古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:日本

 古村治彦です。

 明日、2026年2月8日に総選挙の投開票が実施される。現在の情勢は、自民党と閣外協力の日本維新の会を合わせた議席数が300議席に迫る勢いで、自民党だけで単独過半数を窺うという状況だ。立憲民主党と公明党が合同した中道改革連合は議席を減らすと見られている。この状況は非常に憂慮される事態だ。

 高市早苗首相は、「私を首相として選ぶかどうか」の判断を国民にさせるという「白紙委任(carte blanchea blank check)」を得ようという暴挙に出た。目玉政策はなく、「国論を人分する政策」の中身は最後まで明かさなかった。ところどころでは、憲法の条文を変更するということを述べていたが、そのことを前面に押し出すことはなかった。消費税の減税についても、食料品に対する消費税を2年刊だけゼロにするということは述べていたが、自民党の公約では「検討を加速」と書かれており、「必ず実施する」とは書かれていない。候補者個人の公約として「減税」と書いている人もいるが、党として実施すると約束していない。選挙戦の途中で、ある自民党候補者からは「消費税12%も検討している」という言葉が出てきた。党本部は否定しているが、現状ではそのような検討をしていることは間違いない。選挙後に「検討を加速」して、結果として「減税はどうしても無理ですので12%にしまう」と言われても後の祭りだ。

 選挙戦終盤になって、アメリカのドナルド・トランプ大統領がSNS上に高市早苗首相を支持するという内容の投稿を行った。この投稿を喜ぶ人間たちが多く出た。なんと情けないことだろう。これは立派な「内政干渉(intervention)」であり、「選挙干渉(interference in election)」である。「アメリカさまが、トランプさまが高市さんを日本の指導者にするようにと私たちにお示しくださっている、ありがたいことだ」という考えが最初に出てくるような人間は、奴隷である。しかも奴隷であることを誇り、喜んでいる人間だ。

 日本の総理大臣や大臣が、他国の選挙、たとえばアメリカ大統領選挙で「○○党の●●さんを支持します」と言ったことがあるか。そんなことをすれば、「内政干渉をした」ということで辞任させられる。それくらいに重大なことだ。民主政治体制と外交、国際関係の基本原理を毀損する行為である。日米が対等な関係であるならば、このようなことを去れたら、即座に抗議を行うことが当然だ。しかし、日本にはそれができない。なぜなら、日本はアメリカの従属国・家来国(a tributary statea vassal state)だからだ。もっと露骨に言えば、日本はアメリカにとって搾取大将の奴隷国であり、日本国民はアメリカに奉仕することのみで存在を許される奴隷であって、日本の首相は奴隷頭でしかない。主人に「厳命」されればそれに従うしかない。もっとも、これまでにも日本の政治家で気骨がある人物たちはアメリカと交渉したり、要求について断ったりということをやって来た。その多くは失脚させられる運命に見舞われたが。自民党保守本流にそうした人々が多く出て、保守傍流からは、アメリカの奴隷頭を喜んで務める政治家たちが多く出た。

 今回の選挙で、自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党、保守党という改憲勢力が衆議院の3分の2以上の議席を獲得する可能性がある。改憲へ一歩進むことになる。これは、アメリカに従って、中国とぶつかりやすくするための、中国と戦争を行うための第一歩となる。「血税」という言葉には2つの意味がある。一つは「血を流すほどに厳しい、重たい税金負担」という意味で、もう一つは「徴兵制などで強制的に軍務に服務すること」である。私たちは、アメリカの奴隷として、これからこの2つの意味の「血税」を支払わされることになる。

 このような絶望的な状況の中で、私たち日本人はまず、アメリカの奴隷であるということをしっかり認識することから状況の改善を進めねばならない。この認識がないから、アメリカと交渉する、アメリカに意見をするという政治家を支えることが出来ない。すぐにふにゃふにゃとなってしまう。アメリカに物申す政治家を国民の多くで盛り立てる、このことが出来なければアメリカの奴隷国をこれからも続けて、国力を吸い取られ、衰退への道を進んでいくことになる。

 明日の総選挙では、護憲を掲げる候補者や政党に投票されることを心からお願い申し上げます。

(貼り付けはじめ)

トランプ氏、高市氏への支持表明 衆院選を目前に

202626日 BBC NEWS JAPAN

ケリー・アン記者、シャイマ・ハリル東京特派員

https://www.bbc.com/japanese/articles/c75x2565n4no

アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、日本で8日投開票の総選挙が目前に迫ったタイミングで、高市早苗首相への支持を表明した。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、高市氏が「すでに強力で、力強く、そして賢明な指導者だと証明した。(中略)そして自国を真に愛する人物だ」と記した。また、「彼女は日本の人々を失望させないだろう!」と書き込んだ。

アメリカの大統領が他国の国政選挙について、候補者を公然と支持することはまれだ。しかしトランプ氏はこれまでにも、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領やハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相に対し、同じように支持を表明してきた。

日本は、トランプ氏が各国に関税を発動した後、最も緊密な同盟国であるアメリカとの関係にさらなる安定を求めている。そうした中で、高市氏はトランプ氏とのとの関係構築を模索してきた。

トランプ氏は昨年4月、日本に対し25%の関税を課すと脅した。しかし同7月、当時の石破茂首相との間で、日本がアメリカに5500億ドル(約80兆円)を投資することで合意。その見返りとして、トランプ政権は日本からの輸入品への関税を15%に引き下げた。

高市氏は、石破氏の辞任を受けた与党・自民党総裁選で勝利し、国会でも十分な支持を確保して、昨年10月に首相に就任した。しかし今年1月、国民の信任を得るためだとして、衆議院の解散と総選挙の実施を発表した。

■「黄金のパートナー」

高市氏は首相就任のわずか1週間後、トランプ氏の日本訪問をレッドカーペットを敷いて歓迎。東京・元赤坂の迎賓館で、自衛隊の楽隊や儀仗隊を動員して盛大な歓迎式典を実施した。

これが高市氏にとっての外交デビューだったが、その光景は印象的だった。高市氏が米海軍横須賀基地に停泊中の米原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗り込み、数千人の米兵を前にトランプ氏の称賛を受けながら拳を突き上げる姿が、世界中に放送された。

高市氏は、トランプ氏が取引を望み、また取引可能だと思う首脳だと、自身を印象づけようとした。さらに、個人的に良好な関係を築ける人物だとも、トランプ氏に思わせようとした。

両首脳は防衛政策でも一致している。トランプ氏は日本が自国の安全保障により多くを費やすことを求めている。高市氏も、日本国内でも防衛投資を増やすべきだという世論が高まる中、同様の考えを示している。

この訪日で両者は互いを称賛し合い、レアアース(希土類)に関する合意文書に署名した。また、日米関係の新たな「黄金時代」を告げる文書にも署名した。

高市氏はトランプ氏を「新たな黄金時代のパートナー」だとし、中東和平におけるトランプ氏の役割を称賛した。

一方、トランプ氏は今月5日の投稿で、「日本訪問で私と代表団一同は、彼女に強く感銘を受けた」とし、両国が安全保障協力や経済面で進展していると語った。

トランプ氏はまた、高市氏を319日にホワイトハウスへ招くと述べた。

画像説明,高市氏は、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相を尊敬していると語り、日本の「鉄の女」になると表明している

