古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:政府効率化省

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年1月20日に第2次ドナルド・トランプ政権が発足し、イーロン・マスクが率いる政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)が各政府機関の調査を行った。「急襲(blitzkriegblitz)」という言葉がぴったりだった。政府効率化省は、米国国際開発庁をはじめとするいくつかの政府機関の閉鎖と人員削減、予算削減を行おうとしているが、目標の予算の2兆ドル(約290兆円)の削減(連邦政府の予算は約7兆ドル[約1020兆円])まではまだまだ遠い道のりだ。現在、連邦議会ではトランプ大統領肝いりの予算案が共和党内部の意見対立もあり、連邦下院でだいぶ修正されており、連邦上院での更なる修正も行われる。予算案については、イーロン・マスクは「失望」しており、更に、もうすぐでトランプ政権から去る(自身のビジネスに専念するため)ことになっている。マスクとトランプは最後には意見の対立があり、イーロンが静かに政権を去るということになりそうだ。関連の記事を以下に貼り付ける。

(貼り付けはじめ)
●マスク氏、減税法案に「失望」表明 トランプ氏と意見対立鮮明に

日本経済新聞 2025529

【ワシントン=高見浩輔】米政府効率化省(DOGE)を実質的に率いる起業家のイーロン・マスク氏が、連邦議会下院が可決したトランプ減税の延長法案を批判した。米CBSテレビが5月28日、インタビューの一部を明らかにした。同法案を推進するトランプ米大統領との意見対立が鮮明になっている。

■マスク氏、「DOGEの取り組み損なう」

マスク氏は「財政赤字を削減するどころか、さらに拡大し、DOGE チームが行っている取り組みを損なうような巨額の歳出法案には率直に言って失望した」と話した。超党派組織の責任ある連邦予算委員会(CRFB)は大型法案によって政府債務が2034会計年度までの10年間に3.1兆ドル(約450兆円)膨らむと試算している。225年末に期限を迎える個人所得減税の恒久化やチップ収入や残業代への免税措置を盛り込んだ一方、歳出削減を巡っては低所得層向けの支援策をどこまで削るか調整が難航した。防衛や国境警備には増強には2000億ドルを超える額が新たに積み増された。

多くの公約を詰め込んだ法案は「1つの大きく美しい法案」と名付けられ、トランプ氏は可決後に「我が国の歴史上最も重要な立法措置の一つ」と称賛した。これに対し、マスク氏はインタビューで「法案は大きいか美しいかのどちらかだ」と皮肉った。

マスク氏は政治活動への批判が経営する米テスラの不買運動に発展したことを受け、政権から距離を置くと表明済みだ。5月20日には政治献金も今後は大幅に減らす考えを明らかにした。

■政権から距離、批判も控えめか

今回の批判も下院が5月22日に法案を可決して1週間が経過した後に発信された。マスク氏は、政権交代前の202412月、議会の与野党指導部が合意した「つなぎ法案」を直後にSNSへの大量投稿で批判して、撤回させた。当時と比べて発言は控えめだ。

DOGEが進めた連邦政府職員のリストラは、多くの訴訟に発展するなど強引さが批判されてきたが、財政規律の回復を求めるマスク氏の主張は政権発足前から一貫している。

共和内には、低所得層向けの公的医療保険といった歳出を大幅に削減すれば、2026年の中間選挙で逆風になると慎重な声が根強い。

財政改善を求める保守強硬派と大幅な歳出削減に反対する穏健派との綱引きのなかで、トランプ氏も調整に加わりお互いに妥協点を見いだしたのが今回の大型法案だ。議会の共和党指導部は上院での修正を経て7月の成立を目指している。
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●「イーロン・マスク氏、政権去る 歳出削減果たせず―米」

時事通信 外信部202505292031分配信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025052900798&g=int#goog_rewarded

 【ワシントン時事】トランプ米大統領に近い実業家イーロン・マスク氏は28日、X(旧ツイッター)に「特別政府職員としての予定された任期が終了する」と投稿し、トランプ政権を去る意向を明らかにした。行政の無駄を省く新組織「政府効率化省(DOGE)」を率い、政府部門縮小の旗振り役を担ったが、強引な手法に反発は大きく、歳出削減を果たせないまま退場となった。

 大口献金者としてトランプ氏の信頼を勝ち得たマスク氏は、政権内外で権勢を振るった。世界最大の援助機関だった米国際開発局(USAID)を「犯罪組織だ」と決め付け、政府縮小の「先輩」であるアルゼンチンのミレイ大統領から贈られたチェーンソーを集会で振り回すなど、過激な言動で耳目を集め続けた。

 しかし、DOGEが音頭を取った政府職員の大量解雇や一部政府機関の解体は混乱を招き、野党民主党や労組は「マスクこそ切れ」「影の大統領だ」と批判。内部対立を辞さないやり方を巡っては、ルビオ国務長官やベセント財務長官ら重要閣僚との確執も報じられた。

 批判の高まりを背景に、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務め、本人の富の「源泉」でもあった米電気自動車(EV)大手テスラは急激な販売不振に見舞われた。マスク氏は4月、「テスラにより多くの時間を割く」と表明することを余儀なくされた。

 トランプ政権は「歳入より歳出が問題だ」(ベセント氏)とし、歳出削減を掲げるが、トランプ氏肝煎りの大型減税関連法案ではかえって財政赤字が大きく増える見通し。与党共和党の財政規律派からは「DOGEが暴露した無駄の削減を実現する必要がある」(上院議員)との声が上がる。

 マスク氏が米テレビに対し、「赤字を増やす大規模な支出法案には失望している」と発言したことが27日伝わると、ボート行政管理予算局(OMB)長官はDOGEが示した削減案を含めた減額修正予算の提案を「来週にも行う」と表明した。トランプ政権が「小さな政府」を志向する限り、マスク氏の隠然とした影響力は残りそうだ。

(貼り付け終わり)

蒸気の記事で重要なのは、「低所得層向けの支援策をどこまで削るか調整が難航した」という部分だ。トランプ政権はポピュリズム政権であり、アメリカ国民の連邦政府やワシントン政治に対する不信感から生まれた政権だ。トランプ政権の支持基盤は、貧しい白人労働者だ。彼らはしかしながら、政府からの福祉に頼っている面もある。共和党内の財政規律派は、こうした貧しい人々向けの支援策を削りたい(その裏には富裕層への減税をしたいという考えがある、共和党は金持ちの党であるというアイデンティティは残っている)ということになる。トランプは、法案を支持しているが、イーロンとしてはそんなことをして良いのか、それならまず政府の無駄を削減する方が先だということになっているのだろう。

 更に、下記論稿にあるように、イーロン・マスクの突破力をホワイトハウスの行政管理予算局(Office of Management and BudgetOMB)のラッセル・ヴォート局長は利用してきた。下記論稿には次のように書かれている。「振り返ってみると、連邦政府の官僚機構に対する統制強化こそがDOGEの真の目的で、コスト削減は副次的なものだということは明らかだ。ヴォートは常に連邦政府の官僚機構を統制することを目標としていた。マスクは、自身の奇行で注目を集め、「政府の効率(government efficiency)」(結局のところ、誰がそれを望まないだろうか?)が全てであるかのように見せかけることで、その目的から目を逸らし、トランプへの批判を逸らす役割を果たした」。
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ラッセル・ヴォートとイーロン・マスク

 ヴォートは官僚機構を削減し、統制を強化するために、イーロン・マスクを利用した。それはお互いにとってウィンウィンの関係だ。しかし、イーロンが政権を去るとなると、そうした動きが頓挫することになる。そして、妥協派であるスコット・ベセント財務長官などが力を持ち、トランプ革命は骨抜きにされることになるだろう。ポピュリズムは常に敗北で終わるということを歴史は教えてくれるが、トランプもその教訓から逃れることは難しいのかもしれない。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクはドナルド・トランプにとっての役に立つ馬鹿(訳者註:良い活動をしていると信じているが実際にはそれと気付かずに悪事に荷担している者)だった(Elon Musk Was Donald Trump’s Useful Idiot

-世界一の富豪が利用された可能性が高まっている。

ギデオン・リックフィールド筆

2025年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/14/elon-musk-donald-trump-doge-russell-vought/?tpcc=recirc_trending062921

イーロン・マスクは、政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)で一体何を達成したいと望んでいたのだろうか?

