古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:国家安全保障問題担当大統領補佐官

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプ次期大統領は、国務長官にマルコ・ルビオ、国家安全保障問題担当大統領補佐官にマイク・ウォルツ、米国連大使にエリス・ステファニックを指名した。この人事に共通するのは対中強硬姿勢、親イスラエル姿勢、ウクライナ戦争終結志向姿勢といったことが挙げられる。直近で言えば、ドナルド・トランプが主張しているように、ウクライナ戦争停戦を促進し、イスラエルへの支援を行う(事態の悪化、深刻化は望まない)という布陣になる。
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ドナルド・トランプとマルコ・ルビオ

現在のアメリカでは、ウクライナ(ヨーロッパ地域)とイスラエル(中東地域)の対処が先で、アジア地域までは動きが取れないということになっている。対中強硬姿勢と言いながら、実際には何か重要な動きをすることは難しい。台湾問題は米中双方が自制して問題化させないようにするだろう。それよりも、危険なのは朝鮮半島である。北朝鮮がウクライナに兵式を派遣し、韓国に対しては強硬姿勢を鮮明にしており、「朝鮮戦争の再燃か」という懸念の声が上がっていることは、このブログでもご紹介した。
※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」2024年11月5日付「朝鮮半島の状況が不安定化し朝鮮戦争が起きる可能性について取り沙汰されている:中国もロシアもそれを望んでいないがこの危険性が交渉材料になる(アメリカとの)」→https://suinikki.blog.jp/archives/89105815.html

 ここで重要なのは、第一期トランプ政権で実施された米朝首脳会談と非核化の合意形成である。トランプは、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との関係を利用して、朝鮮半島問題を悪化させないように動くだろう。現在のところ、アメリカではウクライナ問題と中東・イスラエル問題に注目が集まっている中で、朝鮮半島問題についても裏側で動くことだろう。重要なのはトップ人事と同時に、実務者レヴェルの人事である。トランプ政権にとっての最重要課題は「核戦争の防止」である。

 マルコ・ルビオはアメリカ大統領選挙に出馬した経歴を持ち、トランプとも争った過去を持つ。今回、トランプがルビオを指名したことに驚きの声が上がった。ルビオに関しては、トランプも全幅の信頼を置いてはいないだろう。国務副長官、国務次官にルビオをけん制するための人物を配置するだろう。マイク・ウォルツは退役軍人(陸軍大佐)で、エリート部隊のグリーンベレー出身で、連邦下院議員を務めた経歴を持つ。ウォルツの配置は、南部国境に軍の部隊を派遣するという「麻薬戦争(drug war)」対策の側面があることが考えられる。
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ドナルド・トランプとマイク・ウォルツ
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エリス・ステファニックとドナルド・トランプ
 エリス・ステファニックは共和党の「ライジングスター」であり、第二次政権以降も「トランプ政治運動」の重要人物として活動できるように育てていこうという意図が見える。副大統領のJD・ヴァンスと同い年ということもあり、将来の副大統領候補、あるいは大統領候補ということも考えられる。そのために、米国連大使抜擢で、政治キャリアの第二段階のスタートということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

トランプがマルコ・ルビオを国務長官に指名と発表(Trump announces Rubio as pick for secretary of State

ブレット・サミュエルズ、ラウラ・ケリー筆

2024年11月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4988992-trump-rubio-secretary-state/

ドナルド・トランプ次期大統領は水曜日、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を国務長官に指名する決定を正式に発表し、かつてのライヴァルを政権の外交トップの役割に据えた。

トランプ大統領は声明で、ルビオを「非常に尊敬される指導者であり、自由を求める人々にとっての非常に強力な代弁者」と称賛した。

トランプは更に「彼は我が国の力強い代弁者であり、同盟諸国の真の友人であり、決して敵に屈しない恐れを知らぬ戦士となるだろう」と付け加えた。

ルビオのトランプ内閣閣僚への選出は、共和党大統領予備選で両者が激しいライヴァル関係にあり、個人的な侮辱をお互いに与えあっていた2016年からの劇的な好転ということになる。

今年初め、トランプ大統領はJD・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)を選出する前に、ルビオを副大統領候補に選ぶところだった。

フロリダ州選出の連邦上院議員は中国とイランに厳しい外交政策のタカ派とみられている。ルビオ氏は9月のNBCとのインタヴューで、ウクライナとロシアの間の戦争は「交渉による解決(with a negotiated settlement)」で終わるのは明らかだと語った。

トランプ大統領は、就任後は速やかに「アメリカ・ファースト」の外交政策ヴィジョンを復活させると誓った。トランプは、アメリカが対ロシア戦争でウクライナを支援し続けることに懐疑的な姿勢を表明し、ヨーロッパの同盟諸国に対し、キエフ支援とNATO同盟を通じた自国の防衛支援に一層の努力をするよう求めた。

月曜日遅くに最初に報道されて以来、民主、共和両党の議員たちはルビオの選出を温かく歓迎した。ジョン・フェッターマン連邦上院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)はルビオの承認に投票する意向を示し、マーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)はルビオを「賢く、才能に溢れ(smart, talented)」、「世界中のアメリカの利益を代弁する強い代弁者(a strong voice for American interests around the globe)」と呼んだ。

ルビオは指名発表後の声明で、トランプ大統領からの信頼を光栄に思い、「外交政策の課題に対処するために(to carry out his foreign policy agenda)」日々努力すると述べた。

ルビオは声明で「1月20日の大統領就任時に大統領が国家安全保障・外交政策ティームを設置できるよう、連邦上院の同僚たちの支持を得ることを楽しみにしている」と述べた。

フロリダ州選出の連邦上院議員ルビオは、指名が発表される数分前に連邦議会議事堂で記者団の取材に応じ、トランプの提案の一部について考えを述べ、トランプがルビオのポストについての人事承認プロセスを回避する手段として連邦上院議員に関与を求めてきた休会任命戦略(strategy of recess appointments)への反対を表明した。

ルビオは「理想的には、人々が投票され、人々が好きなように投票できるような指名プロセスが必要だ」と述べた。

ルビオは続けて「本当に重要な役職に就いていて、時間の面で理不尽な妨害をする人がいる場合、球界任命の予定は最後の手段として使うものだ」と述べた。

ルビオは、アプリ「TikTok(ティックトック)」の国家安全保障上のリスクについて懸念があるとしながらも、法律として可決された禁止措置を撤回するかどうかについてはトランプ大統領が権限を持っていると述べた。

ルビオは「このアプリとそれがもたらす脆弱性については依然として懸念があるが、究極的に言えば、私はアメリカ大統領ではないのだ」と述べた。

ウクライナについて質問されると、ルビオはトランプ大統領の意見を尊重し、「彼は戦争の終結を望んでいる」とし、「戦争を乗り越える方法を見つけるのは大統領の仕事だ。彼の戦略やその点での決断について、私は話すつもりはない」と述べた。

ルビオは「彼は、これは終わらせるべき戦争だということをかなり明確に示したと思う。事態は行き詰まり、ウクライナは1世紀前に戻りつつある」と語った。

ルビオ氏は政権交代に先立ち、ウクライナへの更なる資金提供を約束するつもりはないだろう。

「それを考える前に、新政権が発足するまで待とうではないか。私たちは来月も政府に資金を提供しなければならない」とルビオは語った。

ルビオの人事承認公聴会を実施する、連邦上院外交委員会のメンバーであるティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ジェフ・マークリー連邦上院議員(オレゴン州選出、民主党)のような委員会の民主党側メンバーたちと一緒に、ルビオの人事承認への早期の支持を表明した。

ケイン議員は「今言えるのは、ルビオは連邦上院外交委員会の非常に献身的なメンバーだということだけだ。それは前向きなことだ」と語った。

トランプ大統領は先週の選挙で勝利した後、国家安全保障ティームを急速に強化した。トランプはエリス・ステファニック連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)を米国連大使に選び、マイク・ウォルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)を国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名した。トランプはまた、フォックス・ニューズの司会者で退役軍人のピート・ヘグセスを、国防総省を率いる候補者に指名した。

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トランプの国家安全保障問題担当大統領補佐官指名を受けたマイク・ウォルツについて知っておくべき5つのこと(Five things to know about Mike Waltz, Trump’s national security adviser pick

ブラッド・ドレス筆

2024年11月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4986351-trump-waltz-national-security/

ドナルド・トランプ次期大統領は、次期国家安全保障問題担当大統領補佐官に国防政策や外交政策で長年の経験を持つ退役陸軍軍人でグリーンベレー出身のマイケル・ウォルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)を選出した。

フロリダ州第6選挙区の代表であるウォルツは2019年から連邦下院議員を務めており、連邦下院軍事委員会、外交委員会、情報・諜報委員会の委員を務めている。

トランプ大統領は自身のソーシャルメディアサイト「トゥルース・ソーシャル」で、ウォルツは「中国、ロシア、イラン、そして世界的なテロリズムによってもたらされる脅威の専門家(expert on the threats posed by China, Russia, Iran and global terrorism)」であり、「私のアメリカ・ファースト外交政策の擁護者であり、私たちの力による平和の追求においても素晴らしい擁護者となるだろう」と述べた。

これからウォルツについて知っておくべきポイントを述べていく。

(1)中国に対するタカ派的な考え(Hawkish views on China

ウォルツは国家安全保障担当大統領補佐官の役割に中国に対する強硬な立場を持ち込むことになる。連邦議会で、ウォルツは、インド太平洋地域における中国の優越を防ぐためにインド太平洋地域の諸国とアメリカ政府の関係を強化する法案など、中国政府を抑えることを目的とした法案を支持してきた。

ウォルツは2020年のフォックス・ニューズとのインタヴューで、中国はアメリカに対する「存在に関わる脅威(existential threat)」であると述べた。

ウォルツは、「これは、私たちが20世紀の大部分でソ連と対峙しなければならなかったのと同じように、国家安全保障の問題になるだろう。21世紀には中国も同様になるだろう」と付け加えた。

ウォルツは連邦下院インド議員連盟の共同議長でもあり、中国に対する共通の同盟を支援するためにニューデリーとのより深い関係を築こうとしてきた。

ウォルツは中国の歴史的な平時における「軍事力増強(military buildup)」について警告し、アメリカの国家安全保障の焦点は中国政府の抑止(deterring Beijing)に軸足を移すべきだと述べた。

ウォルツは2020年に連邦下院で対中国タスクフォースの創設に貢献した。この特別委員会は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対応して設立され、複数の分野における中国政府の脅威を検討していた。連邦下院には現在、中国に関する特別委員会が設置されている。

トランプ大統領はまた、同じく対中国タカ派のマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を国務長官に指名し、中国との対決が第二次トランんプ政権の最優先課題になる可能性が高いことを示した。

中国の最高指導者である習近平は、中国政府が本土の一部とみなしている自治領の島国である台湾に対する潜在的な攻撃に備えて軍が2027年までに準備を整えるべきだと示唆した。

(2)イスラエルに対する熱心な支援者(Ardent supporter of Israel

ウォルツは、大半の共和党員と同様、中東戦争を通じてイスラエルへの全力の支持を示してきた。中東ではイスラエル軍がイランの支援を受けた複数の代理組織と戦っている。

バイデン政権と民主党は、ガザ地区での死者数の多さに懸念を表明している。ガザ地区では、2023年10月7日にイスラエル南部に侵攻し、約1200人が殺害され、ハマスとイスラエルが戦った1年以上で4万3000人以上のパレスティナ人が死亡した。ハマスは約250名を人質に取った。

バイデン大統領と民主党は停戦(ceasefire)と人質解放(hostage release)の合意を推進してきた。ハマスは今もガザ地区で約100人の人質を拘束している。

しかし、ウォルツは9月のフォックス・ニューズとのインタヴューで、停戦と人質解放の合意だけでは紛争は終結しないと述べた。

ウォルツは「イランはイスラエルを破壊したいため、今後も不安を煽り続けるだろう。イランに対して譲歩(concession)を重ねることが、実は状況を不安定化させている」と述べた。

ウォルツはまた、アメリカがイラクでの軍隊駐留を縮小していることへの懸念を表明し、イスラエルがレバノンのハマスとイランが支援する過激派組織ヒズボラの両方に対して行動を起こすことを支持している。

(3)バイデンのウクライナ戦略に疑念を示す(Skeptical of Biden’s Ukraine strategy

ウォルツは、ロシアとの関係があまりにも穏やかで良いとして批評家らから非難されているトランプよりも、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対してはるかに厳しい態度を取っている。

2022年にロシアがウクライナに侵攻すると、ウォルツはすぐさま侵攻を非難し、攻撃から守るためのウクライナへの武器支援を支持した。

それでもトランプ大統領は、1月20日の就任までにウクライナ戦争を終わらせると約束した。

ウォルツは、トランプ次期大統領の和平案を全面的に支持していなかったが、同時に、バイデンの紛争へのアプローチを批判してきた。

ウォルツは2023年9月の声明で、バイデンは「ウクライナにおけるアメリカの目的も、それを達成するための戦略も説明していない」とし、NATO同盟諸国はキエフへの支援を強化する必要があると述べた。

ウォルツは「短期的には、アメリカの軍事援助はヨーロッパの負担分担と今後の平等なヨーロッパ援助を条件とする必要がある。アメリカは貯蓄を自国の安全保障に投資しなければならない。それは、南部国境を確保するためにウクライナに与えるあらゆる援助のドル価値と一致するべきである」と述べた。

(4)メキシコのカルテルに対する軍事力行使を支持(Backs using military against Mexican cartels

トランプ大統領は国境に現役部隊を派遣し、大量国外追放を実施することを提案しており、次期政権に強硬派の入国管理当局者を選出している。

ウォルツは、共和党内で国境でのより厳しい行動を求める声が高まっていることに加わり、アメリカは移民改革の前にまず国境を確保する必要があると述べ、それを怠ったバイデン政権を非難した。

ウォルツは、2023年にはメキシコのカルテルに対する軍事力の行使を認める法案の共同提案者となった。数人の共和党連邦議員は現在、犯罪組織がフェンタニルのような強力で致死性の麻薬を国内に輸送していることへの懸念を理由に、カルテルに対する軍事行動を支持している。

ウォルツは2023年の声明の中で、「我が国の南部国境の状況は、我が国の法執行職員にとって耐えられなくなった。攻撃を開始する時が来た」と述べた。

(5)輝かしい軍人としてのキャリア(Decorated military career

ウォルツはフロリダ州ボイントンビーチ出身の退役大佐で、ヴァージニア軍事学校に通い、その後アメリカ陸軍と州兵として27年間勤務した。

彼は陸軍レンジャー学校に入学し、エリート特殊部隊グリーンベレーに入隊した。ウォルツはアフガニスタン、中東、アフリカに派遣された。

ウォルツは後にジョージ・W・ブッシュ(息子)政権でドナルド・ラムズフェルド国防長官とロバート・ゲイツ国防長官の下で国防政策部長(defense policy director)を務めた。

彼はまた、グリーンベレーとしての経験についての本を書き、アメリカ軍の訓練と支援に重点を置く小規模な防衛請負会社メティス・ソリューションズを設立した。

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エリス・ステファニックについて知っておくべき5つのこと(5 things to know about Elise Stefanik

