古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:大統領首席補佐官

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

第2次ドナルド・トランプ政権発足から100日以上が過ぎて、大きな人事異動が発表された。マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官が職を離れ、米国連大使に転身する予定であることが発表された。国家安全保障問題担当大統領補佐官の職は、マルコ・ルビオ国務長官が暫定的に兼務することになった。これは、ジェラルド・フォード大統領時代のヘンリー・キッシンジャー以来のことだ。
 そもそも、昨年の段階では、エリス・ステファニック連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)が米国連大使に指名されていたが、今年3月末に、連邦下院で過半数を握っているが、民主党との差が小さい共和党の議席数を守るために、ステファニックの指名をトランプ大統領が取り消し、ステファニックは連邦下院議員を続投することになり、連邦下院共和党の指導部に復帰した。後述する、ウォルツが引き起こしたシグナルゲート事件が3月中旬に起きたことを考えると、マイク・ウォルツの辞任(実質的な更迭)は3月下旬に決定されており、ステファニクの国連大使指名が撤回された可能性がある。

マイク・ウォルツは政権内で存在感を発揮することができず、また、トランプ大統領側近のスージー・ワイルズ大統領首席補佐官との関係が悪化したという話もある。首席補佐官は大統領執務室の隣にオフィスを持ち、大統領が誰と会うかをコントロールすることができる。国家安全保障問題担当大統領補佐官であるウォルツがトランプ大統領と会う必要がある時に、ワイルズ首席補佐官がそれを妨害したということは考えにくいが、このような話が出るほどに政権内部でひずみが出ているようだ。イーロン・マスクは特別公務員であるが、正式な閣僚ではないはずだが、閣議に出てくる。マスコミはマスクばかりを追いかける。他の閣僚や政権高官たちは面白くないということはあるだろう。そこに、シグナルゲート事件が起きた。ピート・ヘグセス国防長官も当事者であるが、今回はマイク・ウォルツだけが更迭されることになった。2人同時では政権に与えるダメージが大きい。ヘグセスもタイミングを見て、辞任(更迭)ということになるだろう。
 ルビオ国務長官が国家安全保障問題担当大統領補佐官を兼務することになり、これは、トランプ大統領のルビオに対する信頼感を示している。私は現在のところ、JD・ヴァンス副大統領がトランプ大統領の後継者になると考えているが、マルコ・ルビオも有力な後継者になり得ると考えられる。ヴァンスとルビオが両方ともカトリック教徒であることは興味深い。キリスト教福音派がトランプ派の強力な支持基盤であるが、これがどのように影響するか注目される。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領がマイク・ウォルツを国連大使に任命、マルコ・ルビオ国務長官を国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命(Trump taps Mike Waltz as UN ambassador, names Rubio as national security adviser

アレックス・ガンギターノ筆
2025年5月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/5277929-mike-waltz-un-ambassador-rubio-nsc/

ドナルド・トランプ大統領は、グループ・テキストチャットをめぐる論争の最中に解任されたと報じられたマイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官を国連大使に指名した。

トランプ大統領はまた木曜日に、ウォルツの後任として、マルコ・ルビオ国務長官を暫定国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命すると発表した。

トランプ大統領はSNSのトゥルース・ソーシャルで「マイク・ウォルツを次期国連大使に指名することを嬉しく思う。ウォルツは、戦場での軍服時代、連邦議会での活動、そして国家安全保障問題担当大統領補佐官としての活動を通して、国益を最優先に力を尽くしてきた。新しい役割でも、同様に尽力してくれると確信している」と述べた。

トランプ大統領は続けて、「当面の間、マルコ・ルビオ国務長官は国家安全保障問題担当大統領補佐官を務め、国務省における強力なリーダーシップを継続する。私たちは共に、アメリカと世界を再び安全にするために、不断の努力を続けていく。この件にご関心をお寄せいただき、感謝申し上げる!」と述べた。

ウォルツが国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の職を辞し、国連大使に就任することは、連邦上院の人事承認が必要となるが、トランプ政権における最初の大きな人事異動となる。

トランプ大統領が先月、エリス・ステファニック連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)の指名を取り消したことで、国連大使のポストが空席となった。トランプ大統領はこの決定について、ステファニック議員を「連邦下院指導部への復帰(rejoin the House Leadership Team)」のためだと説明している。

一方、国務省のタミー・ブルース報道官は、ルビオの役割が拡大されることは国務省にとって「興奮する瞬間」であり、全く驚くべきことではないと付け加えた。

ブルース報道官は次のように述べた。「私が存じ上げているルビオ長官、就任初日から様々な役割を担ってきた人物だ。大統領もよく知っている人物だ。大統領は誰が自分の政策を実行するのかを完璧に判断している。今回のケースでは、ルビオ長官とウォルツ補佐官を、自らの政策を推し進めるために選んだ。全く驚くべきことではない」。

ウォルツの立場の変化は、国家安全保障・国防当局者がイエメンでの軍事攻撃に関する重要な詳細を共有していたシグナル・アプリ上のグループチャットをめぐる論争の中心人物だったことを受けて起きた。ウォルツは、『アトランティック』誌編集長のジェフリー・ゴールドバーグを誤ってチャットに招待した人物とされている。

ゴールドバーグは3月24日の報道で、自分がメッセージチェインに追加されたことを明らかにした。国家安全保障会議は、このメッセージチェインが本物であることを確認した。ピート・ヘグセス国防長官はシグナルでフーシ派反政府勢力への攻撃について概説したが、ホワイトハウスとヘグセス長官は、これらの詳細は機密扱いではないと主張している。

当時、この事態を受けてウォルツ、あるいはヘグセスが解任されるのではないかとの憶測が渦巻いていたが、トランプ大統領はフロリダ州選出の元連邦下院議員であるウォルツを擁護し、国家安全保障問題担当大統領補佐官を信頼していると述べた。

加えて、今月初め、極右陰謀論に関与する政治活動家ローラ・ルーマーがトランプ大統領と会談し、信頼できない国家安全保障担当官のリストを持参したと報じられたことを受け、国家安全保障会議の職員6人が解雇された。

解雇された職員には、情報担当上級ディレクターのブライアン・ウォルシュ、連邦下院議員時代にウォルツの補佐官も務めた立法担当上級ディレクターのトーマス・ブードリー、技術・国家安全保障担当上級ディレクターのデイヴィッド・フェイスなどが含まれている。

トランプ大統領は、ルーマーがこれらの解雇に関与しているという見方を否定し、「彼女は物事や人物について勧告を行っており、私はその勧告に耳を傾けることもある」と述べた。

フロリダ州上院議員のランディ・ファイン(共和党)は、今月初めにフロリダ州第6選挙区の特別選挙で勝利し、ウォルツの後任として連邦下院議員に選出された。ファインの勝利は、民主党のジョシュ・ワイルが資金調達や一部の世論調査でファインを上回ったことで、共和党は選挙戦への懸念を強めていたので、共和党にとっては朗報となった。

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ドナルド・トランプ大統領はシグナルゲート事件を受け内閣改造を発表(Trump Announces Cabinet Reshuffle in Signalgate Fallout

-マイク・ウォルツは国家安全保障問題担当大統領補佐官を解任され、国連大使への就任をめぐる承認争いに直面している。

ジョン・ホルティワンガー筆

2025年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/01/mike-waltz-out-national-security-advisor-trump-resignation-signal/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日、マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官が退任すると発表した。これは第2次トランプ政権における初の大規模な内閣改造となる。ウォルツの次席大統領補佐官であるアレックス・ウォンも退任すると報じられている。

トランプ大統領はドゥルース・ソーシャルへの投稿で、マルコ・ルビオ国務長官が現在の職務に加え、暫定国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めると述べた。また、ウォルツを国連大使に指名すると発表した。国連大使は国家安全保障問題担当大統領補佐官とは異なり、連邦上院の人事承認が必要となる。

トランプ大統領は「ウォルツは、戦場での軍服時代から、連邦議会での活動、そして国家安全保障問題担当大統領補佐官として、国家の利益を最優先に力を尽くしてきました。新たな役割でも、彼が同様に尽力してくれると確信している」と述べた。

当初、国連大使にはニューヨーク州選出の共和党所属の連邦下院議員エリス・ステファニックが指名されていたが、共和党が連邦下院で僅差で多数派を占めていることを考慮し、僅差のための懸念もあり、トランプ大統領は彼女の指名を撤回した。

ウォルツが国家安全保障問題担当大統領補佐官を辞任したというニューズは、シグナルゲート事件でウォルツがその渦中に置かれてから1カ月余り後に報じられた。3月、ウォルツはシグナル・グループチャットで他の政府高官と誤ってジャーナリストを参加させ、イエメンへのアメリカ軍による攻撃に関する機密情報を話し合っていた。

ホワイトハウスは事件の重大性を軽視し、機密情報は共有されていないと主張していたにもかかわらず、シグナルゲート事件の結果、ウォルツの新政権における将来は直ちに疑問視された。国家安全保障分野のヴェテランたちは、この主張に強い懐疑心を抱いている。シグナルゲート事件は依然として政権にとって悩みの種であり、ピート・ヘグゼス国防長官も引き続き厳しい調査を受けている。このスキャンダルは、ウォルツの将来に関わる人事承認公聴会で必ず取り上げられる可能性が高い。

シグナルゲート事件の騒動当初、トランプ大統領はウォルツへの信頼を表明していたものの、その後、ホワイトハウスにおけるウォルツの影響力は急速に低下した。

国家安全保障問題担当大統領補佐官の解任は、トランプ大統領が極右活動家で陰謀論者のローラ・ルーマーとの会談後、忠誠心欠如の疑いで国家安全保障会議の職員数名を解雇してからわずか数週間後のことだった。