先月末、反省の色を見せるマスクは、政府効率化省について「期待したほどの効果を上げていない(not as effective as I’d like)」と認めた。この準政府機関は、主に連邦職員の解雇、規制の撤廃、契約や助成金の取り消しによって、これまでにアメリカ政府に1700億ドルの節約をもたらしたと主張している。しかし、これらの節約額の大半については、証拠を示していないか、あるいは大幅に誇張している。実際には、政府効率化省の杜撰な政府削減策は、ある推計によると、今年、納税者に1350億ドルの追加負担をもたらすことになる。そして、実際の連邦政府支出は、ドナルド・トランプ大統領の就任以来、増加している。

マスクが現在、アメリカ政府関連の業務を縮小し、経営難に陥っているテスラをはじめとする所有する事業に注力する中で、波乱に満ちた在任期間中に彼を悩ませてきた疑問は依然として渦巻いている。彼は本当に連邦予算から1兆ドルを削減できると信じていたのだろうか、それともインサイダーとしての立場を利用して契約を獲得し、競合他社の情報を入手し、厄介な規制当局を自社の邪魔者から排除しようとしていただけなのだろうか? 人工知能を用いて政府のプロセスに革命を起こそうとしていたのだろうか、それとも単に「意識の高い(wokeness)」人々を排除しようとしていただけなのだろうか? 政府効率化省の真の狙いは、数十もの政府機関にまたがる政府データを統合することで、超強力な監視国家(a superpowered surveillance state)を築くことだったのだろうか?

上記の全てが同時に真実である可能性もある。しかし、コスト削減策としての政府効率化省の惨憺たる失敗は、マスクを他者、特にトランプ政権で最も影響力のある影の実力者の1人である行政管理予算局(Office of Management and BudgetOMB)のラッセル・ヴォート局長の思惑のための道具のように見せ始めている。

マスクが政府効率化省で何をしようと考えていたかを理解するには、彼の経歴を調べると役に立つ。

ウォルター・アイザックソンの『2023年のイーロン・マスク(2023 Elon Musk)』は、しばしば聖人伝的(hagiographic)だと批判されるものの、マスクの伝記作家の中で、彼と真剣に時間を過ごした唯一の人物と言える。CNNの元会長で『タイム』誌編集長でもあるアイザックソンは、マスクが20代半ばまでに、人類にとって不可欠だと彼が信じる3つの要素に基づいた「人生ヴィジョン(life vision)」を描いていたと述べている。それは、破壊的な可能性を秘めたインターネット(the internet, because of its disruptive potential)、気候変動への対応を考えた持続可能なエネルギー(sustainable energy, because of climate change)、そして人類が自らの生存のために他の惑星に植民地化しなければならないと信じていた宇宙旅行(space travel, because he believed the human race must colonize other planets to ensure its own survival)だ。

リンクトイン(LinkedIn)の共同創業者となる前に、ペイパル(PayPal)でマスクと共に働いていたリード・ホフマンは、アイザックソンに次のように語った。「イーロンはまずヴィジョンを描き、その後、それを経済的に実現するために埋め合わせる方法を見つける」。ペイパル時代の同僚であるマックス・レブチンは、「イーロンの最大の才能の1つは、自分のヴィジョンを天からの命令のように伝える能力だ」と付け加えた。

テスラはマスクにとって気候変動への取り組み方であり、スペースXは火星への道筋だった。神聖な使命感に突き動かされたマスクは、安全性や環境への影響について些細な懸念を抱く政府の規制当局を、人類の生存を阻む障害としか考えなかった。

この好例が、『ワシントン・ポスト』紙の記者ファイズ・シディキの新著『傲慢無比:イーロン・マスクの崩壊(Hubris Maximus: The Shattering of Elon Musk)』に示されている。アイザックソンとは異なり、マスクと面会のなかったシディキは、2016年からテスラのCEOであるマスクが、オートパイロット[Autopilot,](部分的自動運転モード[the car’s partial self-driving mode])搭載車による死亡事故の調査において、米国高速道路交通安全局(National Highway Traffic Safety AdministrationNHTSA)とその姉妹機関である米国運輸安全委員会(National Transportation Safety BoardNTSB)の職員と繰り返し衝突した様子を描写している。

シディキによると、テスラの主張の1つは、高速道路ではオートパイロットが「事故データと比較した場合、通常の運転よりも安全だった」というものだった。2022年のテスラのイヴェントで、マスクは「自動運転機能の追加が負傷や死亡を減らすと信じるようになった時点で、それを導入する道義的義務があると思う」と述べた。この論理に従えば、オートパイロットの導入を遅らせようとした規制当局は人々を殺していることになる。

官僚制と規則に対する嫌悪感に加え、マスクの「まず削減、後で修正(slash first, fix later)」というコスト削減の姿勢、計画に対する全般的な軽蔑、そして自分が常に正しいという揺るぎない信念が加わる。これらの特徴は、『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者ケイト・コンガーとライアン・マックが2024年に出した著書『文字数制限:イーロン・マスクはいかにしてTwitterを破壊したか(Character Limit: How Elon Musk Destroyed Twitter)』で巧みに記録されている。マスクはTwitter(現在はX)の従業員の5分の4を削減し、プラットフォームは当初は苦戦したものの、崩壊には至らなかった。なぜ同じアプローチが連邦政府には機能しないのだろうか?

マスクと、同じく衝動的で自信家でもあるトランプが昨年夏にDOGE構想を思いついた時、彼らが綿密に練られた計画を持っていたとはにわかには信じ難い。しかし、ヴォートという人物は、注目を集めたいだけの道化師が率いる準政府機関が、自身の目的を影に隠しながら、その目的の達成に役立つ可能性を間違いなく見抜いていた。

キリスト教国家主義者を自称するヴォートは、極右改革計画「プロジェクト2025」の立案者の1人だった。これは、トランプ氏が選挙運動中に否定したほど有害な計画であり、その後、ヴォートを行政管理予算局(OMB)に任命して、その効果的な実行を任せた。

2年前の演説で、ヴォートは「私たちは、官僚たちにトラウマになるような影響を与えたい。朝起きたら、仕事に行きたくなくなるようにしたい(We want the bureaucrats to be traumatically affected. When they wake up in the morning, we want them to not want to go to work)」と述べた。彼の最終的な目標は、妨害的な左派が跋扈する「ディープステート(deep state)」と彼が見なす連邦政府機関を弱体化させ、大統領の手にさらなる権力を与えることだった。

マスクとヴォートの関係の詳細は、『ブルームバーグ』誌のジャーナリストであるマックス・チャフキンの先月の記事で明らかになった。チャフキンは、マスクが選挙後に「ヴォートと定期的に連絡を取り合っていた」と述べ、「ヴォートに近い人々から、マスクは彼の政策を国民に訴える役割を担う存在」と見なされ、ヴォート自身からもマスクは「戦力増強装置(force multiplier)」と見なされていたと記している。

DOGEにおけるマスクの手法、例えば試用期間中の連邦職員(労働保護が最も少ない職員)の解雇や連邦データシステムの掌握といった手法が、ヴォートではなく、マスク自身の発明であったかどうかは定かではない。おそらくOMB長官であるヴォートは、マスクの強引さに匹敵する者はいないと認識し、マスクが企業で用いてきたのと同じ電撃戦的な精神を政府にも持ち込むよう促したのだろう。

政府は無駄と詐欺の巣窟だと確信していたマスクは、できるだけ多くの職員を解雇し、若い支持者にAIツールとデータへのアクセスを与えるだけで、政府支出を削減できると本気で信じていたのかもしれない。(実際には、政府支出を大幅に削減することは可能だが、それは主に防衛、金融、医療といった産業への実質的に補助金となっているものを廃止することであり、それは政府運営の合理化だけでなく、大幅な政策変更が必要となるだろう。)

マスクはまた、利益相反(conflicts of interest)は関係ないと考えているのかもしれない。結局のところ、彼の事業が全て人類のためになるのであれば、政府との契約が増えることは人類のためになるのではないだろうか?

しかし、その過程でマスクは官僚にトラウマを与えるというヴォートの目的を確実に達成した。そして、マスクが一歩退いた現在も急速に進められている政府データの統合は、ホワイトハウスが政敵や不法移民、そして不従順な政府職員を標的にするために利用される可能性がある。

振り返ってみると、連邦政府の官僚機構に対する統制強化こそがDOGEの真の目的で、コスト削減は副次的なものだということは明らかだ。ヴォートは常に連邦政府の官僚機構を統制することを目標としていた。マスクは、自身の奇行で注目を集め、「政府の効率(government efficiency)」(結局のところ、誰がそれを望まないだろうか?)が全てであるかのように見せかけることで、その目的から目を逸らし、トランプへの批判を逸らす役割を果たした。

マスクのDOGEでの任期は、彼自身、ヴォート、そしてトランプが予想していたよりも早く終わりを迎えそうだ。関税をめぐって大統領と対立し、閣僚たちを疎外し、2500万ドルを投じたにもかかわらず州司法選挙で勝利を収められなかったことは、マスクをある種の負債にしていたのかもしれない。彼の潤沢な資金力は、トランプ政権にとって常に一定の有用性を維持することを保証し、彼の所有する企業は間違いなく有利な契約の恩恵を受け続けるだろう。しかし、ここ数カ月の出来事を踏まえると、彼が騙されたと結論づけずにはいられない。

