。

(貼り付けはじめ)
トランプ大統領は中国の習国家主席との首脳会談から数時間後、台湾に対し独立宣言をしないよう警告した(Trump warns Taiwan against declaring independence, hours after summit with China's Xi)

イアン・アキマン筆
BBC
2026年5月16日

https://www.bbc.com/news/articles/ce8p61v7l68o

ドナルド・トランプ米大統領は、台湾が中国からの正式な独立を宣言しないように警告を発した。

トランプ大統領は、北京で行われた習近平国家主席との2日間の首脳会談を終えた金曜日、フォックスニューズに対し、「私は誰かが独立することを望んでいる訳ではない(I'm not looking to have somebody go independent)」と述べた。

頼清徳台湾総統は以前、台湾は既に主権国家(a sovereign nation)であると認識しているため、正式な独立を宣言する必要はないと述べている。

アメリカは長年にわたり台湾を支援しており、法的義務として台湾に自衛手段を提供する義務を負っているが、この同盟関係と中国との外交関係の維持との間でしばしば折り合いをつけざるを得ない状況にある。

トランプ大統領は以前、自治権を持つ台湾について「どちらの立場にも確約はしていない(made no commitment either way)」と述べていた。中国は台湾を自国領土の一部と主張し、武力による併合も排除していない。

ワシントンの確立された立場は、台湾の独立を支持しないというものであり、北京との関係維持は、中国政府は一つであるという認識をアメリカが受け入れることを条件としている。

北京は台湾総統への嫌悪感を公然と表明しており、以前にも彼を「トラブルメーカー(troublemaker)」「両岸平和の破壊者(destroyer of cross-strait peace)」と表現したことがある。

台湾人の多くは自らを独立した国家の一部だと考えているが、大半は台湾が中国から独立も統一もせず、現状維持(the status quo)を望んでいる。

トランプ大統領はフォックスニューズのインタヴューで、この問題に関するアメリカの政策は変わっていないと改めて述べた。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」。

ワシントンへの帰路、トランプ大統領は記者団に対し、習近平国家主席と台湾について「たくさん(a lot)」話し合ったと述べたが、アメリカが台湾を防衛するかどうかについては議論を避けたと語った。

トランプ大統領は、習主席は台湾に対して「非常に強い思い入れ(feels very strongly)」を持っており、「独立運動を望んでいない(doesn't want to see a movement for independence)」と述べた。

中国国営メディアによると、習国家主席は会談で「台湾問題は米中関係において最も重要な問題だ」と警告し、「対応を誤れば、米中両国は衝突、あるいは紛争に発展する可能性もある」と付け加えた。

トランプ大統領は、台湾を巡る中国との紛争を予見しているかと問われ、「いや、そうは思わない。大丈夫だろう。習主席は戦争を望んでいない("No, I don't think so. I think we'll be fine. [Xi] doesn't want to see a war)」と答えた。

中国は近年、台湾周辺で軍事演習を強化しており、地域の緊張を高め、ワシントンが築いてきたバランスを試している。

昨年後半、トランプ政権は台湾への110億ドル相当の武器売却を発表した。これには最新鋭のロケットランチャーや各種ミサイルが含まれており、北京はこれを非難した。

トランプ大統領は、この売却を進めるかどうか近いうちに決定すると述べ、習近平国家主席と「非常に詳細に(in great detail)」協議したと付け加えた。

さらに、「今、台湾を統治している人物、つまり誰のことかは皆さんも知っているだろうが、その人と話をする必要がある」と述べた。

アメリカは台湾と正式な外交関係はないものの、非公式ながら相当な関係を維持している。米大統領は伝統的に台湾の指導者と直接対話することはなく、もしそうすれば、台湾の頼清徳総統を分離主義者(a separatist)とみなす北京との間で大きな緊張が生じる可能性が高い。

台湾外交部政務次長の陳明祺は土曜日、台湾はトランプ大統領の発言の正確な意味を明確にする必要があると述べた。

陳次長はまた、アメリカによる台湾への武器売却はアメリカ国内法で認められていると述べた。

「台湾とアメリカの武器売買は、常に地域の平和と安定の礎となってきた」と付け加えた。

ロイター通信が引用した頼総統の報道官の発言によると、アメリカによる武器売却は、「アメリカによる台湾の安全保障への関与(US security commitment" to Taiwan)」の一部であり、「地域的な脅威に対する共通の抑止力として機能する(serve as a shared deterrent against regional threats)」とのことだ。

トランプ大統領はフォックスニューズに対し、「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」と述べた。

アメリカは以前、独立問題に関して姿勢を軟化させたとして中国の反発を招いたことがある。

米国務省はウェブサイトから、2025年2月の台湾独立に反対するワシントンの立場を改めて表明する声明を削除した。北京はこれに対し、「分離主義勢力に誤ったシグナルを送るものだ」と批判した。

当時、台湾駐在の米当局者は「私たちは、いずれの側による一方的な現状変更にも反対すると長年表明してきた」と述べた。

台湾外交部長の林佳龍は、米中首脳会談を注視しており、「台湾とアメリカの関係の安定的な深化と台湾の利益の保護を確保するため」、アメリカをはじめとする各国と良好な意思疎通を維持していると述べた。

林部長は、台湾は常にこの地域の「平和と安定の守護者(guardian of peace and stability)」であったと述べ、中国が「攻撃的な軍事行動と権威主義的な抑圧(military actions and authoritarian oppression)」によってリスクを高めていると非難した。
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トランプ氏、台湾に独立宣言しないよう警告

AFP=時事 5/16(土) 7:52配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6dfa0610fbe746f1253b50ac4af692da2567550

【AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領は15日、中国訪問で習近平国家主席に台湾を支持しないよう圧力をかけられた後、台湾に対し正式な独立宣言をしないよう警告した。

習氏にとって重要な問題である台湾の独立宣言について、トランプ氏は反対する姿勢を明確にし、台湾が軍事攻撃を受けた場合に米国が台湾を防衛しなければならない理由を疑問視した。

トランプ氏は米FOXニュースの番組「スペシャル・レポート・ウィズ・ブレット・ベイヤー」で、「私は誰かが独立することを望んでいない。それに、戦争をするために9500マイル(約1万5300キロ)も移動しなければならなくなることも望んでいない」と主張。

「彼ら(台湾)には冷静になってほしい。中国にも冷静になってほしい」「われわれは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う」と付け加えた。

米国は中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であると承認しており、台湾の正式な独立を支持していないが、歴史的に台湾の独立に反対すると明言することは避けてきた。

米国は台湾関係法に基づき、台湾防衛のために武器を提供する義務を負っているが、米軍が台湾を支援するかどうかについては戦略的曖昧さを維持してきた。

習氏は米中首脳会談で、台湾問題で米側が対応を誤れば、「両国は衝突、さらには対立し、中米関係全体を極めて危険な状況へと押しやる可能性がある」と警告した。

台湾の頼清徳総統は、台湾は既に独立国であり、独立宣言は不要だという立場を取っている。【翻訳編集】 AFPBB News

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(終わり)

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 古村治彦です。

 2026年はアメリカ建国250年の節目の年である。中間選挙がじっしされる年でもある。現在、ドナルド・トランプ大統領の人気は低迷し、連邦下院で共和党は過半数を失う可能性が高い。連邦上院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。下院で民主党が過半数を握れば議長を出すことになり、トランプ肝いりの法案の可決も困難になる。第二次トランプ政権の後半2年の政権運営も厳しくなる。

 トランプ政権が支持率を上昇させるには、物価対策と外交政策の成功が重要になる。海外からの輸入製品の価格引き下げが物価対策の1つの方法である。そのためには、究極的には戦争を終わらせる必要がある。地政学リスクと言うが、地政学リスクを下げることが重要だ。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争を収拾することが重要であるが、ウクライナ戦争は2026年2月24日に4年が経過することになるが、停戦の見通しは立っていない。イスラエルのガザ地区の状況も戦闘は起きていないが、イスラエルはガザ地区への圧力を強めている。また、イランに対して更なる攻撃を加える姿勢を捨てていない。中東地域も不安定なままである。

 昨年、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。このことについてはこのブログでも複数回紹介した。重要なのは、ラテンアメリカと中東、東アジアである。トランプ政権は、ヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の艦艇を派遣し、船舶に対して攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領に圧力をかけている。麻薬対策を大義名分にしているが、それならば、コロンビアやメキシコを標的にした方が合理的だ。アメリカ政府はマルコ・ルビオ国務長官を中心にして、ラテンアメリカにおけるアメリカの勢力確保を狙い、反米勢力の一掃、中国とロシアの影響力排除を行おうとするグループがいる。ヴェネズエラはそのための標的である。問題は、どこまで介入するかということだ。地上軍派遣の可能性も浮上しているが、この段階まで進むと、アメリカは泥沼にはまり込む可能性がある。マドゥロ政権を倒しても、マドゥロ支持派がゲリラ戦を展開する可能性がある。ラテンアメリカ各国の「ボリバル主義」「反ヤンキー帝国主義」感情が高揚することになる。それでも地上部隊まで派遣して、マドゥロ政権を打倒して親米政権を樹立するというところまで進めば、トランプは自身が戦争を止める大統領だという自画自賛を放棄することになる。国内の不満を海外での武力行使で目を逸らさせるという意図があるとすれば、アメリカ国内の不満は相当大きくなっているという見方もできるだろう。また、トランプ政権内の対外強硬派の勢いが強くなっているのだろう。※2025年1月2日にトランプ大統領はアメリカ軍に対してヴェネズエラへの攻撃を命令し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、国外に連れ出したと発表した。このような暴挙は予想できなかった。トランプ主義、アメリカ・ファーストの終焉である。BRICSを中心とする「西側以外の国々」は反アメリカの姿勢を強めるだろう。トランプも馬鹿なことをしたものだ。ドル離れと金(きん)への資金の移動が続くことになる。

 中東地域に関して言えば、イランへの攻撃があるかどうかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランへの攻撃を行いたいという願望を持っている。中東地域の不安定な状況はネタニヤフの個人的な利益に適う。状況が平常に戻れば、個人的な汚職の問題で裁判にかけられることになる。ハマスとの紛争が停戦したことで、平常に戻る可能性が大きくなるが、状況の不安定化を継続させるために、ガザ地区に対して人道的に許しがたい圧力をかけ、ハマスの暴発を狙うか、ハマスを支援するイランへの攻撃を行うかである。アメリカのトランプ大統領は昨年実行したイランへの空爆について、イランが核開発を、場所を変えて継続している可能性があると発言している。イランへの攻撃は実行される可能性はあるが、大規模な攻撃とはならないだろう。イランとイスラエルの全面戦争に発展することは避けたい。イラン側としてもアメリカの衰退が継続していけばイスラエルも衰退していくということになるので、中国やロシアと連携しながら、状況を悪化させないということになる。

 東アジアにおける最大の不安定要因は高市早苗首相と日本である。日本は成長のない30年を経て、残念なことだが衰退が決定づけられている。経済や社会において人々の不満が高まっていく。人々の不満を外に向けることは常套手段である。そうした状況下で、「日本初の女性首相」という大義名分で、極右派・隷米派の高市早苗議員が首相に就任した。そして、早速に台湾有事の発言で、日中関係と東アジアに緊張をもたらした。高市政権の後ろ盾はアメリカ国防総省のナンバー3であるエルブリッジ・コルビー国防次官だ。コルビー次官については、これまでの著作で取り上げているので、そちらを参照していただきたい。トランプ大統領は中国との対立を望んでいないが、トランプ政権に入った、対中強硬派が中国との対立を望んでいる。厄介なことに、アメリカが直接対峙するのではなく、日本を利用して、日本をぶつけようという姑息な手段を用いてである。2026年は高市政権を退陣させ、日本が中国との衝突を起こさないようにすることが重要である。
elbridgecolbyjapanesepoliticians20250430001

 2026年も世界を不安定にしようという動きがある。私たちはそのことに気づき、そして、阻止するために学び続ける必要がある。

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ドナルド・トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略:5つの重要なポイント(Trump’s new national security strategy: 5 key takeaways)

ラウラ・ケリー筆

2025年12月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5635890-trump-national-security-strategy/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日の夜遅く、「国家安全保障戦略(national security strategy)」を発表した。西半球(Western Hemisphere)におけるより大きな軍事プレゼンス(a larger military presence)、世界貿易の均衡(balancing global trade,)、国境警備の強化(tightening up border security)、そしてヨーロッパとの文化戦争への勝利(winning the culture war with Europe)に重点が置かれている。

この包括的な戦略は通常、新政権発足1年以内に発表され、大統領の外交政策の重点を説明し、予算の配分に関する指針を示している。

33ページに及ぶこの文書は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」のイデオロギーを基盤としているが、同時に、トランプ大統領がモンロー主義を踏襲し、西半球におけるアメリカの優位性(U.S. dominance)を主張していることを初めて明確に示している。

「長年の無視の後、アメリカはモンロー主義を再び主張し、実行することで、西半球におけるアメリカの優位性を回復し、アメリカ本土と地域全体の主要地域へのアクセスを守る」と「国家安全保障戦略」は述べている。

この文書は、アメリカの世界からの撤退を明確には示していないが、同盟国間の負担分担の増大(increasing burden sharing among allies)、アメリカの経済的利益と重要なサプライチェインへのアクセスの向上(elevating American economic interests and access to critical supply chains)、アメリカのエネルギー生産の「解放」(“unleashing” American energy production)を求めている。

トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」の5つのポイントを以下に挙げる。

(1)カリブ海におけるトランプ大統領の戦争は激化する見込み(Trump’s war in the Caribbean likely to heat up)

カリブ海で麻薬密輸の疑いのある船舶に対するトランプ大統領の2カ月以上にわたる軍事作戦は、「国家安全保障戦略」がアメリカに対し、世界的な軍事プレゼンスを南北アメリカ大陸に再調整し、「ここ数十年、あるいは数年間でアメリカの国家安全保障にとって相対的に重要性が低下した地域」から撤退するよう求めていることから、より大きな支持を得る可能性が高いだろう。

トランプ大統領は、カリブ海におけるアメリカ軍の軍事作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争(armed conflict)」と位置づけ、麻薬密売の罪でアメリカで起訴されているヴェネズエラの実力者ニコラス・マドゥロ大統領を主要な脅威として挙げ、アメリカは間もなく「地上作戦(land operations)」を開始する可能性があると述べた。

ヴェネズエラは具体的には名指しされていないものの、「国家安全保障戦略」は、アメリカ国境の安全確保と「カルテルの打倒(defeat cartels)」、そして「戦略的に重要な地域へのアクセスの確立または拡大(establishing or expanding access in strategically important locations)」のために「標的を絞った展開(targeted deployments)」を求めている。

この戦略はまた、トランプ大統領が関税を用いて地域を支配する手法にも焦点を当てている。しかし、トランプ大統領がそのような権力を有しているかどうかは、最高裁判所で係争中の訴訟の焦点となっている。

「アメリカは、関税と相互貿易協定を強力なツールとして活用し、アメリカの経済と産業を強化するため、商業外交(commercial diplomacy)を優先する」と文書は述べている。

この文書はラテンアメリカにおける中国の進出を明確に指摘していないものの、NSSは、米国は金融とテクノロジーにおける影響力を駆使して地域諸国を敵対勢力から引き離し、「スパイ活動、サイバーセキュリティ、債務の罠、その他の方法」でこれらの諸国への依存の脅威を強調すべきだと述べている。

And while the document does not explicitly call out China’s inroads in Latin America, the NSS says the U.S. should use its leverage in finance and technology to pull regional countries away from adversaries and underscore threats of reliance on those countries “in espionage, cybersecurity, debt-traps, and other ways.”