中国へのメッセージ

トランプ氏の投稿は、高市氏は米政権と協力する人物だという印象を与えるもので、日本の有権者だけでなく、周辺地域、特に中国を意識したメッセージだ。

日中は外交的な対立の最中にあり、歴史的な緊張を抱えていた両国関係は、過去10年以上で最も悪化している。

高市氏は昨年11月、中国が台湾を攻撃した場合、日本は自衛隊で対応できると発言し、中国政府の怒りを買った。高市氏はその後も発言の撤回を拒んでいる。

中国政府は台湾を自国の領土だとしており、武力で台湾を手に入れる可能性を否定していない。

トランプ氏による高市氏支持は、こうした緊張が続く中で示された。トランプ氏は前日の4日、中国の習近平国家主席と電話会談したばかりだった。

トランプ氏は、中国とは「極めて良好」な関係にあると述べ、習氏も自分も「こうした関係の維持がいかに重要かを認識している」と語った。

中国国営メディアによると、習氏は台湾をアメリカとの関係における「最重要問題」と呼び、台湾は「中国の領土」だと強調した。習氏はまた、台湾への武器供与についてアメリカは慎重になるべきだと、トランプ氏に伝えたという。

これまでのところ、世論調査では高市氏の圧勝が予測されている。しかし8日の選挙で勝ったとしても、それはいくつもある難題の最初の一つにすぎない。

高市首相の指導力は、日本の停滞した経済の運営、アメリカという最重要の安全保障上の同盟国とのデリケートな関係、そして最大の貿易相手国である中国との関係にどう対処していくかで評価されていくことになる。

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●「自民党が単独過半数の勢い、中道改革連合は大幅減…衆議院選挙終盤情勢」

2026/02/05 22:00 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20260205-GYT1T00723/

 読売新聞社は8日投開票の衆院選(定数465)について、電話とインターネットによる調査を3~5日に実施し、全国の総支局などの取材を加味して終盤の情勢を探った。自民党は優位に戦いを進めており、単独で過半数(233)を超える勢いだ。野党第1党の中道改革連合は公示前から大幅に議席を減らす情勢で、日本維新の会と国民民主党は苦戦している。
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 自民は、1月27、28日の序盤調査と比較すると、289の小選挙区の半数近くで優勢を維持していて、公示前の198議席から大きく上積みしそうだ。比例選も含め、衆院の常任委員長ポストを独占し、各委員会で過半数を確保できる「絶対安定多数」(261)を自民単独で獲得することも視野に入る。維新を加えた与党では、法案の再可決や憲法改正の国会発議に必要な3分の2(310)もうかがう。

 維新(公示前勢力34)は、本拠地の大阪ではリードを保っている小選挙区が多い。ただ、全国的な広がりには欠けており、比例選も含めた全体では伸び悩んでいる。

 中道改革(同167)は小選挙区選、比例選ともに勢いを欠く。100議席を割り込み、さらに公示前から半減する可能性もある。公明党の支持母体である創価学会の組織力などを生かして盛り返しているとみられる選挙区もあるが、限定的だ。

 国民民主は比例選で堅調だが、小選挙区では伸び悩んでおり、公示前の27議席を確保できるかどうか微妙な情勢が続く。

 参政党(同2)は比例選で大幅増が見込まれるものの、序盤ほどの勢いはみられない。

 共産党は苦戦が続いており、公示前の8議席を確保する見通しが立っていない。れいわ新選組(同8)も苦しい戦いで、議席を失う可能性がある。

 減税ゆうこく(同5)は、小選挙区での議席獲得が視野に入る。日本保守党は比例選で1議席を維持できる可能性が出てきた。社民党は引き続き、議席獲得が厳しい見込みだ。

 チームみらいは序盤から伸ばしており、比例選で10議席近くを獲得できる見通しとなっている。

 電話調査は、自動音声による調査で18万2081人、インターネット調査は「Yahoo! JAPAN」のIDを持つユーザーら17万4512人、計35万6593人から回答を得た。一定数の回答者が投票する候補者や政党を挙げておらず、情勢は流動的な要素もある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権は国内外で不安定な状況を作り出している。ヴェネズエラ攻撃を利用して、他国に脅しをかけている。グリーンランドの領有の意思を隠さずに、堂々と主張している。グリーンランドにアメリカ軍を派遣するということになれば、対ロシアの防衛同盟としてのNATOが瓦解する。卑近なたとえをするならば、「みんなで防犯組織を作ったら、仲間内から泥棒が出た」ということになるからだ。

 国内ではICE(アメリカ移民関税執行局)による不法移民取り締まりがアメリカ国内の緊張を高めている。ミネアポリスでICEの捜査員による女性の射殺事件が発生し、ミシガン州知事ティム・ウォルツは州兵の出動待機命令を出した。ICEの捜査員と一般市民の小競り合いも各地で頻発している。これがいつ更なる暴力事件から武力衝突、内戦にまで発展するか分からない。私たちは世界の大きな構造転換に直面している。アメリカの衰退がそのきっかけである。

 そうした中で、私たちが住む日本、そして東アジアと隣接する東南アジアは平穏を保たねばならない。それは、世界の経済成長エンジンであり、今や世界を支える地域になっているからだ。そこで残念なのは日本の状況だ。高市早苗首相という地政学リスクを抱え、アジアに不安定な状況をもたらしている。その高市首相の支持率が70%超えという日本国民は客観的に見て、馬鹿でアホでどうしようもないということになる。自分の頭絵で考えることを知らず(教えられてこなかったのだから仕方がないとは言え)、上から言われたとおりに生きて死ぬだけの存在だ。高市首相は解散総選挙を選択したが、高市首相を退陣させることができるかどうか、期待はできない。日本もアメリカと一緒に衰退し、沈んでいくしかないようだ。世界は大きく変化しようとしている。残念なことだが、アメリカと日本はその変化で負け組として衰退するしかない状況だ。せめて、個人個人で自分の置かれた状況を考慮して最善の方策を選択するしかない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは世界にアメリカを恐怖することを教えている(Trump Is Teaching the World to Fear America

-数十年かけて築き上げてきた善意(goodwill)が今や無駄になっている。

ファリード・ザカリア筆

2026年1月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/09/trump-fear-united-states-alliances-global-power-balance/

歴史を通して、最も力強い国は往々にして友好国を見つけるのに苦労してきた。ある国が支配的になると、他国はそれに対抗しようとする。東ヨーロッパにあるロシアの隣国群を見れば、世界が認めてすぐに、NATOに加盟した。アジアにある中国の近隣諸国を見れば、日本、インド、オーストラリア、ヴェトナムなどが、北京の台頭を受けて、アメリカとの、そして互いの安全保障関係を着実に強化してきた。

しかし、アメリカを見てみると、この理論は揺らぎ始める。

アメリカは世界で最も強力な国だが、最も豊かで能力のある国の多くはアメリカに対抗するのではなく、同盟国となっている。彼らは核心的な安全保障問題においてはアメリカに従っている。アメリカの軍隊を受け入れている。自国の軍隊をアメリカと統合する。これは近代史の長い流れの中では普通のことではない。むしろ、非常に特殊なことだ。

それなぜか? それはアメリカが聖人のよう(saintly)だからではなく、しばしば古典的な覇権国(a classic hegemon)とは一線を画す行動を取ってきたからだ。第二次世界大戦後の80年間、アメリカは往々にして、その力強さを他国が受け入れ可能なもの、すなわちルール、制度、そして正統性(rules, institutions and legitimacy)へと変換しようと努めてきた。属国体制(tributary systems)ではなく同盟関係(alliances)を築き、たとえそれが不十分な場合であっても、集団安全保障、自決、自由な商業活動(collective security, self-determination, open commerce)といった諸原則を掲げてきた。

アメリカの一極主義の象徴としてしばしば挙げられるイラク戦争について考えてみよう。私はあの戦争の賢明さを擁護している訳ではない。国際システムに対するアメリカの姿勢について、より大きな視点で論じているのだ。ジョージ・W・ブッシュ政権は2002年に連邦議会の承認を求め、承認を得た後、国連に訴え、安全保障理事会決議1441号の成立に貢献した。また、この取り組みを支持する49カ国からなる連合も結成した。ワシントンは、この主張を表明し、パートナーを集め、他国に広く受け入れられる根拠を探る必要性を感じていた。

