古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:国防次官

 古村治彦です。

2025年10月21日に臨時国会が召集されて、首班指名選挙が実施される。現在のところ、自民党の高市早苗総裁と国民民主党の玉木雄一郎代表の名前が報道で取り沙汰されているが、自民党と日本維新の会、国民民主党での協議が続いている。高市早苗首相誕生の可能性が高いと見られている。自民党はNHK党や参政党も取り込む動きを見せている。このような重要な政権に関する動きを誰が指揮し、誰がパイプ役、調整役を務めているのか、全く見えてこない。麻生太郎副総裁なのか、義弟の鈴木俊一幹事長なのか、全く分からない。自民党の新執行部は脳内お花畑の素人集団であり、先行きは極めて不安である。
 以下に、高市早苗総裁選出の前後に出た、海外での紹介記事を紹介する。「ガラスの崖(glass cliff)」「サッチャー・ルール(Thatcher rule)」という概念が紹介されており興味深い。ガラスの崖は、危機的状況において、目くらまし的に女性をリーダーに据え、危機を回避出来たら御の字、失敗したら「だからやっぱり女性は駄目だ」と男性が留飲を下げるということであり、サッチャー・ルールは、保守勢力の中核的な保守的価値観を強固に守る女性の方が出世しやすいということである。高市総裁は、ジェンダー平等や保守的な価値観の改革ではなく、保守的でかつ好戦的な態度を見せることで、「男社会」を勝ち抜いた女性ということになる。女性初の自民党総裁であるが、本質的に女性が直面している不平等とは戦わない。なぜなら、男性中心、男性優位の極右的な価値観を最優先するからだ。

 麻生太郎元首相の傀儡であり、旧安倍派復権政権となる高市政権は、アメリカの国益に資するための対米隷属内閣となる。具体的には、日本の防衛予算の対GDP比を既に決定している2%から3.5%に引き上げることが至上命題となる。石破茂政権ではエルブリッジ・コルビー国防次官からの要求を蹴ったことが報じられている(時事通信2025年6月21日付記事「米、日本に防衛費3.5%要求 反発で2プラス2見送りか―英紙報道」)。防衛予算は現在のところ、対GDP比1.3%程度であるが、これが約2.5倍になると、予算の他の科目、例えば、社会保障や教育を削る、もしくは大増税を行う必要が出てくる。高市政権は対外的な脅威を過剰に演出し、「愛国増税」のようなことを仕掛けてくるだろう。国民生活は破壊される。

 日本の先行きは不安が大きい。高市政権がもたらす厄災が可能な限り小さくなることを願うしかない。
(貼り付けはじめ)
日本初の女性首相は強硬派でなければならない(Japan’s First Female Prime Minister Has to Be a Hard-Liner

-もし彼女が今週の総裁選で勝利すれば、高市早苗の超国家主義的な政策(ultranationalist agenda)は地域を揺るがすことになるだろう。

ミン・ガオ筆

2025年10月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/02/sanae-takaichi-japan-first-female-prime-minister/

土曜日に行われる自民党総裁選挙では、高市早苗が日本初の女性首相となる可能性が高まっている。高市は、国際舞台における進歩とジェンダーの可視化(progress and gender visibility)を力強く示したと言えるだろう。しかし、彼女の政治の本質、師である安倍晋三元首相によって形作られた、極めて硬直した超保守主義的なイデオロギー(a rigidly ultraconservative ideology)は、与党自民党の根深い保守的かつ家父長的な構造を解体するどころか、むしろ強化する方向に作用している。このように、高市の首相就任は、進歩的な飛躍というよりも、女性が日本で真の権力を獲得するには、自民党の最も深く、最も伝統的な理念への「過剰な忠誠心」(an “over-loyalty” to the LDP’s deepest, most traditional impulses)を示すしかないのかどうかという、重大な試金石となるだろう。

世界的に見ると、日本は依然としてジェンダー平等において外側に置かれている立場(outlier)にある。2025年の世界ジェンダーギャップ指数では、日本は148カ国中118位と、G7諸国の中では最下位に位置しており、懸念されている。この格差は、主に女性の政治参加が著しく不足していることに起因している。石破茂内閣がそれを如実に物語っている。2024年10月、新政権はわずか2人の女性閣僚を任命しただけだった。これは、前政権の5人から大幅に減少したことになる。高市個人の成功は稀有かつ華々しい例外であり、彼女の個人的な成功が真に実質的なジェンダー改革につながるのか、それとも表面的な進歩の象徴に過ぎないのかという疑問を提起する。

この動きは「ガラスの崖(glass cliff)」という概念と密接に符合しているようだ。これは組織の危機や衰退期に、女性(およびその他の周縁化された集団)がハイリスクで不安定な指導的立場に昇格させられる現象を指し、彼女たちを目立つ存在としながらも、避けられない失敗に対して脆弱な立場に置く。例えばオーストラリアでは、2025年5月、保守政党である自由党が史上最低の支持率を記録した時期にスーザン・レイが党首に任命された。この人事は政治評論家たちから「ガラスの崖」シナリオと見なされた。彼女は選挙展望が著しく低下した崩壊状態の党を引き継ぎ、失敗するか、単に将来の男性後継者のために党を安定させる役割を課されたのである。

同様に、高市の台頭は自民党が長期にわたる国民の不信感に直面した直後に起こった。二度の選挙敗北により、自民党は国会での多数派を失ったまま政権維持に苦戦しており、次期党首は分裂した国会を引き継ぐだけでなく、国家予算や経済対策を含む重要法案を可決するため野党との交渉という重大な課題も背負うことになる。強硬派の女性(a hard-line woman)という「非典型的な」候補を推すことは、変化とイデオロギー的揺るぎなさを同時にアピールするという自民党の差し迫った必要性に合致する。もし高市が最終的に党や経済の安定化に失敗した場合、現在の少数与党体制と受け継いだ経済的逆風を考慮すればその可能性は高いが、自民党の保守的で男性中心の既得権層は、彼女の失脚を利用して「女性はトップリーダーシップに適さない」という既存の固定観念を強化し、根強い男性優位の階層構造を集団的非難から効果的に守ることになりかねない。

韓国初の女性大統領となった朴槿恵の歴史的前例は説得力に富む。朴元大統領の保守的で世襲的なリーダーシップは、進歩的な政策の推進や、韓国におけるジェンダーギャップの解消に向けた持続的な取り組みに繋がることはほとんどなかった。実際、朴元大統領の波乱に満ちた任期は政治スキャンダルに彩られ、最終的には家父長制が色濃く残る政治体制における女性リーダーシップの脆弱性を改めて浮き彫りにした。高市にとって、自民党の歴史修正主義と伝統主義への揺るぎないイデオロギー的関与(a nearly non-negotiable ideological commitment to the LDP’s historical revisionism and traditionalism)は成功の不可欠な前提条件(prerequisites)であり、彼女のジェンダー・アイデンティティは改革の使命というよりも、むしろ戦略的な資産となった。高市の成功は、ジェンダー平等の躍進ではなく、ましてやフェミニズムの躍進ではなく、保守的な同化の勝利として解釈されるべきである。実際、彼女は保守的な支持と政策方針ゆえに、反フェミニスト的な政治家と見なされてきた。

高市パラドックスの核心は、女性としての政治的優位性(political ascendancy as a woman)と、日本における女性の平等と自立に具体的に役立つ法改正への強硬な反対(fierce opposition to legal changes that would tangibly benefit women’s equality and autonomy in Japan)という、根本的な矛盾にある。高市は、男系男子による皇位継承法制度(the male-only royal succession law)の断固たる擁護者であり、夫婦が選択的に選択できる法改正(legal changes to allow married couples the option to retain separate surnames)に強く反対している。

高市が選択的夫婦別姓制度に反対する根拠は、こうした改革が伝統的な家族の価値観を修復不可能なほど損なうという信念にある。彼女は長年、家族の結束を維持し、将来の子孫の混乱を防ぐために、現行の姓制度を維持すべきだと主張してきた。1980年代以降、民法改正を求める夫婦別姓運動は国民の間で支持を強めてきた。しかし、こうした勢いにもかかわらず、現行制度は依然として既婚女性の95%以上が結婚時に職業的および私的なアイデンティティを放棄することを強いている。したがって、高市氏の立場は単なる個人的な信念を反映しているのではなく、権力を求める女性はまさに女性の平等を最も制約する構造を守らなければならないという自民党の期待を体現している。

高市氏の立場に内在する皮肉は明白である。彼女自身、公職において旧姓を使用するという職業上の自律性を享受しているのである。彼女は、選択的二重姓法(optional dual-surname law)は戸籍制度(family registry system)と国家(国民)統合(national unity)への直接的な脅威であり、個人の自由や男女平等よりも制度的・人口統計的硬直性を優先する保守派の考えであると主張している。

このイデオロギーへの固執は、日本と高市政権を国際的な人権についての関与と直接かつ即時的に衝突させる。国連のジェンダー問題に関する最高機関である女子差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Discrimination Against WomenCEDAW)は、日本の男女別姓強制法と男子のみを定めた皇室典範(the male-only Imperial House Law)を差別的であると繰り返し明確に非難し、日本政府に対し国際的なジェンダー規範に沿うよう改正するよう求めてきた。CEDAWの総括所見は、これらの法律が制度的なジェンダー不平等を永続させていると繰り返し強調している。高市の政治綱領は、事実上、CEDAWとの継続的な緊張を確実なものにしており、彼女の政権の家族とジェンダーに関する政策は今後も厳しい国際的監視に直面し、CEDAWのジェンダー平等の精神に反することを保証している。

高市が伝統的かつ保守的な価値観に固執していることは、単なる好みではなく、自民党内での彼女の政治的信用と権力の揺るぎない基盤となっていると言えるだろう。彼女の権力基盤は、主に彼女のキャリアを支えた安倍首相の後援とイデオロギー的遺産、そして自民党の超保守派中核の政治的動員によって形成されている。この中核は、強力な超国家主義圧力団体である日本会議(the powerful ultranationalist pressure group Nippon KaigiJapan Conference)の影響を強く受けている。日本会議は、2010年代半ばに監視が強化されるまで、主流メディアからほとんど注目されていなかった。

日本会議は、伝統的な家族価値観の回復、歴史修正主義の正常化(日本の戦時下の東アジア「解放[liberation]」を称賛し、戦前のように天皇を崇拝すること)、そして軍隊再建のための憲法第9条改正を含む包括的な修正主義的アジェンダを積極的に提唱している。高市早苗の過去および現在の政策姿勢、例えば「慰安婦(comfort women)」や戦時中の強制労働に関する外国の主張に対抗するため「歴史外交(history diplomacy)」の戦略的強化を提唱したこと、夫婦別姓制度への反対、靖国神社への定期的な参拝などは、この組織の影響圏内における忠誠心のリトマス試験紙になっている。

