古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:核兵器


 古村治彦です。
 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イランは核兵器保有を目指して、核開発を続けており、それを中東各国は脅威に感じている。特にイスラエル(核兵器を既に保有していると言われている)はその脅威を強く感じている。イスラエルは、1981年にイラクに建設中だった原子力発電所を空爆し、破壊した(オペラ作戦)。イスラエルは自国の核保有を否定も肯定もしない形で、核兵器による優位な立場を堅持してきた。イラン側にすれば、核兵器を持つことで、他国からの攻撃を抑止しようという核抑止力(nuclear deterrence)の獲得を目標にしている。

 国際関係論のネオリアリズムの大家として知らエルケネス・ウォルツ(Kenneth Waltz、1924-2013年、88歳で没)は、最晩年の2000年代に、「核兵器を持つ国が増えれば世界は安定する」という主張をして、論争が起きた。

ウォルツは、核抑止力は安全保障を確保し、他国への攻撃を抑止すると主張した。ウォルツは核抑止が戦争を抑制する要因とし、冷戦時代の成功例を挙げている。ある国が核武装をすると、周辺諸国も追随する可能性があり、そこに核バランスが生まれ、平和的共存を促す可能性もあるとしている。

指導者たちは核兵器を使った際の惨禍については知識があり、そのために核兵器使用は慎重になる。更には、核兵器による反撃があるとなれば、なおさら使用を躊躇する。しかし、人間は完璧ではなく、徹底して合理的な存在でもない。何かの拍子で核兵器発射のボタンを押すことも考えられる。

 こうした考えを敷衍すると、イランが核兵器を持てばイスラエルとの間にバランスが生じて、中東地域は安定するということになる。しかし、同時に核兵器開発競争を中東知己にもたらす可能性もある。核兵器による抑止力がどこまで有効かということを考えると、イスラエルにしても、アメリカにしても、核兵器を保有しているが(保有していると見られる)、通常兵器による攻撃を抑えることはできていない。だからと言って、イスラエルもアメリカも核兵器を使うことはできない。しかし、それは合理的な考えを持っている場合ということになる。どのようなことが起きるか分からない。

 核拡散には「nuclear proliferation」「nuclear spread」の2つの表現がある。どちらも拡散と訳している訳だが、微妙に異なる。「proliferation」は、虫や病原菌が増えることに使う表現であり、「蔓延」と訳した方が実態に即していると思う。「spread」は、ある考えの「拡大」「普及」に使われる。ウォルツは「spread」を使っている。「核不拡散(核拡散防止)条約」は、「Non-Proliferation TreatyNPT」の訳語であるが、これは、「核兵器を持つのは世界政治を動かす諸大国(powers)≒国連安保理常任理事国に限る、それ以外の小国には認めない」という意味も入っている。「合理的に動けない小国に核兵器が蔓延することは危険だ」という考えが基本にある。

 核兵器を所有しても核抑止力が期待できない、そもそも核兵器使用はハードルが高いとなれば、核兵器を所有することのメリットは少ない。あまり意味がない。ケネス・ウォルツも世界中の国々が核兵器を持つべきとは言っていない。これから世界構造が大きく変化していく中で、これまでの核兵器「信仰」は考え直されるべきだろう。

(貼り付けはじめ)

イランが核兵器を保有して以降の時代(The Day After Iran Gets the Bomb

-学者や政策立案者たちは、テヘランが核兵器を獲得した後に何が起こるかを理解しようとして努力している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/14/iran-nuclear-weapon-strategy/

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短・中距離ミサイルの試射中に双眼鏡を覗き込むイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイと当時のイラン軍トップ、ハッサン・フィルーザバディ(2004年9月8日)

イランが核兵器を保有することはあるのか? もしそうなったらどうなるのか? 最初の質問に対する答えは、ますますイエスになりつつあるようだ。しかし、2つ目の疑問の答えは相変わらず不明確である。

イスラム共和国としてのイランは、1979年に国王(シャー、shah)を打倒した革命以来、45年間にわたり、アメリカおよび多くの近隣諸国と対立してきた。アメリカはイラン・イラク戦争中(バグダッドが戦争を始めていたにもかかわらず)サダム・フセインを支援した。紛争)、そして当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領はイランを悪名高い「悪の枢軸(axis of evil)」に含めた。バラク・オバマ政権は最終的にイランと核合意を結んだが、イスラエルとも協力して、イランの濃縮インフラに大規模なサイバー攻撃を行った。それに劣らずに、当時のドナルド・トランプ大統領も最終的にはイスラム革命防衛隊コッズ部隊司令官カセム・スレイマニ将軍を殺害する無人機攻撃を承認し、「最大限の圧力(maximum pressure)」プログラムを通じて政権を弱体化させようとした。

イランは、シリアのバシャール・アサド政権を支援し、ロシアや中国に接近し、レバノン、イラク、イエメン、ガザで民兵を武装・訓練することで、こうしたさまざまな活動やその他の活動に対応してきた。また、ラファエル・S・コーエンが最近、『フォーリン・ポリシー』誌で概説したように、イスラエルとイランの秘密戦争は今後も長く続きそうであり、更に悪化する可能性もある。

ここで問題が起こる可能性は明らかだ。1人の著名な国際関係理論家は、それを軽減する明白な方法があると考えた。故ケネス・ウォルツが最後に発表した論文によると、この地域を安定させる最も簡単な方法は、イランが独自の核抑止力(nuclear deterrent)を獲得することだという。うぉるつは、イランが核兵器を保有すれば、イランの安全保障への懸念が軽減され、イランが他国に迷惑をかける理由が減り、地域のライヴァル諸国に対し、不用意に核兵器攻撃につながる可能性のある形でのイランに対する武力行使を自制させることができると主張した。ウィンストン・チャーチルが冷戦初期に述べたように、安定は「恐怖の頑丈な子供」になるだろう(stability would become “the sturdy child of terror.”)。

ウォルツは、基本的な核抑止理論に基づいて、この議論の中心的な論理を説明した。彼の説明がなされた著書は1981年に出版させ、物議を醸した。彼は、無政府状態(anarchy)にある国家は、主に安全保障に関心があるというよく知られた現実主義的な仮定(realist assumption)から説明を始めた。核兵器のない世界では、そのような恐怖はしばしば誤算(miscalculation)、リスクの高い危険な行動(risky behavior)、そして戦争(war)につながる。核兵器は、最も野心的、もしくは攻撃的な指導者でさえも尊重しなければならないレヴェルの破壊力で脅かすことで、この状況を一変させた。ウォルツは核抑止力が究極の安全保障の保証(a nuclear deterrent as the ultimate security guarantee:)となると考えた。賢明な指導者であれば、核武装したライヴァルを征服したり、打倒したりしようとはしないだろう。そうするためには、核攻撃の危険が避けられないからである。自国の複数の都市を失うほどの政治的利益は考えられないし、核兵器による反撃の可能性が低いながらも存在するだけでも、他国の独立に対する直接攻撃を抑止するには十分だろう。核兵器を使った攻撃がどのような影響をもたらすかは、最低限の知性を持った人なら誰でも容易に理解できるため、誤算の可能性は低くなるだろう。したがって、安全な第二攻撃能力(secure second-strike capability)を持つ国家は、自国の生存についてそれほど心配することはなく、国家間の競争は、相互の恐怖(mutual fear)によって(消滅されはしないものの)制約されることになる。

ウォルツは、核抑止力が安全保障競争の全要素を排除するとは示唆しなかった。また、どの国も原爆を持ったほうが良いとか、核兵器の急速な拡散が国際システムにとって良いことになるとも主張しなかった。むしろ、核兵器のゆっくりとした拡散は状況によっては有益である可能性があり、それを阻止するための全面的な努力よりも望ましい可能性さえあると示唆した。ウォルツは、冷戦時代にアメリカとソ連が直接の武力衝突を回避するのに役立ち、インドとパキスタン間の戦争の規模と範囲を縮小させた、エスカレーションに対する相互の恐怖は、戦争を含む他の場所でも同様の抑制効果をもたらすだろうと考えていた。戦争で引き裂かれた中東でも同じだった。

ウォルツの逆張りの立場は多くの批判を呼び、彼のオリジナルの著書は最終的にスタンフォード大学教授のスコット・セーガンとの広範で啓発的な交流につながった。懐疑論者たちは、新たな核保有国は、抑止できない非合理的、あるいは救世主的な指導者によって率いられる可能性があると警告したが、それらが既存の核保有国の指導者たちよりも合理的であったり、用心深かったりするかどうかは決して明らかではない。また、新興核保有国には高度な安全対策や指揮統制手順が欠如しており、そのため兵器が盗難や不正使用に対してより脆弱になるのではないかと懸念する人たちもいた。タカ派の人々は、既存の核保有国で、これまで成功した例がないにもかかわらず、新興核保有国が他国を脅迫したり、侵略の盾(shield for aggression)として核使用をちらつかせて脅迫したりする可能性があると主張した。他の批評家たちは、イランによる核開発により、近隣諸国の一部が追随することになるだろうと予測したが、初期の「拡散カスケード(proliferation cascades)」の証拠はせいぜい複雑だった。

