古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:外交政策

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 20世紀は「アメリカの世紀」と言ってよいだろう。アメリカが世界の中心となって、覇権国となって、世界の政治や経済を動かしてきた。その中心的な考えとなったのは、リベラル国際主義(liberal internationalism)であった。これは第二次世界大戦前までのアイソレイショニズムを放棄して、戦争終結後もアメリカが世界の安定に寄与するために、世界各国と同盟関係を結び、戦後世界秩序を構築した。しかし、ドナルド・トランプ大統領の出現によって、アメリカの外交政策は大きく変化している。リベラル国際主義は戦後の長い間、つまり、アメリカの世紀においては主流となる考え方だったが、トランプが二期目の政権に就くことで大きく変化している。リベラル国際主義への懐疑論は政治的な立場を超えて広がりを見せている。

アメリカの国際的な役割が問われる中、トランプ大統領のもとでの政策の一貫した批判や不安が高まっている。下記論稿では、その背景に、過去の戦争や秘密作戦による国民の信頼の損失があることも指摘されている。戦後世界秩序を守るためには、常に継続的な努力が求められてきたが、トランプ政権の下で、その基盤が特に急速に揺らいでいる現実が浮き彫りになっていると下記論稿では指摘されている。

 戦後世界におけるアメリカの役割が大きかったことを否定する人は少ないだろう。しかし、その負の側面もまた指摘しなければならない。そして、アメリカの国力が低下する中で、アメリカの役割が変化することは自然な流れである。アメリカ国民が内向きになることは自然なことだ。トランプ大統領は、アメリカの国家としての生命力とアメリカ国民の内向き意識を汲み取り、外交政策を大きく転換しようとしている。それは混乱や不信感を生み出しているが、大きくとらえるならば、時代が変化する中で、新しい時代を生み出すための「陣痛」と言えるかもしれない。

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第二次世界大戦後の体制は常に脆弱だった(The Post-World War II System Was Always Fragile

-フランクリン・D・ルーズヴェルトは平和な時期においてもアメリカの世界に対する義務は継続すると警告を発した。

ジュリアン・E・ゼリザー筆

2025年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/12/post-world-war-two-international-system-fragile/

第二次世界大戦が終結してから80年が経過した。第二次世界大戦の終結という歴史的な瞬間は、祝賀ムードと高揚感、そして人類全体の安堵をもたらした。壊滅的な戦争はついに終結し、ファシズムは敗北したかに見えた。アメリカの当時の雰囲気を最もよく表しているのは、1945年8月14日、日本降伏のニューズが報じられた後、ニューヨーク市のタイムズスクエアでアメリカ海軍の水兵が女性にキスをしているという象徴的な写真だろう。

しかし、アメリカ人が国際的な脅威がまだ終わっていないことに気づくのに、それほど時間はかからなかった。第二次世界大戦後、ソ連とアメリカ合衆国の間に、冷戦が急速に広がった。核兵器の出現により、全面衝突(full-scale confrontation )を回避することのリスクは劇的に高まった。

これに対し、ハリー・S・トルーマン大統領(民主党)とドワイト・D・アイゼンハワー大統領(共和党)は、リベラル国際主義(liberal internationalism)のヴィジョンを推進した。2人の大統領は連邦議会と協力し、2025年まで存続する一連の制度と政策を構築した。この戦後秩序は、人類が想像しうる最悪の軍事紛争(the worst military conflict)を阻止し、ヨーロッパに一定の安定をもたらした。これはアメリカの国家安全保障と経済力にとって不可欠であることが証明された。

今日、第二次世界大戦後のシステム全体が深刻な脅威に晒されている。ドナルド・トランプ大統領は、トルーマン大統領とアイゼンハワー大統領が築き上げたものに、組織的な攻撃を開始した。アメリカ政治の多くの要素と同様に、トランプ大統領は長年の前提の脆弱性(fragility)を露呈させた。アメリカ大統領による正面攻撃を受けたことで、外交政策の根幹は崩れ始めた。

トランプ大統領はわずか数カ月で主要な国際関係を深刻に緊張させ、あるいは断絶させ、カナダの敵意さえ招いた。イーロン・マスクは米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)にチェーンソーを振りかざした。トランプ大統領はNATOについて辛辣な批判を繰り返し、同盟への関与の維持に懸念を表明する一方で、ロシアやハンガリーといった独裁国家(autocratic countries)を称賛している。トランプはテレビでウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を侮辱し、ロシアとの戦争におけるウクライナへのアメリカの支援期限が迫っていることを明らかにした。

トランプ大統領は1940年代後半に確立された国家安全保障機構の多くを空洞化させてしまった。ヘンリー・キッシンジャーが1973年と1975年にリチャード・ニクソン大統領とジェラルド・フォード大統領の下で国家安全保障問題担当大統領補佐官と国務長官を務めていた当時、政府機関において1人の人物が絶大な影響力を持つと考えられていた。今月初め、マルコ・ルビオが2つの職を兼任する史上二人目の人物となった際、専門家のほとんどは、ルビオの役割は大統領の望むことを何でも承認することだと合理的に推測した。

第二次世界大戦終結以前から、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領は、アメリカの世界に対する義務は継続すると警告していた。1945年1月の最後の就任演説で、ルーズヴェルトは次のように述べた。「私たちは、恐ろしい代償を払って教訓を学び、そこから利益を得るだろう。私たちは、平和に1人で生きることはできないこと、私たち自身の幸福は遠く離れた他国の幸福にかかっていることを学んだ。私たちは、ダチョウのようにも、飼い葉桶の中の犬のようにもならず、人間として生きなければならないことを学んだ。私たちは、世界市民(citizens of the world)、人類社会のメンバー(members of the human community)となることを学んだ。エマーソンが述べたように、『友人を持つ唯一の方法は、友人になることだ(The only way to have a friend is to be one)』という単純な真実を学んだ。猜疑心や不信感を抱いたり、恐怖心を抱いたりして平和に近づいても、永続的な平和を得ることはできない」。

1945年以来、このヴィジョンはあらゆる困難と挫折に直面してきたが、観察者の多くは、その基本的前提は維持されていると考えていた。ネオ・アイソレイショニズムは終焉を迎えたとみなされ、リベラル国際主義が主流となった。トランプ政権の最初の任期後も、その基盤は生き残ったように見えた。

しかし、トランプが二期目に、数十年にわたりアメリカの外交政策を導いてきた国際システムを解体しようとしている今、その基盤の弱さ(the foundation’s weakness)が際立ってきている。

歴史的に見れば、リスクは常に存在していた。国家安全保障体制が構築され始めた初期の頃、リベラル国際主義者たちは、永続的な国際的関与を主張し、激しい抵抗に直面した。国防総省、国家安全保障会議、中央情報局を創設した1947年の国家安全保障法をめぐる連邦議会審議の際、推進派は「兵営国家(garrison state)」がアメリカが反対すると主張する全体主義そのものを助長するのではないかという懸念を克服しなければならなかった。

歴史家マイケル・ホーガンの著書『鉄の十字架(A Cross of Iron)』は、その抵抗の根深さを詳細に描いている。トルーマンの公約に反対したオハイオ州選出のロバート・タフト連邦上院議員のような保守派共和党員、ソ連との不必要なエスカレーションを懸念したヘンリー・ウォレス副大統領のような進歩主義派、そして連邦政府資金による研究の制約を懸念する大学の科学者たちなど、抵抗の根深さが見て取れる。1945年から1953年の間、トルーマンは中道(middle path)、すなわち新たな制度を制限し、文民の国防長官を軍事担当に任命するなど、安全保障措置を講じる道を模索した。連邦議会は、元将軍または元海軍提督が連邦議会の許可なしに任命される資格を得るには最低10年の勤務期間が必要であると定めた。

トルーマン大統領は、恒久的な戦時体制は予算を膨れ上がらせるという財政保守派の懸念を払拭するため、国内政策の予算削減も受け入れた。トルーマン大統領は、自らが望んでいたより野心的な国民皆兵訓練(universal military trainingUMT)プログラムではなく、戦時における兵員補充のための平時における選抜徴兵制度(Selective Service System)を採用した。国民皆兵訓練は、18歳になると全ての男性に軍事訓練を受けることを義務付けるものだった。アメリカ社会主義労働党から全米教育協会に至るまで、幅広い反対派連合が国民皆兵訓練を建国の理念に反するとして攻撃していた。

北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)に対する懸念も長年続いていた。連邦上院におけるNATOに関する議論の最中、タフト連邦上院議員は次のように宣言した。「非常に遺憾ではあるが、北大西洋条約の批准に賛成票を投じることはできないという結論に至った。なぜなら、この条約には、我が国の費用で西ヨーロッパ諸国の軍備増強を支援する義務が伴うと考えるからだ。この義務は、世界における平和ではなく戦争を促進するものだと私は考えるからだ(with that obligation I believe it will promote war in the world rather than peace)」。

NATO設立に貢献した軍事指導者のアイゼンハワーでさえ、ヨーロッパの同盟諸国に対し、より多くの責任を負うべきだと考え、非公式に不満を表明した。NATOへの批判は、1990年代初頭の冷戦終結後、ますます強まった。ソ連の脅威が後退するにつれ、アメリカの外交政策を他国の利益に縛り付ける根拠を疑問視する声が高まった。

NATOの拡大はロシアを不必要に刺激するのではないかと懸念する人たちもいた。1997年、軍備管理協会(Arms Control Association)は当時のビル・クリントン大統領に対し、「最近のヘルシンキ・サミットとパリ・サミットの焦点となっている、アメリカ主導のNATO拡大への取り組みは、歴史的な規模の政策的誤りである。NATOの拡大は同盟諸国の安全保障を低下させ、ヨーロッパの安定を揺るがすと私たちは考えている」と警告した。

国連もまた、長らくNATOの標的となってきた。1964年、共和党の大統領候補だったバリー・ゴールドウォーター連邦上院議員は、国連は無力だと批判した。ジョン・バーチ協会(the John Birch Society)は1960年代、アメリカの脱退を求めるキャンペーンを展開した。1984年、ロナルド・レーガン大統領は、ユネスコの腐敗と反西側偏向を非難し、アメリカを脱退させた。 2000年の改革党大会で、パット・ブキャナンは当時の国連事務総長コフィ・アナンに言及し、「コフィ氏よ、失礼ながら年末までに出て行かなければ、荷造りを手伝うために数千人の米海兵隊員を派遣する」と述べ、アメリカからの国連の立ち退きを求めた。

リベラル国際主義への懐疑論は、右派に限ったことではない。ジョンソン首相がヴェトナム戦争をエスカレートさせると、多くのリベラル派や進歩主義者は外交政策のコンセンサスに反旗を翻した。この戦争は、デイヴィッド・ハルバースタムの言葉を借りれば、「ベスト・アンド・ブライティスト」の信用を失墜させ、アメリカの指導者たちが帝国ではなく民主政治体制の名の下に(in the name of democracy rather than empire)真に行動しているという信頼を揺るがした。学生運動家や連邦議会の支持者たちは、アイゼンハワー大統領が退任演説で「軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだもの、つまり請負業者、連邦議員、国防当局者による不道徳な同盟が、予算の肥大化と戦略の逸脱を生み出していると非難した。

1973年の徴兵制度の廃止は、ほとんど抗議されることなく可決された。そして、1975年から1976年にかけて、フランク・チャーチ連邦上院議員率いる委員会がCIAFBIによる国内監視や無許可の暗殺を含む秘密作戦を暴露すると、国民の信頼は地に落ちた。最終報告書は次のように結論づけている。「諜報機関は国民の憲法上の権利を侵害してきた。その主な理由は、憲法の起草者が説明責任を果たす(assure accountability)ために設計した抑制と均衡の仕組みが適用されていないためだ」。

政府機関の指導者たちは信頼回復に努めたものの、依然として脆弱な状態が続いていた。911事件以降、監視と拷問(surveillance and torture)に関する暴露は国民の信頼をさらに損なわせた。2004年、CBSのダン・ラザー記者は、黒いマントとフードをかぶった囚人が機械に指を繋がれた状態で小さな段ボール箱の上に立たされている映像が放映された際、厳粛な声で「アメリカ人はイラク人囚人にこのようなことをした(Americans did this to an Iraqi prisoner)」と述べた。ラザー記者によると、囚人は小さな箱から落ちれば感電すると告げられたという。イラクにおける連合軍作戦担当副部長マーク・キミットは「兵士たちを常に誇りに思える日ばかりではない(Some days we’re not always proud of our soldiers)」と認めた。アブグレイブ収容所での暴露が例外的な事態ではなく、政府の戦略の一部であることが明らかになると国民の怒りはより高まった。

共和党の大統領と同様に、民主党も同盟諸国の対応が不十分だと攻撃してきた。熱心な国際主義者だった当時のバラク・オバマ大統領は、2016年に『アトランティック』誌のジェフリー・ゴールドバーグに対し、「フリーライダーは私を苛立たせる()free riders aggravate me」と語った。

厳しい真実は、戦後の国際秩序が確固たる政治的基盤の上に築かれたことは決してなかったということだ。抵抗は当初から存在していた。トルーマンとアイゼンハワーが築き上げたものを守るには、常に継続的な努力が必要だった。批判は、時にはシステムの中核原則(core principles)に向けられ、また時には、破滅的な政策や制度の濫用に端を発した。いずれにせよ、トランプがアメリカの統治の柱であるこの秩序を標的にしたとき、多くの外交政策のヴェテランが予想していたよりも急速に崩壊し始めた。

リベラル国際主義の欠点を明確に理解していたとしても、その貢献については否定することはできない。第二次世界大戦後に生まれた同盟(alliances)、制度(institutions)、そして、関与(commitments)は、核による惨事を防ぎ、世界情勢を安定させ、アメリカの経済力を支え、国家危機の際には経験豊富な助言を提供してきた。

戦後システムの支持者たちは今、途方もない闘いに直面している。反対の声は声高であるだけでなく、深く根付いている。彼らが自分たちのヴィジョンを守り、正当な批判に率直に反応できない限り、彼らが生涯をかけて守ってきた世界秩序が崩壊し、アメリカ・ファーストの深淵に取って代わられるのを、彼らはすぐに目撃することになるかもしれない。

※ジュリアン・E・ゼリザー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。プリンストン大学歴史学・公共問題教授。独自の視点のニューズレター「ザ・ロング・ヴュー」の著者。Xアカウント:@julianzelizer

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 アメリカの外交政策に関する考えについては大きな分類、グループ分け、潮流が存在する。私は、人道的介入主義派・ネオコン対リアリズムの対立があると分類している。これは、「世界各国に介入して各国の体制を変革する」ことを目指す介入主義(Interventionism)と「アメリカのパワーを国益のために使うことを最優先し、外国に介入することには抑制的であるべきだ」と考えるリアリズムの対立である。

 以下の論稿では、昨年の大統領選挙の共和党の立候補者たち(当時は民主党はジョー・バイデン前大統領が現職で2期目を目指すということで民主党には有力候補者はいなかった。栄枯盛衰、会者定離)と歴代の大統領たちの外交政策に関する考えを6つに分類して紹介している。大きくは、「国際主義者(internationalists)」対「非国際主義者(non-internationalirs)」の2つである。国際主義者はアメリカの影響力を行使し、世界に積極的に関わると考えるグループで、非国際主義者は世界に関わるのは抑制的であるべきだと考える。国際主義者の中には、(1)一極主義的国際主義者(Unilateral Internationalists)、(2)民主政体志向国際主義者(Democratic Internationalists)、(3)リアリスト国際主義者(Realist Internationalists)、多極主義的国際主義者(Multilateral Internationalists)の4つのグループがあり、非国際主義者には、(5)後退者(Retractors)と(6)抑制主義者(Restrainers)の2つのグループがある。

(1)の一極主義的国際主義者は、「アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する」という考えだ。(2)の民主政治体制志向国際主義者は、「民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている」。(3)のリアリスト国際主義者は、「アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている」。(4)の多極主義的国際主義者は、「他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている」。(5の後退者は、「世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する」。(6)の抑制主義者は、「アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する」。

 冷戦期からポスト冷戦期にかけてのアメリカの外交政策の主流は当然のことながら、国際主義者だった。しかし、アメリカの国力の衰退や世界構造の変化によって、国際主義者の中でもリアリズム系が台頭し、また、非国際主義者も勢力を増しつつある。その象徴がトランプ大統領だ。長い論稿ではあるが、是非以下の論稿を読んで一緒に勉強してもらえたらと思う。

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アメリカの外交政策思考の混乱したスペクトラム(The Scrambled Spectrum of U.S. Foreign-Policy Thinking

-大統領、政府関係者、候補者は党の方針に従わない6つの陣営に分類される傾向がある。

アシュ・ジェイン筆

2023年9月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/27/republican-debate-trump-biden-foreign-policy-ideology/
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共和党大統領予備討論会では外交政策が大きく取り上げられそうだ。8月の討論会では、候補者たちは、アメリカの対ウクライナ支援継続を支持するかどうかという質問で激しい議論を行った。フロリダ州のロン・デサンティス知事は以前、ロシアのウクライナ戦争はアメリカにとって「重大な(vital)」国益ではないと示唆していたが、実際も懐疑的なようで、代わりにヨーロッパに対して更なる対応を求めた。起業家のヴィヴェク・ラマスワミは、そのような援助にもっと率直に反対し、アメリカが「他国の国境を越えた侵略から守る(protecting against an invasion across somebody else’s border)」ことは「悲惨な(disastrous)」ことだと述べた。一方、マイク・ペンス元副大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使は、ウクライナ支援への強い支持を表明し、ロシアの侵略に対抗するジョー・バイデン大統領の取り組みを事実上支持し、アメリカに更なる努力を求めた。

政治のもう一方の側においては、民主党所属の連邦議員の中にはバイデンのウクライナ政策を警戒する人たちもいる。それは、進歩主義的な民主党所属の連邦議員たちが大統領宛に送った、紛争の外交的終結とロシアに対する制裁緩和の可能性を求める書簡(後に撤回された)からも明らかである。

今日の分極化した政治的雰囲気の中では、このような横断的な見解は混乱に見えるかもしれない。たいていの国内政策問題では、政治指導者たちの名前の横にR(共和党)とD(民主党)がついているかどうかが、特定の問題に対する彼らの考え方を示す良い目安になることが多い。しかし、外交政策に関しては、通常の政治ルールは適用されない。むしろ、政治指導者たちが外交政策イデオロギーのスペクトラムのどこに位置するかが、より大きな意味を持つ。
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このスペクトラムを構成する複数の学派は、世界におけるアメリカの役割について根本的に異なる見解を反映しており、影響力は大きいが、あまり理解されているとは言えない。

外交政策の立場を区別しようとするとき、メディアはしばしば「タカ派対ハト派(hawks versus doves)」といった決まり文句(cliches)や、「アイソレイショニスト(isolationist)」「ネオコンサヴァティヴ(neoconservative)」といった流行語(buzzwords)に頼る。しかし、これらの用語は単純化されすぎたり(oversimplified)、誇張されたりする(exaggerated)傾向があり、有益な情報はほとんど伝わらない。国際関係論(international relations)もそれほど役に立たない。「リアリズム(realism)」は、国家がどのように行動すべきかではなく、どのように行動することが期待されるかを予測する学問的概念と日常的に混同されている。また、「アイデアリズム(idealism)」や「コンストラクティヴィズム(constructivism)」といった他の理論も、現実世界の意思決定を理解する上で役立つことは限られている。

しかし、政策立案者たちが世界をどのように捉え、アメリカの外交政策の方向性に影響を与えようとしているかには、決定的な違いがある。例えば、アメリカの影響力は概ね肯定的であり、アメリカは世界情勢において積極的な役割を果たすべきであると考える人々と、アメリカの傲慢さは往々にして悪い結果をもたらすと考え、アメリカの海外での関与を縮小したいと考える人々との間には、明確な二分法が存在する。

アメリカは民主政治隊の価値観と規範の推進を優先すべきだと考える人々と、より限定的な戦略的利益の擁護を信条とする人々との間にも、大きな隔たりがある。また、アメリカはロシアや中国といった敵対諸国に対して毅然とした態度を取るべきか、それとも共通の基盤を見出すべきなのかについても、見解は大きく分かれている。

私は、アメリカの世界における役割に関する主要な考え方を代表する6つの外交政策陣営を整理した。これらの陣営は、国際的な関与のスペクトラムに沿って位置づけることができる。そのうち4つは、このスペクトルの中でもより積極的な側、「国際主義者(internationalists)」に属し、アメリカは影響力を行使し、国際情勢に積極的に関与すべきだと考えている。そして、残りの2つは「非国際主義者(non-internationalists)」に属し、アメリカは国際社会への関与を縮縮小し、より前向きでない外交政策を採用すべきだと考えている。

●国際主義者(INTERNATIONALISTS

(1)一極主義的国際主義者(1. Unilateral Internationalists)

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一極主義的国際主義者:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■定義的な世界観(Defining worldview):一極主義的国際主義者は、アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、特に最初の任期中にこの考え方に近づいたが、この学派を直接的に支持したアメリカ大統領はいない。

■主な特徴(Key attributes):

・中国とロシアを国際システムにおけるアメリカの優位性に対する最大の脅威と見なし、アメリカの敵対勢力に対抗し、アメリカの力を誇示するために最大限の圧力をかけようとする。

