古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:太子党

 古村治彦です。

 本日、第20回中国共産党大会が開会される。今回の党大会は、習近平国家主席(中国共産党中央委員会総書記・中国国家中央軍事委員会主席・中国共産党中央軍事委員会主席)が3期目も続投し、中国共産党中央委員会、中国共産党中央政治局、中国共産党駐政治局常務委員会、国務院、国家中央軍事委員会(党中央軍事委員会と顔ぶれが一緒)などの人事が新たに決まるということで注目される。

 このブログでも既にご紹介しているように、習近平政権の3期目、更にその先の4期目も合わせた、5年間もしくは10年間は、「世界の大動乱に備えた準戦時体制」であり、この世界史の転換点とも言える時期を乗り切り、2032年からは、1840年から42年に起きた、中国にとっての屈辱のアヘン戦争200周年で、中国が「中華王国(Middle Kingdom)」に返り咲くという目標を達成する仕上げの時期ということになる。

 これからの10年間の準戦時体制では、航空・宇宙関係出身者の政治への登用が進む。更に、「中国史上最も恵まれた世代」と呼ばれる「第7世代」、1970年代生まれが指導部に多数登用されることにもなる。鄧小平が決めて、江沢民時代から始まった10年おきに同年代で構成される指導部交代という慣例が、習近平によって覆されることになるが、これは、第二次世界大戦中にアメリカのフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が、2選までという慣例を覆し、4選を果たしたことと同様だ。ウクライナ戦争が深刻化し、世界大戦になる可能性が高まっている中で、新しい指導部では乗り切れないという判断もあっただろう。本来であれば、最高指導者を出すはずだった第6世代(1960年代生まれ)がパッとしないということもあったかもしれない。

 不安な点も指摘されている。指導部内の派閥争いだ。中国国内政治には、太子党(有力政治家たちの子女)、中国共産主義青年団派(若手エリート党員の組織、共青団、団派とも呼ばれる)、上海閥(江沢民とその子分たちで構成される派閥)などの派閥がある。習近平は太子党に分類される。上海閥でもあったが、権力を掌握した後に上海閥系を追い出した。現在の李克強国務院総理は共青団系だ。胡錦涛前国家主席は共青団系だ。25名で構成される中国共産党中央政治局、その内の7名で構成される中国共産党中央政治局常務委員会(チャイナ・セヴンと呼ばれる)の人事での比率がどのようになるかが注目される。

 中国はこれからアメリカを追い抜き、世界の覇権国となる。その時期は2040年代ということになる。これからの20年はそのための最後の基礎工事、足場固めということになる。第20回中国共産党大会はその点で大変重要な政治的意味を持つことになる。

(貼り付けはじめ)

中国共産党第20回大会と中国におけるエリート政治の将来:ウィリー・ウー=ラップ・ラムとのインタヴュー(The 20th Party Congress and the Future of Elite Politics in China: An Interview with Willy Wo-Lap Lam

ウィリー・ウー=ラップ・ラム筆

2022年9月20日

『チャイナ・ブリーフ』誌

https://jamestown.org/program/the-20th-party-congress-and-the-future-of-elite-politics-in-china-an-interview-with-willy-wo-lap-lam/

●質問:中国の習近平国家主席は、中国が権威主義的な諸大国の枢軸と、アメリカおよびその同盟諸国(主に自由主義的民主制自体国家の連合)との間のより広い闘争に巻き込まれていると考えていることが広く認識されている。習近平が前任者以上にアメリカとの地政学的な競合を受け入れている理由は何だろうか? 第20回党大会後も習近平は同じ道のりを歩むと考えるか?

■ラム:習近平の最も有名なスローガンである「中国の夢(the Chinese Dream)」の実現と「中華民族の偉大な復興(great renaissance of the Chinese nation)」は、「東洋が台頭し、西洋が衰退する(the East is rising while the West is declining)」という確信に裏打ちされている。この考え方は、かつて改革の最高責任者である鄧小平が「アメリカと仲の良い国は全部栄えている(countries that get on well with the U.S. have all prospered)」と述べた倫理観とは大きく異なる(Guancha.cn:2019年6月10日;フェニックス・テレビ:2015年12月25日)。しかし、中華人民共和国とアメリカが主導する各国の「民主」同盟との間の経済的、技術的、地政学的な争いが大きな原因で、一方では中国、他方ではアメリカとヨーロッパ・アジアの同盟諸国の間で正に新冷戦(new cold war)が勃発している(Project Syndicate:2022年6月17日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙:2022年4月20日)。

習近平政権がウラジミール・プーティン率いるロシアを「無制限(ノーリミット、no limits)」で支持し、北京が台湾海峡、日本海、南シナ海で強硬なパワーを発揮していることもあり、北京は世界の舞台で相対的に孤立している。中国はまた、輸出や投資誘致、技術分野に不可欠な重要部品へのアクセスなどにも厳しい制裁が課せられている。

これに対して習近平は、ロシアやパキスタン、カザフスタンなどの中央アジア諸国を含む上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)と共に、権威主義諸国家の枢軸(axis of authoritarian states)を形成し、アメリカ主導の同盟に対する中国の対抗能力を強化しようとしている(ザ・ディプロマット:2022年8月22日;Moderndiplomacy.eu:2022年7月30日)。この枢軸の潜在的なメンバーには、イラン、北朝鮮、ミャンマーも含まれる。9月15日にウズベキスタンでプーティン大統領と会談した際、習近平は「中国はロシアと共に大国の役割を担う努力をし、社会の混乱に揺れる世界に安定と前向きなエネルギーを注入する指導的な役割を果たすことを望んでいる」と述べた。プーティンはウクライナ問題で中国に「疑問と懸念(questions and concerns)」があることを認めたものの、モスクワと北京は「公正で民主的で多極化した世界(a just, democratic and multipolar world)」を形成するために協力すると述べた(『ザ・モスクワ・タイムズ』:9月15日;Globalnews.ca:9月15日September 15)。

第20回中国共産党大会の後、アメリカ主導のブロックと中国主導のブロックとの間の全面的な闘争が激化することが予想される。中国とアメリカは、両者の全面的な争いを存在を賭けたゼロサムゲームとみなしている。そして、対立関係に一定の安定を与えていた共生的な経済・気候関連協力が縮小していることから、関係改善の見込みは低い(Cn.nytimes:9月14日;『フォーリン・ポリシー』:6月27日誌)。

●質問:中国は現在、新型コロナウイルスの脅威が続き、経済が低迷しているという、いくつかの厳しい課題に直面している。これらの問題は、習近平が3期目の任期中に一部の政策領域で方針転換を余儀なくされる可能性があるのだろうか?

