古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:小室直樹

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

 泥棒政治(kleptocracy)という言葉がある。この言葉の意味について、オックスフォード辞典には、「権力(力)を使って国家の資源を盗む人間によって支配される社会もしくはシステム(a society or system ruled by people who use their power to steal their country's resources)」と書かれている。簡単に言えば、政治家や政治家以外の存在が大きな力、権力を持ち、自分が有利になるように、税金を使ったり、国家機構を動かしたりすることだ。汚職・腐敗(corruption)とも言える。独裁国家で横行しており、支配者が大規模な宮殿を建設したり、在宅三昧の生活をしたりということは私たちもテレビや新聞の報道を見てきた。

 ドナルド・トランプが大統領に再選されて、アメリカも泥棒国家になる、トランプが権力を濫用して、三権分立を脅かして汚職がしやすくする、税金で自分の私腹を肥やすという主張が出ている。トランプは既に65億ドル(約9500億円)の資産を保有している。それを今更もっと増やしたいということで、大統領の地位を利用するということは考えにくい。子供たちや孫たちの多くは自分にはビジネスの才能がないということは分かっていて、この財産をうまく受け継いで生きていこうとしているだけのことだ。イヴァンカと夫のジャレッド・クシュナー、まだ大学生のバロン・トランプについてはこれから分からないが。トランプが叩き上げで、違法すれすれ、時には違法なことに手を染めながら、下品だなんだと馬鹿にされながらも、ビジネスを行い、成功して財産を築いていった姿に、私は田中角栄を重ねる。

 小室直樹は『田中角栄の呪い: 角栄を殺すと、日本が死ぬ』(光文社、1994年)の中で、汚職には構造的汚職と人格的汚職の2種類があり、田中角栄の汚職は構造的汚職だと主張した。構造的汚職は社会構造やシステムがどうしても汚職を起こしてしまうようにできていて、各個人の清廉さや意志の強さ、心がけではどうしようもない。そして、人格的汚職は、個人の欲望が引き起こす汚職だ。私が子供の頃の1980年代、田中角栄は裁判の被告人であり、大悪人という報道のされ方だった。しかし、現在はどうだろうか。田中の前に田中なし、田中の後に田中なしという感じで、非常に評価が高まっている。戦後日本の政治家の評価ランキングがあれば、悪くても2位、1位は確実ではないかと思われる。

田中角栄と同時代の政治家たち、とくに派閥の領袖クラスを考えてみれば、清廉潔白でした、お金は全くありませんでした、という政治家がいるだろうか。中曽根康弘や福田赳夫、三木武夫、大平正芳がどうやってあんな大人数の派閥を維持できたのか。彼らもまた構造的汚職に手を染めていたはずだ。そして、彼らは捕まらなかった。それには色々と背景があるだろうが、彼らも風向きが変われば逮捕されていただろう。

 話が大きく逸れたが、トランプによってアメリカが泥棒政治になるという心配をする前に、アメリカもまた構造的汚職ではないのかということを考えるべきだ。民主党のヒラリー・クリントンがウォール街から多額の献金を受けたり、講演を行って多額の謝礼を受け取ったりしていたことはどうなのか、巨大企業がロビイストを通じて、民主、共和両党に影響を与えることはどうなのか。私は、ロビー活動については、民主政治体制にとっては必要悪だと考えてきた。しかし、2016年のトランプの大統領選挙当選を受けて、それでよいのだろうかと考えてしまうことになった。

 下記論稿では、トランプが行政権力を強め、立法(連邦議会)と司法(裁判所)を弱めようとし、反対派を弾圧するというようなことが書かれている。そして、アメリカは泥棒国家からの立て直し方法を世界に教授してきたが、自分たちがその方法を実践することになるとはと嘆いている。私は、まず、アメリカが構造的汚職システムになっていたのではないかということを点検することから始めるようにお勧めしたい。

(貼り付けはじめ)

アメリカは泥棒政治国家なのか?(Is America a Kleptocracy?

-富裕層、貧困層、そしてその間の層の全ての人々の生活がどのように変わる可能性があるのか​​を紹介する。

ジョディ・ヴィットリ筆

2025年3月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/03/25/america-kleptocracy-trump-musk-corruption/?tpcc=recirc_trending062921

大きな変化が起こりつつある時、私たちは操作マニュアルを探し求める。そこには新たな生活様式と未来への新たな期待が生まれるだろう。急速に深刻化するアメリカ合衆国の腐敗状況も例外ではない。

昨年11月のドナルド・トランプ大統領の当選と、就任以来の制度面および人事面での急速な変化は、アメリカ国民を新たな政治的領域へと追いやった。特に、腐敗防止のための制度や規範は崩壊しつつある。パム・ボンディ司法長官は司法省に対し、犯罪カルテル関連事件の捜査を優先するよう指示し、タスクフォース・クレプトキャプチャーとクレプトクラシー・アセット・リカヴァリー・イニシアティヴを閉鎖した。トランプ大統領自身も、海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices ActFCPA)の新たな捜査および執行を6カ月間停止するよう命じた。

これらの動きは、アメリカ企業による国内ではなく海外での汚職行為に焦点を当てているが、他の汚職防止基準も急速かつ重大な圧力にさらされている。トランプ政権は、ウォーターゲート事件後に政府機関における不正管理や権力乱用を独立して監視する機関として設置された監察官(inspectors general、インスペクター・ジェネラル)を少なくとも17人、そして司法省の幹部職員数名を解雇した。大統領はまた、汚職の摘発と処罰において重要な役割を担う連邦取引委員会(Federal Trade CommissionFTC)や証券取引委員会(Securities and Exchange CommissionSEC)といった機関の独立性を損なう大統領令も発令した。

一部の人々にとって、これらの変化は新政権に伴う通常の政策転換をはるかに超えるものだ。新しい語彙を必要としているように思える。例えば、「カキストクラシー(kakistocracy、最も不適格または無能な市民によって統治される社会)」という言葉は、エコノミスト誌の2024年年間最優秀単語に選ばれるまで、ほとんど知られていなかった。評論家たちは、トランプ大統領就任式で最前列の席に座るテック企業の幹部たちを、アメリカの新たな寡頭政治家と呼んでいる。ジョー・バイデン大統領は国民に向けた退任演説で、「アメリカで寡頭政治が形成されつつある(an oligarchy is taking shape in America)」と警告した。また2月には、バーニー・サンダース連邦上院議員が、トランプ政権が「この国を急速に泥棒政治(a kleptocracy)へと向かわせている」と述べ、さらに悲惨な表現を用いた。これらの言葉は、定義上も実際上も、一体何を意味するのだろうか? そして、もしあるとすれば、アメリカの今後の政治秩序に正確に当てはまると言えるものはどれなのだろうか?

