古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 世界の構造について大きく分類すると、一極(超大国が1つ)、二極(超大国が2つ)、多極(大国が多く存在する)ということになる。一極の例で言えば、ソヴィエト連邦崩壊後、世界ではアメリカのみが超大国として君臨する状態ということになる。二極は、冷戦期の米ソ、現在の米中ということになる。多極は第一次世界大戦前、第二次世界大戦前のような状況だ。ヨーロッパではヨーロッパの協調ということで、複数の大国が平和を維持するという体制になっていたが、相互に誤解と誤った認識をしてしまうと、平和が破綻するということが起きた。このことから、二極の方がお互いの意図を誤らずに認識できるということで、平和が続くということが言われている。冷戦期は世界各地で戦争や紛争は起きたが、米ソ双方が直接戦い、核戦争まで至らなかったということで、「長い平和(Long Peace)」という評価がなされている。

 一極体制は最も安定しているように見えるが、新興大国が出てくると、不安定さが増す。また、一極体制の支配国、覇権国が安全保障などで、不公平な取り扱いをするということになれば、各国が反感や怒りを持つということもある。アメリカの一極体制は、アメリカが介入した外国からの反感による「ブローバック(blowback、吹き戻し)」に遭った。

 現在の世界は、米中による「G2」体制(Great of Two)となっている。そして、世界は、これから多極化していくという予想も出ている。

下に掲載した論稿の著者ジョー・インゲ・ベッケウォルトは以下のように主張している。

政治家、外交官、国際政治の専門家たちが世界の多極化に関する議論を展開しているが、現実はまだ多極化していない。現在、アメリカと中国のみが経済的、軍事的に大国として存在し、他の国はそのレベルに達していない。インドやロシアも有力候補として挙げられるが、極になるには経済力や軍事力の面で足りていない。

多極化論が人気の理由は、規範的概念としての魅力や対立回避の希望があるからだ。一極、二極、多極体制では行動や政策が異なり、誤解は誤った政策を生む可能性がある。多極化は未来に期待される可能性もあるが、現状では二極化した世界に生きる必要があり、戦略と政策はその状況に応じて考えられるべきだ。

 私は、現在は二極体制であるが、これはあくまで、アメリカがまだまだ強く、中国が弱いというところであり、二極体制の性格がこれから変化していく途中であり、しばらくは多極化しないと考えている。アヘン戦争勃発200周年の2040年、中華人民共和国建国100周年の2049年、この2040年代に中国はアメリカを追い抜くということを考えていると思う。この時期でも米中に匹敵する国は出てこず、それ以降は、中国が大、アメリカが小の二極体制が続くものと考える。その時期には、ヨーロッパ連合、インド、ロシアなどが米中に続く存在となっているだろうが(日本は脱落しているだろう)、世界の重要な決定に関与できるまでは行っていないだろう。短期的(10~30年)、中期的(30~50年)でみれば、米中二極体制が関係性の面で変化を起こしながら、続いていくことになるだろう。二極体制が安定し、平和が続いていくためには、相互の正しい理解と認識が必要ということになる。

(貼り付けはじめ)

いいえ、世界は多極的ではない(No, the World Is Not Multipolar

-新興大国の出現という考えは人気を集めているが、間違っている。そして、深刻な政策の誤りを導くことになるだろう。

ジョー・インゲ・ベッケウォルト筆

2023年9月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/22/multipolar-world-bipolar-power-geopolitics-business-strategy-china-united-states-india/

政治家、外交官、国際政治の専門家たちが主張する最も根強い議論の1つは、世界は多極化(multipolar)している、あるいはまもなく多極化するだろうというものだ。ここ数カ月、この議論は国連事務総長のアントニオ・グテーレス、ドイツのオラフ・ショルツ首相、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領によってなされてきた。ヨーロッパ連合(EU)のジョゼップ・ボレル外務上級代表は、2008年の世界金融危機以来、世界は「複雑な多極化(complex multipolarity)」のシステムになっていると主張している。

この考え方はビジネス界でも普及しつつある。投資銀行のモルガン・スタンレーは最近、「多極化した世界を乗り切る」ための戦略文書を発表し、ヨーロッパの名門ビジネススクールであるINSEADは、そのような世界におけるリーダーシップ能力について懸念している。

しかし、政治家、専門家、投資銀行家たちが言うことに反して、今日の世界が多極化に近いというのは単なる神話に過ぎない。

その理由は単純明快だ。極性とは、国際システムにおける大国の数のことだ。そして、世界が多極化するには、そのような大国が3カ国以上存在する必要がある。現在、極を形成できるほどの経済規模、軍事力、世界的な影響力を持つ国は、アメリカと中国の2カ国だけだ。他の大国はどこにも見当たらず、当分の間は見当たらない。人口が多く経済が成長している中堅国や非同盟国が台頭しているという事実だけでは、世界が多極化する訳ではない。

国際システムにおける他の極の不在は、明らかな候補を見れば明らかだ。2021年、急成長を遂げるインドは、力を測る指標の1つである防衛費支出で第3位だった。しかし、ストックホルム国際平和研究所の最新の数字によると、インドの軍事予算は中国の4分の1にすぎない。(そして、中国の数字は一般に信じられているよりも更に高いかもしれない。)今日、インドは依然として主に自国の発展に集中している。インドの外交サーヴィスは規模が小さく、インド太平洋での影響力の重要な尺度である海軍は、過去5年間で5倍の海軍トン数を進水させた中国と比較すると小さい。インドはいつかシステムの極になるかもしれないが、それは遠い将来のことだ。

経済的な豊かさは、権力を行使する能力を示すもう1つの指標である。日本は世界第3位の経済大国だが、国際通貨基金の最新の数字によると、日本のGDPは中国の4分の1以下である。ドイツ、インド、イギリス、フランスという日本に続く、4つの経済大国は、更に小さい。

また、エマニュエル・マクロンや他の多くの人々がそのような主張を精力的に展開してきたとしても、EUは第三極(third polar)ではない。ヨーロッパ諸国には様々な国益があり、ヨーロッパ連合には亀裂が生じやすい。ヨーロッパ連合(EU)のウクライナ支援は一見結束しているように見えるが、ヨーロッパの防衛、安全保障、外交政策は統一されていない。北京、モスクワ、ワシントンがパリやベルリンと対話し、めったにブリュッセルを訪れないのには理由がある。

もちろん、ロシアは国土の広さ、膨大な天然資源、膨大な核兵器の備蓄から、大国になる可能性のある候補である。ロシアは、国境を越えて影響力を持っていることは確かだ。大規模なヨーロッパ戦争を繰り広げ、フィンランドとスウェーデンをNATOに加盟させた。しかしながら、経済規模はイタリアより小さく、軍事予算はせいぜい中国の4分の1に過ぎないため、ロシアは国際システムの第三極にはなれない。せいぜい、ロシアは中国を支援する役割しか果たせない。

多極化を信じる人々の間で広く議論されているのは、グローバルサウスの台頭と西側の地位の低下だ。しかし、インド、ブラジル、トルコ、南アフリカ、サウジアラビアなどの新旧中堅大国(middle powers)の存在は、システムを多極化するものではない。これらの国はいずれも、自国の極となるための経済力、軍事力、その他の影響力を持っていないからだ。言い換えれば、これらの国にはアメリカや中国と張り合う能力がないのだ。

アメリカの世界経済におけるシェアが縮小しているのは事実だが、特に中国と合わせると、依然として優位な立場にある。この二超大国は世界の防衛費の半分を占めており、両国のGDPを合計すると、それから下の経済大国33カ国の合計とほぼ同等となる。

先月ヨハネスブルグで開催されたBRICSサミットでBRICSフォーラムが拡大したこと(以前はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのみだった)は、多極秩序(multipolar order)が到来したか、少なくとも前進しつつある兆候と解釈されている。しかし、ブロックは極(poles)として機能するにはあまりにも異質であり、簡単に崩壊する可能性がある。BRICSは首尾一貫したブロックには程遠く、加盟諸国は国際経済秩序に関する見解を共有しているかもしれないが、他の分野では大きく異なる利益を持っている。協調関係を示す最も強力な指標である安全保障政策では、2大加盟国である中国とインドは対立している。実際、北京の台頭により、インド政府は米国とより緊密に協調するようになっている。

従って、世界が多極化していないのなら、どうして多極化論はこれほど人気が​​あるのだろうか? 国際関係に関する事実や概念を無視するという怠惰なやり方に加えて、3つの明白な説明が浮かび上がる。

第一に、多極化の考えを推し進める多くの人々にとって、それは規範的な概念である。それは、西洋の支配の時代は終わり、権力は分散している、あるいは分散しているべきだと言っている、あるいは望んでいることの別の言い方である。グテーレスは、多極化(multipolarity)を、多国間主義(multilateralism)に修正し、世界システムに均衡(equilibrium)をもたらす方法と見なしている。多くのヨーロッパ各国の指導者たちにとって、多極化(multipolarity)は二極化(bipolarity)よりも好ましい選択肢とみなされている。なぜなら、多極化はルールによって統治される世界をより良く実現し、多様な主体とのグローバルなパートナーシップを可能にし、新しいブロックの出現を防ぐと考えられているからだ。

実際に、多国間枠組は確かに想定通りに機能しておらず、西洋の人々の多くは、多極化の考えをより公平なシステム、多国間主義を復活させるより良い方法、そして、グローバルサウスとの拡大する断絶を修復する機会と見ている。言い換えれば、存在しない多極化を信じることは、世界秩序に対する希望と夢の花束の一部だ。

多極化の考え方が流行している2つ目の理由は、30年にわたるグローバル化(globalization)と比較的平和な状況の後、政策立案者、専門家、学者たちの間で、アメリカと中国の間にある激しく、包括的で、二極化した対立の現実を受け入れることに非常に抵抗感があることだ。この点で、多極化を信じるということは、一種の知的回避(intellectual avoidance)であり、冷戦が再び起こらないようにという願いの表れだ。

第三に、多極化に関する議論はしばしば権力争いの一部である。北京とモスクワは、多極化をアメリカの力を抑制し、自国の立場を前進させる手段と見なしている。アメリカが圧倒的な優位を占めていた1997年に遡ると、ロシアと中国は多極化世界と新国際秩序の確立に関する共同宣言に署名した。中国は今日では大国であるが、依然としてアメリカを主な課題と見なしている。北京はモスクワとともに、多極化という概念は、南半球を喜ばせ、自国の大義に引き付ける手段として利用している。多極化は2023年を通じて中国の外交的魅力攻勢の中心テーマであり、プーティン大統領は7月のロシア・アフリカ首脳会談で、出席した指導者らが多極化世界を推進することで合意したと宣言した。同様に、ブラジルのルラ大統領のように台頭する中堅国の指導者が多極化という概念を推進する場合、それは自国を主要な非同盟国として位置づけようとする試みであることが多い。

極、そしてそれに関する誤解が広まっていること自体が重要なのかと疑問に思う人もいるかもしれない。簡単な答えは、世界秩序における極の数は非常に重要であり、誤解は戦略的思考を不明瞭にし、最終的には誤った政策につながるということだ。極が重要な理由は2つある。

第一に、一極(unipolar)、二極(bipolar)、多極(multipolar)体制では、国家の行動に対する制約の度合いが異なり、異なる戦略と政策が必要となる。例えば、6月に発表されたドイツの新しい国家安全保障戦略では、「国際および安全保障環境は多極化が進み、不安定になっている」と述べている。多極体制は確かに一極や二極体制よりも不安定であると見なされている。多極体制では、大国は同盟や連合を結成して、1つの国が他の国を支配することを避ける。大国が忠誠心を変えた場合、継続的な再編や突然の変化につながる可能性がある。二極体制では、2つの超大国が主にお互いのバランスを取り、主なライバルが誰であるかを疑うことはない。したがって、ドイツの戦略文書が間違っていることを願うべきだ。

