古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:日本製鉄

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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ドナルド・トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を25%から50%に倍増させる政策を正式に発効した。トランプ大統領が高関税を志向するのは、アメリカの国内産業を保護し、法律的な権限を拡大することが理由だ。具体的には、通商拡大法第232条に基づいて適用される関税が、ほとんど監視を受けずに貿易制限を行うための新たな手段となる可能性がある。
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トランプ大統領は、金属輸入税の引き上げが国家安全保障を守るために必要だと述べている。また、外国が米国市場に流入させている低価格の過剰鋼材に対抗し、アメリカの製鉄所を再稼働させる効果を期待している。しかし、下記論稿によると、専門家たちは、トランプ大統領の主張は誤りで、アメリカの鉄鋼輸入は過去1年で減少していることを指摘している。実際、アメリカの製鉄所の稼働率は近年よりも高くなっている。日本製鉄のUSスティール買収の判断もそうしたことが影響しているのだろうと考えられる。

トランプ関税によって、鉄鋼業が復活するのかということだが、これは難しいだろう。既に中国やインドの後塵を拝している状況だ。ドル安に誘導して(ドルの価値を下げて)、人件費の対外競争力を下げる必要があるが、それは、労働者たちの生活を改善することにはつながらない。輸入品が高くなることで、アメリカ国内の物価は高くなる。物価上昇率が給料の上昇率を上回れば、生活は苦しくなる。現在のアメリカの状況はまさにこれだ。トランプ大統領としては、石油や天然ガスのエネルギー増産で物価上昇を抑えることを考えているようだが、そう簡単にはいかない。
 直近では、日本とアメリカの関税をめぐる交渉では赤澤大臣が何度もワシントンと東京の間を往復して交渉を行っているが、妥結には至っていない。アメリカはこれから15カ国に対して関税通知書を送付するとしている。日本が送付対象に入っているかは分からないが、ギリギリのところに来ている。トランプとしては、高関税を受け入れるか、受け入れないならアメリカの国益に資する内容の譲歩を引き出すという強気の交渉態度であろうが、日本としては日本の国益のために交渉を続けている。これが故安倍晋三政権時代だったら、このような粘り腰は発揮されず、アメリカの国益のために、さっさと妥協がなされていただろう。石破政権は参院選でも苦しい状況にあり、選挙後は政局になることが考えられるが、粘り腰で、世界構造の大転換に臨んでもらいたい。そして、私たちは再び、対米隷従の安部は路線に戻ってはならない。それは大いなる退化である。
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ドナルド・トランプ大統領の関税は鉄鋼産業を改善させない(Trump’s Tariffs Won’t Fix the Steel Industry

-鉄鋼とアルミニウムの価格が上昇しても、国内の製鉄所に大きな利益をもたらすことはなく、むしろ製鉄所に打撃を与えるだろう。

キース・ジョンソン筆

2025年6月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/05/trump-trade-tariffs-steel-aluminum/

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、鉄鋼とアルミニウムへの関税(tariff)を25%から50%に倍増する措置を正式に発効させた。しかし専門家たちは、この関税はトランプ大統領のアメリカ産業再建計画を阻害し、海外のパートナーとの進行中の貿易交渉を複雑化し、何十年にもわたって世界の鉄鋼業界を悩ませてきた構造的な問題への対策には全く役立たないと指摘している。

トランプ大統領の視点から見ると、この関税には国内産業を優遇するだけでなく、先週裁判所が無効とした関税権限よりも、より防御力の高い法的権限を用いて実施できるという利点がある。これは、水曜日に鉄鋼とアルミニウムに適用された通商拡大法第232条の権限など、実績のある貿易権限への転換の一環となる可能性が高い。これらの権限は、ホワイトハウスに、ほとんど監視や法的手段を必要とせずに貿易制限を課す広範な裁量を与えている。