中国共産党が投票所での正統性を欠いていることを考えれば、経済成長と国民全体の支持、少なくとも納得が中国共産党の正統性の重要な要素である。いわゆる「紅五毛(hongwumaored 50 cents)」(ソーシャルメディア上で党を褒め称えてお金をもらうネットユーザーの通称)を除けば、相当数の国民が、新型コロナウイルス感染拡大による検疫、失業率の上昇、消費財への支出減、不動産・銀行危機などの問題に苛立っている(VOAChinese:9月15日;Cn.wsj.com:9月14日)。第20回中国共産党大会後、習近平は李克強首相をはじめとする国務院テクノクラートが採用した相当数の措置、特に積極的に成長を促進するための経済への流動性注入を継続し、「世界の工場(world’s factory)」から撤退しないよう西側諸国やアジア諸国の投資家たちを説得するとみられる(チャイナ・ブリーフ:9月9日)。

しかし、国務院(state council)は、政府各レベルと国有企業、民間コングロマリットが抱える膨大な債務の原因であるインフラストラクチャ整備支出を強化するという数十年来の方式を、望ましい改善策として挙げている(Gov.cn:7月6日;新華社通信:5月6日)。習近平は、技術革新などの重点分野において、党国家当局が資源を「集中的かつ重点的に」使用する「国体制、juguotizhiwhole country systemic approach)を好むと宣言した(人民日報:9月7日;Qstheory.cn:6月10日)。また、「内部循環(internal circulation)」の重要性についても言及している。これは、中国の広大な国内市場に経済成長を依存するという半閉鎖的な(semi-autarkist)政策の略語である。こうした動きは、鄧小平の市場開放政策への回帰を予感させない。

習近平国家主席や李克強い首相を含む最高指導者たちは、北京が新型コロナウイルスの患者数をコントロールし、感染拡大による死亡を防ぐことができるのは、中国と西洋の統治システムの優劣を示すものであると主張している。また、幹部たちは、徹底的かつ効率的な検疫(quarantine)作業を行うことで、最高指導者である習近平への忠誠心を示すよう奨励されている(Chinesenewsgroup.com:9月7日;Radio French International:6月28日)。

このような強硬な封鎖措置は、経済を停滞させ、一般市民を遠ざけるだけでなく、中国製ワクチンの有効性や、検査、ワクチン製造、検疫の仕組み全体に関わる大規模な腐敗についても疑問を呈した。新型コロナウイルス感染拡大に関連する措置が経済に正面から打撃を与えたため、第20回中国共産党大会後に構成される指導部は検疫措置の範囲と実施に現実的な変更を加えるかもしれない。しかし、「動的なゼロ新型コロナウイルス政策(dynamic zero-Covid policy)」の主要な要素は2023年まで十分に維持される可能性がある。

●質問:中国共産党中央政治局(CCP Politburo)は9月9日、第20回中国共産党大会で採択される予定の中国共産党綱領(CCP Constitution)の改正について検討会を開催した。中国国家憲法(PRC Constitution)と中国共産党綱領は、1980年代初頭から数回にわたって改正されている。今回の改正は何を目指しているのだろうか?

■ラム:中国共産党または中国共産党憲法は、中国または中国国家憲法と区別するために、既に2017年の第19回中国共産党大会で改正され、「新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想(Xi Jinping Thought on Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)」が党の指針として明記された。今回の改正案では、最高綱領に「2つの確立两个确立、liang ge quelitwo establishes)原則を挿入し、習近平の地位を更に高める可能性がある。習近平同志を党中央の核心(core of the dangzhongyang [central party authorities])、全党の核心(core of the whole party)とし、習近平思想を新時代の中国の特色ある社会主義(Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)に優先させる」(中国日報:9月10日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:9月10日)のだ。また、中国共産党総書記と中国共産党中央軍事委員会主席の任期を廃止するために、中国共産党憲章が改正されるかもしれない(Radio Free Asia:9月11日;VOAChinese:9月10日)。現在の中国共産党綱領では、この2つのトップ地位の在任期間について明確な規定がない。しかし、2018年に国家憲法が改正され、これまで各5年の2期までとされていた国家主席のポストの任期制限が廃止された。

●質問:今回の第20回中国共産党大会は、ポスト毛沢東時代の他の大会とどのように似ていて、どのように違うのか? サプライズはあるのだろうか?

権力者はサプライズを嫌い、そのような出来事が事前に周到に準備されていることを確認するために、あらゆる手段を講じる。だからこそ、最高指導者である習近平は、中国政治に「ブラックスワン(black swans)」が出現しないよう繰り返し警告している(Beijing Daily:8月20日;China.com:5月9日)。21世紀の毛沢東と言われる習近平は、人工知能(artificial intelligenceAI)を活用した大規模な監視体制に確固たる自信を持っており、銀行や不動産のデフォルトや関連スキャンダルをめぐっていくつかの地方で勃発したデモにも動じていない(チャイナ・ブリーフ:7月18日)。習近平のエネルギーのほとんどは、第20回中国共産党大会に向けた人事の最終調整に費やされている。それは、自派の支配を強固にすると同時に、習近平の明らかな毛沢東回帰と反米・反西側の姿勢に心を痛めている党の長老や反対派の多くを宥めるだけの余地を生み出すためだ(Deutsche Welle Chinese:9月9日;Asia Society:8月4日)。

改革開放時代(Era of Reform and Opening Up)においても、党指導部は約2300人の全人代代議員と新任の中央委員会委員の意向を最終的に掌握してきたが、後者は5年に1度の大会を利用して、公共政策について時に異質な意見を述べることがある。今回の党大会は、1人の人間の知恵と功績を称えることが中心で、経済の活性化、新型コロナウイルス感染拡大への対応、対米関係の改善など、新しいアイディアが出てくるかどうかは大いに疑問だ。

●質問:十年前、中国の指導者たちの地位は「同輩中の首席primus inter pares)」、つまり 「first among equals」と表現されることがあった。また、習近平時代におけるエリート政治や派閥抗争をどのように考えるべきか?