エミリー・ブルックス、マイケル・シュニール筆

2024年11月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4984791-stefanik-ambassador-un-trump/?ipid=promo-link-block3

ドナルド・トランプ次期大統領は月曜日、米国連大使にエリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)を指名し、共和党内でのステファニックの台頭の勢いを更に高めた。

これは、近年トランプ大統領の最も熱心な擁護者であり、支持者の1人である共和党連邦下院議員会の会長であり、連邦下院で最も地位の高い共和党女性連邦下院議員に対する抜擢である。

しかし、ハーヴァード大学卒業生でトランプ大統領の副大統領候補とも目されていたステファニックも、スターとしての力が高まるにつれ、より厳しく精査されている。

ステファニクについて知っておくべき5つのことは以下の通りだ。

(1)親トランプの変革を遂げた(Underwent pro-Trump transformation

トランプが権力を握った時、他の多くの共和党連邦議員と同様に、ステファニクも当初はトランプと距離を置き、イスラム教徒が多数を占める7カ国の国民のアメリカ入国を禁止するトランプ大統領の2017年の大統領令などの政策について、公然とトランプと決別したことさえあった。

しかし、それはトランプ大統領の1期目に急速に変化し、一部の政治の専門家たちを驚かせた。

2019年のトランプ大統領の最初の弾劾手続きまでに、ステファニクは連邦議事堂でのトランプ大統領の擁護者のトップの1人になっていた。連邦下院情報委員会の委員として、彼女は好戦的なアプローチをとり、弾劾公聴会で当時の委員長アダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)に異議を唱えた。

このためトランプ大統領はステファニクのソーシャルメディアに「共和党の新たなスターが誕生した(A new Republican Star is born)」と投稿した。

ステファニックの姿勢は長年にわたって強固であり、ステファニクは数々の法的問題に直面したトランプを最も鋭く擁護しただけでなく、ジャック・スミス特別検察官(special counsel Jack Smith)に対して倫理訴訟を起こすなどの行動も取っていた。

ステファニクは、トランプが2022年に大統領選への立候補を表明した際に、トランプを支持した連邦議会共和党指導部の最初のメンバーとなった。

(2)リズ・チェイニーに代わって下院議員会会長に就任(Replaced Liz Cheney as conference chair

連邦下院共和党は、1月6日の連邦議事堂襲撃後にトランプの弾劾に賛成票を投じた連邦下院共和党議員10人のうちの1人であるリズ・チェイニー元連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)を、トランプ元大統領からの批判が続く中、2021年5月の連邦下院会会長から解任した。

ステファニクはその時点で強力なトランプ擁護者であるという評判があり、すぐに当時の連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)とトランプからの支持を獲得した。彼女は同じく立候補したチップ・ロイ下院議員(テキサス州選出、共和党)を大差で破った。

当時、党のメッセージを主導する任務を負った議員会会長は、連邦下院共和党内で第3位の地位にあった。2022年の中間選挙後に共和党が過半数を獲得したとき、ステファニクは連邦下院多数派に昇格することを目指すのではなく、その職に留まり、連邦下院第4位の序列となった(訳者註:共和党が連邦下院議長を取ったために党の役職の序列が1つずつ下がる)。

(3)反ユダヤ主義について大学の学長たちを批判したことで話題になった(Went viral for taking on university presidents on antisemitism

ステファニクは何年にもわたって全国規模の舞台で活躍してきたが、昨年、ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃後の大学キャンパスでの反ユダヤ主義について、連邦議会公聴会で3人の学長に迫り、その名声が更に高まり、話題になった。

証言した学長の3人のうち2人は公聴会後に、その発言に対する反発の中で辞任しており、ステファニクはこの展開を称賛した。

ハーヴァード大学のクロディーン・ゲイ学長が辞任した後、彼女はソーシャルプラットフォームXに「2アウト(TWO DOWN)」と書いた。

連邦下院教育労働委員会の前で行われたこの公聴会では、ステファニクへの支持が民主、共和両党から得られた。大学学長の解任を求めるステファニクの主張を民主党と共和党が支持した。

ステファニクはそれ以来、反ユダヤ主義と闘い、ハマスからイスラエルを守る連邦下院共和党の取り組みの顔として浮上している。5月に彼女はイスラエル国会で演説し、ハマスのイスラエルへのテロ攻撃以来イスラエルを訪問した最高位の連邦下院議員となった。

ステファニクはまた、その立場を利用して国連を追及してきた。例えば10月、彼女は声明の中で、国連は「反ユダヤ主義で腐敗するのを許されている(allowed to rot with antisemitism)」と述べ、国連への将来の資金提供を脅かしているようだった。

「アメリカの納税者たちは、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスが反ユダヤ主義で腐敗を許した組織に資金を提供し続けることに興味がない」と彼女は述べた。

(4)女性の共和党からの連邦下院議員候補の擁立に努力(Focused on lifting up female House GOP candidates

ステファニクは女性連邦議会候補者の支援に多大なエネルギーを注ぎ、連邦下院に共和党から立候補する女性たちを募集し支援するための政治活動委員会「エレヴェートPACElevate PAC)」を立ち上げた。

彼女は、2018年の「ブルーウェーブ(Blue Wave 訳者註:民主党の大勝利)」の後、第116回連邦議会で連邦下院の共和党所属の女性議員の数がわずか13人に減った後に、この取り組みを始めた。2021年に始まる次の議会では、共和党所属の女性連邦議員の数は23人に増加した。

ステファニクの努力には、女性候補者を支援するために共和党の予備選でがむしゃらに行動することが含まれており、そのことが時として彼女を連邦下院共和党指導部の他の人々と対立させることになった。当時の全米共和党議会委員会委員長のトム・エマー連邦下院議員(ミネソタ州選出、共和党)は、ステファニクが共和党の予備選に介入するのは「誤り(mistake)」だろうと発言すると、ステファニクは「ニューズ速報…私は許可を求めていた訳ではない(NEWSFLASH… I wasn’t asking for permission)」と反論した。

ステファニクが支援した候補者の1人は、2024年トランプ陣営報道担当のキャロライン・リービットで、2022年にニューハンプシャー州で連邦下院議員選挙に立候補した。

(5)初当選時に連邦下院で最年少の女性議員となった(Youngest woman in House when elected

ステファニクは2014年に連邦下院議員に初当選し、30歳で史上最年少の女性連邦下院議員となり、歴史に名を残した。

現在40歳のステファニクは、アメリカの国連大使に就任する最年少の一人となるであろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 旧聞に属する話で申し訳ないが、ジョー・バイデン大統領の首席補佐官ロン・クレインが退任し、後任にジェフ・ザイエンツが就任した。就任日は2月8日だ。ロン・クレインはバイデンとの関係が深かったが、ザイエンツはそこまでではない。クレインの後任には、ここは史上初の女性起用で行くべきだ、スーザン・ライス国内政策会議委員長やバラク・オバマ政権で大統領次席補佐官を務めたアリッサ・マストロモナコの名前が取り沙汰されていた。しかし、結局のところ、ジェフ・ザイエンツが大統領首席補佐官に就任した。
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クレインとバイデン
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バイデンとザイエンツ

 大統領首席補佐官は政権運営の要であり、最重要ポジションと言ってよいだろう。日本で言えば官房長官のようなものだ。大統領首席補佐官の事務室は大統領執務室のすぐ隣にあり、首席補佐官の前を通らなければ大統領執務室には入れない。政権課題の進め方とそれに関連して、連邦議会の民主、共和両党幹部との折衝など政治的手腕が問われるポジションだ。ロン・クレインは剛腕ぶりで知られてより、連邦議会共和党幹部からは「クレインが実質的に政権を動かしていてバイデン大統領はお飾りだ」と批判され、「総理大臣」と悪口を込めて呼ばれていたほどだ。

 前任者のロン・クレインと現職のジェフ・ザイエンツをつなぐ要素は、スーザン・ライスである。スーザン・ライスとロン・クレインの関係は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)で書いている通り、バラク・オバマ政権時代に、アフリカでエボラ出血熱の大規模感染が広がり、アメリカ国内でも感染者が確認された時まで遡る。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスは、エボラ出血熱担当調整官としてロン・クレインを起用するように、オバマ大統領に求め、二人三脚でエボラ出血熱対応に当たった。その時の経験もあり、クレインはバイデン政権で大統領首席補佐官に就任した。国内政策委員会委員長兼大統領補佐官であるライスとまた一緒に仕事をすることになったのだ。
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スーザン・ライスとバイデン

 ザイエンツについては期せずして、下の論稿に次のような記載がある。

「教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう」

 このように、ザイエンツもまたスーザン・ライスと親しいということになる。新型コロナ対策が一段落してクレインは退任し(家族との時間や介護を理由にしている)、選挙に向けてザイエンツが就任した形になっている。しかし、実質的にはスーザン・ライスが指揮を執っていると考えた方が自然だ。

 ここからは私の予想であるが、バイデン政権は二期目の当選をどうしても果たさねばならない。それは、単純に言って、「大統領の犯罪行為(ノルドストリーム・パイプライン破壊やウクライナへの関与)を隠し通さねばならない」からだ。そうしなければバイデンだけではなく、その手下たち(権力者共同謀議に参加できるレヴェル)が逮捕されてしまうからだ。バイデンは再選のためにはなりふり構わず様々な手段を取って当選するだろう。

アメリカ大統領は二期目で終わりとなるから、バイデンはさらに年齢を重ね、判断力も体力もなくなっていき、お飾り状態になるだろう。その時に実質的に国家を動かすのはライスではないかと考える。現在の国家安全保障問題担当大統領補佐官であるサリヴァンは、ライスにしてみれば格下の人物だ。また、サリヴァンはまだ若いので次の出番がある。

 ライスは連邦議会の承認が必要な地位に就くのは難しい。それはベンガジ事件の際にみそを付けたからだ。ホワイトハウスの人事は大統領が決められるので、ライスが国家安全保障問題担当大統領補佐官や大統領首席補佐官に横滑りし、サリヴァンが国務長官になるということも考えられる。

 ライスという人物が非常に重要であると私は考える。

(貼り付けはじめ)

ロン・クレインがホワイトハウスで学んだこと(What Ron Klain Learned in the White House

-退任を表明したジョー・バイデンの大統領首席補佐官はゆっくりとした専門知識の蓄積を示すケーススタディだ。

エヴァン・オスノス筆

2023年2月1日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/what-ron-klain-learned-in-the-white-house

ホワイトハウスの大統領首席補佐官(White House Chief of Staff)が果たしている役割について、ほとんどのアメリカ人はほぼ何も意識していないが、このポジションはワシントンで最も強力であり、最も脆弱なポジションの1つである。ロナルド・レーガン大統領とジョージ・HW・ブッシュ大統領の大統領首席補佐官を務めたジェームズ・A・ベーカー3世は、「政府の中でおそらく最悪の仕事」と呼んだが、彼は歴代の大統領首席補佐官の中で最も成功した1人だと考えられている。(最も成功しなかったのは、ドナルド・トランプの4人の悩める大統領首席補佐官の最後の1人で、その在任中にはトランプが2020年の選挙を覆そうとしたこともあり、1月6日の議事堂襲撃に関する証言を拒否したマーク・メドウズかもしれない)

バイデン政権の最初の2年間、大統領首席補佐官室(ウエストウィングの角部屋)の主はロン・クレインであった。クレインは弁護士で郊外に住む3人の子供の父であり、有名人ではないが、ワシントンでの権力の使い方を知り尽くしているロン・クレインのものであった。バイデンの長年の側近で、現在はホワイトハウスの上級顧問を務めるマイク・ドニロンは、クレインについて「私にはない、また他の何人も知らない、政府のレヴァーを動かす能力を持っている」と評した。バイデン大統領の任期中、連邦議会との格闘、トランプ主義、アフガニスタン、ロシアのウクライナ侵攻など、クレインの担当は広範囲に及び、共和党は彼を総理大臣(prime minister)と呼んだほどである。先週金曜日、クレインが2月8日に退任する準備をしているとの報道を政権が認めた。

クレインはバイデン政権と密接な関係にあり、彼の在任期間を評価することは、バイデン政権の文化、作戦、功績、敗北を評価することと切り離せない。『ニューヨーク・ポスト』紙の右寄りの編集部は、「ジョー・バイデン大統領の悲惨な記録を白紙に戻し、国民を欺くことにかけては、クレインに右に出る者はいない」という理由でクレインの退任を祝った。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官の在任期間は平均して1年半だが、難解な統計に精通しているクレインは2年の間そのポジションにとどまり、民主党から出ている大統領の初代大統領首席補佐官として最長の任期を務め、退任の発表直後にウェストウイングで会った私に、「大統領の人気の前半部を走り抜けた」ことを強調した。彼はまた「また、母が病気で、週6日ここで働き、毎週日曜日の朝にはインディアナへ帰るという生活を続けている。それが、ちょっと重荷になっていたのは事実だ」と述べた。

61歳のクレインは、濃い黒髪に終身在職権を手に入れた教授のような体格、そしてワシントンの不条理(absurdities)に対するユーモアのセンスを持っている。オフィスにある火のついていない暖炉を指さして、「マーク・メドウズが書類を燃やした場所だ」と言った。(メドウズの元側近キャシディ・ハッチンソンは、1月6日の議事堂襲撃事件検証委員会で、彼がそこで書類を燃やすのを「たぶん十数回」見たと証言した。)クレインは、「私は一度も火をつけたことはない」と付け加えた。政権によっては、大統領首席補佐官に対して陰口を叩かれることもある。クレインの退任の知らせに惜別と褒賞の声が上がったのは特筆すべきことだ。バイデンの国内政策会議の責任者であるスーザン・ライスは、「私はこれまで9人の大統領首席補佐官の下で働いてきた。そして、そのうちの1人が言ったように、ロンはその中で最高の大統領首席補佐官だった。一分一秒が甘美で明るいという訳ではないが、彼はとても優秀な人物だ」と述べた。

クレインは、鋭い人物であり、反対行動を取りたがる人物である。バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、「彼は、“お前はしくじった”と言ってくれる。しかし、決して意地悪でも小馬鹿にしたような言い方はせず、本当のことを言う」。最も重要なことは、他の人が臆病になるような場合でも、バイデンには大胆に対応することだ。バイデン大統領は、その公的な人格が反映するよりもスタッフに厳しい態度を取ることがある。クレインは、ホワイトハウス内で大統領と正面からぶつかっても首を切られない数少ない人物の1人だ。

米連邦議会では、民主党と共和党の間は僅差であり、民主党の間に深い溝がある。そうした中でクレインは何十年も前からの人脈を駆使してきた。クレインがチャック・シューマー連邦上院議員(連邦上院多数党[民主党]院内総務)と初めて会ったのは1980年代で、シューマーがニューヨークから連邦下院議員に当選したばかりの頃で、クレインは連邦上院のスタッフだった。シューマーが連邦上院多数党(民主党)院内総務に就任したこの2年間は、1日に3、4回話すこともあったということだ。クレインは直接的でかつ冷静ということでシューマーからの尊敬を勝ち取っている。シューマーは「彼(クレイン)は、誰かがバカなことをやっていると、すぐにそれについて厳しい言葉を述べた。しかし、時折、よく考えてみたが、私の言ったことは正しいとは思えないと言い直すこともあった」と語った。

