古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:大統領選挙

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年は選挙の年だった。世界各国で選挙が実施された。アメリカ、イギリス、フランス、インド、インドネシア、日本などで選挙が実施され、イギリスでは政権交代が起きた。しかし、日本人である私たちにとって関心が高かったのは、自国内の与党である自民党の総裁選挙で石破茂氏が総裁に選ばれたことと首相となった石破氏がすぐに仕掛けた総選挙で自公連立政権が衆議院で過半数割れとなり、少数与党になったことと国民民主党が躍進したことである。そして、これらの次としては、アメリカの大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、大統領に返り咲いたことだ。共和党は連邦議会上下両院で過半数を獲得し、更には連邦最高裁の判事構成でも保守派が過半数を占める状態となり、「クオドルプル・レッド(quadruple red)」状態になった。

 アメリカ大統領選挙の結果は、トランプが激戦州を全て制し、かつ、得票総数でもハリスを上回った。民主党は惨敗であるが、ブルーステイトを中心に支持は根強い。トランプ嫌いの人々もまた、アメリカには多くいる。それは当然のことだ。私がこのブログで論稿を紹介しているハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルトもその一人だ。彼は、民主党内の介入主義派や共和党のネオコンを厳しく批判してきた。国際関係論においては、リアリズムという立場を取っている。リアリズムの立場からすると、トランプのアイソレイショニズムやアメリカ・ファーストの方が支持しやすいと考えられるが、ウォルトは選挙の前に、ハリス支持を表明した。アメリカの高名な知識人がどのように考えていたかを示すためにも、彼の論稿を紹介したい。

 ウォルトは下の論稿の中で、トランプの一期目の政権の外交を厳しく批判している。まとめると、「トランプが大統領だった際の彼の行動は、リアリストとしての資質を欠いていた。彼は粗野なナショナリストであり、北朝鮮、中国、ロシアとの外交の失敗に直面している。さらに、彼は「永遠の戦争」を終結させることなく、無謀な軍事行動を続け、アブラハム合意は中東での混乱の原因となっている。トランプの外交政策は、イランとの合意破棄やパリ協定の撤回などを通じてアメリカの国益を損ねており、リアリストとして支持されるべきではない。トランプは、あた、有能な人材を雇うことに興味を示さず、忠実な部下を求める傾向があるため、政府の機能に問題が生じる」ということである。また、経済政策についても、ハリスの方がよく分かっているという主張を行っている。

 ウォルトのトランプ批判についてはおそらく正しい。ウォルトは冷静な分析と判断をしている。トランプになったからと言って、バラ色の未来がアメリカに待っている訳ではない。トランプが実施するであろう関税の引き上げと不法移民の大量送還や厳しい国境政策によって経済はダメージを受ける可能性が高い。インフレが起きて、利上げを迫られて、景気が冷え込む可能性もある。しかし、人々はトランプを選んだ。ウォルトのやったような分析や判断は折り込み済みだろう。それでもなお、民主党、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスの行ったことよりも、「少しはまし」になるだろうということでトランプが選ばれた。しかし、トランプにとってもできることは少ない。4年間の任期は長いようで短い。この間をうまく取り繕って、次にバトンを渡すということになるだろう。そもそもアメリカにとってできることは既に限られている。そして、衰退は既に止められない状況になっている。その衰退の速度を弱めることがこれからのアメリカにとって大事なことになる。

(貼り付けはじめ)

カマラ・ハリスはリアリストではない。しかし、とにかく私は彼女に投票する(Kamala Harris Is Not a Realist. I’m Voting for Her Anyway

-今年の選挙におけるリアリストの唯一の選択はトランプを拒絶することだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年10月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/16/kamala-harris-realist-trump-election/?tpcc=recirc_trending062921

現時点では、アメリカには数十人の未決定有権者しか残っていないかもしれないのだから、正しい投票をするよう説得するコラムを書くことは無意味かもしれない。しかし、選挙が激戦州の数票の差で決着するかもしれないことを考えると、できる限りのことをしておかなければ後味が悪い。そこで、私がカマラ・ハリスに投票する理由と、あなたもそうすべき理由を説明しよう。

私のようなリアリスト・抑制主義者(realist/restrainer)は、ドナルド・トランプやJ・D・ヴァンスに傾倒していると思うかもしれない。特にバイデンやその同僚たちのガザ地区やウクライナ戦争、その他の外交問題への対応に失望していることを考えればそう思うのも当然だ。ハリスはそれらの政策に責任を負っていないのであるが、機会を与えられても、それらの政策が間違っていたと言うことを拒否してきた。彼女の主要な外交政策アドヴァイザーであるフィリップ・ゴードンはアメリカの力の限界や、私たちのイメージ通りに地域全体を作り変えようとすることの愚かさについて賢明なことを書いてはいるが、ハリス自身の外交政策に対する見解が、ワシントンのコンセンサスから外れたものであったり、国際問題に対するリアリスト的な見方を反映したものであったりする気配はない。対照的に、トランプとヴァンスは、ヨーロッパとアジアの同盟諸国に、自国の防衛に関してもっと負担して欲しいと言い、ウクライナでの戦争を終結させるべき時だと考え、外交政策の「専門家たち(ブロブ、Blob)」を軽蔑とまではいかないまでも懐疑的に見ている。だから自称リアリストたちは彼らに熱狂するのであり、私が彼らと同じ考えを持っていると結論づけるのは簡単だろう。

では、なぜ私はトランプとヴァンスの厄介な欠点を無視し、前庭にトランプとヴァンスの看板を立てないのだろうか? その理由を数えてみよう。

第一に、トランプが大統領だったときに何度も指摘したように、彼はリアリストではなく、トランプ大学から教育を受けるのと同じように、彼から賢明な外交政策を学ぶことはできない。彼は粗野なナショナリストであり、一極主義者であり、彼を最もよく表す「イズム」はナルシシズム(narcissism)である。そのため、北朝鮮の金正恩委員長、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領とのリアリティショー的な首脳会談は失敗に終わった。彼は最初の任期中に「永遠の戦争(forever wars)」を終結させることなく、国防総省に必要以上の予算を与え、気に入らない指導者を殺すために外国にミサイルを撃ち込むことに完全に満足した。彼は衝動的で、粗野で、不注意で、明確な戦略を立て、それを貫くことができなかった。大々的に宣伝されたアブラハム合意は、評論家たちが警告していたように、現在中東を混乱させている大虐殺の土台を築くのに役立った。(大統領が無資格の娘婿に不安定な地域で外交官をやらせるからこうなったのだ)。

そして、忘れてならないのは、トランプはイランに包括的共同行動計画からの離脱による核開発再開を許し、パリ協定を放棄し、環太平洋経済連携協定(TPP)を破棄してアジアの同盟諸国に喧嘩を売ることで、中国とのバランスを取ろうとする努力を弱めたことだ。このような外交政策は、まともなリアリストなら支持すべきではない。また、リアリストなら、分断の種をまき、アメリカ人に互いを恐れろと言うことが、国を強くする最善の方法であり、ましてや国を偉大にすることだとは考えないだろう。しかし、それこそがトランプがそのキャリアを通じて、そして特に今回の選挙戦で行ってきたことなのだ。

トランプのビジネスキャリアが長い無能の記録であることを考えれば、どれも驚くべきことではない。その特徴は、巧みな取引や抜け目のない経営ではなく、度重なる破産、騙されて食い物にされた顧客、終わりのない訴訟、そして重罪の税金詐欺の長い歴史である。彼の支持者たちは、最初の任期で自分の部下を信頼することを学んだと主張するが、残念ながら、彼は才能を見極めるのが下手なことが証明されている。彼の最初の国家安全保障問題担当大統領補佐官は1カ月も持たず、トランプは任期中で更に3人、複数の国務長官と国防長官を使い果たした。トランプ大統領のホワイトハウスにおけるスタッフの離職率は過去最高レヴェルであり、トランプ大統領と直接仕事をした何十人もの人々が、トランプ大統領にもう一度チャンスを与えることに断固反対している。

