古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:核開発

 古村治彦です。

  2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 2025年6月22日に、ドナルド・トランプ米大統領は、アメリカ軍の戦闘機をイラン上空に派遣し、複数の核開発関連施設を空爆した。バラク・オバマ政権で、アメリカとイランは核開発をめぐり、イランの核兵器開発を制限する代わりに、経済制裁を解除するという内容の「イラン核合意」が結ばれた。イランの核兵器開発・保持は中東地域のパワーバランスを崩す重大な事案となるため、オバマ政権はイランの核兵器保持を阻止するという動きに出た。しかし、続く第一次ドナルド・トランプ政権では合意は破棄された。イランは、核開発を続行するという決定を下した。ジョー・バイデン政権下では、イランとの関係は好転しなかった。そして、第二次ドナルド・トランプ政権が発足し、イランに対して、実力行使に出た。これは、イスラエル支援の一環であることは当然であるが、中国の仲介によってサウジアラビアとの関係改善を進めたイランを攻撃することで、中国をけん制するということでもある。
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 トランプが決定を下したイラン空爆はどれほどの効果があったのかということについては、アメリカとイスラエルは当然のことながら、「効果があった」「素晴らしい、歴史的な瞬間」と称賛した。イスラエルは、イラン政府の中枢に諜報網を持っており(ハマス幹部の爆殺などで証明されている)、空爆の効果について、情報を持っていると考えられる。もちろん、どれほどの効果があったかということについて、イスラエル側が発表することはない。かなりの効果があったということは認められる。しかし、完全に消滅したということまでは述べていない。これはつまり、核開発能力は残っており、プログラムを再開することが可能だということになる。中国は、核兵器を保有するインドとパキスタンと国境を接している。これら両国をけん制する意味で、イランの核開発を支援する可能性がある。

 イランは、トランプのイラン爆撃の効果が不透明であることを利用することもできる。致命的なダメージを受けていたとしても、それを隠して、「効果は軽微」という態度を保持しながら、国際的な交渉に臨むことも可能だ。「あれは、アメリカのイスラエルに対する義理立ての、パフォーマンスが先に立つ空爆だった」ということをアピールして、中東地域におけるアメリカとイスラエルの影響力を削ぐことも可能だ。イランが核開発能力をそこまで喪失していないとなれば、核開発プログラムは継続される。アメリカの空爆が「演劇的」であったということになれば、アメリカの国際的な立場は弱体化していくことになる。そうなれば、イスラエルもまた中東地域において、生き残りのために、戦略の転換を迫られることになるだろう。過激な極右勢力は「死なばもろとも」ということを考えるだろうが、ユダヤ人全体がそこまで愚かであるとは思えない。

(貼り付けはじめ)

アメリカの攻撃が施設破壊に失敗したためイランは核開発に進む(Iran Is on Course for a Bomb After U.S. Strikes Fail to Destroy Facilities

-衛星画像は、イランの能力が壊滅したのではなく、弱体化していることを裏付けている。

ジェフリー・ルイス筆

2025年6月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/27/iran-us-israel-strikes-dia-bomb-facilities/

ここ数日、私は疑り深い記者たちにこう伝えてきた。イスラエルによるイランへの爆撃作戦は、たとえアメリカの支援があったとしても、効果は微々たるもので、イランの核開発計画はせいぜい数カ月、運が良ければ1年遅れる程度だろうと私は。

現在、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ロイター、そして、トランプ政権支援を続けているフォックス・ニューズまでもが、アメリカ国防情報局(the United States’ Defense Intelligence AgencyDIA)が作成した5ページに及ぶ攻撃に関する機密評価報告書の結論を報じている。どうやら私は、この爆撃作戦の効果を過大評価していたようだ。報告書によると、今回の攻撃によってイランの核開発計画は、短くても1、2カ月、長くても1年未満遅れたという。(破壊された施設の再建にはイランが「何年も」かかるというCIAの見積もりは的外れだ。イランが何年もかけるなどとは誰も考えない。)

DIAの評価は、衛星画像と信号諜報の両方に基づいている。私のようなオープンソース情報を扱う人間は、イランの通話を盗聴することはできないが、衛星画像を見ることはできる。そして、私は情報当局と同じものを見ることができる。

イスラエルがイランへの爆撃作戦を開始した際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、わざわざ放射能物質について強調し、「イランは原子爆弾9個分、いや、9個分に相当する高濃縮ウランを生産している」と述べた。この物質こそが、この悲劇におけるマクガフィン(MacGuffin、訳者註:映画や小説などの物語で、登場人物たちの行動を促し物語を動かすための「きっかけ」となるアイテムや情報、目標のこと)となる。イランはこの物質を兵器級にまで濃縮する必要があるが、フォードウ燃料濃縮工場で約3週間という短期間で実現できたはずだ。

核物質は今どこにあるのか?アメリカの情報機関の評価によると、イランは紛争初期に核物質を移動させ、おそらく秘密の場所へ移動させたという。ちなみに、これはイラン側が国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)のラファエル・グロッシ事務局長に伝えた事実と全く同じだ。物質の行方が分からなかったことに恥辱を感じたアメリカ政府当局者たちは、数々の馬鹿げた説明を試みた。JD・ヴァンス副大統領は、埋められたと主張した。マルコ・ルビオ国務長官は、イラン国内をトラックで移動すれば、イスラエルの攻撃対象になると主張した。しかし、施設に到着するトラックを捉えた衛星画像や、その後もさらに多くのトラックが入り口を土で覆う画像が多数あるにもかかわらずだ。アメリカ国防情報局 (Defense Intelligence AgencyDIA)は、その物質が逃走中(on the lam)だと考えていることが、今や明らかになった。

イランが核開発に突き進むならば、核物質をさらに濃縮し、最終的には現在のガス状態から、爆弾に組み立てられる金属の半球へと変換する必要がある。これらの工程は転換と鋳造と呼ばれる。ヴァンスをはじめとするアメリカ政府高官たちは、イスラエルとアメリカがイランのウラン濃縮能力と金属ウラン製造能力を完全に排除したと主張することで、行方不明の核物質の危険性を軽視しようとしてきた。

最新のアメリカ国防情報局の評価以前からこれは誤りであり、イランはウラン濃縮プログラムを再開する相当な能力を保持していることは明らかだった。

爆撃作戦開始直前の6月12日、IAEA理事会は物議を醸す会合を開き、そこからいくつかの重要な情報が明らかになった。この会合は、爆撃作戦後の慌ただしい出来事の中でほとんど忘れ去られている。現在では、爆撃作戦は長らく計画されていたが、ドナルド・トランプ米大統領がイランに与えたと主張した60日間の猶予期間が満了するまで保留されていたことが分かっている。

グロッシは会合で、IAEAが「遠心分離機、ローター、ベローズの生産と現在の在庫に関する知識の連続性を失った。・・・回復は不可能だろう」と示唆した。これは実質的に、IAEAが、イランが備蓄している遠心分離機の数や保管場所を把握できなくなったことを意味する。イランは保管中の遠心分離機を、破壊された遠心分離機の交換や新たな遠心分離施設の建設に利用できる可能性がある。

イランは既に保有している遠心分離機に加え、さらに遠心分離機を製造することも可能である。近年、イランはナタンズ近郊、絵のように美しい「つるはし山 [Pickaxe Mountain](クー・エ・コラン・ガズ・ラ[Kuh-e Kolang Gaz La)])」の地下に巨大な地下施設を建設した。2021年にイスラエルが近くの遠心分離機製造工場を攻撃した後、イランは製造設備をここに移設した。イスラエルとアメリカはつるはし山のこの地下工場を攻撃しなかったが、イスラエルは他の場所にある、かつて機械が置かれていた空きビルを攻撃した。もしかしたらタイムマシンを使ったのかもしれない。

イランはこれらの遠心分離機をどこに設置するだろうか? 評価報告書によると、イランは「攻撃の標的とならず、稼働を継続している秘密の核施設を維持している」とのことだ。FOXニューズのジェニファー・グリフィン(厳しい質問をする優秀な記者)によると、その1つがいわゆる第三の濃縮施設だ。

そうなのだ、アメリカが攻撃したフォルドゥとナタンズの他に、第三の濃縮施設が存在する。IAEA理事会がイランによる保障措置協定違反を認定した後、イランは「安全な場所(secure location)」に新たな遠心分離施設の建設を完了し、そこに遠心分離機の設置を開始する準備が整ったと発表した。イランはIAEAに施設の査察を要請したが、その後爆撃が起こった。

この遠心分離施設の場所は公表されていないが、グロッシはイスファハン近郊にあると述べている。私の知る限り、イスラエルもアメリカもこの施設への攻撃を試みていない。イランはいつでもそこに遠心分離機を設置し始める可能性がある。

イランは歴史的に、週に1、2基の遠心分離機カスケードを設置できる能力を持っていた。カスケードとは、通常約170基の遠心分離機を並べた装置である。イランは、フォルドゥと同等規模の代替施設を3カ月以内に設置できる。最初の爆弾に相当する量の核物質は、それから2、3日後には利用可能になるだろう。

イランは他にも濃縮施設の候補地があるかもしれない。2010年、イランがフォルドゥの核濃縮施設を明らかにした際、同様の施設を10カ所建設する計画も発表した。当時のアメリカ政府当局者たちはこれを大げさだと考えていたが、数カ月後、イランは翌年、さらに2カ所の地下深くに建設を開始する計画を示唆した。イランの新しい施設はこの時期に建設されたものの、現在まで稼働していなかった可能性が高い。

驚くべきことに、イランの選択肢の1つは、フォルドゥに遠心分離機を再設置することだ。アメリカ国防情報局の報告書は、攻撃によって電気系統が損傷し、入口トンネルが崩壊した一方で、地下の濃縮施設は無傷だったと結論付けている。これは、他の地下施設が攻撃されなかった理由を説明するのに役立つ。これらの施設はフォルドウよりもさらに深い場所にある。アメリカはより大規模な大型貫通爆弾(Massive Ordnance PenetratorMOP)が必要になるだろう。