最初に求められる定義は、腐敗(corruption)そのものの定義である。腐敗は、アメリカ人やアメリカの伝統に反すると見なされる政権の構成要素であるにもかかわらず、近年、あらゆる政治的立場で頻繁に言及されている。トランプ大統領は2月にホワイトハウスで大統領顧問のイーロン・マスクと共に「私は選挙運動で、政府は腐敗している、そして非常に腐敗している、と訴えてきた」と述べた。実際、いわゆる「ディープステート(deep state)」の官僚機構における汚職の根絶は、1月に大統領令によって設置された政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)において、マスクが表明した目標の1つである。マスクは、DOGEのティームが連邦政府から金銭を受け取っていた「知られた詐欺師(known fraudsters)」を発見したことや、米国国際開発庁(the U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)を含む官僚機構で働く一部の人々が「キックバック(kickbacks)」を受け取っていたことを非難している。

連邦政府の支出に不正や無駄遣いが全く存在しないと主張する人はほとんどいないだろう。昨年、米国会計検査院(the U.S. Government Accountability OfficeUSGAO)は、連邦政府が詐欺によって年間2330億ドルから5210億ドルの損失を被っており、過去20年間で政府機関が約2.7兆ドルの不適切な支払いを行っていたと推定した。年間6兆ドル以上を支出する組織としては、この数字は莫大だ。しかし、アメリカ政府で記録されている詐欺事例は、腐敗のレヴェルに達しているのだろうか?

汚職に普遍的な定義はないが、擁護団体トランスペアレンシー・インターナショナルが定義する最も一般的なものの1つは、「私的利益のために、委託された権力を乱用すること(the abuse of entrusted power for private gain)」である。例えば、USAIDに関してマスクがこの言葉を正しい意味で使うには、USAIDの職員や請負業者が、有利な契約を与える見返りに賄賂や贈り物を受け取るなど、私的利益を得るために与えられた権限をどのように利用したかを示さなければならない。職務の範囲内で政策を実施するために政府から正当な権限を与えられた給与を受け取ることは、「委託された権限の乱用(abuse of entrusted power)」や「私的利益(private gain)」には当たらず、汚職とは認められない。

汚職には様々な種類がある。現在、最も問題視されているのは、大規模汚職である。大規模汚職とは、公的機関が支配エリートのネットワークによって共謀され、私利私欲のために公的資源を盗むことである。賄賂(bribery)、恐喝(extortion)、縁故主義(nepotism)、えこひいき(favoritism)、縁故主義(cronyism)、司法詐欺(judicial fraud)、不正会計(accounting fraud)、選挙詐欺(electoral fraud)、公共サーヴィス詐欺(public service fraud)、横領(embezzlement)、影響力売買(influence peddling)、利益相反(conflicts of interest)など、様々な行為が含まれる。

汚職を防ぐシステムを解体することで、トランプ政権は将来、大規模な汚職への扉を開くことになるのではないかと懸念されている。マーク・ポカン連邦下院議員は、連邦政府の契約(少なくとも52件、7つの政府機関と継続中)を持つ特別職員としてのマスクの状況は「汚職にまみれている(ripe for corruption)」と批判し、昨年の選挙でトランプや他の共和党員を支援するために少なくとも2億7700万ドルを寄付したマスクのような特別職員がそのような契約を獲得することを禁止する法案を提出する予定だ。2月の『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説記事で、元財務長官5人は、DOGEの「政治的アクター(political actors)」がアメリカの決済システムにアクセスすることに懸念を表明した。彼らは、このアクセスは、これまで個人または党派の利益追求を防ぐために超党派の公務員によってのみ管理されていたシステムのセキュリティを危険にさらしていると指摘した。(マスクは2月、ポッドキャストの司会者ジョー・ローガンに対し、DOGEの職員は「連邦政府職員と同じ審査プロセスを受けている(go through the same vetting process that those federal employees went through)」と語った)。

大規模な汚職とは対照的に、市民が病院、学校、警察署などで賄賂やその他の便宜を求められる際に遭遇する、ささいな汚職がある。ポップカルチャーには、ドラマ「ザ・ソプラノズ」のように、腐敗した警官や公務員を描いた物語が溢れていますが、運転免許証の更新や子供の公立学校への入学手続きで、ちょっとしたご褒美をこっそり渡さなければならないという経験をしたアメリカ人はほとんどいない。しかし、古い諺にあるように、「魚は頭から腐る(a fish rots from the head down)」のだ。大規模な汚職が蔓延すると、下級職員は、多くのアメリカ人にとって新しい方法で賄賂を要求する大胆さを増す可能性がある。

泥棒政治は、腐敗、たとえ大規模な腐敗であっても、全く新しいレヴェルへと引き上げる。泥棒政治(クレプトクラシー)には、「泥棒による支配(rule by thieves.)」以上の明確な定義はない。大規模な汚職と同様に、泥棒政治は、政治、ビジネス、文化、社会、そして犯罪組織のエリート層が緊密に連携し、賄賂、恐喝、その他の破壊的な行為に関与するネットワークを形成する。しかし、泥棒政治には、大規模な汚職よりも際立った特徴がいくつか存在する。

第一に、泥棒政治における大規模な汚職は体系的であり、深くネットワーク化され、自己増殖的である。複雑で莫大な利益をもたらす汚職計画を仕掛けることも一つの手だが、複数のネットワークを通じた大規模な汚職の流れを何年も何十年も継続させるように制度を変革することは、泥棒政治の手段とは全く異なる次元の行為である。

第二に、泥棒政治の影響は長期的な政治的・社会経済的結果を歪める。大規模な汚職計画はエリート層に数十億ドルもの富をもたらすかもしれないが、それが十分に大きな経済規模で発生した場合、一般市民に必ずしも大きな影響を与えるとは限らない。泥棒政治においては、歪曲は甚大であるため、一般市民は生活への影響を無視することはできない。

第三に、泥棒政治ではない国々では、大規模な汚職スキャンダルは、それが日常茶飯事ではないため、良心に衝撃を与え、注目を集める可能性がある。泥棒政治におけるこのような大規模な腐敗は、異常事態ではなく、国家の統合目的であり、中核的な機能である。スキャンダルはあまりにも急速に、あまりにも広範囲に、あまりにも大規模に発生するため、多くの国民は対応できない無力感を感じている。

一般的に、寡頭支配者(oligarchs)と呼ばれる主要エリートは、泥棒政治を支えている。寡頭制(oligarchy)とは、古代ギリシャ語のオリゴイ(oligoi、「少数(few)」)とアークヘイン(arkhein、「支配する(to rule)」)に由来する。アリストテレスは、寡頭政治を「財産を持つ者が政府を握ること(when men of property have the government in their hands)」と表現した。アリストテレスの定義によれば、寡頭政治とみなされるためには、富裕層が、より多くの人々を犠牲にして自分たちの富と権力を守るために、政府に影響を与えることができなければならない。

この用語は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の側近である莫大な富を持つ内部関係者を指すことが多いが、一部の学者は、ロシアの「オリガルヒ(oligarchs)」と呼ばれる人々は厳密にはこの定義を満たしていないと主張する。なぜなら、これらの人々は明らかに潤沢な資金を持っているものの、内政や外交に実質的な影響力をほとんど持っていないように見えるからだ。学者のイリヤ・ザスラフスキーは、莫大な富を持ちながらも実際の政治的影響力を持たない彼らを「クレムリガルヒ(kremligarchs)」と呼んでいる。

