古村治彦です。
アメリカ大統領選挙が終わり、共和党のドナルド・トランプ前大統領の当選、民主党のカマラ・ハリス副大統領の落選の理由について様々な報道が出ている。CNNは出口調査の結果を2016年、2020年、2024年と比較して分析する記事を出している。
この記事によると、中南米出身の人々(男性はラティーノ、女性はラティーナと呼ぶ)はトランプ支持が増えており、男性ではトランプ支持が過半数となったということだ。マイノリティは民主党支持というのがこれまでの常識であったが、ラティーノ男性のトランプ支持の理由の詳細な分析がこれから待たれるところだ。
大学の学位の有無と居住地域の差は大きい。大学の学位を持っている人たちはハリス支持(民主党支持)、持っていない人たちはトランプ支持(共和党支持)であり、居住地域では地方部はトランプ支持、都市部はハリス支持、郊外地域は激戦という構図になっている。大学の学位を持っている人たちの収入が比較総体的に高いことを考えると、所得た高ければハリス支持、低ければトランプ支持となることが容易に推定される。アメリカの分断は大きくなる一方だ。これは日本にとって対岸の火事ではない。日本でも格差社会から分断へと進みつつあるように思われる。
人々は経済問題を最大のテーマと考えていた。インフレと生活費の高騰を何とかして欲しいというのが人々の願いだった。ジョー・バイデン政権が発足以来、アメリカのインフレ率は下がっている。2021年には7%、2022年には6.5%、2023年には3.4%、2024年には2.4%だ。しかし、それが生活の実感として感じられなかったというのはバイデン政権にとっても、カマラ・ハリスにとっても不運だった。そして、人々が4年前に比べて生活が苦しいということになって、他のどの問題よりも経済問題を重視した結果がトランプ支持となった。トランプにとっては雇用創出が最大のテーマとなる。
そして、アメリカ大統領選挙の最大のテーマは「トランプ」そのものということになる。トランプ支持者のほとんどは、トランプを好み、トランプを支持している。一方で、ハリス支持者の一定数は、別にハリスでなくてもよく、トランプが嫌だ、トランプの対立候補だからハリスを応援するという消極的支持である。これでは選挙戦に熱が入らない。私は拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも、バイデン支持の一定数が消極的支持であることを指摘した。民主党は力強い人物を擁立できなかったことが敗北につながったと言えるだろう。
私は『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも述べたが、こうしたアメリカの分断は2016年のドナルド・トランプの大統領選挙初当選以前からはじまっていたと指摘したい。「トランプがアメリカの分断を生み出したのではなく、アメリカの分断がトランプを生み出した」と書いた。バラク・オバマ政権下で既に始まったと見ている。あの時の多幸感(euphoria)と熱狂(enthusiasm)は、今から考えると、日本における小泉純一郎政権誕生の時とよく似ている。こうした熱狂の後には焼け野が原の光景が広がっていたというのは日米共通の実感かもしれない。
(貼り付けはじめ)
トランプの3回の選挙の解剖:アメリカ人は2016年・2020年と2024年に比べてどのように移動したのか(Anatomy of three Trump elections: How Americans shifted in 2024 vs.
2020 and 2016)
-出口調査は分断された国家を明らかにしている
ザカリー・B・ウォルフ、カート・メリル、ウェイ・マレー(CNN)筆
2024年11月6日(アップデート:2024年11月7日)
CNN
https://edition.cnn.com/interactive/2024/politics/2020-2016-exit-polls-2024-dg/
ドナルド・トランプ大統領が歴史的なカムバックを演じ、2度目の大統領選に勝利すると予想されている。トランプが投開票に参加した3回連続の選挙で、この国の政治がどのように変化したかについて、いくつかの重要なポイントがある。
2016年、2020年、2024年のCNNの出口調査結果は、景気低迷(sour economy)がいかにカマラ・ハリス副大統領の足かせとなったか、中絶の権利への支持(abortion rights)が高まったにもかかわらず、ハリスが女性の支持をいかに押し上げることができなかったか、そしてラティーノ男性が特にトランプに引き寄せられたことを明らかにしている。
2024年の選挙におけるCNNの出口調査には、投票日に投票した人、期日前投票や不在者投票をした人の両方を含む数千人の有権者へのインタヴューが含まれている。その範囲により、今年の選挙における有権者の人口動態や政治的見解を理解するための強力なツールとなる。そして、彼らの調査結果は、最終的には最終的なベンチマークである選挙結果そのものに対して重み付けされることになる。それでも、出口調査は依然として世論調査であり、誤差の余地はある。つまり、出口調査は、正確な測定値(precise measurements)ではなく推定値(estimates)として扱う場合に最も有効だ。出口調査の数字が最終的な選挙結果に合わせて調整される前は特にそうだ。
2024年の出口調査データは引き続き更新され、以下のグラフに自動的に反映される。
●女性はハリスに傾き、男性はトランプに傾く(Women lean toward
Harris, and men lean toward Trump)