イランがこの物質をどこで爆弾に転用するのかは不明だ。ウラン転換施設の地上建物は破壊されたが、近隣のトンネルは無傷のようだ。イランはテヘラン郊外に、シャヒド・ボロジェルディ・プロジェクトと呼ばれる大規模な地下施設を有しており、パルチンと呼ばれる軍事施設に隣接している。この複雑なトンネルは、もともと六フッ化ウランを金属に変換し、核兵器用の金属半球を鋳造するために建設された。イランはこの施設を稼働させたことはなかったが、今後状況が変わる可能性がある。イスラエルはパルチン軍事施設の他の部分を攻撃したが、シャヒド・ボロジェルディ・トンネルは他の地下施設と同様に無傷のままだ。

全体として、イランはIAEAが生産したと述べた900ポンドの高濃縮ウランと、遠心分離機の製造、ウランのさらなる濃縮、そして必要に応じて小規模な核兵器備蓄への組み立てを行うための広範な地下施設ネットワークを保持している可能性が高い。 アメリカ国防情報局がこのプログラムはそれほど遅れていないと考えているのも不思議ではない。

たった1、2カ月! イスラエル人の一部が主張するように、たとえ計画が2、3年遅れたとしても、悪評高い2015年の包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPOA)はイランの計画をその何倍も遅らせた。外交的解決に反対する人々は、その条項の多くが10年か15年で失効すると不満を漏らした。(しかし、この主張自体が誤解を招くものだった。なぜなら、他の多くの重要な条項は永久に有効となるはずだったからだ。)

しかし、10年か15年では合意には短すぎると不満を漏らしていた同じ人々が、今では爆撃によるわずか数カ月の遅延を喜んでいる。しかも、この遅延をどう使うかは全く計画がなく、ネタニヤフの支持率が下落し始めたらまた同じことを繰り返すだけだ。彼らを責めるつもりはない。彼らは外交的解決など望んでおらず、ただ体制転換(regime change)を望んでいるだけだ。しかし、どうして彼らがそれを許されているのか理解できない。私たちは、人間が交わす合意はどれも完璧であるかのように、条約には不可能なほど厳格な基準を適用するが、一方で軍事作戦には点数をつける。

多くの専門家たちが包括的共同行動計画の制限イランが保有できる遠心分離機の数、種類、そして濃縮ウランの量に注目する一方で、私は一貫して、その真の価値は秘密施設の探知能力をいかに向上させたかにあると主張してきた。これには、ウラン採掘の瞬間から始まる揺りかごから墓場まで続く保障措置、遠心分離機の製造に使用される機械の監視、イランがウラン濃縮できる場所を制限する措置、そしてIAEAが周辺を調査する特別な権利などが含まれる。

これらの措置は完璧ではなかったが、私たちは今、それらがなければいかに盲目だったかを痛感している。そして最も重要なのは、これらの措置によって、イランがフォルドウのような地下施設を使ってウランを濃縮することを長年にわたり効果的に阻止できたことだ。これは、大型貫通爆弾では不可能なことであることが、今では分かっている。

爆撃の限定的な影響と、轟音を響かせるミサイルと轟く爆発音を伴う爆撃作戦の壮観な様相を結びつけるのは、おそらく難しいことだろう。歴史上最も印象的な空軍力の誇示の1つが、イランの核開発計画にほとんど打撃を与えなかったという事実は、多くのことを物語っている。だからこそ、私はこの作戦開始当初、イラン政権の崩壊のみがこの攻撃の成功につながる可能性が高いと明言したのだ。

空軍力使用による体制転換は常に絶望的に実現可能性が低いと思われていたが、イランのような大規模で分散し、深く埋もれた核開発計画の消滅よりも、どういう訳か実現可能性が高かった。イスラエルもそれを理解していたと思う。ネタニヤフ首相は、革命前のイランの国家の象徴にちなんで、この作戦を「ライジング・ライオン」と名付けた。イスラエルの国家の象徴はガゼルなのだ。

ワシントンが本当に望んでいたのは、体制転換だったのだろうか? 少なくとも、イランを非核化に留めておくことがワシントンの目標だったとしたらどうだろうか? 結局のところ、イランは20年近くもの間、核兵器開発から数カ月しか離れていない。イランを阻んでいたのは、主に技術的な問題ではなく、常に政治的な問題だった。抑圧的で干渉好きなイスラム共和国には私が嫌悪感を抱く点がたくさんあるが、少なくとも核兵器開発には消極的だった。

イランの最高指導者は2003年、いまだに理由は明らかにされていないものの、核兵器開発計画を一時停止した。アメリカの情報機関によると、この計画はイスラエルが爆撃を開始する直前まで停止されていたという。かつて、アヤトラ・アリ・ハメネイ師とその補佐官たちが兵器開発計画について議論した際、どのような発言をしたのかは分からない。しかし、何かが彼の手を止めたのだ。

イラン政府当局がIAEAへの協力を渋ったり、交渉担当者たちが交渉を拒否したりした時でさえ、イランは常に何らかの外交的解決策を模索しているように見えた。トランプ政権は、イランに教訓を与えたと確信している。トランプ政権高官たちは、イランは爆撃によって懲り、交渉に復帰するだろうと述べている。もちろん、イラン人の中には他にも学んだ教訓があるかもしれない。

いずれにせよ、イラン国内で避けられない内部協議は、交渉のテーブルに多くの新たな顔ぶれが加わるという点も含め、これまでとは異なる様相を呈するだろう。アメリカとイスラエルは、ある意味ではイランの体制を変えた。ただ、彼らが望んだような形ではないかもしれない。

※ジェフリー・ルイス:ミドルベリー大学国際研究所教授。Xアカウント:@ArmsControlWonk

(貼り付け終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。 

 今回、ドナルド・トランプ米大統領の外交交渉は全くうまくいっていない、成功していないということを取り上げている記事をご紹介したい。

 対中国、対イラン、対北朝鮮など、アメリカは国際的な諸問題に直面している。アメリカは、中国とは貿易戦争、イランと北朝鮮に対しては核開発、核兵器廃棄といった問題を抱えている。どれもこれもうまくいっていない。トランプ大統領が脅しをかけてみたり、すかしてみたり、良いことを言ってみたりと様々なことをやっているが、うまくいっていない。暗礁に乗り上げているという状況だ。

 トランプ大統領にとっては日本だけが唯一彼のいうことをほぼ受け入れてくれる国だ。防衛関連品を買えと言えば「はい、喜んで」と言い、トウモロコシがだぶついているので何とかしろと言えば、「是非買わせていただきます」となる。日本との場合は交渉ではなく、厳命、それですらなくて、指示、というくらいのことだ。

 ところが世界各国はそうはいかない。そして、それは、「トランプ大統領にはそもそも交渉術などないからだ」ということになる。トランプ大統領は不動産業で財を成し、自分の苗字「トランプ」をつけた高層ビルやホテル、リゾート施設をアメリカ国内外各地に持っている。自身が一代で今のトランプ・コーポレイションをここまでのグループにし、資産を築き上げた大富豪だ。それはトランプ大統領の実力、特に交渉力のおかげだと考えられている。しかし、長年トランプ大統領と一緒に仕事をしていた人物はそうではないと主張している。

 トランプ大統領の交渉術は「こん棒で叩きまくる」ようなもので、一対一で脅しをかけまくるものだということだ。交渉事というのは相手にも利益が出るように落としどころを探るものだ。「ウィン・ウィン」関係を成立させるものだ。しかし、トランプ大統領の考えは「自分だけが勝つ、得をする」ということで、それはなぜかと問われた時に、「世界には無数の人間がいて、取引するのは1回限りだから」と答えたという。また、脅しだけでなく、お世辞を駆使することもあるということだ。

 トランプは大統領になってもこのビジネスにいそしんでいた時代の交渉術を使っている。脅しで入り、相手が強硬だとお世辞を駆使する、という1つのパターンになっている。パターンになっていると、相手はどう対処すればよいか分かる。だから、放っておかれるということになり、交渉が暗礁に乗り上げるということになる。

 トランプ大統領が当選して3年、最初は突拍子もないことをやるということで、戦々恐々としていたが、だんだんパターンが見切られてしまい、放置されてしまうということになっている。ただ、日本だけは真剣に付き合って、言うことを聞いている。

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トランプはどうして交渉を成立させることに失敗するのか(Why Trump Fails at Making Deals

―トランプ大統領は中国、イラン、北朝鮮、インド、最近ではデンマークといった国々との間での交渉に失敗している。彼を長く知っている人々は「現在のアメリカ大統領は実際には交渉能力の低いのだ」と述べているが、数々の失敗はそれを証明している。

マイケル・ハーシュ筆

2019年8月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/08/21/why-trump-cant-make-deals-international-negotiations/

これは彼のアピールの中核である。2015年に突然大統領選挙に出馬して以来、不動産王はアメリカの有権者たちの支持を勝ち取ろうとしてきた。有権者の多くがトランプ個人を嫌いでも支持せざるを得ないようにしてきた。トランプはこれまでずっと自分は交渉の達人であり、アメリカ国民のために多くの新しい合意を勝ち取ることが出来ると主張してきた。 

しかし、大統領選挙当選3周年が近づく中、トランプ大統領は国際的な交渉においてほとんど成果を挙げていないという証拠が山積みになっている。2018年にNAFTAの再編に合意して以来、中国、イラン、北朝鮮、その他の国々との最高レヴェルの交渉を再スタートさせるための彼の努力は全て暗礁に乗り上げている。今週、トランプ大統領は交渉が下手であることを再び見せつけてしまった。トランプ大統領はアメリカの親密な同盟国デンマーク訪問を中止した。デンマーク首相はトランプ大統領の盟友で、彼と同じく反移民の姿勢を取っている。しかし、トランプがグリーンランドの購入を提案し、デンマーク政府はグリーンランド売却を考慮することを拒絶したために、訪問が取りやめになった。技術的にはデンマークはグリーンランドをアメリカに売却することはできない。それはグリーンランドには自治政府があり、首相が選ばれているからだ。

トランプを長年見てきた多くの人々にとって、トランプが大統領になって外交交渉にことごとく失敗していることは、実業界での華々しいキャリアを実態以上に過剰に売り込んだことの結果でしかないということになる。トランプ・オーガナイゼーションで建築家として働いたアラン・ラピダスは「ドナルドの交渉能力は虚構でしかない」と述べた。ラピダスは十代の頃からトランプと知り合い、トランプが不動産業を家族でやっている頃から一緒に働いた人物だ。

ラピダスは本誌の取材に対して、「ドナルドの交渉術は絶叫と脅迫で構成されている。ドナルドには緻密さもないし、ユーモアのセンスもない。こん棒で殴りつける、殴りつける、殴りつける、これだけだ」と述べた。

