古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:国家情報長官

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 バイデン政権はインテリジェンス外交(intelligence diplomacy)ということで、国家情報長官も参加させての外交を行おうとしている。ウクライナ戦争直前にロシア軍の動きをウクライナ側に通報するということで、その成果を挙げたと言われている。

 インテリジェンスが外交の場で重要な役割を果たすということはこれまでもあった。代表的な例としては、日中国交正常化の交渉過程において、アメリカは軍事偵察衛星から撮影した中ソ(当時)国境のソ連赤軍の配備が分かる写真を中国側に提供し、これを見た毛沢東が米中国境正常化を最終決断したという話が残っている。「敵(ソ連)の敵は味方」ということで、共通の敵をつくり、それを認識させるために、インテリジェンスが重要であった。

 米中国交正常化やニクソンショックに関して、日本は情報収集ができず、アメリカからも情報を得ることができず、寝耳に水の状態で、慌てて対応しなければならなかった。日本は、情報諜報を軽視しがちと言われてきた。太平洋戦争開戦前、戦時中において、日本は情報部門を軽視し、情報を分析することを怠ったために、国が亡ぶという結果を招いたと言われている。しかし、日本には忍者の伝統があり(忍者は現在で言えば情報将校であり、スパイである)、日露戦争において、明石元次郎大佐(後に大将)がスウェーデンのストックホルムに拠点を置いて、ロシアに対する諜報上活動と後方かく乱に従事し、ロシア国内に混乱をもたらすことで、戦勝に貢献したことは知られている。日本には優秀な情報将校の伝統もある。しかし、それが何故か、一番重要なアメリカに対して機能しなかったのは、そこに何らかの意図があったのではないか、機能しないように仕組まれたのではないかと疑わざるを得ない。

 インテリジェンス外交によって、機密情報が各国で「交換」されることになり、そのために、セキュリティクリアランスが設定されたということもある。アメリカは、正確な情報を同盟諸国に与え、それを各国の行動の誘因にしようとしている。米中国交正常化交渉の時は、衛星写真であったが、今は各種情報となっているだろう。セキュリティクリアランスの運用に関しては、国家や政府に都合の悪い情報を機密情報に指定して、国民に知らせないということが起きる危険がある。自衛隊の日報問題ということがあったが、そのようなことが起きる危険がある。ここで重要なのは、シヴィリアン・コントロール(文民統制)、国民に選ばれた政治家がコントロールすることである。そして、国会がきちんとした権限を持つことだ。現在の弛緩しきった自民党にそうした緊張感を持ったコントロールができるかどうか、心もとない。こうしたことがしっかりできなければ、他国からの信頼も得られない。

(貼り付けはじめ)

インテリジェンス(情報諜報)外交の時代(The Age of Intelligence Diplomacy

-イラク戦争はそのリスクを浮き彫りにした。ロシアのウクライナ戦争はその機会を示した。

ブレット・M・ホルムグレン筆

https://foreignpolicy.com/2024/02/19/russia-ukraine-us-intelligence-diplomacy-invasion-anniversary/

私は残りの人生で、2022年2月22日のことを忘れることは決してないだろう。その日の夕刻、国務省内の、盗聴などから遮断された、安全が確認された部屋で、閣僚級の人々、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の幹部クラスの人々が集まっての会議が招集された。私はアントニー・ブリンケン米国務長官とともに出席した。会議の冒頭で行われた通常の情報ブリーフィングでは、厳しい警告が発せられた。 ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始する姿勢を鮮明にしていた。

その前の数カ月間、アメリカはロシアの計画についてウクライナと世界に警告するため、戦略的に情報の機密性の格下げ(downgrading)と機密解除(declassifying)を行っていた。会議が行われた夜、国務省で国家安全保障会議の指導者たちは、新たな緊急脅威情報を直ちにウクライナと共有する必要があるとの結論に達した。

偶然にも、ウクライナのドミトロ・クレバ外相がブリンケン国務長官との会談の後、国務省に来ていた。ブリンケン、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、そしてアヴリル・ヘインズ国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)は、私と、ヘインズ長官の分析担当副官モーガン・ミュアに国家安全保障会議を抜け出し、情報機関と協力してウクライナと共有できる文言を明確にするよう要請した。許可を得た後、私たちは国務省の7階にいるクレバ外相を探し出し、情報を伝えた。クレバは絶望の表情を浮かべながら、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に戦争の準備をするよう電話をかけた。

最終的に、ロシアの計画を事前に暴露しても戦争を回避することはできなかった。しかし、アメリカの情報公開はウクライナの自衛を可能にし、同盟諸国やパートナー諸国を動員して、キエフを支援させ、国民の目にはロシアの偽情報(disinformation)を無力化させ、世界の人々に対して、アメリカからの情報、そしてアメリカの信頼性を回復させた。イラク戦争がインテリジェンス(情報諜報)外交のリスクを浮き彫りにしたとすれば、ウクライナにおけるロシアの戦争はその機会を示した。

アメリカは常に外国のパートナーと脅威に関する情報を共有しており、情報は長い間、アメリカの外交官たちにとって貴重なカードであった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、アメリカの外交に対する情報諜報(インテリジェンス)支援の規模、範囲、スピードの著しい進化を象徴するものだった。それはまた、アメリカの国家安全保障上の利益を支援するために情報活動を行う18の機関で構成されている、アメリカ情報諜報(インテリジェンス)コミュニティの世界的な信頼性の転換点ともなった。

ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカと同盟諸国の対応を可能にする上で、戦略的で、承認された情報開示が中心的な役割を果たした。情報開示のおかげで、ウィリアム・バーンズCIA長官は2021年11月、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対し、アメリカはウクライナにおけるモスクワの意図を認識しており、断固とした対応を取るだろうと警告を与えることができた。また、ロシアの計画についてウクライナの人々や世界に警告を発した。そのような情報開示の一例として、モスクワがウクライナ侵攻を正当化するためにいわゆる「偽旗(fake flag)」残虐行為をでっち上げるかもしれないというアメリカの情報があった。

ロシアの陰謀を暴く諜報機関の正確さと成功を考慮して、政府、メディア、一般大衆の多くは、情報開示が他の世界的な紛争や課題における外交手段として利用される可能性があると認識している。

「インテリジェンス(情報諜報)外交(intelligence diplomacy)」について、一般的に受け入れられている定義は存在しない。ある人はこの概念を、外国のパートナーとの伝統的な情報共有という狭い意味で捉えている。また、情報外交をパブリック・ディプロマシー活動(public diplomacy campaigns)を強化するための手段、あるいはプレス・リリースなど政府高官の発言に注目を集めるための手段と考える人もいる。国務省では、情報諜報外交を「外交活動やパブリック・ディプロマシーを支援するための情報活用であり、アメリカの外交目的を推進し、パートナーに情報を提供し、同盟関係を構築し、協力を促進し、アプローチや見解の収斂を促し、条約を検証するためのもの」と定義している。

戦略的かつ責任を持って使用された後に、機密性のレヴェルが下げられた、もしくは機密解除された情報は、アメリカの外交政策を強力に後押しすることができる。例えば、1962年10月、アメリカは国連安全保障理事会に機密解除された情報を提出し、キューバにソ連の攻撃用ミサイルが存在することを暴露した。2017年4月、ホワイトハウスは対シリア攻撃への支持を集めるため、シリア政権による自国民への化学兵器使用を詳述した情報の機密指定を解除した。