■ラム:鄧小平は、「改革時代」において、1人の権力者に対する、個人崇拝(personality cults)や過度な権力集中(over-concentration of powers)を防ぐために、数々の重要な制度改革を断行した。そのひとつが、単独の人物による支配から集団指導体制(collective leadership)への移行であり、政治局常務委員会(Politburo Standing CommitteePBSC)の各メンバーが権力を大きく共有し、総書記は「同輩中の首席(first among equals)」に過ぎないというものであった。中国の幹部はこのモデルを「九龍(責任を分担して、nine dragons)河を飼いならす(九治水、Jiulong zhishui)」と称したHK01.com:2019年8月11日;Yazhou Zhoukan:2019年7月15日)。しかし、習近平は2012年末の政権獲得当初から、全ての意思決定権を自らの手に集中させることに成功した。それでも、李克強首相が率いる共青団派(Communist Youth League Faction)と江沢民元主席が率いていた上海派(Shanghai Faction)の2つの強力な党派の残党は、政治局や政治局常務委員会に少数派として残っている(チャイナ・ブリーフ:2021年10月14日)。第20回中国共産党大会以降、思想・人事から財政・外交に至るまで、習近平と習近平派の権力支配が強まる(チャイナ・ブリーフ:8月12日)。これは、「偉大なる舵とり(Great Helmsman 訳者註:毛沢東の別称)」がほぼ絶対的な権力を握っていた1960年代から70年代の毛沢東時代に一部回帰することになる。

●質問:中国共産党内では習近平の後継者争いが起きているのか? もし、明日、習近平が突然死んだらどうだろうか? 体制は大混乱に陥るだろうか?

■ラム:2032年の第22回中国共産党大会まで習近平が統治するとすれば、後継者を探すのに10年間の猶予がある。この後継者問題は、最高指導者の突然の失脚という不測の事態に中国共産党が対処できるかどうかということと同様に、公式メディアや検閲の厳しいソーシャルメディアにとってタブーである。長年にわたる「七上八下(68歳定年、67歳以下はもう1期、retirement at 68, possibly one more term for cadres aged 67 or under)の規定により、1960年代生まれの第6世代の新星たちは、第20回中国共産党大会または2027年の第21回党大会で中国共産党中央政治局常務委員となるが、それは一時的な措置に過ぎないかもしれない(チャイナ・ブリーフ:2021年11月12日)。その有力候補は、習近平の愛弟子で最高顧問の丁学祥(Ding Xuexiang、1962年生まれ)と重慶市党委書記の陳敏爾(Chen Min’er、1960年生まれ)である。しかし、第22回党大会で丁は70歳、陳は72歳になる(Chinafocus.com:4月7日;Cn.nytimes214日)。年齢条件を満たせるのは第7世代のメンバーか1970年代生まれの幹部だけであるため、習近平の後継者候補はまだ政治の舞台で強いイメージを打ち出していない(チャイナ・ブリーフ:2019年4月9日)。これらの幹部はいずれも次官以上の地位に到達してはいない。更に、新星たちが、国家的に重要な業績を上げ、最高幹部への昇進を勝ち取るまで数年しかない(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:8月29日;Thinkchina.sg:2021年12月6日)。

●質問:中国共産党総書記には国民による投票がないが、習近平が「終身指導者(leader for life)」として一般人や下級党員、仲間であるエリートたちに訴えていることは何か? 基本的に、習近平の「切り札(stump speech)」は何か?

■ラム:多くの中国人は、1978年末に鄧小平が「改革の時代(Era for Reform)」を始めてから30から40年の間に生まれたか、あるいは働き始めた。習近平は、「思想の解放(thought liberation)」や集団指導(collective leadership)から、民間企業の権限強化、西側資本の誘致に至るまで、鄧小平の教えのほとんどを覆した。中国共産党は国民の脱政治化(depoliticized)に成功し、多くの人々の関心とエネルギーを政治から純粋な経済的追求へと移行させた。しかし、習近平は反改革主義的な施策、とりわけ習近平自身の終身在職を含む個人崇拝(personality cults)の復活に対して、大多数の国民と幹部から真の支持を得たことはない。失業率の上昇と株式・不動産市場における中産階級の大きな損失は、習近平にとって、「中華民族の偉大な復興(the great renaissance of the Chinese nation)」などの聞こえが良いが空虚なスローガンの正当化を二重に難しくしている。台湾統一(reunification of Taiwan)や中国が新たな中央の王国(emergence of China as the new Middle Kingdom)となることを含む「中国の夢(Chinese dream)」は、習近平が「終身支配者(ruler for life)」になることを目指す根拠となっている(Indianexpress.com:2021年11月16日;Asia.nikkei.com:2021年10月21日)。しかし、中国とアメリカの経済力、技術力、軍事力の間には依然として強大な差があり、東洋が西洋に取って代わるとは限らない。この画期的な目標を達成できない習近平は、中国の「第2の毛沢東(Second Mao Zedong)」であるという主張の正統性を損なう恐れがある。

※ウィリー・ウー=ラップ・リン(Willy Wo-Lap Lam、林和立)博士:ジェイムズタウン財団上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』誌定期寄稿者。香港中文大学歴史学部・国際政治経済修士プログラム非常勤講師。6冊の中国に関する著作を持ち、代表作に『中国政治と習近平時代(Chinese Politics in the Era of Xi Jinping)』(2015年)がある。2020年に最新作『中国の将来のための戦い(The Fight for China’s Future)』(ルートレッジ・パブリッシング)が刊行された。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は珍しく中国政治に関する記事をご紹介する。今年秋に第20回中国共産党大会が開催される。そこで習近平国家主席の更なる任期延長が決定されると見られている。習近平は2012年に中国国家主席、中国共産党総書記、中国共産党中央軍事委員会主席に就任して以来、2期10年務めている。前任者の江沢民(1993-2003年)、胡錦涛(2003-2013年)はそれぞれ2期10年を務めて、最高指導者の地位を退いている。それに伴い、中国共産党中央政治局の人事も交代している。習近平は2期10年を超えてこれからも最高指導者の地位にとどまる(さらに2期10年で2032年まで)と見られている。これで、中国共産党指導者第6世代(1960年代生まれ)の出番がふさがれてしまい、後継者は第7世代(1970年代生まれで10年後は50代が多い)となる可能性がある

