古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:国務省

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 先日、『ニューヨーク・タイムズ』紙がトランプ政権の閣議において、マルコ・ルビオ国務長官と政府効率化省を率いるイーロン・マスクが衝突したと報じられた。マスクはルビオが何もしていないと怒り、ルビオはマスクが米国国際開発庁(USAID)を閉鎖すべきと主張したことについて激怒しており、言い合いになったということだ。その他にもシーン・ダフィ運輸長官とマスクが衝突したということも伝えられている。USAIDに関しては、ルビオが国務長官就任早々に一部予算停止を行ったが、そのことよりもマスクが閉鎖を主張したことの方が取り上げられて面白くないのだろうと考えられる。

 イーロン・マスク率いる政府効率化省のスタッフたちは第2次トランプ政権発足直後から、各政府機関を「急襲」し、人事や予算などの情報を収集している。スタッフたちには腕利きのハッカーもおり、コンピュータに隠されている秘密情報などにもアクセスしているということだ。政府効率化省は連邦政府の人員整理や各機関の縮小や閉鎖を主導しており、官僚たちにとっては脅威になっている。

トランプに対して忠誠心が厚い閣僚たちも、マスクにばかり注目が集まるのは面白くないことだろう。自分が長官として主管する各省の人員整理や予算削減については、自分が主導して行い、手柄にしたいところに、マスクが荒らしまわっているということになる。また、マルコ・ルビオに関しては、まだ大統領選挙出馬に色気があるのだろうと考えられる。今のところ、JD・ヴァンス副大統領がトランプの後継者と見られているが、ルビオも以前の大統領選挙に出馬した経験を持ち、大統領の座を簡単にあきらめたくはないだろう。しかし、戦後、国務長官出身者で大統領になった人物はいない。ルビオは国務長官への使命を受諾した時点で、大統領になることは諦めておくべきだろう。しかし、閣僚全体のマスクへの不満を代表する形で衝突することで、存在感を増すという狙いもあったのではないかと考えられる。トランプ大統領はうまくマネイジメントをしようとしている。このような状況は彼にとっては日常茶飯事にあったことだろう。

 トランプの手綱さばきがどのようになるか注目されるが、第1次政権よりも第2次政権の方が安定してうまく行っているように見える。

(貼り付けはじめ)

ルビオ、マスクがトランプ政権の閣議で衝突:『ニューヨーク・タイムズ』紙報道(Rubio, Musk clash at Trump Cabinet meeting: NYT

フィリップ・ティモティジァ筆

2025年3月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5183121-rubio-musk-clash-at-trump-cabinet-meeting-nyt/

マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ大統領主催の閣議で、ハイテク業界の大富豪でトランプ大統領の側近であるイーロン・マスクと衝突した。

6つの大企業を率いる世界一の大富豪であるマスクは、前上院議員のルビオを叱りつけ、国務省の職員の多くを解雇しなかったこと、そして彼は「テレビでは良いが(good on TV)」、それ以外ではほとんど何もしていないことを痛烈に批判したと『ニューヨーク・タイムズ』紙は金曜日に、この出来事を知る5人のインタヴューを引用して報じた。

ルビオは個人的にはマスクに対してしばらく前から「激怒(furious)」しており、特に政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)が、100カ国以上で数十億ドルの安全保障、人道、開発援助を管理する機関である米国国際開発庁(U.S. International Development Agency)の閉鎖を視野に入れていることから激怒しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

スコット・ベセント財務長官が出席しなかった木曜日の閣議でルビオは反撃した。

国務長官ルビオはマスクが真実を語っていないと主張した。ニューヨーク・タイムズによると、ルビオ長官は早期退職した国務省職員1500人以上を解雇の対象として数え直す必要があるのか​​と質問したということだ。

ますますヒートアップしたやりとりの後、トランプ大統領はルビオ長官を擁護するために介入した。大統領は、国家トップの外交官が「素晴らしい仕事(great job)」をしていると賞賛し、彼はメディアへの出演が多く、過密なスケジュールをこなしており、なおかつ国務省を監督しなければならないと述べたとニューヨーク・タイムズは報じた。

トランプは金曜日にこの爆発的な報道について質問された。彼は、ルビオとマスクが争ったことを否定し、両者とも良い仕事をしていると賞賛した。

トランプは「衝突はない、私はそこにいた、君はただのトラブルメーカーだ。それに、そんな質問をすべきではない、ワールドカップの話をしているのだから」と述べた。

「イーロンはマルコと仲が良く、2人とも素晴らしい仕事をしている。衝突はない」と、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノを横に置いて、トランプは付け加えた。

その数分後、大統領は再び木曜日の会談について質問されたが、この質問には直接答えなかった。

トランプ大統領は記者団に対して、「二人とも素晴らしいほど仲がいい。マルコは国務長官として信じられないようなことをやってのけた。そしてイーロンはユニークな男で、素晴らしい仕事をしている」と述べた。

国務省のタミー・ブルース報道官はニューヨーク・タイムズに、ルビオ長官は「この閣議は、アメリカを再び偉大な国にするという同じ目標を達成するために団結したダイナミックなティームとのオープンで生産的な話し合いだったと考えている」と語った。

閣議の中でトランプ大統領は、雇用や予算削減を推進するのは閣僚であるべきだが、マスクはアドヴァイザーとしてそこにいるのだと繰り返した。

「閣僚たちにはまず、望む人全員を留めてほしい。必要な人全員をそうして欲しい」とトランプ大統領は木曜日、大統領執務室で記者団に語った。

「私は彼らにできる限りの最高の仕事をするように望む。優秀な人材がいるのは貴重で、とても重要なことだ。私たちは彼らにその優秀な人材を維持してもらいたい。だから私たちは彼らを監視するつもりだ。イーロンとグループも彼らを監視するつもりだ。削減できるなら、それが一番いい。そして削減しないなら、イーロンが削減するだろう」とトランプ大統領は付け加えた。

木曜日に対立した閣僚はルビオだけではない。

シーン・ダフィ運輸長官と航空宇宙大手スペースXを率いるマスクは、連邦航空局(Federal Aviation AdministrationFAA)が航空機を追跡するために使用する機器の条件や、それを改善するために必要なことについて対立したとニューヨーク・タイムズが報じた。また、ハワード・ラトニック商務長官は、このやり取りでマスクを支持したと付け加えた。