民主的な泥棒政治国家(democratic kleptocracies)は、またしても政治権力の異なるモデルを提示している。ハンガリーでは、ヴィクトル・オルバン首相率いる与党フィデス党が、議会、裁判所、官僚機構、そしてメディアへの支配権を強固なものにしてきた。元駐ハンガリー米大使のデイヴィッド・プレスマンは、ハンガリーの体制を「虚無主義的な腐敗の温床(embrace of nihilistic corruption)」と総括した。例えば、オルバン一族や側近と関係のある企業は、政府調達契約において非常に有利な機会を得ている一方で、関係のない企業は事業運営能力が制限されている。一方、ハンガリーはヨーロッパの中心に位置しているにもかかわらず、報道機関の活動は著しく制限されており、2021年には数少ない独立系ラジオ局の一つが放送停止に追い込まれるに至った。

全ての泥棒政治国家はそれぞれ独自の特徴を持ち、もしアメリカの泥棒政治が実現したとしても、ハンガリー、イラン、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヴェネズエラといった国々の泥棒政治とは異なる形で機能するだろう。しかしながら、泥棒政治には共通の特徴があり、アメリカ独自の形態が既に出現しつつある兆候も見られる。

学者のマイケル・ジョンストンは、各国における泥棒政治の運営方法を分類しようと試み、4つの主要な腐敗症候群(syndromes of corruption)を特定した。アメリカ合衆国は、彼が「影響力市場(Influence Markets)」と呼ぶ、世界の民主的な良き統治のリーダーたちのグループに該当する。

「影響力市場」とみなされる国で、本格的な泥棒政治になった国はこれまで存在しない。影響力市場では、小規模な汚職は稀で、大規模な汚職は投獄、新たな法律の制定、選挙での敗北につながる可能性がある。ただし、合法的なロビー活動や選挙資金と、あからさまな汚職の区別については、しばしば大きな論争が起こる。これらの国々は、確固たる民主的な規範を有し、個人の自由を保障し、人権を擁護し、独立した裁判所やその他の執行機関を有している。国家は、比較的クリーンで専門的、かつ政治的に関与しない公務員制度によって運営されている。

アメリカ合衆国は、国際システムにおいて卓越した影響力市場を持つ国だ。世界の準備通貨、世界有数の経済力、そして最大級の軍事力を誇る。当時理解されていた腐敗防止の制度や規範は、建国の父たちによって憲法に明記されたか、あるいはその後まもなく制定された。これには、チェックとバランス(checks and balancesのシステム、報酬条項(emoluments clauses)、権利章典(Bill of Rights)、そして議員が代表する選挙区や州に居住する義務(the requirements for representatives to live in the districts and states that they represent)などが含まれる。1977年には、アメリカ合衆国は海外腐敗行為防止法(the Foreign Corrupt Practices ActFCPA)によって他国の政治家への賄賂を違法とした最初の国となったが、トランプ大統領は同法の施行停止を命じた。

影響力市場でもある大国が泥棒政治に陥った場合、何が起こるかを示す歴史的モデルは存在しない。アメリカが泥棒政治に陥れば、少数の勝者が莫大な利益を得ることになるだろう。確かに、不平等は今に始まったことではなく、いくつかの研究がアメリカにおける社会流動性(social mobility)が長年低下していることを示している。それでもなお、泥棒政治への傾斜と抑制と均衡の減少は、憂慮すべき傾向をさらに悪化させるだろう。2023年には、米国には1050人の億万長者がおり、その総資産は5兆ドル近くに上る。2024年第3四半期には、米国人の上位1%が49兆2300億ドルの家計資産を保有しているのに対し、下位50%の家計資産はわずか3兆8900億ドルにとどまっている。アメリカが泥棒政治に陥れば、既に不均衡となっている上位1%の富に加え、億万長者の数も増加する可能性が高い。

泥棒政治においては、寡頭支配者への優遇政策アクセスと露骨な汚職によって、調達価格が上昇し、公共サーヴィスがさらに民営化され、些細な手数料が蔓延する。その結果、公共道路が有料道路に変わり、航空会社からホテル、クレジットカード会社に至るまで、あらゆる企業が手数料や追加料金を積み上げることになる。トランプ政権による消費者金融保護局(the Consumer Financial Protection BureauCFPB)の閉鎖と、その調査活動の停止は、その前兆となる可能性がある。

寡頭支配者たちが課税を回避できるようになると、貧困層と中流階級への税負担は重くなる。関税は、主に供給者ではなく消費者が負担する税金であるため、この傾向の典型となる。食料品への関税による価格上昇は、特に貧困層に大きな打撃を与える。2023年、アメリカの世帯の最低所得層は税引き後所得の33%を食料品に費やしたが、最高所得層ではわずか8%だった。

社会保障制度、特に最貧困層向けの制度は、泥棒政治によってますます縮小、資金不足、あるいは全面削減されている。最近可決された連邦下院予算案は、主に富裕層に恩恵をもたらしたトランプ大統領の2017年の減税を延長し、10年間で2兆ドルの支出削減を目指している。これには、メディケアとメディケイドの財源を監視する連邦下院委員会が決定する8800億ドルの削減が含まれる。自身も莫大な富を持つハワード・ラトニック商務長官が最近、社会保障、メディケイド、メディケアは「間違っている」と発言したことは、さらなる懸念材料だ。これらの制度の削減を示唆する共和党大統領はトランプが初めてではないだろうが、退役軍人省の数百件の契約削減案を含む初期の動きは、現政権の削減が前任者よりも深刻かつ広範囲に及ぶ可能性を示唆している。

政治化された機関、特に法執行機関は、盗賊政治を維持するために不可欠です。ペルーの元独裁者オスカル・ベナヴィデスは、「友のためには全てを、敵のためには法を(For my friends, everything; for my enemies, the law)」と述べた。例えば、ヴェネズエラとロシアの企業は、政府の敵対者となれば税務警察の介入(the tax police)、莫大な税金、そして破産を招くことを熟知しており、IRSの武器化は全ての企業にとって脅威となる。リチャード・ニクソン大統領は、IRS長官に約200人の民主党員の「敵リスト(enemies list)」を監査対象として提供し、捜査対象者を選出し、場合によっては投獄することを意図していたにもかかわらず、監査を実施するどころか、そのリストを保管していた。IRS長官は監査を実施するどころか、そのリストを保管していた。最近のIRS長官代理の辞任、確定申告シーズン中の6700人の試用期間中の職員の解雇、そしてDOGEによるIRSおよびその他の納税者情報へのアクセスの試みも、こうした政治化の兆候を示している。

今後、他の大統領令や政策が実施されれば、米国は泥棒政治へとさらに傾く可能性がある。最も重要なのは、2020年10月にトランプ政権下で制定されたスケジュールF[Schedule F](現在はスケジュール・ポリシー・キャリア[Schedule Policy/Career]と呼ばれている)である。これはジョー・バイデン政権によって撤回された後、トランプ政権2期目の初日に大統領令によって再制定された。この大統領令は、公務員を雇用保護の少ない雇用グループに分類することを可能にし、150年にわたる公務員制度改革の成果を損なうものである。この大統領令が実施されれば、米国は19世紀に蔓延したスポイルズ・システム(spoils system、猟官システム)へと逆戻りすることになるだろう。