しかし、適切な保護措置や監視がなければ、インテリジェンス外交は国家安全保障へのリスクを高め、外国のパートナーとの信頼を損ない、アメリカの利益を損なうような使われ方をすることもある。最も悪名高いのは、2003年にイラク侵攻を開始する前に、ジョージ・W・ブッシュ政権が、イラクの指導者サダム・フセインが大量破壊兵器を保有していることを主張するために機密情報を公開したことである。この情報は不正確であることが判明し、情報諜報コミュニティは一世代(30年)にわたって世界的な評判を落とした。

情報諜報コミュニティと政策立案者たちにとっての課題は、この種の誤用や悪用を防ぎながら、インテリジェンス外交の利点を最大限に活用することだ。インテリジェンス外交の将来を考えるとき、イラクの教訓を決して忘れてはならない。同時に、ロシアの本格的なウクライナ侵攻に対するアメリカの対応において、なぜインテリジェンス外交があれほど成功したのかを概説する価値がある。

第一の理由は、ジョー・バイデン大統領の決然たる指導力だ。2021年後半、ロシアが軍を動員し、情報諜報コミュニティが明らかにウクライナへの攻撃が間近に迫っていると評価する下地が整えられつつあったとき、バイデンはモスクワの計画と意図に関する情報を、機密レヴェルを下げるように指示した。ウクライナをはじめとするアメリカの同盟諸国やパートナー、そして一般市民が、アメリカが見ているものを正確に理解できるようにするためだ。

第二に、アメリカの政策意図は、戦争を防ぐという原則的かつ明確なものだった。サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が2022年初頭、ホワイトハウスでの記者会見の場で述べたように、「イラク情勢では、戦争を始めるために、まさにこの演壇から情報が利用され、展開された。私たちは戦争を止め、戦争を防ぎ、戦争を回避しようとしている」。ブリンケン国務長官は、ロシアが侵攻する数日前に、国連安全保障理事会で同様のメッセージを発した。

第三に、ロシアとウクライナに関するアメリカの情報は、具体的で一貫性があり、正確であり、そして今後もそうであり続ける。情報諜報機関のアナリストたちは、ロシアの活動と意図に関して収集した情報の信頼性と確実性に大きな自身を持っており、これは収集と分析能力に対する長年の投資の結果である。

第四に、商業画像やソーシャルメディアなど、ロシアの活動に関する新たなオープンソースデータによって、情報諜報コミュニティは、より機密性の高い収集源や方法を発覚の危険に晒すことなく、信頼できる情報の機密レヴェルを下げたり、機密扱いを解除したりして、外国のパートナーや一般市民と共有することができるようになった。

ブリンケンのリーダーシップの下、国務省は、より多くの外交にインテリジェンス(情報諜報)を注入するため、集中的かつ計画的なアプローチを採用し、実行してきた。その際、国務省は情報諜報機関と緊密に連携してきた。大使をはじめとする外務官僚から次官、副長官、そしてブリンケン自身にいたるまで、国務省の多くの高官が、格下げされた、あるいは機密解除された情報を、国際的な関与や公の場での発言、外交上の方策(diplomatic demarches)に利用する機会を定期的に探し求めている。

ブリンケン国務長官は、2022年7月に国家情報長官室で行った講演の中で、「我が国の情報諜報活動と外交との間の深い相乗効果(profound synergy between our intelligence and our diplomacy)」についてほのめかした。ブリンケンは続けて「私たちは、ウクライナに対するロシアの侵略に関してだけでなく、全般的に、インテリジェンス外交を我々の思考の一部に組み入れ続ける必要があると考える」と述べた。

2023年9月、ブリンケンは、冷戦後の秩序の終焉から、民主政治体制と独裁政治の闘いによって定義される戦略的競争の新時代へと移行する際のアメリカの外交アプローチについて概説した。この戦略の核心は、「アメリカの最大の戦略的資産である同盟とパートナーシップを再参加させ、活性化させ、再構築すること」だとブリンケンは語っている。

インテリジェンス(情報諜報)は、これらの関係をサポートし、発展させる上で重要な役割を果たす。情報を共有することで信頼を築き、信頼できる情報に基づく共通の見解を確立し、パートナー間の協力のための新たな分野を開くことが可能となる。同盟関係の強化は、アメリカ情報諜報機関にとっても重要な資産となる。バイデン政権の国家安全保障戦略と国家情報長官の最近の国家情報諜報戦略はいずれも、権威主義的、もしくは修正主義的な諸大国に対するアメリカの戦略的競争においてインテリジェンス外交が中心的な役割を果たすことを明らかにしている。

国務省当局者や外交官たちによる膨大な量の格下げ(downgrade)および機密解除(declassification)要求は、この新たな現実を浮き彫りにしている。たとえば、2021年には、情報諜報機関の格下げまたは機密解除を求める要求が900件以上もあった。 2023年には、そのようなリクエストは1100件以上あり、週あたり20件以上のリクエストがあった。

国務省はウクライナ戦争以降もインテリジェンス外交を展開してきた。2023年だけでも、ウクライナ戦争を支援するためにロシアに致死性殺傷兵器を提供した場合の結果について中国に警告するために、格下げまたは機密解除された情報が公に、そして外交ルートで、非公開で利用された。つい最近、国務省は、アメリカとの二国間協定に違反して中国製軍事装備品の輸入を検討している国に方向転換を促す大規模な取り組みの一環として、格下げされた情報を利用した。そして国務省は、人権侵害に関係する政府への監視技術の拡散を防ぐために各国と連携するために、格下げされた情報に大きく依存してきた。

インテリジェンス外交に万能のアプローチはない。アメリカ国内外の様々な政府機関が、それぞれの権限や目的、そして少なくともアメリカにおいては、国家情報長官のガイダンスに沿ったモデルを開発し、展開している。国務省としては、インテリジェンス外交の厳密性、規律、そして慎重さをもって、いつ、どのようにインテリジェンス外交を行うべきかについて、最善の実行手段(best practice)を制度化するためにいくつかのステップを踏んできた。

第一のステップとして、私たちは国務省職員による情報の開示または公表の要求を通知するのに役立つ指針を確立した。これら7つの核となる原則は、国家情報長官によって設定された既存の情報諜報コミュニティの開示ポリシーを補完するものだ。

インテリジェンス外交は、明確な政策目標を支援し、国力の他の要素と整合性を保ちながら、国力を強化し、同盟関係やパートナーシップの強化を優先し、アメリカの信頼性を維持するために、信頼性が高く、理想的には複数のソースからの情報に依拠し、オープンな情報源では得られないような新しくユニークな情報の共有に努めるべきだ。更には、外交を支援するために使用される情報は、明確で理解しやすく、伝えられる側に伝わりやすいものでなければならない。また、インテリジェンス外交の提案は、情報源や方法に対する潜在的なリスクと期待される利益を慎重に比較検討すべきだ。

2024年1月、私たちは、職員の意識を高め、将来の世代の外務官僚や公務員たちに指針を提供するために、国務省の内部政策の中に、インテリジェンス外交を活用するためのこれらの原則とガイドラインを成文化し、追加した。

