古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの大学で歴史関連の授業が減らされたり、非常勤の教員が教えたりということが増えている。これは日本でも同様だ。私の出身の大学学部で、ゼミに所属した先生の専門は経済史だった。その先生が定年で大学を去ることになったが、その先生が担当していた経済史・社会史・社会経済史の後任の先生は補充されず、授業もなくなってしまった。歴史学や文学のような、経済活動に直接関係のない(と思われる)授業が減らされている。学生の履修の数も減っているのだろう。「難しいだけで就職の役に立たないのなら、コスパ、タイパが良い授業を受けて、そちらで良い成績を取ればよい」と考えるのだろうと思う。そうではない学生さんも多くいると思うが、現在の世相はそうだろう。昔から、「文学部なんかに行っても就職はないぞ」とも言われてきたから、人文学系は軽んじられる傾向にあった。

 今回、ご紹介する記事は、アメリカでの歴史学の授業や履修する学生数の減少は、アメリカの国家安全保障に悪影響を与えるという内容だ。これは、日本でも言えることだと私は考える。経済学にしても、政治学にしても、歴史は非常に重要な要素である。歴史を学んでおくこと、過去を知っておくことは、どのような道に進むにしても、そして、日常生活においても非常に重要だ。それは、過去の失敗から学ぶことは、将来の失敗を防ぐ可能性を高めるからだ。これは個人的感想だが、過去の成功にばかり目を向けて学んでいるようでは、重要なところで大きな過ちを犯してしまうものだ。面白くなくても、嫌でも、過去の失敗から学ぶことで、大きな成功は収められなくても、大きな失敗はしないと考える。

 そして、主権者であり、有権者である国民にとって、歴史を知ることは、国家の進むべき方向性を決める際に重要になる。国家が戦争を行う際に、国民はプロパガンダやマスコミの偏向報道によって影響を受け、戦争を支持するものだ。歴史を知り、慎重さを持つ国民になれば、大きな誤りを犯す可能性は低くなる(残念ながらゼロではない)。そのためには、歴史教育が重要であるが、その歴史教育の内容も重要だ。正確な歴史教育が行われてこそなのであり、現在、歴史修正主義者たちが行おうとしている歴史の都合の良い歪曲は、国家を誤った方向に導くものだ。

 日本でもそうだが、歴史教育は軽視されがちだ。そして、受験において、暗記科目として、細かい年号と人名地名の記憶合戦の場となっている。そうではなく、自分たちが生きる上野で指針となるべき、歴史教育が行われることが需要だ。そして、それが国家と社会体制を維持することにつながる。

(貼り付けはじめ)

歴史危機は国家安全保障問題である(The History Crisis Is a National Security Problem

-各大学が学者たちの雇用を削減すると、重要な学びが失われる。

ブレット・デヴロー筆

2024年3月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/10/the-history-crisis-is-a-national-security-problem/?tpcc=recirc_trending062921

アメリカは急速に歴史家を追放しており、国家安全保障への影響は悲惨なものとなっている。アメリカは、地域の複雑な歴史に根ざした課題や紛争に取り組みながらも、歴史学部の予算を打ち切り、歴史教育の優先順位を下げるという10年半にわたる歩みを続けている。このことは、世界観がますます、そして危険なほど浅薄な、新しい世代の政策立案者やアドヴァイザーたちを生み出す恐れがある。

歴史は未曽有の危機に陥っている。予算削減と退職する歴史家の後任の拒否により、大学の歴史学部は現在急速に縮小している。中西部の各大学の歴史学部に関する2022年の調査では、学部の常勤教員の数が2010年以来3分の1近く減少していることが判明した。各大学の歴史家の雇用が依然として退職者の補充に必要な水準を大幅に下回る水準にとどまっているため、常勤教員数の減少は加速度的に進んでいる。

その結果、訓練を受けた歴史学者がこの分野で職を見つけるのに苦労している。歴史学の博士号を持つ人々が博士壕取得後4年以内に終身在職権を持つ教授職(tenure track)に就職する割合は劇的に低下し、2013年の博士号取得コホートでは54%であったが、2017年のコホートではわずか27%であった。2022年には、2019年と2020年のコホートのうち、常勤教員として採用されたのはわずか10%という惨憺たる状況である。2010年以降、1970年代から歴史学分野の就職に貢献してきた歴史学の博士号取得者数は31.9%も減少した。

これは学問だけの問題のように聞こえるかもしれないが、学科が衰えれば、一般教育の場で教えることのできる生徒の数や、中等教育の歴史教師の数も減少し、歴史研究のペースも鈍化する。ウィーリング・ジェズイット大学のように、歴史学科を全面的に削減した学校もあれば、タルサ大学の歴史学大学院プログラムが消滅したように、専攻や大学院プログラムを削減した学校もある。また、ウィスコンシン大学スティーブンスポイント校やエヴァンズビル大学などは、歴史学専攻を削減すると脅迫したが、最終的に撤回を余儀なくされた。