彼女の強硬なイデオロギー的姿勢は、日本の安全保障姿勢に決定的に及ぶ可能性がある。前回、2021年の総裁選挙挑戦時には、軍事費の大幅増額を主導的に提唱した。今回は国防強化と憲法改正による自衛隊の完全な合法化を主張している。これらの立場は「安倍ドクトリン(Abe Doctrine)」と密接に合致し、国家の主張と防衛拡大に焦点を当てた、強硬で断固とした男性的な日本国家像(masculine image of the Japanese state)を必然的に世界に投影するものである。

超国家主義を助長したとして国際社会の厳しい監視を受けていた安倍首相が、「ウィメン・シャイン」構想を(Women Shine initiative)通じて「ジェンダー重視の外交(pro-gender diplomacy)」を唱えたのと同様に、高市も同様にジェンダー・エンパワーメントの言説を、特に総裁選において採用してきた。これには、現金給付を伴う減税といった現実的な提案や、閣僚人事における「北欧的」な男女比(a “Nordic” gender balance)で国民を「サプライズ(オドロイテ)(surprise)」という注目すべき公約が含まれる。重要なのは、現代の「北欧基準」である閣僚人事(the modern “Nordic standard” for cabinet balance)でさえ、スウェーデンのような国に代表されるものであり、現在のクリステルソン内閣は当初、総勢24名のうち11名を女性閣僚に任命した(女性閣僚比率は約45.8%で、ほぼ男女比が同数である)。しかし、この計算された政策転換は、強硬な政策内容を隠蔽するためのソフトパワー・レトリックの戦略的な展開(a strategic deployment of soft-power rhetoric)である可能性が高い。

高市のナショナリズムの中核を成す憲法改正(constitutional revision)、明白な防衛計画、そして歴史修正主義(historical revisionism)は、即座に外交摩擦(diplomatic friction)を引き起こす可能性が高い。高市はここ数日、日本は「重要な隣国(important neighbor)」である中国と良好な関係を維持すべきとの見解など、物議を醸すいくつかの話題について発言を和らげる兆候を見せているが、中国と韓国の両国では既に超国家主義者、あるいは「安倍首相の女性版(the female Abe)」と広く見られている。

議論の対象となっている靖国神社への彼女の定期的な参拝は、特に扇動的である。靖国神社は、第二次世界大戦でA級戦犯として起訴された人々を含む、240万人以上の日本の戦没者を祀っている。北京とソウルは、こうした行動を日本の歴史修正主義の公式な承認と解釈し、戦後処理(postwar settlements)を揺るがすものと見ている。最近、フジテレビで首相として参拝するかどうかを問われた高市は、明確な表明を避け、「戦犯の刑は執行された(carried out)」ため「もはや犯罪者ではない(no longer criminals)」と述べ、「どこにいても手を合わせたい(still want[s] to put my hands together in prayer … from wherever I am)」と続けた。彼女の発言は、外交上の発火点(a diplomatic flash point)を戦略的に回避しながらも、戦没者への敬意を払い続けるという彼女の強い意志を強調したものと広く見なされている。したがって、高市政権は、地域和解(regional reconciliation)よりも国家主義的な記憶を優先する人物によって日本が率いられているというシグナルを送ることになるだろう。

さらに、高市は、領有権を公に主張したり、物議を醸したりしている「竹島の日」行事への閣僚出席を主張するなど、紛争の的となっている独島・竹島に関する最近の発言で韓国の感情を刺激しており、当選後にこれらの発言を実行に移せば、韓国との即時、厳しい外交的対立を招くことになるだろう。

この特定の島嶼紛争にとどまらず、高市の「台湾有事は日本にとっての有事である(a Taiwan contingency is a contingency for Japan)」という安倍首相の宣言に同調する高市の強硬な外交姿勢は、既に北京から意図的な挑発行為であり、安定への直接的な脅威(deliberately provocative and a direct threat to stability)とみなされている。中国はこの姿勢を、領土保全(territorial integrity)という中核的利益を直接侵害するものであり、日本が戦後の平和主義(postwar pacifism)を放棄し、地域の紛争において積極的な自己主張を展開する政治的シグナルであると捉えている。しかしながら、高市の外交政策と安全保障政策は、現在の自民党少数与党政権と「平和主義」を掲げる公明党との連立政権によって制約を受ける可能性が高い(However, Takaichi’s foreign-policy and security agendas are likely to be constrained by the current minority government of the LDP and its coalition with the “pacifist” Komeito party)。

これらの理由から、高市が首相に就任する可能性は、日本における実質的な男女平等の実現に向けた画期的な勝利(a landmark victory for substantive gender equality in Japan)というよりも、むしろ自民党の政治的な回復力と保守的な中核の強さ(the LDP’s political resilience and its conservative core)を示すものであると言える。高市の台頭は、自民党の硬直した組織体制の中で女性が権力を握る最も現実的な道は、党綱領の最も家父長的かつ国家主義的な要素(the most patriarchal and nationalist elements of the party’s platform)を揺るぎなく、完全に受け入れることであることを、おそらく最も如実に示している。もしそれが成功すれば、高市のリーダーシップは、ジェンダーに基づく改革よりもイデオロギーの同化が勝利したことを示すものとなるだろう。

※ミン・ガオ:ルンド大学(スウェーデン)歴史学部東アジア研究者。日本、韓国、中国に関する現代および歴史的な問題についての幅広い著作を持つ。

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新たな総裁選挙が迫る中、日本の真のボスたちは現状を見つめ直す(As Another Leadership Election Looms, Japan’s Real Bosses Take Stock

-名目上の指導者たちは党の権力構造において二次的な存在だがそのシステムは揺らぎを見せ始めている。

ウィリアム・スポサト筆
2025年9月30日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/30/japan-ishiba-prime-minister-elections/

今月、石破茂首相が辞任したことで、政府は新たな混乱に陥った。混沌とした世界秩序に対し、日本政府は安定した対応を求められているまさにその時期に混乱が起きた。

石破は、7月の参議院選挙における与党・自民党の惨憺たる結果の責任を取るため、辞任すると述べた。これは、2009年の衆議院選挙で敗北し辞任した麻生太郎元首相や、同様に惨憺たる選挙結果を受けて最初の任期を終えて辞任した安倍晋三元首相など、多くの歴代首相の足跡を辿るものだ。日本の政治において、このような後退は永続的なものではない。安倍首相は2012年に首相に返り咲き、約8年間の在任期間を経て、日本史上最長の首相在任期間を記録した。

日本の指導者たちはまるで回転ドアのように交代を繰り返しているように見える。ほとんどの首相は、他の世界の指導者たちが誰と対峙しているのかさえ分からないうちに退任してしまうからだ。しかし、これは日本にとって新しい現象ではなく、時に有益な場合もある。

例えば、自民党は1955年の結党以来、過去70年間のうち約64年間、いわゆる「合意に基づく一党支配(consensual one-party rule)」の下で政権の座を維持してきた。自民党のやり方は、世論調査で支持率が急落した党首を容赦なく追放することだ。支持率の基準値は定められていないものの、30%を下回ると危険水域(a danger zone)とみなされる。石破の最新の支持率は、7月の選挙後、21%から30%の間で推移している。

この決定は、戦後日本の政治を支配してきた自民党にとって、依然として混乱を招いている。党は10月3日と4日に党員投票を実施し、自民党議員に加え、各地方の党員代表も参加する。有力候補は、いずれも2024年の総裁選で総裁選に敗れた常連の顔ぶれだ。

高市早苗前経済安全保障担当大臣がトップに立っているが、強い国家主義的見解を持つ彼女は、最も物議を醸す選択肢となるだろう。彼女は麻生太郎をはじめとする党右派の有力者たちから支持されており、安倍首相の側近でもあった。こうした支持を受け、昨年9月の自民党総裁選では石破に僅差で次点となった。

一方、高市は、第二次世界大戦の責任を日本に押し付けるべきかどうかという歴史修正主義的な立場や、過去の日本の公式謝罪に対する批判などから、党内穏健派(the more moderate parts of the party)からも強い嫌悪感を持たれている。彼女が首相に選出されれば、日本初の女性首相となり、「サッチャー・ルール(the “Thatcher rule”)」、つまり女性は左派よりも右派からトップに上り詰める傾向があるという考え方を体現することになる。

もう一人の有力候補は、自民党議員の「新世代(new generation)」を代表する小泉進次郎農相だ。しかし、彼は少なくとも一つの伝統的な要素、すなわち政治王朝(political dynasties)を継承している。44歳の小泉はテレビ映りが良く、非常に人気のある父である小泉純一郎元首相の恩恵を受けている。小泉元首相は、安倍首相と並んで、平均2年の任期を超えて首相を務めた数少ない日本の元首相の一人だ。

小泉進次郎は、5月に突然の米不足に見舞われた直後に農水大臣に就任し、高い注目を集めた。米価高騰は、既にくすぶっていたインフレに拍車をかけ、米が文化において神聖な役割を担う日本にとって、感情的なレヴェルで大きな衝撃となった。

有力候補として、内閣官房長官の林芳正と、与党のヴェテランである茂木敏充が挙げられる。穏やかで温厚な林は、元外務大臣で、英語も堪能(日本のエリート層では珍しい)であり、カントリークラブで活躍する頼れる人物として、穏健派の代表格となるだろう。同じく元外務大臣の茂木は、より闘争心が強く、ドナルド・トランプ米大統領とその側近たちと渡り合うには最適な人物と目されている。

しかし、日本では集団指導体制(a system of collective leadership)において、首相自身はそれほど重要ではないという見方もある。集団指導体制では、主に党内の派閥(factions within the party)を率いて権力を握る、舞台裏にいる実力者たち(figures behind the scenes)が、領袖に忠実な議員たちで構成される派閥を率いていた。森喜朗元首相と麻生元首相は、支持率の急落を受けてわずか1年で辞任したが、不名誉な辞任にもかかわらず、辞任後も相当の権力を握っていた。

さらに、政治権力の変動が激しい中で、日本の高級官僚たちは、いわゆるアメリカの「ディープステート」(U.S. “deep state”)も羨むほどの権力を握ってきた。第二次世界大戦後、日本を経済大国(an economic powerhouse)へと変貌させた功績は、第一線で政策を立案したティームにある。