トランプ大統領は大統領令の中で、金属およびそれらから作られる全ての製品に対する輸入税の倍増は「こうした輸入品が米国の国家安全保障を損なう恐れがないようにするため(so that such imports will not threaten to impair the national security)」必要だと述べた。さらに、「関税の引き上げは、低価格で余剰となった鉄鋼やアルミニウムを米国市場に流出させ続ける諸外国に、より効果的に対抗し、最終的にアメリカの製鉄所の操業再開を促すだろう(The increased tariffs will more effectively counter foreign countries that continue to offload low-priced, excess steel and aluminum)」と付け加えた。

しかし、トランプ大統領が大幅な関税引き上げの根拠として挙げた2つの論拠はいずれも誤りだ。アメリカの鉄鋼輸入量は、トランプ大統領による最初の関税導入後も含め、過去1年間で減少しており、急増している訳ではない。また、アメリカの製鉄所(steel mills)の稼働率は近年よりも高い。

ケイトー研究所の国際貿易弁護士スコット・リンシカムは「トランプ大統領の主張は的外れだが、232条に基づく貿易措置によって、そうする必要がないことが分かった」と述べた。

トランプ大統領は、歴代大統領の多くと同様に、鉄鋼産業を特別に保護主義的に捉えている。これは、サーヴィスとデータの世界ではますます重要性を失っている、煙突駆動型経済(smokestack-powered economy)への数十年にわたるノスタルジーを反映している面もあるが、トランプ大統領の最初の任期が、鉄鋼産業の弁護士、特に通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表のロバート・ライトハイザーに翻弄されたことも一因となっている。

しかし、最新の大統領令で強調したように、トランプ大統領は就任以来、製鉄所から造船所に至るまで、あらゆる経済安全保障問題(matters of economic security)全てを国家安全保障問題(matters of national security)と捉えてきた。だからこそ、カナダ産木材やメキシコ製自動車シートといった深刻な脅威に対する国家安全保障関連の関税調査も行われている。

リンシカムは次のように語っている。「これは、第232条がいかに無法であるかを如実に示している。彼らは何でも国家安全保障上の脅威だと主張し、どんな理由でも正当化することができ、裁判所がその判断に異議を唱える可能性は極めて低い」。

トランプ大統領の鉄鋼関税の皮肉な点は、存在しない問題に対処する一方で、解決策を切実に求めている問題、すなわち中国などの国々、そして間もなくインドでも発生する鉄鋼生産の過剰な供給能力には対処していないことだ。さらに事態を悪化させているのは、トランプ大統領の新たな関税が、今年初めに導入された軽めの関税と同様に、鉄鋼製品全般に加え、半製品および完成品の輸入も対象としているという事実だ。今回の増税は、ヨーロッパや中国を問わず、既にどの競合相手よりも高い鉄鋼価格を支払っている鉄鋼使用企業の価格を引き上げているだけだ。

金属・鉱物コンサルティング会社CRUグループの主任鉄鋼アナリストであるジョシュ・スポーレスは「関税は国内の鉄鋼価格を引き上げるだけだ」と述べた。

トランプ大統領が輸入品を値上げして以来、アメリカの鉄鋼とアルミニウムの価格は高騰の一途をたどっており、桁(大梁)、パイプ、板、釘、アルミ箔など、あらゆる素材を扱う企業の競争力に悪影響を及ぼしている。経済学者たちは、鉄鋼関税が経済全体にどれだけの純雇用喪失をもたらすかを依然として定量化しようとしている。

トランプ大統領が関税で掲げる表向きの目標は、鉄鋼業界を強化し、自動車、造船、その他の旧来型産業におけるアメリカ製造業の競争力を高めることだが、実際はその逆である。最初の痛みはおそらく石油産業でも感じられるだろう。石油産業もトランプ大統領が好む産業の一つだが、石油産業は既に貿易戦争による原油価格暴落の痛手を被っており、石油掘削は危険な賭けとなっている。

スポーレスは、アメリカの石油・天然ガス産業に必要なパイプ、チューブ、ケーシングの約半分は輸入に頼っていると指摘した。いわゆる「産油国産品(oil country goods)」は、アメリカの鉄鋼輸入量の中で常に最大のカテゴリーの1つだ。関税の有無に関わらず、これらの製品を国内生産するための魔法のスイッチは存在しない。鉄鋼は必需品であり、価格が大幅に上昇しただけだ。あるいは、スポ―レスの言葉を借りれば、「需要が価格とは無関係に発生するという非弾力性に大きく起因していると言える」だろう。