・同盟諸国を犠牲にしてもアメリカの国益を優先し、民主政治体制的な価値観や「ルールに基づく秩序(“rules-based order)」よりも戦略的利益を重視する。しかし、同盟諸国の行動意欲には懐疑的ながらも、アメリカの同盟諸国を支持する。

・国連や国際協定に不信感を抱き、米国の力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関から米国が脱退することを支持する。

米国の利益を促進するために軍事力を使用することを支持する。

国連や国際協定に不信感を抱いており、アメリカの力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関からアメリカが脱退することを支持する。

・アメリカの利益のために軍事力を使用することを支持する。

■著名な発言者たち:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

(2)民主政体志向国際主義者(2. Democratic Internationalists)

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民主政体志向国際主義者:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ、ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン、クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

■定義的な世界観(Defining worldview):民主政治体制志向国際主義者は、民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている。この学派は、ハリー・トルーマン大統領が「自由で独立した国家が自由を維持できるよう支援する」ことがアメリカの政策であると宣言して以来、民主、共和両党を問わず、アメリカの選出指導者の間で主流となっている。

■主な特徴(Key attributes):

・民主政治体制と独裁政治の戦略的競争を国際システムの主要な断層線(the major fault line)と捉え、中国とロシアといった修正主義独裁国家(revisionist autocracies)に対抗するための積極的な措置を支持する。

民主政治体制同盟と連帯(democratic alliances and solidarity)を強く擁護し、「自由世界のリーダー(leader of the free world)」としてのアメリカの役割を維持することに熱心である。

・民主的価値観と人権を推進し、独裁政権の戦争犯罪と暴力的弾圧の責任を問うための強力な取り組みを支持する。

・民主政治体制とルールに基づく秩序を守るために、必要であれば武力行使も検討する用意がある。

■著名な発言者たち:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ

■最近の米大統領:ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

(3)リアリスト国際主義者(3. Realist Internationalists)

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リアリスト国際主義者:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン、リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ、ロン・デサンティス

■定義的な世界観(Defining worldview):リアリスト国際主義者は、アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている。元国家安全保障問題担当大統領補佐官のブレント・スコウクロフトとヘンリー・キッシンジャーは、この学派の典型的な実践者であり、彼らが仕えた大統領たちもこの考え方を支持した。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間競争(great-power rivalry)は世界システムにおいて不可避であると認識し、アメリカの同盟関係と、ライヴァル諸国を抑止し世界秩序を維持するための積極的な取り組みを支持する。

・戦略目標の推進のため、政治体制の種類に関わらず、敵対諸国と対峙し、あらゆる国と協力する用意がある。

・安定した勢力均衡(a stable balance of power)を達成するために、ライヴァル諸国と相互に妥協するか、分断を図る用意がある。

・「世界をあるがままに受け入れる(accept the world as it is)」傾向があり、アメリカの介入や民主政治体制促進の取り組みに警戒感を抱いている。

・アメリカの強力な防衛態勢を支持し、重要な国益を守るために必要であれば武力行使も辞積極的に行う。

■著名な発言者たち:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン

■最近の米大統領:リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ロン・デサンティス

(4)多極主義的国際主義者(4. Multilateral Internationalists)

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多極主義的国際主義者:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ、バラク・オバマ

■定義的な世界観(Defining worldview):多極主義的国際主義者は、他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている。バラク・オバマ大統領の外交政策はこの学派に深く根ざしており、現在、アメリカの気候変動対策首席交渉官を務めるジョン・ケリー元国務長官がその代表を務めている。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間の対立や戦略的競争を警戒し、敵対諸国に「手を差し伸べる(extend a hand)」ことで共通点を見出すことに熱心である。

・国際規範、良い統治、人権の推進に向けたアメリカの積極的な関与を支持する。

・国境を越えた課題への対応において、全ての国と協力することを目指し、特に気候変動(climate change)を優先する。

・包摂的な制度を通じた関与を優先するが、ルールに基づく秩序の促進のためにアメリカの同盟諸国と協力することを支持する。

・軍事力の使用には消極的(disinclined)であり、国連安全保障理事会の承認を得た場合にのみ検討する。

■著名な発言者たち:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ

■最近の米大統領:バラク・オバマ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

●非国際主義者(Non-Internationalists

(5)後退者(1. Retractors)

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後退者・非国際主義者:マイケル・アントン、ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

■定義的な世界観(Defining worldview):後退者は、世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する。ドナルド・トランプ大統領の外交政策はまさにこの学派の典型である。しかし、この学派の支持者は、1990年代後半の共和党大統領候補パット・ブキャナンや、アメリカを第二次世界大戦に巻き込ませまいとした1930年代のアメリカ・ファースト運動にまで遡ることができる。

■主な特徴(Key attributes):

・価値観や規範に対して非常に懐疑的で、陰謀論を信奉し、それに陥りやすく、アメリカの政策を操作する「ディープステート(deep state)」の役割を疑っている。

・同盟関係に批判的で、特にヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国を軽蔑し、国際機関を通じた協力の取り組みはナイーブで自滅的だと考えている。

・独裁政権との「取引と合意(make deals)」を求め、民主的な価値観や国際規範を軽視している。

・他国が「アメリカを騙す(ripping America off)」のを防ぐため、経済保護主義(economic protectionism)と国境封鎖を強調している。

・アメリカは軍事的に過剰な関与をしていると確信しているが、「強硬な態度(act tough)」を取り、アメリカの実力を示すために、時折限定的な軍事行動を行うことを支持している。

■著名な発言者たち:マイケル・アントン

■最近の米大統領:ドナルド・トランプ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

(6)抑制主義者(2. Restrainers)

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抑制主義者・非国際主義者:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■定義的な世界観(Defining worldview):抑制主義者は、アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する。この学派は依然として周縁的存在ではあるものの、近年、クインシー記念責任国家戦略研究所とその支持者たちの台頭に見られるように、ある程度の存在感を増している。

■主な特徴(Key attributes):

・国際システムにおけるアメリカの力と影響力に不信感を抱いており、欠陥のある民主政治体制、偽善(hypocrisy)、帝国主義(imperialism)を基礎にして考えると、アメリカには民主的価値観やルールに基づく秩序を推進する立場はないと考えている。

・アメリカは敵対諸国と不必要な戦い(unnecessary fights)を仕掛けており、海外における軍事態勢、同盟、制裁政策はしばしば過度に挑発的であると考えている。

・中国とロシアによる脅威を「誇張(inflating)」することを警戒し、敵対諸国と協力し相互妥協に至る外交努力を支持し、国家主義的な外交政策は傲慢で不快だと考えている。

・海外におけるアメリカ軍のプレゼンスの削減、NATOやその他の同盟諸国への関与の縮小を求め、武力行使に強く反対している。

■著名な発言者たち:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

この分析からいくつかの重要な点が導き出される。第一に、確かにこれらの陣営の境界線は曖昧であり、政策立案者たちは、特定の問題においては、これらの陣営のいずれか、あるいは複数の陣営にまたがっている場合が多い。しかしながら、これら6つの学派は十分に明確に区分されており、アメリカが外交政策をいかに進めるべきかという現代の議論に影響を与えている主要な世界観を代表している。

第二に、これらの学派の多くは党派の垣根を越える傾向がある。例えば、民主政治体制志向国際主義は、与野党の政治指導者たちから熱烈に支持されており、国際共和研究所(International Republican Institute)や全米民主研究所(National Democratic Institute)といった民主政治体制志向機関に見られるように、超党派の強力な支持基盤を有している。リアリズムもまた、アメリカの外交政策において長い伝統を持ち、民主、共和両党の国家安全保障担当者の共感を呼んでいる。同様に、抑制者は、左派の進歩主義者と、ワシントンの国際的関与の縮小を求めるリバータリアンの両方から支持を集めている。一方、一極主義的行動主義は主に保守派に支持され、多国主義的国際主義は主にリベラル派の支持を得ている。近年、トランプ支持派の共和党員の間では、こうした姿勢の撤回が主流となっている。

第三に、近年の米大統領がこのスペクトルのどこに位置づけられるかは自明ではない。就任当初は特定の陣営に傾倒するかもしれないが、ほとんどの大統領は純粋主義者(purists)ではなく、政権を担う中で、多くの大統領が、一貫性があり予測可能な外交政策の理念を維持することを困難にする実際的かつ政治的な現実に直面することになるだろう。

例えば、バラク・オバマはリアリスト国際主義に傾倒していたように見え、ロシアとの関係を「リセット(reset)」しようとし、後にシリアのバシャール・アサド大統領による化学兵器使用の責任追及のためのアメリカ軍派遣を拒否した。しかし、オバマがキューバやイランといった敵対諸国への関与や国連を通じた活動を重視していたことを考えると、彼の外交政策の主眼は多極主義的国際主義とより整合しているように見えた。

ジョージ・W・ブッシュもまた、様々な立場に立脚していた。世界的な対テロ戦争の開始に際し、ブッシュはアメリカの優位性を主張しようと決意し、一極主義的国際主義に傾倒しているように見えた。しかし、イラクとアフガニスタンにおける民主政治体制の推進、彼の代名詞である「自由のアジェンダ(Freedom Agenda)」、そして2回目の就任演説における「世界の専制政治の終焉(ending tyranny in our world)」の訴えなど、ブッシュの全体的な世界観はより、民主政治体制志向国際主義に根ざしているように見えた。

バイデンがどの立場を取るかは依然として議論の余地がある。現在、バイデン政権の国家安全保障ティームは、アフガニスタンからの撤退とサウジアラビアのムハンマド・ビン・スルタン王太子との交渉再開を求めるリアリストと、大統領による民主政治体制サミット開催の取り組みを支持する民主政体志向国際主義者に分裂している。しかし、バイデンがNATOと協力して民主的なウクライナを守るという揺るぎない決意と、世界は「民主政治体制と独裁政治の世界規模での闘争()global struggle between democracy and autocracy」に直面しているという確信を踏まえると、これまでのバイデン政権の外交政策の大筋は、民主政治体制志向国際主義とより整合しているように思われる。もっとも、より明確な判断は、バイデンの任期満了まで待たなければならないだろう。

それでは、現在の共和党候補者たちはどうなるのだろうか? ペンス、ヘイリー、そしてニュージャージー州元知事のクリス・クリスティは、ロシアの侵略に立ち向かうよう訴え、中国の人権侵害を非難しており、まさに民主政治体制志向国際主義陣営に属している。ドナルド・トランプには、もちろん独自の路線がある。一方、デサンティスとラマスワミは、アメリカの国際社会への関与に懐疑的な共和党支持者からの支持獲得に苦戦する中で、リアリズムとトランプの撤回との間で板挟みになっているように見える。デサンティスはウクライナから中国への軸足を移すことを支持しており、これはトレードオフについて非常に現実的な考え方と言える。ロシアと中国を分断する戦略を提唱してきたラマスワミは、時折リアリストのようにも聞こえるが、ロシア・ウクライナ戦争へのアメリカのいかなる関与も回避し、台湾を中国に譲渡する可能性、そして「アメリカの利益を最優先する(interests of America first)」という彼の姿勢は、彼が撤回に向かっていることを示唆しているように思われる。

有権者たちは次期大統領を選ぶ際に外交政策を中心的な要素とは考えていないかもしれないが、アメリカの指導者が世界とどのように関わっていくかは、アメリカ国民の安全と繁栄にとって極めて重要である。最も影響力のある外交政策の学説をより明確に理解することで、有権者たち、そして候補者たち自身も、より情報に基づいた選択を行うことができるようになるだろう。

※アッシュ・ジェイン:米国土安全保障省(U.S. Department of Homeland SecurityDHS)職員。最近まで、アトランティック・カウンシル(大西洋評議会)傘下のスコウクロフト戦略安全保障センターで民主秩序担当部長を務めていた。ここで表明された見解は、米国土安全保障省(DHS)、またはアメリカ政府に帰属するものではない。Xアカウント:@ashjain50

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 古村治彦です。

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 マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官の解任(更迭)・国連大使転身に関する優れた分析記事を以下に掲載する。韓国の進歩主義派・リベラルの有力紙『ハンギョレ新聞』に掲載されている。是非、アクセスしてお読みいただきたい。韓国や中国の新聞は記事の日本語訳を掲載している場合が多く、韓国語や中国語ができない読者にとっては非常にありがたい。

 以下に記事では、マイク・ウォルツ大統領補佐官の更迭は、ウォルツが政権内で、イラン攻撃などの強硬な意見を主張し続けたために、他の政府高官たちと衝突したということが書かれている。そして、その背景には、共和党内部の外交政策分野における3つのグループの存在があり、それぞれで角逐しているということだ。3つのグループについて、以下の記事から以下に引用する。

(引用はじめ)

(略)トランプ氏が2016年の共和党大統領候補の選出によって米国の保守陣営に勢力を伸ばして以来、政府と共和党では対外政策をめぐり覇権主義者(primacist)、優先主義者(prioritizer)、抑制主義者(restrainer)という3グループが角逐してきた。抑制主義者や優先主義者の位置づけがさらに固まったと言えるだろう。

伝統的な共和党の主流路線である覇権主義者は、米国が世界的な指導力と軍事力を維持でき、維持し続けなければならないとする立場だ。上記のとおり、これらの人々は第2次トランプ政権発足後にほとんどが排除されたうえ、ウォルツ氏の更迭によって決定的な打撃を受けた。しかし、共和党内では依然として勢力を保っている。優先主義者は、中東と欧州から米国の介入と役割を撤退させ、中国への対処に集中すべきだとするグループだ。抑制主義者は、海外における米国の軍事介入を可能な限り縮小し、自制すべきだとする立場だ。

(貼り付けはじめ)

 この3つのグループ分けは、現在、国防総省序列第3位の国防次官(政策担当)によって提唱されたものだ。私はこれまで、アメリカの外交政策分野について、2つのグループ、介入主義(Interventionism)とリアリズム(Realism)という分け方をしていたが、現在では、このグループ分けが取り上げられるようになっている。しかし、大筋ではほぼ同じだ。

 マイク・ウォルツは覇権主義者のグループで、このグループは第1次トランプ政権に多くが参加していたが、第2次トランプ政権ではもともと少なく、それがマイク・ウォルツ補佐官の辞任(更迭)で決定的になったということだ。優先主義者(対中強硬派)と抑制主義者が主導権を握った形であるが、優先主義者は対中強硬姿勢を強めようとしているが、これはうまくいっていない。ドナルド・トランプ大統領の考えに近いのは抑制主義者であり、覇権主義者グループが勢力を落とす中で、今度は優先主義者と抑制主義者の争いになることが予想される。厄介なのは、優先主義者と抑制主義者の間の違いが曖昧になっていることだ。

 大きく言えば、優先主義者も抑制主義者もどちらも抑制主義ということになる。「中国と戦争をすることまでは望んでいない(そんなことはできない)」という優先主義者は多い。彼らは中国の拡大を抑制することを目標にしているが、トランプ高関税での失態で明らかになっているように、中国を封じ込めることはもはや不可能である。優先主義者が画策をして、中国からアメリカに何かを仕掛けるように仕向けようとすることも考えられるが、中国はそれに乗ることはないだろうし、中国とアメリカの緊張が高まることで、経済的にもアメリカも相当な損失を出すことになる(既に出ている)。

 アメリカと中国が「仲良く喧嘩する」という関係を築くことで、世界は安定する。世界の大きな流れは世界覇権国の交代へと向かっている。アメリカをできるだけ穏やかに退位させて、中国をできるだけスムーズにその座に就ける。これが理想であるが、現実はそのようにいかないだろう。

(貼り付けはじめ)

●「伝統的な米国タカ派の没落…「トランプ主義者」だけが残る」

登録:2025-05-06 09:34 修正:2025-05-06 11:05

https://japan.hani.co.kr/arti/international/53118.html

[チョン・ウィギルのグローバル・パパゴ]  

米国の対外政策、トランプ主義を深化

マイケル・ウォルツ前大統領補佐官(国家安全保障担当)が先月30日、ホワイトハウスの閣議に参加した際の様子。1日、米国のドナルド・トランプ大統領はウォルツ氏を更迭して国連大使に指名する計画を明らかにした。米国の軍事介入に積極的なウォルツ氏の更迭でトランプ政権における伝統的タカ派の位置づけはさらに縮小されることになった=ワシントン/UPI・聯合ニュース

<チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは

「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語で「オウム」の意味。鋭い洞察力と豊富な歴史的事例を備えたチョン・ウィギル先任記者が、エスペラント語で鳴くオウムとなって国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。>

 

[何が起きているのか]

 米国ホワイトハウスのマイケル・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)が更迭されたことによって、ドナルド・トランプ政権内では、米国の海外軍事介入を主張する伝統的タカ派の影響力がよりいっそう縮小されることになった。

 ウォルツ氏の更迭は、同氏がイランに対する軍事攻撃など伝統的なタカ派の見解を主張し、米国の軍事海外介入に懐疑的なトランプ大統領の対外政策の哲学に反したためだと、ワシントン・ポストが3日報じた。特に、ウォルツ前補佐官は2月初め、米国を訪問したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と事前に面会し、イランに対する軍事攻撃案を協議し、トランプ大統領の怒りを買ったと同紙は報じた。()ウォルツ氏は3月初め、米軍によるイエメンのアンサールッラー(フーシ派)に対する攻撃を議論する国家安全保障チームの高官たちが参加する民間の通信アプリ「シグナル」のチャットルームに、誤ってアトランティック誌の記者を招待した「シグナル・ゲート」をきっかけに退陣の圧力を受けていたが、トランプ大統領は同氏の更迭を拒否していた。同紙は、ウォルツ氏更迭の背景には、彼が任期当初から米国の海外軍事介入を好む伝統的タカ派の見解を主張し、ホワイトハウス内外で他の官僚らと衝突していた点にあると指摘した。(ハンギョレ54日付)

Q.「シグナル・ゲート」の当事者であるウォルツ氏がとうとう更迭された。トランプ氏の対外政策を後押しできなかったのが理由だったのであれば、シグナル・ゲートのときに更迭しておけばもっと格好がついたのではないか。

 

A.トランプ氏がシグナル・ゲートでウォルツ氏を更迭するとなると、国家の機密セキュリティーがずさんだったことを自ら認めることになり、都合が悪い。トランプ氏は2016年の大統領選挙の際、民主党のヒラリー・クリントン候補が国務長官を務めていた際に私用の電子メールを使ったとして猛攻撃を浴びせた。しかし、シグナル・ゲートは、ヒラリー氏の私用電子メールの使用よりひどいセキュリティー事故だ。これを認めたくなかったのだ。ただしシグナル・ゲートは、米国の海外軍事介入を主張する伝統的な共和党タカ派の見解を持ったウォルツ氏に対するトランプ氏の信任を決定的に失わせたようだ。

 

Q.ところでウォルツ氏はなぜ、トランプ氏とその支持層の不満を集めたのか。何を主張したのか。

A.トランプ氏は政権1期目の際には、伝統的な共和党主流の人物たちを外交安全保障チームに起用した。国務長官のレックス・ティラーソンに続きマイク・ポンペオ、国防長官にはジェームズ・マティス、大統領補佐官(国家安全保障担当)にはハーバート・マクマスターに続きジョン・ボルトン、ホワイトハウス首席補佐官にはジョン・ケリーなど、共和党主流の要人もしくはネオコンを起用した。彼らは国際秩序における米国の責任と覇権を重視し、そのためには米国の海外軍事介入もためらわなかった。第1次トランプ政権内で「大人の軸」と呼ばれた彼らは、対外政策でトランプ氏と衝突し、最終的には全員辞任した。事実、トランプ氏が強引に進めた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との首脳会談が実を結ばなかったのは、ボルトン氏らの妨害が原因によるものだった。

 トランプ氏は、国際秩序維持に米国が責任を負い、費用を支払う必要があることに同意しない。そのため、米国の海外軍事介入には懐疑的だ。これは、トランプ氏を支持する米国の中下流層の白人が主軸である「米国を再び偉大に(MAGA)」陣営の見解だ。そのため、トランプ氏は大統領再選後、外交安全保障チームをトランプ主義者でほぼ固めた。就任前から息子のトランプ・ジュニア氏はネオコンを政権から排除すると公言していた。実際にトランプ氏は、入閣が期待されていたマイク・ポンペオ氏やニッキー・ヘイリー氏らはあえて起用しないと発表した。かわりに、国防長官にフォックス・ニュースの司会者出身で熱烈なMAGA支持者であるピート・ヘグセス氏、国務長官には共和党タカ派からトランプ忠誠派に転向したマルコ・ルビオ氏を起用する一方、ホワイトハウスと国防総省・国務省の実務官僚や幹部もトランプ主義者で固めた。

 陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の隊員を務め、ジョージ・ブッシュ政権の官僚出身のウォルツ氏は、今回の事件前から、トランプ氏の路線に反する見解を示しており、対立があったと報じられた。シグナル・ゲートの直後にウォルツ氏がアフガニスタンとシリアからの米軍撤収に反対し、米国によるウクライナ防衛を支持するなど、トランプ氏の現在の外交・安全保障政策に反していた事実が、敵対者によって暴露され広められた。ウォルツ氏は、共和党内でトランプ氏を最も強く非難した政敵であるリズ・チェイニー前下院議員とは安全保障関連の法律の制定で一緒に仕事をしており、2016年の大統領選挙の際に「トランプを阻止すべき」と発言している動画などが拡散された。トランプ氏としては、第1次政権のときに起用した伝統的な共和党主流あるいはタカ派の人たちとの対立を再現させまいとして、ウォルツ氏を更迭したとみるべきだろう。