第二のステップとして、テクノロジーを活用し、国務省の機密・非機密ネットワークを通じてリソースや情報共有ツールをオンラインで利用できるようにすることで、国内外の米外交官たちのインテリジェンス外交へのアクセスを拡大した。

最後のステップは、新任の外交官や大使を対象に、インテリジェンス外交について、またこの能力を世界各地の米在外公館での外交活動にどのように組み込むかについて教育するための研修の開発に着手したことである。

結論は次のようなものだ。インテリジェンス外交は、アメリカの外交政策を担う主要機関である国務省の使命を支え、それを可能にする上で、ますます不可欠になっている。しかし、それは国家の安全保障とアメリカの価値観に合致した形で活用されなければならない。ガードレールがなければ、インテリジェンス外交が誤用されたり、悪用されたりする危険性がある。

2022年2月の厳粛な夜のことを思い出すと、世界がどれほど変わったか、そして情報諜報活動と外交の関係がほんの2、3年の間にどれほど進化したかを思い知らされる。もはや情報を分析資源としてのみ捉える余裕はない。むしろ情報は、戦略的敵対国との競争の最前線において、アメリカの外交を可能にする重要な手段と見なされなければならない。適切な保護措置が講じられれば、インテリジェンス外交はアメリカの未来を守る上で重要な役割を果たすことになる。

※ブレット・M・ホルムグレン:米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局(Intelligence and ResearchINR)担当国務次官補。米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局は、INRは情報諜報コミュニティの18の構成機関の1つであり、アメリカで最古の文官系情報機関だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争の先行きはどうなるか、ということに多くの人々が関心を持っていると思う。私もそうだ。私は戦争の早い段階(戦争勃発から1週間後)で、即刻停戦を行うべき、ウクライナが有利に事態を進めているうちに停戦し和平を結ぶべきと訴えた。しかし、そうした声は「正義派(ウクライナはロシアを叩きだすまで戦え、俺は何もしないけど)」の声にかき消された。そして寒い時期から春の陽気を超え、夏の猛暑の時期になってもまだ戦争は続いている。膠着状態になっている。ロシア軍は首都キエフ奪取に失敗したが、ウクライナ東部で有利に状況を展開している。ウクライナ軍の苦戦も報じられるようになった。
avrilhaines519
アヴリル・ヘインズ

そうした中で、アメリカのアヴリル・ヘインズ国家情報長官がウクライナ戦争の「3つのシナリオ」を提示した。その内容な誰でも考えつきそうなものだが、アメリカの情報・諜報機関のトップの発言は千金の重みがある。アメリカ政府の公式の発表と同程度だと考えてもよい。アメリカ政府は「膠着状態で消耗戦が続く」というシナリオが最も可能性が高いと見ている。

 アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、CIAFBIなど40近くのアメリカの情報・諜報機関を束ねるトップである。ヘインズが述べた3つのシナリオは、アメリカの情報・諜報機関がシミュレーションを行って得た結果ということになるだろう。これはつまり、「ロシアが戦争初期の目論見通りにキエフを抑えて、ウクライナ政府を転覆させることはできない。だからと言って、ウクライナがロシアを完全に追い出すこともできない」とアメリカ政府が考えているということだ。そして、アメリカ政府は「きちんとした出口(戦争終結)」について、その形を今のところ考えていないか(考えられないか)、正式に発表することを控えているか、ということになる。

 私はアメリカ政府が当初想定したシナリオが狂ってしまっているのだろうと考えている。アメリカは当初、欧米諸国がウクライナに武器を供与し、ロシアに対して制裁を加えればロシアは早々に撤退することになると踏んでいたと思う。しかし、実態はそうではなかった。ロシア経済制裁は中途半端になってしまい、それどころかエネルギー価格や食料価格の高騰を引き起こして、欧米諸国に直撃している。ロシアからのエネルギーに依存してきたヨーロッパ諸国はこれから厳しい状況になるだろう。更にロシア軍が態勢を立て直してウクライナ東部に注力するという決断を下したことで戦争が長期化することになった。西側諸国によるウクライナへの支援は現在も継続中だが、これもいつまで続くか分からない。これは、アメリカの外交的失敗ということになる。アフガニスタンからの撤退に続く、ジョー・バイデン政権の外交面での大失策ということになる。ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官の更迭論もそのうち出てくるだろう。
jakesullivan519
ジェイク・サリヴァン

 現状における最高のシナリオは早期停戦と和平である。しかし、戦争を停めるのは難しい。それは、太平洋戦争末期の日本でもそうだったが、「それでは命を失った英霊は無駄死だったのか」という論が出て「今一度大攻勢をかけて勝利を得て有利な条件で停戦に」という主張が出てくるからだ。しかし、冷静になって、より冷酷になってみれば、これ以上の被害を出さないことが重要だということになる。しかし、冷静になることが、状況の渦の中にいると、難しいということになる。

(貼り付けはじめ)

戦争に関する3つのシナリオ(Three War Scenarios

-そしてウクライナにおける戦争の結果に影響を与えるだろうもの

デイヴィッド・レオンハート筆

2022年7月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/07/06/briefing/ukraine-war-three-scenarios.html

アメリカ国家情報長官アヴリル・ヘインズは最近、ウクライナにおける起きる可能性のある3つのシナリオについて概略を述べた。

extentofrussianadvane20220703511

1つ目のシナリオは、ロシアがウクライナ東部において前進を維持することで、ウクライナ国民の戦う意思を挫き、ロシア軍がウクライナの更なる領域を奪取することが可能となるというものだ。この結果は、ウクライナ政府を瓦解させようという最初の試みに失敗したプーティンにとって新たな目標ということになる。

2つ目のシナリオが最も実現可能性が高い。ヘインズは先週ワシントンで行われた公開の会議の席上、ロシアはウクライナ東部を支配するだろうが、それより先には進むことは不可能だろうと述べた。ウクライナ、ロシア両国は膠着状態に陥る。これをヘインズは「消耗戦による苦闘(a grinding struggle)」と呼んだ。

3つ目のシナリオは、ウクライナは東部でロシア軍の前進を阻み、そして反撃を開始することに成功するというものだ。ウクライナは既にいくつかの領域を再奪取している。特にウクライナ南部で領域を再奪取している。そして、軍事専門家の中には、より広範囲における攻勢が間もなく行われるだろうと予想している人たちもいる。

今日のニューズレターでは、この3つのシナリオのうち、どのシナリオが最も可能性が高いかを判断するためのいくつかの疑問を取り上げ、戦争の最新情報を提供する。

●一時的もしくは永続的(Temporary or permanent

流れは決定的に変わっているのか、それともウクライナ軍が更なる成功を収めようとしているのか?