ウォルツの解任が報じられた木曜日、ルーマーはウォルツとウォンの解任を祝福し、その功績を自分のものにしたように見えた。これはトランプ大統領が国連大使への指名を発表する前のことだった。ルーマーはXへの投稿で、「ウォルツが主宰する国家安全保障会議で解雇予定だったが昇進した残りの職員も辞任してくれることを願っている」と述べた。ルーマーはウォンの解任を公然と主張する一方で、ウォンと妻を中国系移民の子孫であることで攻撃している。木曜日、ルーマーはXに「戦利品(SCALP)」と投稿し、ウォンを批判した以前の投稿を再シェアした。

シグナルゲート事件の責任を問われているだけでなく、トランプ大統領の補佐官や側近たちは、大統領がロシア・ウクライナ戦争終結のための和平合意と、イランとの新たな核合意の締結を目指している時期に、ウォルツがロシアとイランに対して強硬すぎると見なしていたと報じられている。しかし、この問題の大きな原因は、ルーマーのトランプ大統領に対する影響力の拡大にあると広く疑われている。

元国務省報道官のネッド・プライスはウォルツの解任について『フォーリン・ポリシー』誌の取材に応じ、「残念なことだが、これはローラ・ルーマーと彼女の過激な陰謀論者たちの仕業だと思う」と述べ、トランプ政権において純粋にイデオロギーに関することは「ほぼない(very little)」と付け加えた。

プライスは続けて、「確かに、ウォルツはウクライナ、ロシア、イランといった重要課題で足並みを揃えていなかった。しかし、彼が今日解任されたのは、ルーマーとその同調者たちが彼の解任を望んだからだろう。ルーマーとその同調者がホワイトハウス、更には国家安全保障機関にまで大きな影響力を持っていることは、全てのアメリカ国民にとって大きな懸念事項だ」と述べた。

ルーマーはコメント要請にすぐに応じなかった。

国家安全保障問題担当大統領補佐官は通常、ホワイトハウスで最も影響力のある高官の1人である。例えば、ジョー・バイデン前大統領の下では、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はアメリカの外交政策に大きな影響力を持ち、政権内で常に最も注目を集める立場の高官の1人であった。

しかし、トランプ大統領の第2期では、国家安全保障問題担当大統領補佐官の役割はこれまでのところ低下している。国家安全保障会議を骨抜きにし、大統領職や、特に外交問題に関して型破りなアプローチを取っているからだ。スティーブ・ウィトコフのような経験の浅い忠実な部外者を、国家安全保障分野のヴェテランやキャリア官僚よりも重用している。

※ジョン・ホルトィワンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。Xアカウント:@jchaltiwanger

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。よろしくお願いいたします。

 第二次ドナルド・トランプ政権のホワイトハウスを率いることになる大統領首席補佐官にスージー・ワイルズ、政策担当大統領次席補佐官にスティーヴン・ミラーが指名された。1980年代のロナルド・レーガン大統領時代から、ワイルズは選挙運動の専門家として、活動し、今回の大統領選挙ではトランプ陣営を率いて勝利を収めた。裏方を好む人物として、トランプからも信頼されている。アメリカ大統領選挙の選対はまさに一つの企業のような規模で、全米各州、各地域にオフィスを構え、選挙運動全体、スケジュール、人事、予算を管理している。ワイルズはクリス・ラシヴィータと共にトランプ陣営を率いた。
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ドナルド・トランプとスージー・ワイルズ
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スティーヴン・ミラーとドナルド・トランプ

 ワイルズについては、複数の人々が異口同音に「タフで、聡明で、戦略的」と賞賛されている。しかも、自分が目立つということをしないので、トランプ大統領にも称賛されている。ホワイトハウスを管理するにあたり適任の人物であるようだ。大統領首席補佐官の事務室は大統領執務室の隣にあり、首席補佐官を通さなければ大統領に接触ができないということになる。日本の首相で言えば官房長官、昔の江戸幕府で言えば側用人ということになるが、その地位を利用して力を振るって、周囲に嫌われる首席補佐官が多く出たのは事実だ。また、大統領に近づこうとする人々や勢力から大統領を守るという仕事もまた厄介である。

 スティーヴン・ミラーは政策担当次席補佐官としてホワイトハウス入りする。ミラーは第一次トランプ政権でも上級顧問として政策立案に関わった。特に不法移民対策が彼の主戦場となった。第二次政権でも不法移民対策を担当することになる。「国境専門官(border czar)」となるトム・ホーマンと一緒に仕事をすることになる。不法移民対策はトランプ政権の政策課題の中心となる。民主党右派や中道派の人々、移民は歓迎だが、不法移民が波のように押し寄せることには不安を覚える、移民たちがアメリカに溶け込まない、なじまないことは問題だと考える人々も、不法移民対策はアピールしている。この問題は地域の治安問題であったり、違法薬物蔓延の問題であったりする。しかし、同時に、不法移民はアメリカ経済にとって重要な存在である。日本で言う「3K(きつい、汚い、危険)」仕事を担っているのが彼らなのだ。こことのバランスをどう取るのかということ、舵取りが必要になってくる。

 人々の注目は「スージー・ワイルズが大統領首席補佐官の仕事にどれだけ留まれるか」ということになっている。第一次政権では4人が大統領首席補佐官を務めた。平均して1年である。ワイルズがどれだけ力を発揮したのかは彼女の退任の報道がいつ出るのかということで分かるかもしれない。

(貼り付けはじめ)

他の人々がトランプにたじろぐ中でスージー・ワイルズにどうして成功する可能性があるのか(Why Susie Wiles might succeed where others faltered with Trump

ブレット・サミュエルズ筆

2024年11月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/4984514-susie-wiles-trump-chief-of-staff/?ipid=promo-link-block5

スージー・ワイルズは、トランプ次期大統領の大統領首席補佐官として、ワシントンで最も重要な、そしておそらく過酷な仕事の1つを引き受けることになっている。

ワイルズを知っていて、フロリダ州で共和党の職員として、またトランプの2024年選挙キャンペーンのリーダーの一人として彼女と一緒に働いたことのある人たちは、彼女が他の人たちが挫折したところで成功するだろうと考える理由があると述べている。

彼女はトランプの側近メンバーからも、その外のメンバーからも尊敬されている。彼女は政治的に成功した実績があり、トランプのことをこれまでの側近にはない方法で知っている。

「彼女がこれまでの大統領首席補佐官と違うのは、トランプと一緒に塹壕(the trenches)の中にいたということだ。ワイルズはトランプが何をしたいのか、どこに行きたいのかを知っている。他の大統領首席補佐官たちは、常にそのように感じていたものだ」とフロリダ在住の共和党系ストラテジストであるフォード・オコネルは語っている。

大統領首席補佐官は大統領に最も近い補佐官として働く。通常、大統領執務室への情報や人々の出入りを管理し、大統領の政策課題に優先順位をつけ、ホワイトハウスの他のスタッフを管理するなどの責任を負う。

トランプ大統領の最初の大統領首席補佐官であったラインス・プリーバスは、共和党全国委員会を率いた後に就任したが、就任6カ月で退任させられた。プリーバスは、ホワイトハウスでスティーヴ・バノンもトランプの上級顧問として働いていた環境で大統領首席補佐官に就任した。

2人目のトランプ大統領首席補佐官ジョン・ケリーは、トランプ大統領が国土安全保障省長官に指名した後に登用された。ケリー首席補佐官はトランプ大統領を牽制し、17カ月間勤務したが、退任後に、トランプ大統領はファシストの定義に当てはまると批判するようになった。

3人目のミック・マルバニーは、およそ13カ月間臨時の職務を務め、より手をかけないアプローチをとった。しかし彼は、ウクライナへの援助保留をめぐって連邦下院民主党に弾劾訴追を実行するための材料を与えたことで、批判にさらされた。マルバニーは現在、本誌『ザ・ヒル』誌の姉妹ネットワークである「ニューズネイション」の寄稿者だ。

トランプ大統領の4代目大統領首席補佐官マーク・メドウズは連邦下院から引き抜かれた。メドウズは、暴かれた詐欺事件を担当する弁護士に当時の大統領への面会を許可した後、2020年の選挙結果を覆す取り組みを巡る訴訟で泥沼にはまった。

歴史を通じて大統領首席補佐官の役割をテーマにした本『ザ・ゲートキーパーズ』の著者クリス・ウィップルは、「その肩書の意味通りでの大統領首席補佐という存在は実際には存在しなかった。なぜなら誰も大統領に厳しい真実を語れなかったからだ。2度目の政権となる今回は、スージー・ワイルズがそれに挑戦するかどうかを確認することになる。それは常に不可能な任務だった」と述べた。

女性初の大統領首席補佐官として歴史に名を刻むことになるワイルズは、過去2年間、クリス・ラシヴィータとともにトランプの選挙キャンペーンを運営する2人のトップのうちの1人として働いた後、大統領首席補佐官に就くことになる。

トランプ大統領は彼女の起用を発表する際、ワイルズを「タフで、賢く、革新的(tough, smart, innovative)」で、「広く賞賛し、尊敬している(universally admired and respected)」と賞賛した。

ワイルズはロナルド・レーガン政権で働き、1990年代後半には、ジャクソンヴィル市長ジョン・ディレイニー(当時)の首席補佐官を務めたが、ここ数十年は主に選挙キャンペーンを担当してきた。

ワイルズは、2010年のリック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)の知事選挙キャンペーンを成功させ、2016年のトランプ大統領のフロリダ州での作戦を指揮し、2018年のフロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)の知事選挙キャンペーンを成功させ、最終的にはトランプ大統領の2024年のホワイトハウスを目指す選挙を指揮した。