(2)トランプ大統領がロシアへの対応に失敗したとしてヨーロッパを批判(Trump criticizes Europe as failing to deal with Russia)

「国家安全保障戦略」は、ロシアとの関係悪化の一因となったヨーロッパの「自信の欠如(lack of self-confidence)」を批判しているが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領による2014年と2022年のウクライナ侵攻の決定や、破壊工作、選挙介入、そして大陸における不安定化煽動といった活動については言及していない。

「国家安全保障戦略」は、「ユーラシア大陸全体にわたる戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減する」ためにヨーロッパとロシアの間の仲介を行うことができる唯一の勢力がアメリカであると述べている。

この文書はさらに、アメリカは「ヨーロッパの偉大さを促進する」必要があると明言しており、これはヴァンス副大統領が2月にドイツで行った演説を彷彿とさせる。

ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員パウエル・ゼルカは分析の中で、「ワシントンはもはや、ヨーロッパの内政に干渉しないふりをしていない」と述べている。

「現在では、こうした干渉を『ヨーロッパがヨーロッパであり続けることを望む』という善意の行為であり、アメリカの戦略的必要性に基づくものと位置付けている。最優先事項は何か? 『ヨーロッパ諸国において、ヨーロッパの現在の方向性に対する抵抗を育むこと』である」。

(3)台湾はアメリカの対中戦略を応援(Taiwan cheers US strategy on China)

「国家安全保障戦略(NSS)」が台湾の主権と安全保障を外部からの影響から守ることを明確に認めたことは、台北の外務省から歓迎され、ワシントンの対中強硬派は、トランプ政権が台湾を北京に明け渡すつもりはないと安心することになるだろう。

「アメリカの『国家安全保障戦略(NSS)』は、台湾をめぐる紛争の抑止が地域と世界にとって不可欠であると明言している」と台湾外務省は声明で述べた。

「台湾の安全はインド太平洋の安定を支えるものであり、私たちは自衛を強化し、地域の平和と繁栄に貢献し続ける」。

「国家安全保障戦略」は、台湾をめぐる紛争を抑止するためにアメリカに対し「軍事力の優位性(military overmatch)」を維持するよう求め、「有利な通常戦力のバランス(a favorable conventional military balance)」が地域におけるアメリカの利益の鍵であるとしながらも、地域におけるアメリカの同盟国間の「負担分担(burden-sharing)」を強調している。

この文書は、日本、韓国、台湾、オーストラリアに対し、国防費の増額を求める圧力を継続するよう求めている。

ハドソン研究所アジア太平洋安全保障担当部長パトリック・クローニンは、「国家安全保障戦略」への初期の反応として、「アジアについて考えると、経済と抑止力への重点は概ね妥当だ」と述べている。

クローニンは続けて「それでもなお、中国の戦略が相互に公正な貿易に関するものだという考えは、この文書が過去の誤った前提について正当に指摘している様々な批判に真っ向から反するものである」と述べた。

(4)アメリカの中東への重点は「後退」(American focus on Middle East to ‘recede’)

トランプ大統領は、アメリカのエネルギー輸出増加に注力し、イスラエルとの12日間の戦争とアメリカの核施設への攻撃を受けてイランとその代理勢力が大幅に弱体化したと述べるなど、中東におけるアメリカの責任を軽減しようと努めている。

「国家安全保障戦略」は、「しかし、長期的な計画と日常的な実行の両面において、中東がアメリカの外交政策を支配していた時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と述べている。

トランプ大統領は「紛争は依然として中東で最も厄介な問題である」と認めつつも、この地域の明るい展望を描いている。

リバータリアン系シンクタンクであるケイトー研究所研究員ジョン・ホフマンは、アメリカが中東における役割を縮小する戦略を歓迎する一方で、トランプ政権にそのようなロードマップを実行する政治的意思があるかどうか疑問視している。

ホフマンは「過去4人の大統領―うち2人はドナルド・トランプ――は、中東へのアメリカの関与縮小を公約に掲げながら、変化ではなく継続性に根ざした政策を追求してきた」と書いている。

「ワシントンは依然としてこの状況に巻き込まれ、この地域の情勢を細かく管理しようとしている。このようなアプローチでは、この『国家安全保障戦略(NSS)』の明示された目的を達成できないだろう。トランプが中東情勢を根本的に転換する政治的意思を持っているかどうかはまだ分からない」。

(5)民主党からの党派的な反発を招く(Draws partisan pushback from Democrats)

民主党は、トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」を、世界におけるアメリカの後退を示す危険な計画であり、アメリカと同盟諸国を弱体化させるものだと即座に非難した。

連邦下院情報特別委員会と連邦下院軍事委員会委員であるジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出、民主党)は声明で「この計画が進められると、世界はより危険な場所となり、アメリカ国民の安全は脅かされるだろう」と、述べた。

「多くの懸念すべき点の中でも、ソーシャルエンジニアリング(social engineering)、文化戦争(culture warfare)、そして同盟国である外国政府や政治体制への干渉(interference with allied foreign governments and political systems)を露骨に呼びかけている点が挙げられる。これは国内外における自由と個人の権利に対する攻撃だ」。

同様に、連邦上院軍事委員会委員であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、「国家安全保障戦略(NSS)」は「同盟諸国を見捨てて、ウクライナを犠牲にし、主要な戦略目標と基本的価値観を放棄するという後退を予兆するものだ。アメリカはより安全になるどころか、より弱体化するだろう。アメリカ・ファーストはアメリカだけの問題であり、その代償を払うことになるだろう」と述べた。

評論家の一部はより慎重な見方を示した。

民主政治体制防衛財団軍事政治力センター上級ディレクターであるブラッドリー・ボウマンは、「国家安全保障戦略」は「以前の国家安全保障戦略との連続性もいくつかあるが、大きな変更点もいくつかある」とコメントした。

「称賛に値する点もあれば、注目すべき批判点もあり、そして深刻な『何だって?』という点もある」。

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 高市早苗首相の台湾をめぐる発言で日中関係は悪化している。日本政府としては、「高市首相の発言と、これまでの姿勢は別で、日本側に変更はない」という何とも苦しい言い訳をすることになる。高市首相が国会の場で早めに発言を撤回・修正していればここまでの深刻な状況にならずに済んだ。「高市首相から失言を引き出した野党が悪い」という、なんとも考えの足りない、思考力と知恵を持つようにお勧めしたい人たちの擁護論がむなしく響く。一般国民が言うならまだしも、政治のプロの世界やマスコミに出ている人たちもそのようなことを述べているというのは滑稽さを通り越して、日本の将来への不安が増大するばかりである。

国際関係論学者であるジュリオ・プリエセが日本経済新聞の取材を受け、日中関係と米中関係について答えている。その内容な簡単にまとめると、アメリカが中国に対して融和的な態度を取り、「雪解け(デタント)」が進んでいる。トランプ関税でもアメリカが中国に譲歩した形になった。トランプ大統領は高市首相の発言とそれに対する中国の対応について、FOXニューズにインタヴューされ、日本を「友人」と言わないというはぐらかしで、高市首相を支持しなかった。こうしたことで、中国は日本に対して厳しい態度を取ることができると踏んで、現在のような状況になっている。

※日本経済新聞2025年11月17日付記事「中国、対日強硬の裏に米中「雪解け」 欧州大学院のジュリオ・プリエセ氏」(Deep Insight+ 本社コメンテーター 秋田浩之)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1727K0X11C25A1000000/

 高市政権はアメリカからはしごを外された形になった。お金だけを数十兆円も取られて、味方をしてもらえないというのは何とも悲惨な話である。アメリカとしても、日本の軍国主義復活の用な動きは容認できない。日本は黙ってアメリカの言うことを聞いて、軍隊を出せと言われたと時に出し、死ねと言われた時に死ぬ、それ以上は求められていない。自分で何かをするように決めることなど許されていないのだ。米中関係の改善の中で、そうした動きの邪魔になるようなことをしても助けてもらえない。下手をすれば、「高市首相は危険だ、米中両国にとって共通の敵だ」という認定をされるシナリオも考えられる。

 知恵もなく、思考力もなく、高市首相を誕生させた、自民党と一般国民は歴史の教訓から多く学ぶべきである。そして、現実を客観的に直視すべきである。

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日本の新首相の台湾への脅威に関する発言が中国との緊張を呼ぶ(Japan's new leader's remarks on threats toward Taiwan spark tensions with China)

アンソニー・クーン筆

2025年11月17日

アメリカ公共ラジオ

https://www.npr.org/2025/11/17/g-s1-98081/spat-over-taiwan-china-japan
韓国ソウル発。高市早苗首相が、中国の台湾に対する軍事行動は日本の対応を正当化する可能性があると示唆したにもかかわらず、日本は中国政府に上級特使を派遣し、日本の政策に変化はないと中国政府に保証した。

中国は、高市首相が日本初の女性首相に就任してから1カ月も経たないうちに、政治的・経済的圧力を強めている。

中国外務省の毛寧報道官は記者会見で、高市首相の発言は日中関係の政治的基盤を深刻に損なうものであり、高市首相は「台湾に関する誤った発言(wrongful remarks on Taiwan)」を撤回すべきだと指摘した。

毛報道官はまた、中国の李強首相が南アフリカで開催されるG20サミットで高市首相と会談する予定はないと述べた。

11月7日、高市首相は複数の国会議員から、中国が、自治政府が支配している台湾に対して軍事行動を起こすシナリオについて問われ、「軍艦が使用され、武力行使が伴えば、どう見ても国家存亡の危機となる事態になり得る(If warships are used, accompanied by the exercise of military force, then however you look at it, it could be a situation posing an existential threat to the country)」と答えた。

日本は、第二次世界大戦後の憲法で戦争行為を禁じられている。しかし、2015年に成立した安全保障関連法制により、日本またはアメリカなどの緊密な同盟国が日本の存立を脅かす攻撃を受けた場合、自国を防衛する権限が認められている。

一方、中国は、台湾が独立を宣言した場合、あるいは外国の干渉があった場合、軍事力行使の可能性を排除していない。

●中国は撤回を要求している(China demands retraction)
、中国外務省の林剣報道官は先週、「日本は直ちに卑劣な発言を訂正し、撤回しなければならない。さもなければ、日本はあらゆる責任を負わなければならない」と述べた。

高市首相は発言の撤回を拒否しているが、具体的な想定シナリオについては今後コメントしないとしている。

在大阪中国総領事の薛剣は、ソーシャルメディアへの投稿で、より強い言葉を使った。「無謀にも侵入する汚らしい首は、一瞬の躊躇もなく切り落とさなければならない(the filthy head that recklessly intrudes must be cut off without a moment's hesitation)」とXに書き込んだ。

多くの人がこれを高市首相の首だと解釈した。その後、日本政府が抗議したことで、この投稿は削除された。

金曜日、中国は経済的圧力をかけた。中国政府は、高市首相の挑発的な発言によって日本の安全が損なわれており、中国人は日本を訪問すべきではないと警告した。

専門家の中には、高市首相率いる日本が長年の台湾に対する曖昧な政策(long-standing policy of ambiguity towards Taiwan)を放棄するのではないかと懸念している人もいるが、変化はほとんどないと見ている人もいる。

高市首相の政治面の師である故安倍晋三元首相は、「台湾有事は日本有事でもある(a Taiwan contingency would also be a Japan contingency)」と発言したことで知られている。しかし、これは首相退任後の発言であり、具体的なシナリオには触れなかった。

インディアナ大学ブルーミントン校の東アジア国際関係論教授アダム・リフは「日本が長年続けてきた戦略的曖昧性(strategic ambiguity)の立場から脱却する可能性は極めて低いだろう」と述べている。

リフは、台湾が日本の南西諸島に近接していること、そしてアメリカと同盟関係にあることを考えると、台湾をめぐる紛争は日本の安全保障にとって、そしてあらゆるイデオロギーを持つ日本の指導者たちにとって、重大な問題となるだろうと述べている。

「特に平時において、日本が関心を持ち、必ずしも特定の行動方針を約束することなく、日本がこの問題に利害関係を持っていることを示すことは、歴代の指導者が抑止力を強化するために試みてきたことの一つだと思います。そして、これは何十年も前から行われてきました」とリフ氏は述べる。

"Especially in peacetime, signaling that Japan cares, Japan has a stake in this without necessarily committing to any particular course of action," Liff says, "is one thing that I think successive leaders have tried to do in order to bolster deterrence. And this goes back decades."