ウクライナ戦争の最新局面について言えば、ロシアはうまくいっている。ドンバス地方と呼ばれるウクライナ東部には、ルハンスクとドネツクの2つの州がある。情報問題を専門とするジェインズ社のアナリストであるトーマス・ブロックによると、ロシアは現在、ルハンスクのほぼ全域とドネツクの約60%を支配しているという。

昨日、ロシア軍はドネツクの都市でウクライナの重要な供給拠点であるバフムト付近で砲撃を強めた。ロシアはルハンスクでも同様の戦術を用い、都市を占領する前にウクライナ軍と市民を排除した。

ニューヨーク・タイムズ紙モスクワ支局長アントン・トロイアノフスキは、「クレムリンは、彼らの全体的な計画は変わっておらず、全てが計画通りに進んでいるというメッセージを送っている」と語っている。アントンは更に、クレムリンの自信の表れとして、ロシアのメディアは最近、占領した領土で住民投票を実施し、正式に併合する計画を報じていると指摘した。

しかし、ウクライナは西側諸国から高性能の兵器が提供されている恩恵を受けている。そして、ウクライナ軍がそれらの兵器をこれまでよりもうまく活用できるようになる日が近いのではないかと考える理由もある。

戦争の初期段階において、アメリカ、EU、その他のウクライナの同盟国は、ジャベリンとして知られる肩撃ちのミサイルシステムのような比較的単純な兵器を送っていた。これらの兵器は、ロシア軍の小集団からウクライナの領土を守るのに役立った。最近では、西側諸国がより強力な大砲、例えばトラックベースのロケットシステム「ハイマース(HIMARS)」を送り、ウクライナが東部で大規模に増強されたロシア軍に耐えられるようにすることを意図している。

私の同僚であるジュリアン・バーンズが指摘するように、ジャベリンの使い方を訓練するのは数時間しかかからない。ハイマース(HIMARS)の訓練には、戦場への輸送と同様、数日から数週間かかる。今後数週間のうちに、ウクライナは増え続けるハイマース(HIMARS)を使ってロシア軍に更なる損害を与えることができるのか、ジュリアンは注視していると述べた。

●ロシア国内での徴兵は無い(No Russian draft

ロシア軍は兵員を消耗しているのだろうか?

最近起こった2つの出来事から不思議に思うことがある。まず、私の同僚であるトーマス・ギボンズネフが最近の戦争分析で説明したように、ロシアは部隊を補充するために、民間企業であるワーグナー・グループのような外部部隊に頼らざるを得なくなったのである。第二に、プーティンはドンバス地方での最近の勝利に関与した部隊のいくつかに休養を命じたが、これはそれらの部隊が疲弊していたことを示唆している。

ジュリアンは次のように語った。「ロシアがドンバスを越えて前進したいのであれば、これまでやりたがらなかった大量動員を行う必要があるというのがアメリカ政府関係者と外部アナリストの共通認識だ。ロシアは徴兵制を実施し、過去に兵役に就いた兵士を呼び戻し、軍隊を再建するために政治的に痛みを伴う措置を取る必要がある。今のところ、プーティンはそうする気がない」。

ロシアは、兵士や武器など、ウクライナよりも多くの資源を持っている。しかし、ロシアの資源には限界がある。特に、プーティンが大量動員のために政治資金を使うことを望まないのであればなおさらである。

この限界は、ウクライナがロシアの東方での獲得物を保持し、反撃と内部の抵抗、更には欧米諸国の経済制裁によって、ロシア軍を徐々に疲弊させるという見通しを生じさせる。その結果、プーティンはウクライナの大部分を残したまま最終的に停戦を受け入れる可能性がある。

ジュリアンは「それは完全な勝利にはならないだろう。それが現実的かもしれない」と述べた。

●戦争神経症(シェル・ショック、Shell shock

しかし、ウクライナの兵力不足は更に加速しているのだろうか?

ウクライナ・ロシア両陣営とも、1日に数百人という高い割合の死傷者を出しているようだ。その結果、ウクライナはほとんど訓練を受けていない部隊にますます頼らざるを得なくなっている。

また、生き残った部隊は精神的なダメージを受ける危険性もある。東部での戦闘方法は、絶え間ない砲撃の応酬で、「シェル・ショック」という言葉を生んだ第一次世界大戦の塹壕戦(trench warfare)に似ていると同僚のトーマスは指摘する。

匿名のウクライナ軍使命感はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して次のように語っている。「砲撃の最中は、壕の中で砲撃が終わるのを待つしかない。このような砲撃のために精神的にダメージを受ける人もいる。彼らは、何に遭遇しても、心理的に準備ができていないことが判明している」。

ウクライナの未来が不確かであるのと同様に、先週ヘインズが述べた3つのシナリオの概要を説明したときに認めたように、現在の状況は明らかに悲惨である。ヘインズは「要するに、絵はかなり厳しいままだ」と言った。

=====

アメリカのスパイ部門トップがウクライナ国内におけるロシア軍に待ち受けているのは「消耗戦による苦闘」と予測(Top US Spy Sees ‘Grinding Struggle’ Ahead for Russia in Ukraine

・アヴリル・ヘインズは戦闘の長期化が最も起こりうるシナリオと指摘

・「自主的な制裁」のためのアメリカ企業による行動が大きな影響を与えると発言。

エリック・マーティン、ピーター・マーティン筆

2022年6月30日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-29/top-us-spy-sees-grinding-struggle-ahead-for-russia-in-ukraine

アメリカのスパイ部門トップが、ウクライナ国内のロシア軍には「消耗戦による苦闘」が待っており、ウラジミール・プーティン大統領の軍隊は少しずつ利益を上げることが出来るが、大きな突破口を見つけることが出来てないと考えていると述べた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官はワシントンで開催された商務省産業安全保障局の年次会議に出席し、アメリカの情報機関が予測する3つのシナリオのうち最も可能性が高いものとして、このシナリオを提示した。

より可能性が低い他のシナリオは、ロシアが突破口を開くか、ウクライナが前線を安定させ、南部で小さな利益を上げるかというものだ。

アメリカの情報機関は、ウクライナ軍を崩壊させながらドンバス東部で利益を上げるというプーティンの短期的目標と、ロシア軍が実際に達成できることの間にギャップがあると考えているとヘインズは指摘する。

ヘインズは軍事的な挫折に直面しても、プーティンの長期的な目的は首尾一貫していると指摘した。ロシアの指導者プーティンは依然としてウクライナの大部分を手に入れ、NATO同盟への加盟を阻止することで同国の「中立化(neutralization)」を達成しようとしているとヘインズは付け加えた。

またヘインズは、ロシアの侵攻に対して、アメリカ企業がどれほどの「自主的な制裁(self-sanction)」をするのか情報機関は予想していなかったとも述べた。

「アメリカ企業による自主的な制裁はロシア経済にかなりの大きな影響を与えた。民間企業が厳しく状況に対処して投資しないことに決定した。これは、今、私たちがより高く評価しようとしている点だ」とヘインズは述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカ政府はロシアによるウクライナ侵攻の可能性を掴んでいた。これまでアメリカが絡む大きな事件の場合、アメリカの情報・諜報機関は「事前にそうした大事件(テロ事件や戦争など)が起きるであろうことを事前に把握していたが、止められなかった」ということを繰り返している。2001年の同時多発テロ事件がまさにそうだった。今回の記事は、「アメリカの情報・諜報機関がロシアのウクライナ侵攻の意思を過小評価する一方で、軍事能力を過大に評価していた。一方で、ウクライナの抗戦意思については過小評価していた」という内容になっている。

 考えてみると、軍事能力についての評価は難しい。多くの場合、将兵の数、軍事予算、保有武器の種類と能力といった数字が軍事能力の判断基準となっている。そして、それは多くの場合、軍事能力を判断するのに妥当な基準である。しかし、やはり実践になってみないと分からないところがある。今回、ロシア軍がウクライナに侵攻し、キエフ近くまで侵攻しながら撤退を余儀なくされたが、それは欧米諸国からのウクライナに対する武器や物資の供与があったこともあるが、ウクライナ軍と国民の抗戦の凄まじさということもある。意思の部分については数字で判断することはできない。