力を正当性へと変換しようとする努力こそが、アメリカの優位性の隠れた柱(the hidden pillar of American primacy)である。アメリカが脅迫者(a shakedown artist)ではなくルールメイカー(a rulemaker)として行動するとき、恐怖よりも価値のあるもの、すなわち同意(consent)を得ることになる。同意こそが覇権をリーダーシップへと、そしてリーダーシップを他国が他の選択肢よりも好ましいと考えるシステムへと変える。また、バランスを取ろうとする衝動を燃え上がらせないのも同意である。

そして、まさにヴェネズエラの出来事が今、危険に晒しているのはまさにこのことだ。ニコラス・マドゥロへの襲撃そのものではなく、アメリカ外交政策におけるこの断絶を特徴づけているのは、法、規範、同盟、そしてアメリカの外交政策に対する完全な無視(disregard for law, norms, alliances and diplomacy that mark this break in American foreign policy)である。

CNNのインタヴューで、ホワイトハウスのスティーヴン・ミラー大統領次席補佐官は、「アメリカ合衆国がヴェネズエラを統治している」と断言し、「国際的なお世辞(international niceties)」を一蹴し、世界は「強さ・・・力・・・権力」、つまり歴史の「鉄則(iron laws)」によって支配されていると主張した。一方、ドナルド・トランプ大統領は、ヴェネズエラが「移行(transition)」を迎えるまでアメリカが統治し、石油を奪取すると述べた。これは、アメリカの国庫を潤すための露骨な侵略行為(a naked act of aggression to benefit America’s coffers)だった。

もしあなたがカナダ人、ドイツ人、韓国人、あるいはメキシコ人なら、ミラーの言葉に恐怖を覚えるだろう。それはアメリカがオタワやベルリンに侵攻しようとしているからではなく、論理が変わった(the logic has changed)からだ。アメリカの力は、他国が受け入れることができるより広範な原則、民主政治体制、集団安全保障、ルールに基づく秩序(democracy, collective security, a rules-based order)のために使われるという主張はもはや存在しない。力には力に基づいた行動を取る権利がついてくるという主張だ。つまり、力があるから支配するのだ、という議論だ。これがまさに近隣諸国を不安にさせる大国の行動(great-power behavior)である。

トランプはこの作戦を正当化するためにモンロー主義(the Monroe Doctrine)を持ち出した。モンロー主義は1823年以降、反帝国主義的(anti-imperial)なもの、つまりヨーロッパによる西半球への植民地主義的な介入を阻止することを目的としていた(aimed at preventing colonial-style interventions by Europe in the Western Hemisphere)とよく考えられていたことを忘れてはならない。モンロー主義がラテンアメリカ全域へのアメリカの侵略を容認するものへと変化したのは、その後、特に1904年にセオドア・ルーズヴェルト大統領が同様の政策(President Theodore Roosevelt’s corollary)を採択したことによる。アメリカ帝国主義のこの栄華は長くは続かず、地域にとってもアメリカの評判にとっても良い結末にはならなかった。

過去40年間、共和党と民主党はラテンアメリカ地域に対する新たな超党派的アプローチを構築した。これはラテンアメリカ諸国が軍事政権から民主政治他一世へ移行する動きを後押しし、貿易・投資・制度改革支援を促進し、各国と連携して麻薬問題や移民問題に対処した。メキシコはこの転換の象徴だ。かつてワシントンへの深い不信感で定義づけられていた国が、密接なサプライチェインと日常的な法執行協力で結ばれた、アメリカにとって最も緊密な経済パートナーの1つとなった。(そして、21世紀の大半において、メキシコ人によるアメリカへの純移民数はほぼゼロに近い状態が続いている。)

メキシコ人による米国への純移民数はほぼゼロに近い状態が続いている。)

この数十年にわたり築き上げられた戦略的資本(strategic capital)が今、浪費されつつある。そして長期的には、国際舞台で完全なる利己的な捕食者のように振る舞うアメリカは強くなるどころか、孤立を深めるだろう。同盟諸国はヘッジし、パートナーは代替案を模索し、中立国は徐々に距離を置く。歴史が常に予見してきたバランシング(balancing)が遂に訪れるかもしれない。それはアメリカが弱体化したからではなく、自らの強さの真の源泉を忘れたからだ。

トランプ政権の志向は、アメリカをプーティンのロシアのように振る舞わせることにあるようだ。露骨に自国の利益を追求する攻撃的な国家として振舞う。そしてミラーが指摘するように、歴史の大半において強大国はそう行動してきた。アメリカを除いてはそうしてきた。アメリカは、紆余曲折と多くの過ちを伴いながらも、過去80年間にわたり異なる道を歩み、新たな世界を築き上げてきた。その世界が今、無謀にも解体されつつある。

※ファリード・ザカリア:CNN「ファリード・ザカリアGPS」司会者。著作も多く、最新刊は『』。『ワシントン・ポスト』紙に各週でコラムを掲載し、それは『フォーリン・ポリシー』誌にも掲載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 日本は20世紀末から21世紀初頭にかけて国策を誤り(誤らされ)、衰退の道を進むことになった。過去の選択が現在の選択肢を大きく制約するということを学問の世界では、「経路依存性(path dependence)」という。森喜朗政権から小泉純一郎政権までの新自由主義的な「改革」が進められたことで、バブル経済崩壊後の景気後退が常態化し、結果として、「ゼロ成長の30年」が生み出されてしまった。団塊ジュニア世代(1970年代から1980年代前半生まれ)は「就職氷河期世代」となり、雇用は不安定化し、結婚や出産というライフサイクルを実現できなかった。そのために、日本の少子高齢化は予想を超えるスピードで進行した。日本の出生数は既に約66万となり、死亡者数は160万台になりそうだ。人口は1年で100万ずつ減るということになる。出生数が60万を切り、死亡者数は170万台となれば、減少数は110万、120万となっていく。
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 日本の老齢人口の割合は、団塊ジュニア世代の多くが亡くなる30年から40年後までは高いということになる。その後は日本の人口は約1億2000万人から約8000万人に減少する。その間に生産人口の低下と老齢人口の高い割合が続くことで、日本経済は縮小する。結果として、日本のGDPは減少し、世界に占める日本の割合も大きく低下し、1968年に世界第2位に躍進した順位も1つ下がり、2つ下がりし、50年後にはトップ10を維持することは極めて困難になる。下記論稿の予測よりも厳しい結果が待っている可能性がある。

 私はこうした推測を前提にして、物事を考えていく。簡単に言えば、日本とアメリカは衰退していくことを前提に考えていく。ここからの逆転は極めて困難だ。それならば、衰退のスピードを減速させ、人々の生活維持が最優先ということになる。現在の日本の経済力ならばそれが可能だと私は考える。しかし、現状のままであれば、それもやがて難しくなる。じり貧からドカ貧へと進まないことが重要だ。

(貼り付けはじめ)

日本のGDP、26年にインド・30年はイギリスに抜かれる見通し…既にドイツに抜かれ4位に転落

読売新聞 2025/10/15 12:31

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251015-OYT1T50074/

 日本の名目国内総生産(GDP)が2026年にインドに抜かれて世界5位となり、30年には英国にも抜かれて世界6位に下がる見込みとなった。国際通貨基金(IMF)が14日発表した最新の世界経済見通しで明らかになった。世界5位となる時期は24年4月の公表時には25年としており、今回1年後となった。

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世界の名目GDPランキング推移

 IMFの推計によると、日本の名目GDPは26年時点で4兆4636億ドル、30年時点で5兆1198億ドルとなる。高成長が続くインドは26年時点で4兆5056億ドルとなって日本を抜き、29年にはドイツも抜いて世界3位に浮上する見通しだ。英国は30年時点で5兆1997億ドルと見込まれ、日本を抜いて世界5位となる。