Q.トランプ氏が就任からわずか100日ほどで、最高の要職である大統領補佐官(国家安全保障担当)を更迭したのは、それだけトランプ氏の対外政策が混乱していることを物語っているのではないか。

A.そうみなすこともできるが、米国の保守陣営や対外政策において、トランプ氏とMAGA陣営の掌握力が確固たるものになっているという側面の方が重要だと思われる。トランプ氏は政権1期目のときは、ほぼ任期終了近くまで共和党主流派の人物たちを起用して頼りにした。しかし今回は、任期初めからすべての政権閣僚と実務官僚をトランプ主義者で固め、伝統的な観点でみれば穏健派とも言えるウォルツ氏までも切った。

 ウォルツ氏の更迭前に、すでに外交・安保分野では粛清が進められていた。トランプ氏は4月初めに、国家安全保障局局長であり、サイバー司令部司令官であるティモシー・ホーク空軍大将、国家安全保障局のウェンディ・ノーブル副局長、国家安全保障会議(NSC)内の国際機構局長ら局長級4人など、少なくとも10人の外交・安保の高官を解任した。トランプ氏はホーク局長を解任した当日に「われわれはいつでも人を交替する」としたうえで、「われわれが好まなかったり、利益を得ようとしたり、他人に忠誠を尽くそうとする人たち」が対象だと述べ、この解任が粛清作業であることを示唆した。

 特にトランプ氏は、側近であり極右の陰謀論者であるローラ・ルーマー氏に会った後、ルーマー氏の助言で粛清を進めたと、米国メディアは報じている。ルーマー氏はXなどのソーシャルメディアで、ホーク将軍と副局長のノーブル氏はトランプ政権に非協調的であり、忠誠心が足りなかったと主張した。ルーマー氏はマーク・ミリー前統合参謀本部議長を反逆者だと主張しているが、ホーク将軍はミリー氏によって起用され、ノーブル副局長はトランプ氏の批判者であったジェームズ・クラッパー前国家情報局長と近い関係という点も問題にされた。

Q.ならば、ウォルツ氏の更迭はトランプ政権の外交・安保チームがトランプ主義者一色に変わる変曲点になるのだろうか。

A.トランプ氏が2016年の共和党大統領候補の選出によって米国の保守陣営に勢力を伸ばして以来、政府と共和党では対外政策をめぐり覇権主義者(primacist)、優先主義者(prioritizer)、抑制主義者(restrainer)という3グループが角逐してきた。抑制主義者や優先主義者の位置づけがさらに固まったと言えるだろう。

 伝統的な共和党の主流路線である覇権主義者は、米国が世界的な指導力と軍事力を維持でき、維持し続けなければならないとする立場だ。上記のとおり、これらの人々は第2次トランプ政権発足後にほとんどが排除されたうえ、ウォルツ氏の更迭によって決定的な打撃を受けた。しかし、共和党内では依然として勢力を保っている。優先主義者は、中東と欧州から米国の介入と役割を撤退させ、中国への対処に集中すべきだとするグループだ。抑制主義者は、海外における米国の軍事介入を可能な限り縮小し、自制すべきだとする立場だ。

 抑制主義者の代表的人物としては、米国の情報機関を総括する国家情報局長に起用されたトゥルシー・ギャバード氏、JD・バンス副大統領、ランド・ポール上院議員、スティーブン・バノン元ホワイトハウス首席戦略官、北朝鮮担当特使と言えるリチャード・グレネル特使らがいる。優先主義者としては、理論的リーダーであるエルブリッジ・コルビー国防総省政策次官、ジョシュ・ホーリー上院議員が代表格だ。コルビー氏は在韓米軍を北朝鮮抑止でなく中国との対決に回すべきだとまで主張している。

Q.優先主義者や抑制主義者の勢力拡大が対外政策に及ぼす影響は何か。

A.優先主義者と抑制主義者は、トランプ氏のMAGA運動が勢力を拡大するなかで、自分たちを「米国第一主義の保守現実主義者」だと称する勢力が分化していったとされる。そのため、優先主義者と抑制主義者の境界は実際にはあいまいだ。優先主義者の理論的リーダーであるコルビー氏は、米国は中国に集中すべきだが、台湾をめぐって中国との戦争まで辞さないとする考えには懐疑的な抑制主義者だという点によく表れている。

 特に国防総省では、マイケル・ティミノ中東担当副次官補をはじめ、ジョン・アンドリュー・バイヤーズ南アジア及び東南アジア担当副次官補、オースチン・ダーマー戦略担当副次官補、コルビー次官のシニアアドバイザーを務めるアレクサンダー・ベレズ=グリーン氏など、優先主義者と抑制主義者を行き交う人たちが、中心的な実務官僚に配置された。ウォルツ氏の更迭は、これらの者たちの影響力をさらに強化するとみられる。しかし何より、対外政策においてはトランプ氏本人の独走がよりいっそう進むのは明らかだ。トランプ氏にとっては、対外政策の決定と執行を調整する国家安全保障担当の大統領補佐官とNSCの必要性がいっそう下がったためだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 下記論稿は、トランプ政権の発足後100日の動きを政治学・国際関係論の4つの理論(モデル)を使って分析している。難しい内容ではないので、軽い勉強だと思ってお読みいただければと思う。

1つ目は「リアルポリティックの復活」で、トランプ政権が強硬な現実政治へと回帰し、中国と西半球を優先しているという分析になる。トランプ政権は、アメリカの国防費を増額させつつ、ロシアとの交渉での和解を図るなど、リアリズムに基づく外交政策が実行されている。

2つ目のモデルは「外交政策としての国内政治」で、トランプ政権の外交政策が実際には国内政策からの影響を受けているという分析になる。このモデルは、トランプが不人気な連邦機関を解体しようとする試みや、投資家やウォール街の不安を引き起こす貿易政策によって裏付けられている。

3つ目のモデルでは、トランプ政権が依然として従来型の共和党政権の外交政策を維持しつつ、トランプ自身の好みに寄り添った形で変化を求める「トランプ・レーガン統合」という分析だ。このモデルはトランプ特有の行動様式や奇異な外交方針の背後にある矛盾も示している。

最後に4つ目のモデルでは、共和党内での外交政策に関する内部対立が外交政策の混乱の要員になっているとされる。国家主義的かつ保護主義的なグループが、他方では超タカ派の国際主義者が存在し、トランプ自身はそのどちらにも傾く可能性が示唆されている。

このように、トランプ政権の外交政策は多様なモデルを通じて説明可能である。それぞれのモデルに説得力がある。社会現象の見方は様々である。どれかが完全に正しいということもなく、完全に間違っているということはない。

 大事なことは、社会現象を前におろおろしたり、慌てたりすることではない。「どうしてそのようなことが起きたのか」ということを分析することであり、そのために、社会科学の理論(モデル)を利用することだ。そして、歴史を良く学び、同様の事例を参考にして、予測を立ててみることだ。こうしたことは専門家の専有物ではない。

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トランプ政権の混乱を説明する4つのモデル(Four Explanatory Models for Trump’s Chaos

-第2次トランプ政権がアメリカの外交政策において、停滞(inertia)ではなく変革(change)を目指していることは明らかだ。

エマ・アシュフォード筆

2025年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/24/trump-100-days-chaos-explanatory-models-foreign-policy/

ウラジーミル・レーニンはかつて、何十年も何も起こらない時期もあれば、数週間だけで、何十年間で起こるようなことが起きる時期もあると述べた。この基準に照らせば、ドナルド・トランプ大統領就任後の最初の100日間は、少なくとも20年間の外交政策の転換期と言えるだろう。

第2次トランプ政権の「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」という外交政策へのアプローチは、その混沌とする状況においてのみ一貫している。注目を集める世界的な紛争へのアメリカのアプローチは、ロシアとの交渉への軸足を移し、ガザ地区での停戦を推進し、イランに対する軍事行動の脅しと新たに交渉された核合意の提案の間で揺れ動いている。

一方、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)は突然閉鎖され、食糧援助で満たされた倉庫は腐るに任せられた。移民問題では、エルサルヴァドル政府への移民収容のアウトソーシングなど、限界を押し広げる動きが見られた。更に言えば、トランプ大統領の気まぐれで電灯のスイッチのように関税がオンやオフになるなど、政権の貿易政策の不確実性によって金融市場にもたらされた混乱もある。

それでは、この混乱をどう理解すればいいのだろうか? 第2次トランプ政権がアメリカ外交政策において、停滞ではなく変革を目指していることは明らかだが、その方向性は不明確だ。それでも、これまでの選択を説明する上で、検討に値する4つのモデルがある。

●モデル1:リアルポリティックの復活(Model No. 1: The Return of Realpolitik

トランプの外交政策を理解する上で最初に適用できるモデルは、おそらく最も一貫性のあるものでもある。それは、トランプ政権が強硬な現実政治への回帰(a hard-nosed return to realpolitik)を目指し、ヨーロッパや中東よりも中国と西半球(the Western Hemisphere)を優先しているという考え方だ。この文脈において、トランプ政権とヨーロッパの同盟諸国との複雑な関係は、アメリカがヨーロッパに過度に関わり過ぎた時期(period of overreach)の後に、アメリカの戦略的関与のバランスを取り戻そうとするニクソン流の試みの一環と捉えられるだろう。実際、この見方では、トランプ政権はルールに基づく国際システム(a rules-based international system)における、アメリカのリーダーシップを放棄しているのではなく、むしろ既存の偽善(existing hypocrisy)を認め、民主政治体制や人権といった漠然としたリベラルな理想よりもアメリカの利益が常に重要であることを認めているに過ぎない。

トランプ政権の対欧アプローチは、おそらくこのトランプの意思決定モデルの最も強い証拠(the best evidence for this model of Trump’s decision-making)となる。同盟諸国に国防費増額を迫り、ロシアとの交渉による和解を通じてウクライナ戦争からアメリカを離脱させようとする政策は、どちらもリアリストたちが長らく支持してきた政策だ。トランプのリアルポリティック・モデルを裏付ける証拠は他にもある。敵対国と同盟国の両方に対して、国家運営の手段を積極的に利用しようとする姿勢は、世界に対する取引的なアプローチを反映している。関税の脅威を用いてカナダ、メキシコ、あるいはヨーロッパ連合(EU)に政策問題を迫ることは、長期的には問題となるかもしれないが、現時点では短期的な成果をもたらす可能性がある。

第2次トランプ政権が突如として西半球への懸念を表明したことも、このモデルに当てはまる。就任直後のマルコ・ルビオ国務長官によるラテンアメリカ歴訪、パナマ運河周辺における中国の存在に対するトランプ政権の懸念、そして一見奇妙に見えるグリーンランド併合の構想など、その背後にはハードパワーの論理がある。一方、副大統領を含むトランプ大統領の主要任命者の多くは、明らかに現実主義的な世界観を持っている。

しかしながら、このリアリティ・ポリティック・モデルは他の分野では行き詰まっている。イスラエル政策を説明できないし、外交政策機関の骨抜き化(the gutting of foreign-policy agencies)も容易に説明できない。大国間の競争(great-power competition)に重点を置く政権であれば、アメリカのソフトパワーの基盤を揺るがそうとはしないだろうと予想されるにもかかわらず、第2次トランプ政権はヴォイス・オブ・アメリカや米国国際開発庁(USAID)の解体によってロシアや中国がその空白を埋めるという訴えにほとんど無関心である。同様に、関税政策もこの枠組みに当てはめるのは難しい。中国とのデカップリングはリアルポリティックな論拠として成り立つかもしれないが、近隣諸国への制裁や世界の準備通貨としてのドルの地位の剥奪は論拠として成り立たない。

●モデル2:外交政策としての国内政治(Model No. 2: Domestic Politics as Foreign Policy

トランプ政権の外交政策を説明するもう1つのモデルは、民主党寄りのケーブルテレビでよく聞かれるものだ。外交政策は主に国内政策によって動かされている、あるいは富裕層を更に豊かにすることを目的としているというものだ。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員は、米国国際開発庁の廃止を「世界で最も裕福な人物であるイーロン・マスクが、世界で最も貧しい人々に食料を提供している米国国際開発庁をターゲットにしている」と表現した。

確かに、政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)の行動、そして新政権が連邦政府官僚機構に対して明らかに抱いている敵意は、共和党が長年試みてきた、グローヴァー・ノーキストの印象的な表現を借りれば「政府を浴槽に沈めて溺れさせるまで縮小する(shrink the government until one can drown it in a bathtub)」という試みの継続と解釈できる。政権は一部の連邦機関(例えば、米国国際開発庁や教育省)を解体する一方で、他の機関(例えば、国防総省や社会保障局)は保護してきた。標的とされた機関は、概して共和党の有権者や寄付者から最も人気のない機関だった。

同時に、トランプ政権の対外経済政策はウォール街や経済界を非常に不安にさせており、市場は事実上暴落している。関税の目的については、大きな不確実性(significant uncertainty)がある。それはアジアとのより良い貿易協定のための手段なのか、それともメキシコやカナダとの移民政策や麻薬政策における譲歩(concessions)なのか? それとも、ドル安を促進し、国内の再工業化(domestic reindustrialization)を促進するための広範な戦略なのだろうか? スコット・ベセント財務長官がニューヨークの銀行家たちに語った印象的な発言の1つは、アメリカンドリームの本質は単に中国からの「安物(cheap goods)」ではないということだった。これはアメリカの経済エリートにとって、決して心地よいものではなかった。

国内政治への懸念は、他の地域にも反映されている。2月にミュンヘン安全保障会議でJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、NATOへのアメリカの関与に関する部分だけでなく、移民問題や文化問題への重点、そして、ヨーロッパとアメリカの間に価値観の相違があるという主張でも注目された。ドイツ総選挙の直前に極右政党「ドイツのための選択肢(Alternative for Germany)」と会談するというヴァンス副大統領の型破りな選択もまた、第2次トランプ政権がヨーロッパ各地の右派政党を高く評価していることを反映している。

しかしながら、国内政治というレンズだけでは、トランプ政権の外交政策の選択を理解するには限界がある。政権が引き続き中東を重視していること、特にイスラエルに白紙委任(carte blanche)を与えようとしていることを説明するのは難しい。実際、マフムード・ハリルをはじめとする親パレスティナ派の抗議者たちに対する移民弾圧が続いていることは、外交政策と国内政策の逆転した関係を示唆している。ガザ紛争におけるイスラエルへの支持が、国内における言論の自由の弾圧を促しているのだ。国内の視点だけでは、第2次トランプ政権がウクライナから撤退したいという明らかな意向を説明することはできない。

●モデル3:第一期への回帰(Model No. 3: A Return to the First Term

トランプの外交政策を説明する3つ目のモデルは、彼の第1期の任期を振り返る必要がある。実際、これは共和党議員やワシントンDCに拠点を置く外交官の間では通説となっており、彼らは2016年から2020年にかけての第1次トランプ政権と同様に、政権初期の混乱は間もなくほぼ従来型の共和党政権に取って代わられると主張している。そのような政権はトランプ独特の才能の要素を持つかもしれないが、概ねジョージ・W・ブッシュ政権に遡る、主権(sovereignty)、単独行動主義(unilateralism)、強硬なタカ派的な軍事力(hawkish military power)を重視する共和党の外交政策の優先事項を継承するだろう。

結局のところ、トランプの第1期の国家安全保障戦略(National Security Strategy)は比較的従来型であり、彼のスタッフは主にワシントンDCの官僚だった。北朝鮮の独裁者である金正恩との首脳会談や、ツイートによる外交政策への傾倒は確かに刺激的な展開をもたらしたが、外交政策全体としては現状から大きく逸脱することはなかった。第2次トランプ政権は、伝統的なレーガン主義的な外交政策の方向性をほぼ維持しながらも、党をトランプ自身の好みに少し近づける、一種の「トランプ・レーガン」統合(“Trump-Reagan” synthesis)へと向かっているだけだと主張する人さえいる。

このモデルでは、就任後100日間における共和党の正統派(Republican orthodoxy)からのより過激な逸脱の多くは、トランプの性格のせいにするだけで説明できる。例えば、ロシアへの接近は、トランプ特有のストロングマン(強権的な人物)との直接交渉を好む傾向(Trump’s own idiosyncratic preferences for negotiating personally with strongmen)、そして、おそらくノーベル平和賞への渇望によって説明できるかもしれない。しかし、第1次政権と同様に、多くの共和党エリートは、トランプが迅速な和平合意を勝ち取れないことが明らかになるにつれ、ウクライナ問題、そしてより一般的な外交政策において、より伝統的なアプローチに傾倒するだろうと想定している。

しかし、この理論には矛盾(contradictions)も明らかだ。イスラエルについて考えてみよう。伝統的な共和党外交政策関係者の間では、イスラエルへの全面的な支持は依然として当たり前のことだ。第2次トランプ政権は、イスラエルへの全面的な支持を声高に表明する一方で、アブラハム合意(the Abraham Accords)の拡大・延長といった、ガザ紛争の継続によって阻まれている他のトランプ政権の優先事項との両立に苦慮している。ヴァンスは、アメリカはイランとの戦争には関心がないと公言しており、トランプ自身も、イランの核施設攻撃を望むイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の意向を支持することを拒否したと報じられている。

こうした立場、そし​​てその他多くの立場は、アメリカはイランの核開発計画への攻撃においてイスラエルを支援すべきであり、ウクライナへの武器供与を継続すべきであり、アメリカの広範な同盟関係を維持すべきだと考える、より伝統的な連邦議会にいる共和党タカ派とトランプ政権を対立させている。元連邦上院院内総務で熱烈なタカ派だったミッチ・マコーネル上院議員は、トランプ大統領が国防総省の高官の有力候補と目していたエルブリッジ・コルビーにさえ反対票を投じた。他の共和党連邦議員たちは、コルビーがイランとの戦争を支持する意向はないとほのめかしていた。この政権が伝統的な共和党員にとってトランプとレーガンの融合を意味するのかどうかは、まだ明らかではない。

●モデル4:共和党外交政策対決(Model No. 4: Republican Foreign-Policy Showdown

こうした論争は、トランプ政権を理解するための4つ目、そして最終的なモデルを示唆している。私たちが目にする混乱は、外交政策をめぐる共和党内の内紛(Republican infighting)が一因となっている。一方では、党内に台頭する国家主義的かつ保護主義的な一派が見られる。彼らは中国への関心を強めており、アイソレイショニストではないものの、もはやネオコンではないことも確かだ。この一派は国防総省、副大統領周辺、そしてマスクや政権内のシリコンヴァレー陣営にも広く代表されている。

他方では、より伝統的で超タカ派的な国際主義的な共和党員たちが、政権を自分たちの好みに回帰させようとしている(例えば、ルビオやマイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官など)。トランプ自身の本能は最初のグループに傾いているように思えるが、第1期の任期中に学んだように、彼はしばしば説得可能である。このモデルが正しければ、トランプ政権の外交政策の混乱と混沌は、政権内の派閥間の意見の相違、つまり人事と政策への影響力争いによる対立に一部起因していると言えるだろう。

これらの派閥が対立する問題は小さくない。ロシア、イラン、そしてある程度イスラエルに関しても、根本的に意見が一致していない。政権のウクライナ特使を務めているキース・ケロッグ退役陸軍中将が、キエフ問題で大統領と副大統領の見解に食い違い始めていたにもかかわらず、疎外された事例を考えてみよう。あるいは、シグナルゲート事件では、ヴァンスがイエメンのフーシ派への攻撃を遅らせるよう土壇場で嘆願したが、それが非生産的で無駄だと判断したものの、却下された。

もしこの対立が就任後100日間の混乱の一部を説明するのであれば、トランプ自身も前回よりもアドヴァイザーたちの指示に従うことをはるかに嫌がっていることもますます明らかになっている。ウォルツは、自身の見解が大統領の見解と頻繁に食い違うことに苦悩しているという報道もある。一方、Xパーソナリティのローラ・ルーマーは、大統領を説得し、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)のウォルツのスタッフ数名を、忠誠心の欠如とネオコンへの共感を理由に解任させた。この傾向が続けば、第2次トランプ政権は、従来の共和党外交政策の考え方である第3のモデルではなく、ここで論じた第1および第2のモデル(どちらもより明確な「アメリカ・ファースト(America First)」の色合いを持つ)に近づくと予想される。対照的に、先週、ピート・ヘグセス国防長官のより「抑制された(restrained)」上級スタッフ3名が不明瞭な理由で突然解任されたことは、その逆を示唆しているのかもしれない。

信じるのが難しいかもしれないが、トランプ政権はようやく、アメリカ人が政権を判断する基準となる就任100日目を迎えたばかりだ。第1期の任期では、主要な危機や外交政策上の決定の多くは、この時点を過ぎてから発生した。そして多くの点で、政権の外交政策がどこへ向かうのか、あるいは連邦議会や裁判所といった他のアクターが、ここ数週間に見られた行き過ぎをどの程度抑制できるのかを判断するのは、時期尚早である。実際、外交政策の最も重要な決定要因は、共和党の外交政策エリートたちがトランプを自分たちの意のままに操れるのか、それともトランプが彼らに自分の意向を押し付けることができるのか、ということなのかもしれない。このため、今のところ、トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)を1つだけ定義することは不可能である。