ダフィは、DOGEのスタッフたちが航空管制官(air traffic controllers)を解雇しようとしたと述べたが、ニューヨーク・タイムズによると、マスクはこの主張は「嘘」だと述べた。

元下院議員の運輸省長官ダフィは、マスクは間違っていると述べた。億万長者マスクはダフィに対し、運輸省の職員が解雇しようとした管制官の名前を挙げるよう求めたとニューヨーク・タイムズは報じた。

ダフィはまた、空港の管制塔には多様性、公平性、包括性(diversity, equity and inclusionDEI)の取り組みによって採用された労働者が配置されているというマスクの主張にも反撃した。

ニューヨーク・タイムズが金曜日に報じたところによると、この騒動はまたもやトランプが口を挟み、ダフィにマサチューセッツ工科大学から「天才(geniuses)」を連れてきて航空管制官として働かせなければならないと告げたことで終わった。

ニューヨーク・タイムズが金曜日に報じた後、ダフィは声明を発表し、トランプ大統領が「生産的な(productive)」会合を開いてくれたことに感謝し、DOGEがこれまで行ってきた仕事を賞賛した。

DOGEは、航空管制システムの重要なアップグレードに取り組んでいる私たちに助言を与えるだけでなく、各機関が非効率な部分を特定するのを手助けする素晴らしい仕事をしている」とダフィは書いている。

ダフィはまた、木曜日の会合で当局者たちは「特にFAAと航空管制官の」航空旅行の安全について議論したと書き、FAADEI部門は「2日目に」解体されたと付け加えた。

ダフィは、連邦政府の人員削減に対するトランプのアプローチを「革命的(revolutionizing)」であると賞賛し、運輸省はマスクおよびDOGEと「緊密に(closely)」協力して「政府の運営方法に革命を起こす(revolutionize the way government is run)」と述べた。

今週初め、ダグ・コリンズ退役軍人長官は、退役軍人省が約7万2000人、つまり全職員の15%を削減する計画であることを確認した。この動きは、連邦議会および全国の州から反発を招いている。

トランプ大統領は会談でコリンズ長官と、退役軍人省の雇用削減に関しては慎重なアプローチを採用すべきだという点で合意し、トランプ大統領は退役軍人省は「賢い者たち(smart ones)」を残し、「悪い者たち(bad ones)」を排除すべきだと付け加えたとニューヨーク・タイムズは報じている。

大統領は木曜日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で、閣僚会議が「積極的なもの(positive)」であったと述べ、「最高の」「最も生産的な」人材を維持するためのコスト削減イニシアティヴについて「DOGEと協力する」よう各閣僚に伝えた。

トランプは、「私たちは『斧(hatchet)』ではなく、『メス(scalpel)』と言っている。彼ら、イーロン、DOGE、その他の偉大な人々の組み合わせは、歴史的なレヴェルで物事を行うことができるだろう」と書いている。

ホワイトハウスのキャロライン・リーヴィット報道官は本誌に対し、「トランプ大統領が述べたように、これは連邦政府全体のコスト削減策と人員配置について話し合うための、大統領のティームのメンバー間での素晴らしく生産的な会議だった。トランプ大統領が政府をより効率的にするという公約を実現するため、全員がひとつのティームとして働いている」と語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権になってから、アメリカ外交はうまくいっていない。アフガニスタンからの撤退がうまくいかず、大きな混乱を引き起こした。その後は、ウクライナ戦争が起きたが、ウクライナ戦争ではロシアに対する経済制裁を主導して、早期にロシアを経済的に屈服させて、あわよくばロシアの現体制を崩壊させようという「捕らぬ狸の皮算用」が見事に失敗した。ウクライナ戦争が長期化する中で、アメリカはウクライナの勝利の可能性はないと分析しているが、戦争を止めることができないでいる。至極当たり前のことだが、ロシアはアメリカの言うことを聞かない。ウクライナとロシアの間を仲介できるのは、中国だけだ。

 更に言えば、中東地域に関しては、中国が得点を挙げた。中国の仲介で、長年の敵同士であったサウジアラビアとイランが国交正常化を行うと発表した。これで中東地域で核兵器を持つ3カ国である、イラン、イスラエル、サウジアラビアのバランスが崩れた。サウジアラビアとイスラエルはアメリカの同盟国としての関係を持っていた。イスラエルとサウジアラビアは共にイランを敵としていた。その関係のバランスが崩れた。イスラエルは孤立することになる。サウジアラビアが西側陣営から離れつつあるというのは、アメリカにとっての大きな痛手となる。産油量を増やして石油価格を下げて欲しいというアメリカの懇願をサウジアラビアは無視した。

 バイデン政権は「デモクラシー」「人権」といった価値観を押し出した外交を展開している。そして、対中強硬姿勢を取っている。これでは転換期の国際政治を渡っていくことはできない。民主政体フェスなるイヴェントにお金を出して、アントニー・ブリンケン米国務長官が出席しているようでは、現実的な外交はできない。「清濁併せ吞む」ということができなければ、新興の「西洋以外の国々(the Rest)」とやり合うことはできない。

 考えてみれば、現在のアメリカ外交を牛耳っているのが、共和党系のネオコン派と民主党系の人道的介入主義派である以上、どうしようもない。リアリストたちが入らねば現状は変わりようがない。国務省の上級幹部たちが入れ替わるためには、バイデンが選挙で落ちて、大統領でなくなるか、バイデンが考えを変えて、自発的に1期目と2期目で人員を入れ替えるかしかない。バイデンとバイデン政権の最高幹部たちはどんな手段を使ってでも今度の大統領選挙に勝利するだろう。なぜならば、そうしないと自分たちの犯罪が明らかにされて逮捕されてしまうからだ。彼らは一蓮托生の犯罪でつながった人々だ。バイデン政権が2期目の4年間も続くということになれば、世界の不幸もまだまだ続くということだ。その間に、ネオコン派や人道的介入主義派が暴発して、最後のひと勝負、大博打をかけるかもしれない。それが核兵器を使用する戦争であったり、米中露での戦争になったりする可能性もある。現状だって既に第3次世界大戦に入っていると言っても過言ではない。悲観的な妄想で済めばそれはそれで良いことだが、それくらいに悲観的になっておく必要がある。

