古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:民主社会主義

 古村治彦です。

 このブログで先月、民主社会主義勢力の躍進についてご紹介した。ニューヨーク市やコロラド州デンヴァーといった大都市での民主社会首位勢力の躍進は日本でも報道された。ニューヨーク市を地盤とするアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員やニューヨーク市長ゾーラン・マムダニの人気、特に若い人たちの間での人気は高まっている。AOCは大統領選挙の候補者としても名前が挙がっているが、まだ30代であり、まずはニューヨーク州選出の連邦上院議員への鞍替えを考えているのではないかと思う。

 最近で言えば、ミシガン州の連邦上院議員選挙民主党予備選挙で、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が支援した急進左派のアブドゥル・エルサイードが、中道穏健派のヘイリー・スティーヴンス連邦下院議員を破って、民主党の候補に選ばれた。今年11月の本選挙で、共和党の候補者マイク・ロジャース元連邦下院議員と連邦上院議員の議席を争うことになる。

 エルサイードはイスラエル、特にベンヤミン・ネタニヤフ首相への激しい批判を選挙戦で展開していた。ユダヤ人やユダヤ教徒は切り離し(エルサイードは「ユダヤ人とユダヤ教を愛し尊敬している」と発言している)、イスラエルの実行している政策とその責任者であるネタニヤフ首相への批判を展開した。これに対して、アメリカ政治を牛耳ってきたイスラエル・ロビーの代表格AIPACが対抗馬であるスティーヴンス連邦下院議員に多くの選挙資金と反エルサイードのCMを展開したが、エルサイードが勝利した。本選挙に向けて、共和党のロジャースにイスラエル・ロビーから莫大な資金が流れることになるだろうが、それがかえってロジャースの足を引っ張る可能性もある。

 ウィスコンシン州知事選挙では、フランチェスカ・ホン州下院議員が支持を拡大している。現職で選挙を不出馬を表明したトニー・エヴァースは、サラ・ロドリゲス副知事を担ごうとしたが、選挙資金をめぐるスキャンダルで出馬断念となり、ミルウォーキー郡のデイヴィッド・クロウリー郡長を支援することになった。急進左派の勢力に穏健中道や民主党エスタブリッシュメントたちは戦々恐々としている。それは自分たちの既得権益が荒らされるということもあるが、本選挙で、無党派層から「急進的過ぎる」ということで支持を得られないという可能性もあるからだ。

 実際に、アメリカ民主社会主義者(DSA)に所属し、民主党予備選挙に立候補し勝利した候補者がDSAから抜け、その理由を「選挙区の有権者を団結させる、まとめる」ためとしている。民主社会主義勢力の勢いは伸びているが、民主社会主義を支持する人たちの支持だけで本選挙を勝てるということはない。やはり穏健中道や政治的関心の低い人たちも巻き込んでいかねばならない。民主社会主義勢力としては、これからいかにしてリーチを広げていくかということが重要になってくる。

(貼り付けはじめ)

急進左派が激戦州ミシガンで勝利、米民主予備選 中間選挙の試金石

Nolan D. McCaskill ロイター通信

202685日午後 5:00 GMT+931分前更新

https://jp.reuters.com/world/us/N2O2ZVTILNNM3L3GCA6V2PH4SA-2026-08-05/

[5日 ロイター] - 11月の米連邦上院選に向け、中西部ミシガン州で実施された民主党の上院予備選で、イスラム系の急進左派のアブドゥル・エルサイード氏が勝利した。穏健派候補のヘイリー・スティーブンス下院議員を接戦の末に破った。

エルサイード氏は5日に開いた記者会見で、民主主義について「今後は常に『これは国民のものであり、われわれが主導権を握る』と断言できるようになる」と語った。

AP通信によると、開票率99%時点でエルサイード氏の得票率は48.5%、スティーブンス氏は47.5%だった。

エルサイード氏は「メディケア・フォー・オール(国民皆保険制度)」を提唱するなど、民主社会主義を掲げ、イスラエルへの軍事支援停止を公約に選挙戦を展開した。一方、スティーブンス氏は民主党指導部や親イスラエル団体の支援を受けていた。

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写真はイスラム系の急進左派のアブドゥル・エルサイード氏。85日、米ミシガン州デトロイトで撮影。 REUTERS/Rebecca Cook

今回の予備選は、経済ポピュリズムや反エスタブリッシュメント(既得権益層)を訴える急進左派と、党主流派に近い穏健派の対決という構図となり、民主党の今後の方向性を占う試金石として注目された。また、イスラエル支援を巡る対立も主要な争点となった。

ミシガン州は2024年の米大統領選でトランプ大統領が勝利した激戦州の一つ。エルサイード氏は州全体の予備選で勝利した初の急進左派候補となる。

11月の本選では、共和党候補のマイク・ロジャース元下院議員と対決する。

ロイター/イプソスが4日までにまとめた最新の世論調査によると、民主党支持者で「リベラル」と自認した割合は71%、「保守」と回答した割合は16%だった。イスラエルへの軍事・経済支援については、支持が16%にとどまり、57%が反対だった。

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メモ:左派がエルサイードの勝利の勢いを取り込もうとしている(The Memo: Left looks to seize on momentum from El-Sayed’s win

ナイオール・スタンジ筆

2026年8月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/6012536-abdul-el-sayed-michigan-democratic-primary-progressive-movement/

火曜日、ミシガン州やその他のいくつかの州で行われた予備選挙の結果は、必ずしも圧倒的な勝利とは言えなかったものの、民主党左派は依然として力強い勢いを維持した。

ミシガン州での注目の選挙戦は、進歩主義派(the progressive)の公衆衛生専門家アブドゥル・エルサイードが僅差で勝利した。これによりエルサイードは、マイク・ロジャース元連邦下院議員(ミシガン州選出、共和党)と戦う、連邦上院選挙の民主党公認候補となる。

ヘイリー・スティーヴンス連邦下院議員(民主党)に対するエルサイードの予備選挙勝利は、事前の世論調査の予測よりもはるかに接戦となった。予備選挙直前の複数の調査ではエルサイードが2桁のリードを保っていたが、最終的にはスティーヴンスを約1ポイント差で下す結果となった。

進歩主義派のストラティジストたちは、この結果を期待外れと見なしたり、勝利の差が小さかったことを11月の本選におけるロジャースとの対決に向けた警告信号と捉えたりする見方を否定している。

むしろ彼らは、エルサイードが成し遂げた偉業の大きさを強調している。公職に就いた経験が一度もない彼が、外部からの巨額の資金援助という圧倒的な強みを持つ4期目の現職女性連邦下院議員を打ち負かしたからだ。

スティーヴンスの立候補を支援し、エルサイードを阻止するために費やされた資金は6000万ドルを超えた。その総額の約半分は、AIPACthe American Israel Public Affairs Committee、アメリカ・イスラエル公共問題委員会)関連の資金源から拠出されたものだ。

ガザ地区におけるイスラエルの行動に対し、民主党支持者の多くが強い反発を抱く中、AIPACによる資金提供は党内で大きな論争の的となっている。イスラエルの行動を「ジェノサイド(genocide)」と呼ぶエルサイードは、このAIPAC問題をスティーヴンスへの攻撃材料として利用しようとした。

全体像としては、エルサイードは外部からの資金投​​入において約8対1という圧倒的な劣勢にありながらも、最終的に勝利を収めたということだ。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の元外交政策顧問であり、現在は国際政策センター副代表を務めるマット・ダスは本コラムに対し、エルサイードの選挙戦の結果が期待外れだったとする見方は「馬鹿げている」と語った。

ダスは「要するに、アブドゥル・エルサイードは前例のない規模の外部資金攻勢に直面し、彼を徹底的に排除しようとする民主党主流派とも対峙しなければならなかった。しかし彼は、素晴らしいメッセージ、確かな政治的手腕、そして極めて優れた組織力によって、それらを乗り越えた」と述べた。

エルサイードとスティーヴンスの選挙戦は、動揺が続く民主党内に存在するより大きな対立構造を象徴するものだった。

イスラエル・パレスチナ問題を越えて、エルサイードはよりポピュリスト的なメッセージを前面に押し出した。それは「政治から金を排除し、人々のポケットに金を入れ、全員にメディケア(公的医療保険)を(Money out of politics, money in your pocket, Medicare-for-All)」というスローガンに集約される。一方、より慎重で中道的な人物であるスティーヴンスは、対立候補を「セレブリティ(celebrity)」候補だと批判し、本選挙では勝てない人物だと決めつけた。

エルサイードは、サンダース上院議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、そして同じミシガン州選出のラシダ・トレイブ連邦下院議員(民主党)など、進歩主義派運動の主要な有力者のほぼ全員から支持を受けた。

スティーヴンスは、引退を表明していたゲーリー・ピーターズ連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)に加え、グレッチェン・ウィットマー・ミシガン州知事(民主党)やチャールズ・シューマー連邦上院少数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)からの支持を取り付けていた。

エルサイードの勝利を受け、民主党は迅速に結束を図った。ピーターズとウィットマーはエルサイードを支持し、スティーヴンス自身も支持を表明した。時に激しい対立もあった予備選挙の後だったが、彼女のメッセージは指名候補となったエルサイードに温かく受け止められた。

シューマーと、連邦上院民主党の選挙活動を統括するキルステン・ギルブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、エルサイードを支持する共同声明を発表した。また、シューマーに近い政治活動委員会(PAC)である「連邦上院多数党PACSenate Majority PAC)」は、エルサイードの立候補を後押しする巧みな広告を公開した。

それでも、エルサイードを勝利に導こうと党内の各派閥が結集している状況であっても、民主党内の亀裂がすぐに完全に修復されることはないだろう。

近年、左派の挑戦者たちは、党主流派寄りの現職議員を相手に大きな成果を上げている。彼らは、より野心的な政策課題と、それを実現するために戦う強い情熱を求める党の草の根支持層(the party’s grassroots supporters)の多くのエネルギーをうまく取り込んできた。

火曜日には、もう1人の進歩派であるミシガン州下院議員ドノヴァン・マッキニー(民主党)が勝利を収めた。マッキニーは、ミシガン州連邦下院第13選挙区の民主党予備選挙で現職のシュリ・サネダー連邦下院議員(民主党)を破った。

ミシガン州の別の地域でも左派が勝利を手にした。「サンライズ・ムーブメント(Sunrise Movement)」共同創設者であるウィル・ローレンスが、ミシガン州第7選挙区の連邦下院民主党予備選挙で勝利を確実にした。

ミシガン州でのこれらの勝利は、左派が収めた一連の成果の最新の事例に過ぎない。

6月のニューヨーク州予備選挙では、アドリアーノ・エスパイヤット連邦下院議員(民主党)が、「アメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of AmericaDSA)」のメンバーであるダリアリザ・アビラ=シュバリエに敗れた。ダン・ゴールドマン連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)も、左派のライヴァルであるブラッド・ランダーに敗れた。

その1週間後には、ダイアナ・デゲット連邦下院議員(コロラド州選出、民主党)が予備選挙でDSAメンバーのメラト・キロスに敗れた。デゲットは連邦議会で16期目を目指していたが、彼女の初当選は1997年であり、それはキロスが生まれた年でもあった。

それ以前にも、ニューヨーク市長選挙でゾーラン・マムダニ(民主党)がアンドリュー・クオモ元知事(当時)を破るという歴史的な勝利を収めた出来事があった。

しかし、左派は途中で敗北も喫している。火曜日にはミズーリ州で敗北があった。進歩主義派の有力候補であったコリ・ブッシュが、かつて保持していたセントルイス地域の議席をウェスリー・ベル連邦下院議員(民主党)から奪還しようと挑みたが、大差で敗れた。

民主党の支持層内部におけるこうした意見の相違は、数多くの著名な対立も引き起こしている。

ジョン・フェッターマン連邦上院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)やヴェテランのストラティジストであるジェームズ・カーヴィルなど、より中道的な路線を支持する人々は左派を激しく批判している。彼らは、社会が分断されている状況下であっても、選挙の勝敗は中道層を取り込めるかどうかにかかっていると主張している。

これに対し、進歩主義派も同様の応酬を見せている。サンダースは火曜夜、CNNのアビー・フィリップのインタヴューに応じ、もしカーヴィルが民主党内の左派勢力に対してそれほどの疎外感を抱いているのなら、「自分で新しい党を立ち上げる(start his own party)」べきだと示唆した。

中道派が特に懸念しているのは、ミシガン州におけるエルサイードのような人物の動向だ。ミシガン州は激戦州の1つであり、2024年の選挙ではトランプ大統領が当時のカマラ・ハリス副大統領を僅差で破った場所でもある。