しかし、これらのモデルは、100日を過ぎようとする中で展開する外交政策のドラマを評価する方法を提供してくれる。今のところ、ここで提示した最初の2つのモデルは、トランプ大統領の決断を説明する上でより有用であるように思われる。しかし、外的ショックから人事をめぐる内部対立に至るまで、他の要因も第2次トランプ政権全体の外交政策の方向性を形作る上で依然として重要な役割を果たす可能性がある。そして、トランプ大統領自身が設定した主要目標の達成可否は、政策そのものを形作る可能性がある。例えば、ウクライナでの交渉が失敗に終われば、トランプ大統領は当初交渉を支持した現実主義的な保守派から遠ざかる可能性がある。イランへの壊滅的な爆撃作戦は、ネオコンの正当性を永久に失わせる可能性がある。

確実に言えることは、今後4年間は過去100日間と同じくらい混沌としたものになる可能性が高いということだ。そろそろ頭痛薬(headache medication)に投資すべき時かもしれない。

※エマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。スティムソン・センター「米大戦略再考(Reimagining U.S. Grand Strategy)」プログラムの上級研究員、ジョージタウン大学の非常勤助教、そして『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』の著者。Xアカウント:@EmmaMAshford

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 古村治彦です。
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 アメリカの外交政策において、学識経験者や専門家が重責を担ってきた。その代表例がヘンリー・キッシンジャーだ。彼はハーヴァード大学教授から、国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官に転身した。その他に、コロンビア大学教授だったズビグニュー・ブレジンスキーやスタンフォード大学教授だったコンドリーザ・ライスといった人々が国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。
 国家安全保障問題担当大統領補佐官は戦後の1952年にドワイト・アイゼンハワー大統領時代に設置された。今ではホワイトハウスにおける外交政策の指揮官として、国家安全保障会議を主宰するなど最重要のポストになっている。国家安全保障会議のスタッフとして、学識経験者が入ることも多い。

 下記論稿の著者ジェレミ・スリは、トランプ大統領が国家安全保障の専門家を排除し、政治家を重視したため、国家安全保障の能力が低下していると批判している。スリは、トランプの政権では、熟練した専門家が解任され、意思決定の質が著しく低下した。これに伴い、無知や不適切な判断がもたらされたとして不安が広がっていると批判している。

 アメリカの外交政策の大きな流れには、リアリズム(現実主義)とアイディアリズム(理想主義)とう2つの潮流がある。このことは、このブログでも何度も書いているし、拙著でも何度も触れている。アメリカの外交政策が失敗するのは多くの場合、アイディアリズムが採用されている時だ。アイディアリズムで世界を変えるということで、外国に介入して多くの場合に失敗している。最近の例で言えば、ジョージ・W・ブッシュ政権時代にネオコンが主導したアフタにスタンとイラクへの侵攻が挙げられる。

 このような失敗と専門家の学識が結びつけられ、専門家たちへの信頼が揺らいでいる。そのことに、下記論稿の著者スリのような専門家たちが気付くべきだ。学問上の理論であれば、何でも言える。しかし、問題はその理論を実践に使って失敗してしまう時だ。それで大きな傷や負担を追うのは国民である。それに対して、専門家たちは何か責任を取るとか、謝罪をするとか、反省するとかそういう姿勢を見せてきただろうか。この点は学術界全体として大いに反省すべきだと私は考える。専門家たちがアメリカの外交政策に対して大いなる貢献をしたことは間違いないが、専門家たちが増上慢となり、過度なエリート主義を持ってしまえば、大きな失敗をして、民意と乖離する結果となってしまう。その大きな動揺が現状であると言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

何世代にもわたる専門家がいかにしてアメリカの力を築き上げてきたか(How Generations of Experts Built U.S. Power

-そして今、トランプはそれを全て捨て去ろうとしている。

ジェレミ・スリ

2025年4月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/17/trump-national-security-experts-loyalists-intelligence-community-purge-history-geopolitics/

プロイセンの軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツは、戦争は「政策を別の手段で継続するに過ぎない(mere continuation of policy by other means)」という有名な言葉を残しているが、戦争が単なる政治である(war is merely politics)とは考えていない。1832年に発表されたクラウゼヴィッツの影響力ある論文『戦争論(On War)』は、複雑な国防を管理する上で、訓練(training)、専門性(expertise)、そして卓越した才能(exceptional talent)が果たす重要な役割について深く考察している。戦争には、技術的技能(technical skill)、組織力(organizational acumen)、歴史的知識(historical knowledge)、そして戦略的洞察力(strategic insights)が必要だ。勇気と強靭さは必要不可欠だが、これらの資質は学問の代わりにはならないとクラウゼヴィッツは述べている。戦争はあまりにも危険であり、素人や偽善者に任せておくべきものではない。

大陸軍(the Continental Army)の創設以来、アメリカ人は常に防衛管理において専門知識を求めてきた。ジョージ・ワシントンが革命軍(the revolutionary military)の指揮官に選ばれたのは、イギリス陸軍での豊富な経験があったからだ。彼の兵士たちは未熟な戦士だったが、彼はそのリーダーシップに知識をもたらした。彼が兵士たちに高く評価された主な理由の1つは、戦闘での波乱に満ちた記録ではなく、知識をもたらす能力だった。

トーマス・ジェファーソン大統領は軍国主義(militarism)を嫌悪していたにもかかわらず、1802年にエリート陸軍士官学校であるウェストポイント陸軍士官学校を設立した。これは、建国間もない国家の防衛を担う最高レヴェルの指導者を育成するためのものだった。ウェストポイントの初代校長ジョナサン・ウィリアムズ陸軍少佐は、軍の指導者にとっての学問の重要性を強調した。ウィリアムズは「私たちの軍の士官は科学者であり、その学識によって学術界から注目されるに値する者でなければならないことを、私たちは常に心に留めなければならない」と述べた。

1884年、アメリカ海軍はさらに一歩進み、「戦争に関するあらゆる問題、そして戦争にまつわる政治手腕、あるいは戦争の予防に関する独創的な研究」を行う大学院機関であるアメリカ海軍戦争大学を設立した。この新設機関の初代学長スティーブン・ルース海軍中佐は、成功する軍の指導者にとって教育がいかに重要であるかを強調した。彼は、経験豊富な海軍司令官がより「完全な存在(complete creature)」となることを望んだ。そうでなければ、「私たちの教育を受けていない船員は、イギリスとフランスの訓練された砲兵に対抗するチャンスはないだろう」とルースは警告を発した。

ウェストポイントと海軍戦争大学は、第二次世界大戦後、アメリカが半球の強国(a hemispheric power)から卓越した世界覇権国(the preeminent global hegemon)へと成長を遂げた際、アメリカ外交政策の画期的な転換の不可欠な基盤となった。1945年、アメリカ陸軍将兵は各大陸の軍事拠点を占領し、アメリカ海軍将兵は世界の主要な海域を哨戒し、アメリカ空軍将兵は世界中の空を制覇し、アメリカの科学者たちは「絶対兵器(absolute weapon)」である原子爆弾を投下した。

アメリカの力は、最高指導者の訓練や専門知識をはるかに凌駕していた。ハリー・トルーマン大統領は大学の学位を持っておらず、第一次世界大戦での軍事経験も浅く、物理学を学んだこともなかった。彼の最初の陸軍長官であったヘンリー・スティムソンは、アメリカが国際的野心も能力も限られていた1890年代初頭にキャリアをスタートさせていた。ヨーロッパでの連合国軍の勝利を指揮したドワイト・アイゼンハワー大将は、アメリカ軍はすぐにでも大陸から撤退しなければならないと予想していた。1945年当時でさえ、アメリカはグローバルなリーダーシップを発揮した経験がなかった。

トルーマン、スティムソン、アイゼンハワー、そして同世代の多くの人々にとって最大の功績は、国家安全保障に関する新たな機関の創設に資金を投じたことだろう。これらの機関は、国家が新たに獲得した力と責任を担う上で、訓練を受けた専門家で満たされていた。「国家安全保障(national security)」は、近代戦争への軍事、外交、そして技術的準備、そして戦争を阻止するための様々な取り組みが交差する領域を指す新しい専門用語となった。

新たな国家安全保障専門家の育成と配置には、ウェストポイントと海軍戦争大学の経験が活かされた。アメリカの指導者たちは、戦争から帰還した優秀な陸軍兵、水兵、空軍兵を募集し、1947年の国家安全保障法に基づいて設立された新たな機関の一員とした。政府の資金援助を受けて高等教育を受ける機会を得た退役軍人たちは、新設された国防総省、秘密主義のCIA、そして初期の原子爆弾を管理した原子力委員会といった官僚組織に多数参加した。

陸軍や海軍の前任者たちと同様に、第二次世界大戦後の国家安全保障専門家たちは、それぞれの戦争関連分野における最高レヴェルの知見を政府に持ち込み、脅威、機会、そして戦略について政治指導者に助言する任務を負っていた。連邦議会は、大統領、副大統領、そして内閣に政府の最高の専門知識を提供するために、ホワイトハウスに国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)を設置した。政策決定は政治家に委ねられたが、それは彼らが核時代の戦争と安全保障に関する最も深い知識に触れた後にのみ行われた。

1952年、アイゼンハワーはロバート・カトラーを国家安全保障問題担当大統領特別補佐官[special assistant to the president for national security affairs](後に「国家安全保障問題担当大統領補佐官(national security advisor)」と呼ばれる)に任命した。ワシントン以外でカトラーの名を知る人はほとんどいなかったが、彼は専大統領と内閣への専門家から情報の流れを管理していた。カトラーとアイゼンハワーにとって、国家安全保障プロセスの目的は、アメリカの力と財源を国益の促進に活用するための最善の選択肢をホワイトハウスに持ち込むことだった。大統領が兵器の配備、援助の分配、同盟の形成、共産主義の進出の阻止について情報に基づいた決定を下すには、技術的な正確さ、問題に関する専門知識、政策経験が不可欠だった。

NSCはワシントンの冷戦政策立案の重要な中心となった。NSCで議論されるブリーフィングやオプションペーパーに情報を提供する専門家は、政府官僚、大学、ランド研究所、ブルッキングス研究所などのシンクタンクに多くいた。アメリカの外交政策は、ヨーロッパや日本の復興、軍備管理の追求、国際的な経済開発など、その最盛期には、最も鋭敏な頭脳の知識を意思決定に反映させていた。アメリカの外交政策において最も影響力のある選挙を経ていない専門家の中には、マクジョージ・バンディ、ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、ブレント・スコウクロフト、コンドリーザ・ライスなど、国家安全保障問題担当大統領補佐官として働いていた者もいる。

もちろん、国家安全保障の専門家たちは、特にヴェトナム戦争やイラク戦争を支持したことで、重大な過ちを犯した。しかし、彼らは70年以上にわたって、比較的安定した国際秩序を管理するのに貢献した。アメリカの国家安全保障システムは、軍事力、経済力、ソフト・パワーを駆使して世界に影響を与え、おおむねアメリカの利益に資するような形で、大統領に適切な選択肢を与えた。アメリカは安全保障を維持し、あらゆる大陸で同盟関係を管理し、経済成長の恩恵を受け、ついに主要な敵対国であったソ連が崩壊するのを見た。専門家は、核戦争やその他の世界的大災害を防ぐのに役立った。アメリカの国家安全保障の専門家たちは、海外の専門家たちと協力しながら、国際法や人権を擁護し、外交政策の文明化に貢献したと主張する学者もいる。

ドナルド・トランプ大統領は、アメリカの外交政策から国家安全保障の専門家を排除し、政権の国益追求能力を低下させている。彼は国家安全保障のトップに政策の専門家ではなく、忠実な政治家を据えた。マイク・ウォルツは、選挙で選ばれた政治家として初めて安全保障問題担当大統領補佐官に就任した。マルコ・ルビオ国務長官も選挙で選ばれた政治家であり、ジョン・ラトクリフCIA長官やトゥルシ・ギャバード国家情報長官も選挙で選ばれた政治家だった。ピート・ヘグセス国防長官は二流のTVニューズキャスターだった。これらの人物はいずれも、国家安全保障問題に関して本格的な専門知識を持っている訳でもなく、専門家のコミュニティと深いつながりがある訳でもない。どちらかといえば、彼らは専門家を敵視しているからこそ、トランプに選ばれたのだ。

知識と能力の欠如は、3月にトランプ大統領の国家安全保障の最高責任者が、安全でない、「シグナル」のメッセージング・チャンネルを通じて、アメリカ軍のイエメンに対する攻撃計画に関する詳細な情報を『アトランティック』誌編集者のジェフリー・ゴールドバーグと不注意にも共有したことで、憂慮すべき低水準に達した。彼らが漏らした情報は、敵国が攻撃を妨害し、アメリカ軍関係者の安全を脅かすために使われる可能性があった。この災難に責任のある明らかに無能な役人は、誰も解雇されず、辞任もしていない。

トランプ大統領が4月初旬に行ったのは、国家安全保障システムの最高幹部に近い、最も有能な専門家数名を解雇することだった。極右の911陰謀論者ローラ・ルーマーの助言を受けたとみられるが、トランプ大統領はティモシー・ハウ大将を解任した。ハウ大将は、通信諜報を担当する国家安全保障局(National Security AgencyNSA)と、外国のハッキングやサイバーテロからアメリカを守る任務を担う米サイバー軍の両方を率い、世界的に尊敬されている四つ星将軍だった。ハウ大将の文民副官ウェンディ・ノーブルも解任された。国家安全保障会議(NSC)では、技術と諜報の分野で高く評価されている専門家たちも解任された。トランプ大統領はこれに先立ち、統合参謀本部議長と海軍作戦部長という、更に2人の尊敬される軍指導者を解任している。

その理由は、トランプ大統領への忠誠心が足りなかったからだという。しかし、これらの専門家や解雇された他の数百人の専門家が、研究対象の証拠と論理に従う以外のことをしたという証拠はない。彼らは効果的な政策を行うために必要な知識を追求し、その知識が導く先を大統領とその政治的支持者が好まなかったために職を失った。これはワクチンが効くことを否定することに等しいが、国家安全保障の場合は、サイバー防衛、核兵器、そして中国、イラン、北朝鮮との戦争の見通しなど、賭け金は更に高くなる。

アメリカの最も強力な外交政策手段が、無知で経験が浅く、適切な意思決定に必要な知識から切り離された人々によって管理されていることを、私たちは今認識しなければならない。今後数カ月以内に深刻な軍事衝突が起きれば、トランプ政権は無能さを露呈し、有害な間違いを犯すだろう。最近のウクライナ支援の放棄、明らかに嘘のクレムリンのトーキングポイントを採用するトランプ大統領の奇妙な行動、そして悲惨な関税発表は、国家安全保障に関する行き当たりばったりで無秩序な意思決定の兆候であり、世界はこれから4年近くこのような状況を見ることになるだろう。

反専門家のリーダーシップ(ani-expert leadership)は、第二次世界大戦後のほとんどの時代を特徴づけていた、思慮深く慎重な政策決定を覆すものだ。専門知識は、アメリカの安全保障(security)、安定(stability)、そして繁栄(prosperity)を守る上で役立ってきた。専門知識の欠如は、さらなる不確実性と軽率な行動をもたらすだろう。国家安全保障の専門家がいなければ、アメリカの外交政策は、国家と国民を守るための十分な準備が整わないだろう。

クラウゼヴィッツは私たちに、戦争は政治の問題であるということを思い出させるが、同時に、その問題に対する知的な真剣さも必要だ。テレビやソーシャルメディアで大統領、国防長官、あるいは将軍を演じている者たちは、現代の戦場の複雑さに対応できていない。クラウゼヴィッツが軽蔑した自信過剰なヨーロッパ貴族たちのように、彼らは誇り高き社会を驚くべき敗北へと導くだろう。

※ジェレミ・スリ:テキサス大学オースティン校のマック・ブラウン記念国際問題リーダーシップ特別教授、テキサス大学歴史学部、リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院の教授。

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 今回は、スティーヴン・M・ウォルトによるノーム・チョムスキーを評価する内容の論稿をご紹介する。ウォルトはリアリスト、チョムスキーは左翼という立場の違いはあるが、アメリカの介入主義的な外交政策について厳しく批判しているという点では共通している。

ノーム・チョムスキーは、言語学者として知られているが、半世紀以上にわたりアメリカの外交政策に対する批判者としてもまた知られている。チョムスキーはアメリカの介入主義的な外交政策を手厳しく批判してきた。彼は最新刊『アメリカの理想主義の神話』(共著)を刊行し、その中で「アメリカの外交政策が高尚な理想に基づいている」という主張に対する批判を行っている。チョムスキーとネイサン・J・ロビンソンはこの考え方を否定している。彼らは、アメリカが歴史的に多くの残虐行為を行ってきたことを指摘し、国際法を無視する行動が常態化していると述べている。

また、チョムスキーとロビンソンは、アメリカの外交政策が少数の特権的なグループによって決定されていると主張し、これらのグループが企業の利益を優先することが多いと指摘している。彼らは、アメリカの高官たちが自らの行動を正当化するために道徳的な理由を持ち出す一方で、実際には自己利益に基づいて行動していると批判している。

さらに、一般市民が不正義な政策を容認する理由について、著者たちは政治的メカニズムの欠如や政府による情報操作を挙げている。彼らは、国民が政府の行動を理解し、変化を求めることが重要であると考えているが、情報を得た市民が必ずしもより良い政策を支持するとは限らないとも警告している。

最後に、アメリカの外交政策が世界に与える影響について、他国がそれを止めようとしない理由についての疑問も提起されている。著者たちは、アメリカの行動が国際的な力のダイナミクスに影響を与えていることを示唆し、他国の反応や同盟関係の複雑さについても考察している。世界各国はアメリカの力の減退に懸念を持っているが、同時に、アメリカの押しつけがましい、介入主義的な外交政策の減退は歓迎するだろう。

 以下の論稿を読むと、アメリカ外交について理解を深めることができる。

(貼り付けはじめ)

ノーム・チョムスキーの正しさが証明されている(Noam Chomsky Has Been Proved Right

-左翼的な外交政策に対するこの著述家の新たな主張は主流派の関心を引いている

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/11/15/chomsky-foreign-policy-book-review-american-idealism/

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ドイツのカールスルーエで講演するノーム・チョムスキー(2014年5月30日)

半世紀以上にわたって、ノーム・チョムスキーは間違いなく、世界で最も首尾一貫して、妥協を許さず、知的尊敬を集める現代アメリカの外交政策に対する批判者であり続けた。著書、記事、インタビュー、スピーチにおいての着実な流れの中で、彼はワシントンの進める多くの予算が必要で、非人道的なアプローチを繰り返し暴露してきた。共著者のネイサン・J・ロビンソンが序文で書いているように、『アメリカの理想主義の神話(The Myth of American Idealism)』は、「(チョムスキーの)仕事全体から洞察(insights)を引き出し、アメリカの外交政策に対する彼の中心的な批判を紹介できる一冊にする」ために書かれた。その目的は見事に達成されている。

本のタイトルが示しているように、本書の中心的なターゲットは、アメリカの外交政策は民主政治体制、自由、法の支配、人権などの高尚な理想によって導かれているという主張である。この考え方に賛同する人々にとって、アメリカが他国に与えた損害は、素晴らしい意志が伴う目的と善意(noble purposes and with the best of intentions)によって取られた行動の意図しない、非常に残念な結果(unintended and much regretted result)である。アメリカ人は指導者たちから、自分たちが「なくてはならない国(indispensable nation)」であり、「世界が知る自由のための最大の力(the greatest force for freedom the world has ever known)」であることを常に思い起こさせられ、道徳的原則(moral principles)が「アメリカ外交の中心(center of U.S. foreign policy)」であることが保証される。このような自己満足的な正当化(self-congratulatory justifications)は、政治家やエスタブリッシュメント派知識人の大合唱によって延々と繰り返される。

チョムスキーとロビンソンにとって、これらの主張はナンセンスだ。建国したてのアメリカ共和国は、先住民族に対する大量虐殺キャンペーンを展開することで「明白な運命(マニフェスト・デスティニー、Manifest Destiny)」を達成しただけでなく、それ以来、数多くの残忍な独裁政権を支援し、多くの国で民主化プロセスを妨害するために介入し、インドシナ、ラテンアメリカ、中東で何百万人もの人々を殺害する戦争を行ったり支援したりしてきた。アメリカの高官たちは、他国が国際法に違反するとすぐに非難するが、国際刑事裁判所や海洋法条約、その他多くの国際条約への加盟は拒否する。また、1999年にビル・クリントン大統領がセルビアに戦争を仕掛けたときや、2003年にジョージ・W・ブッシュ大統領がイラクに侵攻したときのように、自ら国連憲章に違反することをためらうこともない。

ソンミ村虐殺事件、アブグレイブ刑務所での虐待、CIAの拷問プログラムなど、紛れもない悪行が暴かれたときでさえ、処罰されるのは下級の職員たちであり、その一方で、こうした政策の立案者は依然としてエスタブリッシュメント派側の尊敬を集めている。

チョムスキーとロビンソンが語る偽善の記録は、悲痛で説得力がある。心の広い読者であれば、この本を読んで、アメリカの指導者たちが自分たちのむき出しの行動を正当化するために持ち出す敬虔な根拠を信じ続けることはできないだろう。