ラピダスはトランプと彼の事業が交渉に成功したが、それはハーヴェイ・フリーマンやスーザン・ハイルブロンのような幹部社員の交渉能力や技術のおかげだと述べた。2人はトランプ・オーガナイゼーションのアトランティック・シティでの事業やリース事業のほとんどを管掌した。 ラピダスは「彼らは詳細な分析と資料の読み込みを全て行った。トランプがもしこの仕事をやらねばならなかったとしても、まずやらなかっただろう」と述べた。

トランプの仕事仲間や取引先だった人々は、トランプが交渉の席で銀行をやっつけていたと自慢しているのは話を盛り過ぎていると指摘している。その当時のトランプの会計責任者だったスティーヴン・ボレンバックの交渉術によって、トランプは1990年に9億ドルの負債を抱えて個人破産寸前まで追い込まれたが、うまく逃れることが出来たのだ、と彼らは述べている。

トランプの自伝作家で多くの機会でトランプにインタヴューをしてきたマイケル・ダントニオは、ラピダスの発言に同意している。ダントニオも大統領としての交渉術は彼が実業家であった時のものと何も変わらないと認めている。ダントニオは次のように述べている。「彼のスタイルは敵意むき出しで、交渉相手から可能な全ての妥協を引き出すためにいじめ同様の方法を採用する。そして自分の利益を最大化する。トランプが私に語ったところでは、相手と“ウィン・ウィン”ではなく、“私だけが勝つ”取引をすることにしか興味がないということだった。将来またビジネスをするかもしれないので相手に好意を見せるために、相手に何かしらの利益を与えたことはあったかと私が彼に質問したところ、答えは“ノー”だった。そして、世界にはこれだけたくさんの人間がいるのだから、取引は一度きりだ、と語った」。

会社相手ではなく国家相手の交渉をする際には状況は異なる。世界には一定数の国家が存在するだけだ。アメリカ大統領は諸大国と何度も何度も交渉し合意に達するという行為を繰り返すことになる。それは様々な分野で行われるものだが、あくまで友好的になされる。更に言えば、国家は企業のように競争をして負けたからといって退場することはできない。破産を申請することも簡単に解散することもできない。貿易関係においては、「私だけが勝つ」というゼロサムの結果は存在しない。

結局のところ、国の誇りというものが重要になる。交渉を成功させるには、相手方の顔を立てることも必要だ。世界各国の指導者たちは、ビジネス上の取引でやられてしまった人々のように、降伏することもこそこそ逃げ出すこともできない。トランプ大統領はこのような妥協を望まない姿勢を明確にしている。2018年のアメリカ・カナダ・メキシコの協定に関する話し合いで、大統領は義理の息子ジャレッド・クシュナーからの強い働きかけを受けて、カナダとメキシコにしぶしぶではあるが2、3の譲歩をしたと報じられた。の当時、アメリカ通商代表ロバート・ライトハイザーは「ジャレッドの働きかけがなければ、この協定は成立しなかっただろう」と記者団に語っている。

ダントニオは次のように語っている。「トランプ大統領は外交を行うこと、そして主権国家と交渉することの準備がそもそもできていないのだ。二国間もしくは多国間での利益を生み出すためのギヴ・アンド・テイクのやり方を彼は知らない。彼は自己中心的過ぎるために、自分とは異なる考えを持つ人々を敵と認識する。大統領は自分のいじめが通じない相手がいれば自分が攻撃されたと思い、彼の提案に対して自分の考えを述べるような人物には激怒するのだ」。

従って、トランプ大統領は、こん棒で叩きまくるアプローチでは交渉相手によっては交渉が行き詰まり、交渉開始当初よりも交渉が進んでいる段階での方が、合意形成がより難しくなるというパターンが出来上がっていることに気付いている。トランプ大統領は中国と対峙するための12か国からなる環太平洋パートナーシップ協定から離脱した後で、トランプ大統領は彼の方か一方的に中国との貿易戦争を始めた。しかし、結果は、彼の習近平中国国家主席が企業向け補助金と知的財産権侵害の主要な問題に対して何の対策も取らないということであった。市場からは2年間の停滞は国際経済に脅威を与えるという警告が出ていた。トランプ大統領はオバマ政権下で結ばれたイランとの核開発をめぐる合意を「これまでで最悪の合意」と非難した。そして、イランに対する経済制裁を再開した。その中には、イラン外相モハマド・ジャヴァド・ザリフ個人に対する制裁も含まれていた。イランをめぐる情勢は先行きが見えない。トランプ大統領は北朝鮮の最高指導者金正恩と親しくなろうとし、アフガニスタンにおけるアメリカの状況を改善するためにカシミール地方をめぐるインドとパキスタンとの間を仲介しようと無様な提案を行った。これらもまた何も進んでいない。一つの局面では、トランプ大統領はもうすぐある程度の成功を収めることが出来るだろう。それはタリバンとの交渉だ。トランプ大統領は交渉に関しては特使であるザルメイ・ハリルザルドに任せきりだ。専門家の中には、トランプ大統領が公約しているアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退は、タリバンに勝利をもたらすだけだと恐怖感を持っている人たちがいる。

トランプ大統領自身は何の心配もしていないふりを続け、ほとんどの問題に関しては解決を「急いでいない」と繰り返し述べている。それでも今週水曜日に記者団に対して中国に対して「私たちは勝利を収めつつある」と述べ、「私は選ばれた人間なのだ」という見当違いのアピールを行った。しかし、彼は2020年に迫った大統領選挙までの時間を浪費することになるだろう。

トランプ大統領は世界各国との交渉にことごとく失敗しているが、国内でも失敗を続けている。トランプ大統領の主要な公約である社会資本(インフラストラクチャー)、移民、医療制度について実質的な話し合いはこれまでなされていない。トランプ大統領は刑法改革法を成立させたが、これは民主党が訴えていた政策であり、こちらも義理の息子クシュナーの交渉術のおかげである。思い返してみれば、今年の1月、トランプ大統領は公約した国境の壁に関して、民主党に完全に屈服した。大統領自身が始めた政府機関の閉鎖が35日間に及んだ。大統領は最終的には連邦政府職員の給料を支払うための一時的な手段を採ることに合意したが、国境の壁への予算はつかなかった。

トランプの交渉スタイルは予測しやすいもので、ある一つのパターンが存在する。別のトランプ伝記作家グゥエンダ・ブレアはこれを「こん棒で殴りつけることと愛情を大袈裟に表現すること(love-bombing)」と呼んでいる。中国とイランに対しては次のようなパターンになる。中国の習近平国家主席とイランのハッサン・ロウハニ大統領に対しては降伏以外にはないというようなことを言っていた。これは両者にとっては不可能ではないにしても政治的に難しいことになる。トランプ大統領は同時にお世辞を言うことも忘れなかった。今週、トランプ大統領はツイッター上で「習近平は中国国民からの大いなる尊敬を集めている偉大な指導者だ」と書き、ロウハニ大統領に関しては別の観点から、「ロウハニ大統領はとても愛すべき人物だと思う」と書いている。

金正恩委員長との関係ではトランプ大統領は最初のうち脅しを繰り返した。ある時点では、当時のレックス・ティラーソン国務長官を北朝鮮との交渉をしようとして「時間を無駄にしている」と非難した。しかし同時にお世辞を繰り返すことも忘れなかった。そして、首脳会談や私的なメッセージの交換を行った。トランプ大統領は金委員長に「核兵器を放棄すれば北朝鮮はとても豊かな国になる」と請け合った。

しかし、トランプ大統領の広報外交(パブリック・ディプロマシー)も大臣レヴェルの交渉者たちの交渉も素晴らしい成果を上げることはできなかった。しかし、金委員長は別だ。一連の外交を通じて、金委員長はこれまでにない程の国際的な関心と認知を受け、彼自身の政権の正統性も認められた。

ブレアは次のように語っている。「中国やデンマークに対してのトランプ大統領のアプローチは古くからのドナルドのやり方だ。彼は自分ともう1人だけが部屋にいる形にしようとする。だから多国間の条件や会議を彼は嫌うのだ。彼は部屋の中に1人だけ入れて、その人に集中して脅しをかけたいのだ」。

ブレアは、グリーンランドをめぐる買い取り要請もトランプのキャリアでのやり方をそのまま使っているものだと述べている。「今起きていることは、ブランド確立ということなのだ。まず、トランプ・コーポレイションのブランド確立があった。それからカジノ、リアリティTV番組、と続き、今は大統領としてのブランド確立が行われているのだ。大統領としてのブランドを確立するためには、世界最大の島を買い取ること以上により良い方法はないではないか?」

ラピダスのトランプ家との家族ぐるみの付き合いはトランプ大統領の父フレッド・トランプにまで遡る。ラピダスはフレッドとも建築士として一緒に仕事をした。トランプ大統領のアプローチは自分の仕事仲間や取引先にとってはおなじみのもので驚きはないとしている。ラピダスは次のように述べている。「トランプ大統領のやり方は彼がビジネスをやっていた時と全く同じだ。彼がやっていることはその継続に過ぎない。とどまることを知らない嘘が続けられる。当時の私はそれを見ながら、なんだかかわいげを感じていた」。

ラピダスは、「トランプの交渉スタイルは、当時も今も、その場しのぎで何の明確な戦略などないのだ。私は、彼が頻繁に更新するツイッターを見てますますその思いを強めている」と述べている。ラピダスは、1980年代のアトランティック・シティでのカジノの件をめぐる裁判での審理のことをよく覚えている。トランプは出廷し宣誓をしたのち、カジノを建設した理由について嘘の証言をした。ラピダスは、何とか嘘を止めねばならないと感じたと述べている。

ラピダスは次のように語った。「その後で私はトランプに、何をやっているんだ、どうしてあんなことを言ったんだと食って掛かった。彼は“アラン、私はね、自分の言葉が口から出るまで私は何を言っているのか自分でも分からないんだよ”と言った。これがドナルド・トランプという人物なのだ」。

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決定版 属国 日本論

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(貼り付けはじめ)

 

金正恩は、クーデターを予防するための最も信頼を置ける方法は、恐怖であると確信しているようだ。彼は軍部と警察に対するこれまでにない大幅な粛清を行ってきた。有名な将軍たちがひとり、またひとりと公の場に姿を見せなくなり、参謀総長のような最高司令官たちや国防大臣が処刑された。