極は企業にとっても重要だ。モルガン・スタンレーと INSEAD は、顧客と学生を多極化した世界に向けて準備させているが、二極化したシステムで多極化戦略を追求することは、高くつく間違いとなる可能性がある。これは、貿易と投資の流れが極の数によって大きく異なる可能性があるためだ。二極化システムでは、二大国は相対的な利益を非常に気にするため、経済秩序はより二極化し、分裂する。秩序の種類ごとに異なる地政学的リスクが伴い、企業が次の工場をどこに建設すべきかという戦略を誤ると、非常に高くつく可能性がある。

第二に、明らかに二極化している世界が多極化すると、友好国にも敵国にも同様に誤ったシグナルを送る可能性がある。4月のマクロン大統領の中国訪問中に発せられた発言が引き起こした国際的な騒動が、この点を物語っている。ヨーロッパに帰る途中の機内でのインタヴューで、マクロン大統領はヨーロッパが第三の超大国になることの重要性を強調したと伝えられている。マクロン大統領が多極化について熟考する姿勢は、ワシントンやヨーロッパのフランスの同盟諸国には受けが悪かった。中国側のホストは喜んでいるように見えたが、マクロン大統領の多極化に関する考えを、米中対立で中国を支持するフランスや欧州の姿勢と混同すれば、誤ったシグナルを受け取ったことになるかもしれない。

多極体制は、敵対する超大国が2つある世界ほど、露骨に二極化していないかもしれないが、必ずしもより良い世界につながるわけではない。多国間主義の手っ取り早い解決策ではなく、更なる地域化(regionalization)につながる可能性もある。多極化を望み、存在しないシステムにエネルギーを費やすよりも、より効果的な戦略は、既存の二極体制内で対話のためのより良い解決策とプラットフォームを探すことである。

長期的には、世界は確かに多極化する可能性があり、インドはアメリカと中国に加わる最も明白な候補である。しかし、その日はまだ遠い。私たちは予見可能な将来、二極化した世界に生きることになるだろう。そして、戦略(strategy)と政策(policy)はそれに応じて設計されるべきである。

※ジョー・インゲ・ベッケウォルト:ノルウェー国防研究所中国担当上級研究員、元ノルウェー外務省外交官。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年)と『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店、2023年)で、取り上げたが、私はアメリカの産業政策に注目している。特に、アメリカ軍部とシリコンヴァレーの情報産業・IT産業との新・軍産複合体づくりが行われていることを指摘した。そして、ジョー・バイデン政権では、産業政策が重視されていることも併せて紹介した。

 産業政策とは、「政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)」と定義されている。政府が産業を保護し、指導して、より良い結果を生み出そうとするもので、その元祖は日本である。その研究を行ったのが、日本研究の大家だった故チャルマーズ・ジョンソンだった。このことも詳しく拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介している。

 そして、現在、産業政策によって、急激な経済発展を成功させ、アメリカの地位を脅かすまでになっているのが中国だ。そして、アメリカ国内では、「中国の成功をけん引している産業政策なるものを私たちやるべきだ」という主張が出ている。下に紹介する論稿はまさにそれだ。現在、電気自動車、バッテリー、クリーンエネルギー(太陽光パネルなど)、人工知能、ロボット工学といった最先端分野で、中国がアメリカをリードしている分野が多い。それは、中国が産業政策をうまく使ったからだ。中国の産業政策の特徴は、「中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況」であるが、「保護をしながら同時に激しい競争をさせる」「外資導入も積極的に行う」ということにある。加えて、こうした政策を首尾一貫して行える政府機関も存在する。それが中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)である。日本では、通商産業省が「経済参謀本部(Economic General Staff)」であった。

 この論稿で重要なのは、アメリカ政府は権力、職掌が分立しており、こうした1つの本部機能を持つことは難しいのであるが、ジョー・バイデン政権1期目の前半は、ジェイソン・マセニー(Jason Matheny)という人物を、「技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した」ということだ。この人物が調整役となって、首尾一貫した政策の陣頭指揮(国内政策と対外政策)を執っていたということだ。現在はランド研究所所長となっている。この人物の存在が非常に重要ということになる。

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ジェイソン・マセニー

 米中は最先端の産業分野において官民協働で戦っている。その戦いは激しいものであるが、そのような戦いができることは羨ましい。しかも、産業政策を立案し、成功させたのは、戦後日本であった。日本がこの戦いに加われないほどに落ちぶれ果ててしまったこと花とも残念なことである。

(貼り付けはじめ)

迷走するアメリカの産業政策は中国から教訓を得ることができる(America’s Flailing Industrial Policy Can Take Lessons From China

-北京の経験は、数々のチャンスと罠(opportunities and traps)の両方を示す行程表(ロードマップ、roadmap)である。

ボブ・デイヴィス筆

2024年4月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/11/america-industrialpolicy-china-economics-infliation-manufacturing/

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ジョー・バイデン大統領率いるホワイトハウスは、ここ数十年で最も野心的な産業政策プログラム(industrial policy program)を策定し、海外との競争によって、国内で衰退した戦略的産業(strategic industries)を復活させようとしている。その目的は次の通りだ。クリーンエネルギー(clean energy)と半導体製造(semiconductor manufacturing)に重点を置き、アメリカの産業と技術力を強化することで、中国の先を行くことである。

しかし、北京と対決しようとするあまり、ワシントンは中国が何十年にもわたり西側諸国(the West)に追いつくことを目的とした産業政策を試行錯誤しながら(through trial and lots of errors)学んだ教訓を無視してきた。米中両国の政治体制が異なっているが、ワシントンが学ぼうと思えば学べることはまだたくさんある。

アメリカは少なくとも第二次世界大戦後、産業政策の一分野、すなわち新技術の育成(fostering new technologies)において主導してきた。ジェット飛行機からスーパーコンピューター、通信衛星、インターネットに至るまで、世界経済に革命をもたらす技術の開発には、多くの場合、国防総省を介した(via the Pentagon)連邦資金(federal dollars)と支援が重要な役割を果たした。しかし、アメリカが日本のような外国の競争相手に負けることに悩み始めた1980年代初頭以降、政府は重要産業の再国内化で惨めに失敗してきた。

アメリカ政府が何も試さなかった訳ではない。ロナルド・レーガン元大統領は国内の小型車製造を復活させようとし、ジョージ・HW・ブッシュは薄型テレビ(flat-screen televisions)に狙いを定め、ビル・クリントンは小型車に再挑戦した。バラク・オバマはソーラーパネルを推進した。ドナルド・トランプは電気通信機器を推した。どれも成功しなかったが、その主な理由は、補助金を得るアメリカ国内生産よりも、海外生産の方がはるかに安価なままだからである。

だからといって、ジョー・バイデン大統領の取り組みが絶望的であることを意味する訳ではないが、課題の大きさと、他の国の経験に目を向ける必要性を指摘している。中国は産業政策で失敗したこともあるが、繊維、タイヤ、電子機器製造、太陽エネルギー、風力発電、バッテリー、高速鉄道など多様な分野で、西側のライヴァルに打ち勝つ強力な産業を自国内で構築するために政府の政策を利用してきた。過去45年間、こうした成功によって、中国は貧しい国から、世界第2位の経済大国に成長した。

ホワイトハウスの元国際経済担当シニア・ディレクター、ピーター・ハレルは次のように語っている。「私の知る限りでは、バイデンのホワイトハウスでも中国の産業政策を研究する努力はなされてきた。しかし、その目的は、私たちにとってプラスになる教訓があるかどうかを確認することよりも、中国からの報復や被害を軽減する方法を見つけ出すことだった」。

第一に、定義だ。産業政策とは、政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)。基本的に、政府は、経済成長の基礎となる産業の発展や技術の進歩のために投資する。

中国の産業政策をアメリカと比較するのは難しい。中国は一般的に西側諸国に追いつくことに重点を置いてきたのに対し、アメリカは他国よりも抜きんでる(stay ahead of the pack)ことを目指してきた。中国は、全権を握る(しかししばしば目に見えない)共産党をトップとする独裁的な政府(autocratic government)によって運営されている。ワシントンでは、経済における政府の役割についてまったく異なる見解を持つ2つの政党の間で権力がシフトしている。

中国の産業政策を説明する明確なハンドブックも存在しない。中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況だ。しかし、このシステムにはアメリカが学ぶことができる部分がまだある。

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中国の東部、山東省の煙台港で輸出を待つ数百台の電気自動車(1月10日)。

中国は世界的な補助金のチャンピオンだ。アメリカが世界の軍事支出を支配しているのと同じように、補助金支出を支配している。戦略国際​​問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の中国専門家スコット・ケネディは、2019年に中国はGDPに占める割合で、アメリカの12倍の補助金を支出したと推定している。これらの補助金には、研究開発費(R&D dollars)や税額控除(tax credits)、安価な資金調達(cheap financing)、地価の割引(cut-rate land prices)、政府による優先購入(government purchasing preferences)、さまざまな投資基金の支払い(investment fund payouts)などが含まれていた。

バイデン政権のある元高官によれば、バイデンの税控除と補助金は数年間で6000億ドルに達する可能性があるという。しかしケネディは、それが中国との格差を縮めることにつながるかどうかは疑問であると述べている。ケネディは中国を「先進国には同輩がいない特異な存在(an outlier that has no peers in the industrialized world)」と呼んでいる。

中国専門の研究者たちは、中国の成功の秘訣は、単なる支出ではなく、驚くべきことに競争(competition)にあると述べている。中国共産党と中央政府は産業政策の優先順位(industrial policy priorities)を設定するが、計画を実施し、支出のほとんどを賄うのは地方自治体に委ねられている。地方レヴェルでは、地元の党幹部が中国政府の意向を実行して昇進を目指して争っているため、競争は熾烈である。

シカゴ大学の経済学者チャン・タイ・シエは、この競争が計画されることはほとんどないと語った。中央政府は、自らの制御を超えた競争を引き起こすよりも、むしろ州のチャンピオンを生み出すことに努めたいと考えている。しかし、政治的に安全と見なされているため、中国政府が優先分野に指定している分野に資金が殺到している。「中国の産業政策の秘訣は地方政府間の競争だ(The secret sauce of China’s industrial policy is competition among local governments)。各都市で役人たちは(経済的に)意味のないことをしているが、彼らは党階層内の人々を喜ばせたいのである」と述べた。

戦略国際問題研究所(CSIS)の調査によると、電気自動車(electric vehiclesEVs)が優先事項になってから、2020年までに全米約400社が電気自動車ビジネスの様々な分野に参入した。同じプロセスが太陽エネルギーでも起こり、現地レヴェルでの競争が激しすぎて太陽光パネルの価格が暴落し、中国企業は収益を上げるために輸出に目を向ける一方で、事業を存続させるために政府の融資に頼った。

これら全てが外国の競合他社を市場から追い出す巨大な力を生み出した。中国は現在、世界需要の3倍の太陽光パネルを生産していると『フィナンシャル・タイムズ』紙は報じた。 戦略国際問題研究所(CSIS)の研究者イラリア・マゾッコによると、昨年の中国の太陽光パネル、電池、電気自動車の輸出は鉄鋼および関連品目の輸出とほぼ同額だった。太陽光パネル業界は長年中国特有の過剰生産(overproduction)が蔓延してきた業界だという。

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ジョージア州ノークロスの同社を訪問した太陽電池会社スニバのマット・カード社長(中央)がジャネット・イエレン米財務長官としている(2024年3月27日)。

ジャネット・イエレン米財務長官は、最近の中国訪問中に中国の財務長官に対し、クリーンエネルギー製品の超安価な輸出を止めるよう強く求めたと述べた。イエレン財務長官は、最近の講演で「過剰生産能力は、アメリカの労働者や企業、世界経済だけでなく、中国経済の生産性や成長にもリスクをもたらす」と述べた。

中国製品の価格は非常に安いので、アメリカ国内の太陽光発電会社の一部は、インフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)の補助金だけでは中国に代わる代替手段を生み出すのに十分ではないと主張している。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の試算によると、IRAインフレ抑制法可決以降にアメリカで発表された新たな太陽光パネル生産量の約4分の1を中国企業が占めており、中国企業は最大14億ドルの補助金を受け取ることになる。