ワイルズは主に舞台裏で活動してきた。それは、自分の影を薄くしてしまう側近に腹を立てていることで有名なトランプにとって、彼女にとって好都合な存在だったのだろう。

ワイルズと仕事をしたことのある人たちは、彼女は政治に精通しており、選挙運動につきものの多くの衝突する人々をうまく操作することができると評している。ワイルズとトランプの両方を知るある関係者は、彼女を「タフ」で「有能」と評した。

ワイルズと30年以上の付き合いがあるスクワイア・パットン・ボッグスのパートナー、エド・ニューベリーは「人々は、彼女が全ての試合を選ぶのではなく、本当に重要な試合を選ぶと理解するようになった。彼女は本当に重要な問題を選ぶことができる。トランプ大統領は彼女に同意する必要はないが、耳を傾けるべきだと学んだそうだ。そして、キャンペーンが展開されるにつれて、彼が耳を傾けたことが非常に明らかになったと思う」と述べた。

ジャレッド・モスコウィッツ連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)は、超党派の議員としては珍しくワイルズの雇用を賞賛し、彼女を「聡明でタフ(brilliant, tough)」、そして 「戦略的(strategic)」と評した。モスコウィッツ議員は以前、フロリダ州緊急事態管理局長を務めていた。

ワイルズを知る者は、彼女がこの仕事に十分な資質を備えていることに同意しているが、ワイルズはホワイトハウスのウエストウイングに到着後、いくつかの大きな難題に直面することになる。

トランプは衝動的なところがあり、最初の任期中、すぐにスタッフを入れ替えた。また、彼の耳には、政権内外から影響力を求め、政策課題を推進しようとする数多くの人物が入り込んでくる可能性が高い。

トランプの周辺に詳しい共和党系のロビイストは次のように述べている。「ドナルド・トランプが軌道を外れないようにするためには、側近や脇道から入ってくる人間、あなたのやろうとしていることに二の足を踏ませるような人間からドナルド・トランプを遠ざけなければならない。そして、規律レベルを維持しなければならない、もし彼女が80%までそれを行うことができれば、トランプ側近グループは成功するだろう」。

ワイルズは選挙戦を運営する豊富な知識を持っているが、専門家たちによれば、トランプとウエストウイングを管理しながら、連邦議会内の様々な派閥とうまくやっていくのは、また違った難しさがあるという。また、トランプが台本から外れたり、スタッフを無視したりした場合、それはもはや彼の選挙キャンペーンに影響を与えるだけでなく、アメリカやその同盟国、そして世界中の他の国々にも影響を与えることになる。

前述のウィップルは次のように語っている。「プラス面では、彼女はトランプと協力し、少なくともたまには厳しい真実を伝えることができることを示した。しかし、選挙戦の運営とホワイトハウスの運営には大きな違いがある」。

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トランプ大統領がホワイトハウスの政策担当トップにスティーヴン・ミラーを指名(Trump taps Stephen Miller for top White House policy job

ブレット・サミュエルズ筆

2024年11月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4984020-stephen-miller-trump-white-house/

月曜日、ドナルド・トランプ第一次政権でトップの補佐官を務めたスティーヴン・ミラーが、1月にホワイトハウスに戻り、政策担当の最高責任者(top policy job)に就任することを、複数の政府関係者を認めた。

トランプ次期大統領はミラーを政策担当大統領次席補佐官(deputy chief of staff for policy)に選出した。ミラーは、法的地位を持たない移民の大量国外追放計画を含むトランプ大統領の移民政策を実行する主導的な役割を担うと期待されている。

JD・ヴァンス次期副大統領はソーシャル・プラットフォームXに、「これも大統領による素晴らしい人選だ」と投稿した。

トランプ政権移行ティームはコメントの要請に応じなかった。CNNは、トランプ大統領がミラーを大統領次席補佐官に任命するという計画だと報じた。

ミラーは家族離散(family separation)やイスラム教徒が多数派の数カ国からの米国への渡航禁止命令など、トランプ大統領の第1期移民政策の立案者だった。

ミラーは、先週トランプ大統領が大統領首席補佐官に指名したスージー・ワイルズと一緒に働くことになる。

バイデン政権期間中、ミラーは民主党の政策に対して数十件の訴訟を起こした組織「アメリカ・ファースト・リーガル(America First Legal,)」を率いていた。

ミラー氏は投票日が近づくにつれて、選挙運動に頻繁に参加するようになり、トランプの集会で国内の移民を不法に強制送還し、入国する移民の数を取り締まる必要性について語った。

トランプ大統領の初日の政策課題の多くは、移民の取り締まりに焦点が当てられそうだ。日曜日遅くには、前移民税関捜査局長のトム・ホーマンが新政権で「国境専門官(border czar)」を務めると発表した。

大量の強制送還を実施することに加え、トランプ大統領は「初日に(on Day 1)」大統領令に署名し、連邦政府機関が不法入国した移民の子どもたちに自動的にアメリカ市民権を与えることを停止すると宣言している。このような出生権市民権(birthright citizenship)廃止の取り組みは、一定の法的課題に直面するだろう。

トランプ次期大統領はまた、バイデン政権が中止した南部国境沿いの壁の建設を再開する可能性が高く、トランプは亡命希望者にメキシコに滞在してアメリカ移民裁判所(U.S. immigration court)での裁判の結果を待つよう強制した「メキシコ残留」プログラム(“Remain in Mexico” program)などの政策を再び実施する可能性もある。

ミラーはおそらく、第一次政権でトランプの強硬な移民政策と最も結びついた人物だろう。

ミラーはジェフ・セッションズ前連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)の議会補佐官として移民問題に取り組んでおり、セッションズはトランプ初出馬の際、連邦上院でトランプを早くから支持していた。

セッションズはトランプ政権の司法長官となった。しかし、セッションズがロシアの2016年選挙干渉に関する訴訟から身を引くことを決めた後、2人は不仲になった。

ミラーはトランプの側近グループの一員にとどまり、連邦上院共和党幹部たちとの関係とともに、トランプの家族との関係を構築した。

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

ラーム・エマニュエル駐日米大使は、バラク・オバマ政権で初代の大統領首席補佐官を務め、その後、シカゴ市長を長く務めた。
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ラーム・エマニュエルの名前が広く知れ渡ったのは、長崎市が平和祈念式典にイスラエル大使を招待しなかったことを受けて、式典を欠席すると表明し、それにG7やオーストラリアの駐日大使たちが同調して、欠席するということになった出来事である。広島市の平和記念式典では、イスラエル大使は招待され、出席している。両方の式典にロシア大使は招待されておらず、長崎市の対応は、「ロシアとイスラエルを同じように扱うものだ」と批判されている。ここで重要なのは、平和祈念式典の出席問題が世界の分断、ジ・ウエスト(西側)とザ・レスト(西側以外の国々)の対立を示しているという点だ。それを明確にしたのが、ラーム・エマニュエルの行動だった。

 この出来事があった後、ラーム・エマニュエルについて、駐日大使を退任し、ワシントンに戻り、民主党のカマラ・ハリス副大統領が当選した場合には、政権移行過程に参加し、ハリス政権で重要ポジションに就く意向であることが報道された。ハリス陣営に対して、東京からあれこれ指示を出しているのがエマニュエルだという報道もある。駐日大使にそのような権限もないし、ワシントンから遠く離れて状況を肌で感じることも難しいのに、指示を出すというのは、やはりバイデンが選挙戦から撤退して、影響力を失ったことで、重しが失われ、好き勝手な行動ができるようになったということだろう。これは大きく見れば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相やウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が戦争を拡大しようとしている動きと同様のことである。

 ラーム・エマニュエルがアメリカの外交政策などで重要なポジションに就くことは非常に危険である。カマラ・ハリスが大統領になったら、外交政策について無知な彼女は周囲の人物たちが好き勝手することを止められない。周囲の言いなりになるばかりだ。そして、彼女はやがて「ヒラリー2.0」となる。中国と激しく対立し、イスラエルの戦争拡大を支援し、ウクライナでの戦争を継続させるということになる。そのような設計図を描き、実行するのが、熱烈なシオニストであるラーム・エマニュエルだ。エマニュエルの父親はイスラエル建国時にテロ行為を行ったイルグン団に参加していた。エマニュエル自身もイスラエル国防軍に民間ヴォランティアに参加した経験を持つ。

 ラーム・エマニュエルのワシントン帰還は危険である。エマニュエルが参加するハリス政権は世界大戦の危険性を高めることになる。私たちはそのことを認識しなければならない。

(貼り付けはじめ)

■「駐日米大使、11月に離任意向 民主勝利なら政権移行関与」

8/10() 21:00配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac81f0d52aab84363a3a270cff9aec05a5cd4254

 【ワシントン共同】米国のエマニュエル駐日大使が11月下旬に離任する意向を周囲に伝えていることが9日、分かった。米国の感謝祭(1128日)前後に日本を離れることを検討している。115日の大統領選で民主党候補のハリス副大統領が勝利した場合は、政権移行に関与したい考えだ。米政府関係者が明らかにした。

 共和党大統領候補のトランプ前大統領が勝利すれば、駐日大使の交代は確実。複数の関係者によると、エマニュエル氏は次期大使が決まるまで務めるのではなく、次の政界ポスト探しを進めたい考えという。

 ニュースサイト、アクシオスは、ハリス氏が当選すれば、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に起用されるとの観測があると報じている。

 エマニュエル氏は中国に対する厳しい姿勢で知られ、バイデン大統領との関係の近さも武器に日米関係の発展に力を発揮した。長崎市が今月9日に主催した「原爆の日」の平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことを理由に欠席し、物議を醸した。

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■「「目立ちたがり屋を入れるな」アメリカのプロフェッショナルがカマラ・ハリスに助言した「たった一つのこと」」