 習近平が「終身指導者」としての地位を確立しつつあるようだが、そのためには党内の派閥争いについて妥協しなければならないところもあるようだ。また、政策面でも譲歩するところもありそうだ。中国共産党内部の派閥としては共産主義青年団(共青団)系、太子党(党幹部の子女たち)系、上海閥などが知られている。習近平は太子党出身だ。中国共産党中央規律検査委員会(書記は2012年から2017年までは王岐山、2017年からは趙楽際)

を使って政敵たちを追い落としてきた。

 今回の記事で良く出てくる単語が党規律検査委員会(Commission for Discipline Inspection)と党政法委員会(Political and Legal Affairs Commission)である。党規律検査委員会は全党の規律の検査、党員が規律や規則、規範やルールを守っているかを調査し告発する機関である。簡単に言えば、汚職をしていないかを調査する機関である。中央規律検査委員会のトップである書記は中国共産党政治局常務委員(全員で7名しかいない)が務める。 

党政法委員会は情報、治安、司法、検察、公安などの部門を主管する組織である。簡単に言えば、警察から裁判所、検察、武装警察などを管轄する部門である。中央政法委員会書記は、現在は政治局委員(常務委員7名を含む25名いる)の郭声琨が務めている(2012年から)。それまでの書記だった羅幹(2002-2007年)、周永康(2007-2012年)は政治局常務委員だった。2012年に習近平体制が発足するまでは、政治局常務委員は9名だったが、習近平体制発足後は7名となった。それもあって中央政法委員会書記は政治局委員が務めることになった。

更に言えば、習近平は政敵たちを次々と打ち倒すために(反腐敗運動を大規模に展開するために)、親友の王岐山を中央規律検査委員会書記に据えた(2012-2017年)。現在は側近の趙楽際(2017年から)を据えている。王岐山は国家副主席に移動した(2017年から)。習近平と王岐山は若い時に一緒に下放(sent down)され、一緒のベッドで寝たという逸話が残っている。そうした2人の中であるが、現在は隙間風が吹いているということも言われているようだ。また、下の記事では、江蘇省政法委幹部たちが習近平に対する反逆を企てたという話も出ている。習近平体制も盤石、一枚岩という訳ではないようだ。そうした中で、人事と政策の両面で妥協や取引も行われるという見方も出ている。習近平がこれから10年更に中国の最高指導者として君臨するとなると、10年おきに若い世代に譲っていく方式(年功序列的とも言える)が崩れている。本来であれば中国指導者第6世代(1960年代生まれ)が登場すべきなのだが、早くから名前が出ていた割には人事面で冷遇されている。それはこの世代自体の能力や人望の問題もあるのだろう。彼らの中から国家主席を務める人物が出てこない可能性が高い。そうなると、10年後には一気に第7世代(1970年代生まれ)が最高指導層に入る可能性もある。これからのために大7世代の顔ぶれや動向を注視していく必要がある。

(貼り付けはじめ)

習近平はライヴァルと政治局の議席を分け合う代わりに、「終身指導者」になる可能性がある(Xi Jinping is Poised to Become “Leader for Life” in Exchange for Sharing Politburo Seats with Rivals

林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)筆

2022年5月27日

『チャイナ・ビリーフ』(ジェイムズタウン・ファウンデイション)

https://jamestown.org/program/xi-jinping-is-poised-to-become-leader-for-life-in-exchange-for-sharing-politburo-seats-with-rivals/

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習近平国家主席が李克強首相の前を歩く(ソース:中国共産党)

●導入(Introduction

習近平(Xi Jinping、1953年-、69歳)国家主席は、今秋の第20回党大会に向けて、自身の個人崇拝(personality cult)を劇的に高めている。その最新の兆候は、全国メディアが習近平に「袖(lingxiu袖)」の称号を与えたことである。「袖」は通常「指導者(leader)」と訳される。しかし、中国共産党の辞書では、習近平は「指導者」よりも尊敬され、壮大なヴァージョンである領袖となった。中国共産党の歴史上、「偉大なる舵取り(Great Helmsman)」毛沢東だけがこの高貴な称号を手にした。新華社、中国中央電視台(CCTV)などの主要メディアは、習近平の経歴、特に党と国への「重大な貢献」を強調する50本のヴィデオエピソードの放映を開始した。新華社によると、習近平は「国内外の情勢の全体像を描き、改革、発展、安定を打ち出し、党、国家、軍隊の運営における進歩に責任を負っている」(民報:5月23日、新華社:4月18日)と報じた。

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習近平

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李克強

2016年に既に「指導核心(leadership core)」という重要な称号を得た習近平への歯の浮くような聖人伝的言及(hagiographic references)については、香港、台湾、海外の中国人社会において、その真実を明らかにする動きを誘発したように見える。そのような動きは、陝西省出身の69歳の習近平は重病で、経済政策と外交政策の両方で李克強(Li Keqiang、1955年-、67歳)首相が率いる政敵の根強い反対に直面しているという報道になって表れている。ニューヨーク在住のチェン・ポーコンのような海外の有名な主要なオピニオンリーダーたち(KOLs)は、李首相と汪洋(Wang Yang、1955年-、67歳)中国人民政治協商会議(Chinese People’s Political Consultative Conference CPPCC)主席の市場振興政策が、習近平の主張する準毛沢東主義的な党による経済に対するほぼ絶対的な支配という見解に取って代わっていると断固として主張している(チェン・ポーコンのYoutube:5月18日、ラジオ・フランス・インターナショナル:5月12日)。習近平は党と国家のナンバーワンの地位を李に譲らざるを得なくなったとまで推測する者もいる(ラジオ・フリーアジア:5月18日、ヴォイス・オブ・アメリカ・チャイニーズ:3月27日)。

