古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:東南アジア

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。「西側諸国対西側以外の国々」という構造で国際政治を分析しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 インドネシアの新大統領に選出されたプラヴウォ・スビアント国防相が選挙後の初めての外遊として、中国と日本を訪問した。中国だけ、日本だけではなく、両国を訪問したという点はインドネシアの置かれている立場をよく表している。インドネシアは東南アジアの地域大国として、アジア全体の地域大国である中国と日本の橋渡しができる国である。思い返せば、北朝鮮の拉致被害者曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と娘たちと再会を果たしたのはインドネシアの首都ジャカルタでのことだった。

 プラヴウォ国防相(新大統領)は、インドネシア共和国の建国の父スカルノを失脚させ、第2代大統領となり、独裁者として権勢を振るったスハルトの娘婿だ(1983年に結婚・現在別居中という話がある)。陸軍の中で栄進を重ね、陸軍中将となった時に、民主化でスハルトが失脚し、軍を追われることになった。軍籍をはく奪された後は海外で亡命生活をしながら、ビジネスを展開し成功、資産は約1億5000万ドル(約225億円)と見られている。スハルトの娘婿、東ティモール派遣軍の司令官時代に、独立運動の活動家の殺害や弾圧、人権侵害に関わった疑いというマイナス面がありながら、政界に進出し、大統領選挙に何度も出馬している。

 2019年の大統領選挙では、二期目を目指すジョコ・ウィドド大統領の対抗馬として出馬し、選挙後には選挙に不正があったと主張し、プラヴウォ支持者が暴動をおこし、死者が出る騒ぎとなった。それほど対立した関係であったが、ジョコ大統領は、プラヴウォを自分の政権の国防相に迎え入れた。そして、今回の大統領選挙では、ジョコ大統領の長男ギブランが、プラヴウォの副大統領となり、実質的に、ジョコ大統領が「後継者」としてプラヴウォを指名し、「お目付け役」として長男をつけるということになった。選挙結果は、プラヴウォの勝利だった。1回目の投票で過半数を取れないので、2回目の決選投票になると思われていたが、1回目の投票で、プラヴウォは58%の得票率で勝利を決めた。

 ジョコ大統領はこれから院政を敷くことになる。プラヴウォは、ジョコ大統領の路線を継承することを公約に掲げている。そして、アメリカをはじめとする西側諸国と、中国をはじめとする西側以外の国々との間でうまくバランスを取りながら、国内経済成長路線を維持する。もし、何か反する動きがあれば、プラヴウォのマイナス面である、過去を掘り返して、大統領の座から追われるということになるだろう。副大統領となるジョコ大統領の長男ギブランが、大統領になるかどうかは不明だが、それもこれから5年での成果にかかっている。インドネシア政治はこれから注目される。

(貼り付けはじめ)
インドネシア次期大統領 中国 習主席と会談 関係強化を確認

202442 633分 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409911000.html
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インドネシアの次期大統領のプラボウォ国防相は、当選後、初めての外国訪問先として中国を訪れて習近平国家主席と会談し、双方とも両国関係のさらなる強化を確認しました。

ことし2月に行われたインドネシアの大統領選挙で当選したプラボウォ国防相は、当選後初めての外国訪問として習近平国家主席の招きを受けた中国を訪れていて、1日、北京で習主席と会談しました。

インドネシア国防省によりますと、会談でプラボウォ氏は「防衛分野の協力において、中国は地域の平和と安定を確保するのに鍵となるパートナーの1つだ」と述べ、中国との関係を重視していく姿勢を強調したということです。

中国外務省によりますと、これに対し習主席はプラボウォ氏の当選を祝福し「中国とインドネシアはともに新興国の代表であり、主権や安全保障、発展の利益を守る上で互いをしっかり支持すべきだ」と述べ、両国関係の強化を確認しました。

また、南シナ海をめぐってASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国との領有権争いを念頭に「海洋協力を引き続き深めることを望んでいる」と述べ、インドネシアに理解を求めました。

中国としては、ASEANの大国であるインドネシアとの連携を重視する姿勢を改めて示し、地域での影響力を強めるねらいがあるとみられます。

プラボウォ氏は2日、日本も訪れる予定で、岸田総理大臣との会談が調整されています。
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【インドネシア】プラボウォ氏と岸田首相会談、協力強化確認

4/4() 11:31配信  NNAKyodo News Group

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e93ecdf6cc95647af589409f4383d76e4abd06d

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 インドネシア次期大統領のプラボウォ・スビアント国防相は3日、訪問中の日本で岸田文雄首相と会談した。2国間関係や地域情勢について意見交換し、協力関係を強化していくことを確認した。プラボウォ氏の大統領選当選後の外遊先としては、日本が中国に続いて2カ国目となった。

 プラボウォ氏と岸田氏の会談は、午前9時15分から約35分間実施された。岸田氏は、プラボウォ氏に当選の祝意を改めて示し「早々の訪日は日本重視の姿勢と受け止め、大変心強い」と述べた。また「基本的な価値や原則を共有する『包括的・戦略的パートナー』として、2国間関係や地域・国際情勢に係る協力をさらに進めていきたい」とした。

 岸田氏は、2国間関係において、インフラやエネルギー分野で協力するほか、インドネシアが目指している経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けて支援することも伝えた。

 プラボウォ氏は「インドネシアと日本は旧友であり、重要なパートナーだ。これまでの良好な関係をさまざまな分野でさらに強化したい」と述べた。安全保障協力をはじめ、農水産業や防災などの分野で、2国間関係を深めることに期待を示した。

 地域情勢を巡っては、東シナ海や南シナ海情勢、北朝鮮への対応、ミャンマー情勢などでも意見交換し、連携を継続していくことを確認した。

 プラボウォ氏は、2月に実施された大統領選の正式結果が3月20日に発表され初当選した。当選後初の外遊で同月31日~4月2日に中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。

 プラボウォ氏は、憲法上3選が認められておらず2期・10年で退任するジョコ・ウィドド大統領の後任として、1020日に就任する。

 ■木原防衛相とも会談

 プラボウォ氏は3日、木原稔防衛相とも会談した。両者は、防衛省で午前1028分から約50分間会談し、2国間・多国間の防衛協力や交流を強化していくことで一致した。木原氏は、南シナ海での力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に強く反対すると表明した。中国の海洋進出を念頭に置いた発言とみられる。

 また木原氏は、海洋国家の両国間において「法の支配に基づく『自由で開かれたインド太平洋』を維持・強化していきたい」と述べた。 

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プラヴウォはインドネシアをどのように主導するか?(How Will Prabowo Lead Indonesia?

-今回の大統領選挙の勝者プラヴウォは選挙運動の中で過去を葬ろうとした。指導者として成功するために、彼は歴史が繰り返されないことを期待している。

サリル・トリパティ筆

2024年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/28/indonesia-elections-prabowo-leader-human-rights-jokowi/

大統領選挙において2度の失敗を経験した末、今年の2月14日、インドネシアのプラヴウォ・スビアント国防相が大統領選挙で念願の勝利を収めた。プラヴウォは自分の勝利が自分の政治の結果だと考えたいように見えるが、彼の成功はジョコウィとして知られるインドネシアのジョコ・ウィドド現大統領の人気に負うところが大きい。プラヴウォは2014年と2019年にジョコウィの対抗馬として出馬し、いずれも敗れた。しかし、ジョコウィは2019年にプラヴウォを国防相に任命することで、専門家と支持者の多くを驚かせた。ジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカは、プラヴウォの副大統領候補として出馬した。

インドネシアにおける選挙の最終結果は数週間以内に発表されるが、初期の集計によると、プラヴウォが得票率58%でリードしており、対抗馬のガンジャル・プラノウォとアニエス・バスウェダン(いずれも元州知事)を大幅に上回っている。他の候補者は2月14日の選挙に関して不正があったと主張し、投票結果に異議を唱えるつもりだと述べている。広範な操作の証拠があれば、憲法裁判所は結果を取り消す可能性がある。新大統領は10月まで就任しない。