もちろん、トランプは政府で働く有能な人材を雇うことに興味がある訳ではなく、自分の決定がどんなに馬鹿げていても、違法であっても、自分の言いなりになってくれる忠実な人材を求めている。彼の専門知識蔑視は、彼が何も知らない科学へのアプローチに特に顕著に表れている。この盲点は、新型コロナウイルスのパンデミックに対する彼の対応や、気候危機を否定し続ける姿勢を見ても明らかだ。ハリスは、気候が大きな問題であり、温室効果ガスの排出を制限し、すでに経験している影響に適応するためにもっと努力する必要があることを理解している。フロリダ州の住民の方々にはご注意いただきたい。

憲法を守ると宣誓し、職務に有能で国民への奉仕に尽力する人物を任命する代わりに、トランプは行政府に個人として変人を配置したいと考えている。これは極めて深刻な問題だ。なぜなら、自分たちが何をしているのかを理解し、政治的圧力に弱い、よく訓練された有能な人材が大勢いない限り、複雑な現代社会を運営することはできないからだ。私が話しているのは、財務省、国立気象局、連邦準備制度、連邦航空局、国土安全保障省、日常生活が依存している様々な送電網、IRS、食品医薬品局、行政、そして私たちの社会が機能することを可能にするその他の全ての機関を運営する公務員のことだ。

これらの機関は完璧だろうか? いや、誤りを犯しやすい人間で構成された組織が完璧であるはずがない。無知で意地悪な大統領の腐敗した取り巻きが責任者であれば、これらの組織がない方が良いのだろうか? そうではない。アメリカは何十年もの間、主要な公共機関への資金が組織的に不足しており(そのため、政府のパフォーマンスはしばしば期待外れに終わっている)、トランプは(そして彼のために「プロジェクト2025」を起草した過激派は)この問題を更に悪化させようとしている。必要なサーヴィスを全て購入できる富裕層は困らないだろうが、それ以外の人々にとっては、アメリカはますます不快で非効率な場所になるだろう。

第三に、トランプ大統領の対外経済政策へのアプローチは悲惨なものになることが予想される。貿易赤字を縮小することも、中国の経済政策を変えることもできず、アメリカ経済の一部の部門にかなりの損害を与えた。トランプは今、関税を2倍、3倍に引き上げると約束している。現在でも彼は、外国製品に対する関税はアメリカの消費者に対する税金であり、外国の輸出業者が私たちに支払うペナルティではないことを理解していない。(馬鹿げた国境の壁の費用を払うのはメキシコではなく、アメリカの納税者であるということと同様だ)彼が提案する関税は、インフレを再燃させ、基軸通貨としてのドルの魅力を低下させ、アメリカの輸出企業に損害を与えるだろう。私の身勝手な考えではなく、『フィナンシャル・タイムズ』紙のマーティン・ウルフの簡潔で破壊的な評価を見て欲しい。ハリスは経済政策で私が望むことをすべてやるとは限らないが、何十年も拒否されてきた通商政策へのアプローチを採用するつもりもないだろう。

より重要なことは、トランプは今回の選挙で、アメリカの民主政体に真の脅威をもたらす唯一の人物であるということだ。我が国の政治システムには欠点もあるが、それでもほとんどの国民に多大な自由を与えており、改革と刷新(reform and renewal)が可能である。トランプのキャリア全体、とりわけ政治家としてのキャリアを見れば明らかなように、彼は法の支配(rule of law)を軽んじており(前科持ちで性犯罪者であることが確定していることを考えれば、驚くにはあたらない)、憲法秩序(constitutional order)を守ることにまったく関与していない。ハリスが当選すれば、間違いなく私が反対することをするだろうが、権威主義的なシステムを押し付けたり、2028年の再選に敗れても退任を拒否したりはしないだろう。トランプはすでに後者をやろうとしているし、前者もやりたがっているようだ。

私が大げさに言っていると思うだろうか? 私は2016年当時、トランプがもたらす危険性を過小評価していたことを告白するが、証拠が積み重なるにつれて見解を改めた。最も明確な兆候は、トランプが誰を尊敬しているかを見れば分かる。彼は、エイブラハム・リンカーンやFDR、ネルソン・マンデラのような人物ではなく、ウラジーミル・プーティン、ビクトル・オルバン、ムハンマド・ビン・サルマン、ベンヤミン・ネタニヤフのような独裁者であり、彼と同様にルールや規範を軽んじている人物である。プーティンは彼らと同じようにチェック・アンド・バランスに無関心でありたいと考えており、もし彼の思い通りになれば、時計の針を戻すことは容易ではなく、不可能になるかもしれない。ひとたび民主政治体制が独裁に崩壊すれば、それを取り戻すのは困難で不安定なプロセスだ。

トランプは才能あふれる詐欺師(gifted con man)であるため、過去30年間にアメリカで起きたいくつかの変化に対する不安を利用して、多くの一般人を惑わすことができたとしても、それほど驚くことではない。驚くべきは、高学歴で大成功を収めた人々の中に、トランプは自分たちの味方であり、自分たちを裏切ることはないと考えている人々が大勢いることだ。私はピーター・ティールやイーロン・マスクのような人々をそのように考えているが、彼らはアドルフ・ヒトラーをコントロールできると考えていたナイーヴで生意気なドイツの政治家たちを思い出させる。トランプについてはっきりしていることがあるとすれば(それは変幻自在のヴァンス[the shape-shifting Vance]についても同じようなことが言えるようだ)、自分の利益になると思えば誰であろうと裏切るということだ。ボリス・ベレゾフスキーやミハイル・ホドルコフスキーのようなロシアのオリガルヒは、プーティンをコントロールでき、自分たちの富が報復から守ってくれると考えていた。もしあなたがハイテク業界の億万長者で、トランプが信頼できる同盟者だと考えているなら、マイク・ペンス前米副大統領に起きたことを反省したほうがいい。そしてこの警告は、彼の集会に行き、彼が自分たちのために何かしてくれると純粋に思っているように見える全ての人々にも当てはまる。

だから11月5日には、ハリスに一票を投じるつもりだ。奇跡を期待している訳ではないが、彼女は過去30年間、アメリカの外交政策がいかに大きく舵を切ってきたかを理解し、新たな方向に舵を切り始めるかもしれない。私はすでにトランプのショーを見たが、続編はオリジナルよりも更に悪いものになるだろう。私のようなリアリストにとって、これは簡単な決断だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。「X」アカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年の大統領選挙も終了し、第二次ドナルド・トランプ政権の顔触れが固まった。来年1月にいよいよトランプ政権が正式に発足する。そうした中で、早くも2028年大統領選挙についての世論調査が実施されている。「どの候補者がふさわしいか」という内容で世論調査が実施されている。共和党では、JD・ヴァンス次期副大統領が有力であるが、有権者の半分が「分からない」と答えている。民主党では、カマラ・ハリス副大統領が有力と見られているが、その他にも有力候補として様々な名前が出ている。それぞれ以下に貼り付けるグラフの通りだ。
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 民主党では、カマラ・ハリスは気の毒だった論が出ていることはこのブログでもご紹介している。ジョー・バイデンがとても再選を目指せるような状況ではなかったのに、選挙戦での居残りを引っ張ってしまって、ハリスにスイッチするのが遅くなり過ぎたという論が出ている。また、バイデンがハリスへの協力に消極的だったとも言われている。そうした中で、 7400万票を獲得したハリスが次回も出るべきだという意見は大きい。一方で、女性の候補者が連敗したことで、女性候補者は厳しいのではないかという意見も出ている。ハリスは自身の選択肢を幅広く残しておきたいと考えているようだ。カリフォルニア州知事で経験を積んで60代後半で大統領選挙に再チャレンジということも考えているようだ。
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カマラ・ハリスとジョー・バイデン