(貼り付けはじめ)

バイデンの国務省にはリセットが必要だ(Biden’s State Department Needs a Reset

-政権の外交は、時間を無駄にする民主政治体制についての議論を除けば、うまくいっていない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年4月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/04/01/biden-blinken-state-department-democracy-summit/

アメリカの外交機関、特に国務省(Department of State)がリソース不足に陥っていることは、広く認められている真実だ。この真実は、国務省または米国国際開発庁(United States Agency for International DevelopmentUSAID)の予算を、国防総省または各種情報諜報機関に割り当てられた予算と比較すると特に明らかになる。アメリカの壮大な世界的野望を考慮に入れると、それは更に明白になる。大統領の時間、そしてアントニー・ブリンケン国務長官などの閣僚の時間は、全ての中で最も希少なリソースであることも自明のことだ。

これが事実なら、なぜジョー・バイデン政権は第2回民主政体サミット(Summit for Democracy)に時間を割いたのだろうか? バイデン大統領やブリンケン国務長官ら最高幹部たちが、このトークフェスに費やした時間だけではない。このようなイヴェントを開催することで、他の問題に対処するために使えたかもしれない何百時間ものスタッフの時間が浪費されてしまったのだ。

私がこの問題を提起したのは、外交をアメリカ外交政策の中心に据えると宣言して発足したバイデン政権であるが、その最初の2年余りを振り返ると、外交的成果がほとんどないからだ。プラス面で言えば、アメリカの同盟諸国は、ドナルド・トランプ前大統領やマイク・ポンペオ前国務長官よりもバイデンやブリンケンに親しみを感じており、政権の初期の失態(2021年のAUKUS潜水艦取引でフランスを不必要に無視したことなど)を快く許してくれていることが挙げられる。しかし、そうした外交関係者からの印象が改善されたことを除けば、バイデン政権の外交記録は印象に残るほどの成果を挙げていない。

問題の一部は、バイデンとバイデン政権が受け入れている「民主政治体制対独裁政治体制(democracy vs. autocracy)」という枠組みにある。私は誰よりも民主政治体制が好きだし、一部の人よりもずっと好きだ。しかし、この二項対立(dichotomy)は、アメリカの外交に解決よりも多くの問題を引き起こす。アメリカは、世界の民主政体国家よりも数が多く、大国間の対立が激化すればするほどその価値が高まる独裁的な政府と、より効果的に協力することができないのである。「アメリカは偽善者だ」という非難に晒され、ワシントンの民主的な同盟諸国もあまりやる気を起こさないように見える。その一例を示す。ヨーロッパの指導者たちは、独裁的な中国との経済的利益を守るために北京に足を運び続けているが、これは民主政治体制対独裁政治体制という図式とは大きく矛盾する行動である。同様に、ほぼ民主的なインドのナレンドラ・モディ首相は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の国家安全保障補佐官の1人と会談したばかりだ。

一方、バイデン政権の他の課題は未解決のままだ。バイデンは、前任者が愚かにも放置したイランとの核取引に再び参加すると言って就任した。しかし、バイデンは逡巡し、延期した。結果として、イランの立場は強まり、新たな核取引の実現は不可能であることが明らかになった。その結果はどうか? イランはこれまで以上に核兵器開発能力の獲得に近づいている。そして、バイデン政権も世界も必要としない中東における戦争発生のリスクを高めている。

更に悪いことに、バイデンとブリンケンは、中東の複数の同盟諸国から繰り返し屈辱を味わっている。エジプト政府は、アメリカが提起している人権問題を日常的に無視する一方で、アメリカの経済援助を懐に入れ続けている。バイデンは、反体制派ジャーナリストのジャマル・カショギを殺害したサウジのムハンマド・ビン・サルマン王太子を失脚させるという選挙公約を覆した。「世界中が目撃した」サウジアラビアとの手打ちをもってしても、サウジにエネルギー価格の緩和に協力させることも、ウクライナ侵攻後のモスクワに圧力をかけるよう説得することもできなかった。さらに不吉なことに、サウジアラビアは中国の習近平国家主席に近づき続けている。今週、サウジアラムコは中国と2つの新しい石油関連投資案(製油所建設を含む)を発表したし、最近のサウジアラビアとイランの緊張緩和(デタント)を仲介したのはアメリカではなく中国だった。中国やサウジアラビアが自国の利益のために行動することを責めるつもりはないが、これらのことをアメリカ外交の勝利と見なすことは難しい。

バイデンとブリンケンには、現在のアメリカとイスラエルとの関係の危機に直接の責任はない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の「司法改革」案がその最大の原因だが、イスラエルに対する彼らの軟弱な態度が、ネタニヤフ首相に「このままでいい」と思わせた可能性がある。バイデンとブリンケンは、最初からイスラエルに愛想を尽かしていた。アメリカ大使館をエルサレムに移転するというトランプ大統領の決定を覆さず、パレスチナ人のための領事館を再開するという再三の約束も果たさず、ヨルダン川西岸を植民地化しようとするイスラエルの継続的な取り組みに「懸念」を表明するいつもの軽い表現しかしなかった。バイデンとブリンケンは、イスラエルがますます懸念を高める行動からアメリカを遠ざけようとしている。そして、その代わりにアメリカのイスラエルに対する「鉄壁の(ironclad)」関与(コミットメント)に関するいつもの決まり文句を繰り返し、二国共存解決という神話上の生き物(mythical creature)を信じ続けていることを表明し続けた。ネタニヤフ首相が、アメリカからの支持を危うくすることなく、イスラエルの民主政治体制に対する論争的な攻撃を進めることができると考えたとしても不思議ではない。今週初め、バイデンがようやく穏やかな批判を口にしたとき、ネタニヤフ首相はすぐに、イスラエルは自分自身で決断を下すと答えた。これこそ、無条件の支持で得られる外交的影響力ということだ。