もちろん、アメリカ政府はウォルツの立場を受け入れようと考えたことはなく、もちろんイランのような国に関してもそうではなかった。それどころか、アメリカはほぼ常に他国が自国の核兵器を開発するのを思いとどまらせようとしており、イランがそうするのを阻止するために時間をかけて取り組んできた。民主党所属と共和党所属の歴代大統領は、イランが実際の核爆弾を製造しようとする場合にはあらゆる選択肢がテーブルの上にあると繰り返し述べて、イランに濃縮計画を放棄するよう説得しようとしたが、こうした試みはほぼ失敗に終わり、ますます厳しい経済制裁を課している。バラク・オバマ政権は最終的に、イランの濃縮能力を大幅に縮小し、核物質の備蓄を削減し、イランの残存する核活動の監視を拡大する協定(2015年の包括的共同行動計画[Joint Comprehensive Plan of ActionJCPOA])を交渉した。驚くべき戦略的失敗により、ドナルド・トランプ大統領は2018年に協定を破棄した。その結果はどうなったか? イランはさらに高レヴェルなウラン濃縮を開始し、今では、これまで以上に爆弾の保有に近づいている。

JCPOAとは別に、アメリカ(そしてイスラエル)は、イラン政府に、自国の抑止力なしには安全を確保できないことを説得するために、あらゆることをしてきた。連邦議会はイラン亡命団体への資金提供など、イランを対象とした「民主政治体制促進(democracy promotion)」の取り組みに資金を提供している。アメリカ政府は、関係改善を目指すイランのいくつかの試みを阻止し、ペルシャ湾でイラン海軍と衝突し、イラン政府高官を意図的に暗殺し、イラン国内で一連の秘密活動を行ってきた。アメリカ政府は、この地域における反イラン連合(anti-Iranian coalition)の結成を公然と支持しており、(ロシア、中国、そしてアメリカの同盟諸国のほとんどとは異なり)テヘランとは外交関係を持っていない。イラン政権について誰がどう考えても、そしてイラン政権には嫌な点がたくさんあるが、こうした措置やその他の措置により、イスラエル、パキスタン、北朝鮮を含む他の9カ国が現在享受しているのと同じ抑止力の保護に対するイランの関心が高まっていることは間違いない。

では、なぜイランはまだ核保有の一線を超えていないのか? その答えは誰にも分からない。1つの可能性は、最高指導者アリ・ハメネイ師が核兵器はイスラム教に反しており、一線を越えることは道徳的に間違っていると心から信じているというものだ。私自身はその説明にはあまり興味を持てないが、その可能性を完全に排除することはできない。また、特にイラク、アフガニスタン、リビア、その他数カ所での体制変更(regime change)に向けたアメリカの悲惨な努力について考慮すると、イランの指導者たちは(公の場で何を言おうと)アメリカの直接攻撃や侵略についてそれほど心配していない可能性もある。彼らは、誰がアメリカ大統領になるにしても、そのような経験を追体験したいとは思わないだろうし、特にイラクのほぼ4倍の面積と2倍の人口を有する国イランを相手にしたい訳ではないだろうと認識しているかもしれない。アメリカは危険な敵ではあるが、存在の脅威ではないため、急いで爆弾を使って狙う必要はない。テヘランはまた、実用的な兵器を製造する試みが探知される可能性が高く、イランが多くの犠牲を払って構築した核インフラを、アメリカやイスラエル(あるいはその両方)に容易に攻撃されてしまう可能性がある限り、予防戦争(preemptive war)の脅威によって抑止される可能性がある。緊急の必要がなく、状況が好ましくない場合、イランにとっては核拡散ラインのこちら側に留まる方が理にかなっている。

アメリカやその他の国々が事態をこのまま維持したいのであれば、イランが兵器保有能力を回避し続ければイランは攻撃されないという保証と、ライン突破の試みによって起こり得る結果についての警告を組み合わせる必要がある。イスラエルとイランの間の秘密戦争を鎮圧することも同様に役立つだろうが、ネタニヤフ政権がその道を選択したり、バイデン政権からそうするよう大きな圧力に直面したりすることは想像しにくい。

私の頭を悩ましていることがある。現在の敵意のレヴェルが続くなら、イランが最終的に独自の核抑止力が必要だと決断しないとは信じがたいが、そのとき何が起こるかは誰にも分からない。それは再び中東戦争を引き起こす可能性があり、それは誰にとっても最も避けたいことだ。イランが独自の核爆弾製造に成功すれば、サウジアラビアやトルコなどの国も追随する可能性がある。

そうなれば何が起きるか? それは、ウォルツがずっと正しかったこと、そして中東における核のバランスが荒いことで、絶え間なく争いを続ける国々が最終的には敵意を和らげ、平和的共存(peaceful coexistence)を選択するよう仕向けるであろうということを明らかにするかもしれない。しかし、正直に言うと、これは私がやりたくない社会科学実験(social science experiments)の1つでもある。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 世界で核兵器を持つ国々としては、国連安全保障理事会常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮となっている。アメリカが開発し、ソ連が追い付き、英仏、そして中国が開発していった。そして、他の国々に拡散していった。冷戦下の米ソは、核兵器の管理とそれ以上の拡散を防ぐために、核不拡散条約を締結し、世界各国にも批准を求めた。しかし、その後も核兵器所有を望む国々はあり、実際に核兵器所有に到る国々も出てきた(南アフリカは計画を断念した)。その後、米ソ間で、核兵器削減が始まり(両国が持つ核兵器の数は他国を大きく凌駕する)、核兵器の不拡散(non-proliferation)から軍備管理(arms control)へと進む中で、米中露の間での軍備管理は難しくなっている。

 「核兵器を持てば他国からの攻撃を受けなくなる」という核抑止力思想は、冷戦期には有効であっただろうが、現在はその有効性は疑問視されている。核兵器を先制攻撃用の武器として使うことは、世界各国の非難を浴び、国家として存続できない状態になり、自国の崩壊を意味する。自国の防衛のために持った核兵器が自国の崩壊を招いてしまっては本末転倒だからだ。アメリカは報復兵器として核兵器を保有しており、アメリカに向けて核兵器を使った国を消滅させるだけの核兵器を持つということになっている。

しかし、アメリカは核兵器を自国に打たれない限り、報復手段として核兵器を使用できない。そうなれば、困った問題も出てくる。特に、国土を持たないテロリスト組織に対しては核兵器を使用できない。そうなると、核兵器を持っていても、自国への攻撃を防ぐことはできないということになる。国家間戦争では事情は異なるが、テロ組織との非対称的な戦争では、核兵器を持っても何の効果もない。また、通常兵器で攻撃された場合には、通常兵器で報復するということになる。アメリカの軍事力を考えれば、通常兵器だけでも、ほとんどの国を消滅させることが可能であるが、ブッシュ政権以降の、イラクとアフガニスタンの泥沼化を見てみると、アメリカの軍事力が有効性を持つということについては疑問符がつく。

 アメリカでは歴代政権がアメリカの「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」を行う。バイデン政権でもNPRは行われており、削減よりも核抑止力の維持を基本線としている。中国の台頭とロシアの脅威を受けて、削減傾向からの転換を図っている。しかし、核兵器を持っていることがどれほどの効果を持つのかということについて、その前提を疑うということはしていないようだ。米中露が直接的に核兵器を撃ち合う状況にならないように、管理することが基本線であるが、核兵器の抑止力に今も頼ろうと考えているようだ。

 インドとパキスタン、イスラエルとイラン(核開発進行中)といった敵対国同士が核兵器を撃ち合うという可能性についても私たちは考えておかねばならない。しかし、核兵器は使用にかなりの高いハードルがあり、「伝家の宝刀」「最終秘密兵器」ということになる。結局、使えない、持っているだけということであるならば、今からおっとり刀で、日本でも核兵器保有を行おうと考えることは愚の骨頂だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンの核戦略は危険な世界と共存するための戦略である(Biden’s Nuclear Strategy Is About Living With a Dangerous World

-「核態勢の見直し(Nuclear Posture Review)」から5つの教訓が得られる。

マシュー・ハリス筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/biden-nuclear-posture-review-deterrence-russia-china/

先月、新たな「国防戦略(National Defense Strategy)」の一環として、またロシアがウクライナで核の威嚇を続ける中、バイデン政権は「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」の公開文書を発表した。何故核兵器を保有するのか、いつ、どのように使用を検討するのか、今後どのような核兵器が必要なのか、といった方針を示すもので、ビル・クリントン大統領以降の各米大統領は1期目の早い段階で、核態勢の見直しを実施してきた。しかし、ウクライナで敗走するロシアが核兵器を振り回し、中国との緊張が高まる中、アメリカの立ち位置には注意を払う価値がある。25ページに及ぶ「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」から、5つのポイントを挙げる。