造船や自動車製造についても同様だ。これらはトランプ大統領が優先課題としているもう1つの分野であり、適切に実施すれば大量の鉄鋼を消費する。造船業の問題は、商船であれアメリカ海軍艦船であれ、長期契約が不足していることだ。関税率を気まぐれに引き上げたところで、アメリカの製鉄所が超大型タンカーに使われるような鉄鋼を生産できるとは限らない。

スポーレスは「関税だけで、そのようなプレートを生産するための投資が促進されるとは思えない」と語った。

自動車も同様だ。自動車に使用される鋼材は特殊で、徹底的な品質テストを受けている。数十億ドル規模の投資が関税決定に左右される可能性は低く、関税決定はツイート1つで覆される可能性があり、実際に覆されたこともある。

スポ―レスは、「関税は鋼材価格を上昇させるだけだ。自動車品質の製鉄所を稼働させるには5年ほどかかる」と述べた。

一方、トランプ大統領の最新の貿易攻撃は、数十、数百もの潜在的な貿易相手国との協議の最中に放たれた。これらの国は皆、恐怖に陥り、そのほとんどが調整を進めている。今年、様々な理由で多くの関税を課せられたメキシコとカナダは、両国ともこの関税のエスカレーションの理由を解明しようと努めている。メキシコは報復措置をちらつかせている一方、カナダの新政権は慎重ながらも対応の準備を整えている。

将来の貿易交渉の予備的枠組みに合意したイギリスは、今回の鉄鋼関税が二国間休戦に支障をきたすのではないかと懸念している。特に、イギリスの製鉄所の多くが実際にはインド資本であることから、その懸念は高まっている。ヨーロッパ連合(EU)は最初の鉄鋼関税発動後、報復措置を控えており、交渉の進展に依然として期待を寄せているものの、念のため数十億ドル規模のバッテリー関税対策を再び検討している。

ヨーロッパの交渉担当者、そして鉄鋼業界の専門家全般を悩ませているのは、業界の問題の大部分が中国の過剰生産能力にあるにもかかわらず、トランプ大統領の最新の措置では、それに全く対処されていないことだ。中国は年間10億トン以上の鉄鋼を生産しており、これは世界全体の半分以上に相当する。依然として主要生産国であるアメリカの生産量は約8000万トンである。

近年、アメリカとヨーロッパは、中国の影響力と環境への影響を制限するような鉄鋼生産と貿易に関する妥協点を模索してきた。しかし、ヨーロッパの貿易専門家たちやアメリカの環境保護主義者たちにとって残念なことに、それは壁にさらにレンガを追加することよりも後回しにされている。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー専門記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 日本製鉄がアメリカの老舗製鉄会社であるUSスティールを買収するという話が持ち上がって、日米間で問題になっている。アメリカ側は、ジョー・バイデン政権とドナルド・トランプ前大統領陣営で反対論が主張されている。これは、アメリカの鉄鋼労組である、全米鉄鋼労働組合(USWUnited Steelworkers of America)が買収に反対しているためだ。

 日本製鉄によるUSスティールの買収は過剰に政治問題化しており、簡単な図式で言えば、全米鉄鋼労働組合の組織票が欲しい政治家たちが、労組に媚びを打って、計画に反対しているということになる。国益であるとか、労働者の利益などよりも、政治家たちの利益と圧力団体である労組の利益が優先される状況である。