任期制限により、ジョコウィ大統領は3度目の出馬を妨げられた。今回の選挙は、ジョコウィなら簡単に勝てたであろう。ギブランが副大統領として勝利すると予想されているため、多くのインドネシア人は次期政権がジョコウィの事実上の3期目、あるいは少なくとも継続性を示すものと見なしている。しかし、ジョコウィは大統領職を辞し、未知の領域に入りつつある。プラヴウォを支援することで、自身が今でも関係を持っている、インドネシア闘争民主党(Indonesian Democratic Party of Struggle PDI-P)との架け橋をジョコウィが燃やしてしまうことになった。闘争民主党候補者のガンジャールが3位に終わって、裏切られたと感じるのには十分な理由がある。ガンジャールは、自分の得票数がこれほど少ないとは信じていないと述べている。

プラヴウォはジョコウィの支援なしでは勝利できなかったが、統治するにあたり、ジョコウィに依存する必要はもはや存在しない。退任する大統領のテクノクラート出身の閣僚のうち、プラヴウォの下で引き続き職務を続ける者はほとんどいないと見られているが、プラヴウォはそれを気にしないかもしれない。彼の経済政策はポピュリズム的であり、特にインドネシアの財政赤字を増大させる学校給食プログラムなど補助金の増額提案などがある。対照的に、ジョコウィ政権の財務大臣、尊敬を集める経済学者スリ・ムリャニ・インドラワティは改革派として知られ、かつては世界銀行の専務理事を務めたこともある。彼女がプラヴウォの下で職務を継続する可能性は低い。

タイミングは選挙において、プラヴウォに対してもう1つの利点をもたらした。プラヴウォは、人々の記憶が薄れつつあることを利用して、権力を固めようとしている。選挙期間中、彼はソーシャルメディアを使って若い有権者に自分をアピールし、過去を覆い隠すような、かわいらしいおじいさんとしてのイメージを打ち出した。元陸軍中将の人権に関する記録はあまりに酷いもので、何年もの間、アメリカへの入国が事実上禁止されていた。興味深いことに、プラヴウォは3人の候補者の中で唯一、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った「インドネシアの次期大統領として人権を守るために何をするか」という質問に答えなかった。インドネシアの有権者の半数以上は1980年代以降に生まれており、プラヴウォが東ティモール(現東ティモール民主共和国)で特殊部隊の司令官を務めていたことなど、おぼろげな記憶しかないことになる。人権団体は、プラヴウォが東ティモールでの人権侵害に関係していると主張しているが、プラヴウォはこれを否定している。

もしプラヴウォが東ティモールでの勤務していた時代以降、ある種の免罪符を持っているように見えたとしたら、それは彼が長年、インドネシアを32年間統治したスハルト元大統領の次女、シティ・ヘディアティ・ハリジャディ(別名ティティーク)と結婚していたからだ。スハルトの息子たちはビジネスに専念し、婿のプラヴウォは軍隊で華々しいキャリアを積んだ。プラヴウォとティティークの結婚はかなり前に終わったが、ティティークは彼の立候補を支持し、今年最後の選挙集会にも彼の側に姿を見せた。2023年12月、プラヴウォは元妻ティティークを自身が率いる政党グリンドラ党の顧問に任命した。

スハルトの長期にわたる統治の間、インドネシアは多くの社会経済指標を改善し、食糧生産を増加させ、識字力を向上させ、外国からの投資を誘致した。しかし、この時代には寡頭制文化の台頭も見られた。スハルトの子供たちは事業で繁栄し、指導者と協力する縁故資本家たち(crony capitalists)が経済を支配した。1980年代に経済を安定させようとした努力にもかかわらず、汚職(corruption)は1990年代半ばまでに大幅に増加した。1997年7月にタイの通貨バーツが急落し、他のアジア通貨もその影響に巻き込まれた。

当時、インドネシアは公的債務を比較的うまく管理していたが、民間部門は、過大評価されているインドネシア・ルピアが安定的に続くとの前提で無謀な借り入れを行い、短期債務を積み上げていた。何かが与えられなければならず、市場はルピアに賭けて、ルピアを暴落させた。インフレと物資不足は避けられず、金融危機は本格的な経済危機(economic crisis)に変わり、その後、政治危機(political crisis)に発展した。スハルトは国際通貨基金(International Monetary Fund)に緊急支援を求め、その後はより実質的なパッケージを求めた。

世情不安(public unrest)が高まり、首都ジャカルタ全土でデモ行進が行われた。1998年5月、治安部隊はトリサクティ大学の学生活動家たちを取り締まり、少なくとも4人の学生が殺された。他にも多くの学生が拉致され、何人かは帰ってこなかった。その後の数日間、大きな変化が迫っていた。戦車が首都を走り回り、煙が充満し、デモ隊は企業を破壊し、スハルトに近い大物たちの邸宅を襲撃した。1998年5月21日、スハルトは辞任した。この出来事はプラヴウォのキャリアを後退させ、今も彼を苦しめている。

プラヴウォは予備役に編入された。プラヴウォは当初、学生拉致の責任を否定していたが、2014年の大統領選挙においては、命令を実行しただけだ、と自らの役割を認めた。

南東アジアはノスタルジックな局面を迎えているようだ。古い秩序への憧れが地域全体の選挙で繰り広げられている。フィリピンを統治するフェルディナンド・"ボンボン・マルコス・ジュニア(Ferdinand “Bongbong” Marcos Jr.)大統領は、彼の父親が1965年から1986年まで大統領を務め、民衆蜂起の後に倒され、1989年にハワイに亡命した。一方、マレーシアでは、1990年代に副首相を務めたアンワル・イブラヒムが首相を務めている。アンワルは1981年から2003年まで、そして2018年から2020年まで再びマレーシアを統治したマハティール・モハマド首相(当時)と対立し、アンワルは1998年に淫行と汚職の罪で投獄された。アンワルは最終的に2022年に首相となった。

多くの国民がスハルト時代の暗黒面を忘れていることを願いつつも、プラヴウォがインドネシアで政権を取ったことは、この傾向を裏付けているようだ。残る疑問は、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかということだ。ジョコウィの息子であるギブランは、スラカルタ市長を務めただけで、政治経験は浅いが、いつかは大統領になりたいと考えているようだ。もしプラヴウォがギブランを脅威と見なせば、2人の同盟関係に綻びが生じるかもしれない。72歳のプラヴウォは、スハルトが辞任したときより5歳若いだけで、選挙チームは選挙運動中に脳卒中の治療を受けたという噂を否定しなければならなかった。

インドネシアの専門家たちは、ワヤン・クリット[wayang kulit](影絵人形劇[shadow puppetry])と呼ばれる民俗劇を、この国の表向きには不可解な政治のメタファーとして用いることが多い。人々はスクリーンの向こう側で何が起きているのかを垣間見ることしかできないし、目に見えるものが正確に出来事を表しているとは限らない。スハルトはそのような曖昧さの達人(the master of such ambiguities)だった。しかし、プラヴウォはもっと率直で険悪で、短気なことで知られている。彼がインドネシアを統治する際に、ジェモイ(gemoy、かわいい)イメージを維持できるかどうかは未知数だ。

プラヴウォの闘争的な性格は、西側の諸大国に説教することを厭わないということであり、有権者にアピールできるかもしれない。過去には、インドネシアにとって他国からの民主政治体制に関する教訓は必要ないと発言し、ジャカルタのパーム油輸出への依存をめぐるヨーロッパ諸国からの批判には、植民地時代の歴史を引き合いに出して歯向かった。大統領選挙期間中、ヨーロッパ連合(EU)の森林破壊に対する政策を批判し、プラヴウォは次のように述べた。「茶、コーヒー、ゴム、チョコレートを植えさせたのはヨーロッパ人だ。そして今、私たちが森林を破壊していると言うのか? 私たちの森林を破壊したのはあなたたちだ」。この態度は、礼儀正しいポピュリスト(polite populist)というジョコウィの評判とは対照的である。

更に、狭い目的によって同盟関係が変化する多極化した世界では、プラヴウォはスハルトの型にはまり、独立した路線を作り上げるかもしれない。インドネシアと中国は南シナ海の係争中の島々の所有権を主張している国の1つだが、プラヴウォは中国への投資にヨーロッパの投資家たちよりも制約が少ないため、中国に言い寄っている。 2023年6月にシンガポールで開催されたシャングリラ対話(Shangri-La Dialogue)で、プラヴウォはモスクワで作成された可能性が高い、ロシアのウクライナ戦争に対する和平案を提案し、多くの地域アナリストやインドネシアのメディアを驚かせた。