エルサイードはDSAのメンバーではなく、自らを社会主義者と称していないが、それでも共和党側は彼を主流派から外れた人物として印象づけようとするだろう。

ロジャースは水曜朝、ソーシャルメディアへの投稿でエルサイードを「過激派(extremist)」と呼んだ。

これに対し、ダスのような進歩主義派は、左派寄りの人物こそが有権者の現在の心情と共鳴するのに適した立場にあると反論した。

ダスは、「政治を『左から右』という軸で捉え、地理的な中央にいるのが最も安全だとするような見方には、私はどうも説得力を感じない」と述べた。

ダスは続けて、「今は、既成勢力による政治のあり方に愛想を尽かすアメリカ人が増えている時期だ」と続け、有権者が求めているのは「何よりもまず、真実を語ってくれる候補者であり、自分たちが苦境にあることを理解し、それを救うためのヴィジョンを提示してくれる候補者だ」と語った。

ミシガン州をはじめとする各地で、左派はこうした見解を実際に試す機会を迎えることになる。

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民主社会主義者たちはウィスコンシン州で次の大勝利を目指してホンに期待を寄せる(Democratic socialists turn to Hong in Wisconsin with hopes for next big win

キャロライン・ヴァキル筆

2026年8月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/6008300-hong-wisconsin-democratic-socialist-primary-test/

ウィスコンシン州知事選におけるフランチェスカ・ホン州下院議員(民主党)の着実な支持拡大は、今回の選挙戦において、民主社会主義者や極左勢力にとって最大の試練の場となりつつある。

火曜日の予備選挙を控え、ホンは民主党候補者の中で有力な地位を占めているが、一方で、ウィスコンシン州知事トニー・エヴァースを含む党主流派は、ミルウォーキー郡のデイヴィッド・クロウリー郡長を支持する姿勢を固めている。

エヴァースたちは、ホンが11月の本選挙で共和党の指名候補となる見通しのトム・ティファニー連邦下院議員に勝利する可能性は低いと示唆しているほか、彼女の出馬が接戦となっている他の下院選や地方選の民主党候補に悪影響を及ぼしかねないと懸念している。

しかし、ホンは、有権者は党主流派に対して不満を抱いていると主張し、現代初の民主社会主義者としての知事就任を目指す中で、有権者にとって最も重要な課題に取り組むことに注力している。

ホンは『ザ・ヒル』誌のインタヴューに対し、「労働者階級出身の候補者として、『自分たちと同じ人間だ』と有権者に言われるとき、民主党や他の候補者が誤解しているかもしれないのは、人々が求めているのは『自分たちを気にかけてくれる人物』だという点だ」と述べた。

今年、民主社会主義者や進歩主義派は、予備選挙での指名獲得や現職議員を破るなど、目覚ましい躍進を遂げてきた。しかし、こうした勝利の多くは、ニューヨーク州やコロラド州といった民主党の地盤が強固な連邦下院選挙区でのものだった。そうした中、激戦州であるミシガン州では、火曜日に行われた上院予備選挙において、進歩主義派のアブドゥル・エルサイードが、穏健派のヘイリー・スティーヴンス連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)を僅差で破るという結果が出た。

ホンは、8月11日に行われる知事選挙でティファニーに挑むべく、他の3人の民主党候補と競い合う中、この連勝の勢いと反既成勢力のムードを追い風にしたいと考えている。現職のエヴァースが3選不出馬を決定したため、『クック・ポリティカル・レポート』によると、この選挙戦は「接戦(toss-up、トスアップ)」と予測されている。

ウィスコンシン州を拠点とする民主党のストラティジストであるジョー・ゼペッキは「民主党側のエネルギーがどこにあるのか、もはや誰も見て見ぬふりはできないだろう」と語った。

しかし、激戦州であるウィスコンシン州(2024年の選挙ではトランプ大統領と民主党のタミー・ボールドウィン連邦上院議員の双方を選出した)において、ホンは厳しい視線に晒されている。その理由は、「アメリカ民主社会主義者(DSA)」との関わりや、過去にソーシャルメディアで行った発言にある。それらの発言には、警察予算の削減や警察の廃止、感謝祭の中止、さらにはウィスコンシン州発祥の有名チェーン店「カルヴァース」への批判などが含まれていた。

DSAマディソン支部のメンバーであり、他のいくつかの地元支部からも支持を受けているホンだが、現在は過去の発言やDSA全国組織から距離を取ろうと努めている。

「知事に警察予算を削減する権限はなく、私はスローガンだけで政治を行うつもりもない」と、ホンは先月行われた民主党知事候補討論会(唯一の討論会)で述べた。また、感謝祭やカルヴァースに関する投稿については、「冗談で」行った可能性もあると『ザ・ヒル(The Hill)』誌に語っている。

「それらは、私自身が異なる立場にいた時に抱いていた考えであり、今は知事選挙に出馬するという立場にある」と彼女は述べ、さらに次のように続けた。「何を実現できるかについて、分別を持ち、現実的である必要がある」。

しかし、来週の民主党の指名争いでホンが勝利した場合の11月の本選挙での勝算を民主党主流派が懸念する中、共和党側は彼女の過去の発言を格好の攻撃材料にしている。

ティファニーは火曜日、ソーシャルメディアへの投稿でホンを揶揄し、「私の立場をはっきりさせておきたいが、知事に就任しても感謝祭(サンクスギビング)を中止することはない。念のため、改めて言っておく価値があると思う」と書いた。

トランプ大統領の支持を受けるティファニーは、ホンの進歩主義的な政治姿勢を徹底的に攻撃している。彼女は、シェフであり元レストラン経営者でもあるホンを「急進的(radical)」と呼び、11月の選挙ではウィスコンシン州として「大きな政府による社会主義を拒絶(reject big-government socialism)」するよう訴えている。

一方、エヴァースを含む一部の民主党員は、本選挙でティファニーと対決する候補者としてホンが最適であるかどうかに疑問を呈している。

エヴァース知事は月曜日の『ミルウォーキー・ジャーナル・センティネル』紙とのインタヴューで、ホンが11月にティファニーに勝利するのは「おそらく無理だろう(probably not)」と述べた。彼は、民主社会主義者であるホンを「極めて才能のある人物」と評しつつも、「結局のところ、重要なのは政策課題だ」と付け加えた。

エヴァース知事の発言について尋ねられたホンは、『ザ・ヒル』誌に対し、「私たちが掲げている政策課題こそが有権者の共感を最も呼んでいるものであり、最も多くの票を獲得する人物こそが、当選の可能性が最も高い候補者だと考えている」と語った。

エヴァース知事は、一度は選挙から距離を取ったものの、サラ・ロドリゲス副知事(民主党)が選挙資金をめぐる疑惑を受けて出馬を断念した後に再出馬したデイヴィッド・クロウリー郡長に対し、最後の最後で支持を表明した。

クロウリーは、同じく民主党のグウェン・ムーア連邦下院議員(ウィスコンシン州選出)からも支持されている。一方、ウィスコンシン州選出の民主党連邦議会議員のうち、残る2人であるボールドウィン連邦上院議員とマーク・ポーカン連邦下院議員は、この選挙戦について態度を明らかにしていない。ホンは、イルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出)やロウ・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出)といった進歩主義派の民主党議員から支持を受けている。

デーン郡民主党のライアン・センデルバッハ委員長は、ウィスコンシン州知事選の予備選挙、とりわけホンの出馬をめぐって、党内に「不安や緊張感」が広がっていることを認めている。

民主党員の間では、ホンが指名を獲得した場合、連邦下院選や州議会選における党の勝算に悪影響が及ぶのではないかという懸念が生じている。

支持率が1桁にとどまっているもう一人の知事選候補、ケルダ・ロイズ州上院議員(民主党)は、『ザ・ヒル』誌に対し、「選挙名簿のトップ(知事候補)は、当然ながら下位の候補者にも影響を及ぼす」と語った。

ロイズは、共和党が予備選挙でホンを支援するために資金を投じている理由について、「有権者は自問すべきだ」と指摘した。

ロイズはさらに、「彼らは明らかに、トム・ティファニーが知事になるだけでなく、ウィスコンシン州で共和党が知事職と州議会上下両院を独占する(trifecta、トライフェクタ)道筋があると確信しているのだろう。そのことは、私たち全員にとって脅威となるはずだ」と付け加えた。

民主党は、ウィスコンシン州連邦下院第3選挙区での議席奪還を重要な好機と捉えている。この選挙区では、2024年に共和党のデリック・ヴァン・オーデン連邦下院議員が民主党のレベッカ・クックを僅差で退けた。選挙分析サイト「Decision Desk HQ」は、クックとヴァン・オーデンが再対決するこの11月の選挙戦において、民主党が優位に立つと予測している。

また、マディソン(ウィスコンシン州)では、民主党が州議会(下院および上院)の主導権奪還を目指している。ウィスコンシン州議会は2011年以来、共和党が支配し続けてきた。

一方で、ウィスコンシン州の他の民主党関係者からは、ホンの勝算や、もし彼女が火曜日の予備選挙を勝ち抜いた場合に11月の本選挙へ及ぼす影響について、期待を寄せる声も上がっている。

センデルバッハは、「人々の関心事や政治に求めるものは非常に多様だ。従って、一般的に『苦戦するだろう』と見られている地域で、フランチェスカ・ホンが実際に苦戦するとは限らないと私は見ている」と述べ、さらに次のように続けた。「有権者は単に『左右のスペクトラム(spectrum、政治的立ち位置)』上に存在し、その適当な物差しの上で自分に最も近い候補者を選ぶ、といった単純な存在ではない」。

ゼペッキの見解では、現在の国政レヴェルの政治情勢から考えて、ホンは極めて有利な立ち位置にいるということだ。

「既成政治への反発が強く、政治家に苛立ち、何か新しいものを求めている人々にとって、彼女はまさにその通りの候補者というポジションにいる」と彼は語った。

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ミシガン州連邦下院選挙の候補者が選挙区の「団結」を図るためDSAを離脱したと表明(Michigan House candidate says he left DSA to ‘unite’ district

フィンヤ・スワイ筆

2026年8月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/6012655-lawrence-lapses-dsa-membership/

進歩主義派の候補者であるウィル・ローレンス(民主党)は水曜日、ここ1カ月の間に「アメリカ民主社会主義者(DSA)」の会員資格を失効させたことを明らかにした。ローレンスはその理由について、激戦区であるミシガン州第7選挙区において、浮動票層を結束させることに注力したかったためだと説明している。

ローレンスは水曜日のCNNとのインタヴューで、「DSAや彼らが全米で展開している活動には大いに敬意を抱いているが、私たちがここで掲げている政策綱領は、第7選挙区の各地で有権者と対話を重ねる中で作り上げられたものであるという点を、明確にしておく必要があると感じた」と語った。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の支持を受ける「サンライズ・ムーブメント」の共同創設者であるローレンスは、ランシングを拠点とする選挙区で行われた火曜日の民主党予備選挙(3候補による争い)で勝利し、11月の本選挙ではトム・バレット連邦下院議員(ミシガン州選出、共和党)と対決することになる。

ローレンスは、自身の選挙運動が選挙区と住民から寄せられた懸念事項を主軸に据えていることを有権者に理解してもらうため、アメリカ民主社会主義者(DSA)の会員資格を更新しなかったと述べた。

「私はこの選挙区の住民を代表し、人々の心を一つにするような課題に取り組むためにここにいるのだということをはっきりとさせておきたい」とローレンスは語った。

ローレンスは、生活費、医療費、ガソリン代、食料品価格といった主要な進歩主義派の争点を挙げ、これらが選挙区全体で人々の共感を呼んでいると指摘した。そして、自身の目標は有権者を「団結させる(unite)」ことだと述べた。

ローレンスはCNNに対し、DSAの会員資格を更新しなかったのは本選挙に進出したことによる判断ではないと語った。また、DSAとの間に根本的な意見の相違があるかどうかについては明言を避け、個別の政策課題についてはその都度対応していく意向を示した。

その代わりに、彼は自らを「オーガナイザーと連携を築く者(organizer and coalition builder)」と位置づけ、地域社会の懸念に基づいた政策課題を掲げていると説明した。

ローレンスは火曜日に行われた民主党予備選挙で、元駐ウクライナ米大使のブリジット・ブリンクと、元海軍特殊部隊(SEALs)隊員のマット・マースダムを破った。ブリンクはミシガン州のジェニファー・グランホルム元知事(民主党)とジム・ブランチャード元知事(民主党)の支持を受けていた一方、マースダムはエリッサ・スロットキン連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)の支持を受けていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカで民主社会主義への支持が若い人たちを中心に拡大していることはこのブログでもご紹介している。都市部を中心に、地方選挙や国政選挙で民主社会主義を標榜する候補者たちが躍進、もしくは当選している。連邦議員でも下院ではあるが、民主社会主義者の議員が増えることが確実だ。その多くはニューヨーク市長ゾーラン・マムダニの支援を受けている。マムダニのアメリカ政界における存在感と影響力が増している。アメリカの左派、進歩主義派の躍進の中で、ライジングスターということになる。