こうした予算の圧力に直面すると同時に、歴史部門もまた、クリストファー・ルーフォのような右派の人物たちが、しばしば州議会議員や知事の支援を受けて、政治的動機に基づいて人文学(humanities)への攻撃を開始するので、そうした圧力にも直面している。とは言え、人文学全般と特に歴史学部の削減は超党派の病気であり、レッドステイトでは大騒ぎでプログラムを中止する一方、ブルーステイトでは静かに中止している。

歴史学分野は2つの方向から打撃を受けている。大学が一般教育を重視せず、より専門的な学位取得を目指すという長年の傾向によって、歴史学位への学生の登録は減少していった。そして、2008年の金融危機の後、経済的な見通しが立たないとして人文学系の学位から離れようとしたため、大学生に占める歴史学専攻の割合が激減した。実際にはそのようなことはないのだが(歴史学専攻の学生は幅広い経済分野でうまくやっている)、世間一般の認識は依然として学生の行動を動かしていた。その結果、大学の管理職は歴史学部の削減を正当化し、退職する教授の後任を置かないという形をとることが多くなった。

しかし、2017年以降、歴史学コースの登録者数がほぼ安定したように見えるにもかかわらず、大学はリベラルアーツ(liberal arts、一般教養)からの広範な離脱と歩調を合わせ、歴史学教員の削減を続けた。多くの学部にとって、現在の履修者数の減少は主に人員不足の結果である。アメリカの高等教育における歴史学の衰退は、市場原理による必然的な結果ではなく、政策的な選択であった。

このような政策が生み出した歴史学分野の崩壊は、国家安全保障に直接的な影響を及ぼしている。国防総省は、士官学校や専門軍事教育の一環としての座学教育、部隊の作戦を記録・分析し、歴史的データの要請に対応する部隊レヴェルの職業軍人教育担当の歴史家まで、様々な職種の学問的歴史家を、アメリカ国内で最も多く雇用している学校の1つである。

国防総省の歴史家はまた、アメリカ海軍歴史遺産司令部(Naval History and Heritage Command)の指示を受けて、全兵科の歴史の授業を担当し、アメリカ陸軍大学出版局のように、軍の任務を支援する出版活動にも従事したりしている。ウェイン・リー軍事史学会副会長は、国防総省は常時およそ300人の博士号を持つ歴史学者を雇用していると推定している。国務省も歴史担当官室(Office of the Historian)を設置し、他国に関する知識の意一環として、歴史的専門知識を広く活用している。

アメリカ軍の組織がこれほど多くの歴史学者を雇用していることは、それほど驚くことではない。トゥキディデスやポリュビオスまで遡れば、いずれも軍事経験のある歴史家であり、将来の将校や指導者を育成する最善の方法は、歴史を入念に研究することであると認識していた。ナポレオン自身も、優れた指揮官になるための最良の方法は「アレクサンダー、ハンニバル、カエサル、グスタフス・アドルフス、テュレンヌ、オイゲン、フリードリッヒ大王の作戦を何度も何度も熟読することだ」と述べている。

学習機関して、過去の過ちを繰り返さないことを目指す、軍事部門にとって、自国の歴史と広範な軍事史の研究は不可欠である。歴史は必ずしも単純な教訓を与えてくれるとは限らないが、戦略的な知恵を得るための唯一の試行錯誤の道筋を与えてくれる。具体例としては、2007年のイラクに対するアメリカ軍の増派の基礎となった戦略的思考は、20世紀のイギリスによるマレーでの対反乱作戦(British counterinsurgency operation)についての歴史的研究に大きな影響を受けている。一般的な対反乱理論も、フランスのアルジェリアでの対反乱作戦の失敗から生み出された理論に大きく依存している。もちろん同時に、こうした歴史的事例を再評価することで、たとえば、マレーにおけるイギリスの成功は、他の戦争では再現できない要因によるものであったと主張することで、教義(ドクトリン)の再考と更なる洗練が迫られることになるかもしれない。

それは、そうした過程が現在、危険に晒されているからだ。米連邦政府が必要とする歴史学者を養成するために頼りにしているプログラムは、主に公立大学システムの中に存在しているが、歴史学という学問分野辞退が崩壊しつつあるからである。過去数年間、米連邦政府の仕事は、有資格の歴史学者にとって、沈みゆく歴史学という船から逃れるための救命ボートであった。しかし、新しい歴史研究者の急速な減少は、このような人材供給が枯渇しつつあることを意味する。そして、歴史研究と出版のペースが落ちれば、政策立案者が賢明な判断を下すために必要な歴史的洞察は、より少なく、より遅くなっていくだろう。

That process is now endangered, as the programs that the federal government relies on to train the historians it needs exist primarily within public university systems where history, as a discipline, is collapsing. For the past few years, federal jobs have represented a lifeboat away from the sinking ship of academic history for qualified historians. But the rapid decline of new historians means that this supply of staff is drying up. And as the pace of historical research and publishing slows, the historical insights policymakers need to make wise decisions will be fewer and slower in coming.