しかし、なぜアメリカの高官たちがこのような行動をとるのかを説明しようとすると、本書は説得力を欠く。 チョムスキーとロビンソンは、「意思決定における国民の役割は限定的(the public’s role in decision-making is limited)」であり、「外交政策は、国内から権力を得ている小さなグループによって立案され実行される(foreign policy is designed and implemented by small groups who derive their power from domestic sources)」と主張する。これらの小さなグループとは、「軍産複合体、エネルギー企業、大企業、銀行、投資会社など、そして、私たちの生活のほとんどの側面を支配している私的帝国(private empires)を所有し、管理している人々の言いなりになっている政策志向の知識人たち」である。

特別な利害関係者の重要性は疑う余地がないし、より広範な国民の役割も限られている。まず、企業の利益と国家の安全保障上の利益が衝突した場合、前者が損をすることが多い。たとえば、ディック・チェイニーが1990年代に石油サーヴィス会社ハリバートンを経営していたとき、彼はイランでの金儲けを妨げる「制裁好き(sanction-happy)」な外交政策に苦言を呈した。他のアメリカの石油会社もイランでの投資を望んでいただろうが、アメリカの制裁は強固なままだった。同様に、アップルのようなハイテク企業は、中国の先端技術へのアクセスを制限する最近のアメリカの取り組みに反対している。規制は確かに見当違いかもしれないが、重要なのは、企業の利害が常に主導権を握っている訳ではないということだ。

チョムスキーとロビンソンはまた、他の大国がアメリカとほぼ同じような行動を取り、これらの国もまた、自分たちの残虐な行為を白紙に戻すために、「白人の責務(white man’s burden)」、「文民主義的使命(la mission civilisatrice)」、つまり、「社会主義を守る必要性(the need to protect socialism)」といった手の込んだ道徳的正当化理由を作り出したことを認めている。このような行動が、(軍産複合体はおろか)近代的な企業資本主義の出現に先行していたことを考えると、これらの政策は、アメリカという企業の特定の要求というよりも、大国間競争の論理と関係が深いことが示唆される。また、資本主義以外の大国が同じような行動をとったのであれば、ライヴァルに優位に立つため、あるいはライヴァルが自分たちと同じような優位に立つのを防ぐために、国家が自分たちの価値観を捨てるよう促しているのは、何か別のものだということになる。リアリストにとって、その別の何かとは、他の国家がより強くなり、有害な方法で権力を行使することを決めたらどうなるかという恐怖である。

 

このような政策を実行する人々についての彼らの描写も、読者によっては単純だと感じるだろう。彼らに言わせれば、アメリカの高官たちは皮肉屋である。彼らは、自分たちが純粋に利己的な理由で悪いことをしていることを理解しており、他者への影響などあまり気にしていない。しかし、彼らの多くは、自分たちのしていることはアメリカにとっても世界にとっても良いことであり、外交政策には痛みを伴うトレードオフが必然的に伴うと信じているに違いない。彼らは自分自身を欺いているかもしれないが、ハンス・モーゲンソーのような思慮深いアメリカ外交政策批評家たちは、政治の領域で自分の道徳的純度を保つことの不可能性を認めていた。チョムスキーとロビンソンは、自分たちが好む政策の潜在的なコストや否定的な結果についてほとんど語らない。彼らの世界では、道徳的なことと有利なことの間のトレードオフはほとんどなくなっている。

『アメリカ理想主義の神話』は更に2つの疑問を提起しているが、詳細に扱われているのは1つだけである。最初の疑問は次の通りだ。なぜアメリカ人は、コストがかかり、しばしば失敗し、道徳的に恐ろしい政策を容認するのか? 一般市民は、過剰な軍備に費やされた数兆ドルや、不必要で失敗した戦争で浪費された数兆ドルから、数え切れないほどの恩恵を受けることができたはずなのに、有権者は同じことを繰り返す政治家を選び続けている。それはなぜだろうか?

一般的に説得力のある彼らの答えは2つある。 第一に、一般市民には政策を形成する政治的メカニズムが欠けている。その理由の1つは、米連邦議会が戦争宣言に関する憲法上の権限を大統領に簒奪させ、あらゆる怪しげな行動を深い秘密のベールに包むことを許しているからである。第二に、政府機関は、情報を分類し、リークした人間を訴追し、国民に嘘をつき、物事がうまくいかなかったり、不正行為が露見したりしても、責任を問われることを拒否することによって、「同意を捏造(manufacture consent)」するために非常な努力をしている。彼らの努力は、政府の主張を無批判に繰り返し、公式のシナリオに疑問を呈することはほとんどない、一般的に従順なメディアによって助けられている。

私自身、これらの現象について書いたことがあるが、外交政策のエスタブリッシュメント派がその世界観をどのように追求し、擁護しているかについての彼らの描写は、おおむね正確であると感じた。しかしながら、国民の認識が高まればアメリカの政策が改善されるかと言えば、そうとは言い切れない。チョムスキーとロビンソンは、もしもっと多くのアメリカ人が自分たちの政府が何をしているかを理解すれば、声を上げて変化を求めるようになるだろうと考えている。そう思いたいが、よりよく情報を得た国民が、より利己的で、近視眼的で、不道徳な外交政策を支持する可能性はある。特に、チョムスキーとロビンソンの処方箋が、費用のかかる、あるいは痛みを伴う調整を必要とすると考えた場合には。ドナルド・トランプ前大統領は、裸の私利私欲以外の理想に関与することを微塵も表明したことがないにもかかわらず、アメリカの有権者の半数以上の忠誠心を集めている。

また、ニューズソースが増え、主流メディアへの不信感が増すにつれ、従来のエリートが同意を捏造する能力が衰えているのではないかという疑問もあるだろう。問題は同意の捏造なのか、それとも過去に国民の同意を得た具体的な政策なのか?  イーロン・マスク、ピーター・ティール、ジェフ・ベゾスのような人々が新たなエリートの中核として登場した場合、彼らはチョムスキーやロビンソンが望むものに近い(同一ではないが)、より介入度の低い外交政策を支持する可能性が高い。もしそうなったとしても、チョムスキーとロビンソンは、この新しいエリートが自分たちの支持する政策への同意を捏造する能力を批判するだろうか?

第二の疑問は、詳細には触れられていないが、世界の他の国々に関するものである。もしアメリカの外交政策が(本書の副題にあるように)「世界を危険に晒す(“endangers the world)」のであれば、なぜもっと多くの国がそれを止めようとしないのだろうか? ワシントンは現在、いくつかの厳しい敵対諸国に直面しているが、それでもまだ多くの本物の熱狂的な同盟諸国を持っている。同盟諸国のなかには日和見主義的な(opportunistic)国や、アメリカの巨大なパワーに怯えている国もあるかもしれないが、親米的な指導者の全てが飼いならされたカモや私利私欲にまみれた傭兵という訳ではない。世界的な調査によれば、一部の地域(中東など)では、アメリカが行っていることに深く、正当な怒りを抱いているにもかかわらず、アメリカに対する支持と称賛は驚くほど高い。アメリカの世界的なイメージも、過去には驚くべき回復力を見せたことがある。ジョージ・W・ブッシュが大統領だったときに急落し、有権者がバラク・オバマを選んだとたんに急回復した。

世界の多くの地域で懸念されているのは、アメリカの力の抑圧的な性質(oppressive nature)であることではなく、むしろその力が後退する可能性である。チョムスキーとロビンソンは、アメリカが過去100年にわたって多くの悪いことをしてきたことは間違いないが、正しいこともいくつか行ってきたはずだ。本書では、アメリカの外交政策の肯定的な側面はほとんど扱われておらず、その省略が本書の最大の限界である。

このような留保はあるものの、『アメリカ理想主義の神話』はチョムスキーの考え方を知るための入門書として貴重な著作である。実際、学生がこの本を読むのと、『フォーリン・アフェアーズ』誌や『アトランティック』誌といった、現職や元米政府高官が時折寄稿する論稿集を読むのとでは、どちらがアメリカの外交政策について学べるかと問われれば、チョムスキーとロビンソンの圧勝だろう。

私が40年前にキャリアをスタートさせたときには、この最後の文章は書かなかっただろう。しかし、私はずっと注目してきたし、証拠が積み重なるにつれて私の考え方も進化してきた。かつてはアメリカの左翼的な言説の片隅にとどまっていたアメリカの外交政策に対する視点が、今や多くのアメリカ政府高官が自らの行動を擁護するために拠り所にしている、使い古された決まり文句よりも信頼できるものとなっていることは、残念ではあるが明らかになった。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

このブログで頻繁に取り上げている、ハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授の論稿を取り上げる。ウォルトはトランプに対して批判的であり、トランプがアメリカ大統領に再選されれば、アメリカの国際的な地位が危険に晒されると主張している。彼の論稿の骨子は次の通りだ。

トランプは、これまでのアメリカの外交政策、特に介入主義的な政策を強く批判し、アイソレイショニスト的な政策、アメリカ・ファースト(アメリカ国内問題解決優先主義)の政策を主張している。これについては過剰な面もある。

トランプは、他国がアメリカの意向に従うという考えを持っているが、これは現在の国際関係においては成り立たなくなっている。そのため、彼の一極主義的なアプローチは、アメリカの世界的地位を傷つけるリスクがある。彼の任期中、外交政策に対する関心は低く、国務長官の任命も不適切だった。その結果、アメリカは国際的な合意から離脱し、対外的な信頼を失うこととなった。

トランプの再選が実現すれば、外交政策はより悪化する可能性があり、特に彼の経済政策は有害な結果をもたらすと予想される。彼は貿易戦争を強化し、保護主義的な政策を推進する意向を示しているが、これは国際競争力を低下させ、経済成長を妨げる。

また、アメリカの移民政策も厳しくなる見込みで、これにより経済成長の基盤が揺らぐ可能性がある。トランプ政権下では、環境問題への取り組みも後退し、気候変動や公衆衛生の問題が無視される恐れがある。彼の政策は、アメリカのソフトパワーを損ない、国際的な信頼性を低下させることになる。さらに、トランプは、政府を弱体化させる一方で大統領権限を強化しようとしており、これは複雑な現代社会においては逆効果だ。

最後に、トランプが再選されれば、アメリカの国際的な地位や影響力が著しく低下し、国内外における混乱が増すことが懸念される。このような状況は、アメリカの未来にとって非常に危険な結果をもたらす可能性がある。従って、トランプの再選は極めて無謀な選択だ。

 アメリカの国力の衰退による、アメリカの国際舞台での影響力の減退は既に私たちに突きつけられている現実だ。今から、この退勢を押しとどめることは誰であっても不可能だ。アメリカは撤退戦を行うことになる。世界の超大国、覇権国、帝国として君臨してきたが、その範囲を小さくしていって、最終的にはアメリカ本国(本土)に引き上げることになる。トランプはそのための指導者である。アメリカの国際的地位が脅かされるというのは当たり前のことだ。現在でも既に脅かされている。もう今までのように、自分が一声号令をかければ皆がつき従うということはないのだ。そのことをアメリカ人は理解できていない。アメリカ人は自分たちが置かれている状況を冷静に判断できていない。状況を冷静に判断するためには、「外側からの目」が必要だ。「アメリカが駄目になる」という流れの中に、自分たちが置かれているために、巻き込まれているために、冷静な判断ができない。

 ウォルトのような一流の学者、知識人であっても、この大きな流れの中にいて、冷静な判断ができない。それほどに状況判断は難しいことだし、これからの世界構造の大変化は、今までにないものとなるということになるだろう。

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トランプとヴァンスの一極主義的妄想(The Trump-Vance Unilateralist Delusion

-共和党の陣営は、根本的に非現実的な外交政策を軸に統一した。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年7月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/24/trump-vance-project-2025-foreign-policy-unilateralism-realism-restraint/

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2024年7月15日、ウィスコンシン州ミルウォーキーのファイザーブ・フォーラムで開催された共和党全国大会初日に登場したドナルド・トランプとJD・ヴァンス連邦上院議員

民主党の新しい大統領候補カマラ・ハリス副大統領に対する熱狂にもかかわらず、選挙予想では依然として共和党の陣営が11月に勝利する可能性が高い。関係する利害を考慮すると、ドナルド・トランプ前大統領が再び主導することがアメリカの外交政策にとって何を意味するのかを詳しく検討しないのは無責任と言わざるを得ない。

良いニューズから始めよう (長くかからないので、リラックスしておいて欲しい)。少なくともレトリック的には、トランプも副大統領候補のJD・ヴァンスも、ネオコンたちやリベラル介入主義者たち(neoconservatives and liberal interventionists)が過去30年以上にわたって推進してきた失敗に終わったリベラル覇権戦略(strategy of liberal hegemony)を否定している。彼らは同様に、外交政策「愚か者(Blob)」とその時代遅れの正統性への頑固な固執を軽蔑している。私は、彼らは後者の批判を行き過ぎていると思う。問題は主に野心的な政治任命者にあり、彼らの下で働く何千人もの献身的な公務員ではない。しかし、特定の社会通念に対する彼らの軽蔑には、一定のメリットがある。このため、私が知っている数人の現実主義者たちは、ヴァンスの参加とトランプ勝利の見通しについてほぼ目がくらんでいるようだ。ウクライナや他のいくつかの問題に関するヴァンスの見解を考えると、私も時流に乗るのではないかと思うかもしれない。

残念ながら、良いニューズはこれで終わる。トランプやヴァンスを支持する現実主義者たちは近視眼的であると私は考える。11月にトランプとヴァンスが勝利すれば、アメリカの世界的地位に長期的に多大なダメージを与えることになるだろう。

中心的な問題は、トランプとヴァンスが、世界におけるアメリカの位置づけと、一方的に思い通りにする能力について、時代遅れのイメージで動いていることだ。彼らはネコンサヴァティヴィズムを否定しているかもしれないが、アメリカはやりたい放題で、他の国家はその意向に従うだけだと信じている。しかし、これは「一極主義的な瞬間(unipolar moment)」には当てはまらなかったことであり、中国が経済的にアメリカと肩を並べ、インド、ブラジル、南アフリカ、トルコといった国々が独自の道を歩み、他の大国を互いに翻弄できるようになった現在では、さらに当てはまらなくなっている。今日の世界では、アメリカの指導者たちは、自分たちの行動に対して他国がどう反応するかを注意深く考えなければならない。

トランプの一極主義的な本能は以前から明らかであり、彼がその考えを変えたという証拠はない。トランプは最初の任期中、真の外交にはほとんど関心を示さず、外交政策への対応もひどいものだった。「重要なのは自分だけだ」と主張し、外交政策の要職を何カ月も空席にし、無能な国務長官を1人だけでなく2人も任命した。北朝鮮の金正恩委員長を説得して、核兵器を放棄させることができると考えたがうまくいかず、北京を刺激することなく中国に関税をかけることができると考えた。また、自称「取引の達人(master dealmaker)」は、見返りをほとんど得ずに譲歩を申し出る傾向があり(ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであるトーマス・フリードマンは、このアプローチを「ギブアウェイの技芸(art of the giveaway)」と名づけた)、イランとの核合意やパリ協定など、アメリカにとって非常に利益となる合意から離脱する傾向があった。

こうした傾向は、2期目には更に悪化する可能性が高い。ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」は、トランプ前大統領のアジェンダを知るための最良の指針であろうが、既に国務省を弱体化させることを目的とした、各種の施策を概説している(2025年1月20日に全てのアメリカ大使に辞表を提出するよう要求するなど)。より重要なのは、同盟諸国にも敵対国にも最後通牒(ultimatums)を突きつけ、アメリカが要求することには何でもすぐに従うという外交政策を求めていることだ。これは外交でも対外政策抑制の戦略でもない。何十年もの間、アメリカの対外政策を妨げてきたのと同じ「取るか取られるか(take it or leave it)」のアプローチなのだ。

トランプ大統領の対外経済政策の扱いは特に有害となる可能性が高い。1期目の中国との貿易戦争はアメリカが得た以上の犠牲を出し、その目的を達成できなかったが、トランプは大統領に復帰した場合には、このアプローチを倍増させたいと考えている。今回に限っては、中国だけでなく、全ての国に関税を課そうとしている。確立された経済理論と豊富な歴史経験は、広範な保護主義政策が国々を豊かにするどころかむしろ貧しくしていることを示しているが、それこそがトランプ大統領が約束していることだ。

貿易を制限することは、特定の狭い状況(国家安全保障に関わる技術を保護するためなど)では理にかなっているが、全体として、特に共和党が通常反対する、国内調整プログラム(domestic adjustment programs)と組み合わせる場合、開かれた世界経済は、アメリカに利益をもたらす。他国よりも革新し、仕事をし、競争していくことができると自信を持っている国々は、貿易障壁の削減に熱心だ。他人の商品を締め出す必要性を感じるのは、競争を恐れる人々だ。トランプ、ヴァンス、共和党は巨額の関税を要求することで、アメリカの労働者や企業指導者に対し、アメリカが世界舞台で競争できる能力に自信がないことを伝えている。もちろん、トランプ前大統領がこの計画を推進すれば、他の国々が報復するのは避けられず、当然のことながらアメリカの輸出業者に打撃を与え、世界経済成長をさらに低下させることになる。私たちは皆、自分が消費するものに対してより多く支払うことになり、バイデン政権がうまく抑制してきた新型コロナウイルス感染症後のインフレが再燃する可能性がある。もし、トランプがこの国をこの道に進めば、将来的に国は弱くなり、ほとんどのアメリカ人の生活は悪化するだろう。

もちろん、それは迫りくる保護主義の脅威だけではない。多くの人は今でもそうではないと信じているが、第二次世界大戦後、民主党は共和党よりもはるかに優れたアメリカ経済の管理人であった。民主党がホワイトハウスを支配すると経済成長と雇用創出が高まり、失業率とインフレが低くなる傾向がある。過去10回の不況のうち9回も共和党の政権下で発生した。経済力は世界的な影響力の基盤であるため、トランプ2.0のもとで生じるであろう経済的困難により、アメリカの経済基盤はより強固ではなくなり、世界中に影響力を及ぼす能力は低下するだろう。

また、アメリカが現在直面している主要な戦略的課題にトランプとヴァンスがどのように対処するかについて楽観視することは難しい。他のほぼ全員と同様、トランプも中国をアメリカの利益に対する長期的な主要な挑戦者と見なしている。問題は、中国に対する彼の政策が矛盾に満ちていることだ。彼の最初の任期中に環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership)を放棄したことは、東アジアにおけるアメリカの経済的影響力を維持するために切望されていた努力を損ない、アジア諸国がアメリカに望む支援を与えることを困難にした。トランプ大統領は、中国が攻撃した場合に、アメリカが台湾を支援すべきかどうか疑問を呈しているが、中国がアジアの現状を修正しやすくする(そして、おそらくは世界最先端の半導体メーカーの一部を支配する)ことは難しい。北京を牽制したいという願いを込めて。共和党タカ派はまた、核実験禁止条約から離脱し、核兵器実験を再開するよう主張しているが、これは中国の新型核開発努力を促進し、最終的にはアメリカと同等に達することになる不必要な措置である。これは戦略的に意味があるのだろうか?

ヨーロッパについて言えば、トランプとヴァンスはウクライナを支援し続けることに公然と疑義を呈しており、トランプが24時間以内に戦争を終わらせることができると主張していることは、彼がいかにウクライナの状況を理解していないかを示している。ウクライナを支援し、(民主党政権が11月以降にやりそうなように)持続可能な外交的解決を強く求めるのと、キエフの運命をただ見捨てるのとでは天と地ほどの差がある。同様に、中国に対処するための資源を確保するために、アメリカのヨーロッパの同盟諸国と新たな役割分担を慎重に交渉し、実施することと、急激な撤退や、より多くの支出をするよう彼らを威圧する辛らつなキャンペーンに従事することとは、大きな違いがある。ヨーロッパが自国の防衛により大きな責任を持つようになることには大賛成だが、トランプ2.0はその目標を最悪の方法で追求しそうだ。

そして中東だ。バイデンの中東政策は大失敗だったが、トランプの1期目の政策も、バイデンと基本的に同じで、同様に効果がなかった。バイデン同様、トランプはイスラエルが望むものは何でも与え、パレスティナ問題は安全に無視できると考え、地域の重要なライヴァルたちとの対話を拒否する一方で、要求の厳しい保護諸国(client states)との「特別な関係(special relationships)」を追求することに重点を置いた。このアプローチに適用できるレッテルはたくさんあるが、「現実主義(realism)」はそれには当てはまらない。トランプは、イランの核開発を抑制することに成功した2015年の合意を破棄し、代わりにテヘランに「最大限の圧力(maximum pressure)」を課した。ヴァンスに関して言えば、バイデンは「同盟国イスラエルを助けるために何もしていない」と奇妙に主張し(2023年10月7日以降に提供された数十億ドルの軍事援助を知らないようだ)、バイデン政権はイスラエルのガザ地区での残忍な戦争をもっと強力に支援すべきだったと考えている。要するに、ヴァンスは、アメリカやイスラエルのイメージがどれほど損なわれようとも、大量虐殺を支持することに満足しているのだ。もちろん、これはイスラエル・ロビー(民主、共和党両政党の問題)に迎合しているだけという側面もあるが、一極主義者たちが世界の他の国々の意見に無関心であることを露呈している。アメリカの中東政策は何十年もの間、超党派で失敗を繰り返してきたが、トランプがホワイトハウスに戻っても、これ以上良くなることはないだろう。

トランプと共和党は、他のいくつかの問題についても、長期的にアメリカを弱体化させる政策を採用する可能性が高い。彼らは移民に対する障壁を引き上げ、何百万人もの人々をアメリカから追放しようとしているが、こうした人々の多くが現在有給で雇用され、アメリカの長期的な成長見通しに貢献しているという事実を無視している。中国、日本、韓国、ドイツ、その他のほとんどの強国とは異なり、アメリカの人口は、今後100年にわたって増加し続け、その年齢の中央値は主要なライヴァル諸国よりも低くなる。労働人口が若く、定年退職者が少ないことは、アメリカ経済に有利であり、その優位性を維持できるかどうかは移民にかかっている。オラクル、アップル、テスラ、アマゾン、その他無数の成功した企業の創設者を含む、才能ある移民を惹きつけ、その子孫の忠誠心を獲得するアメリカの能力は、アメリカ建国以来の強さの源泉であった。トランプとヴァンスはそれを脇に追いやろうとしている。

アメリカは、トランプとヴァンスの下で環境に関しても大きく後退するだろう。満員の最高裁判所に権限を与えられた彼らは、アメリカ国民がますます暑くなる夏を乗り越える中でも、気候変動やその他の環境破壊の原因に対処する取り組みを逆転させるのは確実だ。山火事、洪水、その他の気象関連の出来事に対して費用を支払わなければならない。そして、地球の気温は、毎年新たな記録を樹立している。パンデミックへの備えに関して言えば、漂白剤が新型コロナウイルス感染症を治療できると考えた人物に責任者を戻してほしいと本当に考えるだろうか?