こうした様々な大統領令や指令、問題のある人事、司法省の権限委譲、独立機関の弱体化、そして公務員の予算削減と牙を剥く行為の結果、米連邦政府諸機関を私利私欲のために改変しようとする人たちが、まさに権力の座に就いている。さらに、こうした動きが矢継ぎ早に開始されることで、州、裁判所、市民社会、そしてジャーナリストが効果的に対応することが困難になっている。これは、トランプ前大統領顧問のスティーヴ・バノンが唱えた「この一帯を糞で溢れさせろ(flood the zone with shit)」という有名な命令がまさに実行に移されたと言えるだろう。

泥棒政治体制下のジャーナリストたちは、名誉毀損法が歪められ、権力者がメディア、市民社会、さらには不正行為を報道する可能性のある一般市民に対して戦略的訴訟を起こして沈黙させやすくなっている可能性があるため、さらに制約を受ける。DOGE職員たちが特定される報道に対するマスクと政権の対応は、この初期の例である。言説(narrative、ナラティヴ)は他の方法でもコントロールできる。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが『ワシントン・ポスト』紙を所有していることや、マスクがXを所有していることが最も注目を集めるが、シンクレアの約200のネットワークなど、アメリカ国内の地方メディア局を保守派が所有していることも、親トランプのメッセージを形成する重要な手段となっている。グローバル化した世界では、高品質でしばしば高尚なメディアは、お金と時間とそれにアクセスする意思のある人々に引き続き提供されるだろう。セルゲイ・グリエフとダニエル・トレイスマンが著書『スピンの独裁者』で指摘しているように、このメディアの存在は、政権が実際にはそれほど権威主義的ではないことを証明すると同時に、有料購読であることが多い国際的な報道を読むグローバリストのエリートたちをスケープゴートにすることにも役立っている。

2010年の「シチズンズ・ユナイテッド」判決以来、連邦選挙運動への無制限のダークマネー流入を許したため、法的に「汚職(corruption)」を構成する要素は大幅に制限されている。しかしながら、近年で最も憂慮すべき判決はトランプ対合衆国(2024年)である。この判決は、大統領の行動が何らかの形で公務に関連している限り、大統領に驚くべき免責特権を与えた。また、大統領の行動が捜査対象となる範囲も制限している。連邦事件の関係者を恩赦できる権限と相まって、トランプをはじめとする将来の大統領は、アメリカ政府を意のままに操る法的裁量を大きく拡大している。

ダークネットの麻薬市場を運営し、仮釈放なしの終身刑を宣告されていた暗号通貨カルトヒーローであるロス・ウルブリヒトへの恩赦、そして人身売買やマネーロンダリングなどの容疑でルーマニアで捜査を受けているアンドリュー・テイトとトリスタン・テイトの出国許可を求めるトランプ政権の圧力は、不吉な兆候と言える。質問に対し、トランプはルーマニアが渡航禁止措置を解除した決定について何も知らないと述べた。フロリダ州司法長官が、最近送還された兄弟が容疑を否認しているにもかかわらず捜査を開始したことは、より前向きな兆候だ。トランプの大統領令は、2つの法律事務所(うち1つは元特別検察官ジャック・スミスが代理人を務める)を標的としており、法の支配(rule of law)をさらに弱めるものだ。

ビジネスを自由にするという約束にもかかわらず、泥棒政治は経済に大きく介入せざるを得ない。結局のところ、市場に任せっぱなしでは、経済的利益が特定のグループに行き渡ることを保証することはできない。例えば、統治の行き届いた国では、調達契約(a procurement contract)は最も良い入札を行い、実績のある企業に渡る。しかし、泥棒政治では、ほとんどの調達契約は、最も資格のある人材ではなく、適切なネットワークを持つ企業や適切な賄賂を支払った企業に渡る。

泥棒政治による国家による経済掌握の最もよく記録された例は南アフリカだ。司法委員会は、ジェイコブ・ズマ前大統領とその他の政府関係者がグプタ家と共謀し、ズマ家の一員や友人を雇用しながら、政府や国有企業から有利な契約を獲得できるようにしていたことを明らかにした。この法外な契約は経済から数百億ドルを吸い上げ、連邦予算に大きな穴を開けた。 2018年のズマ大統領辞任以来、腐敗と腐敗の残滓の1つに、電力網の混乱があり、結果として、それが経済成長全体を阻害している。

この点において、アメリカ合衆国は南アフリカには遠く及ばない。そして、アメリカ合衆国は過去にも、自由民主政治体制国家としての地位を放棄することなく、しばしば理想の達成に至らなかった。しかし、アメリカ人は、自らの純資産と社会的ネットワークが、自らの権利やサーヴィスへのアクセスをますます左右しているかどうかを観察するだけで、自らが泥棒政治に陥っているかどうかを判断できる。

アメリカはすでに経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も不平等な国であるため、泥棒政治における富裕層の生活はほぼこれまで通り、あるいは改善される可能性さえある。富裕層は、私設警備員や塀に囲まれたコミュニティの陰に隠れることができる。子どもたちは質の高い私立学校に通い、民間のスポーツクラブでテニスやサッカーに興じることができる。医療保険や医療ケアは、お金を払える人、あるいはそうしてくれる雇用主がいる人は、すでにほとんど利用できる。一部の裕福なコミュニティは、質の高い警察や消防署、その他の社会サーヴィスを維持することができる。お金を払えない人々や、たまたまこうした恵まれた郊外のインクのシミのように点として離れた場所(ink spots)に住んだり、その近くで働いたりしない人々にとっては、公共サーヴィスのために利用できるパンくずは減り続け、治安も悪化していくだろう。

寡頭支配者たちに対抗して団結する反対勢力は、泥棒政治にとって最大の脅威であるため、分断統治戦略(a divide-and-conquer strategy)を維持しなければならない。2024年の大統領選挙では、トランプは黒人やラテン系有権者の支持率を高め、白人有権者の支持率はほとんど動かなかった。しかし、トランプの初期の決断の多くは、分極化を再燃させるように設計されているように見える。例えば、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件に関連した罪で起訴された1500人以上の人々を大々的に恩赦したことは、国をまとめるためのものとは到底思えない。現在進行中の軍幹部の粛清は、明らかに多様性(diversity)、公平性(equity)、包摂性(inclusion)の取り組みに関連した解雇もあり、さらに分裂を招いている。特に注目すべきは、チャールズ・Q・ブラウン・ジュニア統合参謀本部議長、海軍作戦部長、空軍副参謀長、陸・空軍・海軍のトップ法務官たちの解雇である。ハリー・トルーマン大統領やバラク・オバマ大統領を含め、将軍が解雇されたことは過去にもあったが、ブラウンの場合は明確な理由もなく、明らかな業績不振を指摘することもできなかった。実際、ピート・ヘグセス国防長官は以前、黒人であるブラウンが肌の色が理由でその地位を得たのではないかと疑問を呈していた。