アメリカに本社を置く最大手の太陽光発電メーカーである「ファースト・ソーラー」社のマーク・ウィドマー最高経営責任者(CEO)は連邦上院委員会で、「インフレ抑制法の太陽光エネルギー税額控除の最大受益者が中国になる大きなリスクがある」と述べている。

それでも、補助金は中国の成功を保証しているものでもない。中国を中心とした市場調査会社であるガベカル・ドラゴノミクスの技術アナリストであるダン・ワンは、中国は半導体の設計と製造に何十億ドルもの補助金を費やしているが、先進的なコンピューターチップの製造において市場リーダーである台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.TSMC)に少なくとも5年遅れを取っていると推定している。

資金の洪水は腐敗も招く。清華紫光集団(Tsinghua Unigroup Inc.)は、中国政府から巨額の半導体製造補助金を受けった。清華紫光集団を率いた趙偉国は、中国の汚職防止当局から「自分が経営する国有企業を私的に支配とした」との申し立てを受けて拘束された。

ここには、アメリカにとっていくつかの教訓がある。第一に、補助金だけでは産業政策を進めるのに十分ではない。第二に、中国が優先している産業で、中国と競争するには莫大な費用がかかり、おそらくアメリカがほぼ提供しないレヴェルの保護主義が必要となる。

国内企業の業界団体であるアメリカ太陽エネルギー製造業者連合のエグゼクティブディレクターであるマイケル・カーは、政府は何が必要なのかの一例として砂糖産業に注目すべきだと述べた。そこでは、アメリカは価格が一定の水準を下回った場合に、砂糖のローン返済を受け入れており、ミシガン州、ミネソタ州、およびカリブ海気候とは程遠い他の場所で砂糖が栽培されるという奇妙なシステムを支持している。

しかし、おそらく最も重要なことは、中国の例は、産業政策が競争を促進することを保証することの重要性を示しているということになるだろう。ピーター・ハレルは、「私たちが産業政策を考えるとき、補助金や税金補助金が少数の企業を固定化し、既存企業を弱体化させないようにすることを考える必要がある」と語った。

バイデン政権の国家経済会議前委員長ブライアン・ディーズは、バイデン政権の計画のように、現金補助金よりも税額控除に依存する方が競争を促進し、中国に蔓延する過剰生産を回避するはずだと述べた。税額控除が認められる前に、投資家たちは市場を評価し、収益性があるかどうかを判断し、資金を投下する必要がある。政府が決定を下している訳ではない。利益を追求する企業が決断しているのだ。

ディーズは次のように語っている。「補助金は収益を向上させる。しかし、最終的には、誰かが多額の資本を危険に晒さねばならない。返済能力がなければ、利用率は低くなる」。

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左:2020年1月22日、中国北部の河北省邯鄲の工場でフェイスマスクを生産する労働者たち。右:2月15日、フロリダ州マイアミ北部にある家族経営の医療機器工場で呼吸用マスクを生産する労働者たち 202115日。

中国の産業政策目標は、1970年代後半に経済が世界に開放されて以来、変化してきた。当初、中国は膨大な、かつ低賃金の労働力を利用して、繊維、アパレル、エレクトロニクス製造業を中国に誘致した。それ以降、北京はより野心的になり、現在ではロボット工学、半導体、クリーンエネルギー、人工知能などの未来の技術でリーダーシップを発揮することを目指している。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の経済学者バリー・ノートンは、中国は特に「ショートボード(short board)」技術と呼ばれるもの、つまり西側諸国の封鎖によって中国が機能不全に陥る可能性がある分野に重点を置いている、と指摘している。例えば、トランプ政権以降、中国は中国のコンピューター産業がアメリカ主導の輸出規制に耐えられるよう、国内の半導体設計・製造装置メーカーの強化(strengthening its domestic semiconductor design and manufacturing equipment makers)に注力してきた。

産業政策に依存し過ぎることには、明らかに敗者となるプロジェクトを、撤退するべき時期よりも、はるかに長く続けることなどのマイナス面もある。たとえば、国際競争力のあるガソリン車、燃料電池、水素エネルギーの開発という失敗した取り組みに資金をつぎ込むことなどだ。しかし、多くの場合、中国は挫折もあったが、必要な調整を行ってきた。自動車分野では、ガソリン車が中国の産業政策計画から除外されるようになった。その代わりに、電気自動車が登場した。5カ年計画や指導者が次の選挙を心配する必要がないシステムに対する中国の執着を真似するよう、アメリカに勧める人はいないが、民主的な制度においては、関与と長期計画は米国の弱点となるのは必然であろう。

アメリカの繊維メーカーは既に、バイデン政権が新型コロナウイルス感染拡大期間中に当初提案された2021年の法律で義務付けられている、アメリカ製のマスク、ガウン、その他の個人用保護具の購入や、国防生産法(Defense Production Act)への資金提供がうまくいかずに、役に立たなかったと不満を漏らしている。全国繊維組織評議会のキンバリー・グラスは、アメリカ企業は約束された注文に向けて準備を進めたが、連邦政府機関は安価な中国からの輸入品を購入し続けたと述べている。

あるホワイトハウス高官は、退役軍人省はアメリカ製の物品129点を特定し購入を開始しており、他の機関も同様の取り組みを始めていると述べた。しかしグラス会長は、彼女のグループのメンバーたちはアメリカ製の注文を見たことがないと語った。

アメリカ政治の分裂状態について考えると、バイデンのクリーンエネルギー計画のどれだけが第二期トランプ大統領の任期後にも存続できるかは、まったくもって不透明だ。トランプ大統領は現在、電気自動車を雇用の喪失者として非難し、自動車産業は政府の自動車推進政策によって「暗殺」されていると主張している。そして、クリーンエネルギーに対する補助金や税制上の優遇措置の大部分を盛り込んだインフレ抑制法は、共和党からの投票を1票も得られずに可決された。半導体製造に対して、390億ドルの補助金と税額控除を提供するCHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act)は、超党派の支持を得ており、トランプ政権での提案として始まったため、より安全であるように思われる。

過去に共和党政権は民主党の産業政策努力を阻止しようと努めてきた。例えば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、超効率のガソリン車を開発するというクリントン政権の取り組みを即座に中止した。連邦議会共和党はオバマ大統領の太陽光パネル開発計画を縮小した。

ディーズは、地方政治での動きもあり、クリーンエネルギーへの補助金は政権交代後も存続するとみている。インフレ抑制法可決後に行われたクリーンエネルギーへの投資の約75%は共和党が勝利した連邦下院選挙区で実施された。ディーズは、「産業能力に、より精力的な方法でもっと投資する必要があるという基本的な命題には、より継続性がある」と述べている。

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北京のビルに飾られている巨大な中国国旗の近くで自身の電話を見る男性(2017年10月23日)。

アメリカが中国指導部の経済支配を真似て近づくことは、たとえそれを望むとしても、不可能なことだ。中国には、小規模な共産党指導グループが大規模な政府計画システムを監督する並行システムがあり、優先事項の承認を得るために様々な機関や国有企業によるロビー活動が渋滞するほどに活発である。

アメリカの産業政策へのアプローチは様々な機関の間で分裂しており、国家計画委員会(state planning agency)の後継である中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)のような全体をまとめる機関はない。商務省が半導体プログラムを運営し、エネルギー省、財務省、内国歳入庁、その他の機関がクリーンエネルギー奨励金について発言権を持ち、国防総省が半導体や通信技術に関連する他のプログラムを管理している。ホワイトハウスの無名機関である科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)が調整役として起用される可能性もあるが、大きな影響力を持つことはほぼない。

産業政策の監督を調整するため、ホワイトハウスは著名なテクノロジスト(technologist)であるジェイソン・マセニーを、技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した。国家安全保障が技術の進歩にますます依存する中、ホワイトハウスは政策が「一致している(in sync)」ことを確認したいとマセニーは語った。マセニーが国防シンクタンクのランド研究所所長に就任するために2022年に政権から離れた後は、彼の仕事は複数の人物に分担されていた。

オバマ政権で、国家安全保障委員会に勤務した経験を持つ、現在は政治コンサルティング会社バウンダリー・ストーン・パートナーズ社に勤めるクリスティン・ターナーは次のように語っている。「全体像を把握できる人は誰もいない。業界政策を全面的に機能させるための全ての糸を引く責任を負う閣僚レヴェルの担当者は存在しない」。長年にわたり、商務長官や新たな競争力強化担当政府機関(new competitiveness agency)を産業政策調整担当(industrial policy czar)にするという提案があったが、政府諸機関の間で、そして、連邦議会の各委員会の間の対立のため、実現には至らなかった。

あるホワイトハウス高官は、非常に多くの様々な機関が産業政策の取り組みに関与する必要があることで、アメリカの制度には利点があると反論した。「これは政府全体のアプローチだ」とこの人物は述べ、この計画はホワイトハウス次席補佐官のナタリー・クイリアンが調整していると述べた。

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オハイオ州ジョンズタウンにあるインテル社の新しい半導体製造工場を訪問するジョー・バイデン米大統領(2022年9月9日)。

ある意味、アメリカは中国の産業政策への取り組み方を真似し始めている。アメリカは何年もの間、中国がアメリカの経済モデルに従うことに利点を見出し、中国は保護主義を続ければ貿易が遮断されることを恐れるようになると考え、アメリカを中国の自由市場モデルとして提示しようとしてきた。しかし、それはもはや行われていない。現在、アメリカ政府も中国政府と同程度に、国内産業を活性化している。ライヴァル国が不利になる行動を取る理由として「互恵性(reciprocity)」を挙げる可能性が高い。

バイデン大統領が、中国の政府諸機関が収集する可能性のあるデータを送信しているとして、中国製電気自動車のアメリカへの輸入を禁止する大統領令案を発表したとき、バイデンの考えは明確だった。バイデン大統領は「中国は、中国で操業するアメリカ車やその他の外国車に制限を課している。なぜ中国からのコネクテッドヴィークル(connected vehicles)が安全対策措置なしで、我が国で走行することを許可されなければならないのか?」と述べた。

おそらく、中国の例が示すアメリカ政府にとって最も難しい問題は、このような保護主義にどこまで傾くかということだろう。中国の成功の重要な部分は、通信製造(telecommunications manufacturing)などの分野で巨大な国内市場を遮断したことだ。これにより、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、国際競争に必要な研究開発や自動化の費用を賄える確実な収益基盤を手に入れた。中国はインターネットサーヴィスでもこの方式を繰り返し、百度(Baidu)はグーグルやその他の企業との競争から自由に成長できるようになった。

しかし、中国は多くの産業で海外からの投資も奨励してきた。中国は、合弁事業(joint ventures)、規制(regulations)、審査委員会(review committees)、そしてあからさまな盗用(outright theft)を利用して、濫用される可能性のある秘密技術を学習してきた。その例は数多く存在する。中国で事業を行う条件として、日本とヨーロッパの新幹線メーカーは中国鉄道省と中国企業にノウハウを移転した。やがて、中国企業が強力な競争相手となった。中国が電気自動車市場を開拓していた頃、外国自動車メーカーはアップグレードを支援するために地元企業からバッテリーを購入する必要があった。一方、中国資本のヴォルヴォ・カー・グループは韓国から、より先進的なバッテリーを購入することができ、電気自動車での競争力が高まった。

トランプ政権は、中国がアメリカに輸出する品目の4分の3に関税を課すことで、アメリカ国内市場の保護に努めたが、中国企業がサプライチェーンを再構築し、ヴェトナムとメキシコでの事業を通じて、アメリカに輸出できるようにしたため、大きな影響はなかった。審査に関わった弁護士らによると、バイデンは関税を維持し、中国企業が国家安全保障審査に合格してアメリカ企業を買収することをほぼ不可能にすることで保護を倍増したということだ。市場調査会社ロジウム・グループによると、中国の対アメリカ投資は2016年の540億ドルから2022年には約15億ドルに急減した。フォードが電気自動車での競争力を高めるために、中国の「コンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー」社から先進的な電池技術のライセンス供与を受けるという契約でさえ、連邦議会とヴァージニア州知事から非難を浴びた。