※ギデオン・リックフィールド:元『ワイアード(WIRD)』誌編集長。民主的統治の将来についてのニューズレター「フューチャーポリス(Futurepolis)」を執筆している。Blueskyアカウント:@glichfield.bsky.social Xアカウント:@glichfield

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権の発足後100日の中心人物であり続けたのは、イーロン・マスクだった。政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いて、各政府機関を回り、情報を収集し、米国国際開発庁(USAID)の閉鎖を決定するなど、華々しい動きをしてきた。連邦政府職員の削減はOPM()

マスクは自身の世界観を物理学に基づいており、第一原理思考を通じて複雑な問題をシンプルな公理から解決するアプローチを重視している。マスクはペンシルヴァニア大学で経済学と物理学で学士号を取得し、物理学を専攻するためにスタンフォード大学大学院に進学した(後に中退)。マスクは数学と物理で天才的な才能を示した。そして、彼はこの物理の才能を経営や政策に応用しようとしている。以下の論稿では、イーロン・マスクが物理学の第一原理思考(first principles thinking)で物事を捉えようとしていると主張している。以下に重要な部分を引用する。

(引用はじめ)

「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

(引用終わり)

 橘玲著『テクノ・リバタリアン』で、著者である橘玲氏は、ピーター・ティールやイーロン・マスクを「テクノ・リバタリアン(techno libertarians)」と定義し、彼らは数学的に物事を捉えると分析している。そして、引用したように、非常に明晰に、明快に原理に則り、物事を進めていくということになる。私たち一般人ではしり込みしてしまうようなことを、彼らは平気で進めてしまう。今までのしがらみや伝統から抜け出せないということがイーロン・マスクたちには理解できないだろう。天才的な頭脳を持つ彼らにはヴィジョンが見えており、それに向かって進んでいく。トランプ大統領も一種の天才であり、ヴィジョンが見えている。それを理解できない一般人はついていけない。

 しかし、残念なことだが、数学の天才でも間違うことがある。人間や社会の理解に限界がある。天才的な人間が全能の力を持つことはある種の理想であるが、それはまた危険なことでもある。人間や社会は大変革を短期間で起こすことは難しい。また、短期間で起きた大変革は深刻な副作用をもたらす。そのことは歴史が証明している。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクの第一原理(Elon Musk’s First Principles

-世界一の富豪は、物理法則を政治に応用しようとしている。一体何が問題になるのだろうか?

アダム・トゥーズ筆

2025年3月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/03/25/elon-musk-trump-doge-physics-principles/

イーロン・マスクは世界で最も裕福な人物であり、歴史上最も裕福な人物の1人でもある。しかし、マスクの権力はもはやテスラやX、スペースXから得られる金銭的な富だけに結びついている訳ではない。マスクはドナルド・トランプ大統領との親密な関係によって、新たに設立された政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を通じて、アメリカ政府全体の政策に影響を与えるという大役を与えられている。起業家としての彼の人生は、政治家としての彼の仕事に重要な光を当てている。

マスクはしばしば、物理学が彼の世界観の中心にある(physics is at the center of his worldview)と主張してきた。彼は、ビジネスや生活全般における行動の動機として、自然な第一原理の探求(the search for natural first principles)について語っている。そして、「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

テスラとスペースXの成功が証明しているように、このアプローチには利点がある。しかし、有能な自動車評論家なら誰でも言うように、大きな欠点もある。テスラの車はまるで火星人が設計したかのようだ。まるで、現代の高性能車のシャシー、ステアリング、ブレーキを設計、最適化し、効率的に製造する方法について、業界が何十年もの経験を持っていないかのように。

そして、政治となると、この「ゼロから始める(start from scratch)」アプローチの利点ははるかに曖昧になる。マスクと彼のDOGEティームは、彼の思考習慣を利用して、政府機関、特に米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)を破壊し、財務省決済システムという形でアメリカ政府の仕組みそのものに干渉しようとしている。

もちろん、物理学との類似性から政治や倫理へのインスピレーションを得られることは事実だ。アイザック・ニュートンが現代の政治思想に与えた影響を考えてみて欲しい。経済における均衡の概念(the notions of equilibrium in economics)、均衡の安定性(the stability of equilibria)といった概念は、物理学の類似性、多くの場合は力学から派生したものだ。あるいは、初期のコンピュータ時代におけるサイバネティクス(cybernetics)の影響を考えてみて欲しい。そして、物理学の近いいとこである工学(engineering)について考えると、このことはさらに顕著だ。ウラジーミル・レーニンは、共産主義をソヴィエト権力とロシアの電化(Soviet power plus the electrification of Russia)と定義したことで有名だ。1930年代から1940年代にかけての権威主義的なテクノクラシー運動も、工学から同様のインスピレーションを得た。後にカナダから南アフリカに移住することになるマスクの母方の祖父もこの運動に関わっていた。

物理学を政治に類似させるこうした立場の波及効果(knock-on effect)は2つある。第一に、それは誤った物理学である可能性が高いということだ。第二に、たとえ物理学に基づくアナロジーからイデオロギーを導き出せたとしても、最終的に得られるものは本当に政治的なものなのだろうか? 政治とは議論、意見の相違、人間の感情や思想の戯れであるならば、工学や物理学のアナロジーから政治を導き出すことは、決して額面通りに受け止められるべきではない。それは政治的であり、自らそれを自覚している(ただし、その場合、物理学や力学は単なる比喩に過ぎないことを認めざるを得なくなるだろう)。そうでなければ、それは政治ではなく、実際には政治を抑圧しようとする権威主義的なテクノクラート的ヴィジョンである。

マスクの政策に対する白紙姿勢(Musk’s blank-slate approach)は、そもそも彼がアメリカ政治に前例のない形で関与してきたことの裏返しだ。2024年のトランプ勝利に賭けることで巨額の富を得る方法は数多くあった。しかし、マスクはトランプの個別的な取引の最大の受益者というだけではない。寄付、X、そして個人的な支持を通して、彼はその実現に貢献した。彼はトランプの政治的成功に全面的に関わっている。

紛れもない事実は、マスクが政治関与によって個人的に利益を得てきたということだ。現在、マスクの個人資産は3300億ドルから3500億ドルと推定されている。これは株式市場の動向に応じて変動し、100億ドル上昇したり、100億ドル下落したりしている。つい最近の2024年夏には、彼の資産は1700億ドルと評価されていたが、2023年には1300億ドルまで落ち込んでいた。

その間に何が変わったのだろうか? マスクの個人資産の中核であるテスラの事業見通しについては、根本的な変化は見られない。実際、テスラは苦境に立たされている。消費者がトランプとの新たな関連性を理由にテスラを拒否し始めているからだ。マスクの巨額の個人資産が2倍以上に増加した明白な理由は、トランプの大統領選出馬が成功し、マスクが最大の寄付者であり、そして今やトランプに最も近い人物となったことだ。トランプとのパートナーシップは、マスクの個人的な利益と国家の利益を融合させている。

不正行為(malfeasance)は一切必要ない。利益相反(conflict of interest)さえも必要ない。トランプにとって良いことは、マスクにとって良いことであり、アメリカにとって良いことだ。彼らはそう想像し、それに従って行動するだろう。例えば、スペースXは、その絶え間ない革新と投資によって、既にアメリカの宇宙計画の中核を担う地位を確立している。大統領就任時にアメリカ宇宙軍を創設したトランプは、この計画とスペースXの地位を容易に拡大することができる。そして、マスクは常に自らを歴史の正しい側にいると考えるだろう。

マスクから見れば比較的取るに足らない投資で、彼は自身のヴィジョンの力強さを示し、今や現場で事実を生み出している。おそらく疑問なのは、なぜこれまで誰もこれをしなかったのかということだろう。トランプは明らかに、この種の特異な個人的な影響力に、非常に影響を受けやすい。トランプはビジネスの成功を愛している。マスクほどの資金力を持つ者はいないものの、それでも数十億ドルの富を持つ人は数多く存在する。なぜ大富豪たちは政治システムへの寄付、そして政治全般を操ろうとする努力を、口先だけで済ませているのだろうか? 確かに、数百万ドルが費やされていることは目に見えている。しかし、マスクはツイッター社を買収し、2024年の大統領選挙でトランプをはじめとする共和党候補に2億7700万ドルを投じた。そして、その見返りを見れば、それは目覚ましい成功を収めた投資と言えるだろう。

唯一思い浮かぶ明確な類似点は、ナレンドラ・モディ首相とアンバニ家のようなインドの寡頭政治の支配者たち(oligarchs)との関係だろう。彼らは、単に狭い意味でではなく、より広い意味で、自分たちに有利な方向に流れを変えてくれる政治家に、真に長期的かつ大規模な投資を行った。