しかし、歴史学の衰退が国家安全保障に及ぼす影響は、連邦政府による直接雇用にとどまらない。アメリカのような民主政治体制国家は、選挙を通じて国民が幅広い戦略的優先事項を設定し、文民指導者たち(civilian leaders)がその優先事項を実行可能な政策に反映させることに依存している。一般市民が歴史的知識を持ち、増やしていくことも、アメリカの競争力にとって重要な側面である。

1947年のトルーマン高等教育委員会に遡るまでもなく、アメリカは学生に「人間として、親として、市民としての義務を果たす(for performing his duties as a man, a parent, and a citizen)」ための準備をさせ、「自由な社会で正しく立派に生きていくための価値観、態度、知識、技能(the values, attitudes, knowledge, and skills that will equip him to live rightly and well in a free society)」を身につけさせるためには、幅広いリベラルアーツ(一般教養)教育が不可欠であると認識していた。

その基本的な現実は変わっていない。アメリカ国民は現在、東ヨーロッパ、中東、インド太平洋におけるアメリカの戦略的優先事項について暗黙のうちに決定を下すために投票を利用するよう求められている。 予備役将校訓練課程(Reserve Officers' Training CorpsROTC)の卒業生たちがアメリカ軍の各部門で新たに任命された将校の単純過半数を占めていることを考えると、士官団も民間大学の歴史の衰退と無縁ではない。

良くも悪くも、歴史は指導者の意思決定にも影響を与える。例えば、キューバ危機の際に当時のジョン・F・ケネディ大統領がバーバラ・トゥックマンの『八月の砲声』の教訓を考慮したように、あるいは、対テロ世界戦争(Global War on Terrorism)の初期にジョージ・W・ブッシュ政権でヴィクター・デイヴィス・ハンソンの一連の著作の人気が悪影響を及ぼしたように。指導者たちは、自らの決断の参考とするために過去に目を向ける。従って、政策立案者たちが利用できる歴史が、現在の疑問に対するものであり、最新かつ厳密なものであることを保証することは、国家安全保障上の強い関心事である。

もちろん、より深いレヴェルでは、高等教育で行われていることは、機能的にアメリカの有権者全体に影響を与える中等教育にも及んでいる。歴史プログラムが縮小し続け、その結果教えられる学部生や修士レヴェルの学生が減少するにつれ、アメリカの高校に配置できる、適切な訓練を受けた歴史教師の供給も減少している。実際、これは既に起こっていることであり、7年生から12年生(中学1年生から高校3年生)までの歴史の授業を担当する教師の大多数は歴史学の大学の学位を持っていない。その結果、自国の歴史に対する国民の理解の質、ひいては賢明な政治的決定を下す国民の能力が低下したことは、驚くべきことではない。

幸いなことに、これは克服できない問題ではない。一つには、アメリカでは歴史教育の質がどれほど低下しているかに気づいていないにせよ、国民は歴史教育を依然として広く評価していることである。ある世論調査では、84%のアメリカ人が、歴史は少なくともビジネスや工学と同じくらい重要な学問であると答えている。

そしてまさに、リベラルアーツ全般、特に歴史の衰退は市場の力ではなく政治的傾向によって引き起こされているため、政治的行動によって比較的少ないコストで回復することができる。歴史研究を含む人文学研究に資金を提供する全米人文学基金(National Endowment for the Humanities)の予算は、2023会計年度に98億8000万ドル相当の資金提供を受けた科学機関である国立科学財団(National Science Foundation)の2%の規模にすぎない。たとえアメリカが歴史の学問を活性化するための学問研究や防衛に支出する金額のほんの一部であっても、アメリカの国家安全保障に極めて重要な貢献をする分野に新たな命を吹き込むのに役立つだろう。

歴史を幅広く理解する政策立案者、軍事指導者、市民を持つことは、戦略上の優先事項である。アメリカの政界と国防関連のエスタブリッシュメントたちが、歴史学を粗末に扱ってもよい時期はとうに過ぎている。

※ブレット・デヴロー:ローマ帝国時代の経済と軍事を専門とする歴史家。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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