しかし、自民党は現在、この戦後モデルが危機に瀕している兆候に直面している。有権者たちが上からのリーダーシップを受け入れる意欲が低下している。これは、日本の国会である参議院の議席の半分を争った7月の選挙で顕著に表れた。参議院は衆議院に比べて力を持っていないが、世論の指標と捉えられることが多い。

この低迷により、宗教色の強い連立政権を組む公明党の支持を得ても、自民党は両院で過半数を獲得できない状態となった。与党は現在、参議院248議席中121議席、衆議院465議席中わずか220議席しか保有しておらず、政権維持は困難を極めている。他党との何らかの協力関係の構築が不可欠となっている。

同時に、自称「日本ファースト(Japan first)」を掲げる参政党の台頭により、ポピュリズムの台頭も見られるようになった。参政党は参議院で議席を2議席から15議席に増やし、今回の選挙での比例代表候補の得票率も12.6%と好調だった。

自民党の内紛はこれまで、同性婚や平和主義の立場を撤廃あるいは弱体化させるべきかどうかといった社会・政治問題に大きく焦点が当てられてきたが、今回の選挙戦の焦点は明らかに経済だ。ジョー・バイデン前米大統領が指摘したように、物価上昇率が賃金上昇率を上回っていると考える国民は、怒りの有権者となる可能性が高いだろう。

日本の小売物価上昇率は2.5~3.5%程度だが、凶作と政府の過剰生産抑制策により米価がほぼ倍増したため、7月の食料品インフレ率は7.6%に達し、日々の家計に非常に大きな影響を与えている。日本では食品の60%が海外から輸入されており、急激な円安(外国人観光客にとっては恩恵)が大きな原因となっている。

提案されている解決策は、根本的な問題に取り組むのではなく、政府が負担すべきでない資金をばら撒いて打撃を和らげるというものだ。

物価上昇による痛みを和らげるために、所得税の減税、10%の消費税の一部軽減、あるいはその他の補助金を講じるという考えは、7月の選挙で主要政党の主要政策課題となった。日本の巨額の政府債務問題に目を向けていた石破茂率いる自民党は、この分野での大胆な公約を最も躊躇し、一時的な現金給付を限定的にしか提供しなかった。これが党の低迷の主な原因と見られていた。

これに対し、今回の自民党総裁選挙の候補者全員が何らかの対策を公約しており、財政ハト派(a fiscal dove)の高市は最も野心的な提案をしている。彼女は出馬表明の際に、所得税控除と現金給付を組み合わせた対策を講じ、所得基準を引き上げると述べた。

彼女はこうした対策の財源について具体的な説明を避けたが、これは既に先進国の中で最大規模となっている日本の政府債務水準に更なる負担をかけることになるだろう。国際通貨基金(International Monetary FundIMF)は、日本の総債務残高をGDP比236.7%と推定しているが、これは2020年のピーク時の約260%からは減少している。財政余地を見出した政治家たちは、長期的な影響を顧みず、これまで通り、その余地を埋めようとするだろう。

ドイツ銀行東京支店チーフエコノミストの小山健太郎は「補助金の増額は財政拡大につながり、インフレ率を上昇させる可能性がある。家計の購買力は一時的に改善するかもしれないが、高インフレが定着しているため、この効果は長くは続かないだろう」と述べた。

これは、日本銀行が2024年3月以降に「ゼロ金利」政策(“zero interest rate” policy)から段階的に金利を引き上げる計画にも影響を与える可能性が高い。この政策は、数十年にわたるデフレ圧力から経済を脱却させるために策定されたものである。為替レートは厳密には日銀の管轄外であるが、金利上昇に伴う円高は、輸入コストの低下を通じてインフレ圧力をいくらか緩和するのに役立つだろう。

戦略や防衛問題はあまり目立たないが、日本は決して手をこまねいているわけではない。安倍首相の約9年間の任期が2020年に終了して以来、3人の短期政権を経験したが、日本は「志を同じくする」国々(“like-minded” countries)との関係構築に熱心に取り組んできた。これは使い古された表現であるが、世界中のアメリカの同盟諸国がワシントンからの混乱に直面し、独自のネットワーク構築に奔走していることを示している。

最近の例としては、イギリス海軍の空母プリンス・オブ・ウェールズを筆頭とする機動部隊が、日本を含むアジア地域に8カ月間展開したことが挙げられる。イギリスとイタリアは、日本国旗を掲げるだけでなく、アメリカの軍装備品への依存からの脱却を図るため、イタリアと戦闘機プログラムで提携しています。

近年、このような協定が相次いで締結されています。日本は、オーストラリア、イギリス、アメリカを連携させるAUKUS(オーカス)プロジェクトの非公式パートナーだ。また、アメリカ、オーストラリア、インドを連携させる四カ国安全保障対話(the Quadrilateral Security Dialogue)にも参加している。この3カ国は、それぞれ独自の緊張関係を抱えている。

日本は、この地域の他の国々、特に中国との対立を抱えるフィリピンを支援している。これには、1980年代から1990年代にかけて海上自衛隊が使用した中古フリゲート艦の移転も含まれると見込まれている。また、オーストラリアが次世代フリゲート艦の建造を巡る入札で、日本は意外な落札者となったが、契約交渉はまだ続いている。

日本では、政権が交代しても、このような戦略的取り組みの方向性が変わることはほぼない。国内の政治的混乱にもかかわらず、日本は依然としてアジアおよび世界においてある種の安全な避難場所を提供している。前例と安定を重んじる国が、突然トランプのような方向転換(a Trumpian detour)をするリスクは低いように思われる。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリスト。2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。ロイター通信と『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙で勤務し、20年以上にわたり日本の政治と経済を取材してきた。彼はまた、カルロス・ゴーン事件とその日本への影響に関する2021年の本の共著者でもある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※2025年11月に新刊発売予定です。新刊の仮タイトルは、『「新・軍産複合体」が導く米中友好の衝撃!(仮)』となっています。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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古村治彦です。
 2025年10月10日、不注意によって転倒し、左手薬指を脱臼し、2025年10月16日に靭帯の縫合手術を受けました。11月発売の新刊のゲラの修正も同時に行っておりました。現在、パソコンのキーボードを打つのが不自由な状態で、ブログの更新が滞りがちになります。まことに申し訳ございません。歩き慣れた道での転倒で、油断もあったと思いますが、筋力低下や柔軟性の低下で足が上がらないということもあったと思います。回復に務めつつ、筋力の維持のためのトレーニングも行ってまいります。皆様におかれましても、お気を付けください。

 第二次トランプ政権の「国家防衛戦略(National Defense StrategyNDS)」の策定が進められている。以下の記事で重要な点は、政権幹部たちは不法移民や麻薬売買対策といった国内問題、国土防衛を最優先し、対中強硬姿勢を改めるという考えを持っており、それに対して、アメリカ軍の制服組、職業軍人たちが懸念を持っているということだ。

 アメリカの国力では中国との戦争を戦うことはできないし、世界の警察官となって世界を管理することはできない。そうなれば、国内に引き上げていくのが当然だ。そうなると、アメリカ軍の規模は縮小される。結果として、将官やポストの数は減らされる。巨大官僚組織であるアメリカ軍はそれを受け入れることはできない。また、国防予算も縮小され、「軍産複合体」の原資も減っていくことになる。

 私の新著のテーマは「軍産複合体」である。現在、アメリカで起きている「新・軍産複合体づくり」の動きを詳述している。今回の動きはその一環だ。是非、新刊を読んでみて欲しい。

(貼り付けはじめ)

国防戦略草案に懸念表明 米軍首脳、対中より国内問題優先で―報道

時事通信 外信部202510011413分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025100100671&g=int

 【ワシントン時事】9月30日付の米紙ワシントン・ポストは、トランプ政権が策定中の「国家防衛戦略」の草案に関し、米軍首脳が深刻な懸念を表明したと報じた。中国抑止を重視するこれまでの路線を変更し、不法移民や麻薬流入など国内問題を優先しているためだという。

 報道によると、懸念を表明したのは制服組トップのケイン統合参謀本部議長を含む複数の米軍最高幹部。ケイン氏はヘグセス国防長官やコルビー国防次官(政策担当)に「非常に率直に意見を述べた」とされる。

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対中より本土防衛優先か トランプ政権の次期国防戦略―米

時事通信 外信部202509081750分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025090600301&g=int

 【ワシントン時事】米政治専門紙ポリティコ(電子版)は5日、国防総省がトランプ政権の安全保障政策の指針となる「国家防衛戦略」で、対中国よりも本土防衛を優先する方針を打ち出す見通しだと報じた。次期国防戦略は早ければ10月にも公表されるという。

 同紙が関係者の話として報じたところによると、8月下旬にヘグセス国防長官に提出された国防戦略の草案は、中国やロシアへの対抗ではなく、本土と周辺地域での任務を最優先に位置付けた。中国抑止を重視するこれまでの路線を変更するもので、関係者は「米国と同盟国にとって重大な転換になる」と述べた。

 トランプ大統領は1月の就任後、不法移民対策でメキシコとの国境に兵士を配備したほか、「治安維持」名目で国内の大都市に州兵を派遣。麻薬流入阻止を掲げ、カリブ海で麻薬密輸船を攻撃した。

 第1次トランプ政権が2018年に発表した国防戦略は、「対テロ」から中ロとの大国間競争へと重心を移した。バイデン前政権下の22年の戦略も同じ路線を継承しつつ、対中国をより前面に押し出した。

 次期戦略は国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)が策定を主導している。世界規模で米軍の配置を見直す文書も公表する予定という。

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ピート・ヘグゼス国防長官の新たな国防総省戦略にアメリカ軍最高幹部たちが懸念を表明(Military leaders voice concern over Hegseth’s new Pentagon strategy

-統合参謀本部議長のダン・ケイン将軍を含む複数の高官からの批判は、ピート・ヘグゼス国防長官がアメリカ軍の優先順位を再編する中で表明された。

ノア・ロバートソン、タラ・コップ、アレックス・ホートーン、ダン・ラモース筆

2025年9月29日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2025/09/29/hegseth-national-defense-strategy-trump-dissent/?nid=top_pb_signin&arcId=6PCTHCEQF5GUTIHZD344XKXWBM&account_location=ONSITE_HEADER_ARTICLE

アメリカ軍最高幹部たちはトランプ政権の次期国防戦略(forthcoming defense strategy)について深刻な懸念を表明しており、ピート・ヘグゼス国防長官が火曜日にヴァージニア州において、最高幹部たちを異例の会議に招集する中で、国防総省内での政治指導部と制服組指導部の間の分裂(a divide between the Pentagon’s political and uniformed leadership)が露呈したと現職および元職の当局関係者8人が明らかにした。