●堅調な世論調査の数字、脆弱な連立(Robust poll numbers, fragile coalition)

しかし、慶應義塾大学名誉教授の添谷芳秀は、高市首相は強硬派の保守派という狭い政治基盤を喜ばせ、ひいては自身の政治信条を正当化しようとしているように見えると指摘する。

添谷教授は、「この発言を喜ぶのは、限られた支持者だけだろう。高市首相もそのことを承知しているはずだ。そして、こうした全体的な文脈において、日本の首相がこのような発言をするのは無謀(reckless)だ」と述べた。

高市首相とその内閣の支持率は70%近くと、歴代首相の支持率を上回っている。

しかし、共同通信社が週末に行った世論調査によると、台湾紛争の際に日本は自衛権を行使すべきだと回答した人が約49%、反対する人が約44%だった。

添谷教授はさらに、高市首相の発言は、先月韓国で習近平国家主席と会談し、日中関係を安定的かつ建設的に維持することで合意した外交的成果を無駄にしているようだと付け加えた。

高市首相はまた、日本の中核となる安全保障戦略文書の見直し、場合によっては改訂、さらには核兵器非保有の誓約についても検討したいと述べている。

しかし、数十年にわたる政策を根本から見直すのに必要な政治的影響力を高市首相が持っているかはまだ分からない。

高市首相が率いる与党自民党は国会で過半数を握っておらず、専門家の一部は、高市首相が政権維持のために築き上げた新たな連立政権は不安定で短命に終わる可能性があると見ている。

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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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 古村治彦です。

 米中戦争についてはその危険性が高まっているということを主張する人々が多くいる。台湾有事、中国が台湾に軍事侵攻して、台湾を防衛するアメリカ、そして、日本と戦争状態になるという主張がある。中国は既に武力に訴えなくても、台湾を統一することができるようになっているということはアメリカでも言われている。台湾に対して武力を用いないとなれば、中国が他に武力を用いることは考えられない。また、中国がアメリカに代わって、世界覇権国になる可能性が高いが、アメリカの凋落を中国は熟した柿が落ちてくるのを待つ、熟柿作戦で十分だ。わざわざ木を揺さぶって、柿を無理やり落とすようなことは必要ない。アメリカが挑発しない限り、中国は戦争を起こさない。

 しかし、中国は習近平がこれまでのルールを変更して、3期目の国家主席を務めている。また、中国国内政治において重要な勢力である中国共産主義青年団派(Communist Youth League Faction、CYLF、共青団派、団派)を最高指導部層から排除している。そして、「軍工航天系、jungonghangtianxi」と呼ばれる、国防・航空宇宙産業出身者たちが多数、中国共産党中央政治局に入っている。彼らは、軍事と最先端技術の知識を持つ人材である。そして、こうした人事は、中国の戦争に備えた体制、アメリカの不安定さから起きるかもしれない突発的な事態に備える体制を整えている。中国は戦争を起こす意図は持っていないが、怠りなく、戦争に備える態勢を整えている。

 アメリカとアメリカの同盟諸国(アジアでは日本ということになる)は、中国の膨張に備えて、中国を抑止できるようにしておかねばならない。抑止力の強化、中国の封じ込めこそが重要だという論である。しかし、これでは、アメリカ(と同盟諸国)、中国の双方が軍拡競争を行うということになる。軍備を増強して、安心感を得ても、相手は不安を感じ、軍備を更に増強する。これがずっと繰り返されていくという、「安全保障のディレンマ(security dilemma)」に陥ってしまう。国力が減退し続けているアメリカは中国との軍拡競争をすべきではない。そんなことをすれば、自分で死期を早めるようなものだ。また、アメリカは西側諸国を対中包囲網に引き入れようとしているが、西側先進諸国の国力も衰退しつつある。一方、非西側諸国は国力を増進させている。大きな流れで言えば、中国を封じ込めることはできないし、非西側諸国の国力の膨張を停めることはできない。

 短期的、中期的に見て、米中両国は「G2」体制を形成し、世界の平穏維持に努めるべきだ。そして、G2の枠組みを通じて対話を行い、無用な衝突を避ける、このことが何よりも重要だ。米中戦争という馬鹿げた幻想に乗せられて、衝突することこそは人類の大いなる不幸である。

(貼り付けはじめ)

中国はどれほど戦争の準備ができているのか?(How Primed for War Is China?)

-紛争の危険信号が赤色で点滅している。

マイケル・バックリー、ハル・ブランズ筆

2024年2月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/04/china-war-military-taiwan-us-asia-xi-escalation-crisis/

中国が戦争を始める可能性はどのくらいあるか? これは今日の国際情勢において最も重要な問題かもしれない。中国が台湾や西太平洋の別の目標に対して軍事力を行使した場合、その結果はアメリカとの戦争、つまりこの地域とより広い世界の覇権(hegemony)をめぐって争う核武装した二人の巨人の間の戦いになる可能性がある。ウクライナと中東で続く戦争の最中に中国が攻撃すれば、世界はユーラシアの主要地域全体で連動する紛争に飲み込まれ、第二次世界大戦以来例のない世界規模の大火災となるだろう。

米中戦争についてどれだけ心配すべきだろうか?

最近のワシントンと中国の間のハイレヴェル外交の慌ただしさにもかかわらず、危険な兆候は確かに存在している。中国の習近平国家主席の下、中国政府はここ数十年で最大規模の軍事力増強の一環として、船舶、航空機、ミサイルを増強している。気まぐれな海外投資を呼び戻そうとする最近の取り組みにもかかわらず、中国は燃料と食料を備蓄し、制裁に対する経済の脆弱性(vulnerability)を減らそうとしている。これは紛争が近づくと取られるかもしれない措置である。習主席は、中国は「最悪かつ極端なシナリオ(worst-case and extreme scenarios)」に備え、「強風、荒れた海、さらには危険な嵐(high winds, choppy waters, and even dangerous storms)」に耐える準備をしておく必要があると述べた。これら全ては、中国政府がフィリピン、日本、インドを含む近隣諸国との関係でますます高圧的(時には暴力的)になり、台湾を攻撃し、封鎖し、場合によっては侵略する能力を定期的に宣伝している中で起こっている。

アメリカ政府高官の多くは、戦争の危険性が高まっていると考えている。ウィリアム・バーンズCIA長官は、習主席が2027年までに台湾を占領する能力を模索していると述べた。また、中国経済が苦戦する中、一部の観察者(伝えられるところによれば、アメリカ情報アナリストを含む)は、ピークに達した中国が中国からの注意をそらすために攻撃的になる兆候を探している。内部の問題を解決するか、まだ可能なうちに利益を固定するためだ。

他のアナリストたちは、中国の侵略のリスクは誇張されていると考えている。一部の学者は、アメリカが中国を刺激しなければ、この危険は管理できる可能性が高いと述べているが、これは中国が自国に有利に機能してきた現状をひっくり返すつもりはないという長年の主張の反映だ。中国は、1979年のヴェトナム侵攻以来、戦争を始めていないと指摘する人もいる。また、中国には陽動戦争(diversionary war)の歴史がないと主張して、経済減速やその他の国内問題に対応して中国が戦争を起こす可能性があるという見通しを否定する人もいる。これらの議論を結びつけているのは、中国の行為の基本的な継続性に対する信念である。つまり、40年以上悲惨な戦争を始めていない国が今も戦争を始める可能性は低いという考えである。

私たちは、この自信は危険なほど見当違いであると考えている。国の行動は、その戦略的伝統に劣らず、その国の状況によって深く形成されており、中国の状況は爆発的に変化している。政治学者や歴史家たちは、大国が多かれ少なかれ戦争する傾向にある様々な要因を特定している。このような4つの要因を考慮すると、かつては、平和的な隆盛を可能にしていた条件の多くが、現在では暴力的な衰退を促進している可能性があることが明らかになる。

第一に、中国が争っている領土問題やその他の問題は、かつてほど妥協や平和的解決(compromise or peaceful resolution)が受けにくくなり、外交政策がゼロサムゲームになっている。第二に、アジアの軍事バランスは変化しており、中国政府が戦争の結果について危険なほど楽観的になる可能性がある。第三に、中国の短期的な軍事的見通しが改善するにつれて、長期的な戦略的および経済的見通しは暗くなっており、この組み合わせが過去に修正主義諸大国(revisionist powers)を更に暴力的にすることがよくあった。第四に、習国家主席は中国を、特に悲惨な誤算と多大な費用がかかる戦争(disastrous miscalculations and costly wars)を招きやすい種類の個人崇拝的独裁政治体制(personalist dictatorship)に変えてしまった。

これは、中国が特定の週、月、または年に台湾を侵略すると言っているのではない。紛争の引き金は予期せぬ危機であることが多いため、紛争がいつ起こるかを正確に予測することは不可能だ。1914年にヨーロッパが戦争の準備を整えていたことは今では分かっているが、もしオーストリア大公フランツ・フェルディナンドを乗せた車の運転手が歴史上最も運命的な誤った道を歩まなければ、第一次世界大戦はおそらく起こらなかったであろう。戦争は地震に似ている。戦争がいつ起こるかを正確に知ることはできないが、リスクの程度の高低につながる要因を認識することはできる。現在、中国のリスク指標は赤く点滅している。

米中戦争の可能性は一見すると遠いように見えるかもしれない。中国政府は44年間大規模な戦争を行っておらず、中国軍は1988年に南沙諸島での小競り合いで中国のフリゲート艦がヴェトナム海軍の水兵64人を機銃掃射して以来、外国人を殺害していない。いわゆるアジアの平和、つまり、1979年以来、東アジアで国家間戦争が起こっていないことは、中国の平和の上に成り立っている。

戦争がないことは、侵略がないことを意味する訳ではない。中国政府は軍事力と準軍事力を利用して、南シナ海と東シナ海での権限を拡大してきた。近年、中国はインドとも血なまぐさい争いを繰り広げている。それにもかかわらず、アメリカがいくつかの戦争を戦った一方で、中国政府が大規模な戦争を回避してきたという事実により、中国政府当局者たちは、自国が世界的大国への道を独自に平和的に歩んでいる(peaceful path)と主張することができた。そして、戦争を心配する人々は、二世代にわたる平和によって記録的な成長を遂げた中国が、なぜこれほど劇的な方向転換をするのか説明するよう強いられる。

一見平和そうに見える新興大国が破綻するのはこれが初めてではない。1914年以前、ドイツは40年以上大規模な戦争をしていなかった。1920年代、日本は海軍の制限、アジアでの権力の共有、中国の領土一体性の尊重を誓約する条約に署名する際、多くの外国専門家たちを責任ある利害関係者のように見ていた。2000年代初頭、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領はNATOに加盟し、ロシアを西側に近づけることについて熟考した。それにもかかわらず、これらの国々がそれぞれ野蛮な征服戦争を開始したということは、状況は変化するという基本的な真実を強調している。同じ国でも、状況に応じて、異なる行動を取る可能性があり、場合によっては極端な行動する可能性がある

そのような状況の1つは、領土紛争に関係する。ほとんどの戦争は、地球のどの部分を誰が所有するかをめぐる争いだ。1945年以降に起こった国際紛争の約85%は、領土の主張を中心に展開している。領土には象徴的または戦略的な重要性があることが多いため、共有するのは困難だ。国家が地域を分割することに同意した場合でも、都市、石油埋蔵量(oil reserves)、聖地(holy sites)、水路、戦略上の高地などの最も貴重な部分をめぐって争いになることがよくある。更に言えば、領土を確保するには、フェンス、兵士、入植者(settlers)の形で物理的に存在する必要がある。したがって、国家が同じ縄張りを主張すると、頻繁に望ましくない接触が発生する。領土紛争は、一方の側が自国の主張が急速に侵食されることを懸念している場合、特にエスカレートする可能性が高い。神聖な土地が失われつつある、あるいは国が敵によって解体されるかもしれないという信念は、国境をより安全に保っている国であれば避けるであろう侵略を引き起こす可能性がある。

戦争の第二の原因は、軍事バランスの変化だ。戦争は様々な問題をめぐって行われるが、全ての根本的な原因は共通している。それは誤った楽観主義だ。こうした事態は、両方が目的を達成するために武力を行使できると信じている場合、言い換えれば、双方が勝てると考えている場合に起こる。もちろん、両方にとって、真に有利な戦争はほとんどない。つまり、少なくとも一方が、そして非常に多くの場合は両方が、敵の力を悲惨なほど過小評価していた。つまり、競争的または曖昧な軍事バランスが戦争を引き起こす。したがって、新しい技術の導入や弱い側による大規模な軍事増強など、特定のバランスを、競争力を高めたり曖昧にしたりすると、戦争のリスクが高まります。

第三に、諸大国は将来の衰退を恐れると好戦的になる。地政学的競争は強烈で容赦がないので、各国は相対的な富と力(wealth and power)を神経質に守っている。最も強力な国であっても、経済の停滞、戦略的包囲網、または自国の国際的地位を脅かし、敵の略奪に晒される、その他の長期にわたる傾向に悩まされると、暴力的な不安に陥る可能性がある。武装を強化しながらも不安は増大し、衰退の瀬戸際にある大国は、必要なあらゆる手段を使って不利な傾向を阻止しようと熱心に、あるいは必死になるだろう。ドイツ帝国、大日本帝国、そしてプーティン大統領のロシアにとって、それは最終的には戦争を意味した。

最後に、国家の行動はその政権によって形作られる。個人崇拝的な独裁国家は、多数の手に権力が握られている、民主政体国家や専制国家に比べて、戦争を起こす可能性が2倍以上高い。独裁者は紛争の代償に晒されることが少ないために、より多くの戦争を起こす。過去100年間で、戦争に負けた独裁者が権力の座から転落したのはわずか30%であったのに対し、戦争に負けた他のタイプの指導者は投票で排除されるか、その他の方法で政権の座から追放された。ほぼ100%排除される。独裁者が過激主義に傾くのは、親愛なる指導者の要求に全力で応えようとするおべっか使いたちに囲まれているからだ。独裁者はまた、血と土のナショナリズムが国内での圧制を正当化するのに役立つため、海外に現実の敵や想像上の敵を仕立て上げていく。そのため、限られた政府の指導者は通常、控えめに統治し、忘れ去られていくのに対し、ドイツのアドルフ・ヒトラー、イタリアのベニート・ムッソリーニ、ソ連のヨシフ・スターリン、中国の毛沢東、イラクのサダム・フセイン、ロシアのプーティンなどの独裁者は、しばしば歴史書に名前を残すようになっている。

これら4つの要因、つまり、確定していない国境、競争的な軍事バランス、否定的な予測、独裁政治は、中国の歴史的な武力行使を説明するのに役立ち、今日でも不気味な影響を及ぼしている。

中華人民共和国は戦いの中から誕生した。中国は一世紀にわたる外国帝国主義(foreign imperialism)に耐え、1937年の日本侵攻後、アジアで第二次世界大戦の矢面に立たされた。少なくとも1400万人の中国人が死亡した。その後、1945年から1949年にかけて、中国国共内戦は血なまぐさい最高潮に達し、共産主義者が権力を握るために戦う中で少なくとも200万人以上が殺害された。

こうした紛争のさなか、中国は極度の好戦国家(hyper-belligerent state)として台頭した。数十年にわたり、この国は世界で最も苦境に立たされた国の1つであり、5つの戦争を戦い、冷戦時代の米ソ両超大国(superpowers)の主敵となった。中国は戦争のあらゆる危険因子を示していたため、この暴力的な記録は驚くべきことではない。

第一に、中国は個人支配(one-man rule)の権化(apotheosis)である毛沢東によって率いられていた。毛沢東は日常的に同僚を粛清し、不可解で移り変わる論理的根拠に基づいて、しばしば夜中に寝ぼけながら一方的に決定を下した。彼はまた、人命に対する驚くべき軽視を示した。毛沢東が生きているうちに中国を超大国に変えるという無謀な計画である大躍進政策中に、およそ4500万人が飢えたり、殴られたり、射殺されたりした。この悲惨な作戦の背後に国民を結集させる必要もあり、毛沢東は1958年に台湾の国民党政府が保有する島々を砲撃して国際危機を煽動した。