 マムダニはニューヨーク市長洞泉寺に目玉政策として、手ごろな住宅と無料の公共交通を挙げている。アメリカの都市部の居住費はインフレも相まって高騰しており、何度も書いているが、きちんとした仕事のあるホームレスになり人々が多く出ている。それでは都市部から離れて暮らせばよいとなるが、日本のように通勤で1時間半とか2時間となると、ワークライフバランスが崩れてしまう。

 マムダニ市長はニューヨーク市に10年間で20万戸の住宅建設を進めようとしている。生活が苦しい、大学を卒業しても生活ができるだけの給料がもらえる仕事に就けない若者たちがアメリカの体制自体に不満と疑問を持っている。彼らが求めているのは他の先進諸国並みのことだ。国民皆保険もその1つだ。公共住宅や国民皆保険などはこれまで、アメリカでは「社会主義的」として忌避されてきた。「社会主義」という言葉自体が忌避されてきた。「日本やヨーロッパはアメリカ的ではないから、社会主義的だから、ダメなんだ」と言って、アメリカが素晴らしい論をこれまでアメリカ人たちは述べてきた。しかし、実際の生活がどんどん苦しくなり、「アメリカ帝国の臣民」としての「分け前(dividend)」としての豊かな生活ができなくなり、「アメリカンドリーム」も幻想ということになれば、資本主義に対しての不満と疑念が大きくなる。それをすくいあげているのが民主社会主義である。

 これは大きく言えば、アメリカの国力低下がもたらしている現象である。国力が低下し、分け前を寄こせ運動が起きている。これからアメリカも大きく変化していくことだろう。世界の大きな構造変化が起きる時代が始まっている。

(貼り付けはじめ)

アメリカのZ世代の7割が社会主義を支持斎藤幸平「日本も他人事ではない"赤いニューヨーク"の選択」

PRESIDENT Online 2026/06/22 6:00

斎藤 幸平

東京大学大学院総合文化研究科准教授

https://president.jp/articles/-/114868

https://president.jp/articles/-/114868?page=2

https://president.jp/articles/-/114868?page=3

https://president.jp/articles/-/114868?page=4

https://president.jp/articles/-/114868?page=5

生活基盤をおびやかす物価高が止まらない。『人新世の「黙示録」』(集英社シリーズ・コモン)を出した経済思想家の斎藤幸平さんは「社会に問うべきなのは、なぜ普通に働いている人が普通に暮らせないのか、だ」という――。

資本主義より社会主義を好むZ世代

「ある『亡霊』が、アメリカを徘徊している。それは、Z世代の社会主義という亡霊だ」

今のアメリカの若者を見ていると、マルクスにならって、こんなふうに言いたくなる。彼らのあいだで社会主義の人気が急上昇しているのだ。最近の世論調査では、アメリカの大学生のうち67%が社会主義を好意的に見ているという結果が出ている(*1)。

英『The Economist(エコノミスト)』誌も、「Z世代の社会主義にどう立ち向かうか」という特集を組んだばかりだ(66日号)。この記事で『エコノミスト』誌は、パニックに陥ったかのように、アメリカにおける社会主義の台頭を恐れ、社会主義が成長やイノベーションの停滞をもたらすというカビの生えたような社会主義批判を繰り返している。

正直、その様は滑稽ですらある。アメリカの若者にとっては「社会主義」という言葉が、ソ連崩壊とともに終わった古臭い言葉ではなくなっているのは、先の世論調査のとおりだ。

Z世代の若者たちは資本主義が引き起こした生活の不安に日々、苛まれている。「家賃が払えない」「医療費が高すぎる」「子育てができない」「食料品が買えない」「通勤だけで生活が削られる」。豊かさをもたらすと教えられてきた資本主義に苦しめられ続けた結果、彼らにとって、社会主義こそが、資本主義とは別の社会を構想するための、もっとも実感に近い言葉になりつつあるのだ。

1 「米ニュースサイトAxios」 Poll College students prefer socialism to capitalism 

●民主的社会主義者のニューヨーク市長誕生

その変化を象徴しているのが、202511月のニューヨーク市長選で勝利したゾーラン・マムダニである。

34歳の民主的社会主義者であるマムダニは、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモや共和党候補を破り、ニューヨーク初のムスリム、南アジア系市長となった。投票者数は200万人を超え、市長選としては1969年以来の高投票率だった。

これは歴史的勝利であり、「左派ポピュリズム」の単なる一例として片づけることはできない。振り返れば、2011年のウォール街占拠運動から始まって、バーニー・サンダース旋風、ブラック・ライブズ・マター運動、気候正義運動、そしてガザをめぐる抗議運動を経て、若い世代は、自己責任や格差を当然視する政治言語に深い不信を抱くようになった。実際、若者の投票率は過去のニューヨーク市長選と比べて大きく上昇し、とりわけ若い女性や有色人種の若者がマムダニを強く支持したのである。

若い世代にとって「社会主義」とは、国家がすべてを命令する全体主義を意味しない。それは、生活に不可欠なものを市場の気まぐれと富裕層の投資判断に委ねさせず、もちろん一部の企業に独占などさせない、という、素朴で切実な日々の要求である。

家に住めること。子どもを安心して預けられること。健康な食べ物を買えること。自由に移動できること。これらを商品としてではなく、誰もがアクセスできる〈コモン(共有財)〉として再建すること。それがマムダニの言う「社会主義」の核心である。

●市政で注目を集める「家賃凍結」の攻防

マムダニが掲げた政策は、きわめて具体的だ。市営食料品店の設置、保育の無償化、公営バスの高速化と無償化などだ。どれも、抽象的なイデオロギーではなく、インフレでニューヨーカーの暮らしを圧迫している生活コストを下げるための政策である。

202611日に市長に就任したのち、マムダニの政策はすぐに実行段階に入った。本稿執筆時点の6月上旬に、もっとも注目されているのは家賃凍結をめぐる攻防だ。

ニューヨーク市には中低所得者層の賃貸住宅を確保するために「家賃安定化(Rent Stabilization)」制度という法的規制があり、対象となる物件は市のガイドライン委員会の決定にそって賃上げ率が制限されている。この運用を強化しようとしているのだ。

まず5月に市の家賃ガイドライン委員会は、1年契約では02%、2年契約では04%という、極めて低い家賃上昇率の暫定値を採択した。つまり、6月下旬の最終決定で、家賃の完全凍結もありうる数字が示されたのだ(ただし、不動産業界や家主団体は、修繕費や保険料の高騰を理由に強く反発しており、予断は許さない)。

●住宅、保育、食料、交通を〈コモン〉へ

手ごろな公営住宅の供給を増やす「攻め」の政策もマムダニは進めている。5月に発表された「ブロック・バイ・ブロック」計画は、10年で20万戸のこうした住宅(アフォーダブル住宅)を新規に建設するというものだ。さらに既存住宅を修繕して20万戸を確保する。市の資本投資を拡大し、住宅供給を市場任せにしない姿勢が明確に打ち出された。

また、公営住宅の建設にかかわる労働者には時給40ドル以上を支払うという。金融で儲ける人たちではなく、「労働者の街ニューヨーク」を取り戻すべく政策がデザインされているのだ。

保育については、2歳児向けの無料プログラムが4つの地域で募集開始となり、年間で最低でも250万円かかっていた子育て世帯の費用を軽減できることになった。市営食料品店についても、イースト・ハーレムに最初の候補地が発表され、任期中に五つの行政区すべてで開設する計画が示されている。

バスの無料化・高速化に関しては、管轄するニューヨーク州交通局(MTA)との調整が始まった。早期実現は、ニューヨークの中心部に住めない中低所得の労働者にとっては悲願でもある。

もちろん、これらの政策は簡単には実現しない。財源の問題は大きい。また、州政府やMTAとの権限配分の問題がある。不動産資本、金融資本、保守メディアからの攻撃もある。さらに、市営食料品店が既存の小規模商店とどう共存するのか、家賃凍結が老朽化した住宅の修繕を妨げないか、といった現実的な課題もある。

●ニューヨークの源流となる「赤いウィーン」

だが、ここで強調しておきたいのは、マムダニが政治の問いを根本から変えていることだ。

これまでの都市政治では、「市場が決めた家賃を払えない人に、どれだけ補助金を出すか」が問題にされてきた。だが、マムダニはそうではなく、「そもそも住宅や食料や交通を、なぜ投機と利潤の対象にしてよいのか」と問うている。ここにこそ、民主的社会主義の新しさがある。

この点で、マムダニ市政は1世紀前の「赤いウィーン」を想起させる。第一次世界大戦後、オーストリアの首都ウィーンは、食料不足、住宅不足、インフレ、疫病、帰還兵の失業に苦しんでいた。極度の欠乏のなかで、人々は容易に排外主義とファシズムへと引き寄せられうる状況にあった。

そこでウィーンのマルクス主義者たちが率いる社会民主党政権が選んだのは、市場にすべてを委ねる道ではなかった。水道・ガス・電力などのインフラを公的に整備し、奢侈しゃし税や累進的な税制によって財源を確保し、労働者向けの公営住宅を大量に建設した。その際、住宅は単なる寝る場所ではなく、診療所、保育所、浴場、ランドリー、図書館、集会場、公園などを備えた生活の基盤として構想された。

つまり、「赤いウィーン」が試みたのは、欠乏のなかで人々を互いに競争させるのではなく、必要なものを共有し、生活を共同化し、連帯をつくり出す都市計画だった。これは、ソ連型の上からの中央集権的計画とは異なる。むしろ、都市に暮らす人々のニーズを満たしながら、暮らしの安心を〈コモン〉として制度化する民主的計画だった。

●競争社会から互いに支え合う社会への移行

マムダニの「赤いニューヨーク」もまた、極端な欠乏に直面している。もちろん、それは物資が絶対的に不足しているという意味ではない。

ニューヨークには富が溢れている。高級マンション、金融、IT、不動産、観光、広告、大学、病院――世界中の資本と才能を吸い寄せる都市である。だが、まさにその豊かさが、普通に働く人々から住む場所を奪い、食費を押し上げ、子育てを不可能にしている。これは自然な希少性ではなく、資本主義がつくり出す「人工的希少性」である。

だからこそ、マムダニが就任演説で「荒々しい個人主義の冷たさを、集団主義の温かさで置き換える」と語ったことは象徴的だった。

この言葉は、右派から激しい攻撃を受けた。彼らはすぐに「集団主義」を全体主義や共産主義の恐怖に結びつけようとする。だが、マムダニが言おうとしているのは、国家が個人を押しつぶすということではない。むしろ、孤立した個人が市場で必死に競争しなければ生きられない社会から、人々が互いに支え合う社会へと移行するということだ。

●「生活費を下げる政治」は反ファシズム

この転換は、単なる福祉政策ではない。それは、反ファシズムの政治でもある。

『人新世の「黙示録」』(集英社シリーズ・コモン)でも論じたように、インフレや戦争がもたらす恒久的な欠乏のなかでは、人々は不安に駆られ、他者を敵とみなしやすくなる。移民が仕事を奪っている。生活保護受給者が税金を食いつぶしている。環境規制が経済を壊している。こうした物語は、実際には資本とレントの独占が生み出した不安を、弱い立場の人々へと向け変える。これが現代のファシズムによる煽動せんどうの基本的な手口である。

それに対して、家賃を下げ、保育を無償化し、交通を安くし、食料へのアクセスを保障することは、人々の不安を直接減らす。誰かを排除することで自分だけが助かろうとするのではなく、みんなで生き延びる条件をつくる。これは、ファシズムが利用する恐怖の循環を、逆回転させる政治である。

ここで重要なのは、マムダニの勝利が、ひとりのカリスマの登場によるものではないということだ。選挙戦では10万人規模のボランティアが戸別訪問を行い、街角で対話し、集会を開き、動画を拡散した。つまり、マムダニ市政の力は、市長個人のものではなく、「社会主義」という言葉を日常の言葉へと引き戻した草の根の運動によるものなのだ。

●マムダニ市政が日本に示す明らかなこと

この点は、日本から見ても重要である。日本でも、インフレによって、住宅費、食費、教育費、介護費、光熱費は家計を圧迫し続けている。

それにもかかわらず、政治はやるのは「減税」を掲げるくらいだ。多少手取りは増やすから、あとは「自己責任」でやってくれと言わんばかりである。

だが、本当に問うべきなのは、なぜ普通に働いている人が普通に暮らせないのか、である。なぜ生活の基盤がこれほどまでに商品化され、民営化され、投機の対象にされているのか、ということなのである。