このような行動が集団で行われ、本格的な泥棒政治に発展するかどうかはまだ分からない。しかし確かなことは、泥棒政治は偶然の機会ではなく、意図的な戦略であるということだ。偶発的な泥棒政治は存在しない。その結果、脱泥棒政治化dekleptification)の研究によれば、ある社会を脱泥棒政治化するのに最適な時期は、その社会のルールや制度が流動的なときであり、アメリカでは今がその時期である。通常、脱泥棒政治化の窓は最長で2年間開いているが、このアメリカの例は動きが非常に速いため、対応できるのは数年ではなく数カ月かもしれない。

裁判を通じた市民社会の行動は、これまでで最も効果的な対抗手段であった。良き統治を目指す市民社会団体のコンソーシアムであるデモクラシー・フォワードなどの団体は、退役軍人や教師、一般市民の権利のために訴訟を起こしている。同様に、各州(特に青い州[訳者註:民主党優勢州])も訴訟を起こしており、その中にはトランプ大統領が付与した政府効率化省(DOGE)の権限が違憲であると主張するものも含まれている。

世界中の人々が泥棒政治のネットワークと戦い、しばしば成功を収めてきた。ということは、自国の戦略や戦術を発展させる一環として、懸念するアメリカ人が適応できるような、脱泥棒政治化の教訓の宝庫があるということである。米国国際開発庁(USAID)の『脱泥棒政治化ガイド』は、脱泥棒政治化の方法について最もよくまとめられたものと考えられている。この文書はもうオンラインでは公開されていないが、反汚職コミュニティは再び一般に公開するよう取り組んでいる。このガイドブックが唯一のものとは言い難い。スルジャ・ポポヴィッチは、セルビアで「Otpor!」というグループの創設に貢献し、スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の独裁政治を非暴力で崩壊させることに成功した。それ以来、ポポヴィッチは「応用非暴力行動・戦略センター」を通じて、成功した非暴力戦略も公表している。これらは、数多くある世界的な情報源のうちの2つに過ぎない。何十年もの間、アメリカ人は他国の国民に自国の政府の立て直し方を教えようとしてきたが、そろそろ立場を逆転させる時かもしれない。

大規模な汚職に関しては、アメリカ人には金ぴか時代も含め、反撃の歴史がある。セオドア・ルーズヴェルトのような献身的な反腐敗改革者を探し、そして選出し、アイダ・B・ウェルズやアイダ・ターベルの汚職の暴露(muckraking、マックレイキング)を再活性化し、座り込み(sit-ins)、抗議行進(protest marches)、ボイコット(boycotts)、その他の抵抗(resistance)行為の戦術に再び取り組むことができる。これらは結局のところ、アメリカの歴史を通して公民権運動の特徴であった。

※ジョディ・ヴィトリ:ジョージタウン大学外交学部実務教授、国際政治・安全保障部門共同部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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 古村治彦です。

 今回、ロシアによるウクライナ侵攻について、感情的になって「ロシアは許さない」「ウクライナ頑張れ」となるのは自然なことだと思う。しかし、少し落ち着いて国際政治を俯瞰して眺めてみると、何とも残酷な現実が見えてくる。それは、「国際政治は大国間政治(power politics)でしかない」ということだ。そのことを私たちに教えてくれるのは、『戦争と国際法を知らない日本人へ』(小室直樹著、徳間書店、2022年)だ。この本は『世紀末・戦争の構造』(徳間文庫、1997年)の再刊だ。何とも時機を得た再刊となった。

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戦争と国際法を知らない日本人へ ニュー・クラシック・ライブラリー

小室直樹(1932-2010年、77歳で没)については著者紹介を引用する。「1932年、東京都生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。 1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。 著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『国民のための戦争と平和』他多数。 渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』など」。
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 小室直樹は経済学、社会学、政治学など社会科学百般をその一身で「統合」した、不世出(ふせいしゅつ)の偉大な社会科学者だった。『戦争と国際法を知らない日本人へ』には巻末に副島隆彦先生による解説と小室直樹文献一覧が付いている。是非お読みいただきたい。

※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「今日のぼやき・広報ページ」で公開中↓

http://www.snsi.jp/tops/kouhou/2311

1944年にアメリカの首都ワシントンのジョージタウン地区にある、ダンバートン・オークス・ガーデン(Dumbarton Oaks Garden)にアメリカ、イギリス、ソ連、中華民国の代表が集まり、国際連盟に代わる新たな国際機関の創設が決定した。それが国際連合(国連)である。この4か国にフランスが加わって、国連の中核メンバー国である、そして、安全保障理事会常任理事国(The United Nations Security Council Permanent Members)となった。第二次世界大戦の戦勝国クラブと言っても良い。以下のポスターを見てもらいたい。国連は連合国のことである。

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 国連安全保障理事会の常任理事国の圧倒的な力(拒否権、veto)を前にして、それ以外の国々ができることはほぼない。国連改革と言って、常任理事国(permanent members)の数を増やすとか、制度自体を廃止するということは現在の五大常任理事国にとっては利益を損なわれることであるし、第二次世界大戦の勝利と大きな犠牲の面からもそれはできない。それならば国連総会の権限を強化し、安保理決議も多数決でできるようにするということも考えられるが、それはそれでやはり常任理事国が反対するだろう。

 国連安全保障理事会での決議(resolution)には加盟国を拘束する力があるが、国連総会(The United Nations General Assembly)での決議は勧告であり、拘束力を持たない。朝鮮戦争において北朝鮮の朝鮮人民軍(+中国人民志願軍[抗美援朝義勇軍])との戦いで、アメリカ軍が主体となって国連軍(United Nations Command)が形成されたのは、国連安保理で非難決議が可決されたからだ(常任理事国のソ連が反対ではなく棄権したため)。現在の状況であれば、ロシア非難決議に対してロシアが反対するだろうから決議は可決されない。

 小室直樹は『』第4章で国連こそは「むき出しの列強政治(naked powers politics)」だと喝破した。この本のポイントはここにある。列強政治、大国間政治の前には私たちは何とも無力な存在である。ポイントについては副島先生が引用しているので、私もそれを使って引用する。

(貼り付けはじめ)

昭和6年(1931年)9月18日、日本軍は突如として行動を開始し、まもなく、満州を占領した。(引用者注。これが満州事変。世界はこれを日本の中国侵略だと決断した。この日が、いわゆる「日中15年戦争」の始まりの日 ) 

 さあ、国際連盟が騒いだの騒がないのって。……日本は(中国に関する)九カ国条約違反であると非難された。1922年に結ばれた九カ国条約とは、日、米、英、仏、伊、蘭、中、ベルギー、ポルトガルとの間で結ばれた条約であって、中国の独立と領土を保障している。……

 ……国際連盟を牛(ぎゆう)()っている英仏の肚(はら)は、日本ごとき軍事大国がひとたび決意した以上、その軍事行動を押しとどめる力なんか、どこの国にもないことをよく知っていた。

 ……だが、ここで、国際連盟の二面性──表ではウィルソン(米大統領)流の原理主義、裏では列(れっ)(きょう)政治──が、その(国際連盟の)命取りになった。

……連盟が健在のときにおいてすら、国際政治の本質はやはり大戦以前と同様、列強政治であった。仮面をかぶった列強(パウアズ)政治(disguised powers politics ディスガイズト・パウア・ポリティックス)と称される所以(ゆえん)である。国際連盟の機能が麻痺するにつれて、列強政治はますますその正体をあらわにしてきた。(158-166ページ)