 IMFは26年以降、物価変動を除いたインドの実質経済成長率が年6%台で続き、英国は1%台半ばで推移すると推計した。日本は0・5~0・6%にとどまるとしている。

 日本の名目GDPは23年にドイツに抜かれて4位に転落した。名目GDPは、物価の上昇率や為替相場で左右される。

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●「日本の所得水準、50年後は世界45位に後退 日経センター」

日本経済新聞 2025327 16:00 (2025327 16:21更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA255OH0V20C25A3000000/

gdppercapitaworldranking20240275001

日本経済研究センターは今後50年の長期経済予測をまとめた。所得水準を示す1人当たりの実質GDP(国内総生産)について、日本は2024年の29位から75年には45位に下がる。世界の中位群に後退する。成長底上げには人工知能(AI)などデジタル技術の活用や雇用慣行の改革が必要と提起した。

gdppercapitaworldranking20242075002

日経センターはおおむね5年ごとに独自の長期経済予測を公表している。香港と台湾を含む83カ国・地域を対象とした。今回は中間報告で、今夏にも日本経済の改革シナリオを盛り込んだ最終報告をまとめる。

日本全体の実質GDP24年の4位(3.5兆ドル)から75年に11位(4.4兆ドル)となる。マイナス成長は回避するものの、7175年の平均成長率は0.3%にとどまる。

国別GDPでは、米国と中国が1位と2位を維持し続ける。ともにAIの活用で情報サービスや金融・保険を中心に生産性が上がる。日本は米中よりもこうした産業の厚みがなく、AIによる生産性押し上げ効果は乏しい。

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人口動態も独自に推計した結果、1人の女性が生涯のうちに産む子どもの数の平均値を示す合計特殊出生率は、中国は75年に0.8となった。その結果、GDP規模の米中逆転は起きないとの試算になった。

1人当たりGDPについて日本は75年に45800ドル(現在の為替換算で約690万円)と24年比で1.6倍となるものの、主要7カ国(G7)では最下位の状態が続く。

75年に韓国は21位となり、およそ79200ドルとなった。日本の所得水準はチェコ(27位)、スロベニア(28位)などの中東欧諸国や、ブルネイ(33位)、カザフスタン(36位)、ロシア(42位)なども下回ることになる。

人口減による働き手の減少が経済成長を下押しする。日本の合計特殊出生率は40年代半ばから75年まで1.1となった。過去最低だった23年の1.20を下回る。

日本への流入から流出を差し引いた純移民数は年23万〜24万人程度とする。世界5位の移民受け入れ国となる。それでも75年の総人口はおよそ9700万人まで減る。在留外国人数は1600万人を見込む。外国人の安定的な流入が、成長を維持する最低条件となる。

日本経済の底上げには、デジタル技術の活用による生産性の一段の底上げが欠かせないと提起した。定年制や正規・非正規の待遇格差といった雇用慣行の改革や、教育への公的支出の拡大が労働参加率や生産性の引き上げにつながると訴えた。

世界全体の成長率は生成AIの活用による生産性上昇などで2130年は平均3.3%と高まる。その後、主要国の人口減少が重荷となり、7175年には1.3%に鈍化する。世界全体の合計特殊出生率は75年に1.7まで落ち込み、人口を維持できる水準を大きく下回る。

地域別では東アジアの人口が6億人以上減り、東南アジア・南アジアも将来は人口減に転じる。アフリカは加速を続け、40年代半ばに東アジアを上回る。

世界のGDPについて、トランプ米大統領が打ち出す政策の影響が長期化すれば米中逆転が起きる余地は残る。米国が26年から年100万人規模の不法移民の強制送還を12年続け、正規移民の入国を厳しくした場合は成長力が落ち込み、49年に中国のGDPが米国を抜くとの見通しになった。

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標準シナリオでも新興国の影響力は拡大する。75年のGDP規模はインドが3位、インドネシアが5位になるなどアジアの新興・途上国の存在感が高まる。ブラジルやロシア、インド、中国など有力新興国で構成するBRICSに正式加盟する10カ国合計のGDPは、75年に米国の1.4倍に拡大すると予測する。

日経センターは「米国は単独では対抗できず、G7との連携が重要性を増す」と強調した。包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP12カ国に欧州連合(EU27カ国が加盟すれば、BRICS経済圏に迫る「超巨大自由貿易圏が誕生する」との見方も示した。

BRICSの名称は、米ゴールドマン・サックスのエコノミストだったジム・オニール氏が名付け親とされる。同社が22年にまとめた調査では、75年のGDPは中国が首位となり、インド、米国、インドネシア、ナイジェリアが続くと予測していた。

日経センターは生成AIや人的資本による生産性の上昇、移民の影響を予測モデルに織り込んだ。これらの推計手法の違いが結果の差に表れた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 

 第二次ドナルド・トランプ政権で発表された「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」について、昨日に続いて、再び注目したい。今回は、第二次トランプ政権の「国家安全保障戦略」をアジア諸国の観点から分析するとどうなるかという内容の論稿をご紹介する。日本の外交政策を考える上でも非常に参考になる内容だ。

下記論稿では、第二次トランプ政権の「国家安全保障戦略」について、「従来の延長線上ではなく、第二次大戦後と冷戦後に形成された外交政策の広範なコンセンサスからの劇的な決別」を示しているとしている。

今回の「国家安全保障戦略」では、抑制とナショナリズム、そして普遍主義的使命を伴う国際主義の拒否が混ざり合ったMAGAナショナリズムの感情を明確に反映し、伝統的な政治イデオロギーに基づく戦略ではなく、「アメリカ・ファースト」による実利志向の戦略を志向している。これにより、「アメリカの幅広い卓越性という野望」から「国内再生」に重心を移している。これまでの介入志向の外交政策からの転換が図られることになる。

アジアにとっての良い面には次のようなポイントが挙げられる。第一に、「国家安全保障戦略」がインド太平洋をアメリカ外交の優先事項に据え、オバマ世間のピボットや第一次トランプの「自由で開かれたインド太平洋」、バイデンの戦略との連続性を示していることで、単一勢力によるアジア支配に反対する再表明は地域諸国に歓迎されるだろう。第二に、ヨーロッパに対する厳しい批判とは対照的に、アジアに対して形式的な戦略的敬意を示し、インド太平洋と中東へは限定的・選択的な介入を主張している。アジアは批判の外側に置かれている。第三に、超国家的統治やEUの規制主義への批判がある一方で、地域的制度が弱いアジアは国家主権と取引に基づく協力を重視するトランプ的世界観と相性が良く、リベラル国際主義の規範重視が必ずしも歓迎されなかった多くのアジア政府にとって「アメリカ・ファースト」に基づく主権優先の取引主義は理解しやすい。第四に、多くのアジア諸国はトランプが中国を同等の力を持つ競争国と認めつつ互恵的経済関係構築を呼びかける姿勢を歓迎しており、米中の二者択一を望まない広範な感情や、インドのような非同盟国にとっては地域での大国責任拡大の機会となる点も評価できる。  