外国投資に対する偏見は、中国とその他の少数の敵対国家にのみ適用される。アメリカの産業政策計画は一般に海外投資(foreign investment)に大きく依存している。半導体メーカーに対するCHIPS法の補助金は主に、台湾に本拠を置くTSMCに、アメリカに先進的な工場を建設するよう説得する方法として始まった。最近、バイデン政権はアリゾナ州の新しい半導体製造工場3カ所へのTSMCの650億ドルの投資を支援するため、TSMCへの66億ドルの補助金を承認したが、プロジェクトの作業進行は予定より遅れている。これは、インテル社やその他の米メーカーへの補助金に、追加されるものである。

中国に関して、アメリカのアプローチは曖昧だ。バイデン政権が太陽光発電の設置拡大を推進しているので、アメリカ国内に新設される中国資本の太陽光パネル工場は税額控除の対象となる可能性がある。しかし、中国の電池メーカーや半導体企業は一般的にそうではない。そこでは、アメリカは中国企業を締め出し、アメリカ企業が技術分野で中国企業を追い越すことを期待している。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家であるケネディは、中国企業がアメリカの市場リーダーから学んでアップグレードしたのと同じように、中国企業がリーダーとなっている、バッテリーや電気自動車、その他のグリーンテクノロジーなどの分野で、中国からの投資が必要だと述べた。

ケネディは次のように指摘している。「私たちは、表が出ればあなた方の勝ち、裏が出れば私たちの負けというアプローチを採っている。もし、私たちが技術的に進んでいるのであれば、中国に技術を与えたくないので中国からの投資は望まない。私たちが遅れている場合、それは国家安全保障上のリスクであると感じ、従って中国に依存したくないということになる」。

中国企業への投資優遇措置を全面的に禁止するよりも、リスクと利益を比較検討するアプローチの方が、筋が通っている。中国はまさにその手法を使っている。中国は、テスラの高級電気自動車生産能力を高めるために上海に工場を建設するよう奨励しようとしたとき、様々な減税措置や低利融資を提供した。

同様に、アメリカが明らかに遅れている、バッテリー分野での中国の投資を奨励することは、アメリカで生産する中国企業に、非中国企業が受けるのと同じ優遇措置を与えることを意味する。太陽光発電では、サプライチェーンを多様化する方法の1つとして、アメリカで生産する全ての企業(中国企業、非中国企業を問わず)は、使用する材料が中国以外の供給源から来ている場合、より多くの利益を得るべきである。

アメリカは、中国がこれまで非常にうまく利用してきた別のアプローチ、つまり、アメリカへの投資承認と引き換えに技術へのアクセスを要求するというアプローチを試すこともできる。アメリカでは連邦下院が、アメリカに友好的な買い手に販売されない限り、アプリを禁止する法案を可決したが、これは北京へのシグナルとして解釈すべきだ。基本的に、この法案は、TikTokの基盤となる技術を西側諸国の管理下に移すことを求めている。

技術交流(technology exchange)は、中国がアメリカでビジネスを行うために支払う代償となる可能性がある。カリフォルニア大学サンディエゴ校のエネルギー専門家マイケル・デイビッドソンは次のように指摘している。「非常に皮肉な状況がある。アメリカは、技術移転(technology transfer)を強制する中国の保護主義政策について長い間不満を述べてきた。アメリカには、それを覆し、中国から有利な条件で技術を手に入れるチャンスがある」。

この種の圧力戦術を使うことは、被害者が一流の弁護士や独立した司法機関にアクセスできる民主的なシステムにおいては難しいかもしれない。それでも、何がうまくいき、何がうまくいかないかを知るために、アメリカ人は中国の経験を研究するのがよいだろう。

※ボブ・デイヴィス:『ウォールストリート・ジャーナル』紙で長年にわたり、米中経済関係の特派員を務めた。共著に『超大国の対決: トランプと習近平の戦いが新たな冷戦をどのように脅かすか(Superpower Showdown: How the Battle Between Trump and Xi Threatens a New Cold War)』がある。ツイッターアカウント:@bobdavis187

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 来年2025年に、名目GDPでインドが日本を抜いて世界第4位になるという予測が日本でも報道された。日本は世界第5位に下がる。日本の衰退が印象付けられるものだが、インドの躍進スピードが大きい。現在第3位のドイツと日本の差は小さいことから、インドがドイツを抜いて世界第3位になるのも近いということになる。インドは、「西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」の中で、存在感を増している。

 インドは中国を抜いて、世界最大の人口を抱えている。14億1700万人を誇る。名目GDPは世界第4位であるが、一人当たりのGDPにすればまだ3000ドル程度だ(中国は約1万ドル、韓国は約3万ドル)。まだまだ貧しいのであるが、これから伸びしろが大きいということになる。人口ボーナス(15歳から64歳までの人口が、それ以外の人口の2倍いる状態)もあり、これから国内需要が増大し、国内市場が巨大になっていく。外国企業にとっても魅力的な市場である。
 2014年に就任したナレンドラ・モディ首相のインフラ整備と「メイク・イン・インディア」政策という製造業育成政策で、自動車生産が伸びている。もちろん、IT関係のサーヴィス業もお家芸であり、経済成長をけん引している。ヒンドゥー・ナショナリズムを経済ナショナリズムに転化させて、国内産業を育成し、雇用を確保し、国民生活を改善していくという流れになっている。それでは、インドは、中国のように世界覇権を握るほどの大国になるかどうかであるが、世界第一の経済大国にまでなれるかどうか、については疑問が残る。しかし、これからインドは注目に値する国である。

(貼り付けはじめ)

インド経済の躍進:世界をリードする成長とチャンスの地

NEW 2024/5/23

Global X Japan

https://media.rakuten-sec.net/articles/-/45248

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●歴史的な高成長が続くインド経済

●モディ政権による経済政策、外国資本が参入しやすいビジネス環境

●インドの経済成長をまるっと捉える

■歴史的な高成長が続くインド経済

 インドの直近3年間の実質GDP(国内総生産)成長率は9.69%(2021年)、6.99%(2022年)、7.83%(2023年)と高水準です。2024年は6.81%と予測*されており、世界経済の成長率がおおむね3%で推移していることを踏まえるとインド経済の力強さが際立ちます。

 また、2023年の名目GDPは日本に次ぐ5位となり、2027年には日本とドイツを抜いて世界3位の経済大国になるとみられています*

*IMF(国際通貨基金)による予測

 力強い経済成長を支えるのは世界一の人口、特に生産年齢人口が多いことです。国連の推計では、インドの人口は2023年に中国を抜き世界一となりました。さらに人口ボーナス期(1564歳の生産年齢人口がそれ以外の人口の2倍以上に達する状態)が2050年ごろまで続く見通しであり、今後も巨大な人口に支えられた経済成長が持続すると考えられます。

 一方で、1人当たりの名目GDP(約2,410ドル、2022年)は1970年代の日本と同水準と低く、伸びしろが十二分にあります。2010年当時の中国でも同様に言われていたことですが、国民一人一人の所得水準が増加することで、その後中国経済は急速に拡大、今や米国を脅かす超巨大経済大国となりました。

 なお、一般的に1人当たりの名目GDP3,000ドルを超えると家電製品や家具などの耐久消費財の売れ行きが加速し、7,0001万ドルに達すると自動車や高級家電の普及に拍車がかかります。

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(出所)世界銀行よりGlobal X Japan作成

■モディ政権による経済政策、外国資本が参入しやすいビジネス環境

 インドのナレンドラ・モディ首相は現在2期目です。1期目(2014年~)ではインフラ整備や法税制改革を推進し、2期目(2019年~)では法人税引き下げや補助金制度の導入で製造業振興策に取り組みました。3期目については現在行われている総選挙の結果次第ですが、選挙公約として高速鉄道網の拡張などさらに積極的なインフラ政策を盛り込んでいます。

 また、インドは外国資本が参入しやすいビジネス環境となっています。英語が第二公用語であることや、初等教育の段階からプログラミングの授業が行われているためIT人材が豊富なことが主な背景です。

 そのため、先進国企業の業務のアウトソースを受託できる素地があります。IT分野はカースト制度の概念にない新しい職種であり、それ故、低カースト出身者が経済的に成功するための機会にもなっています。

 歴史的には中国、パキスタンなどともめる場面もありましたが、近年は経済優先の全方位外交を行っており、G7を中心とする民主主義的な国だけでなく、ロシアや中国などの権威主義的な国々とも中立的な立場で貿易を行うなど、結果として外国資本をうまく誘致できています。

 今後も外国資本により新たな雇用が生まれ、その結果として中間層を中心に所得水準が上がり、消費が拡大するという内需主導型の成長が続くと期待されます。

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(出所)世界銀行よりGlobal X Japan作成

■インドの経済成長をまるっと捉える

 上記のような背景からインドの株式市場には海外投資家から資金が流入しており、インドにおける個人の資産運用への関心の高まりも相まって、主要株価指数は最高値を更新しています。

 しかし、バリュエーションの面では高い利益成長からPER(株価収益率)は横ばいで推移しており、相場に過熱感はみられません。今後も良好なファンダメンタルズを支えに中長期的な株価上昇が期待されます。

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(注)株価指数はNifty50を使用。期間は201812月末から20244月末、株価は起点を100として指数化(月次、インドルピー建て)(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 523日に、インド全体の経済成長を取りにいくETF(上場投資信託)が東証に上場しました。【188A】グローバルX インド・トップ10+ ETFは、インドが強みを持つ情報技術やコミュニケーション・サービスを含む9つのセクターを投資対象とし、各セクターを代表する大型の15銘柄を厳選します。ウエートは特定のセクターに偏らないようにするため均等にします。

 一般的なインドの株価指数(Nifty50SENSEXなど)は時価総額加重平均のため、時価総額の大きい金融が3040%と大きくなる傾向があります。過去のインドのGDPのセクター別の内訳をみると農業、工業、サービスの3大項目が大きく、比率を変えることなく推移しています。

 インド経済は特定のセクター、分野に偏った成長ではなく、ある程度均等に成長していることから、セクターを分散している当ETFに投資することでインド経済全体の成長を享受できます。

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※四捨五入の関係で必ずしも100にならないことがあります。(注)2024430日時点(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 このようにセクターを分散・銘柄を厳選することで、当ETFの対象株価指数(Mirae Asset India Select Top 10+ Index)は他のインド株価指数を上回っており、今後も相対的に高いパフォーマンスが期待されます。なお、当ETFNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠の対象銘柄です。

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(注)Mirae Asset India Select Top 10+ Indexの算出開始日は202445日。算出開始日以前の指数に関する情報は全て指数算出会社がバックテストしたデータ。期間は2008620日から2024430日。起点を100として指数化(インドルピー建て、配当込み、日次)(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

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インドは本当に次の中国なのか?(Is India Really the Next China?