女性有権者におけるハリスの優位性は、ジョー・バイデン大統領やヒラリー・クリントン元国務長官のいずれも上回らなかったが、中絶問題で女性有権者を動員しようとしていたことを考えると、副大統領にとっては厄介な兆候となった。トランプは男性の間で優位性を維持した。
●ラティーノ男性はトランプを支持(Latino men embraced Trump)
ラティーノ系有権者、特に男性は、2016年以来、トランプに傾倒している。今年、初めてラティーノ男性がトランプの支持に傾いた。
2020年にはバイデンが23ポイントの差で支持を獲得し、2024年にはトランプが支持を獲得した。ラティーナ女性は依然としてハリスを支持したが、その差はクリントンやバイデンよりも小さかった。
ハリスは黒人男女の間で強いリードを維持した。白人男性におけるトランプのリードは小さくなった。
●教育における分裂は大きくなっている(The educational divide
grows)
大学の学位を持たない白人有権者は長年トランプの支持基盤(base of support)を代表しており、それは今も変わらない。大卒の白人の有権者の間に変化が起きている。2016年には僅差でトランプを支持したが、2024年にはハリスが勝利し、男女双方で意見が分かれた。ハリスは大卒の白人女性に約15ポイント差で勝利し、バイデンとクリントンの両者を上回った。一方、ハリスはあらゆる教育レヴェルの有色人種の有権者の支持を一部失った。
●若い有権者はトランプに移動する一方で、トランプは高齢有権者たちの支持を失う(Younger
voters shifted toward Trump, while he lost ground with senior voters)
民主党は、最年少有権者層の支持を一部失った。このグループは圧倒的に民主党に投票している。しかし、ハリスはまた、伝統的に共和党寄りのグループである最年長有権者の間で支持を伸ばした。興味深い変化となった。
●トランプはアメリカの地方部で力を取り戻す(Trump regained power
in rural America
Voted for the Democrat)
トランプは2020年に地方での支持をいくらか失ったが、2024年には地方で完全な支持を取り戻した。都市部では依然として民主党支持が堅調だった。郊外は選挙を左右する激戦区であり続けた。
●有権者は経済について不満を持っている(Voters are sour on the
economy)
2020年、経済が良好な状態にあるかどうかについて有権者の意見は二分されたが、2020年のアメリカ国民の生活に影響を及ぼしていた猛威を振るったパンデミックを考えると信じられないことだった。2024年には有権者の約3分の2が経済状況は悪化していると回答した。この心境の変化はトランプに利益をもたらした。
●自分たちの家族が落伍していると報告する人々が増えている(More people
report their family has fallen behind)
党派が、自分たちが支持する人物がホワイトハウスにいるかどうかに基づいて、自分たちの立場が改善したかどうかを主張するのは当然だ。今年、大きな変化が起こった。2020年、有権者のわずか約5分の1が、4年前よりも悪い状況だと答えた。今年は有権者のほぼ半数が、4年前よりも状況が悪くなったと答えている。トランプが圧倒的に勝利した。
●より多くのアメリカ人は中絶の権利を支持している(More Americans
support abortion rights)
これらのグラフでは十分に語られていないものの1つは、中絶に関する会話がどのように変化したかということだ。2016年のロウ対ウェイド事件では、全てのアメリカ人女性が中絶する憲法上の権利を保障された。2024年には、連邦政府の権利は消滅し、トランプが最高裁判事の議席に貢献した保守派多数派によって剥奪された。2020年にはアメリカ人の約半数が、全て、またはほとんどの場合において中絶は合法であるべきだと答えた。
2024年には、アメリカ人の約3分の2が、全て、またはほとんどの場合において中絶が合法であるべきだと考えている。しかし、彼らはその支持を必ずしも大統領への投票に結び付けた訳ではなかった。中絶はほとんどの場合合法であるべきだと主張する人の約半数がトランプを支持した。
●トランプは穏健派に食い込んだ(Trump made inroads with
moderates)
トランプ時代にリベラル派と保守派は党派的な立場をさらに深めた。穏健派は2024年でも民主党候補を支持しているが、その差は2020年よりも小さい。
●トランプは選挙において支配的な人物だ‘Trump is the dominant
figure in the election)
対立候補よりも自分が選んだ候補者を支持して投票すると回答した人々はトランプに二分され、これは支持者の間でのトランプの人気の表れだ。反対運動により動機付けられた人々は主にハリス陣営にいた。全体として、有権者の約4分の3は、ライヴァルに反対するためではなく、主に候補者を支持するために投票していると述べた。
●トランプ大統領は新たな有権者を巻き込んだ(Trump engaged new
voters)
トランプの選挙戦略は、普段は政治プロセスに参加しない、政治性向の低い有権者を動かすことを中心に構築された。バイデンが若年有権者を獲得した2020年とトランプが獲得した2024年の間に劇的な変動があったため、それが功を奏した。しかし、最初の投票を
2020年よりも2024年に行ったと報告した有権者の割合が少なかったという事実には、重要な背景がある。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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