悪い点を挙げると以下のようになる。第一に、主権と不介入の重視は歓迎されるが、アジアはアメリカが力を行使する誘惑について理解しており、可能だから介入する、国内支持層が要求するから介入するという力の論理は残るため、宣言的自制だけでは介入衝動を抑えきれないという不安を持つ。第二に、トランプの取引志向は従来の商業的取引主義を超え、同盟諸国に巨額負担や有利条件を要求するなど脅迫的側面を伴い、ASEAN首脳会議での条件付けなどは主権尊重とは無関係に力の非対称性を反映しており、アジア諸国は、取引は歓迎しても強制的重商主義には反発する。第三に、アメリカがルールをベースとする国際秩序を放棄すれば、小国の領土保全や弱者保護が損なわれ、広範かつ予測可能なルールを求めるアジアの現実主義的外務官にとって代償が生じるだけでなく、弾圧下の市民社会や反体制勢力も失望する。第四に、トランプの経済重視は商業利益と安全保障の間のトレードオフを深め、米軍優位の維持が困難になる中で米中間の経済的相互依存が亀裂を生み、同盟国に対する防衛負担要求が一部で核選択肢の再検討など極端な反応を誘発する恐れがある。第五に、台湾に関する文言を巡る激論が示すように、意味論的な論争は実際の危機対応に対する明確な指針を与えず、多くは地域情勢や米国内政治次第で変わるため、戦略的不確実性が増している。  

 アジアは中国と対峙しているので、アメリカの対中政策の影響を受けやすい。アジア諸国はアメリカと中国の2つの要素を考慮しなければならない。何よりも重要なのは、アジア地域における平和である。アメリカは中国と戦争をできる段階にない。経済依存や国力を考えると、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは中国と友好関係を維持し続ける「必要」がある。このことを前提にして戦略を考える必要がある。アジアにおける問題は、日本の高市早苗首相と日本の何の考えもない極右勢力である。この戦争をもてあそぶような考えなしがアジアにおける不安定要因となっていることは日本人として恥ずべき事態だと私は考えている。この状態を是正しなければ、日本が取り残されることになる。いや、既に取り残されているようなものであるが。

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2025年「国家安全保障戦略」がアジアにとって持つ意味(What the 2025 National Security Strategy Means for Asia

-アメリカ外交政策におけるMAGA革命は良い面と悪い面の両方をもたらしている。

C・ラジャ・モハン筆

2025年12月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/08/2025-us-national-security-strategy-trump-asia-china-taiwan/

ワシントンでは、新政権が誕生するたびに独自のイデオロギー連合が形成され、必然的にアメリカの国家安全保障政策に関する理念を言語化した文書が生み出される。先週、トランプ政権が発表した最新版の国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)も、まさにその伝統に則ったものだ。しかし、より重要なのは、この文書がこれまでの戦略文書とは大きく異なる点である。これまでの戦略文書は、第二次世界大戦後および冷戦後の外交政策に関する幅広いコンセンサスに若干のヴァリエーションを加えたものに過ぎなかったが、今回の文書は、そのコンセンサスから劇的な決別(rupture)を意味している。

この文書が、ドナルド・トランプ米大統領の今後の行動に関する信頼できる指針となるかどうかは定かではない。しかし、この文書が、アメリカと世界との関係に関する国内での議論の進展における重要なマイルストーン(節目)であることは否定できない。この文書は、MAGA 運動の世界観を捉え、変化しつつあるアメリカの雰囲気(mood)を反映している。アジアにとって、この文書は、トランプ政権がインド太平洋をどのように理解し、アメリカの同盟関係をどのように扱い、中国をどのように評価し、地政学的競争の時代におけるアメリカのリーダーシップをどのように想像しているかを明らかにする窓となっている。

まず、「国家安全保障戦略」は、MAGA ナショナリズムの、今やよく知られる感情、すなわち、抑制、ナショナリズム、そして普遍主義的使命を伴う国際主義的世界観の拒絶が混ざり合った(a blend of restraint, nationalism, and the rejection of the internationalist worldview with its universalist missions)感情を明確に反映している。この文書は、「伝統的な政治的イデオロギーに基づくものではない(not grounded in traditional, political ideology)」戦略を求めている。その代わりに、「何よりも、アメリカにとって効果的なもの、つまり、一言で言えば『アメリカ・ファースト』によって動機づけられている(it is motivated above all by what works for America—or, in two words, ‘America First’)」と述べている。

「国家安全保障戦略」は、アメリカの卓越性という広大な野望から、国内の再生に根ざしたより狭い国益の定義へと方向転換を図ろうとしている。ワシントンの説教じみた言動に長らく憤慨してきた外国の政府にとって、この転換は歓迎すべきイデオロギー的再調整(ideological recalibration)を意味する。

しかし、アジアにとって、新たな国家戦略は良い知らせと悪い知らせの両方をもたらす。

第一に、この文書がアジア、あるいは現代の戦略用語で言うインド太平洋(Indo-Pacific)を、トランプ政権の戦略の中核である西半球以外におけるアメリカの外交政策の最優先事項に位置付けていることがプラス材料となる。アジアへの重点は、バラク・オバマ政権のピボット政策(pivot)、トランプ政権初期の「自由で開かれたインド太平洋(free and open Indo-Pacific)」、そして、ジョー・バイデン政権のインド太平洋戦略との連続性を示すものである。中国の台頭とこの地域の持続的な経済ダイナミズムは、これを不可避的なものにしている。同様に重要なのは、アメリカが単一の勢力によるアジア支配に反対するという姿勢を再確認したこと(reaffirmation that the United States will oppose the domination of Asia by a single power)である。これはアメリカの大戦略における長年のテーマであり、国家戦略におけるこの再表明は、中国の勢力拡大を懸念するアジアの各国首脳にとって歓迎されるだろう。

第二に、トランプ戦略は、ヨーロッパに浴びせられる衝撃的なほど厳しい批判からアジアを免れさせている。「国家安全保障戦略(NSS)」は、ヨーロッパの堕落、依存、そして、リベラリズムの行き過ぎを非難する一方で、アジアに対しては、表面上は戦略的敬意を払っている。「国家安全保障戦略」は、ヨーロッパにおいて、衰退から「西洋文明を救う」(“save Western civilization” from decline)ための強力な行動主義(muscular activism)を約束するのとは対照的に、インド太平洋地域と中東への限定的かつ選択的な介入を主張している。これは、トランプがヨーロッパよりもアジアを好むからではない。むしろ、MAGAをめぐるイデオロギー闘争は、本質的には政治的価値観とリベラリズムの未来をめぐる西側諸国内部の内戦(an internal Western civil war)なのだ。アジアは今のところ、この争いの外側に立っている。

第三に、アジアは超国家的統治に対するアメリカの批判を受けにくい。ヨーロッパ連合(EU)の官僚主義的・規制的権力はMAGAの怒りを買っている。地域的な制度的欠陥(regional institutional deficit)を抱えるアジアは、今や国家主権と取引に基づく協力を中心とするトランプ的な世界観とはるかに相性が良いように見える。人権と社会規範を重視するリベラルで国際主義的な姿勢は、常にアジアのほとんどの政府に受け入れられなかった。中国だけでなく、この地域の民主的でありながら根深い国家主義社会を持つ諸国においても同様だ。彼らにとって、「アメリカ・ファースト」イデオロギーによる国家主権の重視、そして世界を独立国家の共同体と捉える考え方は、極めて理にかなっている。

第四に、一部のアジア諸国政府、とりわけ北京は、冷戦後の「ルールに基づく国際秩序(a rules-based international order)」というレトリックについて、長らく不信感を抱いてきた。この言葉は西側諸国の首都では安心感を与えるように響いたが、アジアの一部の国では、ワシントンが、自らが示したルールを必ずしも遵守しなかったこともあり、強制的あるいは偽善的に聞こえた。トランプ大統領のプラグマティズムと国益重視、つまり「コメルツポリティック(kommerzpolitik、通商政策)」としての外交は広く受け入れられている。規範に関するリベラルなレトリックに疑念を抱くアジア諸国は、取引主義(transactionalism、トランザクショナリズム)には抵抗がない。昨秋のトランプ大統領のアジア歴訪中、アジア諸国がトランプ大統領との取引を競い合ったことは、実に示唆的だった。取引主義的なアメリカは、理解しやすく、関与しやすく、交渉しやすい。