 

最近起きた金正恩の異母兄である金正男の殺害事件は、選択的なテロのパターンに合致するものである。金正恩は、エリートたちの不満を糾合できる存在は誰でも粛清する決心をしている。金正男は公の場で発言することがあり、金正恩のコントロールの中で生きていた。彼の存在は脅威であった。金一族の一員として、金正男は共同謀議で担ぎ上げられる存在となる可能性が高かった。彼は金一族の正統性を保つ人物であったし、多くの北朝鮮国民には不思議なオーラをまとう人物であった。金正男が中国の庇護を受けていたことは助けにならなかった。金正恩は中国を信頼しておらず、エリート内の不平葉を糾合する手助けをする可能性のある国だと考えている。

 

重要な点は、金正恩は非合理的な恐怖支配を指揮監督しているのではないということだ。一般的な北朝鮮国民が政治犯罪で逮捕される可能性が高まっている兆候はない。政治犯の数はきわめて多い。しかし、金正男の統治下、この数字は変化していない。祖父金日成時代と比べれば、その数はかなり少なくなっている。顕著なのは、粛清の対象が軍部と治安担当部門の最高幹部、「銃を持っている人々」に限られていることだ。経済部門の最高幹部たちの身の安全は保障されている。

 

言い換えるならば、金正男は、むきだしの恐怖を、彼を追い落とす理由と手段を持つであろう人々に向けているのだ。彼のやり方は過激であり、野蛮であるが、政権維持という点では非合理的ではない。金正恩はクーデターの成功の可能性をまずゼロにしようとしているのだ。

 

しかし、将軍たちが金正恩を追い落とすことはないだろう。三番目の脅威は、人々の反乱と蜂起だ。北朝鮮の最大にして唯一の問題は、低迷を続ける経済だ。1940年代、北朝鮮は、東アジア地域に置いて、日本を除いて、最も工業化が進んだ国であった。しかし、数十年間の運営の失敗のために、最も遅れた国となってしまった。北朝鮮と韓国の1人当たりのGDPの比率は、国境を接している2国間関係の中で最も大きいものとなっている。その比率は1対14とも1対40とも言われている。東ドイツと西ドイツの比率は1対2、もしくは1対3であった。

 

両国間の経済格差は大きい。これは、中国式の経済改革を進めようとする際の大きな政治的障害となる。中国の共産党政権は幸運であった。中国は隣に繁栄した資本主義で民主政体の同族国を持っていない。台湾は小さすぎて政権転覆の脅威とならない。北朝鮮で中国の「改革開放」政策を模倣する試みがなされれば、現在は外界から孤立させられている国民たちが韓国の信じられないほどの豊かさを認識するようになり、権威を恐れなくなる可能性がある。普通の国民は、数十年にわたり、国内の経済運営の失敗について金一族を非難してきた。そして、一晩で全ての問題を一気に解決する手段として、韓国政府主導で北朝鮮の韓国への速やかな統合を夢見るようになっている。その結果として、北朝鮮では、資本主義への移行への試みは中国式の経済ブームをもたらす可能性は低いということになる。 それよりも、韓国による急襲によって、東ドイツのような政治的な崩壊をもたらす可能性が高い。現在の北朝鮮のエリートたちは生き残ることが出来ても、完全に今の地位からは追われてしまうことになるだろう。

 

金正恩の父親である故金正日はこの脅威を認識していて、時代遅れのスターリン主義的システムが崩壊しつつあっても改革の導入を慎重に避け続けた。しかし、北朝鮮の市場経済は成長し始めていた。金正日の政権末期、民間ビジネスは非合法であったが、黙認されていたが、この部門は国家のGDPの25%から40%を占めると推計されていた。金正恩は、長期的に見て、「下からの資本主義」が自発的に始まってしまい、これによって彼の支配が打撃を受けることになることを恐れている。しかし、彼は父親とは違う政策を採用している。2012年から2014年にかけて、金正恩は1980年代に中国が採用した諸政策を次々と採用し始めた。

 

農業は家族を基盤としたシステムに移行している。農家では実物税を収めた後の収穫物のほとんどを保有することを許されるようになっている。実物税の税率は上限35%である。工業部門の管理職クラスは、ビジネス上の自由を認められるようになっている。市場価格で売買する権利や従業員の雇用と回顧の権利が認められている。民間の実業家たちと裏市場の運営者たちは、罰せられる危険性がなくなり、政府機関と協力して投資をするように促されている。彼らは数百ドル、数千ドルの規模から、数百万ドルの資金を持つ人たちまでいる。

 

この政策は経済の回復をもたらそうとしている。全員が一致しているわけではないが、専門家たちのほとんどは、ここ最近の北朝鮮の年間GDP成長率は3%以上を記録している。飢饉が席巻した時代は終わった。ピョンヤンだけでなく、北朝鮮全体で生活水準は上昇している。民間の資金が建設ブームを牽引しており、商店やレストランは新興の富裕層でいっぱいである。交通渋滞についても、以前はピョンヤンでも見られることはほぼなかったが、現在は大きな問題になりつつある。

 

しかし、こうした市場志向の改革は政治的な自由化によってもたらされている訳ではない。文化とイデオロギーの分野では、「北朝鮮化されたスターリン主義」は最高の価値とされている。また、北朝鮮は世界の中で政治犯の人口における割合が最も高い国だ。人口わずか2500万の国で約8万人の政治犯がいる。金正恩は経済成長と厳しい監視体制を組み合わせることで国民を従順にしようとしている。これは最終的に失敗する試みとなるだろう。しかし、合理的ではある。東アジアの「開発独裁主義」の創始者たち、中国の鄧小平、台湾の蒋介石、シンガポールのリー・クワン・ユーは幸せな最期を迎え、国民たちからの賞賛を受けた。

 

金正恩の時に野蛮に見える合理的な政策は、長期的に見て、政策を安定させることに成功するだろうか?彼の政策のほとんどはリスクを伴うものだ。核開発競争はアメリカによる先制攻撃を誘発する可能性がある。将軍たちに対する厳しい姿勢は政権転覆の共同謀議に走らせる可能性を高めることになるだろう。経済改革は金正恩の統制に服さない社会的な勢力を生み出す可能性もある。しかし、リスクが高いということと非合理的であるということはイコールではない。これまでのところ、金正恩の諸政策は機能しており、北朝鮮の指導者たちは自分たちの置かれている状況を認識しており、それら以外の選択肢はよりリスクが高いものとであると分かっている。これらの政策が機能するということは、世界はこれからも長期にわたって金一族と共存していかねばならないということだ。金一族はどのように生き残るかを知っており、これからもそれを実行していくことだろう。

 

これは私たちにとってどのような意味を持つだろうか?第一に、この問題は一気に解決することは不可能だということだ。北朝鮮の非核化は不可能だが、核開発プログラムを監督すること、更なる開発に制限をかけることは可能である。核開発によって抑止力を持つことができ、自分たちにはそれが必要だと金一族は考えている。もちろん、北朝鮮国民は、核開発プログラムの凍結によって寛大な条件を手にできると期待しており、核開発に固執してはいない。

 

外部の世界は、肯定的な変化を促すことができるし、そうすべきだ。その一つが経済成長であり、現在の北朝鮮で起きていることだ。まとめると、世界は北朝鮮国民が情報に接することができるようにすべきなのだ。北朝鮮にとって最も希望に満ちた将来は、下からの圧力による変化である。金政権が生き残りのために人々との間で妥協をする必要を感じるか、金政権の完全な打倒となるかはともかく、国境の外の暮らしを知った人々による圧力で変化すべきだ。金一族は、北朝鮮の国民が合理的であるように、おそらく合理的であるだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



 
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 古村治彦です。

 

 今回は北朝鮮についての優れた分析記事を皆様にご紹介します。その内容は、北朝鮮は、金一族の生き残りのために合理的に動いており、ただ狂っていると非難しているだけでは問題は解決しないというものです。そして、北朝鮮の核開発問題を一気に解決する方法は存在せず、漸進的に対処していくしかないとしています。

 

 金正恩は経済改革を進めつつあり、経済制裁が科されている中で、経済成長が3%以上になっており、国民の生活水準が向上していると著者のランコフは指摘しています。そして、金正恩は、自分に対してクーデターを仕掛ける実行力、武力を持つ軍の最高幹部や治安部門のトップに対して粛清を行うことで、恐怖感を与え、クーデターが起きないようにしているということです。

 

 北朝鮮を3代にわたって支配している金一族(金日成、金正日、金正恩)は生き残りのために動いていることがよく分かります。ですから、彼らの生き残り(政治的、物理的[肉体的])ということを考えていけば、北朝鮮に対処することはそれほど難しいことではないし、ただ、おかしい、狂っているとして話も聞かない、攻撃あるのみとするのは問題解決につながらないし、かえって東アジア地域を不安定化させることになると思います。

 

 北朝鮮が合理的なアクターであることをトランプ大統領も分かっていて、硬軟取り混ぜた対応で交渉を行おうとしています。官民、頭がよさそうなインテリでも、ただ厳しいだけの単細胞的な対処をしようとしているのは日本というのが何とも悲しい話です。「暴戻支那を膺懲す」という時代から余り賢くなっていないようです。

 

(貼りつけはじめ)

 

金正恩は生き残りのために動く人物であって、狂人ではない(Kim Jong Un Is a Survivor, Not a Madman

 

北朝鮮の行動は外国人からすれば非合理的に見えるだろう。しかし、金体制は、生き残りのために論理的な行動を取っているだけなのだ

 

アンドレイ・ランコフ筆

2017年4月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/04/26/kim-jong-un-is-a-survivor-not-a-madman/?utm_content=buffer1fc93&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

あらゆる人々が北朝鮮は狂っていると考えがちだ。北朝鮮は週2回のペースでアメリカを核攻撃で焼き尽くすと脅しの言葉を吐いている。北朝鮮の指導者は将軍たちを無慈悲に処刑し、兄を殺害させた。北朝鮮は破綻した経済モデルに固執しながら、莫大な資金を核兵器開発に浪費している。北朝鮮の狂気の記事は新聞や記事のフロントページを飾っている。

 