クレインは、若手政治家たちを指導したことでも知られている。2017年、カリフォルニア州選出でプログレッシブ議連のメンバーであるロウ・カンナ連邦下院議員(民主党)がワシントンに来た際、クレインは彼をコーヒーに連れ出した。カンナはその時のことを次のように述べた。「私は“ワオ!"と思った。どれほど凄いことなんだと考えた。そして、彼が首席補佐官になった後、ロンが他の60人、70人と一緒にそれをやっていたことを知った」。カンナはそれを教訓にした。カンナは「議員になってから、良くも悪くもヴィジョンは重要だが、人間関係も非常に重要だということを認識した」と述べた。

アメリカ人は、「スミス都へ行く(Mr. Smith Goes to Washington)」という神話を好むが、実際には、現代のスミスはアメリカ内陸部ではなく、ゴールドマン・サックスの出身であることがほとんどだ。それとは対照的に、クレインは、専門知識をゆっくりと蓄積することのできるケーススタディだ。インディアナポリスで育ったクレインは、1968年初め、配管工事を営むクレイン家を訪れたボビー・ケネディとの出会いをきっかけに、政治の世界に引き込まれた。ジョージタウン大学を卒業後、ハーヴァード大学で法学を学び、バイロン・ホワイト最高裁判事の下で書記官を務めた後、ジョー・バイデン上院議員(当時)が委員長を務める連邦上院司法委員会にスタッフとして所属した。ビル・クリントン政権では、ホワイトハウスの顧問弁護士、司法省、アル・ゴア副大統領の不育大統領首席補佐官として働き、2000年にはフロリダ州での再集計の戦いに携わった。その後、ジョー・バイデン副大統領の副大統領首席補佐官として復興法の支出を監督した後、政権を離れ、3年後にバラク・オバマ大統領の下でエボラ出血熱への対応を指揮するためにホワイトハウスに戻った。

クリントン政権とオバマ政権の間には、オメルヴェニー・アンド・マイヤーズ法律事務所のパートナーや、AOLの共同創業者で億万長者のスティーブ・ケースが立ち上げた投資会社レヴォリューションLLCで、政府以外の民間の仕事にも携わった。長年にわたり、クレインは民主党の大統領選挙候補者討論会の準備を支援することを得意としてきた。2015年、バイデンが出馬しないことを確信した彼は、ヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペーンに参加するために契約した。バイデンの関係者の中には、この動きを不誠実と受け止める者もおり、後に流出した電子メールの中でクレインは「彼らにとって自分は死んだような存在だ」と嘆いたが両者の間にあった溝は埋められた。2016年にトランプに敗れたことも含め、クレインの様々な経験は貴重なものとなり、バイデンの2020年の選挙運動の成功のために助言を行った。

ホワイトハウスにおいてクレインは、バイデン政権の本質的な課題を、宇宙開発、経済、気候、世界における米国の地位といったいくつかの問題に絞り込み、立法と安全保障政策が連動するような方法を模索することに貢献した。在任中の最悪の日は、2021年8月26日、アフガニスタンからの撤退の際、カブール空港の外で起きた爆弾テロで13人の米軍将兵と100人以上のアフガン人が死亡したことだったとクレインは語っている。この撤退はバイデン大統領の転機となり、彼の世論調査での支持率は低下し、新型コロナウイルス感染拡大やインフレに対する不満がさらに重荷となり、完全に回復することはなかった。当時、バイデンとクレインは、国家安全保障のリーダーシップを揺るがす圧力に抵抗していた。サリヴァンは、クレインについて次のように述べた。「単によく思われたい、高い評価を得たいと思って仕事をしていいなかったのだろう。長い目で見ようと思っていたのだろう。彼は、私たちがしてきたことに確信を持っていた」。

アフガニスタンからの撤退からほんの数カ月の後、バイデン政権はさらに大きな危機に直面することになった。ロシアのウクライナ侵攻である。しかし、ウクライナはNATOの支援を受けて抵抗し、これが政権のぼろぼろになったプライドを支える要素となった。

一方、連邦議会では、民主党の内紛が激化していた。2021年秋、連邦上院の民主党穏健派が社会政策法案を成立させないのではないかという疑念から、連邦下院の民主党進歩派が超党派のインフラ法案への支持を留保したことが、その最たるものだった。バイデンの最初の2年間を描いた新刊『彼の人生における戦い(The Fight of His Life)』(クリス・ウィップル著)によると、ホワイトハウスは無様な姿になり、クレインは辞任を考えたということだ。その代わりに、彼はもう一度、古い人間関係に目を向けた。カンナは、クレインが「もう十分ではないか」と言い、自分に助けを求めてきたと述べた。

カンナもそう思った。私は、『ロン、私は、テレビ番組のフェイス・ザ・ネイションに出るつもりだ。私は進歩主義議連の主張から外れて、インフラ法案に賛成投票すると言うつもりだ。バイデンは、より多くのリベラル派に法案を支持するよう懇願し、その結果、2021年11月にホワイトハウス南庭で行われた式典で法案に署名した。その後、バイデン政権の野望を脅かすような緊迫した交渉が続いた。2021年12月、ウェストヴァージニア州選出のジョー・マンチン連邦上院議員(民主党)が、「ビルド・バック・ベター」法案は予算希望が大きすぎるとして、この法案に難色を示した。マンチン議員とクレインは、ジーナ・ライモンド商務長官の手料理を囲み、最終的に合意に達した。結局、連邦議会は一連の主要法案を可決し、2022年8月には、気候変動対策だけでなく、薬価引き下げを目的としたインフレ抑制法案で最高潮に達した。ドニロンはその法案について、「それまで世界の多くがバイデンは失敗だったと主張しようとしていたのに、成功の感覚を伝えてくれた」と述べている。昨秋の中間選挙では、バイデンは共和党の大勝利の予測を裏切り、民主党は連邦上院で過半数を維持し、中間選挙で失った議席数はジョン・F・ケネディ大統領以降のどの民主党大統領時代よりも少なかった。

こうした業績があるにもかかわらず、バイデンの人気が低いのは何故か、と私はクレインに質問してみた。クレインは次のように答えた。「国民がリーダーに対して非常に厳しくなっている時代だと考えている。ジョー・バイデンの支持率が43%か、その少し上か下の範囲に入っている。G7の中で、イタリアの新首相を除けば、どのリーダーよりも高い支持率だ。人々は二極化しており、反対の人々は、あなたが良い仕事をしているとは決して言わないし、真ん中の人々は、“えーと”と言う方が簡単だ。政治の成功の尺度は中間選挙の結果だ」。

クレインが大統領首席補佐官の仕事で学んだことは、「粘り強く、慌てない」ことだと述べている。クレインが担当した政権の中で、最初の2年間に閣僚が1人も辞めなかったのは、この政権が初めてだということだ。この日、政権の当面の問題は、バイデンの自宅と元事務所で機密文書が見つかった理由を調査する特別検察官であった。クレインをはじめとする補佐官たちは、発見から9週間以上、この文書について何も語らなかったが、その後、その沈黙は司法省の捜査の邪魔にならないようにするためだったと弁明している。この件に関して、何か違うことをしていたらどうだっただろうかと私が質問すると、クレインは「いや、私たちの弁護士、法務ティームが非常に責任を持って対処してくれたと思っている」と答えた。とはいえ、政権が直面しなければならない政治的な問題であることに変わりはない。

今後の2年間、バイデン政権の焦点は、署名済みの法案の実施に移る。連邦下院を共和党が支配し、バイデンは再選を目指す中で、新たな法案成立の見込みは大変に小さくなりつつある。クレインの後任には、オバマ政権で「HealthCare.gov」などの失敗していた政府プロジェクトに取り組み、「ミスター修理人」と呼ばれたジェフ・ザイエンツが就任する予定だ。ザイエンツは以前、教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう。

バイデンの次の2年間に立ちはだかるより大きな不安は、彼の年齢に関するものだ。先週発表された世論調査では、民主党と民主党寄りの無党派層は、バイデンが再出馬すべきかどうかに関して意見が真っ二つに割れている。しかし、クレインは、政府での仕事が長くなればなるほど、「経験が重要だ」と考えるようになったという。多くの人がバイデンは若手に道を譲るべきだと考えていることも知っている。「その年齢には、多くの経験が伴う。2022年2月には、ウラジミール・プーティンはウクライナを侵略する意図は持ってはいないと言っていた世界の指導者がたくさんいた。そうした中で、バイデンは「彼(プーティン)はウクライナに侵攻するつもりだ、私たちは備える必要がある、同盟を組み立てる必要がある」などと言っていた。これは、彼が時々言葉を間違えるかどうか、原稿を読む時に時々目を細めるかどうかよりも重要な洞察である。

更に言えば、クレインは、「ドナルド・トランプが2024年の共和党の大統領選挙候補者になると信じるだけの理由がある。ドナルド・トランプに勝ったのは1人しかいない、その名はジョー・バイデンだ」と述べた。そして、バイデンの立候補に疑問を持つ人々に対しては、「ジョー・バイデン以外に誰がドナルド・トランプに勝てるのか、ちゃんとした答えを出した方がいい」と述べた。

※エヴァン・オスノス:『ニューヨーカー』誌スタッフライター。最新刊『荒野:アメリカの怒りの進行』がある。

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ホワイトハウスは史上初の女性大統領首席補佐官を登用する機会を失う(White House Misses Opportunity For First Woman Chief Of Staff

エリン・スペンサー・サイラム筆

2023年2月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/erinspencer1/2023/02/08/white-house-misses-opportunity-for-first-woman-chief-of-staff/?sh=4f27faf142c5

任期半ばを迎えたジョー・バイデン大統領は、今週の一般教書演説で、これまでの政権の成果について強調し、更に重要なこととして、今後の展望について演説を行った。木曜日からは、この公約を実現するために、新しい大統領首席補佐官を登用する予定だ。

新型コロナウイルス感染拡大対策の責任者だったジェフ・ザイエンツ(Jeff Zients)がロン・クレインの職場だった場所に移り、ウエストウィングの運営責任が再び1人の男性に委ねられることになる。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官という役職は、1946年に正式に創設されて以来、アメリカ政治の中心的な役割を担ってきた。その間に30人の大統領首席補佐官が誕生している。その中には「ジョン」が4人、「ジャック」が2人、「ドナルド」が2人いるが、女性は1人もいない。

政界関係者の間では、大統領首席補佐官の選択は極めて重要なものだと考えられている。大統領にとって最も重要な人事の決定であると考える人もいる。職務の詳細は政権によって異なるが、任命された大統領首席補佐官は大統領の右腕、門番、代理人、そして重要な政策決定過程の監督者として機能する。行政府の中で、ウエストウィングの動向を把握し、大統領に接近することができるのは、間違いなくこの人しかいない。結局のところ、大統領首席補佐官は選挙で選ばれたのではないが大きな力を持ち、誰がその力を持つかによって、ホワイトハウスで優先される課題が決まることが多い。

バイデン政権は「アメリカらしい」ホワイトハウスの重要性を何度も指摘し、そのために初の女性副大統領、初のジェンダーのバランスの取れた内閣、初のホワイトハウス・ジェンダー政策評議会を導入してきた。しかし、アメリカ国内の女性の収入が男性に比べて低く、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に関する法律が全米で急速に変化する中、バイデン政権は大統領首席補佐官に女性を指名しなかった。

このポストに就いた女性はいないが、そのすぐ下の役職である実務担当の次席補佐官には、ごくわずかながら女性が就いてきた。このポストは主に舞台裏で活動するものだが、女性が副官を務めることによる直接的な影響は、よく知られている。

アリッサ・マストロモナコがバラク・オバマ政権の大統領次席補佐官だった際、ホワイトハウスの女性たちは「増幅」作戦を展開した。ある女性が会議で発言すると、別の女性がその発言を繰り返し、誰が最初に発言したかに言及して、その発言が確実に伝わり、正当な評価がなされるようにした。この作戦はすぐに評判となり、ウエストウィングの文化を超えて、アメリカ全土の会議へと広がっていった。

マストロモナコは、史上最年少の女性次席補佐官であり、ウエストウィングの女性用トイレに史上初めて生理用品処理箱を設置させたことでも有名である。「もし、もっと多くの女性を政治に参加させることを真剣に考えるなら、ウエストウィングには基本的な快適さが必要だ」と、マストロモナコは『ワシントニアン』誌に寄稿している。彼女は「私の提案に異論はなかったが、それまで誰も思いつかなかったようだ」と述べている。

マストロモナコの在任中は、複数の首席補佐官が交代で就任し、当時のオバマ大統領が、「政権がいかに女性登用に積極的であるかという話題提供のために」定期的に公の場に出ていたことを考えると、一見論理的に見える決断をなぜしなかったのかという疑問もある。

バイデン率いるホワイトハウスは、大統領首席補佐官のポジションに次席補佐官ポストにいる女性を選ぶこともできたはずだ。現在2人いる運営担当次席補佐官の1人であるジェン・オマリー・ディロンは、バイデンの選挙ティームを率いた経験があり、民主党の大統領選挙を成功させた最初の女性として歴史に名を残している。推測されるリストには、更に首席補佐官の女性候補として、大統領上級顧問のアニタ・ダンやホワイトハウスの国内政策補佐官であるスーザン・ライスの名前も挙がっていた。

しかし、結局のところ、ホワイトハウスの最高幹部は男性の手に渡り、大統領、最高裁長官、統合参謀本部議長など、連邦政府で女性が就任したことのないトップ職のリストにそのまま残ることになった。

エリン・スペンサー:ニューイングランド州を本拠とする作家。ジェンダー、政治、文化の国内議論に貢献している。2018年からフォーブス誌の寄稿者を務め、政治家、企業幹部、そして宇宙飛行士にもインタヴューを行っている。ツイッターアカウント:@erinspencer93

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は膠着状態に陥っている。ロシアに対して大打撃を与えるような方法を採らずに、ずるずると戦争を引き延ばすことで、武器商人たちをどんどん肥え太らせている。アメリカ連邦議会では予算はお手盛り状態で、ウクライナへの武器支援をどんどん続けている。連邦議員たちは「この武器はこれだけでは足りない」「あの武器を支援に入れていないのはおかしい」と言って、国防総省が要求した計画よりも過大な内容を付け加えている。これは地元にある防衛産業の利益のための行動である。「ウクライナのために」と言えば、誰も反対できない。そうした中で、予算に糸目をつけずにどんどん使いまくれる、そういう状況になっている。それなのに、戦争は終わらない。ロシアに大打撃を与え、撤退させるような方策は採らない。それには「米露対決がエスカレートするのは困る」という理由付けがなされる。結局、戦争は終わらず、武器だけがどんどん使われて、アメリカ国民の税金が浪費されていく。日本にも請求書が回ってくることになるだろう。
vitoriaspartz512
ヴィクトリア・スパーツ