 日本製鉄はUSスティール買収で、雇用を守り、給料も引き上げると発表している。相当な気遣いをしている。そして、実際に働いている労働者の人たちも、雇用が守られることを重視して、買収に反対はしていない。アメリカでGAFAが凄い、凄いと言って、USスティールよりも雇用ができる企業などではない。日本製鉄がUSスティールを買収しなければ、製鉄所は閉鎖され、労働者は失業する。彼らがGAFAに再就職できることなどありえない。それならば、雇用を守ると明言している日本製鉄がUSスティールを買収することが得策なのである。
 また、米中経済戦争においては、アメリカが単独で中国を迎え撃つことができる段階ではない。既に多くの産業分野で中国に追い抜かれているのが現状だ。製造業に関しては、中国が全世界の30%を占め、日本が15%を占め、アメリカは5%に過ぎない。アメリカは、日本に協力してもらわねば、中国に太刀打ちできない。その日本だって、衰退を続けており、いつまでも力を持っている訳ではない。

 アメリカ人の馬鹿さ加減はこれまでも何度も目撃してきたが、日本製鉄のUSスティール買収計画でもその馬鹿さ加減を遺憾なく発揮している。アメリカがこのまま推定していくのは御勝手にである。日本が逸れに付き合うのはもっと馬鹿げたことだ。買収計画に反対して頓挫して、失業者が多く出て、更に犯罪問題や麻薬問題が増えてもそれは自業自得である。

(貼り付けはじめ)

日本製鉄によるUSスティールの買収を阻止することが間違いである理由(Why Blocking Nippon Steel’s Purchase of U.S. Steel Is a Mistake

-バイデンは健全な政策立案よりも、選挙政治を優先するという超党派のパターンに従っている。

ハワード・W・フレンチ筆

2024年9月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/09/us-japan-nippon-steel-biden-blocking-deal-politics/

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ペンシルヴァニア州ピッツバーグの本社前で、日本の日本製鉄による買収を支持するUSスティールの労働者たち(2024年9月4日)

去年の今頃、講演のためにペンシルヴァニア州を訪れていた。私は時間を見つけて、これまで見た中で最も珍しい公園の1つを訪れた。この施設は、かつて世界最大の製鉄所の1つであったベツレヘム・スティールの広大な旧跡の周囲に建てられている。

1857年に、ペンシルヴァニア州ベツレヘムに設立されたベツレヘム・スティール株式会社は、第二次世界大戦中のアメリカの造船業や、エンパイア・ステート・ビルディング、ゴールデンゲート・ブリッジ、ニューヨークのロックフェラー・センターといった世界的に有名な建造物の建設に大きな役割を果たした鉄鋼を生産していた。

私が公園の階段を登り、小道を歩いた日には訪問者は誰もいなかったが、自由に見学できる精巧で巨大な建造物は今ではゆっくりと錆びて忘却(oblivion)の彼方に向かっており、消滅した文明(vanished civilization)が残した記念碑のような雰囲気を漂わせていた。

鉄鋼産業がニューズになっていたので、私はここ数日、廃墟となったベツレヘム鉄鋼所のことをよく考えていた。先週、各メディアは、ジョー・バイデン政権が、日本企業である日本製鉄による経営不振の老舗企業USスティールの買収(150億ドル近くの入札)を拒否する計画であると報じた。ホワイトハウスは国家安全保障の論理に隠れてこの協定を阻止しようとしているようで、政府機関間の対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States)からの勧告を発動する準備をしている。

しかしながら、これは純粋に選挙政治に根ざした動機を覆い隠しているように私は考える。ペンシルヴァニア州は、刻々と近づいている米大統領選挙において、いわゆる激戦州(swing state)と呼ばれる最大の州であり、保留中の否決は、日本のUSスティール買収に反対する労働組合をなだめるとともに、グローバル化に懐疑的な有権者にアピールするための明らかな狙いのように見える。または経済ナショナリズムの概念も含まれている。

もしそうならば、これはアメリカによる重大な外交政策の誤りとなるが、バイデン政権の敵対者である共和党がそれを非難する可能性は低いと思われる。それは、ドナルド・トランプ前大統領がグローバリゼーションを積極的に批判しており、民主党と同様に労働者階級の経済ナショナリスト層からの票を集めようとしているからだ。こうした理由から、トランプは日本の鉄鋼会社の買収にも反対してきた。