第五に、多くのアジア諸国は、トランプ大統領が中国を同格に近い競争国(a near-peer competitor)と認め、北京との「互恵的な経済関係(mutually advantageous economic relationship)」の構築を呼びかけていることを歓迎している。アジアの大部分は、1980年代以降、米中協調体制から多大な恩恵を受けており、新たな冷戦の到来を深く懸念している。ワシントンと北京のどちらかを選ぶことを望まないという広範な感情は、トランプ大統領が中国を近い仲間として再び関与させる姿勢を見せていることに安堵感を覚える。インドのような非同盟国(non-allies)にとって、主要国に地域におけるより大きな責任を担うよう求めるトランプ大統領の呼びかけは、自国の戦略的プレゼンスを高める機会を生み出すことになる。

しかし、この良い知らせは、「国家安全保障戦略」とトランプ外交政策の運用上のダイナミクスにおける懸念材料によって相殺されている。この地域は、機会、曖昧さ、そしてリスクを等しく抱えている。

第一に、トランプが主権と不介入を重視することは歓迎すべきことであるが、アジアは、ワシントンが他国の内政に干渉しようとする構造的な誘惑を痛感している。これは原則からではなく、力から生じる。大国が介入するのは、それが可能であるからであり、そして、しばしば国内の政治的支持層がそれを要求しているからだ。南アフリカとナイジェリアに対するトランプの脅しは、懲罰と強制を求めるアメリカの根強い衝動を浮き彫りにしている。自制を宣言しても、この衝動は消えないだろう。

第二に、アジアではコメルツポリティックが浸透しているものの、トランプは通常の取引主義をはるかに超えている。日本と韓国に巨額の新規投資を要求したが、その条件は恐喝としか思えない。同様に問題なのは、最近の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議において、マレーシアとカンボジアとの貿易協定に課した条件である。これらの取り決めは主権尊重とはほとんど関係がなく、力の非対称性と圧力を反映している。アジア諸国は取引主義を歓迎するかもしれないが、強制的な重商主義(coercive mercantilism)には反発している。

第三に、アメリカがルールに基づく秩序を放棄したことは、アジア諸国の外務省の現実主義者を喜ばせるかもしれないが、この放棄には代償も伴う。アメリカが各国の領土保全を擁護することを拒否すれば、アジアの弱小国は強国のなすがままになるだろう。アメリカがウクライナに対し、和平合意の一環としてロシアへの領土譲渡を迫っていることは、中国の拡張主義に対抗するアメリカの姿勢について、直ちに懸念を生じさせている。アジアの小国は、広範かつ予測可能なルールを求めている。それは彼らがリベラルな理想主義者だからではなく、ルールが弱者を強者から守るからだ。一方、アメリカがリベラルな価値観から後退すれば、弾圧に直面した際に米国の支援を頼りにしてきた反体制団体や市民社会運動は失望するだろう。

第四に、トランプ大統領が中国との経済関係を重視していることは、商業的利益と安全保障上の関与の間の潜在的なトレードオフに対する不安を生み出している。「国家安全保障戦略」は西太平洋における中国の侵略を抑止する必要性を強調しているが、経済的相互依存と軍事的競争の間の緊張は現実のものであり、高まっている。中国の力が増大するにつれて、アメリカの軍事的優位性を維持することはますます困難になるだろう。北京は、アメリカとアジアのパートナーの間に亀裂を生じさせる能力を高めるだろう。トランプ大統領が同盟諸国に国防費増額を要求することで、一部の国は核兵器オプションの見直しを含む極端な解決策に傾く可能性がある。中国が軍事バランスを着実に自国に有利な方向に傾けているという認識が、この地域の不安を増幅させている。

第五に、「国家安全保障戦略」における台湾に関する文言をめぐる激しい議論は、アジアにおける地政学的な断層線がいかに深刻であるかを浮き彫りにしている。しかし、意味論的な議論は、トランプ大統領をはじめとする米大統領が実際の危機においてどのように行動するかについて、ほとんど指針を与えない。多くのことは、その時々の地域情勢とアメリカの国内政治に左右されるだろう。高市早苗首相が中国の台湾攻撃を日本の安全保障と結びつけて発言したことに対するワシントンの反発は、警告の兆候である。トランプ大統領はアジアの同盟諸国にさらなる要求をする一方で、アメリカが何を提供するのかについては、明確な姿勢を示していない。過去の戦略的曖昧さは、関与ではなく不確実性へと変わりつつある。

全体として、アジアはヨーロッパとは異なり、アメリカの戦略の変化に適応するための時間と余裕が十分にあるかもしれない。しかし、アジアが直面する課題はヨーロッパよりもはるかに大きい。ヨーロッパに比べて、ハードパワーの潜在力が限られているロシアとは異なり、中国はアジアにおいて圧倒的な存在感を放っている。この地域の安全保障は、地政学的な競争と経済的相互依存(geopolitical competition and economic interdependence)を特徴とする北京との複雑な関係を、ワシントンがどのように乗り越えていくかに大きく左右されるだろう。アメリカの対中政策における曖昧さは、インド太平洋地域全体に連鎖的な影響を及ぼす可能性がある。

アジアはこの新たな現実に適応しなければならない。それは、アジアがアメリカの国内政治の軌跡やトランプ主義の戦略的進化に影響を与えるためにできることはほぼないからだ。ヨーロッパ諸国はリベラルな国際主義の復活と大西洋主義の回復を望むかもしれない。しかし、アジアにそのような余裕はない。中国の存在感が大きく、アメリカが国際的な方向性を再定義する中、アジアは自助の戦略(a strategy of self-help)—国家能力の強化、アメリカを超えたパートナーシップの拡大、柔軟な連合の構築—を受け入れねばならない。同時に、「国家安全保障戦略」は、ワシントンが支援する「負担分担ネットワーク(burden-sharing network)」を提唱している。「国家安全保障戦略」は、「商業問題におけるより有利な待遇、技術共有、防衛調達などを通じて、近隣地域の安全保障においてより多くの責任を自発的に引き受ける国々に対し、アメリカは支援の準備を整える」と述べている。アジアはこの提案が提供する可能性について理解すべきである。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ・アメリカ研究所の卓越教授、シンガポール国立大学南アジア研究所客員研究教授、インド国家安全保障諮問委員会元メンバー。Xアカウント:@MohanCRaja

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 ドナルド・トランプ大統領が2025年4月に打ち出した高関税政策は世界に衝撃を与えた。世界各国が対応に追われた。日本も例外ではなかった。石破茂前政権では経済再生担当大臣の赤澤亮正が毎週のようにワシントンDCを訪問し、最終的には15%の追加関税で収めることができた。日本からは5500億ドル(約80兆円)の投資をアメリカに行うということも決まった。その後、多くの国々がアメリカに一定の譲歩をする形で、関税を引き下げるという取引を行った。

 日本はアメリカの属国である。日本については投資という形での貢ぎ金が必要となる。アメリカと戦争をしないこと、世界各国を敵に回さないことこそが日本の基本的な原理である。「お金で済むことならば」という態度で戦後80年を過ごしてきた。これに対して不満を持つ人もいるだろうが、戦争をしないこと、外国にまで出張っていってその国の人を殺すようなことをしないで済むことが一番大事である。

 ただ、金を貢ぐにしても「貢ぎ方」や「品格」がある。何でもかんでもアメリカ側の言いなりで、へいへい、ご無理ごもっともでは舐められるだけだ。石破前政権では、トランプ政権のエルブリッジ・コルビー国防次官からの「防衛予算の対GDP比3.5%への引き上げ」要求を蹴り、日米の外務・防衛担当大臣・長官の会談「2プラス2」を実施しなかった。これがトランプとアメリカ側の逆鱗に触れたということは考えられる。そして、そのような「謀反気」を一切持たない、芯からの属国根性の持ち主である高市早苗が首相に「据えられた」ということになる。高市早苗は骨の髄までの対米隷属志向であるのに、反米的な遊就館史観を持つ靖国神社には参拝するという矛盾する行動を取るのが不思議である。