歳川 隆雄ジャーナリスト

現代ビジネス

2024.08.10

https://gendai.media/articles/-/135388?imp=0

●ランニングメイトの本命は

米民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領(59歳)は86日夜(米東部時間)、115日の米大統領選を共に戦う副大統領候補に中西部ミネソタ州のティム・ワルツ知事(60)を指名した。

米メディアや政治専門家がハリス氏のランニングメイトとして有力視していたのは以下の3人。(1)東部ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事(51)、(2)西部アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員(60)、(3)ワルツ知事の順だった。厳格に言えば、米 CNNは前日午前にハリス氏の伴走者はシャピロ、ワルツ両氏に絞られたと報じている。

シャピロ氏は大統領選の分岐点とされる激戦州のペンシルベニア州知事であり、同州内選挙にも強い上にディベート能力も高く本命視された。パレスチナ自治区のガザ情勢を巡る紛争でイランとイスラエルが戦火を交える可能性も取り沙汰される中、民主党支持の女性・若者にはパレスチナに同情的な有権者が多いことから、ユダヤ系の同氏の起用を見送ったという。

対抗のケリー氏は商船大学校を卒業後、海軍大学院を修了。米海軍(大佐)退役後に米航空宇宙局(NASA)入りして宇宙飛行士(宇宙滞在期間54日)として活躍したことで高齢白人男性にはヒーローに映る。民主党の中で不法移民取り締まり強化派の筆頭でもあり、ハリス氏のリベラル色を薄めることが出来る。加えて、ペンシルベニア州を失ってもサンベルト(ネバダ州とアリゾナ州)で勝てるとの判断があった。だが、負けた場合の上院1議席減リスクを無視できず採らなかった。

●“派手さ”はないが…

では、大穴のワルツ氏が副大統領候補の座を射止めた最大の理由は何だったのか。先ず挙げられるのは、その豊富な政治キャリアと選挙に強いことである。2006年の連邦議会下院議員(ミネソタ州選出)初当選以来612年間歴任。選挙区は共和党が強い農村地域の第1区。18年州知事選で初当選、現在2期目。選挙に強い地元の隣接州は激戦のウィスコンシン州だ。政界入り前は生まれ故郷のネブラスカ州で公立高校社会科教員と同校アメリカンフットボール部コーチ、州兵として24年間従事など派手さがない。

実は、この派手さがないが堅実で実直なワルツ氏こそがハリス氏自身とその参謀たちのお眼鏡に適ったのである。ジョー・バイデン政権が誕生と同時に、駐日米大使として東京に着任したラーム・エマニュエル氏はオバマ政権時代に大統領首席補佐官を務めた大物であり、以前から2028年大統領選の民主党大統領候補指名に意欲を持つとされる。もちろん、ハリス氏が今秋大統領選に勝利すれば当然ながら2期目を目指すのでエマニュエル氏の目は無くなる。実は、そのエマニュエル氏が「ハリス陣営は個性の強い人物を好まない。それがハリス人事である」と語っていたという。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT726日付)の記事「Team Kamala: the people behind Harris’s White House run ― From Hollywood to Wall Street, the vice-president is backed by an array of advisers, strategists and donors(チーム・カマラ:ハリスのホワイトハウス運営を支えた人々――ハリウッドからウォール街まで、副大統領は多数の顧問、戦略家、寄付者によって支援されている)」に実に多くの固有名詞が挙げられている。

米投資会社エバーコアの創業者ロジャー・アルトマン元財務副長官、投資顧問最大手ブラックストーンのジョナサン・グレイ社長兼COOなど財政支援者ではなく、民主党ストラテジストのドナ・ブラジル氏やバイデン選対委員長だったジェン・オマリー・ディロン氏などプロフェッショナルがハリス氏に助言することは唯一つだった。「インナーサークルに目立ちたがり屋(attention whore)を入れるな」である。

ティム・ワルツ氏はまさにその典型人である。ハリス民主党大統領候補が語ったとされる「人柄や相性のよさに魅かれた」はこの助言に従ったのだ。トランプ氏のランニングメイト、JD・バンス共和党副大統領候補はワルツ氏とは真逆の政治家である。副大統領候補のテレビ討論も楽しみである。

米ニュースサイトAxiosは何と「ハリス政権」のラインアップを紹介している。大統領首席補佐官:先述のディロン氏(女性)かエリック・ホルダー元司法長官(黒人)、国務長官:クリス・クーンズ上院議員(デラウエア州選出)かビル・バーンズCIA長官、財務長官:ジーナ・レモンド商務長官(女性)、国防長官:ミッシェル・フロノイ元国防次官(女性)、大統領補佐官(国家安全保障担当):フィル・ゴードン副大統領補佐官かトム・ドニロン元大統領補佐官――。何とも気の早いことです。

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日本はラーム・エマニュエルをソフト化しているか? まずあり得ない(Has Japan softened Rahm Emanuel? Not likely

ラウラ・ケリー筆

2024年3月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/4509035-rahm-emanuel-japan-ambassador/

東京発。ラーム・エマニュエル駐日米大使にとって、8000マイルの距離と14時間の時差にもかかわらず、ワシントンの混乱は決して遠いことではない。

共和党がウクライナ、イスラエル、インド太平洋地域に対するアメリカの援助を妨害していること、ドナルド・トランプ前大統領が共和党の大統領候補になろうとしていることに対する日本の不安、ロシア、中国、北朝鮮からの脅威に対抗するためのアメリカの努力によって、東京での日々の責任はより複雑になっている。

エマニュエルは先月末、東京のアメリカ大使公邸から本誌とのインタヴューに答えて次のように語った。「私の経歴と経験に基づく質問だが、連邦議会はアメリカが現時点で負っている責任に応えられているか?」。

連邦議会の過半数がウクライナを支持していることにほとんど疑いの余地はないが、日本の当局者たちは、マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)が意図しているバイデン大統領の950億ドルの国家安全保障に関する追加法案の採決が遅れていることをどう説明すればよいのかをエマニュエルによく質問されている。政府支出法案が完了するまで延期する。

エマニュエルは強調するために手を叩きながら、「これはバターに熱したナイフを突き刺すように通り過ぎていく」と言った。

「重要なのは、218に到達するかどうかではなく、290 に到達するか、300に到達するかだ。どうやって法案を議場に提出するかが重要だ。証人保護プログラムには入ることなしに」と付け加えた。

しかし、党派間の対立がいかに増大して労働秩序が混乱に陥っているかを考えると、アメリカは同盟諸国やパートナーから頼りにされることができるだろうか?

エマニュエルは「人々はこれに注目しており、対策を講じている。結局のところ、それは完了するだろう。もっともな質問だが、仮説ですので答えることはできない」と語った。

3人の民主党大統領に仕え、イリノイ州議会議員として指導的役割を果たし、元シカゴ市長でもあるエマニュエルは、下品な言葉、少なくともカラフルな言葉を好むエネルギッシュな政治家として知られている。

オバマ前大統領の首席補佐官だったエマニュエルは、机の上に、「勝手にしやがれ次官 (Undersecretary for Go F— Yourself)」と書かれたネームプレートを置いていた。

東京から、エマニュエル大使は9月、X(旧ツイッター)に中国の外相と国防相の失脚に反応する辛辣なコメントを投稿し、小さな外交危機を引き起こした。 中国外務省の報道官は、この投稿は中国を「中傷(smearing)」していると述べた。

エマニュエルの敵対的なスタイルは、日本の典型的な秩序ある礼儀正しい社会とは相容れないと思われるかもしれない。

日本で過ごした時間が彼の性格に影響を与えたかどうかという質問に対し、「私は時々、音痴(tone-deaf)になることがある」と彼は答えた。

エマニュエルは「もしかしたら、私が他のみんなの性格に影響を与えてしまったかもしれない」と笑いながら述べた。

エマニュエルは「私はここに2年いる。日本ではおそらく20年くらいに感じられる。人間がこのテンポで活動できるとは誰も思っていなかっただろう」と述べた。

エマニュエルは、ロシアの核宇宙脅威をめぐるアメリカのインテリジェンス(情報諜報)について、日本のカウンターパートと話し合ったのだろうか? 彼は「イエス」と一言だけ答え、次の話題に移ろうとした。

現在、エマニュエルは、4月10日の岸田文雄首相のワシントン国賓訪問に向けて準備を進めている。これは、バイデン政権のインド太平洋大戦略における大きな節目となると予想されており、アメリカにとって最も重要な二国間関係が深まることになる。そして、中国の力と野心に対抗するものとして、この地域を多角的に結びつけるものだ。

岸田首相の国賓訪問は、8月にキャンプデイヴィッドで韓国のユン・ソクヨル大統領と歴史的な日中韓首脳会談を行うための訪米に続くもので、これは東京とソウルの間の歴史的に緊張した関係を緩和する効果を持つ成果となった。

エマニュエルは「キャンプデイヴィッドでの会談が実現したとき、最も基本的なことに絞れば、それは中国にとって決して起こってほしくない日だった。」と語り、この国での2年半で最も誇りに思う仕事のいくつかを振り返った。

エマニュエルは、私たちのインタヴュューが行われる大使公邸の図書室の外の一室を身振りで示し、アントニー・ブリンケン国務長官および国家安全保障会議インド太平洋調整官(当時)だったカート・キャンベルとの2022年8月の会談について話し、政策を実行するために必要な手順を計画した。この地域におけるバイデン政権の目標は、キャンプデイヴィッドに到達することだ。

「会談には多くの人が参加したが、最も重要なのは米国大統領だった」とエマニュエルは語った。

共和党の大統領候補指名獲得を目指すトランプ前大統領が11月の選挙で勝利した場合、その取り組みは破綻する危険に晒されるのだろうか?