一方、アメリカは世界の平和の担い手(global peacemaker)としての役割を放棄しつつあるようだ。かつて軍備管理(arms control)を最優先し、エジプト・イスラエル和平条約、ベルファスト協定(Good Friday Agreement)、バルカン戦争の終結を仲介したアメリカは、現在のところ、紛争を終わらせることに関心がなく、たとえ最終的に死や破壊が増え、エスカレートするリスクが続くとしても、自分たちに有利な側を勝たせることに関心がある。クインシー・インスティテュートのトリタ・パルシが先週指摘したように、「アメリカは誠実な平和主義の美徳を諦めてしまったようだ。今日、我が国の指導者たちは、永続的な平和を確立するためというよりも、紛争において『わが方』の立場を有利にするために調停を行っている」と述べている。

アメリカ外交は、中国への対応にも失敗している。2021年にブリンケンが表明した政権の対中政策は、アメリカが「競争的であるべき時は競争的に、協力的であるべき時は協力的に、敵対的でなければならない時は敵対的になる(will be competitive when it should be, collaborative when it can be, and adversarial when it must be)」というものだ。しかし、1番目と3番目の項目が中心となって、共通点を見つけ、ますます激しくなる安全保障上のライヴァル関係を管理する努力は、ほとんど行われていないのが現状だ。もちろん、その責任の一端は北京にあるのだが、この重要な米中二国間関係をどのように管理し、改善していくかについて、創造的な考えを示す兆候はほとんど見られない。

しかし、悪いニュースばかりではない。日本やオーストラリアなど、既存のアジアのパートナーとの関係強化に向けたアメリカの努力は、中国の思慮の浅い主張にも助けられ、うまくいっている。しかし、先端チップの輸出規制やアメリカのデジタル産業への助成を通じて中国を弱体化させようとするバイデン政権の幅広い取り組みは、これらの同じパートナーに大きなコストを課すとともに、近隣での将来の衝突に対するアジアの懸念を高めている。また、バイデン・ティームは、インド太平洋地域で経済的影響力を強める中国への効果的な対抗策を打ち出すことができなかった。トランプ大統領が2017年にTPP(環太平洋経済連携協定)を破棄するという思慮の浅い決断を下したのはバイデンの責任ではないが、その代わりに昨年ようやく打ち出した「インド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework)」は、アジアの大部分から小粒だと広く正しく思われている。

バイデン政権の初期の外交的成功の1つは、ジャネット・イエレン財務長官が、多国籍企業に対するグローバルな最低税額を設定するための多国間協定を交渉したことだった。これにより、多国籍企業が低税率のオフショア・ロケーションで利益を申告して税金を回避するのを防いだ。イエレン長官の功績は称賛に値するが、この法案は現在のところ、米連邦議会で瀕死の状態にあり、施行されない可能性がある。そして、バイデン政権のより成功した国内のイニシアティヴ、特にインフレ削減法は、これらの措置がアメリカの国内産業を、自国ではなく同盟諸国の費用で促進していると見なす、アメリカの同盟諸国との間で深刻な摩擦を引き起こした。

「ちょっと待て」という読者の皆さんからの声が聞こえてきそうだ。モスクワの行動を非難する偏った国連総会での投票は言うに及ばず、ロシアの違法なウクライナ侵攻に対する欧米諸国の対応をまとめる上で、アメリカ外交が果たした重要な役割はどうだろうか? それは、アメリカが復活し、外交官たちが完璧に仕事をこなしていることの証明ではないのか?

その答えは「イエスであり、ノーだ」となる。一方では、バイデンと彼のティームは、侵略に対する欧米諸国の協調的な対応を主導してきた。これは必ずしも容易なことではない。しかし、戦争が終わるまではこうした努力を終えることはできないし、この努力の最終結果は不確実だ。ロシアがドンバスの一部または全部を支配し、ウクライナの人口が減少し、大きな被害を受けたまま戦争が長引いたとしても、外交政策上の大きな成果には見えないというのが残酷な現実である。そうならないことを願うのは当然だが、その可能性を否定することはできない。

悲しいことに、バイデン政権は、少なくとも部分的には自作自演(own making)の問題に見事に対処している。ウクライナ戦争の根源はバイデンの大統領就任より前にあったのだが、バイデンもブリンケンも戦争がすぐに起こるとは考えなかった。彼らは、ロシアがウクライナの動向を現実的な脅威と見なしていることを認識せず、戦争を回避するためにできる限りのことをした訳でもない。アメリカ政府関係者(過去と現在の両方)は、アメリカや欧米諸国の政策がこの悲劇を引き起こした、またそのための役割も果たしたということを徹底的に否定してきた。しかし、イギリスの歴史家ジェフリー・ロバーツが『ジャーナル・オブ・ミリタリー・アンド・ストラティジック・スタディーズ』誌で最近述べたように、証拠を冷静に見てみると、そうではないことが分かる。以前にも述べたに、「プーティンは戦争に直接の責任があるが、西側諸国は非難されるべきでないということもない」のだ。

アメリカとヨーロッパの同盟諸国が、ロシアの安全保障上の懸念にもっと真剣に、創造的に対処しようとし、「ウクライナはいつかNATOに加盟する」という頑なな主張を止めていれば、戦争を回避できたかどうか、確実にそうだったとは言えない。私は、ロシアが予防戦争(preemptive war)を始めたこと(国際法上違法な行為)やそのやり方について、非難を免れると主張するつもりはない。しかし、この戦争が世界に及ぼす影響、とりわけウクライナに及ぼす影響を考えると、アメリカがこの戦争を阻止するためにあらゆる手段を講じなかったことは、これまで以上に批判されてしかるべきだろう。

しかし、アメリカの外交官たちの不甲斐なさは、彼らの責任ばかりではないだろう。アメリカの世界的な野望は非常に大きいため、多くの問題は十分な注意を払うことができず、ましてやトップに立つ人々の時間、エネルギー、関与を引き出すことはできないだろう。そして、ワシントンの目標が大きく広がれば広がるほど、それらの間のトレードオフを調整し、明確で一貫した優先順位を維持することは難しくなる。これは、私たちが外交政策の抑制を主張し続ける理由の一つである。アメリカの外交政策は、重要なことをより少なく、よりよく行うことで、より成功するのである。