これらの立場は、今日の共和党が、そしてトランプ自身が、利己的な利益や宗教的信念に沿わない科学や理性に対して基本的に敵対的であることを思い起こさせる。共和党は、気候変動に関する科学的コンセンサスや、将来のパンデミックに備える必要性、あるいは生殖に関する選択の制限が、既に公衆衛生に与えている影響を否定し続けている。驚くべきことに、MAGA運動はまた、その独立性、名声、知識への貢献によって世界の羨望の的となり、技術革新の原動力となっているアメリカの世界トップクラスの大学にも、政治的見解を押し付けようとしている。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が中央ヨーロッパ大学をハンガリーから追い出そうとしたキャンペーンは、ハンガリーをより賢く、より強く、より繁栄させるものではなかった。

トランプ・ヴァンス政権の誕生は、アメリカのソフトパワーの残滓を一掃するだろう。偽善、腐敗、そして、政治的機能不全(hypocrisy, corruption, and political dysfunction)は、アメリカの制度の世界的魅力を著しく低下させているが、その魅力が完全に消えた訳ではない。もしアメリカが、有罪判決を受けた重罪犯で性犯罪者であることが確定している男を再選させ、2020年に正々堂々と負けたことをいまだに否定し、平和的な政権移譲を妨害しようとした男を再選させ、彼の最初の任期中に彼のために働いた何十人もの高官が彼の立候補に反対するならば、かつてアメリカを賞賛していた国々は、アメリカの政治システムを模倣するのではなく、避けるべきもののモデルとして見るようになるだろう。そして、トランプとその部下たちが、ハンガリーで彼の友人オルバンが成功させたように、アメリカの制度を改編し、将来の選挙を無意味なものにしてしまうという、非常に現実的な危険もまだある。

トランプ・ヴァンス・プロジェクト2025というアメリカのヴィジョンが私を心配させる最後の理由がもう1つある。いくつかの顕著な例外(ジェンダーや生殖に関する権利などに関する原理主義的な見解を押し付けたいという願望など)を除いて、彼らは大統領をより強力にし、同時に政府の残りの部分を可能な限り弱体化させたいと考えている。彼らが認識していないのは、現代社会は非常に複雑な実体であり、特に相互依存する世界(interdependent world)の複雑な課題に直面した場合、それらを結びつけるには強力で効果的な政治的および社会的制度が必要であるということだ。イーロン・マスクのような大富豪は、効果的な政府を必要としない。なぜなら、彼らは民間のボディガードを雇い、プライベートジェットに乗り、ゲート付きコミュニティに住み、高価な家庭教師や私立学校を使って子どもを教育し、たとえどれだけかかっても必要な医療費を全て支払うことができるからだ。これらの幸運な少数の人にとって、政府は邪魔なだけだ。しかし、残りの私たちは、子供たちの教育、インフラの構築と維持、経済の管理、適切な老後の備え、そして世界との関わりを効果的な公的機関に依存している。非効率な国家や略奪的な国家よりも悪いのは、国家が存在しないことだけだ(The only thing worse than an inefficient or predatory state is no state at all)。連邦政府を解体しようとする人々、あるいはそれを自分たちの統治のために利用しようとする人々によって連邦政府が支配されたら何が起こるのか、私たちはこれから明らかになるのではないかと危惧している。トランプ前大統領は今、国家統一の必要性を口先だけで訴えているかもしれないが(彼の政治キャリアの全ては分断の悪化に基づいていた)、しかし彼と共和党が提示している議題は、私たち全員を危険にさらす可能性がある国内の混乱を招くレシピだ。

ここ数十年、共和党政権と民主党政権がそれぞれアメリカの力を浪費するようなことをしてきたとはいえ、アメリカには他国を圧倒する大きな利点がある。トランプ前大統領は、アメリカが世界的に有利な地位を獲得するのに役立った多くの制度を壊滅させたいと考えていることが明らかであるため、トランプ前大統領に2度目の就任機会を与えることは、極めて無謀な賽の投げ方である。後で、私が警告しなかったとは誰にも言わせない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:

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 古村治彦です。

 カマラ・ハリス米副大統領の外交政策に関しては今の段階ではほぼ分かっていない。そもそもハリスはカリフォルニア州で検察官としてキャリアを重ね、州の司法長官(検事総長のような存在)となり、その後は連邦上院議員となったが1期目途中で、副大統領となった。副大統領時代の主な仕事は南部国境対策で、外交政策らしいものと言えば、この時が初めての経験ということになるだろう。米副大統領が独自に外交政策を行うことはできず、大統領の代理で外国訪問をするとかそういうことが主な仕事となる。

 それでも、これまでのハリスの発言などをまとめた素晴らしい記事が出ていたので紹介する。簡単に言えば、ハリスはヒラリー・クリントンのエピゴーネンに過ぎず、「ヒラリー2.0」という存在でしかない。口を開けば「人権、人権」と相手を責め立て、交渉も何もあったものではない。ヒラリーの人道的介入主義派の一部と言わざるを得ない。
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 例えば、自身の母親の出身国インドに関しては、祖父は高名な外交官で、子供時代に何度も訪れ、祖父の影響で公職を目指したそうだが、アメリカのインド太平洋戦略における最重要の存在という位置づけで、アメリカ政府もインド政府も、ハリスの存在には期待感を持っているだろうに、カシミール地方の人権問題をわざわざ取り上げている。これではインド政府としては、「せっかくインド系と言ってもこれじゃあなぁ」ということになる。

 対ロシアに関しては、ロシアを強硬に非難し、交渉相手になれそうにもない。ウクライナとロシアの間の停戦交渉では「誠実な仲介人(honest broker)」が必要であるが、ハリスではその役割を果たすことはできない。ロシア側はハリスに対して既に、「ロシア国営メディアは直ちに民主党の新たな旗手への攻撃を開始した。モスクワ国立大学国際政治学部長のアンドレイ・シドロフは、ロシア国営テレビのウィークリー・トーク番組で、「核のボタンを持ったカマラは手榴弾を持った猿よりも悪い(Kamala with the nuclear button is worse than a monkey with a grenade)」と語った」と酷評している。対中国でもバイデン政権移譲のことはできない。関税の引き上げ競争クライで済めばよいが、ハリスが対中国で緊張を増大させ、戦争の危険が高まるということが考えられる。

 ハリスは、非常に定式的な外交を展開することが考えられる。「善か、悪か」の二元論、理想主義で、突っ走るのは非常に危険である。アメリカ国民には本格的な「ヒラリー・クリントン政権」の誕生を阻止してもらえるように期待したい。

(貼り付けはじめ)

カマラ・ハリス・ドクトリン(The Kamala Harris Doctrine

―民主党大統領選挙候補に内定しているハリスの外交政策の見解について私たちが知っていること全て。

『フォーリン・ポリシー』誌執筆陣

2024年7月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/26/kamala-harris-policy-china-russia-trade-immigration-israel-gaza-india/

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カマラ・ハリス米副大統領が2024年大統領選挙の民主党候補指名をほぼ確実にしたように見える今、ワシントンと外国資本の周りで渦巻いている最大の疑問の一つは、ハリスが11月に選出された場合の外交政策の原則がどのようなものになるかである。

ジョー・バイデン米大統領の外交政策観とハリスの外交政策観の違いを正確に指摘するのは容易なことではない。両者が4年近く外交政策と国家安全保障問題で完全に足並みを揃えていると見せようとしてきたからだ。しかし、彼女は短期間ではあるが大統領選挙に立候補したことがあり、2017年から2021年まで、連邦上院議員を務めていたため、全くの白紙ということではない。

『フォーリン・ポリシー』誌は、彼女の記録と過去の発言を検討することに加え、ハリスの主要な地域や外交政策問題についての彼女の立場についてさらに学ぶために、十数人の現役と元アメリカ政府当局者、連邦議会職員、専門家、ハリスの元補佐官たちと面談した。中国からロシア・ウクライナ戦争、そして中東、加えてその先まで、アメリカが関与している問題について取材した。私たちが発見したことは次の通りだ。

●中国(China

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フィリピンのプエルトプリンセサ港に停泊中のフィリピン沿岸警備隊の艦船上での演説を終えたカマラ・ハリス米副大統領が記者団と話す(2022年11月22日)

ハリスの中国との関係は、2020年の候補者として、オバマ政権の副大統領として中国の習近平国家主席と多くの時間を過ごしたと自慢できるバイデンと比べると、比較的験的敵だった。ハリスは、2022年にバンコクで開催されたアジア太平洋経済協力サミット(Asia-Pacific Economic Cooperation summit)に向かう際、「習主席に挨拶した(greeted President Xi)」と記録されているだけで、中国の指導者と顔を合わせたのはほんの一瞬だ。

ハリスにとっての最も強力な中国関係の経験は、副大統領としてより広範なインド太平洋地域におけるアメリカの同盟関係を強化するために費やした時間かもしれない。彼女は副大統領として、3回東南アジアを訪れ、シンガポール、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアを訪問した。フィリピン訪問では、南シナ海に浮かぶパラワン諸島に立ち寄り、フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領との会談で、同盟国に対するアメリカの「揺るぎない関与(unwavering commitment”)」を強調した。 昨年9月にジャカルタで開催されたアメリカ・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を含め、この地域の会議でもバイデンの代役を務めることが多かった。

2020年の大統領選挙候補として、中国に対して彼女が提起した立場は、競争と協力(competition and cooperation)を同時に追求するという過去4年間のホワイトハウスの政策と密接に一致している。2019年9月の予備選挙討論会で、彼女は中国について、「彼らは知的財産を含む私たちの製品を盗んでいる。彼らは規格外の製品を私たちの経済に投げ込んでいる。彼らは責任を負う必要がある」としながら、アメリカは気候変動などの重要な問題で中国と協力すべきだと付け加えた。

しかしながら、ハリスのヴィジョンは、ある点で現在の政策とは異なっていた。彼女は当時のドナルド・トランプ大統領の対中関税を批判し、自分は以前「保護主義的な民主党員(protectionist Democrat.)」ではないと述べていた。しかし、バイデン政権は、トランプ関税をほぼ維持しており、ジャネット・イエレン財務長官を含め、これまで関税に反対していた民主党の議員や重要人物の多くは、新型コロナウイルス感染拡大や中国との競争激化(rising competition with China)を受けてトランプ関税を支持している。

ハリスにとって、連邦上院議員としても大統領候補としても、人権は特に注目すべき分野だ。彼女と他の55人の連邦上院議員は、物議を醸している引き渡し法案に対する大規模な抗議活動中に香港で人権を侵害した当局者に制裁を課す「香港人権・民主政治体制法(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)」法案を共同提案した。

翌年、彼女は新疆における中国の人権侵害に同様の戦略を適用する法律の共同提案者となった。ハリスはまた、新疆ウイグル自治区における中国政府の出生率制限の取り組みを詳述する報道が出たことを受け、その後の書簡で当時の国務長官マイク・ポンペオに対し、更なる行動を取るよう求めた。彼女の見解は、中国の人権問題に対して強硬なバイデン政権の政策に反映されている。

専門家たちは、全体として、対中政策に対するハリスのアプローチがバイデンと大きく乖離する可能性は低いと述べた。

「バイデンの対中政策は、ある意味、民主党のコンセンサスを反映している」と、かつて国務省中国調整室の初代室長を務めたユーラシア・グループの中国担当マネージング・ディレクター、リック・ウォーターズは次のように述べている。「私はカマラ・ハリスに劇的に異なる中国政策を期待している訳ではない。枠組みと構造はほぼ決まっていると思う」。

-リリ・パイク筆

●インド、南アジア、そしてインド太平洋(India, South Asia, and the Indo-Pacific

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インド首相ナレンドラ・モディがホワイトハウスにジョー・バイデン大統領と到着した際に握手をするハリス(2023年6月22日)

インドは、バイデン政権の二国間関係において最も輝かしいスポットの一つであり、アメリカ政府はインドを中国に対する極めて重要なカウンターバランスであり、アメリカの広範なインド太平洋戦略における重要なパートナーであるとの見方を強めている。防衛とテクノロジーは米印関係の特に強力な柱であり、昨年インドのナレンドラ・モディ首相がワシントンDCを国賓訪問(state visit)した際にいくつかの協定や取り組みが発表された。

他のパートナーシップや地域と同様、専門家たちは、ハリスのインド政策がバイデンの政策と大きく乖離する可能性は低いと述べた。アメリカとインドの関係は、トランプ政権下も含めて数十年にわたって確実に超党派の支持を得ており、依然として双方にとって重要すぎるため、大きく揺るがすことはできない。

ハリスは、これまでの米大統領選挙候補者よりもインドと個人的なつながりを持っている。母親のシャマラ・ゴパランは、インドからアメリカに移住しており、ハリスは、自身の人生や考え方に対する母親の影響について繰り返し言及している。しかし、政治的には大きな役割を果たす可能性は低い。ウィルソン・センター南アジア研究所所長でフォーリン・ポリシー『南アジア・ブリーフ』の執筆者であるマイケル・クーゲルマン氏は次のように述べている。「確かに、ハリスの先祖代々のインドとのつながりは、ハリス自身のインドへの親近感を伝えるために利用される可能性が高い。しかし、インド政策に関して言えば、彼女とバイデンの間に日の目を見ることはないだろう」。

ハリスは実際、過去にはバイデンよりもインドに対して厳しい姿勢を示しており、連邦上院議員時代にモディ政権下でのインドの人権状況、特にカシミール問題を批判しており、副大統領時代にワシントンでモディ首相と複数回会談した際にも、より微妙な方法で批判していた。しかし、ハリスが大統領になれば、その批判は和らげられるかもしれない。クーゲルマンは「ハリスが権利に関して、バイデンよりも厳しいとは思わない。少なくともアメリカの戦略的利益が許す以上に厳しくはないだろう」と述べた。

同時に、ハリスは若いので、常にオンラインでのサポート基盤があるため、彼女はそうした不快な会話をすることに積極的になる可能性がある。ハドソン研究所インド・イニシアチティヴ所長のアパルナ・パンデは、「彼女は次世代の民主党政治家でもある。彼女は、バイデン大統領の世代の政治家ではない」と述べ、党の将来の基盤の大部分を占める若いアメリカ人は、宗教の自由と世界的不正義(religious freedom and global injustices)に対してはるかに大きな関心を持っていると付け加えた。これがハリスの政治的傾向もある。パンデ氏は「ハリスは、ある程度民主党の左派、つまり進歩主義派の出身なので、民主政治体制自体が重要であり、民主政治体制の価値観が重要だ」と続けて述べた。

より広い地域に関して言えば、ハリスは、東南アジアを何度も訪問しており、バイデン政権のインド太平洋戦略の重要な人物の一人である。しかし、大統領としてのバイデンの外交政策で最悪の時期、つまりタリバンを政権に復帰させた混乱に満ちたアメリカのアフガニスタンからの撤退が、大統領選挙期間中にどれほど彼女に負担を与えているかはまだ分からない。トランプは最初の討論会でこのエピソードをバイデンに対する棍棒として繰り返し利用しており、ハリスに対しても同じことをする可能性があるが、専門家たちは、それが同じ効果をもたらすことはないかもしれないと述べている。

ホワイトハウス、CIA、国務省で勤務し、現在は新アメリカ安全保障センター (CNAS)インド太平洋安全保障センターのディレクターを務めるリサ・カーティス氏は次のように語っている。「共和党がアフガニスタン問題でカマラ・ハリスを非難するのは難しいだろう。私たちのような悲惨なやり方で完全撤退したのは、バイデンの個人的な決断であったことは明らかだ」。

しかし、ハリスが大統領になれば、アフガニスタンは、彼女に外交政策に大きな影響を与える機会を与えることになる。カーティスは「カマラ・ハリスが女性大統領として当選すれば、アフガニスタン女性の支援にもっと注力してくれることを期待したい。アメリカで、女性の権利のために戦っている者として、アフガニスタンの女性​​に起きていること、つまりアフガニスタンが女性と少女への教育を否定している世界で唯一の国であるという事実を無視するのは難しいだろうと思う」。

-リシ・イエンガー筆

●通商政策(Trade Policy

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ロサンゼルスで社長兼CEOのマット・ピーターセン氏とともにLAクリーンテック・インキュベーターを視察するハリス(2023年3月17日)

連邦上院議員時代も副大統領時代も、ハリスは決して貿易通(trade wonk)ではなかった。しかし、大まかに言えば、連邦上院議員時代から2020年の大統領選出馬に至るまで、ハリスは労働者中心で環境に優しく、経済的な見識に富んだ貿易のヴィジョンを提唱してきた。それは今日の民主党にかなりしっくりとなじむものであり、トランプやその副大統領候補であるオハイオ州選出のJD・ヴァンス連邦上院議員の立場とは明らかに対照的である。

ハリスは在任中、トランプ前大統領の関税を一貫して批判し、関税はアメリカ企業と消費者に対する追加課税であり、貿易相手国からの反発や国内の更なる経済的苦痛につながったと正しく認識した。

しかし、バイデンも当時ほぼ同じことを言っていて、重要な分野を保護することを目的とした、より的を絞った戦略的義務であったとしても、新たな関税を追加する前にトランプ大統領の当初の関税の多くを維持し続けた。おそらく、保護主義のバグが民主、共和両党に十分に浸透しており、輸入関税のような自滅的な考えでさえ、どの候補者にとっても振り払うのは難しいことだろう。

貿易協定に関して言えば、ハリスを理解するのは少し難しい。彼女は、レーガン・ブッシュ時代の共和党が発案し、今では共和党の鬼っ子となった当初の北米自由貿易協定(North American Free Trade AgreementNAFTA)や、トランプ大統領のNAFTA2.0にも反対票を投じていただろうと言う。ハリスは、カナダとメキシコとの改定貿易協定には労働と環境保護が十分に盛り込まれていないため、反対すると述べた。彼女はバラク・オバマ前大統領の署名である環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)にも同様の反対意見を持っていたが、この協定はすぐに民主、共和両党にとって有害となり、トランプ前大統領の就任最初の週に打ち切られた。

ほぼ全てのアメリカの政治家と同様に、ハリスは、中国が知的財産(intellectual property)を盗み、貿易を不正行為していると非難しているが、エスタブリッシュメント派の政治家たちと同様に、北朝鮮や気候変動を含む地域的および世界的な問題への対処には、中国政府との協力関係が必要だとも主張してきた。

-キース・ジョンソン筆

●ロシア・ウクライナとNATORussia-Ukraine and NATO

スイスのルツェルン近くで開催されたウクライナ和平サミットで、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領と握手するハリス(2024年6月15日)

バイデンは、ミュンヘン安全保障会議やウクライナ和平サミットなど多くの大きな国際会議にハリスを代表として派遣している。

ハリスは、バイデンのような大西洋を越えた実績はないが、ヨーロッパ有数の対話の場であり、アメリカの政策について神経を落ち着かせるために政府高官たちが訪れる場所であるミュンヘンにおいて3年連続で、アメリカのトップの高官として期待される成果を挙げている。

NATOに対するアメリカの関与は「揺るぎない(unwavering)」ものであり、「鉄壁(ironclad)」であると、ハリスは、2022年2月のミュンヘンでの演説で述べた。彼女はまた、トランプ大統領が同盟のGDP比2%の支出を満たしていない同盟国には敬意を払わないと脅しているNATOの第5条の自衛権の誓約は「神聖なもの(sacrosanct)」だとも述べた。

2023年、ハリスはミュンヘンに戻り、NATOについては同様の論点を話したが、当時1年を経過していたロシアの侵略については、より厳しい言葉を述べた。ハリスは、バイデン政権はロシアが戦争で人道に対する罪を犯したと結論づけたと述べた。

そして、バイデンの大統領選挙活動を事実上終わらせることになる討論会の約2週間前、ハリスは、スイスで開催されたウクライナ和平サミットにバイデンの代理として出席し、そこで「公正かつ永続的な平和(just and lasting peace)」を訴えた。

クレムリンは、これまでハリスの大統領選挙への立候補について、ほぼ沈黙を保っており、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官はハリス副大統領の「非友好的な発言(unfriendly rhetoric)」に言及したが、ロシアはまだハリスの立候補を正式に評価できていないと付け加えた。