 民主党内では、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーとカリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサムが2028年の大統領選挙有力候補と見なされてきた。ニューサムは、リベラルなカルフォルニア州の知事として人気が高いが、全米が保守化している中で、どれだけアピール力があるかが分からない。カマラ・ハリスもカリフォルニア州司法長官、州選出の連邦上院議員の経験しかなかったこともあり、青い壁の各州での伸びはなかった。長い経歴と豊富な経験を持ち、更にペンシルヴァニア州出身だったジョー・バイデンは地上戦で勝つことができたが、カリフォルニア州の経験しかないハリスやニューサムでは厳しいだろう。

ウィットマーは民主党にとって重要な「青い壁(blue wall)」の各州(ペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州)の一角の知事を務めている。これは、ペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロにも言えることだが、「青い壁」の奪還が2028年の民主党にとって最重要課題となる。そのことを考えると、2028年の大統領選挙は、ミシガン州のグレッチェン・ウィットマー知事、ペンシルヴァニア州のジョシュ・シャピロ知事が手を組む形で戦うのが最上の選択であると考えられる。共和党側はJ・D・ヴァンスが有力だろうが、この4年間でどのように遇され、経験を積んでいくかで、これから先が大きく変わることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

カマラ・ハリスの次はどうなるか?(What’s next for Kamala Harris?

ジュリア・ムラー筆

2024年11月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5005513-whats-next-for-kamala-harris/

ドナルド・トランプ次期大統領に対して敗北をしたことで、ホワイトハウスから退出する準備をしているカマラ・ハリス副大統領の次の行動をめぐって疑問が起きている。

初期の世論調査では、民主党員はハリス副大統領が2028年の大統領選に再び立候補することを望んでいるようだ。しかし党内には、ハリス副大統領が別の役職(手始めにカリフォルニア州知事公邸)を目指すか、トランプ2期目に対する抵抗勢力を強化するために選挙政治以外の道を追求する可能性があると推測する人たちもいる。

民主党系ストラテジストのケイト・メーダーは次のように述べている。「彼女にはまだ長いキャリアが待っている。彼女はこの国の政治家としてはまだ若いし、人々は彼女が次に何をするのか本当に楽しみにしていると思う。なぜなら彼女の周りには非常に強力な支持者がいるからだ。それは選挙後も続くと思う」。

選挙当日は民主党にとって痛ましい夜となった。国の大部分が右傾化する中、トランプは激戦州の全てを席巻し、民主党の拠点に進出し、共和党は来年のワシントンでの三極の権力を掌握する道を開くために連邦上下両院を確保した。

しかし、共和党のライヴァルに2024年の選挙戦伝敗北を受け入れるスピーチで、ハリスは、急浮上した選挙戦を「促進した戦い(the fight that fueled)」を決して止めないことを強調した。

退任する副大統領となるハリスの年齢は60歳で、「まだ闘志を燃やしている(still has a fight in her)」とメーダーは語った。彼女は「それが公共政策となるのか、民間部門となるのか、戦いの場はまだ分からない」とも述べた。

セントルイス大学ロースクールの名誉教授で、副大統領職に関する専門家であるジョエル・ゴールドスタインは、ハリスは、近年の歴史上、大統領選に挑戦して落選し、その後それぞれ異なる道を歩んだ数少ない副大統領の一人であると指摘する。リチャード・ニクソンは1968年にホワイトハウスにカムバックする前にカリフォルニア州知事選に出馬して落選し、ヒューバート・ハンフリーは連邦上院議員に復帰した。アル・ゴアは環境保護活動に専念し、ノーベル平和賞を受賞した。

ゴールドスタインは次のように語っている。「だから、彼女には多くの様々な選択肢がある。 彼女が大統領政治で積極的に活動し続けたいのであれば、それは確かに彼女に開かれたことだと思う。もしそれが彼女の望む道であればそこに進めるだろう」

左派シンクタンク「サードウェイ」の共同設立者であるジム・ケスラーは、「もし彼女が2028年の大統領選に出馬すると決めたら、最初は有力候補としてスタートするだろう。絶対的な有力候補とは思わないが、間違いなくトップでスタートし、資金を集めることができ、有権者に知られ、トランプとの短い選挙戦で非常に良い結果を残した人物ということになるだろう」と述べた。

しかし、2028年の候補者リストには、カリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサム(民主党)、ミシガン州知事グレッチェン・ウィトマー(民主党)、ペンシルヴァニア州知事のジョシュ・シャピロ(民主党)、運輸長官のピート・ブティジェッジなど、民主党の新星が既に名を連ねている。このような候補者層の厚さを前にして、ハリスが今年の勢いを取り戻すのは難しいかもしれない。

民主党系ストラテジストのフレッド・ヒックスは「彼女が2028年の予備選挙で勝つのは難しいだろう。今から予備選挙までの期間は長すぎる。出馬予定、あるいは出馬する可能性が高い人が大勢控えている」と述べている。

その代わり、ハリスの地元カリフォルニア州では、トランプ次期政権に対する民主党優勢(青い州、bule-state)の抵抗の砦としてすでに注目されているハリスに、また新たな道が開けるかもしれない。

ニューサムは州知事の任期制限があるので、2026年の任期満了時に再選を目指す資格はない。

カリフォルニア大学バークレー校政治研究所と『ロサンゼルス・タイムズ』紙が今月行った世論調査によると、カリフォルニア州の有権者の半数近くが、2026年の知事選にハリスが出馬した場合、ハリスを支持する可能性があると回答している。

そうすることで、彼女は「任期後半のトランプ主義に対抗する格好のポジション」に就くことができるとヒックスは語った。ニューサムの事務所は、カリフォルニア州当局が州法に関して、「トランプ対策(Trump-proof)」する用意があると述べており、州司法長官も同様に、物議を醸すトランプ政策に抵抗するために警戒している。しかし、知事も司法長官も22026年に投票が行われる。

ハリスは今年、ホワイトハウスの選挙キャンペーンを行うにあたり、カリフォルニア州での検事としての経験をアピールした。彼女はサンフランシスコ地方検事、そして州司法長官を歴任し、女性初、アフリカ系アメリカ人初、そしてアジア系アメリカ人初の検事と州司法長官として歴史に名を残した。彼女は2017年に連邦上院議員に当選し、バイデン政権に加わるまで進歩主義派の牙城を代表する人物であった。

知事(任期4年)として出馬すれば、ハリスは2028年の大統領選挙の候補から外れる可能性が高いが、必ずしも彼女が再び大統領執務室に挑戦しないことを意味する訳ではないとヒックスは述べている。ヒックスは2032年の選挙に出る可能性を指摘し、その時点でも、20歳以上年上のトランプやバイデン大統領と比較してハリスの年齢がまだ若いことを強調した。

しかし、ハリスがどの道を選ぶにせよ、「彼女は民主党のトランプ抵抗勢力の顔になれるし、なるべきだ」とヒックスは主張した。

弁護士で民主党系のストラテジストでもあるアブー・アマラは、カリフォルニア州知事選、大統領選への再出馬、あるいは市民団体の世界へ足を踏み入れることも、全てハリスのテーブルの上にあるように見えると語った。しかし、「最大の目標は、彼女が前進するにあたり、柔軟性を保つことだ」とアマラは述べている。

アマラは更に「この質問のもう一つの部分は、彼女が自分の政治的キャリアの頂点に何を望んでいるのかということだ」と語った。

そして、2024年に事態が落ち着くにつれ、専門家たちはハリスが民主党の探求活動に介入し、選挙戦で何が起こったのかを自身の物語を語るのではないかと予想している。たとえば、2016年にトランプに敗れた後、クリントンは『何が起きたのか?(What Happened)』という適切なタイトルの回想録で自身の選挙戦を記録した。