エマニュエルは、「そこから離れるということは、アメリカにとって大きな、大きな戦略的優位性から離れるということだ。韓国、日本、そしてアメリカはヴィジョンを持っている。私は生き残ると思う」と述べた。

トランプ大統領は就任中、ヨーロッパを軽蔑していたよりも日本との関係に好意的であったが、依然として従来の日米関係を無視した取引政策を追求していた。

エマニュエルは続けて「解ける可能性はあるだろうか? どんなことでも解明される可能性はある。しかし、3カ国の作戦能力にとって基本的なことに近づいている」と語った。

日本の政府関係者や専門家たちは、特に中国や北朝鮮からの脅威に対する基本的な対抗策として、緊密な安全保障上の結びつきが必要であるとの認識の下、ワシントン、東京、ソウルの3カ国の政権交代に備えるための「制度化(institutionalize)」に向けた協力が双方で進められていることに同意している。

日本のある国防関係者は本誌に対して、「韓国を私たちの輪の中に留めておくことは、私たちにとって非常に重要だ」と述べた。

エマニュエルは、目の前の仕事に集中していることを示すよう注意しており、大使就任後の野心についての質問には答えようとしない。バイデン政権における彼の最初のポジション候補は運輸長官だったと言われている。

エマニュエルは「それは放っておいてもいいのではないか、その質問には答えるつもりはない。私にはやるべき仕事がある。時が来たら、その質問に対する答えを見つけ出すだろう」と述べた。

時差が14時間あるため、ワシントンと東京は勤務時間中に通信できる時間枠はわずかだ。エマニュエルは朝、バイデン大統領首席補佐官ジェフ・ザイエンツ、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンとの通話、チャック・シューマー連邦上院院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)との通話、ジーナ・ライモンド商務長官とのメールのやり取りしている。

エマニュエルは、このようなアクセスの良さからワシントンはそれほど遠くには感じないが、8000マイルも離れていると、「違う視点があり、私が『ポトマック川のディズニーランド(Disneyland on the Potomac)』と呼んでいるものだ」と振り返った。

エマニュエルはワシントンの日々の忙しさから遠く離れ、オバマ政権時代の医療制度の可決や最低賃金の引き上げを求める党派間の厳しい戦いを振り返り、彼は「勇敢な心のペイントを身にまとい、戦いに赴く」と表現した。

エマニュエルは「8000マイル離れたところから見ると、光景は全く違う」と述べた。

エマニュエルは次のように述べた。「駐日米大使は私に与えられたユニークな贈り物だったと思う。よく知っていながらも知らなかった国で長期間過ごす機会を得た。私はそれを、冗談に合わせて言うつもりはない。私は来て、見て、そして恋に落ちた」

筆者は、日本政府から資金提供を受けている非営利財団であるフォーリン・プレスセンター・ジャパン(FPCJ)の費用で日本を訪れた。ラーム・エマニュエル駐日米大使とのインタヴューはFPCJとは独立して企画された。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 旧聞に属する話で申し訳ないが、ジョー・バイデン大統領の首席補佐官ロン・クレインが退任し、後任にジェフ・ザイエンツが就任した。就任日は2月8日だ。ロン・クレインはバイデンとの関係が深かったが、ザイエンツはそこまでではない。クレインの後任には、ここは史上初の女性起用で行くべきだ、スーザン・ライス国内政策会議委員長やバラク・オバマ政権で大統領次席補佐官を務めたアリッサ・マストロモナコの名前が取り沙汰されていた。しかし、結局のところ、ジェフ・ザイエンツが大統領首席補佐官に就任した。
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クレインとバイデン
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バイデンとザイエンツ

 大統領首席補佐官は政権運営の要であり、最重要ポジションと言ってよいだろう。日本で言えば官房長官のようなものだ。大統領首席補佐官の事務室は大統領執務室のすぐ隣にあり、首席補佐官の前を通らなければ大統領執務室には入れない。政権課題の進め方とそれに関連して、連邦議会の民主、共和両党幹部との折衝など政治的手腕が問われるポジションだ。ロン・クレインは剛腕ぶりで知られてより、連邦議会共和党幹部からは「クレインが実質的に政権を動かしていてバイデン大統領はお飾りだ」と批判され、「総理大臣」と悪口を込めて呼ばれていたほどだ。

 前任者のロン・クレインと現職のジェフ・ザイエンツをつなぐ要素は、スーザン・ライスである。スーザン・ライスとロン・クレインの関係は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)で書いている通り、バラク・オバマ政権時代に、アフリカでエボラ出血熱の大規模感染が広がり、アメリカ国内でも感染者が確認された時まで遡る。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスは、エボラ出血熱担当調整官としてロン・クレインを起用するように、オバマ大統領に求め、二人三脚でエボラ出血熱対応に当たった。その時の経験もあり、クレインはバイデン政権で大統領首席補佐官に就任した。国内政策委員会委員長兼大統領補佐官であるライスとまた一緒に仕事をすることになったのだ。
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スーザン・ライスとバイデン

 ザイエンツについては期せずして、下の論稿に次のような記載がある。

「教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう」

 このように、ザイエンツもまたスーザン・ライスと親しいということになる。新型コロナ対策が一段落してクレインは退任し(家族との時間や介護を理由にしている)、選挙に向けてザイエンツが就任した形になっている。しかし、実質的にはスーザン・ライスが指揮を執っていると考えた方が自然だ。

 ここからは私の予想であるが、バイデン政権は二期目の当選をどうしても果たさねばならない。それは、単純に言って、「大統領の犯罪行為(ノルドストリーム・パイプライン破壊やウクライナへの関与)を隠し通さねばならない」からだ。そうしなければバイデンだけではなく、その手下たち(権力者共同謀議に参加できるレヴェル)が逮捕されてしまうからだ。バイデンは再選のためにはなりふり構わず様々な手段を取って当選するだろう。

アメリカ大統領は二期目で終わりとなるから、バイデンはさらに年齢を重ね、判断力も体力もなくなっていき、お飾り状態になるだろう。その時に実質的に国家を動かすのはライスではないかと考える。現在の国家安全保障問題担当大統領補佐官であるサリヴァンは、ライスにしてみれば格下の人物だ。また、サリヴァンはまだ若いので次の出番がある。

 ライスは連邦議会の承認が必要な地位に就くのは難しい。それはベンガジ事件の際にみそを付けたからだ。ホワイトハウスの人事は大統領が決められるので、ライスが国家安全保障問題担当大統領補佐官や大統領首席補佐官に横滑りし、サリヴァンが国務長官になるということも考えられる。

 ライスという人物が非常に重要であると私は考える。

(貼り付けはじめ)

ロン・クレインがホワイトハウスで学んだこと(What Ron Klain Learned in the White House

-退任を表明したジョー・バイデンの大統領首席補佐官はゆっくりとした専門知識の蓄積を示すケーススタディだ。

エヴァン・オスノス筆

2023年2月1日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/what-ron-klain-learned-in-the-white-house

ホワイトハウスの大統領首席補佐官(White House Chief of Staff)が果たしている役割について、ほとんどのアメリカ人はほぼ何も意識していないが、このポジションはワシントンで最も強力であり、最も脆弱なポジションの1つである。ロナルド・レーガン大統領とジョージ・HW・ブッシュ大統領の大統領首席補佐官を務めたジェームズ・A・ベーカー3世は、「政府の中でおそらく最悪の仕事」と呼んだが、彼は歴代の大統領首席補佐官の中で最も成功した1人だと考えられている。(最も成功しなかったのは、ドナルド・トランプの4人の悩める大統領首席補佐官の最後の1人で、その在任中にはトランプが2020年の選挙を覆そうとしたこともあり、1月6日の議事堂襲撃に関する証言を拒否したマーク・メドウズかもしれない)

バイデン政権の最初の2年間、大統領首席補佐官室(ウエストウィングの角部屋)の主はロン・クレインであった。クレインは弁護士で郊外に住む3人の子供の父であり、有名人ではないが、ワシントンでの権力の使い方を知り尽くしているロン・クレインのものであった。バイデンの長年の側近で、現在はホワイトハウスの上級顧問を務めるマイク・ドニロンは、クレインについて「私にはない、また他の何人も知らない、政府のレヴァーを動かす能力を持っている」と評した。バイデン大統領の任期中、連邦議会との格闘、トランプ主義、アフガニスタン、ロシアのウクライナ侵攻など、クレインの担当は広範囲に及び、共和党は彼を総理大臣(prime minister)と呼んだほどである。先週金曜日、クレインが2月8日に退任する準備をしているとの報道を政権が認めた。

クレインはバイデン政権と密接な関係にあり、彼の在任期間を評価することは、バイデン政権の文化、作戦、功績、敗北を評価することと切り離せない。『ニューヨーク・ポスト』紙の右寄りの編集部は、「ジョー・バイデン大統領の悲惨な記録を白紙に戻し、国民を欺くことにかけては、クレインに右に出る者はいない」という理由でクレインの退任を祝った。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官の在任期間は平均して1年半だが、難解な統計に精通しているクレインは2年の間そのポジションにとどまり、民主党から出ている大統領の初代大統領首席補佐官として最長の任期を務め、退任の発表直後にウェストウイングで会った私に、「大統領の人気の前半部を走り抜けた」ことを強調した。彼はまた「また、母が病気で、週6日ここで働き、毎週日曜日の朝にはインディアナへ帰るという生活を続けている。それが、ちょっと重荷になっていたのは事実だ」と述べた。