貿易は、アメリカの主要政党が大統領選挙期間中、ナショナリストの路線に沿って姿勢を示す必要性を長年感じてきた問題の1つであり、そうする際には良好な経済や健全な政策を脇に置くことがよくある。アメリカと中国の関係も同様の問題だ。

最近の最も顕著な例の1つとして、バラク・オバマ政権は環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)と呼ばれるものを強力に推進した。これはアメリカと環太平洋経済圏11カ国との間の貿易協定で、加盟国を統合した世界貿易の40%をカヴァーすることになるものだった。アメリカとの経済協力をより徹底し、そして重要なことに、中国との経済的・政治的競争において、アメリカ政府の方策を強化した。当時のバラク・オバマ大統領の国務長官ヒラリー・クリントンはTPPを公に支持した。ヒラリー・クリントンは、「このTPPは、自由、透明、公正な貿易、つまり法の支配と平等な競争条件を備えた環境を開くための貿易協定の黄金律を設定するものだ」と述べた。

しかし、2015年にヒラリー・クリントンが大統領候補となり、最終的にトランプとの接戦に突入すると、TPPに対して冷淡になった。もう1つの激戦州であるミシガン州で選挙運動を行ったヒラリーは、「私はTPPを含め、雇用をなくしたり、賃金を押し下げたりするあらゆる貿易協定を阻止する」と宣言した。ヒラリーは「私は今も反対しているし、選挙後も反対するし、大統領になっても反対する」と述べた。

TPP放棄が、アメリカの労働者の雇用や賃金上昇に有利になったという証拠はほとんどない。ワシントンの想定上のパートナーは、祭壇の前で立ち往生し、自らの後継協定である環太平洋パートナーシップのための包括的かつ先進的な協定を形成することに踏み切った。実際、中国はワシントンの方向転換で最大の受益者だったのかもしれない。2020年には、インド太平洋14カ国と地域包括的経済連携協定(Regional Comprehensive Economic Partnership)を締結した。

ここで、日本のUSスティール買収を支持する根拠の1つに話を戻したい。中国は世界の鉄鋼生産をリードしており、新日鉄のオーナーは、存続するアメリカのメーカーの買収計画は、戦略的材料であり続ける鉄鋼の中国支配がますます拡大することに対する防波堤(a bulwark against ever greater Chinese domination of steel, which remains a strategic material)になると主張している。

中国との競争を直接の前提としない買収を承認する説得力のある理由は他にもある。合理的な政策選択の世界では、あるいは有権者の選好の世界では、これらの理由が優先されるべきであった。USスティールがこれまで生き残ることができたのは、トランプ大統領時代とジョー・バイデン大統領時代に実施された保護主義的措置によるところが大きい。USスティール首脳部が警告しているように、新たな投資と技術の大規模な流入がない限り、将来にわたって競争力を維持することには疑問符がつく。これらがなければ、USスティールは、やがて本社があるペンシルヴァニア州ピッツバーグから完全に撤退することになるだろう。

最後に、このように健全な政策決定よりも選挙政治が優先され、それが近視眼的な姿勢を生み出していることは、もう1つの重要な点でも共鳴している。バイデン政権の外交政策の特徴のひとつは、カマラ・ハリス副大統領の選挙テーマにもなっているように、特にアジアにおける同盟関係の強化(strengthening U.S. alliances, particularly in Asia)である。バイデン政権の下で、ワシントンは日本をより緊密に抱き寄せ、日米両国間の軍事協力を大幅に強化し、日本ともう1つの同盟国である韓国をなだめすかして和解させ、アジアとヨーロッパの両国に中国との先端技術の共有を制限するよう説得した。

このような状況下で、鉄鋼のような伝統的な産業は戦略的なものであり、日本が所有することは許されないと宣言することは、同盟国間の経済的な共同戦線(a common economic front among allies)を促進するという概念を愚弄するものである。バイデンとハリスは、トランプのスローガンである 「アメリカ・ファースト(America First)」を叫んでいる訳ではないが、「政治ファースト(politics first)」を宣言するような振る舞いをすることで、多かれ少なかれ同じことを言っているのである。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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