プラヴウォは、インドネシアの広大な群島全域で学校給食費の補助を拡大する計画など、国内の支持を補強するために危険なポピュリスト的施策に頼ることになりそうだ。彼のチームは、初年度に76億8000万ドルもの費用がかかる可能性があると述べている。それは称賛に値するが、給食費補助計画はインドネシアの予算を圧迫し、財政赤字を拡大させる可能性がある。そうなればインフレにつながり、プラヴウォの側にはジョコウィ政権のテクノクラート的な有能な大臣たちはいなくなるだろう。プラヴウォは、ジョコウィのようなテクノクラート的な大臣たちを味方につけることはできない。彼の過去の気質がどうであれ、それはインドネシアに危険をもたらすかもしれない。

結局のところ、過去はインドネシアに必要なことの序章であってはならない。世界で4番目に人口の多い国として、その安定は重要であり、民主政治体制への移行(transition to democracy)を確固たるものにしなければならない。成功するためには、プラヴウォはインドネシアの若い人々の願望に応えることができる21世紀のリーダーになる必要がある。そして、技術力だけでなく、実質を提供する必要がある。

※サリル・トリパティ:ニューヨークを拠点とするライター。1990年代から東南アジアから報道を続け、その中にはジャカルタからスハルト政権崩壊も含まれている。著書に『悔い改めない大佐:バングラデシュ戦争とその不穏な遺産(The Colonel Who Would Not Repent: The Bangladesh War and its Unquiet Legacy)』があり、現在はグジャラートについての本を執筆中。

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インドネシア大統領選挙の勝者には暗い過去とかわいいイメージがある(Indonesia’s Election Winner Has a Dark Past and a Cute Image

-プラヴウォ・スビアントの記録は民主政治体制にとって良い兆候ではない

ジョセフ・ラックマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/prabowo-indonesia-election-democracy-jokowi/

ジャカルタ発。「神のご加護で、1ラウンド、1ラウンド、1ラウンドだ。プラヴウォ、プラヴウォ」。歓喜に沸く群衆が、ジャカルタのスタジアムで次期大統領に決まったプラヴウォ・スビアントが勝利演説をするために到着したときにこのように大合唱した。約2億人のインドネシア国民が投票権を持ち、その52%が40歳以下という圧倒的な差で、旧独裁政権と深いつながりを持つ72歳の元陸軍中将を選んだ。

彼は変わったと言う人たちもいる。また、ジョコ・ウィドド現大統領(通称ジョコウィ)の選挙運動への暗黙の支援によって、既に緊張状態にあるインドネシアの民主政治体制にとって、ジョコウィの登場は悪い知らせになると懸念する声もある。ジョコ・ウィドド現大統領は、かつてのライバルの選挙運動を黙認していた訳ではない。インドネシアのヒューマン・ライツ・ウォッチのヴェテランのメンバーであるアンドレアス・ハルソノは、「ジョコウィは、インドネシアをかつての独裁者スハルトの、新秩序の闇に逆戻りさせる扉を開いてしまった」と語った。

最も明らかな心配の種は、プラボヴウォの伴走者であるギブラン・ラカブミン・ラカがジョコウィの息子であるという事実だ。父親が政治家としてのキャリアをスタートさせた、スラカルタ市長として2年強の政治経験を持つ、この36歳が立候補資格を得たのは、40歳以上という従来の制限を例外とする憲法裁判所の判決が最終的に下ったからだ。

国家は選挙運動の他の部分でも同様の判断を下している。党指導者たちに対する汚職捜査が浮上したが、ジョコウィがプラヴウォを支援することになった後は消えた。野党陣営は警察が嫌がらせをし、人々にプラヴウォを支持するよう圧力をかけていると訴えた。そして、インドネシア人への社会援​​助への支出が急増しただけでなく、場合によってはプラヴウォの選挙運動に関係する人々によって配られたとさえ伝えられている。前述のハルソノは「多くの法学教授や他の学者は、これはスハルト後のインドネシアでこれまで行われた中で最も汚い選挙であると述べた」と述べた。

大統領選挙に敗れた2人の候補は現在、開票における大規模な不正を主張している。結果を覆すのに必要な規模の、信頼に足る証拠はまだない。インドネシアの世論調査の専門家であるセス・ソダーボーグは、「あちこちに不正や問題があるのは確かだと思う。しかし、何千万票もの偽の投票があれば、その痕跡が残るだろう」と語った。

それでも、選挙運動中の選挙妨害は、多くの人々にとって、特にプラヴウォ自身の過去と組み合わせれば、懸念が存在することになる。特にプラヴウォ自身の過去と合わせればなおさらだ。彼が最初に注目されるようになったのは、東ティモールでの流血の対反乱作戦中にインドネシアの特殊部隊を指揮していた時だ。プラヴウォは将官として、抵抗運動の指導者ニコラウ・ロバトの殺害に関与した。プラヴウォは東ティモールと西パプアの虐殺の責任者として告発されているが、彼は疑惑について常に激しく否定している。

スハルトの娘との結婚により、プラヴウォは政治的に有名になり、一部の人は彼を潜在的なスハルトの後継者と見なしている。1998年に民主化運動がスハルト政権を崩壊させたとき、プラヴウォは23人の民主活動家誘拐に関与し(うち13人は行方不明で死亡と推定されている)、自ら権力を掌握しようとしたという疑惑がある。

新しい政権によって一時的に失脚させられたプラヴウォは、すぐにインドネシア政界に復帰した。2004年に大統領候補に指名され、2009年には副大統領候補として出馬し、2014年と2019年には大統領選に出馬した。

いずれの時もプロヴウォはジョコウィに敗れた。2019年に敗れたジョコウィは当初、大規模な不正を主張して結果を否定し、8人の死者を出す暴動を引き起こした。ジョコウィはプラヴウォを国防相として政権に参加させることで事態を打開し、多くの人々を驚かせた。

これにより、プラヴウォはジョコウィの後継者となり、多くの若い有権者にとってはかわいらしい老人へと変貌を遂げることになった。それ以前の10年間、プラヴウォの選挙運動は熱狂的な「強者のナショナリズム(strongman nationalism)」によって特徴づけられ、彼はスタジアムの馬の後ろに乗って、熱狂する群衆に対して、外国の破壊的勢力や共産主義について警告を発していた。彼は明らかに日和見主義(opportunism)であるにもかかわらず、過激派イスラム主義グループと同盟を結び、脅威を増大させた。プラヴウォの母親はキリスト教徒であり、彼の兄もキリスト教徒である。

今回、プラボウォは、かつて彼の陣営が、秘密共産主義者・中国系無神論者・キリスト教徒と中傷したジョコウィへの忠誠を仰々しく、繰り返し宣言し、その政策を継続することを計画した。選挙戦では、ナショナリズムの隆興が、外国人たちがインドネシアを没落させ、富を盗むことへの警告として感じられた。しかし、選挙戦で最も目立ったのは、「ジェモイ(gemoy、かわいい)」というイメージの宣伝だった。ソーシャルメディアは、父親のように不器用に踊ったり、猫を抱っこしたりする動画や、彼の顔をピクサーのアニメのように描いたもので埋め尽くされた。

特に若い有権者たちは、プラヴウォのイメージが気に入り、おそらく彼の過去を知らずに、彼に群がった。プラヴウォの勝利演説を待つ群衆の中で、大学の工学部で学ぶ学生のファウザン・ディスマスは、プラヴウォは「タフ(tough)」だから好きだと明言した。しかし、過去の人権侵害疑惑やスハルトとのつながりについて尋ねられると、ディスマスは「そのことについてはよく知らない」と言葉を濁した。彼は「私はまだ生まれていなかった」とも述べた。

それでは、次はどうなるのか?