61歳のクレインは、濃い黒髪に終身在職権を手に入れた教授のような体格、そしてワシントンの不条理(absurdities)に対するユーモアのセンスを持っている。オフィスにある火のついていない暖炉を指さして、「マーク・メドウズが書類を燃やした場所だ」と言った。(メドウズの元側近キャシディ・ハッチンソンは、1月6日の議事堂襲撃事件検証委員会で、彼がそこで書類を燃やすのを「たぶん十数回」見たと証言した。)クレインは、「私は一度も火をつけたことはない」と付け加えた。政権によっては、大統領首席補佐官に対して陰口を叩かれることもある。クレインの退任の知らせに惜別と褒賞の声が上がったのは特筆すべきことだ。バイデンの国内政策会議の責任者であるスーザン・ライスは、「私はこれまで9人の大統領首席補佐官の下で働いてきた。そして、そのうちの1人が言ったように、ロンはその中で最高の大統領首席補佐官だった。一分一秒が甘美で明るいという訳ではないが、彼はとても優秀な人物だ」と述べた。

クレインは、鋭い人物であり、反対行動を取りたがる人物である。バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、「彼は、“お前はしくじった”と言ってくれる。しかし、決して意地悪でも小馬鹿にしたような言い方はせず、本当のことを言う」。最も重要なことは、他の人が臆病になるような場合でも、バイデンには大胆に対応することだ。バイデン大統領は、その公的な人格が反映するよりもスタッフに厳しい態度を取ることがある。クレインは、ホワイトハウス内で大統領と正面からぶつかっても首を切られない数少ない人物の1人だ。

米連邦議会では、民主党と共和党の間は僅差であり、民主党の間に深い溝がある。そうした中でクレインは何十年も前からの人脈を駆使してきた。クレインがチャック・シューマー連邦上院議員(連邦上院多数党[民主党]院内総務)と初めて会ったのは1980年代で、シューマーがニューヨークから連邦下院議員に当選したばかりの頃で、クレインは連邦上院のスタッフだった。シューマーが連邦上院多数党(民主党)院内総務に就任したこの2年間は、1日に3、4回話すこともあったということだ。クレインは直接的でかつ冷静ということでシューマーからの尊敬を勝ち取っている。シューマーは「彼(クレイン)は、誰かがバカなことをやっていると、すぐにそれについて厳しい言葉を述べた。しかし、時折、よく考えてみたが、私の言ったことは正しいとは思えないと言い直すこともあった」と語った。

クレインは、若手政治家たちを指導したことでも知られている。2017年、カリフォルニア州選出でプログレッシブ議連のメンバーであるロウ・カンナ連邦下院議員(民主党)がワシントンに来た際、クレインは彼をコーヒーに連れ出した。カンナはその時のことを次のように述べた。「私は“ワオ!"と思った。どれほど凄いことなんだと考えた。そして、彼が首席補佐官になった後、ロンが他の60人、70人と一緒にそれをやっていたことを知った」。カンナはそれを教訓にした。カンナは「議員になってから、良くも悪くもヴィジョンは重要だが、人間関係も非常に重要だということを認識した」と述べた。

アメリカ人は、「スミス都へ行く(Mr. Smith Goes to Washington)」という神話を好むが、実際には、現代のスミスはアメリカ内陸部ではなく、ゴールドマン・サックスの出身であることがほとんどだ。それとは対照的に、クレインは、専門知識をゆっくりと蓄積することのできるケーススタディだ。インディアナポリスで育ったクレインは、1968年初め、配管工事を営むクレイン家を訪れたボビー・ケネディとの出会いをきっかけに、政治の世界に引き込まれた。ジョージタウン大学を卒業後、ハーヴァード大学で法学を学び、バイロン・ホワイト最高裁判事の下で書記官を務めた後、ジョー・バイデン上院議員(当時)が委員長を務める連邦上院司法委員会にスタッフとして所属した。ビル・クリントン政権では、ホワイトハウスの顧問弁護士、司法省、アル・ゴア副大統領の不育大統領首席補佐官として働き、2000年にはフロリダ州での再集計の戦いに携わった。その後、ジョー・バイデン副大統領の副大統領首席補佐官として復興法の支出を監督した後、政権を離れ、3年後にバラク・オバマ大統領の下でエボラ出血熱への対応を指揮するためにホワイトハウスに戻った。

クリントン政権とオバマ政権の間には、オメルヴェニー・アンド・マイヤーズ法律事務所のパートナーや、AOLの共同創業者で億万長者のスティーブ・ケースが立ち上げた投資会社レヴォリューションLLCで、政府以外の民間の仕事にも携わった。長年にわたり、クレインは民主党の大統領選挙候補者討論会の準備を支援することを得意としてきた。2015年、バイデンが出馬しないことを確信した彼は、ヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペーンに参加するために契約した。バイデンの関係者の中には、この動きを不誠実と受け止める者もおり、後に流出した電子メールの中でクレインは「彼らにとって自分は死んだような存在だ」と嘆いたが両者の間にあった溝は埋められた。2016年にトランプに敗れたことも含め、クレインの様々な経験は貴重なものとなり、バイデンの2020年の選挙運動の成功のために助言を行った。

ホワイトハウスにおいてクレインは、バイデン政権の本質的な課題を、宇宙開発、経済、気候、世界における米国の地位といったいくつかの問題に絞り込み、立法と安全保障政策が連動するような方法を模索することに貢献した。在任中の最悪の日は、2021年8月26日、アフガニスタンからの撤退の際、カブール空港の外で起きた爆弾テロで13人の米軍将兵と100人以上のアフガン人が死亡したことだったとクレインは語っている。この撤退はバイデン大統領の転機となり、彼の世論調査での支持率は低下し、新型コロナウイルス感染拡大やインフレに対する不満がさらに重荷となり、完全に回復することはなかった。当時、バイデンとクレインは、国家安全保障のリーダーシップを揺るがす圧力に抵抗していた。サリヴァンは、クレインについて次のように述べた。「単によく思われたい、高い評価を得たいと思って仕事をしていいなかったのだろう。長い目で見ようと思っていたのだろう。彼は、私たちがしてきたことに確信を持っていた」。

アフガニスタンからの撤退からほんの数カ月の後、バイデン政権はさらに大きな危機に直面することになった。ロシアのウクライナ侵攻である。しかし、ウクライナはNATOの支援を受けて抵抗し、これが政権のぼろぼろになったプライドを支える要素となった。

一方、連邦議会では、民主党の内紛が激化していた。2021年秋、連邦上院の民主党穏健派が社会政策法案を成立させないのではないかという疑念から、連邦下院の民主党進歩派が超党派のインフラ法案への支持を留保したことが、その最たるものだった。バイデンの最初の2年間を描いた新刊『彼の人生における戦い(The Fight of His Life)』(クリス・ウィップル著)によると、ホワイトハウスは無様な姿になり、クレインは辞任を考えたということだ。その代わりに、彼はもう一度、古い人間関係に目を向けた。カンナは、クレインが「もう十分ではないか」と言い、自分に助けを求めてきたと述べた。

カンナもそう思った。私は、『ロン、私は、テレビ番組のフェイス・ザ・ネイションに出るつもりだ。私は進歩主義議連の主張から外れて、インフラ法案に賛成投票すると言うつもりだ。バイデンは、より多くのリベラル派に法案を支持するよう懇願し、その結果、2021年11月にホワイトハウス南庭で行われた式典で法案に署名した。その後、バイデン政権の野望を脅かすような緊迫した交渉が続いた。2021年12月、ウェストヴァージニア州選出のジョー・マンチン連邦上院議員(民主党)が、「ビルド・バック・ベター」法案は予算希望が大きすぎるとして、この法案に難色を示した。マンチン議員とクレインは、ジーナ・ライモンド商務長官の手料理を囲み、最終的に合意に達した。結局、連邦議会は一連の主要法案を可決し、2022年8月には、気候変動対策だけでなく、薬価引き下げを目的としたインフレ抑制法案で最高潮に達した。ドニロンはその法案について、「それまで世界の多くがバイデンは失敗だったと主張しようとしていたのに、成功の感覚を伝えてくれた」と述べている。昨秋の中間選挙では、バイデンは共和党の大勝利の予測を裏切り、民主党は連邦上院で過半数を維持し、中間選挙で失った議席数はジョン・F・ケネディ大統領以降のどの民主党大統領時代よりも少なかった。

こうした業績があるにもかかわらず、バイデンの人気が低いのは何故か、と私はクレインに質問してみた。クレインは次のように答えた。「国民がリーダーに対して非常に厳しくなっている時代だと考えている。ジョー・バイデンの支持率が43%か、その少し上か下の範囲に入っている。G7の中で、イタリアの新首相を除けば、どのリーダーよりも高い支持率だ。人々は二極化しており、反対の人々は、あなたが良い仕事をしているとは決して言わないし、真ん中の人々は、“えーと”と言う方が簡単だ。政治の成功の尺度は中間選挙の結果だ」。

クレインが大統領首席補佐官の仕事で学んだことは、「粘り強く、慌てない」ことだと述べている。クレインが担当した政権の中で、最初の2年間に閣僚が1人も辞めなかったのは、この政権が初めてだということだ。この日、政権の当面の問題は、バイデンの自宅と元事務所で機密文書が見つかった理由を調査する特別検察官であった。クレインをはじめとする補佐官たちは、発見から9週間以上、この文書について何も語らなかったが、その後、その沈黙は司法省の捜査の邪魔にならないようにするためだったと弁明している。この件に関して、何か違うことをしていたらどうだっただろうかと私が質問すると、クレインは「いや、私たちの弁護士、法務ティームが非常に責任を持って対処してくれたと思っている」と答えた。とはいえ、政権が直面しなければならない政治的な問題であることに変わりはない。

今後の2年間、バイデン政権の焦点は、署名済みの法案の実施に移る。連邦下院を共和党が支配し、バイデンは再選を目指す中で、新たな法案成立の見込みは大変に小さくなりつつある。クレインの後任には、オバマ政権で「HealthCare.gov」などの失敗していた政府プロジェクトに取り組み、「ミスター修理人」と呼ばれたジェフ・ザイエンツが就任する予定だ。ザイエンツは以前、教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう。