統合参謀本部議長のダン・ケイン大将を含む複数の高官たちからの批判は、ヘグゼス長官がアメリカ軍の優先事項を再編する中で出された。国防総省は本土への脅威認識に重点を置き、中国との競争を縮小し、ヨーロッパとアフリカにおける米国の役割を重要視していない。

ドナルド・トランプ大統領は、クワンティコ海兵隊基地で開催される将軍と提督が急遽招集されたこの会合に出席する予定だ。制服組の指導者たちは大量解雇や、戦闘指揮系統と軍階級の抜本的な再編を懸念しているが、ヘグゼス長官は軍の基準と「戦士の精神(warrior ethos)」について演説するとみられる。

国防総省が資源の優先順位付けを行い、世界各地にアメリカ軍を配置する主要な指針となる国家防衛戦略(National Defense StrategyNDS)をめぐる議論は、トランプ政権の型破りな軍事アプローチの中で舵取りを迫られる軍高官にとって、新たな課題となっている。

編集プロセスに詳しい関係者たちは、他の人々と同様に匿名を条件に、デリケートな審議について語った。彼らは、大統領の極めて個人的で、時に矛盾する外交政策へのアプローチを考えると、この計画は近視眼的で、的外れである可能性があると感じており、不満が高まっていると述べた。

国防総省のショーン・パーネル報道官は、機密文書の内容や、文書の編集プロセスで懸念が提起されたかどうかについてコメントを控えた。

パーネル報道官は、「ヘグセス国防長官は、トランプ大統領の常識的な『アメリカ第一主義、力による平和』政策(America First, Peace Through Strength agenda)の推進に焦点を絞った国家防衛戦略の策定を指示した。このプロセスはまだ進行中だ」と述べた。

国防総省政策局内のトランプ大統領の政治任命職員(中には、ヨーロッパと中東に対するアメリカの長年の関与を批判してきた当局者も含まれる)が戦略を起草し、現在最終編集段階にある。

この草案は、世界各地の戦闘司令部から統合参謀本部に至るまで、軍の指導者に広く共有されているが、関係者3人によると、その中には、この計画の優先事項が、世界中の危機に対応するために設計された部隊にとってどのような意味を持つのか疑問視する者もいた。

複数の関係者によると、起草過程で反対意見が出るのはよくあることだが、この文書を懸念する当局者の数、そして批判の大きさは異例だ。

事情に詳しい2人の関係者によると、ケイン統合参謀本部議長はここ数週間、国防総省の幹部たちに懸念を伝えていたという。

「ケイン統合参謀本部議長はヘグセス長官に非常に率直なフィードバックを与えた」と2人のうちの1人は述べ、国防総省の政策責任者であるエルブリッジ・コルビーも議論に参加していたことを指摘した。この人物は「ヘグセス氏が国家防衛戦略の重大性を理解しているかどうかさえ分からない。だからこそ、ケインはあれほど努力したのだと思う」と述べた。

2人目の関係者は、ケイン統合参謀本部議長が国家安全保障戦略(NDS)において、紛争において中国を抑止し、必要であれば打ち負かすための軍の整備に引き続き重点を置くよう働きかけてきたと述べた。

ヘグセス長官と政策当局者たちは、国防総省がヨーロッパから一部部隊を撤退させ、司令部を統合する意向を示しているが、これは特にロシアによるウクライナ戦争や、最近のNATO領空への度重なる侵攻を受け、同盟諸国の一部を不安に陥れる形となっている。長年にわたり、国防総省の戦略は、国の最善の防衛策は海外で強固な軍事同盟を構築・維持することであるという考えに基づいてきた。

第二次トランプ政権内で、この海外重視アプローチを批判する人々は、国内の利益を守るどころか、外国での多額の費用がかかる戦争にアメリカを泥沼に陥れていると主張している。トランプ大統領のこれまでのアプローチは、同盟諸国に自国の防衛費増額を促すことに重点を置いており、時には国内の防衛費増額を訴えている連邦議会共和党の国防強硬派を疎外することもあった。

トランプ大統領はイエメンとイランで爆撃作戦を実施してきているものの、その主な焦点はアメリカ本土に近い任務への軍の増強にある。

トランプ大統領の指揮下で、国防総省は今年、カリブ海で麻薬密売容疑者たちを攻撃し、南部国境にアメリカ軍と武器を配備した。また、州兵と海兵隊をアメリカの各都市に派遣し、国外追放活動を支援し、大統領が「制御不能(out of control)」と呼ぶ都市犯罪の抑制に努めた。これらの国内派遣の一部は、現在裁判で争われている。

トランプ大統領は週末、ソーシャルメディアでオレゴン州ポートランドへの部隊派遣を命じ、ポートランドで散発的な抗議活動を引き起こしている移民関税執行局(Immigration and Customs EnforcementICE)の職員を守るため、部隊に「全力(full force)」を行使することを認めた。ヘグセスは日曜日、オレゴン州兵へのメモで、この任務には約200人の州兵の連邦化(federalizing)が含まれると述べた。

複数の関係者によると、新戦略に対する内部からの批判の多くは、中国が急速な軍備増強を続け、アメリカ軍関係者が太平洋におけるアメリカの優位性を低下させていると警告しているにもかかわらず、国家防衛戦略の草案がアメリカ本土への脅威を強調していることに向けられている。

文書には依然として中国に焦点を当てた部分も相当数あるが、それらはアメリカにとって最大の敵国との世界的な競争というよりも、台湾攻撃の脅威に大きく集中していると5人の関係者は述べている。コルビーは長年、アメリカ軍は中国の侵攻リスクへの備えができていないと警告し、ワシントンに対しこの問題への注意と資源の集中を求めてきた。

ある元当局者は、この戦略について「十分に検討されていないのではないかという懸念がある」と述べた。

この文書の論調は過去の戦略よりもはるかに党派的(partisan)であり、ヘグセス長官の演説と同様のレトリックで、バイデン政権がアメリカ軍の衰退を招いたと述べていると、計画に詳しい2人の関係者は述べている。

一方、ヘグセス長官はアメリカ軍の改革を主導しており、米軍を統括する約800人の将軍と提督を20%削減し、アメリカ軍の戦闘部隊の指揮系統を再編することを約束している。ヘグセス長官は既に、チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア統合参謀本部議長やリサ・フランケッティ海軍作戦部長など、高官を解任している。これらの解任では、不釣り合いなほど多くの女性が解任されている。

『ワシントン・ポスト』紙が3月に初めて詳細を報じた国防総省の暫定防衛戦略には、台湾と本土防衛への同様の重点が含まれており、両方の優先事項を満たすために世界の他の地域で「リスクを負う(assume risk)」よう国防総省の指導者に促すまでになっている。

この暫定文書は、国内外で軍人をより積極的な役割で活用するという新たな戦略にも示唆を与えていた。文書によると、ヘグゼス国防長官は国防総省に対し、「国境封鎖、不法な大量移民、麻薬密売、人身売買、その他の犯罪行為を含む侵略行為の撃退、そして国土安全保障省と連携した不法移民の国外追放に重点的に取り組む」よう指示した。

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国防総省の計画は中国の脅威よりも国土防衛を優先する(Pentagon plan prioritizes homeland over China threat
-これは北京への抑止力を重視した第一次トランプ政権からの大きな転換を示すものだ。

ポウル・マクリーリー、ダニエル・リップマン筆

2025年9月5日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2025/09/05/pentagon-national-defense-strategy-china-homeland-western-hemisphere-00546310

国防総省の高官たちは、国防総省がアメリカ本土と西半球の防衛を優先するよう提案している。これは、長年にわたり中国の脅威に焦点を当ててきた軍の任務からの、際立った転換だ。

先週、ピート・ヘグセス国防長官の机に届いた最新の国家防衛戦略(National Defense Strategy)の草案は、北京やモスクワといった敵対諸国への対抗よりも、国内および地域的な任務を優先していると、報告書の初期ヴァージョンについて説明を受けた3人の関係者が述べている。

この動きは、ドナルド・トランプ大統領の最初の任期を含む、近年の民主党政権と共和党政権の、北京をアメリカ最大のライヴァルと呼んだ状況からの大きな転換となるだろう。また、中国の指導部をアメリカの安全保障に対する脅威と見なす、両党の対中強硬派を激怒させることも予想される。

「これはアメリカと複数の大陸にまたがる同盟諸国にとって大きな転換となるだろう」と、草案について説明を受けた関係者の1人は述べた。彼は「アメリカの古くからの、信頼されてきた約束に疑問を持たれている」と発言した。

この報告書は通常、政権発足時に公表されるため、ヘグセス長官は計画に変更を加える可能性がある。しかし、多くの点で、この転換は既に起こりつつある。国防総省は、ロサンゼルスとワシントンDCの法執行機関を支援するため、数千人の州兵を動員し、アメリカへの麻薬の流入を阻止するため、複数の軍艦とF-35戦闘機をカリブ海に派遣した。

今週、アメリカ軍は国際水域(international waters)でヴェネズエラのトレン・デ・アラグア・ギャングの構成員とみられる11人を殺害したとみられる。これは、軍による非戦闘員殺害への大きな一歩となる。

国防総省はまた、メキシコとの南部国境に軍事化ゾーン(a militarized zone)を設定し、軍が民間人を拘束できるようにした。これは通常、法執行機関(law enforcement)の任務である。

この新たな戦略は、中国への抑止力を国防総省の最重要課題としていた、トランプ政権初期の2018年国家防衛戦略の重点を大きく覆すものとなるだろう。

この文書の冒頭には「中国とロシアが、自国の権威主義モデル(authoritarian model)と整合した世界を構築しようとしていることは、ますます明らかになっている」と記されている。

報告書について説明を受けた、共和党のある外交政策専門家は、この変化は「トランプ大統領の対中強硬姿勢とは全く一致していないように思える」と述べた。この専門家も、他の専門家と同様に、微妙な問題について匿名で話した。

トランプ大統領は、北京に莫大な関税を課すことや、モスクワでの軍事パレードで北朝鮮の金正恩委員長とロシアのウラジーミル・プーティン大統領と会談した後、習近平国家主席がアメリカに対して「陰謀を企てている」(“conspiring against” the U.S.)と非難するなど、中国に対して強硬な姿勢を示し続けている。