 情報・諜報機関の情報収集・分析・判断は政策決定の大前提となる。今、アメリカの情報・諜報機関の最高責任者はアヴリル・ヘインズである。アメリカに複数ある情報機関や諜報機関を取りまとめる国家情報長官を務めている。ジョー・バイデン政権の政策の大前提となる分析と判断の最高責任者だ。バイデン政権はアフガニスタンからの撤退と今回のウクライナ戦争という2つの大きな外交政策において失敗している。アフガニスタンに大きな混乱を引き起こすということを過小評価していたし、今回のウクライナ戦争も早く片が付くとこちらも過小評価していた。それほどに政策策定と遂行は難しい。

 こうした失敗を基にして、組織や機構、教育などを見直し改善するということを、各国政府は繰り返している。「失敗から学ぶ」ということができるかどうか、これである。日本はどうであろうか。ノモンハン事件や日中戦争の泥沼化から何も学ぶことなく、失敗を隠蔽し、最高責任者を処分せず(中級クラスに苛烈な制裁を科す)、なあなあで済ます。これは日本の組織における宿痾ということになる。

 日本の組織における宿痾としては、情報・諜報を軽視するというものがある。これについては、この分野の名著である堀栄三著『情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記』を是非読んでもらいたい。堀元少佐は太平洋戦争中、大本営参謀部の情報将校として、アメリカ軍の情報収集と分析を行い、アメリカ軍の侵攻経路を割り出し、それがあまりにも的中するので「マッカーサー参謀」と呼ばれた人物である。彼の情報収集・分析の手法は興味深く、多くの方に参考になると思う。

 話はそれたが、情報・諜報の収集、分析、判断というのは非常に難しい作業であり、その多くは間違う。それについて改善の努力を不断に行っていくことが重要ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカの複数のスパイ機関がウクライナとロシアについて何を間違ったについて見直し(U.S. spy agencies review what they got wrong on Ukraine and Russia

-アヴリル・ヘインズ国家情報長官が公聴会で証言

ノマーン・マーチャント、マシュー・リー筆

『ロサンゼルス・タイムズ』紙(AP通信)

2022年6月4日

https://www.latimes.com/world-nation/story/2022-06-04/american-spy-agencies-review-their-misses-on-ukraine-russia

ワシントン発。ロシアが2月末にウクライナ侵攻を開始する数週間前、アメリカの情報・諜報機関関係者に向けて行われた非公開のブリーフィングで、この質問が投げかけられた。「ウクライナの指導者ヴォロディミール・ゼレンスキーは、イギリスのウィンストン・チャーチルやアフガニスタンのアシュラフ・ガーニのような人物だろうか?」

言い換えるならば、「ゼレンスキーは歴史的なレジスタンスを率いるのか、それとも政権が崩壊して逃げるのか?」ということだ

究極的に言えば、アメリカの情報・諜報機関は、ウラジミール・プーティン大統領の侵攻を正確に予測しながらも、ゼレンスキーとウクライナを過小評価し、ロシアとプーティン大統領を過大評価したのである。

しかし、ウクライナの首都キエフは、アメリカが予想したように数日では陥落しなかった。そして、アメリカのスパイ機関はウクライナのレジスタンスを支援したと評価されているが、現在彼らは、特に昨年のアフガニスタンでの判断ミスの後、事前に何が間違っていたかを見直すよう党派を超えた圧力に晒されている。

情報当局関係者たちは、外国政府の戦意と能力をどのように判断しているかについての見直しを始めた。この見直しは、アメリカの情報・諜報機関がウクライナで重要な役割を果たし続け、ホワイトハウスがウクライナへの武器供給と支援を強化し、プーティンがエスカレートしていると見なし、ロシアとの直接戦争を回避しようとする中で行われている。

バイデン大統領が率いる政権は、ウクライナが長年望んでいた兵器であるハイテク中距離ロケットシステムを少量供与すると発表した。2月24日の開戦以来、ホワイトハウスはドローン、対戦車・対空システム、数百万発の弾薬の輸送を承認してきた。アメリカは情報共有に関する初期の制限を解除し、ウクライナがロシア海軍の旗艦を含む重要な標的を攻撃するために使用する情報を提供している。

民主、共和両党の連邦議員たちは、プーティンが侵攻する前にアメリカがもっと手を打てたのではないか、ホワイトハウスはウクライナの抵抗力を悲観的に評価し、支援を控えたのではないか、と疑問を呈している。メイン州選出無所属連邦上院議員アンガス・キングは、先月の連邦上院軍事委員会の公聴会で、「予測についてもっとよく把握し対応していれば、もっと早くウクライナ人を支援することができたはずだ」と発言している。

連邦下院情報委員会の共和党側トップであるオハイオ州選出のマイク・ターナー連邦下院議員は、ホワイトハウスと政権幹部たちが「不作為を助長するような形で、状況に独自の偏見を投じた」と考えているとあるインタヴューに答えた。

連邦上院情報委員会は先月、国家情報長官室に非公開書簡を送り、情報・諜報機関がウクライナとアフガニスタンの両方をどのように評価したかについて質問している。CNNがこの書簡について最初に報じた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官は5月、連邦議員らに対し、国家情報会議が情報機関の「戦う意志」と「戦う能力」の両方をどう評価するかを見直すと述べた。この2つの問題は「効果的な分析を行うにはかなり困難であり、そのための様々な方法論を検討している」とヘインズは述べた。

委員会の書簡より前に始まったこの見直しのスケジュール表については発表されていないが、関係者たちは既にいくつかの誤りを確認している。戦前の評価に詳しい複数の関係者が、機密情報を話すために匿名を条件にAP通信の取材に応じた。

ロシアはその大きな優位性にもかかわらず、ウクライナに対する制空権を確立できず、戦場での通信手段の確保といった基本的な任務でも失敗した。アメリカの推計によると、ロシアは数千人の兵士と少なくとも8から10名の将官を失ったということだ。ロシア軍とウクライナ軍は現在、ウクライナ東部で激戦(fighting in fierce)を展開しており、アメリカや西側諸国が予想したロシアの迅速な勝利とは程遠い状況である。

ロシアは最近、いくつもの代理戦争に参加することはあったが、1980年代以降、大規模な陸上戦争を直接戦ったことはなかった。そのため、ロシアについて見積もられたそして、一般に発表された能力の多くが試されておらず、大規模な侵攻でロシア軍がどのように機能するかを評価するのは難しいと一部の関係者は述べている。ロシアの武器輸出産業は活発であるため、モスクワはもっと多くのミサイルシステムや飛行機を配備する準備ができているだろうと考える人もいた。

アメリカは公に警告したが、ロシアは今のところ化学兵器や生物兵器を使用していない。ある政府高官は、アメリカは化学兵器による攻撃について「非常に強い懸念」を持っているが、ロシアはそのような攻撃をすれば世界的な反発が大きくなりすぎると判断したのだろうと指摘した。ロシアがウクライナやアメリカの同盟諸国に対してサイバー攻撃の波紋を広げるのではないかという懸念は、今のところ現実にはなっていない。