問題は、メディアが北朝鮮政府と金正恩を非合理的だと描写していることではなく、アメリカの政治家たちがメディアと同じ行動を取っていることだ。2017年4月、アメリカ連邦下院議員ブラッドリー・バーン(アラバマ州選出、共和党)は、「私には北朝鮮の指導部は合理的だとは思えない。非合理的な誰かに対してどのように対処できるか?」。彼は米国連大使ニッキー・ヘイリーの発言を繰り返しているだけのことだ。ヘイリーは「私たちは合理的な人物に対処していない」と発言した。ヘイリーは、金正恩について、「合理的な行動を取らない人物であり、明確な思考をしない人物」だと述べている。

 

北朝鮮を理解するための手引きとしては、このような分析はただただ間違っている。北朝鮮に対する政策作りの手引きとしては、このような分析は破滅的な結果をもたらすだろう。 北朝鮮のシステムは外国にいる私たちから見れば奇妙奇天烈なものに見えるが、金一族は政治的に見て、最終的に生き残ってきた一族である。冷徹なまでのリアリストたちであって、彼らの行動は常に明確な目的を持っている。それは、一族が権力の座に居続けることである。彼らを狂人たちだと考えるのは間違っているだけでなく、危険でもある。政策が成功するためには、自分たちの反対の立場の人々の論理を理解することが基礎になっており、非合理的だと切って捨てていては成功などおぼつかない。金一族を核兵器を持った狂人たちと見ることは、彼らがより驚異的な存在だと考えてしまうようになる。そして、戦争勃発のリスクを高めてしまう。更には、北朝鮮が「正気になった」時にだけ、妥協が成立するという非現実的な期待感だけが高まることになる。

 

1980年代、金一族は味方であるはずの東側世界においても、スターリン流の非合理性を体現しているとして嘲笑の的となっていた。金一族は、時代遅れの個人崇拝にこだわっており、経済運営に失敗し、ハンガリーの改革志向の指導者グロース・カーヌイのような東欧諸国の新しい考えを持つ指導者たちを見習うべきだと批判されていた。今日、東欧の指導者たちは歴史のゴミ箱に投げ込まれている。彼らは指導者の地位を追われ、侮蔑され、忘れ去られた。一方、金一族は権力の座をいるだけでなく、それにともなる豪奢な生活を楽しみ、北朝鮮を完全にコントロールしている。

 

確かに、これまでの25年間は簡単な道のりではなかった。大規模な飢饉によって国民が塗炭の苦しみを味わい、友好国を失い、中国も支援に腰が引けるようになり、世界唯一の超大国と対立するようになった。こうした連続的な危機の中で、金一族は生き残らねばならなかった。金一族は生き残ってきた。これは彼らが合理的で冷酷な行動を取ることの徴候であると考えるべきなのだ。

 

現在のところ、金正恩は抑制的だ。また、彼は祖父、父と同じく長期的な責務を担っている。それは、彼自身と彼の子孫の統制下で政権の存続を確かなものとすることである。一族の生き残りには3つの脅威が存在する。金正恩の政策から判断すると、彼はこれらの脅威を認識しているだけでなく、無効化しようと努力している。

 

第一の脅威は外国からの攻撃だ。彼の父親同様、金正恩もまたこれを大変に懸念している。これは誇大妄想と言えるかもしれない。しかし、諸外国が自分を狙って出てくるとなると、誇大妄想とは言えない。サダム・フセイン、アフガニスタンにおけるタリバンの指導者たちの運命を考えれば分かる。イラクとアフガニスタン、そして北朝鮮は、アメリカ政府によって、ひとつのグループとして扱われてきた。しかし、リビアのムアンマール・カダフィの悲運が金一族にとって最も重要な教訓となっている。2003年、リビアの指導者カダフィは、西側諸国との間で、核兵器開発プログラムの放棄し、その見返りに寛大な経済援助を受けることに合意した。アメリカと対立してきた国によってこのような妥協がなされたのはリビアが最初であった。

 

2011年にリビアで革命が勃発し、カダフィ政権を滅亡に追いやったのは、NATOによる飛行禁止区域設定であった。この物語の結末は、自動車のボンネットの上に打ち捨てられた毀損されたカダフィの遺体であった。

 

10年前、アメリカの外交官とジャーナリストたちの間では、リビアの核開発放棄合意について喜びがあふれた。彼らは異口同音に「北朝鮮の指導者たちもリビアの教訓から学ぶべきだ」と語った。彼らは実際の結末とは全く異なるバラ色の結末を想定していた。

 

金正恩は核開発プログラムを純粋に防衛上の施策だと考えている。韓国への進攻は、理論上は可能なものと言える。しかし、韓国への進攻は金正恩の手に負えないものである。アメリカは韓国防衛の責任を負っているし、韓国も経済と技術上の力の優位を持っている。金正恩は、北朝鮮が韓国、もしくはアメリカを攻撃すれば、悲劇的な結末を迎えることになることを分かっている。おそらく自分は殺害されるだろうと考えている。金正恩は自殺志願者ではない。しかし、金正恩は、アメリカは、核保有国、特にミサイル能力と第二次攻撃能力を持っている国を攻撃しないだろうし、アメリカのトランプ政権は内部闘争に明け暮れており、北朝鮮に関わっていられないのだと主張している。

 

従って、北朝鮮の指導者たちは核開発にこだわらねばならないと確信している。そして、核兵器は国家安全保障を担保する存在になると考えている。彼らを説得して考えを変えさせることができる圧力の形態は存在しない。いかなる圧力をかけても彼らは考えを変えない。彼らに提案を受け入れさせるための約束は存在しない。北朝鮮の指導者たちは核兵器がなければ死んだも同然だと確信している。これは北東アジア地域にとって厄災であるが、金一族は完全に合理的な選択ということになる。

 

北朝鮮の核開発プログラムは防御を目的とするものだが、世界に向けて、自国の存在を認識させ、「マッドマン戦略」とリチャード・ニクソン大統領が呼んだ戦略を使っていることは合理的な行動だ。「マッドマン戦略」とは、敵に対して自分のことを非合理的で、爆発しやすく、コストを無視する存在だと考えさせる戦略だ。そのために、北朝鮮のプロパガンダは様々な激しい言葉遣いになるのだ。北朝鮮のテレビ番組では、「ソウルを火の海にする」、オーストラリアのキャンベラを核攻撃する、アメリカの地図に核攻撃の標的となる各都市を示し、その前に金正恩の姿を重ね合わせて放送しているが、ただひとつのメッセージを発信している。それは、「私たちはここにおり、私たちは爆発する、敵たちが脅威を与えるならば行動することを躊躇しない」というものだ。

 

核兵器がなければ、金一族はアメリカからの直接攻撃を懸念することになる。しかし、彼ら同時に、北朝鮮内部の反乱にアメリカ、もしくは中国が介入してくるのではないかと心配している。彼らはリビアで起きたことを認識している。リビアでは西側の諸大国が飛行禁止区域を設定し、反乱勢力の勝利を手助けした。彼らはまた、1956年に中国が当時のソ連と協力して金日成を失脚させるための共同謀議を支援したことを記憶している。この試みは失敗した。金日成は現在の最高指導者である金正恩の祖父だ。

 

金正恩の別の非合理的に見える政策は防御的なものと考えるべきだ。核兵器は政権の防衛のための十分条件にはならない。核兵器があれば外国からの攻撃を防ぐことができるかもしれないが、国内の軍事クーデターの危険を除去することはできない。金正恩はまだ若年で、将軍たちが彼に対して、若年と経験のなさから悪感情を持っていると疑ってしまうのは自然なことだろう。金正恩は父親の急死のわずか1年前に後継者に仕立てられたが、その当時、その存在は全く知られていなかった。金正恩は、非民主的な国家でクーデターが起きることは常態であり、成功するケースが多いということを認識しているのは間違いない。最新の研究によると、1950年から2010年にかけて世界中で発生した457回のクーデターのうち、227回は成功したということだ。227回の成功例のうち、2回は北朝鮮が最も注目している国で起きた。韓国だ。

 

(貼り付け終わり)

 

(続く)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回はオバマ政権の現実主義とイランとの核開発合意に関する記事をご紹介します。私は常々、外交においては現実主義と理想主義(左派と右派)が存在すると書いてきました。そして、オバマ大統領は現実主義的な外交政策を行っていると拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも明らかにしました。このことを裏付ける記事になっています。

 

 この記事の内容で言えば、今の安倍晋三政権と自民党は外交においては、非現実的な理想主義者ということになります。それも戦争をしたがって仕方がない、アメリカで言えばネオコンと同じ存在です。日本国民の多くが2000年代のアメリカ国民と同じくその危険性に気付き出していると私は感じています。

 

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イランは現実主義の良い具体例である(Iran and the case for realism

 

EJ・ディオンヌ筆

2015年8月30日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/iran-and-the-case-for-realism/2015/08/30/ba028102-4dc2-11e5-84df-923b3ef1a64b_story.html

 

外交政策を巡る議論はほとんどの場合、国内政治の争いを反映したものとなる。しかし、同時に語られない前提と認識されない諸理論に基づいてもいるものだ。

 

 これはイランとの核開発を巡る合意に関する論争にも当てはまる。もちろん生の現実政治は大変に大きな役割を果たしてはいる。共和党所属の連邦上院議員ジェフ・フレイク(アリゾナ州選出)とスーザン・コリンズ(メイン州選出)は条件さえ整えば、合意に賛成することにやぶさかではないようだ。しかし、党に対する忠誠心をテストすることになるこの問題で、同僚たちとは違う行動を取ることについて高い代償を支払うことになることもまた計算しなくてはならない。

 

 イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフはアメリカ連邦議会で親イスラエルと反イスラエルの争いを激化させようとしたが、これは不幸なことだ。イスラエルの強力な支持者たちの多くは、イランの核開発を査察する制度について特に批判することになるだろう。しかし、彼らはイランの核開発プログラムに対する制限は現実的だとも信じている。連邦上院議員ベン・カーディン(メリーランド州選出、民主党所属)は、アメリカの交渉担当者たちは、「核開発の最前線に立っていた」と語った。これは「核開発の最前線は主要な点である」ということなのである。

 

 まだ態度を決めていないカーディンと他の民主党所属の連邦議員たちに対する、合意に対して反対票を投じるように求める圧力は大きなものとなっている。連邦上院外交委員会の幹部であるカーディンが賛成票を投じると、これは真に勇気のある行動ということになるだろう。そして、態度を決めかねている同僚たちにとって大きな影響を与えることになるだろう。

 