しかし、ロシア国営メディアは直ちに民主党の新たな旗手への攻撃を開始した。モスクワ国立大学国際政治学部長のアンドレイ・シドロフは、ロシア国営テレビのウィークリー・トーク番組で、「核のボタンを持ったカマラは手榴弾を持った猿よりも悪い(Kamala with the nuclear button is worse than a monkey with a grenade)」と語った。

-ジャック・ディッチ

●イスラエル・パレスティナ紛争(Israeli-Palestinian Conflict

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ワシントンDCの国立建築博物館でイスラエル国家樹立75周年の独立記念日レセプションに出席するハリスとエムホフ(2023年6月6日)

外交問題全般に言えることだが、ハリスのイスラエル・パレスティナ紛争の歴史は、大統領執務室に入るまでに異例の外交経験を積んだバイデンに比べると浅い。しかし、ハリスの投票記録や公の演説をよく読むと、彼女がガザ地区での戦争やより広範なイスラエル・パレスティナ紛争に対する、アメリカのアプローチに大きな変化をもたらす可能性は低いことが分かる。イスラエル・パレスティナ交渉担当米特使の元上級補佐官のデイヴィッド・マコフスキーは、「彼女の発言からすると、バイデンとの継続性があると思う」と語った。

2023年6月、ハリスは、イスラエルの独立記念日を記念してワシントンで開かれたレセプションで演説し、イスラエルに対するアメリカの「揺るぎない(unwavering)」関与と対イスラエル安全保障支援を支持してきた連邦上院議員としての実績をアピールするとともに、反ユダヤ憎悪があるからと言って、イスラエルを特別視することはしないと警告を発した。ハリスの夫のダグ・エムホフはユダヤ人で、反ユダヤ主義に対処する政権の取り組みで重要な役割を果たしてきた。ハリスは、スピーチの中で、副大統領公邸で初めて過越祭の祭典を主催したことへの誇りを語った。

2023年10月7日のハマス攻撃以来、ハリスは、バイデン政権の政策にほぼ堅持しており、バイデン政権はイスラエルの自国防衛の権利を肯定する一方で、イスラエルの軍事行動の容赦ない性質に対する批判を徐々に強め、人質の解放も保証する停戦を推進している。しかし、少なくとも言葉の上では、相違点がいくつかあった。外交問題評議会の上級研究員で、フォーリン・ポリシー誌コラムニストのスティーヴン・クックは、「ハリスは時に、表に出てきて、バイデン大統領よりもイスラエルに対して批判的になった」と述べている。

ハリスは、公式声明の中で、ガザ地区でのパレスティナ人の苦しみをより重視し、より共感を示してきた。これは、彼女が人道危機(humanitarian crisis)について、更なる懸念を表明するようホワイトハウスに圧力をかけたとの昨年末からのメディア報道と一致している。バイデン政権はこれらの報道に異議を唱えている。

12月にドバイで行った演説で、ハリスは、戦争のきっかけとなったハマスの攻撃の残忍な性質を再考したが、同時にガザ地区の民間人を保護するためにイスラエルに更なる努力をするよう求めた。3月にアラバマ州セルマで行った演説で、ハリスは、人質解放とガザ地区への援助流入を可能にする即時停戦を求めた。彼女の発言は停戦合意を仲介するための政権の外交努力と一致していたが、彼女の熱のこもった発言に聴衆から大きな拍手が送られた。

国務省でイスラエル・パレスティナ交渉担当特使を務めたフランク・ローウェンスタインは、ハリスの紛争に関する政策は継続性を重視するものになる可能性が高いが、バイデンとは異なるトーンを打ち出す可能性があると述べた。この認識は、戦争について、彼女と個人的に話した人たちからも同様の意見が寄せられている。

4月2日、バイデン政権のガザ政策について話し合うためにホワイトハウスでイスラム教徒コミュニティの指導者たちと会談した際、今年初めに医療任務で、ガザ地区で働いていたシリア系アメリカ人医師のザヘル・サルールは、ハリスはガザ政策に関する彼らのプレゼンテーションに感動していたと述べた。ガザ地区の人々に対する戦争の影響を懸念し、会議後に彼に近づき、人道状況について地上からの更なる報告を求めた。サルール医師は、「ハリス副大統領は共感を示していると感じた。彼女はガザ地区の民間人の窮状を明らかに気にかけていました」。また、政策に関してはバイデンと乖離はなかったものの、紛争に対するアメリカのアプローチについての彼女の表現はより明確かつ詳細だったとサルール医師は述べた。

木曜日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談後の公の場での発言で、ハリスは強い口調で語った。ハリスは、イスラエルには自国を守る権利があるというバイデン政権の立場を繰り返したが、その方法が重要だと述べた。ガザ地区について、ハリスは、「私たちは苦しみに対して無感覚になることを許すことはできない。私は沈黙しない」と語った。

ハリスが選挙に勝ったとしても、彼女が就任するのは2025年1月になるため、その間の戦争で多くのことが変わる可能性がある。ガザ地区の状況は依然として厳しいものであるが、戦争の性質は既に大規模な作戦から、より標的を絞った(依然として致命的ではあるが)作戦へと変化している。マコフスキーは、「戦争は過去9カ月のようなものにはならないだろう。だから、ハリスが同じような選択に直面するかどうかは分からない」と語った。

-エイミー・マキノン筆

●アフリカ(Africa

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ワシントンがアフリカ大陸における外交関係の強化を目指す中、アフリカ3カ国歴訪中のハリスがガーナのケープコースト城で演説(2023年3月28日)

2022年、ワシントンで開催された主要なアメリカ・アフリカ首脳会談で、バイデンは、翌年アフリカを訪問すると誓った。しかし、彼はそうしなかった。 5月にケニアのウィリアム・ルト大統領がワシントンを国賓訪問した際、バイデン氏は再選されれば来年2月にアフリカを訪問すると約束した。今、彼は選挙戦から脱落した。

アフリカの指導者たちは長い間、ワシントンとの関与が他の地政学的優先事項のために後回しにされてきたことを批判してきた。バイデンが全く参加しなかったことは、トランプが大統領としてサハラ以南のアフリカに足を踏み入れなかったことに続くもので、アフリカ諸国のいくつかを 「くそ溜め国家(shithole countries)」と呼んだことで悪名高い。

ティーム・バイデンは、アメリカ・アフリカ首脳会談を企画し、定期的にバイデン政権の閣僚たちをアフリカ大陸に派遣することで、トランプ大統領との差別化を図った。ハリスは、アフリカ大陸を訪問した政府高官の中で最上級であり、昨年ガーナ、タンザニア、ザンビアを訪問した。

現・元政権当局者らは、ハリスのホワイトハウスも、バイデンのアフリカへのアプローチと同様の方針をとる可能性が高いと述べている。それは、閣僚レヴェルの訪問を着実に続け、アフリカ大陸が悲惨な不況に直面する中、民主政治体制と法の支配の促進について得意げにと述べるだろうということだ。民主政治体制の進歩において、地政学的な影響力を巡ってロシアや中国と競争している。

しかし、ハリス政権が誕生すれば、アフリカの指導者や住民に、アメリカ・アフリカの協力と民主政治体制に対する、アメリカの公約が単なるレトリックにとどまらないことを納得させるには、険しい戦いに直面することになるだろう。バイデン政権は、真の民主促進運動を支援するよりも、脆弱な独裁政権との短期的な安全保障上の提携を優先するという、アメリカの外交政策上の長い伝統に従ってきたためだ。西アフリカでクーデターが相次ぎ、アメリカの対テロ作戦が失敗したことで、サヘル地域は以前にも増して独裁的で、テロに脆弱で、ロシアのような、アメリカのライヴァルと手を組むことを許している。

多大な負担にもかかわらず、ハリス政権は、アメリカとアフリカの関係において、いくつかの良い方向に進むだろう。バイデン政権がビジネスとインフラ関係の拡大に重点を置いたことで、新たに約142億ドルの双方向貿易と投資が生まれ、アメリカのアフリカへの直接投資は、新型コロナウイルスの世界的大流行で急激に落ち込んだ後、再び増加に転じている。

バイデンティームはまた、政権末期のスーダン戦争(スーダンの民主政体移行にワシントンが関与して失敗したことを受けて勃発した戦争)の和平交渉を開始するために、「万歳のメリー号」を投げかけているが、その交渉がどのように行われたのかは不明だ。その間、ハリス政権はアフリカ諸国の政府を、大国間競争(great-power competition)の地政学的チェス盤の駒のように扱うことなく、大陸におけるロシアや中国との競争のバランスをとる必要がある。

-ロビー・グラマー筆

●移民(Immigration

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フロリダ州ホームステッドにある移民児童収容施設を訪れる連邦上院議員(当時)で大統領候補だったハリス(2019年6月28日)

移民は、外交政策問題の一つであり、ハリスの副大統領としてのポートフォリオの重要な部分を占めていることから、ハリスの潜在的な戦略がどのようなものになるかを評価するのがおそらく最も簡単な問題である。

共和党はハリスをバイデン政権の「国境皇帝(border czar)」と名付け、元サウスカロライナ州知事ニッキー・ヘイリー氏の言葉を借りれば、「国境を修復する(fix the border)」という一つの任務を達成できなかったとされるハリスを攻撃した。しかし移民専門家たちは、彼女の任務の範囲ははるかに限定的であり、彼女がバイデン政権の「国境皇帝」に任命されたことは一度もなかったと強調している。国土安全保障長官のアレハンドロ・マヨルカスと保健福祉長官のザビエル・ベセラが国境問題に責任を負っている。

実際には、ハリスはバイデン政権が中米3カ国(ホンジュラス、グアテマラ、エルサルヴァドル)と協力し、経済的苦難、暴力、政治的抑圧といった移民の「根本原因(root causes)」に取り組むための取り組みの陣頭指揮を任されていた。ハリスは、「根本的な原因を緩和するために、これらの国々への民間投資に関するイニシアティヴを主導する」責任を与えられた、と元米移民帰化局長官で、現在は移民政策研究所に在籍するドリス・マイスナーは述べている。

この取り組みの一環として、ハリスは、3カ国の民間セクターへの関与に対して合計52億ドル超を支出すると発表した。ホワイトハウスによれば、この公約は50以上の企業や団体から寄せられたもので、メタ、エルサルヴァドル第2位の銀行バンコ・クスカトラン、ターゲットなどが含まれる。

2021年、ハリスが副大統領就任後初の外遊でグアテマラを訪れた際、潜在的な移民に対して鋭い警告を発したことで波紋を呼んだ。「アメリカとメキシコの国境への危険な旅に出ようと考えているこの地域の人々にはっきりと言いたい。来ないように、来ないように」。この声明は、進歩主義派や移民擁護団体の一部から批判を浴びた。

南部国境に対するバイデン政権の広範なアプローチから、ハリス戦略がどのようなものになる可能性があるかが見えてくる。バイデン大統領が、移民が国境を通過する頻度が高い間は亡命を求めることを禁止するという物議を醸す大統領令に署名した後、6月の不法越境は、3年ぶりの低水準に落ち込んだ。この大統領令は「バイデン大統領によって制定された最も制限的な国境政策であり、トランプ前大統領が2018年に行った移民遮断の取り組みと呼応するものだ」とACLUは述べている。国境を越える移民は、過去最高レヴェルにまで急増していた。昨年、国土安全保障省は2000年以来、国境での月間移民数で最高を記録した。

マイスナーは、「バイデン政権は、効果的な取締り政策と同時に、私たちが移民の国であることを認識し、移民が継続できるような政策を打ち出そうと懸命になっている。そのバランスがどのようなものであるかは、まだはっきりしていない」と述べている。

カリフォルニア出身、元州司法長官、移民の子供として、ハリス自身の経歴が移民問題に対する彼女の視点を形成してきた。マイスナーは、「カリフォルニアはもちろん、現在も将来も移民によって完全に形作られている。ハリスは、個人的にも、仕事上でも、自身の経験からこれらの問題を強く把握していることは間違いない」と述べている。

-クリスティーナ・リュー筆

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカ外交政策に関しては大きな潮流として、リアリズム(Realism)と介入主義(Interventionism)があるということを私は拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で書いた。冷戦期、アメリカは自由主義陣営を率い、ソヴィエト連邦率いる共産主義陣営と対峙した。アメリカは、「近代化(modernization)」=「民主化(democratization)」を掲げて、世界各国に介入した。しかし、一方で、アメリカに役立つ国であれば、非民主的な王制や独裁制をも容認するという二枚舌外交を行った。アメリカの介入主義政策は、共和党であればネオコン派、民主党であれば人道的介入主義派が担ってきた。このことも何度も書いてきた。こうした2つの勢力が外交を担った際には、外国への侵攻を行い、結果としてそれが泥沼化して、アメリカの利益が損なわれることになった。そうした外交政策の反発が、「アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内問題解決優先主義)」として噴き出したのだ。

 アメリカのリアリズム外交を代表するのがヘンリー・キッシンジャーとジェイムズ・ベイカーの両元国務長官だ。ベイカーはジョージ・HW・ブッシュ政権下で、第一次湾岸戦争に対処したが、政権内のネオコン派の突き上げ(イラクのクウェートからの撤退だけでなく、イラク国内に侵攻しサダム・フセイン政権を打倒せよ)にも屈せず、イラク国内への侵攻を許可しなかった。アメリカの国益と中東地域の不安定化を考慮しての行動だった。キッシンジャーについてはこれまでもこのブログで何回もご紹介しているが、世界大戦を引き起こさないという考えの下で、アメリカと中国、ロシアを繋ぐ役割を死去するまで続けた。

 今回ご紹介する論稿は、スティーヴン・M・ウォルトの論稿である。ウォルトは、外交の範囲を限定することが重要だと述べている。

スティーヴン・M・ウォルトは、ガザ地区への救援物資輸送のために、アメリカが設置した仮設桟橋の崩壊を例に挙げて、アメリカ政府の人道的な対応の不足を批判している。桟橋の建設はイスラエルの国境を開かせるための象徴的なPR活動に過ぎず、実際には援助物資はわずかトラック60台分しか運ばれなかった。

このことはアメリカの外交政策の信頼性について諸外国に疑問を持たせることになるとウォルトは指摘している。アメリカの外交専門家は信頼性の維持にこだわり、戦略的には重要でない紛争に資源を投入することを正当化している。しかし、過去の失敗から学ばず、アメリカが些細な利害のために無駄な戦争に巻き込まれることが続いている。信頼性を重視するあまり、必要な能力(機能)を無視する傾向があり、その結果、国際的な影響力を失っている。

例えば、ベルリン空輸のように成功することもあるが、アメリカの外交機関が高尚な役割を果たせるか疑問が持たれている。中東和平プロセスや911テロ事件の背景にある政策の誤り、イラク侵攻、金融危機など、アメリカの外交政策の失敗の歴史は長い。

アメリカの外交政策の誤りを修正するには時間がかかり、構造的な問題が存在する。これに対処するためには、アメリカがより抑制的な外交政策を採用し、解決すべき問題の数を減らす必要がある。そうすれば、外交機関が任務を果たしやすくなり、故障率も低下するだろう。アメリカの外交政策がより有能であれば、国際社会からの信頼を得ることができる。これはウィン・ウィンの関係を築くことにつながるとウォルトは結論づけている。

 ウォルトがこのような論稿を書くということは、現在のジョー・バイデン民主党政権の外交は守備範囲を広げ過ぎているということだ。アメリカの実力を超えているということだ。アメリカ国民は、ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス紛争への援助に疲れている。「いつまで続けねばならないのか」「もう十分にしてやったではないか」という考えを持つ国民が多い。民主党の大統領選挙候補者に強引に内定してもらったカマラ・ハリス副大統領は、バイデン政権の政策の継続を訴えるだろう。それはつまり、いつまでも戦争を続けるということだ。アメリカがそれで国力を落として衰退していくのは勝手だが、それで世界の不安定さが続くというのは許せないことだ。

(貼り付けはじめ)

バイデン大統領の外交政策の問題点は機能不全であることだ(Biden’s Foreign-Policy Problem Is Incompetence

-アメリカ軍のガザ地区における桟橋の崩壊は、より大きな問題の象徴である。The U.S. military’s collapsed pier in Gaza is symbolic of a much bigger issue.

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年6月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/04/biden-foreign-policy-gaza-ukraine-foreign-policy-incompetence/

ニューヨーク・メッツが球団創設最初のシーズンで、40勝120敗という滑稽なほど無能な成績を残したとき、ケーシー・ステンゲル監督がこう嘆いたのは有名な話だ。「ここにいる誰もこのゲームをプレーできないのか?」 ガザ地区に救援物資を運ぶためにアメリカが建設した仮設桟橋(temporary pier)が崩壊したことを知ったとき、私はステンゲルの言葉を思い出した。ソーシャルメディア上の批評家たちがすぐに指摘したように、この言葉はガザ紛争全体に対するジョー・バイデン政権の対応を象徴する適切な比喩となった。この桟橋の建設は、本質的には、イスラエルに国境を開かせ、人為的な人道的大惨事(man-made humanitarian catastrophe)に直面している市民への十分な救援物資を許可することを、アメリカ政府当局者が望まなかったために行われた、高価な人目を引くための高価なPR活動(PR stunt)であった。この主に象徴的な努力は、荒波が構造物を損傷し、援助物資の輸送が中断される前に、トラック60台分の援助物資を届けることに成功した。修理は現在進行中で、少なくとも1週間はかかると伝えられている。

この残念なエピソードを、より大きな悲劇のほんの一部に過ぎないと考える人もいるかもしれないが、私はこのエピソードが、アメリカの野心と見栄(American ambitions and pretentions)について、より大きな疑問を投げかけていると思う。アメリカの外交専門家たちは「信頼性(credibility)」の維持に執着しているが、それは戦略的に重要でない紛争や公約に莫大な資源を費やすことを正当化するためである。1960年代から1970年代にかけて、アメリカの指導者たちは、南ヴェトナムが本質的な戦略的価値の低いマイナーな国であることを理解していた。しかし、勝利に至らずに撤退すれば、アメリカの持続力に疑念が生じ、信頼性が損なわれ、世界中の同盟国が共産ブロック(communist bloc)に再編成されることになると主張した。もちろん、こうした悲観的な予測は何一つ実現しなかったが、アメリカが些細な利害のために勝ち目のない戦争に巻き込まれるたびに、同じような単純化された議論が繰り返される。

信頼性をやみくもに崇拝する(fetishize)人は、通常、必要なのは十分な決意だけであると考えている。彼らは、アメリカが十分に努力すれば、設定した目標は全て達成できると信じている。彼らは、「勝利はそのコースを維持することだけの問題に過ぎない」と考えるだけだ。しかし、信頼性と影響力を単に意志の問題として考えると、おそらくより重要な別の重要な要素が見落すことになる。その重要な要素とは機能(competence)だ。

アメリカの外交関係を運営する責任を負う主要機関なら、国家安全保障会議、国務省、国防総省、財務省、商務省。各情報・諜報機関、連邦議会の各種委員会はあまり有能ではないとなったら、世界中の人々が私たちからの助言を受け入れ、私たちの指導に従うよう説得することなどできない。例えば、1948年のベルリン空輸(Berlin airlift)は、西側の決意の明らかなシグナルだったが、もしアメリカとそのパートナーが複雑な兵站努力(complicated logistical effort)を成功裏に遂行できなかったら、それは裏目に出ていただろう。地中海に余分な桟橋を建設し、約9日後にそれを崩壊させることは、この時とは、かなり異なるメッセージを送ることになる。

残念ながら、アメリカの外交政策担当の各機関が、アメリカの指導者たちが担ってきた高尚なグローバルな役割を果たせるかどうか、疑問を持たれる理由は十分にある。悲惨なパフォーマンスのリストは、さらに長くなっている。二国家による解決をもたらすと言われた中東の「和平プロセス(peace process)」が、今日の「一国家の現実(one-state reality)」を生み出したこと、1999年のコソヴォをめぐる回避可能であったが複雑に進んでしまった戦争(ベオグラードの中国大使館への誤爆を含む)、911同時多発テロを可能にした政策の誤りと情報諜報の失敗、2003年のイラク侵攻の悲惨な決定、2008年の金融危機、米海軍の一連のスキャンダルと海上衝突事故、審査に合格できず、ほとんど即戦力にならない航空機を購入するなど肥大化した国防調達プロセス(bloated defense procurement process)、制限のないNATO拡大が最終的にどこにつながるかを予想できなかったこと、経済制裁がロシア経済をすぐに崩壊させるというむなしい期待をしたこと、あるいは、2023年夏のウクライナの反攻が失敗する運命にあるという豊富な兆候を見過ごした希望的な観測に基づいた応援などが挙げられる。アフガニスタンやリビアへの介入に失敗したことも加えれば、「屋上屋を重ねているだけだ」と非難されるだろうし、アメリカ連邦下院が道化と化したことについて、私は何も言うつもりはない。

私は、この厄介な羅列を暗唱することに喜びを感じている訳ではないし、ワシントンが時折、重要なことを正しく行ってきたことも承知している。クリントン政権は1999年のカルギル危機(カシミール地方をめぐるインドとパキスタンの紛争)の際、南アジアでの大規模な戦争を回避する手助けをした。ブッシュ政権が始めたアメリカ大統領エイズ救済緊急計画(PEPFARプログラム)は、誰が見ても人道的に大きな成功を収めた。オバマ政権は、イスラム国の短期間の「カリフ体制(caliphate)」を倒した地元勢力を支援した。バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻への初期対応を効果的に調整した。アメリカの情報諜報機関は、2014年にロシアがクリミアを掌握することを予測できなかったが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が2022年に何を準備しているかを正しく予見していた。