アマラは次のように述べている。「今後8カ月から12カ月の間は、何が起こったのかを整理するための期間になると思う。講演であれ、本を書くことであれ、何が起こったのかについてのハリスの理解を明らかにすることを期待している。民主党は、様々な説や理論をめぐって喧々諤々と議論することになるだろう。しかし、彼女から直接話を聞くことは重要だと思う」。

専門家も民主党の関係者たちも、選挙日からわずか数週間、ホワイトハウスが変わる2カ月前では、ハリスの将来を水晶玉のように覗き込むのは時期尚早だと強調した。しかし、2024年以降に党が再建される際、退任する副大統領はこのゲームに残り、党のチェンジメーカー的存在であり続けるだろうというのが一致した予測だ。

メーダーは、「彼女は休息をとり、次のステップについて考える十分な時間を確保するべきだと思う。彼女は、民主党が切望しているリーダーシップや次世代のリーダーシップに関して、彼女が提供できるものがあることを、民主党と国民に証明したと思う。それでも、彼女が次に何をするかは、まだ分からないと思う」と述べた。

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民主党員をランク付けする:民主党が次に大統領候補として指名するかもしれない人々(Ranking the Democrats: Here’s who the party could nominate next as president

エイミー・パーネス筆

2024年11月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5013304-democrats-2028-presidential-contenders/

民主党はカマラ・ハリス副大統領が、ドナルド・トランプ次期大統領に敗れて、傷を癒している最中であるが、既に2028年の大統領選挙で誰が党を率いるかに注目が集まっている。

それは、間口が大きく開いているように見られる戦いだ。

確実なのは、憲法で2期までと制限されているため、トランプ自身が投票に参加しないことだ。共和党の次期大統領候補としては、JD・ヴァンス次期副大統領が有力視されている。

民主党には候補者が多く出てくる可能性があり、党内でも何を重視するかで意見が分かれている。

民主党の一部は、党は次の大統領選挙に向けて新しい血を注入し、再出発する必要があると主張している。

別の人々は、今月初めに7400万票がハリスに投じられたことを指摘し、ハリスはもう一度大統領の座を狙うに値すると主張している。

ある民主党系ストラテジストは、「2016年と同様、私たちは少し道に迷って、舵を失っている状態だ。今後何がしたいのかよく分かっていない」と述べた。

確かなことは、混戦だということだ。

現在、早い段階ではあるが、ハリス、ジョージア州のラファエル・ワーノック連邦上院議員、メリーランド州のウェス・ムーア知事、ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事、ニュージャージー州のフィル・マーフィー知事まで名前が挙がっている。

これから有力な候補者たちを見ていく。

(1)カマラ・ハリス(Kamala Harris
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民主党は少なくとも大部分において、敗北の責任をハリス氏に押し付けていない。

最も多くの批判を受けているのは、7月に選挙戦から撤退し、ハリス副大統領を支持したバイデン大統領だ。

多くの民主党員は、ハリスがバイデンから受け継いだレースは、多くの点で、もし彼女が当初候補者としてのレースとは違ったと述べている。

ハリスに近いある人物は、「多くの点で、これはまだジョー・バイデンのレースだった。最終的に彼女が候補者になったとはいえ、必要なときに彼と距離を置くという作戦が取れなかったことを含め、彼女には多くの制約があった」と語った。

同時に、再出馬を切望する人々によると、ハリスは短いレース期間でも印象的なキャンペーンを実行できることを示したという。

副大統領の政治的本能も成長し、今では10億ドルの選挙運動を展開した人物のような理解と経験を備えている。

また、知名度(name recognition)もある。今週発表されたエマーソン・カレッジの世論調査では、ハリスは2028年の他の候補者候補をリードしている。

確かに、ハリスが候補者になることはないだろうし、競争的な予備選を勝ち抜くこともないだろうと考える理由はいくつもある。

ジェンダーの問題もある。民主党が過去2回、女性を大統領候補の旗手に指名したとき、候補者はトランプに敗れた。民主党の中にも、別の方向に進みたいと考える人たちはいるだろう。

ハリスもまた、10億ドルを投じた選挙戦を率いて敗れた。そして、彼女のキャンペーンは完璧とは言い難いものだった。2024年に負けたのと同じ候補者を2028年に選ぶのは愚かだと考える民主党員もいる。

ハリスもまた、選択肢を広げておきたいと盟友たちに語っている。大統領選に再出馬しないのであれば、カリフォルニア州知事選への出馬は容易だとも言われている。

(2)ギャヴィン・ニューサム(Gavin Newsom
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バイデンが選挙戦から撤退するずっと前から、カリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサムは、大統領が再選に立候補しないことを決めた場合に備えて、自らを候補者候補として位置づけていた。

多くの意味で、ニューサムはトランプに対抗する民主党の防波堤となった。

バイデン政権を通じて、ニューサムはトランプ大統領やフロリダ州知事ロン・デサンティス氏(共和党)と対戦したが、これは共和党の顔を殴る指導者を望んでいた民主党にとって喜ばしいことであった。

ある民主党系ストラテジストは「彼は戦いに身を投じており、民主党は一発逆転を狙っている」と述べている。

ニューサムは資金を集めることができるだろう。彼は全国的に知られており、人口の多い民主党優勢州を率いている。

彼は自らをトランプ抵抗運動の一員と位置付けており、すでに「次期トランプ政権に直面してカリフォルニアの価値観と基本的権利を守る」ためにカリフォルニア州議会の特別議会の開催を求めている。

カリフォルニアの民主党員は大統領選挙で総選挙に勝てるのか? アメリカの歴史上、それはまだ実現しておらず、多くの民主党議員が疑念を抱いている。

しかし、ニューサムが2028年の最有力候補であることは間違いない。

(3)グレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer
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ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーは、以前から有力な大統領候補と見なされてきた。

民主党の中には、今回の大統領選挙の候補者指名争いについて、もっとオープンなものであれば、ホイットマーがより強力な総選挙候補であったかもしれないと考える人たちもいる。

2024年にはハリスが、2016年にはヒラリー・クリントンがトランプに敗れているため、2028年にはウィトマーはジェンダーに関する疑問に直面することになる。

民主党系ストラテジストであるクリスティ・セッツァーは、「次の候補者は、常に前回の候補者についての審判を受けることになる」と語っている。

セッツアーは「ハリスは誰もが望んでいたよりもはるかに良いレースをしたと思うが、明らかな結論は、私たちは有色人種の女性や女性が出馬すべきではないということだ。残念だが、違う分析をしている人がいるとは思えない」と述べた。

ウィトマーのファンは、ミシガン州知事は民主党が競争力のある「青い壁(blue wall)」の州で勝てるだけでなく、政策課題も成功させられるという証拠だと指摘する。

ウィトマーは2020年のバイデンの伴走者(副大統領候補)の最有力候補だったが、それ以来、彼女の立場は政治的スターとして上昇した。

連邦政府の選挙資金報告書によると、彼女はまた、自身のスーパーPACである「Fight Like Hell PAC」のために数百万ドルを集め続けている。

ここ数カ月でウィットマーと話したことのある、ある民主党関係者は、「彼女は本物(real deal)だ」と語った。

(4)ジョシュ・シャピロ(Josh Shapiro
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ペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロは、ハリスがペンシルヴァニア州で敗北したとは言え、民主党のホワイトハウス喪失からより強い立場に浮上した。

シャピロはミネソタ州知事ティム・ウォルツに次いで、ハリスの副大統領候補として第二候補と広く見られており、シャピロが青い壁(blue wall states)で変化をもたらしたかどうかについては今後疑問が残るだろう。