バイデンの次の2年間に立ちはだかるより大きな不安は、彼の年齢に関するものだ。先週発表された世論調査では、民主党と民主党寄りの無党派層は、バイデンが再出馬すべきかどうかに関して意見が真っ二つに割れている。しかし、クレインは、政府での仕事が長くなればなるほど、「経験が重要だ」と考えるようになったという。多くの人がバイデンは若手に道を譲るべきだと考えていることも知っている。「その年齢には、多くの経験が伴う。2022年2月には、ウラジミール・プーティンはウクライナを侵略する意図は持ってはいないと言っていた世界の指導者がたくさんいた。そうした中で、バイデンは「彼(プーティン)はウクライナに侵攻するつもりだ、私たちは備える必要がある、同盟を組み立てる必要がある」などと言っていた。これは、彼が時々言葉を間違えるかどうか、原稿を読む時に時々目を細めるかどうかよりも重要な洞察である。

更に言えば、クレインは、「ドナルド・トランプが2024年の共和党の大統領選挙候補者になると信じるだけの理由がある。ドナルド・トランプに勝ったのは1人しかいない、その名はジョー・バイデンだ」と述べた。そして、バイデンの立候補に疑問を持つ人々に対しては、「ジョー・バイデン以外に誰がドナルド・トランプに勝てるのか、ちゃんとした答えを出した方がいい」と述べた。

※エヴァン・オスノス:『ニューヨーカー』誌スタッフライター。最新刊『荒野:アメリカの怒りの進行』がある。

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ホワイトハウスは史上初の女性大統領首席補佐官を登用する機会を失う(White House Misses Opportunity For First Woman Chief Of Staff

エリン・スペンサー・サイラム筆

2023年2月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/erinspencer1/2023/02/08/white-house-misses-opportunity-for-first-woman-chief-of-staff/?sh=4f27faf142c5

任期半ばを迎えたジョー・バイデン大統領は、今週の一般教書演説で、これまでの政権の成果について強調し、更に重要なこととして、今後の展望について演説を行った。木曜日からは、この公約を実現するために、新しい大統領首席補佐官を登用する予定だ。

新型コロナウイルス感染拡大対策の責任者だったジェフ・ザイエンツ(Jeff Zients)がロン・クレインの職場だった場所に移り、ウエストウィングの運営責任が再び1人の男性に委ねられることになる。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官という役職は、1946年に正式に創設されて以来、アメリカ政治の中心的な役割を担ってきた。その間に30人の大統領首席補佐官が誕生している。その中には「ジョン」が4人、「ジャック」が2人、「ドナルド」が2人いるが、女性は1人もいない。

政界関係者の間では、大統領首席補佐官の選択は極めて重要なものだと考えられている。大統領にとって最も重要な人事の決定であると考える人もいる。職務の詳細は政権によって異なるが、任命された大統領首席補佐官は大統領の右腕、門番、代理人、そして重要な政策決定過程の監督者として機能する。行政府の中で、ウエストウィングの動向を把握し、大統領に接近することができるのは、間違いなくこの人しかいない。結局のところ、大統領首席補佐官は選挙で選ばれたのではないが大きな力を持ち、誰がその力を持つかによって、ホワイトハウスで優先される課題が決まることが多い。

バイデン政権は「アメリカらしい」ホワイトハウスの重要性を何度も指摘し、そのために初の女性副大統領、初のジェンダーのバランスの取れた内閣、初のホワイトハウス・ジェンダー政策評議会を導入してきた。しかし、アメリカ国内の女性の収入が男性に比べて低く、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に関する法律が全米で急速に変化する中、バイデン政権は大統領首席補佐官に女性を指名しなかった。

このポストに就いた女性はいないが、そのすぐ下の役職である実務担当の次席補佐官には、ごくわずかながら女性が就いてきた。このポストは主に舞台裏で活動するものだが、女性が副官を務めることによる直接的な影響は、よく知られている。

アリッサ・マストロモナコがバラク・オバマ政権の大統領次席補佐官だった際、ホワイトハウスの女性たちは「増幅」作戦を展開した。ある女性が会議で発言すると、別の女性がその発言を繰り返し、誰が最初に発言したかに言及して、その発言が確実に伝わり、正当な評価がなされるようにした。この作戦はすぐに評判となり、ウエストウィングの文化を超えて、アメリカ全土の会議へと広がっていった。

マストロモナコは、史上最年少の女性次席補佐官であり、ウエストウィングの女性用トイレに史上初めて生理用品処理箱を設置させたことでも有名である。「もし、もっと多くの女性を政治に参加させることを真剣に考えるなら、ウエストウィングには基本的な快適さが必要だ」と、マストロモナコは『ワシントニアン』誌に寄稿している。彼女は「私の提案に異論はなかったが、それまで誰も思いつかなかったようだ」と述べている。

マストロモナコの在任中は、複数の首席補佐官が交代で就任し、当時のオバマ大統領が、「政権がいかに女性登用に積極的であるかという話題提供のために」定期的に公の場に出ていたことを考えると、一見論理的に見える決断をなぜしなかったのかという疑問もある。

バイデン率いるホワイトハウスは、大統領首席補佐官のポジションに次席補佐官ポストにいる女性を選ぶこともできたはずだ。現在2人いる運営担当次席補佐官の1人であるジェン・オマリー・ディロンは、バイデンの選挙ティームを率いた経験があり、民主党の大統領選挙を成功させた最初の女性として歴史に名を残している。推測されるリストには、更に首席補佐官の女性候補として、大統領上級顧問のアニタ・ダンやホワイトハウスの国内政策補佐官であるスーザン・ライスの名前も挙がっていた。

しかし、結局のところ、ホワイトハウスの最高幹部は男性の手に渡り、大統領、最高裁長官、統合参謀本部議長など、連邦政府で女性が就任したことのないトップ職のリストにそのまま残ることになった。

エリン・スペンサー:ニューイングランド州を本拠とする作家。ジェンダー、政治、文化の国内議論に貢献している。2018年からフォーブス誌の寄稿者を務め、政治家、企業幹部、そして宇宙飛行士にもインタヴューを行っている。ツイッターアカウント:@erinspencer93

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 アメリカの歴代政権は中間選挙の後に人事異動を行うことが通例となっています。ドナルド・トランプ大統領も例外ではなく、ジェフ・セッションズ司法長官を解任し、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官であったミラ・リカーデルを異動させる決定を行いました。

 

 また、トランプ大統領はジョン・ケリー大統領首席補佐官が年末で退任すると正式に発表しました。「2020年まではその職にとどまる」とホワイトハウスも発表していましたが、交代ということになりました。これによって、カースティン・ニールセン国土安全保障長官の交代も近いのではないかと言われています。ニールセンはケリーの側近であり、その後押しで国土安全保障長官に就任したので、ケリーがいなくなれば後ろ盾がいなくなるということになります。

 

 ジョン・ケリーの後任には、現在、マイク・ペンス副大統領の首席補佐官を務めているニック・エイアーズが就任すると噂されています。

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ニック・エイアーズとトランプ大統領
 

ニック・エイアーズはジョージア州を中心に活動してきた人物です。2003年から2011年までジョージア州知事を務め、現在はトランプ政権で農務長官を務めているソニー・パーデューの州知事選挙の責任者を務めました。エイアーズの妻はパーデューの親族であり、エイアーズはジョージア州知事選挙出馬に興味を持っているのではないかと報じられたこともあります。

 

2007年から2010年にかけては、共和党所属州知事会の事務局長を務めることで、中央政界への足掛かりを掴みました。そして、2010年から2011年にかけて共和党全国委員会で委員長を務めたラインス・プリーバス(トランプ政権で最初に大統領首席補佐官を務めた)を補佐しました。この時は、エイアーズも委員長候補として名前が挙がりましたが、それを断って、補佐役に回ったということです。20代で共和党全国委員会委員長の候補として名前が出るというのは、相当な力量がある人物ということになります。その後はコンサルタントに転じました。2011年の米大統領選挙ではティム・ポーレンティー陣営の幹部を務め、それ以降も各州の知事選挙で助言を行いました。

 

 2016年に当時インディアナ州知事を務めていたマイク・ペンスの再選のために選挙陣営に参加し、そこからペンスとの関係が出来ました。そして、2016年の大統領選挙では、ペンスが副大統領候補に選ばれることに尽力しました。そして、2017年1月からはペンス副大統領の首席補佐官を務めています。

 

 エイアーズは、36歳の若さで、大統領首席補佐官の候補者として名前が挙がるほどの人物です。20代で州知事選挙のスタッフから政治の世界に入り、中央政界での手掛かりを掴み、インディアナ州知事だったマイク・ペンスを副大統領に押し上げた手腕を持っています。

 

 NBCが報じるところによると、エイアーズと妻は6歳になる三つ子を育てているのだそうですが、ジョージア州に帰りたいと考えており、トランプ大統領からの首席補佐官就任に難色を示しているとも言われています。しかし、エイアーズにとっては大統領首席補佐官に就任し、再選に貢献するということになれば、これ以上の箔はなく、その後はジョージア州知事でも連邦議員でも、転身の成功可能性は高まることになるでしょう。

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マイク・ペンスと家族の前で宣誓するエイアーズ
 

 エイアーズが大統領首席補佐官に就任ということになると、マイク・ペンス副大統領の影響力が大きくなることも考えられます。しかし、トランプの周囲には娘であるイヴァンカと義理の息子ジャレッド・クシュナーがおり、この2人との関係が悪くなれば、エイアーズが切られるということになり、最悪の場合には、ペンスが途中で交代ということにすら発展しかねません。ですから、エイアーズとしては、大統領選挙の再選のために自分は首席補佐官になると割り切って、他のことにはあまり首を突っ込まないという態度を取るようになるかもしれません。