国際的には、インドネシアの姿勢や立場が大きく変わることはないだろう。アメリカも中国もインドネシアに言い寄ってきているが、インドネシアは長い間、国際問題における中立(neutrality)と非同盟(nonalignment)の原則を堅持してきた。プラヴウォは、インドネシアの立場を冷戦時代のスイスやフィンランドに例えて、この姿勢への関与を強調している。

それでも、プラヴウォの大げさな性格と鋭敏なナショナリズムは、時折驚きをもたらすかもしれない。インドネシアは南シナ海における中国の領有権に異議を唱え続けており、その領有権はインドネシアが「北ナトゥナ海(North Natuna)」と呼ぶ海域と重なっている。昨年8月、プラヴウォはロイド・オースティン米国防長官との共同声明を発表し、一時的に対中強硬路線を取るように見えた。しかし、その2カ月前、シンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログで、彼はウクライナ和平案を提案した。

国内的には、民主政治体制の衰退(democratic decline)を心配する以上に、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかが重要な問題かもしれない。大統領選挙期間中、詳細な政策論議は欠けていたが、プラヴウォはインフラ整備、インドネシアの天然資源の「川下化(downstreaming)」、ボルネオ島への新首都建設などでジョコウィに追随することを声高に約束した。しかし、プラヴウォは気性が激しいことで知られ、何十年もの間、指導者への野心を抱いてきた。果たして彼は前任者の影に隠れていることに満足するのだろうか?

もしプラヴウォがこれに反旗を翻す場合、ジョコウィの影響力は限られたものになるかもしれない。ジョコウィの息子は副大統領かもしれないが、その役割にはアメリカと同様、大統領が譲り渡したいと思う以上の正式な権限はほとんどない。

ジョコウィはまた、自分自身の政治的手段も持っていない。彼はまだ形式的にはインドネシア闘争民主党(PDI-P)のメンバーだが、闘争民主党が推薦した候補者ガンジャル・プラノウォ元中部ジャワ州知事よりもプラヴウォを非公式に支援したことで、その闘争民主党との関係を繋ぐ橋は完全に焼け落ちてしまった。一方、彼のもう一人の息子であるケーサン・パンガレップが9月に引き継いだインドネシア連帯党という小政党は、国民評議会に議席を得るのに十分な票を得ることができなかった。

プラヴウォも72歳で、健康状態が良くないと噂されている。世界第3位の民主政体国家が、事業経営にはある程度成功したが、かつて父親が市長をしていた市の市長を2年間務めた経験しかない若者の手に委ねられることになるかもしれない。インドネシアのヴェテランのテクノクラートの中には、どちらがより心配なのか分からないというひとたちもいる。 プラヴウォ大統領か、ギブラン大統領か、どちらの方が酷いことになるのか?

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアからの報道を行うフリージャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。


 2023年4月9日に副島隆彦の学問道場主催の定例会を開催し、インターネット動画配信も開始しました。その関係で3月、4月にこのブログを更新することができませんでした。お詫びいたします。少しずつブログを再開してまいりたいと存じます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

 4月27日に根尾知史著『大恐慌と戦争に備えて 個人資産の半分を外国に逃がす準備を!』(秀和システム)が発売になります。根尾氏にとって2冊目の単著です。

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大恐慌と戦争に備えて 個人資産の半分を外国に逃がす準備を!

  以下に副島隆彦先生による推薦文、はじめに、目次、あとがきを貼り付ける。是非参考にしていただいて、手に取ってお読みください。

 

(貼り付けはじめ)

推薦文 副島隆彦 

 いよいよ世界が、アメリカ発の大恐慌に突入しそうである。

3月10日に起きたカリフォルニア州のシリコン・ヴァレー・バンク(SVB)の破

綻(コラプス)で、世界が騒(ざわ)ついた。ヨーロッパに波及して、クレディ・スイス銀行が破綻しそうになった。これらの銀行の連鎖倒産の危機は一旦は、終息した。各国政府が公的資金(税金)を投入して救済したからだ。だが、この事態の鎮静は、数ヶ月しか保(も)たない。

ニューヨーク発の金融市場の崩壊が迫っている。このことは、金融、経済の動きに関心の

ある人ならば、十分に察知していることである。 

ウクライナ戦争も丸一年を越した。まだまだ戦闘は続く。たくさんの兵士、軍人が死ぬ。

だが、その一方で一時的な停戦(シース・ファイア)の交渉の途(みち)が開かれた。中国が仲裁(ミーディエイション)することになる。

この度、私の弟子、根尾知史君が、本書『大恐慌と戦争に備えて 個人資産の半分を外国に逃がす準備を!』を上梓(じょうし)した。迫り来る金融恐慌と戦争の危機から逃れるために、ある程度の資産家(金持ち)だったら、自分の金融資産を海外に逃がすことを本気で考えるだろう。そのための対策と情報がこの本にたくさん書かれている。

 金持ちは、何よりも自分と家族の命を守ることを考える。そのために、外国に高層住宅(タワー・レジデンス)を一戸確保しておくべきだ。いざとなって、外国に避難してもホテル住まいを何ヶ月も続けることはできない。だから外国に自分の住居を一つ確保しておくことは、今や富裕層の必須の知恵である。

大恐慌が起き、核戦争の危険が迫るとして、世界中で一体どこが一番安全か。自然災害(大地震)の可能性も否定できない。

どこが安全で安心できるか。それは東南アジアである。ここには核兵器は飛んで来ない。東南アジア地域(リージョン)は大国たちの激しい世界覇権(はけん)争いから外(はず)れているからである。

 これらの観点からも、この本の情報価値はきわめて高い。購入をお薦めする。

2023年3月17日

副島隆彦

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はじめに 根尾知史

 これから「大増税(だいぞうぜい)」の嵐(あらし)が襲(おそ)いかかってくる。この本を手に取ったあなたに、日本で資産を保有するすべての人たちに、私はいま、はっきりと「警告(けいこく)」する。

国家は、日本政府は、あなたたちを守ってくれない。日本の資産家と経営者の資産をすべて調べ上げている。最後のびた一文まで残らず、どこまでもがむしゃらに召し上げる。資産家であれば、皆、ひしひしと感じているはずだ。

政府は「召し上げる」のである。「国家のために、社会の福祉のために、正しい納税をしましょう」ではない。もうそのような次元ではない。国民の収入や資産は、国家の官僚、政府のお役人たちにとっての「収入源」である。だから「税収」は「売上げ」だ。これだけはゆるがない真実だ。まさに「年貢」のことなのである。

国家は、あなたを助けてくれない。それどころか、政府は、あなたたちの資産からどれだけ「税金」を取り上げられるか、ということしか考えていない。国民の資産を使って「国家」や「政府」そのものを守る。「国民」を守るのではない。「国家体制」を守るのである。

いま話題の「防衛費の倍増」の財源も、支払うのは私たち国民である。「税金」であれ長期の「国債」(国の借金)であれ、よくよく考えれば同じことだ。

 もしあなたが、今、「金(きん)」(ゴールドバー)を保有しているとしよう。ただそれだけで、政府から税金を取られることは、まだない。しかし、あなたは、金(きん)を買うときに納税の支払調書を提出させられる。あなたが不動産を保有していると、それだけで「固定資産税」を取られる。金も不動産も相続したときには、売って利益が出たわけでもないのに、そのときの時価で「相続税」を払わされる。誰もがこれで苦しむ。現金(キャッシュ)がないから借金をするか、せっかく引き継いだ資産を売り払って、税金を払わされる。

 あなたが生きているだけで、「都民税」や「県民税」「市民税」などの「住民税」を取られている。それから、「社会保険税(料)」も、生涯とられ続ける。いったい政府は「何重課税」したら気が済むのか。

 政府の役人、官僚たちは、あなたたち資産家の「収入」と「資産」に、寄生(きせい)している。国家予算のおよそ3分の1は、官僚、公務員、政治家その他、あらゆる公務に就く政府職員たちの給料だ。自分たちでは、何も生産することができない。「お金」を創

り出す(クリエイト)ことができる、というのはウソである。

 だから本当は、政府は、ムダなことはいっさいやめるべきだ。「必要最低限」の仕事だけをするべきである。これを「夜警(やけい)国家」という。

 国家の役割は、国民の安全を守るガードマン、夜間警備員(夜警)くらい目立たないもの

でいい。国の治安(ちあん)を維持する最低限度の仕事だけでいい。国民生活の安全と社会の治安を守ることだけが仕事である。それ以外のことに、無駄に「税金」を使うな。官僚や公務員たちは、過剰なサービスを増やすな。