 アメリカ連邦下院議員の中に、ウクライナで生まれ育ち、大学を卒業してからアメリカに移民した人物がいる。ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員(インディアナ州選出、共和党)だ。1978年生まれで43歳、当時はまだソ連の一部であったウクライナに生まれた。国立キエフ経済大学で学士号と修士号を取得後、2000年にアメリカに渡り、2006年にアメリカの市民権を取得した。インディアナ大学で会計学の修士号を取得し、会計士と不動産業者として働いていた。2017年からはインディアナ州上院議員となり、2020年の選挙で連邦下院議員に当選した。スパーツは当然のことではあるが、ロシア語、ウクライナ語、英語が堪能である。スパーツはウクライナ生まれで初めての米連邦議員となった。新人議員としてのスパーツは短気なことで有名で、議員事務所のスタッフがいつかないことが話題となった。

 ウクライナ戦争開戦直後、スパーツはアメリカによるウクライナ支援を訴えた。これは当然の行動だ。戦争開始後からウクライナを6回も訪問している。スパーツの発言には一気に重みが付いた。彼女は大学卒業までウクライナで生まれ育ったのだ。親族、友人、知人のネットワークは大きいだろうし、言葉に不自由しないということは大きい。米連邦下院議員という地位もあって、ウクライナ政府からも情報が入るだろう。そして、ウクライナ政府の情報のコントロールを受けずに、ウクライナ国民の生の声を集めることが出来るということある。ウクライナに関してスパーツの発言が重要になるのは当然だった。
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バイデンとスパーツ(バイデンの隣)、カマラ・ハリス副大統領もいる

 スパーツが「ロシアを強く非難する」「どんどんウクライナに支援を行うように求める」態度から「支援はきちんと届いているか、使われているか、汚職の温床になっていないかの監視を行う」「ゼレンスキー政権の汚職に関わっている人物の更迭を求める」という態度に変化したことで、ウクライナ政府は困惑しつつも、スパーツを非難するようになった。アメリカ政府関係者たちもスパーツの態度の変化に困惑している。
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アンドリー・イェルマーク(左)とヴォロディミール・ゼレンスキー

 スパーツはウクライナ大統領府長官アンドリー・イェルマークを更迭するように求めている。そして、興味深いことに、バイデン大統領に宛てた書簡の中で「ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はイェルマークを高く評価しているのを承知している」と書いている。この一文の解釈は難しいところである。しかし、ウクライナ戦争に関して、サリヴァンが何かしらの計画の立案と実行に関与している、その一部がイェルマークだと述べていると私は考えている。今回のウクライナ戦争に関して、ホワイトハウス(アメリカ大統領府)ではサリヴァン、ウクライナ大統領府ではイェルマークが何かしらの計画を立案して実行した、ウクライナ戦争を仕組んだのはこの2人だとスパーツとウクライナ国民の一部が考えているということになるのだろう。そして、スパーツの態度の変化をこれと併せて考えるならば、スパーツやウクライナ国民は当初ロシアによる侵攻ということで、愛国心に燃えて闘志を高めてロシアと戦っていたが、その内にどうもおかしいということになった。自分たちは騙されているのかもしれない、という考えを持つに至ったということになるのではないかと思う。
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イェルマーク(左)とジェイク・サリヴァン(その隣)

 ジェイク・サリヴァンに関しては、昨年の米軍のアフガニスタン撤退から、その外交政策に関して批判が出ている。以下にその批判に関する記事も紹介している。ここからは私の憶測だ。このようなシナリオではないかと私は考えている。ジェイク・サリヴァンはアメリカの強敵であるロシアと中国に対して、何とか打撃を与えてバイデン政権の外交政策の成功と自身への評価を高めようと考えていた。現在のアメリカの国力では中露両国を同時に相手にして戦うことはできない。そこでまず、ロシアを叩いておいて、中国に対峙しようと考えた。ロシアをウクライナに引き込んでおいて、ウクライナに徹底抗戦をさせながら、西側諸国でロシアへの経済制裁を行って、ロシアを締め上げて敗退させる。そうなればロシアとウラジミール・プーティン大統領にとっては大打撃となり、ロシア国内に付け入るスキが生まれ、ロシアを政権交代から体制転換にまで追い込むことができる。ロシアが中国から離れれば中国はユーラシア大陸で大きな圧迫を受けるようになる。クアッドにロシアを組み入れれば、中国を孤立させることができる。

 しかし、実際にはロシアを早期に敗退させることができず、戦争は膠着状態に陥った。アメリカが直接ロシアと対決すれば、核戦争までエスカレートしてしまうことになるので、米軍を派遣することはできないし、高性能の戦闘機を供与し、飛行禁止区域を設定することもできない。また、西側諸国以外の国々が対ロシア経済制裁に参加しないことで、対ロシア経済制裁の効果は限定的となった。更には、エネルギー資源をロシアに頼っていたヨーロッパ諸国はエネルギー価格の高騰に苦しむことになった。頭脳明晰なジェイク・サリヴァンの完璧な計画は失敗に終わった。ヴェトナム戦争における「ベスト・アンド・ブライティスト」たちの事例が類推される。

 ウクライナ戦争に関しては停戦の目途が立っていないが、一日も早く停戦することだ。それが世界のためだ。人々の興味関心は移ろう。あれだけウクライナ頑張れ、ロシアをやっつけてやると盛り上がっていた、日本国内の人々が今では統一教会と自民党(をはじめとする政界)の関係に熱狂している。ニューズは消費されるがウクライナ国民の苦難の生活は続く。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ生まれの米共和党議員、祖国の政府を痛烈批判 同僚から「乱暴者」と苦言も

CNN

2022年8月8日

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567.html

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567-2.html

https://www.cnn.co.jp/usa/35191567-3.html

(CNN) 米国の超党派の議員グループが今年3月にウクライナ国境を訪問した際、思いもかけないゲストが姿を現した。共和党のビクトリア・スパーツ下院議員(インディアナ州選出)だ。

スパーツ氏は米連邦議会初のウクライナ生まれの議員で、歯に衣着せぬ発言を通じて祖国を擁護する。この時の議員団への参加について関心を表明していたものの、招待はされていなかった。議員団の構成は下院外交委員会が中心で、スパーツ氏は同委の所属ではないためだ。

そこで同氏は自腹でポーランドに渡航。ウクライナとの国境で議員団に合流し、現地での会合の一部に加わった。事情に詳しい複数の情報筋が明らかにした。

事前に伝えられていなかったスパーツ氏の参加は議員らを驚かせたが、当初は歓迎ムードだった。議員らはウクライナのため、西側諸国から支援を集めようとしていた。同国は1週間前からロシアによる残虐な攻撃にさらされていた。

ところがウクライナ訪問に参加した複数の議員らによると、スパーツ氏の「論争的」で「非難めいた」姿勢は、北大西洋条約機構(NATO)の関係者らを交えた会合にとって「無益」だった。その場にいることがむしろ有害ではないかという懸念も浮上したという。

共和党議員の1人は当時のスパーツ氏について、「我々議員代表団をぶち壊した。物事を台無しにする乱暴者といった感じだった」「鬱積(うっせき)した不満があったのか、正しい情報が十分得られていないと感じていたのか、それは分からないが、とにかく非難がましく無礼な態度だった」と振り返った。同僚議員に対してより自由に発言するため、また話題の性質が繊細なものであることを念頭に、この議員は他の議員と同様に匿名を条件に取材に応じた。

スパーツ氏はCNNに宛てた電子メールで匿名の批判に反論。「こうした非難は卑劣で、事実を正しく説明していない。一部の妬(ねた)み深い議員やスタッフによるものだ。極めて実りある活動を超党派で行ったのが、3月の議員代表団だった」と述べた。

スパーツ氏の言動への党派を超えた不満は、これだけで終わらなかった。戦争開始からおよそ6カ月の間、スパーツ氏はウクライナ政府に対する公の批判を継続。同国政府並びにゼレンスキー大統領の最側近らが絡むとされる汚職疑惑を広めている。これに対して同僚議員らからは、親ロシア派の主張をそっくり代弁しているとの非難の声が噴出している。

43歳の実業家であるスパーツ氏は公私において、ウクライナに勝利してほしいとの主張を繰り返す。自分が攻撃するのはあくまでもウクライナ政府であり、それがロシアに対する勝利の妨げとなり得るあらゆる障害を取り除く一助になるとの認識を示す。侵攻開始以降、6回にわたってウクライナを訪れ、ロシアにも常に非難の声を浴びせている。2日にはツイッターに、ロシアをテロ国家と宣言するべきだとのコメントを投稿した。

それでもスパーツ氏がゼレンスキー氏とその顧問らに向ける敵意に満ちた物言いは、共和・民主両党の議員やホワイトハウスの当局者、ウクライナの国会議員を一様に苛(いら)立たせている。彼らはスパーツ氏によって、団結してウクライナを支えようとする自分たちの取り組みが台無しになるのではないかと危惧するほか、一体同氏がどこから情報を得ているのか率直に疑問を呈してもいる。そうした状況は十数人あまりの議員、側近、政権内の情報筋にインタビューした結果明らかになった。

バイデン政権による度重なる状況説明や、共和党の有力議員からの私的な嘆願にも、これまでのところスパーツ氏の声高な批判を抑え込む効果はほとんどないと、情報筋は話す。

ここへ来てスパーツ氏は、国防強硬派にとってもある種厄介な存在となりつつある。彼らはすでに、国外で続く戦争に対する倦怠(けんたい)感が米国内で生まれるのを懸念している。また同氏がウクライナ批判を続ける中、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」をスローガンに掲げる共和党の一派からは、ウクライナに兵器と支援物資を送り続けることについて懐疑的な見方が出てきてもいる。

スパーツ氏自身は、ウクライナへの兵器などの迅速な供与を可能にする重要法案成立を強く支持してきた。ウクライナ向けの兵器に対するより厳格な管理も呼びかけており、これには議員らも党派を超えて賛同している。その強い物言いに不満を抱きつつ、祖国を救いたいという必死さの表れだとしてスパーツ氏の擁護に回る議員も一部にはいる。

スパーツ氏はCNNへのメールで自らの情報源について説明。情報の入手先は現地にいる真のプロフェッショナルたちであるのが常で、ウクライナに足を踏み入れたこともない学者や雇われ政治家たちからではないとした。またロシアのプーチン大統領の術中にはまっているのはいわゆる「外交エリートたち」であって自分ではないとも付け加えた。

「人々の命も深く気にかけている。ごく普通のウクライナ人と、勇敢なウクライナ軍の命を。たとえ受けの良くない真実を口にして政治家たちを怒らせたり、大衆受けする今どきの言説から離れていくとしても、そうした人々を失望させることはできない」「決してあきらめないし、負けを認めるつもりもない。ウクライナを1つにし、ウラジーミル・プーチンを倒すため、できることは何でもやる」(スパーツ氏)

米軍制服組トップと会談

スパーツ氏は米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長との会談も要請した。米政治専門サイト「ポリティコ」が最初に報じたこの会談で、スパーツ氏は改めてウクライナ国内の汚職に関する懸念に言及。米国の供与した兵器が本来向かうべきところに行っていないと主張した。

情報筋によれば、ミリー氏はスパーツ氏の懸念を完全には否定しなかった。米国の当局者らは、依然として汚職がウクライナ国内における問題であり続けているとみている。最近ウクライナ側と交わした電話会談の中で、ミリー氏とサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ブリンケン国務長官は、ウクライナが国内の汚職に関して「自分たちの改革政策を実行し続けることが重要だ」と指摘。「戦争により複数の課題が生じていようと」、その点は変わらないと論じた。ホワイトハウスが提供した電話会談の要約から明らかになった。

とはいえ全体を通してミリー氏は、スパーツ氏の懸念が度を越したものであることを本人に説明したと、上記の情報筋は述べた。スパーツ氏はCNNに対し、ミリー氏について、当該の会談以前にも話し合う機会があったと明かした。自分の意見に耳を傾けてくれる相手として信頼しているとも述べた。

ミリー氏との会談から数日後、スパーツ氏はなおもゼレンスキー氏の最側近の1人を糾弾。「戦争の継続を装い、独裁そのものの体制を作り上げている」と非難した。

下院共和党トップのマッカーシー院内総務はCNNの取材に答え、スパーツ氏のウクライナ政府批判について個人的に本人と話をしたことはないと述べた。ただこの問題に対するスパーツ氏の熱意は、戦争への注目を集めることに寄与したと称賛。とりわけ紛争開始当初はそうだったと指摘した。

そのうえで、スパーツ氏自身の家族がウクライナにいるという事情から、本人がこの問題に極めて強い感情を抱いていることは理解する必要があると語った。

国外でも懸念の声

スパーツ氏の言動に対する懸念は米国内にとどまらない。元米中央情報局(CIA)アナリストのエリッサ・スロトキン下院議員(民主党・ミシガン州選出)は、最近受け取ったウクライナの国会議員からのテキストメッセージに言及し、同国でのスパーツ氏評を明らかにした。それによると、スパーツ氏が「利用されている」のかどうかは判然としないものの、「本人のウクライナでの評判はがた落ちになった」というのが議員らの見解だという。

「指導者層は皆、この話題で持ちきりだ。彼らは気分を害している」「彼らには、なぜ彼女がこんなことをするのか理解できない」(スロトキン氏)

過去数カ月のスパーツ氏の言動を巡り、ウクライナの当局者らは一段と警戒感を募らせていると、現地の情報筋はCNNに明かす。とりわけ大統領府の長官を務めるアンドリー・イェルマーク氏に対する執拗(しつよう)な攻撃が問題視されているという。先月のツイートでスパーツ氏はイェルマーク氏の「非民主的な統治」を非難。世界的に「評判の悪い」人物と断じた。また同月8日にはバイデン氏に送った書簡の中で、イェルマーク氏及び「同氏が行ったとされるロシアと関係のある取り引き」に特化した状況説明を求めた。

イェルマーク氏がロシアとビジネス上のつながりを有しているとの疑惑は、戦争前にラジオ・フリー・ヨーロッパが報じた内容と同様のものだ。ただ同氏がクレムリンの影響下にあるとの証拠はなく、本人も疑惑を否定している。

ウクライナの当局者らは、スパーツ氏の動機に疑問を投げかける。6月24日、ゼレンスキー氏の側近の1人に送ったテキストメッセージの中で、スパーツ氏は同側近を「然るべき人物に引き合わせる」と提案している。本人によればウクライナ軍の勝利に貢献できる人物だという。

このテキストメッセージについて尋ねられたスパーツ氏は、ウクライナが戦争に勝てるよう手を貸したい人々との関係作りを手伝いたかっただけだと説明。具体的には、自身の友人でもある複数の退役軍人を指しているとした。

情報筋によれば、ウクライナの当局者らはイェルマーク氏とスパーツ氏の会談の場を設置すると申し出たが、スパーツ氏はこれを辞退した。同氏はCNNに対して会談の申し出があったことを認めたものの、当時ウクライナ外務省がイェルマーク氏への攻撃を「ひねくれた」、「根拠のない」ものと批判したと指摘。