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汪洋

習近平のことを「領袖」と呼ぶようになったのは、昨年(2021年)4月、最高指導者が広西チワン族自治区に視察に行った時にまで遡る。広西チワン族自治区のメディアは習近平を「全党の核心、人民の領袖」と称え、「人民の領袖の感情は広西チワン族自治区に結びつけられ、彼の偉大な思いは広西チワン族自治区全体に輝いている」と地元紙は伝えた。広西チワン族自治区のメディアはまた、人民が「永遠に領袖を支持し、領袖を守り、領袖に従う」と報じた(南寧日報:4月28日、HK01.com:4月20日)。最近の会議で、広東省の幹部たちは、中国が豊かになりで強大になっているのは、「習近平総書記が個人の権限で(単独で)決定し、政策に最終指示を与えることで行使する力」(Rthk.hk:5月21日、Hk.finance.yahoo.com:5月21日)によると述べた。

従って、中国共産党総書記(General Secretary of the CCP)と中国共産党軍事委員会主席(Chairman of its Central Military Commission)を兼任する習主席が、今年後半の第20回党大会で少なくともあと1期5年の中国最高指導者としての任期を確保することはほぼ確実である。また、「終身指導核心・領袖(core and lingxiu [of the leadership] for life)」の地位が正式に認められ、2027年の第21回党大会で4期目が承認される可能性が高い。つまり、習近平は少なくとも2032年、保守的で毛沢東思想を奉じる指導者が79歳になるまで統治することになる。

●習近平の強権発動(Xi Plays a Strong Hand

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朱鎔基

習近平の権力掌握の継続は、朱鎔基(Zhu Rongji、1928年-、93歳)元首相ら党の長老たちから厳しい批判を受けている。あるいは来年3月まで政府首脳を務める李首相が習近平の権力を弱めようと画策しているのではないかとの見方が広がっている。しかし、習近平の権力継続は続きそうな気配である。5月25日にテレビで行われた数千人の国家・地方指導者との会見で、李首相は、3月と4月に特に顕著になった経済衰退の兆候を食い止めることが急務であることを改めて強調した。李は、習近平の指導力と習近平の「ゼロ・トレランス」新型コロナウイルス政策の重要性に敬意を表しつつ、「感染拡大の予防と制御をうまくやりながら、経済と社会の発展の任務を完了する」よう当局者に促した。李首相は、「私たちは国の全体的な状況をしっかりと把握し、『一つの目標だけに集中すること(focusing on only one goal打一、dandayi)』と『政策に厳格な統一性を持たせること(imposing rigid uniformity on policies、一刀切、yidaoqie)』は避けなければならない」と付け加えた。さらに李首相は、「生産を再開し、経済目標を達成するためには、物流やサプライチェーンの滞りを抑制する必要がある」と指摘した。習近平の「ゼロ新型コロナウイルス」政策が経済を疲弊させると広く批判される中、李首相は最高指導者の権威にさりげなく挑戦しているようにも見える(新華社:5月25日、連合日報:5月25日)。

しかしながら、実際には、毛沢東が派閥間の内輪もめについて語ったように、「政治権力は銃の銃身から育つ(political power grows out of the barrel of a gun)」のである。習近平は中国共産党中央政治局常務委員(Politburo Standing Committee PBSC))として唯一、中国人民解放軍、中国人民武装警察、そして一般警察、情報機関を掌握している。習近平の腹心の丁薛祥(Ding Xuexiang、1962年-、59歳)中国共産党中央弁公庁主任は、政治局員と党幹部のほとんどに運転手、秘書、警護を付けている。丁はまた、文官と軍人の両指導者に対する電話盗聴や公務外の活動を綿密に監視するなどの監視体制を敷いている(『ザ・ディプロマット』:2月1日、『サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』紙:2015年3月11日)。中国共産党中央弁公庁主任は5月16日、党の長老に対し、党中央指導部(最高指導者・習均平総書記)に対して「出鱈目な議論(妄議)」(妄wangyi)を言わないよう警告する通達を発した。また、元幹部が海外に渡航する際には、最近強化された出入国規制を尊重しなければならない。また、引退した幹部も現役幹部も、海外資産を処分し、貴重な外貨を国内に戻すよう求められている(ラジオ:フリーアジア:5月17日、新華社:5月15日)。

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丁薛祥

●ライヴァルたちとの交渉?(A Bargain with Rivals?

個人消費の低迷や製造業の不振など、習近平の「ゼロ・トレランス」新型コロナウイルス政策における妥協しない姿勢が経済を悪化させているため、最高指導者は経済政策と人事問題の両面で妥協することに同意したようだ(Caixin.com:5月25日、チャイナ・ブリーフ:5月5日)。国営中国新聞社が519日の論説記事で強調したように、「風向きが変わり、eプラットフォーム経済は次々と明るい兆しを示している」(国営中国新聞社:5月19日)。李首相は、習近平のようなイデオロギー的なこだわりを無視し、経済成長と雇用を維持することの重要性を繰り返し強調した。その結果、習近平はテクノロジー・コングロマリット各社に対する党の鉄壁の支配を堅持する方針を大幅に緩和せざるを得なくなった(チャイナ・ブリーフ:5月15日)。この政策転換は、習近平の重要なアドヴァイザーである政治局員兼副首相の劉鶴(Liu He)が最近行った、IT企業に対する規制は「市場化、合法化、国際化の原則に基づく」べきで、規制メカニズムは市場を害してはならないという比較的自由な発言に現れている(人民日報:3月16日、Gov.cn:3月16日)。

人事面では、習近平派閥のメンバーたちが困難に直面しているようである。李首相の後継者として習近平が推すとされる政治局員で上海市党委書記の李強(Li Qiang、1959年-、63歳)は、上海の長期封鎖の影響で政治的な命運が悪化している可能性が高い。その他、応勇(Ying Yong、1957年-、64歳)湖北省元党委書記、杭州と鄭州という主要都市の党委書記を務めた周建勇(Zhou Jianyong、1967年-、54歳)と徐立毅(Xu Liyi、1964年-、57歳)など習近平の側近たちが問題を起こしている(Cnstock.com:4月20日、 4/20、ラジオ・フリーアジア:3月30日)。