国防総省の政策責任者であるエルブリッジ・コルビーがこの戦略を主導している。彼はトランプ大統領の最初の任期中に2018年版の策定に重要な役割を果たし、より孤立主義的な政策を強く支持してきた。長年対中強硬派として活動してきたコルビーだが、アメリカを対外的な関与から切り離したいという点では、JD・ヴァンス副大統領と意見が一致している。

コルビーの政策ティームは、今後予定されている世界情勢の見直し(世界各地におけるアメリカ軍の駐留場所を概説する)と、アメリカと同盟諸国の防空体制を評価し、アメリカのシステムの配置場所に関する提言を行う戦域防空ミサイル防衛の見直しも担当している。国防総省は、早ければ来月にも両見直しを発表する予定だ。

国防総省報道官は、この見直しについてコメントを控えた。ホワイトハウスもコメント要請に応じなかった。

これら3つの文書は、多くの点で相互に関連している。ある関係者によると、それぞれの文書は、同盟諸国に対し、自国の安全保障に対する責任をより強く負うよう求めることを強調する一方で、アメリカはより国土に近い取り組みを強化するという。

同盟諸国は、この国際情勢見直し(global posture review)の影響を特に懸念している。なぜなら、この見直しによってアメリカ軍がヨーロッパや中東から撤退し、重要な安全保障支援プログラムが削減される可能性があるからだ。

国防総省当局者とヨーロッパ各国の外交官たちは、国防総省のバルト海安全保障イニシアティヴ(ラトヴィア、リトアニア、エストニアの防衛および軍事インフラ整備を支援するため、年間数億ドルを助成している)が今年資金を失うという『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道を確認した。

ある外交官は、このイニシアティヴの資金はアメリカ製兵器の購入に充てられ、「強力な支持を受け、主要能力の開発を加速させ、ハイマース(HIMARS)のようなアメリカ製システムの取得を可能にしてきた」と指摘した。

NATO同盟諸国は、ヨーロッパに駐留する約8万人のアメリカ軍兵士の一部が今後数年間で撤退するとの見方を強めている。しかし、各国の影響の受け方は異なり、最終的にはトランプ大統領の気まぐれに左右されることになる。

水曜日にポーランドの新大統領がホワイトハウスを訪問した際、トランプ大統領は、アメリカはポーランドから軍を撤退させるつもりはないと述べた。しかし、アフリカ大陸の他の地域では軍の削減を検討していることを認めた。

「むしろ、ポーランドに兵力を追加するつもりだ」とトランプ大統領は述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※2025年11月に新刊発売予定です。新刊の仮タイトルは、『「新・軍産複合体」が導く米中友好の衝撃!(仮)』となっています。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年6月21日、ドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍に命じて、アメリカ空軍の戦闘機にイラン国内の核関連施設3カ所を攻撃させた。中東情勢は緊迫化を増すが、イランがアメリカを攻撃する力はない。イスラエルに対するミサイル攻撃が反撃の柱になるだろう。アメリカとイスラエルは中東地域において完全な敵役となった。イスラエルのイラン攻撃には、中国やロシアが

ヨーロッパ(ウクライナ)、中東(イスラエル、イラン)ときな臭くなっているが、アジア地域は安定し、世界経済のエンジンとなっている。アメリカのトランプ政権は、日本をはじめとするアジア諸国に防衛費の増額を求めている。日米間では、日本の国防費の対GDP比をアメリカ並みの3.5%にせよと求めたという報道が出た。そして、ついには、5%にせよという無茶苦茶な要求まで出た。現在が1.8%程度だが、その2倍、3倍にせよという要求だ。日本の国民生活や経済のことなど何も考えていない。それは当然のことで、アメリカの属国である日本からは搾り取れるだけ搾り取るのがアメリカの国益だ。正確には、アメリカにとって唯一の「競争力のある」製造業である軍事産業の利益である。現在でも重税で苦しんでいるが、日本国民はさらに増税で苦しめられることになる。
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 アメリカは世界最大の防衛費を誇り、最強の軍隊を保有している。防衛費の対GDP比を見てみると、最近になって減少させている。4%を切って、3%台になっている。防衛費もアメリカにとって重い負担になっている。この負担を他に押し付けようというのがアメリカの魂胆でもある。そのターゲットが日本である。日本を中国に対する「番犬」にしようということになる。米国防総省序列第3位の国防次官(政治担当)のエルブリッジ・コルビーの著書は日本でも翻訳が出ているが、日本に「大軍拡」を求めている。それは中国に対する抑止のためだが、アメリカと中国が直接廠とすることは想定しない。ウクライナやイランに比べて、中国は国際社会における存在感が桁違いだ。そこは伸長にならねばならないが、日本に「汚れ仕事」をやらせることで、いざとなれば、「日本が暴走しただけで、自分たちは関係ない、それどころか、日本は米中両国で抑えねばならない」ということになって、日本は切り捨てられることになるだろう。

日本は戦争をしてはいけない。戦争につながる動きにも敏感にならねばならない。アメリカは日本を戦争に巻き込もうとしている、いや、正確には日本を捨て駒にしようとしている。そもそも防衛費を現在の3倍、4倍ににしたら、国民生活は困窮の度を深める。庶民からはこれ以上搾り取れないとなったら、後は富裕層や大企業から取るしかない。「皆さんが安心して金儲けができるためのショバ代ですよ」ということで、増税することになるだろう。海外に逃げることも許されないだろう。私たちは戦後体制についてよくよく再考しなければならない。
(貼り付けはじめ)
防衛費GDP比5%要求 米政権、日本含むアジア同盟国に

時事通信 外信部202506220747分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062200115&g=int

 【ワシントン時事】トランプ米政権は日本を含むアジア太平洋の同盟国に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比5%に増やすよう要求した。国防総省のパーネル報道官が21日、取材に明らかにした。日本政府は2027年度に防衛費をGDP比2%に引き上げる方針だが、トランプ政権は大幅な積み増しを迫った格好で、日本国内でも増額に関する議論が熱を帯びそうだ。

 パーネル氏は、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国がGDP比5%の防衛費目標を協議していると指摘。「中国の大規模な軍事力増強、北朝鮮の核・ミサイル開発を考慮すると、アジア太平洋地域の同盟国が欧州の水準とペースに迅速に追いつくべきなのは当然だ」と強調した。

 また、「これはアジア太平洋地域の同盟国の安全保障上の利益だ。アジアの同盟国とのより均衡の取れた、より公平な負担分担は米国民にとっても利益となる」と主張。「トランプ大統領のアプローチは、この常識的な考えに基づくものだ」と理解を求めた。

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●「トランプ米政権が日本に防衛費GDP35%要請か 英紙報道、3%から引き上げ」

産経新聞 2025/6/21 06:40

https://www.sankei.com/article/20250621-EVLR2GBOLFIJHE7ABJZUI7V6F4/

【ワシントン=坂本一之】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は20日、トランプ政権が日本の防衛費に関し国内総生産(GDP)比で35%に引き上げることを求めたと報じた。日米関係筋は35%への引き上げ要請について「聞いていない」としている。トランプ政権は北大西洋条約機構(NATO)加盟国にGDP5%を求めていて、オーストラリアには35%を要求するなどアジア太平洋地域の同盟国にも増額を求めている。

同紙によると米側は当初、日本の防衛費に関しGDP3%を主張していたが、最近になって増額規模を引き上げて35%を要請。国防総省ナンバー3として政策立案を担うコルビー政策担当次官のアイデアという。

日本側は、71日に米国で予定していた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)開催を取りやめたとしている。

コルビー氏は3月、議会の公聴会で日本の防衛費について「少なくともGDP3%を可及的速やかに支出すべきだ」と主張していた。

ヘグセス国防長官は5月末にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(通称シャングリラ対話)で、NATO5%を「新たな模範」としアジア太平洋地域の同盟国にも増額を呼び掛けていた。同会議に合わせて開いた米豪防衛相会談では、オーストラリアに35%への引き上げを求めている。

国防総省のパーネル報道官は20日、アジア太平洋地域の同盟国の防衛費について「中国の大規模な軍事力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発を考えると、欧州の防衛費の水準に追いつくよう迅速に対応することは常識的だ」と述べた。

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米、日本に防衛費3.5%要求 反発で2プラス2見送りか―英紙報道

時事通信 外信部202506210839分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062100227&g=int

 【ワシントン時事】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は20日、トランプ米政権が日本に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比3.5%に引き上げるよう要求したと報じた。もともとの要求は3%だったため、日本側は反発し、7月1日で調整していた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の開催を見送ったという。

 報道によると、米国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)が最近、3.5%目標を求めた。要求拡大が日本側の「怒りを買った」とされる。

 7月20日に参院選の投開票が見込まれることも、2プラス2開催見送りの一因となった。日本側は2プラス2開催が参院選に与える影響を懸念した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で私がアメリカのジョー・バイデン政権の閣外のキーパーソンとして挙げたミッシェル・フロノイ(オバマ政権時代には国防次官、クリントン政権時代には国防次官補)は、現在コンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の経営パートナー(共同創設者でもある)を務めている。ウエストエグゼク社は地政学面、安全保障面で各大企業に助言を行っている。CEOたちがフロノイに直接コンタクトを取り、これからどうなるか、自分のところの企業はどのように行動すべきかを質問している。
micheleflournoy501
ミッシェル・フロノイ

 3月と4月にフロノイのインタヴューを基にした記事がアメリカで発表されており、その内容を知ることは私たちにとって有益である。それは、ウエストエグゼク社出身者たちが10数名バイデン政権入りを果たし、高官として中枢で働いているからだ。フロノイの考えを知れば、それはバイデン政権の考えを知る手掛かりとなり、更に言えば、アメリカ政府は「このように動かしたい」と考えていることが分かるからだ。

 ウクライナ戦争はウラジミール・プーティン大統領のロシア軍の能力への過信と、ウクライナ軍と国民の抵抗力、西側諸国の反応に対する過小評価が引き起こしたとフロノイは指摘している。それはウクライナ戦争経過2カ月頃まで、ロシア軍の苦戦とキエフを奪取できなかったことで明らかだ。しかし、それ以降はロシア軍が東部に戦力を集中し、確実に支配地域を拡大している。欧米諸国の対露制裁と対ウクライナ支援の効果は限定的と言わざるを得ない。その結果として、戦争は膠着状態に入りつつある。

 ウクライナ戦争によって、これまでの西側諸国とロシアとの関係は大きく変化し、ロシアに対しては、たとえ戦争が終結しても、プーティンが権力の座にある限り、制裁は続くということになるとフロノイは指摘している。しかし、制裁の効果は限定的となるだろう。それは、西側以外のそれ以外の国々がロシアとの取引を続けるからだ。それらの国々全てに対して西側が制裁を科すということは不可能だ。