 これが本当の「アメリカ建国の思想」である。この政治思想を「リバータリアニズム」( Libertarianism )と言う。アメリカ人というのは、本来、政府が巨大化し、巨大な福祉国家、巨大な軍事国家になって、そのために「重税国家」や「巨大借金国家」になることに徹底して抵抗する。これで、イギリスの植民地というくびきから脱出した。近代デモクラシーの独立共和政国家を建国した。

●大動乱は日本にも及ぶ

 しかし現在、アメリカのドルを中心とする「米ドル基軸通貨体制」は、世界からの信頼を急速に失いつつある。アメリカの世界覇権(はけん)が、目に見えて崩壊し始めている。これが今、私たちの目の前で本当に起きている。このことを、この本の後半部分で書いた。これからあと数年で、「米ドル」が中心だった世界の金融システムが大転換を起こす。この3月10日に、アメリカで16番目(全4178行[こう])のシリコンバレーバンクが「取り付け騒ぎ」を起こして倒産した。これが「終わりの始まり」だ。

 だから、西側先進諸国のエリート権力者たちは「グレート・リセット」という言葉を使うようになった。そのために、「第3次世界大戦」も辞さない。「ウクライナ戦争」と、これから「台湾」で仕組まれる軍事衝突である。それを、アメリカが仕掛ける。いまもアメリカが「軍資金」と「軍備」(武器、兵器、傭兵[ようへい])をウクライナに供給し続けている。だから、ウクライナ戦争はいつまでも終わらない。停戦交渉すらできない。

 さらに火に油を注(そそ)いでいるのはアメリカ政府である。アメリカは狂い始めている。

 だから、インドも中国も、ブラジルも南アフリカも新興大国の「ブリックス」(BRICS5ヶ国)もみな、ロシアに味方する。サウジアラビアやイラン、トルコなど中東の資源国も、東欧や中央アジア、東南アジア、南米の新興諸国も、どんどんまとまってロシアを支援している。

 「戦争」が始まると、「生活」の破壊と「人命」の犠牲が始まる。「資産」が奪われるどころではない。政府は、物理的な人間の「身体」や家や街や都市まで、私たちの「生活環境」そのものを奪い取る。

 「戦争」をするのは「国家」である。しかしその遂行(すいこう)資金は、私たち国民の資産である。そして、戦うのも、私たち国民である。政府は、「人命」までも、私たちから奪(うば)い取る。これが「戦争」である。

 あなた自身にも、あなたの子供にも、あなたの孫たちにも、「徴兵令(ドラフト)」は必ず届く。自衛隊だけが戦って、私たち日本国民を守ってくれる、のではない。あなたとあなたの子供たちと孫たちが自衛隊と一緒に、「国民兵」の1人になる。

 すでにウクライナでは、18歳から60歳までの、すべての男性ウクライナ国民に「徴兵令(ドラフト)」が届いている。しかもこれを決めたのは、昨年2022年2月24日の「開戦」の日である。ゼレンスキーがこの総動員令に署名した。

 だから、これを逃れようとして、大量のウクライナ人がウクライナから出国しようとした。スーツケースのなかに隠れたり、女装までした者もいた。しかし、すべて捕まって、家族と引き離され、ウクライナ国内に連れ戻された。そのまま、軍事訓練に送り込まれた。

 だから私たちは、甘い考えで、テレビやインターネットの、「反ロシア」の偏(かた)よったニューズ報道ばかりを見て鵜呑(うの)みにしてはいけない。日本から8000キロも離れた地球の裏側の遠い国の戦争ではない。次は日本が、同じ目に遭(あ)う。

 日本は、アメリカと中国の大きな対立の間(あいだ)に位置している。アメリカと中国が台湾をめぐって戦争を始める。そのときに必ず巻き込まれる。ウクライナ人と同じように武器と軍資金だけ渡されて、アメリカの代わりに、中国と戦争をさせられる。

 どうして、アメリカや政府のために、私たち国民が犠牲にならねばならないのか。もっとじっくりと、私たち日本人は熟考するべきである。

●地球上で最も安全な東南アジア

だからこれは、私からの「緊急提言」である。東南アジアの国々は、「いまの地球上で最も安全で平和な地域(リージョン)」である。東南アジアは、世界で唯一、どこからも核ミサイルが飛んで来ない。大国同士の戦争に巻き込まれない。それが「東南アジア」なのである。戦争による世界的な大破壊から、最も遠く離れているのが、「東南アジア」の国々なのである。

 東南アジアは、中国ともアメリカとも、両方を天秤にかけながら、適度に距離を保ちながら上手(じょうず)に付き合っている。欧米西側が遂行(すいこう)するウクライナ戦争にも深く関わっていない。

 東南アジアは、このきな臭い世界情勢のなかでも、特別に平和である。私は、昨年2022年6月に、コロナ規制が緩和されてから初めて、タイの首都バンコクへ渡航した。そのあと、本年の3月までに、タイとシンガポールそして香港へ、すでに合計で9回、訪問した。

だから私は、コロナ明けの、今の最新の東南アジアの現地の空気を、身体で体感している。

 東南アジアの国々は、政治的にも経済的にも、今とてもしっかりとまとまっている。アメリカとロシアの戦争である「ウクライナ戦争」にも振り回されていない。東南アジアの国々は、いまの地球規模の動乱のなかでも、平和に団結している。

 日本や欧米の西側先進国は、「コロナ給付金」のバラまきと資源の高騰(こうとう)で「超インフレ」を起こしている。経済がどんどん衰退している。東南アジアの国々は、そのなかでも経済成長を続けている。地球上でも、稀有(けう)な場所になっている。

 日本人はまだ、東南アジアの「知られざる実力」に、気づいていない。東南アジアには、大量の天然資源が眠っている。食料資源の生産力も世界トップレベルである。経済成長を続ける7億人もの人口がいる。何よりも、日本人にとって最も重要なことは、東南アジアの

国々は、根本的に「親日(プロウ・ジャパン)」である。これは大切な事実である。日本人は、アジアの人たちから尊敬されているのである。日本人が知らないだけだ。

 タイとマレーシアは、あと5年で「先進国」になる。シンガポールという特殊な都市国家を除いて、東南アジアで初めてである。もうすでに、タイの首都バンコクなど大都市では、ホワイトカラーのビジネスマンとして働くタイ人の給料は、日本人とほぼ同じレベルにある。

 タイの先にはベトナムがある。マレーシアもある。ベトナムの対岸には、フィリピンがある。さらに、マレー半島の先端には、すでに2007年に経済レベルで日本を追い抜いたシンガポールがある。

 そこからさらに、マラッカ海峡を越えてインドネシアまで続いている。さらにその先はオーストラリアであり、その先が、欧米白人の最後の「理想郷(ユートピア)」と話題のニュージーランドがある。

 タイやベトナム、フィリピン、インドネシアは「農業の国」である。そして、マレーシアとインドネシア、そしてフィリピンは「資源国」でもある。自国で天然ガスや石油、その他の重要な天然資源を産出する。

  ウクライナ戦争によって、エネルギーと食料の価格が急騰(きゅうとう)した。「燃料危機」と「食糧危機」が、同時に世界で引き起こされている。ヨーロッパやイギリスでは、電気やガス料金が数倍になって、ヨーロッパ人たちは、あっぷあっぷしている。

 日本でも、あらゆる業界の製造現場が、原材料費と燃料・光熱費の急騰で激しく圧迫されている。

 マレーシアの自国内では、ガソリン代は、今でも日本の半額である。

 タイではタイ米(ジャスミンライス)が、品質改良されてとてもおいしくなっている。1990年代に日本人が食べさせられた、あの「臭いタイ米」のイメージを、改めるべきである。

 それから、マレーシアの天然ガスは、2011年の東日本大震災で、日本中のすべての原発が一斉に停止されてから、輸入され続けている。日本国内の火力発電のためである。日本のマレーシアからの天然ガスの輸入量は875万トンで、オーストラリアに次いで2位、全体の14パーセントを占める(2021年)。日本の発電の大きな部分が、マレーシアからの天然ガスでまかなわれている。