毛沢東はサディスティックだったかもしれないが、これほど冷酷でない指導者であったら、これほど打ち砕かれた国家について、平和で統一された状態に保つのにより苦労したことだろう。内戦に勝利した後、中国共産党(Chinese Communist Party、CCP)は中央政府の権限を村ごとに再賦課し、少数民族、軍閥(warlords)、国民党支持者による抵抗勢力を苦労しながら、根絶しなければならなかった。更に悪いことに、日本とヨーロッパの諸帝国の崩壊により、中国の一部は、敵対的か不安定な、あるいはその両方の新たな国々に囲まれた状態になった。中国の国境の大部分はある程度争われていた。1960年代までに、ソ連との国境は世界で最も軍事化された地域となった。台湾はアメリカの支援を受けた、ライヴァルの中国国民党政府の拠点であり、本土の再征服を公然と計画していた。インドはチベット亡命政府(Tibetan government in exile)を受け入れ、広範囲の中国領土を自国領土と主張した。そして中国の中心地は、冷戦の2つのホットスポット、インドシナと朝鮮半島の間に挟まれていた。

中国は自らが常に引き裂かれる危険に晒されており、毛沢東が引き起こした経済的大惨事と政治的混乱によって、こうした歴史的トラウマはさらに強調された。しかし、北京は陸の隣国それぞれに対して常に実行可能な戦略を持っていた。なぜなら、中国の巨大な人口により、北京が「人民戦争(people’s war)」と呼ぶ、人海攻撃(human wave attacks)とゲリラ襲撃(guerrilla raids)を組み合わせた方法で敵国を飲み込むことができたからである。全体として、それは、領土紛争に巻き込まれ、無尽蔵に見える人的資源で武装した残忍な独裁政権という、可燃性の高い組み合わせ(combustible combination)となった。

このように中国は紛争から紛争へと戦い続け、特に脆弱だと感じたり、差し迫った立場の低下を恐れたりすると暴力を振るった。 1950年、中国は核報復(nuclear retaliation)の危険を冒して、北朝鮮奥深くまで進軍してきたアメリカ軍を攻撃した。1950年代後半、中国は台湾海峡の沖合の島々にある国民党の守備隊を砲撃し、更に2つの戦争を始めるところだった。1962年、中国が領有権を主張するヒマラヤ山脈にインド軍が前哨基地を建設した後、中国政府はインド軍を攻撃した。ヴェトナム戦争中、中国はアメリカ軍と戦うために数万人の軍隊を派遣した。1969年、ソ連軍の大幅な増強を受けて、北京はウスリー川沿いでソ連赤軍を待ち伏せ攻撃し、再び核戦争の危険を引き起こした。10年後、ヴェトナムがソ連軍の受け入れを開始し、中国政府の唯一の緊密なパートナーの一つであるカンボジアに侵攻した後、中国はヴェトナムを攻撃した。

その後、中国の銃はほとんど沈黙した。例外はあるが、最も顕著なのは1995年と1996年に中国が台湾付近にミサイルを発射した時だ。しかし一般的に言えば、1980年から2000年代半ばにかけて状況が劇的に変化したため、中国政府はそれほど苛烈で攻撃的ではなくなった。

まず中国最高指導部が軟化した。1976年に毛沢東が亡くなり、最終的に鄧小平が後任となったが、鄧小平は毛沢東によって粛清され、個人支配の危険性を理解していた。鄧小平の指導の下、最高級指導者たちの任期制限(term limits)が設けられた。全国人民代表大会と中国共産党中央委員会は、定期的に会合を開き始めた。専門化された官僚制(professionalized bureaucracy)が形成され始めた。これらの制度は完璧とは程遠いものだったが、毛沢東政権下では全く欠けていた権力に対するチェック機能(checks on power)を生み出した。

第二に、中国の地政学的立場が改善され、領土保全に対する脅威が減少した。1970年代にアメリカが中国に対して開放した後、台湾の敵対政府は外交上の承認とアメリカとの軍事同盟の大部分を失った。ソ連を追い詰めるため、アメリカは中国と準同盟(quasi-alliance)を結び、先端技術を中国企業に移転した。台湾、ソ連、インド、ヴェトナムは、アメリカの反応を引き起こす可能性なしに中国の領土を侵害することはもはや不可能となった。そして、1991年にソ連が崩壊すると、中国の陸上国境に対する主要な脅威はほぼ完全に消滅した。ロシアの支援がなければ、インド、ヴェトナム、そして中央アジアの新興諸国は中国の国境に対抗できる立場になかった。その代わりに、中国との関係正常化に動いた。

第三に、中国の将来に対する見方が明るいものとなった。アメリカや他の民主政体諸国との接近を経て、中国は世界経済への容易なアクセスと国連安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得した。1970年代後半から2000年代初頭にかけて、その経済は驚異的なペースで成長した。各国は急成長する市場にアクセスするため、中国政府に好意を示した。イギリスは香港を返還した。ポルトガルはマカオを放棄した。アメリカは中国の世界貿易機関(WTO)への加盟を急いだ。中国経済が大混乱に陥り、世界の最も強力な国々が中国の台頭を歓迎している中、中国政府には日に日に良くなっているように見える現状をひっくり返す動機がほとんどなかった。

最後に、中国には征服の機会がほとんどなかった。経済的、外交的影響力が拡大していった一方で、中国軍は未だ係争中の領土、そのほとんどが海上にある領土を占領する能力が明らかに無かった。2000年代以前のみすぼらしい空軍と海軍では、中国の台湾侵攻は「百万人の水泳大会(million-man swim)」のようになり、日本の最先端の部隊との衝突は数時間でけりがついていたかもしれない。最も重要なことは、アメリカが海洋アジアにおける中国の侵略を鎮圧することが期待できることだった。湾岸戦争でアメリカ軍がイラク軍を壊滅させたのを見た中国指導者たちは、鄧小平の格言を受け入れて、「韜光養晦(とうこうようかい、to hide their light and bide their time)」、光を隠し、時を待つ傾向にあった。

今日の中国は隠れて入札することは終わった。その代わりに、第二次世界大戦後、どの国よりも速いペースで軍艦やミサイルを大量生産している。中国の航空機と軍艦は台湾とアメリカの目標への攻撃をシミュレートしている。アジアのシーレーンには中国軍の前哨基地が点在し、中国沿岸警備隊や漁船があふれており、中国政府が主張する海域から近隣諸国を図々しくも追い出している。一方、中国はロシアによるウクライナへの残虐行為を支援し、中印国境に軍隊を集結させている。

中国が戦闘的になった理由の1つは、それができるからだ。中国のインフレ調整後の軍事予算は、1990年から2020年の間に10倍に拡大した。現在、中国政府はアジアの他の全ての国を合わせた支出を上回っている。世界最大の弾道ミサイル戦力と海軍を擁する。2020年代の終わりまでに、中国の核兵器保有量はワシントンの核兵器に匹敵する可能性がある。台湾から500マイル以内にある唯一の基地である、沖縄のアメリカ軍基地を粉砕できる通常ミサイルでは、国防総省が中国の台湾攻撃に即座に対応できるか、ましてや打ち破ることができるかは、もはや明らかではない。歴史的に、アメリカは長引く戦争で敵国を上回る生産力を誇る製造力に頼ってきた。しかし、中国が世界の工場となった今、中国政府は、正しいかどうかにかかわらず、戦争が長引けば長引くほど軍事バランスは、更に中国側に有利に変化すると信じているかもしれない。

領土紛争(territorial disputes)が激化する中、中国も戦争への動機を強めている。第一に、台湾を統一する平和的手段は急速に失われつつある。1995年には、台湾人よりも自分たちはもっぱら中国人であると考える台湾国民の方が多く、独立よりも中国との統一に向かうことを好む人が多かった。現在、人口のほぼ3分の2が自分たちをもっぱら台湾人であると考えているのに対し、もっぱら中国人であると自認する人はわずか4%だ。台湾人の多くは、今のところ現状維持を支持しているが、人口の49%は、無期限の現状維持(27%)や統一(12%)よりも、最終的には独立することを望んでいる。一方、アメリカは台湾との関係を強化しており、ジョー・バイデン米大統領は、アメリカが中国の攻撃から台湾を守ると少なくとも4回宣言している。アメリカと台北が中国との潜在的な紛争に備えて軍事体制を見直している中、中国政府は最も切望する領土の運命について警戒を強めている。

南シナ海における中国の軍事的プレゼンスは大幅に拡大しているが、その外交的地位は損なわれつつある。2016年、ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海に対する中国の広範な主張は無効であるとの判決を下した。訴訟を起こしたフィリピンは、2022年以来、自国の海洋権(maritime rights)を再主張し、アメリカが自国の領土を防衛するために、追加の軍事基地にアクセスすることを認めている。日本は、マニラと準同盟(quasi-alliance)を結んでいるほか、イギリス、フランス、ドイツを含む多くの国が中国政府の主張に反して、南シナ海に軍艦を派遣している。これに対抗して、中国は物理的に攻撃的になった。例えば昨年、中国沿岸警備隊の船はフィリピンの補給船を放水銃で爆破し、第二トーマス礁に駐留する軍関係者に食料を届けることを妨害した。

中国の軍事力が増大するにつれて、そのより大きな地政学的見通しは暗くなっている。中国経済は最近、アメリカに比べて停滞し、縮小している。生産性は低下し、負債は爆発的に増加している。中国政府がこの問題に関する統計の発表を一時停止した2023年半ばの時点で、若者の20%以上が失業しており、この数字はほぼ間違いなく問題の深刻さを過小評価している。裕福で教育を受けた大勢の中国人が金と子供たちを国外に送り出そうとしている。中国が世界史上最悪の高齢化危機に見舞われるにつれ、こうした問題は更に悪化するだろう。今後10年間で、中国は7000万人の労働年齢成人を失う一方で、1億3000万人の高齢者が増えることになる。

最後に、中国はますます敵対的な戦略環境に直面している。世界で最も裕福な国々は、経済と軍事の革新の生命線であるハイエンド半導体へのアクセスを遮断し、中国政府に対して、毎年新たな貿易と投資の制限を課している。 AUKUS、日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue、QUAD)、日米韓三カ国協定などの反中協定が急増している。中国の唯一の大国の同盟国であるロシアは、ウクライナで軍隊による破壊を引き起こし、多くのヨーロッパ諸国の世論を反中国にさせている。

もし中国がテクノクラートたちの委員会によって統治されていれば、外交的妥協と経済改革で、こうした圧力に対抗するかもしれない。しかし、中国は独裁者によって統治されており、その壮大な目的を達成するためには、中国国民の幸福を犠牲にする用意があることを既に示している。

2012年に権力の座に就いて以来、習近平は自らを終身主席(chairman for life)に任命し、自らの統治哲学を憲法に盛り込み、数千人の潜在的なライヴァルを粛清してきた。習近平は、中国の広大な領土主張に関して妥協のない立場をとっている。習は2018年、「祖先が残した領土を1インチたりとも失うことはできない」とジェームズ・マティス米国防長官に警告した。習は中国を超大国にすることの正当性を主張してきた。国営メディアは現在、毛沢東の下で中国は立ち上がったと宣言している。鄧小平の下で中国は豊かになった。そして習金平の下で中国は強大になるだろう。近年、習近平は内部演説で中国軍に戦争の準備をするよう指示し、中国国民に「極端なシナリオ(extreme scenarios)」に備えるよう指示した。

おそらく、このレトリックはただの暴言なのかもしれない。しかし、残忍なゼロコロナ封鎖、新疆の強制収容所、香港の自由の粉砕など、習近平の行動の多くは、本質的な冷酷さを示すものだ。中国が経験している他の変化と組み合わせると、これらの形態の内部侵略は、今後待ち構えているかもしれない、外部侵略について私たちを非常に緊張させるはずだ。

もちろん、国家が何も考えずに戦争か平和を選択するということはない。彼らはまた、世界のより大きな国家からヒントを得る。1930年代、連鎖的に起こる国際的な混乱は、既存の秩序を守る人々の士気をくじき、それを攻撃しようとする人々を勇気づけた。それでは、ヨーロッパにおける第二次世界大戦以来最大の戦争と、中東での拡大する紛争によって、中断された現在の混乱は、中国の選択をどのように形作る可能性があるのだろうか?

一つの見方は、ロシアのウクライナ戦争が、どれほど手厳しく裏目に出るかを示し、他の侵略戦争の可能性を低くするというものだ。バイデン政権高官たちや学識経験者の一部が支持するこの話では、中国はプーティン大統領の不正な土地強奪から厳粛な教訓を学んでいるということになる。中国政府は、献身的な防衛者に対する征服がいかに難しいか、独裁的な軍隊が戦闘でいかに劣悪なパフォーマンスを発揮するか、米諜報機関が略奪計画の探知にどれほど熟達しているか、そして民主世界が自由に基づいた秩序の規範に反抗する国をいかに厳しく罰することができるかを学んでいる。中国軍はロシア軍を弱体化させた腐敗の有無を厳しく調べており、その腐敗が思ったよりもずっと深刻であることが判明した。アメリカ政府当局者たちは、中国が最近の出来事を同様の観点から解釈していることを期待しているに違いない。

しかし、私たちはこの解釈を注意深く精査する必要がある。まず、中国がウクライナ戦争についてどう考えているかを知るのは非常に難しい。結局のところ、重要な教訓は、中国人民解放軍の上級大佐や北京のシンクタンク研究員によって発表されたものではない。重要な教訓は、世界に対する認識が個人崇拝政権のあらゆる通常の病理によって彩られている可能性がある、甘やかされた独裁者によって描かれている。習近平の公の発言からすると、今回の紛争が習近平の野心を和らげたり、中国の国家政治を根本的に穏健にしたりする証拠はほとんどない。習近平は、2023年3月にモスクワを訪問した際、プーティン大統領に対し、「現在、私たちがこの100年にしたことのないような変化が起きており、私たちはその変化を共に推進している」と語った。

加えて、習近平は、ウクライナと台湾を比較できるものとは考えていない可能性がある。プーティンが派遣したロシア軍がウクライナで苦戦したのは、ウクライナ戦争が、彼らが準備され、教化されてきた(indoctrinated)戦争ではなかったからでもある。中国は何十年にもわたって台湾をめぐる戦争の準備をしており、統一(unification)が「中華民族の偉大な復興(great rejuvenation of the Chinese nation)」の中心であると兵士たちに厳しく教えていることを考えると、台湾への侵攻は問題ではないだろう。さらに、社会全体で抵抗する能力において、台湾はウクライナより劣ると習近平が考えているとしても、それは彼だけのことではない。アメリカ政府の高官や専門家たちも同様の懸念を表明している。

あるいは、もしかしたら習近平は、アメリカは核武装した大国とはいかなる戦争もしないと結論づけているのかもしれない。なぜなら、アメリカがモスクワと正面から対峙しない理由をバイデンが説明する際に、同じことを言ったからである。おそらくバイデンは、西側諸国の制裁は実際にはそれほど懲罰的ではないと考えているのだろう。戦争が始まって2年が経ち、ロシアはウクライナ領土の20%を支配し、石油やその他の輸出品は新たな市場を開拓し、工場は兵器を大量生産しており、経済は崩壊の危機に瀕していない。そして、おそらくバイデンは、ロシアがウクライナの反撃を切り抜ける一方で、アメリカの政治家たちがキエフに更なる資金と武器を送るかどうかで争っている最近の戦争の軌跡を、独裁国家は民主的な敵よりも強さと回復力を発揮できるという証拠だと考えているのだろう。