 フロノイは今年3月にバイデン大統領が派遣した台湾訪問団に加わっている。中国と台湾に関する問題では、中国がすぐに台湾に侵攻することはないと見ている。これはその通りだと思う。中国はウクライナがロシア黒海艦隊の旗艦モスクワをハープーンミサイルで撃沈させたことを重視している。中国にしてみれば台湾の防衛力は侮れない。また、現状を大きく変更し、リスクを冒して台湾に侵攻する理由は存在しない。ちょっと考えればこんなことはすぐ分かるはずだが、一部のお調子者と好戦主義者たちが「台湾は次のウクライナだ」と盛んに宣伝していたが今はその声も聞こえなくなっている。

 フロノイが台湾訪問団に参加したことで、私はバイデン政権入りがあるのではないかと見ているが、それがなくても、彼女がキーパーソンであることは間違いないし、ウエストエグゼク社が重要な存在であることは間違いないところだ。

(貼り付けはじめ)

CEOたちはウクライナについて沈黙を守るべきではないし、それ以外の様々な国際的な諸問題についても沈黙を守ることは不可能だ。トップのアドヴァイザーはこのように述べている(CEOs couldn't afford to stay quiet on Ukraine, and they won't be able to stay quiet on other global issues either, top advisor says

マーガレット・ウォード筆

2022年4月4日

『ビジネス・インサイダー』誌

https://www.businessinsider.com/ukraine-russia-michele-flournoy-ceo-leadership-2022-3

・ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同設立者であるミッシェル・フロノイは、地政学的な事象について各大企業のCEOたちに助言している。

・ミッシェル・フロノイは、本誌『ビジネス・インサイダー』とのインタヴューで、ロシアの侵攻についてCEOたちが抱いている疑問について語った。

・フロノイはまた、CEOたちが世界の緊急課題に対してもはや沈黙を守ることができない理由についても語っている。

ミッシェル・フロノイは、20年以上にわたり、世界のトップリーダーたちに、地政学的な出来事をどのように乗り越えていけばよいかを助言してきた。ビル・クリントン大統領時代とバラク・オバマ大統領時代には国防総省高官を務めた経験を持つ。そして今、フロノイはCEOたちが変化する世界を進んでいるのを助けている。

2021年12月、フロノイの携帯電話には、メールやテキスト、電話などを通じてひっきりなしに連絡が来るようになった。連絡をしてくるのは世界トップクラスのビジネスリーダーたちだ。ジョー・バイデン大統領が、当時疑われていたロシアのウクライナ侵攻計画について、公の場で発言したところだった。CEOたちは「これをどう受け止めればいいのか?」 とフロノイに異口同音に質問している。

それ以降、フロノイは他の「CEOの助言者たち」と共に、ロシアのウクライナ侵攻に対応するビジネスリーダーを支援するために、裏舞台で活動を続けている。地政学的コンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同設立者兼経営パートナーであるフロノイは、「侵略は、CEOの役割について、単に利益を上げるだけのリーダーではなく、世界を舞台にしたリーダーとして振る舞うようにするよう、変えようとしている」と述べた。

実際、2020年以降、CEOたちは人種差別、警察による暴力、投票権などの問題について発言するよう、より大きな圧力に晒されている。そして、この2カ月間で、エクソンモービル、マクドナルド、ディズニーなど500社近くが、ロシアからの事業撤退、事務所や店舗の閉鎖、ロシアとの全面的な関係断絶を行った。

ウエストエグゼク社の顧客リストは非公開となっている。フロノイは、契約上のプライバシーに関する規定があるため、現在または過去の顧客名を明かすことを拒否し、公開される報告書には顧客名は記載されない。

フロノイは「CEOたちは、自分が歴史のどちらの側にいるかという選択をすることになる。"彼らはそうした選択を好まないかもしれないが、それが今の世界の事実だ」と述べている。

本誌はフロノイに、ロシアのウクライナ戦争についてCEOたちが彼女に質問する一番の疑問、高い利害関係、そしてこの瞬間が将来のビジネスリーダーにとって何を意味するのかについて話を聞いた。

このインタヴューは編集され簡潔にまとめられている。

●ロシアのウクライナ侵攻に対して拡大企業のCEOたちが強く反応した。それは何故か?

■ビジネス界からの反応は驚くほど強く、多くの人々が予想していたよりも強かった。私たちが話を聞いたCEOたちの中で、ウラジミール・プーティンのシナリオを信じた人はいなかったと思う。彼らは、プーティンがウクライナに軍事介入する正当な理由があるとは思っていない。二つ目に、より大きな問題は、ロシアが直接的かつ執拗に民間人を標的にする戦術を採用していることだ。これはとても恐ろしいことだ。これは違法なだけでなく、非道徳的であり、見るに耐えない。CEOたちの側にも直感的な反応があり、彼らは「こんなことに加担する訳にはいかない。このようなことに無関心でいることはできないし、ロシアと関係を持っているように見られることも許されないのだ」と考えている。

●ウクライナについてCEOたちからどのような質問をされるのか?

■多種多様な質問が出されている。具体的には、「紛争はいつまで続くのか? 制裁はいつまで続くのか? サプライチェーンやロシアの石油・ガスに依存しているヨーロッパへの長期的な経済的影響はどうなるのか? この後、ヨーロッパはどうなるのか? どのように終わるのだろうか? 従業員のケアはどうすればいいのか?」という質問が出されている。

●この2年間、世界はジョージ・フロイドの殺人事件、新型コロナウイルス感染拡大、環境・社会・ガバナンスの目標に対する投資家の要求の高まりを目の当たりにしてきた。これらの出来事は、各大企業のCEOたちの対ロシア行動にどのような影響を与えたのか?

■ここ数年、CEOたちは、政策を避けようとしても、政策は必ず後についてやってくるという事実に敏感になっているように考える。ワシントンを避けようとしても、ワシントンはあなたを見つけに来るのだ。地政学を避けようとしても、地政学は必ずやってくるのだ。

CEOたちは、このような非常に重要な道徳的問題や政策的問題について、自分たちの見解を持たなければならない。なぜなら、CEOたちの見解について、株主は気にし、市場は気にし、顧客はしばしば気にするからだ。

また、CEOたちは、社員たちのケアについても積極的に考えている。CEOたちは、次に起きる地政学的な紛争について考えている。例えば、「中国と台湾の対立が起きたら?」ということだ。CEOたちは今、万が一に備えた計画を立てているところだ。

CEOたちは今日、明らかに地政学的な出来事に対処しなければならない。これは新しい現象なのか? それとも、昔からそうだったのか?

■私自身は、優秀なCEOは常にこの部分を理解していると確信している。しかし、今起きていることは、経済統合が進み、主に効率化のために構築されたサプライチェーンによって、私たちを切り離すことが非常に難しくなっていることだと考える。これは、経済統合やグローバライゼーションの本質であり、過去30年以上の傾向だ。この30数年のトレンドにより、世界のつながりはより強固なものとなっている。

地政学的な諸問題は、今やCEOの課題として取り上げざるを得ないのだ。そして、このような状況下で企業がどのように行動するかについて、一般の人々の認識や懸念、判断が高まり、地政学的諸問題はCEOや取締役会の議題としてより高いレベルの優先度を持つようになった。

CEOたちが地政学的な諸問題に関与する傾向が強まっていることに対し反発の声もある。ゴールドマン・サックスのCEOデイヴィッド・ソロモンは、ロシアを排除するのはビジネスリーダーの仕事ではないと述べた。

■そうではあるが、ゴールドマン・サックスはロシアから撤退した最初の金融機関となった。

政策を決めるのはCEOたちの仕事ではない。しかし、彼らはその金融的な規模と経済的な重さゆえに、このシステムの一員となっている。

●ロシアでの紛争はビジネス史において転換点なのだろうか?

■ヨーロッパの秩序を決定するだけでなく、プーティンにとって有益なものになるかどうかで、他の権威主義的指導者の行動にも影響を与える大きな出来事だと私は考える。他の権威主義的指導者たちは、この瞬間を見て、目的を達成するために力を行使しようと考えている。

また、エネルギー分野のビジネスリーダーにとっても重要な瞬間となると思う。この危機によって、ヨーロッパ諸国は今後10年間、ロシアの石油やガスから離脱するための投資を余儀なくされると思う。また、サプライチェーンがロシア産の希少な鉱物に依存している分野もあると考える。そのようなビジネスの多くは、他の供給源を探すために奔走することになるだろう。また、特定の国への小麦や穀物の輸出にも影響が出るだろう。

●これからの5年間であなたのCEOたちと関わる役割はどのように進展していくと考えるか?

■私たちは現在国際的により大規模な競争の時代に生きていると私は考えている。アメリカが経済的、技術的な優位性を維持しながら、自分たちの価値観に忠実であろうとするためには、ここが本当の意味での勝負どころである。つまり、企業のトップたちはアメリカの優位性と価値観の維持にとってのキープレーヤーであり、彼らが競争力を維持できるようにすることが非常に重要なのだ。特に、悲しいことに国際秩序を変えようとする権威主義的な国家が再び台頭している今、これは非常に重要なことだ。

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元国防次官はウクライナ戦争の混乱の中どのように進むかに関して、各大企業にどのように助言しているのか(How A Former Under Secretary Of Defense Is Advising Companies To Navigate Ukraine War Disruptions

スティーヴン・エウリッチ筆

2022年3月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/stevenehrlich/2022/03/08/how-a-former-under-secretary-of-defense-is-advising-companies-to-navigate-ukraine-war-disruptions/?sh=7da5ea09b54d

「物事は良くなる前に悪くなるものだ」。これは、バラク・オバマ大統領時代に国防次官を、クリントン大統領時代に国防次官補を務めた、ミシェル・フロノイが、ロシアとウクライナの戦争についてクライアントたちから尋ねられたときに最初に伝えるアドヴァイスだ。

ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の共同創設者であり、現在経営パートナーを務めるフロノイは、1945年以来ヨーロッパで最大の陸上での戦争を引き起こした状況や、今後数ヶ月、数年先まで必要となる難しい選択について企業が理解できるよう日夜手助けを行っている。ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は現在、ボストンコンサルティンググループと提携し、各企業の経営陣や民間企業に助言を行っている。