-インド経済上昇の可能性は高いが、政府の政策が妨げになっている。

ジョシュ・フェルマン、アルビンド・スブラマニアン筆

2024年4月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/08/is-india-really-the-next-china/

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インドは中国になるだろうか? 中国経済が下降線をたどり、インドの成長に対する楽観論が世界中に広がる中で、この疑問はもはやナショナリストの熱狂的な妄想として片付けることはできない。なぜなら、少なくとも、世界は既にインドを大国のように取り扱っているからだ。

次のことについて考えてみて欲しい。2023年、カナダ国内で起きたカナダ人殺害事件と、アメリカ国内で起きたアメリカ人殺害計画にインド政府が関係しているという疑惑が持ち上がった。しかし、疑惑以上に注目すべきはその反応である。アメリカ政府は、煽動的になりかねない事態を鎮火させるために、ほとんど何も語らず、ただ裁判を無事に終わらせることを選択した。つまり、インドの傲慢さは非難されることなく容認された。これは、インドの政治的地位が新たに確立されたことを示す証拠である。

経済面に関して言えば、過去40年間の中国の経験が非常に特殊なタイプの奇跡であり、再現できる可能性が低いことは事実である。しかしながら、そうではありながらも、インドはもはやかつてのような経済的に制約された大国ではないため、中国のようになる可能性は存在する。

過去四半世紀にわたり、インドの発展はインフラによって妨げられ、インド自身の製造ニーズを満たすには、インフラの納涼区が不十分であり、インドを輸出基地として検討する外国企業にとってもまた明らかに不十分だった。しかし、過去10年間で、インドのインフラは大きく変化した。ナレンドラ・モディ首相の政府は、道路、港湾、空港、鉄道、電力、電気通信を大量に建設し、以前のインドの姿が認識できないほどになった。ほんの一例を挙げると、2014年にモディ政権が発足して以来、約3万4000マイルの国道が建設された。

インドのデジタルインフラも大きく姿を変えた。かつてはギシギシと音を立て、技術的にも後進的だったデジタルインフラは、今や最先端を行くようになり、一般的なインド人は、ごく日常的な買い物でさえスマートフォンで決済するようになった。より重要なのは、デジタル・ネットワークが全てのインド国民をカバーするようになったことで、政府は困っている人に現金を直接給付するなどのプログラムを導入できるようになり、民間企業は起業や技術革新のプラットフォームとして活用している。

同時に、モディ政権の「新福祉主義(New Welfarism)」はインド国民の生活の質を向上させた。この特徴的なアプローチは、基本的に私的な財やサーヴィスを公的に提供することを優先し、有権者にクリーンな燃料、衛生設備、電力、住宅、水、銀行口座を提供する一方で、恩恵を受けるのはモディ首相であることを明確にしている。こうしたプログラムの結果、新型コロナウイルス感染拡大のような苦難の時期にも、国家は雇用や無料の食料で弱者を救済できるようになった。インドが国家として、より良いものを構築し、提供する能力には目を見張るものがある。

これらは主要な政策成果であり、累積的な国家的努力の成果だ。これらの取り組みの多くは、実際には、モディ政権前の中央政府および州政府によって開始されたものだが、その進歩を加速させている点でモディ政権は重要な称賛に値する。そして、その成果が出ている兆しも見えている。

第一に、インドは、技能ベースのサーヴィス輸出に新たな大きな弾みをつけている。インドのサーヴィス産業は2000年代初頭にブームになったが、2008年から2009年にかけての世界金融危機の後に停滞した。そして今、再生が見られる。2022年、インドの世界市場シェアは1.1%ポイント(約400億ドル)増加し、これはスキルの重要なジャンプアップを反映している。(2023年、インドは更に世界市場シェアを拡大する可能性が高いが、そのペースはそれほど速くない)。

以前は安価なコードを書いたり、コールセンターで働いたりしていたインド人が、今では世界規模の能力センターを運営し、高いスキルを持った人材が世界のトップ企業で分析業務を行っている。JPモルガン・チェースだけでも、インドに5万人以上の従業員がおり、ゴールドマン・サックスのニューヨーク以外で最大のオフィスはベンガルールにある。アクセンチュアやアマゾンなども大規模な拠点を構えている。このブームが高層マンションの建設に火をつけ、アーメダバード、ベンガルール、ハイデラバード、ムンバイ、プネーといったハイテク都市のスカイラインに点在するようになった。建設業も大いに発展している。SUVの販売台数は急増し、高級ショッピングモールや高級レストランが誕生している。

第二に、インドで最も人口が多く、最も開発が遅れているウッタル・プラデシュ州が復活の兆しを見せている。ウッタル・プラデシュ州は、老朽化したインフラ(多くの寺院は言うまでもない)を改修し、財政を管理下に置き、自警団のヒンドゥー教の僧侶から政治家に転身したカリスマ的な宗派指導者の下、汚職や暴力を激減させている。ウッタル・プラデシュ州が最終的に魅力的な投資先になることができれば、その人口的な重さによって国全体の軌道を変える可能性がある。その変革は、インドのヒンディー語中心地域(最近までバイマル(bimaru、病んだ地域[diseased region])と蔑称されていた)が永久に低開発(underdevelopment)を強いられる訳ではないというシグナルを送ることになるだろう。

最後に、習近平国家主席の下で中国経済の下降スパイラルが加速している。その結果、資本は驚くべきペースで中国から流出し、公式の数字によれば、2023年には企業や家計の資金が正味690億ドルも流出したという結果になっている。

こうした資本のうち、わずかではあるが、インドに流れ込んでいるものがある。最も顕著なのは、アップルがインドの多くの州に工場を設立したことで、インド国内市場への供給が容易になり、特に米中間の経済的緊張が高まっている現在、輸出基盤が多様化している。その結果、国内の電子機器供給のためのチェーンが構築され、特にインド南部では2万人以上の労働者を雇用する大規模な工場の設立を計画しているところもある。これは、常に小規模で非効率な製造業を特徴としてきたインドにおいて、驚くべき現象である。

このような大規模工場が実現可能であることが証明されれば、商品輸出の急増に火をつけることになる。それは、長年苦境に立たされてきたインドの製造業だけでなく、高スキルの輸出サーヴィス・ブームを享受できなかった、低スキル労働者にとっても、展望を大きく変えることになるだろう。この計算は考慮に値する。インドの低スキル輸出は、40%を超える世界市場シェアに反映される中国の競争力レヴェルには決して到達しない。それは、先進諸国が産業基盤の多くを、1国(中国)だけにシフトすることを促した政治的・経済的な特殊事情が、もはや存在しないからだ。しかし、今後10年間で、インドが現在の3%程度のシェアを5~10ポイント高めることは十分に可能であり、これは数千億ドルの追加輸出に相当する。

良好な前兆にもかかわらず、インドが中国を追い越すという宣言は時期尚早である。それは、明るい兆しはまだ経済データには説得力を持って反映されておらず、政府の政策も新たなチャンスを実現するには不十分なままだからだ。

経済データについて考えてみよう。私たちはしばらくの間、インドが2010年代の失われた10年間を本当に脱却することができたという主張に懐疑的であった。この時代は、緩やかな成長、ほとんど構造的変化が見られず、雇用創出も弱かった。確かに、新型コロナウイルス感染拡大後に経済は回復したが、その方法は不平等であり、労働力よりも資本が、中小企業よりも大企業が、そして非公式経済で雇用されている数百万の人々よりも給与をもらっている中産階級や富裕層が優遇されている。

問題の一部は、インドがこれまで、中国の相対的な経済衰退によって生まれた新たな機会のごく一部しか活用できていないことだ。政府が「メイク・イン・インディア(インドで製品を作ろう、Make in India)」というキャンペーンを決然と展開しているにもかかわらず、多くの企業にインドでの事業拡大を納得させるまでには至っていない。実際、外国直接投資(foreign direct investmentFDI)の流入は減少している。また、中国を除く新興市場への外国直接投資の流入に占めるインドの割合も小さくなっている。

これは慎重な外国人だけの話ではない。政府が整備したインフラ整備や補助金、そして場合によっては製造業に対しての惜しみない保護主義(protectionism)にも関わらず、国内企業でさえ投資に消極的だ。プラントや機械への民間投資は、過去10年間の低迷した水準から依然として回復していない。そして、この状況が好転していることを示す説得力のある兆候はない。実際、2023年の新規プロジェクトの発表は、前年のレヴェルと比較して名目上において、減少した。

その結果、膨大な非熟練労働力の雇用創出の源泉であるインドの製造業輸出は低迷を続けている。実際、世界金融危機以降、アパレルなどの主要分野におけるインドの世界市場シェアは低下している。このような事態はモディ政権やインド中央銀行にとっても大きな懸念材料であり、中央銀行は最近、民間セクターが「行動を共にし(get its act together)」、政府の投資負担を軽減するよう促す報告書を発表した。

なぜ企業は、目の前にあるチャンスをつかむことに消極的なのだろうか? 基本的には、インドで事業を拡大することのリスクが高すぎると認識しているからである。

企業の懸念は主に3つの分野にある。第一に、彼らは政策決定の「ソフトウェア(software)」が依然として脆弱であることを懸念している。少数の国内複合巨大企業と一部の大手外資企業が有利な企業と見なされており、競争の場は平等ではなく、広範な投資環境に悪影響を及ぼしている。結局のところ、リスクが低減されたという理由で投資を引き受けるあらゆる好意的な企業に対し、リスクが増大したために投資を削減した競合他社も数多く存在する。彼らにとって、国家の恣意的な行動の犠牲者となるリスクは依然として大きい。

第二に、インド政府は輸出を促進する必要性を認識しながらも、内向き志向(inwardness)、つまり、輸入障壁には依然として強い執着を持っている。この保護主義には新たな魅力がある。それは、インドの国内市場は今や非常に大きく、国内企業は非常に発展しているため、政府の後押しを受けさえすれば、外国企業に取って代わることは容易だと多くの人が考えているからだ。当然のことながら、経済的ナショナリズム(economic nationalism)は必然的に政治的ナショナリズム(political nationalism)を伴う。

しかし、インドの国内市場は、少なくともグローバル企業が売ろうとしている、中産階級向けの商品については、特別に大きくはないというのが現実だ。また、保護主義的な措置が頻繁に発表されると、企業は遅かれ早かれ重要な海外からの供給を断たれるかもしれないとリスクを回避するようになり、実際に国内投資が減退する。例えば、昨年(2023年)8月に発表されたノートパソコンの輸入規制は、重要なIT部門の企業にパニックを引き起こした。結局、規制は緩和されたが、他のセクターでも同様の措置が実施されたため、その懸念はいまだに残っている。

結局のところ、政治と経済の間に、くさびのようにして、はまり込んでいる問題が立ちはだかっている。政治体制が安定している限り、制度の崩壊に直面しても、投資と成長は生き残り、さらには繁栄することができる。そして、モディ首相の人気は安定を予感させている。しかし、インド北部の少数民族コミュニティ、南部諸州、反政府派、農民の間で不満と反抗心が高まり、突発的な事件発生の可能性が高まっている。経済学者のジョン・メイナード・ケインズが述べた有名な言葉にあるように、「避けられないことは決して起こらない。それはいつも予想外のことだ(The inevitable never happens. It is the unexpected, always.)」。

※ジョシュ・フェルマン:JHコンサルティング社代表。国際通貨基金(IMF)インド事務所長を務めた。

※アルビンド・スブラマニアン:ピーターソン国際経済研究所上級研究員。モディ政権の首席経済補佐官を務めた。

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(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ経済は堅調で、日米の金利差も大きいままで、ドル高円安(ドルを買って円を売る)状態が続いている。強いドル(購買力の高いドル)は、輸入製品が安くなり、アメリカ国民の生活のためには良いが、輸出は弱くなる。円安はその逆ということになる。アメリカは物価上昇が続いており、インフレ状態にあるが、実質賃金も上昇している。日本の物価がインフレなのかどうかは議論が分かれているところだが、実質賃金は低下しており、家計に影響を与えている。

 アメリカはインフレ状態であるので、利上げの判断がどうなるかであるが、景気減速も怖いとなると、なかなか踏み出せない状態にある。インフレ状態が続き、強いドルを背景にして、海外からの輸入が増えていくと、ドルの海外への流出は増えていく。ここで怖いのは、アメリカの景気減速であるが、それよりももっと怖いのは、アメリカ国債の崩れやドルの信用不安だ。アメリカ国内では経済が堅調と言われながら、下記の記事のように、厳しい状態にある人々の数は増えている。財産もなく、生活するのがやっとの賃金しか得られないが、公的な補助を受ける基準よりは上という数が、景気が好調ということもあって増えている。