=====

 戦争という非常事態に際して、当然のことながら、列強政治の色彩は、さらに決定的に強まった。カイロ会談、テヘラン会談、ヤルタ会談、ポツダム会談など。戦後世界を決定する会議は、米英ソの三者によって意思決定がなされた。ときたまフランスの参加が許され、まれにちょっぴり中国の発言がみとめられる。そのほかの諸国にいたっては、連合国の一員であろうがなかろうが、全くのお呼びなし……。

 国連は、軍事同盟である。国連の本質は、日本とドイツに対する軍事同盟である。

 ……1942年1月1日、日独伊枢軸国と交戦中の26カ国は、個別的休戦を結ばないことを宣言、同盟関係を確認しあった。この軍事同盟を国際連合と呼んだ。これが、国際連合の濫觴(らんしょう。始まり)。

 国際連合は、対枢軸(すうじく)軍事同盟として生まれた。(中略)国際連盟が、仮面をかぶった列強政治(disguised powers politics)だとすれば、国際連合は、むき出しの列強政治(naked[ネイキッド] powers[・パウアズ・] politics[ポリティックス])である。(176-180ページ)

(貼り付け終わり)

 国際政治はどんなに取り繕ってみても列強政治、大国間政治でしかない。国連はそのむき出しの場所だ。見かけがきれいであっても、その下には硬質の、残酷な大国間の駆け引きと論理が存在する。私たちはそのことを理解しておかねばならない。

(貼り付けはじめ)

●「安保理常任理事国からのロシア解任、「選択肢」と英」

3/1() 23:04配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/088f06b5433bd13f426021bdd8e902f8794adb05

AFP=時事】英国のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相の報道官は1日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、5か国で構成する国連安全保障理事会(UN Security Council)の常任理事国からロシアを解任する案を、英政府として議論する用意があると表明した。

 報道官は記者団に対し、「首相はこれに関して立場を示していない」としながらも、「われわれはロシアが外交的に孤立することを望んでおり、それを達成するために全ての選択肢を検討するということは言える」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News

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●「ロシア非難決議否決 日本など80カ国超賛同も―国連安保理」

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2022022600292&g=int

 【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は25日午後(日本時間26日午前)、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、即時撤退を求める米国主導の決議案を採決に付したが、ロシアが拒否権を行使し否決された。理事国15カ国中、米欧など11カ国が賛成し、中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)は棄権した。

 米国は否決を見据え、決議案への賛同を示す共同提案国を理事国以外にも広く募り、日本を含む80カ国以上が名を連ねた。ロシアの国際的孤立を強調するのが狙いだ。

 トーマスグリーンフィールド米国連大使は、採決前、「簡単な投票だ。国連憲章を支持するなら『イエス』、ロシアの行動に同調するなら『ノー』か棄権だ」と迫った。

 結果、動向が注目された中国だけでなく、日米オーストラリアとの連携枠組み「クアッド」の一角であるインドも棄権に回った。インドのティルムルティ国連大使は「外交の道が断念されたのは遺憾だ」と理由を説明した。

 ウクライナのキスリツァ国連大使は会合での演説中、出席者に犠牲者への黙とうを要請。約10秒間祈りをささげた後、議場からは自然と連帯を示す拍手がわき上がった。ロシアのネベンジャ国連大使は鼻で笑ったが、ロシアの孤立を印象付けた。

 安保理決議案は否決されたが、米欧などは意思表示のため、国連総会で同内容の決議採択を目指している。ただ、総会決議に法的拘束力は無い。

 安保理は2014年にも、ウクライナ南部クリミア半島のロシア併合をめぐる住民投票を無効とする決議案採択を目指したが、ロシアが拒否権を発動して否決された。その際も中国は棄権している。

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ウクライナをめぐり国連を舞台にして米露が世界の世論を争う(U.S. and Russia Battle for World Opinion at U.N. Over Ukraine

-ブリンケンは今でも外交上の出口を探している。

コラム・リンチ、ロビー・グラマー、ジャック・デッチ筆

2022年2月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/17/us-russia-un-ukraine/

アメリカは、クレムリンがウクライナの首都キエフの占領を目指し、空、海、陸軍を派遣してウクライナへの侵攻を準備していると警告しており、アメリカとロシアは木曜日の国連安全保障理事会で緊迫した言葉による戦闘を展開した。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、ミュンヘン安全保障会議のためにベルリンを訪れていたが一時的にニューヨークに戻り、ロシアのセルゲイ・ベルシニン外務副大臣が輪番議長を務める国連安全保障理事会で演説を行った。これは事態の緊急性を示すものだった。

ブリンケン氏は15カ国が参加した安全保障理事会の席上、「今日、私たちは会議を開いているが、平和と安全に対する最も差し迫った脅威は、ロシアによるウクライナへの侵略である。アメリカの情報諜報機関の報告によれば、ウクライナに対する攻撃が今後数日のうちに行われることを示唆している」と述べた。ブリンケンは続けて「これは、何百万人もの人々の生命と安全、そして国連憲章(United Nations Charter)とルールに基づく国際秩序(rule-based international order)の根幹を脅かす危機的状況である」と発言した。

ブリンケン国務長官の国連安全保障理事会の出席は、「国連安全保障理事会を、ロシアに対する国際世論を結集し、その外交的孤立を演出するための世界に向けた劇場(global theater)として利用する」というアメリカの戦略の一部である。国連安保理はロシアにウクライナの国境を尊重するよう強制する力をほとんど持たない。ブリンケン国務長官は、ウクライナ国境から軍を撤退させるというロシアの主張を否定し、ロシアのメディアが「国民の怒りを最大化(maximize public outrage)」し、「戦争の正当化の根拠を作り上げる(lay the groundwork for an invented justification of war)」ための大規模な偽情報キャンペーンを行っている兆候など、米国が考えるロシアの戦争戦略について詳細に説明した。

ブリンケン長官は次のように予測した。「ロシア政府は、ロシア国民やウクライナ国内のロシア系住民を守るために、ロシアが対応しなければならないという宣言を出すだろう。ロシアのミサイルや爆弾はウクライナ全土に落下するだろう。通信は妨害され、サイバー攻撃によってウクライナの主要機関が機能しなくなるだろう。その後、ロシアの戦車と兵士は、すでに詳細な計画が立てられ、明確に設定された重要な目標に向かって前進するだろう。その目標には、280万人の市民が暮らす、ウクライナの首都キエフも含まれると考えている」。

バイデン政権は、ロシアの軍事計画を白日の下に晒すことによって、モスクワに戦争のための信頼できる口実を与えず、ウラジミール・プーティン大統領を説得して、外交的出口を選択させることができるという希望を表明している。ブリンケン国務長官は、来週ヨーロッパでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談することを提案した。また、NATO・ロシア協議会と欧州安全保障協力機構(Organization for Security and Co-operation in EuropeOSCE)の会合を提案し、重要な国々の指導者たちによる首脳会談への道筋をつけることを目指している