この「政治への投資(investment in politics)」は、マスクの事業を活気づけるヴィジョンを取り巻く環境を積極的に形作る、つまり、更なるリスクテイクを可能にするものと考えることもできる。あるいは、彼の政治介入をより防御的なものと捉えることもできる。

歴史が自分に降りかかるのを待ちながら、ただ傍観し、自分の道を進み、富を享受する方が良いのか? それとも、真剣に賭けに出て、どうにかしてこの対立を乗り切ろうとする方が良いのか? マスクは明らかに後者の道を選んだ。リスクや矛盾はあるのだろうか? もちろんある。テスラは中国で大きなリスクを負っている。中国はテスラにとって最大の市場の1つであり、世界の生産量に占める割合は更に大きい。

これがトランプ大統領の貿易政策や、よりタカ派的な側近たちの地政学政策と衝突しないという保証はあるだろうか? もちろんない。しかし、政権内部にいる方が、事態の行方に影響を与え、自社にとって効果的な現実的な解決策を見つける可能性が高くなるだろうか? もちろんある。第1次トランプ政権下で関税免除のロビー活動を成功させたアップルは、その可能性を実証した。マスクは更に上を行くだろう。アップルのCEOティム・クックと同様、マスクも中国の上層部から下層部まで強力な人脈を持っている。おそらく彼は何らかの方法で矛盾を解消できるだろう。マスクが選択肢として考えていないのは、架空の中立の立場に後退することだ。

マスクが極右イデオロギーに傾倒しているのは、南アフリカで育ったせいではないかとの議論が盛んだ。土地再分配や黒人の所有権に関する政策をめぐって、トランプ政権が南アフリカの現政権をいじめようとしていることは、今や明らかだ。マスクが糸を引いているかどうかは別として、トランプの周囲には、より広範な南アフリカの白人グループが存在し、その中でマスクは最も権力を握っている。彼らがこの話題に関する彼の見解を形成していないとは考えにくい。

しかし、より深いレヴェルでは、1970年代から1980年代にかけての南アフリカ政治という実に変幻自在な環境で育ったことが、マスクの政治の根底にあるリスクテイクの形、つまり憲法の腐敗可能性や歴史そのものに対する理解を形成した可能性を考えることは有益である。

アパルトヘイト体制が崩壊し、人種戦争(race war)という終末論的なシナリオ(これは今日でも南アフリカに色濃く残っている)が政治生活に影を落としていた。あらゆるものが争奪戦に晒されていた。いかなる政治体制も排除することはできなかった。リベラルな想像力を育むには不向きな環境だった。マスクの父親はリベラルだったと言われているが、南アフリカの文脈では、それは黒人の代表をある程度認めるための多院制議会について議論することを意味していた。マスクによれば、彼自身はアパルトヘイトの柱であった南アフリカ軍への徴兵を避けるために国を離れたという。

マスクやピーター・ティール、そしてシリコンヴァレーの仲間たちに共通しているのは、あらゆる物事について「考えられないことを考える(think the unthinkable)」のが好きだということだ。それは、科学的な公理に基づいて政治を考える習慣につながる。アパルトヘイト後期の南アフリカのような状況では、全てが修正される可能性がある。第一原理に立ち戻るしかない。

しかし、ヨーロッパの右翼政策におけるマスクの冒険は、彼の動機が彼自身も認めているほど明らかではないことを示唆している。ベルリン郊外に建設した工場周辺では、ドイツ政界から度々ビジネスプランへの抵抗を受け、不快な思いをしてきた。報道によると、マスクはベルリンの極端にヒップなパーティーシーンの一部と険悪な関係にあるという。現時点では、報復のためにドイツを混乱させるという考えをマスクはかなり好んでいるのだろう。そして、その感情的な計算に第一原理を当てはめてみると、ドイツの極右は強力な支持に値するという結論がすぐに導き出される。

極右政党「ドイツのための選択肢[Alternative for Germany]AfD)」の共同党首アリス・ヴァイデルとの会話を目にすると、マスクはほとんど世間知らずに思える。政策面では、AfDは一般的に極右とされているものの、アメリカの共和党よりも右翼的という訳ではない。唯一の違いは歴史であり、だからこそマスクは、ドイツ人はナチスの過去をあまり心配する必要はないと結論づけたのだ。

マスクが決してしないのは、マイクロソフトで築いた莫大な財産を、世界の公衆衛生や教育といった従来型の慈善事業に注ぎ込んだビル・ゲイツのような人物の、おとなしく追随することだ。ゲイツはベビーブーマー世代で、伝統的な趣味を育み、定評のあるアメリカ美術コレクションを所有している。一方、マスクは1970年代から1980年代にかけて、社会化が乏しく、やや野性的なコンピュータキッズだったが、型破りなエネルギーによって、自らを世界一の富豪へと押し上げた。型破りな思考(thinking outside)こそが、彼が知っている唯一無二の道なのだ。

政府効率化省におけるマスクの最終目的が何なのか、そして彼の政治哲学が最終的にどこへ向かうのかは、誰にも分からない。マスク自身も含めて誰にも分からない。

政府インフラへの侵入やオフィスビルの占拠といった形で行われる敵対的な監査(hostile audits)は、政治史において決して珍しいことではない。例えば、ユーロ危機の後期には、いわゆるトロイカ(ヨーロッパ委員会、ヨーロッパ中央銀行、国際通貨基金)の検査官がギリシャ政府庁舎を訪れ、コンピュータやファイルにアクセスし、ギリシャの将来の支出形態を決定した。

しかし、これには何年もかかり、一定の手続きが踏まれた。第二次トランプ政権発足後数週間で私たちが目にしたのは、2021年1月6日の暴動に似た攻撃だ。予算400億ドルの米国国際開発庁は、アメリカ政府機関の中では小さな部分を占めるに過ぎないが、世界の政府開発援助(official development assistanceODA)の20%以上を占めている。この機関の破壊は、近年の政府改革において前例のない事態だ。

おそらく戦略があるのだろう。マスクは現状打破を望んでいるようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像を絶するほどの効率化が実現できると考えているのかもしれない。

彼が変革を推進するために活用しているティームは、10代のエンジニア、彼の様々な事業からの出向者、そして一流弁護士といった構成だ。レイオフは、教育省から中小企業庁、消費者金融保護局に至るまで、ほぼ全ての連邦政府機関に及んでいる。もし彼らが何らかの計画を実行しているとすれば、それは場当たり的なものに思える。

しかし、そこには戦略があるのか​​もしれない。マスクは物事を打破したがっているようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像もできなかったほどの莫大な効率化が実現できると考えているのかもしれない。スペースXNASAで事実上実現したように、政府の大部分を民間企業に置き換えることさえ構想しているのかもしれない。しかし最近、彼は自身のヴィジョンを説明するのに、醜悪なガーデニングの比喩に頼っている。

機関の一部を残すのではなく、機関全体を削除する必要があると私は考える。それは雑草を放置するのと似ている。雑草の根を抜かなければ、雑草は簡単にまた生えてくる。しかし、雑草の根を取り除いても、雑草が再び生えてこなくなる訳ではなく、生えにくくなるだけだ。

庭師とは、もちろん、雑草を識別し、手入れが必要な植物と区別するための実践的な知識を培った人のことだ。言い換えれば、原則に従って仕事をする人ではない。

※アダム・トゥーズ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学歴史学教授、ヨーロッパ研究所部長。経済、地政学、歴史のニューズレター「チャーターブック」著者。Xアカウント:@adam_tooze

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 下記論稿は、トランプ政権の発足後100日の動きを政治学・国際関係論の4つの理論(モデル)を使って分析している。難しい内容ではないので、軽い勉強だと思ってお読みいただければと思う。

1つ目は「リアルポリティックの復活」で、トランプ政権が強硬な現実政治へと回帰し、中国と西半球を優先しているという分析になる。トランプ政権は、アメリカの国防費を増額させつつ、ロシアとの交渉での和解を図るなど、リアリズムに基づく外交政策が実行されている。

2つ目のモデルは「外交政策としての国内政治」で、トランプ政権の外交政策が実際には国内政策からの影響を受けているという分析になる。このモデルは、トランプが不人気な連邦機関を解体しようとする試みや、投資家やウォール街の不安を引き起こす貿易政策によって裏付けられている。

3つ目のモデルでは、トランプ政権が依然として従来型の共和党政権の外交政策を維持しつつ、トランプ自身の好みに寄り添った形で変化を求める「トランプ・レーガン統合」という分析だ。このモデルはトランプ特有の行動様式や奇異な外交方針の背後にある矛盾も示している。

最後に4つ目のモデルでは、共和党内での外交政策に関する内部対立が外交政策の混乱の要員になっているとされる。国家主義的かつ保護主義的なグループが、他方では超タカ派の国際主義者が存在し、トランプ自身はそのどちらにも傾く可能性が示唆されている。