マムダニの政策は、まだ途上にある。家賃凍結がどこまで実現するかも、無料バスがどの範囲で制度化されるかも、公営食料品店がどれほど効果を持つかも、現時点では確定していない。むしろ、これからが本当の攻防である。

だが、すでに一つのことは明らかだ。ニューヨークの政治は、「市場の暴力に耐える」政治から、「生活の基盤を共同でつくる」政治へと舵を切り始めているのである。

●なぜ「赤いウィーン」の記憶は消えないか

ただし、20世紀の赤いウィーンは、最終的にはファシズムの暴力に敗れた。国政で保守と極右が力を増し、社会民主主義の都市実験は1934年に武力で押しつぶされたのだ。

その歴史を思えば、都市レベルの社会主義がどれほど脆弱ぜいじゃくであるかを忘れてはならない。都市だけでは、連邦政府、金融市場、資本逃避、司法、警察、軍、メディアの力に対抗しきれない。

それでも、「赤いウィーン」の記憶が消えないのは、欠乏のなかでも別の豊かさをつくれることを示したからである。市場がもたらす消費の豊かさではない。誰もが住める家、子どもを預けられる場所、病気になったときに頼れる制度、孤立しないための公共空間。そうした〈コモン〉の潤沢さこそが、人々をファシズムの誘惑から遠ざける。

●「赤いニューヨーク」はどこまで広がるか

繰り返そう。マムダニの「赤いニューヨーク」がどこまで進むかは、まだわからない。それは今後の闘争にかかっている。だが、彼の登場が示したのは、資本主義の中心地でも、社会主義はもはや過去の言葉ではないということだ。むしろそれは、気候危機、インフレ、孤立、戦争、排外主義が重なり合う時代に、普通の暮らしを守るための新しい言葉になっている。

●ファシズムか、社会主義か。

この選択は、20世紀の古いスローガンではない。恒久的な欠乏と不安の時代に、誰かを切り捨てて自分だけが生き延びるのか、それとも生活の基盤を共同でつくり直すのか。トランプ大統領に対抗するマムダニ市政の実験は、その問いを私たちの前に突きつけている。日本で暮らす私たちも、海の向こうの出来事として眺めているだけではいられないはずだ。

=====

ヨーロッパ規模の課税、ニューヨーク規模の機能不全(European-Scale Taxation, New York-Scale Dysfunction

-マムダニは政府を機能させる代わりに、彼なりの増税と支出で生活費の値ごろ感(affordability)を実現しようとしている。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/20/zohran-mamdani-new-york-city-affordability-taxes-housing/

ゾーラン・マムダニは、ニューヨーク市の生活費の値ごろ感(affordability)を実現するという公約を掲げて選挙に臨んだ。しかし今週、彼が発表した予算案は、一言で言えば、到底支払える額ではない(unaffordable)。

ニューヨーク市は長年にわたり財政の浪費を続けてきたため、1270億ドル(約20兆円、訳者註:東京都の予算は約9兆6500億円)という予算案の数字自体にあまり驚かない。しかし、比較のために言えば、これはギリシャやタイといった中規模国家(国家運営に必要なあらゆる支出を含む)の予算額と同等だ。一つの都市の統治に費やす年間支出額が国家予算に匹敵するということだ。

ニューヨーク市の予算は近年、急激に膨れ上がっている。マイク・ブルームバーグ前市長が最後に採択した2014年度予算は約700億ドルだった。わずか10年余りで、予算はほぼ倍増し、インフレ率や市の経済成長率を上回るペースで増加している。

そして、こうした状況の多くは、大規模な行政運営の財源確保に不可欠な要素、すなわち「人」が、ニューヨーク市から失われつつある中で起こっている。パンデミックの影響でニューヨーク市の人口は急激に減少し、2020年4月から2022年7月にかけて5.3%減少した。最近の報告では回復傾向が示されているが、2024年時点でも2020年の水準を下回っている。計算は残酷だ。より大きな負担を、より少ない負担者で分担していることを示している。

一人当たりの不均衡は顕著だ。リンカーン研究所の財政標準化データによると、2023年のニューヨーク市の一般支出は、ロサンゼルス市の一人当たり支出を30%以上上回り、ヒューストン市の2倍以上となっている。

それでは、ニューヨーカー(ニューヨーク市民)は一体何を得ているのか? 全米最大の学区であるニューヨーク市の学校について見てみよう。市の教育予算は増加の一途をたどる一方で、生徒数は減少している。2019年の約340億ドルから400億ドル以上に膨れ上がり、生徒一人当たりの支出は2026年度には約3万5000ドルに達すると予測されている。これは全米でも最高水準に達する。しかし、卒業率、テストの点数、読解力といった成果は、よく言っても平凡で、ニューヨーク市の教育費のほんの一部しか支出していない地域と大差がない。

そして、税金の話が出てくる。それは、ニューヨークのあらゆる政治的議論は、最終的に同じ結論にたどり着くからだ。「誰が税金を払うか?」である。

ニューヨーク市はすでに、アメリカの税制の中でも極めて高い水準にある。高所得者の場合、州と市の所得税を合わせた税率は14.776%にも達する。連邦税を加えると、限界合計税率は50%を超え、特定の投資所得では約55%にもなる。ニューヨーク市民は、ヨーロッパ諸国と同等の税率を支払っている。ヨーロッパの人々は、その見返りとして、国民皆保険制度、大学無償教育、そして素晴らしいインフラ整備といった恩恵を受けている。一方で、ニューヨーク市民は、約300マイルにも及ぶ歩道上の仮設構造物や工事用フェンスの恩恵を受けている。

法人税に関しても、ニューヨーク市は桁外れに高い。市民予算委員会の報告によると、ニューヨーク市の企業活動は、州、市、地域税を合計すると、全米で最も高い法人税率(17.44%)に直面している。マムダニ市長は、所得税と法人税率をさらに引き上げるか、さもなければ固定資産税を10%近く引き上げると述べている。2022年時点で、固定資産税は既にニューヨーク市の住宅所有コストの27%以上を占めており、これは全米平均を上回っている。

ニューヨーク市は、民主党が直視したがらない問題の典型例と言えるだろう。民主党が支配する都市は制御不能に陥り、約束ばかりで支出は増え、成果は乏しく、財政問題を先送りにしている。

ロサンゼルス市も例外ではない。こちらも一党支配の都市で、住宅価格の高騰と社会の混乱に苦しんでいる。2025~2026年度のホームレス対策予算は約9億5000万ドル(約1500億円)だ。ロサンゼルスホームレスサービス局の報告によると、2023年には郡全体でホームレスが9%、市内で10%増加した。また、2024年のAP通信の記事では、数十億ドルもの資金が投入されたにもかかわらず、市民の不満が高まる中、2015年以降、郡全体でホームレスが70%(市内では80%)も急増したと報じられている。市のホームレス対策予算24億ドルを監査した結果、当局は資金の使途や成果を正確に把握できていないことが判明した。シカゴ市を例にとってみよう。市長の支持率は極めて低く、年金支出の約束額は膨大で、いずれ市は財政破綻に陥るだろう。

ここでいう「良い統治(good government)」とは一体何だろうか? もし答えが「次々とプログラムを追加する(keep adding programs)」というものなら、シカゴ市は生活費の高騰を招き続けるだろう。なぜなら、生活費の高騰とは、政府が統治する対象の社会よりも速いスピードで肥大化する機械と化したときに起こる現象だからだ。

マムダニの基本的な直感は正しい。住宅、特に住宅価格の値ごろ感に注力すべきだ。しかし、政府補助金によるものではない。補助金は当然のことながら、家賃の高騰を招くだけだからだ。(市の家賃補助支出は、2020年度の2億6300万ドルから、直近の会計年度では13億4000万ドルにまで増加した。わずか数年で5倍に膨れ上がったにもかかわらず、住宅価格は悪化の一途を辿っている。)マット・イグレシアスは、市が市場価格の住宅を豊富に供給することを容易に、そして日常的に行うべきだと説得力をもって主張している。そうすれば、人口流入が増え、税収基盤が拡大し、学校が満員になり、地域GDPが増加する。そして、財政も健全になるだろう。

市役所の民主党員は正しい選択ができるはずだ。新たな社会保障制度の導入を目標とするような政治ではなく、より安全な街路、機能する学校、安定した衛生環境、そして何よりも、中流階級が住む場所を見つけられるだけの住宅供給といった、本来の機能を果たす行政に注力すべきだ。

ニューヨーク市にはこれ以上の空虚な美辞麗句など必要ない。もっと多くの住宅こそが必要だ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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 古村治彦です。

 アメリカで都市部、そして若者を中心にして民主社会主義(Democratic Socialism)が勢力を伸ばしている。この動きは2016年頃から始まった。2016年の大統領選挙は、共和党側で泡沫候補扱いだったドナルド・トランプが一気に大統領候補者に選ばれた。一方、民主党側ではヒラリー・クリントン元国務長官が大統領選挙候補者の大本命、一気に女性初の米大統領へという期待が高まっていた。その中で、若者たちを中心に、出馬表明を行ったバーニー・サンダース連邦上院議員を支持する動きが高まった。アメリカで「社会主義」という言葉はネガティヴな響きを持つ。ヨーロッパや日本の混合的な経済政策や健康保険政策などを「社会主義的」として忌避するほどだ。

サンダースは民主社会主義者を自認し、ヨーロッパや日本のような再分配や富裕層への課税強化などを長年にわたり主張してきた。その一貫した姿勢が、リベラルな振りをしながら実際には新自由主義的だったビル・クリントン政権やバラク・オバマ政権、民主党主流派・エスタブリッシュメントに不満を募らせていた若者たちを惹きつけることになった。そして、ニューヨークの財界と深い関係にあるヒラリーへの攻撃となった。民主党側では大統領選挙予備選挙でヒラリーが圧勝すると見られていたが、サンダースが健闘し、ヒラリーを追い詰めることになった。ヒラリーが最終的に勝利し、党大会で指名を受けるということになっても、若者たちはブーイングをし、デモを行い、サンダースが協力を求めてもそれを聞かず、民主党は分裂状態となり、結果として、ヒラリーは本選挙でトランプに敗れた。民主党を支持してきたラストベルトの白人労働者たちがトランプ支持、共和党支持となったのが象徴的だった。

 2018年の中間選挙では、ニューヨークの連邦下院議員選挙の民主党予備選挙で全く無名の若い女性で民主社会主義者のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)が10期連続当選、下院議長も狙える位置にいた現職議員ジョセフ(ジョー)・クローリーを破って本選挙でも勝利し、史上最年少の女性下院議員となったのが象徴的だった。AOCはサンダースの大統領選挙から政治に参加するようになった。民主社会主義拡大の動きはこれ以降も進んだ。サンダースやAOC以外にも主流派・エスタブリッシュメントを批判する「進歩主義的」な議員たちは増加していった。
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(左から)サンダース、マムダニ、AOC

 2025年のニューヨーク市長選挙でゾーラン・マムダニが民主党予備選挙、本選挙で勝利したことは民主社会主義拡大の勢いを物語るものとなった。そして、今年の中間選挙は地方選挙でも民主社会主義を標榜する候補者たちの勝利が続いている。以下に長くなるが、関連記事をいくつか紹介する。コロラド州デンヴァーの選挙区ではメラット・キロス、ニューヨークの選挙区では、マムダニ市長が支援した、ダリアリザ・アヴィラ・シュヴァリエ、クレア・ヴァルデス、ブラッド・ラウダーが予備選挙で勝利した。
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(左から)ヴァルデス、ラウダー、マムダニ、アヴィラ・シュヴァリエ

 民主社会主義は民主政治体制の中で社会主義を実現することを目指し、暴力革命は否定している。富の再分配や平等の実現を目指している。資本主義から社会主義への変化・移行を漸進的、非暴力的に行うということを目指している。以下の記事の中から、民主社会主義活動団体「アメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of AmericaDSA)」について、重要な部分を抜粋する。

(引用貼り付けはじめ)

DSAはウェブサイト上で、民主社会主義を「職場や地域社会、そして社会全体において、一般の人々が真に発言力を持つシステム(a system where ordinary people have a real voice in our workplaces, neighborhoods, and society)」と定義している。さらに、「私たちの生活を左右する主要な経済的基盤」の集団的所有(collective ownership of “key economic drivers that dominate our lives”)を推進し、エネルギー生産や交通機関の公営化、「メディケア・フォー・オール(皆保険制度)」、警察予算の削減(police defunding)、そして「グリーン・ニューディール」などを目標に掲げている。