明確にしておきたい。習近平が実際に何を考えているのかは分からない。しかし、中国の戦争への動機を強める可能性のある、あまり安心できない別の教訓ではなく、まさにアメリカ人が彼に学ばせたい教訓を彼が学んでいると考えるのは危険である。

中国は最終的に、2025年、2027年、2029年、あるいはこれからも、台湾、あるいはインド、日本、フィリピン、あるいは他の国を攻撃するかもしれない。北京がいつ武力を行使するか、あるいは行使するかどうかを確実に予測することはできない。しかし、戦争になりやすい国なのか、なりにくい国なのか、中国の内的特徴や外的条件によって、暴発するリスクが高いのか、低いのかを評価することはできる。今日、歴史家や政治学者たちが戦争の原因について知っていることの多くは、中国が暴力を振るう素地があることを示唆している。

残念なことに、ワシントンは北京をこの危険な道へと突き進ませているいくつかの要因に影響を与えることはできない。アメリカは中国の人口危機を解決することも、構造的な経済問題を解決することも、習近平のワンマン支配を止めることもできない。例えば、北京の高度技術へのアクセスを緩和したり、インド太平洋でより強力な連合を構築する努力を放棄したりすることで、中国の将来に対する否定的な期待を変えることはできるかもしれないが、そうすることはワシントンの立場を致命的に弱めるかもしれない。アメリカは、競争に勝ち抜くと同時に、深刻な衝突を避けなければならない。その中で、アジアでの戦争がどのような結果をもたらすかについての、中国の楽観論を抑え、北京が屈辱的な敗北を避けるために戦わなければならないと結論付けるのを防ぐことを目指すべきである。

戦争の結果についての中国の楽観論を否定するための要件は、たとえ簡単に満たされるものではないとしても、非常に単純である。その中には、対艦ミサイル、機雷、移動式防空システム、その他の安価だが致死的な能力を持つ武器が満載の台湾も含まれる。無人機、潜水艦、ステルス航空機、そして膨大な量の長距離攻撃能力を使用して、西太平洋に決定的な火力をもたらすことができるアメリカ軍もそうした要因の1つとなる。そして、アメリカ軍に地域内のより多くの基地へのアクセスを許可し、更に多くの国を中国政府との戦いに参加させる恐れのある同盟諸国やパートナーとの協定。中国経済を制裁で打撃し、海洋貿易を阻止できる世界規模の国々の連合。そして経済的、財政的優位性が最終的に決定的であることが判明するまで、民主政体諸国が戦いを継続できる、活性化された産業基盤といったものもある。ワシントンとその友人たちは、既にこれらのあらゆる取り組みを推進している。しかし、彼らは、急速に成熟する中国の軍事的脅威を上回るために必要なスピード、リソース、緊急性を持ってはいない。

2つ目の課題には、抑止力(deterrence)と安心感(reassurance)を組み合わせることが含まれる。これは、習近平の目から見ると、不作為が中国を解体(dismemberment)と屈辱(humiliation)に導く可能性がある程度を制限することだ。中国政府高官たちは、アメリカの政策と台湾の政治が台湾を独立やその他の形での永続的な分離(permanent separation)への道に導いていることを心から懸念しているが、その傾向の主な原因が自国の行動にあることを認識していない。したがって、アメリカは台湾に関して慎重に対処しなければならない。

アメリカ政府は、2022年8月のナンシー・ペロシ連邦下院議長(当時)の台湾訪問のような、台湾の防衛強化には何の役にも立たず、中国の不安と怒りを大いに煽る派手な見せ物は避けるべきだ。アメリカは、とりわけマイク・ポンペオ前米国務長官が提案した「一つの中国」政策(“One China” policy)を捨てて台湾を正式に承認する(formally recognizing Taiwan)という考えを拒否すべきだ。台湾の指導者たちによる独立推進の宣言や行動については反対すべきだ。言い換えるならば、アメリカは台湾を防衛するための信頼できる能力を行使すると同時に、米中どちらの側も一方的に現状を変更すること(unilaterally changing the status quo)を阻止することを目指すという信頼できる誓約を提示しなければならない。

このアプローチには多くの矛盾があるので、その実施は非常に困難だ。アメリカとの同盟関係の強化は、中国の軍事的楽観主義(military optimism)を低下させる可能性があるが、同時に戦争の予感(sense of foreboding)を強める可能性がある。抑止力を強化するために必要な緊急性は、特に中国政策が米大統領選挙戦に巻き込まれる中で、両岸外交(cross-strait diplomacy)に必要な慎重さと一致させるのは難しいかもしれない。強力だが問題を抱えた中国は悪い方向へ進んでいる。戦争への突入を防ぐには、アメリカとその友好諸国が結集できるあらゆる力と節度(strength and sobriety)が必要となる。

※マイケル・バックリー:タフツ大学政治学准教授、アメリカン・エンタープライズ研究所非常勤上級研究員。

※ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念世界問題担当優等教授、アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの有名なシンクタンクである、アメリカ・エンタープライズ研究所から「台湾とコントロールするための中国の3つの方途(China’s Three Roads to Controlling Taiwan)」という報告書が出たのは2023年3月13日だった。
下記アドレスから見ることができる。
https://www.aei.org/research-products/report/chinas-three-roads-to-controlling-taiwan/

 そして、今年5月に『ザ・ヒル』誌にその内容の概略が、報告書の著者であるダン・ブルーメンソールとフレッド・ケーガンによって論稿として発表された。ブルーメンソールは中国専門家として知られ、国務省に勤務した経験を持つ。フレッド・ケーガンは、アメリカのネオコン派の「名家」ケーガン一族に属しており、兄はロバート・ケーガン、義姉は、ヴィクトリア・ヌーランド前国務次官、妻は戦争研究所(Institute for the Study of War)の所長を務めるキンバリー・ケーガンである。フレッドは、2007年のイラクへのアメリカ軍増派作戦(「大波」計画[Surge Plan])の立案者として知られる。アメリカを戦争の泥沼に引き入れた一族の一員だ。

 この報告書の内容は、「中国は武力侵攻などしなくても台湾統一を実現できるということに今気づいた。アメリカは非武力的な方法にも注意をしなくてはいけない」というものだ。

 私は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』や『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』、このブログで、散々、「中国は台湾に侵攻しなくても統一できるし、現状は既にぴったりとくっついていて、両岸関係は緊密だ」と書いてきた。中国が武力で台湾に侵攻することなど書いてきた。「台湾有事だ」「ウクライナの次は台湾だ」「日本はアメリカと一緒になって台湾防衛のために中国と戦う」といったお勇ましい言論は、為にする言論であって、日本にとって害悪だ。

 私が不思議に思っているのは、昨年に発表した報告書の内容を今年になって論説にまとめて発表したことだ。どうしてこんなことをするのだろうかと考えて、私なりの答えにたどり着いた。それは、彼らの飯の種を何とか確保するということだ。現在のアメリカh、ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争の2つに注目が集まり、お金を出す出さないでお重めしてきた。しかし、共和党系のネオコン派や民主党系の人道的介入主義派の主敵は、中国である。ウクライナ戦争もパレスティナ紛争も先行きが見えない現状では、中国のために割くエネルギーは残っていない。それでは、この人たちは困るのだ。

 だから、バイデンが中国製の電気自動車に100%の関税をかけると発表した時期に、「中国も大変なんだよ」というアピールをするということだ。何とも迷惑な話である。

 中国はアメリカの衰退という大きな政界史的転換期の動乱を乗り越えようとしている。しかし、それが過ぎて安定期に入り、世界覇権国になっていく時期には、少しずつ、自由化や民主化を行っていくだろう。それはしかしまだ10年単位で先の話である。そして、台湾をゆっくりと中国に近づけさせていきながら、中国国内の制度も変更していき、台湾の人々が統一を選べるようにしていくだろう。そこにアメリカが付け入るスキはないし、アメリカが介入して良い問題でもない。もっとも、その頃にはアメリカは力を失っているだろう。

(貼り付けはじめ)

台湾統一を実現するために中国は侵攻する必要はない(China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification)

ダン・ブルーメンソール、フレッド・ケーガン筆

2024年5月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/

アメリカは第二次世界大戦後、最も厳しい国際安全保障環境に直面している。

戦争が続いており、中東においても拡大する恐れがあるにもかかわらず、ウクライナ戦争は激化している。一方、中華人民共和国は近隣諸国への嫌がらせと威嚇を続けており、アメリカ政府は台湾に対する中国の攻撃の脅威をより強く認識している。

台湾の安全保障への関心が高まるのは歓迎されることだが、現在の言論は、中国による台湾侵攻の脅威に焦点を当てすぎている。北京には、台湾に対する現在進行中のハイブリッド戦争作戦(hybrid warfare campaign)をエスカレートさせるなど、侵攻という手段を取らずに統一を強制する他の選択肢がまだある。アメリカの政策は、そのような戦略を抑止したり打ち負かしたりするようには設計されていない。

中国は、主に次の3つの理由により、台湾侵攻よりも限定的な運動行動(limited kinetic action)を伴う政治的・経済的戦争を中心とした、私たちが「戦争に至らない強制作戦(short of war coercion campaign)」と呼ぶ作戦を追求する可能性が高い。

第一に、戦争ではない手段で台湾を併合すれば、中国の他の大戦略目標(Chinese grand strategic objectives)にダメージを与える可能性を大幅に抑えることができる。中華人民共和国の長期的な戦略目標は、包括的な国力を構築し続け、世界を主導する超大国になることだ。そして、国際政治秩序を決定的に再編成し、自らをその中心に据えることを目指している。中国の国家最高指導者の習近平は、台湾を大陸と統一することがこの大戦略の重要な要素であると考えていることは明らかだが、本格的な、そしておそらく、世界規模の戦争を始めることで、中国の地政学的支配への歩みを危険に晒すことを嫌っているのかもしれない。

第二に、政治戦(political warfare)と限定的な運動行動を中心とした、戦争に至らない戦略が成功する可能性がある。台湾の直近の選挙では、国内の政治的分裂が浮き彫りになり、アメリカの支持に対する懐疑的な見方が高まった。このような感情は、台湾が国際的に孤立しているという事実によって更に強化されている。台湾の地位は国際問題において特異なもの(sui generis)であり、世界の諸大国に承認されていない、完全に機能する国民国家(nation-state)である。このことは、台湾の見捨てられてしまうという、理解できる恐怖を中国が操る隙を生み出す。

第三に、戦争に至らない戦略は、中国の戦略的思考とこれまでの行動と一致している。中国の戦闘コンセプトの中には、伝統的な運動論的武力の行使を超える手段を用いて戦争を戦うことの有用性に言及しているものが数多くある。これらのコンセプトは、南シナ海や東シナ海、台湾海峡における中国の「グレーゾーン作戦(gray zone operations)」において定期的に採用されてきた。一般的な成功例からすると、中国は台湾併合作戦において、これらの手段の採用を強化する可能性が高い。

私たちの新しい報告書は、北京が現実的にそのような戦略を達成できることを示している。中国の戦略立案者たちの考え方を採用することで、私たちは、中国が侵略や明白な軍事封鎖(overt military blockade)を行うことなく台湾に対する政治的支配を確立できるような、実現の高い戦争に至らない強制作戦を考案した。

私たちがモデルとした作戦は、台湾の新総統の就任からその一期目までの4年間にわたって実施された。この期間中、中国は米台関係を破壊し、台湾政府の統治能力を低下させ、台湾の抵抗意志(Taiwanese will to resist)とアメリカの台湾支援の意欲を著しく損なうだろう。

私たちは、4年間にわたる絶え間ない中国の空軍および海軍の侵攻、準封鎖(quasi-blockade)、政治戦と工作(political warfare and manipulation)、台湾の重要インフラに対する大規模なサイバーおよび物理的破壊行為(extensive cyber and physical sabotage of Taiwan’s critical infrastructure)、および沖合の島々への致命的な武力が、台湾政府内で「認知的過負荷(cognitive overload)」を引き起こし、台湾国民全体が混乱を感じるようになっている。

このような作戦の過程で、アメリカは中国の情報戦(information warfare)に晒され、特に中国との新たな経済協定の後、台湾は戦争をする「価値がない(not “worth”)」と確信するようになるだろう。アメリカの対応を麻痺させる中国の能力に懐疑的な人々は、2015年以来、ウクライナをめぐるNATOとの決裂につながりかけたロシアの対アメリカ政治戦争に注目していない。特に、中国による苦痛を与える作戦が、アメリカが準備している侵攻の兆候や警告を何ら引き起こさないのであれば、アメリカは中国の強制的な作戦には参加しない可能性が高い。

私たちが想定している作戦では、台湾が混乱に陥り、最強の同盟国から見捨てられたように見えるということになる。中国は「和平(peace)」を申し出る機会を捉え、北京が指示するガイドラインに従って協力する代わりに、強制的な作戦を停止し、ある程度の自治を保証することを約束する。

そして、台湾政府は中国の一部になることを望んでいないにもかかわらず、最終的には中国の望む統一につながるであろう計画に同意することで、国民の苦しみを終わらせることを選択する。

私たちの報告書に概説されているシナリオは、私たちが必然的に起こると考えていることの評価を表している訳ではない。むしろ、戦争による強制という短時間のシナリオが現実的であり、非常に危険であることを示そうとしている。

このような戦略を阻止するために、アメリカ、台湾、そして地域の同盟諸国が取るべき手段はいくつかある。これらの政府は、国際法の下での台湾の主権的権利(Taiwan’s sovereign rights)を明確に示すことから始めなければならない。そうすることで、封鎖や船舶検査体制(shipping inspections regimes)を「内政問題(internal matters)」として正当化する中国の法律戦作戦(lawfare campaigns)に対抗することができる。

台湾とアメリカの両政府は、台湾の対干渉・対破壊工作の法的権限と能力(Taiwan’s counter-influence and anti-subversion legal authorities and capabilities)を向上させるためにも協力すべきである。この協力は、台湾が封鎖や封鎖に類似した経済活動に耐えられるようにするための、より広範な取り組みにも及ぶべきである。

最後に、アメリカ主導の連合は、中国の軍事的威嚇努力を阻止するために政治的、経済的コストを課すべきである。例えば、現在の台湾海峡での中国の空軍侵攻に対する回答は、台湾と国際社会との間の民間航空協力の拡大と、地域の防空体制への台湾の統合の両方であるべきである。