このように、トランプ政権の外交政策は多様なモデルを通じて説明可能である。それぞれのモデルに説得力がある。社会現象の見方は様々である。どれかが完全に正しいということもなく、完全に間違っているということはない。

 大事なことは、社会現象を前におろおろしたり、慌てたりすることではない。「どうしてそのようなことが起きたのか」ということを分析することであり、そのために、社会科学の理論(モデル)を利用することだ。そして、歴史を良く学び、同様の事例を参考にして、予測を立ててみることだ。こうしたことは専門家の専有物ではない。

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トランプ政権の混乱を説明する4つのモデル(Four Explanatory Models for Trump’s Chaos

-第2次トランプ政権がアメリカの外交政策において、停滞(inertia)ではなく変革(change)を目指していることは明らかだ。

エマ・アシュフォード筆

2025年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/24/trump-100-days-chaos-explanatory-models-foreign-policy/

ウラジーミル・レーニンはかつて、何十年も何も起こらない時期もあれば、数週間だけで、何十年間で起こるようなことが起きる時期もあると述べた。この基準に照らせば、ドナルド・トランプ大統領就任後の最初の100日間は、少なくとも20年間の外交政策の転換期と言えるだろう。

第2次トランプ政権の「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」という外交政策へのアプローチは、その混沌とする状況においてのみ一貫している。注目を集める世界的な紛争へのアメリカのアプローチは、ロシアとの交渉への軸足を移し、ガザ地区での停戦を推進し、イランに対する軍事行動の脅しと新たに交渉された核合意の提案の間で揺れ動いている。

一方、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)は突然閉鎖され、食糧援助で満たされた倉庫は腐るに任せられた。移民問題では、エルサルヴァドル政府への移民収容のアウトソーシングなど、限界を押し広げる動きが見られた。更に言えば、トランプ大統領の気まぐれで電灯のスイッチのように関税がオンやオフになるなど、政権の貿易政策の不確実性によって金融市場にもたらされた混乱もある。

それでは、この混乱をどう理解すればいいのだろうか? 第2次トランプ政権がアメリカ外交政策において、停滞ではなく変革を目指していることは明らかだが、その方向性は不明確だ。それでも、これまでの選択を説明する上で、検討に値する4つのモデルがある。

●モデル1:リアルポリティックの復活(Model No. 1: The Return of Realpolitik

トランプの外交政策を理解する上で最初に適用できるモデルは、おそらく最も一貫性のあるものでもある。それは、トランプ政権が強硬な現実政治への回帰(a hard-nosed return to realpolitik)を目指し、ヨーロッパや中東よりも中国と西半球(the Western Hemisphere)を優先しているという考え方だ。この文脈において、トランプ政権とヨーロッパの同盟諸国との複雑な関係は、アメリカがヨーロッパに過度に関わり過ぎた時期(period of overreach)の後に、アメリカの戦略的関与のバランスを取り戻そうとするニクソン流の試みの一環と捉えられるだろう。実際、この見方では、トランプ政権はルールに基づく国際システム(a rules-based international system)における、アメリカのリーダーシップを放棄しているのではなく、むしろ既存の偽善(existing hypocrisy)を認め、民主政治体制や人権といった漠然としたリベラルな理想よりもアメリカの利益が常に重要であることを認めているに過ぎない。

トランプ政権の対欧アプローチは、おそらくこのトランプの意思決定モデルの最も強い証拠(the best evidence for this model of Trump’s decision-making)となる。同盟諸国に国防費増額を迫り、ロシアとの交渉による和解を通じてウクライナ戦争からアメリカを離脱させようとする政策は、どちらもリアリストたちが長らく支持してきた政策だ。トランプのリアルポリティック・モデルを裏付ける証拠は他にもある。敵対国と同盟国の両方に対して、国家運営の手段を積極的に利用しようとする姿勢は、世界に対する取引的なアプローチを反映している。関税の脅威を用いてカナダ、メキシコ、あるいはヨーロッパ連合(EU)に政策問題を迫ることは、長期的には問題となるかもしれないが、現時点では短期的な成果をもたらす可能性がある。

第2次トランプ政権が突如として西半球への懸念を表明したことも、このモデルに当てはまる。就任直後のマルコ・ルビオ国務長官によるラテンアメリカ歴訪、パナマ運河周辺における中国の存在に対するトランプ政権の懸念、そして一見奇妙に見えるグリーンランド併合の構想など、その背後にはハードパワーの論理がある。一方、副大統領を含むトランプ大統領の主要任命者の多くは、明らかに現実主義的な世界観を持っている。

しかしながら、このリアリティ・ポリティック・モデルは他の分野では行き詰まっている。イスラエル政策を説明できないし、外交政策機関の骨抜き化(the gutting of foreign-policy agencies)も容易に説明できない。大国間の競争(great-power competition)に重点を置く政権であれば、アメリカのソフトパワーの基盤を揺るがそうとはしないだろうと予想されるにもかかわらず、第2次トランプ政権はヴォイス・オブ・アメリカや米国国際開発庁(USAID)の解体によってロシアや中国がその空白を埋めるという訴えにほとんど無関心である。同様に、関税政策もこの枠組みに当てはめるのは難しい。中国とのデカップリングはリアルポリティックな論拠として成り立つかもしれないが、近隣諸国への制裁や世界の準備通貨としてのドルの地位の剥奪は論拠として成り立たない。

●モデル2:外交政策としての国内政治(Model No. 2: Domestic Politics as Foreign Policy

トランプ政権の外交政策を説明するもう1つのモデルは、民主党寄りのケーブルテレビでよく聞かれるものだ。外交政策は主に国内政策によって動かされている、あるいは富裕層を更に豊かにすることを目的としているというものだ。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員は、米国国際開発庁の廃止を「世界で最も裕福な人物であるイーロン・マスクが、世界で最も貧しい人々に食料を提供している米国国際開発庁をターゲットにしている」と表現した。

確かに、政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)の行動、そして新政権が連邦政府官僚機構に対して明らかに抱いている敵意は、共和党が長年試みてきた、グローヴァー・ノーキストの印象的な表現を借りれば「政府を浴槽に沈めて溺れさせるまで縮小する(shrink the government until one can drown it in a bathtub)」という試みの継続と解釈できる。政権は一部の連邦機関(例えば、米国国際開発庁や教育省)を解体する一方で、他の機関(例えば、国防総省や社会保障局)は保護してきた。標的とされた機関は、概して共和党の有権者や寄付者から最も人気のない機関だった。

同時に、トランプ政権の対外経済政策はウォール街や経済界を非常に不安にさせており、市場は事実上暴落している。関税の目的については、大きな不確実性(significant uncertainty)がある。それはアジアとのより良い貿易協定のための手段なのか、それともメキシコやカナダとの移民政策や麻薬政策における譲歩(concessions)なのか? それとも、ドル安を促進し、国内の再工業化(domestic reindustrialization)を促進するための広範な戦略なのだろうか? スコット・ベセント財務長官がニューヨークの銀行家たちに語った印象的な発言の1つは、アメリカンドリームの本質は単に中国からの「安物(cheap goods)」ではないということだった。これはアメリカの経済エリートにとって、決して心地よいものではなかった。

国内政治への懸念は、他の地域にも反映されている。2月にミュンヘン安全保障会議でJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、NATOへのアメリカの関与に関する部分だけでなく、移民問題や文化問題への重点、そして、ヨーロッパとアメリカの間に価値観の相違があるという主張でも注目された。ドイツ総選挙の直前に極右政党「ドイツのための選択肢(Alternative for Germany)」と会談するというヴァンス副大統領の型破りな選択もまた、第2次トランプ政権がヨーロッパ各地の右派政党を高く評価していることを反映している。

しかしながら、国内政治というレンズだけでは、トランプ政権の外交政策の選択を理解するには限界がある。政権が引き続き中東を重視していること、特にイスラエルに白紙委任(carte blanche)を与えようとしていることを説明するのは難しい。実際、マフムード・ハリルをはじめとする親パレスティナ派の抗議者たちに対する移民弾圧が続いていることは、外交政策と国内政策の逆転した関係を示唆している。ガザ紛争におけるイスラエルへの支持が、国内における言論の自由の弾圧を促しているのだ。国内の視点だけでは、第2次トランプ政権がウクライナから撤退したいという明らかな意向を説明することはできない。

●モデル3:第一期への回帰(Model No. 3: A Return to the First Term

トランプの外交政策を説明する3つ目のモデルは、彼の第1期の任期を振り返る必要がある。実際、これは共和党議員やワシントンDCに拠点を置く外交官の間では通説となっており、彼らは2016年から2020年にかけての第1次トランプ政権と同様に、政権初期の混乱は間もなくほぼ従来型の共和党政権に取って代わられると主張している。そのような政権はトランプ独特の才能の要素を持つかもしれないが、概ねジョージ・W・ブッシュ政権に遡る、主権(sovereignty)、単独行動主義(unilateralism)、強硬なタカ派的な軍事力(hawkish military power)を重視する共和党の外交政策の優先事項を継承するだろう。