 さらに、東南アジアの国々には、中国から流れ出る開発資金や技術、情報がどんどん注がれている。この事実も、これからの世界情勢を乗り切るうえで、非常に重要だ。

 東南アジア諸国は、今まさに、インドネシアを先頭に、中国を中心とする新しい世界の経済グループである「新G8」のメンバーに組み込まれている。

「新G8(ニュージーエイト)」とは、ブラジル、ロシア、インド、中国、というブリックス(BRICS)のなかの4大国。それから、東南アジア最大の経済力(GDP)を誇るインドネシア。中東で最もGDPが大きいイラン、それからトルコ。そして、中南米で着実に成長を続ける人口1億2600万人の経済大国メキシコである。「新興の経済大国8ヶ国」のことである。

 これらの国々は、購買力平価(PPP)で計算し直した実質の0 0 0 「GDP」(国内総生産、グロス・ドメスティック・プロダクト)で、すでに欧米諸国を抜いている。本当である。驚くべきことだが、これは事実(ファクト)だ。欧米や日本のメディアは、恥ずかしくて、嫌がって、取り上げない。

 しかしこれは、私たち日本にとって、とても重要な事態である。

●資産の半分を東南アジアに移す

 だからいまこそ、「東南アジア」へ、あなたの資産の半分を移すべきである。日本から一番近くて、資源が豊富で、平和で安全である。世界の戦争にも巻き込まれない。東南アジアの国々は、いまのこの世界的な大不況のなかでも、着実に、経済成長を続けている。「健全な成長インフレ」が続いている。

 それから、タイとマレーシアには地震がない。原発もない。台風も来ない。この2国にと

って、とても重要な利点だ。

 あなた自身とあなたの家族も、日本で何かあったら、さっと移れるようにしておくべきで

ある。「戦争」が始まったら、国家は容赦(ようしゃ)しない。東南アジアにすぐ家族で逃げられるように、「準備」だけはしっかりとしておくべきだ。

 日本国籍まで捨てなくてもいい。日本のパスポートは素晴らしい。しかし、外国でしばらく過ごせるように、海外に不動産を1軒、確保しておくべきである。購入してもいい。そうすると、他人に貸すことで家賃も入る。あるいは、「サービスアパートメント」といって、長期滞在用の上質のコンドミニアムが、タイやマレーシアの大都市にはたくさんある。家具や家電から食器まで揃っている。週2~3回の掃除とタオル、シーツの交換もしてくれる。着替えだけを持っていけば、数週間でも数ヶ月でも、そこで暮らせる。

 今すぐ逃げなくてもいい。しかしいつでも逃げられる「下調べ」と「備え」をしておく、

ということである。万が一に備えて、自分ができる限りの準備をするということだ。

 私たちは、政府に頼り、政府に依存するように洗脳0 0 され続けている。誘導されているのだ。そろそろ自覚するべきである。

 もうこれからは、政府の「補助」を当てにしない。どうせ私たちの「税金」である。政府にたかるような生き方は、間違いである。

 私は、前作に続いて、同じスローガンを繰り返す。自分のできる限りで、どんどん「資産保全」のために動き続けるべきである。

「戦争」と「大恐慌」という歴史的な「世界動乱」が、今、私たちの目の前で同時に起きている。だから、日本政府による国民の「個人資産」への強奪は、すでに始まっている。これからさらにエスカレートする。私たちの人生に、直接に降りかかる。急いで備えるべきである。

=====

『大恐慌と戦争に備えて 個人資産の半分を外国に逃がす準備を!』 目次 

推薦文(副島隆彦) 1

はじめに 5

大動乱は日本にも及ぶ 7

地球上で最も安全な東南アジア 10

資産の半分を東南アジアへ移す 14

第1部 東南アジアで資産を保全する 23

〝危機〟が起きたら東南アジアに避難する 24

東南アジアの国々には相続税がない 29

東南アジアには食糧と天然資源がある 31

〝コロナ明け〟初めてのタイ。スワンナプーム国際空港は活気にあふれていた! 38

平和で安全だからこそ、東南アジアには健全な経済成長がある 44

「戦争」や「金融危機」の時代に大切な〝一時避難〟 48

「プライベート・バンク」と「プライベート・バンキング」は同じではない 52

銀行口座は香港やタイで開設すればいい 54

コロナの「陰性証明書」とワクチンの「接種証明書」 58

タイ人の給与は、ついに日本人を抜いた 62

タイやマレーシアの大都市のオアシスで「リゾート休暇」のような避難生活 66

ブリックス・ペイの衝撃 70

タイでビザ取得するための最新情報 83

日本にいながら海外でゴールドバーを購入し、海外で保管する 89

海外でも「出口戦略」(エグジットストラテジー)が重要 93

「英文認証済みコピー」は必要か 99

「国際運転免許証」だけが、外国で通用する日本政府の公文書だ 106

子供や孫に「引き継ぐ」ときの注意点 108

香港へ外国人もついに入国できるようになった! 109

HSBCの「インターネット・バンキング」の画面とログインの手順がまた……変わった 115

シンガポールの最新の現地情報 126

高級品貸金庫の利用 ~「高級ワイン」という実物資産で保全 130

シンガポールは、中国本土から移住してくる超・富裕層の中国人であふれている 132

シンガポール高級品貸金庫のスイス人社長から聞いた、シンガポール在住の世界の「超」資産家たちの実情 135

香港やシンガポールだけでなく、タイやマレーシアにも〝プランB〟としての「セカンド口座」を開設するべき 143

目的が漠然としたまま、海外へ資産を逃がしてはいけない 146

東南アジアで〝ゆったりと〟避難生活をしたいなら、タイの長期滞在ビザがベスト 149

マレーシアの「長期滞在ビザ」の現状 153

インドネシアはBRICS(ブリックス)への加盟を目指す 157

HSBCは、イギリスから中国・アジア部門を切り離す? 167

石油の取り引きは、「米ドル」決済から「人民元」決済へ 170

もし東京都内や地方都市が、震災や火山の噴火、ミサイルの着弾、テロ、戦争で「火の海」になったら 184

第2部 迫り来る世界大恐慌 193

今、金(きん)を売ってはいけない 194

現代版「預金封鎖」はどう起きるか 201

やがて国内で金(きん)を売っても、もう消費税は戻らない。逆に消費税を取られる! 210

銀行の貸金庫は利用しない。民間の貸金庫を利用するときの注意点 217

あなたの「資産情報」はすべて、ビッグデータとして国が把握している 221

新札切り替え・預金封鎖までの道程 228

日本国内の銀行から現金を引き出すときに注意するべきこと 230

政府が懸命に推奨(すいしょう)するニーサ(NISA)に騙されるな 233

「ドルコスト平均法」は本当に有効なのか? 242

燃料代の値上がり分まで「国債」で補助するのか? 246

アリババの創業者ジャック・マーも、日本で「海外資産保全」をやっている 250

徴税と食料配給のための「マイナンバーカード」 256 

あとがき 265

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あとがき 根尾知史

 私はこの3月、ついに香港へ降り立った。3年2ヶ月ぶりであった。長い「コロナ規制」が、やっと明けた。なんと香港はすでに、本土の中国人や外国人観光客であふれていた。荒

廃(こうはい)して閑散(かんさん)とした、香港のようすを想像していたので、私は本当に驚(おどろ)いた。

 香港市内をずっと見て回ったが、どこも大勢の人で、すっかりコロナ前の混雑とあの騒がしさに戻っていた。

 香港に入国するために、もう「隔離期間」も「直前のPCR検査」も、「ワクチン接種証明」の提示も、必要がなくなった。マスクも着けなくていい。規制はゼロである。

 しかしこれは、今回、現地へ入って初めて分かった。いまでも日本で手に入る情報には、香港へ入国するためには「直前の48時間以内に、PCR検査を受けた陰性証明の提示が必要」と書かれている。これは間違いである。

 もう香港入国のために事前のPCR検査も受けなくていい。香港人の友人が、「その規制はついこのあいだ撤廃されたよ」と教えてくれた。やはり、自分で現地へ足を運ばなければいけないのである。

 それでもまだ、私たち日本人は、日本へ帰国するためのPCR検査を、香港の現地で受け

る必要が残っている。ワクチンを3回以上接種している人はもういらない。香港のPCR検査は、現地にあるクリニックで唾液(だえき)検査で簡単にできる。これはもうすぐ、要(い)らなくなる。