「人々は、質の高い公共交通機関の拡充や、普遍的な保育の提供、最低賃金を生活できる水準まで引き上げることを求めている。こうした政策が検討のテーブルに乗っていると知れば、多くの人々が支持するだろう」とシディークは述べた。

昨年、候補者として出馬したマムダニは、家賃凍結(rent freezes)、普遍的な保育(universal childcare)、無料の市バス(free city buses)、そして市営食料品店(city-owned grocery stores)などを提唱した。

(中略)

DSAの綱領の刷新案について報じた。その中には、連邦上院の廃止、米国防総省の予算削減、そして大統領や最高裁判所を「連邦議会に従属する(subordinate to Congress)」執行機関や司法機関に置き換えるといった計画が含まれている。

シディークはテキストメッセージで、これらの計画は綱領の「暫定的な修正案(preliminary version of edits)」であり、最終版は「まもなく」発表される予定だと述べた。

(引用貼り付け終わり)

 抜粋する部分を読むと、民主社会主義が目指している政策について概略が分かる。最低賃金の引き上げや家賃凍結などは日本でも実施を検討して欲しい政策である。私が気になったのは、DSAの綱領の刷新案の中で、「連邦上院の廃止」と「大統領や最高裁判所を連邦議会に従属する形にする」という点だ。これは、アメリカを一院制(unicameralism)にし、三権分立(separation of powers)から、立法権(Legislative power)が行政権(Executive power)と司法権(Judicial power)に優越するという形を目指すということだ。

 これは、ジャン・ジャック・ルソー流の独裁(dictatorship)を生み出す危険性がある。ルソーは直接民主政治(direct democracy)を理想としていた。これは「人民主権(popular sovereignty)」ということである。そして、選挙の結果として表現されたものが「一般意志(general willVolonté générale)となり、その無誤謬性、絶対性によって決定がなされ、それに反対する少数派には結果が強制されるということになった。これは社会主義体制にも援用されている。これは非常に危険である。実際にフランス革命がのちに独裁と暴力を生み出してしまったのはこれらの考えによる。理想社会を実現するために、暴力と強制が正当化されるということにもなりかねない。民主社会主義の漸進的な変革は良いとしても、このような人民独裁を生み出しかねない考えというのは警戒を要すると私は考えている。

(貼り付けはじめ)

極左勢力がデンヴァーでも勝利を継続:コロラド州予備選挙の主なポイント(Far left extends victory streak into Denver: Key takeaways from Colorado’s primaries

ジュリア・ミュラー、キャロライン・ヴァキル筆

2026年6月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5948845-takeaways-colorado-primaries/

火曜日、コロラド州デンヴァーを選挙区とする連邦下院議員選挙の民主党予備選挙で、民主社会主義者のメラット・キロスが、進歩派の現職ダイアナ・デゲット議員を破るというもう1つの大きな番狂わせ(major upset)が起きた。この結果は共和党を喜ばせる一方、11月の本選挙を控えた民主党連邦下院指導部には懸念を抱かせるものとなるだろう。

元弁護士であるキロスは、「イスラエル国家の廃止を求めることは反ユダヤ主義にあたる」とする考えを批判する書簡を執筆したことを理由に解雇された経歴を持つ。今回、下院議員を15期務める現職で、連邦議会進歩派議員連盟(the Congressional Progressive CaucusCPC)のメンバーでもあるデゲットを打ち負かした。この勝利は、ニューヨーク市の激戦区における連邦下院予備選で民主社会主義者が勝利を収めてからわずか1週間後のことだった。

先週、ニューヨークでの予備選(現職議員2人が落選する結果となった)を受けて、民主党内は党内の緊張関係を軽視する姿勢を見せていた。しかし、デンヴァーでのキュロスの勝利により、党は最近の極左勢力の躍進や党内で生じている亀裂を、もはや単なる些細なこととして片付けるのが難しくなるだろう。

キロスの勝利は、中間選挙を控え、民主党の極左メンバーと苦戦を強いられている他の民主党候補者とを結びつけようとしている共和党にとっても、政治的な贈り物(a political gift)となる。

反エスタブリッシュメントの機運は、コロラド州知事選の民主党予備選挙でも鮮明になった。この選挙では、州司法長官のフィル・ワイザーが当初は本命視されていたマイケル・ベネット連邦上院議員を破った。一方、ジョン・ヒッケンルーパー連邦上院議員は予備選で進歩派のジュリー・ゴンザレス州上院議員を退け番狂わせを回避した。

コロラド州の予備選挙における主なポイントは以下の通りだ。

(1)DSAがまたも勝利を収める(DSA nabs latest win

先週ニューヨークでの予備選挙で相次いで勝利を収めた後、アメリカ民主社会主義者(the Democratic Socialists of AmericaDSA)はデンヴァーでも新たな試練を乗り越え勝利した。そこでは、29歳の民主社会主義者であるキロスが68歳の現職デゲットを破った。

連邦議会の「進歩派連邦議員連盟」のメンバーであり、地元選出の連邦議員として最長の在任期間を誇るデゲットは、30年にわたりコロラド州第1選挙区の議席を維持してきた。しかし、連邦下院での長い在任期間ゆえに、彼女は今回、連邦下院における新たな視点を求める声が高まる中で、キロスに対してのある種の脆弱性を露呈することになった。対立候補のキロスは、デゲットがワシントンでの活動を開始した当時にはまだ生まれてさえいなかった人物だ。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)やアメリカ民主社会主義者(DSA)の支援を受けたキロスは、近年、大卒の若年層有権者が流入している選挙区で序盤からリードを奪った。Decision Desk HQのデータによると、東部夏時間の午後10時30分に勝敗が確定した時点で、開票率78%、キロスはデゲットを約4ポイントリードしていた。

キロスの勝利は、いわゆる「マムダニ効果(Mamdani effect)」の証拠となる。DSAは先週、支持基盤が集中し、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニがその主張を最も力強く代弁しているニューヨーク州の予備選挙で、注目を集める勝利を収めたばかりだった。なお、DSAは政党ではなく、所属候補者は民主党から出馬するものの、党の主流派や組織運営の方針とは意見が全く異なる。

DSAは今後数週間、ミシガン州、ウィスコンシン州、フロリダ州などでも予備選挙という試練に直面することになる。専門家たちは、ニューヨークのような「青い(民主党支持の強い)地域」での勝利を過大評価することには慎重な姿勢を示しているが、コロラド州での予備選挙勝利は、左派的な政策アプローチに対する有権者の意欲が高まっていることを示す新たな兆候と言える。

共和党はこの予備選挙の結果に即座に反応し、極左勢力が民主党というブランドを乗っ取ろうとしていることの新たな証拠だと主張した。

「民主党における社会主義勢力の台頭は、もはや『ディープ・ブルー』(民主党の圧倒的強固な地盤)に限った話ではない。急進派が激戦区を次々と掌握し、民主党にとって必勝を期すべき議席を手の届かないものにしているほか、連邦下院の主導権を奪還する可能性をも潰してしまっている」と共和党連邦下院選挙対策委員会の広報担当マイク・マリネラは声明で述べた。

(2)反エスタブリッシュメントの民主党候補たちが重要な勝利を収める(Antiestablishment Democrats notch key wins

火曜日、反エスタブリッシュメントの民主党候補たちがいくつかの重要な勝利を収めた。

デンヴァーを擁する連邦下院第1選挙区で、民主社会主義者を自認するキロスが議会進歩派議員連盟(CPC)の現職デゲットを破ったことは、党内の反エスタブリッシュメント・新興勢力にとって最大の勝利となった。

この勝利は、キロスのイスラエルに関する一部の主張が党内で物議を醸していたにもかかわらず実現したものだ。彼女は以前、イスラエルの消滅を求めたりイスラエル政府を批判したりすることを「反ユダヤ主義的(antisemitic)」と見なす考え方を批判する書簡をアメリカの法律事務所宛てに送付していた。

また、コロラド州知事選の民主党予備選挙では、ワイザーがベネットを破った。これは、選挙戦当初、ベネットが圧倒的優位と見られていた政治情勢からすれば、予想外の結果だった。

ワイザーは厳密には民主党主流派の一員であり(コロラド州選出の有力民主党公職者の1人であり、民主社会主義者とは程遠い人物だ)、州司法長官という立場にあるが、ワシントンDCの現職政治家に対する予備選挙参加の有権者の不満を巧みに取り込んだ。

ワイザーは、自身がトランプ政権を66回も提訴した実績を強調する一方で、ベネットが大統領の閣僚指名の一部を承認したことを激しく批判した。さらに、ワイザーはベネット連邦上院議員が億万長者たちに「借りがある(言いなりになっている)[beholden]」と示唆し、自分自身は一般のコロラド州民のために戦う姿勢を強調した。

ベネットの政策スタンスの一部はワイザーよりも急進的なものだったが、彼の政策綱領や連邦上院議員としての経歴だけでは有権者の支持を勝ち取るには不十分だった。

しかしながら、ベネットが職を失うことにはならない。彼は連邦上院議員にとどまり、2028年の改選に臨むことになる。

一方、元コロラド州知事、元デンヴァー市長のヒッケンルーパーは、進歩派の州上院議員であるゴンザレスの挑戦を退けた。

(3)激戦が予想される連邦下院選挙(Races set for competitive House seats

デゲットの地盤であるデンヴァーの選挙区では、この秋、キロスが「民主党の堅い議席」とも言えるこの議席を容易に獲得する見通しだ。しかし、火曜夜の予備選挙の結果、連邦下院の主導権を巡る重要な戦いにおいて、いくつかの激戦区となる可能性のある選挙戦の構図も固まった。

コロラド州第8選挙区では、現職のゲイブ・エヴァンス連邦下院議員(共和党)が、今年改選を迎える共和党議員の中で最も苦戦が予想される1人と見られている。デンヴァー北部の郊外を選挙区とするこの議席について、クック・ポリティカル・レポートは「接戦(toss-up、トスアップ)」と評価している。

この秋、エヴァンスはマニー・ルティネル州下院議員(民主党)と対決することになる。ルティネルは火曜日の民主党予備選挙で、シャノン・バード元州下院議員を破った。弁護士であり、かつては米陸軍工兵隊でエコノミストとして勤務した経歴を持つルティネルには、11月の本選挙で民主党が議席を奪還できる最大の好機の1つを確実にものにするという重圧がかかっている。

コロラド州第5選挙区も、この秋の選挙で激戦となる可能性がある。クック・ポリティカル・レポートは今年に入り、この選挙区の情勢評価を「共和党確実(solid、ソリッド)」から「共和党優勢(likely、ライクリー)」へと民主党寄りに修正した。

現在、現職のジェフ・クランク連邦下院議員(共和党)が保持しているこの議席は、過去3回の大統領選挙のサイクルを通じて、一貫してリベラル(民主党)寄りへと変化してきた。この秋クランクに挑む候補者としては、予備選挙を勝ち抜いた元陸軍軍人のジェシカ・キリンが選ばれた。

民主党が連邦下院の主導権を握るには3議席を純増させる必要がある。

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ニューヨーク州議会選、民主社会主義者が相次ぎ勝利(Democratic socialists rack up wins in New York state Legislature races

アシュレイ・フィールズ筆

2026年6月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5938202-democratic-socialists-new-york-mamdani-primary-elections/

火曜日に行われたニューヨーク州議会の予備選挙で民主社会主義を掲げる候補者たちが次々と勝利を収めた。ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長(民主党)による政治的支援が、この「青い波(the blue wave、民主党の躍進)」を後押しした。

Decision Desk HQDDHQ)」によると、民主社会主義を掲げる候補者たちは、彼らを標的としたスーパーPAC(政治活動委員会)による巨額の資金投入があったにもかかわらず、州上院で2議席、州下院で4議席を獲得した。

パレスティナ系アメリカ人のエイバー・カワスが州上院第12選挙区の民主党予備選挙で勝利したほか、現職のジャバリ・ブリスポート州上院議員(民主党)は第25選挙区で78%以上の得票率を記録し、再選を確実にした(同選挙区の共和党予備選挙は中止された)。

DDHQによると、民主社会主義を掲げるジェシカ・ゴンザレス=ロハス候補も第13選挙区の予備選挙でリードしているが、最終的な結果はまだ確定していない。

「シティ・アンド・ステイト・ニューヨーク」の報道によると、ゴンザレス=ロハスは声明の中で、「力を合わせれば、働く家族を主軸に据え、地域社会に真の成果をもたらす未来を築くことができる」と述べている。