 オバマ大統領と関係諸国は、連邦議会によって合意が否決されてしまうことで生まれる危険性について語っている。これは正しい。この危険は、合意を有効なものとすることよりもリスクが高いものとなる。アメリカは合意を破棄して、より厳しい合意条件を実現するために再交渉すべきという考えも存在するがこれは全く非現実的なお笑い草でしかない。それはこの合意は単なるアメリカとイラン、2か国間のだけの合意ではないからだ。この合意には合意内容を強力に支持する関係諸国も含まれているのだ。これまで続けてきたイランに対する経済制裁を再び行うことを提案することもまた同じ理由で馬鹿げている。アメリカに協力した国々は、アメリカが一度結んだ合意を破棄しても、合意を破棄することはないであろう。

 

オバマ政権は反対している人々に対してこの質問を中心にして挑戦している。それは「それでは他の選択肢は何になりますか?」というものだ。これはただの言葉遊びの質問ではない。

 

 現在の連邦議会の情勢分析では、オバマ大統領は合意を有効とするための議員の賛成票を最低限確保できるだろうと言われている。オバマ大統領は合意を無効化するための試みを阻止するための41名の上院議員の支持を得るための秘密兵器を持っている。カーディンの投票はカギを握ることになるだろう。

 

 しかし、ひとたびこの話が落ち着いたら、オバマ大統領、議会における反対派、大統領選挙立候補者たちは世界におけるアメリカの役割についてどのように見るかについて大きな議論をすることになる。オバマ大統領は分かりにくい「オバマ・ドクトリン」について説明し、共和党の有力な大統領候補者であるスコット・ウォーカーとマルコ・ルビオが金曜日に行った批判に少なくとも間接的に反論することで利益を得ることが来出るだろう。

 

オバマ大統領が主として外交政策において現実主義者であると多くの人々がいる(私もその中の一人である)。特にアメリカがイラクで冒険主義的な愚かな行為を行った後、現実主義はこれまでよりもより良いものだと考えられるようになっている。私は、現実主義者は、「アメリカは民主的な価値観と人権のために戦わねばならないが、軍事面における過度の拡大は、アメリカの国益と長期的な強さにとって致命的な危険である」と考える人たちだと考える。オバマ大統領の外交を擁護する際によく使われる論法は、「確かにいくつかのミスを犯したが、軍事力で出来ることとできないことに関する彼の現実主義は、アメリカの外交アプローチを再定義し、アメリカを正しい方向に戻すことに成功した」というものだ。

 

 この議論を始めるのにより材料となるのが、『ナショナル・インタレスト』誌の創刊30周年記念号に掲載されたリチャード・K・ベッツの「現実主義による説得」という論文だ。ベッツは現実主義の立場に立つ高名な知識人だ。ベッツはコロンビア大学に属する学者でもある。ベッツは「現実主義者は動機よりも結果をより重視する。現実主義者は良い動機が如何にして悲惨な結果を生むのかという点に注目する」と主張している。理想主義的なリベラル派と保守派は共に「正しい考えを支持し、悪と戦う」と強硬に主張するが、現実主義者は、「私たちが直面している選択肢は“より大きな悪とより小さな悪の間に存在する”」と主張する、とベッツは述べている。

 

 ベッツは「敢えて過度な一般化の危険を冒すが、理想主義者は勇気について心配し、現実主義者は制約について心配をする。理想主義者は武力によって悪に対峙することの利益を重視するが、現実主義者はコストを重視する。全体として、現実主義者は思い上がりではなく、抑制を求める」と書いている。

 

 頭の中は現実主義になりつつありながら、精神は今でも理想主義である私たちのような人間にとっては、現実主義は冷たくて、道徳的に不十分だと思ってしまう。しかし、現実主義の道徳は、人々の生命、財産、実行不可能な試みのための力の浪費することが道徳に適っているかどうかということになる。現実主義を批判する人々はイランとの合意に反対している人々が受けているのと同じ質問に直面する。それは「それでは他の選択肢は何になりますか?」というものだ。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回はアメリカとイランとの間の核開発を巡る合意について当事者のアーネスト・モニス米エネルギー庁長官の書いた記事を皆様にご紹介します。この枠組みは北朝鮮にも応用できるのではないかと思います。

 

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交渉担当者がイランとの核開発に関する合意の科学を詳しく解説(Negotiator Breaks Down Science of Iran Nuclear Deal

 

アーネスト・モニス(Earnest Moniz、米エネルギー省長官)筆

2015年7月30日

『フォーワード』誌

Ernest MonizJuly 30, 2015Image: Getty Images

http://forward.com/opinion/318187/negotiator-breaks-down-cheat-proof-iran-nuclear-deal/

 

 本誌は7月15日付の論説で読者の皆さんに対して、ジュネーブで交渉が行われ最終的に合意に達した、イランの核開発をめぐる合意について賛成するか、反対するかを決定すする際に、また今回の合意がイスラエルにとっての脅威を増大させるかどうかについて考える際に、「生産的で、理性的、思慮深く、適度に懐疑的に、そして関与」するように訴えた。

 

 まず基本的なことを言えば、現状維持は受け入れられないことは多くの人々が認めるところだ。そうなると、今回に合意について読者の皆さんは是々非々で内容を検討すべきであろう。そこで、今回はこの場を借りて、私は今回の合意が如何にしてアメリカ、イスラエル、そして世界の安全保障を強化することになるかについて説明したい。

 

 今回の合意はJCPOA(包括的共同行動計画)と呼ばれる。今回の合意によって、イランが核兵器を製造するための武器に適した原材料を十分に製造することを効果的に防ぐことが出来る。これはイランが核兵器に必要なウランの濃縮に必要な期間が現在は2、3カ月であるのを少なくとも1年に延ばすことになる。これだけの時間があれば、アメリカと同盟諸国は強力な対処を行うことが出来る。また、合意によって協定違反を発見するためのこれまでにない確認のための道具も使えるようになる。しかも、私たちの側の持つ幾つもの選択肢を一つも放棄したものではない。

 

 今回の合意は、諸大国とイランとの間で成立したもので、イランは核兵器を開発も所有もしない代わりに、この対応に見合った見返りを与えるというものだ。合意に署名した中国、ロシア、フランス、ドイツ、イギリス、ヨーロッパ連合、アメリカの共有した目的はこれまでにないものであった。

 

 重要なことは、科学が正解を導き出したことだ。私はマサチューセッツ工科大学で40年にわたり原子物理学の教員をしていた。そして、この1年の大部分はイラン側の原子力専門家たちとの交渉に費やした。そして、私はエネルギー省管轄下の国立研究所と核関連施設のトップクラスの専門家たちによる地道な分析に頼ることが出来た。

 

●武器製造への道筋を塞ぐ

 

 JCPOAはイランが核兵器を製造するために必要な物資の製造への道筋を一つ一つ塞ぐものとなっている。

 

JCPOAによってウランの貯蔵量は劇的に削減される。イランは低濃度濃縮ウランの貯蔵量を98%削減することになる。また、高濃度濃縮ウランの場合は20%が削減される。これによって、イランは1年間の濃縮期間で高濃度のウラニウムを製造し、10発以上の核兵器を製造する状態から1発も製造できないようになる。

 

②遠心分離器 イランは現在保有している遠心分離器の3分の2以上を廃棄しなければならない。現在1万9000を保有しているがそれを5000にまでする。そして、これから10年でイランでは古くなって能力も減退した原子分離器が稼働することになるだろう。

 

③プルトニウム製造の道筋を絶つ。イランはアラク原子炉を1年に1発から2発の核兵器を作れるだけのプルトニウムを作れる施設からそれ以下の低濃度のウラニウムを製造でき雨量に転換する。これによってごまかしは容易に止めることが出来るようになる。高濃度ウラン製造を更に防止するために、イランはプルトニウムを抽出できる使用済み核燃料を全て国外に運び出すことになる。

 

●これまでにないレヴェルの確認とアクセス

 

 これまでにないレヴェルの確認作業を行うことで合意内容の遵守を担保できる。信頼は問題ではない。国際原子力エネルギー機関(IAEA)はイランに核関連施設に対する十分なアクセスと調査のための道具を持つことになる。

 

 イラン側が届け出た施設に対して、調査官たちは最短2時間前の通告で定期的に調査のために立ち入ることが出来る。届け出ていない施設に関しては、24時間以内の立ち入りが認められる。イランが施設への立ち入りについて異議を申し立てる場合、24日以内に紛争を解決し、立ち入りを行うための重要なそして新しい道具が提供されることになる。

 

●ごまかしを探し出す

 

 IAEAはごまかしと合意内容遵守違反を見つけることが出来る。核物質をトイレに流してしまったり、隠してしまったりは不可能なのだ。放射能はその存在の痕跡を残すものであり、私たちはその痕跡を見つける方法を知っている。

 

 1980年から、アメリカはロスアラモス国立研究所でIAEAの全調査官を訓練してきた。私たちは10以上のコースを開講し、調査官たちが最新式の調査機械と電子封印用の機械を使いこなせるようにして来た。これらの道具の多くはアメリカが開発したものだ。

 

 更には、将来イランが合意内容遵守を拒否する事態になったら、私たちにはそれに対処するためのいくつもの選択肢が存在する。その中には、核開発を行ったある国に科される中で最も厳しい金融・経済制裁を再び科すことも含まれている。

 

●永続的な、透明性の確保された合意

 

 今回ジュネーブで承認された計画は最終的なものではない。これから10年、もしくは15年、20年、25年の間に出いくつかの手直しがなされるだろう。しかし、透明性とイランの根本的な義務である核兵器開発プログラムの廃棄は恒久的なものだ。

 

 今回の合意に関して、いかなる「付帯事項」も「秘密協定」も存在しない。JCPOAは、イランが最終的にIAEAと協力させることになる。イランはIAEAを満足させるために核兵器開発に必要な行動を全て取り止めることになる。イランはIAEAに対して非公開の文書を提出する義務を負うことにもなる。

 

 もちろん、アメリカと友好・同盟諸国の情報収集能力によっていかなる秘密の行動も止めることが出来る。アメリカの国家情報局長官は「合意がなくても100%の革新を得ることはできるが、合意によってイランのプログラムの可視性を手に入れることが出来る」と発言した。イランがいかなるごまかしをやろうとしてもそれにはリスクが伴い、その結果、国際社会の厳しい反応が返ってくるようになる。その結果、秘密の活動を防止することが出来る。

 