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李強

つまり、習近平は依然として他の政治局や大臣クラスの幹部の上に立っているが、第20回党大会で承認されるためには、人事という重要な分野で譲歩しなければならない。例えば、中国の事実上の最高統治機関である中国共産党駐大生政治局常務委員会の構成についてみる。党大会で確認される7人の常務委員会の構成の予想は以下の通りである。習近平総書記、丁薛祥中国共産党中央弁公庁主任、李強または陳敏爾(Chen Min’er、1960年-、61歳)重慶市党委書記のいずれかである。李首相が率いる中国共産主義青年団(Communist Youth League Faction CLYF)という対立する派閥が2議席を確保する見込みである。李首相は、農業担当の副首相で共青団の重鎮である胡春華(Hu Chunhua、1963年-、59歳)を後継者に推している。党規約では、副首相の経験があることが首相就任の重要な条件となっている。習近平は李首相の後継者として、現副首相、元副首相のいずれかを選任していない。第20回党大会の定年(68歳)を1年後に控えた李首相と汪洋中国人民政治協商会議主席のいずれかが中央政治局常務委員会に残る可能性はある。李首相が最高会議に留まる場合、全国人民代表大会(全人代、National People’s CongressNPC)主席に移る可能性は十分にある。この2カ月間、李首相がメディアで急に目立つようになったのは、習近平との駆け引きと見ることもできる。すなわち、胡春華副首相や汪洋政協会議主席など中国共青団の仲間を習近平が支援する見返りに、李は党大会での習近平の任期延長に反対しないということになる(ヴォイス・オブ・アメリカ:3月22日、Heritage.org,:3月7日、ザ・ディプロマット:2020年8月4日)。

政治局常務委員会で最年少の委員である趙楽際(Zhao Leji、1957年-、65歳)は中国共産党中央規律検査委員会書記を務めている。中国共産党中央規律検査委員会は中国最大の反腐敗機関である。習近平の腹心から習近平の政敵となったものの、常務委員として2期目を迎える(Facebook.com:2020年10月28日、ヴォイス・オブ・アメリカ・チャイニーズ:2019年1月9日)。最後の1枠は、派閥が明らかでない新星に与えられるかもしれない。仮にこれが実現すれば、習近平派閥が政治局常務委員会7枠のうち3枠を制することになる。しかし、党大会に向けて、政治局、政治局常務委員会ともに陣容の変化が予想される。

●習近平の後は誰?(After Xi, Who?

このように、政治局常務委員会の構成を考えると、第20回党大会後の習近平の最優先課題は、習近平の後継者問題ということになる。仮に習近平が2032年の第22回党大会まで統治するとなると、2030年代前半には李強、陳敏爾、丁雪祥ら1959年から1969年生まれの第6世代の新星の多くが、定年年齢を迎える。その結果、習近平の後継となる幹部は、1970年代生まれの中国共産党指導部第7世代(7G)のメンバーから生まれるかもしれない(チャイナ・ブリーフ:2021年11月12日)。しかし、現段階では、副大臣、副省長、副市長にしか昇格していない7Gの関係者のうち、誰がトップになる可能性があるのかを推測するのは時期尚早である(Thinkchina.sg:2021年12月6日、サウスチャイナ・モーニング・ポスト:2021年6月26日))。明らかに、習近平の終身在職権獲得への挑戦と、彼の経済政策と新型コロナウイルス政策が支配エリート内の強い反対に遭っている事実は、党と国家の非常に非民主的で非透明な制度を実証している。また、習近平指導部が改革の大立者である鄧小平が切り開いた制度改革を無視し、故毛沢東主席が打ち立てた以前の規範を復活させることの危険性をも示している。

※林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム、Willy Wo-Lap Lam)博士:ジェイムズタウン・ファウンデイション上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』定期寄稿者。香港中文大学歴史学部中国研究センター・国際政治経済プログラム修士課程非常勤教授。中国に関する5冊の著作があり、『習近平時代の中国政治』(2015年)がある。最新作は『中国の将来のための戦い』(ルートレッジ刊、2020年)。

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習近平の権力強化に伴う派閥争いの激化(Factional Strife Intensifies as Xi Strives to Consolidate Power

林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)筆

2021年10月14日

『チャイナ・ビリーフ』(ジェイムズタウン・ファウンデイション)

https://jamestown.org/program/factional-strife-intensifies-as-xi-strives-to-consolidate-power/

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2021年9月30日、北京の人民大会堂で行われた中国建国72周年記念レセプションに出席した党と国家のトップ。写真は(左から)。王岐山、趙楽際、汪洋、李克強、習近平、栗戦書、王滬寧、韓正。(出典: Xinhua)

中国の最高指導者である習近平国家主席と、曾慶紅(Zeng Qinghong、1939年-、82歳)前副主席や王岐山(Wang Qishan、1948年-、74歳)現副主席などの強力な派閥や人物との間で、熾烈な権力闘争が行われている証拠が更に明らかになった。先月(2021年9月)、半公式サイト「網易(NetEase)」と「捜狐(Sohu)」が明らかにした政法系(政法系,zhengfa xitongの高官数名とその一派の内紛をきっかけに、これらの有力者たちの間での関係が微妙になっているという話が明らかにされた。警察、秘密警察、裁判所を含む政法系統(zhengfa xitong)の複数の幹部が、習近平とされる党幹部に対する「邪悪な裏切り(不軌)」(sinister and treacherous、不, bugui)の行動を計画していたことが、先月の半公式サイト「網易」と「捜狐」で明らかになった(チャイナ・ブリーフ:9月23日を参照)。(これらの記事はその後、インターネット上から削除された)。
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曾慶紅
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王岐山

経済が強い逆風に晒される中、派閥間の裏切り合い・騙し合い(back-stabbing)は更に悪化している。世界最大級の不動産コングロマリットである恒大集団(Evergrande Group)が倒産寸前となったのをきっかけに、数十億元の債務負担に耐えられない不動産会社や金融会社が更に増えていると言われている。昨年末の国家債務総額はGDPの335%に達し、対外債務だけでも2兆6800億ドルに達した(SAFE.gov.cn:9月30日、930日、香港経済新聞:2020年11月19日)。インフラ部門以外では、地方政府の投資機関が2020年末までに53兆元(約8兆2300億ドル)の融資を受けたと推定され、2013年の16兆元(約2兆5000億ドル)から増加している。更に、中国は石炭の枯渇を一因とするエネルギー不足に直面している。外交面では、アメリカとの貿易協議が再開されていない。ジョー・バイデン政権は、台湾海峡、東シナ海、南シナ海などで強硬姿勢を強める中国に対抗するため、同じ考えを持つ国による連合体構築の努力を続けている(Asia.nikkei.com:10月4日、Times of India:9月27日)。

●王岐山とのトラブル?(Trouble with Wang Qishan?