 

 民主党は中間選挙で連邦下院では過半数を奪還しましたが、選挙人制度である大統領選挙でこのような逆転が出来るのかどうか、今のままではかなり厳しいということになるでしょう。民主党では大統領選挙に向けて多くの名前が出ては消えてという現状で、有力な候補者が出て来ていません。そうした中で、再選に向けて動き出せるということは、やはり現職にとっては強みということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

ジョン・ケリーは今年末までにホワイトハウスを離れる(John Kelly to leave White House at year's end

 

ジョーダン・ファビアン、タル・アクセルロッド筆

2018年12月8日

『ザ・ヒル』誌

 

トランプ大統領は土曜日、ジョン・ケリー大統領首席補佐官が年末で退任すると発表した。11月の中間選挙での共和党の敗北以降、最新のそして最も高位の人事異動となる。

 

ケリーは2017年7月、混乱していたホワイトハウス内部に秩序を確立するためにトランプ大統領から指名を受けた。しかし、両社の関係は徐々に悪化していった。退役海兵隊大将であるケリーが大統領の行動を制限しようとすることに、トランプ大統領が反発するようになった。

 

土曜日、トランプ大統領はホワイトハウスの記者団に対して、「1日か2日か」の間に、代理という形でケリーの後任を選ぶことになるだろうと述べた。

 

トランプ大統領はフィラデルフィアで行われる陸軍士官学校対海軍兵学校のアメリカンフットボールの試合に向かう前に、ホワイトハウスの南庭で記者団に対して次のように語った。「ジョン・ケリーは職を離れることになる。引退、いや、引退という言葉を使えるのかどうか分からないな。それはともかく、彼は偉大な人物だ。ジョン・ケリーは今年いっぱいで退任することになる」。

 

加えて、トランプは「彼の奉仕と献身に大変感謝している」とも述べた。

 

ペンス副大統領の首席補佐官を務める共和党の戦略専門家であるニック・エイアーズは、トランプの最側近としてケリーの後任として選ばれる最有力候補だと考えられている。

 

エイアーズは36歳、政治に関する豊富な経験を有している。トランプ大統領に近い人々は2020年の米大統領選挙で再選に向けて動き始めねばならないと考えている。この時期にエイアーズの起用は当然だということになる。ケリーはトランプ政権入りするまでは、約40年にわたり、海兵隊で勤務していただけで、政治に関わる仕事をやったことはなかった。

 

しかし、エイアーズはトランプの周辺人物の中でも毀誉褒貶の多い人物であり、大統領の側近の中にはエイアーズの起用に抵抗している人たちもいる。

 

人事異動はトランプ大統領にとって重要な時期に行われる。トランプ大統領は来年には連邦下院で過半数を握っている民主党と妥協しなければならず、ロシアに関する捜査も更に進むという現実に直面している。

 

トランプ大統領は金曜日、元司法長官のウィリアム・バーを司法省の支配権を再び確立するために起用すると発表した。バーの司法長官就任が連邦議会で承認されれば、バーは司法長官として、ロバート・ムラー特別検察官の捜査を指揮監督することになる。

 

歴代の大統領は中間選挙後に政権内の人事異動を行うことを伝統としてきた。しかし、今回の人事異動はトランプによるドラマの一部という色合いが強いものとなっている。

 

トランプ大統領は中間選挙の翌日にツイッターを通じてジェフ・セッションズ司法長官の解任を発表した。そして、それから数週間を経てバーの起用を発表した。中間選挙の前日、ホワイトハウスでの記者会見で、トランプ大統領はセッションズとケリーに対して信頼していると言及することを拒否した。

 

トランプ大統領はケリーについて質問された際に次のように答えた。「私に何も大きな秘密はない。これまで多くの政権が中間選挙後に人事異動を行った。多くの点において、私は自分の政権と内閣についてとても満足していると言いたい」。

 

ケリーが退任するのかどうかについて重ねて質問され、トランプ大統領は、ケリーの退任については「聞いていない」としながらも、「人々は退任するものだ」と発言した。

 

トランプ大統領は更に「首席補産官の仕事はとても消耗する仕事だ。仕事を始める時には若くても、2年も続ければ、年を取ってしまって退任するということになる」と述べた。

 

ケリーが退任するということになり、人々の関心は、カースティン・ニールセン国土安全保障長官が政権高位の人物で次に退任することになるのではないかということに集まる。ニールセンはケリーに近い人物で、トランプ大統領はニールセンの移民関係の法律の執行状況を批判している。

 

セッションズの解任後、ケリー以外にこれほど長く退任が噂された人物はいなかった。

 

ケリーの退任は間近だとする報道が相次ぎ、ホワイトハウスは今年7月、ケリーは2020年の大統領選挙まで大統領首席補佐官の職にとどまると発表していた。

 

しかし、ホワイトハウスによる発表がなされても、ケリーが首席補佐官を退任するという噂は沈静化することはなかった。

 

金曜日、複数のメディアは、ケリーは数日のうちに辞任を発表すると報じた。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ケリーは月曜日に上級スタッフに辞任を伝える計画だと報じた。

 

しかし、トランプ大統領は土曜日にホワイトハウスの南庭で記者団に対しての発言の中で、ケリーの退任を認めた。

 

この発表は金曜日の夜にあらかじめ決まっていた、ホワイトハウスでのケリーとトランプ大統領、大統領の側近たちとの夕食会の後でなされた。

 

ケリーとトランプ大統領との関係は、トランプ大統領が首席補佐官の希望を無視して自由に行動すると主張したことで、悪化した。トランプ大統領は友人や支援者に記録に残らない形で電話をし、2016年の大統領選挙で陣営のスタッフだった人物たちのホワイトハウス訪問を受け入れるなど自由な行動を行った。

 

複数のメディアが報じているように、ケリー大統領首席補佐官の立場は徐々に弱くなっていっていた。複数のメディアは、ケリーが陰でトランプを嘲笑し、トランプの家族と政権幹部や上級の補佐官たちと衝突していると報じてきた。

 

ジャーナリストであるボブ・ウッドワードは著作『恐怖の男』の中で、ケリーがトランプ大統領を「情緒不安定」「愚か者」と呼び、ホワイトハウスを「狂った町」と形容していると書いている。ケリーはウッドワードの著作に書かれた、大統領を愚か者と呼んでいるということを否定した。

 

しかし、ケリーは大統領首席補佐官の職にとどまり続けた。これについて、各種メディアは、トランプは四つ星の海兵隊大将を解任することで批判が起きることを憂慮して、解任できないでいると報じた。

 

ケリーの洗練されたイメージが傷つき始めたのは2017年秋からだ。この時、民主党所属のフレデリカ・ウィルソン連邦下院議員(フロリダ州選出)は、トランプ大統領のある亡くなった兵士の家族に対するコメントについて批判を行ったが、これに対して、ケリーが誤解に基づいて批判を行ったことでケリーは批判を受けた。

 

ケリーは、今年2月に更なる議論に巻き込まれた。ケリーの側近で、ホワイトハウスのスタッフだったロブ・ポーターの家庭内の暴力についてのケリーの対処について批判が起きた。

 

先月、ジョン・ケリーは国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンと移民をめぐり、怒鳴り合いになったと報じられた。これについてホワイトハウスは否定しなかった。ケリーは、大統領の無スト義理の息子であり、上級補佐官を務めるイヴァンカ・トランプとジャレッド・クシュナーとの間で摩擦を起こしていると長い間噂されてきた。

 

トランプの補佐官を務めたオマロサ・マニゴウルド・ニューマンとアンソニー・スカラムチは、大統領首席補佐官であるケリーを厳しく批判している、2人は、ケリーがスタッフの士気を下げ、スタッフに対して虐めをしていると批判している。ホワイトハウスは2人の主張を否定している。

 

次期大統領首席補佐官はホワイトハウスにおけるトランプのティームの再構築を行うという厳しい仕事に直面することになる。この仕事は、ホワイトハウスから離れる人数が多くなるという事実によって、更に難しいものとなる。

 

トランプは金曜日、フォックス・ニュースの司会者を務め、現在は国務省の首席報道官を務めるヘザー・ナウアートをニッキー・ヘイリーの後任の国連大使に起用すると発表した。

 

しかし、上級、中級、下級の政権内のポジションの多くはまだ埋まっていない。ビル・スティーヴン、ジャスティン・クラークの両政治顧問は先週、トランプ大統領の再選に向けて、ホワイトハウスを離れた。年末に向けてさらにホワイトは数はなれる人数は多くなると見込まれている。

 

トランプは歴代のホワイトハウスでは人事異動は普通のこととして行われてきたと発言しているが、歴代の各政権に比較して、人事異動の割合は記録的に高い数字となっている。

 

ブルッキングス研究所の研究員キャサリン・ダン・テンパスが調査した数字によると、ホワイトハウスの上級補佐官の62%は既に辞任し、政権内の別の仕事に就くか、政権から離れるかした、ということだ。この数字にはケリーの退任は含まれていない。

 

トランプ大統領は以前、彼の前任者であるバラク・オバマ大統領(当時)を、首席補佐官の交代が多いことで批判していた。

 

2012年1月、トランプはツイッター上で次のように書いている。「大統領に就任して3年も経っていない間に3人目の首席補佐官。バラク・オバマ大統領が彼の公約を実行できないことの理由の一つとして、首席補佐官の頻繁な交代を挙げることが出来る」。

 

ケリーの後任はトランプ大統領にとって、大統領就任3年も経たないで3人目の首席補佐官となる。ケリーは、昨年ラインス・プリーバスの後任となった。プリーバスは大統領首席補佐官として6カ月の間、ホワイトハウスの混乱は収まらなかった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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