(1)中国も核兵器による威圧を試みる可能性がある(China could try nuclear coercion, too

戦略に関する見直しは、しばしば「最後の戦争を戦う(fighting the last war)」と非難される。バイデンによる「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、現在の戦争と戦うことに大きな焦点を合わせている。ロシアは核兵器のレトリックを使って、ウクライナと西側諸国に戦争目的を縮小するよう説得しようとしている。そして、ロシアが自分たちにとっての有利な条件で戦争を終わらせるために少数の核兵器を使用するかもしれないという懸念が、この「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」に大きく関わっている。ロシアの指導者たちは、核兵器を「近隣諸国に対する不当な侵略を行うための盾(shield behind which to wage unjustified aggression against their neighbors)」と考えており、「地域紛争におけるロシアの限定的核使用の阻止は、アメリカとNATOの高い優先事項である(deterring Russian limited nuclear use in a regional conflict is a high U.S. and NATO priority)」と報告書は述べている。

最近の米国家安全保障戦略は、ウクライナにおけるロシアの通常兵器の災禍が、将来的に核兵器への依存を強めることになるため、この問題が更に悪化する可能性が高いことを示唆している。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、中国がアジアで同様の戦略を採用する可能性を指摘している。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」によれば、中国の驚くべき核兵器増強は、核兵器による強制や限定的な先制使用など、地域の危機や戦争における選択肢を増やすことになるという。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」が中国の将来の核兵器を「多様(diversity)」であり、「高度な生存性、信頼性、有効性(high degree of survivability, reliability, and effectiveness)」を持つと表現している点は、核兵器で先制攻撃された場合に大規模な報復を行えることに重点を置いてきた中国の歴史的に初歩的な態勢とは大きく異なる。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」自体には、これ以上具体的なことは書いていない。しかし、中国の目標は、アメリカとの本格的な核戦争にまでエスカレートすることなく、この地域での通常型紛争に勝利するために、低程度・短距離のシステムで限定的な核攻撃を用いると威嚇したり、実際に実行したりできるようにすることだという憶測に信憑性を与えている。

ワシントンは、核兵器による強制、あるいは限定的な使用が勝利の戦略であるという考えを打ち砕くことに明確な関心を持っている。これは、核のリスクそのものだけでなく、アメリカ軍の行動の自由に関するものである。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、「限定的な核兵器使用を抑止する能力は、非核兵器の通常兵器による侵略を抑止する鍵である」と述べている。敵対国が、核兵器によるエスカレーションで脅せば思い通りになると知れば、「我が国の指導者たちが、重要な国家安全保障上の利益を守るために通常の軍事力を行使するという決断を下すことはより難しくなり、その決断を下すことははるかに危険になる」と「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は述べている。

こうした懸念からは2つの現実的な意味が読み取れる。まず、広範な『国家防衛戦略(National Defense Strategy)』の他の施策と同様に、この見直しでは、限定的な核攻撃に対する回復力を高めるよう求めている。これには、通常兵器システムの防護強化、アメリカ軍と同盟諸国の軍隊の防護装備、通常戦に使用される宇宙システムの「任務保証の強化(enhanced mission assurance)」などが含まれる。その論理は、アメリカの同盟諸国が限定的な核兵器使用後も戦い続けられることを敵対国が知れば、核兵器使用は戦争を終わらせるクーデターとしての魅力を失うというものである。しかし、それは次の点を示唆している。

(2)核兵器削減は限定的であり、新兵器も準備中である(Nuclear cuts will be limited, and new weapons are in the pipeline

バイデン政権は、限定的な核兵器使用を抑止するには、比較的限定的な核攻撃で報復を脅かすことができる必要があると考えている。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、この目的のために航空爆弾と巡航ミサイルを保持しているだけでなく、潜水艦発射弾道ミサイル用のW76弾頭タイプの低出力ヴァージョンであるW76-2弾頭も保持している。バイデンは大統領候補として、トランプ政権時代に開発されたW76-2を「悪いアイデア(bad idea)」と呼んだ。しかし、「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、「W76-2は現在、限定的な核使用を抑止するための重要な手段を提供している」と率直に述べ、ロシアと中国に対する抑止力の一環としてそれを挙げている。

トランプ政権はまた、核兵器を搭載した海上発射巡航ミサイル(sea-launched cruise missileSLCM-N)を提案し、計画を開始していた。バイデン政権の「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」によれば、この兵器は、W76-2の追加により、アメリカには限定的な核戦争を遂行するための十分な選択肢があることを根拠に削減されるということだ。連邦議会の共和党所属議員と一部の民主党所属議員は別の考えを持っている。連邦上下両院の軍事委員会は、来年の国防権限法案(draft defense authorization bill)にSLCM-Nを再び盛り込むべく奮闘している。連邦議会がバイデン政権に研究開発費の支払いを継続するよう強制する可能性は十分にあり、共和党はバイデン政権の任期切れを待って、共和党側から出た大統領の就任によって、SLCM-Nを手に入れることを期待していると指摘している。SLCM-Nは、米戦略軍司令官の声高な支持を受けている。同様の力関係が、バイデン政権が退役を決定し、連邦議会がまだ維持しようとしている可能性がある高出力重力爆弾であるB83-1に関しても働いている。

一方、バイデン政権が新世代の大陸間弾道ミサイルを製造せず、代わりにミニットマンIIIMinuteman III)を延命させるのではないかという一部の擁護者たちの期待は完全に裏切られた。「核態勢の見直し(Nuclear Posture ReviewNPR)」は、そのような決定は「リスクとコストを増大させる(increase risk and cost)」と断言し、後継のセンチネルミサイルに全面的なゴーサインを出した。イギリスが自国の後継核弾頭の基礎としているW93/Mk7核弾頭も、続行される。アメリカの核弾頭製造コンプレックスは、過去数十年の「部分的改修(partial refurbishment)」戦略から脱却し、ゼロから新兵器を製造するための態勢を再び整えることになる。

(3)核抑止力と非核抑止力の統合は、依然として目標である(Integrating nuclear and nonnuclear deterrence is still a goal

「核態勢の見直し(NPR)」の中核をなす国家防衛戦略は、「統合抑止(integrated deterrence)」という考えを大々的に打ち出している。バイデン政権によれば、これは「戦闘領域、戦域、紛争範囲、米国のあらゆる国力手段、同盟とパートナーシップのネットワークをシームレスに連携する(working seamlessly across warfighting domains, theaters, the spectrum of conflict, all instruments of U.S. national power, and our network of Alliances and partnerships)」ことを意味する。従来の軍事領域では、この概念が有用かどうかについて活発な議論が行われている。そのリスクには、抑止の概念を拡大し過ぎたり、各軍が既にやりたいと考えていることを「統合抑止」として再ブランド化することを奨励したりすることだけでなく、実際に変化を導くことに失敗したりすることが含まれる。

戦略の領域では、統合には明確で具体的な意味があり、その中には物議を醸すものもある。 「核態勢の見直し(NPR)」は、どの非核兵器が抑止態勢において核兵器を「補完(complement)」できるかを評価し、「これらの能力を作戦計画に適切に組み込む(integrate these capabilities into operational plans, as appropriate)」と約束している。国家防衛戦略は、アメリカがロシア国境にある同盟諸国やパートナーが「コストの賦課を可能にする対応オプション(response options that enable cost imposition)」を開発するのを支援すると述べているのは的を射たものである。つまり、アメリカは同盟諸国の防衛を強化するだけでなく、同盟諸国がロシアの侵略を積極的に懲罰する準備を支援するだろう。バイデンの「核態勢の見直し(NPR)」はまた、核と非核の計画と演習の「より適切な同期(better synchronizing)」の必要性を強調することで、トランプ大統領時代の見直しの重要な特徴を基礎にしている。限定的核攻撃(limited nuclear attacks)に対する回復力を強化するという決定と、限定的核使用の抑止が通常戦争の抑止の一部であるという主張に加えて、今回のバイデン政権での「核態勢の見直し(NPR)」は、核と非核の政策と計画の間に明確な防火帯を避けることで、前任者の道を踏襲している。

(4)中国の核兵器増強は厳しい変化を意味するかもしれない(China’s buildup might mean tough changes

ロシアが数千の核兵器を保有しているのに対し、中国の核兵器は現在数百に過ぎないという事実は、中国が「アメリカの防衛計画における全体的なペース配分の課題」である国家防衛戦略と、ロシアがアメリカ本土に対する唯一の存立的脅威であり続けるとされるNPRとの間で、焦点の必要な非対称性をもたらしている。しかし、この見直しは、大きく変化しつつある世界を正しく指摘している。中国は「核戦力の野心的な拡大、近代化、多様化に着手し、初期の核三極体制を確立した(embarked on an ambitious expansion, modernization, and diversification of its nuclear forces and established a nascent nuclear triad)」国であり、「我が国の核抑止力を評価する上で、ますます重要な要素となっている(growing factor in evaluating our nuclear deterrent)」と「核態勢の見直し(NPR)」は指摘している。

この変化の意味は斜めに表現されている。「核態勢の見直し(NPR)」では、「安全保障環境が進化するにつれて、米国の戦略と兵力態勢を変更することが、ロシアと中国の両国の抑止、保証、雇用の目標を達成する能力を維持するために必要になる可能性がある(as the security environment evolves, changes in U.S. strategy and force posture may be required to sustain the ability to achieve deterrence, assurance, and employment objectives for both Russia and [China])」と述べている。しかし、この答えに踊らされている疑問を解くのにそれほど解読は必要ない。中国がロシアの核保有国に加わった場合、アメリカは更に核兵器を必要とするのだろうか?