しかし、それは逆に、賃金は上がっても生活は厳しいまま、公的補助がない分、厳しいということになる。住む場所を失い、自動車の中で生活をしているほぼホームレス状態であるが、仕事があるというようなことが起きている。都市部の固定資産税と家賃の高騰で、生活が破綻する人々は増えている。以前であれば、アメリカでは、高校を卒業すれば、親元を離れて自立して生活する、進学したり、就職したりということが当たり前だった。大学進学も奨学金を受けたり、学生ローンを組んだりして、自分で何とかするということが自然だった。今では、若い人たちは大学を卒業して、親元、実家に戻り、そこで生活するようになった。一人暮らしの家賃を払うことや、学生ローンの返済は自力ではとてもできない状況になっている。

 経済格差が進み、勝者はより富裕となり、敗者はより貧しくなり、それが固定化、階級化されて再生産されるようになる。人間社会は階級社会であったので、昔に戻ったということになる。しかし、それでは現代社会は不安定になるばかりだ。現在の社会は階級社会ではないということで設計されているが、それが実際と合わないということになれば、人々の不安と不満は高まるばかりだ。それが政治の世界でのポピュリズムとなり、ドナルド・トランプ大統領の誕生と、民主党進歩主義派の登場につながった。

これまでアメリカのことを書いてきたが、より深刻なのは日本である。以下の記事にあるように、経済格差はアメリカやイギリスよりも大きいということだ。戦後、「一億総中流社会」と呼ばれた日本であるが(これは過大評価ではあるが)、21世紀に入って、小泉政権以降の自民党政権、自公政権の政策の誤りによって、格差が拡大し、少子化が進行し、経済も衰退していった。「経済のことは自民党とその裏にいる財務省に任せておけば安心だ」と無定見、無思想に自民党に投票し続けた、日本国民自身が招いた大惨事である。日本の亡国化の進行を止める、もしくはそのスピードを緩める第一歩は自民党と財務相に責任を取らせることである。

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●「アメリカでは「ALICE」が増えている職に就いているが資産がなく、生活費の支払いに苦労している人々」

Noah Sheidlower,Juliana Kaplan [原文] (翻訳:大場真由子、編集:井上俊彦)

May. 02, 2024, 10:30 AM  国際23,099

BUSINESS INSIDER

https://www.businessinsider.jp/post-285805

ALICEとは「資産に限りがあり、収入に制約がある雇用者」を指す。

・ほとんどのALICEは、政府の援助を受けるには収入がやや多いが、その収入はアメリカで日常生活を送るためには決して十分なものではない。

・彼らの存在は、アメリカが経済的に苦境にある人々を評価する方法にギャップがあることを示している。

フードスタンプ(食料品の配給システム)や障害者手当を受ける資格はない収入を得ていながらも、その収入が家賃や医療費が支払うには十分ではない場合、あなたは「ALICE」だということになる。

ALICEとは、非営利団体ユナイテッド・ウェイ(United Way)のプログラム「ユナイテッドフォーALICEUnited For ALICE)」が生み出した造語で、アメリカ人のうちで「資産が限られ(Asset Limited)、収入に制約がある(Income Constrained)被雇用者(Employed)」を表す言葉だ。4人世帯で31200ドル(約483万円)、個人で15060ドル(約233万円)という連邦貧困レベル(Federal Poverty Level)をわずかに上回る収入を得ながらも、基本的な生活の支払いに苦労しているアメリカ人を指す。

ALICEの多くは一般的に、得ている賃金が生活費をまかなうのに十分ではない労働者だ。つまり、彼らは給料ギリギリの生活をしている。中には、医療機関にかかるために、食費や保育料の支払いを犠牲にせざるを得ない人もいる。

ユナイテッドフォーALICEが、アメリカ国勢調査局(USCB)の全米地域調査(American Community Survey)のデータとユナイテッド・ウェイの推計によると、アメリカの世帯の約29%がALICEであり、13%が連邦貧困レベル以下にあるという。

政府の多くの取り組みは、人々が貧困から抜け出すことを支援しようとしてきた。だが、ユナイテッドフォーALICEでナショナルディレクターを務めるステファニー・フープス (Stephanie Hoopes)がBusiness Insiderに語ったように、連邦貧困レベルは多くの点で時代遅れであり、地域差や、人々の家計に占める食費の割合の変化を考慮していない。またフープスは、経済的には恵まれているが、将来のために投資することができない人々を支援することにあまり注意が払われていないとも話している。

アメリカ全体の貧困率はおおむね低下しており、これは一見、アメリカの労働者にとっては朗報のように思える。政府の支援は最も経済的に困窮するアメリカ人たちに届くかもしれないが、依然経済的に不安定なALICEへの給付金の打ち切りは、彼らを取り残してしまうことになるだろう。

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2010年から2021年の貧困率の変化

ALICEの割合はこの10年の間にアメリカ全土で増加しており、モンタナ州やアイダホ州などのパンデミックに起因したブームが起こった州ではその割合が大きく跳ね上がっている。これは、多くのアメリカ人の収入が増加したものの、インフレや住宅価格の高騰に追いついていない可能性があるからだ。

ALICEの広がりは、一見堅調に見える労働市場の根底にある経済的な問題を示しているのかもしれない。豊かさと支援の狭間に立たされるアメリカ人はますます増えており、国の政策はそのような人たちに応えるものにはなっていない。これは、さまざまな援助に対し受給資格を撤廃し、直接的な刺激策を提供していたパンデミック時の景気刺激策とは対照的だ。

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2010年から2021年のALICEの増減

「フラストレーションやストレス、難しい選択をしなければならない状況が毎日毎日続く中に身を置くことは本当につらいことだ」とフープスは言う。

「子どものために薬を買いに行くのか、それとも今夜の夕食を食べるのか。電気はつけたままにしておくのか、保育園に行くのか」

■貧困状態にあるアメリカ人は減少しているが、ALICEは増加している

例えば、低所得者用食料品購入支援プログラムであるSNAPSupplemental Nutrition Assistance Program)の受給資格を得るためには、連邦貧困レベルの約138%以下の所得、つまり4人家族の総所得が39000ドル(約602万円)以下でなければならない。

障害を持つアメリカ人に給付される補足的所得補償給付(Supplemental Security Income)の場合、受給できなくなるのは通常、年間の個人所得23652ドル(約365万円)からだ。州によっては、個人や家族が連邦貧困レベルの200%から250%の所得があっても受給できる場合もある。

ユナイテッドフォーALICEによると、これらの世帯は一般的なアメリカ人よりもインフレの影響を受けているという。消費者物価指数(CPI)は、アメリカのインフレを測る主な指標のひとつだが、外食、スポーツ用品、コンサートチケットなど、ALICEが頻繁に購入しない商品やサービスが多く含まれている。

ユナイテッドフォーALICEは、低所得世帯の生存予算をより詳細に追跡する「ALICE必需品指数」を開発した。基本的な支出のみのインフレ率を測定すると、ALICE必需品指数はCPIよりも速く上昇している。同時に、ALICEは過去12年間、賃金の上昇に遅れをとっている。

「我々の計算では、毎年同じものを買うだけなのに、遅れを取るようになることが分かった。ALICEは、その期間、これらの物を買うためにさらに丸1年働かなければならなかっただろう」とフープスは言う。

そして、ALICE内でも格差が見られる。

「黒人やヒスパニック系の世帯、障害を持つ人々に影響が大きく、若い世帯や高齢者世帯でもALICEの基準値を下回る可能性が高く、また子どものいる片親の世帯も、両親のいる世帯と比較すると基準値を下回る可能性が高い」

実際、多くのアメリカ人は必ずしも貧困に陥っているわけではないが、ALICEになる可能性は高まっている。フープスによると、ALICEというレッテルは労働者の間で共感を呼んでいるという。

「我々がプレゼンをすると、終わった後にみんながやって来て、『なぜ私が苦労しているのかを説明してくれてありがとう。私は自分が問題だと思っていた』と言われる」とフープスは言う。

「ここでは構造的な説明をするので、非常に現実的な形で人々に知らしめている」

このことは、ALICEの基準値を上回るアメリカ人の割合が、2010年から2021年にかけて、フロリダ州やユタ州を除く、ほぼすべての州で減少したことを意味する。フロリダ州とユタ州は、新型コロナウイルスのパンデミック中に沿岸部の富裕層が移住してきた州だ。

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2010年から2021年のALICE以上のクラスの割合の増減

ALICEが増えていることは、アメリカ人が良い経済指標に対して楽観的になれない理由の一つかもしれない。また、アメリカで苦しんでいるのはいったい誰なのかという型にはまったイメージに風穴を開けることにもなる。

「人々は、それは誰なのか、多くの型にはまったイメージを持っていて、それは怠け者であったり、努力していない人だったりする。人々には生活コストがあり、仕事の賃金がある。だがそれらの仕事のほとんどは、生活コストをカバーできる十分な賃金を支払っていないこと我々のデータは示している」とフープスは語った。

「これは数学的な方程式であり、構造的な問題だ。人々が努力していないわけではない」
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●「5100万世帯が日々の生活に苦慮、十分な収入得られず 米」

CNN

2018.05.19 Sat posted at 18:07 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35119435.html

5100万世帯が十分な収入を得られず、家計のやりくりで苦労しているとの調査結果が発表された

ニューヨーク(CNNMoney) 米国の世帯数の43%が月々の家計のやり繰りに苦労し、住宅費、食費、子どもの世話、健康保険、交通費や携帯電話利用料などの支払いに困らないほど十分な収入を得ていないことが全米規模の最新調査で19日までにわかった。

43%は約5100万世帯に相当する。今回調査の実施組織は「United Way ALICE Project」で、貧困層とされる1619万世帯や、「ALICE」と呼んでいる、勤めてはいるものの資産が限られ、所得額に限界がある家庭の3470万世帯が含まれる。

今回調査の責任者は米国経済は一見、好転の兆しを示しているが、世帯の経済的な困窮は広範な問題であり続けていることが裏付けられたと指摘した。

家計の調整に困っている世帯数を州別に見た場合、カリフォルニア、ニューメキシコ、ハワイ各州がそれぞれ49%と最大だった。最小はノースダコタ州の32%だった。

これら世帯の多数は保育関連分野、在宅介護、事務所補助員や店舗従業員で構成され、低賃金に直面し、貯金もほとんどない。米国内の職種の約66%の報酬は時給20ドル(約2220円)以下としている。

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●「相対的貧困率とは 日本15.4%、米英より格差大きく」

きょうのことば

日本経済新聞 20231119 2:00

▼相対的貧困率 国や地域の中での経済格差を測る代表的な指標のひとつ。所得が集団の中央値の半分にあたる貧困線に届かない人の割合を指す。税金や社会保険料を除いた手取りの収入を世帯の人数で調整した「等価可処分所得」が比較の物差しになる。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、貧困線は直近の2021年に127万円だった。相対的貧困率は15.4%で、30年前より1.9ポイント高い。経済協力開発機構(OECD)によると、米国は21年に15.1%、英国は20年に11.2%だった。日本は米英と比べると国内の経済格差がやや大きい状況といえる。
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日本で子どもの相対的貧困率はピークの12年に16.3%と、おおよそ6人に1人の割合だった。21年は11.5%まで下がった。子どもがいる世帯で大人が一人だけの場合は44.5%と、大人が二人以上いる場合の8.6%を大きく上回る。ひとり親世帯などが経済的に苦しい傾向にあることを示している。

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争は長期化し、イスラエルとハマスの紛争も半年を超えた。どちらも民間人の犠牲者が多く出ている。どちらも停戦が望ましい状況なのに、世界はまだ戦いを続けさせようとしている。アメリカ連邦議会は、ウクライナとイスラエルの支援を含むパッケージ法案を可決成立させ、ジョー・バイデン大統領も署名して、法律として発効することになった。同時期に、日本の岸田文雄首相が訪米し、米連邦議事堂での演説と言う、属国の指導者に対しては、最高の栄誉を与えられた。岸田首相の米連邦議事堂での演説は以下のように報じられた。

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●「米議員らが首相演説を高評価 ウクライナ支援訴え大きな拍手浴びる」