ロシア代表のベルシニンは、「欧米諸国がロシアはウクライナを攻撃するとの根拠のない非難を行っている」と述べ反撃した。ベルシニンは安保理理事会の出席者たちに、「カメラに向かって大見得を切りたいという誘惑に負けないように」、そして「この会議をサーカスのようにしないように」と訴えた。

ベルシニンは、2月16日にロシアがウクライナに侵攻するという米国のリーク情報を嘲笑し、「いわゆる侵攻が行われるとされた日付は既に過ぎている。私たちからのあなた方への助言としては、厄介な状況に自ら進んで飛び込まないということだ」と述べた。

今月の国連安全保障理事会の議長を務めるロシアは、ウクライナ東部の一部を支配するロシアに支援された分離主義勢力と政治的な協議を行うことを政府に要求している、ミンスク合意をウクライナ側が遵守していないとを強調するために木曜日に会議を召集した。ベルシニンは「明らかなことを見ようとしない西側諸国のダチョウのような姿勢に、私たちは非常に失望していると言わざるを得ない」と述べた。

ウクライナに駐在しているミッコ・キンヌネン欧州安全保障協力機構特別代表は、ミンスク合意の全締約国が完全に合意内容を履行できていないと指摘し、一方の締約国に責任を押し付けるのは「適切ではない」と述べた。

ロシアのパブリック・ディプロマシー(public diplomacy)は、過去のアメリカの情報諜報活動の失敗(intelligence failure)によって利益を得ている。特にジョージ・W・ブッシュ(息子)元大統領が第一次湾岸戦争後、サダム・フセインが大量破壊兵器(weapons of mass destruction)を保有しているという誤った主張に基づいてイラクを侵攻したことから利益を得ている。当時のコリン・パウエル米国務長官が2003年2月に行った安全保障理事会での説明で、炭疽菌の模擬瓶を振り回して、イラクが大量の生物兵器をテロ兵器として使用する能力があると虚偽の説明をしたことを、ロシア当局者は頻繁に引き合いに出している。

ブリンケンは、アメリカの情報の信頼性に対する懸念に直ちに反論し、「アメリカの情報諜報活動が結果的にうまくいかなかった過去の事例を思い起こすことで、アメリカの情報に疑問を投げかける人がいることは承知している。しかし、明確にしておく。私が現在ここにいるのは、戦争を始めるためではなく、戦争を防ぐためなのだ」と述べた。

木曜日の会議に先立ち、ロシアは、ウクライナのドンバス地方でロシア語を話す人々に対して、ウクライナ軍が「大量虐殺」を行ったとする報告書を国連に提出したドンバス地方は、現在、ロシアの支援を受けた分離主義勢力が実効支配している。バイデン政権の最高幹部たちはこの主張に疑問を投げかけ、ロシアの侵攻の口実になる可能性があると指摘した。

ブリンケンは国連で次のように発言した。「ロシアはこの出来事を民族浄化(ethnic cleansing)や大量虐殺(genocide)と表現するかもしれない。この議場にいる私たちが重要視している概念、そして私の家族の歴史に基づいても非常に重要な概念を馬鹿にしている」。 ブリンケン米国務長官の継父はホロコーストの生存者だ。

アメリカ国務省のネッド・プライス報道官は、国連での会議に先立つ水曜日、記者団に対し、「過去数週間にわたり、ロシア当局者とロシアのメディアが、侵略の口実になるような話を数多く報道機関に植え込んでいるのを目撃してきた。こうした行動は、ロシアがウクライナに対する軍事行動の口実にするために展開している偽りの物語(false narrative)である」と述べた。

一方、アメリカ連邦議会の指導的立場にある議員たちからは、戦争回避のための外交努力が挫折し、プーティンが侵略計画を続けるのではないかという懸念の声が上がっている。連邦上院外交委員会委員長ロバート・メネンデス連邦上院議員は木曜日にMSNBCの番組に出演し次のように述べた。「これはプーティン理解入門初歩であるが、残念ながら、プーティンによって外交の窓が閉ざされつつあり、彼が前進することはウクライナ人にとっても、ロシアにとっても悲劇的な間違いである。私は状況についてますます懸念を強めている」。

バイデン政権と西側諸国の政府高官たちによる戦争への警告が熱を高まる中で、ブリンケン米国務長官の演説は行われた。ワシントンとその同盟諸国は数週間前から、ロシアの偽旗作戦(false-flag operations)による侵攻の可能性を指摘し、ロシアのウクライナ攻撃を防ごうとしてきた。しかし、これまでのところ、ウクライナの首都キエフに近い隣国ベラルーシを含むウクライナの国境付近でのロシア軍の増派と展開は継続中だ。

ロイド・オースティン米国防長官は2月17日に、ブリュッセルのNATO本部で演説を行いその中で、ロシアが将兵やヘリコプターを増派し、黒海での態勢を強化し、血液バンクを前線に移動させたと述べ、軍事行動が迫っている可能性を示唆した。これは、民間企業マクサーの衛星画像と一致し、この48時間でロシア軍がベラルーシに野戦病院(field hospitals)を建設し、ウクライナ国境に届く範囲に攻撃ヘリを増派していることを示したものだ。

木曜日の朝、ウクライナ軍は、ロシア連邦議会が独立を認めるよう推進しているドネツク州とルハンスク州で、親ロシア派の分離主義勢力が発射した砲弾が少なくとも32発となったと発表した。キエフからポーランド国境に近い西部の都市リヴィウに移転した在ウクライナ米国大使館は、分離主義勢力が幼稚園と高校を襲い、少なくとも教師2名が負傷し、村の電力が途絶えたが、こうした攻撃はロシア軍が行ったものとして非難している。「ドンバスにおける侵略者は明らかだ。それはロシアだ」と駐ウクライナ米国大使館はツイッター上に投稿した。米国大使館は、この攻撃をミンスク合意の「憎むべき違反(heinous violation)」と呼んだ。

ヨーロッパ諸国の指導者たちもこのような意見に同調している。木曜日にキエフを訪れたリズ・トラス英外相は、現地でこの攻撃を知った後、「これはクレムリン作成の作戦書からそのまま出てきたものだ」とツイートした。

クレムリンがここ数カ月、ウクライナ国境付近での軍備増強を加速させて以来、ワシントンとモスクワの関係は確実に悪化している。先週、モスクワはアメリカ大使館で2番目に高い地位にある外交官をロシアから追放した。米国大使館のバート・ゴーマン次席公使は、視察が終わる前に国外退去を余儀なくされた。米国務省の報道官は、「ロシアによる我が国の次席公使に対する取り扱いは全くもって正当な根拠を欠いたものであり、私たちはこれをエスカレートした措置とみなし、対応を検討している」と述べた。

ロシアは昨年、ロシア駐在を許可するアメリカからの外交官の数を制限した。そのため、アメリカ政府はロシア国内の複数の米国領事館を閉鎖し、モスクワの米国大使館も人員削減を余儀なくされた。それに対して、バイデン政権はアメリカ駐在のロシアからの外交官の数を減らすという報復措置は取っていない。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




 古村治彦です。

 

 今回は、安倍晋三内閣の一員である小渕優子経済産業大臣の政治資金を巡るスキャンダルについて書きたいと思います。

 