ロシアのウクライナ戦争と、中国がアメリカと同格の核兵器保有国の地位(nuclear peer status)に達するまでにはまだ長い距離があることを考慮すると、この議論はまだアメリカの公的領域に本格的に現れていない。しかし、誤解しないで欲しいのだが、それは現実のものであり、最初の警告射撃はすでにいくつか行われている。例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権下の高名な元高官2人は2022年9月、連邦上院軍事委員会で次のように指摘した。他の核兵器保有諸国は、先制攻撃を吸収し、侵略者に報復すると同時に、他の近隣諸国を阻止するのに十分な兵力を予備として保持するために、将来的には、新STARTで現在許可されているよりも多くの弾頭の配備が必要となる可能性がある。将来、ロシアと米国の間に残された最後の核軍備管理条約である「新START」で現在許可されているよりも多くの弾頭の配備を必要とする可能性がある。

アメリカの核兵器計画に質的な変化がない場合、そしてアメリカが、核兵器で対抗する2カ国の同時先制攻撃を吸収し、なおかつその2カ国の標的を現在と同等に攻撃できるようにしなければならないと考えている場合、この論理は成り立つ。アメリカがロシアと中国の核兵器保有量に追いつくためには、より多くの核兵器が必要になる。しかし、それは物理的にも財政的にも不可能かもしれないし、ロシアや中国の反応や世界の核不拡散規範への影響という点で、受け入れがたい政治的・戦略的結果をもたらすかもしれない。バイデン政権のNPRはこの疑問に答えられなかったかもしれないが、次のNPRはおそらく答えなければならないだろう。

(5)抑止力は削減よりも優先される(Deterrence is placed over reduction

クリントン以降の全ての大統領が、戦力と政策の変更を行う手段として、アメリカの核態勢の見直しを命じてきた。しかし、大きな変化はなかなか起きていない。バラク・オバマは、アメリカの同盟諸国がこのニューズをどう受け止めるかという懸念から、彼が望んだよりも野心的でない軍縮策を受け入れるよう説得され、アメリカ連邦上院が新STARTを批准した代償として、アメリカの核兵器インフラに彼が望んだ以上の支出を強いられた。ブッシュは、新たな抑止コンセプト[deterrence concept](いわゆる新トライアド[new triad])と新しい核兵器(強力地中貫通型核兵器[Robust Nuclear Earth Penetrator]と信頼性の高い代替弾頭[Reliable Replacement Warhead ])に関する挑発的なアイデアを持っていた。連邦議会は両方の新兵器を否決し、新抑止コンセプトは定着しなかった。

バイデンは40年以上にわたって核戦略に関する議論に熱心に参加し、一貫して軍備管理(arms control)を主張してきた。昨年(2021年)3月に発表された、バイデンの暫定戦略指針は、「わが国の安全保障における核兵器の役割を減らすための措置を講じる(take steps to reduce the role of nuclear weapons in our national security)」という指示から始まった。それは実現していない。ロシアのウクライナ侵攻以前から、核兵器の「唯一の目的(sole purpose)」は他国による核兵器の使用を抑止することであるとアメリカが言うべきだという重要な提案は失敗に終わっていた。これはバイデンが副大統領として提唱していたものであり、バイデンは国内の反対派から、「この政策は弱さを露呈している」、もしくは「核兵器の先制使用はしないと約束したに等しい、政治的な妥協に過ぎる」といった批判を受けることは避けられないと覚悟していたに違いない。しかし、アメリカの同盟諸国は、バイデン政権に対して、「唯一の目的(sole purpose)」と言えば、ロシア、中国、北朝鮮がアメリカの核兵器をあまり心配しなくなり、アメリカの「核の傘(U.S. nuclear umbrella)」の抑止効果が損なわれ、核兵器開発の意思と能力を持つ国々(the nuclear threshold)の間で、侵略を助長することになりかねないと伝えた。

トランプ政権時代に傷ついた同盟諸国との関係を揺るがしたくないと決意した政権にとって、これは殺し文句(killer argument)となった。昨年(2021年)の今頃には、「唯一の目的(sole purpose)」が事実上消滅したことは既に明らかだった。核態勢の見直し(NPR)は、「核兵器の基本的な役割は、アメリカ、同盟諸国、パートナーに対する核攻撃を抑止すること(fundamental role of nuclear weapons is to deter nuclear attack on the United States, our Allies, and partners)」というオバマ政権時代の公式見解を繰り返し、「核兵器は、核攻撃だけでなく、狭い範囲の他の高い影響力を持つ戦略レヴェルの攻撃を抑止するためにも必要だ(nuclear weapons are required to deter not only nuclear attack, but also a narrow range of other high consequence, strategic-level attacks)」と説明している。

このように宣言的な政策が後退し、通常兵器と核兵器の統合(conventional-nuclear integration)が重視され、限定的な核オプションの必要性が主張され(そして核戦争が「限定的(limited)」にとどまる可能性があるという前提を暗に容認している)、トランプ大統領の核兵器ポートフォリオにおけるいくつかの能力を除く、全てのの能力が維持されていることから、核兵器の役割を減らすことよりも抑止力を強化することに価値を置く見直しが行われている。

この見直しは、アメリカがこれから迎える核の10年がもたらすリスクについて、バイデン政権の少なくとも一部が真剣に考えていることを示している。それは、抑止戦略(deterrence strategy)を設計する際に守るであろう危機安定のための原則と、(アメリカとその反対国の両方による)誤った認識を回避するためのメカニズムを特定しており、核兵器の無許可発射に対する予防措置についてある程度詳細に踏み込んでいる。新STARTの後継を求め、中国との対話の優先事項を示している。しかし、アメリカは「軍備管理、核不拡散、リスク削減に改めて重点を置いている(placing renewed emphasis on arms control, nuclear nonproliferation, and risk reduction)」という「核態勢の見直し(NPR)」の主張は空虚に聞こえる。トランプ政権と比較すると、確かに改めて強調されているが、それはハードルが低いままである。

これは全て正当化できる。「核態勢の見直し(NPR)」はしっかりとした主張を行っている。戦争が起こり、継続中だ。戦争を始めた張本人は、ロシアの核兵器を誇示してアメリカ人やヨーロッパ人を威嚇しようとしている。ヨーロッパとアジアの同盟諸国を念頭に置くアメリカは、弱さを示すメッセージを送ることを懸念しただろう。そして、好むと好まざるとにかかわらず、世界的な傾向として、核兵器の重要性は低下するどころか高まっている。

バイデン政権は、核の世界を変えるために一方的なリスクを冒すのではなく、来るべき核の世界で、可能な限り生き残ることを決断した。この決断は、政府外にいる、軍備管理擁護を主張する人々(arms control advocates)を失望させ、おそらく政府内部にも失望している人々がいるだろう。いつの日か、将来の「核態勢の見直し(NPR)」は、核抑止力に依存することの長期的なリスクが大きすぎると大統領が判断し、アメリカの核兵器の役割を抜本的に縮小することが、政治的コストと敵対勢力が優位に立つ危険性の両方に見合うと決断する瞬間を示すかもしれない。しかし、今回の見直しはそうではない。

※マシュー・ハリス:ロンドンに本部を置くロイヤル・ユナイテッド・サーヴィシズ研究所核拡散・核政策部門部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルト教授の論稿をご紹介する。ウクライナ戦争が始まって以来、西側諸国は武器支援を強化してきた。それに対して、ロシア側では「核兵器による攻撃」も選択肢として否定しないという立場を取っている。「いくらなんでも核兵器による攻撃はない」「ロシアが核兵器を使用すればそれは自殺と同等の行為だ」というのが西側諸国の政府の立場であるが、その可能性を完全に排除できないところに弱み、隙が出てくる。「もしかしたらやるかもしれない」「その可能性がどんなに低くてもゼロではないということになれば考慮しなければならない」ということになる。核兵器による攻撃となれば、戦争の段階は何段階も上がり、被害の程度も上がり、第三次世界大戦に向かう第一歩となってしまう。

 西側諸国ではエネルギー価格の高騰を受け、インフレーションが高まっており、一般国民の生活に打撃を与えている。これはやはりウクライナ戦争が大きな影響を与えている。それならば、早期に停戦して状況を安定させて欲しいということを願う人々の声も出てくる。しかし、問題は出口がきちんと見えていないことだ。ウクライナ側としてはロシア軍のキエフ侵攻を阻止したことで意気が上がり、クリミアや東部地域を取り返すまで戦うぞという姿勢を見せている。そうなれば戦争は終わらない。戦争を終わらせるには西側諸国が支援を減らして、ウクライナに妥協を迫るということも重要だ。