ある民主党の大口献金者は「その結果がどうなるかは分からないが、彼がそのことで多くの注目を集めたことは確かだ。そして、私たちの多くは、彼にはいつかもっと上の選挙に出馬する素質があると考えている。彼には確かな重みがある」と述べた。

シャピロは全国的な知名度を高める一方で、州内では堅実な支持率を維持している。

しかし、世論調査によると、知名度を上げるにはまだ課題があるようだ。今週発表されたエマーソン・カレッジの世論調査では、シャピロを支持すると答えた人は全体のわずか3%だった。

(5)ピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg
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2020年の大統領選に出馬して以来、ピート・ブティジェッジ運輸長官は民主党の将来を担う人物だと言われてきた。

42歳になるブティジェッジは、バイデンの運輸長官としての在任期間は必ずしも順調ではなかったが、民主党員たちは次々、彼は間違いなくバラク・オバマ元大統領以来の党最高のコミュニケーターだと主張している。

大勢の観衆の前でも、またフォックス・ニューズの番組でも余裕のある彼は、トランプに群がる労働者階級の男性を取り込むために党がもっと努力する必要があると言う民主党にとって魅力的な存在だ。今のところ、彼は民主党の大半の候補者を引き離している。

(6)JB・プリツカー(JB Pritzker

バイデンが6月の討論会で惨敗した後、イリノイ州知事JB・プリツカーは、イリノイ州知事の地元であるシカゴで開催された大会での予備選で、候補者指名を狙うかもしれないと多くの人が考えていた民主党員の一人だった。

ハイアット・ホテル・チェーンの後継者であるプリツカーは、選挙資金を簡単に、しかも迅速に蓄えることができる。

彼はまた、民主党にとって魅力的な可能性のある一連の立法上の実績も持っている。

彼は州の最低賃金を15ドルに引き上げる法案に署名した。また、リプロダクティブ・ライツ(reproductive rights、生殖に関する権利)法案にもいくつか署名している。

コロラド州のジャレッド・ポリス知事とともに、「民主政治体制を守る知事(Governors Safeguarding Democracy)」と呼ばれる民主党知事連合の結成に貢献した。

民主党はまた、今月初めにトランプ氏が当選した翌日、プリツカーがトランプを追及したことを称賛している。

プリツカー「イリノイ州民の自由と機会と尊厳を奪いに来るつもりなら、幸せな戦士はやはり戦士であることを思い出して欲しい。皆さん、人々のために、そして、私を通じて、戦いをやり遂げて欲しい」と述べた。

(7)アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez
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民主党が党の将来について語るとき、35歳のニューヨーク選出の連邦下院議員の名前は常にトップに出てくる。

民主党は以前から、オカシオ=コルテスの「でたらめ(BSBullshit)を切り裂き、ありのままを語る」能力に感銘を受けてきたと別の民主党系ストラテジストは語っている。

「彼女は雑音を切り抜けることができ、ワシントンのように話すことはない」と述べている。

民主党は、オカシオ=コルテスは若い有権者たちを惹きつけるだろうし、2018年に連邦下院議員に当選して以来続けているように、ソーシャルメディアやポッドキャスト、その他のオンラインツールを使うこともほとんど問題ないだろうと言う。

オカシオ=コルテスは、かつてはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を含む進歩主義派と連携していたが、その後はより中道的な候補者を支持している。

それでも、民主党の一部有権者たちは、オカシオ=コルテスは依然として党の左派の代表であり、彼女がより高い役職を目指した場合、不利になる可能性があると述べている。

彼女と「スクワッド(squad)」は、あまりに早く、あまりに強くプッシュし始めた。「ワシントンDCはそんな風にはいかない。我が党もそうではない。私たちは基本に戻る必要がある」と最初のストラテジストは語っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 第二次ドナルド・トランプ政権の顔触れで注目を集めていた財務長官に、スコット・ベセントが指名された。スコット・ベセントはウォール街の投資会社の創設者で、投資家として実績を上げた人物だ。なんと言っても著名な投資家であるジョージ・ソロスの下で、10年以上にわたり、投資担当を務めた人物である。ウォール街の真ん中を歩いてきた人物と言えるだろう。ベセントはトランプ側近として、減税と規制緩和、財政赤字削減を通じての経済成長を主張している。トランプが目指す、ロナルド・レーガン政権時代の経済政策を実行することになるだろう。
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ドナルド・トランプとスコット・ベセント

 トランプの最側近となっているイーロン・マスクは、商務長官に指名されたハワード・ラトニックを財務長官に指名するように求めていたという報道もあり、今回、ベセントが指名されたことで、財務長官に関しては、トランプが自身の意思を通したということになる。しかし、財務長官指名に時間がかかったことは、陣営内部で相当な検討や話し合いが行われたことが容易に推察される。

 ベセントの財務長官指名をはじめとして、第二次ドナルド・トランプ政権は、各担当省庁の人事に相当な介入を行う用意があることは分かるが、意外と中道派というか、強固な、時に狂信的なトランプ支持を表明する人物は入っていないという印象である。狂信的な支持者は力強い存在であるが、逆に、あまりにも熱心すぎるあまりに考えが異なるようになると、強力な反対者となってしまう。これは私たちの身近な生活においても良く起きることだ。

 財務長官の場合はやはり、ウォール街の主要な人物たちとの面識がなければ務まらない。そうした点で、ソロスの下で働いて、自身の会社を成功させたベセントは適任ということになる。ベセントが減税を主張し、規制緩和を行い、経済成長率を上げる、また、トランプが主張している関税に関しても賛成しているということから、ドル安傾向になると考えられるので、日本円との関係で言えば円高ということになる。既に、市場ではそのように織り込んで動いているようだ。

(貼り付けはじめ)

●「米次期財務長官に投資家起用 ベセント氏、減税を主張」

11/23() 9:41配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/e958a70cf6a10487f4b589260d232f2eaccb533b

 【ワシントン共同】トランプ次期米大統領は22日、財政政策のかじ取りを担う財務長官に投資家のスコット・ベセント氏を起用すると発表した。これまで規制緩和や減税を通じた経済成長を重視する姿勢を示しており、トランプ氏が選挙戦で主張した法人税や所得税の減税などを担う。

 議会上院の承認を経て正式に就任する。ベセント氏は自ら創業した投資会社の運用責任者を務め、共和党の大統領候補者選びの段階からトランプ氏への支持を明確にしてきた。

 トランプ氏はベセント氏に関し「米国の新たな黄金時代をもたらす手助けをしてくれるだろう」とコメントした。

 ベセント氏は10日のウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿では「トランプ氏は、規制緩和と税制改革を通じ、供給サイドの成長を促進するという使命を担っている」と指摘。バイデン政権による財政赤字拡大やエネルギー政策を批判した。

 米財務省は、G7で協調するロシアのウクライナ侵攻を巡る制裁や、ウクライナへの財政支援を手がけてきた。トランプ氏は支援の見直しなどに踏み切るかどうかも焦点となる。

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ドナルド・トランプ大統領はリスクの高い財務長官にスコット・ベセントを指名:知っておくべきこと(Trump taps Scott Bessent for high-stakes Treasury chief: What to know

アシュレイ・フィールズ筆
2024年11月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/business/5006200-trump-taps-scott-bessent-for-treasury-what-to-know/

ドナルド・トランプ次期大統領は金曜日、億万長者の投資家スコット・ベセントを財務長官に選んだ。トランプは、関税引き上げ(increase in tariffs)と世界貿易活動の大幅な転換(major shifts in the country’s global trade operations)を求め続けている中で、ベセントを財務長官に選んだ。

ベセントはヘッジファンドのキー・スクエア・グループの創設者として巨額の利益を上げ、数十年にわたり民主党の大統領候補を支援してきた。しかし、今回、トランプの2期目を目指す選挙キャンペーンに資金を提供した。