結局のところ、トランプの第1期の国家安全保障戦略(National Security Strategy)は比較的従来型であり、彼のスタッフは主にワシントンDCの官僚だった。北朝鮮の独裁者である金正恩との首脳会談や、ツイートによる外交政策への傾倒は確かに刺激的な展開をもたらしたが、外交政策全体としては現状から大きく逸脱することはなかった。第2次トランプ政権は、伝統的なレーガン主義的な外交政策の方向性をほぼ維持しながらも、党をトランプ自身の好みに少し近づける、一種の「トランプ・レーガン」統合(“Trump-Reagan” synthesis)へと向かっているだけだと主張する人さえいる。

このモデルでは、就任後100日間における共和党の正統派(Republican orthodoxy)からのより過激な逸脱の多くは、トランプの性格のせいにするだけで説明できる。例えば、ロシアへの接近は、トランプ特有のストロングマン(強権的な人物)との直接交渉を好む傾向(Trump’s own idiosyncratic preferences for negotiating personally with strongmen)、そして、おそらくノーベル平和賞への渇望によって説明できるかもしれない。しかし、第1次政権と同様に、多くの共和党エリートは、トランプが迅速な和平合意を勝ち取れないことが明らかになるにつれ、ウクライナ問題、そしてより一般的な外交政策において、より伝統的なアプローチに傾倒するだろうと想定している。

しかし、この理論には矛盾(contradictions)も明らかだ。イスラエルについて考えてみよう。伝統的な共和党外交政策関係者の間では、イスラエルへの全面的な支持は依然として当たり前のことだ。第2次トランプ政権は、イスラエルへの全面的な支持を声高に表明する一方で、アブラハム合意(the Abraham Accords)の拡大・延長といった、ガザ紛争の継続によって阻まれている他のトランプ政権の優先事項との両立に苦慮している。ヴァンスは、アメリカはイランとの戦争には関心がないと公言しており、トランプ自身も、イランの核施設攻撃を望むイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の意向を支持することを拒否したと報じられている。

こうした立場、そし​​てその他多くの立場は、アメリカはイランの核開発計画への攻撃においてイスラエルを支援すべきであり、ウクライナへの武器供与を継続すべきであり、アメリカの広範な同盟関係を維持すべきだと考える、より伝統的な連邦議会にいる共和党タカ派とトランプ政権を対立させている。元連邦上院院内総務で熱烈なタカ派だったミッチ・マコーネル上院議員は、トランプ大統領が国防総省の高官の有力候補と目していたエルブリッジ・コルビーにさえ反対票を投じた。他の共和党連邦議員たちは、コルビーがイランとの戦争を支持する意向はないとほのめかしていた。この政権が伝統的な共和党員にとってトランプとレーガンの融合を意味するのかどうかは、まだ明らかではない。

●モデル4:共和党外交政策対決(Model No. 4: Republican Foreign-Policy Showdown

こうした論争は、トランプ政権を理解するための4つ目、そして最終的なモデルを示唆している。私たちが目にする混乱は、外交政策をめぐる共和党内の内紛(Republican infighting)が一因となっている。一方では、党内に台頭する国家主義的かつ保護主義的な一派が見られる。彼らは中国への関心を強めており、アイソレイショニストではないものの、もはやネオコンではないことも確かだ。この一派は国防総省、副大統領周辺、そしてマスクや政権内のシリコンヴァレー陣営にも広く代表されている。

他方では、より伝統的で超タカ派的な国際主義的な共和党員たちが、政権を自分たちの好みに回帰させようとしている(例えば、ルビオやマイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官など)。トランプ自身の本能は最初のグループに傾いているように思えるが、第1期の任期中に学んだように、彼はしばしば説得可能である。このモデルが正しければ、トランプ政権の外交政策の混乱と混沌は、政権内の派閥間の意見の相違、つまり人事と政策への影響力争いによる対立に一部起因していると言えるだろう。

これらの派閥が対立する問題は小さくない。ロシア、イラン、そしてある程度イスラエルに関しても、根本的に意見が一致していない。政権のウクライナ特使を務めているキース・ケロッグ退役陸軍中将が、キエフ問題で大統領と副大統領の見解に食い違い始めていたにもかかわらず、疎外された事例を考えてみよう。あるいは、シグナルゲート事件では、ヴァンスがイエメンのフーシ派への攻撃を遅らせるよう土壇場で嘆願したが、それが非生産的で無駄だと判断したものの、却下された。

もしこの対立が就任後100日間の混乱の一部を説明するのであれば、トランプ自身も前回よりもアドヴァイザーたちの指示に従うことをはるかに嫌がっていることもますます明らかになっている。ウォルツは、自身の見解が大統領の見解と頻繁に食い違うことに苦悩しているという報道もある。一方、Xパーソナリティのローラ・ルーマーは、大統領を説得し、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)のウォルツのスタッフ数名を、忠誠心の欠如とネオコンへの共感を理由に解任させた。この傾向が続けば、第2次トランプ政権は、従来の共和党外交政策の考え方である第3のモデルではなく、ここで論じた第1および第2のモデル(どちらもより明確な「アメリカ・ファースト(America First)」の色合いを持つ)に近づくと予想される。対照的に、先週、ピート・ヘグセス国防長官のより「抑制された(restrained)」上級スタッフ3名が不明瞭な理由で突然解任されたことは、その逆を示唆しているのかもしれない。

信じるのが難しいかもしれないが、トランプ政権はようやく、アメリカ人が政権を判断する基準となる就任100日目を迎えたばかりだ。第1期の任期では、主要な危機や外交政策上の決定の多くは、この時点を過ぎてから発生した。そして多くの点で、政権の外交政策がどこへ向かうのか、あるいは連邦議会や裁判所といった他のアクターが、ここ数週間に見られた行き過ぎをどの程度抑制できるのかを判断するのは、時期尚早である。実際、外交政策の最も重要な決定要因は、共和党の外交政策エリートたちがトランプを自分たちの意のままに操れるのか、それともトランプが彼らに自分の意向を押し付けることができるのか、ということなのかもしれない。このため、今のところ、トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)を1つだけ定義することは不可能である。

しかし、これらのモデルは、100日を過ぎようとする中で展開する外交政策のドラマを評価する方法を提供してくれる。今のところ、ここで提示した最初の2つのモデルは、トランプ大統領の決断を説明する上でより有用であるように思われる。しかし、外的ショックから人事をめぐる内部対立に至るまで、他の要因も第2次トランプ政権全体の外交政策の方向性を形作る上で依然として重要な役割を果たす可能性がある。そして、トランプ大統領自身が設定した主要目標の達成可否は、政策そのものを形作る可能性がある。例えば、ウクライナでの交渉が失敗に終われば、トランプ大統領は当初交渉を支持した現実主義的な保守派から遠ざかる可能性がある。イランへの壊滅的な爆撃作戦は、ネオコンの正当性を永久に失わせる可能性がある。

確実に言えることは、今後4年間は過去100日間と同じくらい混沌としたものになる可能性が高いということだ。そろそろ頭痛薬(headache medication)に投資すべき時かもしれない。

※エマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。スティムソン・センター「米大戦略再考(Reimagining U.S. Grand Strategy)」プログラムの上級研究員、ジョージタウン大学の非常勤助教、そして『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』の著者。Xアカウント:@EmmaMAshford

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 第2次ドナルド・トランプ政権は発足後から100日を過ぎた。政権は発足後、怒涛のスタートダッシュを見せて、アメリカ国内、そして、世界中を驚かせた。様々なことが起きて、いささか疲れ気味という感じになっている。トランプ政権には4年間しか時間がなく、次の選挙には出られないので、最後の1年はどうしてもレイムダック化(無力化)してしまうこと、2026年11月には中間選挙が実施され、上下両院での共和党の過半数が崩される可能性もあること、こうしたことから、2年間で公約の多くを進めようという意図が見える。

 トランプ政権の原理は「アメリカ・ファースト」であり、これはアメリカ国内問題解決最優先主義ということになる。アメリカ国内の諸問題を解決するために、政権は財政赤字と貿易赤字の削減を行おうとしている。肥大化した連邦政府と官僚機構の削減と、高関税とドル安誘導を行おうとしている。そして、関税と共に、不法移民対策によって、「国境を守る」という政策を進めている。

 これらのスピード感あふれる施策によって、摩擦も起きている。トランプ政権の大統領令や施策に対して、裁判所に提訴するということも多く起きている。政権側と司法(裁判所)が対立する構図にもなっている。