 西側諸国はロシア側と本気で事を構える気はない。偽善者の『ニューヨーク・タイムズ』紙も「停戦を考えるべきだ」と訴えたが、これはロシアから核兵器がアメリカに飛んでくるかもしれないという危険性を感知したからだ。我が身可愛さで、無責任なことを言いだすというのは人間の性だから仕方がないが、それならそのように、「ロシアからの句兵器が怖いので強いことが言えなくなりましたので」と正直に書くべきだ。

 ロシアは今更領土を拡張するとか、道楽でとかそういうことで、ウクライナに侵攻したのではない。ロシアなりの合理性があり、国家存亡の脅威を取り除くために侵攻した。それは、太平洋戦争直前まで英米に圧力をかけ続けられた日本と同じだ。国家存亡の危機となれば核兵器使用もためらわないだろう。もちろんその可能性が低いが、ゼロではない。

 繰り返し繰り返し述べているように、ここは妥協点を探って停戦をするべきだ。西側諸国もウクライナの要求に従って供与する武器の程度と量を上げるのではなく、停戦に向けてウクライナを説得、時には圧力をかけるという行動を取らねば現状は好転しない。

(貼り付けはじめ)

ワシントンがロシアからの核兵器による脅威を真剣に対応すべき理由(Why Washington Should Take Russian Nuclear Threats Seriously

-歴史的に見て、国家は敗北の危機に直面するとエスカレートするものであり、プーティンはその脅しを実行に移した実績がある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年5月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/05/why-washington-should-take-russian-nuclear-threats-seriously/

今年2月、私は『ニューヨーク・タイムズ』紙のロジャー・コーエン記者に、「プーティンを含む世界の指導者たちが、今回のシナリオのいずれにおいても、核兵器の使用を真剣に考えていると確信するのは難しい。それは彼らが核兵器使用の結果について分かっているからだ」と述べた。私はまだ核攻撃の確率は低いと思っているが、数ヶ月前に比べて、核攻撃の可能性を想像しやすくなっている。

バイデン政権は、エスカレーションのリスクをある程度考慮している。その理由は、ウクライナ戦争勃発直後、バイデン大統領はアメリカ軍将兵をウクライナで戦うために派遣することはないと発言したことだ。この決定の前提は、アメリカ人が引き金を引いて積極的にロシア人を殺さない限り、エスカレーションの危険は最小化されるということだ。ジョー・バイデン大統領らは明らかにそうであることを望んでいるし、ローレンス・フリードマンのような軍事専門家たちもそう考えている。

この立場には健全な根拠がある。米ソ両軍の直接的な武力衝突を避けることは、冷戦の重要な不文律であり、それは良いことだった。もしあの時代に米ソが撃ち合いを始めていたら、偶発的あるいは不用意なエスカレーションのリスクは相当なものだっただろう。同じような理由から、アメリカ軍を戦火から遠ざけておくことは、今日においても正しい行動である。

残念ながら、この政策は望まないエスカレーションを防ぐ絶対的な障壁にはならない。歴史的に、国家がエスカレートするのは、たまたま戦場で相手が誰であったからではなく、戦争目的を達成できず、大敗北の可能性にさえ直面している可能性があるからである。

Unfortunately, this policy is not an absolute barrier to unwanted escalation. Historically, states escalate not because of who they happen to be facing on the battlefield but because they are failing to achieve their war aims and may even be facing the possibility of a major defeat.

例えば、第一次世界大戦では、西部戦線が膠着状態に陥ったため、双方が戦争を拡大させることになった。ドイツは無制限の潜水艦戦争を始め、イギリスはアラブの反乱を支援してオスマン帝国を弱体化させ、ガリポリを攻撃し、双方が毒ガスや民間人への空爆を行った。

ヴェトナム戦争では、アメリカはなかなか勝利できないことから、北ヴェトナムへの大規模な空爆作戦(ローリングサンダー作戦)、枯葉剤「エージェント・オレンジ」などの化学兵器の使用、1970年にカンボジアへの侵攻を行った。つまり、ある国が負けている時、あるいは思うように勝てない時、誰が引き金を引こうが、別の選択肢を考える可能性が高くなるということになる。

更に言えば、ウクライナにアメリカ軍が駐留していないことが、ロシアの指導者たちにとってエスカレーションをより魅力的にしているのかもしれない。ウラジミール・プーティン大統領とその側近が、ウクライナの標的に対して12発の戦術核兵器の使用を考えていた場合、攻撃でアメリカ軍将兵が死なないという事実が、さらなる阻害要因を取り除くことになるかもしれない。

はっきり言って、クレムリンの中で誰かがそのようなことを真剣に考えているかどうかは分からないし、この指摘は、抑止力の盾(deterrent shield)としてアメリカ軍をウクライナに派遣することを主張するものではない。私が言いたいのは、アメリカ軍将兵を戦場から遠ざけても、エスカレートする動機が全てなくなる訳ではないし、モスクワの計算の中で他の動機が大きくなり始めたら、核使用の危険性が低く見えるようになるかもしれない、ということだ。

また、プーティンは警告を発し、それを実行に移すという実績があるだけに心配だ。2008年、ロシアはウクライナとグルジアのNATO加盟に断固反対し、両国の加盟を阻止するためにできることは何でもすると明言した。その後まもなくグルジアで戦争が勃発し、凍結された紛争はグルジアのNATO加盟をそれ以来ずっと見送らせてきた。2014年、モスクワは、アメリカが受け入れたウクライナのヤヌコビッチ大統領の失脚を、同様に深刻な脅威と見なすことを明らかにした。クリミア半島を占領し、ドンバス地方の分離主義勢力の蜂起を支援することで、これに応えた。

そして2021年、欧米のウクライナ武装化への取り組みへの懸念と、ワシントンとキエフの安全保障協力の進展により、プーティンは国境に大規模な軍隊を配置し、自国の懸念に対応しないのならば軍事行動を起こすと威嚇した。アメリカとNATOは、最終的にウクライナを加盟させるという約束を再検討することを拒否したが、それで何が起こったかは周知の通りだ。ロシアの警告をはったり(bluff)と見なすのではなく、ワシントンは真剣に受け止めるべきかもしれない。

ロシアのウクライナ侵攻は違法、非道徳的であり、正当化できないが、プーティンが気まぐれに開始したものではない。軍事作戦が彼の期待通りにいかなかったからといって、彼がつまらない理由や軽率な理由でそれを行ったとは言えない。その逆なのだ。プーティンの多くの演説が明らかにしているように、彼とその仲間は、ウクライナが事実上、アメリカやNATOと協調するようになったことを、ロシアにおけるカラー革命の脅威も含めて、存亡の危機と考え、このプロセスを止める時間がなくなってきたとほぼ確信していたのだ。

キエフ占領の失敗により、ロシアの戦争目的は東方へシフトした(そしておそらくモスクワ全体の野心も低下した)が、ウクライナの将来の地政学的配置が主要な開戦事由(casus belli)なのであり、モスクワの観点からすれば、その問題は消えていない。

一方、戦場でのウクライナの成功は、キエフとワシントンに自らの戦争目的を拡大させることにつながった。ロイド・オースティン米国防長官は「ロシアの弱体化を見たい」と発言し、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は「勝利が得られるまで米国はウクライナを支援する」と述べた。イギリスのリズ・トラス外相は更に踏み込んで、NATOは「倍返し(double down)が必要であり、ロシアをウクライナ全域から追い出すために、私たちは更に急速に進み続ける」と明言した。

バイデン政権はウクライナに最新兵器を注ぎ込み続け、情報提供のパイプを「開放」し、ウクライナはそれを使ってロシアの将官たちを狙うなどしている。当然のことながら、ウクライナの目的も、2014年以降に失った領土の奪還への希望にまで高まっているように見える。

このような戦争目的は、多くの人々が、プーティンがウクライナに与えた苦痛を罰したいと思うので、感情からすれば魅力的だ。残念ながら、ロシアに決定的な敗北を与えようとするならば、合理的な指導者なら小型核兵器による示威攻撃など、他の選択肢を考えるような状況を作り出すことになる。このような行動の目的は、理論家の故トーマス・シェリングが「リスク・テイクの競争」と呼んだものだ。一方の側が明らかに危険な行動を取ることで、目の前の問題にどれだけ関心があるかを示し、相手を説得して手を引かせるというものだ。

もしプーティンが、自分が完敗し、軍事的に崩壊し、あるいは権力の座を追われると考えるとするならば、なぜ賭けに出ることを考えないということになるだろうか? 確かにギャンブルではあるが、彼は以前にもギャンブルを行った。そして、彼はおそらく、敵対する諸国連合が自分にそのような結果をもたらすことを心配するよりも、そのような結果を避けることをより心配しているのだろう。しかし、核兵器を持っていない敵対国に対する示威攻撃は、深刻なリスクがないとは言えないが、別の問題である。