「そのような状況では、会談を開いても得るものがないと判断した」と語った。

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ウクライナ出身の同僚がゼレンスキーを打ちのめすのを見て共和党はうろたえる(Republicans wince as their Ukrainian-born colleague thrashes Zelenskyy

-ヴィクトリア・スパーツは、春にキエフを支援する共和党の主導権を取った。今、スパーツの同僚議員たちは、彼女がその努力を台無しにしているのではないかと心配している。

アンドリュー・デジデリオ、オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2022年7月15日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2022/07/15/republicans-spartz-ukraine-zelenskyy-00045949

連邦下院共和党は、ウクライナ生まれのヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員に、ロシアの戦争に反対を表明するための切望されたプラットフォームを与えた。彼らはそのことを後悔している。

スパーツ議員(インディアナ州選出、共和党)は、ウクライナ戦争開戦以降、ウクライナを6度訪問し、この紛争について熱心に語ってきた。しかし、最近、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とその側近に対する激しい批判で民主、共和両党の議員に衝撃を与えた。先週末にはウクライナ外務省から「根拠のない憶測で政治的な興味関心を集めようとしている」と非難される珍しい出来事も起きた。

連邦下院共和党の内部では、スパーツの姿勢が最悪のタイミングで米・ウクライナ関係を悪化させ、西側同盟の弱体化を狙う勢力に翻弄されているのではないかとの懸念が広がっている。また、共和党の国家安全保障タカ派は、ウクライナ支援に既に抵抗を示している党内の「アメリカを再び偉大に(MAGA)」派が、スパーツの発言を正当化するのではないかと懸念している。

彼らは、スパーツがゼレンスキーと公然と袂を分かったこと、そしてゼレンスキーの側近たちに対する彼女の汚職告発が、中間選挙が近づく中、アメリカのこれからのウクライナ支援に亀裂が入ることを懸念している。

連邦下院外交委員会に所属するある共和党議員は、率直に話すためには匿名が条件だとして、同僚スパーツについて次のように話した。「彼女の純真な無知さはアメリカ国民を傷つけている。私たちがやろうとしていることに彼女は役に立たないし、彼女が主張している事実とやらが正確かどうかも不明だ。私たちはウクライナの指導部についてしっかり調査している」。共和党は、スパーツの発言は戦争に対する努力を「傷つける」可能性があると警告した。

スパーツの発言についてコメントを求められた連邦下院の共和党幹部は、同じ理由から匿名で発言したが、何とも率直な返事をした。「おいおい、なんてこった」。

スパーツについて率直に話すために匿名を条件とした、3人目の連邦下院共和党議員によると、彼女は所属していない委員会のブリーフィングや会議に割り込んでくるという評判で、連邦下院外交委員会では複数の議員が密室で彼女の発言を取り上げようとしたという。

バイデン政権も巻き込まれている。スパーツの発言によって、キエフを擁護する西側連合の結束を損ないかねないという懸念が高まっている。連邦下院外交委員会のある補佐官は、匿名を条件に、米国情報機関が金曜日の朝に、連邦下院外交委員会に対して、機密扱いでスパーツの主張について説明する予定であると語った。

ゼレンスキー大統領の政敵たちは公然とスパーツ議員を応援しているが、国が生き残りをかけて戦っている間、国内政治のいさかいはほとんど脇に追いやられている。ドナルド・トランプ前大統領の最初の弾劾の要素である、ウクライナの腐敗に関する西側諸国の長年の懸念も、ロシアの侵略に対する国内外の結束を育むという目的のために棚上げされている状態だ。

ウクライナの独立国家としての将来がゼレンスキーとの同盟にかかっている時に、スパーツはゼレンスキーと彼の顧問の古い汚れを掘り起こしているとスパーツの批判者たちは口々に非難している。

ウクライナ関連法案でスパーツと組んだことのあるリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、「私は彼女の批判には共感しない。ゼレンスキー政権とウクライナ国民は、この瞬間に立ち上がることができたと信じている。ウクライナ国民と選挙で選ばれた指導者が共に立ち上がることは、私たちの国家安全保障上の利益となる」と述べた。

スパーツは、声明やインタヴューの中で、ウクライナに流入するアメリカ製兵器の監視を強化するよう求めており、この問題は超党派の関心を集めている。

しかし、スパーツはまた、ゼレンスキーが「政治をもてあそび」、紛争の深刻さを「理解していない」と非難している。また、アンドリー・イェルマーク大統領府長官に対しては、ウクライナ大統領府長官がロシアの懐に入っていると非難し、イェルマークに対する聖戦を開始した。

この発言は、ゼレンスキー大統領の政敵が過去に事実無根の疑惑を投げかけてきたもので、彼女は何年も前の疑惑を持ち出している。スパーツは、戦争努力を阻害したイェルマークを解任すべきだと考えていると公言した。他の人々は、スパーツ自身の行動が戦争努力を阻害していることは否定できないと批判している。

スパーツは、この記事のためにオフレコで質問に答えることを拒否したが、彼女の事務所は、ゼレンスキー政権に対する彼女の批判を擁護する文書を『ポリティコ』誌に提供した。彼女は以前、自分の間違いを証明する責任をイェルマークや他の人に負わせたことがある。

そして、彼女には後悔している様子はない。

スパーツは次のように述べている。「ウクライナで生まれ育ち、戦争が始まってから6回も訪れているので、現地の状況を総合的に理解している。私たちの機関が意図するように、熟慮なしに反応的になるには、利害関係が高すぎる」。

共和党の新人議員としてスパーツはゼレンスキー氏の側近たちを追いかけていた。この当時、スパーツはスタッフの定着率の悪さで話題になったことがあった。現在のそして元のスタッフたちはポリティコ誌の取材に対して、スパーツが繰り返しスタッフを非難する敵対的な職場環境を作り出していたことについて説明した。

この夏、43歳の彼女はゼレンスキーを悩ませる人物になり、3月1日にバイデン政権が母国で起きている危機にもっと力強く対応するよう、涙ながらに熱く訴えた時とは打って変わったメッセージを発するようになっている。ロシアの血生臭い攻撃から生き延びた家族の苦労を語るスパーツの背後には、ウクライナの国旗に合わせた青と黄色の服を着た連邦下院共和党幹部と数十人の議員が立ち、同意してうなずいていた。

それから4カ月余り、彼女がこの問題で権威ある発言者であるというシグナルは、会議ではほとんど見られなくなった。ロシアによるウクライナ攻撃自体が共和党内で政治的な茨の道となる状況下で、ウクライナ問題で同僚を公に非難することを望む同僚はいないのだが、スパーツの最新の態度は内心多くの同僚を困惑させている。

スパーツには連邦下院共和党の中にも擁護派がいるが、彼らの多くは彼女の発言を取り上げて、彼女が善意でこの問題に熱中していることを主張している。

連邦下院少数党(共和党)院内幹事スティーヴ・スカーリス連邦下院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は今週の記者会見で次のように述べた。「ヴィクトリアは、ウクライナの人々がプーチンに対抗するために必要なツールを手に入れることを強く支持してきた。彼女はこのことに非常に情熱的だ。そして結局のところ、彼女と話した限りでは、彼女の心と魂は、ウクライナの人々がプーティンの軍事攻撃を押し返すのを助けることに結びついている」。

スパーツは、イェルマークとゼレンスキー政権が不適切な行動を取ったという主張の情報源を挙げることを拒否している。一方、ウクライナ政府関係者だけでなく、制裁政策でイェルマークと直接仕事をしているマイケル・マクフォール元駐ロシア大使のようなアメリカ人からも、大きな反発を受け続けている。

マクフォールはインタヴューで次のように述べた。「イェルマークは親ロシア派とは考えられない。彼は反プーティンで、プーティンの野蛮な政権に強く反対している。もしイェルマークが新ロシアであるならば、なぜ彼は私たちのグループに、ロシア人を制裁するための新しく創造的な方法を考えるよう勧めるのだろうか? そして、なぜロシア政府は、私の研究助手さえ含む、私たちのワーキンググループの多くのメンバーを制裁するのだろうか?」。

クリストファー・ミラーがこの記事に貢献した。

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ウクライナ外務省がゼレンスキー大統領府長官に関する「根拠のない憶測」でスパーツ連邦下院議員を非難(Ukrainian Foreign Ministry hits Rep. Spartz over ‘baseless speculation’ on Zelensky chief of staff

キャロライン・ヴァキル筆

2022年7月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3551138-ukrainian-foreign-ministry-hits-rep-spartz-over-baseless-speculation-on-zelensky-chief-of-staff/

ウクライナ外務省報道官は、ウクライナ出身のヴィクトリア・スパーツ連邦議員(インディアナ州選出、共和党)が、ウクライナ大統領府長官を務めるアンドリー・イェルマークAndriy Yermak)に関してジョー・バイデン米大統領に手紙を送り、「必要ではない政治的な興味関心を引こうとしている」と主張した。

ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官は土曜日にフェイスブックに投稿し、その中で次のように書いている。「ウクライナは、ロシアの侵略との戦いにおけるアメリカの揺るぎない支援に深く感謝している。4ヶ月に及ぶ全面戦争において、連邦議会とジョセフ・バイデン政権が我が国に提供した政治的、軍事的、財政的援助は過大評価することが難しいほどだ。これらの取り組みを強化する上で、バイデン米大統領の個人的な役割を称える」。

ニコレンコ報道官は続けて次のように述べた。「このような広範な支援の背景と、ヴィクトリア・スパーツ米連邦下院議員の最近の行動や声明が特に対照的となっている。それらは、ウクライナ指導部が一見するとロシアとつながっているように見えるというロシアのプロパガンダの古典的な物語をアメリカの政治に持ち込み、私たちの国をアメリカの国内政治に引きずり込もうとする非公開の試みだ」。

ニコレンコは、スパーツが金曜日にバイデンに送った書簡に言及した。スパーツからの書簡は、バイデン政権に対し、イェルマークに関連して行われた事前調査(デュー・デリジェンス)と監視監督手続きについて連邦議会に説明するよう求め、米国内外の人々がこのウクライナ高官について懸念していると警告を発している。

スパーツ議員はバイデン大統領に宛てた書簡の中で、「ゼレンスキー大統領は西側諸国と我が国との同盟関係を築くために懸命に努力している。そうした中で彼の周りの重要人物に何か懸念があるかもしれないという可能性が考えられるのならば、そのことをゼレンスキー第伊藤亮に知らせることは私たちの責任だ。また、私たち全員のために自由と国際秩序のためにこの戦いを戦っている勇敢なウクライナ人兵士と頑強なウクライナ国民に対する義務でもある」と書いている。

ニコレンコは、スパーツのコメントは「冷笑的」で「根拠のない憶測」であると主張した。

土曜日の声明で、スパーツはニコレンコのフェイスブックへの投稿に反応し、イェルマークに対して一連の疑惑を呈した。

スパーツは、イェルマークが戦争前のモスクワとの和平交渉に適切に対処せず、ウクライナが紛争に適切に備えることを妨げようとし、緊急の軍事装備の購入を遅らせたと主張した。また、ウクライナの作戦をベラルーシとロシアにリークして失敗させたという主張もある。

「私は、ウクライナ外務省がこれまでのような中傷的な攻撃をするのではなく、イェルマーク氏に関するこれらの質問が要求しているような真剣さで私の声明を検討することを勧める。ウクライナ人とアメリカ人は、私たちの政府が防衛的な決まり文句ではなく、適切な注意を払って対応することで、より良いサーヴィスを受けることができる」と述べた。

スパーツの発言は、ロシアによるウクライナへの侵攻が100日以上続いている中で行われた。インディアナ州選出の共和党所属のスパーツ議員は、ウクライナ戦争中に何度かウクライナを訪れている。

バイデン政権は金曜日に、解体弾、高機動ロケットシステム4台、戦術車両3台などを含む4億ドルの安全保障支援パッケージをウクライナに送ることを発表した。

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ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員からジョー・バイデン大統領へ宛てた書簡

https://spartz.house.gov/sites/evo-subsites/spartz.house.gov/files/evo-media-document/Spartz%20Letter%20to%20Biden_Yermak%20_red.pdf

(本文はここから)

親愛なる大統領閣下(Dear Mr. President,

連邦議会の監視調査の一環として、私は、2022年7月12日に予定されている連邦議会の監視ブリーフィングで、ゼレンスキー大統領の大統領府長官を務めるアンドリー・イェルマークに関連して行われた事前調査と監視監督手続きについて連邦議会に説明するよう大統領府に要請する。

ウクライナにおけるイェルマーク氏が行った様々な情報活動と行動に基づき、連邦議会はこの情報を緊急に入手する必要がある。この紛争への私たちの物質的な関与を考慮すると、私たちの援助が間違った人々の手に渡らないようにするために、アメリカ国民に対してこのレヴェルの厳密さと説明責任を負う必要がある。ウクライナは、これまでそうではなかったが、紛争が始まり残念なことではあるが、貴政権からのセキュリティ支援のレヴェルとスピードを上げることを緊急に必要としている。

ゼレンスキー大統領は西側諸国と我が国との同盟関係を築くために懸命に努力しているので、彼の周りの重要人物に何か懸念があれば、彼に知らせるのが私たちの責任である。また、私たち全員のために、自由と国際秩序のためにこの戦いを戦っている勇敢なウクライナ人兵士と強いウクライナ人に対する義務でもある。

加えて、イェルマーク氏が汚職撲滅のための法執行の副官としてオレグ・タタロフ氏を任命したことに私は注意を喚起したいと。タタロフ氏は、ご存知のように、独立汚職防止検察官の任命を1年以上遅らせ、専門汚職防止検察局と国家汚職防止局(National Anti-Corruption BureauNABU)を機能不全に陥らせている。タタロフ氏は、任命前の2020年にNABUによる捜査を受けていたが、そこで不適切に通常の検察官に送致され、事件は解決された。また、タタロフ氏はヤヌコビッチ前大統領の下でユーロマイダン抗議者たちを起訴した警察幹部でもあった。

イェルマーク氏は、米国内外の様々な人々に多くの懸念を抱かせているが、あなたの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、イェルマークを高く評価していると思われる。この緊急の案件について、これらの疑惑を肯定するか否定するか、一刻も早く連邦議会でご回答いただきたい。ブリーフィングの詳細については、私の事務所に直接ご連絡いただきたい。迅速なご返答をお待ちしている。

親愛の情を込めて

ヴィクトリア・スパーツ

連邦下院議員(インディアナ州第5選挙区)

CCにて、アントニー・ブリンケン国務長官、ブリジェット・ブリンク駐ウクライナ米国大使

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スパーツ議員:ゼレンスキー大統領はイェルマークに関わる問題を真剣に処理しなければならない(Spartz: President Zelensky Must Address the Yermak Issue

2022年7月9日

ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員事務所プレスリリース

https://spartz.house.gov/media/press-releases/spartz-president-zelensky-must-address-yermak-issue

ワシントDC発。ゼレンスキー大統領が、狡猾な敵と危険な戦争を戦っていることを承知している。彼は国を守るために国際的な支援の構築に多くの時間を費やしているが、大統領府のトップであるアンドリー・イェルマークという長引く内部問題を抱えている。