本誌『フォーブス』とのインタヴューの中で、フロノイは、弾丸や迫撃砲が止まれば、いつであろうとすぐに物事が正常に戻るという、よくある誤解を否定している。実際、戦闘が終わった後も、課題はずっと続くとフロノイは述べている。フロノイは「紛争自体の解決には相当な時間がかかるだろうし、その後もプーティンのせいで多くの制限や制裁の一部が残るだろう」と語った。

フロノイは、この紛争がこれほどまでに難航するのは、プーティン側の一連の不手際と間違った思い込みが、彼を泥沼に陥れたからだと指摘している。中でも、米国とヨーロッパの同盟諸国がロシアの金融部門と中央銀行に対して前例のない制裁措置を取ったが、このような厳しい統一的な対応をとることを予測できなかったことが大きい。フロノイは「NATOが示した団結の度合いにプーティンは強いショックを受けたに違いない」と述べた。

彼女はまた、プーティンがロシア軍の能力が「近代的」だという誤った信頼を寄せていたと指摘している。プーティンは、おそらく「イエスマン」に囲まれているために、彼は2014年のウクライナ南東部のクリミア半島の併合と同様の迅速な勝利を期待するようになったとフロノイは主張している。

最後の、そしておそらく最重要なことは、ウクライナの人々の意思を否定したことである。フロノイは次のように語った。「プーティンはロシア軍の能力を過大評価し、またウクライナ軍の能力とウクライナ国民が冷戦終結後に経験した民主政治体制と自由のために戦おうとする度合いを過小評価したのだ」。

ウクライナ軍の能力とウクライナ国民の決意のために、ロシア、特にプーティンは、不利な結果や膠着状態を目にする可能性がある。実際、従来の常識では、ロシアの軍事力の大きさが最終的にウクライナを降伏させるに違いないと考えられてきたが、フロノイは必ずしもそうではない可能性を示唆している。「アメリカのロシア軍分析者たちの間では、彼ら(ロシア兵)がキエフを包囲することはできないのではないか、という憶測が流れている。たとえ主要都市が陥落しても、ロシア軍に対抗するための十分な資金と洗練された抵抗軍が存在する」と彼女は予想を立てている。

今日の紛争と歴史上の出来事との間の類似点を探す時、アナリストの多くは1938年のドイツのスデーテンラント侵攻を、宥和政策(appeasement)の危険性を示す教訓としてみている。しかし、フロノイは、第二次世界大戦中のロシアのウクライナ侵攻を、1942年のアドルフ・ヒトラーのロシア侵攻になぞらえて、別の見方をする。フロノイは、ロシアのウクライナ侵攻を1942年のヒトラーのロシア侵攻になぞらえて、「あれは行き過ぎた行為でその結果として戦争に負けたが、ヒトラーはそのことを理解できなかった」と述べた。

フロノイは、プーティンもまた同様の傲慢さに屈したのだと述べている。彼女は次のように語った。「ウクライナ東部や、ロシアの勢力圏を再構築するために使ってきたグレーゾーン戦術を超えることができる、それが可能だという過信があった。今、通常の軍事力を使って、他の国を侵略しようとしている。これは、戦略的誤算(strategic miscalculation)または行き過ぎた行為(overreach)の典型的なケースとして歴史に残ることになると私は考える」。

しかし、ウクライナの支援者たちはロシアの苦戦を心強く思うかもしれないが、投資家や経営者、その他の利害関係者がロシアの苦戦に懸念を持つ理由もまた存在する。紛争が解決しないまま長引けば長引くほど、対ロシア制裁はより厳しくなり、ウクライナの統治は、その形がどのようになるにしても、より困難になっていくだろう。

そうなると問題は、プーティンがどう対応するかである。また、この誤算がプーティン個人に大きな影響を与える可能性もないとは言えない。「確率の低い出来事について考えられる。事態が進行するにつれ、ロシア国内の抗議運動が活発化し、オリガルヒの間で不満が増大すれば、彼(プーティン)は仕事を失い、場合によっては生命を失うかもしれない」。

フロノイは、西半球にとどまらず、このロシアの冒険主義が世界最大のホットスポットの一つである台湾に与える影響についても、クライアントたちに助言している。中国がロシアの真似をして、1949年の共産主義革命以来の北京の大きな目標である台湾を武力で制圧しようとするのではないかと多くのアナリストが考えている。

しかし、フロノイは、ロシアの挑戦と風評被害のために、中国の台湾侵攻がすぐに起こる可能性を低くしていると考えている。フロノイは、台湾を訪問し蔡英文総統と会談を持った。その際に蔡総統はフロノイに対して、台湾の人々はウクライナの人々の意志の強さに心を打たれたと語った。

更に言えば、中国からの観点から、フロノイは習近平国家主席が国際的に除け者になってしまうようなことになりたくないと考えていると指摘している。フロノイは更に、中国がロシアと緊密な関係を築いているように見えたり、両国の経済的な結びつきが強まっていたりすることに惑わされないことが重要であると指摘する。実際、ウクライナ戦争は中露間の関係を冷え込ませる可能性があるとフロノイは語っている。彼女は次のように述べている。「今、彼ら(中露)は制裁の効果を薄めようと懸命の努力を重ねている。しかし、こうした努力が最終的にプーティンにとってうまくいかなければ、習近平は、距離を置く方法を見つけると思う」。

台湾はアメリカにとってウクライナよりもはるかに大きな貿易相手国であり、今日の経済に欠かせない半導体(semiconductors)などのハイテク製造に携わっているため、これは投資家にとって多少の安心材料となるかもしれない。

しかしながら、アジアで事業を展開する投資家や企業は、ウクライナで起きていることと無縁でいられると考えるべきではない。フロノイは最後に、ロシアの制裁対象機関に協力する中国の銀行や企業に影響を与える可能性のある二次的制裁に注意するよう顧客たちに助言している。これらの企業は、関連する制裁違反の罪を犯し、自分たちもアメリカから処罰を受けることになりかねない。アメリカの経済戦争に決して好意的でない中国は、おそらく報復措置を取るだろう。

フロノイは「私たちは、クライアントの多くのために、中国でのビジネスに関するリスク管理とリスク軽減の戦略を練っている」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 現在のアメリカのバイデン政権における複数の重要閣僚は一つのコンサルタント会社の出身だ。それは「ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)」という。その代表がミシェル・フロノイ(Michèle Flournoy)元国防次官だ。これまでアメリカの国防長官に女性が就任したことはない。女性初の国防長官になるならこの人だとずっと言われてきたのがミシェル・フロノイだ。フロノイが代表を務めるウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社からジョー・バイデン政権に重要閣僚が多く入っている。詳しくは拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を読んでいただきたい。バイデン政権とアメリカの外交政策について理解するにあたり、本書はお役に立てるものと自信を持っている。以下の記事はロシアによるウクライナ侵攻に関する発言をまとめたものだ。こちらも是非お読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

元国防次官がウクライナ紛争を乗り切るための企業へのアドバイスを語る(How A Former Under Secretary Of Defense Is Advising Companies To Navigate Ukraine War Disruptions

スティーヴン・エリルリッチ筆

2022年3月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/stevenehrlich/2022/03/08/how-a-former-under-secretary-of-defense-is-advising-companies-to-navigate-ukraine-war-disruptions/?sh=561db783b54d

「物事はより良くなる前にはより悪くなる(Things will get worse before they get better)」。オバマ大統領の下で国防次官を務め、クリントン大統領の下では国防次官補代理を務めたミシェル・フロノイは、クライアントからロシアのウクライナ戦争について尋ねられた時、まずこのような助言をするそうだ。

現在、ボストンコンサルティンググループと提携し、企業の役員や民間企業に助言を行っている、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)の共同設立者兼マネージングパートナーであるフロノイは、1945年以来ヨーロッパで最大の地上戦に至った経緯と、今後数ヶ月から数年の間に企業が行うべき難しい選択について企業が理解できるよう日々取り組んでいる。

『フォーブス』誌とのインタヴューの中で、フロノイは、よくある誤解として、弾丸や迫撃砲が飛んでこなくなれば、いつでも元の状態に戻るという考えをすぐに否定する。実際、戦闘が終わった後も、課題はずっと続くという。フロノイは「紛争が解決するにはかなりの時間がかかるし、その後もプーティンのせいで多くの制約や制裁が残るだろう」と述べた。

フロノイは、この紛争がこれほどまでに難航するのは、プーティン側の一連の失策と間違った思い込みが、彼を泥沼に陥れたからだと言う。中でも、アメリカとヨーロッパの同盟諸国が、ロシアの金融部門と中央銀行に対して前例のない制裁措置を科したことで、厳しい統一的な対応をとることを予測できなかったことが大きい。フロノイは「NATOが見せた結束の度合いにプーティンはショックを受けたのだろう」と述べた。

フロノイはまた、プーティンの「近代的な」ロシア軍への誤った信頼も指摘しており、おそらく「イエスマン」に囲まれているために、彼は2014年のウクライナ南東部のクリミア半島の併合と同様の迅速な勝利を期待するようになったのだ。

最後に、そしておそらく最も重要なことは、ウクライナの人々の意思を否定したことである。フロノイは「彼は自軍を過大評価し、またウクライナ軍と、ウクライナ国民が冷戦終結後に経験した民主政治体制と自由のために戦おうとする度合いを過小評価した」と発言した。

これらのことは、ロシア、特にプーティンが否定的な結果、または膠着状態に陥る可能性があることを意味する。実際、従来の常識では、ロシア軍の規模の大きさから、最終的にはウクライナを敗北させると考えられてきたが、フロノイは必ずしもそうとはならない可能性を示唆している。フロノイは「現在、アメリカのロシア軍アナリストの間では、ロシア兵がキエフを包囲することはできないかもしれないとの憶測が流れている」と発言している。たとえ主要都市が陥落しても、ロシア軍に対抗するための十分な資金と洗練された抵抗軍が存在するとフロノイは予想している。

今日の紛争と歴史的な類似点を探すとき、多くのアナリストは1938年のドイツのスデーテンランド侵攻を、宥和政策(appeasement)の危険性を示す教訓として見ている。しかし、フロノイは、第二次世界大戦中のロシアのウクライナ侵攻を、1942年のヒトラーのロシア侵攻になぞらえて、別の見方をする。フロノイは、ロシアのウクライナ侵攻を、1942年のヒトラーのロシア侵攻になぞらえ、「あれは過剰拡張(オーヴァーリーチ、overreach)で戦争に負けたが、彼はそのことを知らなかった」と述べた。