確かに、ロシアによって核兵器が1発でも使用されれば、ロシアにとって侵略と同じように有害となる。核のタブーを破れば、ロシアは何年にもわたり孤立した存在であり続けることになる(いずれそうなるのかもしれない)。また、ウクライナへの更なる支援を呼び起こし、中国にロシアと距離を置くよう説得することもできるだろう。しかし、西側諸国の政府を怯えさせ、紛争を速やかに終結させることも可能だろう。いずれにせよ、これは非常に危険な前例となり、たとえ非常に限定的な使用であっても、このままで良いとは誰も言い切れない。

したがって、ワシントンには、この憂慮すべきシナリオを回避すべき理由がある。いくらロシアの決定的な敗北を望んでいても、核武装した敵国を安全に追い込むには限界がある。安全保障の専門家であるサム・ロジェヴェンが今年3月の論稿で明らかにしたように、「ロシアが経済的、軍事的崩壊に向かって突き進んでいるならば、西側の指導者たちは圧力をいかに弱めるかを考えるべき」なのだ。なぜなら、戦争は事実上ロシアにとって大惨事であり、西側諸国が今何をしようとも、ロシアの衰退を早めるからである。

ウクライナ戦争は悲劇であり、とりわけウクライナ国民にとって悲劇である。もしロシアがエスカレーションのはしごを上がり、衰退に向かう運命を救おうとするならば、更に悲劇的なことになる。私はこの可能性はまだ低いと考えており、プーティンが勝利を宣言して非エスカレーションを試みる可能性が高いと考える人々の主張が正しいことを望む。しかし、西側諸国の指導者たちが核兵器使用の可能性をもっと真剣に受け止め、戦争の目的についての緩い話をやめ、明確ではないが決定的と思われる勝利を得ることよりも、戦争を終わらせることにもっと注意を向けてくれるならば、私はより安心できるだろう。

以前にも述べたように、この戦争を終わらせるには、当事者全てが当初の望みよりも低い線で妥協することが必要であり、それはアメリカも同様だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 古村治彦です。

 少し前にアメリカのドナルド・トランプ大統領が世界初の核実験75周年で、ロシアと中国に軍縮を呼びかけたというニュースを見た。「アメリカが偉大である」ためには「核兵器の優位」が必要だとでも言うのかと思ったが、核兵器に関しては軍拡競争はしたくないという姿勢を見せた。

 太平洋戦争の最終盤で日本の広島と長崎にそれぞれ原子爆弾が投下されてから、実際の戦争で核兵器が使用されたことはない。アメリカ一国のみが核兵器を保有しているという状態は長くは続かず、1949年にソ連が核実験に成功し、核保有国となった。1964年には中国も核実験を成功させた。世界の核保有国は10か国程度である。第二次世界大戦後の冷戦時代、核兵器の使用はなかったが、キューバ危機では核戦争の危機が高まった。

 核不拡散条約(Non-Proliferation Treaty)は、1968年に締結された。この条約はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国以外の国々の核兵器保有を禁止するというもので、国連常任理事国以外には核兵器を持たせないぞ、というものだ。戦後国際体制を作った戦勝国が世界を支配し、それら以外は従えというものだ。インド、パキスタン、イスラエルはこの条約には加盟していない。また、北朝鮮は1993年に条約から脱退した。そのために、五大国の思惑とは異なり、核兵器は拡散している。

アメリカとロシアはそれぞれ6450発、6490発の核弾頭を保有し、1600発を実戦配備している。イギリス、フランス、中国はそれぞれ200発から300発の核弾頭を保有している。NPTに批准していないインド、パキスタンは100発以上の核弾頭を保有していない。また北朝鮮も100発以内の核弾頭を保有している。イスラエルは正式な核兵器保有を認めていないが、保有が確実視されている。イランは核開発の疑いを持たれている。

 アメリカもロシアも世界を何度も全滅させることができるほどの核弾頭を保有しているが、核兵器軍縮について、「囚人のジレンマ(prisoner’s dilemma)」という考えから見ていこう。

ジレンマとは「板挟み状態」のことだ。2人の犯罪者ABが捕まり、別の場所で取り調べを受ける。ABが両者ともに完全に黙秘をすれば、2人とも懲役2年となる。どちらか一方が自白をすれば、自白をした人間は懲役がなく、もう一方は10年の懲役となる。どちらともに自白をすれば2人とも懲役5年となる。この条件はそれぞれに伝えられているが、ABとも相手が自白をしたかどうかは分からない。

 この場合、Aの置かれている立場を考えてみる。Bが黙秘する場合、Aが黙秘したら懲役2年、Aが自白をしたら懲役0年」となる。これだとAは自白したほうが得となる。Bが自白する場合、「Aも自白をしたら懲役5年、Aが黙秘をしたら懲役10年」となる。この場合もAは自白したほうが懲役が短くなるので得となる。従って、Aは自白をするという選択肢になる。Bにとっても同じことになる。お互いを信じて黙っていたら2年で済むものが結局お互いに自白をして5年の懲役となるが、これが「合理的な」選択となる。懲役なしという最善の結果を得ることはできなくても、自分だけ10年の懲役を喰らうという最悪の事態を避けることができるからだ。ここで黙秘を「協調」、自白を「裏切り」と規定すると、裏切ることがABお互いにとって一番合理的な選択ということになる。

 囚人のジレンマで考えて見ると、一番良い結果は、お互いが協調することだ。しかし、それを阻むのはABが別の場所で取り調べを受けていて、全く連絡が取れないことだ。そのために結局裏切った方が得ということになり、お互いが最善の結果を得ることができないということになる。それならば、お互いが連絡を取り合えれば、「黙秘をした方が得」という合意ができることになる。これを応用すると、核保有諸国は、お互いに他国の意思が分からなければ軍拡競争を続けざるを得ない。使いもしない、使えもしない核弾道を数千発も保有して大きな負担だと嘆いてしまうという不合理な結果になってしまう。しかし、軍縮のためには「協調」が必要ということになる。そのためには「交渉」の枠組みが必要だ。

 アメリカとロシアは6000発以上の核弾頭を保有しているが、冷戦期の馬鹿げた軍拡競争の果ての負の遺産ということになるだろう。管理にかかる予算だけでも膨大なものとなり、かなり負担になるはずだ。米露は年間数十発ずつ減らすことを続けているが、今のペースでは数百年かかるだろう。それなら中国が求めているように、数百発にまで減らしてから何か言ってこい、ということになる。まずは米露で数百発単位の削減を数年間続けて見せてから、本気なのだということを示してから何か言えよ、ということだ。そうでなければ対等に話し合いなどできないということだ。

 新しい冷戦を迎えるためにはまずは古い冷戦の負の遺産を清算してからということだと思う。

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核実験75 “ロシアと中国は核軍縮協力を” トランプ大統領

2020717 1022

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012519961000.html

アメリカが人類史上初の核実験を行ってから75年となったのにあわせ、トランプ大統領は声明を発表し、核戦力の強化を進めて抑止力を高めると強調する一方、ロシアと中国に対して核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

アメリカは75年前の1945716日に西部ニューメキシコ州で人類史上初めてとなる原爆の実験を行いました。

トランプ大統領は16日、声明を出し「実験は第2次世界大戦の終結につながり、世界に前例のない安定をもたらしたすばらしい偉業だ」と称賛しました。そのうえで「強固で多様な核の能力があれば核の拡散を防ぎ、敵を抑止できる」として、核戦力の強化を進め、抑止力を高める方針を強調しました。

その一方で、トランプ大統領はロシアが爆発を伴う核実験を行い中国も実験を行ったおそれがあると指摘し「ロシアと中国には世界を安全にし、軍拡競争を防ぐため、改めて協力を求める」として、核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

トランプ政権は、核弾頭の数などを制限したロシアとの核軍縮条約「新START」の有効期限が来年2月に迫る中、条約への参加を拒否している中国に参加を求めるねらいがあるものとみられます。

一方、声明については国務省で軍縮を担当した元高官がツイッターに「このようなつらい日にアメリカが軍拡競争で勝っていると強調するのはこの政権だけだ」と投稿するなど、批判も出ています。

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中国は米露との核兵器削減交渉への参加を拒否(China turns down nuclear arms control talks with US and Russia

マーティー・ジョンソン筆

2020年7月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/506792-china-turns-down-nuclear-arms-control-talks-with-us-and-russia

中国はこの問題についての自分たちの姿勢は「明確だ」と繰り返し、中国は米露との核兵器をめぐる交渉に参加しないという姿勢を改めて強調した。

中国外務省のツァオ・リージアン報道官は金曜日、アメリカからのロシアとの交渉に中国も参加してはどうかという提案について「真剣なものでもないし、誠実なものでもない」と述べた。

AP通信によると、ツァオ報道官は記者団に対して次のように述べた。「いわゆる三カ国による兵器削減交渉に対する中国の反対は明確なものです。アメリカ側もそのことをしっかりと認識しています。しかしながら、アメリカは中国の交渉への参加にこだわり、中国の地位を落とそうとしています」。