それでは民主政治体制サミットの話に戻ろう。たとえ出席基準に一貫性がなく、問題のある民主政体諸国(フランス、イスラエル、ブラジル、インド、アメリカなど)が民主政治体制の美徳を讃えるために集まるという特異な構図を見逃したとしても、この努力から何が得られるかは明らかではない。第1回目のサミットでは、20年近く続いている民主政体の下降傾向を覆すことはできなかった。それでは、第2回目のサミットで何を達成できるのだろうか? 1944年のブレトンウッズ会議、1991年のマドリッド会議、2015年のパリ気候会議がそうであったように、有力者が一堂に会することは、何か即効性があり、具体的に実行できることがあれば意味がある。同様に、バラク・オバマ政権が開催した4回の核サミットでは、政権が当初掲げた目標の全てに到達したわけではないにせよ、世界中の核物質の管理を改善し、既存の核物質の備蓄を削減するための様々な合意など、具体的な成果が得られたと言える。

私の知る限り、民主政体サミットはそのようなささやかな成果にすら遠く及ばないだろう。民主政治体制の未来は、話し合いの場を増やすことで救われるものではない。世界の民主政体諸国が、国内外の市民のためにより良い結果を出せるかどうかにかかっている。成功には多くの努力が必要であり、最も裕福な民主政体国家であっても、時間や資源が無限にあるわけではないのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 日本の外交官の最高の出世は外務事務次官になって駐米大使になることだと聞いたことがある。世界各国の大使(ambassador)になるだけでも大変なことで、また、その手当なども大変な額で、数カ国の大使を務めれば都内の一等地に豪邸が建つということだそうだ。
 大使というのは海外で自分が属する国を代表する存在であり、特命全権大使(ambassador extraordinary and plenipotentiary)と正式には呼ばれるが、この大使の判断で戦争も始めることができる。西側の先進諸国ではほとんどの場合、職業外交官が昇進して大使に週にすることになるが、アメリカでは政治任用(political appointment)で大使になることが多い。

 駐日本アメリカ大使について見てみれば、職業外交官出身ではなく、古くは副大統領、連邦下院議長などを経験した大物政治家が就任しているし、エドィン・O・ライシャワーのような学者も登用された。現在のラーム・エマニュエル大使はバラク・オバマの側近で、2008年の米大統領選挙でオバマ陣営を取りまとめ、オバマ政権1期目前半では大統領首席補佐官を務め、それからオバマの本拠地シカゴの市長を務めた。

 下の記事では、ジョー・バイデン政権における政治任用の大使たちがどれくらいの献金を民主党とバイデンにしてきたかということをテーマにして記事にしている。これはバイデン政権だけではないのだが、歴代政権では、大口の献金者たちがアメリカ大使に登用されてきた。その割合はドナルド・トランプ政権では4割以上、オバマ政権で3割以上だったということだ。バイデン政権も同様に3割が政治任用だ。

 猟官制度(spoils system)とは公職の登用を政治的な理由でおこなうことだ。選挙で政権が変わると公務員が交代するということを意味する。アメリカでは民主、共和両党で政権交代(大統領の交代)が頻繁に起きるが、その度に公務員(幹部クラス)が交代になる。それはアメリカ大使にも及ぶ。その際に、選ばれる人物は各党に多大な「貢献」をした人物ということになる。その貢献とは具体的には政治献金ということになる。「spoils(スポイルズ)」とは英語で「獲物」という意味である。献金の「獲物」が大使職ということになる。

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それで、あなたは大使職を買いたいのですね(So You Want to Buy an Ambassadorship

-アメリカ合衆国政府は西洋諸国の政府で唯一、最高の外交官職位で巨額の献金者たちを報いる政府である。

ロビー・グラマー筆

2023年1月24日

『フォーリン・ポリシー』誌.

https://foreignpolicy.com/2023/01/24/campaign-donor-ambassadors-biden-diplomacy/

それで、あなたはアメリカの大使職を買いたいのですね?大きく言って、そのためには2つの方法がある。

1つ目は、政策や外交の分野でキャリアを積み、外交に関わる経験をたくさん積むことだ。2つ目は、お金を持つことだ。多くの資金を保有することだ。

大統領選挙に出馬して戦うためには実に巨額の費用がかかる。両党の大統領選挙候補は、選挙運動を支えるために大規模な資金調達マシーンを必要とするが、その必要性はより高まっている。共和党政権でも民主党政権でも、大統領選挙候補に直接寄付をしたり、当選した大統領候補のために何十万ドル、何百万ドルもの資金を集める手助けをしたりする、「取りまとめ役(bundlers)」と呼ばれる懐の温かい選挙資金提供者たちを利用し、その見返りとして大使のポストを提供するというパターンが最近になってできている。

歴代政権は、これらの巨額の寄付をして大使職を手にした人々について、外交政策の分野以外の、慈善事業、金融、ビジネス、政治、その他のキャリアを通じて必要なスキルや経験を持っていると主張してきた。

元外交官を含むこの慣行に対する批判は、「薄っぺらな」汚職の一形態であると考えられている。

ジョー・バイデン米大統領は、ドナルド・トランプ前大統領ほどではないにせよ、巨額の政治資金寄付者たちを大使のポストに起用する傾向を続けている。2020年の選挙期間中において、大統領選挙民主党予備選挙に出馬した、ある候補者はこの慣習を完全に禁止するよう求めた。

トランプ時代の大使の約44%は政治任用者(political appointees)であり、その多くは懐の温かい選挙資金提供者たちであるのに対し、バラク・オバマ前米大統領時代は約31%、ジョージ・W・ブッシュ前米大統領時代は32%だった。バイデンは、政治任用大使の数を全体の30%程度に抑えると述べている。この慣行は、米国務省内でしばしば摩擦や怒りの種となっている。何十年も外交政策に携わってきたキャリアある外交官が、ハンドバッグの企業家や昼のメロドラマのプロデューサー、自動車ディーラーのオーナー、あるいは超富裕層の選挙資金提供者とたまたま結婚したコンサルタントなどに道を譲られ、大使としての重要な任務に就くことがある。

政治任用の献金者大使とキャリア外交官大使のどちらが優秀かについては、最も不満のあるキャリア外交官でさえもそのように述べているが、明確な答えはない。政治献金者大使の中には、ホワイトハウスとの密接な関係や、国務省のキャリア外交官大使にはほとんどない政治的コネクションを持ち、結果的に非常に有能で、外国政府から求められている人さえいる。それに比べ、キャリア外交官の中には、何十年も経験を積んで、最も人気のある上級職に就いたにもかかわらず、大使のポストで苦労している人もいる。