中国政府は、進行中の「グレーゾーン(gray zone)」作戦を強化するなど、台湾の支配を成功させるための多くの方法を持っている。中国は、台湾社会に多大な苦痛を与え、アメリカの介入(U.S. intervention)を阻止するための、戦争強制以外の組織的な作戦において、主に台湾の国際的孤立(Taiwan’s international isolation)と同盟関係の欠如(lack of alliance relations)といった台湾の脆弱性(Taiwanese vulnerabilities)を利用しようとする可能性がある。

中国が威圧的な取り組みを強化しそうな手段に焦点を当てることで、アメリカはそれを克服することができる。

※ダン・ブルーメンソール:アメリカ・エンタープライズ研究所上級研究員。
※フレッド・ケーガン:アメリカ・エンタープライズ研究所クリティカル・スレッツ・プロジェクト部門部長。

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界政治について詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 櫻井よしこが自身のSNSで「祖国のために戦えますか」という、戦争を煽るような発言を行い、それに対して、「最前線に出ない人間が戦争を賛美するな」「お前がまず戦争に行け」という反応が出ている。ここしばらく日本はおかしな方向に進められてきたが、実際に戦争の可能性があるとなれば、実際に最前線に連れていかれる人たちを中心に批判が出るようになっているのだろう。これは良い兆候だ。

 戦争賛美者こそは真の平和ボケだ。今の日本に生きている人たちの圧倒的大多数は、戦争について知識を得ることはあっても、実際に経験していない。1945年の敗戦からもうすぐで80年が経過しようとしているが、その時に20歳だった人も100歳になる。日本は超高齢社会であり、100歳以上の高齢者も多いとは言っても、実際の戦場を知っている人はかなり少ないと言ってよい。

そうした中で、戦争を経験しておらず、戦争の悲惨さも知らず、頭でっかちの知識だけで、戦争を賛美している者たちこそが、「戦争を知らない子供たち」だ。平和の中で生まれ育ち、生きてきて、老齢を迎えて、自分は安全な場所にいて(戦争には行かないことが確実だと分かっていて)戦争を賛美する姿は老醜と言う他はない。平和のおかげを受けながら、戦争を賛美する姿は平和ボケだ。本当に戦場を知っている者、国家指導者として重い決断をする者、国家の利益について本当に考えているものは戦争を賛美しない。

 「祖国のための戦争に行けますか?」とは、より正確に書くならば、「少数の指導者が影響力を持つ財界や利益団体などの影響を受けて開戦を決めた、虚構として祖国のためと宣伝をして、それに考えが足りない人間から連れていかれる、“祖国のための戦争”にあなたは行けますか?」ということだ。

 前置きが長くなったが、このブログでよくご紹介しているハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトの論稿を今回もご紹介する。ウォルトは国際関係論という学問分野の中のリアリズムという学派に属している。リアリズムは日本語に訳せば現実主義となるが、今回、ウォルトは、平和の実現という、戦争扇動者たちからすれば「夢想的」「ユートピア的」なテーマについて書いている。ここで大事なことは、人間は完璧ではない、人間は果然無欠ではない、人間は間違うということを肝に銘じておくことだ。これは国家指導者から一般国民まで共有すべきだ。

 戦争はいったん始まってしまえば、開戦した時の意図とは全く違う方向に進むことがほとんどであるし、人間が状況をコントロールすることはできない。何よりも自分たちが勝つと思って初めて負けることがどんなに悲惨かは歴史が証明している。戦争ということを簡単に決断すべきではないし、言葉を弄して、戦争を賛美し、煽動することは間違っている。戦争について正確に知り、自分たちが知りたいことだけを知るとか、捻じ曲げてそれを知識とするとかといった行為を戒め、自分たちは安全な場所にいながら、他人に戦争に行くことを促し、強制するというような人物を国家指導者の地位に就けないこと、そうした言説に対しては徹底的な批判をして対抗していくこと、これが極めて重要である。
 日本を中国にぶつけようと表や裏で暗躍している人物や勢力はいくらもいる。私たちは常に警戒し、そのようなことが起きないように努力しなければならない。そのためには、まず知識を増やし、自分の頭で考えることである。

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恒久的な平和実現のための実践的なガイド(A Practical Guide to Perpetual Peace)

-よりユートピア的な世界秩序に向けて、現実的な(そしてリアリスト的な)一歩を以下に踏み出すか

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年12月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/19/realist-guide-world-peace/

世界の多くの国では、年末の休暇時期を迎え、より良い世界のヴィジョンの実現に思いをはせる人たちも多いことだろう。あちらこちらの教会で平和を賛美する讃美歌が歌われ、説教壇からは敬虔な感情がこもった言葉が響き渡り、宗教的指導者も世俗的指導者も同様に未来への希望を表明して新年を迎えるだろう。しかし、ガザでの残忍な殺戮、ウクライナでの容赦ない破壊、スーダンの無意味な内戦、その他世界中で進行中の血で血を洗うような出来事を思えば、そのような暖かな感情など空虚にしか思えない。言うまでもなく、各国が他の人間を殺すより効率的・効果的な方法を見つけるために、莫大な資源を費やし続けている。

私たちは平和の実現について一体何かできるのだろうか? 数週間前、私は宇宙開発に関する興味深いセミナーに出席した。セミナーの講演者は、人類を宇宙の軌道に乗せ、月に送り、そしていつの日か火星に送ることは、人類を鼓舞するために新しく困難な挑戦を必要とするため、やる価値があるかもしれないと述べた。

彼のコメントを聞いて、私は考えさせられた。無人の宇宙探査(unmanned space exploration)は、軌道や月に人を送り込むよりも理にかなっていると私は信じている。もしそうなら、同じように奇跡的なことでも、もう少し身近なことを目標にしたらどうだろうか。火星に人類を移住させる代わりに、地球を平和にするのはどうだろう?

私は、このユートピア的なヴィジョンを阻む全ての障害を認識している。中央権力のない世界(world with no central authority)では、国家は安全保障を心配し、自国を守るための手段を講じる。そのための努力はしばしば他国を脅かし、時には暴力につながる。不確実性(uncertainty)、無知(ignorance)、さまざまな形の認知バイアス(cognitive bias)が、回避できたはずの、そして回避すべきであったはずの戦争へと国々を導く。指導者の中には、自らの権力を維持するため、あるいは歴史に名前を残すために戦争を始める人もいる。長年の不満を抱える国々は、それを覆そうと武力を行使することもあり、様々な種類の利益団体が影響力を高めたり、自国の利益を水増ししたり、あるいは自国の特別な大義を推進したりするために戦争を推進することもある。社会を統治するための唯一の真の方法を発見したと確信しているイデオローグは、自分たちの信念を他の人に押し付けるために野心的な十字軍(crusades)を進軍させることもある。

何千年もの間続く戦争は、解決策を模索すると当時に、謙虚さ(humility)を求めている。戦争の惨劇を終わらせる魔法の杖はないが、多少なりともより平和な世界を築くためのささやかなアイデアのいくつかをこれから紹介しよう。

第一に、世界の指導者たち(そして一般国民たち)は、リアリズムの教訓をより真剣に受け止め、戦争を永遠に終わらせる鍵を見つけたと主張するイデオロギーに対して、より懐疑的な目を向けることから始めることだ。マルクス主義者たちは、資本主義(capitalism)を打倒すれば戦争の誘因がなくなり、平穏な社会主義の楽園が訪れると考えた。リベラル派は、民主政治体制(democracy)を広めることで同じ奇跡が起きると考えている。たとえ民主政体を輸出する方法が分からずに、最初に「戦争を終わらせるためのいくつかの戦争(“wars to end war)」をしなければならないとしてもそれが重要だと考えている。リバータリアンは国家を縮小することを望み、ファシストは国家を崇拝するように言い、アナーキストは国家を完全に破壊することを望んでいる。宗教を信仰している人たちの中には、誰もが正しい神を崇拝すれば平和が訪れると考える者もいるし、無神論者の中には、どんな神であっても崇拝するのを止めればもっと平和な世界が訪れると主張する者もいる。これらの提案はいずれも、政治的信条(political beliefs)を受け入れたがらない他者に押し付ける必要があるため、問題を改善するどころか悪化させるのが一般的だ。

対照的に、リアリズムは謙虚さを奨励する。リアリズムは、人間の誤謬性[間違いやすさ](human fallibility)、チェックされていない権力の危険性(the dangers of unchecked power)、理性の限界(the limits of reason)、そして強い者や特権を持った者が容易に傲慢(arrogant)になり、自信過剰(overconfident)になることを明らかにしている。リアリズムは、政治生活を悩ませる避けられない不確実性と、人間の存在の避けられない部分である悲劇的な要素を認識している。政治上のリアリズムは、白か黒かで決まることはほとんどないが、通常は多くの灰色の色合いを含む世界、つまり意図しない結果が蔓延し、今日の成功が明日の問題の種を植え付ける世界を描き出す。

このような理由から、リアリストのほとんどは、国家が戦争に踏み切るのは、自国の生存、もしくは死活的利益が危機に瀕している場合という、切迫した必要性のある場合に限られるべきであると考えている。少なくともここ数十年間、リアリズムと制限(restraint)に基づく外交政策が実行されていれば、ほぼ間違いなく平和がより広まっていただろう。

リアリズムはまた、人類が共通して持つ人道的思いやり(our common humanity)に訴えても世界は平和に近づかないと示唆している。人間は社会的な動物(social animals)であり、集団に分かれ、異質と見なされる者を警戒する傾向が深く根付いている。いざとなれば、たいていの社会集団は自分たちの利益を優先し、たとえそれが他者を傷つけるものであったとしても、自分たちの利益を優先する。草の根平和運動やその他の反戦活動も十分ではない。民主政体国家であっても、戦争の決定は一握りのトップによってなされるからだ。このような理由から、指導者たちとその支持者たちに、戦争に踏み切れば自分たちの地位がより安全になる訳でも、自国がより安全で豊かになる訳でもないことを納得させることでしか、平和を促すことはできない。

つまり、よりリアリズム的な平和へのアプローチとは、バランス・オブ・パワー(balance-of-power)を重視することである。つまり、アナーキー(anarchy、中央政府がない状態)である国際社会においては、国家は、他国が強くなりすぎると必ず心配し、自国の安全を守るために均衡(balance)を保とうとする。このため、他国を犠牲にしてまで自国の力を強化しようとする執拗な努力は、通常、自滅的(self-defeating)となる。なぜなら、他国は最終的に力を合わせて強大な国家を牽制し、その野心を封じ込めるからである。

この原則の副次的な意味は、大国の重要な利益、とりわけ自国の領土付近を脅かすことは、厳しい反応を引き起こすに違いないということである。このような傾向を理解する指導者が増えれば、永続的に有利な立場を得ようとする無分別な試みは少なくなるだろう。さらに、鋭い共感能力(keen sense of empathy)、すなわち、必ずしも賛成しなくても、相手の立場に立って物事を見る能力を身につけた指導者であれば、誤ってレッドラインを越えてしまうことも少なくなり、全ての当事者がより良い状態を保てるような解決策を見出す能力も高まり、愚かな選択による戦争につまずくことも少なくなるだろう。

第二に、ほとんどの政治指導者は、一般市民の愛国の誇り(sense of national pride)に訴えることで権力を獲得し、維持しているが、他国にも同様の力が存在することをしばしば忘れている。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナのナショナリズムの力を軽視したために過ちを犯し、最終的な結果がどうであれ、予想以上に犠牲の多い戦争に身を投じることになった。ナショナリズムの力はまた、なぜ強大な国が他国を爆撃して永久に服従させることができないのか、なぜ脆弱な国家が制裁や他の形態の強制に抵抗するのか、たとえそうすることが非常に高くつくとしても、その理由も説明する。世界政治のこの側面をもっと多くの指導者が理解していれば、他国を強制したり、弱体化させたり、破壊したりするための実のない努力は少なくなっていただろう。

第三に、戦争を考えている指導者は、いったん戦闘が始まれば、もはや自分たちの運命をコントロールすることはできないということを思い起こすべきだ。戦争を始めると、複雑で予測不可能な要素が膨大に発生するため、ほとんどの戦争は、開戦者の予想以上に長引き、多くの犠牲を出すことになる。イギリスのウィンストン・チャーチル首相は平和主義者(pacifist)とは言い難かったが、世界政治のこの永続的な特徴を把握していた。チャーチルは自伝『わが半生』の中で「戦争熱(war fever)に屈する政治家は、ひとたびその合図が下されれば、もはや政策の主人ではなく、予測不可能で制御不能な出来事の奴隷であることを理解しなければならない」と書いている。ジョージ・W・ブッシュは大統領在任中、執務室にチャーチルの胸像を飾っていた。しかし、彼がその小さな知恵の核である本を読んだとはとても思えない。もし読んでいたら、2003年にイラク侵攻する前に、もっと真剣に考えていたかもしれない。

そして、チャーチルの話題が出たついでに続けると、チャーチルの浩瀚な第二次世界大戦史の巻頭言には次のように書かれている。「戦争においては解決が必要だ。敗北においては反抗が必要だ。勝利においては寛大さが必要だ。平和においては善意が必要だ」。これは悪くないカテキズム(catechism、訳者註:キリスト教の教理をわかりやすく説明した要約ないし解説)であり、私は最後の2つのフレーズに注意を向けて欲しいと考える。勝者が一方的に平和を押し付けることは、特にかつての対戦相手が敗戦から立ち直る可能性が高い場合、後々より多くの問題を引き起こすことになる。アメリカは第二次世界大戦後、博愛の精神(sense of philanthropy)からドイツと日本の再建を支援した訳ではないが、一部の政府関係者が提唱したカルタゴになされたような和平(Carthaginian peace)を押し付けた訳でもない。第一次世界大戦を終結させた懲罰的な(punitive)ヴェルサイユ条約との対比は、これ以上ないほど際立っている。同様に、ロシアを敗戦国のように扱い、その正当な懸念にその後何年も注意を払わなかったことは、多くの先見の明のある専門家が繰り返し警告したように、米露関係を悪化させ、今日の問題への道を開くきっかけとなった。

第四に、戦争は常にコストがかかり予測不可能であるため、賢明な指導者は大きな賭けに出る前に、あらゆる選択肢を尽くす。ロシアのウクライナ侵攻を食い止める外交的駆け引きがあったかどうか、あるいは2022年3月に進められていた和平調停活動が戦争を迅速に終結させ、ウクライナを分割や甚大な破壊から救えたかどうかは、誰にもわからない。しかし現在、西側の指導者たち、とりわけ西側のトップたちが、代替策を必要なほど徹底的に追求しなかったことを示す証拠が増えつつある。そのような努力は失敗に終わったかもしれないが、戦争を未然に防ぐ、あるいは戦争の芽を摘むためのより真剣な努力は、起きてしまった戦争よりも望ましいものであっただろう。