私はこの3カ月間、ウクライナで多くの時間を過ごした。地域や政府のリーダー、戦闘員、そして一般市民に会ってきた。私は、ウクライナは民主政治体制の強国であり、若い才能の育成機関であり、アメリカがパートナーシップを強く求めている地域において、アメリカの真の同盟者となる可能性を持っていると信じている。そして、共産主義独裁政権下のウクライナで育った者として、自由を愛する全ての人々の最善の利益は、常に私の心と行動の中に存在する。

アメリカ人、ウクライナ人、そして世界中の多くの人々から受けている強い支持に基づき、私はなぜ私の発言がウクライナ外務省の神経に触れたのか理解することができた。

ウクライナ外務省には、これまでのような私に対する中傷ばかりの攻撃ではなく、イェルマーク氏に関する疑問について、真摯な態度で私の発言を検討することを求めたい。ウクライナ人とアメリカ人は、ウクライナ政府が保身だけの決まり文句ではなく、適切な注意を払って対応することで、より良いサーヴィスを受けることができるだろう。

イェルマーク氏に対する重大な疑惑を複数列挙し、彼自身に対処してもらうことにしよう。

ウクライナによる「ワーグナー・グループ(Wagner Group 訳者註:ロシアの民間軍事会社、準軍事組織のネットワークでウラジミール・プーティン露大統領の私兵とも評されている)」捕獲作戦について、ベラルーシ、ひいてはロシアに情報を漏らし、失敗させた。ヘルソン市防衛を放棄し、「アゾフ」大隊の悲劇を実現するためにロシアに与えた。ウクライナ国防省を通じた緊急軍事装備の購入を遅らせ、不当あるいは違法な条件さえ要求した。オレグ・タタロフ副官を通じて独立汚職防止検察官の任命を意図的に遅らせた。

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ロシアが侵攻する中、スパーツ連邦下院議員が母国ウクライナを訪問(Rep. Spartz makes latest trip to native Ukraine amid Russia’s invasion

モニク・ビールス筆

2022年6月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3512742-rep-spartz-makes-latest-trip-to-native-ukraine-amid-russias-invasion/

ヴィクトリア・スパーツ連邦下院議員(インディアナ州選出、共和党)は今週末、ロシアの侵攻が始まって100日以上が経過し、少なくとも4回目の母国ウクライナを訪問した。

チェルニヒフ州政府高官ヴィヤチェスラフ・チャウスがSNS「テレグラム」に投稿した内容によると、スパーツはロシア軍から激しい空爆を受けたウクライナ北部の都市チェルニヒフで2日間過ごしたということだ。チャウスは、スパーツが「私たちの都市と地域を再建する可能性について研究・検討を行った」と述べた。

チャウスはスパーツ訪問に関連して「我々は、再建が実行できるという良い見通しを持っている。詳細は後ほど述べる」と付け加えた。

スパーツは、ウクライナに対するアメリカからの支援全てについて、連邦議会できちんと監視するよう求めている。5月の3度目の訪問の際の声明で、スパーツは連邦議会が「納税者の資源が必要な人々に届き、効率的に使われていることを確認しなければならない」と述べた。

スパーツは以前から、ロシアの攻撃とウラジミール・プーティン大統領に対して激しい口調で非難してきた。

ロシアによる侵攻が開始された際、スパーツは「これは戦争ではない。これは狂人によるウクライナの人々の大量虐殺だ」と述べた。

ウクライナに戦闘機を派遣したり、飛行禁止区域を設定したりすることに抵抗しているバイデン大統領について、スパーツは「口先だけ。何もしない」とも語った。

スパーツ議員は戦争開始から1週間ほど経った頃に「大統領は何をやっているのだろうか? 何百万人が死ぬまで待つつもりなのだろうか?それから何かを更なることを実行するつもりなのか? 私たちには道徳的な義務だけでなく、自由世界のリーダーとしての義務があるのだ」と語った。

今週、バイデン政権は、長距離ロケットシステムを含む7億ドルの武器パッケージをウクライナに供与する計画を発表する予定だ。

しかし、バイデン大統領は以前、記者団に対し、戦争がより大規模な紛争にエスカレートする懸念があるため、アメリカは「ロシアに打撃を与えるロケットシステムをウクライナに送るつもりはない」と述べている。

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(貼り付けはじめ)

オバマ大統領の元補佐官が、バイデンはアフガニスタンに関してサリヴァンを更迭すべきと発言(Ex-Obama adviser argues Biden should fire Sullivan over Afghanistan

ジョセフ・チョイ筆

2021年8月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/568038-former-obama-adviser-argues-biden-must-fire-sullivan-over-afghanistan/

オバマ政権のホワイトハウスで補佐官を務めた人物が月曜日、タリバンがアフガニスタンを占領したことを踏まえ、バイデン大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンを更迭すべきだと主張する論稿を寄稿した。

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ブレっと・ブレエン

オバマ大統領の国際関与部長を務めたブレット・ブレエンは『USAトゥディ』紙に燐光を発表しその中で、一緒にオバマ政権で働いたサリヴァンについて、国家安全保障問題担当大統領補佐官としてすべての点を考慮して落第していると主張した。

ブレエンは次のように書いている。「国家安全保障問題担当大統領補佐官には2つの仕事がある。その名が示しているように、シチュエーションルームにおいて、大統領にとって最後のそして理想的には最も近い助言者である。2つ目の仕事は、アメリカ軍最高司令官の決断と指令を実際の政策に転換することだ。時には権力者に対して真実を話すことが必要だ。これら全ての点で、現職であるサリヴァンは落第しているように見える」。

ブルエンは、サリヴァンは外交政策の理論や議論には精通しているが、海外での経験が不足しており、それが「アイデアと実行の断絶」につながっていると指摘した。

"そうなのだ、バイデンはアフガニスタンからの撤退を望んだ。サリヴァンは、潜在的な落とし穴や問題を確実に回避しながら大統領の目標を達成する方法を考えなければならなかった。そうしたことが起きなかったのは明らかだ」とブルエンは書いている。

ブルエンは、サリヴァンが、バイデンの明確な要望にただ「従う」のではなく、「仲介」するべきだったと主張している。ブルエンは、バイデン政権はこれまで「外交政策に関しては、実質よりもスローガンに強い」との見解を示している。

オバマ大統領の元顧問ブルエンはまた、キャリア外交官ではなく、「政治家タイプ」の人物たちが非常に影響力のある地位に就くことが多いことを嘆いている。

ブルエンは次のように書いている。「国家安全保障機構全体にわたるこれらの人事は、このティームの到着に伴う傲慢さの反映である。彼らは、いくつかの主要な国際問題についての専門家の懸念や警告をほとんど無視してやってきたのだ」。

本誌はブルエンの論稿についてのコメントをホワイトハウスに求めた。

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元オバマ大統領補佐官:ジョー・バイデン大統領がアフガニスタンの失敗を理由にして国家安全保障問題担当大統領補佐官を更迭しなければならない理由(Ex-Obama adviser: Why Biden must fire his national security adviser for Afghanistan failure

-アメリカの安全を守るためにジョー・バイデン大統領が配置した人材、計画、プロセスはうまくいっていない。

ブレット・ブレエン筆

2021年8月16日

USAトゥディ』紙

https://www.usatoday.com/story/opinion/2021/08/16/afghanistan-disaster-why-bidens-foreign-policy-team-failed-america/8145997002/

ジョー・バイデン大統領は彼の国家安全保障ティームの入れ替えをする必要がある。

アフガニスタンで繰り広げられた惨劇は、ホワイトハウスにおける他の大きな問題を物語っている。大統領がアメリカの安全を守るために導入した人材、計画、プロセスは機能していない。

バイデン大統領が重要な地位に選んだ人物たちは、自分たちの思い込みに挑戦することがまたもできなかった。それが悲しいことに、国家安全保障会議の歴史上、最も不必要に恥ずかしい一日につながってしまった。

国家安全保障問題担当大統領補佐官には2つの仕事がある。その名が示すように、シチュエーションルームにおいて大統領に最後にそして理想で言えば最も近い助言者である。

彼らの2つ目の任務は、アメリカ軍最高司令官の決定と指示を実際の政策に転換させることだ。そのためには、権力者に対して真実を語ることが必要な場合もある。この点で、現職のジェイク・サリヴァンは失敗しているように見える。

私は、オバマ政権でジェイク・サリヴァンと一緒に仕事をした。彼は、非常に優秀で、そのため、ヒラリー・クリントン国務長官、その後はジョー・バイデン副大統領のスタッフとして、記録的なスピードで昇進した。

サリヴァンは外交政策における理論や学問的な議論は全て知っているが、海外での経験はそれほど豊富ではない。それが、アイデアと実行の断絶につながることもある。

そうなのだ、バイデンはアフガニスタンからの撤退を望んでいた。サリヴァンは、潜在的な落とし穴や問題を確実に回避しながら、大統領の目標を達成する方法を考えなければならなかった。しかし、それが実現しなかったのは明らかだ。

ここ数日、私たちが見てきたように、彼のボスであるバイデンの考えは決まっていたのだ。 しかし、このような場合、大統領として望ましい道を追求することの本当のリスクを説明し、管理する方法を見つけなければならない。国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ただ従うのではなく、同じ目標を達成できるより安全な選択肢を提示する必要がある。

アフガニスタンからの無謀な撤退の決定についてだけではない。バイデン政権は、外交政策に関して、実質よりもスローガンに重きを置いている。アメリカは戻ってきたと約束したが、キューバからイスラエルまで、驚くほど多くの分野で関わりを断ってきた。

●バイデン大統領は一連の失敗をしている

この8ヶ月間、深刻化する世界的な脅威に対してあまりにも注意が払われていない。ホワイトハウスは表面的なことを強調しすぎ、ドナルド・トランプ大統領の破壊的な4年間の後に必要な体系的な変化を起こすことに失敗した。

問題の一部は人事の判断にある。ホワイトハウスは、最も影響力のあるポジションに政治家タイプの人間を詰め込むことを選択している。

実際、国家安全保障会議の上級職で外交官経験者はアフリカ担当上級部長1名のみである。これはオバマ大統領の時代よりはるかに少ない。つまり、サリヴァンやバイデンは、最も新しく適切な経験を持つ人物からアドバイスを受けていないのである。

●政治上の盟友が仕事で報われる

国務省では、この四半世紀で初めて、現役外交官が上位3つの職種のいずれにも就いていないという事態が起きている。

政治任用者たちを国家安全保障のポジションに就かせるという政権の傾向は大使の人選にも見て取れる。バイデンは、あまりにも多くのポストを政党の優遇措置として扱い、トルコのように本来なら外交経験が前提である場所に、富裕な人やコネのある人を指名することが多すぎるのだ。

国家安全保障機構全体にわたるこれらの人事は、このティームの到着に伴う傲慢さの反映である。彼らは、いくつかの主要な国際問題についての専門家の懸念や警告をほとんど無視してやってきた。

第一に、国境と難民の政策が回避可能な溝に陥るのを見た。大統領は、これらの分野で活躍する専門家に十分な相談をすることなく、政策の変更を急いだ。

いずれの場合も、政権はすぐに軌道修正を余儀なくされた。しかし、その前に貴重な時間と信用を失うことになった。バイデンが原則的な変革を約束したサウジアラビアやロシアなどとの関係についても、深刻な疑問が呈された。そして、アフガニスタンでの惨劇がやって来た。

そうなのだ、私たちは常に撤退するつもりだったのだ。問題は、いつ、どのように撤退するかということだった。この2つの決断を、サリヴァンは自分の役割として慎重に導かなければならなかった。

残念ながら、彼は9月11日を前にして、大統領がアフガニスタンへの関与を終わらせようとするのを許し、アメリカの時間軸を動かしてしまったようだ。これは破滅的な誤りだった。私たちの兵士は準備不足だった。私たちは彼らを危険から遠ざけることができなかった。アフガニスタン政府と軍も明らかに準備ができていなかった。

バイデン大統領は、アフガニスタンからの撤退の失敗を監督した国家安全保障問題担当大統領補佐官と他の数人の高官たちを更迭する必要がある。彼は、主要な外交政策の決定を誰とどのように行うかを再構築し、キャリアのある専門家たちの意見をもっと取り入れる必要がある。

海外に派遣される我が国の代表に任命される大口献金者の起用はもう絶対にいない方がいい。利害関係が強すぎるのだ。最後に、世界舞台での我が国の評判と信用に与えた大きなダメージを修復することが急務である。

そのためには、バイデン大統領がこれまで以上に多くの時間を世界的な危機に費やし、選挙キャンペーンに参加しなかった人々の意見に耳を傾ける必要があるだろう。

※ブレット・ブレエン:バマ大統領のホワイトハウスで国際関与担当部長を務めた。現在は広報会社グローバル・シチュエーションルーム社長、ジョージタウン大学危機管理学部の非常勤講師を務める。

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争の先行きはどうなるか、ということに多くの人々が関心を持っていると思う。私もそうだ。私は戦争の早い段階(戦争勃発から1週間後)で、即刻停戦を行うべき、ウクライナが有利に事態を進めているうちに停戦し和平を結ぶべきと訴えた。しかし、そうした声は「正義派(ウクライナはロシアを叩きだすまで戦え、俺は何もしないけど)」の声にかき消された。そして寒い時期から春の陽気を超え、夏の猛暑の時期になってもまだ戦争は続いている。膠着状態になっている。ロシア軍は首都キエフ奪取に失敗したが、ウクライナ東部で有利に状況を展開している。ウクライナ軍の苦戦も報じられるようになった。
avrilhaines519
アヴリル・ヘインズ

そうした中で、アメリカのアヴリル・ヘインズ国家情報長官がウクライナ戦争の「3つのシナリオ」を提示した。その内容な誰でも考えつきそうなものだが、アメリカの情報・諜報機関のトップの発言は千金の重みがある。アメリカ政府の公式の発表と同程度だと考えてもよい。アメリカ政府は「膠着状態で消耗戦が続く」というシナリオが最も可能性が高いと見ている。

 アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、CIAFBIなど40近くのアメリカの情報・諜報機関を束ねるトップである。ヘインズが述べた3つのシナリオは、アメリカの情報・諜報機関がシミュレーションを行って得た結果ということになるだろう。これはつまり、「ロシアが戦争初期の目論見通りにキエフを抑えて、ウクライナ政府を転覆させることはできない。だからと言って、ウクライナがロシアを完全に追い出すこともできない」とアメリカ政府が考えているということだ。そして、アメリカ政府は「きちんとした出口(戦争終結)」について、その形を今のところ考えていないか(考えられないか)、正式に発表することを控えているか、ということになる。

 私はアメリカ政府が当初想定したシナリオが狂ってしまっているのだろうと考えている。アメリカは当初、欧米諸国がウクライナに武器を供与し、ロシアに対して制裁を加えればロシアは早々に撤退することになると踏んでいたと思う。しかし、実態はそうではなかった。ロシア経済制裁は中途半端になってしまい、それどころかエネルギー価格や食料価格の高騰を引き起こして、欧米諸国に直撃している。ロシアからのエネルギーに依存してきたヨーロッパ諸国はこれから厳しい状況になるだろう。更にロシア軍が態勢を立て直してウクライナ東部に注力するという決断を下したことで戦争が長期化することになった。西側諸国によるウクライナへの支援は現在も継続中だが、これもいつまで続くか分からない。これは、アメリカの外交的失敗ということになる。アフガニスタンからの撤退に続く、ジョー・バイデン政権の外交面での大失策ということになる。ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官の更迭論もそのうち出てくるだろう。
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ジェイク・サリヴァン