習近平は630日以上海外出張がなく、来年の第20回党大会に向けて、各方面からの挑戦への対応に追われているようである。党大会のテーマは絶対的政治指導者(strongman)である習近平を中国共産党の「終身核心(core for life身核心, zhongshen hexin)」としての承認である。今月初め、リベラル系オンライン雑誌「Caixin.com」の創刊者兼編集者で著名なジャーナリストの胡舒立は、同通信社の微信(we-chat)アカウントの料理欄に、ある「豚頭(pighead)」について次のように投稿した(連合日報:10月7日)。「豚頭がうまく調理されれば、もちろん美味しく食べられる」と短いメモに書かれていた。「しかし、豚頭が尊敬されないとしたら、それは人々の考え方と関係がある。普通の人は、悪名高い豚頭と食卓で戦略的な関係を築こうとは思わないだろう」。「豚頭」は習近平に対するニックネームの1つである。この投稿は料理に関するものであるはずだが、「戦略的関係(strategic relationship)」に言及しているのは、習近平の頑迷な保守主義や欧米諸国との強固な関係を構築できていないことに対する手品のような批判である(Tang Jingyuan Youtube Channelチャンネル:10月8日、連合日報:10月7日)。

胡舒立は過去20年以上、権力者たちや太子党(princelings、党の長老の子弟)の不正を暴き、物議を醸す記事を多数執筆し、編集してきた。彼女の勇気の源は、習近平の第1期(2012-2017年)に政治局常務委員と党の最高反腐敗機関である党中央規律検査委員会(CCDI)書記を務めた王岐山による「保護」にあるとされる。王岐山は多くの人が習近平の最も近い味方の1人と考えており、2013年には副主席という高い称号を与えられ、対米関係では習近平の主要なアドヴァイザーと考えられていたこともある しかし、王岐山は2017年に政治局を去って以来、最高指導者からの信頼を徐々に失っている。(Asia.nikkei.com:2020年10月8日、Hong Kong Free Press:2020年4月9日)。

昨年末には、太子党で不動産王であり、インターネット上で広く支持されているコメンテイターでもある任志強(Ren Zhiqiang、1951年-、71歳)が、汚職と横領の疑いで18年の実刑判決を言い渡された。しかし、王岐山と親しいことで知られる任に下された厳罰は、任がある「皇帝であると主張する裸のピエロ(disrobed clown who insists on being the emperor)」についてのインターネット投稿が原因だと考えられている(ラジオ・フランス・インターナショナル:2020年9月25日、中央日報:2020年9月24日)。習近平はしばしば評論家たちから「服を着ていない皇帝(the emperor who wears no clothes)」と呼ばれており、任が習近平をけなしたことは国内のリベラルな知識人の間で大きな騒ぎになった。
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任志強

王岐山は、無責任な経営や無謀な海外投資で当局からペナルティを受けた複数の企業の隠れたパトロンとも目されている。その最たるものが、20年足らずで地方航空会社から国際コングロマリットにまで上り詰めた海南省のHNAグループである(『中国デジタルタイムズ』:2018年2月12日)。HNAが今年初めに倒産したのは、773億ドルと推定される負債を返済できないことが大きな原因だ。HNAの陳峰(Chen Feng、1953年-、69歳)会長は9月、経済犯罪と反党活動の疑いで逮捕された。陳は、海南省の元党書記である王岐山の子飼いとされている(サウスチャイナ・モーニング・ポスト:9月20日、Asia.Nikkei.com:3月16日)。陳が逮捕された後、HNAの取締役会が発表した懺悔文風の声明は、不正な事業活動以上のものがあったことを示しているようだ。「野心と野生の欲望がグループ全体を深い溝へと導いた」と声明は述べている(Thestandnews.com:9月25日、The Paper:9月24日)。
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陳峰

王岐山のもう1人の側近である元党中央規律検査委員会(CCDI)幹部の董宏(Dong Hong、1953年-、68歳)は、昨年4月に横領と「堕落した生活(degenerate lifestyle)」の容疑で逮捕された。董宏は次官級幹部で、王岐山がCCDIの書記だった時、王岐山の右腕として活躍した。董宏は、CCDIが2013年に設置した省・政府機関の不正を調査するチームの責任者であった。彼は、「政治規律と政治的規制を著しく侵害した」、「党に不誠実であった」という理由で告発された。(Asianews.it:4月27日、 New Beijing Post:4月26日)。「政治規律と政治的規制」に反するということは、党の「核心」である習主席に十分忠実でないことの隠語と考えられている。
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董宏

●党の重要な長老からの反発(Pushback from a Key Party Elder

更に顕著なのは、習近平と曾慶紅前国家副主席との権力闘争である。曾慶紅は江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)元国家主席の側近で、いわゆる上海閥(Shanghai Faction)の主要指導者でもある。曾慶紅は、数十億の企業の背後にある「保護傘(protection umbrella)」であると考えられている。そのうちの1つ、ファンタジア・ホールディングス(Fantasia Holdings、花年控股集有限公司、huayang nian konggu jituan youxian gongsi)は、曾宝宝(Zeng Baobao、1971年-、51歳)という曾慶紅の姪が社長を務める企業である。ファンタジアは最近、社債や約束手形の利払いが滞り、格付け会社から「デフォルト」状態に格下げされた。今年半ばの時点で、ファンタジアの流動負債(1年以内に返済しなければならない負債)は500億元(75億ドル)近くに達していた(Caixinglobal.com:10月7日、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:10月6日)。しかし、曾宝宝は自社の業績悪化について、党の最高権威を非難しているように見える。彼女は微信の投稿で、専門的なことは専門家に任せるべきだが、「脳が尻で調整されている人が意思決定することが非常に多い」と述べ、物議を醸した。さらに彼女は、会社の未来は「尻が一番しっかり固定されている人に譲られる(屁股决定袋的决策,交屁股坐得最定型的那个,志估豬拿得醉丁的那个)」と付け加えた。曾宝宝の微妙な発言は、国有化された不動産やテクノロジー企業に対して圧力をかけている習近平をターゲットにしているように見える(連合日報:10月8日、ラジオ・フリーアジア:10月7日)。
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江沢民
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曾宝宝