最後に、平和を促進するための努力は、平和をより普及させ、強固なものにするために何をするつもりなのかを説明するよう、指導者を目指す人々に求めれば、さらに進むかもしれない。国家の指導者を目指す人たちは通常、国をどのように強くしていくのかについて多くを語るが、私たちが彼らに問うべき本当の質問は、同胞をどのように安全にしていくのかということだ。真剣に考えて欲しい、大統領や首相になろうとする人は誰でも、戦争の可能性を減らし、平和をより強固なものにするために何をしようとしているのかを説明するべきではないだろうか? もし彼らが、問題はみんなのせいであり、トラブルメーカーを滅ぼして初めて平和が実現すると答えるなら、その人は本当に平和に関心のない人だと分かるだろう。もし彼らが単純化された決まり文句(「強さによる平和(peace through strength)」「ミュンヘンを思い出せ(remember Munich)」など)しか口にできないのであれば、世界政治が実際にどのように機能しているのかについて、より洗練された理解を持つ候補者を別に探すべきだ。もし平和の重要性が彼らの頭に浮かんだことがなく、何も語ることがないのであれば、取材記者はその理由を尋ねるべきだ。また、戦争は歓迎すべき、偉大で輝かしい活動だと言ったり、潜在的な敵は張り子の虎(paper tiger)で倒すのは簡単だと主張したりする候補者がいたら、食料庫(pantry)に非常用の食料を備蓄するか、近くの防空壕(bomb shelter)に向かうことだ。

これまで明らかにしてきたように、戦争という問題に簡単な解決策はない。しかし、もし人類が本当に新たな挑戦を必要としているのであれば、戦争の発生可能性(likelihood)と破壊(destructiveness)を減らすための持続的だが現実的な努力は、数人の勇敢な人間を遠い宇宙に送り込むよりも、はるかに人類に利益をもたらすだろう。そして、その手始めとして、戦争を始めることが望ましい結果を生むことはほとんどなく、しばしば予期せぬ非常に厄介な事態を招くことを、指導者たちに常に思い起こさせることが必要だ。

おそらくこの教訓は、2024年には昨年よりも良い結果をもたらすだろう。私はハードルを低く設定した。指導者たちがこのハードルをクリアすることを皆で祈ろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 アメリカと台湾の関係は微妙である。アメリカは米中国交正常化(1975年ニクソン訪中、1977年カーターによる米中共同宣言の内容の再確認、1978年に1979年1月に国交樹立を行うことに合意)以来、「一つの中国」政策を堅持している。これは、「中国本土と台湾は不可分の領土であり、台湾は中華人民共和国の一部であり、中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府だ」とする中国政府の主張について、アメリカ政府が不可分と台湾が中国の一部であることを「認識する(acknowledge)」、合法政府であることを「承認する(recognize)」というものだ。これらの文言は曖昧である。

 台湾(中華民国)は1972年に国連から追放され、多くの国々が台湾を独立国として正式に承認していない。ここで問題は、1978年、米中国交正常化の前に、アメリカ連邦議会が「台湾関係法(Taiwan Relations Act、TRA)」を制定した。これは、台湾の安全保障に関して、アメリカ大統領に米軍による行動という選択肢を認めるものであるが、「アメリカ軍が必ずアメリカ軍を守る」ということではない。これは「戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)」と呼ばれている。しかし、一般的には台湾有事の際にはアメリカ軍が台湾を守ると受け止められている。

 ウクライナ戦争が勃発し、「次は台湾だ(中国が台湾を攻める)」という馬鹿げた主張が多くなされた。そして、その際に「アメリカは台湾を守るのか」という疑問が多くの人々の間に出てきた。ウクライナ戦争ではアメリカは莫大な資金と膨大な数の武器をウクライナに送った。しかし、決定的な攻撃力を持つ武器は送らず、兵員も送っていない。台湾も同様のことになるのではないかという主張が出ている。アメリカ軍が中国人民解放軍と直接戦闘ということになったら、どのような事態が起きるは分からない。エスカレーションを避けたいアメリカは台湾に兵員を送らないだろう。そうなれば台湾は領域の狭さを考えるとウクライナのような抵抗は厳しいだろう。
 そもそも中国が直近で台湾を攻めることはない。台湾が中国にとっての安全保障の脅威になっているということはない。熟柿作戦で柿が熟して落ちるまで待てばよい。そして、台湾の側から見れば、アメリカが頼りにならないとなれば、中国との軍事的な衝突は百害あって一利なしとなる。中国との戦争は馬鹿げたことだ。アメリカに物資だけもらって自分たちだけで戦うというのは自分たちだけが傷つくだけのことだ。軍事的な衝突を避けながら、自分たちが中国の実質的な影響圏、経済圏の中で存在感を保ちながら、繁栄を続けていくということが最善の途だ。

 台湾関係法の曖昧さは対中国という側面もあるが、台湾をアメリカに依存させるために必要である。しかし、ウクライナ戦争でこの曖昧さのメッキがはがれ、「どうせアメリカは頼りにならない。物資だけもらって戦って傷つくなんて愚の骨頂だ」という考えが台湾の人々の間で広がっているだろう。台湾内部で大陸との衝突を避けようとする国民党の任期が上がっているのもうなずける話だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンはウクライナが必要としているものを全て与えるべきだ-そして公式に台湾防衛に関与すべきだ(Biden should give Ukraine all it needs — and formally commit to defend Taiwan)

ジョセフ・ボスコ筆

2022年11月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3753576-biden-should-give-ukraine-all-it-needs-and-formally-commit-to-defend-taiwan/

もしアメリカがロシアの侵略に対する現在のウクライナ支援の形が、中国が台湾を攻撃した後のアメリカの役割のモデルになるとすれば、台湾の人々は大変な目に遭うことになるだろう。

2008年、NATOはジョージ・W・ブッシュ大統領の働きかけを受けて、加盟国26カ国による「グルジアとウクライナがNATOに加盟することに合意した」という内容のコミュニケを発表した。

1997年、ウクライナがソヴィエト連邦時代に保有していた核兵器を放棄する代わりに、アメリカ、イギリス、ロシアがウクライナの安全保障を具体的に保証したにもかかわらず、ウラジミール・プーティンはNATOの姿勢に対して「ロシアの安全保障を脅かすものだ」と強く反発した。

しかし、2008年にロシアがグルジアに侵攻した際、アメリカとNATO各国は何もしなかった。プーティンは、アメリカとNATOの黙認に勇気づけられ、「国家の再統一(national reunification)」と「領土の一体化(territorial integrity)」に向けた次の動きを計画した。

それが、2014年のウクライナ東部とクリミアへの侵攻である。オバマ政権はブッシュ政権のグルジアでの例に倣って、それを止めるためのことは何もしなかった。

アメリカの指導力がないために、NATOもプーティンの第二の侵略行為を受け入れ、必然的にプーティンは決定的な第三の行為を計画するようになった。バイデン政権の「厳しい(severe)」経済制裁の警告を無視して、ロシアがウクライナの国境沿いに侵攻軍を動員したのは、2022年2月のことだった。

ロシア軍がウクライナに侵入し、首都キエフに向かって前進した後、ワシントンとNATOの同盟諸国の政府関係者たちは、ヴォロディミール・ゼレンスキー政権の崩壊が近いと予想した。その場合、西側諸国の役割は、ウクライナの降伏とプーティン支配下での再建のための交渉を促進する、最小限の比較的リスクの少ないものとなるはずだった。ジョー・バイデン米大統領は、ウクライナが要求していないアメリカ軍の地上戦や、要求している飛行禁止区域の設定によってロシアに直接挑むことは、「第三次世界大戦になる可能性がある(would be World War III)」と述べている。

台湾には、ウクライナをロシアの侵略から守るのに失敗したのと同じレヴェルの西側の安全保障しかない。その代わりに、1979年に制定された台湾関係法(Taiwan Relations Act、TRA)がある。この法律では、「ボイコットや禁輸を含む平和的手段以外で台湾の将来を決定しようとするいかなる試みも、西太平洋地域の平和と安全に対する脅威であり、アメリカにとって重大な懸念であると考えられる」と定めている。

このような敵対行為(hostile action)に対応するため、台湾関係法は、アメリカが「台湾に防衛的性格の武器を提供し、武力または他の形態の強制(coercion)に対抗するアメリカの能力を維持しなければならない」と定めている。

法律成立以降の全てのアメリカ政権は、台湾に防衛的な武器を提供することで、台湾関係法の命令の最初の部分を遵守してきた。ドナルド・トランプ政権とバイデン政権は、中国のエスカレートする暴言とますます敵対的な行動に対応して、台湾の武器売却の量と質を大幅に引き上げさせた。

しかしながら、ワシントンが台湾に提供する兵器の「防衛的(defensive)」性格を強く打ち出していることから、北京は台湾の軍事力を理由に台湾に対する運動行動を抑止することはできないだろう。ここでも、ウクライナの経験は、台湾にとって心強いものではない。

プーティンが何度か予告した核兵器使用の可能性を含む、ロシアのエスカレーションに対するアメリカと西側諸国が恐怖を持ったことで、ウクライナの現在の防衛的立場からロシア領土を攻撃できる西側諸国の兵器の移転を抑制することに成功した。

同様に、アメリカの歴代政権は一貫して、中国の資産を脅かし、北京の紛争を抑止する可能性のある最新鋭戦闘機やディーゼル潜水艦などの兵器システムの台湾への売却を拒否してきた。

近年、アメリカの国防当局は、殺傷能力の高い兵器の提供を控えることを戦略的ドクトリンの領域にまで高めている。彼らは、いわゆる「ヤマアラシ戦略(porcupine strategy)」を推進しており、「多くの小さなもの(many small things)」、例えば地雷、海岸障害物、対水陸両用兵器などによって、台湾を中国軍が攻撃する際の「簡単に負けない」犠牲者(“indigestible” victim)にするというものである。

アメリカの台湾政策は、バイデンが、屈辱を感じたプーティンが大量破壊兵器を持ち出すことを恐れて、ウクライナにロシアを決定的に破るために必要な先進兵器システムを提供するのを阻むのと同じエスカレーションへの恐怖によって阻まれている。

しかし、アメリカが台湾の防衛能力だけでなく、中国の侵略を抑止する能力を制限するほど、台湾関係法が義務付けるアメリカ自身の「抵抗能力(capacity to resist)」を強化する必要性が高まる。

1979年以降、「アメリカは台湾を積極的に防衛する」と明確に宣言した政権はなく、台湾が自衛を試みることができる限定的な武器を送ったに過ぎない。これは戦略的曖昧さ政策(policy of strategic ambiguity)と呼ばれる。

クリントン政権は1995年、中国が台湾を攻撃した場合、アメリカは何をするか分からないと中国当局に伝え、「それは状況次第ということになる(it would depend on the circumstances)」と述べた。ジョージ・W・ブッシュ大統領は2001年に記者団に対し、アメリカは「必要なことは何でもする(whatever it took)」と述べ、中国がどうするかは分からなくても、私たちがどうするかは分かっていることを示唆した。トランプ大統領は、「中国は私が何をするかを知っている(China knows what I'm gonna do)」と威嚇するような発言を行った。つまり、今、ワシントンと北京の両方が、台湾防衛に対するアメリカの意図を把握していたが、アメリカと中国の両国民は、台湾をめぐる戦争の見通しについて、依然として暗中模索しているのである。バイデンは、アメリカが台湾防衛のために自国の戦闘部隊を派遣するということを、4回の機会をとらえて、より具体的な言葉で述べ、状況に新しい光を当てようとした。

しかし、ホワイトハウスと国務省のスポークスマンは、それぞれの大統領の発言について、アメリカの「一つの中国政策(one China policy)」と両岸の平和的解決(peaceful resolution)に変更がないことを「説明」し、台湾防衛に関する戦略の明確化から何度も逃れている。

国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは最近、彼の上司であるバイデン大統領が「アメリカは台湾を軍事的に防衛する」と何度も発言したことについて問われ、「私たちの台湾関係法の関与は、アメリカが台湾防衛に必要な物品を提供することを確約する」ことだけだと確認した。

サリヴァンは、同じく台湾関係法で義務づけられている台湾防衛のための「能力(capacity)」を行使するとは言っていない。もう1つの未解決の問題は、台湾が自国を防衛するために必要な「物品(articles)」を誰が定義するのかということだ。つまり、定義するのは、台北かワシントンか、ということである。これは、ウクライナの安全保障上の要求について、ワシントンとキエフが対立しているのと同様である。

現在、ウクライナと台湾は、減少し続けているアメリカが備蓄している武器をめぐって争っている可能性があると報じられている。これは、「無制限(no limits)」の戦略パートナーであるロシアと中国にとって朗報であり、ワシントンの注意と資源を異なる方向に引き寄せようとして協調している。バイデンは、ウクライナが防衛に必要なものを全て手に入れられるようにする一方で、台湾を防衛するというアメリカの責務を正式に表明する理由が更に増えている。

※ジョセフ・ボスコ:国防長官中国国家担当部長(2005-2006年)、人道的援助・災害救援担当アジア太平洋部長(2009-2010年)を歴任。ウラジミール・プーティンのグルジア侵攻時に国防総省に勤務しており、アメリカの対応について国防総省の議論に参加した。ツイッターアカウント:@BoscoJosephA.
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 昨年、ウクライナ沖の黒海に展開していたロシア黒海艦隊の旗艦(flagship)だったミサイル巡洋艦「モスクワ」が、ウクライナ軍の地上配備の対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された。ロシア黒海艦隊の主力艦が撃沈された、この出来事は衝撃を与えた。「モスクワ」の装備の古さが指摘されたが、それよりも地上配備の対艦ミサイルの有効性が証明されたことの影響力は大きかった。海上艦艇による海上封鎖や侵攻に対して、対艦ミサイルが有効な対抗手段となることは守備側にしてみれば大きい。
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 米中関係について見てみれば、米中戦争となった場合に、アメリカ軍は中国に対して、艦艇派遣は慎重にならざるを得ない。中国の接近阻止・領域拒否戦略によって、防備が固められており、安易な接近は手痛いしっぺ返しを喰らうということになりかねない。アメリカ海軍が誇る第七艦隊の攻撃力や有効性は考えられているよりも減殺されてしまうだろう。アメリカからすれば、台湾に対してミサイルを売りやすくなったと言うことになる。「中国による台湾侵攻に対してはミサイル防衛が有効です」という売り文句が使える。
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 しかし、中国本土と台湾との距離の近さ、軍の規模の違いを考えると、ミサイル防衛がどれほど有効かは分からない。中国本土から戦闘機、爆撃機、ミサイル、火砲などが雨あられのように降り注ぐことになれば、台湾はひとたまりもないだろう。アメリカ軍が駆けつけると言っても、限界があるだろう。アメリカ軍が空母を派遣し、戦闘機で対抗するにしても、空母が対艦ミサイルの攻撃を受けてしまえば、戦闘機は帰る母艦を失う。

 対艦ミサイルの有効性向上によって、空母で容易に近づけず、戦闘機の戦闘力が制限されるということになれば、空母の有効性が削減されると言うことになる。太平洋戦争では、日本海軍は大艦巨砲主義にこだわり、空母群による航空攻撃を軽視したために敗れたということが定説になっている。日本はマレー沖海戦、真珠湾攻撃で空母を使った機動作戦を成功させていながら大艦巨砲主義、艦隊決戦思想から脱することができなかったとされている。太平洋戦争は空母打撃群を主力とする戦争の新しい形態を生み出した。しかし、ミサイルの正確で効果的な攻撃ということが今回実証され、空母打撃群もまた時代遅れとなりつつある。もちろん、作戦行動によっては空母打撃群が必要であることは変わらないが、空母が最強ということはなくなったようだ。時代は移り変わり、万物は流転するということになる。

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ロシア海軍の件の戦艦と南シナ海(The Russian Warship and the South China Sea)

-戦艦「モスクワ」撃沈は、台湾にとってどのような教訓となるか?