 こうしていよいよ、香港へ自由に行けるようになった。日本の資産家は、いまから急いで資金を携(たずさ)えて外国へ向かうべきだ。 

 親しくしている香港の銀行員が、この日、中国人の客が、アメリカの銀行口座から一気に5000万ドル(いまのレートで約66億円)を香港の口座へ戻したよ、と驚きながら教えてくれた。

 これはもちろん、たったひとりの中国人の資産家の話である。つまり、これは「氷山の一角」である。今まさに、アメリカから香港への資金引き揚(あ)げが、莫大な規模で起きているということだ。もちろん大手メディアは報道しない。

 中国人ばかりではない。世界の非・欧米西側諸国の資産家たちも、ものすごい額でアメリカから資産を引き上げている。アメリカの銀行は、資金流出への対応で、戦々恐々(せんせんきょうきょう)の緊急事態 の真っただ中にあるのだ。

 だから香港は、元気なのである。欧米が仕組む「ウクライナ戦争」とアメリカ発の「金融危機」から逃(のが)れて、世界の資産家のお金がどんどん集まっている。とくに「新興国」と「資源国」の資産家たちが、アメリカとスイスから預金を急いでアジアへ移している。香港やシンガポール、タイ、マレーシアなどの東南アジアの国々に、かなりの勢いで流れ込んできている。

 この流れは、昨年、2022年の後半にまず、東南アジアで最初に始まっていた。私は、昨年の6月から何度もタイやシンガポールを訪れるうちに、このことを実感した。だから、「非・欧米諸国」である東南アジアの国々も、そのほかの世界の「新興諸国」も、今年に入ってますます元気なのである。

 タイ人もマレーシア人も東南アジアの人びとは、まだ明るく安定した気持ちで、経済成長を続けている。彼らアジアの人たちは、コロナからの回復と経済の復興、さらなる成長を目指して前向きである。

 何とか日本人に、この東南アジアの現実を見てもらいたい。私は、切に願っている。日本を出て、元気なアジアから日本を見ると、日本に足りないものが何か、気がつく。

 まず日本人はマスクを外して、元気に輝く、弾(はじ)けるような笑顔を、みんなで取り戻すべきだ。

 今年、2023年から、私たち日本人は、アジアの新興諸国から前向きなエネルギーを受け入れて、一緒に良い方向へ向かう「転換」を始めるべきだ。

「戦争」と「金融操作」ばかりに明け暮れる西側、欧米英諸国ではなく、アジアの国々と歩調を合わせて、いまのこのコロナで疲弊した社会から復活して行くべきである。

 いまの世界は「ブロック化」し始めた、と言われる。しかし、本当の正確な世界の実態は「ブロック化」ではない。冷戦時代の「西側vs東側」の対立でもない。もっと素朴で、しかし人類の歴史の根源にかかわる「欧米西洋白人」と「非・欧米白人」との、大きな対立である。

 新興国の国民たちは、みな以下のように考え始めている。

「アメリカは危ない。何をしでかすか分からない。私たちのことなど考えていない。世界の安全や平和、国際経済の安定など、もう気にも留めていない。アメリカ政府の権力者たちは、生き残りのために、ほかの国を犠牲にすることを平気でやる。もうこれ以上、アメリカの悪だくみに巻き込まれるな。私たちは大きく団結するべきだ。サウジとイランのようにお互いいがみ合っている場合ではない。彼らもすぐに手を結(むす)んだ。私たち新興国は、これから経済発展を成し遂げる。生活レベルで先進国に追いつくのだ」

こういう考えが、アジア・ユーラシア諸国と中東、中米・南米、アフリカ諸国の人々の意識のなかで、大きく急速にまとまりつつある。

 私はこの事実を、コロナ明けの東南アジアと香港を10回訪れて、強烈に感じ取った。

 いまの世界の大きな分断、対立の構造は、もうここまで来ている。有色人種(つまり、色付き人種=カラード・ピープル)どうしであれば「非・西洋白人」という大きな共感で、国籍を問わずに共闘していける。

 この「空気」が、いま、世界のすべての非・欧米の新興諸国の間で生まれつつある。日本人は、これに続くべきだ。

 このたびも、秀和システムの小笠原豊樹編集長に、多大なるお手数をお掛けいたしました。小笠原編集長と副島隆彦先生の厳しいご指導に、心から御礼を申し上げます。

2023年4月9日

根尾知史 

●著者問い合わせ先  piaport8@outlook.com

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。
 ウクライナ戦争によって、ヨーロッパ地域を覆っていた偽善と「西側諸国(the West)対それ以外の世界(the Rest)」という分断が明らかになった。「○○(国名が入る)はウクライナだ」という粗雑な主張が展開され、「防衛のために防衛費の増額と装備の増強が必要だ」「先制攻撃を行えるようにすべきだ」という主張が雨後の筍のように出てきている。他人の不幸に便乗し、他人のふんどしで相撲を取る、なんとも恥ずべき主張だ。
 ウクライナ戦争を契機にして、核兵器保有を主張する政治家たちが北東アジア諸国、具体的には日本と韓国で出てきている。核兵器を保有していることでそれが抑止力となるという考えがその根底にあるが、果たしてそうだろうか。他国が攻撃してきて、進攻してきて、たとえば日本が核兵器を使用することができるだろうか。通常兵器で攻撃してきた相手に核兵器で応酬するというのは「過剰防衛」の謗りを免れない。核兵器は特に先進諸国にとって使えない最終兵器である。また、安全保障のジレンマという考え方がある。ある国(A国)が自国の防衛能力を増強すれば、隣国(B国)はそのことを脅威に感じ、こちらも更に防衛能力を引き上げる。そうなればA国はせっかく防衛能力を高めたのに、安心感が得られずに、更に防衛能力を高めるために無理をする。このような無理が続き、両国ともに破綻するということになる。
 アジア地域、特に東南アジアには東南アジア諸国連合(ASEAN)という素晴らしい枠組みがある。国家制度や経済制度が違う国々が集い、何か問題があれば拙速に断定などをせずに話し合う。このような制度こそが平和と安全を守るために重要だ。北東アジア地域の中国、韓国、北朝鮮、台湾、中国にもこのような枠組みを構築すべきだ。EUNATOのような偽善で過度な理想主義で粉飾された、本質的には戦争を誘発するような枠組みは必要ない。
 今回のウクライナ戦争を教訓は際限なき軍拡競争に走ることではない。外交と地域の枠組みによって平和と安定を守るということであるべきだ。
(貼り付けはじめ)
ウクライナはアジアに戦争を考えさせる(Ukraine Has Asia Thinking About War
-大規模な紛争の再来はアジア諸国の軍備増強につながる。

ウィリアム・チューン筆

2022年4月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/29/ukraine-russia-war-asia-china-military-defense-spending-geopolitics/?tpcc=recirc_latest062921

ロシアによるウクライナ侵攻に伴って、都市の破壊と市民に対する残虐行為が発生した。これによって世界の多くの国々にハードパワーの優位性を再認識させることになった。春。ブランズは『ブルームバーグ』誌に寄稿した論稿の中で、ロシアのウラジミール・プーティン大統領はポスト冷戦時代の考え方、すなわち大規模で暴力的な紛争は過去のものになったという考え方を崩壊させた。

ウクライナ戦争は、アメリカの学者アーロン・フリードバーグがかつて「大国間紛争のコックピット」と呼んだ、「インド太平洋地域が最も不安定な武力紛争のリスクにさらされている」という広範な認識も覆した。ロシアがこれまで土地の強奪や紛争の扇動を何度か行ってきたが、これまでパワーバランス(力の均衡)に大きな影響を与えることはなかったが、制度がしっかりしているヨーロッパは概して安全な場所と見なされてきた。ヨーロッパに比べ、インド太平洋は、EUNATOのような平和や安全を増進する制度がなく、アメリカ、中国、インド、日本、ロシア、朝鮮半島にある韓国と北朝鮮と世界トップ7の軍隊が集結し、南シナ海、台湾、朝鮮半島、尖閣諸島などいくつかの不安定なホットスポットがあって、更に危険な場所であると考えられてきた。

ロシア・ウクライナ戦争の前から、冷戦終結後に衰退した軍事的な国家統治手段がアジアで復活しつつあることは、専門家の間で指摘されていた。これまでアジアでは、地域経済や地域制度の進化に注目が集まる一方で、ヨーロッパと同様に軍事力が地域の力学に果たす役割の重要性が過小評価される傾向があった。

現在、変化が起きつつある。ロシア・ウクライナ戦争は多くのアジア諸国が自国の防衛力の必要性を見直すきっかけとなっている。日本や韓国などのアメリカの正式な同盟諸国は、ロシアがウクライナに侵攻し、米英露が1994年のブダペスト覚書で約束した安全保障に関する合意を踏みにじっているにもかかわらず、アメリカがロシアと敵対することを拒否していることを正確に評価している。ソウルや東京から見ると、アメリカのエスカレートへの懸念は、NATO加盟諸国や日本、韓国といった条約上の同盟諸国を守る義務に優先するように見える。西側諸国の首都がエスカレートを恐れているのなら、なぜ同盟諸国を守ることに消極的にならざるを得ないのだろうか?