毎日新聞 2024/4/12 10:40(最終更新 4/12 15:35

https://mainichi.jp/articles/20240412/k00/00m/030/070000c

 国賓待遇で訪米中の岸田文雄首相は11日、連邦議会の上下両院合同会議で演説した。英語による約34分間のスピーチで、拍手を浴びたのは48回以上。ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援法案の審議が共和党の一部の反対で難航する中、米国の孤立主義に警鐘を鳴らし、米議員から「重要なメッセージを届けた」と高く評価された。

 「日本はこれからもウクライナと共にある」。米国のウクライナ支援の重要性を訴えた後、首相が日本の姿勢を強調すると、大多数の議員が立ち上がり、この日一番の拍手を送った。

 米議会では、民主党のバイデン政権が求めるウクライナ支援法案の審議が停滞している。上院は既に通過し、下院でも多数の議員が賛意を示している。しかし、法案を採決するかどうかを判断する共和党のジョンソン下院議長は、党内の保守強硬派の反発を懸念し、態度を決めかねている。採決すれば可決は確実とみられるが、ウクライナ支援の継続に懐疑的な保守強硬派が議長解任の動きを見せているからだ。

 首相は11日の演説で、孤立主義的なトランプ前大統領や下院の保守強硬派を念頭に「一部の米国民の心の内で、世界における米国のあるべき役割に自己疑念を持たれていると感じる」と踏み込んだ。それまで拍手が相次いでいた議場では「自己疑念」という言葉が出た後に雰囲気がやや重くなったが、首相は「米国のリーダーシップは必要不可欠だ」「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と鼓舞した。

 取材に応じた議員らは演説を歓迎した。将来の大統領候補に名前が挙がるクロブシャー上院議員(民主党)は「首相がウクライナへの行動を求めると、実質的に(議員)全員が支持した。非常に重要なことだった」と強調。上院軍事委員会の筆頭委員であるウィッカー上院議員(共和党)も「インド太平洋地域にとっても、民主主義国のウクライナを支援するのは重要だとの訴えは非常に正当なものだ。下院がウクライナ支援に向け、前進することを願う」と述べた。

 バロン下院議員(民主党)は「孤立主義に関する訴えは素晴らしいものだった」と評価。キャピト上院議員(共和党)も「米国の努力を評価した上で、米国が独りではないと伝えてくれた。ウクライナに関するメッセージも響いた」と語った。一方、米メディアによると、ウクライナ支援に反対し、議長解任の動きを見せている保守強硬派のグリーン下院議員(共和党)は、首相がウクライナに言及した際には拍手せず、手元の携帯電話を見ていたという。【ワシントン秋山信一】

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 岸田文雄首相の訪米の後に、ウクライナ支援とイスラエル支援のパッケージ法案が可決した。昨年の11月から、ジョー・バイデン大統領がいくら求めても、連邦下院で過半数を握る共和党はウクライナ支援に反対してきた。世論調査を見ても、ウクライナ支援については、アメリカ国民の過半数が反対している、「もう十分にしてやったではないか」と考えているということはこのブログでも紹介したし、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いている。岸田首相の訪米がきっかけになったかのように、急に、共和党と民主党の主流派、エスタブリッシュメント派が合同して、賛成多数で一気に成立してしまった。共和党の議員たちは有権者、世論を裏切ったことになる。下の記事にある通り、選挙区に帰って有権者たちから批判を浴びるだろう。そして、ジョンソン議長はこの法案可決と引き換えにして、議長の地位から追われることも考えられる。しかし、アメリカのエスタブリッシュメント派に対する功績は大であり、これから安泰であろう。しかし、アメリカ政府もお金が厳しい中で、すんなりと成立してしまったのはどうしてだろうか。ここで、私は次の3つの要素を挙げたいと思う。落語には、お客から3つの題をもらって、短時間で(時には数日間で)、落ちのある落語を作るということがある。これは三題噺(さんだいばなし)と呼ばれる。「芝浜」という冬になると高座にかかる、有名な噺があるが、これも元々は三題噺から生まれた。

さて、私が挙げたいのは「ウクライナ支援、岸田訪米、円安ドル高(円を売ってドルを買う)」という三題だ。そして、この噺で出てくる落ち(結論)は、「日本がアメリカのウクライナ支援分を肩代わりする、そのためにドルが必要になってドルを買っている」ということになると思う。そんな荒唐無稽な、と思うかもしれないし、日本政府がドルを買う資金源は何だ、と言われるだろう。日本の予算には、一般会計と特別会計がある。一般会計は私たちがよく耳にするもので、毎年3月末に国会で成立する、20204年度は約112兆円だ。特別会計はその3倍以上の460兆円規模である。こちらはあまり注目されない。特別会計から裏金をねん出する、もしくは外国為替関係で操作をする。そうやって、ウクライナ支援分である600億ドル(約9兆3000億円)を作り出すことになる。岸田首相訪米では、日米防衛協力ということで、自衛隊のアメリカ軍の下請け化、二軍化が話し合われたが、それは表向きのことで、裏では、この600億ドル分のことが「命令」されたと考えるべきだ。「アメリカと共にある、ウクライナと共にある、と言ったんだから、誠意を見せろ」と、チンピラまがいの恫喝で金を出させられたのだろうと思う。これが属国の役割だと言えばその通りだが、日本もいつまでもATMをやれるということはない。金を出すからには、こちらにも何か見返りになることをと言えるようになるべきだが、アメリカの衰退が目に見えるようになっている時期、そろそろその準備を始める頃だと考える。

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連邦下院が対外援助法案を可決、ウクライナとイスラエルに援助を送る(House passes foreign aid bill, sending help to Ukraine and Israel

-この法案は来週連邦上院に提出され、ジョー・バイデン大統領も支持を表明している。

マリアナ・ソトマイヤー、メーガン・ヴァスケス筆

2024年4月20日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/2024/04/20/house-vote-ukraine-israel-aid-johnson-2/

連邦下院は土曜日、世界的な脅威の中で外国の同盟諸国を支援するため、950億ドル(約14兆7000億円)規模の大規模な支援策を可決した。マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、極右勢力が今回の可決によって彼を追放すると脅しているが、世界におけるアメリカの役割に対する幅広い支持を示した。

採決直後、ジョンソン議長がウクライナ支援を前進させた場合、議長の座から追い出すと公約していたマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は行動を起こさなかった。グリーン議員は記者団に対し、同僚議員たちが今週休会中に有権者からの反発に直面し、それから、ワシントンに戻ってから議長追放の取り組みに加わることを検討してほしいと語った。

連邦上院は来週初めに対外援助策を審議し、バイデン大統領が署名する予定になっている。

バイデンは土曜日の採決後の声明で、連邦下院が「歴史の呼びかけに応え、私が何カ月もかけて確保しようと闘ってきた、緊急に必要とされる国家安全保障法案を可決するために団結した」と評価した。

連邦議場では「ウクライナ!」の大合唱と青と黄色の旗が振られ、出席した民主党所属の連邦下院議員たちと少数派の共和党議員たちが、数カ月に及ぶ法制上の行き詰まりを打破し、ロシアとの戦争に巻き込まれたウクライナへの600億ドル(約9兆3000億円)の援助を承認した。採決は311対112となり、反対したのは共和党の保守派ばかりだった。

米国防総省が、ウクライナにとって最大の軍事的支援者であるアメリカからの援助がなければ、ウクライナは着々とロシア軍に更に多くの陣地を譲り、死傷者の数をさらに増やすという、驚異的な状況に直面するだろうと警告しているため、ウクライナへの資金はロシアとの戦争において、ウクライナにとって重要な岐路にある。また、ジョンソン議長にとっては、自身の職が脅かされているにもかかわらず、優先度の高い法案の可決に向けて、連邦下院共和党主流派と民主党の連合をリードし、大きな勝利を得た。

土曜日の民主党議員の会合中、ある議員は、民主党の支持によって政府への資金提供が可能になり、外国の脅威を監視するアメリカのスパイ機関の再認可が可能になったことを踏まえると、民主党が事実上過半数を支配していると誇らしげに叫んだ。

「連邦下院民主党はこの機会に立ち上がり、ジョー・バイデン大統領もこの機会に立ち上がり、マイク・ジョンソン議長率いる伝統的保守派もこの機会に立ち上がりました」と民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務は高らかに宣言した。

ウクライナ支援の可決は、ドナルド・トランプ前大統領への大きな反撃でもある。トランプは長年ウクライナを批判する一方で、ロシアの指導者ウラジミール・プーティンに繰り返し同調し、既に占領した土地をロシアに保持させることで戦争を解決すると側近たちに語ってきた。トランプはウクライナの援助を融資に変えることを推し進め、共和党は土曜日の法案に融資の要件を盛り込むよう促した。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「民主、共和両党、そしてマイク・ジョンソン連邦下院議長個人に対し、歴史を正しい方向に導いてくれた決定に“感謝する”」とXに記した。

ウクライナ問題で問題解決に向けて動いてきたジョンソン議長は、「法案への批判者たち(critics of the legislation)」がいたにもかかわらず、超党派で外国の同盟諸国への資金提供を進める決定を下したことに開き直った。

ジョンソン議長は、「これは完璧な法律ではない。政府が分裂し、様々な意見が存在する時代には、完璧な法案が可決される保証される訳ではない」とジョンソン議長は語った。

ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(ケンタッキー州選出、共和党)は、法案可決を祝し、「連邦議会は、同盟とパートナーシップの強さ、公約の信頼性、そしてアメリカを守り侵略を抑止するための軍隊の能力を高めるために不可欠なこの投資がついに前進した」と述べた。

連邦下院はまた、イスラエルへの260億ドル(約4兆円)の資金拠出を圧倒的多数で可決した。その中には、90億ドル(約1兆3500億円)の人道支援が含まれ、その一部はガザ地区に割り当てられる。イスラエルが先週末、イランが発射したミサイルと無人機への報復としてイランを攻撃した数日後にこの法案は可決した。

共和党所属の連邦下院議員21名がこの法案に反対し、民主党議員37名に加わったが、その多くは、ガザ地区への人道支援が含まれていたにもかかわらず、同地域に支援を提供できる国連機関への資金を剥奪するという理由でこの法案に反対票を投じた。 10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃に国連機関のガザ地区職員1万2000人のうち12人が参加したことがアメリカ情報諜報機関とイスラエルによって判明したことを受け、アメリカは国連救済事業機関(U.N. Relief and Works AgencyUNRWA)への資金提供を停止した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回の援助について、「非常にありがたい」と述べ、「イスラエルに対する超党派の強い支持を示し、西洋文明を守るものだ」とXに投稿した

連邦下院はまた、中国の脅威に直面するインド太平洋地域の同盟諸国への80億ドルの支援を、385対34で圧倒的な差で可決した。反対票を投じたのは共和党の極右議員ばかりだった。

連邦下院はまた、「TikTok」を禁止する可能性、ウクライナに売却するためのロシア資産の差し押さえ、融資という形で提供されるウクライナ支援に条件をつけることなど、超党派の優先事項が多く含まれる法案を可決した。

ジョンソン議長は次のように述べた。「連邦上院の白紙委任(blank check)とは異なり、連邦下院の法案には非常に重要な特徴がいくつもある。ウクライナ支援に対する説明責任が強化される。私たちは議員たちの声を反映した。私たちは彼らにチャンスを与えた。私たちは彼らに、より良いプロセスを提供し、最終的にはより良い政策を実現した」。

連邦下院共和党は、アメリカの資金は南部国境の管理など国内問題に費やしたほうが良いと主張し、ウクライナへの送金にますます慎重になっている。ジョンソン議長はまた、南部国境での移民を取り締まる厳しい法案を提出したが、共和党の強硬派議員3人が連邦下院規則委員会での手続き動議を拒否したため、法案は否決された。

ジョンソン議長は、グリーン議員の行動が自分を議長職から追い落とそうとする動議の検討を早めるきっかけとなる可能性があることを認識し、リスクを冒して支援策可決を進めた。しかし、ジョンソン議長は今週初め、民主政治体制を維持するためにアメリカが介入し、独裁政権と戦う同盟諸国を支援する歴史上重要な時期に直面していると指摘し、リスクや党派争いに関係なく前に進むことを決意した。