その他にも、部隊将兵の士気の低さ、薬物やアルコールの乱用、部隊を監督し司令官からの指示を伝える下士官の不足など、ロシアの問題はよく知られていた。

国防総省に属するアメリカ国防情報局長官を務めたロバート・アシュレイ元陸軍中将は、「これらのことは全て分かっていた。しかし、最も単純な作戦を実行しようとした時、その全てが圧倒されるということが、連鎖的に起こってしまった」。

国家情報主席副長官を務めたスー・ゴードンは、アメリカのアナリストたちはロシアの軍事・サイバーに関する武器やツールの在庫を数えることに依存しすぎていた可能性があると指摘した。

ゴードンは、情報関係の出版社サイファー・ブリーフ社が主催した最近のイヴェントで、「結果を評価する際に、能力とその使用は同じではない、という考え方について少し学ぶことになるだろう」と述べた。

ゼレンスキーは、ロシアが彼を逮捕または殺害しようとするティームを送り込んできても逃げなかったことで、世界中から称賛を浴びている。しかし、戦争が始まる前、ワシントンとキエフの間には、侵略の可能性やウクライナの準備が整っているかどうかについて緊張関係があった。この論争に詳しい人物によれば、アメリカはウクライナがキエフ周辺の防衛を強化するために西側から軍を移動させることを望んでいたことが論争の火種となっていたということだ。

戦争勃発直前まで、ゼレンスキーとウクライナ政府高官たちは、パニックを鎮め、経済を守るためもあって、侵略の警告を公然と否定していた。あるアメリカ政府高官は、経験の浅いゼレンスキーが自国の直面しているレヴェルの危機に対処できるかどうか疑問だったと述べた。

アメリカ国防情報局長官のスコット・ベリエ陸軍中将は3月、「私の考えでは様々な要因から、ウクライナ人は私が考えるほど準備ができていなかった。だから、彼らの戦う意志を疑っていた。彼らは勇敢に、立派に戦い、正しいことを行っているのだから、私の評価は間違っていたということになる」と述べた。

ベリエは5月、自身の見解と情報・諜報機関全体の見解とに距離を置き、「ウクライナ人に戦意がないとする評価はなかった」と述べた。

ウクライナ戦争の前にウクライナの決意を示す十分な証拠があった。ロシアによる2014年のクリミア併合と、東部ドンバス地方での8年にわたる紛争は、モスクワに対するウクライナ国民の意識を硬化させた。ウクライナ軍は、アメリカから何年にもわたって訓練と武器の輸送を受けており、サイバー防衛の強化も支援されていた。

アメリカの情報・諜報機関は、ウクライナのレジスタンスに対する強い支持を示唆する民間の世論調査を見直した。国境近くのロシア語圏の都市ハリコフでは、市民が銃の撃ち方を学び、ゲリラ戦の訓練をしていた。

連邦下院情報委員会のメンバーであるブラッド・ウェンストラップ下院議員(オハイオ州選出、共和党)は、2021年12月のウクライナ訪問中にウクライナ人の決意を目の当たりにした。ドンバスの前線では、モスクワに支援された分離主義勢力が2014年からウクライナ政府軍と戦っており、参加者は前日に死亡したウクライナ人兵士の名前を読み上げた。

ウェンストラップは「それは、彼らが戦う意志を持っていることを私に示した。これは長い間、醸成されてきたものだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカの対外情報・諜報を担っているアヴリル・ヘインズ国家情報長官(Director of National Intelligence)とウィリアムズ・バーンズCIA長官(Director of  Central Intelligence Agency)がアメリカ連邦議会で証言を行った。彼らは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、状況分析について語った。プーティンは、ウクライナ国内の予想外の抵抗と西側諸国による経済制裁のレヴェルについて誤算してしまう、怒り狂っていると分析している。そして、事態をエスカレートさせる可能性が高いとも述べている。
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バーンズCIA長官(左)とヘインズ国家情報長官
 アメリカの情報・諜報部門の最高責任者を務めているアヴリル・ヘインズ、海外情報・超部門を担うCIA(中央情報局)の責任者を務めるウィリアムズ・バーンズについては、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げている。ヘインズはアメリカの「スパイマスター(スパイの親玉)」と呼ばれている。バーンズは外交官として国務省勤務が長い人物だ。バーンズは駐露米国大使を務め、ロシア語が堪能だ。バーンズは対ロシア諜報・情報の最高責任者ということになる。

 アメリカの情報・諜報機関の総力を注いでも、プーティンの頭の中を知ることは至難の業のようだ。プーティンは単純な損得勘定で動く人物ではない。そのために、西洋的な価値観から見れば、非合理な行動を取っているということになる。だから、最終的には、「プーティンは錯乱している、狂っている」と結論づける。ここで重要なことは、合理的な分析だけではなく、文化や歴史、地理的な状況も含めた複合的な分析が必要となる。

(貼り付けはじめ)

怒りが募ったプーティンがウクライナで「倍返し」すると情報長官が議員に警告(Angry Putin set to 'double down' in Ukraine, intel chiefs warn lawmakers

レベッカ・ベイッチ、イネス・カグバレ筆

2022年3月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/597406-angry-putin-set-to-double-down-in-ukraine-intel-chiefs-tell-lawmakers

情報諜報部門の専門家たちは、ロシア経済への影響や長期的な成功の見込みがないにもかかわらず、ウクライナへの侵攻を「倍返し(double down)」しようとするウラジミール・プーティン大統領の決意がますます堅固になっているとの見方を示した。

ウィリアム・バーンズCIA長官は連邦下院情報諜報委員会で毎年実施される世界規模の脅威に関するコウ長官に出席し、「プーティンは今、怒りと不満(angry and frustrated)に満ちていると思う。プーティンは、民間人の犠牲を顧みず、ウクライナ軍を粉砕しようとする可能性が高い」と語った。

バーンズは次のように述べた。「しかし、プーティンが直面している課題、そしてこれは、彼の計画に関して、私たちが何カ月も分析にかかっている最大の疑問が存在する。プーティンは、ウクライナ人の激しい抵抗が続く中で、持続可能な政治的最終目標(sustainable political end game)を保持ししていない」。

この公聴会はアメリカが直面する膨大な数の脅威を検証するために毎年開催されている。今回の公聴会では、ロシアのウクライナへの介入が起きたことで、情報諜報機関に批判的な委員が多い委員会が一致して、出席した政府高官5名を賞賛する場となった。

エリック・スウォルウェル議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、「あなた方は国際社会において、NATOだけでなく他の重要な国々をまとめる接着剤となった」と述べ、ロシアを罰するために国々は結集することができたと述べた。

情報諜報当局は、ロシアがウクライナへの破壊的な攻撃を続ける中で、プーティンが犯した数々の誤算について証言した。

バーンズ長官は「プーティンは長年、不満と野心が混合してそれが煮詰まり爆発しやすくなっている。プーティンの側近たちが彼の判断に疑問や異議を唱えること(question or challenge his judgement)が出世につながらない(not proven career enhancing)システムを作り上げたために委縮している」と述べた。

バーンズは「つまり彼は、ロシアがこの冬にウクライナに対して武力を行使するのに有利な状況に直面していると信じるに足る、いくつかの仮定に基づいて、戦争に突入したのだと考えている」と語った。