アレクサンダー・ウーリー筆

2022年10月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/01/moskva-south-china-sea-russia/

2022年4月14日、海軍をほとんど持たない国が、海上で見事な勝利を収めた。ウクライナは陸上配備対艦ミサイル(land-based anti-ship missiles、ASM)2基を使用して、ロシアの誘導ミサイル巡洋艦モスクワ(Russian-guided missile cruiser Moskva)を撃沈したのである。これは衝撃的な勝利であり、5000マイル離れた場所で起こりうる紛争への教訓となるものである。中国はいつか、西太平洋からアメリカとその同盟諸国を排除するために、独自の対艦ミサイルを使用する可能性がある。

ウクライナのKh-35ミサイルの使用は、戦争初期にウクライナ陸軍がロシア軍に対して巧みに使ったものの海上版のような、非対称戦(asymmetric warfare)のように見える。ウクライナは戦艦モスクワに対して「ヘイメーカー(haymaker)」で攻撃したが、それは明確な戦略の一部というより、臨機目標(target of opportunity 訳者註:予定外、計画の攻撃目標)であった。そのため、他の紛争への適用は制限されるかもしれないが、台湾への最適な戦略をめぐる濃密な議論の一部として、今もなお利用されている。

何十年もの間、米海軍の水上戦闘部隊は、敵の海岸線までほとんど無抵抗で押し出すことができた。4月13日の時点で、ロシア人は歴史的にロシアの海軍力が支配してきた黒海について同様の自信を抱いていた。

接近阻止・領域拒否(A2/AD、Anti-access/area denial)は、中国自身の海洋圏からアメリカを軍事的に抑止する北京の計画を説明するために最初に使われたアメリカの流行語だ。アメリカの軍艦にとって、これらの計画で最も致命的となりうるのは、世界最大の地上発射型ミサイル軍である人民解放軍ロケット軍(People’s Liberation Army Rocket Force、PLARF)である。PLARFは、西側諸国にはほとんど知られていないが、ミサイル兵器は独裁者たちのパレードでは定番となっている。PLARFは2000発以上の通常弾道ミサイルと巡航ミサイルを保有しており、特に対艦ミサイルに重点を置いている。これは南シナ海にいるアメリカの空母群を狙い、戦争になった場合には中国沿岸の基地から台湾を攻撃することができる。PLARFは、その数の多さによって、アメリカや同盟諸国の艦船防御システム(shipboard defensive systems)を圧倒しようとするものだ。ウクライナの軍事計画者たちは、トラック搭載の陸上配備対艦ミサイル(ASM)が2、3発で攻撃を成功させることでき、その結果に興奮しただろう。

しかし、1983年に就役したモスクワは冷戦時代の艦船であり、空母を撃沈させる能力を持つミサイルを装備していたが、それを発射する相手がいなかった。一方、軍事化が進む西太平洋では、空と海のプラットフォーム、武器、センサーの規模と精巧さ、技術的な攻撃と反撃のスピードが格段に向上している。

アメリカとその同盟諸国は、中国の新型の陸上弾道ミサイルや極超音速対艦ミサイルを打ち負かすために、ソフトキル(soft-kill)とハードキル(hard-kill)の対抗策を展開することになるであろう。ハードキルの対抗策は現在または近いうちに南シナ海の大部分をカヴァーできるようになる。北京がそれに見合う情報、監視、偵察能力を持っているかどうかは議論の余地がある。遠距離にある艦船を攻撃するには、最初の位置確認から追跡、交戦、そして戦闘後の評価まで、段階的なプロセスが必要であり、これらを総称して「キルチェーン(kill chain )」モデルと呼ぶ。

この小さな軍拡競争が続く中、アメリカはとりわけ、巡洋艦と駆逐艦のマーク41垂直発射システムにRIM-162進化型シースパローミサイルを「クアッドパック(quad-pack)」することを検討している。これは、1つの発射セルにつき1発ではなく4発のミサイルを搭載することを意味し、アメリカ軍の艦船が集団攻撃からよりよく身を守ることを可能にする。また、弾倉を深くして長く駐留させ、弾薬補給の機会が薄れそうなときに部隊が攻撃する見通しを向上させることができる。アメリカは対艦巡航ミサイル用レーザーの開発にも取り組んでおり、有望な技術ではあるが、配備にはまだ課題が多い。

誰が優位に立つのか? 米海軍大学のJ・C・ワイリー記念海洋戦略教授であるジェームズ・ホームズは「個人的な推測では、私たちは再び自国を守ることができるようになる手前まで来ていると思うが、それは新しいテクノロジーが大きな期待に応えられるのかにかかっている。しかし、確信をもって推測できるものではない」と述べている。

もし、中国の習近平国家主席がホームズの評価分析に同意するならば、台湾への攻撃を早急に考えるかもしれない。ホームズは「今しかないという考え方が定着しないか心配だ」と語っている。

しかし、台湾に関して言えば、接近阻止・領域拒否(A2/AD、Anti-Access/Area Denial)は双方向に機能する。北京はアメリカ軍艦船を遠ざけたいが、侵略には自国の軍隊を世界で最も防衛の厳しい海域に送り込む必要がある。ロシアの戦艦が沈んだことで、アメリカの連邦議員たちは、「ハリネズミ防衛(hedgehog defense)」(ハリネズミの棘のようにミサイルが林立する島)の価値について、抵抗する台湾の軍事指導者を説得するための格好の材料となり、潜在的侵略者に対する防衛と抑止の両方が可能になった。

連邦下院外交委員会の共和党側筆頭委員であるマイケル・マコール連邦下院議員は『フォーリン・ポリシー』誌上に、「ほとんどの場合、中国の攻撃に弱いハイエンドシステムよりも、ウクライナが効果的に使用している対艦ミサイルのように、低コストで最大の抑止効果を発揮する費用対効果の高い、移動可能で生存可能な技術に焦点を当てることを意味する」と書いている。

しかし、台北はまだそこに到達しておらず、既存のシステムのいくつかは間違った配備がなされている。ホームズは次のように述べている。「台北の高官たちが、台北にある非常に限られた長距離地対地ミサイル(long-range, surface-to-surface missiles)の在庫を使って北京を攻撃すると脅すのだからおかしくなりそうだ。復讐のための攻撃は、民主国家としての台北の存続という観点からするとほとんど意味がない」。

人民解放軍の水陸両用軍による侵攻に対し、台湾が接近阻止・領域拒否を展開するという発想は新しいものではない。2010年、ジェームズ・ホームズとアジア太平洋地域の専門家であるトシ・ヨシハラは、台北がまさにそのような兵器と戦略を持つことを主張し、多くの点で中国本土が世界規模で活動できる海軍の構築に着手する前の数十年間に用いた、毛沢東の海洋拒否主義(sea denialism)を真似ることになるだろうと指摘した。しかし、台湾の軍指導部は、主要な兵器システム、他の中堅国の模倣品、駆逐艦やフリゲートの水上艦隊に関心を持っており、保守的なことで知られている。モスクワの沈没は、それを変える可能性がある。

アメリカと中国の両方にとって、陸上配備の対艦ミサイル(ASM)は何世紀にもわたって変わらない海戦を強化することになる。敵の海岸線に近づくほど、船に悪いことが起こる。3世紀前、それは沿岸の砲台(coastal batteries)と要塞(forts)だった。最近では、より高速な武器と陸上の乱雑な電子環境により、応答時間が短くなりが、破損した船は自国の基地や修理施設に戻る距離が長くなる。一方、ランドラバーシューターは、ターゲットが比較的沿岸に近い場合に、ターゲットを見つけて追跡するのが容易になる。ホレーショ・ネルソン元英国中将が「要塞と戦う艦船は愚かだ」と言ったのには理由がある。

例えば1982年のフォークランド紛争では、イギリスの空母インヴィンシブルとヘルメスは、アルゼンチンの陸上配備対艦ミサイルを恐れて東に大きく離れていたため、機動部隊(task force)の間で、「空母群には、現在のミャンマーでの任務に与えられる勲章であった、ビルマスター勲章を授与される」というジョークが流れたほどである。

アメリカの空母打撃群は、中国沿岸や中国が基地を建設している南シナ海の島々からどれだけ離れていても効果を発揮できるのだろうか? 1980年代ほどの力はない。ジョン・リーマン元海軍長官とCNAのスティーヴン・ウィルス中佐は、現在の空母艦載機はF-14やA-6といった以前のタイプの航空機のような航続距離や積載量を有していないと主張している。つまり、空母はより戦闘に近い場所にいなければならないのだ。

更に言えば、冷戦時代には空母航空団に専用の空中給油設備があったことが問題を大きくしている。しかし、今はもう存在しない。無人空中給油機MQ-25スティングレイは現在開発中で、空母の甲板から飛行し、F-18の航続距離を伸ばすことができるだろうが、少なくとも2026年までは運用できないだろう。

しかし、この問題は北京にとっても同様に深刻である。中国が台湾に侵攻する際、どのような主要な陸上部隊を投入するのだろうか? そのピカピカの新しい空母はどうだろうか? 2016年、歴史家のスティーブヴン・ビドルと戦略的安全保障の専門家アイヴァン・オエルリッチは、「同盟諸国の陸地の周囲(約500マイルまで)のアメリカの影響圏(sphere of influence)、中国本土の中国の影響圏、南・東シナ海の大部分を覆う戦闘空間、どちらの勢力も戦時中の地上・航空移動の自由を享受しない」を想定している。

彼らがそう書いてから多くのことが起こった。将来の戦争では、南シナ海は争われる段階を超えて、第一次世界大戦の西側塹壕の間のように荒れ果て、波の下をパトロールする潜水艦以外は何もない海上無人地帯になる可能性がある。

モスクワの撃沈が生んだもう一つの疑問は、艦船がいかに壊れやすいかということだ。水上艦艇が何回の攻撃に耐えられるかを推定することは、科学的に見て不正確であると同時に、大部分が機密事項である。ある退役した海軍司令官は最近、大まかな計算式に基づいて、モスクワはネプチューンのミサイル5発まで耐えられるはずだと書いている。ウィルスは本誌に対して、実際の発射数は3、4発であったはずだと推定している。

2005年に行われた超大型空母「USSアメリカ」のSINKEX演習の結果は機密扱いとされている。リーマンとウィルスは2021年の著書で、1960年代に米空母で起きた大火災を検証し、対艦巡航ミサイル攻撃(anti-ship cruise missile strike)の代用として使用することで答えを出そうとしている。著者たちは、甲板や格納庫の火災は、超音速の弾道ミサイルはともかく、亜音速の巡航ミサイルのような衝撃を受けるエネルギー特性を持たないことを認めているが、フォードやニミッツ級空母は打撃を受けうるという結論を出している。

逆に、1994年、ジョン・シュルトという海軍大学院の学生(海軍将校)が、沿岸戦における巡航ミサイルの有効性を検討する論文を提出した。そのために、シュルトは、過去にミサイルが艦船に命中した全てのデータを作成した。その結果、平均1.2発のミサイルが艦艇を破壊し、1.8発のミサイルが艦艇を沈没させることが分かった。モスクワはこの測定結果に合致する。モスクワの乗組員たちは、攻撃時に居眠りをしていたようだ。2009年に機密指定を解除されたシュルトの論文では、このようなケースもかなり多いことが判明している。シュルトは、「防御可能な標的(defendable targets)」という特別なカテゴリーを作った。対艦ミサイル攻撃を撃退する手段を持ちながら、それを使用せずに攻撃された軍艦ということになる。通常、不注意、防御システムのスイッチオフや機能停止、状況混乱などが理由となる。多くの場合、被害者たちは対抗策を講じることさえできなかった。最終的に引き起こされる大惨事は、使用された兵器の大きさ、数、精巧さに比例する。

防衛側にとって最悪なのは、一斉射撃で全てのミサイルを打ち落とせなかった場合、悲惨な事態になる可能性があることだ。2021年の『艦隊との戦闘(Fighting the Fleet)』の共著者である退役海軍大佐のジェフリー・カレスは、次のように述べている。「なぜ、戦闘に突入して攻撃を受けないようにしなければならないと考えるのか? 私たちのシステムが優れているからか? まあ、これは冗談であるが」。

対艦ミサイルの攻撃を受けた艦船のうち、モスクワのように1発か2発のミサイルを受けただけのものがほとんどである。ソ連や南シナ海で想定される接近阻止・領域拒否型のシナリオのように、対艦巡航ミサイルの弾幕をかいくぐった艦艇はないのである。

モスクワは大型で武装した軍艦だった。アメリカは、中国に比べれば相対的に少数ではあるが、大型で武装した艦艇を建造している。前述のカレスは次のように述べている。「私たちのようにバランスが悪く、高性能なプラットフォームを少数しか持てない場合、敵の標的の問題は非常に単純化される。中国人民解放軍海軍が撃つ可能性のあるものは、全て撃ち落とす価値があるものだ」。

更に緊急の問題は、ミサイルが命中した後、官邸が運用を継続できるか、あるいは迅速に修理できて戦列に復帰できるかということだ。短期的な紛争では、1発のミサイルが致命的でなくとも、戦闘機の作戦を停止させ、空母を戦場から退かせれば、それは沈没したのと同じことになるのだ。

しかし、中国自身は、空母の急速な建造計画を考えると、空母は時代遅れではないと考えていることは明らかだ。空母はある程度、虚栄心(vanity)の指標であり、中年の危機のためにポルシェを買うのと同じようなものだ。しかし、中国人民解放軍海軍は、空母に注ぎ込んでいる資源を考えると、空母が完全に教義的に時代遅れで、致命的に脆弱だとは考えないはずだ。6月には中国初の平甲板型空母「福建」を進水させ、戦略予算評価センターは最近、今後10年間に更に3隻の空母を購入する余裕があると推定している。大型艦の全盛期は終わったかもしれないが、まだ時代遅れにはなっていない。

※アレクサンダー・ウーリー:ジャーナリスト、大英帝国海軍士官(退役)。

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