他にも、民主社会主義と関わりのある候補者が勝利を収めた。クリスチャン・テイトとサマンサ・カッタンは、それぞれニューヨーク州下院の予備選挙で勝利し、11月の本選挙では共和党の対立候補が不在となっている。また、DDHQの予測では、イオン・ハントリーが現職のステファニ・ジナーマン州下院議員を22ポイントの大差で破った。

現職の民主社会主義者であるダイアナ・モレノ(マムダニ氏の後任として州下院議員に就任)も、予備選挙で79%近い得票率を記録し、州議会への復帰を果たす見通しだ(DDHQ予測)。彼女は11月の本選挙で共和党の対立候補と対決することになる。

DDHQの集計によると、イラパ・サイリトゥパックも州議会予備選挙でリードしている。

現職議員の中で予備選挙を勝ち抜く可能性があるのはジョーダン・ライトだけで、DDHQのデータではライトが第70選挙区の予備選挙で首位に立っている。

「富裕層への課税(taxing the rich)。移民関税執行局(ICE)の排除(Kicking out ICE [Immigration and Customs Enforcement])。無償の保育の保証(Guaranteeing free childcare)。ニューヨーク市民が住居を維持すること(Keeping New Yorkers in their homes)」。ニューヨーク市のDSAは投票日の火曜朝、ソーシャルプラットフォーム「X」への投稿で、自らが支持する候補者たちへの後押しを行った。

DSAはさらに「社会主義の旗手たちを当選させこの政策課題を実現しよう」と呼びかけた。

「ニューヨーク・フォーカス」によると、DSAに反対するスーパーPAC(政治活動委員会)が290万ドルを投じて激しい反対運動を展開したものの、DSA系候補の選挙運動費用がいずれも20万ドルのラインを超えることはなかった。

DSA系候補に対抗する穏健派の挑戦者を支援するスーパーPACのストラティジストのジェフ・レブは「ニューヨーク・フォーカス」に対し、次のように語った。「ゾーランこそが起爆剤(the catalyst)となった。彼の勝利が人々を目覚めさせた」。

DSAには勢い(momentum)がある。彼らはニューヨークで過去最多の候補者を擁立しており、勝利の方程式を見出したと考えている。だからこそ、人々の反応が得られている」とレブは付け加えた。

マムダニにとって、連邦議会選挙でも大きな成果を挙げた。彼が支持を表明していた民主社会主義者のクレア・ヴァルデスとダリアリザ・アヴィラ・シュヴァリエがいずれも現職を破って勝利を収めた。
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エスパヤットがニューヨーク州の連邦下院民主党予備選でママダニ氏支持の候補に敗れる(Espaillat ousted in New York House primary by Mamdani-backed candidate

ジュリア・ミュラー筆

2026年6月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5931226-espaillat-loses-new-york-house-primary/

Decision Desk HQDDHQ)の予測によると、民主社会主義者のダリアリザ・アヴィラ・シュヴァリエが、民主党予備選挙で現職のアドリアーノ・エスパヤット連邦下院議員(民主党)を破った。これはニューヨーク市の社会主義運動にとって大きな勝利となる。

連邦下院第13選挙区をめぐるこの選挙戦は、ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長(民主社会主義者)にとって、その影響力を試す重要な機会の1つだった。マムダニは、5期目を務める現職のエスパヤットに対抗するアヴィラ・シュヴァリエを支持していた。

昨年の歴史的な市長選での勝利に続き、マムダニがアヴィラ・シュヴァリエの選挙活動に同行したことは、彼女の陣営に大きな弾みを与えた。ハーレム、ワシントン・ハイツ、ブロンクスの一部を含むこの選挙区において、マムダニの支持は、アヴィラ・シュヴァリエがエスパヤットを追い抜く助けとなったと見られる。

この予備選挙の結果により、エスパヤットの下院議員としての任期は終了することになる。エスパヤットは2016年に選出され、不法移民としての経歴を持つ初の連邦議会議員として知られている。現在は連邦議会ヒスパニック議員連盟の会長を務めるほか、連邦議会進歩主義議員連盟のメンバーでもある。

民主党の地盤が極めて強固なこの選挙区において、アヴィラ・シュヴァリエが今年11月の本選挙で議席を獲得することはほぼ確実な情勢だ。
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ニューヨーク州連邦下院民主党予備選挙でヴェラスケス氏の後任にマムダニが支援した候補者(Mamdani’s pick set to replace Velázquez in House after New York primary win

ジュリア・ミュラー筆

2026年6月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5931196-valdez-wins-ny-house-primary-mamdani/

Decision Desk HQDDHQ)の予測によると、ニューヨーク州議会議員のクレア・ヴァルデスが、ニューヨーク州の激戦となっている連邦下院議員選挙の民主党予備選挙で勝利する見通しだ。
ニューヨーク州第7選挙区の予備選挙は、市内で最も進歩的な地域の1つにおいて有権者を二分する激しい争いとなった。

ヴァルデスは、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニやアメリカ民主社会主義者(DSA)の支持を受けていた。一方、予備選挙のライヴァルであるブルックリン区長のアントニオ・レイノソは、ブルックリンとクイーンズの一部を代表する連邦下院議席の後任として、現職のニディア・ヴェラスケス連邦下院議員(民主党)から支持を得ていた。

ヴェラスケスは1992年にプエルトリコ系女性として初めて連邦下院議員に選出され、110期以上にわたる在任期間を経て引退を表明したため、この議席は後任を巡る選挙戦となっていた。

同じく30年以上にわたって務めたニューヨーク州選出の民主党議員ジェリー・ナドラーが引退する第12選挙区と同様、この議席は、ニューヨーク州における民主党の世代交代を巡る議論の中心にあるいくつかの議席の1つだ。

この選挙区は民主党の地盤が極めて強固であるため、ヴァルデスはこの秋の本選挙でも勝利する可能性が極めて高いと予想されている。
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マムダニが支援したラウダーがニューヨーク州連邦下院議員民主党予備選挙でゴールドマンを破る(Mamdani-backed Lander ousts Goldman in New York House primary

by Julia Mueller - 06/23/26 9:06 PM ET

https://thehill.com/homenews/campaign/5931205-lander-beats-goldman-new-york-house-primary/
Decision Desk HQ
DDHQ)の予測によると、元ニューヨーク市会計監査官ブラッド・ランダーが、現職のダン・ゴールドマン連邦下院議員(民主党)に予備選挙で挑戦し、勝利する見通しとなった。

DDHQのデータによれば、ランダーは開票率47%の時点で約63%の支持を集め、現職候補に圧勝した。

昨年、ニューヨーク市長選挙の民主党予備選挙で大きく引き離されて3位に終わったランダーだが、今秋の選挙では民主党の地盤であるこの議席を確実に手にする軌道に乗っている。今回の勝利は、ランダーを支援したニューヨーク市長ゾーラン・マムダニにとっても重要な成果となった。

リーバイ・ストラウス社の後継者であり、連邦議会進歩派議員連盟(CPC)のメンバーでもあるゴールドマンが、親イスラエル・ロビーからの長年の支援をめぐって苦境に立たされる中、進歩派であるランダーは強力な挑戦を仕掛けた。なお、ゴールドマンにはニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)や連邦下院民主党指導部が支持を表明していた。

この選挙戦は、ニューヨークにおける民主党の進むべき方向性をめぐる対立軸を浮き彫りにした。ゴールドマンがより中道かつ既成勢力寄りの政策を掲げたのに対し、ランダーは進歩派の立場を強く打ち出した。

リーバイ・ストラウス社の後継者であるゴールドマンは、2024年の予備選挙では約40ポイントの大差をつけて再選を果たしたが、先月実施されたエマーソン・カレッジの世論調査では、2026年の予備選挙においてランダーが30ポイント以上リードしているという結果が出ていた。

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民主社会主義者について知っておくべきこと(What to know about democratic socialists

ジュリア・ミュラー、タラ・サター筆

2026年6月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/5941564-democratic-socialists-primaries-mamdani-sanders/

民主社会主義者たちは、エスタブリッシュメントの枠組みを超えた左派的な理想を掲げ、中間選挙を前に大きな勝利を収めて主流派の民主党員を動揺させるなど、国政の舞台で勢力を拡大している。

ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニは、昨年の歴史的な選挙での勝利により、民主社会主義運動を全国的な注目の的へと押し上げ、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)やバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)などと肩を並べる存在となった。

最近の予備選挙を経て、ワシントンDCでは民主社会主義者が市長選での勝利を確実にしており、ロサンゼルスでも別の候補者がこの秋の市長選挙本選挙へと駒を進めた。火曜日に行われたニューヨーク州の連邦下院議員予備選挙では、マムダニが支持した2人の民主社会主義者が勝利を収めた。そのうちの1人は連邦下院の有力な進歩派議員を破っており、民主社会主義運動の勢いが増していることを示している。

民主社会主義の思想を支持する人々は、進歩的な変革を求め、いわゆる資本家階級による主導を拒絶している。また、全米各地で候補者を支援する草の根の活動家組織「アメリカ民主社会主義者(DSA)」は、2026年および2028年の選挙に向けて、その政治的組織力を強化している。

知っておくべきポイントは以下の通りだ。

(1)DSAは社会の「変革」を目指す(DSA aims to ‘transform’ society

DSAは、労働者階級に重点を置いてアメリカ政治を「変革」することを目指している。彼らは、既存の利益追求型構造や資本主義の枠組み(existing profit-driven structures and capitalist frameworks)を否定しつつ、経済的平等と社会正義(economic equality and social justice)を促進している。

DSAの共同議長であるアシク・シディークは木曜日の『ザ・ヒル』とのインタヴューで「私たちは社会を根本から全面的に変革しようとしているが、可能な限り全員で意思決定を行いながらそれを進めたいと考えている」と語った。

DSAはこの運動の主要な組織的基盤だが、有権者が党員登録できる政党ではなく、非営利の活動家団体だ。また、候補者の中には、この組織の正式な構成員でなくとも、民主社会主義の理念に共鳴している人もいるだろう。

DSAはウェブサイト上で、民主社会主義を「職場や地域社会、そして社会全体において、一般の人々が真に発言力を持つシステム(a system where ordinary people have a real voice in our workplaces, neighborhoods, and society)」と定義している。さらに、「私たちの生活を左右する主要な経済的基盤」の集団的所有(collective ownership of “key economic drivers that dominate our lives”)を推進し、エネルギー生産や交通機関の公営化、「メディケア・フォー・オール(皆保険制度)」、警察予算の削減(police defunding)、そして「グリーン・ニューディール」などを目標に掲げている。

「人々は、質の高い公共交通機関の拡充や、普遍的な保育の提供、最低賃金を生活できる水準まで引き上げることを求めている。こうした政策が検討のテーブルに乗っていると知れば、多くの人々が支持するだろう」とシディークは述べた。

昨年、候補者として出馬したマムダニは、家賃凍結(rent freezes)、普遍的な保育(universal childcare)、無料の市バス(free city buses)、そして市営食料品店(city-owned grocery stores)などを提唱した。

ワシントンDCでは、DSAの地元支部が犯罪対策として警察以外の代替策への投資を目指しており、移民関税執行局(ICE)と地元警察との「日常的な連携」を現職市長の失策の1つとして批判している。進歩派の民主党市長候補であるジャニース・ルイス・ジョージは、連邦政府による権限の濫用に対して徹底的に抵抗する姿勢を打ち出しており、これに対しトランプ大統領は、もし今秋の選挙で「狂った社会主義者」が選出されれば、連邦政府がワシントンDCを「取り戻す(take back)」可能性があると警告している。

ロサンゼルスでは、DSA所属の市長候補ニティア・ラマンが、ホームレス問題や住宅費高騰に対して進歩的な政策を打ち出している。DSAロサンゼルス支部は市長選においてまだ特定の候補を支持していないが、DSAロサンゼルス支部の目標には警察予算の削減や刑務所の廃止などが含まれている。

オカシオ=コルテスは「グリーン・ニューディール」の推進者として有名だ。これは、高速鉄道の整備、「炭素の社会的費用」ルールの導入、そして大恐慌時代の政策をモデルにした公的な雇用創出プログラムの確立など、環境および経済にわたる広範な改革を提案する法案だ。

DSAは以前からアメリカ合衆国憲法に対して批判的な姿勢をとっており、2024年の声明では、アメリカ政府の運営の基礎となるこの文書について、「エリートによる支配を明示的に固定化する政治秩序を確立するものだ」と述べている。

DSAは2024年の綱領において、究極の目標は「全ての人に市民的・政治的・民主的権利を保障し、単一の連邦議会における比例代表制に基づき、政治における金の影響力を排除する、新たな民主的憲法」を制定することだと述べている。