 アメリカの国内、国外の大変革は、国内、国外での「アメリカ政府の役割を変える」ということである。歴代の大統領たちは、「現状を変える」「ワシントン政治を変える」と訴えて当選してきた。しかし、結果は大きな変化は見られず、失望の4年間、8年間となった。そして、また、新しい人物が「変化」「変革」を訴えて当選して、失望させるというパターンに陥ってきた。それは、これまでの歴代の大統領たちがワシントンのインサイダーであり、「常識人」であったからだ。アメリカ国民はアウトサイダーのトランプに賭けた。子の賭けは失敗に終わるだろうが、それはアメリカの衰退という大きな流れの中で仕方がないことだ。それでも何とかしようとしたというトランプの存在は後世の歴史家たちに評価されていくだろう。

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ドナルド・トランプ大統領が就任100日で政府を刷新した5つの方法(5 ways Trump reshaped the government in the first 100 days

アレックス・ガンギターノ筆

2025年4月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5271255-trump-executive-actions-federal-government/

ドナルド・トランプ大統領の就任後100日間は、主要な選挙公約の実現を目指した数々の大統領令(executive orders)や政策で、ホワイトハウスと連邦政府全体の常識を覆した。

その中には、複数の機関の削減、数千人の連邦職員の解雇、そして政権に異議を唱える多数の訴訟が提起される中での裁判所の介入回避などが含まれている。

以下で、トランプ大統領が2期目の最初の3カ月で政府を刷新した5つの方法について挙げていく。

(1)連邦政府機関の再編と削減(Federal agency overhauls, cuts

ドナルド・トランプ大統領は、億万長者のテック起業家イーロン・マスクを政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)の責任者に任命した。政府効率化省は、連邦政府機関の無駄を特定することで、連邦政府の抜本的な改革を目指している。

CNNの分析によると、少なくとも12万1000人の連邦職員が解雇またはレイオフされ、少なくとも30の機関が影響を受けている。

政府効率化省は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSIDA)を骨抜きにし、退役軍人省(Department of Veterans Affairs)の職員を大幅に削減し、保健福祉省(Department of Health and Human Services)などの省庁の再編に長官らと協力した。一部の削減は迅速かつ広範囲に行われ、トランプ大統領はマスクに「斧(hatchet)」ではなく、「メス(scalper)」で削減してほしいと公言した。

ホワイトハウス高官たちは、今回の改革は連邦政府の非選官僚から権力を奪い、選挙で選ばれた公職者に「権力を戻す(return power)」ために必要だと主張している。マスクはトランプの選挙運動中にアドヴァイザーとして就任し、大統領は彼を政府効率化省の責任者に任命した。

ホワイトハウス高官たちは、「私たちは民主政治体制とは全く相反する官僚制という牢獄(the prison of bureaucracy)の中で生きている。大統領が行った最大の改革の1つである最初の戦いは、行政部内の闘争(intrabranch fight)、つまり大統領と官僚たちの闘争だ」と述べた。

今回の改革後、マスクは政府における特別任務を縮小し、進行中の改革の指揮を長官たちに委ねる予定だ。マスクの自動車会社テスラは攻撃の標的となり、彼の仕事に対する国民の認識も一部で酷評されている。

(2)大統領令で連邦議会を回避する(Executive orders bypassing Congress

ホワイトハウスによると、トランプ大統領は就任後100日間で140件以上の大統領令に署名した。

就任宣誓の日から、移民問題や社会問題から、1月6日の被告人問題、教育問題、法律事務所への攻撃など、あらゆる問題に対処してきた。

大統領が大統領執務室から執行したこれらの大統領令は、財政権を持つ連邦議会を除外していた。共和党が多数派を占める連邦上下両院は、連邦議会の権限が縮小されているとについてほとんど言及していない。

大統領は重要な法案の1つ、レイケン・ライリー法に署名した。1月に署名されたこの法案は、窃盗、強盗、万引きの容疑で逮捕された、合法的な滞在資格を持たない幅広い移民を拘留することを義務付けている。

ホワイトハウス高官によると、ホワイトハウスは今後100日間で、税制および国境関連法案の成立に向けて連邦議会への圧力を強めると予想されており、法案の成立が近づくにつれ、トランプ大統領は連邦議会への働きかけを強めるだろう。

マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は月曜日に大統領と会談し、議題について協議したが、連邦下院における共和党のわずかな過半数と、相反する優先事項のため、連邦議会が法案を成立させるには長い道のりが残されている。

(3)法廷闘争を回避する(Skirting court challenges

ホワイトハウスは、国外追放、連邦政府職員の解雇、軍におけるトランスジェンダーの兵士に関する措置など、大統領令に対する数十件の異議申し立てに直面している。

トランプ大統領が18世紀に制定された「外国人敵対者法(Alien Enemies Act)」を行使したことに対する法的異議申し立てが最も大きな注目を集めている。この法律は、外国への「侵略(invasion)」を理由に移民を国外追放することを可能にする。

その結果、数百人の移民が国外追放に巻き込まれており、トランんプ政権は証拠を示すことなく、彼らがヴェネズエラが発祥のトレン・デ・アラグア・ギャングのメンバーであった、あるいはその他の犯罪行為を行ったと主張している。

キルマー・アブレゴ・ガルシアのケースでは、トランプ政権は裁判所文書の中で、エルサルヴァドル国籍のアブレゴ・ガルシアの国外追放は「行政上の誤り(administrative error)」であったと認めたが、ホワイトハウスはその後、この見解に異議を唱えている。連邦最高裁判所からアブレゴ・ガルシアの帰国を「促進(facilitate)」するよう命じられたにもかかわらず、トランプ政権はアブレゴ・ガルシアがアメリカに帰国することはないと主張している。

トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアは現在エルサルヴァドル当局の管轄下にあるため、アメリカの裁判所が帰国を義務付けることはできないと主張している。

別のケースでは、連邦判事が先週、「サンクチュアリ」地域(“sanctuary” jurisdictions)が「連邦資金へのアクセスを受けないようにする」大統領令は違憲の可能性が高いとの判決を下した。その後、トランプ大統領は月曜日、連邦移民当局との連携を怠ったサンクチュアリ都市への取り締まりを強化する大統領令に署名した。

複数のホワイトハウス高官は、裁判所が官僚機構の味方をしていると主張している。

(4)司法省、アメリカ移民・関税執行局の役割を拡大する(Expanding roles of DOJ, ICE

トランプ大統領は、最重要課題の執行の大部分を担う2つの機関、司法省(Department of JusticeDOJ)とアメリカ移民・関税執行局(Immigration and Customs EnforcementICE)の役割を拡大した。

トランプ大統領は、パム・ボンディ司法長官に対し、民主党の寄付者プラットフォーム「アクトブルー」への外国人によるダミー献金疑惑の捜査から、「反キリスト教的偏見の根絶(eradicate anti-Christian bias)」に向けたタスクフォースの指揮まで、幅広い任務を担うよう指示した。

トランプ政権はまた、司法省公民権局において一連の政策変更を実施し、「女子スポーツへの男性の介入排除()keeping men out of women’s sports」や「反キリスト教的偏見の根絶」といった優先事項に司法省職員たちが重点的に取り組むよう指示した。

アメリカ移民・関税執行局は、強制送還件数を急速に増やす任務も負っている。フロリダ州では州法執行機関と共同で「前例のない(first-of-its kind)」作戦を実施し、数日間で100人近くを逮捕した。また、日曜日の早朝にはコロラド州コロラドスプリングスのナイトクラブを急襲し、100人以上を拘束した。

加えて、FBIは金曜日、ミルウォーキー郡巡回裁判所のハンナ・C・デュガン判事を前例のない方法で逮捕した。デュガン判事は、アメリカに不法滞在している移民が法廷で逮捕を逃れるのを手助けし、トランプ大統領の移民政策を妨害しようとした疑いがある。

(5)民間機関をターゲットにする(Targeting of private institutions

トランプ大統領は、主要大学や法律事務所を含む様々な民間機関に対し、資金提供を停止し、企業への打撃を与えようとしている。

トランプ政権は、ハーヴァード大学が採用・入学手続きの変更、多様性・公平性・包摂性(diversity, equity and inclusion)プログラムの廃止といったトランプ大統領の要求を拒否したことを受け、ハーヴァード大学への22億ドルの資金提供を停止した。

ハーヴァード大学はトランプ政権を提訴しているが、トランプ大統領はハーヴァード大学の免税措置にも狙いを定めており、国土安全保障省はハーヴァード大学の留学生受け入れを停止すると警告している。

パーキンス・コイ法律事務所やウィルマー・ヘイル法律事務所といった法律事務所は、トランプ大統領の政敵と協力していることで、トランプ大統領の怒りを買っている。大統領は様々な機関に対し、これらの法律事務所の従業員の機密情報取扱許可(セキュリティクリアランス)の剥奪、連邦政府施設へのアクセスの停止、そして政府と法律事務所との契約内容の精査を指示している。