曾慶紅の最も深刻な「罪」は、故小民(ライ・シャオミン、Lai Xiaomin、1962-2021年、58歳で死)との付き合いかもしれない。国有企業である中国華融資産管理公司(China Huarong Asset Management Company CHAMCZhongguo huarong zichuan guanli gongsi)を率いていたベテラン銀行家だった。頼小民は昨年末に逮捕され、今年1月に死刑が執行された。彼は約17億9000万元の賄賂を懐に入れ、「党に不誠実である」と非難された。しかし、曾慶紅と頼小民の関係は古い。2人は江西省の隣県の出身で、曾は頼の金融界での出世に一役買っている(ラジオ・フリーアジア:1月22日、Tw.news.yahoo.com:1月6日)。曾宝宝のファンタジア・グループ・ホールディングスは、CHAMCのビジネスパートナーでもあった。網易と捜狐の独占報道では、頼は、王立科(Wang Like)、羅文Luo Wenjin、楊明(Yang Ming)などの江蘇省政法委幹部が習近平に害を及ぼすために計画した「邪悪な裏切り」行為の資金提供者と言われている(News.youth.cn:9月22日;ラジオ・フリーアジア:9月16日)。
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頼小民

●習近平、ライヴァルの子飼いを警察・司法分野から粛清(Xi Purges Rival’s Protégés from Police Forces, Judiciary

習近平の長年にわたる政法組織(政法、zhengfa)への不信は、長年の宿敵であり、2015年に無期懲役の判決を受けた元政治局常務委員で中華人民共和国公安部長を務めた周永康(Zhou Yongkang、1942年-、79歳)が、警察、秘密警察、司法にいまだに多くの部下や追随者を抱えていることに起因している。これが、習近平が数年がかりで進めている政法体制の粛清の原動力となっている。3人の公安副部長を務めた人物、李東生(Li Dongsheng、1955年-、66歳)、孟宏偉(Meng Hongwei、1953年-、68歳)、王立科(Wang Like、1964年-、57歳)が経済・規律違反でそれぞれ2013年、2018年、2020年に逮捕された後、党中央規律検査委員会(CCDI)は10月2日、傅振華(Fu Zhenhua、1955年-、67歳)前公安筆頭副部長を同様の罪で捜査していると発表した。傅は2013年と2014年に周永康の捜査で重要な役割を果たしたにもかかわらず、王立科など他の周の子飼いと密接な関係を持ったため、習近平の信頼を失ったとされる。失脚した元警察幹部の多くは、内部治安システム内で「閥や派閥を形成した(forming cliques and factions)」と非難されている(VOAChinese.com:10月8日、 theinitium.com:10月5日、China.caixin.com:10月4日)
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周永康

中央巡視工作領導小組(Central Leading Group on Inspection WorkCLGIWZhongyang xunshi gongzuo lingdao xiaozu)が懲戒の対象としてきた江蘇省政法委幹部システムのメンバーの中には、定期的に党や政府に検査チームを派遣している者も少なくなく、そうやって中・高級幹部の政治的誠実さや経済犯罪の可能性を査定してきた。昨年、政治局常任委員で党中央規律検査委員会(CCDI)書記の趙楽際が率いる中央巡視工作領導小組(CLGIW)は、公安部、国家安全部、司法部、検察院・裁判所など複数の政法組織に検査官を派遣した(CCDIウェブサイト:4月20日、MOJ.gov.cn:2020年8月23日付)。現在、2009年に設立されたが、2012年に習近平が党総書記になるまで活動を開始しなかった中央巡視工作領導小組(CLGIW)は、中国人民銀行、大手国営銀行、保険会社などの金融部門と、中国証券監督管理委員会や中国銀行業監督管理委員会などの規制機関を含む25の部門を調査している(Finance.sina.com:9月26日、Finance.caixin.com:9月26日)。王岐山と曾慶紅は公私ともに投資・銀行部門で活躍しており、習近平の政敵とされるこれらの人物の子飼いがまだまだ出てくる可能性がある。

●結論(Conclusion

習近平は多くの演説で、「党の核心」としての権威を、党の「自浄作用と自己再生(self-purification and self-renewal)」を実現する能力と結びつけている。習近平の評判の一部は、経済犯罪や規律問題で比較的多くの「虎たち(tigers)」(幹部)を罷免したことにある。曾慶紅や王岐山との対立は、これまで主に言葉による陰口で表されてきた。例えば、新華社と人民日報は、反腐敗キャンペーンはいかなる「鉄首公主(Iron Head Prince铁头王、Tie tou wang)」も許さないという論評を相次いで掲載した。「反腐敗運動には上限がない」と人民日報は昨年(2020年)1月に宣言した。「中国共産党は問題に正面から向き合い、過ちを正すことを恐れない。私たちは自浄作用と自己再生に長けている」(新華社:7月11日、人民日報:1月15日)。中国共産党の「自己改革と自己浄化(self-reform and self-purify)」能力については、習近平が中国共産党成立100周年記念演説などの主要な演説で繰り返し発言している。清朝の歴代皇帝が上級貴族に与えた称号の一つである「鉄首公主」は、曾慶紅を指すと考えられている。これは、最後の鉄首公主が清の皇太子の称号を持っていたことによる。第20回党大会は、習近平が党総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席の地位を10年間維持できることを確認するものである。その一方で、党内の内部抗争は言葉の戦いを超え、少なくとも数人の元政治局員と党中央軍事委員会委員が失脚する可能性がある。

※林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム、Willy Wo-Lap Lam)博士:ジェイムズタウン・ファウンデイション上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』定期寄稿者。香港中文大学歴史学部中国研究センター・国際政治経済プログラム修士課程非常勤教授。中国に関する5冊の著作があり、『習近平時代の中国政治』(2015年)がある。最新作は『中国の将来のための戦い』(ルートレッジ刊、2019年7月)。

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