トランプは声明の中で、「アメリカの主流とアメリカの産業の生涯のチャンピオンとして、スコットは、アメリカの競争力を高め、不公正な貿易不均衡を止め、成長を最前線に置く経済、特に来るべき世界エネルギー支配を通じた経済の創造に取り組む私の政策を支持している」と書いている。

(1)民主党員からトランプ支持者へ転身(Democrat turned Trump supporter

ベセントは民主党とつながりがあり、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、アル・ゴアの大統領選挙キャンペーンに献金し、2000年代には資金集め集会のホストを務めた。

自身の会社を設立する以前、ベセントは億万長者ジョージ・ソロスの下で10年以上、投資の最高責任者として働いていた。ソロスは民主党の最も著名な献金者の一人であるが、トランプ大統領とその同盟者たちから長年怒りを買っており、今年初めにはイスラエル・ガザ戦争に反対する大学キャンパスの抗議行動に資金を提供したと指摘する共和党員もいた。

『ナショナル・インタレスト』誌によれば、ソロスはアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)、全米家族計画連盟(Planned Parenthood)、ブレナン・センター(Brennan Center)など民主党の活動に対する強力な支持者である。

それにもかかわらず、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道によれば、ベセントは長年トランプの周辺におり、JD・ヴァンス次期副大統領とも親しい。

(2)投資家としての背景(Background as an investor

ベセントのキャリアはソロスの下で飛躍的に成長し、1992年にロンドンの投資会社の対英ポンド賭けを手伝い、会社に10億ドルの支払いをもたらしたとロイター通信は報じている。

数年後、彼は最終的に450万ドルを集め、世界のマクロ経済をモニターする自身のヘッジファンドを立ち上げた。金融業界でのキャリアを通じて、投資家であるトランプの兄ロバート・トランプとも親密な関係を築き、一族の腹心であり続けた。

金曜日の発表前、ある情報提供者は本誌に対し、ベセントがトランプ政権に参加する場合、債券市場や為替市場での経験が有利に働くだろうと語っていた。

(3)トランプ選対の経済担当顧問(Economic adviser to Trump campaign

トランプは選挙期間中、経済情勢、特に減税と関税引き上げについて頻繁に語った。選挙期間中、ベセントは定期的にトーク番組に出演し、次期大統領の経済政策を宣伝した。

財務長官候補ベセントは第一次トランプ政権時に実施された減税の支持者で、連邦上院で人事承認されれば、国内市場の規制緩和を優先することになるだろう。

AP通信によると、ベセントは、国内総生産の3%に相当する財政赤字の削減と日量300万バレルの追加石油生産を通じて3%の経済成長を促進するという提案でトランプ前大統領に感銘を与えたということだ。

しかし、トランプ支持者の中には、ベセントが関税については弱いのではないかと懸念する者もいる。トランプはベセントに関する発表で関税について全く触れなかった。

(4)関税を支持(Support of tariffs

トランプはホワイトハウスへの立候補を通じて、アメリカ国内で調達・製造されていない製品への全面戦争(all out war)を宣言した。

共和党は、全ての輸入品に10~20%の一般関税を、中国からの輸入品には60%の関税をかけることを提案し、ベセントはその監督を任されることになる。ベセントは、関税は貿易協定を洗練させるために、制裁措置の代わりに使うことができると述べた。

AP通信によると、ベセントは8月に『ブルームバーグ』誌に対し、「ある意味、関税は制裁なき経済制裁(economic sanction without a sanction)とみなすことができると思う」と語った。

ベセントは「もし中国の経済政策が気に入らなければ、過剰な生産で市場を溢れさせれば、制裁を加えることもできるし、関税をかけることもできる。それは為替操作に対する答えともなる」と述べている。

(5)歴史上として初の同性愛者を公言した財務長官(First openly gay Treasury chief

ベセントが人事承認されれば、共和党政権で初めてLGBTQの閣僚が連邦上院で人事承認されることになる。ベセンは元ニューヨーク市検察官のジョン・フリーマンと結婚している。

ベセントは、2021年に連邦上院でLGBTQを公開した初の閣僚となった運輸長官ピート・ブティジェッジの足跡をたどることになる。

その前年、トランプ大統領はゲイであることを公表しているリチャード・グレネルを連邦上院の人事承認を必要としない国家情報長官代理に任命した。

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「三つ巴」:トランプ大統領の財務省指名権は宙に浮いている(‘Three-way tie’: Trump Treasury pick hanging in limbo

アレックス・ガンギターノ筆

2024年11月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5005347-trump-treasury-pick-limbo/

ドナルド・トランプ次期大統領はここ数日、財務長官に指名されそうな人物との会合に明け暮れているが、今のところ最終決定はどう転ぶか分からない状況だ。

アポロ・グローバル・マネジメントの共同設立者であるマーク・ローワン、連邦準備制度理事会の元理事のケヴィン・ウォーシュ、キー・スクエア・グループの創設者であるスコット・ベセントの3人は今週、次期大統領と会談するためにフロリダ州パームビーチを訪れた。

共和党関係者によると、会談にはトランプと、JD・ヴァンス次期副大統領、スコット・ラトニック、リンダ・マクマホン政権移行共同議長を含むトランプのティームのメンバーも含まれていたという。ローワンは金曜日にトランプのマー・ア・ラーゴ邸に戻った、と情報関係者は付け加えた。

ある共和党関係者は「今は試合前のボールのトスを待っている、そんな状況だ。 ボールは3人の候補者のうちの真ん中に位置している」と語った。

この情報提供者は、現状を「三つ巴(three-way tie)」と表現し、指名のタイミングはトランプが「車輪を回すのを止めた時(stops spinning the wheel)」になるだろうと付け加えた。

政権移行に詳しいある関係者は「流動的だ トランプ大統領は、ウォーシュの浮き輪がどう動くか見ている」と述べた。

ビル・ハガティ連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)も財務長官の候補と目されており、火曜日にテキサス州で行われたスペースXの打ち上げにトランプ大統領とともに出席した。

トランプ政権移行ティームはコメントの要請に応じなかった。

トランプ大統領は、ウォール街の潜在的な不安を静めながら、自身の関税計画を支持した実績のある候補者を見つけるのに苦労しているため、財務長官の競争は数日間続いた。

財務長官は、トランプ大統領にとって最も重要な閣僚候補であり、木曜日にマット・ゲイツ前連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)が辞退したことで、司法長官候補がスポットライトを浴びた後に指名されることになる。

財務省を除き、そしてトランプ大統領がケリー・ロフラー元連邦上院議員(ジョージア州選出、共和党)に農務長官を依頼する可能性もあるが、トランプ大統領はまだ労働省と住宅都市開発省のトップを誰にするか選ばなければならない。

再選を逃したばかりのロリ・チャベス=デレマー連邦下院議員(オレゴン州選出、共和党)は、労働省の最有力候補と目されており、米国際トラック運転手組合(ティームスターズ)の支援を受けてきた。

財務長官の候補者の1人は、財務長官の代わりに国家経済会議(National Economic CouncilNEC)のトップに抜擢される可能性もある。ウォーシュはまた、ジェローム・パウエル議長の任期終了後の次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に興味を示している。

今週初めにハワード・ラトニックが商務長官に指名され、財務長官候補から外れ、リンダ・マクマホンは教育長官に指名された。

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 アメリカ大統領選挙が終わって3週間ほどが経過した。結果は共和党のドナルド・トランプ前大統領(次期大統領)が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破って二回目の当選を果たした。トランプは選挙人312人(一般得票約7700万票、約49.9%)、ハリスは選挙人226人(一般得票約7400万票、約48.3%)という結果になった。トランプにとっては選挙人だけではなく、一般得票でも勝利し、圧勝、完勝ということになった。一度敗れた前大統領が再び勝利を収めたのは100年以上ぶりのことだった。