ウェブサイトに掲載されたDSAの綱領では、非市民や有罪判決を受けた人々への完全な投票権の付与、ワシントンDCの州昇格、比例代表制導入による二大政党制の解消、連邦下院議席数の拡大、大統領の一般投票による選出、そして最高裁判所による司法審査権の制限などが求められている。

保守寄りのシンクタンクであるマンハッタン研究所の出版物『シティ・ジャーナル』は最近、DSAの綱領の刷新案について報じた。その中には、連邦上院の廃止、米国防総省の予算削減、そして大統領や最高裁判所を「連邦議会に従属する(subordinate to Congress)」執行機関や司法機関に置き換えるといった計画が含まれている。
シディークはテキストメッセージで、これらの計画は綱領の「暫定的な修正案(preliminary version of edits)」であり、最終版は「まもなく」発表される予定だと述べた。
「しかし、私たちが明確にしておきたいのは、人々が政府、職場、地域社会に対して完全な民主的統制(democratic control)を持つ『民主社会主義的社会(a democratic socialist society)』のあり方に関する、より広範で長期的なヴィジョンと、統治に関する短期的なヴィジョンとを混同すべきではないということだ。後者については、私たちの候補者が掲げる実際の政策綱領をご覧いただきたい」。

(2)主要な選挙戦で勢いを増す候補者たち(Candidates gain momentum in key races

シディークは、DSAの成長は近年、「指数関数的なカーヴ(an exponential curve)」を描いていると述べている。

1980年代に左派の提唱団体として登場したDSAだが、2016年に無所属のサンダース(当時DSAの会員ではなかったが、自らを民主社会主義者と称していた)が大統領選挙に出馬した際、主流派政治の表舞台へと躍り出た。DSAによれば、その年のトランプの勝利がきっかけとなり、さらに数千人が新たに参加したということだ。

DSAニューヨーク支部は、2018年の選挙でジョー・クロウリー連邦下院議員(当時、ニューヨーク州選出、民主党)に挑んだオカシオ=コルテスを支持した。オカシオ=コルテスは、同様にDSAのメンバーであり、いわゆる進歩派グループ「スクワッド(Squad)」の一員であるラシダ・トレイブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)などと共に連邦議会入りを果たし、その次の選挙サイクルではコリ・ブッシュ連邦下院議員(ミズーリ州選出、民主党)も隊列に加わった。

シディークによると、10年近く前には約5000人だった会員数は現在10万人を超え、全米に200の支部を擁するまでに拡大している。

そして、マムダニの歴史的な勝利に続き、今回の中間選挙サイクルにおいても、DSAの候補者たちが注目すべき勝利を収めている。

今月、ワシントンDCではルイス・ジョージが予備選挙で穏健派の対立候補を上回る成績を収め、トランプの2期目を通じて首都の舵取りを担うことが事実上確実となった。その1週間前には、ラマンがロサンゼルス市長選挙の本投票(11月実施)への進出を決め、現職のカレン・バス市長(民主党)と対決することになった。

今週に入り、マムダニとDSAニューヨーク支部の支援を受けた民主社会主義者の候補者であるクレア・ヴァルデスとダリアリザ・アヴィラ・シュヴァリエが、ニューヨーク州の連邦議会予備選で大勝した。特にアヴィラ・シュヴァリエは、現職のアドリアーノ・エスパヤット連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)を破るという結果を残した。

DSAニューヨーク支部は木曜日、火曜夜の予備選挙投票終了後、会員が400人以上増加したと発表した。

しかし、今後数週間は、DSAの支持基盤の大部分が集中するニューヨーク州以外での運動の力が試される時期となるかもしれない。デンヴァー、デトロイト、南フロリダでDSA候補者が連邦議会議員選挙の予備選挙に臨むからだ。

(3)躍進は民主党との亀裂を浮き彫りにする(Rise underscores rift with Democratic Party

ニューヨーク市で行われた火曜日の予備選挙では、民主社会主義運動の勢力拡大に伴い、連邦議会選挙は民主党内の分裂を浮き彫りにした。

マムダニは、民主党予備選挙での勝利後、2025年の市長選挙でマムダニに重要な支持を与えた連邦議会ヒスパニック議員連盟会長のエスパイヤット議員ではなく、アヴィラ・シュヴァリエを支持した。また、退任するニディア・ヴェラスケス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)の後任として、ヴェラスケスが支持した候補者ではなく、ヴァルデスを支持した。

今回の選挙は、世代交代から経済政策に至るまで、民主党の将来に関する幅広い議論の中で、民主党内で意見の相違が生じていることを浮き彫りにした。

シディークは、ザ・ヒルのインタヴューで、2024年の選挙において左派的な政策や候補者が不足していると感じたことへの不満を表明した。また、カマラ・ハリス(当時副大統領)の敗因として、イスラエルによるガザ地区での戦争に起因する人道危機や気候変動といった問題に対するハリスの姿勢を挙げた。

「私たちが考えるハリスの敗因の1つは、予備選挙の段階で左派的な主張をしたり、より踏み込んだ要求をしたりする存在がいなかったことだ。その結果、パレスティナ問題(ガザ地区でのジェノサイドなど)が進行中であったにもかかわらず、選挙戦ではほとんど議論されなかった。また、気候変動、その他の主要な課題といった問題が、十分に取り上げられなかった。全体として右傾化(a slide to the right)が進み、それによって民主党の支持基盤の多くが離反し、普段は投票に行かない層も全く意欲をかき立てられなかった」とシディークは語った。

DSA運動の勢いが増す中、DSAは2028年の大統領選挙への挑戦も視野に入れている。

DSA運動から有力候補として名前が挙がっている人物の中で最も著名なのがオカシオ=コルテスです。

シディークによると、組織内では大統領候補の擁立に関する議論が行われており、DSAには「議論を重ね、最終的には誰を擁立するかについて集団的な決定に至るというプロセス」があるということだ。

「アメリカでは物事が非常に急速に変化している。先週私たちが手にしたような勝利は、こうした政治的立場を代表する人物が、大統領選挙で十分に有力な候補になり得るという期待を、私たちに抱かせてくれていると思う」とシディークは述べた。

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●「米民主党左派、中間選挙の候補者3割に 反イスラエル・物価高で支持」

202672 5:47

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01CZR0R00C26A7000000/

democraticsocialismnikkei20260702001

西部コロラド州の下院選の民主党予備選で勝利宣言したメラット・キロス氏(630日)=AP

【ワシントン=飛田臨太郎】米民主党内で「民主社会主義者」や「進歩派」と呼ばれる急進左派が全米で勢いを増している。11月の中間選挙に向けて党候補を決める予備選は6割が終わり、このうち3割弱で左派系候補が勝利した。

主流の穏健派が次々と敗れる事態で、2028年の米大統領選にも影響が及びかねない。米ジョンズ・ホプキンズ大のダニエル・シェロズマン教授は民主党の現状について「これほど多くの左派系がメンバーになる状況はこれまでなかった」として「内部では亀裂が生じている」と指摘する。

29歳の若手、ベテラン破る

「私たちが戦えば変化は必ず起きる」。西部コロラド州で630日に投開票された連邦下院議員候補を選ぶ党予備選では、急進左派で29歳のメラット・キロス氏が約30年間も議席を維持してきたベテラン現職を破り、記者会見で気勢を上げた。

選挙戦では企業からの政治献金を拒否し、バリスタとして働く庶民的な姿勢を訴えた。弁護士としてニューヨークの法律事務所に務めていた際、「イスラエルの国家消滅を求めるのは反ユダヤ主義だ」とする見解に異議を唱えて解雇された経験も持つ。

コロラド州では同日実施の知事候補を選ぶ党予備選でも、左派色が強い候補が本命視されていた穏健派を破った。

democraticsocialismnikkei20260702002

民主党が党候補を決める全米での予備選は3月に始まり、9月までに終わる。コロラド州の結果を受けて、11月に改選する米連邦議会上院(改選33議席と補選の2議席)と下院(定数435議席)のうち、300超の選挙区で党候補が固まった。

日本経済新聞社の集計によると、このうち左派系が党候補の座を手中にした選挙区は80超あり、およそ27%を占めた。左派がつくる政治グループ、プログレッシブ・コーカス(進歩派議員連盟)などが支援した候補を集計した。

■全米に広がる「マムダニ旋風」

躍進の背景にあるのが、所得格差の拡大や長引く物価高だ。バイデン前政権を支えた主流の穏健派が「富裕層や大企業の利益に重きを置き、労働者や生活者を置き去りにした」と批判し、党指導部は人々の不満に応えていないと主張する。

経済面では公共サービス料金の無償化や国民皆保険の導入、大企業への規制強化などを政策に挙げる。

公共サービス料金の無償化などは米国では急進的に映る。だが米調査会社ギャラップによると、資本主義に肯定的な見方を示す民主党支持者の割合は2010年の51%から25年には42%に減少した。大企業に肯定的な見方も46%から17%にまで減った。

民主社会主義者を自称する左派は「資本主義の弊害を減らし、より平等な社会を実現しよう」と訴える。

イスラエルに批判的な姿勢や国防費の抑制といった主張なども支持を集めている。米国では若年層を中心にイスラエル支援に不満を持つ人の割合が大きい。

ギャラップによると、民主党支持者でイスラエルよりもパレスチナに共感すると答えた人は26年に65%と、その逆(17%)を大きく上回る。歴史的にイスラエル寄りの傾向が続いていたが、23年から逆転した。

democraticsocialismnikkei20260702003

性的少数者の権利擁護を訴える恒例のパレードに参加したマムダニ市長(628日、ニューヨーク)=AP

急進左派の代表格がニューヨーク市長のマムダニ氏だ。家賃の引き上げを禁じるなどして全米の注目を集める。623日にニューヨーク州で実施された連邦議会下院の予備選では、マムダニ氏が支援した急進左派の3人が勝利し、全米に衝撃を与えた。

主流派は左派候補の台頭は、無党派層や穏健な民主支持層を遠ざけると警戒する。激戦区で共和党に勝つには中道派の支持取り込みが欠かせないからだ。穏健派の民主下院グループは「私たちは資本主義者であり、社会主義者ではない」と訴える。

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中間選挙で左派への支持が鮮明になれば、2028年の大統領選にも波及する。急進左派の若手代表格でZ世代から初めて下院議員になったマックスウェル・フロスト氏は「進歩派から我々の次期大統領候補を選ぶのが希望であり、そうなるだろう」と予告する。

トランプ米大統領は民主党の左傾化を中間選挙の争点にしようと動き始めた。「彼らは『社会民主』という言葉を使うが、実際には共産主義だ。建国以来、米国にとっての最大の脅威だ」などと再三、主張している。

急進左派は国内問題を重視し、対外関与を控えようとする傾向がある。共和党だけでなく、民主党でも内向き姿勢が強まれば、日本や世界に影響する。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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アメリカでは19世紀から20世紀にかけて、社会主義が人気を博した時代がある。1930年代、1960年代にそれぞれ社会主義が人気を集め、それぞれの時期に労働組合が発達し、公民権運動やジェンダー、人種、福祉について発展していった。そして、現在もまた、社会主義が人気を集めている。このブログでもご紹介しているが、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は「民主社会主義者(Democratic Socialists)」を自称している。若者たちは彼らを支持し、民主党エスタブリッシュメントを批判している。
 アメリカで社会主義が人気を集めた時期を考えてみる。1930年代は、輝ける1920年代の好景気から一転しての大恐慌の時代となり、社会不安は増大した。労働者たちが待遇改善を訴え、警察やギャングとの衝突も頻発した。1960年代は、第二次世界大戦で勝利した後、世界第一位の国家となったアメリカでは人々の生活は大いに向上し、景気も良かった。しかし、ヴェトナム戦争に突入し、財政赤字は増大し、景気も減速し、人々は生活に不安を覚えるようになった。

そして、現在である。各種報道でもあるように、アメリカ国民の生活は厳しく、アメリカの国力は減退している。そうした中で、若者たちは「自分たちは自分の祖父母や父母たちの世代よりも良い生活を望むことはできない」という諦めを感じている。全体として、将来に不安を覚えている。アメリカで社会主義が人気を集める時は、人々の将来への不安が増大している時であり、経済に不安を感じている時だ。大きく言えば、アメリカ経済はどうなるのか、資本主義はどうなるのかという不安が基底にある。