 現状における最高のシナリオは早期停戦と和平である。しかし、戦争を停めるのは難しい。それは、太平洋戦争末期の日本でもそうだったが、「それでは命を失った英霊は無駄死だったのか」という論が出て「今一度大攻勢をかけて勝利を得て有利な条件で停戦に」という主張が出てくるからだ。しかし、冷静になって、より冷酷になってみれば、これ以上の被害を出さないことが重要だということになる。しかし、冷静になることが、状況の渦の中にいると、難しいということになる。

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戦争に関する3つのシナリオ(Three War Scenarios

-そしてウクライナにおける戦争の結果に影響を与えるだろうもの

デイヴィッド・レオンハート筆

2022年7月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/07/06/briefing/ukraine-war-three-scenarios.html

アメリカ国家情報長官アヴリル・ヘインズは最近、ウクライナにおける起きる可能性のある3つのシナリオについて概略を述べた。

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1つ目のシナリオは、ロシアがウクライナ東部において前進を維持することで、ウクライナ国民の戦う意思を挫き、ロシア軍がウクライナの更なる領域を奪取することが可能となるというものだ。この結果は、ウクライナ政府を瓦解させようという最初の試みに失敗したプーティンにとって新たな目標ということになる。

2つ目のシナリオが最も実現可能性が高い。ヘインズは先週ワシントンで行われた公開の会議の席上、ロシアはウクライナ東部を支配するだろうが、それより先には進むことは不可能だろうと述べた。ウクライナ、ロシア両国は膠着状態に陥る。これをヘインズは「消耗戦による苦闘(a grinding struggle)」と呼んだ。

3つ目のシナリオは、ウクライナは東部でロシア軍の前進を阻み、そして反撃を開始することに成功するというものだ。ウクライナは既にいくつかの領域を再奪取している。特にウクライナ南部で領域を再奪取している。そして、軍事専門家の中には、より広範囲における攻勢が間もなく行われるだろうと予想している人たちもいる。

今日のニューズレターでは、この3つのシナリオのうち、どのシナリオが最も可能性が高いかを判断するためのいくつかの疑問を取り上げ、戦争の最新情報を提供する。

●一時的もしくは永続的(Temporary or permanent

流れは決定的に変わっているのか、それともウクライナ軍が更なる成功を収めようとしているのか?

ウクライナ戦争の最新局面について言えば、ロシアはうまくいっている。ドンバス地方と呼ばれるウクライナ東部には、ルハンスクとドネツクの2つの州がある。情報問題を専門とするジェインズ社のアナリストであるトーマス・ブロックによると、ロシアは現在、ルハンスクのほぼ全域とドネツクの約60%を支配しているという。

昨日、ロシア軍はドネツクの都市でウクライナの重要な供給拠点であるバフムト付近で砲撃を強めた。ロシアはルハンスクでも同様の戦術を用い、都市を占領する前にウクライナ軍と市民を排除した。

ニューヨーク・タイムズ紙モスクワ支局長アントン・トロイアノフスキは、「クレムリンは、彼らの全体的な計画は変わっておらず、全てが計画通りに進んでいるというメッセージを送っている」と語っている。アントンは更に、クレムリンの自信の表れとして、ロシアのメディアは最近、占領した領土で住民投票を実施し、正式に併合する計画を報じていると指摘した。

しかし、ウクライナは西側諸国から高性能の兵器が提供されている恩恵を受けている。そして、ウクライナ軍がそれらの兵器をこれまでよりもうまく活用できるようになる日が近いのではないかと考える理由もある。

戦争の初期段階において、アメリカ、EU、その他のウクライナの同盟国は、ジャベリンとして知られる肩撃ちのミサイルシステムのような比較的単純な兵器を送っていた。これらの兵器は、ロシア軍の小集団からウクライナの領土を守るのに役立った。最近では、西側諸国がより強力な大砲、例えばトラックベースのロケットシステム「ハイマース(HIMARS)」を送り、ウクライナが東部で大規模に増強されたロシア軍に耐えられるようにすることを意図している。

私の同僚であるジュリアン・バーンズが指摘するように、ジャベリンの使い方を訓練するのは数時間しかかからない。ハイマース(HIMARS)の訓練には、戦場への輸送と同様、数日から数週間かかる。今後数週間のうちに、ウクライナは増え続けるハイマース(HIMARS)を使ってロシア軍に更なる損害を与えることができるのか、ジュリアンは注視していると述べた。

●ロシア国内での徴兵は無い(No Russian draft

ロシア軍は兵員を消耗しているのだろうか?

最近起こった2つの出来事から不思議に思うことがある。まず、私の同僚であるトーマス・ギボンズネフが最近の戦争分析で説明したように、ロシアは部隊を補充するために、民間企業であるワーグナー・グループのような外部部隊に頼らざるを得なくなったのである。第二に、プーティンはドンバス地方での最近の勝利に関与した部隊のいくつかに休養を命じたが、これはそれらの部隊が疲弊していたことを示唆している。

ジュリアンは次のように語った。「ロシアがドンバスを越えて前進したいのであれば、これまでやりたがらなかった大量動員を行う必要があるというのがアメリカ政府関係者と外部アナリストの共通認識だ。ロシアは徴兵制を実施し、過去に兵役に就いた兵士を呼び戻し、軍隊を再建するために政治的に痛みを伴う措置を取る必要がある。今のところ、プーティンはそうする気がない」。

ロシアは、兵士や武器など、ウクライナよりも多くの資源を持っている。しかし、ロシアの資源には限界がある。特に、プーティンが大量動員のために政治資金を使うことを望まないのであればなおさらである。

この限界は、ウクライナがロシアの東方での獲得物を保持し、反撃と内部の抵抗、更には欧米諸国の経済制裁によって、ロシア軍を徐々に疲弊させるという見通しを生じさせる。その結果、プーティンはウクライナの大部分を残したまま最終的に停戦を受け入れる可能性がある。

ジュリアンは「それは完全な勝利にはならないだろう。それが現実的かもしれない」と述べた。

●戦争神経症(シェル・ショック、Shell shock

しかし、ウクライナの兵力不足は更に加速しているのだろうか?

ウクライナ・ロシア両陣営とも、1日に数百人という高い割合の死傷者を出しているようだ。その結果、ウクライナはほとんど訓練を受けていない部隊にますます頼らざるを得なくなっている。

また、生き残った部隊は精神的なダメージを受ける危険性もある。東部での戦闘方法は、絶え間ない砲撃の応酬で、「シェル・ショック」という言葉を生んだ第一次世界大戦の塹壕戦(trench warfare)に似ていると同僚のトーマスは指摘する。

匿名のウクライナ軍使命感はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して次のように語っている。「砲撃の最中は、壕の中で砲撃が終わるのを待つしかない。このような砲撃のために精神的にダメージを受ける人もいる。彼らは、何に遭遇しても、心理的に準備ができていないことが判明している」。

ウクライナの未来が不確かであるのと同様に、先週ヘインズが述べた3つのシナリオの概要を説明したときに認めたように、現在の状況は明らかに悲惨である。ヘインズは「要するに、絵はかなり厳しいままだ」と言った。

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アメリカのスパイ部門トップがウクライナ国内におけるロシア軍に待ち受けているのは「消耗戦による苦闘」と予測(Top US Spy Sees ‘Grinding Struggle’ Ahead for Russia in Ukraine

・アヴリル・ヘインズは戦闘の長期化が最も起こりうるシナリオと指摘

・「自主的な制裁」のためのアメリカ企業による行動が大きな影響を与えると発言。

エリック・マーティン、ピーター・マーティン筆

2022年6月30日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-29/top-us-spy-sees-grinding-struggle-ahead-for-russia-in-ukraine

アメリカのスパイ部門トップが、ウクライナ国内のロシア軍には「消耗戦による苦闘」が待っており、ウラジミール・プーティン大統領の軍隊は少しずつ利益を上げることが出来るが、大きな突破口を見つけることが出来てないと考えていると述べた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官はワシントンで開催された商務省産業安全保障局の年次会議に出席し、アメリカの情報機関が予測する3つのシナリオのうち最も可能性が高いものとして、このシナリオを提示した。

より可能性が低い他のシナリオは、ロシアが突破口を開くか、ウクライナが前線を安定させ、南部で小さな利益を上げるかというものだ。

アメリカの情報機関は、ウクライナ軍を崩壊させながらドンバス東部で利益を上げるというプーティンの短期的目標と、ロシア軍が実際に達成できることの間にギャップがあると考えているとヘインズは指摘する。

ヘインズは軍事的な挫折に直面しても、プーティンの長期的な目的は首尾一貫していると指摘した。ロシアの指導者プーティンは依然としてウクライナの大部分を手に入れ、NATO同盟への加盟を阻止することで同国の「中立化(neutralization)」を達成しようとしているとヘインズは付け加えた。

またヘインズは、ロシアの侵攻に対して、アメリカ企業がどれほどの「自主的な制裁(self-sanction)」をするのか情報機関は予想していなかったとも述べた。

「アメリカ企業による自主的な制裁はロシア経済にかなりの大きな影響を与えた。民間企業が厳しく状況に対処して投資しないことに決定した。これは、今、私たちがより高く評価しようとしている点だ」とヘインズは述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権は2021年1月に発足した。当初の大きな課題は新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策だった。新型コロナウイルス感染拡大対策に関してはアメリカ国民の評価が高かったが、景気対策については厳しい評価だった。それに現在はインフレ問題も加わり、バイデン大統領の支持率は低迷している。支持率が約40%、不支持が50%台中盤となっている。バイデン政権関係者の多くはドナルド・トランプ前大統領の支持率の低さを嘲笑していたが、現在バイデンの支持率がそれ以下になって恥をかいている。

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バイデン大統領の支持率の推移

 私は拙著『 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でスーザン・ライスの国内政策会議委員長兼国内政策担当大統領補佐官就任について取り上げた。ライスはビル・クリントン政権下でアフリカ担当国務次官補を務め、バラク・オバマ政権下で米国連大使と国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。外交畑が長い人物だ。その人物を国内政策担当にするというのはどういうことかと考え、私なりの答えとして、「現在のカマラ・ハリス副大統領は能力がないのでどこかでつまずく、そのために次の副大統領候補としてライスに国内政策の経験を積ませておくのだろう」と考えた。 suranricejoebiden511

スーザン・ライス

 2022年に入ってからはアメリカの国内問題は前年から続く高いインフレであるが、やはりウクライナ戦争が大きな話題となっている。ジョー・バイデン大統領もウクライナ戦争対応が大きな仕事になっており、それに国内問題への対応ともなると大変だろう。移民問題については、政権発足当初の段階ではカマラ・ハリス副大統領が担当するということであったが、ハリス副大統領の存在感はどんどん薄れている。それに比例して、スーザン・ライスは国内政策担当大統領補佐官兼国内政策会議委員長として、国内政策全般を取り仕切っている。実質的な副大統領といったところだろう。

 移民の大量流入問題については、トランプ政権時代の強硬な阻止姿勢から転換することをバイデンは訴えて当選したが、実際はトランプ政権下での姿勢を大きく転換させるところまでは至っていない。ある意味で「現実的な」姿勢となっているが、この姿勢を進めているのがスーザン・ライスと国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンだということだ。こうした動きに対して、希望をもってバイデン政権に参加してきた人々が政権から離れるということも起きているようだ。

 スーザン・ライスは記者団の前で記者会見に応じることもなく、仕事に専念しているようだ。しかし、そのように静かに身をひそめながら政権の実権を握っている中で、下記のような記事が出るということは、現在57歳のライスがこの先に民主党内の有力な大統領候補となる可能性も示唆している。アメリカ初の女性大統領は能力のないカマラ・ハリスではなく、スーザン・ライスだということになるかもしれない。

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スーザン・ライスは静かなままだがホワイトハウスで強力な地位にいる(Susan Rice holds quiet but powerful perch at White House

モーガン・チャルファント、エイミー・ハーネス筆

2022年6月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3519503-susan-rice-holds-quiet-but-powerful-perch-at-white-house/

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は、最近、銃暴力に取り組むための政権内担当部署設置を求める声についての質問に直面した際に彼女は次のように答えた。「スーザン・ライスが責任者だ。

ジャン=ピエール報道官は、ライスは既に国内政策会議委員長を務め、12人からなるティームを率いて、精神衛生や労働力開発なども含めた銃暴力削減のための政府全体の取り組みに従事していると述べた。

ジャン=ピエール報道官は「利害関係者を集めて進展を図るのに、これほど適した人物はいない」と記者団に語った。

今回の発表は、銃乱射事件から移民問題、刑事司法改革、学生ローンの債務免除、バイデン大統領お得意の国内法整備にまつわる膠着状態の協議まで、ライスが主要かつ論争の的となる政策論争と決定の中心にいることを改めて思い起こさせるものだった。

ブルッキングス研究所ガバナンス研究プログラム委員長で、ビル・クリントン大統領(当時)の国内政策補佐官を務めたビル・ガルストンは、「国内政策会議は最も幅広く、また最も拡散した議題を持っていると言えるだろう」と語る。

しかし、ライスはこれらの問題を静かにリードしている。彼女はホワイトハウスから人種的平等や立ち退き防止などの問題に関するラウンドテーブル会議を数回開いたが、記者会見にはバイデン大統領就任の6日後に一度だけ出席し、記者たちの質問に答えただけで、メディアのインタヴューにはほぼ応じなかった。

国家経済会議委員長のブライアン・デシーは8回のブリーフィングに出席している。バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、エアフォース・ワンでの非公式な会合を除いて11回参加している。

ガルストンは次のように述べている。「ライスは脚光を浴びないようにしている。頭を低くして仕事をするというのは、かなり良い方法であり、彼女はその方法に従っているのだと思う」。

国内政策担当大統領補佐官という役職は、大統領府の他の役職に比べ、明らかに知名度が低い。外交政策に長け、オバマ大統領(当時)の下で国連大使と国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたライスにとっては大きな変化である。

それでも、たとえ従来の職務内容とは異なるとしても、政権はライスをもっと表に出すべきだという考える人々も存在する。

ある民主党系のストラティジストは「率直に言えば、ライスはもう少し表舞台に出てくるものと思っていた。彼女はとても高い能力を持っている。副大統領でも国務長官でも良かったのに、政権に最大限のインパクトを与えるような形で彼女を活用しているとは思えない」と述べた。

このストラティジストは続けて「それは彼女の役割ではないと言う人もいるかもしれないが、なぜそうしてはいけないのか」と述べた。

あるホワイトハウス高官は月曜日、ライスは数日おきに様々な団体と公の場で話していると反論し、「彼女は仕事そのものに集中しており、アメリカ国民にその仕事を説明する機会があればそれを受けている」と付け加えた。