米露は冷戦期には敵同士で、現在でも世界の中で最大の核兵器を保有する大国同士でもある。両国は先月末ウィーンに集まり、「新スタート(New Start)条約」の延長について動き始めた。新スタート条約は2010年に合意され、来年2月に期限を迎える。

新しいスタート条約にはいくつかの条項が含まれている。その中には、配備済み核弾頭の数を少なくとも1550発までに制限するという条項、そして核弾頭を装備できる武器の配備を規制するという条項がある。条約ではまた、年間18か所の核兵器関連基地の査察を実施するプログラムも創設されている。

トランプ政権は米露に続き世界第3位の核弾頭保有国である中国に対して条約への参加を強く求めているが、中国政府は条約参加への反対を強硬に示している。

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中国がアメリカへ保有核兵器の削減を求める(China urges US to reduce nuclear arsenal

ジョン・バウデン筆

2020年7月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/china/506353-china-urges-us-to-reduce-nuclear-arsenal

水曜日、中国の複数の政府高官は、アメリカが進んで中国のレヴェルにまで保有核兵器を削減するならば、米露との三カ国による核兵器に関する交渉に喜んで参加するだろうがそれは実際には無理な話だと述べた。

新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction TreatySTART)に関する、新たな核兵器に関する交渉を先月から開始した。先月、トランプ政権の軍縮担当の責任者は次のようにツィートした。「中国もまた会議に招待された。中国の代表団は姿を現し、誠意を持って交渉に参加するだろうか?」

ロイター通信は次のように報じている。中国外務省の報道官は、トランプ政権とロシアとの核兵器をめぐる交渉に参加するようにアメリカから招待を受けた件について、アメリカがロシアとの新たな核兵器をめぐる交渉から離脱するという目的のために「関心を別に向けるための謀略以外のものではない」と述べた。

ロイター通信によると、中国外務省の兵器削減部門の責任者であるフー・ツォンは次のように述べた。「私は皆さんに明言しますが、アメリカが中国の核兵器保有レヴェルまで下がってくる用意があると言うならば、中国は明日にでも喜んで話し合いに応じます。しかし、現実には、そんなことは起きないことを私たちは分かっています」。

ツォンは「アメリカの真の目的は、全ての制限を撤廃して、現実のもしくは仮想の敵に対して軍事上の優位を追求するためのフリーハンドを持つことです」とも述べた。

新しいスタート条約はオバマ政権下で交渉されたもので、米露両国で配備できる核弾頭の数を1550に制限するというものだ。条約の有効期限は来年の2月だ。

スタート条約に関する中国側からのコメントがなされたのは、トランプ政権が世界保健機関(WHO)によってアメリカが正式に脱退した次の日のことだった。トランプ大統領は、世界保健機関が中国寄りだと繰り返し非難してきた。そして、コロナウイルス感染拡大への対処が遅すぎたと攻撃している。

世界保健機関と中国を批判する人々は、国際的なコロナウイルス感染拡大への対応が妨害されたのは、感染拡大の初期段階で中国の透明性の欠如が原因だと主張している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。 

 今回、ドナルド・トランプ米大統領の外交交渉は全くうまくいっていない、成功していないということを取り上げている記事をご紹介したい。

 対中国、対イラン、対北朝鮮など、アメリカは国際的な諸問題に直面している。アメリカは、中国とは貿易戦争、イランと北朝鮮に対しては核開発、核兵器廃棄といった問題を抱えている。どれもこれもうまくいっていない。トランプ大統領が脅しをかけてみたり、すかしてみたり、良いことを言ってみたりと様々なことをやっているが、うまくいっていない。暗礁に乗り上げているという状況だ。

 トランプ大統領にとっては日本だけが唯一彼のいうことをほぼ受け入れてくれる国だ。防衛関連品を買えと言えば「はい、喜んで」と言い、トウモロコシがだぶついているので何とかしろと言えば、「是非買わせていただきます」となる。日本との場合は交渉ではなく、厳命、それですらなくて、指示、というくらいのことだ。

 ところが世界各国はそうはいかない。そして、それは、「トランプ大統領にはそもそも交渉術などないからだ」ということになる。トランプ大統領は不動産業で財を成し、自分の苗字「トランプ」をつけた高層ビルやホテル、リゾート施設をアメリカ国内外各地に持っている。自身が一代で今のトランプ・コーポレイションをここまでのグループにし、資産を築き上げた大富豪だ。それはトランプ大統領の実力、特に交渉力のおかげだと考えられている。しかし、長年トランプ大統領と一緒に仕事をしていた人物はそうではないと主張している。

 トランプ大統領の交渉術は「こん棒で叩きまくる」ようなもので、一対一で脅しをかけまくるものだということだ。交渉事というのは相手にも利益が出るように落としどころを探るものだ。「ウィン・ウィン」関係を成立させるものだ。しかし、トランプ大統領の考えは「自分だけが勝つ、得をする」ということで、それはなぜかと問われた時に、「世界には無数の人間がいて、取引するのは1回限りだから」と答えたという。また、脅しだけでなく、お世辞を駆使することもあるということだ。

 トランプは大統領になってもこのビジネスにいそしんでいた時代の交渉術を使っている。脅しで入り、相手が強硬だとお世辞を駆使する、という1つのパターンになっている。パターンになっていると、相手はどう対処すればよいか分かる。だから、放っておかれるということになり、交渉が暗礁に乗り上げるということになる。

 トランプ大統領が当選して3年、最初は突拍子もないことをやるということで、戦々恐々としていたが、だんだんパターンが見切られてしまい、放置されてしまうということになっている。ただ、日本だけは真剣に付き合って、言うことを聞いている。

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トランプはどうして交渉を成立させることに失敗するのか(Why Trump Fails at Making Deals

―トランプ大統領は中国、イラン、北朝鮮、インド、最近ではデンマークといった国々との間での交渉に失敗している。彼を長く知っている人々は「現在のアメリカ大統領は実際には交渉能力の低いのだ」と述べているが、数々の失敗はそれを証明している。

マイケル・ハーシュ筆

2019年8月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/08/21/why-trump-cant-make-deals-international-negotiations/

これは彼のアピールの中核である。2015年に突然大統領選挙に出馬して以来、不動産王はアメリカの有権者たちの支持を勝ち取ろうとしてきた。有権者の多くがトランプ個人を嫌いでも支持せざるを得ないようにしてきた。トランプはこれまでずっと自分は交渉の達人であり、アメリカ国民のために多くの新しい合意を勝ち取ることが出来ると主張してきた。 

しかし、大統領選挙当選3周年が近づく中、トランプ大統領は国際的な交渉においてほとんど成果を挙げていないという証拠が山積みになっている。2018年にNAFTAの再編に合意して以来、中国、イラン、北朝鮮、その他の国々との最高レヴェルの交渉を再スタートさせるための彼の努力は全て暗礁に乗り上げている。今週、トランプ大統領は交渉が下手であることを再び見せつけてしまった。トランプ大統領はアメリカの親密な同盟国デンマーク訪問を中止した。デンマーク首相はトランプ大統領の盟友で、彼と同じく反移民の姿勢を取っている。しかし、トランプがグリーンランドの購入を提案し、デンマーク政府はグリーンランド売却を考慮することを拒絶したために、訪問が取りやめになった。技術的にはデンマークはグリーンランドをアメリカに売却することはできない。それはグリーンランドには自治政府があり、首相が選ばれているからだ。

トランプを長年見てきた多くの人々にとって、トランプが大統領になって外交交渉にことごとく失敗していることは、実業界での華々しいキャリアを実態以上に過剰に売り込んだことの結果でしかないということになる。トランプ・オーガナイゼーションで建築家として働いたアラン・ラピダスは「ドナルドの交渉能力は虚構でしかない」と述べた。ラピダスは十代の頃からトランプと知り合い、トランプが不動産業を家族でやっている頃から一緒に働いた人物だ。

ラピダスは本誌の取材に対して、「ドナルドの交渉術は絶叫と脅迫で構成されている。ドナルドには緻密さもないし、ユーモアのセンスもない。こん棒で殴りつける、殴りつける、殴りつける、これだけだ」と述べた。

ラピダスはトランプと彼の事業が交渉に成功したが、それはハーヴェイ・フリーマンやスーザン・ハイルブロンのような幹部社員の交渉能力や技術のおかげだと述べた。2人はトランプ・オーガナイゼーションのアトランティック・シティでの事業やリース事業のほとんどを管掌した。 ラピダスは「彼らは詳細な分析と資料の読み込みを全て行った。トランプがもしこの仕事をやらねばならなかったとしても、まずやらなかっただろう」と述べた。

トランプの仕事仲間や取引先だった人々は、トランプが交渉の席で銀行をやっつけていたと自慢しているのは話を盛り過ぎていると指摘している。その当時のトランプの会計責任者だったスティーヴン・ボレンバックの交渉術によって、トランプは1990年に9億ドルの負債を抱えて個人破産寸前まで追い込まれたが、うまく逃れることが出来たのだ、と彼らは述べている。