 問題は、小渕氏の後援会が有権者を破格の安さで観劇をさせていた、後援会が本来払うべき代金の差額分を支払っていた、これは「有権者への利益供与」となり、公職選挙法に違反している可能性が高いということです。簡単に言うと、小渕氏の後援会が有権者に接待をした、それは恐らく選挙の時に投票してくださいということもあるのだろう、ということです。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「小渕経産相:政治資金「デタラメ」と週刊誌 16日発売」

毎日新聞 20141015日 1400分(最終更新 1015日 1729分)

http://mainichi.jp/select/news/20141015k0000e040230000c.html

 

 小渕優子経済産業相の関係する政治団体の政治資金を巡り、16日発売の週刊新潮(10月23日号)が、使途の不適切さを指摘する記事を掲載することが15日、分かった。

 

 タイトルは「小渕優子経産相のデタラメすぎる『政治資金』」。記事によると、東京・明治座で開かれた有名歌手らが出演する「観劇会」を巡り、地元の政治団体「小渕優子後援会」(群馬県中之条町)は2011年までの2年間で計約1690万円を明治座に支払った。一方、収入は約740万円しかなく、差額の約950万円を後援会が負担した形になっていると指摘。観劇会には有権者が招かれていることから、仮に収支が政治資金収支報告書記載の通りであれば、破格の安さで観劇させたことになり、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に違反する可能性があると指摘している。

 

 また、後援会など関係3団体が親族の経営するブティックに支出した資金について「秘書がネクタイやハンカチを購入し、ギフトラッピングして議員会館に送った」とする関係者の証言を紹介。さらに地元のネギ農家に支払った約100万円も、贈答用のネギ購入代だった可能性があると指摘している。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 経済産業大臣として原子力発電所の再稼働問題でも厳しい質疑に晒されているところに、今回のスキャンダルです。小渕大臣は針のむしろに座らされているような気持ちになっていることでしょう。

 

 私は、今回のスキャンダルを大変残念に思います。それは、一人の若い政治家が、しかも自民党の若手リーダーと嘱望され、また、田中角栄の率いた七日会の伝統に連なる政治家が葬り去られようとしているからです。

 

 第二次安倍内閣は内閣改造を行い、新たな大臣が任命されたのですが、スキャンダル続きです。松島みどり法務大臣、江渡明聡防衛大臣、山谷えり子国家公安委員長・内閣府特命担当大臣(拉致問題担当)がその対象となってきました。しかし、今回の小渕優子大臣のスキャンダルでこれらはすべて吹っ飛びました。私は山谷えり子大臣のネオナチ活動家とのつながり、社会的に問題を起こしてきたある宗教団体とのつながりの方がかなり大きな問題であり、また、2020年の東京オリンピック開催に向けて、早速、国立競技場の解体工事を巡り不正入札問題が起きていることの方が重大だと考えています。

 

 小渕優子大臣は最初からスケープゴートとして準備されていたのではないかというのは私の考えです。内閣改造の前、小渕優子氏の名前がマスコミを賑わせました。「将来の総理」「小泉進次郎と並ぶ期待の若手」「幹事長就任か?」などど。そして、実際には女性初の経産大臣となりました。私は、「安倍総理も自民党の将来を考えて、若手リーダー小渕氏を鍛えるために抜擢したのか」と考えていました。しかし、今回の件で、どうもそうではないのではないかと考えるようになりました。彼女の存在は、「野党の皆さん、どうぞここを攻めてください、国会審議でも(民主党の経産省・元通産省出身者や計算大臣経験者の方が小渕氏よりもずっと強い)、スキャンダルでも(宗教やネオナチでやられるよりは政治とカネの方が野党も攻めやすい)」ということだったのだろうと思います。

 

 政治とカネの問題は、国民の劣情を刺激し、政治家への反感を一気に高めます。「政治家は甘い汁を吸っている」「料亭に行っていいもん食ってんだろ、俺たちの税金で」ということになります。そして、マスコミを使えば、一気にリンチ的なところまで行きます。しかし、ここで少し冷静に考えてみる必要があります。

 

 日本の戦後政治は自民党の一党支配が長く続きました。そして、自民党政治に良くも悪くも活力を与えてきたのは派閥政治です。この派閥、大きなものとして、田中系、岸・福田系、大平系があります。戦後政治誌を概観してみると、不思議なことがあります。それは、スキャンダルで潰されていく政治家の多くが田中系であるということです。岸・福田系はほとんどいません。このことは知っておくべきことだと思います。

 

 そして、政治とカネを巡る問題で、私たちが改めて思い出さねばならないのは、故小室直樹博士の故田中角栄元総理に関する言説です。
 


 小室直樹博士は、1994年にクレスト社から『田中角栄の遺言 官僚栄えて国滅ぶ』という本を出版されました。これは、2011年にビジネス社から『日本いまだ近代国家に非ず 国民のための方と政治と民主主義』として新装版として出版されています。

 

 この本の中で、小室博士は、田中角栄のロッキード裁判のおかしさを書いておられるのですが、デモクラシーと政治家についても卓見を述べておられます。『田中角栄の遺言』から引用したいと思います。

 

(引用はじめ)

 

つまり、デモクラシーにはベラボウにカネがかかる。それは、デモクラシー諸国における常識である。デモクラシーを自然状態に放ったらかしておいても存続し続けるなんて、彼らはけっして考えない。まことに貴重なまのだから、膨大なおカネをかけても、これを維持する値打ちがあると思っている。

 

ところが日本人の考え方はまったくの逆。政治改革に関する議論は、金権政治はよくないから、カネがかからない政治にしようというのが、犯すべからざる大前提になっている。

 

これは、実はデモクラシーの否定につながる。カネをかけてでも守りたいのがデモクラシーなのに、カネがかからず、腐敗、堕落さえしなければいいという。思い出してもみよ。大正デモクラシー(当時、民本主義と訳された)が、相当に発達していたにもかかわらず、一気に崩れたことを。議会の政党が、政友会も民政党も金権政党に堕落して、汚職に次ぐ汚職、国民は、これに愛想を尽かしたからだが、その直後に軍部独裁政治が始まった。

 

すなわち、日本人には汚職をデモクラシーのコストと考えるセンスがなかった。膨大なカネがかかるものだということを国民が理解しなかった。そこで軍人と右翼が暴れて、滅明断事件、それから五・一五事件、二・二六事件が起こり、ついにデモクラシーは葬り去られた。ところが、その後にできたのが近衛文麿の政治であり、その後の軍人政権。(14-15ページ)

 

(引用終わり)

 

 この小室直樹博士の文章を今一度噛み締めたいと思います。政治家をカネを巡るスキャンダルで潰してしまうことは、結局、私たちの首を絞めてしまうことになる、と小室直樹博士は警告しているように思います。

 私たちは一時の激情に駆られて、多くの政治家たちを葬ってきました。その結果、デモクラシーは形骸化し、官僚が支配する国となりました。そして、現在のような息苦しさ、閉塞感に満ちた社会に生きています。今回の小渕大臣のスキャンダル、また同じことを繰り返してよいとは、私は思いません。

 

(終わり)









 

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