 前回は民主党のジョー・バイデン前副大統領(当時)が選挙人306名(一般得票約8100万票、約51.3%)で、共和党のドナルド・トランプ大統領(当時)を破った。トランプの獲得した選挙人は232名(一般得票約7400万票、46.8%)だった。この4年間で民主党はどうしてここまで票を落とすことになったのかということを、民主党自身が詳しく分析しているだろうが、各メディアでも出口調査の結果を基にして分析している。

 何よりも重要な原因となったのは、中絶問題を一番の争点として訴えて、経済問題を訴えることができなかった、アピールできなかったということになる。

民主党の支持基盤である、若者たち、ヒスパニック系、アフリカ系での支持を伸ばせなかった。ここに尽きるようだ。生活に密着する問題、インフレ問題について、バイデン政権も対策を行っていたが、それをアピールできなかったこと、更には生活実感として、そのような対策の効果を実感できなかったということである。インフレが直撃するのは所得が低い人々であり、そうした人々は、元々は民主党支持であったが、民主党がそうした人々の生活実感を救い取れなくなっている、また、都市部の中間層からエリート層が支持基盤となっているというところが大きい。また、有権者全体として、「経済問題はやはり、経営者出身のトランプだ」という感覚がある。

 文化的、価値観に関する問題で選挙を戦って勝てることもあるが、アメリカで生活に不安を持つ人々、明日の生活もどうなるか心配している人々、家賃高騰のために車上で生活することを余儀なくされている人々は直近の生活問題を解決することを望む。生活が安定しなければ、社会的な問題について考えることはできない。民主党はそうした生活実感を取り戻すことができるかどうか、ここが重要になってくる。

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2024年大統領選挙について出口調査が語っていること(What the exit polls say about the 2024 election

ダグラス・ショーエン、カーリー・クーパーマン筆

2024年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/4993162-trump-victory-exit-polls/?tbref=hp

ドナルド・トランプ次期大統領の選挙での勝利から2週間近くが経過したが、民主党員も専門家たちも、トランプが300人以上の選挙人を獲得するために、どのようにして7つの激戦州全てを席巻したのかを理解しようとしている。

出口調査はトランプ大統領の勝利の背後にある最大の理由を明らかにしている。有権者たちはカマラ・ハリス副大統領と民主党の左派によった綱領(left-leaning platform)を拒否した。この綱領は経済をほとんど無視しながら進歩的な社会問題に力を入れるものだった(doubled down on progressive social issues while largely neglecting the economy.)。

その代わりに、経済や移民問題といった生活に密着した台所テーブルに関する諸問題(kitchen table issues)に焦点を当てたトランプは、中絶の権利に焦点を当てたハリスや民主党よりも、特にハリスが勝利するために必要とした若年層、ヒスパニック系、黒人有権者に対して大きな効果を発揮した。

言い換えるならば、出口調査は、民主党が主要な有権者の間でさえ、意向を正しく読み取ることに失敗したことを示している。彼らは、2024年は2022年に似ていると想定していた。2022年は、中絶の権利をめぐる争いがインフレへの懸念をかき消し、全米で民主党を押し上げた。

しかしながら、CNNの2022年、2024年の出口調査によると、2022年には全米の有権者たちにとって中絶(27%)が2番目に重要な問題であったのに対し、2024年には14%だけが重要な問題だと答えただけだった。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、その時点までに、ヒスパニック系が多数を占める郡は2020年と比べてトランプの支持率が13ポイント、アフリカ系アメリカ人が多い郡は3ポイントも上昇しており、これは主にトランプが選挙運動の目玉とした経済への懸念によるものだと言われている。

ハリスと民主党が明確な経済政策を打ち出せなかったことは、この2つの票田(ヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人)に特に大きなダメージを与えた。実際、ヒスパニック系有権者の40%が、経済が自分の投票にとって最も重要な問題であると答えており、CNNによれば、これは全米の有権者全体よりも8ポイント高い。

経済が最重要課題であると答えたヒスパニック系有権者のうち、3分の2(67%)がトランプに投票したのに対し、ハリスに投票したのはわずか32%であった。

更に言えば、経済を最重要課題とした20%の黒人有権者のうち、トランプはその4分の1強(26%)の票を獲得し、黒人有権者全体における支持率の2倍に達した。

ペンシルヴァニア州やアリゾナ州のようないくつかの激戦州の中では、ヒスパニック系の支持率が2020年と比べてトランプはそれぞれ27ポイント、10ポイント改善した。これが決定的だったようだ。

そのため、ヒスパニック系有権者を詳しく見ると、民主党のメッセージ発信(messaging、メッセージング)がいかにずれていたかが浮き彫りにされる。

ハリスと民主党全体は、トランプ大統領の移民排斥のレトリックに大きく傾倒したが、ヒスパニック系有権者の10人に7人以上(71%)は、ユニドスの出口調査によれば、より厳しい国境警備政策を支持している。

これと同様に、2022年の中間選挙では中絶(28%)がヒスパニック系有権者の最重要課題であったが、CNNによれば、今年同じことを答えたヒスパニック系有権者は2分の1以下(13%)であった。

同様に、伝統的に民主党の信頼できる有権者である若い有権者も、ハリスと民主党のメッセージ発信には動かなかった。ニューヨーク・タイムズの分析によると、「18~34歳の人口が多い」郡は、トランプ支持に6ポイント動いた。

特に30歳未満の有権者について見ると、ハリスはこれらの有権者の支持を勝ち取ったものの、彼女の獲得した11ポイント差は、4年前のバイデンの24ポイント差の約半分にとどまった。

ペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった「青い壁(Blue Wall)」の州と呼ばれる各州では、民主党はハリスが選挙人270人を超えることを期待していたが、若い有権者のシフト(移動)はさらに顕著だった。

エジソン・リサーチ社によれば、2020年と比較して、30歳未満の有権者はミシガン州で24ポイント、ペンシルヴァニア州で18ポイント、ウィスコンシン州で15ポイントもトランプにシフトした。これらは激戦州7州全てで最大の動きとなった。

中間選挙とは異なり、大統領選挙はほぼ常に経済と現政権をめぐる国民投票(referenda)であり、ハリスが苦戦したのはまさにここだった。

タフツ大学の世論調査によれば、30歳以下の有権者が今回の選挙の争点として挙げたのは、中絶よりも経済であり、その割合はほぼ4対1(40%対13%)となった。

ハーヴァード大学ケネディスクール政治学研究所の世論調査ディレクターであるジョン・デラ・ヴォルペが指摘するように、「私が実施した初期のフォーカス・グループから、トランプ政権下では若年層の財政が良くなるという生得的な感覚(innate sense)があった」ということだ。

興味深いことに、外交政策が経済、移民、中絶といった問題よりも関心が低いことが多い中、中東戦争に対する一貫した立場を明確に打ち出せなかったハリスは、ミシガン州のアラブ系有権者とペンシルベニア州のユダヤ系有権者からの支持を失った。

アラブ系アメリカ人の人口が多い都市であるミシガン州ディアボーンでは、トランプが得票率42%、ハリスの36%で僅差で勝利したが、これは2020年のバイデン大統領と比べてハリスは33ポイントも得票率を下げたことになり、これは驚異的な低下となった。多くの住民は、ハリスがイスラエル支持だと感じ、それに反対した。

逆に、ペンシルヴァニア州の世論調査によれば、ハリスがジョシュ・シャピロ州知事を副大統領候補に選ばなかったことは、CNNのヴァン・ジョーンズのような一部の民主党員でさえも、反イスラエルの進歩主義派をなだめるための努力だと非難しており、ハリスはペンシルヴァニア州を失った可能性がある。

ハリスはペンシルヴァニア州のユダヤ人票を48%対41%で獲得した。しかし、『ニューヨーク・ポスト』紙は、彼女がシャピロを選んでいたら、2倍以上の差をつけて勝っていた可能性が高いという世論調査を報じた。ユダヤ系有権者が有権者の3%を占めており、トランプが13万票弱の差で勝利した、この州では、これは大きな失敗だったかもしれない。