トランプの自伝作家で多くの機会でトランプにインタヴューをしてきたマイケル・ダントニオは、ラピダスの発言に同意している。ダントニオも大統領としての交渉術は彼が実業家であった時のものと何も変わらないと認めている。ダントニオは次のように述べている。「彼のスタイルは敵意むき出しで、交渉相手から可能な全ての妥協を引き出すためにいじめ同様の方法を採用する。そして自分の利益を最大化する。トランプが私に語ったところでは、相手と“ウィン・ウィン”ではなく、“私だけが勝つ”取引をすることにしか興味がないということだった。将来またビジネスをするかもしれないので相手に好意を見せるために、相手に何かしらの利益を与えたことはあったかと私が彼に質問したところ、答えは“ノー”だった。そして、世界にはこれだけたくさんの人間がいるのだから、取引は一度きりだ、と語った」。

会社相手ではなく国家相手の交渉をする際には状況は異なる。世界には一定数の国家が存在するだけだ。アメリカ大統領は諸大国と何度も何度も交渉し合意に達するという行為を繰り返すことになる。それは様々な分野で行われるものだが、あくまで友好的になされる。更に言えば、国家は企業のように競争をして負けたからといって退場することはできない。破産を申請することも簡単に解散することもできない。貿易関係においては、「私だけが勝つ」というゼロサムの結果は存在しない。

結局のところ、国の誇りというものが重要になる。交渉を成功させるには、相手方の顔を立てることも必要だ。世界各国の指導者たちは、ビジネス上の取引でやられてしまった人々のように、降伏することもこそこそ逃げ出すこともできない。トランプ大統領はこのような妥協を望まない姿勢を明確にしている。2018年のアメリカ・カナダ・メキシコの協定に関する話し合いで、大統領は義理の息子ジャレッド・クシュナーからの強い働きかけを受けて、カナダとメキシコにしぶしぶではあるが2、3の譲歩をしたと報じられた。の当時、アメリカ通商代表ロバート・ライトハイザーは「ジャレッドの働きかけがなければ、この協定は成立しなかっただろう」と記者団に語っている。

ダントニオは次のように語っている。「トランプ大統領は外交を行うこと、そして主権国家と交渉することの準備がそもそもできていないのだ。二国間もしくは多国間での利益を生み出すためのギヴ・アンド・テイクのやり方を彼は知らない。彼は自己中心的過ぎるために、自分とは異なる考えを持つ人々を敵と認識する。大統領は自分のいじめが通じない相手がいれば自分が攻撃されたと思い、彼の提案に対して自分の考えを述べるような人物には激怒するのだ」。

従って、トランプ大統領は、こん棒で叩きまくるアプローチでは交渉相手によっては交渉が行き詰まり、交渉開始当初よりも交渉が進んでいる段階での方が、合意形成がより難しくなるというパターンが出来上がっていることに気付いている。トランプ大統領は中国と対峙するための12か国からなる環太平洋パートナーシップ協定から離脱した後で、トランプ大統領は彼の方か一方的に中国との貿易戦争を始めた。しかし、結果は、彼の習近平中国国家主席が企業向け補助金と知的財産権侵害の主要な問題に対して何の対策も取らないということであった。市場からは2年間の停滞は国際経済に脅威を与えるという警告が出ていた。トランプ大統領はオバマ政権下で結ばれたイランとの核開発をめぐる合意を「これまでで最悪の合意」と非難した。そして、イランに対する経済制裁を再開した。その中には、イラン外相モハマド・ジャヴァド・ザリフ個人に対する制裁も含まれていた。イランをめぐる情勢は先行きが見えない。トランプ大統領は北朝鮮の最高指導者金正恩と親しくなろうとし、アフガニスタンにおけるアメリカの状況を改善するためにカシミール地方をめぐるインドとパキスタンとの間を仲介しようと無様な提案を行った。これらもまた何も進んでいない。一つの局面では、トランプ大統領はもうすぐある程度の成功を収めることが出来るだろう。それはタリバンとの交渉だ。トランプ大統領は交渉に関しては特使であるザルメイ・ハリルザルドに任せきりだ。専門家の中には、トランプ大統領が公約しているアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退は、タリバンに勝利をもたらすだけだと恐怖感を持っている人たちがいる。

トランプ大統領自身は何の心配もしていないふりを続け、ほとんどの問題に関しては解決を「急いでいない」と繰り返し述べている。それでも今週水曜日に記者団に対して中国に対して「私たちは勝利を収めつつある」と述べ、「私は選ばれた人間なのだ」という見当違いのアピールを行った。しかし、彼は2020年に迫った大統領選挙までの時間を浪費することになるだろう。

トランプ大統領は世界各国との交渉にことごとく失敗しているが、国内でも失敗を続けている。トランプ大統領の主要な公約である社会資本(インフラストラクチャー)、移民、医療制度について実質的な話し合いはこれまでなされていない。トランプ大統領は刑法改革法を成立させたが、これは民主党が訴えていた政策であり、こちらも義理の息子クシュナーの交渉術のおかげである。思い返してみれば、今年の1月、トランプ大統領は公約した国境の壁に関して、民主党に完全に屈服した。大統領自身が始めた政府機関の閉鎖が35日間に及んだ。大統領は最終的には連邦政府職員の給料を支払うための一時的な手段を採ることに合意したが、国境の壁への予算はつかなかった。

トランプの交渉スタイルは予測しやすいもので、ある一つのパターンが存在する。別のトランプ伝記作家グゥエンダ・ブレアはこれを「こん棒で殴りつけることと愛情を大袈裟に表現すること(love-bombing)」と呼んでいる。中国とイランに対しては次のようなパターンになる。中国の習近平国家主席とイランのハッサン・ロウハニ大統領に対しては降伏以外にはないというようなことを言っていた。これは両者にとっては不可能ではないにしても政治的に難しいことになる。トランプ大統領は同時にお世辞を言うことも忘れなかった。今週、トランプ大統領はツイッター上で「習近平は中国国民からの大いなる尊敬を集めている偉大な指導者だ」と書き、ロウハニ大統領に関しては別の観点から、「ロウハニ大統領はとても愛すべき人物だと思う」と書いている。

金正恩委員長との関係ではトランプ大統領は最初のうち脅しを繰り返した。ある時点では、当時のレックス・ティラーソン国務長官を北朝鮮との交渉をしようとして「時間を無駄にしている」と非難した。しかし同時にお世辞を繰り返すことも忘れなかった。そして、首脳会談や私的なメッセージの交換を行った。トランプ大統領は金委員長に「核兵器を放棄すれば北朝鮮はとても豊かな国になる」と請け合った。

しかし、トランプ大統領の広報外交(パブリック・ディプロマシー)も大臣レヴェルの交渉者たちの交渉も素晴らしい成果を上げることはできなかった。しかし、金委員長は別だ。一連の外交を通じて、金委員長はこれまでにない程の国際的な関心と認知を受け、彼自身の政権の正統性も認められた。

ブレアは次のように語っている。「中国やデンマークに対してのトランプ大統領のアプローチは古くからのドナルドのやり方だ。彼は自分ともう1人だけが部屋にいる形にしようとする。だから多国間の条件や会議を彼は嫌うのだ。彼は部屋の中に1人だけ入れて、その人に集中して脅しをかけたいのだ」。

ブレアは、グリーンランドをめぐる買い取り要請もトランプのキャリアでのやり方をそのまま使っているものだと述べている。「今起きていることは、ブランド確立ということなのだ。まず、トランプ・コーポレイションのブランド確立があった。それからカジノ、リアリティTV番組、と続き、今は大統領としてのブランド確立が行われているのだ。大統領としてのブランドを確立するためには、世界最大の島を買い取ること以上により良い方法はないではないか?」

ラピダスのトランプ家との家族ぐるみの付き合いはトランプ大統領の父フレッド・トランプにまで遡る。ラピダスはフレッドとも建築士として一緒に仕事をした。トランプ大統領のアプローチは自分の仕事仲間や取引先にとってはおなじみのもので驚きはないとしている。ラピダスは次のように述べている。「トランプ大統領のやり方は彼がビジネスをやっていた時と全く同じだ。彼がやっていることはその継続に過ぎない。とどまることを知らない嘘が続けられる。当時の私はそれを見ながら、なんだかかわいげを感じていた」。

ラピダスは、「トランプの交渉スタイルは、当時も今も、その場しのぎで何の明確な戦略などないのだ。私は、彼が頻繁に更新するツイッターを見てますますその思いを強めている」と述べている。ラピダスは、1980年代のアトランティック・シティでのカジノの件をめぐる裁判での審理のことをよく覚えている。トランプは出廷し宣誓をしたのち、カジノを建設した理由について嘘の証言をした。ラピダスは、何とか嘘を止めねばならないと感じたと述べている。

ラピダスは次のように語った。「その後で私はトランプに、何をやっているんだ、どうしてあんなことを言ったんだと食って掛かった。彼は“アラン、私はね、自分の言葉が口から出るまで私は何を言っているのか自分でも分からないんだよ”と言った。これがドナルド・トランプという人物なのだ」。

(貼り付け終わり)

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決定版 属国 日本論

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