ロシア・ウクライナ戦争の前から、日本は中国の急速な軍拡と北朝鮮の核開発への懸念から、既に10年連続で防衛費を引き上げてきた。今、安倍晋三元首相は、ドイツの核シェアリング協定と同様に、日本国内でアメリカの核兵器を受け入れることを検討するよう提案し、古い議論を復活させた。安倍元首相は、ウクライナは1994年に核兵器を放棄したため、より強力で修正主義的な隣国ロシアに対して脆弱になってしまったと主張している。

韓国の防衛態勢の見直しは、韓国内の核兵器保有に対する意欲の高まりを反映している。

安倍首相の提案は、後任の岸田文雄首相によって即座に否定された。しかし、与党の自民党(LDP)内では一定の支持を得ている。自民党の意思決定機関(decision-making body)である総務会(General Council)の福田達夫総務会長は、この議論を「避けるべきでない」と述べた。自民党の高市早苗政務調査会長は、核兵器を持ち込まないというこれまでの鉄則についての議論について「抑制すべきではない」と述べた。自民党以外では、一部の保守系野党も核武装の選択肢を公に出すことを望んでいる。

韓国においても、政策立案者たちはアメリカの「核の盾」に依存し続けられるかどうかを懸念している。ユン・スギョル次期大統領は、韓国とアメリカの同盟関係の強化を公約に掲げ、先制攻撃のための能力開発を目指している。ソ・ウク国防相は、韓国は北朝鮮のミサイル発射台に対する攻撃を「正確かつ迅速に」実施することができると述べた。ユン次期大統領は、1991年に撤去されたアメリカの核兵器を韓国に戻すようアメリカに求める考えだと報じられている。その他の選択肢としては、核爆撃機や潜水艦の韓国への配備を求めることも考えられる。ユン次期大統領はまた、韓国に対弾道ミサイル防衛システムを追加配備すること(過去に中国の怒りを買った措置)や、ドナルド・トランプ前米大統領時代に中断していた年2回の米韓軍事演習(野外訓練を含む)の本格的な再開を要求している。

韓国の防衛態勢の見直しは、韓国において核兵器保有に対する意欲が高まっていることを反映している。今年2月の世論調査では、韓国人の71%が韓国独自の核開発を望み、56%がアメリカ軍による核兵器の再配備を支持している。大統領府政策企画委員会のチョ・ギョンファン委員は、ロシア・ウクライナ戦争は、「本当に危機に瀕している時には、頼るべきは自分の力しかない、自分で自分自身を守るしかないのだ」ということを思い知らされたと述べた。

台湾では、ロシアの侵攻に対するウクライナの執拗な抵抗によって、中国による水陸両用の侵攻のシナリオに新たな光を当てる結果になった。ウクライナの非対称戦法、例えば小型で携帯性に優れた対戦車ミサイル「ジャベリン」や対空ミサイル「スティンガー」は、台湾のアナリストが台湾軍の海・空における同様の戦術を強調するきっかけとなった。あるアナリストによると、トランプ政権発足後、台湾がアメリカから購入した18種類の武器のうち116種類は、高性能戦闘機や軍艦といった大規模なものではなく、こうした非対称能力の強化に重点を置いている武器だということだ。

その他の複数の措置も存在する。台湾のジョセフ・ウー外相は、アメリカの武器取引は更に発表されると述べた。国内では、台湾はミサイルの年間生産量を2倍以上にするつもりである。また、4ヶ月の徴兵期間を1年に延長する計画も存在する。

北東アジア地域に比べ、東南アジア諸国はウクライナ紛争を契機に軍事力を強化する動きは少ない。しかし、それでも、紛争時には外部からの支援よりも自助努力に頼るべきという考え方は、今回の戦争で後押しされているように見える。

シンガポールも戦略環境の変化を痛いほど実感している。リー・シェンロン首相は、ウクライナを自国のモデルと見ている。自国を守ろうとする意志は、「ウクライナ人が持ち続けているもので、この世界で自分たちの安全を守るために、シンガポール人が持たなければならないものだ」と記者たちを前にして語った。この発言は特定の国に向けられたものではないが、シンガポール軍は、島国への攻撃や、シンガポールが依存するシーレーンへの干渉を抑止することを目的としていると広く考えられている。アジアで最も高い一人当たりの国防費により、シンガポールの軍隊は既に東南アジアで最も優れた装備を保有している。

今年3月初め、シンガポールのン・エンヘン国防相は、シンガポール軍(SAF)が情報、サイバー能力、心理的防衛を組み合わせた新しいデジタル・インテリジェンス・サービスを立ち上げ、シンガポール軍をネットワーク化した部隊として再編成すると発表した。この決定はウクライナ情勢が原因ではないが、ロシアがウクライナで展開したようなハイブリッド戦争に対処するためにシンガポール軍を再構築すると述べた。

退任予定のフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はプーティンを「個人的な友人」と呼んでいるが、ドゥテルテは3月、反米主義だった過去と決別し、ロシア・ウクライナ戦争がアジアに波及した場合にフィリピン軍の事施設の利用をアメリカに提案した。4月21日には、ドゥテルテはフィリピンの国軍と警察に対し、あらゆる事態に「備える」よう呼びかけた。

ヴェトナムは、モスクワとの良好な関係を持っていることから、ロシアを直接非難することを拒否している。しかし、ワシントンの出方次第では、ハノイがアメリカの言いなりになる可能性は十分にある。現在、ヴェトナムはロシア製戦闘機の購入を意図しており、アメリカによる制裁の対象になる可能性がある。フィリピンやインドネシアがロシアの武器購入計画を撤回したのと同じアメリカ制裁法に基づいているのだ。しかし、アメリカはヴェトナムが中国、特に南シナ海で対抗するために軍備を強化することに本質的な関心を持っており、ヴェトナムは安価なロシア製ジェット機を購入する意図を持っている。したがって、アメリカ・ヴェトナム合同軍事演習の再開に関連して制裁が免除される可能性もある。

アジア各国の政府は、アジア地域で戦争がすぐに起こるとは考えていない。しかし、中国は、例えば、南シナ海でグレーゾーンやハイブリッド戦法を用いることで、ロシアのやり方を模倣する可能性がある。南シナ海では、中国は既に自国の領有権主張について、ウクライナに関するロシアと同じような歴史物語を作り出している。アメリカのインド太平洋戦略に対する北京の主張は、NATOにウクライナへの攻撃を強いられたというモスクワの主張とも平行している。3月、中国の楽玉成外務次官は、NATOの拡大が戦争を引き起こしたというロシアの主張を支持し、米国のインド太平洋戦略は「ヨーロッパの東方拡大というNATO戦略と同じくらい危険だ。放っておけば、この地域は "奈落の底に突き落とされる」と述べた。ロシアがウクライナへの攻撃を正当化するために、このようなレトリックを用いたことを考えると、アジア各国の防衛強化への決意は強まっていく。

ヨーロッパは、ハードパワーの現実を残酷なまでに再認識させられた。アジアは、第二次世界大戦後、多くの紛争を経験しているので、そのような再認識は必要ない。しかし、アジアでも、ロシアの侵攻は、将来の紛争に備えるという新たな真剣さを各国政府に植え付ける結果となった。

※ウィリアム・チョン:ISEAS・ユソフ・イシャク研究所上級研究員兼研究所の論説ウェブサイト「フルクラム」編集長。「フルクラム」は東南アジアを専門としている。ツイッターアカウントは@willschoong
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※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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