従って、私は、アメリカ政府が全てにおいて失敗していると言っているのではない。

しかし、全体的な記録は残念なもので、私はその理由を解明するため、何年も費やしてきた(そして1冊の本にまとめた)。問題の一部は、アメリカの力と思考能力の低さの、通常では考えられない組み合わせ(unusual combination of power and impunity)にあるのではないかと私は疑っている。アメリカは非常に強力であると同時に、他の地域では考えられないほどに安全であるため、その指導者たちはありとあらゆる愚かなことを行い、その結果のほとんどで、他国に苦しませることができる。また、アメリカが世界中の数十の問題に積極的に対処しようとしない場合、世界全体が崩壊すると考える、愚かな傾向もあり、それが常に米政府に対処しきれないほどの責任を引き受けさせることになる。議題が詰め込まれすぎると、優先順位を設定することが難しくなり、全ての問題に適切な注意を払うことができなくなる。避けられない結果として、多くのことがうまくいかなかったり、まったくうまくいかなかったりすることが起きる。

更に悪いことに、歴代の米大統領は能力よりも忠誠を重視しており、外交政策の専門家たち(エスタブリッシュメント)は、誤りを犯しやすい自分たちの仲間の責任を追及することを嫌がる。その結果、専門家たちは失敗し、破産したアイデアの提供者たちが、自分たちの信用されていない意見を再利用してくれる、シンクタンクやメディアをいつでも見つけることができる。政府高官が辞任することは原則的にめったにない(ただし、中堅官僚が辞任する場合もある)。辞任すると、将来の政権で、高位の職の提供を受ける可能性が低くなるからである。結局のところ、上級補佐官が自分の正しいと思うことを擁護することだけしか行わず、結果として、指導者を当惑させることになる。そんな補佐官を指導者は望むだろうか? また、ホワイトハウスが交代するたびに大規模な人事異動が発生し、新しく任命された担当者が多くやって来るが、彼らはまず連邦上院の人事承認を待ってから何をすべきかを考えなければならない。この状況は、アップル社やGM社が4年ごとに経営陣を無作為に交代させ、会社が順調に機能することを期待するようなものだ。アメリカが適度な外交政策目標を掲げていれば、こうしたことは問題にならないかもしれない。しかし、実際には、ワシントンは、不適格な多数のアマチュアは言うに及ばず、短期労働者を集めて、刻々と変化する組織で、全世界を管理しようとしている。

私は分かっている。毎日出勤して国のために最善を尽くしている何千人もの献身的な政府職員、つまり、上司がレールを逸脱すると公式の「反対意見チャンネル(dissent channels)」を苦情で埋める彼らに対して、私は公平ではない。官僚利権の固定化はそれ自体で問題を引き起こす可能性があるが、外交政策に関する場合は、「魚は頭から腐る(the fish is rotting mostly from the head)」ということになる。これら全てのことにより、アメリカの外交政策を担当する諸機関は、現実的な目標を設定することよりも、崇高な理想を宣言することのほうが得意となり、結果として、その目標を達成することはできないことになる。

しかし、「ドナルド・トランプを再選すればこの問題は解決する」と思うなら、もう一度考えてみて欲しい。トランプ大統領の最初の任期は、外交政策における失敗が延々と続き、アメリカの安全や繁栄を更に高めることはできなかったが、前任者であるバラク・オバマ大統領が世界の多くの地域で享受してきた尊敬と善意を台無しにすることには成功した。トランプが貿易戦争を始めるという不手際をしてしまったために、アメリカ国内で何十万もの雇用が奪われ、定められた目的(アメリカの貿易赤字の削減)を達成することができなかった。トランプ大統領は、自身が全く理解できなかった合意を破棄し、国家安全保障問題担当大統領補佐官4人、国防長官2人、国務長官2人、そして前例のない数のホワイトハウス職員を1期のうちで使い尽くした。明らかに、トランプの元上級補佐官の何人かは、現在彼を最も著名に批判している人物の中に含まれている。

そして忘れてはいけないのは、この大統領のビジネスキャリアは、詐欺、終わりのない訴訟、そして度重なる破産に満ちていたということだ。日光と漂白剤が新型コロナウイルスを治すかもしれないと考えた人でもある。北朝鮮の金正恩に一対一の首脳会談の機会を与え、その対価として、何もないもの(bupkis)を手に入れた人物、そして、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と当時の中米ロシア大使セルゲイ・キスリャクがホワイトハウス訪問中に、誤って機密情報を漏洩した人物である。外交政策に関するトランプの見解は、ワシントン政治内部(inside-the-Beltway)の正統性からの新たな脱却だったかもしれないが、パリ気候協定からの離脱、イラン核合意の破棄、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱といった彼の最も重大な行動は即座に、アメリカの重要な利益に対する永続的な損害をもたらした。そして、そう、トランプはまた、2020年の選挙を覆そうとして、もし大統領執務室で二度目のチャンスを得られたら、憲法の一部を廃止することについても語っている。トランプの2期目がアメリカ外交政策の更なる成功をもたらすと考えている人は、トランプがどれほど無能な指導者だったかに注目していないか、単に忘れているかのどちらかだ。

アメリカの外交政策の仕組みは誤りを犯しやすい構造になっている。これを修正するには長い時間がかかるだろうし、そもそもそれが可能なのかと時々疑問に思う。これが、私がより抑制的な外交政策を支持する理由の1つであり、アメリカの世界への関与を維持しながら、アメリカ政府が解決する義務があると感じている問題、課題、責任の数を減らす政策となる。もしアメリカがやるべきことを減らそうとするならば、我が国の外交政策担当の諸機関がその任務を遂行できるかもしれない。故障率は現在よりも低くなり、国内ではより多くのリソースを問題解決に充てることができるようになるだろう。アメリカがそれほど野心的ではないが、より有能な外交政策を採用すれば、世界中の一部の主要国は喜ぶだろうし、それによってアメリカの残りの約束がより信頼できるものになるだろう。私にとっては、それがウィン・ウィン(win-win)の関係になるように思えてならない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。

 アメリカの外交政策思想には大きく2つの流れがある。それがリアリズム(Realism)と介入主義(Interventionism)だ。アメリカの二大政党である民主党、共和党にそれぞれ、リアリズムを信奉するグループが存在する。介入主義は、民主党では、人道的介入主義(Humanitarian Interventionism)を信奉する人道的介入主義派となり、共和党ではネオコンサヴァティヴィズム(Neoconservatism)を信奉するネオコン派となる。ネオコン派は、ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領時代に日本でも知られるようになった。
 介入主義とは、外国に積極的に介入して、外国の体制を全く別のものに転換しようというものだ。ネオコン派の考えは、「アメリカの価値観である、自由主義や人権、民主政治体制(デモクラシー)、資本主義を世界に広めて、世界中の国々を民主体制の自由主義的資本主義国ばかりにすれば、世界は平和になる」というものだ。そのために、アメリカは自身の卓越した力を利用しなければならないし、これに反対する勢力は打ち破るということになる。民主党の人道的介入主義派は、「世界の非民主的な国々では、マイノリティの女性や少数民族、政敵少数者たちが迫害され、命の危険に晒されている。そうした人々を助けるために、アメリカは人道的に外国に介入しなければならない」というものだ。結果として、ネオコン派と同じく、非民主的な国の体制転換(regime change)がなされねばならないということになる。

 リアリズムは、アメリカの力には限界があり、アメリカの力で世界の全ての国を民主体制の国家にすることはできない。ある国の問題はそこの国の国民の解決すべき問題である(災害などの人道支援は行うのは当然だが)。そして、アメリカの重大な国益が侵害されそうな場合を除いて、外国に対して積極的に介入すべきではない、ということになる。下の論文でスティーヴン・M・ウォルトが「抑制(restraint)」と書いているのはまさにこれである。これらのことについては最初の著作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)に詳しく書いているので是非お読みいただきたい。

 アメリカはこれまで介入主義的な外交政策を実施し、その多くが失敗してきた。結果として、「アメリカ国内問題解決を優先していこう」という公約を掲げた、ドナルド・トランプが大統領に当選した。こうした考えを「アイソレイショニズム(Isolationism)」という。アメリカは超大国であることに疲れ、超大国であり続けるための国力を失っている。そのために、これからは「抑制的」、つまり、リアリズム外交に転換していくことになる。そして、次の世界覇権国は中国である。中国は、覇権交代の歴史を研究し、覇権国は永続的な存在ではなく、いつか、ボロボロになってその座から滑り落ちていくということを分かっているだろう。しかし、中国が覇権国にならねば世界は治まらないということになる。そうした時代の転換点に差し掛かっている。

(貼り付けはじめ)

抑制的なアメリカ外交政策に転換するのに遅すぎることはない(It’s Not Too Late for Restrained U.S. Foreign Policy

-アメリカのグローバル・リーダーシップの復活を求める声が大きくなっている。しかし、それはこれまでと同様に、大きな間違いである。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/14/united-states-realism-restraint-great-power-strategy/

冷戦期間中、アメリカがより控えめな、あるいは抑制的な外交政策を採用するように求める提案は、外交政策エスタブリッシュメント内部で大きな支持を集めることはなかった。確かに、ハンス・モーゲンソー、ジョージ・ケナン、ケネス・ウォルツ、ウォルター・リップマンなどの著名なリアリストたち(Realists)は、アメリカの外交政策における最悪の行き過ぎを厳しく批判していた。連邦政府を縮小しようとしてきたリバータリアンたちもまた、アメリカの海外関与を減少させようとしたが、ソヴィエト共産主義を打ち負かしたいという超党派の願望から、そうした提案は外交政策の外交政策に関する言説の片隅にとどまった。抑制(restraint)や縮小(retrenchment)を求める声は、その後の「一極集中の時代(unipolar moment)」においても同様に歓迎されなかった。アメリカのエリートたちは、歴史の潮流が自分たちの方に流れていると信じ、アメリカの比類ないパワーの慈悲深い腕の下で、全世界を平和で豊かな自由主義秩序(peaceful and prosperous liberal order)に導こうとしたのである。

しかし、この傲慢さが増大した時期がもたらした失敗が積み重なるにつれ、より現実的で賢明な外交政策を求める声が無視できないほどに大きくなった。2014年にマサチューセッツ工科大学(MIT)教授バリー・ポーゼンが『抑制:アメリカの大戦略にとっての新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』を出版した。この著作は、他の学者(私自身を含む)による関連著作とともに、重要なマイルストーンとなった。2016年のドナルド・トランプの当選も現実的な外交政策を求める声の高まりに貢献した。トランプの大統領としての行動は、抑制派の提言とはかけ離れたものであったが、アメリカの外交政策を形成する中心的な正統派の多くに対する彼の修辞的な攻撃と、外交政策エスタブリッシュメントに対する明らかな軽蔑は、これらの問題についてよりオープンな議論を行うための空間を作り出した。2019年に「クインシー国家戦略研究所」が創設され、クインシー研究所、「ディフェンス・プライオリティズ」、スティムソンセンターのアメリカ大戦略研究プログラム、カーネギー財団のアメリカ政治研究プログラムでの関連イニシアティヴも、抑制を目指す動きが勢いを増していることを示す追加的な兆候であった。(完全情報公開:私はクインシー研究所の設立以来、非常勤研究員を務めており、昨年から理事会のメンバーに加わった)。

抑制を目指す動きが軌道に乗りつつあることを示す兆候の1つに、アメリカのグローバル・リーダーシップに対する拡大的な考え方や、ほころびつつある自由主義秩序を守りたいという願望に固執する批判者たちからの攻撃があった。こうした攻撃は通常、抑制派が提言していることを誤って伝え、しばしば彼らを「アイソレイショニスト(isolationists)」と誤って描いていた。こうした批評の中には自分たちの立場を有利にしようと誘導的なものもあった。それは、抑制派が提唱する考え方が大きな支持を集め、やがてはアメリカの対外アプローチに大きな変化をもたらすのではないかと、主流派が懸念し始めていることを示唆していた。

それは昔のことで、今は今である。イラク戦争やアフガニスタン戦争の後で、抑制という考え方は否定できない魅力を持っていたが、現在では大国間の対立が最重要課題となっている。中国のパワーは経済的苦境にもかかわらずなお拡大を続けており、アジアの現状を変えたいという欲望は衰えていない。ロシアはウクライナに侵攻し、現在ウクライナを支配している。中国、ロシア、イラン、北朝鮮、その他数カ国による協力体制が強化され、ヨーロッパの防衛力再構築に向けた取り組みは、多くの人が期待していたよりもゆっくりと進んでいる。ガザでは残忍な殺戮が進行中であり、戦争が拡大するリスクは依然として受け入れがたいほどに高い。スーダン、リビア、エチオピア、その他のアフリカ諸国では、内戦とジハード運動が人々の生活を破壊し続けている。1990年代の傲慢さは消え去ったかもしれないが、大国間の紛争は考えられないという信念も同時に消え去った。

これらの状況全てを踏まえても、リアリズムと抑制に基づく外交政策には意味があるのだろうか? アメリカ人は今こそ、深く掘り下げ、再びグローバル・リーダーシップの外套を手に取り、「地政学的ハードランディング」を回避するために奔走すべき時なのだろうか? 抑制の時期は過ぎ去ったのか?

その答えは「ノー」だ。

まずは抑制を目指す動きが何を望んでいるのかを明確にすることから始めよう。何よりも抑制派は、アメリカの極めて重要な利益が関与しない、不必要な「選択の戦争(wars of choice)」を戦うことに反対している。彼らは平和主義者でもアイソレイショニストでもない。彼らは強力な国防を信じている。そして彼らは、状況によってはアメリカが海外で武力行使を厭うことがないようにすべきだと認識している。抑制派は、アメリカは世界から撤退する代わりに、他国で貿易や投資を行うべきであり、他国にも同様の行動を奨励し、排外主義(xenophobia)に駆られて壁を築くのではなく移民を管理された形で受け入れるべきだと考えている。実際、抑制派はアメリカが今よりも積極的かつ効果的に外国に関与すべきであり、外交を第一に考え、武力行使をワシントンの最初の衝動(first impulse)ではなく最後の手段(last resort)とするべきだと考えている。それは何故か? なぜなら、抑制派は軍事力の限界を理解しているからだ。軍事力は場合によっては必要かもしれないが、それは常に多くの予期せぬ結果を生み出す粗雑な手段である。また、重要な利益が関与せず、成功を定義するのが難しい場合、戦争に対する国民の支持を維持することは困難である。特に抑制派は、体制転換(regime change)や軍事占領(military occupation)を行って、自由主義的な価値観を広めようとすることに反対している。なぜなら、そのような取り組みは通常、代償として、深刻な事態の泥沼化(quagmires)や破綻国家(failed states)の出現を招くのが通常からである。

現実的に考えると、抑制派のほとんどは、アメリカは中東から軍事的に手を引き、その地域の全ての国々と通常の関係を持つべきだと考えている。彼らは、NATOの同盟諸国が自国の防衛により大きな責任を負うよう、ワシントンが奨励すべきだと考えている。しかし、共和党のJD・ヴァンス連邦上院議員のようなトランプ大統領気取りとは異なり、抑制派の多くは、外交的解決に向けた献身的かつ柔軟な努力と組み合わせたウクライナへの援助継続を支持している。中国に対する最善の対応策については、抑制派にも賛否両論があり、より強力な封じ込め(containment)の努力を支持する者もいれば、緊張を緩和し、互恵的な妥協点を追求する必要性を強調する者もいる。しかし、アメリカは依然として海外に過剰に関与しており、根本的な政治問題を解決できない軍事的解決策に過度に依存しがちであるという点ではこれらの人々の意見は一致している。

この見解は、10年以上前と同様に、今日でも当てはまる。思い出してみて欲しい。アメリカが現在取り組んでいる問題の多くは、以前の抑制派の警告に耳を傾けていれば、完全に回避できたかもしれないものばかりだ。アメリカが開放的なNATO拡大を強く推し進め、ウクライナを西側の軌道に乗せ、最終的にはNATOに加盟させなければ、ロシアによる2014年のクリミア併合と2022年2月の不法侵攻はおそらく起こらなかっただろう。実際、バイデン政権がロシアの攻撃に先立つ数カ月間にもっと柔軟性を示していれば、2022年春にトルコとイスラエルの調停努力(mediation efforts)をもっと支持していれば、あるいはその秋にウクライナが優勢だった時期に停戦を推進していれば、ロシアとウクライナはまったく戦争をしていなかったかもしれないし、ウクライナがこれほどの損害を被る前に戦争は終結していたかもしれない。もちろん、確かなことを知ることは不可能だが、アメリカ政府関係者たちは、ウクライナが現在負けている戦争を回避するためにできたかもしれないことを全てやった訳ではないことは明らかだ。

中東での出来事も同様の教訓を与えてくれる。ドナルド・トランプ政権もジョー・バイデン政権も、イスラエルとアラブ近隣諸国との関係を正常化しようとすることに重点を置きながら、右傾化するイスラエル政府から圧力を受けつつあったパレスチナを完全に無視した。抑制派が警告したように、この近視眼的なアプローチは暴発の引き金となり、2023年10月7日の悲劇的な結果を招いたのは間違いない。

ガザにおけるイスラエルの猛攻撃によって、3万人以上のパレスチナ人が殺害され、ガザにある建物の50%から60%を破壊または損害を与え、イスラエルの世界的イメージを(アメリカとともに)大きく損なわせる結果となった。イスラエルは大規模な軍事的優位性を持ち、それを全面的に行使しているが、力だけでは、パレスチナとの対立を継続させている政治的な相違を解決することはできない。ハマスが軍事行動で壊滅することはないだろうし、イスラエルのユダヤ人とパレスチナのアラブ人の正当な願望を受け入れ、両者が安全な生活を送れるようにするにはどうすればいいのかという根本的な問題は、解決されないままである。同じことが、紅海の海運に対するフーシ派による攻撃を、爆弾を落としたりミサイルを撃ったりして止めようとするアメリカの努力にも言える。ガザ地区での停戦を実毛するために影響力を行使するということよりもまずは爆弾を落とすということを英米は選択した。これらの例は、複雑な政治問題は何かを爆破すれば解決できると考える反射的な傾向を示している。このような傾向に対して、抑制派は長年にわたり反対してきている。

抑制派はまた、アメリカのパワーは相当に大きいものデルが、無尽蔵ではないことも認識している。大国間競争(great-power competition)の時代には、明確な優先順位を設定し、主目的が互いに矛盾しないようにすることがこれまで以上に重要である。今日、アメリカはウクライナでロシアを打ち負かすウクライナを支援し、人的被害が出ているが、ハマス一掃を目指すイスラエルの努力を支援し、世界トップクラスの半導体技術やその他のデジタル技術を開発しようとする中国の努力を永久に無力化しようとしている。これは抑制されたアジェンダとは言い難く、その矛盾は自明であると同時に自滅的である。ユーラシアの二大国(中国とロシア)を互いに翻弄する代わりに、私たちは数十年かけて彼らに協力する理由を与えてきた。ロシアを孤立させ、グローバル・サウス(Global South)における中国の影響力を制限する代わりに、イスラエルのガザでの作戦を支援したことで、「ルールに基づく秩序(rule-based order)」の偽善が浮き彫りになり、中国に安っぽいプロパガンダの勝利をもたらした。ジョー・バイデン米大統領が包括的共同行動計画に再参加しなかったことは、イランに核開発を再開させ、さまざまな地域の代理人への支援を強化させ、更にはウクライナにおけるロシアの取り組みを積極的に軍事支援させたという点で、誤ったアジェンダに含まれることになるだろう。

最後に、抑制の擁護者たちは、過剰な軍事的関与と「永遠の戦争(forever wars)」がアメリカ本国を衰弱させる効果を持つことについて長い間警告してきた。過度に野心的な外交政策への支持を維持するため、アメリカの指導者たちは、志願兵だけで構成される軍隊に頼るようになり、それによって有権者の大半をその決定の結果から隔離するようになった。アメリカ陸軍士官学校附属現代戦争研究所によれば、その理由の1つは、アメリカ人が「一世代の軍人が、際限のない戦争に何度も何度も派兵されるのを目の当たりにしたから」だという。アメリカの歴代大統領たちは、増税の代わりに借金をしたり、脅威を膨らませたり、アメリカ国民に何をしているのか一部隠したりすることで、こうした活動のコストを隠してきた。しかし、こうした秘密の活動の一部がやがて明らかになると、公的機関への信頼はさらに損なわれている。建国の父たちが理解していたように、常に戦争状態にある共和国は、その共和国としての性格を危険に晒すことになる。今日のアメリカの民主政治体制が脆弱な状態にあるのは、非現実的でうまくいっていない外交政策が一因であり、それを是正しようと抑制派は努力している。

いかなる外交政策ドクトリンも完璧ではない。抑制という考え方も例外ではなく、その擁護者たちは、新たな情報の出現や新たな出来事の発生に応じて、自らの立場を見直す姿勢を持ち続けるべきである。しかし、今のところ、抑制を支持する意見は、特にワシントン中枢でいまだに支配的な代替案と比較すれば、大いに説得力を持っている。そして、現在の状況をもたらした政策をさらに推進することは、まったく意味をなさないし、効果もないのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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