しかし、巨大な資金提供者に大使のポストを与えるというのは、他の西側諸国の政府にはない慣習であり、中国の台頭によりアメリカが紛れもないグローバルリーダーとしての役割から脱落するにつれ、より厳しく問われている。寄付者たちは通常、西ヨーロッパ、南アメリカ、カリブ海諸国の国々で知名度の高い重要な大使の任に就くが、キャリア外交官はサハラ以南のアフリカ、中東、中央アジアでそれほど重要でない任に就くことが多い。

ワシントンの最も近い同盟国は、この話の対照的な部分を提供している。最も重要な外交ポストである駐ワシントン大使あるカレン・ピアスは、40年以上にわたってイギリスの外交官を務め、過去には国連大使やアフガニスタンとパキスタンの特使を務めた。アメリカの駐英大使ポストには、投資銀行家、石油会社幹部、元提督、自動車ディーラーのオーナー、大統領の側近、億万長者の相続人などが就任してきた。アメリカはこれまで、外交官として本格的に駐英大使を務めたのは1人だけである。それは、レイモンド・サイツで、1991年から1994年まで在英大使を務めた。

『フォーリン・ポリシー』誌は、バイデンへの主要な寄付者が大使に任命された5カ国を調べるために、非営利の透明性専門団体「OpenSecrets.org」を通じた情報公開と選挙寄付の書類を精査し、彼らが寄付した既知の金額を合計したものである。

簡略化のため、2017年から2020年の選挙期間中において、各大使が民主党またはバイデンの選挙運動に直接寄付した確認金額のみを取り上げた。可能な限り、また情報が入手可能な場合に、本誌は過去20年間の民主党や選挙運動に寄付された、政治活動委員会(PAC)を通じて送られた、または取りまとめられた資金に関する情報を含め、さらなる内容を追加した。

注意点:アメリカの政治制度における選挙寄付は複雑なため、個人がいくら寄付したかを評価することが難しいケースがある。寄付者は、個人として候補者の選挙運動に直接寄付したり(法律で厳しく制限されている)、大統領の選挙運動を支援するPAC、無制限の政治支出を行えるいわゆるスーパーPAC、地方や国レベルの大統領の政党、あるいは大統領の就任初日に行われる豪華なイベントのための大統領就任資金にさえ寄付したりする。また、これらの寄付は大使の配偶者の名前で行われたり、個人として関連団体を通じて行われたりすることもある。

それでもバイデン政権は、他の政権と同様、大使のポストを「売り込む」のではなく、海外の適材適所をマッチングさせると主張している。バイデンは選挙期間中に「私は可能な限り最高の人材を任命する。誰も、実際には、彼らが貢献したものに基づいて、任命することになるだろう」と約束した。

ホワイトハウスの報道官は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、バイデンは「世界中で私たちの外交政策課題を遂行する大使を選ぶことを非常に真剣に受け止めている」と述べ、以下の人物を含め、彼の選んだ全ての大使たちは「彼(バイデン)が長年共に働き、信頼してきた経験豊かな人物」であると特徴づけた。

ホワイトハウス報道官はまた、バイデンが大使に任命したキャリア外交官以外の大使の例として、トルコ大使には元米連邦上院議員のジェフ・フレーク、NATO大使には大西洋横断安全保障の専門家であるジュリアン・スミスを任命したことを挙げた。

それでも、バイデンが大使に選んだ他の20人近くは、「偶然にも」民主党に多額の資金を集めたり寄付をしたりした人々である。バイデン時代の大使のポストに値札をつけるとしたら、以下のようになる。

●スイス:41万9200ドル

バイデン政権のスイス大使であるスコット・ミラーとその夫は、2020年のバイデン当選を支援するファンドに36万5000ドルを寄付し、ミラー自身も2017年から2020年にかけて、民主党とバイデンの選挙運動に合計5万4200ドルを直接寄付していることが、各種報道と「OpenSecrets.org」の選挙寄付データから判明した。しかし、ミラーと夫の合計では、2010年以降、民主党の候補者や活動に対して約360万ドルを寄付している。ミラーは、デンヴァーに本拠を置くUBSウェルス・マネジメント会社の元副社長である。また、夫のティム・ギルは、LGBTQの権利に関する主要な活動家であり、慈善家でもある。2016年には、当時の民主党大統領候補ヒラリー・クリントンの選挙を支援するために、約110万ドルを寄付している。ミラーは2021年12月にバイデン政権のスイス大使に就任することが決定した。ホワイトハウスの報道官は、大使に指名された理由として、ミラーの「LGBTQ擁護活動や慈善活動のキャリア」を挙げている。

●イギリス:65万6980ドル

バイデンは、長年の民主党献金者で元駐フランス米大使のジェーン・ハートリーを駐イギリス米大使に起用した。「OpenSecrets.org」の選挙寄付データによると、ハートリーは2017年から2020年の選挙期間中において、民主党に64万5780ドルを寄付し、同時期にバイデンに特に1万1200ドル寄付した。しかし、この数字は、ハートリーが全体としてどれだけの資金を民主党に送金したり、取りまとめたりしたかを完全に網羅している訳ではない。バイデンが副大統領を務めていた2007年から2012年の間に、彼女はオバマの選挙運動のために約220万ドルを集めたと報じられた。ハートリーはバイデン政権では数少ない上級外交官の経験を持つ政治任用大使であり、ホワイトハウス報道官は彼女をロンドンでのポストに指名したバイデンの決定を擁護するためにこの点を挙げた。キャリアを通じて民主党、企業放送会社、コンサルティング会社で働いたハートリーは、2014年から2017年までオバマ大統領の駐フランス・駐モナコ大使を務めた。

●カナダ:51万4378ドル

コムキャストの元トップ幹部でロビイストのデイヴィッド・コーエンは、フィラデルフィアの政治と慈善活動で長年活躍していた。「OpenSecrets.org」のデータによると、2017年から2020年の選挙期間中で、コーエンは民主党とバイデンに51万4378ドルを寄付した。