フロノイは、プーティンも同じ傲慢さに屈したと言う。フロノイは次のように発言した。「ウクライナ東部や、ロシアの勢力圏を再構築するために使ってきたグレーゾーン戦術を超えるつもりだという過信(overconfidence)だ。今、私は通常の軍事力を使って他の国を侵略しようとしている。これは戦略的誤算や過剰拡張の典型的なケースとして歴史に残るだろう」。

しかし、ウクライナの支援者たちはロシアの苦戦を心強く思うかもしれないが、投資家や経営者、その他の利害関係者が心配する理由もまた存在する。紛争が解決しないまま長引けば長引くほど、制裁はより厳しくなり、ウクライナの統治は、それがどういう形であれ、より困難になる。

そうなると問題は、プーティンがどう対応するかである。また、この偶発事故(misadventure)がプーティン個人に大きな影響を与える可能性もないとは言えない。フロノイは「確率の低い出来事だ。しかし、事態が進行するにつれ、ロシア国内の抗議運動が増え、オリガルヒの間で不満が増えれば、プーティンは大統領の座から追われ、場合によっては声明を失う可能性もある」と述べた。

フロノイは、このロシアの冒険主義(adventurism)が世界最大のホットスポットの一つである台湾に与える影響についても、クライアントに助言を与えている。中国がロシアを見習い、1949年の共産主義革命以来、北京の大きな目標である台湾を武力で制圧しようとするのではないか、と多くのアナリストが考えている。

しかし、フロノイは、ロシアの挑戦と評判の大暴落が、そのような侵略がすぐに起こる可能性を低くしていると考えている。台湾の蔡英文総統と会談し、台湾の人々がウクライナの意志の強さに心を動かされたと語ったばかりだ。

加えて、中国の立場からフロノイは、習近平国家主席が国際的に孤立してしまうことに監視を持っていないと指摘している。フロノイは更に、中国がロシアと緊密な関係を築き、経済的な結びつきを強めていると思われているが、それに惑わされないことが重要であると指摘する。実際、ウクライナ戦争は両国関係を冷え込ませることになりかねないと指摘する。「今、彼らは制裁の効果を弱めようとこれまで以上の努力を傾けている。しかし、最終的には、これが、プーティンにとって、うまくいかなければ、習近平は、距離を置く方法を見つけることになると考えている」とフロノイは述べた。

台湾はアメリカにとってウクライナよりもはるかに大きな貿易相手国であり、今日の経済にとって不可欠な半導体などのハイテク製造に携わっているため、この分析は投資家にとっては多少の安心材料になるかもしれない。

しかし、アジアで事業を展開する投資家や企業は、ウクライナで起きていることと無縁でいられると考えるべきではない。フロノイは最後に、ロシアの制裁対象機関に協力する中国の銀行や企業に影響を与えかねない二次的制裁に注意するよう、クライアントたちに助言を与えた。これらの企業は、関連する制裁違反の罪を犯すことになり、最終的にアメリカの罰則に直面することになりかねない。アメリカの経済戦争に決して好意的でない中国は、おそらく報復措置を取るだろう。

フロノイは「私たちは、多くのクライアントが、中国でのビジネスに関するリスク管理とリスク軽減の戦略を練っています」と述べた。

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瀬戸際にあるロシアとウクライナ:ミシェル・フロノイとの対話(Russia and Ukraine on the Brink: A Discussion with Michèle Flournoy

2022年2月15日

ウィルソン・センター

https://www.wilsoncenter.org/event/russia-and-ukraine-brink-discussion-michele-flournoy

■概説(OVERVIEW

ロシアがウクライナとの国境に兵力を集め続ける中、アメリカとNATOは起こる可能性がある紛争を抑止するための選択肢を検討する。ウィルソン・センターは、ミシェル・フロノワ元国防次官との対話を開催し、ウクライナの現場状況の詳細、抑止力の見通し、そしてこの危機がアメリカの安全保障上の利益に与える影響について検討した。

■重要なポイント(Key Takeaways

ウクライナ東部、ベラルーシに駐留しているロシア軍、黒海のロシア海軍部隊は、ヨーロッパが戦争の瀬戸際にいることを示唆している。特殊作戦や空挺部隊投入も視野に入っている。外交的な打開策と危機の緩和の可能性はますます遠のいている。

バイデン政権は、ロシアの偽旗作戦の可能性を示す情報などを積極的に共有し、ロシアの偽情報や作為的な挑発の影響を軽減することを政策として決定した。アメリカはまた、外交と潜在的制裁への統一的アプローチを確保するため、連合軍と欧州の同盟諸国の結束を強化することに重点を置いている。

このシナリオにおける「真の成功」とは、プーティンが成功するはずがない、あるいは侵攻のコストが高すぎると、前もって説得することである。ロシアがウクライナに侵攻した場合、成功とは、ロシア軍を撤退させ、ウクライナに民主的に選出された政府を復活させることによって、クレムリンがウクライナを永久にロシアの軌道に乗せるのを阻止することである。

■抜粋(Selected Quotes

●プーティンがウクライナに侵攻したら何が起こるか?(What Can We Expect to See if Putin Invades Ukraine?

「私たちはこれらを異なる時間枠で考えることが本当に重要だと私は考えている。短期的に見れば、ロシアが軍事力をフルに発揮すれば、ウクライナはそれを止めることができないだろう。ロシアは戦術的な勝利を収め、キエフを包囲し、政府に大きな圧力をかけ、もしかしたら政府を転覆させることもできるかもしれない」。

しかし、それは終わりではなく、始まりに過ぎない。今、彼らはそこにいて、より長いゲームとして考えなければならない。まず、ウクライナの人口のわずか10%が戦うと決めたとしても、それはとんでもない抵抗軍になるだろう。そして、西側諸国は、少なくとも何カ国かは、その抵抗を可能な限り支援することは間違いないだろう。エネルギー、金融、旅行、輸出規制、保険業界への制裁など、大規模な制裁が実施され、ロシア船やロシアの輸送が妨げられ、貿易は通常通りできなくなるだろう。

「結果として、非常に重い経済的負担と、完全な外交的孤立が生じるだろう。NATOEUが会合を開き、プーティンは世界のどこでも歓迎されなくなることが予想される。北京で習近平と会談することを除いてということになるが。つまり、これは長期戦だ。プーティン対西側諸国という構図になれば、きれいな図式にはならないし、プーティンにとって勝ち目のないゲームになる。私は、そのような初期の頃を経験し、ウクライナでこの侵略が繰り広げられるのを見る必要がないことを望むが、私は、プーティンが最終的に目的を達成するとは思いません。21世紀において、権威主義的な政府が、主権国家を転覆させることができ、それが不完全な民主政治体制であっても、民主政治が成功することを誰も望んでいない」。

●アメリカとNATOにとって、ロシア・ウクライナ危機からの脱出を成功させる道筋はどのようなものになるだろうか?(What Does a Successful Avenue Out of the Russia-Ukraine Crises Look Like for the U.S. and NATO?

「本当の成功は、プーティンが成功しないこと、あるいはコストが高すぎることを前もって納得させ、状況を緩和する方法を見つけ、プーティンと交渉することだ。しかし、その可能性はますます低くなっている。もし彼が戦争を始めれば、ウクライナをロシアの軌道に永久に乗せることを阻止することが成功の鍵になると考える。そして最終的には、シナリオ通りに彼の軍隊を撤退させ、ウクライナの人々が選んだウクライナ政府を復活させることだ」。

「私たちは現在の状況からでも、現在の危機からでも多くのことを学ぶことができる、そのような教訓がたくさんあると私は考えている。ヨーロッパのエネルギーのロシアへの依存を減らすために、もっと努力する必要があります。欧州のエネルギー面でのロシアへの依存を減らすことにもっと力を入れる必要があるし、アメリカやパートナー諸国におけるサイバーの回復力にももっと力を入れる必要がある。また、バイデン大統領が検討対象から外した通常兵力の投入だけでなく、他の抑止手段についても考える必要がある。そして、どうすれば誤算を避けることができるのか、真剣に考える必要がある。まだ話していないことですが、もし戦争が進めば、ロシア軍とNATO軍が互いに直面することになります。NATO軍は実際に参戦する意図を持っていないとは思う。しかし、ロシアがバルト海の空域に侵入したり、黒海で何かが起きたりすることを想像してみて欲しい。事故の余地、誤算の余地があり、そのようなことがエスカレートにつながらないよう、細心の注意を払わねばならない」。

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元国防省トップが、ロシアが原発を押収したのは「極めて無責任」と発言(Former top defense official says Russia 'extremely irresponsible' in seizing nuclear plants

マイケル・シュニール筆

2022年3月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/sunday-talk-shows/597080-former-under-secretary-for-defense-says-russia-was-extremely

元米国国防次官ミシェル・フロノイは日曜日、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を占拠した方法について、「極めて無責任」であると述べた。

フロノイはCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」でキャスターのジェイク・タッパーにこの出来事について質問された際、「私の最大の懸念は、原子力発電所を砲撃するという信じられないほど無責任な方法を取ったことだ」と述べた。

フロノイは更に「実際に格納容器が破損して放射性物質が放出されなかったのは、まさに幸運としか言いようがない。だから、彼らはこの件に関して極めて無責任だ」と発言した。

オバマ政権下で3年間務めた元国防次官フロノイは、ロシア当局が「重要なインフラ、エネルギー、暖房用ガス、水、食料を支配し、再びウクライナ人を包囲下に置き、彼らの意志を挫こうとしている」と述べた。

ロシアは金曜日にウクライナのザポリジャー核施設を掌握した。同施設の訓練センターで火災が発生した。しかし、国連の監視機関である国際原子力機関(IAEA)は、この火災によって大気中に放射能が放出されることはなかったと発表している。

その数日前、モスクワは1986年に致命的な原発事故が起きたチェルノブイリ原発の敷地を占領した。

国防省高官は金曜日、記者団に対し、モスクワ軍がザポリジャー原子力発電所を占拠した後、アメリカはロシアの目先の「意図」に「深い懸念」を抱いていると述べた。

在ウクライナ米国大使館は、ロシアによる原発攻撃は「戦争犯罪(war crime)」だと述べた。

「原子力発電所を攻撃することは戦争犯罪である。プーティンはヨーロッパ最大の原子力発電所を砲撃し、恐怖の支配をさらに一歩進めた」と米国大使館は金曜日にツイッターに投稿した。

ロシア軍は現在、ウクライナの別の原子力施設に迫っていると報じられている。

リンダ・トーマス・グリーンフィールド米国連大使は国連安全保障理事会で、ウクライナ国内で2番目に大きいとされるユジノウクライナ原発にロシア軍が漸進して近づいていることを明らかにした。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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20211129sankeiad505

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