ジョンソン議長は、「私は議長解任動議の心配をしながらこの議事堂の中を歩き回っているのではない。私は自分の仕事をしなければならない。私は、連邦議会の意思を尊重し、正しいと信じることをしたまでのことだ」と述べた。

グリーンは今週、ジョンソンを解任する動議を提出し、トーマス・マシー議員(ケンタッキー州選出、共和党)の支持を得た。トーマス・マシー議員とポール・A・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)の支持を得た。マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出、共和党)が辞職し、共和党の多数派が1議席に減少した今、議長を追放するには十分な数だ。ただし、民主党がジョンソン議長の救援に乗り出さない限りは、である。ジョンソン議長はウクライナ支援のために行動したため、民主党はその可能性を真剣に検討している。

グリーン議員は、共和党の同僚たちに有権者の意見を聞き、来月ワシントンに戻ったらジョンソン議長を続投させるかどうかについて議員らに話し合ってもらいたいため、土曜日に動議を提出しないことに決めたと語った。

グリーンは、ウクライナへの資金提供を支援した共和党の同僚について「この国のアメリカ人は全員激怒すべきだと思う。誰がこんな人たちに投票するだろう? どうすればこの人たちに投票できるだろうか? 彼らは私たちの国に奉仕していない」と語った。

マシー議員は、ジョンソン議長が「辞任を自発的に表明すれば、議長不在期間が長期化することは避けられる」と述べた。もしジョンソン議長が辞任しなければ、年内に議長が解任されるだろうと予想した。

マシー議員は次のように述べた。「彼はレームダックになった議長(lame-duck speaker)だ。私たちは連邦議会が機能するようにしようとしている。ジョンソン議長に集められている募金がケビン・マッカーシー前議長時代の募金の半分以下であるのには理由がある。それは、レームダックになった議長などに誰も会いたがらないからだ」。マシー議員は続けて、「私たちのオフィスには、2025年1月3日に再選できる人物が必要だ。そしておそらくここにいる人々はそれを認めたくないかもしれないが、ジョンソンがそこに到達するつもりがないことは私にとって非常に明白だ」と述べた。

土曜日、11月まで連邦下院議長でいられると思うかと質問されたジョンソン議長は、「はい」とだけ答えた。

ジャクリーン・アレマニー、トビ・ラジがこの記事の作成に貢献した。
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連邦下院がウクライナとイスラエルへの数十億ドルの援助を数ヶ月の闘いの末に可決。次は連邦上院だ(The House passes billions in aid for Ukraine and Israel after months of struggle. Next is the Senate

-連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドルの対外援助パッケージを、連邦議会での数ヶ月の混乱の後、承認した。

スティーヴン・グローヴス、リサ・マスカロ筆

2024年4月21日

APニューズ』紙

https://apnews.com/article/ukraine-aid-israel-tiktok-congress-a8910452e623413bf1da1e491d1d94ba

ワシントン発(AP通信)。連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドル(約14兆7000億円)の対外援助を、週末の議会で承認した。週末にこのようなことが行われるのは珍しいことだ。これは、ロシアの侵略を撃退するためのアメリカの新たな支援をめぐって、数ヶ月にわたる強硬な右派の抵抗の後、民主党と共和党が結束したことで達成された。

土曜日、610億ドル(約9兆5000億円)にのぼるウクライナへの支援は圧倒的な賛成多数で、数分で可決された。戦争で引き裂かれた同盟国への新たな支援策をめぐって、アメリカの連邦議員たちが争う中、この支援は力強いものとなった。民主党所属の下院議員の多くが連邦議場で歓声を上げ、ウクライナの青と黄色の旗を振った。

イスラエルや他の同盟諸国への援助も、人気プラットフォーム「TikTok」を取り締まる措置と同様に、大差で承認された。法案全体は連邦上院に送られ、早ければ火曜日にも可決される可能性がある。ジョー・バイデン大統領は直ちに署名すると約束している。

マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、「私たちはここで務めを果たしたし、歴史はそれを高く評価するだろう」、自らの職を賭して法案成立に尽力し、疲れ切った様子で語った。

ホワイトハウスによれば、ジョー・バイデン大統領はジョンソン議長および民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務と個別に会談し、法案を推進することで「わが国の安全保障を最優先してくれたこと(putting our national security first)」に感謝した。

バイデン大統領は、「私は、連邦上院がこのパッケージを速やかに私の机に送り、私が署名して法制化し、ウクライナの緊急の戦場でのニーズに応えるために武器と装備を速やかに送ることができるようにすることを強く求める」と述べた。

ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は、連邦下院の民主、共和両党と「歴史を正しい軌道に乗せた決断に対して個人的にマイク・ジョンソン議長に感謝している」とX(旧ツイッター)で述べた。

ゼレンスキー大統領は「アメリカ、ありがとう」と述べた。

連邦議会でのこの場面は、多数派を握っているものの対外援助、特にウクライナに対する援助をめぐって大きく意見が分かれている共和党によって煽られた数カ月間の機能不全(dysfunction)と膠着状態(stalemate)を経て、印象的な行動を示した。ジョンソン議長は、2022年12月以来となるウクライナへの主要政策となる軍事資金(military funding)と人道資金(humanitarian funding)の承認を確実に得るために民主党に頼った。

その日の朝は、厳粛かつ真剣な議論と異常な目的意識で始まり、共和党と民主党の指導者たちが団結して迅速な承認を求め、アメリカが同盟諸国を支援し、世界舞台でリーダーであり続けることが確実になると述べた。連邦議会の訪問者ギャラリーは見物人で混雑していた。

連邦下院外交委員会委員長のマイケル・マッコール下院議員(テキサス州選出、共和党)は「世界の目が私たちに注がれており、我々が今ここで行うことは歴史が判断を下すだろう」と述べた。

連邦下院の法案通過により、ウクライナの軍事物資が不足し始めた2023年10月に初めて提出された、バイデン大統領のウクライナへの支援資金承認要請に対する最大のハードルが取り除かれた。

共和党が過半数を占める連邦下院は何をすべきかで数カ月にわたり苦悩し、まずウクライナ支援を米国・メキシコ国境の政策変更と結びつけるよう要求したが、まさにその方針に沿った超党派の連邦上院提案の法案を即座に拒否した。

ジョンソン議長にとって終盤戦に到達することは、ジョンソン議長の決意と共和党内での支持の両方を試す、厳しい試練となっている。現在、ジョンソン議長を公然と議長職から解任するよう求める声は少数ながらも増えている。しかし、連邦議会の各党の指導者たちは、この投票を歴史の転換点として位置付けて投票を行った。アメリカの同盟諸国がヨーロッパ大陸から中東、インド太平洋に至る戦争や脅威に悩まされている中での差し迫った犠牲をアメリカは払うことになる。

ニューヨーク州選出の連邦下院議員で、連邦下院外交委員会民主党側筆頭委員であるグレゴリー・ミークスは、「今日の私たちもそうであるが、歴史を生きていると、私たちが連邦下院本会議で行った投票の行動の重要性や、それが将来に及ぼす影響についてその時の段階では理解できないことがある。しかし、これは歴史的な瞬間だ。」と発言した。

反対派、特にジョンソン議長を含む多数派と対立している、共和党極右派は、アメリカは、国内の国境警備や国の債務増加に対処する国内の戦線に注力すべきだと主張し、海外で使用される兵器を製造するために、大部分がアメリカの軍需メーカーに流れ込むことになる、更なる資金の支出に警鐘を鳴らした。

それでも、連邦議会は、ゼレンスキー大統領から日本の岸田文雄首相まで、ここ数カ月の間に世界の指導者たちがワシントンを次々と訪れ、連邦議員たちに援助を承認するよう懇願しているのを目にした。世界的に見れば、この遅れは同盟国に対するアメリカの関与に疑問を投げかけるものだった。

バイデンの外交政策の最優先事項の1つ、ロシアのプーティン大統領のヨーロッパ進出を阻止することが問題になっていた。ジョンソン議長と秘密裏に会談した後、バイデン大統領はすぐにジョンソン議長の案を支持し、最終的な採決に必要な手続き上のハードルを乗り越えるために民主党が法案を支持する道を開いた。

ジェフリーズ院内総務は「民主党員や共和党員としてではなく、アメリカ人として、民主政治体制が危機に瀕しているところならどこでも守る責任がある」と、議場での討論の中で述べた。

ウクライナへの援助が共和党所属の議員たちの過半数を獲得できなかった一方で、数十人の進歩主義的な民主党所属議員たちは、数万の市民を殺害したガザ地区への攻撃の停止を要求し、イスラエルへの援助法案に反対票を投じた。約20人の共和党強硬派は、イスラエルや台湾のような伝統的に共和党の支持を得てきた同盟諸国への援助も含め、援助パッケージのあらゆる部分に反対票を投じた。

共和党所属議員の一部も、採決中に民主党議員たちがウクライナの国旗を振ったことに怒って反対した。フロリダ州選出の共和党所属のカット・カマック連邦下院議員は、X(旧ツイッター)で、民主党議員たちの行動に「激怒」しており、連邦下院議場での外国の国旗の掲示を禁止する法案の作成に取り組んでいると述べた。

同時に、共和党の大統領候補と目されるドナルド・トランプは、「アメリカ・ファースト(America First)」を掲げて共和党をよりアイソレーショニズム的なスタンスに傾けるため、ソーシャルメディア上の発言や連邦議員たちとの直接電話を通じて遠くから意見を述べるなど、この戦いに大きな影を落としている。

ウクライナの防衛はかつて連邦議会で超党派の強固な支持を得ていたが、戦争が3年目に入ると、共和党議員の過半数が更なる援助に反対するようになった。トランプ前大統領の盟友であるマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は、資金をゼロにする修正案を提出したが、否決された。

超保守的な連邦下院共和党の議員連盟であるフリーダム・コーカスは、この法案を「アメリカ最後の」対外戦争対策案(the “America Last” foreign wars package)と嘲笑し、法案には国境警備措置が含まれていないとして、共和党指導部に反抗し、法案に反対するよう議員らに促した。

グリーンを筆頭とする3人の共和党所属の議員たちが、議長解任の投票につながる「解任動議(motion to vacate)」を支持したため、ジョンソン議長の連邦議長職の維持の可能性が小さくなっている。極右派に後押しされるように、グリーン議員の側には、アリゾナ州選出のポール・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)を含む多くの議員に加わっている。ゴーサー下院議員、トーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)など、ジョンソン議長に自発的に退くよう求める議員も増えている。

このパッケージには、民主党が支持した、あるいは少なくとも受け入れることを望んでいる共和党の優先事項がいくつか含まれている。その中には、ウクライナ再建のために、アメリカが凍結されたロシア中央銀行の資産を差し押さえることを可能にする提案や、イラン、ロシア、中国、鎮痛効果のある合成ドラッグであるフェンタニルを取引する犯罪組織に対する制裁、人気動画アプリ「TikTok」の中国に拠点を置くオーナーに対し、1年以内に株式を売却するか、アメリカでの取引を禁止することを求める法案などが含まれている。

それでも、これらの法案を議会で成立させようと全力を挙げているのは、アメリカ国内政治だけでなくウクライナの現実を反映している。国家安全保障に関連する各委員会の理事である議員たちは、機密扱いのブリーフィングを受けることができるが、ロシアが兵力と弾薬の不足に悩むウクライナ軍を打ちのめし、戦況が悪化することを深刻に懸念している。

ニューヨーク州選出のチャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は、火曜日に連邦上院がこのパッケージの手続き投票を開始すると発表し、「世界中の同盟諸国がこの時を待っていた」と述べた。

共和党のミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務は、来週、右派の反対を押し切る準備をしながら、「目の前の課題は緊急だ。歴史を作るために再び連邦上院の出番となる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(つづく)
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