ただし、この数字は上限ではなく下限であり、コーエンはバイデンの2020年の選挙運動のために、大統領選挙のために少なくとも10万ドルの資金調達に協力した個人のリスト、トップ「取りまとめ役」800人の1人としてリストアップされているが、彼がバイデンのためにどれだけの追加資金を取りまとめたかは明らかではない。

●ケニア:91万7599ドル

メグ・ホイットマンは、かつて『フォーブス誌』の「世界で最もパワフルな女性100人」に選ばれたこともある元企業トップで、現在、アフリカで最も経済力があり外交的に重要な国の1つとされるケニアにおいてバイデン政権下で大使を務めている。「eBay」とヒューレット・パッカードの元CEOであるホイットマンは、かつて共和党の献金者であり、2010年にカリフォルニア州知事選に共和党から立候補したが、トランプと大統領選挙の共和党候補者決定を否定し民主党への支援に切り替えた。2020年のホイットマンは、共同募金委員会である「バイデン勝利基金」に50万ドルを寄付し、それとは別に2017年から2020年の選挙期間中に民主党とバイデンに直接41万7599ドルを寄付した。

ホワイトハウスの報道官は、カナダのコーエン、ケニアのホイットマンの両氏について、「ビジネスにおける優れたキャリアと、海外でのアメリカの経済利益を促進する能力を持ち、それが大使職への抜擢に大きく影響した」と述べている。

●アルゼンチン:14万8630ドル

バイデンは、ダラスの著名な弁護士であるマーク・スタンレーをブエノスアイレスの大使に選んだ。『ダラス・モーニング・ニューズ』紙によると、スタンレーとその妻ウェンディは過去20年間に少なくとも150万ドルを民主党に寄付し、募金活動や選挙寄付の肝いりを通じてバイデンや他の民主党候補の主要な肝いりとして活動してきた。スタンレーはまた、バイデンの2020年大統領選挙の「バイデンのために働く法律家たち(Lawyers for Biden)」という部門を率いて、弁護士の組織化を支援し、大統領の選挙運動のために法的サーヴィスを担当した。2017年から2020年の選挙運動の期間中、スタンレーは民主党に14万8630ドルを直接寄付している。ホワイトハウスの報道官は、スタンレーがバイデンのアルゼンチン大使に選ばれたことについて、「40年にわたる一流の弁護士およびユダヤ人擁護者としてのキャリアを評価した」と説明している。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 アメリカでは喜ばしいことに、国務省とUSAIDの予算削減をトランプ大統領は提案していますが、予算を決める連邦議会では削減を止めさせようという動きもあります。この動きは民主、共和両党にあります。また、元米軍の司令官クラスの人々も予算削減に反対し、懸念を表明しました。

 

 国務省、USAID、米軍は「世界中にアメリカと同盟諸国に対する様々な脅威が存在する」ということを理由にして多額の予算を分捕ってきました。そして、世界各国の政治に介入し、それらの国々を不幸にしてきました。日本もその中に入っています。日本の場合は、それに加えてお金の貢がされ係をやらされています。米国債の購入と為替市場への介入を通じて日本のお金をアメリカに貢いでいます。

 

 国務省の予算に関しては各国にある大使館や政府機関の出先の保護のために4割以上が割かれ、外交に使われているのが55%だということです。大使館の警備はアメリカ海兵隊が行っていますが、警備に対する予算が増えるということは海兵隊の仕事と予算が増えるということです。ですから、国務省の予算が減らされ、対外活動が減らされると海兵隊の食い扶持が減るということになります。

 

 米軍の大将クラスだった人々が連名で国務省とUSAIDの予算削減に反対しているのは、こうしたこともあってのことでしょう。また、アメリカが対外活動を行えば衝突や摩擦が起き、それを解決するために米軍が出るということになります。従ってアメリカの対外活動が減れば、米軍が今のような巨大な組織である必要もなくなる訳ですが、そうなれば、米軍の食い扶持や予算は減らされるということになります。国務省と米軍は一蓮托生な訳です。

 

 ですが、アメリカは既に力を失いつつあります。いつまでも膨大な数の米軍を外国に置いておくことはできませんし、米軍にかかる莫大な予算を支えられなくなっています。こうして帝国は衰退していくのでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

国務省とUSAIDは大幅な予算削減に直面(State Department, USAID Face Drastic Budget Cut

-民主、共和両党が政府予算における妥協が成立し、政府機関の閉鎖は終わった。しかし、アメリカの外交と国際開発プログラムの予算は削減されることになる。

 

ダン・デルース、ロビー・グラマー筆

2018年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/12/state-department-usaid-face-drastic-budget-cut-congress-military-generals-admirals-warn-against-slashing-diplomacy-budget/

 

国務省と米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)は先週民主、共和両党の間で成立した予算をめぐる合意を受けて、大幅な予算カットに直面している。先週の合意によって政府機関の閉鎖は終了した。連邦議会議員たちは税収不足を埋める更なる財源を探して苦闘している最中だ。

 

約88億ドルの税収不足を補うために、アメリカの外交団と国際開発プログラムに対して、1990年代以降で最大の予算削減が課されることになるだろう。与作削減によって国務省の士気の低下が起こり、外交官たちは「ドナルド・トランプ大統領は外交に対して熱心ではないのだ」と認識するようになっている。

 

民主、共和両党の連邦議会議員たちは国務省に予算をつけようと必死になっている。一方、トランプ政権の幹部たちは国務省の予算に関する議論には参加していない、と連邦議会関係者は語っている。

 

国務省と米国国際開発庁(USAID)の予算不足は2018年度、更には2019年度の各事業に影響を及ぼす。連邦議会の指導者たちとホワイトハウスとの間で先週に成立した予算に関する合意によって政府機関の閉鎖の長期化を避けることが出来た。合意は2018年度と2019年度の支出レヴェルを設定することで締結された。しかし、予算に関する合意によって米軍予算は増加したが、海外緊急活動作戦(Overseas Contingency Operations)における非防衛関連予算は削減された。海外緊急対応作戦予算の3分の1はこれまで国務省とUSAIDの予算として供給されてきた。

 

その結果、2018年の政府予算における国務省予算を増額させる方法を探すのに数週間残っていないという状態になった。2019年の予算に関しても同様のことが起きるであろう。