 ドナルド・トランプは高市早苗就任直後に訪日し、高市首相はかいがいしくアテンドして回った。その姿は痛々しいほどだった。時期を前倒しで、防衛予算の対FDP比3%を達成すると決め、日本国民には「愛国増税」がのしかかる。高市首相の「失言」によって、日中関係は悪化し、日本経済にも影響が出ている。この状態が続くならば、厳しい年末年始から年度末ということになりそうだ。私の見立てでは、中国の習近平国家主席は、日本をいじめることが理由で、現在の状況を作り出してはいない。習近平は、トランプとアメリカに「踏み絵」を踏ませているのだ。「日本の高市を支持するということは、一つの中国政策から後退するということだな」と。トランプにとって台湾はもう中国のものだし、中国が好きにすればいいということになっているだろう。「アメリカ・ファースト」である。「アメリカは邪魔しない」ということをより明確にするために、高市失言を利用した。更に、アメリカの同盟諸国に「いざとなったらアメリカは同盟諸国を捨てますよ」ということをアピールすることにもなっている。

 日本はアメリカに無条件で貢ぎまくって、その代償が現状である、他国はもっとうまく、慎重に立ち回っている。日本の高市早苗政権の馬鹿さ加減が現状を生み出している。そして、この状況を生む出した根本原因は日本国民であり、日本国民の馬鹿さ加減である。

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高市首相、トランプ氏に防衛費増を伝達 80兆円投資「着実に履行」

外交・安全保障

日本経済新聞 20251028 19:52(20251029 2:00更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA23BCK0T21C25A0000000/

高市早苗首相は28日、東京・元赤坂の迎賓館でトランプ米大統領と会談した。両首脳は日米関税合意を「着実に履行する」と確認し、「日米同盟の新たな黄金時代」をめざすとの文書に署名した。首相は防衛力強化の方針を伝え、トランプ氏は日米関係が「今まで以上に強力になる」と述べた。

レアアース(希土類)など重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化に協力する覚書も交わした。

首相とトランプ氏の会談は初めて。会談とその後のワーキングランチの合計は90分ほどだった。首相は日本が主体的に防衛力強化と防衛費増額に取り組む決意を伝えた。「日本も世界の平和と繁栄に貢献していく」と強調した。

トランプ氏が同盟国に安全保障面での負担増を求めていることを踏まえ、自前の抑止力強化を進める姿勢を示した。

首相は24日の所信表明演説で、防衛関連費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる目標を25年度中に前倒しすると打ち出した。国家安全保障戦略など安保関連3文書も前倒しで改定する予定だ。

トランプ氏は日本の防衛力強化の方針について「承知している」と述べた。米国の防衛装備品を調達していることに「感謝を申し上げる」とも語った。米国が高性能の戦闘機やミサイルを有すると主張し、購入拡大への期待を示した。

首相は会談後、記者団に「(米側から)防衛費の規模感についての話はなかった。数字を念頭にしたやりとりはなかった」と説明した。

会談では国際情勢も話し合った。中国に関する諸課題について意見交換し「力または威圧による一方的な現状変更の試みに反対する」と合意した。台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認した。中国、北朝鮮、ロシアの軍事連携も取り上げた。

北朝鮮に関し「完全な非核化に向けた確固たるコミットメント」を確かめた。首相から日本人拉致被害者問題の解決への協力を求め、トランプ氏は「全面的な支持」を表明した。同氏は会談後、被害者家族らと面会した。

首相は会談後、米軍横須賀基地(神奈川県)でトランプ氏と一緒に米海軍の空母に乗艦した。米軍兵士の前で「世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を更なる高みに引き上げていく」と訴えた。トランプ氏は日米同盟が「太平洋における平和と安全の礎だ」と強調した。

関税合意を巡っては日本から米国への5500億ドル(84兆円)の投資が含まれており、首脳会談で実行を約束した。首相はワーキングランチで日本による対米投資の実績を地図を使って説明し、米経済への貢献を訴えた。

両首脳は重要鉱物のサプライチェーン強化への協力文書にも署名した。幅広い産業に不可欠なレアアースの調達を中国に依存する現状の改善をめざす。

人工知能(AI)や次世代通信をはじめとした重要技術、造船など経済安全保障にかかわる日米協力の強化を進めるとも確認した。担当閣僚間で複数の覚書を交わした。

首相はレアアース調達の協力について、自身の強い希望だったと会談後に記者団へ明らかにした。南鳥島周辺の海底に眠るレアアースやハワイ沖での開発案件に触れて「日米共同で開発していく協力関係が確認できた」と強調した。

会談では医薬品の原料も議題にしたと言及した。その上で、中国を念頭に「日米ともにあまりにも特定国に依存し過ぎている」と調達先を多様化する必要性を指摘した。

安全保障分野ではトランプ氏が同盟国の負担増を求めていることを踏まえ、日本の防衛力強化に向けた取り組みを説明した。内向き志向を強める米国が引き続きアジアの安保に関与するように、日本が自前の防衛力強化を進めると強調した。

首相は会談後、他の民主主義国との協力を深める方針でも一致したと説明した。「日米韓、日米フィリピン、日米豪印といった同志国連携を一層推進していくと確認した」と語った。

安倍晋三元首相が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」の実現を日米でめざす。

首相はトランプ氏との信頼関係の構築に向け、タイとカンボジアの紛争終結や中東での停戦合意への米国の貢献を「短期間に世界はより平和になった」とたたえた。米高官によると、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦する考えも伝えた。

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なぜアジア諸国は貿易に関してトランプ大統領にこれほど多くの譲歩をしたのか?(Why Did Asian Countries Give Trump So Much on Trade?

-新たな協定には、アジアにおける物品の流れを変える可能性のある異例の譲歩が含まれている。

アガーテ・デマライス筆

2025年11月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/11/12/trump-trade-tariff-agreement-deal-asia-japan-south-korea-asean/

ドナルド・トランプ政権の交渉担当者たちは、このところ絶好調だ。わずか数週間のうちに、アメリカは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟4カ国(カンボジア、マレーシア、タイ、ヴェトナム)と貿易協定を締結し、7月に日本がホワイトハウスに提出した投資誓約の詳細を巧みに調整した。これらの協定の精神はシンプルだ。ドナルド・トランプ米大統領が課した、あるいは脅した関税よりも低い関税と引き換えに、これらの国々はワシントンの要求を驚くほど多く、広範囲に受け入れていた。

貿易協定は通常、不眠症の優れた特効薬(a great antidote to insomnia)となる。しかし、ワシントンとアジア諸国の間で最近締結された協定は異なる。協定の細則を見れば、これらの国々が協定締結のために異例の譲歩をしたことが分かる。これらの協定は、トランプ大統領が関税の脅威を巧みに利用し、パートナー諸国にアメリカへの投資を迫り、アメリカ政府が国内問題への発言権を与え、中国との分断を図ってきたことの手掛かりとなる。

トランプ大統領は、そのビジネス感覚に忠実に従い、アメリカの交渉担当者たちが世界中で締結を目指している貿易協定において、外国からの投資の約束を優先事項としてきた。日米協定はその好例だ。この協定の目玉は、2029年1月のトランプ大統領の任期満了までに、日本政府がアメリカに5500億ドル(約85兆2500億円)を投資するという約束である。これは日本のGDPの約15%に相当する額であり、おそらく偶然ではないだろうが、日本からアメリカへの輸出の4年間分(あるいは大統領の任期1期分)に相当する。