パーキンス・コイ法律事務所とウィルマー・ヘイル法律事務所は、トランプ大統領の命令は違法であり、政府に関わる法律業務を遂行する能力に重大な危害をもたらすとして、裁判所に法的救済を求めている。司法省は、国家機密を誰に委託するかは大統領の裁量に委ねられていると主張し、これに反論している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 今回は、興味深い論稿をご紹介する。民主党系のストラティジストが書いた文章で、内容は、イーロン・マスクが行っている政府効率化(連邦政府職員の削減、連邦政府機関の一部の閉鎖、予算の削減)がトランプと支持者たちを離間させるというものだ。 

論稿の著者ブラッド・バノンは「マスクはトランプのスケープゴートにされる可能性がある。民主党は、トランプを弱体化させることが最終目標であり、マスクを攻撃することではないと認識すべきである」と主張している。失業保険や生活保護など、連邦政府の予算が入っている福祉制度や労働対策制度を利用している低所得者層にとって、連邦政府の予算削減は生活に直結する大問題だ。

これまでにブログで何度も書いているが、トランプは、アメリカの貧乏白人、白人労働者たちの支持を受けて、彼らの代表として、既存の政治を壊すためにワシントンにやって来ている。貧しい白人、白人労働者たちが望んでいるのは、雇用であり、働かせてくれさえすれば、そして、生活できるだけの給料を保証してくれれば、福祉に頼ることなく、自分で生活を立て直すという考えを持っている。

 彼らの考えはもっともで素晴らしい。しかし、実態は厳しいだろう。トランプ政権下の4年間でどれだけの雇用が、一度、製造業が去ってしまった地域に戻るだろうか。しかも、彼らが望むだけの賃金となると、どうしても競争力は限定されてしまう。そうなると、彼らもまた我慢を強いられる。自分たちの思い通りにはいかないし、福祉に頼るということも続くことになるだろう。

 以下の論稿で重要なのは、後半の以下の記述だ。「マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した」。

 既に、日本でも報道されているように、政権内部には不協和音が起きつつある。最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)でも、政権内の不協和音、衝突については触れているが、より鮮明になっているようだ。私は違和感を覚えていたが、それが「長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)」という形で言語化されている。トランプ政権はポピュリズム政権であるが、大富豪であるイーロン・マスク、そして、ピーター・ティールが支えていることの違和感はあった。これが顕在化しつつある。

 トランプという巨大な存在によって、そうした不協和音を抑えることができるだろうが、それがいつまで続くだろうかということは私の最新の興味関心ということになる。

(貼り付けはじめ)

マスクは民主党がトランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔となるかもしれない(Musk may be the wedge Democrats need to separate Trump from his working-class base

ブラッド・バノン筆

2025年2月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/5158364-elons-musk-vs-trump-division/

イーロン・マスクはメディアの注目を独占している。この状況が続く限り、彼にはそれを楽しんでいて欲しい。マスクはトランプ大統領の影を薄くし始めており、トランプのようなナルシストが長く我慢するはずがない。

木曜日、クールなサングラスをかけ、チェーンソーを振り回すマスクは、今年のCPAC保守派会議の主役だった。FOXニューズのショーン・ハニティとの共同インタヴューでは、トランプを圧倒した。トランプが脇役に甘んじていた最近の大統領執務室での会合の報道では、マスクと息子が中心人物だった。カルヴィン・クーリッジがネイティヴ・アメリカンの頭飾りを身につけて以来、最悪の大統領写真撮影の機会だった(意識が高ぶっていることを許して欲しい)。

マスクはフレッド・アステアの真似を精一杯やっている。重力に逆らって天井で踊っている。この綱渡りは、彼の失墜が更に悲惨なものになることを意味するだけだ。

2週間前に『エコノミスト』誌が実施した全国世論調査によれば、トランプ大統領は既に不人気であり、人命が失われる数が増えるにつれ、事態はさらに悪化するだろうことは間違いない。

トランプの支持率も、2度目の就任以来低下している。彼に対するネガティヴな評価が警戒すべきレヴェルにまで達すれば(そして必ずそうなるだろう)、脚光を浴びることを好むこの大企業経営者であるマスクは大統領のスケープゴート(scapegoat)にされるだろう。トランプの元側近の多くと同様に、彼も使い捨てられる存在だ(He is disposable like so many of Trump’s former associates)。民主党は、私たちの最終目標は大統領を弱体化させることであり、マスクを弱体化させることではないことを忘れてはならない(Democrats must remember that weakening the president, not Musk, is our ultimate goal)。マスクがトランプの意のままに動いているのであって、その逆ではないことを明確にすべきだ(We should make it clear that Musk is doing Trump’s bidding and not the other way around)。

国民の60%以上は、マスクがトランプに大きな影響力を持っていると考えているものの、マスクにそう望んでいるのはアメリカ人の5人に1人だけだ。共和党員の3人に1人でさえ、この大企業経営者マスクは大統領に過大な影響力を持っていると考えている。

トランプは、マスク、Metaのマーク・ザッカーバーグ、Amazonの『ワシントン・ポスト』紙のジェフ・ベゾスといった超富裕層のテック業界の巨人たちと肩を並べている。ワシントン・ポストで最近起きた騒動は、トランプの企業カルテルがいかに集中的な権力を持っているかを如実に示している。公益団体コモン・コーズは、マスクを批判するラップアラウンド広告を一面、裏面、そして中面1ページに掲載することを提案した。しかし、注文を受けた後、ワシントン・ポストは尻込みして広告掲載を断った。ワシントン・ポストのモットーは、「ワシントン・ポストで民主政治体制は闇の中で死ぬ(Democracy Dies in Darkness at the Washington Post)」に変更されるべきだ。

ワシントン・ポストが広告掲載を拒否したことは、言論の自由に対する明白かつ差し迫った脅威だ。また、トランプ、マスク、ベゾスが、機能不全に陥ったアメリカ民主政治体制の心臓部に血液を送り込む情報動脈(the information arteries)を、いかに強大に締め上げているかを如実に示している。

マスクは世界で最も富裕な人物の1人、いや、最も裕福な人物と言えるだろう。彼は政府効率化省をリードする頭脳(the brain behind the Department of Government Efficiency)だ。彼の冷酷な指揮下で在宅医療や学校給食を失う貧しいアメリカ国民のことを、彼には気遣う理由など存在しない。効率化をあえて追求するあまり、彼は大切なものを駄目にし()throw the baby out with the bathwater、何百万人もの人々に奉仕する連邦政府機関を丸ごと潰そうとしている。彼の執拗な追求には、政府撲滅省(the Department of Government Eradication)というより適切な名称がふさわしいだろう。そして、彼が直属する大統領の真の目的はまさに政府の撲滅なのだ。

最近、政府効率化省(DOGE)は移民・関税執行局(the Immigration and Customs Enforcement Agency)で80億ドルの無駄遣いを発見したと主張した。『ニューヨーク・タイムズ』紙が調査したところ、実際の数字は800万ドルだったことが判明した。マスクが80億ドルと800万ドルの違いも分からないのであれば、他に何を間違っているだろうか? 彼は政府支出の効率化(efficiency in government spending)を担うべき人物ではない。

彼はまた、行動と言動において利益相反(conflict of interest)そのものだ。彼の巨大な企業的利益は、彼が担う重要な政府責任と真っ向から衝突している。彼のロケット会社スペースX社は連邦政府の請負業者である。

マスクを嫌うバノンは私だけではない。トランプの大統領顧問を務めたスティーヴ・バノン(私とは血縁関係はない)は、長年の堅固なトランプ支持ポピュリスト勢力(the old diehard Trump populists)と、マスクを中心とするトランプ・ワールドの新たな有力企業勢力(the new dominant corporate wing of Trump World)との間で、MAGA内戦が勃発すると警告している。バノンはこれを、トランプ連合内の億万長者と労働者階級の勢力間の戦い(a battle between the billionaire and working-class elements within the Trump coalition)だと表現した。

民主党と進歩主義派は、この分裂につけ込むことができる。苦境に立たされた労働者世帯を支援するという自らの関与を強調することで、こうした分裂をうまく利用することができる。彼らは、トランプが新政権発足初日に物価を引き下げるという、今や放棄された選挙公約を実行してくれることを期待していた。

分断統治(divide and conquer)は常に敵を倒す効果的な手段だった。私たちはMAGA内の分裂につけ込まなければならない。マスクは、トランプを労働者階級の支持層から引き離すために必要な楔(wedge)となるかもしれない。

※ブラッド・バノン:民主党の全国規模担当ストラティジストであり、民主党、労働組合、そして進歩主義的な問題団体のための世論調査を行うバノン・コミュニケーションズ・リサーチCEO。彼は、権力、政治、政策に関する人気の進歩主義派ポッドキャスト「デッドライン・DC・ウィズ・ブラッド・バノン(Deadline D.C. with Brad Bannon)」の司会者を務めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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