バーンズ長官は「彼は全ての側面で間違っていることが証明されている」と述べた。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官(Director of National Intelligence)は、プーティンは制裁(sanctions)を予期していたが、アメリカや他の国、民間企業が「西側の行動を緩和するプーティンの能力を損なう」レヴェルについては予期していなかったと述べた。

ヘインズ長官は次のように述べた。「プーティンは欧米が自分に適切な敬意を払わないことに憤りを感じ、これを負けるわけにはいかない戦争と認識している。しかし、プーティンが負担している大きなコストを考えると、勝利として受け入れる可能性のあるものは時間の経過とともに変化するかもしれない、と評価している」。

ヘインズ長官は「とはいえ、プーィンはこのような挫折があっても止まることはなく、むしろエスカレートし、実質的に倍加する可能性があると私たちは分析している」と述べた。

アメリカ政府高官たちは、ロシアは戦争が始まって約2週間で、既に2000人から4000人の死傷者を出していると語った。

モスクワはまた、何十もの学校や病院を爆撃しており、ある当局者は戦争犯罪の基準に合致する可能性があると述べた。

スコット・ベリエ国防情報局長官は「ソーシャル・メディアで見たこと以外に、直接的な証拠があるかは分からない。確かに、ウクライナ軍とは関係のない学校や施設を空爆していること可能性もあるし、もしまだ攻撃していないのであれば、その線まで踏み込んでくるだろう」と述べた。

バーンズ長官は、ロシアに対するウクライナ全体の抵抗の強さの一因は、プーティン自身のウクライナにおける過去の攻撃的な行動にあると指摘した。

バーンズ長官は「多くの点で、2014年にまで遡るクリミアに対するプーティンの侵略によって、現在彼が直面しているウクライナの民族性と主権の強い感覚を作り出した」と述べた。

バーンズ長官は続けて「しかし、ロシア国営メディアによる報道と独立系情報源の検閲が進んでいることから、ロシア国民は侵略で生じた困難と甚大な損失について知らないままであろう」と述べた。

バーンズ長官は、ウクライナが化学兵器を使用したというロシアの虚偽の主張を挙げ、「彼らは情報操作を行い(spin)、誤った物語を作り出そうとし続けるだろう」と指摘した。

バーンズ長官は更に「特に、彼らがより必死になればなるほど、将来的に容易に捏造や虚構を作り出そうとする可能性があることを物語っている」と付け加えた。

バーンズ長官はまた、ロシアが国内で1万3000から1万4000名の反戦デモ参加者を逮捕したことにも触れ、「プーティンが個人的に行った選択の結果を人々が受け入れるには、時間がかかると思う」と述べた。

アメリカ政府の情報諜報当局者たちはまた、ロシアのサイバー攻撃の可能性に備えるアメリカの準備態勢についての質問にも直面した。

マークウェイン・マリン議員(オクラホマ州選出、共和党)は、クリストファー・レイFBI長官に、ロシアのサイバー攻撃への対策として、アメリカは「リスク回避(risk averse)」なのか「積極的(proactive)」なのかと質問した。

レイ長官は、FBIは両方のアプローチを取っていると答えたが、マリン議員はすぐに遮り、両方は無理だと述べた。

マリン議員は「リスク回避と積極性を同時に実現することは不可能だ。それは、リスク回避をすると、エスカレートするのを恐れて何もできなくなるからだ」と述べた。

マリン議員は次のように述べた。「脅威はすでに私たちに迫っているのだから、私たちは非常に積極的に、“いいか、我々にはツールがある、もし私たちを追ってきたら殴り返すぞ”というアプローチに変えるべきだろう。私たちはその領域にいるのではないか?」。

レイ長官は「FBIがサイバーなど様々な手段で敵対者を追い詰める努力をしてきた」と述べた。

連邦議員たちは、アメリカ国内に巨額の資産を持つロシアの富裕層をアメリカが追いかけることに焦りを感じているようだ。

ショーン・マロニー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は「ヨットは押収するのか? それはいいことだと思う。彼らの手から奪うものが他にも出てくるだろうか?」と質問した。

レイ長官は「合法的に押収できるものなら、何でもやるつもりだ」と答えた。

公聴会に合わせて発表された世界的な脅威に関する報告書では、気候変動、移民、世界的なテロなど、アメリカが直面する幅広い脅威に触れている。

また、中国、イラン、北朝鮮など、アメリカにとって脅威となる他の国々についてもより深く掘り下げている。

多くの人々がロシアのサイバー攻撃の可能性を懸念しているが、報告書は、石油・ガス産業などアメリカの重要なインフラを破壊する可能性のあるものも含め、中国が「米国政府および民間部門のネットワークに対して最も幅広く、最も活発で、持続的なサイバースパイ活動の脅威を与えている」と警告している。

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アメリカ政府情報諜報担当高官たち:ロシアは挫折しても攻撃をエスカレートさせる可能性が高い(Russia likely to escalate attacks despite setbacks: US intelligence officials

レベッカ・ベイッチ筆

2022年3月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/597314-russia-likely-to-escalate-attacks-despite-setbacks-us-intelligence

アメリカの情報諜報部門専門家たちは火曜日、ロシアはウクライナでの軍事行動をエスカレートさせる可能性が高いが、プーティン大統領が隣国ウクライナに対する長期的な影響力を維持できる可能性は依然として低いと語った。

アヴリル・ヘインズ国家情報長官、世界の数多くの危機に関して毎年実施されている公聴会に出席し連邦下院議員たちに対して次のように述べた。「プーティンは、西側諸国が自分に適切な敬意を払わないことに憤りを感じ、今回の戦争を負ける訳にはいかない戦争だと受け止めている。しかし、彼が負担している大きなコストを考えると、勝利として受け入れることができるかもしれない内容は変化する可能性もある」。

今回の公聴会では、ロシア政府からの偽情報(disinformation)に対抗する方法として、プーティンのウクライナに対する考えについて集めた情報をオープンに共有するというアメリカ政府の慣行が継続された。

ヘインズ長官は次のように述べた。「プーティンはおそらく、侵攻のコストを考慮しながら、現在の制裁措置の多くを予期していたと思われるが、アメリカとその同盟諸国やパートナー諸国が、欧米の行動を緩和するために彼の能力を損なうような措置を取る程度も予想していなかったと判断している」。ヘインズ長官は更に、「アメリカとヨーロッパの民間部門からの強い反応も含めて、プーティンは、アメリカと同盟諸国やパートナー諸国がここまでの

ヘインズ長官は「それでも、私たちのアナリストたちは、プーティンがそのような挫折によって抑止される可能性は低く、代わりにエスカレートし、ウクライナに対する攻撃を倍増する可能性があると評価している」と述べた。

アメリカ政府関係者によると、ロシアは侵攻から2週間が経過した時点で、既に2000人から4000人の死傷者を出していると推定している。

ビル・バーンズCIA長官は公聴会で「プーティンは何年もの間、私的にも公的にもウクライナを本当の国だとは思っていないとコメントしている。それは大間違いだ。本物の国は反撃するものであり、この12日間、ウクライナ人は極めて英雄的に行動した」と語った。

バーンズ長官は続けて「プーティンは今、怒りと苛立ちを感じているだろう。彼は、民間人の犠牲を顧みず、ウクライナ軍を粉砕しようとする可能性がある」と語った。

バーンズ長官は「しかし、プーティンが直面している課題、これは彼の計画に関して私たちが数カ月も時間をかけている分析における最大の疑問だ。プーティンは、ウクライナ人の激しい抵抗が続く中で、持続可能な政治的最終目標を持っていないのだ」と発言した。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 古村治彦です。