この高官は「ライスはかなりの量の公の場に出ているが、それは必ずしも常に報道機関を通してではない」と述べた。

しかし、舞台裏では、ライスはその力を行使してきた。

ライスは、ジョージ・フロイドの殺害から2年目の先月、バイデン大統領が署名した待望の警察官職務執行命令の作成に深く関わっていた。

警察友愛会のジム・パスコ事務局長は、警察団体を憤慨させた大統領令の草案が流出してから間もなく、日曜日の夜、フットボール観戦中にライスから電話を受けたことを思い出した。

ライスはインタヴューで、バイデン政権が「リセット(reset)」を望んでいると語った。

パスコは「スーザン・ライスとホワイトハウス顧問のダナ・リーマスは、他の上級スタッフとともに、その時点から事態の真っただ中にいたのである」と述べた。

ホワイトハウスは、最終的に警察組織や公民権擁護団体に受け入れられるように、法執行団体と協力して最終命令の内容について交渉した。

パスコはスーザン・ライスについて、「彼女はタフな交渉人だ。バイデン政権の“レッドライン”がどこであるかを率直に述べた。彼女は公正な交渉人だった」と述べた。

ライスはまた、アメリカ南部国境で移民が急増する中、移民政策をめぐる論争でも中心的な存在となっている。

ライスとバイデン大統領の首席補佐官ロン・クレインは昨夏、アメリカ合衆国法典第42条の撤廃が南部国境への移民の流入を助長するのではないかと懸念したと4月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じた。 

ライスはまた、新型コロナウイルスワクチンを移民に投与する計画を、国境越えを助長することを懸念して阻止した当局者の一人であると報じられた。

ホワイトハウスに近いある民主党連邦議員は、「彼らは自分たちの手で新たな危機を作りたくなかった。ライスや他のホワイトハウス関係者が強調しようとしていたのはそのことだったと思う」と述べた 

昨年、バイデン氏のティームが、民主党の票だけで上院を通過させることができる「ビルド・バック・ベター」法案の妥協案に連邦上院議員を同意させようとしたが、失敗したため、ライスは頻繁に連邦議会を訪問するようになった。

バイデンのある側近は「彼女は、ある種の影響力と重厚さを持ち、それらは彼女と仕事を共にする人々にとって失われることはない。彼女は優秀で、勤勉で、思慮深い人だ。彼女は、“くそっ、なんて頭がいいんだ”と言って人々が立ち去るような人だ」と述べた。

このホワイトハウス政府は、ライスが国内政策会議に独自の足跡を残したのは、従来の局長、副局長、その下の専門家という組織ではなく、4人の副局長を4つの柱のトップに据えたことで、政権が全ての重点分野を一度に推し進められるようにしたためだと指摘する。

「これは、その時々の状況にもかかわらず、私たちや大統領がポイントを獲得し続けられるようにしたいという彼女の願望を物語っている」と、この関係者は語った。

この側近は、「これは、その時々の状況にもかかわらず、私たちや大統領がポイントを獲得し続けられるようにしたいという彼女の願望を物語っている」と語った。

スーザン・ライスは、バイデン政権に早くから参加したオバマ時代の幹部たちの一人である。彼女、クライン、ブルース・リード大統領次席補佐官、その他の高官たちは、週に数回、大統領執務室でバイデンにブリーフィングをしているということだ。

クラインは月曜日、本誌に対して声明を送り、その中で次のように述べている。「スーザンがアメリカの歴史上、ホワイトハウスの国家安全保障会議と国内政策会議の両方を率いた唯一の人物であることには理由がある。それは、彼女はユニークな才能と知性、そして結果を出すための決意をもっている。スーザンとバイデン政権の国内政策会議ティームのおかげで、500万人以上のアメリカ人に医療保険が提供され、130万人の学生ローン債務者たちを救済し、公平性と一般的な安全を向上させる歴史的な大統領命令を出すなど、歴史的な勝利を収めることができた。最も印象的なのは、ホワイトハウスの取り組みの先頭に立って、銃の本質的な改革についてアメリカ人の命を守るためにたゆまぬ努力を続けてきたことだ」。

ライスは当初国務長官候補と噂されていたが、ライスが連邦上院で人事承認されるには票が足りないという民主党内で懸念があり、最終的にバイデンは長年の側近であるアントニー・ブリンケンを国務長官に抜擢した。

ライスは、2012年のベンガジ事件への対応に関与したことから、以前から共和党の間で批判の的となっていた。

ベンガジ事件の対応中、ライス氏は日曜番組に出演し、リビアのアメリカ領事館への攻撃は計画的なテロ攻撃ではなく、抗議が暴動化した結果であると発言した。その後、オバマ政権はテロ攻撃であったと発表した。

ベンガジは、当時のヒラリー・クリントン国務長官、バラク・オバマ大統領、ライスに対する主要な論点となり、何年にもわたって議論された。民主党議員の多くは、ライスがバイデン大統領の副大統領候補として見送られた理由の一つがベンガジ事件だと言っている。

約10年前のベンガジ事件に関する連邦下院調査委員会を率いたダレル・アイサ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は5月下旬に次のようにツイートした。「ホワイトハウスは、銃規制のメッセージを伝えるのにスーザン・ライスの右に出る者はいないと言っている。ベンガジ事件の隠蔽工作の張本人なのに? これ以上悪い人物はいないのだが」。

しかし、銃規制推進派はライスの仕事に満足している。もっとも、国内政策会議が競合する優先事項を考慮し、この問題に専念するためのオフィスを設けるよう主張する者もいる。

ライスの指導の下、国内政策会議は「オバマ政権時代よりも確実に銃の安全性に取り組んでいる」と、銃規制推進団体「ギフォーズ」のピーター・アンブラー事務局長は語った。アンブラ―は「ライスは、暴力介入戦略や資金調達に対する政権の取り組みを拡大するなど、いくつかの重要な取り組みについて前進させたと思う」と述べた。

ホワイトハウスのある高官によると、ライスのオフィスは、精神衛生や医療など他の政策分野と結びつけて、銃暴力に対処する幅広いアプローチを取っているという。

この高官は、「私たちは、銃政策の課題が他の多くの重要な政策課題と結びついていると考え、それが比較優位だと見なしており、狭い視野で見ているわけではない」と述べた。

全米教職員連盟のランディ・ワインガーテン会長は、学生ローンや公民権教育などの問題でライスとズームを通じてして会談したと述べ、ライスを「隅々まで目を配り」ながら、バイデン政権が政策を決定する際に外部の人々を本当に巻き込む人物だと評した。

ワインガーテンは「スーザン・ライスとミーティングをする前に、下調べをしなければならない。なぜなら、たとえ事前に準備をしていても、彼女はあなたが答えを知らないような質問をするはずだからだ」と述べた。

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バイデン大統領の移民政策には混乱と信念の欠如がつきまとう(Confusion and lack of conviction plague Biden’s immigration policies

ノーラン・ラパポート筆

2022年4月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/immigration/3275462-confusion-and-lack-of-conviction-plague-bidens-immigration-policies/

大統領選挙の選挙運動中、バイデン大統領はトランプ政権の国境政策を速やかに覆すと約束した。しかし、彼はアメリカ南西部の国境で殺到するのを防ぐために、後にその約束を撤回した。移民を処理するシステムを再構築するには、おそらく半年は必要だろうと述べた。

バイデンは、前政権の政策を急速に変更すると200万人の移民を国境に抱えることになることを恐れていた。バイデンは「それは成し遂げられるだろうし、素早く成し遂げられるだろうが、大統領就任初日に成し遂げられることはないだろう」と述べた。

しかし、大統領就任第一日目にバイデンは諸点について次のように述べた。

・イスラム教徒の旅行禁止の取り消し。

・強制送還可能な移民を事実上全て移民法執行の対象としていたトランプ大統領の執行優先順位の取り消し。

・国外退去の100日間の一時停止を宣言。

・国境の壁建設を中止。

・「メキシコ残留プログラム(MPP)」の登録の一時停止。

なぜ、このようなことをしたのだろうか? バイデンは何が起こるか知っていた。

アメリカ南西部国境での不法入国者の逮捕数は2021年度に170万人に達し、これは過去60年以上で最高記録であり、2022年度の最初の6カ月間で更に100万人以上が逮捕された。

これらの統計には、不法入国を目撃されながら逮捕されなかった「逃亡者(gotaways)」は含まれていない。2022年度には、これまでに約30万人の逃亡があった。

バイデンの「メキシコ残留プログラム」への対応は、不可解な政策のもう一つの例である。

このプログラムへの新規登録の停止から4ヶ月後、バイデンはこのプログラムを終了させる覚書を出した。2021年8月、連邦地方裁判所は、テキサス州とミズーリ州の対バイデン裁判で、メキシコ残留プログラム終了は行政手続法(APA)の規定に準拠しておらず、INA1225条の強制収容規定に行政が違反する原因になっていると示した。

裁判所は全国的な差し止め命令を出し、行政に次のように命じた。「連邦政府が第1255条の強制収容の対象となる全ての外国人を収容するのに十分な収容能力を持つようになるまで、収容資源の不足を理由に外国人を釈放することなく、メキシコ残留プログラムを誠実に執行し実施すること」。

バイデンはメキシコ残留プログラムの放棄を望んでいるが、彼は国土安全保障省の収容能力を増やしていない。それどころか、バイデン政権の来年度の予算要求によれば、既存の施設のベッド収容能力を25%以上削減するつもりになっている。

バイデンは何故、メキシコ残留プログラムを終了させることができるように、差止命令の収容要件に従わないのだろうか?

最新の不可解な決定は、バイデンが今月初めに、アメリカ合衆国法典第8編の移民法の規定によって通常要求される処理なしに、アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)が不法入国者たちを追放することを許可する第42号命令を基にした命令を終了させたときに起こった。しかし、この解除は5月23日まで有効ではない。

バイデンの国内政策担当大統領補佐官であるスーザン・ライスや他の高官たちは、国境沿いのコミュニティを新型コロナウイルス感染拡大から守り、移民たちの大量解放を回避し、高レヴェルの国境逮捕による政治的圧力を軽減するために、第42号命令が必要だと主張している。

ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)はツイッターで、「国境政策に他の変更を加えずに第42号命令を削除すれば、移民と麻薬の津波が発生する」と述べた。

国土安全保障省の担当者たちは、命令が解除された場合、1日あたり1万8000人が国境で逮捕される可能性があると考え準備をしている。

また、連邦議会では第42号命令の解除を一時停止すべきだと主張する民主党所属の議員たちも増えている。

連邦上院国土安全保障委員会委員長を務めるゲーリー・ピーターズ連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)によると、5月23日までに国境政策を終了するというバイデン大統領の決定は、「よく考えられた計画」ができるまで「再検討されるべきで、おそらく延期」されるだろう、と述べた。

国土安全保障省は、移民が増加する可能性がある場合の準備についてファクトシートを発表しており、国土安全保障省は準備の全てを明らかにしている訳ではないと主張している。非公開の準備が何であるかは分かっていないが、バイデンの国境警備対策がこれまで著しく不十分であったことは知っている。

ファクトシートにある主要な条項は、新しい移民プロセスで、亡命申請を裁くために多くのアメリカ市民権・移民業務局の亡命担当者を追加で雇用し、訓練する必要があるというものだ。しかし、バイデン政権のある高官は記者団に対し、このプロセスは5月末か6月まで始まらない見込みであり、実施後数カ月は多くの移民をこのプログラムの対象にすることはないと予想していると述べた。

また、この計画では、違法な国境越えをした後に逮捕された家族専用の訴訟事件記録簿を作成することを求めている。これは、以前にも2つの政権で試みられたことがあるが、移民裁判所の業務停滞がはるかに少なかったのではあるが、2回とも失敗している。

●可能な説明

2021年11月、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、ホワイトハウス内の2つの陣営を紹介し、それぞれが移民法執行の主導権を握ろうとしていると主張した。

1つの陣営は、大統領首席補佐官ロン・クライン、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァン、ホワイトハウス上級顧問セドリック・リッチモンド、そして国内政策担当大統領補佐官スーザン・ライスだ。彼らは、不法入国を抑止する戦略を提唱している。

もう1つの陣営には、バイデン大統領の選挙アドヴァイザーたち出身で、「現在、ホワイトハウス、国土安全保障省、国務省で移民政策のトップの地位にある人たち」が多く含まれている。彼らは、抑止力は機能しないと主張する。彼らは移民制度を見直し、亡命申請をより早く解決し、亡命希望者たちが自国から申請できるようにし、より法律に基づいた移民経路を作りたいと考えている。

多くのホワイトハウス高官たちが、こうした問題をめぐって大統領の補佐官たちと繰り返される喧嘩に不満を募らせ退職していった。

最近の争点は、第42号命令を撤回するかどうかだと言われている。

バイデンと側近たちはこの制限を解除すれば、アメリカ南西部の国境に更に多くの移民を呼び寄せることになるとの懸念から躊躇している。このことは、バイデンがトランプの政策を停止するのを助けるためにホワイトハウスにやってきた移民擁護者たちを困惑させる。

バラク・オバマ前大統領の移民問題担当大統領補佐官を務めたセシリア・ムニョスは、「一部の擁護者たちは、自分たちの立場と国境開放の立場との間に違いがあるとしても、それを把握していない。そして、国境開放の立場は、この国では忌み嫌われるものなっている」。

このような状況なので、バイデンは、彼の政策を実現する方法を見つけるべき人たちから、様々な方向に引っ張られるようになっている。これが、彼の移民対策が深刻な意図せぬ結果を招いている理由だと考えられる。

※ノーラン・ラパポート:行政府移民法専門家として連邦下院司法委員会に3年間勤務した。その後、連邦下院移民・国境警備・請求権小委員会の移民法顧問を4年間務めた。司法委員会に勤務する以前は、20年にわたり移民審判委員会の判決文を執筆した。

ブログのアドレス:https://nolanrappaport.blogspot.com

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報告:ホワイトハウスの移民対策ティームの重要人物が退任へ(Key member of White House immigration team retiring: report

オラミフィハン・オシン筆

2022年1月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/588663-key-member-of-white-house-immigration-team-retiring-report/

バイデン政権の国内政策会議(DPC)の移民担当副委員長であるエスター・オラヴァリアが退任することになった。

ホワイトハウスの報道官は、『ポリティコ』誌とCNNにオラヴァリアの退任を認めた。

国内政策会議委員長スーザン・ライスは、「バイデン・ハリス政権へのエスター・オラヴァリアの無数の貢献、特に前政権の残酷で無謀な政策を覆し、公正で秩序ある人道的な移民制度のためのバイデン大統領のヴィジョンを実現するための彼女の仕事には、これ以上ないほど感謝している」と、ポリティコ誌に送った声明で述べている。

ある関係者はポリティコ誌に対し、オラヴァリアはホワイトハウスでの最後の日がいつになるかは決めておらず、当面は政権と仕事を続けていくと語った。

今回の件は、バイデン政権で移民に関する上級アドヴァイザーをおよそ6カ月を務めたタイラー・モランが今月で退任することが決まっていることに続く発表となった。

本誌はホワイトハウスに本件についてコメントを求めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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