1930年代、1960年代のそれぞれで、人々は不安を乗り越えた。しかし、21世紀の今回の場合はどうだろうか。資本主義の行き詰まりということになっているのではないかと私は考えている。世界覇権国がアメリカから中国にシフトしていくということは、西洋支配600年の近代が終わるということであり、西洋近代が生み出した資本主義もまた変容し、終わっていくのではないかとも考えられる。このような大きな不安が基底にある時代が進んでいて、そうした動きに日本も飲み込まれているのだろうと考える。日本では参議院議員選挙が始まった。選挙戦という狂騒曲は表面の動きであり、その下の大きな動きに目を向けていきたいものだ。
(貼り付けはじめ)
カール・マルクスのアメリカでの好景気(Karl Marx’s American Boom

-新刊書では共産主義思想家が資本主義国家アメリカでどのように受け入れられたかの歴史を検証する。

グレゴリー・ジョーンズ=カッツ筆

2025年5月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/30/karl-marx-america-boom-communism-capitalism-hartman/

アンドリュー・ハートマンは著書『アメリカのカール・マルクス』の中で次のように述べている。「私たちは第四次マルクスブームを生きている。アメリカ人は、1960年代、いや、もしかしたら1930年代以降に匹敵するほどマルクスについて考えている」。この20年間は、社会と政治の激動で特筆すべき20年間だった。その証拠は数多くある。トランプ、マスク、そしてMAGA運動の他のメンバーは、各機構・制度への「マルクス主義」の浸透(the “Marxist” infiltration of institutions)を常に非難している。一方で、あるアメリカ人(バーニー・サンダース連邦上院議員)は、世界で最も有名な社会主義者となっている。

一方、アメリカの学者たちは堅実にマルクスに取り組んでいる。例えば、ヴィヴェック・チッバーの『階級マトリックス』(2023年)は、マルクス主義思想を用いて社会理論における「文化的転回(cultural turn)」を批判し、資本主義における階級構造(class structure)と物質的関係(the material relations)の重要性を浮き彫りにしている。あるいは、プリンストン大学出版局が半世紀ぶりの2025年に、英訳したマルクスの『資本論 経済学批判(Kapital: Critique of Political Economy)』第1巻を考慮してみるのも良い。これは「21世紀のマルクス(Marx for the twenty-first century)」を提示している。

アメリカにおける他のマルクスブームの時と同様に、今回のブームは、特に批判者の間では、純粋なマルクス主義イデオロギーへの回帰を目指してはいない。むしろ、1930年代や1960年代と同様に、マルクスの資本主義批判は現代社会の不安定さと暴力性(the volatility and violence of our contemporary society)を分析するための重要なリソースであり、代替モデルを模索する上で不可欠であるという考えに突き動かされている。経済的困難、資本主義の失敗(2008年の金融危機など)、社会正義への懸念、そして環境破壊といった要因が、読者、活動家、そして学者を再びマルクスの著作へと導いている。

『アメリカのカール・マルクス』は、周期的なマルクスブームの紆余曲折を理解する上で大きく貢献している。500ページ、9章からなる本書は、19世紀半ば以降、アメリカの読者がマルクスをどのように利用してきたかを巧みに歴史的に描いている。ハートマンは、「アメリカ合衆国におけるマルクスの受容は、左派、中道、右派、そして時にはそれらが同時に現れた歴史である。マルクスは、あらゆる政治的背景を持つアメリカ人にとって、相談相手(a sounding board)としての役割を果たしてきた」と書いている。

ハートマンは、アメリカ人は時を経て、マルクスに対して主に3つの方法で自らを位置づけてきたと論じている。第一のアプローチは「マルクスの労働に関する古典的な理論への献身(its devotion to his classic theory about labor)」において注目に値し、「ユージン・デブス、エリザベス・ガーリー・フリン、A・フィリップ・ランドルフ、バーニー・サンダースといった人物」によって用いられてきた。第二のアプローチは、「ハイブリッド・マルクスの創始者([t]he creators of a hybrid Marx)」であり、彼らは「キリスト教、共和主義、ポピュリズム、プラグマティズム、黒人ナショナリズム、先住民性(indigeneity)、ケインズ主義、フェミニズムといった伝統とマルクス主義を融合させることで、マルクスをアメリカの様々な状況に適応させた」。そして第三のアプローチは、「不利な解釈の積み重ね(“the array of unfavorable interpretations)」であり、「反共産主義がアメリカ合衆国をどれほど異常なほど形作ってきたかを物語っている」。

『カール・マルクスのアメリカ』は、広範囲に及ぶ著作だが、ハートマンは「マルクス・アメリカ弁証法(the Marx-America dialectic)」を形作った重要なパターンを有益な形で掘り起こしている。「20世紀を通して発展してきたアメリカに対する私たちの理解そのものが、地下に潜むマルクスによって支えられている」と彼は書いている。ハートマンの著書は、「マルクス・アメリカ弁証法」など存在しなかったという主張に「修正を加えている」とハートマンは主張し、「マルクスの思想はアメリカの政治的伝統に同化されていないものの、無数の反共産主義者の懸命な努力にもかかわらず、一掃されることもなかったことを示している」と述べている。統合される(integrated)ことも、清算される(liquidated)こともなかったのが、『カール・マルクスのアメリカ』である。なぜなら、マルクスに賛同して考えようと反対して考えようと、親マルクスであれ反マルクスであれ、マルクスを高めようと葬り去ろうと、アメリカ人はマルクスが設定した概念的・歴史的枠組みの中で活動してきたからだ。この点で、ハートマンは解釈弁証法的な逆転を用いて受容史を記述している。「たとえマルクスの衰退が訪れても、それはマルクスのブームだ(Even when there’s a Marx bust, it’s a Marx boom)」。こうしたアプローチは、マルクス主義思想そのものについて長らく問われてきた、反証可能性に関するいくつかの疑問(questions about falsifiability)を提起する。

ハートマンが掘り起こした歴史的パターンの具体例を挙げよう。「マルクス主義の台頭には、常に赤狩り(red scares)が伴ってきた」。さらに正確に言うと、第6章でハートマンは、戦後保守主義がマルクスを脅威、非米的あるいは反米的と扱ったことを検証している。ハートマンは、「戦後の赤狩りの助けを借りて、保守派はマルクスを消し去ることにほぼ成功した。しかし、皮肉にも、マルクスに対する右翼の注目は、たとえ最も陰謀的な形であっても、暗い鏡を通してではあるが、存続するのを助けた」と書いている。こうした歴史の皮肉、あるいは弁証法的な逆転は、現代の私たちにとっても馴染み深いものとなっている。ソーシャル メディアの時代では、噂が虚偽であると話すだけで、その噂はさらに広まってしまうのだ。

第8章でハートマンは、1980年代と1990年代に歴史家や文化理論家によってマルクスがどのように利用されたかという皮肉を掘り起こしている。彼は次のように書いている。「規制されたニューディール版を消滅させた『新自由主義』資本主義への傾倒が進む国で、1000人のマルクスが花開いた。マルクス主義が政治的な経路から切り離されたことで、創造的な方法で発展することができた。歴史は皮肉を呼び起こすことをやめない。特にマルクスが関与している場合はそうだ」。言い換えれば、「マルクス」がいわゆる現実の政治から排除されたことで、逆説的に、例えばフレドリック・ジェイムソンのような文化政治家がマルクスを独創的な方法で解釈することが可能になった。しかし、マルクスが政治的な手段から引き離されることは、創造的な解釈が生まれ、普及するために必要だったのだろうか? そして、なぜマルクスは歴史の皮肉を特に引き起こしたのだろうか? これらの逆転は、資本主義が「最も進んでいた」のはアメリカであり、したがって、マルクスとアメリカは、ジキルとハイド、ホームズとモリアーティのように、概念と物質のダンスに閉じ込められた双子にすぎないからではないだろうか?

ハートマンはこうした問いに答えることにそれほど関心がない。しかし、『アメリカのカール・マルクス』には、彼が特定のマルクス解釈に傾倒していることが垣間見える。実際、ハートマンは、21世紀が進むにつれて周縁化され、抑圧されてきたとも言える労働における古きマルクスが、私たちの元に、そして私たちのために戻ってくることを望んでいるように思われる。そして、マルクスは本書全体を通して、地下に潜むマルクスなのだ。例えば、第8章の「ポストモダンのマルクスか?」という節(疑問符に注目)で、ハートマンはフランスの哲学者ジャック・デリダがマルクスの唯物論(Marx’s materialism)を言説的な言語分析(discursive analyses of language)へと転化させたことを批判している。「より広い意味では」とハートマンは書いている。「デリダは、ポストモダンの秘教主義の媒介者(an agent of postmodern esotericism)というよりも、むしろ知的左派が物質的関心を放棄し、身体化されていない文化的・テクスト的関心を優先したことの兆候として理解されるべきである」。デリダのこの表現から明らかなのは、ハートマン(そして彼が好意的に引用する多くの批評家)にとって、デリダは「労働に関する古典的理論」で知られるマルクスを有害な形で脇に追いやったということだ。ベルリンの壁崩壊とソ連崩壊後の1993年にデリダがそうしたことは、資本主義への屈服(capitulation to capitalism)のようにも聞こえる。

ハートマンの特定のマルクスへの偏愛は、アメリカの文学理論家マイケル・ハートとイタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリが2000年に著した『帝国(Empire)』の分析にも顕著に表れている。「マルクスを反逆の預言者(a rebel prophet)ではなく、パラダイム提供者(a paradigm provider)とみなした学者たちとは異なり、ハートとネグリは革命的なマルクスからインスピレーションを得ていた。しかし彼らは、資本主義はマルクス主義のパラダイムよりも長く生き残ったと考えていた。彼らのマルクスは、彼の思想を妥当なものにしていた素材から切り離されていた。『帝国』は、反グローバリゼーション運動が労働者階級の政治から乖離したことの副産物である」。ハートマンは、21世紀初頭までに、革命的な労働者階級という主体は、アメリカにおけるマルクス解釈の多くから切り離されていたと指摘する。ハートやネグリをはじめとする左翼主義者たちが唱えた非物質主義(non-materialism)は、正義の精神ではあったものの、政治的には欠けており、全く歯が立たなかった。ハートマンは次のように書いている。「2000年代初頭のアメリカ左翼は、奴隷制度廃止論(abolitionism)に遡る道徳的左翼の伝統に根ざした感性を示していた。道徳的左翼の崇高な目標は・・・時には達成可能だった。しかし、新自由主義の主権に対峙するにあたって、道徳的左翼主義は十分な備えができていないことが証明された」。

ハートマンの文章の最後で、労働における古きマルクスの思想が再び炸裂する。「現在のストライキの波は1934年のそれほど大きくはないものの、労働者階級の意識は高まりつつある。世論調査では、労働組合が半世紀ぶりに人気を集めていることが示されている」。しかしハートマンは、こうした状況がアメリカにおける民主社会主義革命の勃興と資本主義の終焉(a democratic socialist revolution and finish off capitalism in America)につながるかどうかについては予測を避けている。「私たちは後期資本主義(late capitalism)に生きているのかもしれないし、そうでないかもしれない」と彼はためらいがちに記す。「これはかつて過度に楽観的なマルクス主義者の間でよく使われた言葉だ」。この点で、ハートマンは、フレドリック・ジェイムソン、スラヴォイ・ジジェク、マーク・フィッシャーといった著名人とも意見が一致している。ジェイムソンの言葉を借りれば、「世界の終焉を想像する方が資本主義の終焉を想像するよりも簡単だ」。実際、ハートマンにとって、資本主義が終焉すれば、マルクスもついに去ることになる。ホームズとモリアーティのように、彼らはライヘンバッハの滝を渡りきるのだ。ハートマンは文章の終わり近くに「マルクス受容の長い歴史によって明らかにされた真実は、資本主義が存続する限り、マルクスを殺すことはできないということだ」と書いている。

おそらく、アメリカにおけるカール・マルクスの政治的教訓は、マルクス読解の知的歴史に見出されるものではない。その代わりに、今ここでマルクスを利用し、マルクスのブームと衰退を終わらせ、それによってマルクスを休息させるという精神にあるのかもしれない。ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァクが『グローバル・マルクス?』の中で次のように書いている。「マルクスの書いたものを『知る』とは何だろうか。マルクスの著作を『知る』ということは、知識とは知識についての知識であるという古い信念を維持することである。・・・補足的な仕事は、世界を変えようとすることである」。このようなマルクス主義理論の実践、マルクスの地下に潜む亡霊の祓い清めは、資本主義の終焉に伴うものであり、アメリカン・プロジェクトの長い間約束され、悲しくも妨害されてきた理念や理想の実現につながるだろう。

グレゴリー・ジョーンズ=カッツ:アメリカの知識人・文化歴史家。現在、ドイツのバート・ホンブルクにある人間科学研究所の博士研究員、およびフランクフルト・ゲーテ大学一般比較文学研究所の研究員を務めている。

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(終わり)

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