●私たちの基本線

 

 オバマ大統領と私は、イランが核兵器開発に成功し、実際に核兵器を所有することは、イスラエルと中東地域にあるアメリカの友好国や同盟国の存在を脅かす脅威になると確信している。間違って欲しくないのだが、交渉を始める前、イランは核兵器を開発寸前の状態にあった。今回の合意は、そうしたぎりぎりの状態から引き戻し、私たちの持つ調査能力を引き上げるものとなった。

 

 今回の歴史的な合意は、イランの核開発の脅威を消し去る最善の機会となった。アメリカと国際社会は、イランが中東地域で行っている行動が引き起こしているいくつかの問題について、強力で協調的な手段を通じて対処することが出来る羽陽になったのだ。

 

 アメリカは世界の経済、軍事、外交の指導者である。私たちはイスラエルとイスラエル国民の安全に対して責任を負っている。イランが核兵器を所有することはこれからも許されないだろう。今回の合意はこの決意を新たにし、責任をますます重いものにする。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカ連邦上院議員トム・コットンとイラン外相ジャヴァド・ザリフとの間で交わされた激しい言葉の応酬をご紹介します。トム・コットンの器の小ささにアメリカでも失望が広がっているようです。これで共和党の輝ける星というのは何とも情けない話です。

 

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イラン外相がアメリカの連邦上院議員の「個人的な中傷」を払いのけた(Iranian foreign minister dismisses US senator’s ‘personal smear’

 

デイヴィッド・マカビー筆

2015年4月30日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/240614-iranian-foreign-minister-dismisses-us-senators-personal-smear

 

 イラン外相は木曜日、連邦上院議員トム・コットン(アーカンソー州選出、共和党)の「イランの暴政、背信行為、テロの記録について議論」しようという挑発を払いのけた。

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ザリフ外相

 

 ムハマド・ジャヴァド・ザリフ外相は、トム・コットン上院議員の初めての子供の誕生を祝う投稿の前に、ツイッターに「マッチョな個人の中傷ではなく、真剣な外交こそを私たちが必要としているものだ」と投稿した。


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コットン議員

 その前日の水曜日、コットンはザリフを挑発し、「イラン・イラク戦争で農民と子供たちが死に向かって行進している間、アメリカで隠れている」決心をザリフがしたと嘲った。

 

 ザリフは、イラクの核開発プログラムについて合意に達したら、コットンが「気に入ろうがいるまいが」、イランに対する経済制裁が緩和されるだろうとコメントしたが、それに対して、コットンが反応したのだ。

 

 コットンはアメリカとイランとの間の合意に対して徹底的に反対している。コットンに対しては今年初めに批判が集まった。この時、彼はイランの指導者たちに対する「公開書簡」を主導し、アメリカの憲法システムについて説明しようとした。

 

(終わり)

 

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イランのジャヴァド・ザリフ外相が連邦上院議員トム・コットンに対してコットン議員の第一子の誕生の機会を捉えて挑発した(Iranian FM Javad Zarif Trolls Sen. Tom Cotton On the Occasion of His Child’s Birth

 

エリアス・グロール筆

2015年4月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2015/04/30/iranian-fm-javad-zarif-trolls-sen-tom-cotton-on-the-occasion-of-his-childs-birth/?utm_content=bufferb7539&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 イラン外相ジャヴァド・ザリフは連邦上院議員トム・コットンに初めての子供が誕生する機会を捉えて挑発を行った。今月初め、各国の交渉担当者たちが枠組み合意に達したと発表して以来、連邦上院の超タカ派議員トム・コットン(アーカンソー州選出)は合意を台無しにしようとキャンペーンを公然と展開している。しかしトム・コットンにとってマイナスなことも起きている。今週、イランのジャヴァド・ザリフ外相との間で激しい言葉の応酬があった。ザリフはかなり丁寧に、激しい言葉を投げかけた。

 

 47名の連邦上院議員たちが署名したイランの指導者たち宛ての公開書簡(いかなる経済制裁の緩和も連邦議会の承認が必要だとする内容)を主導した後、コットンはイランとの核開発を巡る合意に対して反対する強硬派として知られるようになった。しかし、木曜日、ザリフはニューヨークにおいて、コットンを脇にどかそうとして、「コットン上院議員が気に入ろうが気に入るまいが」、国連は経済制裁緩和に向けて中心的な役割を果たすだろうと述べた。

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 このコメントはコットンの神経をいたく刺激した。そして、コットンはザリフに対してワシントンにまで来てアメリカ合衆国憲法について議論しろと要求した。

 
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 『フォーリン・ポリシー』誌で私たちがこれまで書いてきたように、コットンのイランとの合意に対する反対運動にはいくつかの問題が存在する。彼はイランに指導者たちに向けた経済制裁緩和に関する書簡を発表した後、コットンは、アメリカ外交政策を実行するにあたりバラク・オバマ大統領の権威を傷つけたと激しい批判を浴びた。踏んだり蹴ったりだったのは、コットンが主導した公開書簡のペルシア語翻訳版は中学生が書いたような内容であったことだ。

 

 それだけでもコットンに同情を寄せるのには十分だ。しかし、アーカンソー州選出の上院議員には素晴らしいお子さんが誕生したのだ。それはとても素晴らしいことだ。

 

(終わり)











 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、先日ネオコンの危険な議員トム・コットンが主導した公開書簡に対する批判に関する記事を皆様にご初会します。

 

 公開書簡に関しては、どうもトム・コットンの売名行為だったように思われます。

 

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共和党のテヘラン宛ての公開書簡が批判に晒されている(GOP letter to Tehran backfires

 

ジョーデイン・カーニー、クリスティーナ・ウォン筆

2015年3月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/defense/235301-gop-letter-to-tehran-backfires

 

共和党所属の連邦上院議員たちからイランの指導者たちへ宛てた公開書簡は、共和党を分裂させ、共和党を守勢に立たせ、オバマ大統領とテヘランとの間の核開発をめぐる交渉を無効にすることになる新たな経済制裁の連邦上院での可決のチャンスを潰えさせる危険を孕んでいる。


 オバマ大統領によるイランとの対話は民主党を長年にわたり分裂させてきたが、先月、共和党が連邦上院で、新たな経済制裁に対するオバマ大統領の拒否権を覆すのに十分な議席を得ることで、再び姿を現した。

 

 しかし、状況は一変し、47名の共和党所属の議員たちが署名したテヘラン宛ての公開書簡に対して怒りが向けられている。連邦上院多数党院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、オバマ大統領とイランとの交渉を台無しにすることになるであろう2つの法案の上院の可決の可能性が減少してしまったことに慌てている。

 

 火曜日、ホワイトハウスは公開書簡が発表された2日目に声明を発表し、共和党所属の議員たちが出した公開書簡を批判し、これを「無謀」で「間違った方向に導く」人気取りの行動と呼んだ。

 

『ニューヨーク・デイリー・ニュース』紙は、紙上にマコネル、2016年の大統領選挙の有力候補者であるテッド・クルーズ(テキサス州選出)とランド・ポール(ケンタッキー州選出)両上院議員と、一期目の連邦上院議員であるトム・コットン(アーカンソー州)の写真を掲載し、見出しには「売国奴(Traitors)」という単語を使った。トム・コットンは今回の書簡の主導者である。

 

 保守的な論調で知られる『ウォールストリート・ジャーナル』紙の編集局は公開書簡を批判し、オバマ大統領が逆襲に使うための「材料」にされると述べた。

 

 共和党内部でも公開書簡をめぐり争いが起きている。7名の共和党所属の上院議員が書簡に署名しなかった。彼らは同僚たちを公に批判している。

 

火曜日、スーザン・コリンズ連邦上院議員(メイン州選出、共和党)は記者団に対して次のように語った。「私たちにとって交渉が重要な局面に差しかかっているこの時にアヤトラに書簡を送るなど不適切だと考える。そして、より率直に言えば、私たちの憲法システムを説明したことでアヤトラが心を動かすことがあるとは思えないし、その点に疑念を持っている」。

 

 ジェフ・フレイク連邦上院議員は公開書簡について「有効」でもないし、「生産的」でもないと述べた。

 

 「現状においても交渉は厳しい状況にある。この種の書簡を送ることが有効ではないと私は考える」

 

 連邦上院外交委員会委員長のボブ・コーカー(テネシー州選出、共和党)は、公開書簡が「私たちが手に入れたいと望む通りの結果をもたらすのに有効ではない」と考えていると述べた。コーカーはまた、書簡に署名することは建設的ではないと考えたし、多くの共和党所属の議員たちが署名したことに驚いたと述べた。

 

 コーカーは「今週末まで私はこのように勢いがつくとは思わなかった」と述べた。

 

 ダン・コーツ連邦上院議員(インディアナ州選出)、ラマー・アレキサンダー連邦上院議員(テネシー州選出)、リサ・マコースキー連邦上院議員(アラスカ州選出)、サド・コクラン連邦上院議員(ミシシッピー州選出)の4名もまた公開書簡に署名しなかった。

 

コーツとマコースキーは2016年に再選を控えている。

 

 オバマ政権は今月末までの合意成立を目指している。これによってイランに対する経済制裁は解除されるが、その代わりにイランが核兵器を所有する能力の開発を阻止するという譲歩を得ることになる。

 

 アメリカはイランが活発な立ち入り調査を受け入れ、ウランの濃縮能力を制限するという約束を取り付けようとしている。現状で言えば、合意が達成されない場合、イランが核兵器を開発するのに十分な核燃料を手に入れるのに1年間ほどかかると言われている。

 

 オバマ大統領の対イラン外交についての懐疑は民主、共和党両党に存在している。そして、多くの民主党所属の連邦議員たちは先週行われたイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの議会演説に欠席した。ネタニヤフ首相は演説の中で、オバマ大統領は、イスラエルの安全を維持することが出来る良い内容の合意をイランとの間で結ぶことなど不可能だと主張した。

 

 ネタニヤフ首相の議会演説は論争を巻き起こした。これによって共和党側はいくらか勢いを得たように見えたが、連邦上院の民主党は、マコネル院内総務が今週中に行おうとしていたコーカー議員とロバート・メネンデス連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)が提出していた法案の採決に対して、早速難色を示した。この法案はイランとの合意を承認する前に、提案された合意内容を連邦議会で見直すというものだ。

 