ミシガン州とペンシルヴァニア州でのハリスの苦戦は、彼女の選挙戦を悩ませた核心的な問題を象徴している。彼女は大統領になるための政策課題を明確に示すこともなく、不人気なバイデン大統領と自分を切り離して定義することもなかった。

より大きなスケールで見れば、全米および激戦州の世論調査は、ハリスと民主党のより深い問題を明らかにしている。有権者が、食卓に食べ物を並べられるかどうかや、管理されていない南部国境の脅威よりも、中絶のような問題を優先してくれることを期待し、手遅れになるまで間違った問題を優先したのだ。

ポジティヴに捉えれば、民主党の敗北の大きさと世論調査は、2026年、そして2028年に民主党がどのように立ち直ることができるかの明確な道筋を示している。とはいえ、民主党がこの地図に従って、経済中心の中道主義を発展させることを選択するかどうかは重要である。綱領を強化するか、その代わりに左寄りの社会問題に力を入れるかは見ていかねばならない。

※ダグラス・E・ショーン、カーリー・クーパーマン:ニューヨークに拠点を置く世論調査会社「ショーン・クーパーマン・リサーチ」の世論調査専門家兼パートナー。共著として『アメリカ:団結するか、死ぬか(America: Unite or Die)』の共著者である。

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選挙後のカマラ・ハリスとジョー・バイデン

 アメリカ、特に民主党界隈では、「カマラ・ハリスは気の毒だった」という主張が出ている。私もその通りだと考える。佐藤優先生との対談『』は期せずして、「カマラ・ハリスの敗北分析」のようになったが、私たちが話していた内容が現在、カマラ・ハリスの敗北分析で言われている。

 それでも、ハリスには気の毒な面が多かった。まず、選挙活動が実質3カ月ほどに限定された。ジョー・バイデンの高齢問題について注目が集まり、選挙戦からの撤退の声が大きくなったのが今年6月で、それまでは大統領選挙は無風状態で、トランプが有利という展開になっていた。大統領選挙候補者討論会で、一気にバイデンへの不安が噴出し、民主党側は火消しに躍起になっていたが、そのうちに、バイデンを諦めさせることが必要ということになり、バラク・オバマに「何とかしてくれ」という声が集まり、彼が引導を渡す形になったようだ。それが今年7月のことで、1カ月もの間、ぐずぐずしていたことになる。そして、「副大統領のカマラが良いのではないか」という空気づくりがなされて、「カマラ待望論」が無理やりつくられた。

 そもそも、カマラ・ハリスは大統領選挙の候補者になるほどの資質を持った人物ではない。以下の論稿でネイト・シルヴァーが書いているように、「誰かの代わりになるくらいのレヴェル」であって、連邦上院議員でも彼女の資質だと持て余すくらいだと思われる。バイデンがハリスを副大統領に選んだのも、自分を脅かさないくらいの人物ということもあったと思われる。ハリスにとって大統領選挙候補者は荷が重すぎたということになる。そもそも、2020年の大統領選挙民主党予備選挙では、カマラ・ハリスは早々に撤退している。有力候補という見方をされていたのに、支持率が伸びなかった。民主党自体がカマラ・ハリスの資質について最初から見切っていた。自分の能力よりも上の仕事をさせられるのは気の毒なことである。

 7月末からカマラ・ハリスは選挙運動を始めることになったが、選対は「居抜き」のような形で、それにバラク・オバマが自身の選対のスタッフだった人たちに声をかけて急ごしらえで整えられたものだ。これではまず一体感が出ない。バイデンのために一生懸命頑張ってきたというスタッフたちにとっては、「なんで能力もないカマラのために働かねばならないのか、自分はバイデンを大統領にするために頑張っている」ということになり、士気が上がらない。「トランプの大統領就任を阻止する」だけでは士気は上がらない。

 更に言えば、バイデンは全く協力的ではなかったということも言えるだろう。バイデンはハリスの選挙運動にほとんど関わらなかった。「現政権の失敗と彼女とを結びつけるのはよくない」という言い訳はできるが、ハリスが副大統領である以上、バイデン政権を背負わねばならないのは当然だ。従って、バイデンは「自身の後継者」としてカマラ・ハリスを支援しなければならなかったが、それができていなかった。結果として、民主党側は盛り上がりに欠けた戦いになった。また、ハリスの候補者指名についても、結局、党の「ボス」たち、エスタブリッシュメントが空気づくりをして、手続きをすっ飛ばして決めてしまったことで、「非民主的」という批判を受ける口実を与えることになった。

 カマラ・ハリスは負けるべくして負けた。まさに「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ということになる。

(貼り付けはじめ)

ネイト・シルヴァーがバイデンは「代わりの人レヴェル」の候補者カマラ・ハリスに対して「何の助けも」しなかったと発言(Nate Silver says Biden did ‘no favors’ for ‘replacement-level’ candidate Harris

アシュレイ・フィールズ筆

2024年11月15日

『ザ・ヒル』誌

by Ashleigh Fields - 11/15/24 10:57 PM ET

https://thehill.com/homenews/campaign/4993995-nate-silver-says-biden-did-no-favors-for-harris-bid/

世論調査専門家のネイト・シルヴァーは、ジョー・バイデン大統領が今夏の大統領選からの撤退前後に「彼女に手を貸さなかった(did her no favors)」ため、トランプ次期大統領に敗北したハリス副大統領に「大きな同情(a lot of sympathy)」を抱いていると述べた。

シルヴァーは金曜日に自身のウェブサイトに投稿し、ハリス副大統領が在任中に注力したことについて、「おそらく民主党が最も苦手とする国境問題や、ホワイトハウスがおそらく進展がないと分かっていたであろう投票権問題など、バイデンはハリスに厳しい課題を与えた」と書いた。

シルヴァーは「バイデンは、討論会のスケジュールを空白にし、9月11日以降、ハリスが最も得意とする討論会であったにもかかわらず、何も予定を入れなかった。最後まで、バイデンは彼女のメッセージを踏みにじった」と書いた。

しかし、シルヴァーは、この感情がハリス候補に対する一部の肯定的な見方を歪め、彼女は 「代替レヴェルの政治家(replacement-level politician)」であり、トランプを打ち負かすには「平均か平均より少し上(average or slightly above average)」の人物が必要だったと述べた。

シルヴァーは、11月の投票での民主党の連邦上院議員候補者たちに比べてハリスの成績が劣っていたことを挙げ、「人々はハリスの立場に対する同情を、彼女が良い候補者だったことと混同していると思う」と書いた。

シルヴァーは「計算してみると、ハリスは民主党上院候補と比べて、平均2.6ポイント、中央値で2.4ポイント下回った」と書いている。

シルヴァーによれば、ハリスの劣勢の理由には、メッセージ発信の問題、バイデンとの差別化を「拒否(refusal)」したこと、2020年の最初のホワイトハウスを目指した予備選挙と、2024年の直近の千四の間で彼女のスタンスが変化したことなどが含まれるという。

シルヴァーは「彼女は今回の選挙戦で中道(the center)に軸足を移そうとしたのだろうが、なぜ以前の立場を捨てたのか、彼女の政策課題が実際にどのようなものなのかについての説明が不足していたため、せいぜい不器用な努力をしているだけのことだった」と書いている。

それでも、シルヴァーは、バイデンが選挙戦を続けていれば負けていただろうと主張し、内部世論調査でトランプが400人の選挙人を獲得したとの報道を引き合いに出した。

シルヴァーは「バイデンが選挙戦から撤退したとき、バイデンは全米世論調査の平均でドナルド・トランプに4ポイント差をつけられていた。最終的な票差は、良くなるどころか、悪くなっていたと思う」と書いている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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