 バイデン政権の国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)にアヴリル・ヘインズが就任した。ヘインズについては、このブログでも再三取り上げている。
avrilhaines101
アヴリル・ヘインズ

ヘインズはオバマ政権第二期目の2013年から2015年まで、中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)の副長官(Deputy Director、長官はジョン・ブレナン)を務め、2015年から2017年までは国家安全保障問題担当次席大統領補佐官(Deputy National Security Advisor、補佐官はスーザン・ライス)を務めた。私の最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げている。

 ヘインズについては批判も多く出ている。オバマ政権のCIA副長官時代の2015年、連邦上院情報・諜報委員会のコンピューターにCIA職員がハッキングを行ったという事件が起きた。委員会ではCIAが行った拷問についての報告書を作成中だった。その内容を知ろうとしての犯行だった。この行為に対して、ヘインズは処分を行わなかった。また、ドローンを使ったテロ容疑者の殺害にもゴーサインを出したが、その法的根拠をめぐって批判を浴びた。ヘインズは違法行為をいとわない、肝の据わった人物だ。

 ヘインズが対中・対露諜報活動を牽引する役割を果たすことになるだろう。バイデン政権の強硬姿勢の前提となる、情報・諜報を提供する。

(貼り付けはじめ)

連邦議事堂襲撃事件がバイデン政権の「スパイの親玉」の公聴会の質疑の大部分を占めた(Capitol Assault Dominates Hearing for Biden’s Spy Chief

-アヴリル・ヘインズは情報・諜報の分野から政治を遠ざけると公約した。

エイミー・マキノン筆

2021年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2021/01/19/avril-haines-spy-chief-cia-hearing-capitol-assault/

アメリカ大統領選挙当選者ジョー・バイデンの大統領就任式の前に、ワシントンでは暴動や襲撃に備えて警備が厳重になっている。そうした中、バイデン政権の国家安全保障ティームの主要メンバーの人事承認のための公聴会が連邦議事堂で火曜日、開催された。

連邦上院情報・諜報特別委員会による公聴会の中で、連邦上院議員たちがアヴリル・ヘインズと質疑応答を行った。ヘインズはバイデンから国家情報長官(director of national intelligence)に指名された。ヘインズに対しては、中国からイランとの核開発をめぐる合意、ソーラーウインズ社が提供したソフトを利用した連邦政府の諸機関に対するハッキング事件などが質問された。ヘインズはまた水責めについて拷問だと主張した。

ヘインズはオバマ政権でCIA副長官を務めた。ヘインズは、「大統領に真実を告げる(speak truth to power)」こと、トランプ政権下で情報・諜報部門が政治の道具にされたがこれを終わらせることを約束した。ヘインズは「我が国の情報・諜報部門の誠実さを守るため、情報・諜報に関する限り、政治が介入する余地はどこにもない、全くないということを強く主張しなければなりません」と述べた。ヘインズの冒頭での発言ではまた、説明責任を果たすために、内部告発者と監察官の存在の重要性を強調した。

国家情報長官はこれまで外国の情報や諜報に集中してきた。しかし、1月6日の連邦議事堂での事件について、今回の公聴会では長い時間が割かれた。ヘインズは、国内で拡大した過激派諸グループの外国とのつながりを調査すること、海外での急進諸グループとの戦いで情報・諜報部門が得た教訓を共有することを約束した。ヘインズはまた、Qアノンの陰謀論による脅威について公的な評価を行うにあたり、FBIと国土安全保障省と協力することも約束した。

民主、共和両党の議員たちは、徐々に対決姿勢を示している中国による脅威、テロリズム、特に中東におけるテロリズムとの数十年の苦闘という脅威に対しての懸念を表明した。

情報・諜報に関しての質疑の中で、ヘインズは「中国は敵(adversary)だ」が、気候変動といった問題については協力する余地があるという発言がなされた。「私の人事が承認されたら、私はこの問題について人材や資源が適正に配分されるようにすることを第一にしていきたいと思います」とヘインズは述べた。

連邦上院議員たちは、ヘインズの「ウエストエグゼクト・アドヴァイザーズ」社の在職時の仕事について質問した。この会社は2017年にアントニー・ブリンケンとミッシェル・フロノイによって創設されたコンサルタント会社だ。ブリンケンはバイデンが国務長官に指名した人物だ。フロノイは国防長官の候補者として名前が挙がった人物だ。ヘインズや同社の役員を務めたが、議員たちの中には、同社が顧客リストの提出を拒絶したために、ヘインズの仕事についての関心が高まった。ヘインズはウエスト社在職中に、外国の企業や組織、政府に対してコンサルタント業務を行ったことはないと確言した。しかし、ウエスト社在職中ではない時期に、あるフランスの民間企業の顧問を務めたことは認めた。

ヘインズはまた、『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストだったジャマル・カショギの殺害事件に関する機密指定を受けていない報告書を公開すると約束した。トランプ政権は、2019年に連邦議会が可決した、殺害事件に関する報告書には国家情報長官の決定が必要とする法律を無視した。

ヘインズは公聴会で元国家情報長官ダン・コーツから紹介を受けた。コーツはドナルド・トランプ大統領と、ロシアと北朝鮮に関する情報・諜報に対する評価をめぐり衝突し、2019年に辞任した。コーツは共和党所属の連邦上院議員だった経歴を持つ。コーツはヘインズについて、「次期国家情報長官に必要な能力、適性、経験、リーダーシップの全てを持っている」と述べた。続いて、彼女が政府に入るまでのユニークな経歴について詳しく述べた。柔道を学ぶために日本で1年間過ごしたこと、シカゴ大学で理論物理学を学んだこと、配偶者とはニュージャージー州での飛行機操縦学校で出会ったとことなどが紹介された。その後、ヘインズは書店を開き、弁護士となり、国務省と連邦上院外交委員会の法務担当アドヴァイザーを務めた。その当時の外交委員長がジョー・バイデンだった。

ヘインズの起用は、トランプ政権での国家情報長官起用と対照的なものである。国家情報長官は2001年の911事件の後に、アメリカの18の情報、諜報機関全体を監督する目的で創設されたポストである。トランプは政界における忠実な人物であるリチャード・グレネルとジョン・ラトクリフを情報・諜報専門のトップの大統領補佐官に起用した。連邦上院が承認すれば、ヘインズは初の女性国家情報長官となる。ヘインズの最初の仕事は情報・諜報の各機関の士気を高めることだ。これらの機関はトランプやトランプの支持者たちによって弱体化され、攻撃された。

しかし、政権移行が円滑に進まなかったために、いくつかの問題で情報が与えられていない。ヘインズは、「ソーラーウインズ」社のハッキング被害事件に関して機密情報が与えられていないと述べた。この事件では多くのアメリカ政府機関が被害を受け、捜査当局はロシアが関与していると発表した。

ヘインズは連邦上院国防委員会委員長に内定している、情報・諜報委員会のメンバーであるジャック・リード連邦上院議員に、「このことについて私はもっと多くのことを知らねばなりません」と述べた。

(貼り付け終わり)
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(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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