コーカー=メネンデス法案自体は、マーク・カーク連邦上院議員(イリノイ州選出、共和党)とメネンデス議員が提出した法案の内容よりもソフトだと考えられている。その内容は、合意に達しない場合、もしくはイランが合意内容を破った場合に経済制裁を再開し、新たに科すというものである。経済制裁法案は、大統領が拒否権を行使してもそれを覆すだけの賛成票が得られるものと見られていた。

 

 しかし、現状では60票の賛成票を得られるかどうかはっきりしない。

 

 民主党側は議場でコットンが主導した公開書簡を非難した。書簡の内容は、2017年にオバマ大統領がホワイトハウスを去った後に、イランとの合意を反故にすると示唆している。

 

 バイデン副大統領は、連邦上院議員時代には外交委員会の委員長を務めていた。彼は公開書簡について、「これはオバマ大統領が他国と交渉する能力を著しく傷つける恐れがある」と発言した。

 

 バイデン副大統領は月曜日夜に発表した声明の中で次のように述べている。「議員たちによる公開書簡は、アメリカ憲法についての講義の体裁をとってはいるが、2世紀にわたるアメリカ合衆国の歴史を無視し、未来の合衆国大統領のアメリカを代表しての他国との交渉を行う能力を著しく損なうものとなっている。民主党だろうが共和党だろうが、大統領が外国との交渉をしにくくする内容なのである」。

 

 ヒラリー・クリントン前国務長官も自身の私的なEメール使用に関する記者会見の席上で共和党を厳しく批判した。彼女は書簡について、「アメリカの指導者たちが積み上げてきた最良の伝統から著しく逸脱するものだ」と述べた。

 

 コーツは声明の中で、共和党が政策をめぐる戦いで勝利を得るために党派による争いを止める必要があると指摘している。

 

コーツは声明の中で、「私たちは戦術の面で合意に達していなくても、オバマ大統領があらかじめ明言している拒否権の発動(veto)を覆すためには超党派の支援が必要であることを認識している」と述べている。

 

(終わり)










 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカ連邦上院の共和党の危険な動きについての記事をご紹介します。

 

 トム・コットン(Tom Cotton、1977年―、37歳)連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)が音頭を取って、47名の共和党所属の連邦上院議員たちが署名した公開書簡が発表されました。この書簡は「イラン・イスラム共和国の指導者たち宛て」となっており、アメリカ合衆国憲法システムについて説明した内容です。

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 トム・コットン

 

 この書簡の中で議員たちは、「現在のオバマ大統領と結んだ合意は、次の大統領の時には無効とすることもできるし、議会はいつでもその内容を修正することができる」と書いています。そして、「アメリカの大統領は4年間の任期を2回までしか務められないが、連邦上院議員は6年間の任期を無制限に務めることができる。オバマ大統領は2017年1月に退任するが、私たちはこれから数十年間議員であり続けられる」と書いています。外国との合意を簡単に反故にする、と自分たちで宣言してしまうのは外交儀礼としておかしいですし、何より、「アメリカと合意してもそれが反故にされてしまう」となると、アメリカと真剣に外交交渉をする国など出てこないでしょう(日本以外、但し日本の場合は交渉ではなく命令伝達のみ)。

 

共和党の政治家たちの劣化は先日のベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相の議会演説でも露呈しましたが、今回もそのことが明らかにされました。「政治家のレヴェルは国民のレヴェルより上に行くことはない」と言われますから、アメリカ国民がアホになっているとも言えるのでしょう。

 

 なんと馬鹿げた話でしょう。彼らは「自分たちアメリカの方から合意を破る」と宣言しているのです。また、この書簡に書かれた程度のアメリカ政治の知識は、どこの国の(日本の一部を除く)政治学専攻の学生でも常識です。それを慇懃無礼に書いているのは、失礼極まりないことです。挑発と言って良いでしょう。彼らは中東にまた一つ戦争を起こしたいのでしょうか?

 

 この疑問に対する答えは残念ながら「イエス」です。

 

 この書簡の音頭を取ったトム・コットンは危険極まりないネオコンのヤングスターであり、残念ながら共和党内でも未来の大統領ではないかといわれるほどの人物です。彼はアーカンソー州の片田舎に生まれ、ハーヴァード大学に進学しました。政治学で学士号を取得し(成績優秀者)、カリフォルニア州にある保守的な学校であるクレアモント大学院大学に進学しましたが、中退し、ハーヴァード大学法科大学院に進学し、弁護士資格を取得しました。学生時代は大学新聞『ハーヴァード・クリムゾン』紙の編集者となり、コラムを担当しました。また、大学内の共和党の学生組織に入っていました。ハーヴァード大学はリベラルな校風ですから、そこで保守的な態度を取るのは、「勇気のいる行動」であったと彼の学友は語っています。

 
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米陸軍では陸軍大尉まで昇進
 

 2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件に衝撃を受け、米陸軍に志願し、将校教育学校に入り、2005年から2009年まで米陸軍の将校としてアフガニスタンとイラクでの戦争に参加しました(父親もヴェトナム戦争に従軍した経験あり)。2006年に保守系のブログに投稿した文章が話題となり、ネオコンの大物ビル・クリストル(ネオコンの雑誌『ウィークリー・スタンダート』誌発行人)と知り合いました。その後、アーカンソー州に戻り、家業の肉牛の牧場で働いていました。そして、2013年に連邦下院議員に当選し、そして、2014年の中間選挙で連邦上院議員に当選しました。

 

 トム・コットンは「タカ派のホープ」として、これから大物政治家として成長していくでしょう。しかし、彼はとても危険な人物です。私は2016年の大統領選挙でヒラリーが当選した場合、彼女が8年間やれたとして、2024年の米大統領選挙の共和党候補として、このトム・コットンが出てくるのではないか、そして大統領になってしまうのではないかと思います。その時の世界情勢がどうなっているか分かりませんが、彼が出馬できないような状況になっていることを祈るのみです。


※副島隆彦先生の最新刊『日本に恐ろしい大きな戦争が迫り来る』(講談社)が2015年3月17日に発売されます。最新のアメリカ研究の成果、お楽しみに!


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共和党所属の連邦上院議員たちがイランに警告:合意は「ペンを少し動かせば」無効にできる(GOP senators warn Iran: Deal could be revoked with 'stroke of the pen'

 

デイヴィッド・マカビー筆

2015年3月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/international/235026-gop-senators-send-warning-on-iran-deal

 

共和党所属の連邦上院議員47名が、イランとホワイトハウスに対しての公開書簡を出し、その中で、イランの核開発プログラムに関する合意はオバマ大統領が退任すれば覆される可能性があると示唆した。

 

このニュースを最初に報じたブルームバーグは、議員たちは書簡の中で「我が国の政府との間で行われている核開発をめぐる交渉を見ていて、貴国は我が国の憲法システムについて完全に理解しておられないのではないかと懸念を持った。従って、私たちは、貴国に対して我が国の憲法システムの2つの特徴をお知らせして、それらに注目して頂きたいと考えている」と書いている、と報じた。

 

 書簡には、「連邦議会(Congress)で承認されないものは何であっても単なる行政府による合意でしかない」と書かれている。

 

 この公開書簡を主導したのは、トム・コットン(Tom Cotton)連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)で、連邦上院多数党(共和党)院内総務のミッチ・マコネル(Mitch McConnell)連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)も署名している。書簡には、2016年の大統領選挙への出馬が有力視されているマルコ・ルビオ(Marco Rubio)連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)、ランド・ポール(Rand Paul)連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)、テッド・クルーズ(Ted Cruz)連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、リンゼー・グラハム(Lindsey Graham)連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)も署名している。

 

 書簡の中で議員たちは、イランの核開発をめぐる合意(少なくとも10年間は維持される)は、オバマ大統領が2017年にホワイトハウスを離れれば、無効にされる可能性があると警告を発している。

 

 書簡には、「次期大統領は、ペンを少し動かすだけで、このような行政府による合意を無効にすることはできる。また、連邦議会はいつでも合意内容を修正することができる」と書かれている。

 

 この公開書簡はイランの人々に宛てて書かれているが、この書簡は多くの議員たちがイランとの核開発プログラムをめぐる最終合意に関して自分たちも影響を与えたいと望んでいることを示している。議員の多くは、ホワイトハウスが十分に厳しい内容の合意を結ばないのではないかと懸念を持ち、合意はイランの核兵器を所有能力の開発を遅らせるだけのことではないかと考えている。

 

昨年、ホワイトハウスはイランとの間の合意に議会の承認を必要としない方法を模索していると報じられた。

 

 連邦議会はこれからの数週間でイランに対する新たな経済制裁について審議を行う。連邦議会で新たな経済制裁が可決される前に合意が達成されるかどうかは不透明な状況だ。

 

(終わり)

 

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<公開書簡の翻訳>

 

2015年3月9日

 

イラン・イスラム共和国の指導者たちへの公開書簡

 

 

 我が国の政府とあなた方との間の交渉を見ていると、あなた方は我が国の憲法システムについて完全には理解されていないのではないかと私たちは考えるようになった。従って、私たちは我が国憲法の2つの特徴にあなた方の注意を喚起するためにこの書簡を書いている。それは、国際的な合意を結ぶ力と連邦レヴェルの各機関の様々に異なる特徴についてである。あなた方は交渉の過程でこのことを真剣に考慮されるべきだ。

 

 第一に、我が国の憲法では、大統領は国際的な合意について交渉し、連邦議会はその合意を承認する際に重要な役割を果たす。条約の場合は、連邦上院で3分の2以上の賛成で批准される。いわゆる連邦議会による承認には連邦下院と連邦上院の両方で過半数の賛成が必要である(手続き上の規定で、連邦上院では5分の3以上の賛成が必要となる)。連邦議会の承認しないものはいかなるものも行政府による合意でしかない。

 

 第二に、我が国の憲法に規定されている各機関はそれぞれ異なった特徴を持っている。例えば、大統領は4年間の任期を2回までしか務められないが、連邦上院議員は6年間の任期を無制限に務めることができる。現在の状況に当てはめれば、オバマ大統領は2017年1月に大統領証を退くが、私たちのほとんどは2017年1月以降も上院議員の職にとどまる。おそらく数十年間とどまることになるだろう。

 

 私たちは、この書簡によってあなた方の我が国の憲法システムに関する知識が豊かになること、そして相互理解と核開発をめぐる交渉過程の明確化を促進することを希望する。

 

(終わり)










 
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