 

一方、トランプ政権は月曜日、2019年の連邦政府予算要求を提出することになる。2019年の予算に関して、ホワイトハウスは国務省の予算を削減するのかどうかは明確になっていない。

 

2018年の外交関係予算が削減される可能性が高いという観測を受けて、151名の退役した将官クラスの高級軍人たちが共同して懸念を表明した。この中には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、特殊部隊の司令官クラスだった人物たちが多数含まれている。彼らは、「アメリカの国家安全保障に対する世界規模での脅威が高まっている中で、このような予算削減を行うとアメリカの世界に対する影響力が落ちてしまう」という警告を発した。

 

元将官たちが連邦議会の指導者たちに宛てた書簡の中には、「私たちは現在のような不安定な時代において世界をリードする能力を減退させることはすべきではない」という文言もある。この書簡は「USグローバル・リーダー・シップ・コアリション」という組織によって出された。この組織は、軍部、ビジネス、宗教各界に、国務省とUSAIDを支持することを求めるために活動している。

 

高級将官であった人々は、重要な外交職の多くが空席になっていることに懸念を表明し、また、「アメリカの安全を維持するために国防と共に外交と開発援助を強化することが重要だという確信」を持っていることを表明した。

 

イスラム国が戦場で敗北を喫している状況下で、イラクとシリアにおけるアメリカの外交と両国の再建支援は特に重要度を増している、と元将官クラスの人々は主張している。彼らは次のように書いている。「ISISに対して軍事的に優勢になっているが、疑問なのは戦場で勝ち得た勝利を守る準備が出来ているのか、悪者たちが空白に這いこまなうように防げるかどうかということだ」。

 

国務省の予算を2017年並みに戻すために、連邦議員たちはこれから難しい決断をしなければならないだろう。彼らは国内の他の優先問題と折り合いをつけねばならない。連邦議会両院の予算委員会は、2018年の予算において630億ドルの一任された予算を分割することになるだろう。しかし、約210億ドルは医療研究、対麻薬研究、退役兵士やその他に分野に投じられることになる。

 

連邦上院外交委員会の民主党側幹部委員であるボブ・メネンデス連邦議員(ニュージャージー州選出)は、金曜日書簡を発表した。書簡の中で、メレンデス議員は同僚議員たちに向けて、国務省とUSAIDの予算を現在のレヴェルに回復させるように予算を見直すことを求めた。

 

メネンデス議員は次のように書いている。「アメリカは世界各地で複雑化した多くの問題に直面している。この世界はアメリカの確固とした指導力を必要としている。国際問題に関連する予算はこうした必要に応えるものとならねばならない」。

 

本誌が入手した書簡は、リンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とパトリック・リーリー連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)宛であった。2人は、国務省の予算を監視する連邦上院歳出小委員会の委員長と民主党側幹部委員だ。

 

予算に関する議論をフォローしているあるロビイストは次のように語っている。「安全保障支援から伝染病や飢饉対策までアメリカは関わっている。これらに関する予算が大幅に削減されるとアメリカの外交と国際援助プログラムに大きな影響が出るだろう」。

 

国務省の報道官は本誌の取材に対して次のように述べた。「国務省は2018年度の超党派の予算案について特定のコメントをする立場にない。私たちは、決定者たちが政府に対する予算の配分をするであろうと認識している」。

 

国務省の予算の中で実際に外交に使われている金額について正確に伝えられていない。世界各地の米国大使館の警護にかかる経費は増大し続けている。この経費は国務省全体の予算の中で割合を大きくしている。司法省、国土安全保障省、その他の連邦政府機関が世界各国にある米国大使館で業務を行っているのがその理由となっている。そして、国務省はこれらの帰還の保護のために予算を使わねばならなくなっている。

 

アメリカ外交協議会のデータによると、2008年、国務省は「外交と領事プログラム」関連予算の17パーセントを警備に使っていた。2018年の予算請求の中で、警備関連予算は「外交と領事プログラム」予算の45パーセントを占めるまでになっている。「外交と領事プログラム」の予算の55パーセントだけが実際の外交に使われることになる。

 

USグローバル・リーダー・シップ・コアリションの会長兼最高経営責任者リズ・シュレイヤーは「アメリカと同盟諸国は様々な脅威に直面している。アメリカ政府は世界から撤退することはできない」と語っている。

 

1年前、トランプ政権は国際問題に関連する予算の30パーセント減額を提案し、元高級外交官や軍人たちから激しく批判された。民主、共和両党の連邦議員たちはこの提案を退けた。

 

シュレイヤーは、連邦議会が今回の大きな予算カットに対して同様の反応をしてほしいと望んでいる。シュレイヤーは本誌の取材に対して、「私は、今度も前回と同様の大きなそして明確な反対の声が上がり、国務省とUSAIDに対して超党派の支持があるものと考えている」と述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ政権が国家予算を発表し、国務省とUSAIDの予算を大幅に削減し(30%の削減)、国防費を540億ドル増加させました。これについては、批判の声が多く挙がっています。しかし、私はこれを当然のことで、大変喜ばしいことだと考えています。

 

 2011年のアラブの春から始まった中東の不安定な状況は、ムアンマール・カダフィ大佐の殺害、ベンガジ事件へと発展し、シリア内戦、シリアとイラク国内でのISの勃興というところまで悪化しています。また、ウクライナを巡る西欧とロシアの対立ですが、これはウクライナ国内の歴史的に複雑な問題とも相まって、こじれてしまいました。アメリカはロシアを非難し、制裁を課していますが、トランプ大統領は選挙戦期間中から、ロシアのウラジミール・プーティン大統領を賞賛し、ロシアとの関係改善を主張しています。また、中国に対しては厳しい言葉遣いをしていますが、貿易戦争をやる気はなく、また、北朝鮮は中国の問題だとしています。

 

現在の世界の不安定要因が発生した原因は、端的に言って、アメリカの対外政策の失敗が理由です。特に、共和党のネオコン、民主党の人道的介入派がアメリカ外交を牛耳ってきた結果、現在の状況にまでなってしまいました。こうしたことは拙著『アメリカ政治の秘密』で明らかにしましたので、是非お読みください。
 

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