この協定の解釈は、太平洋の両側で大きく異なっている。ホワイトハウスによると、「日本政府はアメリカに5500億ドルを投資することに同意した」となっている。トランプ大統領は、「5500億ドルを得ることになる。これは野球選手の契約ボーナスのようなものだ」と見ている。私がアメリカ政府当局者と話し合ったところによると、この協定の解釈によれば、アメリカ企業による100億ドルの投資プロジェクトが民間資金で40億ドルしか調達できない場合、不足分の60億ドルを日本の納税者の資金で補填することが可能となる。

日本政府はこの見解に強く反対している。ブルームバーグによると、7月に日本の首席交渉官は地元メディアに対し、「5500億ドルの投資枠組みは、日本政府が支援する金融機関による投資、融資、そして融資保証を組み合わせたものだ」と述べた。各投資の利益の90%はアメリカに渡る。その後、日本が初期投資を回収するまでは50対50のより均衡した配分となり、その後は90対10でアメリカに有利になる可能性が浮上している。

これらの議論はさておき、日本の投資公約について3つのことが明らかになっている。第1に、この合意は、日本が公的資金をアメリカにおける民間投資に充当することを約束している。第2に、アメリカは最終的にその見返りの90%を得る。第3に、日本が約束を履行しない場合(アメリカ側の解釈がどうであれ)、ホワイトハウスは日本製品の輸出関税を再び課すことができる。ホワイトハウス当局者たちは「私たちは貿易相手国に約束を守るよう求めており、もしいずれかの国が約束を破った場合、大統領は関税率を調整する権利を留保する」と述べた。

日本がなぜこのような協定に署名するのか、理解に苦しむ。第一の問題は、日本が資金提供を必要とするプロジェクトについて最終勧告を行う投資委員会にアメリカ人のみが参加し、最終決定権はトランプ大統領のみに握られるという点だ。日本にとっての潜在的な問題はこれだけではない。公的資金提供は、民間投資家がそもそもこれらのプロジェクトに興味を持っていなかったことを示唆しており、利益が出ない可能性もある。専門家はまた、アメリカ政府が、ワシントンが管理する投資ビークルを通じて外国資金を誘導する権限を持っているかどうかについても疑問を呈している。将来の政権や連邦議会がこの計画を違法と判断した場合、日本は投資を失う可能性がある。

韓国の李在明大統領は、現在ワシントンと交渉中の貿易協定で同様の条件に同意した場合、「弾劾されるだろう」と考えている。しかし、ホワイトハウスが韓国に対し3500億ドルの投資パッケージへの同意を迫っていることから、李大統領は間もなく日本と同じ轍を踏むことになるかもしれない。ハワード・ラトニック米商務長官は、「韓国は合意を受け入れるか、関税を支払うかのどちらかだ」と述べた。もちろん、ラトニック長官の見解は間違っている。アメリカの関税を支払うのは輸出国ではなく、アメリカ企業と消費者だ。

日本が投資誓約を確定し、韓国もそれに迫ったことで、ワシントンは第2の優先事項、すなわちASEAN諸国にアメリカ規制の適用を強制することに集中する余裕が生まれた。アメリカとマレーシアの合意は、まさにその好例だ。この合意には、ワシントンが要請すればマレーシアが「アメリカの一方的な輸出規制」に全て従うことが盛り込まれている。クアラルンプールがこのような条項を受け入れたことは奇妙だ。マレーシアの島嶼国ペナンは長年、中立的な(つまりアメリカと中国双方にサービスを提供する)半導体製造拠点としての地位を確立することで繁栄してきた。トランプ大統領が米国の対中輸出規制を維持し、マレーシアがそれを模倣するなら、ペナンの半導体企業がどのようにして中国で事業を継続できるのかは不透明だ。

ワシントンがパートナー諸国にアメリカの規制への準拠を求める動きは、これで終わる訳ではない。マレーシアはまた、アメリカの制裁対象、あるいは米産業安全保障局(BIS)のエンティティリストに掲載されている個人や企業との取引を制限することにも同意した。アメリカの制裁が世界的に影響を及ぼしていることは目新しいことではなく、この合意がなかったとしても、多くのマレーシアの銀行がアメリカのブラックリストに掲載されている個人や企業との取引を処理するとは考えにくい。新しいのは、アメリカが諸外国に対し、アメリカの主要な制裁措置に倣うよう公然と要求していることである。

デジタル分野は、アメリカの規制介入の最後の領域となっている。マレーシアは協定において、デジタルサーヴィスに課税しないこと、そして他国とデジタル協定を締結する前にアメリカと協議することを約束した。こうしたアメリカの要求は意外ではない。トランプ大統領は長年、アメリカのデジタルプラットフォームに対する不公平な課税に執着してきた。しかし、マレーシアがこの条項をどのように実施するかは興味深い。マレーシアはASEAN主導のデジタル経済枠組み協定というデジタル協定に署名したばかりだ。

アメリカとカンボジアの貿易協定は、アジアにおけるアメリカの第3の優先事項——同盟国に中国との経済的分離を迫ること——を如実に示している。まず、プノンペンはあらゆる国(つまり中国)に対し、アメリカの関税・割当を模倣することを約束する。さもなければ、カンボジアの対米輸出に対し、世界最高水準の49%という禁止的な関税が再課される。カンボジアがアメリカの敵対国(これも中国を指す)と経済協定を結んだ場合も同様の制裁が適用される。さらにカンボジアは、外国投資家に関する情報をアメリカに提供することに同意した。中国の名は明記されていないが、この条項が北京を念頭に置いていることは明らかだ。中国企業はカンボジア最大の投資主体であり、昨年の対外直接投資総額の約半分を占めている。

アメリカの圧力はいずれ脱却の面で強まる可能性があり、その最優先課題が中継貿易となる。平たく言えば、これは中国からのアメリカ向け輸出をヴェトナムやメキシコなどの第三国経由で迂回させ、アメリカの対中関税を回避しようとする動きを指す。ASEAN各国政府は、アメリカが間もなくこの慣行への対応を要請すると考える根拠がある。マレーシアとの協定では、この問題に関する条項を空白のままにしており、アメリカは中継された中国製品を低関税対象から外す文言を柔軟に策定できる余地を残している。そうなれば、中国とアメリカの間の貿易ハブとして位置づけてきた多くのASEAN経済圏のビジネスモデルは崩壊する可能性がある。

ヨーロッパ連合の官僚たちは、これらの最近の協定を精査する中で、いくらか慰めを見いだすかもしれない。ヨーロッパ連合はアメリカとの協定において、日本、カンボジア、マレーシアなどがアメリカに与えた額のほんの一部しか譲歩していない。これは、なぜアジア諸国政府がこれほど制限的な協定に署名したのかという疑問を提起する。確かに、アメリカは東アジアおよび東南アジア諸国にとって巨大な貿易相手国であり、アメリカによる安全保障の保証は日本と韓国にとって重要である。アジア諸国の政策立案者たちは、トランプ大統領が自らの約束の履行状況をチェックしないことを期待しているのかもしれない。この点については、トランプ大統領の最初の任期中にアメリカが貿易協定の監視と履行を怠った事例が示唆しているかもしれない。これらの説明はどれも完全に説得力がある訳ではない。その間、ヨーロッパ連合の政策立案者たちは、アメリカがアジアへの要求をヨーロッパ連合との次回交渉にそのまま持ち込み始めた場合、どのように対応するか熟考するのが賢明だろう。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会地経学上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか(Backfire: How Sanctions Reshape the World Against U.S. Interests)』がある。Blueskyアカウント:@agathedemarais.bsky.socialXアカウント:@AgatheDemarais

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